2021年12月5日 06:00
89年間ゲイを隠して西成へ カムアウトし見つけた「家族」たち
よう、その従姉妹たちと、お嫁さんごっこをして遊んだ」
初恋は小学生のころだ。
「同級生?あかんあかん(笑)。僕の好きになる男っていうのは、父親がいなかったせいか知らんけどね、年のいった男、年配の男なのよ。若い男と比べて頼りになるし。だから、最初に好きになったのも小学校の先生。男の先生に惹かれるわな。格好ええし、僕にとってもよくしてくれたし」
しかし、当時は「同性愛=病気」と思われていた時代。友人はもちろん、家族にも、誰にも打ち明けることはできなかった。
「言えなかったね、それに言う必要もなかった。ばかにされるの、わかりきっとったから」
その後の満州でも、帰国後の仕事場でも、思いを寄せる男性はいたが、その思いのすべてを心に秘めて過ごしてきた。「恋愛はしたよ。心のなかでは好きになった人はおった。でも、あんまり言うたことないわ。言う値打ち、ないやろ。だから僕はセックスしたことない。童貞や」
無論、独身を通してきた。
恋人はおろか、心を許せる友人を作ることもなかった。仕事を転々と替えた理由の1つも、職場の仲間に嘘で塗り固めた身の上話をすることが、どんどんつらくなるからだ。
「『あんた、そろそろ結婚せな、あかんで』って、かなり年がいくまでは言うてもろうたこともあったけどな。