時代や歴史を映し出す鏡のひとつとされ、さまざまな流行を生み出しているファッション。日々変化を求められる厳しい業界としても知られていますが、新たに誕生したのは、自らのスタイルを貫き続けているデザイナーの姿に迫った話題のドキュメンタリーです。『うつろいの時をまとう』【映画、ときどき私】 vol. 5632005年に、服飾ブランド『matohu』を立ち上げたデザイナーの堀畑裕之と関口真希子。コム デ ギャルソンやヨウジヤマモトでパタンナーとしてキャリアを積んできた彼らは、着物の着心地や着方の自由さから着想を得た“長着”という独自のアイテムを考案していた。2020年1月、matohuは8年間にわたるコレクションをまとめた展覧会「日本の眼」を開催。2010年から2018年までの各シーズンで、日本古来の洗練された美意識を表す言葉をテーマにしたコレクションを発表してきた。激しい議論を繰り返しながら、妥協することなくデザインを完成させていく堀畑と関口。いよいよ、ファッションショーの日を迎えることに…。第41回モントリオール国際芸術映画祭のオフィシャルセレクション作品に選出されるなど、海外でも注目を集めている本作。そこで、見どころについてこちらの方にお話をうかがってきました。三宅流監督これまでにさまざまなドキュメンタリー映画を手がけ、伝統芸能をテーマにコミュニケーションと身体のありようを追求し続けてきた三宅監督。今回は、matohuの魅力やファッション業界の裏にある苦労、そして映画にかける思いなどについて語っていただきました。―matohuのおふたりと出会ったのは、2015年に発表した『躍る旅人−能楽師・津村禮次郎の肖像』の制作時ということですが、最初の印象はいかがでしたか?監督はじめは、驚きが大きかったと思います。能のような伝統的な古典の世界に現代のファッションデザイナーが作った衣装が一緒にスタイリングされることはほとんどありませんから。なので、「こういう人たちがいるんだな」ということと、彼らが創り出す服が能の衣装に負けていない強さに対して純粋な驚きがありました。―そこから映画にしたいと思ったのは、なぜでしょうか。監督最近は、ファッションのドキュメンタリーもけっこう作られていますが、そういう作品は人物にフォーカスしているものが多いように感じていました。ただ、僕としては、彼らのことを知るうえで、まず彼らがどんなことを思考しているのかを紐解きたいなと思いました。そこで、彼らが取り組んでいた「日本の眼」というテーマやホームページなどを調べ始めたところ、たくさんの言葉によって非常に緻密な言語空間が作られていることに気がつきました。そのなかには彼らの思いだけでなく、日本にある古くからの美意識やいま生きている私たちが新たに何をできるかというステートメントも込められていたので、彼らの言語が持つ世界観に関心を抱くようになっていったのです。活字を映像にする過程には、無限の可能性がある―なるほど。確かに、劇中でも印象的な言葉が多く見られました。監督しかも、活字を映像にしていく過程には、無限の可能性もありますからね。いろんなイメージを搔き立てられましたし、それをできるのが映画の魅力でもあるので、そういった部分を見せたいなと思いました。あと、彼らは自分たちをある種の媒体ととらえているところがあるので、彼ら自身を映してはいますが、その先にある大きなものを映画で描きたいと思って作りました。―ただ、実際にカメラを回し始めてからは、いろんな難しさを感じることも多かったとか。監督そもそも僕はファッションとは畑違いのところにいたので、わからないことがたくさんありました。たとえば、陶芸だったら同じ1年でも徐々に1つの作品ができあがっていくので、わかりやすいですよね?でも、ファッションの場合、コレクションごとに同時進行で何着も作っていて、撮影に行くたびに違うことをしているので、点と点が線としてつながらない。そういったこともあって捉えるのが難しかったというか、どういうふうに映画にすればいいのかという答えがすぐには見えませんでした。―そこで何か突破口になったような出来事があったのでしょうか。監督シーズンの制作過程とファッションショー当日の映像だけでも、それなりのものにはなったかもしれません。でも、それではドキュメンタリーとしてしっかりとしたものにできないと感じていたんです。そんなときに彼らの考えが可視化されている展覧会を目の前にして、どうしたらいいかわからなかったことも見えてきたので、そこから再解釈と再構築をしていきました。ファッション業界では、びっくりすることもあった―ちなみに、撮影を進めるなかで、matohuのおふたりから映画に関して要望を受けるようなこともありましたか?監督そういったことは、特にありませんでした。たとえば、本編にもあるちょっとケンカのように論争を繰り広げているシーン。そのときは「撮ってもいいのかな?」と気にしつつも、「目の前で起きている以上は撮ろう」と思って撮影を続けました。途中で行った試写のときに、「あのシーンは見せないでください」と言われるのかなと構えていましたが、彼らにとっては普通のことで、隠すようなことではなかったようです。むしろ、「普段はもっと激しいですよ」と言っていたくらいでした(笑)。―だからこそ、制作過程の臨場感も伝わってきましたが、監督にとって印象に残っているシーンといえば?監督彼らが言葉を構築しているところは、撮れてよかったなと感じた部分です。なかでも手で布を触りながらものづくりをしている最中にもれ出てきた言葉は、インタビューのときに出てくる言葉とは違う手触り感みたいなものがありました。そこは映画でも軸になっているところだと感じています。―今回、ファッション業界に入り込んでみて、驚いたことなどがあれば教えてください。監督コレクションは半年に1回のペースですが、その期間にこんなにもたくさんのことをしないといけないのかと思いました。しかも、あんなに演出やスタイリングにも手間暇かけて作っているのに、披露するファッションショーの時間がたった15分ほど。初めて見たときはあまりにも短くてびっくりしました(笑)。でも、同時にこのなかで全部を表現しなければいけないのは、非常に難しいことだなと。実際、彼らも自分たちの考えを伝えきれないと感じていたようなので、自分たちのやり方でやっていこうと考えたのだと思います。言語化することの大切さを教えてもらった―スピード感や流行を意識しているデザイナーが多いなか、時代に流されることのない服作りを続ける彼らはファッション業界においてどんな存在だと思われましたか?監督これは彼ら自身も言っていることですが、流行やモードに対するある種のアンチテーゼとなっているのではないでしょうか。表面的なものづくりをすることなく、時間をかけて取り組んでいますからね。ただおもしろいのは、じっくりと時間をかけているのにファッションのフォーマットを無視せずに毎シーズン新しいコレクションを出しているところです。そういう姿から「本当のものづくりに大切なものは何か」というのを業界に問いかけているようにも見えました。―監督自身も、同じアーティストとしてインスピレーションを受けた部分もあったのではないかなと。監督ファッションの世界というのは、センスやトレンドのように感覚を中心にものづくりをしているイメージがありましたが、1つ1つ丁寧に言葉にしているのがmatohuの2人。僕は仕事や生活をするうえで、なんとなく流してしまうこともありましたが、彼らを見て言語化することの大事さを改めて知りました。特に、日本だと「背中を見て学べ」とか「技は盗んで覚えろ」みたいに言葉にしないことを美徳とするところがありますよね。でも、そこで言葉にすると立ち止まれたり、見えていなかったものが見えたりするのだと思います。特に、曖昧なところは詰めが甘いところでもあったりするので。そこから逃げずにやっていくことの大切さと、相手に何かを伝えるときに言語化することを怠ってはいけないという気づきを彼らから得ることができました。伝統とは、革新の連続である―確かにそうですね。そして、おふたりの言葉からは日本語の持つ美しさや豊かさも、再認識させられました。監督しかも、彼らの言葉には、重みと軽み(かろみ)がありますよね。重さがあっても、眉間にシワが寄りそうな難しい言葉ではなく、軽やかさもあるので、それも大事だと思っています。これはものづくりにおいても言えることですが、いい作品に説得力や美しさを与えるため悩みは付き物です。ただ、その苦労が前面に見えてしまうと粋ではなくなってしまうので、そういう意味でも、重みと軽みは大切だと感じています。―監督自身も、これまで伝統と向き合うようなものづくりを続けていらっしゃいますが、失われつつある伝統を守る意義についてはどうお考えですか?監督“いかにも伝統”というものは、ちょっと古臭く見えたり、自分とは関係ないものに見えたりすることもあるかもしれません。でも、出演者のひとりがおっしゃっているように、伝統とは革新の連続です。先人たちの考えに敬意を持って触れていけば、結果的には良い形で伝統も魂も守られ、さらに新しいものを作り上げていくことができると考えています。―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。監督言葉を突き詰めているとか、日本の美意識がどうとか言うととっつきにくいと思われてしまうかもしれませんが、決して難しい映画ではありません。matohuの2人も自分たちの発見を多くの人たちとシェアしたいという思いで作っているので、それは知っていただけたらと。あとは、壁のシミを見ても、枯れた落ち葉を見ても美しいと感じるようになるので、日常生活の過ごし方や物の見え方が変わるはずです。映画館を出た帰り道からいままでとは世界が違って見えるようになり、生活も楽しくなると思うので、ぜひご覧ください。驚きと喜びを探す旅に出る!ファッション業界の裏側を垣間見れるだけでなく、ものづくりの真髄にも触れられる本作。目まぐるしい早さのなかで生きていると、いろんなものをつい見落としがちですが、日常に潜む美しさや忘れてはいけない大切なことにも気づかせてくれるはずです。取材、文・志村昌美引き込まれる予告編はこちら!作品情報『うつろいの時をまとう』3月25日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開配給:グループ現代️(C)GROUP GENDAI FILMS CO., LTD.
2023年03月23日「日本の眼」というタイトルを掲げ、8年間で17回のコレクションを発表してきたまとふ(matohu)。今回、この「日本の眼」コレクションの集大成となる「matohu 日本の眼展」を1月8日より、東京・青山のスパイラルガーデンにて開催する。“最新デザインと古来の美意識の融合”によって生み出された「日本の眼」コレクションは、ファッション業界内にとどまらず、国内外で多くの評価を得てきた。本展では、様々な日本の美意識を“日本庭園”に見立てたアートインスタレーションと、それを具現化した服を組み合わせて展示する。会場では、希少な歴代長着のアーカイブスや復刻長着、和綴手製本『日本の眼』(250部限定)といった展覧会限定販売のアイテムに加え、HIGASHIYAとのコラボレーション和菓子も登場。また、まとふデザイナーの堀畑裕之と関口真希子によるトークショーや畑中正人ライブコンサートも開催。会期中イベントに関してはすべて予約必須につき、気になる人は下記のインフォメーション枠を要確認。まとふが手がけた服飾デザインから、日々の生活に気づきと豊かさをもたらすヒントを見つけに行こう。【展覧会情報】matohu 日本の眼展会期:1月8日〜22日会場:スパイラルガーデン(スパイラル1F)住所:東京都港区南青山5-6-23時間:11:00~20:00入場無料会期中イベント■1月11日 14:00 トークイベント matohu 堀畑裕之 & 関口真希子「日本の眼とは何か?」 *定員30名 無料■1月12日・13日 14:00 matohuデザイナーによるギャラリー・ツアー *定員各回15名 無料■1月18日 15:00 畑中正人ライブコンサート 「matohu oto」 *席数30席 無料まとふのショー音楽を作ってきた作曲家 畑中正人氏のライブコンサート■1月19日 13:00 / 14:30 / 16:00 matohu長着茶会 *定員各回12名 参加費4,000円まとふデザイナーがお茶を点て、HIGASHIYAの和菓子職人がその場で作った和菓子をいただく立礼茶会※すべて事前予約が必要。
2020年01月07日まとふ(matohu)は、展覧会「matohu 日本の眼展」を表参道のスパイラルガーデンにて2020年1月8日(水)から22日(水)まで開催する。展覧会「matohu 日本の眼展」は、まとふが8年間を通して発表してきたコレクションの集大成となるアートインスタレーション。会場では、様々な日本の美意識を“日本庭園”に見立てたアートインスタレーションと、それを具現化した服を組み合わせて展示する。さらに、展覧会に際し、希少な歴代長着のアーカイブスや復刻長着を限定販売。また、和綴手製本『日本の眼』やHIGASHIYAとのコラボレーション和菓子、オリジナルテキスタイルによる「日本の眼」ミニトートバッグ&おざぶコレクションなども販売される。会期中は、まとふのデザイナーである堀畑裕之・関口真希子によるトークイベントやギャラリー・ツアーをはじめ、まとふデザイナーが点てたお茶を、HIGASHIYAの和菓子職人がその場で作ってくれた和菓子とともに楽しむ立礼茶会「matohu長着茶会」、まとふのショー音楽を手がけた作曲家・畑中正人のライブコンサートといったイベントも開催。まとふの世界観を様々な面から体感することができそうだ。【詳細】「matohu 日本の眼展」開催期間:2020年1月8日(水)~22日(水) 11:00~20:00場所:スパイラルガーデン(スパイラル1F)住所:東京都港区南青山5-6-23※入場無料■関連イベント・トークイベント「日本の眼とは何か?」まとふ 堀畑裕之 & 関口真希子開催日時:2020年1月11日(土) 14:00 ※定員30名 無料・まとふデザイナーによるギャラリー・ツアー開催日時:1月12日(日)・13日(月・祝) 14:00 ※定員各回15名 無料・畑中正人ライブコンサート 「matohu oto」開催日時:1月18日(土) 15:00 ※席数30席 無料・matohu長着茶会開催日時:1月19日(日) 13:00 / 14:30 / 16:00 ※定員各回12名 参加費4,000円※すべてのイベントは要予約。【イベント予約・問い合わせ先】まとふ 表参道店TEL:03-6805-1597
2019年11月28日まとふ(matohu)が10月13日、東急プラザ銀座6階KIRIKO LOUNGEで2018年春夏コレクションを発表した。matohuが追及する、日本人が培ってきた美を見つける視点「日本の眼」シリーズ、16回目となる今回のテーマは「かざり」。翌日より東急プラザ銀座で始まった「日本の眼・いき」展のオープニングイベントとしてショーを行った。今回のコレクションについて「今まではどちらかというと“わび・さび”といった物静かできれいめな日本を表現してきましたが、今回は、その対極にあるど派手でエネルギッシュな部分、祭りの山車や日光東照宮の装飾に見られる勇壮華麗な日本の美意識をmatohuなりに表現しました」とデザイナーの堀畑裕之氏は語る。「かざり」の言葉の語源が「挿頭(かざし)」、草花を「髪に挿す」ことからくる点に着目し、今回のコレクションのデザインやテキスタイルに落とし込んでいったと堀畑氏が語る通り、ファーストルックから牡丹柄のワンピースが登場し、明るく鮮やかな世界観を提示した。畑中正人氏によるピアノの生演奏とともに、金や銀をポイントで使ったルックや鳥の羽柄が背中全体にプリントされたルック、きらきらと輝く鳥の羽や雲をモチーフにしたイヤリングを身に着けたルック、しめ縄や牡丹の花をモチーフにしたストローハットを被ったルックが次々と登場。型に捕らわれず大胆に色や装飾を楽しむルックの数々からは、matohuの“攻め”の姿勢がうかがえた。今回のコレクションは、バッグや帽子などの小物をオートモードヒラタの石田欧子、京都在住のアーティスト裕人礫翔、アクセサリー作家の播安芸子・長野大洋らとコラボレーションすることで、装飾的で派手な「かざり」世界観を追及することができたという。テキスタイルの制作では、2メートル60センチもある大判の生地に手描きでペイントを行うなど、作業的にもエネルギーを費やしたと、堀畑氏は振り返る。また、matohuは「生活の中で、文化として楽しんで服を着てほしい」との想いから、冊子『Ren』を刊行していくことを発表した。誌面ではイベントの告知やレポート、クリエイターとの対談などを掲載し、matohuの目指す新しいファッションコミュニティーを盛り上げるためのプラットフォームとして制作していくという。「今後はブランド発信でmatohuの活動を伝えて行きたい」とmatohuの2人は語った。
2017年10月18日まとふ(matohu)は、2017年10月14日(土)から10月29日(日)まで、東急プラザ銀座にて展覧会『matohu「日本の眼・いき」展』を開催する。本展は、日本人が古くから培ってきた審美眼「日本の眼」をテーマに、江戸時代の町人文化から生まれた美意識「いき」を現代ファッションの中で再生させる、という意図で開催。まとふの定番アイテム長着のアーカイブコレクションの展示や、長着の試着体験を行い、2017-18年秋冬コレクションの主題でもある「いき」をまとふならではの解釈で可視化させていく。会期中は、「いき」をテーマにしたデザイナーのトークイベントや、秋冬コレクションアイテムの期間限定ストアも開催され、まとふの表現する多様なクリエイションに触れることができる。また、毎年秋に開催される「銀座茶会」に合わせて、国宝待庵の古材の箱で組まれたまとふの茶箱の展示も行われる。会場に併設する数奇屋橋茶房では、「いき」をイメージソースにしたコラボレーションメニュー「いきな縞カフェ・オ・レ×安納芋フレーバー」を期間限定で発売する。「OBSCURA COFFEE ROASTERS」の、しっかりとした苦みが特徴的なオリジナルブレンドを使用したカフェオレに、安納芋の甘さを加えた秋らしいホットドリンク。ブルーの縞模様が見た目にも美しいドリンクに仕上がっている。【詳細】matohu「日本の眼・いき」展会期:2017年10月14日(土)~10月29日(日)時間:11:00~23:00 ※日・祝は21:00まで場所:東急プラザ銀座 6F KIRIKOLOUNGE住所:東京都中央区銀座5丁目2・デザイナートーク日時:2017年10月15日(日) 15:00~・期間限定ストア日時:2017年10月14日(土)~10月22日(日) 11:00~20:00■コラボレーションメニュー詳細いきな縞カフェ・オ・レ×安納芋フレーバー 800円(税込)※展覧会会場併設の数奇屋橋茶房にて販売【問い合わせ先】matohu表参道本店TEL:03-6805-1597
2017年10月09日まとふ(matohu)がAmazon Fashion Week TOKYO 2017 A/W期間中の3月21日、東京、港区の増上寺で2017-18年秋冬コレクションを発表した。日本の美意識を現代の目線で取り上げる「日本の眼」シリーズ、15回目を迎えるmatohuが今回取り上げたテーマは「いき」。高層ビルの中にそびえ立つ東京タワーと、400年以上前に建てられた朱色の三門が同居する景色に魅了され、デザイナーたっての希望で増上寺でのランウェイが実現したという。当日はあいにくの雨のため、予定していた増上寺敷地内の野外から、屋根のある通路へと変更され、“現代と過去が交差するような場所”というロケーションを活かしきることが叶わなかったが、matohuの2人が伝えたかった「いき」の世界観は十分に感じられた。matohuが表現した「いき」について、デザイナーの堀畑裕之氏は次のように語る。「今回は、ファッションのスタイルについて考える以前に、かっこいい生き方とはどんなものかを問い直すところから始めました。“いき”は他の言葉に言い換えられない、日本独自の言葉です。垢抜けていること、意気地があること、色気があることの3つを柱にして、服作りとスタイリングに取り組みました」。「いき」を象徴するテキスタイルとして縞(ストライプ)をあげ、「特殊な織り方で、同じ幅ではなく細くなって消えたり、時に交わったりするように織り上げ、“出会いと別れ”を表現しました」と語る。この他、雪深い竹林に伸びた青竹をモチーフにしたジャカード織りの縞柄、新潟県の五泉(ごせん)に伝わる絹の着物地に草の縞柄を使用し、素材開発にも取り組んだようだ。また「裏まさり」と呼ばれる、江戸時代に起源を持つ外から見えない内側に色を使うデザインや、レザーアイテムを取り入れることで色気を感じさせるよう工夫したという。紫や青など渋めの色彩を基調とした、ゆったりとしたラインのデザインが多かったが、どれも凛とした佇まいで、きりりと「生き」る姿勢が伺えるコレクションだった。あと数回で完結するという「日本の眼」シリーズ。伝統を掘り起こし、自分たちのスタイルで捉え直していくmatohu(堀畑裕之、関口真希子)の試みは、ますます鋭くなり、まるで1本の道を成しているような迫力を感じさせた。
2017年03月30日まとふ(matohu)表参道本店にて2月25日から3月5日まで、岩手にアトリエを構える工芸作家、コシェル2(ドゥ)の古い郷土玩具コレクションからまとふのデザイナーがセレクトした貴重な日本の古民芸人形展を開催する。春夏コレクションでは、平安時代まで“可愛らしい”、“愛しい”という意味で使われていた“うつくし”という言葉をテーマにしたアイテムを展開するまとふ。今回開催される古民芸人形展では、そんな春夏コレクションのアイテムとともに、同じく“うつくし”をテーマに厳選された日本各地の郷土玩具が展示される。また、コシェル2によるユーモアたっぷりの表情の起き上がり小法師や、鳥や猫などの自由な造形に和紙と漆を重ねて製作した立体的なバッグなども販売される予定だ。【展覧会情報】「うつくし」愛らしい古民芸人形展- コシェル2 コレクションより -会場:matohu表参道本店住所:東京都渋谷区神宮前5-9-25会期:2月25日~3月5日時間:11:00~20:00入場無料
2017年02月20日まとふ(matohu)が2011年に開催し好評を博した「慶長の美」展が、1月14日から2月5日まで静岡県にあるCCCギャラリーにて開催される。まとふは、2005年から5年間・10シーズンを通して、桃山時代後期から江戸時代初期を指す慶長年間(1596年から1615年)に生まれた美術や工芸などをインスピレーション源にファッションデザインに落とし込む挑戦をしてきた。同展では、毎シーズンのテーマが一番色濃く反映されている着物でも洋服でもない、まとふオリジナルの「長着(ながぎ)」を展示。各シーズンのテーマとなった歴史や美術工芸とともに紹介される。最新のファッションの現場に、いかに日本の文化が刺激を与えているかを再確認できる機会となっている。また、各シーズンのテーマが解説された5年分の案内状をつなげた10mにも及ぶ「慶長の美の絵巻物」プロジェクトもあわせて展示される。 なお、会場近くの三保原屋ロフト(静岡県葵区両替町2-4-1)では、1月14日から24日までポップアップショップがオープンする。1月15日の14時から15時には、まとふデザイナーによるトークイベントも開催される。【イベント情報】「慶長の美」展会場:CCCギャラリー住所: 静岡県静岡市葵区七間町15-1会期:1月14日~2月5日時間:10:00~21:00入場無料休館日:月曜日
2017年01月14日まとふ(matohu)は、「慶長の美」展を2017年1月14日(土)から2月5日(日)まで、静岡・静岡市文化・クリエイティブ産業振興センターにて開催する。入場は無料だ。2011年に開催され好評を博した「慶長の美」展が、装いも新たに静岡へ。2005年から5年間10シーズンに渡り、「慶長」時代の美術・工芸をインスピレーションにデザインした「慶長の美」コレクション。そのコレクショを、美術や工芸品、もの作りのプロセスとともに紹介する。初日にはデザイナーによるトークイベントも実施。「歴史と対話するデザイン」をテーマに、動画やスライドを用いてmatohuのクリエーションについて語らう。また三保原屋ロフトでは、期間限定ショップも1月14日(土)よりオープンする。【イベント詳細】matohu(まとふ)「慶長の美」展開催期間:2017年1月14日(土)~2月5日(日)※月曜休館。時間:10:00~21:00会場:CCC(静岡市文化・クリエイティブ産業振興センター)住所: 静岡県静岡市葵区七間町15-1入場料:無料■オープニングトーク開催日時:2017年1月14日(土) 14:00~15:30(開場13:30)会場:CCC2階多目的ルーム■期間限定ショップ開催期間:2017年1月14日(土)~1月24日(火)会場:三保原屋ロフト住所:静岡県葵区両替町2-4-1TEL:054-251-1771 営業時間:11:00~19:30
2017年01月14日まとふ(matohu)がAmazon Fashion Week TOKYO 2017 S/S期間中の10月18日、スパイラルホールで2017年春夏コレクションを発表した。プレーンな照明に照らされ、白く浮かび上がったステージ。鈴のような鉄琴の音が響き渡る中、モデルが現れショーはスタートした。今回のコレクションのテーマは「うつくし」。古代の日本語で「うつくし」は美しいという意味ではなく、愛らしい、キュート、かわいいといったことを表す言葉だったという。「民藝の人形や器などかわいいものを集めるのが大好きなのですが、そういうものは、心がほぐれて優しい気持ちになりますし、人の心を慰める伴侶としてずっと存在してきたと思うのです。今回のコレクションの服も、ディティールを含めて着る人や見た人の心が和らぎ、優しい気持ちになったらいいなという願いを込めて作りました」とデザイナーの堀畑裕之氏は語る。ジャカード織のニットには、“小さきひと”の子どもの姿や、千鳥、つばめなどの柄が織り込まれ、その他にもピーナッツ柄の刺繍やドレープ、レース、タックを使い、繊細で女性らしいイメージを盛り込んだスタイルで「うつくし」を表現。藤色、山吹色、深藍色など日本の伝統色をベースに、織りやディテールで遊び心を取り入れたという。また、あえて自然なゆがみが残る仕上がりにした麦わら帽子、津軽の民芸品、下川原焼きの土人形からヒントを得た鳩のブローチなど、手の温もりが感じられる小物使いも印象的だった。ランウェイを歩むモデルの姿から目を凝らしてそれらを見つけた時、思わずこちらの顔がほころぶ。素朴で控えめな中に愛らしさをたたえているのだ。今後の展開については「『日本の目シリーズ』はあと数回で完結しようと思っています。侘び寂から今回のようなかわいらしいものまで、日本の伝統的な考え方のエッセンスを自分たちなりに消化し、現代に合う形でデザインの中に落とし込む服作りをしてきました。古いものを古いまま受け取るのではなく、新しいものに変えて行くことが大切だと思います」と回答。ブランド名の“まとふ”は、服を“纏う”と、成熟を“待とう”という意味を持つという。日本の言葉と文化に丁寧な眼差しを向け、新しい感覚を紡ぐmatohu(堀畑裕之、関口真希子)の活動に、これからも注目していきたい。
2016年11月22日matohu表参道本店5周年を記念して同店では7月23日から31日まで、ゲストアーティストイベント「立原位貫 ―木版画で日本の美に触れる」展が開催される。立原位貫は、浮世絵版画の技法を独学で習得し、江戸時代に使われた紙や絵具や道具についての研究を重ね、本当の復刻、復元を行ってきた唯一の作家。夢枕獏や江國香織などの著作ともコラボレートしており、その挿画も手掛けてきた。14年にはmatohuのデザイナーである堀畑裕之と関口真希子と出会い、深い魂の交流を続けてきたが、昨年matohuでの展覧会の直前に急な病に倒れ急逝した。同展では、立原位貫の生前の意志を継ぎ、その画業の一端を紹介。日本の美意識に満ちた本物の木版画の世界をじっくり体験できる機会となっている。【イベント情報】「立原位貫 ―木版画で日本の美に触れる」展会場:matohu表参道本店住所:東京都渋谷区神宮前5-9-25会期:7月23日~31日時間:11:00~20:00
2016年07月19日まとふ(matohu)表参道本店5周年を記念して、ゲストアーティストイベント「立原位貫(たちはらいぬき) ―木版画で日本の美に触れる」展が2016年7月23日(土)から31日(日)まで開催される。立原位貫は、浮世絵版画の技法を独学で習得し、江戸時代に使われた紙や絵具や道具についての研究を重ね、本当の復刻・復元を行ってきた作家だ。またオリジナルの創作版画では、詩情あふれる世界を作り上げ、夢枕獏や江國香織などの著作挿画も手掛けたことでも知られている。まとふのデザイナー、堀畑裕之と関口真希子とは2014年に出会い、交流を続けて来た。今回の展覧会は、彼の生前の意志を継ぎ、その画業の一端を紹介するものだ。花々をモチーフにした作品などが展示され、日本の美意識に満ちた本物の木版画の世界を体験できる。【詳細】matohu表参道本店5周年記念「立原位貫 ―木版画で日本の美に触れる」開催期間:2016年7月23日(土)〜31日(日)時間:11:00〜20:00場所:matohu表参道本店住所:東京都渋谷区神宮前5-9-25TEL:03-6805-1597
2016年06月25日2013年春夏コレクション matohu のショウがラフォーレミュージアム六本木で行われた。今回のテーマは「見立て」。日本独特の美意識と言われているものを観る面白さと美の解釈。いつも和文化を色濃く表現するmatohu。来春夏はよりモダンに西洋のプレタっぽい美しさ、成熟さを感じられる服が多く登場。直線のライン、ジオメトリック、メンズ仕立てのコートドレスmatohu 流の「見立て」の世界が展開されていた。 ・ショウのレポートをもっと見る
2012年10月18日matohu(まとふ)は、2013春夏コレクションをラフォーレ六本木にて発表した。デザイナーは、堀畑裕之と関口真希子。2013年春夏コレクションのコンセプトの「見立て」とは、美意識をもとに、全く違う使い方で新鮮な価値を生み出すという意味があり、もとは日本の詩歌の比喩から発展したものだが、普遍的に行われてきた想像力の産物であり、日本独自の美意識でもある。繭のような黒と白のヘッドピースで頭を覆ったモデル達が着ていたカラーは、イエローやホワイトなどの優しさや温かみを感じられるカラーと同時に、ネイビーやグレーなどのダークカラーも登場。同じカラーパレットの中でも、それぞれの色の中のトーンをずらして服と服を組み合わせ、グラデーションのように感じるスタイリングが印象的だ。水玉やボーダー、レースを使ったアイテムに、ワンピースの丈、ドレープのきいたアウターなど、シルエットにこだわったスタイルを魅せた。さらに服に合わせた大ぶりなアクセサリーでインパクトを与え、遊び心を感じさせられる。Photo:Mari Mitsuoka元の記事を読む
2012年10月17日