2024年5月7日 06:00
片目視力失い杖で電車移動、駅で周囲のスピードについていけず…「どなたか席を譲ってくれませんか?」社会とのかかわり方
余命5年の宣告を受けたダースレイダー(写真右)
若くして脳梗塞と糖尿病、腎不全を発症。片目の視力も失い、医師から余命5年の宣告を受けたラッパー・ダースレイダーが、人生をつづった書籍『イル・コミュニケーション ─余命5年のラッパーが病気を哲学する─』(ライフサイエンス出版)を刊行した。「病気とは、生きるとは何か?」を問う内容で、「自分自身について、人生について、社会について、世界について。僕は病気をしていなかったらこんなに考えることはなかっただろう」と振り返る。同書から、電車移動での生活で気づいた社会とのかかわり方についてつづった内容を、一部抜粋して紹介する。
■片目になって社会の視野が広がる
退院してからも大変ではあった。夏真っ盛りの時期で、病院という快適空間から出てみると、歩くのがまだ困難だった。晴れ、雨と天気は変わり、室内、室外で気温が違うといった当たり前の環境に、でこぼこの道、行き交う車や人々がもたらすストレス。
病院がいかに保護された場所だったのかを改めて知ることになる。病院内でのリハビリで「もう大丈夫だ!」と思い込んでいたが、現実の世界はこちらの都合に合わせて優しくはしてくれない。