2023年11月2日 18:27
【『大奥 Season2』感想5話】 中村蒼と蓮佛美沙子が描き出した、女の人生の哀しみ
NHK連続ドラマ小説『ごちそうさん』(2013年)、NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』(2017年)、『義母と娘のブルース』(TBS系 2018年)といった作品群からもわかるように、森下佳子はカリスマ性を持ったヒロインと、その関わりで変化していく周囲を描くのに長けた作家である。
彼女のその筆は、今作で恐ろしく、それと同じくらい魅惑的な悪役を描き出した。
ひんやりと甘い声で、息子に毒入りの菓子を勧める一橋治済(仲間由紀恵)の「召し上がりゃ」と囁くセリフは当面忘れられそうにない。
男だけが罹る赤面疱瘡という伝染病で、男性の人口が極端に減少した架空の江戸時代。
労働や政治の担い手が女性となる中、名君と謳われた八代将軍・吉宗は国の存続の為に赤面疱瘡の克服を決意する。
吉宗の遺志を託された田沼意次は大奥に蘭学者を集めて研究を始めるが、その成果は権力を得た一橋治済に握りつぶされてしまう。赤面疱瘡の撲滅という希望が消えた後、幕府では150年ぶりに男子の将軍・家斉(中村蒼)が即位する。そして同じ頃、大奥では幼児の不審死が続いていた。
※写真はイメージ
医療編、堂々の完結である。
権力者の横暴という閉ざされた闇を切り開いたのは、我が子を殺された母親二人の怒りと執念だった。