くらし情報『片目視力失い杖で電車移動、駅で周囲のスピードについていけず…「どなたか席を譲ってくれませんか?」社会とのかかわり方』

2024年5月7日 06:00

片目視力失い杖で電車移動、駅で周囲のスピードについていけず…「どなたか席を譲ってくれませんか?」社会とのかかわり方

その歩調に合わせられないと、すぐに人がやってきてしまう。しかも、左目の視野が遮られているので、油断していると、次々と人にぶつかってしまう。僕は通路の真ん中で軽いパニックになり、慌てて壁際に避難した。そんな僕にはお構いなしに通路の中央を人が怒濤の如く流れていく。

すると、壁際で膝に手をつき、一息ついていて気づいた。実は僕以外にも中央の人の流れの速さについていけずに、壁際をゆっくり歩いている人たちがいたのだ。高齢だったり、怪我をしていたり、あるいは、僕のように病気を持っているのかもしれない。中央の人の流れに飲み込まれないようにしながら、なんとか自分のペースで歩いたり、止まったりしている人たち。
僕は自分が中央の人の流れに合わせて歩いていた時には、こうしたゆっくり歩く人々に全く気づいていなかった。もしかしたら、目の前に現れた時には、邪魔にすら思っていたかもしれない。だが、自分が病気になって、社会の構造の外に出てみて初めて、様々な速度、あり方が同じ空間に存在していたことが分かったのだ。片目になって視野が広がった。

僕は病気になるまでは車を運転していたが、左目の視野を失ってからは、電車移動がメインになった。

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