鎌倉駅ホームで新宿方面に向かう電車待ちをしていると、ニューカマクラホテルに並ぶ通りの2階の窓から見える人影が気になっていました。訪ねたのは、地元では裏駅と呼ばれる西口から2分ほどの、お茶とご飯の店「sahan(サハン)」です。ひかえめな看板がついたドアを開け、階段をのぼると、窓からは鎌倉駅のホームが見え、光がたっぷり差し込む、清潔で開放感がある空間がありました。店名のsahanは、“日常茶飯事”のお茶とご飯の“茶飯”から。「日常のごくありふれたこと、普通のことを大切にしたい」という、店主の高階美佳子さんの思いが込められています。 ホールのテーブルが8席、窓側のカウンターが8席。店に入ったら、まずキッチンカウンターで注文を済ませ、番号札を受け取り、用意ができて呼ばれたら自分でとりにいくセルフスタイルです。 sahanの看板の定食は、月替わりで、隔週ごとにパンとごはんが入れ替わる一汁三菜です。高階さんは、「普段でも食べられるようなおうちご飯ですよ」と笑っていらっしゃいましたが、旬の鎌倉野菜を中心に乾物なども取り入れた献立は、栄養バランスが取れた、心も体も満たされる内容です。 この日は、ごはんの定食でした。内容は、春菊と切干しのおひたし、春野菜の豚しゃぶ、麻婆大根にご飯、味噌汁です。 やわらかくてみずみずしい春キャベツ、菜の花、アスパラ、スナップエンドウなどの春野菜をたっぷり使った豚しゃぶは、さっぱり。盛り付けた器は伊藤環さんのもので、料理と器のバランスにも気を配っている高階さんのさりげない美学が感じられます。麻婆大根の大根はとろけるよう。ひとつひとつが丁寧に作られたのがわかるやさしい味わいで、どの料理もとてもおいしい。 窓からの景色を眺めながらの食事はひとりでも退屈しません。高階さんのかもし出すやさしい雰囲気とゆるく流れるsahanの時間はあまりにも心地よくて、いつのまにか鎌倉の住人になったような錯覚を覚えるほどでした。 sahan鎌倉市御成町13-38 萩原ビル2F11:30~21:00水・木定休URL: Instagram:
2017年04月15日