2023年10月20日 15:48
【『大奥 Season2』感想3話】玉置玲央と村雨辰剛、絶望がうかびあがらせる人の尊厳
権力の周辺で生きる人々の醜さや悲しさがしっかり描かれるからこそ、敬愛する人や仲間からの感謝の言葉だけで、自らの死を受け入れることが出来る青沼の高潔さが私たちの胸に深く響く。
金も名誉も求めなかった男がただ一つ、崇拝する女に請うた「いま一度」の言葉。感謝だけあれば命と引き換えに十分だと逆説的に伝わってくる。胸ふるえる名場面だった。
※写真はイメージ
映像化にあたり、脚本では分かりやすくするために細心の解釈で所々に変更があるが、今回のラスト、土砂降りの中で叫ぶ黒木(玉置玲央)のシーンは、ほぼ原作そのままだった。圧巻の再現度に息をのんだ原作ファンも多いと思う。
原作から10年の時を超え、名バイプレーヤー・玉置玲央が全力で演じたこの場面は、強者つまり失わない人々が、失い続ける弱者の人生への想像力を忘れ、その痛みを見て見ぬふりすることへの絶望と怒りに満ちている。
その怒りを、黒木は神仏ではなく生身の人間である江戸城の権力者達にぶつける。
そしてフィクションを越え、時代を超え、その言葉は現代に生きる私たちの心に深く突き刺さるのである。
※写真はイメージ
原作通りといえば、平賀源内が命を落とす原因となった梅毒への感染もまた、原作に沿った。