くらし情報『89年間ゲイを隠して西成へ カムアウトし見つけた「家族」たち』

2021年12月5日 06:00

89年間ゲイを隠して西成へ カムアウトし見つけた「家族」たち

「僕、東京にいっぺんも行ったことない。そんな僕の詩を、谷川俊太郎とか、田村隆一とか、東京におる一番の詩の人たちが認めて褒めてくれた。詩が僕の生きがいになったわけよ」

先述したように、後年には、小説もしたためるようになる長谷さん。うちに秘めた思いを、自分が同性愛者であるということを、ペンネームを使い書き上げる文学のなかでだけは、声を大にして叫ぶことができた。

「そこに僕の理想の世界があったからね。それが僕の生きがいであり、救いであったの。だから、僕は92歳まで生きてこられたんや。家族がなくても、友達がなくても」
語気を強める長谷さんを前にして、それでも記者は素直にうなずけなかった。
それは、長谷さんが書いた私小説のなかに、こんな一文を見つけていたからだ。

《悩みを打ち明けるとキズつくのはあたしの方だったから、いつもあたしはあたしを棄ててきたのだ(中略)だから、あたしの性格は消極的たらざるを得ないのだ。失恋の性格がそうさせるのであたしの性格が弱いためではない。あきらめることを知った人間は強いのだ。耐えることを知った人間は、間違わないのだ……》

自分を解放できる文学の世界と相反して、長谷さんは現実の世界では、分厚い殻にこもり、自分を押し殺して生きてきたように思えた。

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