前回は、目標を立てる前にやっておきたい1年の振り返りについて、しつもんメンタルトレーナーの藤代圭一さんに話を伺いました。今回は本題である目標の立て方についてのポイントをレクチャーしていただきます。(目標はノルマではないのです。楽しみややる気を生み出す目標を考えましょう)<<今年の目標を立てよう!の前に。知っておきたい「成長につながる目標」を立てるために"やるべきこと"■目標はノルマではない。「○○したい」を大事にして「まずはこの1年をどんな年にしたいのか。"したい"の部分を引き出してあげたいですね」藤代さんは、目標を立てる上で子どもたちの望みや願いを引き出す機会が大事だと言います。目標はともすれば"しなければいけない"という、ノルマになりがちですが、強制を求めるのではなく、やりたいという想いを大事にすることが重要なのです。「たとえば海外旅行をイメージしてください。旅行に行くのに、これをしなくちゃいけない、という考えは出てこないでしょう。『これをやらなくてはいけない』とノルマを設けてしまうと、旅行が楽しくなくなってしまいます。それと同じで、自分がしたいこと、どうなりたいかを求めることが楽しみややる気を生み出すのです。小学生ならなおさら、"しなくてはいけない"ではなく、"やりたい"という願望を目標にしたいですね」そのうえで、藤代さんはふたつの視点を持つことが大事だと指摘します。それは「結果の目標」と「成長の目標」です。「例えば、優勝したいといった結果の目標ももちろん大事ですが、上手くなりたいや、ここを伸ばしていきたいというような、成長の目標も引き出して行きましょう。結果の目標だけだと、振り返る際に、どうしても達成できなかったというネガティブなものになりがちです。でも成長に目を向ければ、結果には到達できなかったけど、『この部分は取り組めていたよね』とか、『ここは成長できたね』といったように、ポジティブな部分も振り返ることができるのです」■どんな目標を立てたらいいのか分からない時は...では、目標を立てる際に、どの程度のスケールで考えればいいのでしょうか。なりたいという願望を持つことは大事ですが、例えば県大会でも勝てないチームの子どもが、全国大会で優勝したいという目標を持つのは、悪いことなのでしょうか。「小学生くらいだと、目標と夢の区別をつけるのは難しいことかもしれません。ただ、スポーツ心理学的には、頑張れば実現できそうなこと、100~120%の力を出せば実現できそうなことを、目標に設定すると良いとされていますね」ただし、と藤代さんは言葉を続けます。「それは大人が知っていればいいことで、子どもが全国大会で優勝したいと言っている目標を、否定する必要はありません。もし、そういう目標が出てきたら、そのために何が必要かなとか、これからの行動をどうすればいいのか、という成長の部分にフォーカスしてあげることが大事になってきます」逆に目標を小さく見積もる子どももいるはずです。簡単にクリアできそうな目標を立てた場合には、どう対応するのがいいのでしょうか。「そういう子に対しては、できそうなことをクリアして成功体験を与えるという考え方を持つのがいいでしょう。100%の力でできることに対して、実現できた楽しさや誇りを感じられるようなかかわり方ができれば、また次の目標を立て、そこを目指して進んでいくことができるはずです」一方で、目標を立てられない子もいるかもしれません。これまでにそういう機会がなかった場合には、目標を立てることさえ難しいことも十分に考えられます。「その場合には、最初に『この1年が終わった時にどうなっていたら最高だと思う?』と、問いかけてみるのがいいかもしれません。サッカーだけじゃなく、勉強、社会とのつながり、家族のこと、なんでもいいので、1年後の最高の自分をイメージする機会をつくってみましょう。そしてその答えを引き出したら、今度は『どうすれば、それが実現できるかな?』と問いかけてみてください。それが成長の部分の目標になるのです。なかには、それでも目標が立てられない子もいます。そういう場合には『目の前のことに全力で取り組む』という考え方を持ち合わせたいものです。川崎フロンターレの中村憲剛選手もそういったタイプだったそうです。目の前のことを一生懸命取り組むなかで今の地位を築いていった。人は大きく分けて山登り型と川下り型のふたつのタイプに分かれるのですが、憲剛選手のようなタイプは川下り型に分類されます。流れに身を任せ、目の前のことを一生懸命に取り組んでいく。目標を立てられないやつはダメだという考え方だと子どもの負担になるので、そういう子にはそういう子なりの接し方が求められてきます」■できなかった理由を他者に求めない。「自分ごと」で振り返ると成長の道筋が見えてくる(サカイクキャンプでも、失敗したら原因を考えて何度もチャレンジする力を養う指導をしています)そして大事なことは、「目標」と「振り返り」をワンセットとして考えることです。目標を定め、それに対してどうだったかを振り返る。これは1年というスパンである必要はなく、1か月、あるいは1週間という期間で繰り返していくことで、選手としてだけでなく人間形成の部分にも役立ちます。ここでポイントとなるのは、自分自身のこととして考えることです。なぜできなかったのか。それを人のせいにはせず、自分のことにフィードバックすることが重要となるのです。「たとえばGKの子がミスをして試合に負けてしまい、自分の立てた目標が達成できなかったとします。そこで、振り返りの際に、『あいつがミスをしたから』という考え方では成長にはつながりません。『僕がシュートチャンスで外してしまったから、もっと練習しよう』というように、自分のこととしてフィードバックができるようになると成長につながりますよね」人は得てして、結果を出せなかったときに、人のせいにしがちです。それは子どもだけでなく、大人の世界にも当てはまるでしょう。結果が出なかったときには様々な問題があるはずです。その原因を外には求めず、自分にできることが他にあったのではないかと考える。そういう考え方を培うことが、何よりも大切なことなのです。「失敗があるから次に行ける。そういう考え方が習慣になっていれば、失敗も苦にはなりません。それを習慣化するには、立ち止まり、振り返る機会が重要になります。責任を他人に押し付けるのではなく、自分のこととして振り返り、なにが足りなかったのかを考える。その繰り返しがサッカーだけではなく、人として豊かな人物に近づくはずです」毎日のプレーの振り返りはサッカーノートを使って行うことができます。例えば、お子さんがノートにうまくいったことは「パス」「シュート」だけと書いたとしたら、親御さんは「どんなパスがうまくいったと思った?」「どんなシュートがうまくいったと思った?」と、具体的にかけるように「問いかけ」だけ書きましょう。そうすると次回は子どもの中に「あ、そうだった具体的に書こう」と行動が生まれます。抽象的な答えを「×」とするのではなく、そこにコーチや親御さんが「問いかけ」をすることによって、子どもの思考を深める関わりがおすすめです。お父さんお母さんもお子さんと一緒に2021年にやってみたい事、達成したいことなど、どんな小さなことでもいいので一緒に目標を立ててみるのも良いのではないでしょうか。目標を立て、振り返る。その作業の繰り返しが、子どもの成長を促す大事なルーティーンになるのです。そのためにも、まずは年の初めに、子ども達と一緒に、「目標を立てる」時間を設けてみてはいかがでしょうか。<<前編:今年の目標を立てよう!の前に。知っておきたい「成長につながる目標」を立てるために"やるべきこと"藤代圭一/スポーツメンタルコーチ1984年、名古屋生まれ。東京都町田で育つ。スポーツスクールのコーチとして活動後、教えるのではなく問いかけることで子どものやる気を引き出し、考える力を育む「しつもんメンタルトレーニング」を考案。全国優勝を目指す様々な年代のチームから地域で1勝を目指すチームまでスポーツジャンルを問わずメンタルコーチを務める。全国各地でワークショップを開催し、スポーツ指導者、保護者、教育関係者から「子どもたちが変わった」と高い評価を得ている。2016年からは「1人でも多くの子どもたち・選手が、その子らしく輝く世の中を目指して」というビジョンを掲げ、全国にインストラクターを養成している。著書に「子どものやる気を引き出す7つのしつもん」(旬報社)などがある。(取材・文:原山裕平)
2020年12月27日一年の計は元旦にあり――。新年のスタートという節目は、新しい目標や計画を立てるのに最適の機会と言えます。ただ、単に目標を立てればいいというわけではありません。なかなか目標を立てられない子どもたちもいるのではないでしょうか。目標を定め、やる気を引き出し、それに向かって努力を続けていくにはどのようにすればいいのでしょうか。しつもんメンタルトレーナーの藤代圭一さんに話を伺いました。(新年になると「今年の目標を立てよう」と張り切りますが、その前にやるべき重要なことが...)後編:目標=ノルマではない!自信につながり、最高の結果を生み出す「目標の立て方」>>■目標を立てる前にやるべきこと藤代さんは目標を立てる前に、まずは1年を振り返ることが大事だと言います。「この1年を振り返ってどうだったのか。サッカー以外のことも含めて、印象に残ったことや、感じたことをまずは子どもたちに聞きたいですね。本来は目標設定と振り返りはセットですので、1年に1回ではなく、日常的に振り返るのがベストです。ですが、年末年始のゆっくりできるタイミングで、僕ら大人(保護者や指導者)が子どもたちに、『この1年はどうだった?』と問いかけてみましょう」振り返りの際に気を付けたいのは、反省会にならないこと。ダメだったことだけではなく、上手くいったことを引き出してあげることが重要になります。「この1年どうだった?と聞くと、多くの子ども達は条件反射的に反省会をし始めるんです。反省会は「善し悪しを振り返ること」が本来の目的ですが、これができなかったとか、あれができなかったとか、欠点探しがはじまってしまいます。ですので、上手くいってないことばかりを子どもたちが話し始めたら、『なにができた?』とか、『どんな発見があった?』など、ポジティブな要素も振り返りができるような質問をしてみましょう。この1年が自分にとって価値あるものだったと感じ、新しい年も頑張ろうという気持ちになることが、振り返りの最初の一歩と言えますね」振り返る時に役に立ち、僕も実践しているのは「ToDoリスト」ならぬ「To Feelリスト」です。これは予防医学研究者の石川善樹先生が提唱しているもので、豊かな人間として生きるために、感情の振り返りを行なうというものです。■「やらなければ」という発想を手放す藤代さんは次のように説明します。「ToDoリストは、これをやらなくてはいけないという発想で書くことが多い。そうすると息苦しさを感じてしまう人もいると思うんです。リストを作ったけど、実際にできていないから、自分を認めてあげられない。そうなると、ストレスがたまりますよね。でも、To Feelリストはポジティブな感情も、ネガティブな感情も含め、自分がどんな感情を味わったかを知ることが大事なこと。それを確認することで、今後に役立てることができるのです」ハーバード大学の意思決定センター(Harvard Decision Science Lab)の研究によれば、人間にはポジティブ、ネガティブを合わせ、次のような12個の感情があるそうです。<ポジティブな感情>「幸せ」「誇り」「安心」「感謝」「希望」「驚き」<ネガティブな感情>「怒り」「イライラ」「悲しみ」「恥じ」「罪」「不安(恐怖)」この12の感情を去年、どれだけ味わったのかを思い返してみましょう。あまり感じたことのない感情があったとすれば、今年はそれを味わうような行動を起こしてみることで人としての幅や深みを広げることができます。例えば藤代さんの場合は「恥」を感じる機会が少なかったそうです。「つまり、恥をかくような場所に行っていない。安心できる場所ばかりに身を置いて、チャレンジしていないなと気付かされました。ですので、いつも自分が行かない場所に行って、恥をかきたいなと思いました。人間として豊かになるためには、ポジティブだけでなく、ネガティブな感情も味わったほうがいいと思っているのです。ひとつの感情をシャットダウンすると他の感情も感じづらくなってしまう。怒ることを止めれば、喜ぶことや感謝の想いも減ってくるんです」そうした感情の振り返りだけではなく、いろんな視点で1年を振り返ることが大事だと藤代さんは言います。「サッカーのことはもちろん、学校のこと、社会とのつながり、お金の使い方、おじいちゃん、おばあちゃんとの関わり方など、様々なシーンを思い返しながら、自分自身の成長を感じられる振り返りができたらいいかなと思います」■成果だけでなく、成長の過程を評価する振り返りを(結果だけでなく、努力の内容など過程に目を向けましょう)その際のポイントとして、親は聞くだけではなく、自分の体験談も話してあげること。「私はこうだったけど、あなたはどうだった?というように、一緒になって話すことで、子どもも積極的に、振り返りたくなるはずです」もう一つ気を付けたいのは、結果だけを振り返るのではなく、成長の部分にも目を向けることです。「これは、目標設定の部分にもつながるのですが、多くの人は結果ばかりを目標に設定し、成長の部分をあまり考えない傾向にあります。全国大会に勝ちたい、テストでいい点を取りたい、というのは結果であり、そのための努力や成長の部分を目標にはしませんよね。振り返りもそうで、勝った、負けたという結果にばかり目を向けがち。でも、それだけでは苦しくなってしまうし、欠点探しの反省会につながりやすくなってしまいます。でも、たとえ結果が出なくても、そこへ向けた努力する過程で、できることが増えた、上達できた、ということは必ずあるはず。その成長の部分についての振り返りができると、次へのやる気と行動につながると思います」そうやって1年を振り返ることで、新しい年に向けて、目標を立てやすくなると藤代さんは言います。次回は、目標を立てる際に引き出したいポイントを、藤代さんに解説していただきます。後編:目標=ノルマではない!自信につながり、最高の結果を生み出す「目標の立て方」>>藤代圭一/スポーツメンタルコーチ1984年、名古屋生まれ。東京都町田で育つ。スポーツスクールのコーチとして活動後、教えるのではなく問いかけることで子どものやる気を引き出し、考える力を育む「しつもんメンタルトレーニング」を考案。全国優勝を目指す様々な年代のチームから地域で1勝を目指すチームまでスポーツジャンルを問わずメンタルコーチを務める。全国各地でワークショップを開催し、スポーツ指導者、保護者、教育関係者から「子どもたちが変わった」と高い評価を得ている。2016年からは「1人でも多くの子どもたち・選手が、その子らしく輝く世の中を目指して」というビジョンを掲げ、全国にインストラクターを養成している。著書に「子どものやる気を引き出す7つのしつもん」(旬報社)などがある。(取材・文:原山裕平)
2020年12月26日今年ももうすぐ終わりですね。今週末から冬期休暇に入られる方もいらっしゃるのではないでしょうか。今年はコロナ渦ということもあり、帰省や当初予定していたことを取りやめてご自宅でゆっくりされる方も多いかもしれませんね。そんな時間に、お子さんのサッカーに関連する記事をじっくり読んでみませんか。ジュニアサッカー(少年サッカー)の保護者向け情報サイト「サカイク」で2020年に配信した全記事の中でみなさんの注目度が高かった記事をランキングでご紹介します。2020年に一番読まれたのは、小学生年代にも本格適用されることになった「新ルール」のほかに「判断力」や「運動能力」など保護者の皆さんの関心が高い記事がランクイン。ぜひいま一度ご覧ください。第5位育成の名門、三菱養和サッカークラブに聞いたサッカー上達につながる「判断力」の身につけさせ方お子さんに身につけてほしいスキルは?と聞くと必ず挙がる「判断力」。ですが、どうやって身につけさせればいいのかが分からないという声も。育成の名門、三菱養和サッカースクールの統括責任者を務める秋庭武彦さんに、子どもに判断力をつけさせるためにどうすればいいかをお伺いしました。記事を読む>>第4位「うちの子運動神経が悪くて」と悩む親必見!「サッカー以前」に必要な運動スキルとは運動ができる子と苦手な子の違いはなに?運動苦手なのは遺伝だからしょうがないの?外遊びや自然の中で遊ぶなど、身体を自在に使って遊ぶ機会が少なくなっていることもあり、いまの子どもたちはサッカーをするための基礎的な運動体験から得られる体力運動能力が低いのだとか。いわきスポーツクラブアカデミーアドバイザーでドームアスリートハウスアスレティックアカデミーアドバイザーの小俣よしのぶさんに、家庭でできる身体機能を整える運動などを教えていただきました。記事を読む>>第3位高校サッカー選手権優勝の静岡学園が、部員が多く1日2時間半程度しか練習できないからこそ身につけたタイムマネジメント術子どもの年齢が上がってくると関心が高くなることの一つが、時間管理です。勉強にサッカーに趣味に、上手く時間を使って欲しいと思う保護者の方は多いもの。強豪校のサッカー選手がどんなタイムマネジメントをしているのか知りたいという声もたくさん聞かれます。部員数が多いのにグラウンドが少ない。練習時間が限られるなか上手くやりくりして近年は現役東大生も生んだ静岡学園のタイムマネジメント術をご紹介。記事を読む>>第2位相手をつかんでまで止める、競り合いで負けると「死ね」と暴言を吐く子、どう指導すればいい?負けん気が強いのは良いけど、「負けたくない」という気持ちが強すぎて良くない方向に向かっている。試合中興奮すると相手をつかんでまで止める、競り合いで負けた時相手に「死ね」など暴言を吐いてしまう子をどう指導したらいい?というコーチからのお悩みです。熱くなりすぎたり暴言は良くないですよね。どのように指導したらいいのか、池上正さんがアドバイスを送ります。記事を読む>>第1位新年度から8人制にも本格適用! 新ルールをおさらいしよう!! <前編>小学生年代にも本格適用されている新ルールは、これまでとどこが変わったのか。ハンドやゴールキック、交代の位置など、大きく変わったポイントを紹介します。これまで「審判は石と思え」と言われ、審判員にボールが当たってもプレーは続行されていましたが、これからはドロップボールとなるのです。ルールの変更点を今のうちに勉強しておきましょう。記事を読む>>■おしくもランク外だった記事昌平高校を全国レベルに引き上げた藤島崇之監督が行う技術と思考力ある選手育成の裏にある「組織」の存在10数年前までは全国的に無名だった昌平高校を今や全国レベルの強豪校に躍進させた藤島崇之監督。短期間での飛躍的成長の背景には何があったのでしょうか。昌平高校に選手を送る育成組織の存在、選手のケガが劇的に減った理由などをお話しいただきました。記事を読む>>コーチに隠れて仲間が「キモい」と言ってくる問題「きもい」「おまえは消えろ」とコーチがいない時に言ってくるチームメイト。「言い返せ」と言っているが相手は口が達者で「口では勝てない」という。中学に行っても同じチームなので同じようなことが続くのでは、という心配と、もう6年生なので自分で解決しないといけない年齢だなぁという感情で揺れているお母さんからご相談をいただきました。皆さんならお子さんがそのような状況にあったらどうされますか?いじめ、暴言などに悩んでいたり、心配している親御さんもいるかと思います。ぜひご覧になってみて下さい。記事を読む>>◇◇◇◇◇◇◇◇◇これからも様々な情報を配信していきますので、2021年もよろしくお願いいたします。2019年の人気記事ランキングはこちら>>
2020年12月24日飛び級している小3の息子。一人しかいない6年生の引退試合直前にケガ。痛みを押して試合に出て、6年生にパスを出そうと頑張ったけどどうしても足を引きずってしまい力が発揮できず。試合後そのこの親が息子に直接「足を引きずるな!」と怒鳴っていて......。どうして欲しいのか聞くと、うちの子からパスをもらってシュートを決めたい。でも足を引きずるぐらいなら試合に出るなと矛盾した回答。飛び級している息子にいい感情を持っていない上級生の親もいるし、保護者のマウンティングなんかにもうんざり。もはや試合辞退したい。どうすれば?とのご相談です。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとにアドバイスを授けますので参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<他の子が成長しないため上の学年でプレーできない。息子を伸ばしてくれないチームをやめたい問題<サッカーママからのご相談>うちのチームは6年生が一人しかいません。息子は6年生最後の試合の一週間前にケガをしてしまい、本当はケガが治るまで休ませるべきなのですが、3年生なのに抜擢してもらっているので頑張りたいという気持ちもあり、その試合に出ました。引退試合となる6年生の為に良いラストパスを出したい、という気持ちで頑張る息子でしたが、ケガが完治しておらずどうしても時おり足を引きずってしまったりパフォーマンスが発揮できず、結局1戦目は試合には勝てませんでした。試合後、その6年生の保護者から、「コートの中で足引きずらないで」「息子はこの試合にかけてるの」と言われました。息子にも直接「足を引きずるな!」と怒鳴り、それ以外にも「疲れてくると、足引きずるよね甘ったれてる」とか「痛いふりして逃げてる」などとも言われました。その方にどうしたいのかと聞くと、うちの子からパスをもらってシュートを決めたいと。でも足を引きずるな、足を引きずるぐらいなら試合に出てほしくない、とかなり矛盾した回答をされました。私としては、痛みがあるし足を引きずらないという約束は難しいと伝えたのですが、わが子の有終の美を飾る試合で周囲が完璧におぜん立てしないと納得できないようで......。その保護者は「自分の息子が怪我したときは...」と比べてきます。確かに優秀ですが、ケガを押して試合に出続けることが良いこととは思いませんし、美談ではないと思います。また、こういった保護者のマウンティングのようなものにもうんざりです。6年生は引退しますが、4、5年生の保護者にも似たような親御さんがおり、3年生で試合に出ているうちの子に対していい気がしない方もいるようです。私としては試合に出場して嫌な思いをするくらいなら試合も辞退したいくらいです。出場は監督が決めることなので辞退したいと監督にいうべきか迷っています。こんなときどうしたら良いでしょうか。<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールありがとうございます。まだ小学3年生なのに6年生の試合に出るなんて、才能のあるお子さんなのでしょう。お母さんとしては誇らしくもあるけれど、3学年飛び級で試合に出る息子さんへのやっかみも感じているようです。私から3つアドバイスさせてください。■ケガの時は監督ではなく医療従事者の判断に従ってひとつめ。「ケガをしたときは迷わず休ませましょう」監督やコーチではなく、ドクターや整骨院の先生など、かかった医療関係者の意見に従ってください。「3年生なのに抜擢してもらっているので頑張りたいという気持ちもあり、その試合に出ました」とありますが、このニュアンスだと抜擢されたため周囲にケガを隠して試合に出たように感じました。一方で、最後に「出場は監督が決めることなので」と書かれているので、監督さんが無理やり出場させたのかもしれません。ただ、監督さんが決めたことにすべて従わなくてはいけないわけではありません。近年、暴力や暴言を用いる指導が問題視されていますが、これらがなかなかなくならないのは保護者が「監督が選択した指導だから」と容認してしまうことも大きな要因のひとつです。■監督の判断がいつも正しい訳ではないよって、「監督さんと対等に付き合いましょう」をふたつめのアドバイスにします。監督さんのすべての言動を疑えと言っているわけではなく、監督さんに対しご自分が感じたことを伝えられる対等な関係性を築きましょう。監督さんがいつも正しい訳ではありません。スポーツの指導現場にはさまざまな課題があることを保護者自身が学び、賢く対応してください。子どもがケガや体調不良で試合に出られないときは、「ケガをしているので今日は休みます」と子ども自身が監督に話すよう促してください。そして、もし万が一、何でも言い合える対等な関係性を築けない監督さんであれば、クラブ(少年団)の代表の方に相談するなりしたほうがいいと思います。■本来の「飛び級」とは。飛び級は試合に勝つための手段ではない三つめ。ここが一番重要です。「自分の力が及ばないことにイライラするのはやめましょう」相談文のなかで、お母さんは「保護者のマウンティングのようなものにもうんざり」「3年生で試合に出ているうちの子に対していい気がしない方もいる」と書かれています。飛び級の本質を理解しているクラブは、選手を飛び級させるときにさまざまな配慮をしています。飛ばせた学年の選手や親に対しチームの方針を説明します。そして、配慮をするクラブは、試合に勝つために飛び級をさせるわけではありません。例えば、3年生のなかでプレーしていても物足らない子どもを上の学年とやらせることで力をつけるといった目的があります。そこを親御さんたちに理解してもらいます。ところが、息子さんが所属しているクラブは恐らくそういった配慮が足らないようです。試合に勝つために息子さんを上の学年の試合に出しているように見受けられます。だから、ケガをしていて足を引きずっていてもそのまま出場させたのでしょう。チームに問題があるのですから、保護者達が混乱するのは当然です。それに、他の親御さんがマウンティングしてくることをお母さんは止められません。■親が子どものプレーを決めて実行することなど不可能さらにいえば、6年生のお母さんとの会話を垣間見る限り、このクラブの保護者の皆さんは子どもを主体に考えていないようです。その親御さんにどうしたいのかと聞くと「あなたの子からパスをもらってシュートを決めたい」と言われたようですが、親がどうしたいかを決めて、子どもにそれを実行させるのでしょうか。どうしたいかは子どもが決めて判断することです。親御さんはただただ見守っていれば良いと思います。プレーするのは子どもですから、親がどんな声がけをしようが、どんな作戦を授けようが、そこに力は及びません。それについては、このコーナーにも質問が多く寄せられます。試合前にどんな言葉がけをしたら、100%の力が出せるか?子どもがサッカーを上手くなるには親は何をしたらいいか?みなさん必死です。ですが、何度も言いますが、親の力は及びません。私たち親の役目は、以下のことだと私は伝えています。適度な睡眠と早寝早起き朝ごはんを定着させる。学校の勉強ときちんと両立しているか目を光らせる。子どもが楽しく伸び伸びサッカーができる環境を与えているかを常に振り返る。たった三つです。ここさえ整えれば、安心安全な環境で本人がどれだけサッカーを好きになるか。小学生時代はその気持ちを育てることをまずは考えましょう。■小学生のうちから痛みを押して試合に出るのは......(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)もちろん、ほかにもできることもたくさんあります。例えば、飛び級で試合に出る息子さんに、チームのためにプレーすることを話してあげる。何のためにサッカーをするかを一緒に話し合う。そんなふうに心に寄り添ってあげてください。加えて、まずはケガをしていたのに、出場を止めずに出してしまったこと、足を引きずるほどの痛みを味わわせてしまったことを息子さんに謝ってはどうでしょうか。成人すれば、痛みと付き合いながらプレーする時期もあるでしょう。ただ、それは今ではありません。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2020年12月23日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は、初心者に多い「足の内側(インサイド)でボールを止めることが出来ない」という悩みを改善するトレーニングを紹介します。ボールを止める、蹴る、というサッカーの基本中の基本の一つ。足の内側(インサイド)を使ってボールを止める方法を初心者が一から身につけるための基本動作、ポイントをサカイクキャンプコーチが説明。サッカーの動きの中で一番使うのが「インサイド」と言われていますので、基本からしっかり身につけましょう。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、足の内側を使ってボールをうまく止める動作を身につけることができます。ぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.親がボールを持ち、子どもは離れて立つ(5メートルくらい)2.親が転がしたボールを足の内側(インサイド)で止める3.子どもはボールを止めた後キックしやすいところに止める4.慣れてきたら、転がすボールの強さや方向を変えたりしながら行う【ポイント】・最初はゆっくり足の内側のどこでボールを触るか確認しながら行う・慣れるまではボールをよく見る・ボールの正面に入る・足首は固定して土踏まずと親指の付け根の間辺りでボールを止める・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!
2020年12月21日ボールを奪われると取り返しに行けない子。ドリブルで前へ進むイメージはあるけれど、相手にボールを奪われるとどう動いていいかわからない様子。頭でサッカーを理解していないから、ボールの奪い方が分からない?どんな指導で理解させたらいいのか、というご相談をいただきました。池上正さんは、そういった事を講演などでもよく聞くそうです。また、そのような事象が起こるのは「大人の責任」であるとも。これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、ボールを奪いに行く習慣を身につけるための指導をお伝えしますので、参考にしてください。(取材・文島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<目立たないけどいい選手、なのにセレクション全滅。受かるためにわかりやすい個性をつけさせるべき?<お父さんコーチからの質問>こんにちは。学校の少年団(U-8)で指導をしている者です。チームの中に1人、足が速く身体も大きめな子がいるのですが、ボールを奪われると取り返す動作が出来ない子がいます。これまでの記事で、日本は技術から教えていて頭で理解できていない、海外では幼少期から頭でサッカーを理解しているといったことを提言されているかと思いますが、まさにそうだと思います。ドリブルで前進していくイメージはあるけれど、相手にボールを奪われるとどう動けばいいのかわからず、一瞬立ち止まってしまったり、振り返って眺めているといった感じです。一生懸命に追いかけてボールを奪うように教えているものの、追いついても並走するのみでボールの奪い方がまだ理解できていないようです。攻撃と守備は瞬時に入れ替わるものなので、今のうちから理解してほしいと思っているのですが、おすすめの練習法などはありますか。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。「ボールを奪われるとそこで諦めてしまい、自分で取り返しに行かないのです」講習会や講演で、指導者の方たちからよく聞く話です。ボールの奪い方が理解できていないというのもあるかもしれませんが、それよりも子どもたちが勝ち負けに注目していないから起こる現象だと感じています。そこは大人たちにも責任がありそうです。■「個を育てる」の意味を取り違えていないか少年サッカーにかかわる大人たち、コーチや保護者の皆さんは「誰が点を取ったか?」に注目しがちではないでしょうか。例えば練習中のミニゲームなどで、どちらかが負けているという場面があります。そこで、大人は「負けてるほうは、どうするの?」と問いかけて、考えさせなければいけません。この場合、「負けてるチームのみんなは、どうするの?」は、しっかりやれと発奮させるための言葉がけではなくてどうすればいいか?に注目してもらうのです。そうすると、おのずとボールを自分たちのものにしなくてはいけないことがわかり、子どもたちは動き始めます。ところが、大人は個人の評価ばかりしているように見えます。日本の育成では、長らく「個を育てる」ことが言われてきましたが、意味を取り間違えてはいないでしょうか?■みんなでボールを奪いに行く意識づけができない背景「個人の技術を高めるために、個人の技術を増やすと、チームを感じられない選手を育ててしまう」そんなことを、ドイツの体育学の学者が論文に書いています。日本では、子どもがボールを持つと「いけ!」「勝負!」と盛んに言われます。ひとりでやるプレーだけでなく、チームのために走る、みんなでボールを奪いに行くといった意識づけがなぜできないのかを考える必要がありそうです。私が考える「奪い返しに行かない理由」は、日ごろの練習がゲームやオープンスキルのメニューが中心になっていないから。点数をちゃんと数える、勝ち負けを子どもに理解させる、など彼らの「勝ちたい」という気持ちを育ててあげることが重要です。「どうしたら勝てるかな?」「点を取っても、取られると負けちゃうよね?」「相手に点を取られないようにするのは、どうしたらいいですか?そんなことを問いかけ続けてください。そうやって練習や試合で勝ち負けをたくさん経験し、負けたくない気持ちに火をつけてあげてください。■勝ち負けに執着する気持ち自体を育てないといけない時代。成功体験を積ませようしたがって、今実践している練習を変えたり、この選手の「大切な時間を潰してしまったのではないか」などと思い悩む必要はありません。この指導をぜひ続けてください。まずは賢い選手を育てることに軸足を置きましょう。それが私の指導の大前提でもあります。自分で考えられる子どもに育てていけば、カテゴリーが進むにつれて次々とハードルが現れても「チャレンジしよう。どんなふうにやればいいかな」と自分で考えられます。指導者の要求にも応えられる思考や創造力を発揮できるはずです。例えば、ここはドリブルで抜くよりもパスを選択しよう、と考えられる。その時々で最も選択すべきプレーを選べるようになります。ドリブルで抜いたり、ゴールを決めることよりも、その力を磨くことのほうが重要です。■個人の特長を伸ばすだけでなく、頭脳を育てるのが指導者の役目ひと昔前ならば、子どもは負けるとみんな泣いてしまい、勝ち負けに執着していました。が、今はそういう気持ちを育てないといけない時代になってしまいました。「あのチームとやってもどうせ勝てない」「あの子と1対1をしても勝つのは絶対無理」そう言う子どもたちには、ぜひ勝ち負けのあるメニューを与えてください。2対1や、3対2などの対人練習、つまり点を取り合うようなオープンスキルの練習を増やすことで変わってきます。勝つにはどうしたらいいか。そこを考えると、自然に自分が奪われたボールを追いかけるようになります。一度追いかけてみて奪い返せたなら、その成功体験をもとに「次も取れるかもしれない」と思うのです。そういった勝ち負けを味わうことなく中学生、高校生になってしまうと、自分がドリブルを止められてボールを奪われると、下を向いてしまいます。コーチから「取り返しに行けよ」と怒られるから仕方なく走る、という場面が多く見受けられます。しかし、この年代になって「自分が奪われたボールは取り返しに行かなくてはいけない」と理屈で教わっても、なかなか浸透しません。この習慣は、小学生時代に身につけておくべきものです。そのためにぜひメニューや指導の在り方を見直してください。■自分が点を取るのは好きだけど、チームの勝敗に興味がない子も先日も小学4年生の試合を観に行きましたが、子どもたちは自分が点を取るのは大好きです。ゴールするのは快感ですので理解できますが、それ以上に大人がそこに注目していることを知っているからかもしれません。積極的にシュートを打ちますが、相手が攻撃し始めると歩いて見ていることが多いのです。自分がシュートを入れると満足してしまい、自分のチームが勝ったか負けたかには興味がなさそうでした。ひとりでいろいろやらせすぎると、そうなってしまいます。■カウンターを食らうと足が止まってしまう子どもたち(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)もうひとつ、ボールを相手に奪われた。パスミスをしてカウンターを食らった。その際に、がくんと腰を落としたり、下を向いて足が止まってしまう子どもが多く見受けられます。けれども、ミスのスポーツといわれるサッカーでは、ボールを奪われたらすぐに取り返しにいかなくていけません。つまり、ミスにタフになる必要があります。そのため、子どもたちには「ミスしてもOKだよ」「できなくても大丈夫」といった声がけを、皆さんに勧めてきました。ミスを責めない。勝ち負けのあるメニューをたくさんやる。そこを心がけながら、子どもたちが「コーチ、もう一回やらせてよ!」と言ってくるように育ててほしいと思います。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2020年12月18日医師として休めない日々を送る池袋大谷クリニックの大谷義夫院長。前編では免疫力のお話をうかがいました。私たちの家庭でもすぐできる、先生が実践している生活様式や、最近子どもたちの間にも増えている「喘息」について呼吸器の専門家である院長に予防策などを教えていただいたのでご紹介します。サッカー少年にも多い喘息。なるべく発症しないよう、家庭でできる対策とは?写真は少年サッカーのイメージ<<前編:風邪、インフルエンザ流行前に知っておきたい、免疫力キープの方法■ウィルス対策には喉のケア、部屋の湿度が重要前編でお伝えしたように免疫力とは、ウィルスなどの病原体を身体の中に入れないために防御する力です。免疫力があるから、風邪のウィルスを撃退するために扁桃腺が腫れるのです。免疫力が低下するとウィルスが気道の奥まで侵入して肺炎を生じてしまうリスクもあるのです。喉の免疫を保つために重要なのは喉を潤す事。そのために室内は50~60%の湿度を保つといいのだそう。喉の線毛の働きが良くなり、ウィルスを排出しやすくなります。また、ウィルスをエアロゾル化しにくくなるので、長く浮遊せず、飛沫も小さくなりません。湿度を保つことで、喉の免疫に有利な状況が作れるのです。また、喉の乾燥予防に飴をなめたり、水分を取ることも効果的だそうです。■歯磨きは毎食後+寝る前、朝食前で1日4回以上。口腔ケアも大事また、口腔ケアも大事なポイントなのだそう。毎食後はもちろん、寝る前と朝起きて朝食の前にも歯磨きをすることで口腔内から細菌を追い出すことができるそうです。中でも大切なのは寝る前なのだと大谷院長は言います。夜間は唾液が減って細菌が増えるので、口の中の細菌を減らすことがポイントなのだとか。それでも朝には細菌が増えているので、朝起きてからの歯磨きも習慣にしてほしいとも提唱します。さらに、ビタミンD値を保つために、日光に当たることも大切なのだとか。子どもたちは通学時間などで十分日光を浴びる時間がありますが、大人も散歩などで日光浴をしましょう。■風邪は喘息の天敵!喘息の子は治療を続けることこの50年ほどで喘息患者は増加しています。今では咳だけでの喘息である咳喘息を含めた喘息有病率は、全人口の10%と言われているそうです。喘息の子にとって特にこの時期は注意が必要です。今年は新型コロナウイルスの感染予防策として常にマスクを付けているため、喉の湿度が保たれるのか、喘息の発作が出にくくなっているようですが、体調がいいなどといって、治療をやめてしまわないことだと大谷院長は言います。喘息発作のリスクも上がるので予防薬は続けることが大切なのだそうです。喘息の発作の原因は、風邪、寒さ・寒暖差、ホコリ、疲労・ストレスなど多岐にわたります。風邪から喘息に移行、という経験を持つ方も少なくないのでは。喘息の発症を抑えるためにも風邪をひかない体調管理が大事と言えるのです。家の中でできる注意として、冬場は脱衣所やトイレなど家の中でも寒暖差が激しくなると、発作のキッカケになりますので、可能であれば家の中のどの場所も温度を一定にできると良いそうです。また、小児喘息の2/3は治りますが、1/3は大人の喘息にそのまま移行。いったん治っても大人になって再発するケースもたくさんあるのだとか。そして大人の喘息は完治できるのは2割程度で、多くの人にとって喘息は治らない病気なのだそう。咳が続くのは苦しいので喘息はできれば発症しないか、症状が軽く済んでほしいもの。ですので、今年の冬は体調管理や寒暖差など、出来る範囲の対策をして予防に努めましょう。今年は咳が出たら新型コロナウィルスを疑うことになります。PCRで陰性にならないと診察もできないので、出来る限りの予防をすること。咳の予防のためにも治療を続けることが大前提です。大谷義夫(おおたに・よしお)医学博士、池袋大谷クリニック院長東京医科歯科大学第一内科、呼吸器科、睡眠制御学講座において21年にわたり内科疾患、呼吸器疾患、アレルギー疾患、睡眠医療に従事。2005年に東京医科歯科大学呼吸器内科医局長に就任。2009年に東京医科歯科大学呼吸器内科兼睡眠制御学講座准教授就任。呼吸器内科の専門医として2009年に呼吸器とアレルギー領域の診療に特化した池袋大谷クリニックを開院。「絶対に休めない医師がやっている最強の体調管理」「疲れやすい、痩せにくいは呼吸が原因だった」など著書多数。テレビなどのメディアでも呼吸器内科の専門家として医学的知見からアドバイスを送っている。(取材・文:前田陽子)
2020年12月17日12月に入り、風邪やインフルエンザが気になるようになりました。今年はさらに新型コロナウィルスもあり、免疫力への関心が高まっています。そこで、呼吸器内科のスペシャリストである池袋大谷クリニックの大谷義夫院長に免疫力のために何をしたらいいのかを聞きました。写真は少年サッカーのイメージ■これからの季節、まずインフルエンザの予防接種を医師である大谷先生は、たくさんの患者さんのために毎日診察にあたっています。そのため、自らが風邪をひいて診療ができなくなっては困ると、様々な体調管理を行っています。特に今年は風邪やインフルエンザに加え、新型コロナウィルの感染予防対策を取った生活をする必要がありますよね。読者の皆さん、お子さんたちに向けたアドバイスをいただきました。これからの時期、どうしても増える風邪やインフルエンザの予防についてお伺いすると、大谷先生は「インフルエンザの予防接種が基本のき」と答えます。例年と異なり、今年は発熱すると新型コロナウィルスを疑い、PCR検査となることもあります。そうすると、風邪やインフルエンザであっても、かかりつけの医者に診てもらえないこともあります。完全に予防することは難しいものですが、体調管理に注意して、かかっても重症化しないよう気を付けることはできます。そのため、まずはインフルエンザのリスクを減らすために予防接種をしておくとよいのだそうです。■免疫力とはそもそもどんな機能なのかマスク、手洗い、消毒に加え、入ってきてしまったウィルスを退治するために免疫を高めることが不可欠です。風邪やインフルエンザ予防でもよく聞かれる「免疫力」とは、ウィルスなどの病原体の侵入や増殖を防ぐ力のことで、じつは身長や体重のように明確に測定できるものではないそうです。この免疫力が下がることで病気が重症化しやすくなるので、体調管理のためには生活習慣などに注意して免疫を維持することが大事なのです。■免疫力をアップするには好きなことを楽しくすることがいい免疫力をアップ、維持するに必要なのはまず睡眠です。大人の睡眠では7時間睡眠に比べて、6時間を切ると風邪の引きやすさが4.2倍になるそうで、先生もそれについて書かれた論文を読んでから睡眠を6時間以上取ることを厳守されているそうです。必要な睡眠時間には個人差もあるので明確な基準や根拠はないのですが、目安として小学生年代は9~11時間程度の睡眠をとる事が推奨されていることが多いようです。さらに15分~30分のお昼寝をすると午後のパフォーマンスを上げることができます。寝ることができなければ、目をつむって脳を休めるだけでもOKだそうです。次に大切なのは食事。3食きちんと食べる事が大事です。どうしてもご飯や麺などの摂取が多くなりがちですが、炭水化物に偏ることなく、たんぱく質もしっかりと摂取してください。バランス良く食べることが大事で、炭水化物を避けるのも良くありません。ヨーグルトなど乳酸菌を摂って腸内環境を整えることも、免疫力アップが期待できる方法のひとつだそうです。そして適度な運動と、ストレスをためないこと。適度な運動の量は、人それぞれです。普段から運動をしている方にとっては15~20分のジョギングは適度な運動かもしれませんが、全く運動習慣がない方にとっては負荷が大きく適度とは言えないので、注意してください。ストレスをためないためには、好きなことをするのが一番。「楽しむことでさまざまな免疫細胞値が上がることがわかっています」と大谷先生。■免疫力キープのための4つのポイント・睡眠をしっかりとる・バランスの取れた食事・適度な運動・ストレスをためないサッカーが大好きな子どもたちにとっては、サッカーをするのが一番のストレス解消かもしれませんが、激しい運動をすると免疫力が下がることも確認されているので、サッカーの後はバランスのいい食事をして、たっぷりと睡眠をとるようにして、冬場の体調管理に努めましょう。後編では呼吸器の専門家でもある大谷院長に、喘息についてお話を伺いましたのでお楽しみに。大谷義夫(おおたに・よしお)医学博士、池袋大谷クリニック院長東京医科歯科大学第一内科、呼吸器科、睡眠制御学講座において21年にわたり内科疾患、呼吸器疾患、アレルギー疾患、睡眠医療に従事。2005年に東京医科歯科大学呼吸器内科医局長に就任。2009年に東京医科歯科大学呼吸器内科兼睡眠制御学講座准教授就任。呼吸器内科の専門医として2009年に呼吸器とアレルギー領域の診療に特化した池袋大谷クリニックを開院。「絶対に休めない医師がやっている最強の体調管理」「疲れやすい、痩せにくいは呼吸が原因だった」など著書多数。テレビなどのメディアでも呼吸器内科の専門家として医学的知見からアドバイスを送っている。(取材・文:前田陽子)
2020年12月15日ファジアーノ岡山やアジア各国で代表チームに関わり、現在はU-20ワールドカップを目指すU-19日本代表を率いる影山雅永監督。前編ではコミュニケーション能力や子どもたちの本能を目覚めさせることについてお話を頂きました。後編では親と子どもの関わり方について伺いましたのでご覧ください。(C)松尾祐希■昔に比べ足元の技術は高いが運動能力が低下している現代の子どもたち前編では大人たちのスタンス次第で子どもたちの本能を呼び起こし、自ら意見を発する場を作れる可能性についてお話をしました。子どもたちの技術は以前と比べて向上したのは間違いありません。「技術は格段に高くなりました。ロングキックをあまり使わなくなって来たのでそこはレベルが上がっていないかもしれませんが、ファーストタッチの能力、インサイドキックの質。止めて蹴る能力はすごく高いです」影山監督が認めるように子どもたちのレベルは目を見張るものがあります。一方で現代の子どもたちは屋外で活動する機会が減り、部屋の中で遊ぶ時間が多くなりました。その影響は少なからずあり、身体を動かす機会が減ったことで運動能力の低下が叫ばれてきました。外で遊ばない傾向は海外も同様で、問題点として上がっているそうです。影山監督が以前研修で訪れたオーストリアのレッドブル・ザルツブルグでは、育成年代の施設に一工夫を凝らしており、その光景は今でも鮮明に覚えていると言います。「外で遊ぶ子どもが減ってきているので、オーストリアのレッドブル・ザルツブルグは面白い施策をしていました。プロとは別にアカデミーの施設を持っている中で、ピッチの周りに遊具がずらりと並んでいたんです。クラブの方に理由を尋ねると、『今の子どもたちが山や川などで遊ぶ機会が減っているから遊具を設置した』と仰っていました。アスレチックから落ちないようにしたりして、週に1回は遊具で遊ばせているそうです。運動不足の問題は世界中で起こっているのだと感じました」■スポーツへの欲求は高まっているしかし、影山監督は新型コロナウイルス感染拡大の影響による休校、チーム活動停止によって、外で身体を動かしたいという欲求が高まっているとも感じているそうです。「外で遊びたいという理由から、子どもを連れて外遊びをしていた方も多いですよね。みなさんも休校中は親子連れの方を公園でたくさん見かけたと思います。その中で、僕が住んでいるエリアではサッカーをやっている子が一番多かったかもしれません。『改めてサッカーはすごい』と感じましたが、コロナ禍でステイホームを余儀なくされたので、子どもたちは外で遊びたいという欲求が出たと思います。これまでのように思い切りスポーツができない時期があったことで、よりスポーツへの欲求は高まったのではないでしょうか」■サッカー強国スペインでは12歳までクラブ所属禁止のチームも。その理由とはこうした状況に置かれたからこそ、親が子どもとどのように関わるかは重要です。では、親御さんはどのように向き合っていくべきなのでしょうか。影山監督は言います。「サッカーだけやって英才教育をしてうまくなることを肯定する人もいます。しかし、子どもたちはいろんな可能性を秘めています。様々な研究により、いろんなスポーツをやっている子どもの方が最終的に一流の選手になる傾向があるそうです。今年1月にU‐18日本代表でスペイン遠征を行なった際に、私はリーガエスパニョーラのレアル・ソシエダで研修を受けました。そこで多くの事を学んだのですが、バスク地方では12歳までクラブに所属することを禁じていました。いろんなスポーツをやってほしいという観点から、クラブに所属するのは13歳からというバスク独自の法律があるそうです。サッカーを本格的に学ぶのは13歳からと決まっているのは、本当に素晴らしい考えだなって思いました」様々な競技にもトライさせることで、子どもたちの運動に関係する神経が刺激されます。バレーやキャッチボールをすれば落下地点や空間把握能力が高まりますし、他のスポーツから得られる学びはたくさんあります。積極的に子どもたちにスポーツに触れさせることは健やかな身体の発育にも繋がり、サッカーを上達させる一因になるのは間違いありません。■小学生年代でサッカーに向いていない、プロになれないの判断は早すぎるプロ選手になるためには幼い頃からその競技に触れていた方がいいのかもしれませんが、あくまで一例です。サッカーでも、中学校からキャリアをスタートさせてプロの世界へ飛び込んだ選手もいます。だからこそ、影山監督はゴールデンエイジという言葉に対し、必要以上に影響されて欲しくないと言います。「中学年ぐらいだとまだ発育的にも将来どんな選手になるのか分かりません。ゴールデンエイジという言葉を勘違いされる親御さんも多いのですが、12、3歳ぐらいでその年代のトップレベルにいないからプロになれないということはありません。中学生からサッカーを始めてプロになった選手たちもいるので、技術が身に付けられない訳ではないのです。ゴールデンエイジは神経も発達する時期なので、より多くボールに触れた方が技術を身に付きやすいのは間違いありません。ただ、技術の向上は努力次第で何歳からでもできます。自分も引退してからの方が上手くなっているぐらいですから。なので、小学校3、4年生でサッカーに向いているか、プロになれる可能性があるかなど、将来を判断するのは早いと思います。子どもたちは大きな可能性を秘めています。小学生の時にトレセンに入っていなくても、高校で伸びた事例は多くありました。中学まで違うスポーツをやっていたけど高校から始めて、素晴らしい才能を持った選手もいます」様々な場所でサッカーに携わってきた影山監督。自身も小学校5年生の息子を持つ親として、子どもとの向き合い方を考えてきました。その中で重要なのは、大人たちがコミュニケーションを取る環境や様々な角度でスポーツに触れられる場を設け、子どもたちの才能をより磨くことだと言います。心身を鍛えれば、サッカーだけではなく、1人の人間として大きく羽ばたくきっかけにもなります。子どもたちの可能性をより広げるためにも、大人たちのアプローチが重要なのかもしれません。影山雅永(かげやま・まさなが)福島県の磐城高校を経て筑波大学に入学。同期の井原正巳氏(現・柏レイソルヘッドコーチ)、中山雅史選手(アスルクラロ沼津)らとプレーし、卒業後は古河電工(現・ジェフユナイテッド市原・千葉)に入団。Jリーグでも活躍し、1995年は浦和レッズ、翌年はブランメル仙台(現・ベガルタ仙台)に籍を置いた。引退後は筑波大学の大学院で学び、1998年にはワールドカップに初出場した日本代表で対戦国のスカウティングを担当。その後はケルン体育大学などで学び、2001年からはサンフレッチェ広島でコーチを務めた。以降はアジア各国でA代表や育成年代の監督を歴任。2009年からはファジアーノ岡山のヘッドコーチに就任し、翌年からは監督として指揮を執った。2017年からはU-18日本代表監督(U-20ワールドカップを目指すチーム)となり、昨年5月のFIFA U-20ワールドカップ・ポーランド大会ではチームを2大会連続となるベスト16入りに貢献。現在はU-19日本代表監督として、来年開催予定のFIFA U-20ワールドカップ・インドネシア大会を目指している。(取材・文・写真:松尾祐希、JFA)
2020年12月14日派手なプレーは好まず、スペースを見つけてパスを捌く、狙えたらシュートを打つような連係プレーが得意で判断力が高い子。単騎でドリブル突破したり対人プレーをどんどん仕掛けるタイプじゃなく、スペースを見つけて動ける「目立たないけどいい選手」。なのに、力試しで受けてみたトレセンでは「素人が混じっているレベル」と酷評。上の年代のトレセンに携わっているチームの代表は、「このまま成長すればトレセンメンバーでやれる」と言うけど、これまでの自分の育成方法が失敗だったのか悩む、というご相談をいただきました。これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが今回もコーチにアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<下級生との練習は上の子たちにメリットがないのでは。という上級者の親たちに年齢ミックスの良さを分かってもらうには?<お父さんコーチからの質問>いつも参考にさせていただいています。 U‐9、U‐10を指導していますが、どう育成したら良いのか悩んでいる3年生の選手がいます。私は日頃の指導の中で、試合で使える技術を大切にした練習などを行ってきました。例えば、昔からある対面での基礎練習やリフティング、1対1などには時間をかけず、1対2、2対1、4対4、ゲーム形式など、複数を意識したメニューを多めに実践しています。スター選手はいませんが、平均より少し上の選手が集まっていて、 個で勝負するよりもチームの連動性が良いチームです。その中で1人、この子は上のレベルでも十分やれるだろうなという子がいるのですが、 その子についての相談です。ドリブルや1対1など派手なプレーや対人プレーは好まず、スペースを見つけて動き、パスを捌いて、狙えたらシュートを打つような「あまり目立たないけどとてもいい選手」というタイプで、相手チームにスター選手がいても全然引けを取らないレベルではあります。本人は海外でサッカーをやりたいという夢をずっと持っていて、意識も非常に高いです。しかし、その子の父親が力試しを兼ねて強豪チームやスクールのセレクションを色々受けさせてみたところ、合格どころか「素人が混じっているレベルだ」と評価されたというのです。不合格の理由としては「基礎練習が他の受験生と同じように出来ない。ゲームでも、周りは1対1やドリブルで仕掛ける子ばかりで、どう動いていいか分からず終始あたふたした状態だった」という内容だったそうです。その父親からは「ドリブルや1対1に特化したスクールに通った方がいいかな?」と相談をうけていますが、個人技に傾倒していくと今の良さが消えてしまうのではないかとも危惧しています。正直、これまでの自分の育成方法が失敗だったのではないか、もっと違うやり方があったのではないかと悩んでいます。U-12地区トレセンの監督も務めているうちのチームの代表は「彼は目立たないけど、このまま成長すればトレセンメンバーでやれる」と認めてくれていますが、それは身内で特色を知っているからで......。知らない人が見たときに彼の良さに気づいてくれるのか、もっと分かりやすい特色を付けていくために練習を変えた方が良いのか、彼の大切な時間を潰してしまったのではないか、など葛藤している状態です。このような問題に正解はないと思いますが、指導者としてどのように考えたら良いのかアドバイスいただけると幸いです。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。いただいたメール文を読む限り、やろうとしている育成にまったく問題ないと思いました。対面での基礎練習やリフティングといったクローズドスキルに時間をかけず、1対2、2対1、4対4やゲームなどのオープンスキル、対人練習をたくさんやっているとのこと。まさしく私がみなさんにこうあってほしいと伝えている指導です。恐らくそのような練習によって、上のレベルでやれそうな子どもが育っているのでしょう。ドリブルや1対1など派手なプレーや対人プレーは好まず、スペースを見つけて動き、パスをさばき、狙えたらシュートを打つ。ご相談文に書かれているような選手をたくさん育ててほしいと願っています。■昨今のトレセンでは「今すぐ試合に勝つ」ための選手が選ばれることも少なくないが、強豪チームの中心選手やトレセンの選考でピックアップされるのは、私が見る限り「今すぐ試合で勝つために戦える選手」が多いようです。例えばドリブルが上手くて、スピードがあって、同学年の子どもを抜いて行ける子に、大人たちは「勝負、勝負」と声がけをしてドリブル突破を勧めがちです。その子が点を取ってくれれば、全国大会に行けたり、トレセンの地区大会で一番になったりできます。その一方で、サッカーを賢く考えられ将来性のある子どもが、ベンチに置かれたり、後回しにされてしまっているのが、強豪チームの現実だと感じます。Jリーグクラブで育成に携わった時期は、さまざまなセレクションに立ち会ってきました。そのときに、私が「この子、いいね」と指摘するのが、ご相談者様が育てている選手のようなタイプです。ところが、担当コーチは「うーん」と首をひねります。彼らが欲しいのは「今すぐ使える選手」なので、いいと思う選手像には常にギャップがありました。統計的にみても、トレセンに選ばれて、そのまま選ばれ続けて日本代表に上がっていく選手はゼロです。ひとりもいません。この結果を、私たち指導者は受け止めなければいけないと思います。トレセンに入っていたけれど、途中で落ちて、Jクラブに入った、育成期はまったく注目されなかったけれど海外でプレーした結果代表に選ばれた。それが今の選手たちの、日本代表までの通り道です。そう考えると、育成方法が変われば、日本の選手たちにはまだまだ成長できる余白がたくさんあると私は見ています。もっとうまくなる。もっとサッカーを熟知した、どのクラブでもどこの国でも通用するプレーヤーになれます。■トレセンに選ばれた子が必ずしも順調に伸びるワケではない逆に言えば、育成方法が古いままの指導者に出会ってしまうと、サッカーを学べません。コーチが育成の本質を知らないまま、海外のコーチたちがどんなところに注目し、どう育てているかを知らなければ、選手自身も「今勝負できる子」を選ぶトレセンに入ったり、チームが全国大会に出たりすることがいいと思ってしまいます。さらにいえば、そのようなやり方がいいと言われてしまいます。全国大会に出た全員が上手く伸びてプロに行くかといえば、それはあり得ません。無論ですが、ご相談者様が書かれているように、正解はないのかもしれません。しかしながら、全員がどこのステージに行っても楽しめるようなサッカーの学びかたがあるはずです。上のステージでもできる学びを経験させてあげたいと私は考えています。■今の指導を変えたり、思い悩む必要はないしたがって、今実践している練習を変えたり、この選手の「大切な時間を潰してしまったのではないか」などと思い悩む必要はありません。この指導をぜひ続けてください。まずは賢い選手を育てることに軸足を置きましょう。それが私の指導の大前提でもあります。自分で考えられる子どもに育てていけば、カテゴリーが進むにつれて次々とハードルが現れても「チャレンジしよう。どんなふうにやればいいかな」と自分で考えられます。指導者の要求にも応えられる思考や創造力を発揮できるはずです。例えば、ここはドリブルで抜くよりもパスを選択しよう、と考えられる。その時々で最も選択すべきプレーを選べるようになります。ドリブルで抜いたり、ゴールを決めることよりも、その力を磨くことのほうが重要です。■個人の特長を伸ばすだけでなく、頭脳を育てるのが指導者の役目現在Jリーグにいる選手で今後も生き残っていける選手は「僕のスタイルはこれしかない」ではなく、監督の要求に応えられるうえで、自分のやりたいこともできる。そんなタイプです。海外でプレーする選手は言わずもがなでしょう。例えば「これしかできない」という選手は、そのチームに自分と同じ武器で、より高性能でかつプレーの幅が広い選手が入ってくれば負けてしまいます。「一対一が強い」「ドリブルが上手い」は、個人の特長です。特長はあって然るべきですが、それがすべてでは困るのです。攻守においてチームとして連動するときに、イメージを分かち合える頭脳をもたなくてはいけません。その頭脳を育てるのが、私たち指導者の役目なのです。■トレセンに迎合する必要はない(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)ご相談者様が教えていらっしゃる子どもは、まだ9~10歳です。この先、高学年になればどの子も体が少しずつ大きくなって、パワーも増してきます。そこに「賢さ」を足せるようになれば、その後はどこに行ってもステップアップできるでしょう。トレセンに迎合する必要はありません。ここまで私が説明したことが世界基準だと自負しています。今の指導をぜひ続けてください。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2020年12月11日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は、初心者に多い「足裏でターンが出来ない」という悩みを改善するトレーニングを紹介します。試合中、相手からボールを奪われないよう自分の足元でコントロールしてターンをする時に使う基本動作です。最初は足の裏でボールを触りながら回るのが難しいかもしれませんが、このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、足の裏側を使ってボールをうまくコントロールしながらターンする動きを身につけることができます。ぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.親の前に目印を置く2.子どもは足をパーに開く3.親は足の間にボールを転がす4.子どもは足裏でボールを踏み、ターンをしてドリブルで戻る5.慣れてきたら、左右の足を使ったりターンした後の戻るスピードを上げる6.それができるようになったら、ボールを転がすスピードを速くするなどのアレンジをしてみる【ポイント】・最初はゆっくり足の裏でボールを踏んづけてからターンして戻る・慣れるまではボールをよく見る・拇指球あたりでボールを触って自分の前にボールを転がしてターンする・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!
2020年12月10日サカイクで開発した「サッカーノート」。早速、お使い頂いた子どもたちやコーチ、保護者から「ノートをたくさん書くようになった」「ノートをもとに、考えてプレーするようになった」と、うれしい感想が届いています。宮城県仙台市で活動する「ラセルバロイFC」も、サカイクサッカーノートを使ってくれているチームです。小学校低学年の子どもたちは、サカイクサッカーノートを使うことで、どのようにプレーが変わってきたのでしょうか?小学1、2、3年生を担当する、岡田尚コーチにうかがいました。(取材・文:鈴木智之)<<サッカーノートの書き方が分からない子、初心者もスラスラ書けるサカイクサッカーノートの使い方■低学年でも書く量が増えたラセルバロイの低学年は、今年からサカイクサッカーノートを使い始めたそうで、岡田コーチは「質問形式になっているので、書きやすくなっていますよね。そのおかげで、書く量も増えました」と笑顔を見せます。なかでも「自分で自分を評価するところを始め、質問に対して考えながら書くところや、コーチや保護者がコメントを書く欄があるのがいい」と感じているようです。「このノートを使うようになってから、子どもたちが『コーチ、コメント書いて』って感じで、毎回提出するようになりました。コメントはコーチだけでなく、保護者も書けるようになっているので、すごく熱心に書いてくれるお母さんもいます」岡田コーチはそう言って、小学2年生の子が書いたノートを見せてくれました。そこには「前回の学びや発見は何がありましたか?」という質問に対し「パスを出すときは、なるべく走らせる」。「試合や練習が終わったとき、どうなっていたら最高ですか?」という質問には「みんなで、これは良かったよ。これはもう少し頑張ろうと言い合えていたら最高」といった答えが書かれていました。ノート誌面※画像をクリックして拡大できます「質問があるので、子どもは考えやすいですし、それによって書く量も増えています。保護者の方も、お子さんが書いた内容から『今日はこんな練習したんだな』『こんなことを考えてプレーしたんだな』と知ることができるので、評判はいいですね」■わが子の考えを知ることができ、親子コミュニケーションに役立つ今年はコロナの影響で、保護者は送迎のみとなり、練習や試合の見学はできませんでした。ですが、サッカーノートがあるおかげで、練習や試合の内容がわかるようになり、コミュニケーションツールとしても役に立ったようです。「保護者の方も、熱心にコメントを書いてくれるんです。このお母さんはすごいですよ。お子さんが書いたことに対して『今日のくやしかった気持ちを忘れないで、これからも一生懸命練習しよう』『サッカーは一人で攻めても、守ってもうまくいかないことを学びましたね。うまくゲームができないとき、自分にはどんなことができるかを考えてプレーしてみよう』など、すごく前向きなコメントを書いてくれています」親御さんのコメント(許可をいただいて掲載しています)※画像をクリックして拡大できますコーチや保護者からコメントを書いてもらうことで、子ども自身も書くモチベーションにもなっているようです。岡田コーチは、ノートを読んでコメントを書くときには「思考やイメージを掘り下げられるように書くことを心がけています」と言います。「たとえば『うまくいかなかったことはなんですか?』という欄に、子どもが『ドリブルシュート』と書いたときは、『どうすればドリブルとシュートがうまくいくかな?』など、より深く考えるためのコメントを書くようにしています」■書くことでコーチのアドバイスが頭に残るまた、「練習中に言ったことを、ノートに書いておこうね」とアドバイスもしているそうです。「ノートに書くことで頭に残りますし、見返したときに『こういうこと言われたな』と思い出すことができます。練習で何を言われたかを覚えていないときは『恥ずかしがらずに聞くんだよ』と言っています。実際に『なんでしたっけ?』と聞きに来る子もいるので、そこでまたコミュニケーションがとれますし、復習にもなるのでいいかなと思っています」サカイクサッカーノートを使うことで「書く量がすごく増えた」と話す岡田コーチ。子どもたちは練習前に「始まる前に書こう」のページにある「試合や練習が終わったときに、どうなっていたら最高ですか?」「そのためにどんな工夫をしますか?」を書き、練習や試合後に、自分でどれぐらいできたか、点数をつけるそうです。「練習や試合の後に、自分で自分のプレーを振り返って、これができた、できなかったと自己評価するのはすごくいいと思います。ほかにも『どんなプレーが記憶に残っていますか?』という欄にイラストを描いている子がいたので『イラストと一緒に文章を入れると、後で見返したときにわかるよ』と言ったら、文章も書いてくれるようになりました」■サッカーノートを書くようになって、考えてサッカーするようになった岡田コーチは「サッカーノートを書くことで、考えてサッカーをするようになった」と成果を口にします。「練習前にノートに書いたことを、練習中に意識して取り組み、練習後にどうだったかを振り返るという流れができました。それによって、考えて取り組むようになったと思います」多くの質問や書くための工夫が施されている、サカイクサッカーノート。ラセルバロイFCは小学1年生から使用し、幼稚園年長の子も「コーチ、書いたから見て」と言って見せにくるそうです。低年齢時からサッカーを言語化し、考えてプレーすることを習慣化することで、プレーにも変化が現れることでしょう。「サッカーは楽しいもの。大人になってもやり続けてほしい」と話す岡田コーチ。考えてプレーする土台を作るためにも、サッカーノートは欠かすことのできないアイテムになりそうです。【詳細】子どもたちが自ら進んで書き出す、たくさん書けるようになるサカイクサッカーノートの表紙デザインなど
2020年12月10日みなさん、お子さんへのクリスマスプレゼントはもう決まりましたか?お子さんへのリサーチをしている最中のご家庭もあるでしょう。中にはお子さんのほうから「○○が欲しいな」というアピールもあるようですが、サッカー少年少女の保護者の皆さんも「ボールが欲しい」「新しいスパイクがいいな」などお子さんからのリクエストを受けている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、サカイクのセレクトショップで人気の商品の中から、今からでもクリスマスまでにお届け可能な「サッカーがうまくなるグッズ」を厳選してご紹介します。お子さんのプレゼントに迷っている方、サッカーがうまくなりたいお子さんに喜んでもらえるアイテムばかりなので参考にしてみてください。ただいま年に一度の感謝祭開催中です!一部商品がとってもお得になっておりますのでぜひご覧ください。ただいま年に一度の感謝祭セール開催中!>>テクダマ発売開始から飛ぶように売れ、入荷するとすぐに完売になってしまうサッカー上達専用ボール「テクダマ」。サッカーが上手くなるためには、技術、戦術の理解とともに、ボールを自在にコントロールするスキルを身に着けること。グラウンドは平坦なところばかりではありません。イレギュラーなバウンドをしたり、バランスを崩しながらもボールをコントロールする場面もたくさんあります。そういった時に必要な「調整力」。これこそが本当にうまい選手が身に着けているもの。脳からの指令伝達を身体が実行できる力が大事なのです。そういった神経経路が鍛えられる仕組みのテクダマなら、普段の練習の中で使っているだけで自然と調整力を習得できるのです。また「うちは運動神経内から無理」と思っている親御さんもこのボールを使うことで、イレギュラーバウンドへの対応などに慣れ、試合で使えるボールコントロールが身につくので、ぜひお子さんにプレゼントしてみてはどうでしょうか。テクダマの詳細、購入はこちら>>KENGOアカデミー背が低くても、足が遅くてもサッカーがうまくなる45のアイデア。中村憲剛選手が映像で解説してくれるDVD「KENGOアカデミー」でサッカー脳を高めるサポートをしてあげませんか。中盤、ボランチを任されているけど、どう動けばいいかわからない。試合中何を見ていつパスを出すの?といった選手が抱える悩みに、中村憲剛選手が解説。Jリーグ屈指のサッカー脳を持つ中村選手の解説で、動き方、判断するタイミングなどサッカーに必要な知識を身に着けることができます。中学入学時の身長は136cm、周囲の対格差で挫折を感じサッカーから離れた時期もあったけど、考える力を武器に大きな選手と戦う方法を身に着けてきたという中村選手が自身の経験をもとに積み重ねてきた、サッカーがうまくなるためのアイデアが詰まっています。シンプルパッケージとなりお求め安くなりました。この機会にぜひ。KENGOアカデミーの詳細、購入はこちら>>タニラダー週1の練習で早くなる!サッカー選手2万人以上が実践したスピードアップトレーニングの決定版「タニラダー」で、お子さんの走るスピードを高めてあげませんか。「足が速くなりたい」は昔も今も、多くの小学生の願望ですよね。足が遅いのには理由があります。速く走るための基本のき、「正しい姿勢」「正しい身体の動かし方」を身につけるところから始められるベーシックから、ボールのある動きを伴うアドバンストまでご用意しております。たった4マスだからこそ速さに必要な要素が身に付きやすい。長すぎるラダーは足元を見てしまったり、終盤姿勢が崩れたりして正しい「速さ」が身につかない。タニラダーは速さを習得するための要素がギュッと詰まったトレーニングアイテムなのです。単純に走るのは速いけど、サッカーの試合になるとぎこちない、切り返しについていけない、などもタニラダーのトレーニングで解消できます。速くなりたい、動きをよくしたいお子さんにおすすめです。タニラダー各サイズの詳細、購入はこちら>>フレックスクッションドリブラーの生命線、股関節の可動域を広げる話題のストレッチツール「フレックスクッション」。あなたのお子さんは身体は柔らかいほうですか?最近は身体が固い子どもたちも増えているようです。身体が固いのはケガにもつながりやすいので、柔軟性はできれば小学生年代から注意したいもの。ストレッチで可動域を広げることでパフォーマンスアップにも繋がります。ですが、正しい姿勢で行わないとストレッチの効果も得られません。骨盤の向きを~と言われてもピンとこない子どもたちも、このクッションを使えば座るだけで正しい姿勢で効果的に体を伸ばすことができます。日本やヨーロッパの強豪25チームに採用され、練習や試合後のコンディショニングに取り入れられている「フレックスクッション」でコンディショニングのサポートを。お子さんだけでなく親御さんも使って一緒に楽しんでください。フレックスクッションの詳細、購入はこちら>>リバウンドボード一人でもトラップやパス、ワンツーのトレーニングができる壁打ち練習アイテム「リバウンドボード」。複数人で練習するほうが試合に近い状況なのはわかっているけど、近所の友達はサッカーしないし、兄弟姉妹も自主練に付き合えない、など様々な事情で一人で練習できるアイテムが欲しい、という親御さんは多いもの。このリバウンドボードを使えば、パスを出してパスを受ける練習ができます。ひとりでも2人で行うプレーの練習が可能になるリバウンドボードで実戦的な動きを身につけることができます。簡単に持ち運べ、上下を逆に設置すれば初心者・低学年が苦手な「浮き球」を返してくれるので恐怖心克服とトラップの練習にも。住宅事情により自宅の壁にボールを打たれるのはちょっと困る、という親御さんたちにもおすすめしたい商品です。リバウンドボードの使い方例、購入はこちら>>アルファゴール自宅でシュート練習!Jリーグ25チームが導入するゴール感覚を研ぎ澄ますミニゴールでシュート力を磨く。日本サッカーの長年の課題「シュート力」。少年サッカーの練習では簡易的なゴールを使うこともありますが、素材によってはシュートの跳ね返りが返ってこないのでセカンドボールを拾う意識などが身につきづらいという側面があります。軽くて安全なアルミ製でできたこのアルファゴールは、思いっきりシュートしてもボールがしっかりリバウンドするので、シューター以外の選手もゴールを意識してトレーニングすることができます。遊びの場面でもそのような意識をもって繰り返すことで、自然とゴールへの意識が定着していくもの。10秒で簡単に組み立てられてしまう時もコンパクト。ベガルタ仙台のトップチームが採用しシュート練習などに使われています。また、川崎フロンターレやモンテディオ山形などのスクールにも導入。サイズもバリエーションがあるので、クリスマスプレゼントだけでなく卒団記念の贈り物などにもピッタリです。アルファゴールのサイズ各種詳細、購入はこちら>>ただいま年に一度の感謝祭セール開催中!>>
2020年12月09日日本サッカー協会(JFA)の松田薫二グラスルーツ推進グループ長が、賛同パートナーを訪問し、現在の取り組みや今後の展望について話を聞くこの連載。今回は千葉県木更津市に拠点を置く、房総ローヴァーズ木更津FCです。クラブの代表を務めるのは、ジュビロ磐田などで活躍した、カレン・ロバートさん。木更津に素晴らしいグラウンドを建設したカレンさんと松田部長の対談後編では「ローヴァーズドリームフィールド」(人工芝グラウンド)設立の経緯に迫っていきます。(取材・文鈴木智之)カレンさんが廃校を再利用してフルピッチのサッカーグラウンドを持つことになったきっかけとは<<前編:元Jリーガー、カレン・ロバートさんが野球人気の地、木更津にサッカークラブを作ったワケ<グラスルーツ推進6つのテーマ>■廃校を再利用してグラウンドを確保松田:「ローヴァーズドリームフィールド」を見せてもらいましたが、素晴らしい施設ですね。クラブカラーの赤が鮮やかで、目に飛び込んできます。カレン・ロバート(以下カレン):ドリームフィールドはミズノさんが作ってくれたのですが、チームカラーの赤を入れるところはこだわりました。ほかにもヨーロッパでよくある、立ち見席も設置しています。松田:この施設を作るきっかけは、イオンモール木更津にフットサルコートを作るところから始まったのですか?カレン:サッカークラブを運営する以上、フルピッチのサッカーグラウンドを所有することは、誰もが抱く夢だと思います。「フルピッチのコートがほしいけど、場所もないし、どうしようか」とクラブスタッフと話をしていたら、たまたま木更津市の行政の方と話をする機会があり、廃校になった中学校の再利用の話が出ていました。松田:廃校は放置しておくと、老朽化して危険ですし、治安の悪化につながります。まさにグラスルーツ推進賛同パートナーの「社会課題への取り組み」ですね。カレン:当時僕は海外でプレーしていたので、行政への提案は松川(耕平/ローヴァーズ株式会社取締役)がやってくれました。それで公募が通って、木更津市立中郷中学校のグラウンドと体育館を改修し、人工芝の「ローヴァーズドリームフィールド」と「中郷アリーナ」が完成しました。後者だった建物は宿舎として改築中で、2021年度の完成を目指しています。2020年10月にオープンしたローヴァーズドリームフィールド赤い人口芝が鮮やか■サッカーだけでなくバスケ、バレーなど他競技への貸し出しも松田:廃校を利用してグラウンドを作る動きは増えてきていますが、ローヴァーズさんもその形だったのですね。施設の建設費用はどうやって捻出したのですか?カレン:銀行に借りました。フットサルコート運営の実績があったので、グラウンドに関しては比較的スムーズに話がまとまりました。松田:グラウンドは貸し出しもしているそうですが、どのエリアをターゲットにしているのですか?カレン: 東京、神奈川、千葉のスポーツ団体です。サッカーは当然のこと、アリーナではフットサル、バスケット、バレーボールなどもできます。都心からアクアラインを使えば、車で40分ほどで来ることができます。袖ヶ浦ICからも車で5分の距離なので、アクセスはかなり良いと思います。松田:東京や神奈川はチームの数に比べて、グラウンドの数が圧倒的に足りていません。東京都リーグの試合をするために、千葉のグラウンドまで行くこともあります。カレン:東京もそうですし、横浜や川崎からも、アクアラインを通ればかなり近いので、たくさんの方に利用してもらえるのではないかと思っています。中郷アリーナはバスケやバレーなど様々な競技団体に貸し出しも行っている■障がい、経済格差に関わらず一緒にサッカーができるように松田:障がい者サッカーの活動はどうしていますか?カレン:ローヴァーズのビジョンに「障がいや経済格差などに関わらず、みんなで一緒にサッカーができるように、地域をスポーツでつなぐ」というものがあります。最初は船橋市の生涯スポーツ課さんから委託されて、健常者の子ども向けと知的障がいの子ども向けにサッカー教室をさせてもらうところから始まりました。それがきっかけでローヴァーズのコーチが、知的障がい者の指導者ライセンスを取得したり、講習会をローヴァーズの施設で行うなどして、関わりが深まっていきました。松田:どのような年代の子たちを教えているのですか?カレン:小学生の特別支援学校の子たちです。そういう子の親御さんはサッカーに対するハードルが高いみたいで「本当に大丈夫かな?」と思いながら参加されるのですが、来てみたらすごく楽しんでくれて、「来て良かったです」と泣いて喜んでもらうこともあるので、そういう姿を見ると、もっと活動を増やしたいと思います。松田:障がいがある子達が運動する場が少なく、親御さんも「迷惑をかけてはいけない」という思いが強く、外に出さないこともあるようです。日本障がい者サッカー連盟では、年に1回「JIFFインクルーシブフットボールフェスタ」というものをやっていて、障がいの種別を問わず、健常者と障がい者をミックスして試合をしています。子どもの頃から交流を持つことで、大人になるまでに偏見や差別が植え付けられなくなるのではないかと思っているんです。カレン:障がい者に対する専門的な指導の知識も必要なので、学ぶことができる環境も作っていきたいです。松田: JFA では指導者ライセンス保有者のためのリフレッシュ研修で、障がい者サッカーコースを設けています。障がいがあっても、こうすれば一緒にサッカーが楽しめるということを学んでもらっています。千葉県でも開催を予定していますので多くの方に参加してもらえたらと思います。■近隣クラブとの協力で女子の育成、房総エリアを盛り上げたい松田:ローヴァーズは女子チームもありますが、なぜ女子も作ろうと思ったのですか?カレン:サッカーをやりたい女の子が多かったので、ジュニアのチームを立ち上げました。近隣に「オルカ鴨川」という女子のクラブがあるので、そこと協力して、選手を橋渡ししていければと思っています。木更津は内房、鴨川は外房と呼ばれる地域です。ローヴァーズにはチーム名に「房総」と入っているので、お互い協力して、房総を盛り上げていきましょうという話をしています。松田:サッカーをやりたい女の子が多いのは良いですね。カレン:この辺りは、習い事の数がそれほど多くないことも関係しているのかもしれません。夫婦共働きも多く、子どもたちの送迎をおじいちゃん、おばあちゃんがしてくれている家庭もあります。松田:子どもたちは、どの辺りから通っているのですか?カレン:木更津、袖ヶ浦、君津、富津の上総(かずさ)四市と呼ばれる地域の子達が多いです。遠いところは鴨川や市原、千葉市から来ている子もいます。松田:ぜひ、房総地域のサッカーを盛り上げていただけたらと思います。グラウンドづくりにしても、いろいろな人の参考になると思います。■子どもたちには失敗したからとすぐ諦めず、成功するまで頑張ってほしい松田:最後に教えて下さい。なぜクラブのカラーを赤にしたんですか?カレン:マンチェスター・ユナイテッド(イングランドプレミアリーグ)が好きなのと、強いチームは赤か青だろうというところから始まりました。チームカラーを青にすると「市船でしょう?」と茶化されそうだったので、赤にしました(笑)。ちなみに「ローヴァーズ」はヨーロッパのクラブでよく使われる名前で「成功を求めてさすらう人」という意味があります。子どもたちには「失敗したからといって諦めずに、成功するまで頑張ってほしい」という意味も込めて、名付けました。松田:素敵な名前ですね。グラウンドだけでなく、来年には宿舎もできるということで、楽しみにしています。カレン:はい。ありがとうございました。
2020年12月08日リーダーシップというと、以前は付いて来い!という強い人物像を描きました。今は仲間と協力しあえる、人のことを気遣うことができる、フォローし合える人のことだとサカイクキャンプのライフスキル講習では伝えています。サカイクキャンプではリーダーシップとは「相手の立場に立って行動できること」を念頭に子どもたちと接しています。キャンプを過ごす中で子どもたちがどう変わるのかを菊池健太コーチに聞きました。(取材・文:前田陽子)サカイクキャンプで選手同士話し合う姿■強いキャプテンシーから気遣いの人へ。リーダーシップ像が変わった「リーダーシップ」というと保護者世代のみなさんは、強い精神でみんなを引っ張る、組織の上に立つといった、強さや行動力、対人コミュニケーションに長けた人だとイメージする方もいるかもしれません。サッカーでいうと、うまい子がキャプテンのように指示を出すようなことを考えるかと思いますが、じつはサカイクキャンプに参加する子たちは、自分から前に出て思いを伝えることが苦手な子が多いのだと菊池コーチは言います。元日本代表の中田英寿さんや本田圭佑選手のような、強い意志で選手を鼓舞するようなリーダー像もありますが、現在のリーダーシップは協力し合え、人のことを気づかうことができ、互いをフォローし合える人だとサカイクキャンプのライフスキル講習では伝えています。1人でみんなを引っ張り、重責を一身に担うのではなく、自分の得意分野は精一杯頑張って、不得意なところはできる子に任せて協力して勝利を目指す、そんな人が現代のリーダーシップと考えているのです。元鹿島アントラーズの内田篤人さんも「プレイ中の気配りが大切」だと言っていましたが、近年はJFAのトレセンでも同様で足元の技術だけでなく、気配りのできる子が評価されています。菊池コーチはこんなエピソードを教えてくれました。以前、サカイクキャンプの練習中にコーチやトレーナーさんが重いジャグを抱えているのを手伝ってくれた子がいたそうです。その子はピッチの中でリーダーシップをとるような子ではなかったそうですが、そういうことも素晴らしいいリーダーシップだとコーチたちは考えているのだそう。「相手の立場に立って行動してくれることもリーダーシップだよ」と、みんなの前で伝えるとその子は嬉しそうな表情を見せ、同時に自信もついたようだったとコーチは振り返ります。自発的に行った行動を褒められ、認められて、「こういうこともリーダーシップなんだ」と気が付いたその子は、以降の練習中も少しずつ声が出せるようになったそうです。■思いは伝えなければ、伝わらない。そのために自信をつけるもちろん旧来の「言葉や行動でみんなを引っ張るリーダーシップ」も発揮できればいいのですが、できない子の方が圧倒的に多いものです。思いはあってもどう伝えたらいいのかわからないのです。でも、大人やまわりの人が行動や言葉を認めて評価することで、自信が付きます。そうすると自信をもってプレイができて、自信をもって話せるようになると菊池コーチ。些細な事でも認められる、受け入れられることで、その自信が人に思いを伝えることの糧になるのだそうです。ですが、すべてを褒めたたえればいいのではなくメリハリが必要なのだそう。「褒めて伸ばすことはいいと思いますが、今の子はどんなプレーでも褒められているので、その子の『特にいいところ』を指導者に伝えてもらっていないように感じます」と語るコーチ。「幼少期から始める子が多いので何となくサッカーはうまくできている子は多いです。キレイにボールもつながるし、サッカーの形はできています。けれど、そういった足元の技術だけでなく自分の考えを持ってプレイの意図は何なのか、『僕はこうしたい』ということを伝えることがサッカー選手には大切だと考えます。それを伝えることで仲間からも意見が出て、前向きな話にしようというコミュニケーションになります。リーダーシップもそうですが、まずは自分の思いを伝える力が大事だと思います」と、サッカーではボールコントロールだけではなく、自分の考えを伝えることが重要なのだと教えてくれました。■自分を知ることで自信がつき、積極的にプレイできるようになるサッカーの技術向上と自信はリンクします。サカイクキャンプでは、例えば守備の時に、積極的にボールに向かって行けたことを良かったと認めたうえで、「行き過ぎると抜かれるから、どこまで追うかタイミングがポイントだよ」などと具体的なことを示すそうです。すると子どもは、まず褒められたことで自信が付き、きちんと話を聞く耳が持てます。「頭の中で理解してトライ&エラーで続けてもらい、うまくいったところで褒めます。そこ子の判断を認めて、そのうえでチャレンジしようと言い続けることが大事」だと菊池コーチ。サッカーはミスの多いスポーツなので、ミスは当然あるもの。たくさんのトライ&エラーが子どもたちに自信を与えることができるのです。ライフスキルをキャンプに導入するにあたり、コーチたちはまず学ぶことからスタートしたそうです。どうしたら子どもたちが心からサッカーを楽しめるんだろう、どうしたらいきいきした顔で過ごせるのか、子どもたちが考えながらプレイするようになるのか、どういう風に声をかけると子どもたちにわかりやすいのか、その辺りの考えを深めていったのだそうです。以前はコーチたちそれぞれの感覚でやっていたことが、ライフスキルプログラムで共通認識ができたので、指導の中で同じワードが出てくるようになりました。そのおかげで、子どもたちも迷いなくキャンプを楽しむことができるようになったと感じるそうです。「今の子はみんな技術がすばらしい」と技術面で以前よりうまい子が増えているとコーチは言います。真似をすることが得意で、動画で見ているのかリフティングなどは低学年の子でも放っておいたらずっとやっているそうです。ですが、キャンプが始まってサッカーをやったらうまくいかない子も多いのだとか。リフティングなど、ひとりで行う自分の世界ではうまくても、サッカーは人と関わって成立するスポーツなので、足元でボールを扱う個人の技術だけでは不十分なのです。チームメイトがいて、対戦相手の仲間がいて、みんなで意見を出し合い勝ちに向かって協力する、本来のサッカーをサカイクキャンプで体験することができます。自分で考え行動すること、上手くいかなくても再度チャレンジする姿勢、周囲の状況を理解し、自発的に協力できることは、サッカーのプレーにもつながっているのです。家では親に甘えてしまって、指摘されるとふてくされてしまう子も、大好きなサッカーを楽しみながら過ごすキャンプでは、同じことをコーチに指摘されても素直に聞く耳を持てたりするもの。サッカーも普段の生活でも一回り成長してほしいなら、この機会にサカイクキャンプに参加させてみませんか?
2020年12月07日サッカー人口は年々に増加し、身近なスポーツとして多くの人が触れてきました。幼い頃からボールを蹴ってきた子どもたちも増え、1993年に開幕したJリーグの発展によって競技の裾野が広がったと言えます。「プロサッカー選手」になりたいと口にする小中学生も少なくなくありません。多くの親御さんたちが子どもたちの夢を応援しています。では、プロサッカー選手になるために何が求められるのでしょうか。今回はU-19日本代表監督を務める影山雅永監督にお話をお伺いしました。(C)松尾祐希■個人技=足元の技術、ではない昨年のFIFA U-20ワールドカップでは日本を2大会連続でベスト16に導いた影山監督。2年半の月日をかけてU-18世代からチームを強化し、その中で多くの選手と接してきました。大人の入り口に立つ高校生、初々しさが残るプロ1年目の選手や飛躍を遂げようとする若手です。彼らと幾度となく膝を付き合わせ、成長を見守ってきました。各年代のトレセンスタッフやアジア諸国で育成年代の指導に携わってきた過去の経験を踏まえ、プロサッカー選手になるためには技術面とメンタル面に必要な資質があると言います。まず、技術面では何が重要なのでしょうか。影山監督は言います。「日本サッカー協会の基本的な考えとして、個人の能力を磨く指針を持っています。そう提唱すると、『個人技ばかりを磨いてどうするんだ』と言われる場合も少なくありません。ただ、私たちは個人の能力を技術だけだと思っていません。状況の認知や技術を発揮する術も含めて個人の能力だと考えているからです。スペインでは『チーム戦術を小学校年代からやっている』という方がいらっしゃるかもしれませんが、(国として)別の指標も持っています。(ジュニア年代の)試合も7対7で行なっていて日本とは異なりますし、リーグ戦のレギュレーションも違います。僕らも勝たせたいのでチーム戦術を取り入れるべきなのかもしれませんが、それよりも小学生や中学生に対しては大人になってから役立つような、個人として持っている力をもっと引き立てるような指導をしていくべきだと思います。もちろん、チーム戦術も将来的には大事。だけど、個人の力を伸ばすためにも早い段階から個人戦術を磨いてほしいのです。個人と戦術で比べるわけではありません。状況を判断する。技術を出す。点を取る。ボールを奪う。個人戦術を将来につながるように磨いて欲しいですね」■日本の指導において、技術よりも意識させるべきこと個人技という言葉に踊らされず、1人で戦う術を身に付ける。ただ、個人戦術を含めた個の力を伸ばす作業は子どもたちのメンタリティーにも影響されます。だからこそ、影山監督は指導者のスタンスが重要だと言います。「子どもたちが意識するだけではなく、指導者が意識させることが大事です。社会性なども含めてこれまでの日本には、自分で意見を出して議論して考えて言葉を発する日常があまりありませんでした。海外では自分の考えを持つことをすごく重要視されていて、何か物事に対して自分の意見を言うのは当たり前。逆に持っていないことが恥ずかしいことですらある。それが日常の会話の中にあって成り立っています。海外では自分としての考えを述べることを日常からトレーニングしているので、日常からそのような会話が自然と生まれます。ですが、日本ではあまり見られません。子どもたちが指導者の顔を見ながらプレーすることがよくあると思います。『何をしたらいいの?』と選手が訴えれば、指導者が解決策を教える。それで止められると『次はどうしたらいいの?』と選手が聞けば、指導者は『次はこうしよう』と伝えます。どんどんそうやって教えて行く。でも、サッカーは得点を取って、得点を取られないようにするスポーツです。サッカーの原理原則を考えながら、指導者が子どもたちに考えさせるように投げ掛けるべきで、他の国以上に意識させなければいけないと私は思います。」■子どもたちの心を焚きつけて本気にさせることが大事手取り足取り教えるのではなく、意見を自ら出し、自分で解決をする。そうした能力を習得するのは簡単ではありません。では、影山監督は子どもたちとどのようにして向き合うべきだと考えているのでしょうか。「トレーニングで自主性を育めれば良いですが、簡単ではありません。そのためには『ゴールを奪う』『ゴールを守る』といったサッカーの原理原則を踏まえ、子どもたちの心を焚きつけるべきではないでしょうか。日本では黙っていると、グラウンドに来た子どもたちはボール回しを始めてしまいます。また、遊びの中でミニゲームしても簡単にはシュートを打ちません。なぜならば、周りからひんしゅくを買うからです。そういうスタンスを子どもたちに伝えていくのは時間を要するので、指導者として導いてあげる必要があるかもしれません。勝利至上主義とは違います。得点を取る。得点を取られたくない。相手からボールを取りたい。相手からボールを取られたくない。本質の部分を焚きつけて、子どもたちをもっと本気になってやらせるべきだと考えています」このように藤枝東は人間的成長を促しながら、かつてのような高校トップを目指しています。同じ高体連で2019年プレミアリーグ王者の青森山田高校らとはまだまだ実力差があると小林監督は感じているそうですが、藤枝東らしく文武両道を貫き、自主性や自立心を生かしながら進化を遂げていければ理想的。そうなるように今後も高いレベルに突き進んでいくつもりです。■指導者が教えるから闘争心が失われる子どもたち本来が持つ本能をいかに引き出し、闘争心を焚き付けられるか--。長年、育成年代の指導に携わってきた影山監督は歳を重ねるに連れて薄れていくと感じているそう。しかし、これはサッカーを教え過ぎることで生まれる弊害でもあると感じています。「闘争心は持っておかないといけません。幼稚園や小学校の低学年の子を集めてサッカーをやると、ゴールを目指して必死にプレーします。倒れてもまた立ち上がってシュートを打ちますし、一生懸命ボールを追いかけます。それは生まれた国が関わっているわけではなく、子どもが本来思っているやりたいことなんです。逆に指導者が教えることで失われる部分かもしれません。特に守備に関してはボールを奪いに行く子どもに対して、『相手に外されてはいけない』と言う時があります。ボールを取りに行くポイントを理解しないといけませんが、ボールが取れるのに飛び込まないで我慢する大人のサッカーを教え込んでしまう場合も少なくありません。闘争心を持ってボールを奪う。自然とやっていれば学べることを学べなくしているのは指導者の責任かもしれません」■内田篤人さんが感じた日本とドイツのサッカーの違い現在、日本を飛び出し、欧州のトップリーグでプレーする選手が増えてきました。海外で活躍する選手が成功している理由の1つはプレーの強度やコミュニケーション能力に長けていたからでもあります。現在U-19日本代表でロールモデルコーチを務める内田篤人氏もその1人です。影山監督は言います。「僕らのチームでコーチをしてくれている内田篤人氏はドイツで初めてプレーした時に『別のスポーツかと思った』と言っていました。身体の大きさも違うし、スピードも含めて能力が高い選手が集まっているから感じた違いかもしれませんが、ボールを取る部分に関してはプレーのインテンシティがまるで違います。外国人の指導者は日本に来ると必ず言及しますし、過去に日本代表監督を務めた外国人監督も『そこを高めなければいけない』と言っていました。ぶつかることを否定して、サッカーはもっと綺麗にやるもの。日本は世界で言われているサッカーとは少し異なる育ち方をしてきたのかもしれません。コミュニケーションもそうです。海外では自分の意見を言います。一歩間違えると日本では生意気に取られてしまうかもしれませんが、意見を言うのは当然で言わないことが罪となる場合もあります。海外でプレーしている日本の選手はそういう環境に身を置いているので意見を言えます。意見を聞いて、ディスカッションする。2018年のFIFAワールドカップ・ロシア大会の時も西野朗監督(現・タイ代表監督)が発信しなくても、要求し合うことが日常になっていたと聞きます。なので、子どもたちに思っていることを言うことは大事だと思いますし、指導者は自然とそれができる環境を整えることが大事だと感じています」■久保建英や齊藤未月が持つ、自ら発信する力はどうやって身に付いたのか今まで影山監督が接した選手の中にも自発的に行動する選手がいたそうです。それが久保建英選手や齊藤未月選手です。「久保建英選手は練習で周りと同じ形でメニューを消化しませんでした。違う発想を持っているので、『それをやらなきゃダメですか?』と聞いてきます。他の選手がトレーニングの意図や方法を理解していない場合もあるので、『最初は周りと同じようにやって、手本を示してくれ』と言っていました。彼はスペインで過ごしていたので、相手が考えていないことをやろうという思考を持っているのかもしれません。また、前回のU-20ワールドカップでキャプテンを務めた齊藤未月選手は自分の意見を持っていましたね。チームに対してもこうしたいというのをハーフタイムや試合前に必ず言っている。子どもたちが自発的に発信できることはそうそうないので、周りにそれを求めていた大人がいたのかなと感じます」本来持っている本能を呼び起こしながら、いかにサッカー選手として成長して大人になっていくのか。指導者はその手助けをするために子どもたちと向き合っていくべきなのかもしれません。影山雅永(かげやま・まさなが)福島県の磐城高校を経て筑波大学に入学。同期の井原正巳氏(現・柏レイソルヘッドコーチ)、中山雅史選手(アスルクラロ沼津)らとプレーし、卒業後は古河電工(現・ジェフユナイテッド市原・千葉)に入団。Jリーグでも活躍し、1995年は浦和レッズ、翌年はブランメル仙台(現・ベガルタ仙台)に籍を置いた。引退後は筑波大学の大学院で学び、1998年にはワールドカップに初出場した日本代表で対戦国のスカウティングを担当。その後はケルン体育大学などで学び、2001年からはサンフレッチェ広島でコーチを務めた。以降はアジア各国でA代表や育成年代の監督を歴任。2009年からはファジアーノ岡山のヘッドコーチに就任し、翌年からは監督として指揮を執った。2017年からはU-18日本代表監督(U-20ワールドカップを目指すチーム)となり、昨年5月のFIFA U-20ワールドカップ・ポーランド大会ではチームを2大会連続となるベスト16入りに貢献。現在はU-19日本代表監督として、来年開催予定のFIFA U-20ワールドカップ・インドネシア大会を目指している。(取材・文・写真:松尾祐希、JFA)
2020年12月02日日本サッカー協会(JFA)の松田薫二グラスルーツ推進グループ長が、賛同パートナーを訪問し、どんな取り組みを行っているのかを聞くこの連載。今回登場するのは、千葉県木更津市に拠点を置く、房総ローヴァーズ木更津FCです。クラブの代表を務めるのは、ジュビロ磐田などで活躍した、カレン・ロバートさん。木更津に素晴らしいグラウンドを建設したカレンさんに「施設の確保」を始めとするクラブ設立の背景、グラスルーツの活動について伺いました。(取材・文鈴木智之)リコプエンテFCが自前のグラウンドを作った理由とは......<グラスルーツ推進6つのテーマ>■カレン・ロバートさんが育成年代のクラブを設立した理由松田:房総ローヴァーズ木更津FCは、JFAのグラスルーツ推進・賛同パートナー制度の中の「施設の確保」「引退なし」「女子サッカー」「障がい者サッカー」「社会課題への取り組み」の5つに賛同してくれています。カレン・ロバート(以下カレン):はい。松田:今回の対談では、なぜクラブを作ろうと思ったのか。そしてグラウンドや施設をどのようにして作ったのかなど、賛同パートナーの方々の参考になるような話を聞かせていただければと思います。カレン:はい。よろしくお願いします。松田:元Jリーガーが育成年代のクラブを作り、グラウンドまで作ってしまったというケースは、あまり聞いたことがありません。カレンさんはオランダやイングランドなど、海外でのプレー経験も豊富なので、ヨーロッパの影響を受けたのかなと推測しますが、クラブ設立のきっかけは、どのようなものだったのでしょうか?カレン:僕は茨城県の土浦市で生まれて、小学3年生まで、つくば市でサッカーをしていました。その後、小学4年生から中学生(ジュニアユース)までは柏レイソル、高校では市立船橋でプレーさせてもらい、千葉県にお世話になりました。松田:レイソルジュニアで全国優勝、レイソルのジュニアユースでは全国3位、市立船橋でも全国優勝をしていますね。カレン:すごく良い環境でサッカーをさせてもらっていたんだなと、プロになって改めて感じました。ヨーロッパでプレーする中で、将来のことを考えていたときに、漠然とですけど「千葉県に恩返しがしたいな」と思い立ち、すべてはそこから始まりました。そのときは、縁もゆかりもない木更津にクラブを作るとは思いませんでしたけど(笑)■野球人口の多い木更津にクラブを作ることになったキッカケカレン:船橋市にJクラブがないこともあって、最初は船橋市でスクールを立ち上げて、少しずつ積み上げていこうと考えていました。それで2013年に千葉県の佐倉市や白井市で、市立船橋時代の仲間とスクールを始めて「5年以内に自前のグラウンドを持ちたいね」という話をしていました。松田:サッカー関係者にとって、グラウンドの所有は、誰もが描く夢ですよね。カレン:そうしたらあるとき、木更津に良い物件があることを知りました。それがイオンモール木更津です。将来的にはクラブチームを作りたかったので、フットサルコートを3面作ることができるのは魅力的だなと。グラウンドは大きい方がいいですから。僕はそれまで、木更津には行ったこともなかったのですが、「イオンモールができるのだから、木更津は今後伸びるんじゃないか?」と思い、グラウンドを作ることにしました。松田:イオンモール木更津のフットサルコートは、カレンさんというか、ローヴァーズが作ったのですか?カレン:僕が現役時代に貯めたお金と、銀行からお金を借りて作りました。土地はイオンモールに借りています。広さはフットサルコート3面でソサイチができるぐらいです。松田:木更津は野球のイメージが強いですが、サッカー熱はどうなんでしょう?カレン:木更津には高校野球の名門、拓大紅陵高校や社会人野球チームなどがあり、野球が盛んな土地柄です。ただ、サッカースクールやクラブを作り、運営していく中で、地域の人達の熱意を感じています。じつはサッカーの需要も高かったのだと思います。子ども達はすごくピュアで、身体能力が高いんです。他の地域の人達に「木更津の子って、足が速いよね」「身体が大きいよね」と言われることも多いです。しっかり育てれば、面白い選手が出てくる土壌はあると思っています。2020年10月にオープンしたローヴァーズドリームフィールド■実力がある選手にはチャンスを与えられるクラブにしたい松田:ローヴァーズにはどのカテゴリーがあるのですか?カレン:まずはジュニアユースを作り、ジュニアは去年、U‐9、U‐10のチームを作りました。それとユース、社会人があり、女子は小1~小6まで募集しています。松田:女子も含めて、カテゴリーは多岐に渡りますね。こんなクラブにしたいというイメージはありますか?カレン:オランダで見てきたものを再現したい気持ちがあります。具体的には、若手育成型のクラブです。オランダはとくにそうですが、日本のように年功序列ではなく、アヤックスでは、ハタチそこそこの選手がキャプテンをしています。それでチャンピオンズリーグで活躍していて。日本ではまずありえないですよね。松田: 実力主義ですね。オフト(元日本代表監督)がヤマハにいた時はそうでしたね。ちょうどその頃、私はヤマハにいたのですが、大卒の22、3歳の選手がゲームキャプテンをしていました。オフトはオランダ人なので、考え的に通じるものがあるのかもしれません。カレン:サッカー選手は、若ければ若いほど価値があります。ヨーロッパに行って、それを気づかされました。将来的には、若い選手を海外に送り出すクラブにしたいです。そのためには、環境も含めて投資をしていくつもりです。■地域に根ざしたクラブを目指す松田:トップチームは Jリーグを目指しているのですか?カレン: J1、J2を最初から目指すのではなく、近い目標としてはJ 3入りを考えています。僕はイギリスでもプレーしましたが、地域に根づいた街のクラブが各駅にあって、5000人、1万人程度のスタジアムに人が集まって、すごく良い雰囲気なんですよね。ローヴァーズがそうなれれば良いですし、そこから先は木更津の方々や地元の企業さんが「上を目指そう」と言ってくれるのであれば、全力で応えたいと思っています。松田:話を聞いていると、すごく現実的で進め方がよくわかっているなと感じました。ヨーロッパでご自身の目で見て、経験しているのが大きいんでしょうね。カレン:僕はJ 2でもプレーしましたが、練習場などの環境が整っていないところもまだまだ多いです。クラブを作るにあたり、まずはそこをクリアにしたいと思いました。今年の10月にオープンした「ローヴァーズドリームフィールド」(人工芝グラウンド)を作ることができたのは、かなり大きかったと思います。
2020年12月01日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は、初心者に多い「アウトサイドでターンができない」という悩みを改善するトレーニングを紹介します。最初は小指の付け根辺りでボールを触ることが難しいかもしれませんが、このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、足の外側を使ってボールをうまくコントロールしながらターンする動きを身につけることができます。ぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.親の前に目印を置く2.子どもはドリブルをしながら目印をアウトサイドターンで回って戻る3.足のどの部分でボールを触るか意識しながら何度か前へのドリブルを繰り返す4.目印に来たときに親が取りに来るので素早くアウトサイドターン5.慣れてきたら、スピードを上げる6.それができるようになったら、親はDF役としてターンするときにボールを取りに行く速さを調節する【ポイント】・小指の付け根あたりでボールを触ってターンする・慣れるまではボールをよく見る・ターンしたときに相手とボールの間に自分の身体を入れると取られなくなる・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!
2020年11月30日人数が少なく全学年一緒に練習せざるを得ないこともあるが、上級生の保護者が納得しない。「低学年にしかメリットがない」「下の子たちと練習しても高学年はうまくならないのでは」「下の子たちのお世話係じゃない」など不満の声が。年齢ミックスで練習することで上級生も成長することをわかってもらうにはどうすればいい?とのご相談です。これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、年齢ミックスで上級生にもたらされる5つのメリットをご紹介します。(取材・文島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<相手をつかんでまで止める、競り合いで負けると「死ね」と暴言を吐く子、どう指導すればいい?<お父さんコーチからの質問>こんにちは。小学校のスポーツ少年団で全年齢を指導しています。これまで何度も紹介されているかもしれませんが、改めて異年齢やレベルがバラバラのチームで上級生(または上手い子)が、下の子たちと一緒に練習することのメリットを教えてください。所属人数が少ないのでどうしても年齢ミックスで練習をせざるをえないのですが、学年が上の子たちの保護者は、「小さい子たちと練習させてもメリットがあるのは下の子たちだけで、上級生にメリットがないのでは?」「レベルの違う(下手な)子たちと練習しても上手くならないのでは?」「小学生年代ではまだ指導者に与えてもらうことがメインなので、5、6年生も下級生のお世話係ではなく、ちゃんと指導してほしい(技術、戦術をコーチから与えてほしい)」という方も少なくありません。一人で全学年を見ているので、時間的にも限りがありますし、年齢ミックスで練習することで上の学年も伸びるということを理解していただきたいのです。異年齢と一緒に練習することで伸びるスキルなど、改めて具体的に教えてください。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。保護者の方々からなかなか理解を得られず、苦戦している様子ですね。でも、実践されている異年齢での活動は、とてもいいことです。ぜひ横割りに変えたりせずに粘り強く取り組んでください。■「僕らが言うと小学生が文句を言うから、言いたくない」という中学生例えば、私が地元の大阪で行っている「サッカープレーパーク」では、上は中学生から、下は小学校低学年の子どもも来ています。縦割りで一緒にミニゲームをすると、中学生が口をとがらせて苦情を申し立てます。「小学生がひとりで勝手にドリブルで行っちゃうから困る」「ボールをすぐに大きく蹴るから、やりたいサッカーができない」私が「小学生に自分たちから指示を出して動かせばいいじゃない?」と言っても、「僕らが言うと文句を言うから、言いたくない」と言うのです。少子化もあって、中学生、小学生の双方が、兄弟、姉妹やいとこ、親戚といった異年齢の子どもとのコミュニケーションの経験がありません。中学生には、どうやったら年下の小学生を動かせるかを考え、言い方やタイミングを工夫することができない。小学生は、お兄さんたちの言うことを聞いてサッカーをしたら、上手くなったり、いいことがあると思えないのです。経験していないからです。■年齢ミックスで練習すると上級生も確実に成長するそれぞれがもっと小さいときから私の指導を受けて育っていたら、もっと違う状況になるはずですが、一緒にサッカーをしてきていないため理解できません。「どうして小学校の低学年と一緒にやらなきゃいけないんだ?」と戸惑っている姿が見えます。例えばそんな姿を見かけたら、上級生の親御さんは心配になって「みんな同じ学年で能力が似通っている横割りのほうがいい」と思うのかもしれません。しかしながら、縦割り集団で上級生は確実に成長します。年上の子が異年齢で活動するメリットはたくさんあるのです。ここでは五つに分けてお話ししましょう。■コーチングスキルやカバーリングのスキルなどサッカーの技術も高まるまずひとつめ。上級生は、コーチングを覚えられます。「こういうとき、どこに動いたらいい?」と問いかけるコーチングができるようになります。ボールをもらいたいときは、「ほら、ワンツーやるよ」と声を出しながらパスをすればいいとわかります。二つめ。力の差が大きいと能力が高い子のほうが伸びないのではないかと思いがちですが、それは違います。足が速くて技術もある子が、足の遅い子が間に合うようなパスを出してあげたり、試合でその子のぶんもカバーしようと集中し懸命に走ったりするようになります。三つめ。サッカーのスキルも、異年齢集団で十分鍛えられます。例えば、高学年対抵学年のゲームは、高学年にペナルティをつけると白熱した戦いになります。小さなコートなら4対6、もう少し大きければ5人対8人でやるなど、上の学年の子たちに負荷をかけるといいでしょう。負荷のかかった状況で、3人に囲まれたりしてもボールをキープできたり、数的不利のなかで頭を使ってサッカーをするトレーニングになります。ペナルティは、人数以外でもつけられます。「ドリブルはダメ。パスしかできません」とか「すべてダイレクトプレーでやってください」などと厳しめな条件を付けます。技術も判断スピードも必要なので、体格やスピードに劣る下級生が相手でも「頭」が疲労します。どんなペナルティをつけるか、ルールにするかを、どんどん考えてください。何かを教え込むのではなく、そんなふうにルールや方法を工夫できるのが指導者の役目なのです。■高学年で周りに追いついてない子は成功体験を積んで自信をつけることができる四つめ。サッカーに対して、主体的に臨む姿勢が生まれます。低学年の子どもと一緒に練習する際は、いい意味で余裕があるので「自分たちがうまくなるためには、どうしたらいいのかな?」と考えてもらいます。例えば、低学年が保持しているボールを、体をぶつけて奪いに行くのではなく「パスカットでしか奪ってはいけない」という高学年ルールを自分たちで考え出すこともできます。考え出すために、指導者がヒントをあげてください。一から十まで大人が伝えるのが指導ではありません。技術や戦術を磨く方法を、高学年の子どもたち自身が生み出すこと。そういったことも、異年齢のなかで行うことで出てきやすくなります。五つめ。高学年でも能力がまだ同学年に追いつかない子どもにとっては、自分も対等以上にやれて自信がつきます。相手は年齢が下であっても、うまくできたプレーのイメージをつかんだことには変わりありません。そういった子たちは同学年の横割りだと、うまい子に遠慮したり、すぐパスをしてしまって頼ってしまう部分があるので、そういった遠慮の解消にもなります。■指導者が最初から答えを持ってなければいけないわけではない(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)サッカーのコーチングは、指導者があらかじめ答えを持ってやらなくてはいけないわけではありません。逆に答えを持たず、子どもたちの思考や活動に広がりを与えてくれる。それが、異年齢の集団での活動だと思います。こんなこともあるよね。答えはひとつじゃないよ。自分のコーチがそんな見方をしていれば、より多くの学びを子どもたちに授けられると思います。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2020年11月27日「将来海外でプレーしたい」そんな純粋で大きな夢を抱く子どもたちに「正しい努力をさせてあげたい」。そう願うのが親の本音ではないでしょうか。新刊『世界を変えてやれ!―プロサッカー選手を夢見る子どもたちのために僕ができること』では、「日本と世界を繋ぐ橋渡し」役の著者・稲若健志氏が、将来を夢見る選手たち、保護者、指導者に向け、アドバイスを送っています。改めて稲若氏に聞いた、子どもたちの夢を叶えるために知っておきたい世界の常識、最終回となる今回のインタビューは、問題解決能力やチャレンジし続ける姿勢を身につける方法、子どもの視野を広げるために親はどうすればいいかについてお送りします。<<第三回:練習量が多い=一生懸命ではない。元レアルのサルガド氏が指摘する日本の保護者の「誤った認識」■若ければ若いほど柔軟に感覚を変えていける――世界に出たとしても誰もが必ずプロサッカー選手という夢を掴めるわけではありません。サッカーから離れたあとにグローバルな社会で生き抜く人間力が身につけられる、というのが稲若さんの考え方の一つです。稲若さん自身、若くしてアルゼンチンにサッカー留学したことがきっかけとなり、今に繋がっていると思います。「僕の場合、何も助けとなるものがなかったことが逆に良かったと思っています。最近、アフリカに3回ほど行きましたが本当に良かった。アフリカに求めるものは『何もないこと』ですが、現代の便利な世の中と比べられるからすごくいいんです。僕が若いときにアルゼンチンにサッカー留学した当時、携帯も何もなかったので、自分で一から調べないと生きていくことができませんでした。公園に行って集まってくる子どもたちに飴をあげて、聞いた言葉を家に帰って辞書で調べることを1年くらい繰り返して、それで言葉を覚えたんです。わからないことを自分でどうにかする方法を覚えたし、そういう姿勢が今の僕を作っています。これがダメならば次はこれだ、という次の次の次の選択肢まで考えられる思考になっていったのですが、僕がそうだったように、人は若ければ若いほど柔軟に感覚を変えていけると思います。海外に飛び出して行けば、頼る親もいないし、自分から人に聞かないとわからないし、聞くための言葉すらわからないから、必死に言葉を覚えるという良い循環になると思います。日本だと周りが簡単に教えてくれるので、自分で解決する力はなかなか身につきません。ちなみに、僕の会社でサッカー留学する場合は、朝起きたら子どもたちはまず部屋の掃除をします。掃除から始まり、ご飯を食べて、それから練習をする、という規律の中でしっかりと生活してもらいます。日本にいれば、朝起きてからまず掃除はしないですよね。普段とは異なる新鮮な感覚で生活ができることもサッカー留学の良いところだと思います。親がいない環境になれば、自分でやるしかありません。日本にいれば失敗すらできないようになっています。失敗する前に親が失敗を防いでしまうこともありますからね。ある程度の学年の子でも、暑かったら(子どもに)帽子をかぶらせるかどうかも親が判断してしまうのが今の日本です。この点、海外から帰国すると子どもが自分で洗濯をするとか、掃除をするとか、食器を洗うとか、そういう行動をする姿に親御さんたちは子どもの成長を感じるようです」■親の視野が広がれば、子どもの視野もひろがる――今回書かれた書籍『世界を変えてやれ!』の中には年長さんがサッカー留学した話も収録されていますが、稲若さんは年齢に関してはどう考えていますか?「子どもが海外に行きたいと思ったときがタイミングだと思います。もちろん、人それぞれタイミングは異なります。子どもが海外に行きたいと思うきっかけには、出会う人とか、出会うための環境にいるとか、そういう影響が大きいです。その年長さんのケースは、年長さんで海外留学するかどうかの最終判断は親が決めることなので、こちらもその判断を受け入れてスペインに行きましたが、特に何も問題なく終わりましたよ。その親御さんは『うちはこの子に6歳になるまで自分たちの愛情は精一杯注いだので、これからは他の人の愛情でどう育つのか見てみたいのでスペインに送ります』と初めは悩みながらも決断されていました。ほとんどの親御さんが言うのは『うちの子はまだしっかりしていないので......』『迷惑をかけるので......』ということです。そうやって子どもにブレーキをかけてしまうのですが、迷惑ではないし、わが子を心配する気持ちもわかります。ただ、これだけは覚えておいてください。そういったご家庭の場合、わが子が親のステイタスを越えることは、まず無いです。親の視野が広がれば、子どもの視野が広がります。親がチャレンジを続けるのであれば、子どもも間違いなくチャレンジを続けます。自分の行動によって子どもの将来に多大なる影響を与えると思ってください。大事なのは、子どもが真剣に悩んだ結果、自分で決めたときに親が背中を押すことができるかどうかです。それは親が決めることであり、子どもの未来を左右できることなのです」サッカーでもなんでも、失敗することで「じゃあどうすればいいか」を学ぶ機会になります。親がチャレンジする姿を見せないのに、子どもが失敗を恐れずチャレンジする力を身につけられるでしょうか。子どもの成長や自立、社会で生きていくための思考力や判断を身につけてほしいと願っているのに、わが子を心配しすぎてブレーキをかけてしまうのではなく、子ども自身が考えて決めたことを後押ししてあげることが最大のサポートなのです。<<第三回:練習量が多い=一生懸命ではない。元レアルのサルガド氏が指摘する日本の保護者の「誤った認識」稲若健志(いなわか・たけし)株式会社ワカタケ代表。1979年生まれ。神奈川県出身。藤嶺学園藤沢高校卒業後、ディエゴ・マラドーナに憧れアルゼンチンに渡航しプロ契約を結ぶ。愛媛FCや栃木SCなどでプレーしたのち引退。帰国してからも10年以上に渡り、毎年アルゼンチンを訪れ、指導や教育を学び、26歳のときに株式会社ワカタケを設立。中井卓大選手の挑戦の支援を通し、レアル・マドリードに強いパイプを持つ。レアル、アトレティコ、セルタなど日本でのキャンプ及び海外キャンプのライセンスを持つほか、世界各国につながりを持ちリーガ主催のジュニアの大会への出場権も保有。世界を子どもたちに見せるべく、年間1000人以上の子どもたちに海外にいく機会を作っている。
2020年11月26日サカイクキャンプ独自のカリキュラム、サッカーを通じて社会を生きる力を育む「ライフスキル」プログラム前回はサカイクキャンプで身に付くライフスキルの中から「感謝の心」と「コミュニケーション力」を中心に菊池健太コーチにお話しを聞きました。いずれもピッチ上ではもちろん、学校など普段の生活でも必要な力です。具体的な言葉や方法を示すのではなく、自分で考えさせる伝え方をすることで、感謝の心とコミュニケーション力を引き出しつつ、考える力も同時に身に付けられます。(取材・文:前田陽子)サカイクキャンプでは練習中や試合のハーフタイムに子どもたちどうしで「何ができるか」「何をすればいいか」を話し合う機会がたくさんあります<<足元の技術習得より「ごめん」「ありがとう」が言える、人を気遣えることがサッカー上達につながる理由■サッカーができるのは親のおかげ。子どもたちはそう思っていますサカイクキャンプではまず「サッカーは何人でするスポーツ?」と聞きます。そして「誰がいるからサッカーができると思う?」と。すると子どもたちは「親」と口を揃えます。普段子どもたちが親に対して「サッカーをできること」についてお礼を言うことは少ないと思いますが、本当はちゃんと感謝しているのです。でも、気持ちは言葉に出して伝えなければ相手に伝わりません。サカイクキャンプのライフスキル講習では、伝えることの大切さも話しているので、キャンプから帰った時に親御さんに「ありがとう」が言える子になっているはずです。次に、サッカーをできる理由を問うと、一緒にプレーする仲間や審判の声が上がります。子どもたちは相手チームのことを敵と言いがちですが、敵ではなくサッカーをする仲間です。「相手がいないとサッカーはできないから、相手選手だよね」と話します。相手選手をリスペクトすることも感謝の心に通じます。相手選手と同時に大切なのがチームメイトです。子どもたちの中でもどうしても上手い下手で優位が付いてしまい、うまい子が全体を仕切ってしまうことがよくあります。その際には「サッカーを楽しむ権利は全員が持っている。唯一それがみんなに均等にあることでそれを奪う事は許されないことだよ」と伝えるそうです。「下手だからチームに入れないとか、Bチームだからあっち行っていろとか。少なからずまだこういう態度があるので、それは絶対にダメなことで、してはいけないことだ」ということをきちんと理解できるまで伝えると菊池コーチは教えてくれました。サカイクキャンプは、初めての子からトレセン活動の子まで誰でも参加できます。できる子に「サッカーはみんなで楽しむスポーツだから、誰かのミスをカバーしてあげることが大事。誰かのミスをつついているようでは勝つことはできないよね」と声をかけると、「よし、やろう!」と士気が高まることも多いのだとか。中には「あいつのミスじゃん、なんで俺がカバーしないといけないの」といった他責的な発言をする子もいるそうですが、「サッカーがうまい子は、このキャンプ以外の場所にもたくさんいて、その時々によっては君も"上手じゃない方"になるかもしれない。その考え方は間違っているよ」ということを言い聞かせるそうです。そして、そういった子をわざとうまいチームにいれてみたりするのだそう。そうるすことで考え方を変えてほしいし、サッカーの本質を理解してほしいと考えているからだと菊池コーチは言います。■コミュニケーションは"目的のために前向きな話をする"こと試合中に声を出してコミュニケーションを取ろうと言われても、どんな声かけがいいのか、どうしたらいいのか分からない子が多いのが現実です。「どんなコミュニケーションがあるの?」と聞くと、どうしても言葉にすることが多く出てきます。今年は新型コロナウイルスの影響で難しいですが、ハイタッチや抱き合って喜んでいるシーンなどの写真を見せて「これもコミュニケーションだよね」とコミュニケーションの方法は様々あることを伝えています。サカイクキャンプのコーチたちが考えるコミュニケーションは、目的のために前向きな話をするということ。何でもかんでも伝えていいよとなると、「おまえちゃんとやれよ」「今のボール取りに行けよ」「シュート決めろよ」など味方にダメ出ししてしまいがち。これもコミュニケーションのひとつと言えるかもしれませんが、後ろ向きでマイナスなこと。前向きな話をすると雰囲気も良くなって結果も良くなります。ですが、その際に具体的な言葉を教えることはありません。サカイクキャンプでは、試合のハーフタイムには必ずコーチたちが「どんな話をしようか」と声をかけます。負けているとマイナスな言葉が多くなるので、「うまくいかないなら逆転するためにどうすればいいだろう、何ができるかを話すといいよ」とアドバイスをすると前向きな会話が増えてくるそうです。ですが、残念なことに負けているとどうしてもあら捜しになってしまい、ダメだったところを見てしまう子が多いのだとか。子どもたちは、普段接している人が話しているように言うのでしょうね、とコーチたちは見ています。子どもたちが発する言葉を聞くと、「チームで結構厳しく言われているんだろうな」とか、周囲に前向きな言葉をかけられる子は「チームでもいい声をかけてもらっているんだな」というのはわかるものだそうです。子どもは体験からしか言葉が出ないので、周囲の会話の質が自然と身に付いてしまいます。親御さんたちにもいつもどんな言葉をかけているのかを、振り返ってもらえるといいかもしれません。キャンプでは「伝える」ことを大事にしていますが、それは声に出すことだけではありません。時に目線やしぐさ、アイコンタクトでのコミュニケーションをとることもあります。コーチから子どもたちへ親指を立てて「今のプレーはグッドだよ」とジェスチャーも。どの子もグッドサインを出してもらえると嬉しくて笑顔になるものです。高学年になるとコーチがしていることをマネしてくれるなど、コミュニケーションのレパートリーも増えていくことも多いそうです。■環境ができれば、子どもたちは自然とコミュニケーションをとるようになるキャンプで泊まる宿舎は、他の利用者も泊っています。施設内でほかの利用者に出会った際や施設の方へ「おはようございます」「こんにちは」など、コーチたちが積極的にコミュニケーションをとるところを見せることで、子どもたちも自然とあいさつができるようになるそうです。感謝の心にも通じますが、宿舎の人へ「ありがとう」が言えるのはとても喜ばしい光景です。うまくいかない事に対して前向きな意見を言うなど、自分のチームの戻ってからも発言できることを期待しているとコーチは言います。サカイクキャンプに来た時は引っ込み思案でもじもじしている子もたくさんいますが、3日間で確実に変わるそうです。子ども同士が慣れてくるというのもありますが、初日と最終日では全く違う表情、態度になると言います。最終日はずっと一緒にやっていたチームのような雰囲気になり、住所を交換して年賀状のやり取りをしたりする子たちもいるそうです。コミュニケーションは無理やり取らせるものではありません。どんなことをしたらいいかというヒントを与えてあげることが大事だと菊池コーチは言います。大人が環境を整えてあげれば子どもたちは自然とコミュニケーションが取れます。ですので、子どもがいろんな人とお話するようにあれこれ口をだしたり、演出してみたりする必要はありません。大人はあまり介入しないことが一番だとサカイクキャンプでは考えています。<<足元の技術習得より「ごめん」「ありがとう」が言える、人を気遣えることがサッカー上達につながる理由
2020年11月24日「将来海外でプレーしたい」そんな純粋で大きな夢を抱く子どもたちに「正しい努力をさせてあげたい」。そう願うのが親の本音ではないでしょうか。新刊『世界を変えてやれ!―プロサッカー選手を夢見る子どもたちのために僕ができること』では、「日本と世界を繋ぐ橋渡し」役の著者・稲若健志氏が、将来を夢見る選手たち、保護者、指導者に向け、アドバイスを送っています。改めて稲若氏に聞いた、子どもたちの夢を叶えるために知っておきたい世界の常識、第3回目のインタビューは、スペインの親から学ぶ、子どものサポートに必要な距離についてお送りします。<<第二回:レアル中井選手、ビジャレアル久保選手のように若くして海外へ渡るメリット、デメリットとは■家に帰ってからもサッカーの話はしない――子どもの夢を叶えるためにサポーター役となる親ができることはどんなことでしょうか?「まず、これは触れておかないといけないのですが、海外と比べたとき、日本の親は指導者と距離があります。あまりグイグイ聞くことはありません。なぜ聞かないかといえば、自分の子どもを試合に出してもらえなくなる怖さを感じているからです。海外のクラブはビッグクラブでも小さなクラブでも、親が『うちの子は何が足りないのですか?』などと監督にガンガン聞きにいきます。スペイン人はLINEのグループに監督も入っているほどで、そこで親は言いたい放題です。ただ、指導者側も親に何を言われようと何でも答えられるし、話ができます。『どうして試合に出られないのか?』と聞かれれば論理的に理由を説明できます。論理的に説明できないと、親を納得させることができないことが多い。だから指導者と親の距離が遠くなってしまうのだと思います」――欧州では親が子どもにサッカーを教えることを明確に規制しているクラブもあると聞きます。その点は指導者と親の関係についてしっかり線引きをしているのですね。「レアル・マドリードにも『親は親でありなさい』という考え方があります。親が子どもを指導することの何が問題かと言えば、試合中に子どもが親の顔を見るようになってしまうのです。すると指導者の話を聞かなくなるし、リスペクトもなくなる。それは子どもにとってもチームにとっても良いことではありません。スペイン人は自分の子どもに対してサッカーのことはあれこれ言いません」――スペインの親御さんたちは試合中も何も言いませんか?「もちろん、審判にはすごく文句を言いますよ(笑)。あとは『がんばれ!』とか『行けるぞ!』とか、応援者としての声は当然ありますが、監督がいる前で、親が我が子に『ここをこうしろ!』などと言うことはありません。家に帰ってからもサッカーの話はしないという感覚は多くの人たちが持っています。これが日本の場合、親は指導者には指摘することはなくとも、自分の息子にはあれこれ言ってしまいます。場合によっては、その子のお父さんが監督をやっているチームもあるし、公私混同になってしまうと子どもはきついです。海外ではそういうケースはほぼありません」■日本の親は真面目ですごく一生懸命――例えば、レアル・マドリードのミッチェル・サルガドは日本に何度も来日してサッカークリニックの指導などに当たっていますが、日本の親についてどう言っていますか?「日本の親は真面目ですごく一生懸命。でも、『一生懸命だからこそ教え過ぎてしまう、これが日本だ』と言っています。練習に置き換えれば、それは練習量の多さに変わり、量をこなせば努力は報われると信じている。しかし、サルガドも海外の指導者たちも『一生懸命とはそういうものではない』と言います。本来あるべきは『一生懸命だからこそ何かを言うのを我慢しましょう』という姿勢です。子どもが親にあれこれ言われればプレッシャーに感じるし、伸びるものも伸びません」――では、親としてのベストなサポートとは何でしょう?「シンプルですが、親のやるべきことをしっかりやる、ということです。しっかりご飯を作り、しっかり食べさせて、練習に連れていく。そしてグラウンド内のことは監督やコーチに任せる。子どもが悩んでいるときに、親が子どもの変わりに指導者に聞いてあげるのはいいと思いますが、日本の場合、多くは指導者に聞く前に悩んだままチームを辞めてしまうケースが多い。それは違うのではないでしょうか。それも指導者と親の距離が遠いことが原因にあるようには思いますが」――サッカーで留学することについても伺いたいのですが、子どもが留学したいと言い出したときに親はどうサポートすべきでしょうか。「子どもが何かのきっかけで『海外に行きたい』となったときに、親の反応は二つです。驚いてしまうか、行かせてあげようと思うのか。驚くというのは親が心の準備ができていない証拠です。そういう親はだいたい『まだ早い』などと言って(子どもを)否定しがちです。早いなどと言っているうちに限りのある留学の枠は埋まってしまい、チャンスを逃します。一方、海外経験がある親は心の準備ができているのですんなり子どもの背中が押せます。つまり、子どもどうこうよりも親の問題の方が多いということです。頭ごなしに『まだ早い』と否定されてしまった子どもは、ひとまず我慢して、やがて諦めて、結局はやる気がなくなってしまうものです」――サッカー留学について、親として必ず押さえておくべき情報などアドバイスがあればお願いします。「サッカー留学には適正価格があり、国によって異なりますが、相場は2か月で50万円ほどでしょうか。べらぼうに高い価格の会社もありますし、逆に価格とクオリティが合っていると感じれば自ずと人は集まります。その見極めはしっかりして下さい。また、注意すべきは、留学に行く国を狭めないことです。欧州に行きたい、南米に行きたい、という姿勢に固執し過ぎることなく、もし叶わなかったときでも別の国を選択すれば留学を経験するチャンスはあるし、物事を大きな面で捉えてチャンスを掴まえることが重要だと思います。僕は今までいろんな国に行きましたが、どの国に行っても大きな刺激があることは間違いありません」子どものためと思ってやっていることがプレッシャーになって、伸びるものも伸びなかったら逆効果ですよね。また、対話できれば解決の糸口が見つかるかもしれないのに、悩みを抱えたまま辞めてしまい、結果としてより悪い状態になることもあります。ピッチ再度ではうるさく喚くけれど、指導者としっかり対話ができ、家で子どもを追い詰めないスペインの保護者の姿勢は親のサポートのあり方として参考になる部分があるのではないでしょうか。<<第一回:世界のクラブが日本人選手に求めるスキルとは。レアル中井選手から学ぶ世界で生き抜く方法稲若健志(いなわか・たけし)株式会社ワカタケ代表。1979年生まれ。神奈川県出身。藤嶺学園藤沢高校卒業後、ディエゴ・マラドーナに憧れアルゼンチンに渡航しプロ契約を結ぶ。愛媛FCや栃木SCなどでプレーしたのち引退。帰国してからも10年以上に渡り、毎年アルゼンチンを訪れ、指導や教育を学び、26歳のときに株式会社ワカタケを設立。中井卓大選手の挑戦の支援を通し、レアル・マドリードに強いパイプを持つ。レアル、アトレティコ、セルタなど日本でのキャンプ及び海外キャンプのライセンスを持つほか、世界各国につながりを持ちリーガ主催のジュニアの大会への出場権も保有。世界を子どもたちに見せるべく、年間1000人以上の子どもたちに海外にいく機会を作っている。
2020年11月20日部活かクラブチームか、本人が悩んで決めた進路。学業との両立、努力を続けることを約束して進学したのに、テストは平均点よりずっと下、内申点は「2」。サッカーでもチーム練習以外ではやる気が感じられない。大事なことを伝えようとすると機嫌が悪くなり怒鳴って暴れる。シングルマザーで下の子はまだ6歳なのに、生活が長男中心に回っているのに意欲が感じられず、サポートがばかばかしいと思えてくる......。とのご相談をいただきました。子どもが思春期、反抗期を迎えた時どうすればいいのか、漠然と不安に思っている保護者も多いのでは?今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとにアドバイスを授けますので参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<怒りっぽくチームで浮いてしまう息子を何とかしたい問題<サッカーママからのご相談>子どもは中学生なのですが相談させてください。サッカー中学年代を部活動で過ごすのかクラブチームで過ごすのか、本人が悩み考え、クラブチームで高校サッカー強豪校を目指すと決めました。学業とサッカーの両立が私との約束、努力を怠らないことがチームの代表との約束です。ですが、蓋を開けてみたらテストの点数は平均よりはるかに下で内申点は『2』。サッカーも、チームの練習の時以外は全く意欲が感じられません。大事なことを伝えようと私が口を開けば、すぐに機嫌が悪くなり怒鳴って暴れます。ゆっくり休む・栄養を取る等の心掛けもゼロ。朝も起きれず、夜練の用意もギリギリまでやらない。とにかく様々な事にやる気が感じられません。私はシングルマザーで、まだ6歳の弟もいます。生活のあらゆる事が長男のサッカーを中心に回っており、家族の協力や我慢の元に成り立っているこの生活。協力や応援していること自体がバカバカしいとさえ思えてくる今日この頃です。思春期・反抗期を迎えた13歳の男の子にどう接したら良いのでしょうか?<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただき、ありがとうございます。シングルマザーで6歳と13歳の兄弟を育てているお母さんに頭が下がります。日々、大変なことがたくさんあるでしょう。■思春期は「四六時中誰かとけんかしたい状態」私のママ友もシングルマザーがたくさんいます。私自身はシングルではないけれど、新聞記者の夫は土日も不在のため子どもが小さいときはシングルのママとその子どもたちとよく遊んでいました。土日は他のご家庭はお父さんがいるからです。そんなこともあって、他に何かの取材でお会いした方を含めると多くのシングルマザーと知り合っています。みなさん時間がないため、子どもがきちんとやっているか気になります。忙しいので「あ、そういえば、テストの点はどうなったのかな?」とか「サッカーは?」と、時々思い出したように子どもに目が向きがちです。「面」ではなく「点」で見ているため、どうしてもマイナス面ばかり抽出してしまいがちです。そして、このことは兄弟であれば第一子に対して顕著です。仕事も育児も大変なので、お兄ちゃん(お姉ちゃん)、ちゃんとやってよ、と依存する感覚が少なからずあるように思います。これは共働きでも同じだと感じます。「しっかりやってほしい。お願いだから」という感覚は、自分の不安を解消したい、安心したいという思いではないでしょうか。それゆえに結果を求め、指示命令が多くなります。よって、最も重要な「気持ちを聴く機会」を逸してしまいます。特にご長男さんは13歳なので中学1~2年生でしょうか。お母さんがおっしゃるように「思春期・反抗期」です。この時期は急速な体格の変化もあってホルモンバランスが崩れます。以前、小児心理医の先生に「女の子であれば一年中生理の状態、男の子は四六時中誰かとけんかしたい状態」と聞き、納得したことがあります。■反抗できるということは、親を信頼している証拠そこで、私から三つアドバイスをします。ひとつめは、お母さん自身が自分に自信を持つこと。上記の話をされた先生は、思春期の子どもに反抗されると悩んで受診する親たちに向かって「よかったねえ。おめでとう」と祝福していました。なぜなら、親に対して自分の感情丸出しで反抗できるということは、親を信頼しているからです。どんな態度を見せても、親は自分を嫌わない、という自信がある。それは息子さんにとって、家庭が安全・安心な場所であるということ。それまでの子育てが悪くはなかった証だと、その先生はおっしゃっていました。つまり、私もよくセミナーで伝えていますが、「くそばばあ!」などとわが子に言われたら、子育ては成功。「ほほう、来たね、来たね、思春期おいでなすったね」と、どんと構えてください。お母さんの子育てが悪かったから荒れているのではないのですから。例えば、夏が過ぎるころ台風が訪れますが、豪雨強風が襲来することで、海水がかき混ぜられサンゴが生きていくのに適切な海中環境になるそうです。それと同じように、息子さんもプンプンすることでストレスを発散しているのです。■やきもきするかもしれないが、無駄に世話を焼かないことふたつめ。上記のように解釈したのち、心得てほしいのは「無駄に世話を焼かない」ということです。前述したように、思春期は人生で初めて自己認知、自己覚醒する時期です。大人から見れば些細なことが気になってきます。そのように、子どものほうが大人に近づき変化をしているのに、親のほうがいつまでも小学生のときと同じ対応をしていれば歪(ひずみ)がうまれるのは当然です。したがって、息子さんにかかわるあれこれを注視しないことが肝要です。内申点「2」も、練習のとき以外で意欲が感じられないことも、朝起きられないことも、練習の用意をギリギリまでやらないことも、見て見ぬふりをしてください。■大人の説教を素直に聞ける時期ではない。親は「言う」より「聴く」を意識して三つめは「伝えなければ(言わなければ)よりも、聴かなければ」を心がけてください。ご相談文に「大事なことを伝えようと私が口を開けば、すぐに機嫌が悪くなり怒鳴って暴れます」とあります。この時期の子どもたちは、大人のお説教を素直に聴ける精神状態ではありません。だって、四六時中誰かとけんかしてやっぞコノヤロー!と構えている(大袈裟ですが)状態なのです。無駄なことはやめたほうがいいでしょう。それに、お母さんのおっしゃる「大事なこと」を、すでに息子さんはわかっています。強豪校に行くのなら生活管理をきちんとしなくてはいけないこと、内申点が2のままではいくらサッカーがうまくても、推薦の範囲内の点数でなかったりすること。受験できる学校の範囲も狭まること。多少のずれや表現の違いはあるかと思いますが、お母さんが「ちゃんとしてほしい」と望んでいることは、息子さんもわかっています。何より、自分自身「ちゃんとしたい」と思っているはずです。でも、何かで心が乱れたり、サッカーや勉強がが上手くいかなかったりすれば、落ち込んだり、やる気をなくしたり、ゲームや友達とのおしゃべりに逃げたりします。前述したように、思春期は自分を客観視する最初の時代です。「ああ、おれって駄目な奴だ」「大してサッカー上手くないじゃん」とか「勉強もダメじゃん」と自分と向き合っています。大人でもダメな自分と向き合うのって怖くないですか?大人になっても向き合えない人、お母さんの周りにもいますよね?息子さんはそこに初めて直面している。よって不安定になるのは無理ありません。■ニコニコからプンプン、突然機嫌が変わる時期に親はどうすればいいか(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)わが家の娘が中学2年生の頃、私たち親は彼女を「いきなりプンプン」と陰で呼んでいました。ニコニコ笑っていたかと思うと、突然機嫌が悪くなるのです。ある日、夫、娘、私と3人で出かけたとき、夫が娘に話しかけても返事をせず、何回目かに振り向いて「うるさいっ!」と怒りました。私たちは(いきなりプンプン、出たね)と目くばせしながら知らん顔して歩いていると、娘は道端で立ち止まりシクシク泣き始めました。「自分でもわかってるの。でも、そうなっちゃうの。そういう自分が大嫌いなの」私は彼女の肩を抱き寄せ「大丈夫だよ。いま思春期だから仕方ないんだよ。ママたちはどんな○○でも大好きだよ」と話しました。息子さんも自分がどうするべきかわかっていいます。だから、ここは大人であるお母さんのほうが豪雨強風を受け止めてあげてください。去る子は追わず、来る子は拒まず。「いつでも話を聴くよ」ということのみ伝えたら、あとは一緒にプンプンしていていい。子どものほうから何か言ってきたときは話を聴きましょう。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2020年11月19日サカイクキャンプ独自のカリキュラム、サッカーを通じて社会を生きる力を育む「ライフスキル」のプログラムでは、子どもたちが生きていく中で必要なスキルとされる「考える力」「リーダーシップ」「感謝の心」「チャレンジ」「コミュニケーション」の5つの力をサッカーをしながら学べます。親御さんたちもライフスキルの概念に賛同してご参加いただいている方も多いのですが、では具体的にライフスキルが高まるとサッカーにどう影響するのか、まではいまいちよくわからない、という方もまだまだ多い様子です。そこで今回は、子どもたちを指導しているサカイクキャンプの菊池健太コーチに「ライフスキル」とはどういうものなのか、子どもたちがどう成長できるのかを聞きました。(取材・文:前田陽子)サカイクキャンプでコーチの話に耳を傾ける子どもたち■ピッチ上で仲間をフォローできる人が求められている以前は足元の技術など個人技を磨くことが推奨されましたが、今はチームにいかに貢献できるか、チームのためにプレイできるかが求められる時代。そのためには、一緒にプレイする仲間を知り、自分のことを仲間にわかってもらう必要があります。そこで必要になるのがライフスキルです。ピッチ内外で考え、サッカーができることに感謝し、いろいろなことにチャレンジして、コミュニケーションを取り、リーダーシップでチームを導く。技術の習得に比べて、パッと見て変化がわかることではありませんが、ここを磨くことで技術も向上していくのです。JFAでも"判断も含めてテクニック"と言っています。育成年代の選手たちに求めるスキルとして「仲間をフォローすることができる選手」を高く評価するとも言っています。元日本代表の内田篤人さんも、その判断力の早さ、仲間との連携意識やプレーの正確性に定評がありました。サカイクキャンプではこれからのサッカーや人生に必要なライフスキルを知り、体感することができます。■サッカーというスポーツの本質を知る「チームプレイであるサッカーは、勝つことを目的に仲間同士が互いをフォローするもので、それがサッカーというスポーツでフォローし合うことが当たり前であることを子どもたちに伝えています」と菊池コーチ。すると自然とミスをフォローするプレイが増えていきます。自分のタイミングでボールを蹴っていた子が、コミュニケーションを知ると仲間を思ったパスが出せるようになります。俺が活躍すればいいという、独りよがりのプレイが減っていくのです。サッカーはミスのスポーツであり、助け合いが必須です。ミスをしたら「ごめん」と謝ること、味方がフォローしてくれたら「ありがとう」とお礼を言えること。その瞬間に口にすることは難しくても、普段からごめんなさい、ありがとうが言える習慣が身に付いている子は、ピッチの中でも助けてもらいやすかったりして、結果として試合が上手く回るのです。親御さんたちはどうしても個人技のところに注目してしまい、何点取った、何人抜いたで褒めたり残念に思ったりしますが、子どもたちの中には目立たないけれど丁寧なパスが出せたりする子もいて、そんな子はとても技術が高いとコーチたちは評価します。菊池コーチは「足元の技術は後からついてきます。ボールを扱う技術は大事ですが、丁寧さや気遣いができる選手はすごいんです」とも。一概に技術と言っても個人のものとチームの中でのものの2種類があります。もちろん、どちらも伸びるといいのですが、まずはサッカーの本質であるチームプレイを学ぶことが小学生年代には大切だとサカイクでは考えています。■キャンプに参加することが、チャレンジの第一歩キャンプは初めての場所、初めての友達、初めてのコーチ。泊りで行くのは子どもにとってすごく大きなチャレンジです。これは大人でもなかなか難しいこと。まずはキャンプに行こうと決断した子どもの勇気を褒めてあげましょう。その上で、キャンプへの持ち物は自分で何が必要かを考えて判断させて持たせてください。サカイクキャンプでは支度から子どもに任せてほしいという思いもあり、細かく持ち物を提示していません。3日間必要なものを自分で考えてほしいのです。寒い時期ならピステ持ってくる子もいますし、洗濯するから少しでいいという子もいます。そういう様子を見ていると親御さんは手をかけずにやってくれているなと思います。反面、「一日目の上はコレ、下はコレ」とセットしたものを持ってくる子もいます。親御さんなりの子どもへのサポートかもしれませんが、そういった子は柔軟な発想ができず、2日目に雨が降ったりして、翌日分(キャンプの最終日)を着替えに使うと、最終日の朝に「もう着る服がない」と大騒ぎすることもあるのだとか。子どもたちが準備した上での忘れ物はコーチたちは想定済みです。シャンプーや洗剤などの細かなものから、サッカーに必要なボールなどもサカイクキャンプでも準備しているので、忘れ物をしても安心してください。もちろん、忘れ物をしない方が良いのですが、忘れてしまったときにどうするかが大事で、その過程をコーチたちはどう解決していくかを見守っています。レガースやソックスなど借りれるものならチームメイトに「貸して」と言えること、チームメイトが忘れ物をして困っていたら「貸してあげようか」と提案できること、そういったお互い助け合って協力することが大事なのです。そのようなことが自然にできるようになると、例えばボールを奪われそうな時など、ピンチの際に仲間にヘルプを求めること、味方がピンチの時は自分が助けに行くことなど、サッカーの動きにもつながっていきます。ピッチの外での行動が変わるとピッチの中の行動も変わります。ライフスキルが身に付くと、技術も伸びてくるのです。■キャンプに来た子どもたちは、必ず成長しますサカイクキャンプに参加する子には、すべてにおいて、自分で考えて行動できる子になって欲しいとコーチたちは考えています。サッカーもコーチや周り仲間に何かを言われてプレイするのではなく、自分の判断でプレイを選択できる子になってほしい。いずれ社会に出てからも自分の意見をしっかり持って、自分で考えて判断ができる、そんな子になってくれたらと思っています。そのために小学生の間はサッカーは自由で楽しいと感じてもらいたい。中学高校に行けば自然とサッカーも厳しくなり、社会人になれば仕事もしなくてはなりません。なので、根底に楽しさ、仲間と協力するすばらしさを蓄えてほしいと考え、コーチたちは子どもたちと接しています。
2020年11月17日子どもたちの「考える力」をサポートし、サッカーがうまくなるためにサカイクが制作した「サッカーノート」。質問に答えて書き進めていくことで、自分の考えを言葉にできたり、プレーのアイデアが湧いてくるのでおすすめです。そこで今回は、サカイクサッカーノートを熟知している、サカイクキャンプのコーチ陣に「このように活用すれば効果的」という使い方を教えてもらいました。ぜひ参考にしてみてください。(取材・文:鈴木智之)<<サカイクサッカーノートに込められた思い、たくさんかける工夫など制作秘話■書くことが苦手な子もスラスラ書けるサッカーノート菊池コーチはサカイクサッカーノートを「質問に答えることで、書くことがスラスラ出てくるノート」と表現します。「各ページに質問があるので、それに沿って自分で書き進められるノートです。自分の思ったことを素直に書くのが、一番いいと思います」サッカーノートを書き慣れていない場合、「何を書けばいいかわからない」という声を耳にします。そんなお子さんに対し、柏瀬コーチは次のようにアドバイスを送ります。「コーチやお父さん、お母さんにノートを見られることを前提に書くのではなく、自分はどう思ったかを、正直に書いていくといいと思います。ノートの中にある質問も、答えやすく、書きやすいものなので、できるところから始めてみましょう」菊池コーチは「サッカーノートはテストではないので、良い、悪いはありません」と話し、次のように続けます。「思ったことを素直に書く中で、1日、2日と書き進めると、内容が少しずつ具体的になり、変化が現れます。それが、考える力が高まっている証です。サカイクキャンプでも、初日と3日目のノートを比べると、見違えるようにたくさん書けるようになった子もいます」サカイクサッカーノートには、書き方の説明も記してあるので、何を書けばいいかわからなくなった場合、前のページに戻って「こう書けばいいんだ」と参考にすることができます。白紙のノートだと、何を書けばいいかわからず、戸惑ってしまうケースも見られますが、質問つきのサカイクサッカーノートは、その心配もありません。記入例※画像をクリックして拡大できます【詳細】子どもたちが自ら進んで書き出す、たくさん書けるようになるサカイクサッカーノートの表紙デザインなど■失敗の反省でなく、改善点などポジティブなことを書こうまた、サカイクサッカーノートは、開発者のひとり「しつもんメンタルトレーニング」の藤代圭一さんの「ポジティブな気持ちで、前向きに、サッカーも私生活もがんばってほしい」という想いが込められています。それも踏まえて菊池コーチは子どもたちには、「良かったことをたくさん書こう」と言っているそうです。「人間って、良かったことより、悪かったことの方が記憶に残りやすいですよね。『なんであの場面でシュートを外してしまったんだろう』とか、『自分のパスミスが失点につながった』とか。ネガティブなことを書き続けると、気持ちも下向きになってしまいます。なので、まずはできたことやコーチに褒められたことを書いてみる。その次に『こうすればできそうだぞ』など、改善点を書くといいと思います」サカイクサッカーノートには、イラストでプレーを振り返る箇所があります。サカイクキャンプのコーチ陣が「自由に書いてみよう」と言うと、「ドリブルでカットインしてシュートを打てた」「サイドでスルーパスを受けて、チャンスになった」など、子どもたちが楽しんでイラストを描いていくそうです。絵で描くことは、イメージトレーニングにもなるのでおすすめです。子どもたちが、楽しんで書き進めることができるサカイクサッカーノート。コーチや保護者の学びにも役立つようです。菊池コーチは「子どもたちが書いたノートを読むことで、自分が伝えたことが、どの程度浸透しているのか、理解しているのかという目安にもなります」と話します。「指導者としては、『自分が言ったことが、これぐらい伝わっているんだな』と確認の作業にも使うことができます。サカイクキャンプで『チャレンジ&カバー』を練習をしたのですが、子どもたちが書いたノートを見ながら『ここは伝わっているな』『ここは理解が不足しているな。使え方を変えてみよう』など自分の指導を振り返り、トレーニングメニューや伝え方を変更したこともありました」■サッカーノートを通じて会話だけじゃ伝わらない子どもの考えが分かる柏瀬コーチは「ノートを通じて、親子間でのコミュニケーションが円滑になるのも良いですよね」と笑顔を見せます。「試合中や試合後に、自分の子に対して厳しく言ってしまうこともあると思います。そこで、試合直後は厳しく言ってしまったけど、ノートには前向きな言葉を書いてあげたりすると、お子さんも親御さんの気持ちをわかってくれるのではないかと思います」柏瀬コーチの話を聞きながら、菊池コーチは「親子間のコミュニケーションに、ノートはすごく役立っています」と実体験を語ります。「ノートを見ることで、子どもがどんな一日を過ごしたのかを知ることができます。『今日のサッカー、どうだった?』と訊いても『普通』とか『勝ったよ』とか、素っ気ないことも多いのですが(笑)、ノートを見ると、どんなことがあって、どんなことを考えていたのかもわかるので、読むのが楽しみです」サカイクサッカーノートは改良を重ね、ひと足先にサカイクキャンプで導入しました。質問形式にすることで考えやすくなり、書く量も増えました。また、書き続けることで「思考力がついた」「文章の組み立てができるようになってきた」という声も聞こえてきます。「今まで、サッカーノートに何を書いていいかわからなかった子には、すごく書きやすいノートだと思います」(菊池コーチ)「ノートを書いていたけど止めてしまった子も、改めて『こうやって書けばよかったんだ!』とわかりますし、書こうという気になるノートだと思います」(柏瀬コーチ)何を書けばいいかわからなかった子達が書けるようになり、思考力アップの後押しをしてくれるサカイクサッカーノート。たくさんの子どもや保護者、コーチから好評のノートを、ぜひ試してみてください!【詳細】子どもたちが自ら進んで書き出す、たくさん書けるようになるサカイクサッカーノートの表紙デザインなど
2020年11月11日このたびサカイクでは、これまでよりさらに読者の皆様に寄り添ったコンテンツを提供するため、リアルな読者の声を聞く場を設けました。今回は読者の生の声を聞く『オンライン座談会』を開催しました。参加者のみなさんは、お子さんのサッカーについて様々な悩みをお持ちで、サカイクのコーチ陣が質問やお悩みに回答させてもらいました。ここでは、その一部を紹介します。「これは私と同じ悩みだな」「こんな考え方もあるんだな」など何かを感じて、少しでもお役に立てたらうれしいです。(構成、文:鈴木智之)サカイクコーチが読者のご相談に回答しました■「戦力外通告」受けているチームから移籍した方が良いの?【お父さんからの質問】(小3、街クラブ所属)息子は小学3年生で、来年度に向けて、チームの選手コースを目指しています。現状は、チームの選抜にギリギリ選ばれたり、外れたりする状況です。本人は4年生になっても、そのチームで友人と一緒にサッカーをしたいと言っていますが、コーチからは「戦力として見ていない」と言われています。また、コーチにびびって気軽に話せないことがあり、コーチとの関係性を築けていないようです。親としては、その状況で来年も同じチームに行かせるかどうか悩んでいます。コーチに厳しめに見て貰えているのはありがたいことなのですが、ちょっとしたことで交代を命じられたり、先発からベンチに変更させられることがあります。その状況下でサッカーを続けて、本当に楽しめているのかな? と思うことがあります。他のチームを探すべきでしょうか?【サカイクコーチの回答】私の子どもも似た境遇だったので、お気持ちはすごくわかります。私の子は小学校低学年のときにスクールでサッカーを始めて、3年生のときに選手コースに選ばれました。最初ははりきっていたのですが、次第に「行きたくない」「足が痛い」と言い出すようになりました。よくよく聞いてみると、コーチにプレーのダメ出しをされることが多く、プレッシャーからサッカーを楽しめなくなっていたのです。私はそこで「もしクラブを辞めたかったら、辞めてもいいよ」と言いました。親としては、子どもがいきいきと楽しんでサッカーをすることが、何よりも大切だと感じたからです。ただし、「クラブを辞めさせることが、はたして正解なのだろうか?」と、たくさん悩みました。そこで思ったのが、「小学生のときに、プレッシャーを感じながらサッカーをすることの是非」です。サッカーを続けるのであれば、中学、高校とカテゴリーが上がるにつれて、嫌でもプレッシャーはついて回ります。だからこそ、何も小学生の時から、厳しい環境でサッカーをしなくてもいいのではないかと思ったのです。最終的には子どもの意見を尊重し、クラブを辞めることになりました。そのことをコーチに伝えると「逃げるのか?」と言われたり、周りの保護者からは「一緒にやろう」と言われましたが、サッカーが嫌いになることが一番良くないことだと思ったので、そのクラブを辞めて、別のクラブを探して入りました。その甲斐があり、いまでも楽しくサッカーをしています。相談者さんは、まずお子さんの気持ちがどうなのかを聞いてあげてほしいと思います。試合に出られなくても、本人が楽しくできていれば、まだ3年生なのでチームを変える必要はないと思います。お子さんの将来、5年後、10年後のことを考えて決断してみてください。■ワンマンで傲慢な指導者のもと、実戦経験を積めないのを何とかしたい【お父さんからの質問】(小3、スポーツ少年団所属)小学3年生の息子が、40年近く続いている少年団に通っています。クラブの代表がかなりのワンマンで、人の言うことを聞きません。昔から傲慢だったようで、他のチームから敬遠されています。そのため、練習試合や招待試合などのお誘いが少なく、試合の機会が限定されています。大会などで知り合った、他チームのコーチから試合を申し込まれることもあるのですが、その旨を代表に伝えても「あそことはやらない!」など一蹴されてしまいます。そのため、実戦経験が乏しい状況です。息子の学年の子たちはみんな意識が高く、保護者も含めていいメンバーだと思っているので、チームを移るのは最終手段だと思っています。子ども自身は楽しくやっているのですが、どうすればいいでしょうか?【サカイクコーチの回答】指導者と保護者の意見が食い違うことは、よくあるケースです。保護者同士の関係性は良さそうなので、子どものために何ができるかを話し合いながら、根気強く、積極的に意見を交換し合うのが、子どもたちのためになると思います。そこでポイントなのが「子どもたちのために」という視点から、指導者に働きかけることです。その際に、言い方や伝え方には、とくに気を配ると良いと思います。ベテラン指導者は保護者に意見されると、自分がやってきたこと全体を否定されていると感じ、感情的になってしまうことがあります。そうではないことをしっかりと伝えて、対話を続けていってみてください。大変だとは思いますが、いまこそ保護者間のチームワークを発揮するときです。■子どもの積極性を引き出す声かけのポイントは「未来の話」【お父さんからの質問】(小3、スポーツ少年団所属)小3の息子は聞き分けが良い一方、親としてはもう少し、積極性がほしいと思っています。その辺りのことを私が指摘すると、すねてしまいます。うまく言葉をかけてあげたいと思いつつ、3年生は自我が出てくるので子どもになんて声をかければいいか、距離感に悩んでいます。【サカイクコーチの回答】お気持ちはお察ししますが、なるべく子どもにあれこれ言わないことです。まずはそこが出発点だと思います。そのうえで、どうしても言いたいことがあるのであれば、試合後に反省会をするのではなく、「次の試合で、どう頑張るか」について話してみてください。良くなかったプレーは、お子さん自身が一番よくわかっています。それについて、お父さん、お母さんがあれこれ言っても「わかってるよ、うるさいなぁ」となってしまいます。なので、できなかったことに対して言うのではなく、「今度の試合はどんなプレーをする?」「どんな気持ちでプレーしたらいいかな?」など、未来の話をしてみましょう。そうすると「3点取る」とか「守備を頑張る」など、子どもは話してくれると思いますよ。■勝ちにこだわる指導になっていじめを受けた。この状態から抜け出すには?【お母さんからの質問】(小3、スポーツ少年団所属)小学3年生長男のことです。赤ちゃんの頃から人一倍敏感で、恐いことや、痛いことが嫌いです。保育園の友達がたくさん入るからと、1年生からサッカークラブに入ったのですが、親から見ると、サッカーが向いているとは思えず、夢中になっているとは言い難い面があります。そのため、上達も遅いです。でも本人は友達とワイワイやっているのが楽しく、友達と遊びたいからサッカーをやっているという状態です。それでも体力はついてきているし、友達と一緒に過ごせて、楽しそうにしていました。しかし、3年生になるとレベル別でチームを分けることになり、お父さんコーチ達がやりたかった、勝ちにこだわるサッカーが始まってからは、練習や試合中に怒鳴られる事が多くなり、チームメイトにも責められるようになりました。ついには、一緒に朝練をしている別のチームの子からいじめを受けました。その時に「この状況から抜け出すには、みんなから離れるか、サッカーが上手くなるしかないんじゃない?」という話をしたら、「みんなと一緒にいたいしサッカーもやめたくない」とのこと。それならば、もう少し練習しようかとなり、朝10~20分程度、一緒に練習をする事になりました。長くなりましたが、うちのような子でもサッカーで変われたケースありますか?また、上達するための練習メニューを知りたいです。【サカイクコーチの回答】サカイクには「親子でできる練習メニュー」がたくさん掲載されているので、ぜひそちらを参考にしてみてください。ただ、ひとつ心に留めておいてほしいのが、「お子さんの気持ちはどうなっているか?」です。ちょうどいま、成長のための根っこを生やしている段階だとしたら、必要以上に水を与えてしまうと腐ってしまうので、保護者のペースで水をあげないようにしましょう。「この子はどういう風に成長していくんだろう」と楽しみに、長い目で見ると良いと思います。突然、試合に負けたことで練習を始めたり 「上手くなりたい!」という気持ちが芽生えることがあるので、その瞬間を見逃さず、大事にしてあげてほしいと思います。<サカイク3分動画トレーニング>「リフティングが苦手」という悩みを改善するトレーニング■「速いだけだな」など傷つく事ばかり言うコーチ【お母さんからの質問】(小4、クラブチーム所属)コーチの声かけがひどいんです。「このやろう、何やってんだ」なんて当たり前。息子は足がすごく早いのでチームで一軍というかトップにいますが、指導者に「お前は早いだけで何もできない」「走ることしかできないんだろう」など、しょっちゅう心ないことを言われるんです。ちょっと体調を崩したら「小さいヤツだな」など、子どものメンタルを傷つけることが多いコーチで。チームは足技を重視していて、技ができなかったり、リフティングも既定の回数ができないと練習に参加させてもらえません。全国を目指すチームなので求める水準が高いのは理解していますが、コーチの指示通りに動かないと次の試合に出してもらえなかったりするので、いつも委縮して思い切りプレーできず伸び悩んでいます。そんなことが日常茶飯事なので、楽しくプレーできていない。折れそうな心を親がどう支えていけばいいのでしょうか。【サカイクコーチからの回答】正直リフティングは時間と努力でみんなできるようになります。サッカーという競技はどうしても数値で表せない要素が多いので、評価ポイントの一つとしてリフティングを重視するチームもあると思うのですが、今現在それほどリフティングができなくても大丈夫です。ボール遊びとしてはリフティングは良いのですが、クラブの規定などを設けることによって苦にならないと良いですね。回数を気にするのでなく、遊びとして楽しくやれれば良いです。私が教えているスクールの生徒たちもそんなにたくさんリフティングできませんよ。10歳ぐらいからゴールデンエイジに突入するので、技術や技の習得はこれから追いついてきます。今は楽しい気持ちをもたせてあげることを優先してください。お子さんにとっては、親御さんが一番の味方でファンであることが大事だと思います。試合後に「どうだった?」「こうしたほうがよかったんじゃない?」など反省会を始めてしまうと、子どもの逃げ場もなくなるので、先ほど別の質問で回答したように「未来の話」をするとよいですね。いかがでしょうか。今回の「オンライン座談会」は、当初の予定時間をオーバーするほど、たくさんのトピックが寄せられました。参加者のみなさんは、お悩みをサカイクキャンプコーチに話すことで、心が軽くなったり、改善のヒントを得ることができたようでした。今後もこのような場を設けていく予定ですので、「私もこんな相談がしたい」「話を聞いてほしい」という方がいらっしゃいましたら、ご参加をお待ちしています。
2020年11月10日元日本代表のキャプテン長谷部誠選手の出身校、藤枝東高校は、高いレベルで勉強とサッカーを両立している学校としても知られています。県内トップクラスの進学校がどのようにして文武両道を行っているのか、同校出身の小林公平監督にお話を伺いました。選手自身が映像を編集してプレー分析も行うなど、自分たちで課題改善を行う取り組みなども伺ったのでご覧ください。(取材、文:本川悦子)藤枝東高校サッカー部の部員たち。練習後にチームメイトと談笑する姿■選手自身が映像を編集してプレー分析も名門・藤枝東がオンラインミーティングやサッカーノートのアプリを駆使して選手との意思疎通を図ってきたというのは前編でお伝えしました。彼らはそれ以外にもテクノロジーを使った活動を積極的に行っています。その1つが練習・試合の動画分析です。選手数人が公式戦や練習試合、紅白戦を撮影し、編集したものを共有ファイルにアップ。それを全員が帰宅途中や帰宅後に映像確認し、感想をサッカーノート(アプリ)に書いたり、ミーティングで議論し合ってフィードバックする形を取っているのです。今年から使っているソフトでは、個人のシュートシーンやゴールシーン、被ゴールシーンに特化した映像編集ができるほか、セットプレー時の好守も確認が可能です。さらには時間帯ごとのパス・シュート数などのデータも出てくるので、チーム全体が自分たちの課題や収穫を明確に捉えられます。こうした科学的アプローチの有効性を小林公平監督も実感しているといいます。「現場で見ている感覚と後から映像で振り返る感覚は全然違います。実際にプレーしていた選手も自分の一挙手一投足を映像で客観視すれば、何が課題でどう改善すればいいのかハッキリします。試合前に対戦相手の映像分析をするチームはよくありますけど、日常的に映像を使って可視化する作業に慣れておけば、将来的にそういう仕事に携わることも可能だと思います。ツエーゲン金沢入りが内定している稲葉楽選手もJクラブの練習に参加した時『藤枝東ではプロ同等の分析やスカウティングをしていることが分かって大きな自信になった』と話していました。藤枝東は社会のリーダーになるべき人材を育てている部分も大きいので、これからも可能な限り多くの情報を入手して、有効活用していくように、選手たちには働きかけていきたいと考えています」■加圧トレーニングの定期計測でフィジカル管理データ管理という意味では、2018年から取り入れている加圧トレーニングの定期的計測を行い、練習や試合に生かしています。今年のコロナ禍で3か月間活動休止になったこともあり、選手たちの太もも周りの筋肉が落ち、体脂肪率が増えてしまったといいます。そこで再び加圧トレーニングに注力し、フィジカル強化を図って、最大の目標である高校サッカー選手権に備えているのです。「6月時点ではそこまで数字的な変化は見られなかったのですが、夏場になって計測したら平均4~5㎝ダウンという状況が鮮明になりました。『これは大変だ』と危機感を抱き、意識的に取り組みました。日本ユース年代のSランクである高円宮杯プレミアリーグ参加チームと我々の一番の差はやはりフィジカル。僕が藤枝東の監督に就任した6年前も技術・戦術面の違いはほとんど感じませんでしたが、身長体重を筆頭に当たりの強さや激しさ、走力の部分が劣っていると痛感させられたんです。その差を縮めるべく、サッカーノートのアプリを導入したり、管理栄養士さんに食育の話をしてもらったりとさまざまな試みをスタートしましたが、短時間で筋量を増やせる加圧はかなり効果がありました。10月に計測したところようやくコロナ前の状態に戻った印象ですが、継続しないと意味がない。選手も自覚を持って取り組んでくれています」■高2まで目立った選手でなかった長谷部誠が急激に伸びたキッカケ小林監督が自ら行動を起こす重要性を繰り返し強調するのも、1学年上の長谷部誠選手(フランクフルト)という偉大な存在を目の当たりにしているから。長谷部選手は高2まではそこまで目立った選手ではなかったものの、高2の終わりに静岡県選抜に選ばれ、高いレベルに目覚めてからはグングンと成長していったそうです。練習から100%でやるように意識も変わり、意欲的にサッカーと向き合うようになって、浦和レッズ入りというチャンスをつかみました。2008年にドイツに渡り、日本代表に定着し、8年間もキャプテンを務めるといった飛躍的成長には小林監督も驚きを禁じ得なかったといいます。「高校生は何らかのきっかけをつかめば長谷部さんのようになれる可能性を秘めている」と今も自らに言い聞かせているのです。「県選抜に入ってからの長谷部さんは『自分は十分やれる』という自信と手ごたえをつかんだのか目の色が変わっていきました。浦和入りした後、長谷部さんのいるサテライトと練習試合をしたことがあるのですが、もう手が付けられないレベルになっていた。『17~19歳の2年間でここまで変わるのか』と本当にビックリしましたね。当時は服部(康雄=静岡県サッカー協会副会長)先生が指導されていましたけど、サッカーの楽しさを面白さを追求する姿勢を重んじていましたし、主体性や自主性も大事にしていました。そういう環境だったから長谷部さんは伸び伸びとやれたし、自分で気付いて成長できたんだと思います。僕自身も『ここでもう1回サッカーをやりたい』と感じたのが指導者になったきっかけです。そういう藤枝東の文化を引き継ぎ、発展させていくことが自分の大きな仕事。入ってくる選手も『長谷部さんみたいになりたい』という子が年々増えています。つねに誠実で多くの人に愛されるのが長谷部さん。今の選手にも『愛される選手になりなさい』とことあるごとに声をかけています」このように藤枝東は人間的成長を促しながら、かつてのような高校トップを目指しています。同じ高体連で2019年プレミアリーグ王者の青森山田高校らとはまだまだ実力差があると小林監督は感じているそうですが、藤枝東らしく文武両道を貫き、自主性や自立心を生かしながら進化を遂げていければ理想的。そうなるように今後も高いレベルに突き進んでいくつもりです。小林公平(こばやし・こうへい)藤枝東高校出身。高校時代は県を代表する左サイドバックで、全国総体準Vや国体制覇などに貢献。国士舘大卒業後、藤枝東高非常勤講師、湖西高監督を経て2015年に藤枝東高校サッカー部監督に就任。
2020年11月09日「将来海外でプレーしたい」そんな純粋で大きな夢を抱く子どもたちに「正しい努力をさせてあげたい」。そう願うのが親の本音ではないでしょうか。新刊『世界を変えてやれ!―プロサッカー選手を夢見る子どもたちのために僕ができること』では、「日本と世界を繋ぐ橋渡し」役の著者・稲若健志氏が、将来を夢見る選手たち、保護者、指導者に向け、アドバイスを送っています。改めて稲若氏に聞いた、子どもたちの夢を叶えるために知っておきたい世界の常識、第2回目のインタビューは、若くして海外へ渡ることのメリット、デメリットについてお送りします。<<第一回:世界のクラブが日本人選手に求めるスキルとは。レアル中井選手から学ぶ世界で生き抜く方法■レベルの高い環境で練習ができることが大きなメリット――久保建英選手(ビジャレアル)や中井卓大選手(レアル・マドリード)が若くして海外でプレーしていますが、彼らのように海外でプレーするために現状ではどのような方法がありますか?「正直、現状ではFIFA(国際サッカー連盟)の規約第19条(国際移籍は18歳以上の選手のみ許される)があり、日本人選手が若くして海外でプレーするのは年々厳しくなっています。日本である程度有名な選手の場合、若年層の子がサッカーで海外に来た場合、まずFIFAが移籍を容認することはありません。Jクラブの下部組織に所属しているとか、セレクションに合格したとか、そういった情報がネットに出てしまえば、その時点で18歳になるまではどんな方法でも現地の公式戦には出場できません」――すると、現時点で日本人が海外でプレーをするには18歳の誕生日を迎えてから、ということになりますか?「良い例として挙げるとすれば、現在スペインの2部Bにいる吉村祐哉選手が辿った道のりです。現在2部Bには日本人が3人いるのですが、そのうちの一人です。祐哉は15歳で海外に渡って3年間は練習生で過ごしながら18歳の誕生日を迎えた時点でテネリフェと契約しました。最初はチームと契約はできないけれど練習生として練習試合や国際大会には出場できます。何よりも非常にレベルの高い環境で練習ができることが大きなメリットです。現地のチームが練習でも練習試合でもしっかりと扱ってくれるという条件があるのならば、これは一つの良いキャリアの歩み方だと思います。早い段階で海外に渡り、まずは言葉を覚える。言葉を覚えないと何にせよ厳しい道になります。そして環境に慣れて18歳のタイミングでチームと契約するのが現状のベストだと思います」――18歳から逆算して早めに行動するということですね。「そうです。ただし、ただ単に海外に行くだけでは意味がありません。調べもしないで海外に行って、あまり競争力のない低いレベルの環境に入っても意味はないからです。海外に行ったことだけで満足してしまう子どももいますが、刺激になる環境に身を置かないとその先が難しくなると思います。スペインでは若い世代であれば1部でも2部でも練習生として参加できる場合があるので」■子どもへの"投資"と捉えられるか――例えば、15歳で海外へ渡ることにはメリットもデメリットもあると思います。「メリットはリアリティが湧くことです。日本でプロを目指すというのは、学生からプロになることを指しますが、あちらではプロの集団の中からプロを目指すことになります。それは日本にいるのとは全然違います。そういう環境に早く入ることで心に火がつきます。リーガの選手たちは環境がものすごく良いのはもちろんですが、毎年選手が入れ替わるのを目の当たりにしているので、『やらないとまずい』という気持ちに駆られます。あとは、海外に行けばわからないことが多いから当然失敗します。失敗するからこそ成長します。失敗を糧に、自分で解決する方法を覚えるようになる。それが後の人生においてもプラスになるのです。一方、デメリットは学生生活を送れない、青春時代がなくなる、といったことでしょうか。学歴に焦点を当てればデメリットでしかありません。でも、僕は子どものときに自分が思った好きな道に突き進んだからこそ今があるし、学校に行けないなんてことは親が感じるデメリットなんですよね。学歴を大事にした結果、親自身が今の人生は楽しいと思うのであれば正解かもしれません。でも親が毎日が大変だと思いながら過ごしているのであれば、何かを変えなければ子どもも同じ道を歩んでしまいます」――仮に15歳から現地のクラブに練習生として所属するとしても、スペインで3年間、契約しないままに過ごすとなるとお金がかかります。親からすればお金の心配はあると思います。「お金はかかりますが、これは投資です。ほとんどの親は"子どもに投資する"という考え方を持たないと思います。『うちはお金がないから、お前は我慢しろ』と言われた子どもが夢をあきらめないといけない。そんなケースはざらにありますね」――例えば、15歳から3年間現地で生活するためにはいくらかかりますか?「スペインだと月に20万円ほど。3年間で600万円ほどでしょうか」――Jクラブユースでも高体連でも、高校を卒業して18歳になってから、親の援助を受けながら海外に挑戦するケースも増えていますが、これはどう見ていますか。「現状ではそういうパターンが増えていますが、それでもTC(トレーニング・コンペンセーション/23歳以下の選手が移籍する場合に移籍先からお金が支払われる制度)が発生するので、現地のクラブがすぐに契約するという流れにはなりにくいです。最初はプロ契約をせずに試合に出してくれるケースも結構あります。ただ、クラブもどこかでプロ契約をしないといけませんから、自分のところで育てて、契約するだけの価値を見出せたときにプロ契約をするという方法はあるにせよ、そこまでよく見てくれるクラブは少ないですね。高校やJクラブが『TCは破棄します』といった協力をしてくれるところもあるし、そうであるならばかなり話は変わってくると思います」<<第一回:世界のクラブが日本人選手に求めるスキルとは。レアル中井選手から学ぶ世界で生き抜く方法稲若健志(いなわか・たけし)株式会社ワカタケ代表。1979年生まれ。神奈川県出身。藤嶺学園藤沢高校卒業後、ディエゴ・マラドーナに憧れアルゼンチンに渡航しプロ契約を結ぶ。愛媛FCや栃木SCなどでプレーしたのち引退。帰国してからも10年以上に渡り、毎年アルゼンチンを訪れ、指導や教育を学び、26歳のときに株式会社ワカタケを設立。中井卓大選手の挑戦の支援を通し、レアル・マドリードに強いパイプを持つ。レアル、アトレティコ、セルタなど日本でのキャンプ及び海外キャンプのライセンスを持つほか、世界各国につながりを持ちリーガ主催のジュニアの大会への出場権も保有。世界を子どもたちに見せるべく、年間1000人以上の子どもたちに海外にいく機会を作っている。
2020年11月06日チームメイトからのからかいを真に受け怒ってしまい、チーム内で浮いてる息子。すぐ大声を出して怒ってしまうので、成り行きを見てないコーチたちに息子だけが怒られることも。そんなことが続き、「おれだけが全部悪い」「おれがバカだから」と涙をこぼし自分で頭をゲンコツで殴ることも......。普段のちょっとしたことで過剰に怒られている感じがするものの、息子にも原因があるので指導者陣に相談しづらい、とのご相談をいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとにアドバイスを授けますので参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<スパルタ母のしごきで息子がやる気喪失。父はどうすりゃいいの問題<サッカーママからのご相談>こんにちは。現在小2(7歳)の息子は、1年前からスポーツ少年団でサッカーをしています。当初は息子を入れて学年3人だったのが、今では人数が増えて同学年7人になりました。人数が増えて嬉しい反面、仲間から浮いた存在になっている息子についての相談です。息子はちょっとしたからかいなども真に受けて怒ってしまうことが多く、チーム内で距離を取られてしまいがちです。怒って大声を出したり、からかいにすぐカッとなってしまうため、余計に面白がられて更にからかわれたり、その結果、指導者にきつく叱られることが多々あります。そんなことが何か月か続き、家にいるときに息子が「おれだけが全部悪い」「おれがバカだから」「おれは全然できてない」と涙をこぼし始めました。頭を自分でゲンコツで殴ることも数回ありました。いつも息子が騒ぎだすことで指導者が気付くため、その時点では息子ひとりが怒っていて、からかっていた子や周りではやし立てた子は特に叱られることはありません。それで、自分が全部悪いと言っているようです。本人は納得いかないけど、そうやって自分を納得させようとしているように感じます。息子自身も集中力がなく、よそ見や砂いじりをしていたり、他の子にふざけてちょっかいを出すときもあり、そこは直していかなければならないところだと思っています。すぐに怒ってしまうので、それで他の子から距離をとられてしまうのも大人としては理解できるところです。集中力が足りないのも、怒りやすいのも、息子自身も直さなければと思ってはいるようですがすぐには改善できず、同じことで注意を受け続けて「またできなかった」と失敗体験を積み重ねてしまう日々。サッカーも、自主トレを続けている割には他の子のようには技術が身につかず自信がないので引け目になっていて、色んなことを受け流す余裕がないんだろうと思います。チームの子とうまくいかないこと、サッカーがなかなか上達しないこと、指導者からも問題児と認識されていること、息子自身が自分をダメだと言い始めていること、色んなことが積み重なってしまってどこからどう手をつけていいのかわかりません。集中力がなくて試合でもベンチ態度が悪い(砂いじり、草いじり、よそ見など...)ことや、すぐに怒って輪を乱すことなど息子に非があることが多いので、普段のちょっとしたことで過剰に怒られている感じがするものの、指導者陣に相談しづらいです。何かアドバイスをいただけませんでしょうか。<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただきありがとうございます。よくぞご相談してくださいました。小学校で過ごすぶんはそこまで大変ではないけれど、サッカーチームという集団活動になると、さまざま難しい局面を迎えてしまう。そういったお子さんは決して少なくありません。さまざまなきまりやルールがその子にとってハードルが高かったり、サッカーのスキルの優劣に打ちのめされたりする。そのため自己肯定感が下がってしまい、せっかくの楽しいサッカーの時間が苦痛になってしまう――。息子さんは、まさにそんな状況ではないでしょうか。■心の成長がゆっくりなだけ。周りの子と同じように、と働きかけるのは逆効果私も長男がとっても個性的でしたので、それなりに状況を察することができます。すぐにカッとなって手を挙げる。試合で相手にファウルされると、すぐに報復する。小学5年生くらいまで、ほうぼうで謝ってばかりいました。お母さんも個性豊かな息子さんに少しばかり苦労されているようです。さまざまトラブル続きで、親のほうも疲れちゃいますね。でも、大丈夫。焦る必要はありません。息子さんは、ほかのお子さんよりもほんの少しだけ心の発達がゆっくりなだけです。一見すると短所ばかりと思えるかもしれませんが、このように個性的なお子さんには、まだ本人や親御さんが気づいていない「いいところや才能」を隠し持っていることが多いのです。そこに密かに期待を寄せながら、今はまずはリラックスして、息子さんをおおらかな目で見てあげてください。子どもの発達がのんびりしているのに、親や周囲の大人たちが「周りの子と同じようにしなさい」と働きかけてしまうと逆効果です。親の側は「これもひとつの個性だ」と受け取って、ここはのんびりいきましょう。■7歳ならベンチで砂いじりをするのはある意味自然なことそこで、私からは「のんびり子育てプラン」の3ステップをお伝えします。良かったら参考にしてください。その1。他のお子さんと少し異なる個性を、できる限りおおらかに受け止めましょう。すでに前述したことではありますが、ここが非常に重要です。一度、整理してみましょう。例えば、「集中力がなく、よそ見や砂いじりをしていたり、他の子にふざけてちょっかいを出すときもあり、そこは直していかなければならない」と書かれていますが、なぜこのような行動をしてしまうのでしょうか?息子さんが「性格の悪い子」だからでしょうか?「意地悪な子」だからでしょうか?どれも違います。息子さんは7歳です。この年齢で、試合に出ておらずベンチにいるときに、砂いじりをするのはある意味自然なことです。だって、暇なんですから。お母さんも電車に乗って、文庫本も読み終わってしまった、なんていうとき、スマートフォンをいじったりしますよね。コーチは仲間のプレーを見るようにと言うでしょうが、難しいことです。子どもの見方はいろいろあるかと思いますが、私がコーチなら「ベンチでも集中して試合を観なさい」と命じて、その通りやってしまう子がもしいたら、大人の言うことを聞きすぎるという面でその子のほうが心配です。ただ、ここで私が「できる限り」受け止めて、と書いたのは、受け止めきれないことがあってもいいよということです。腹が立ったり、情けなかったり、息子さんに「ちゃんとしないさい!」と怒りたくなる(もう怒っちゃってるかもしれませんが)瞬間もあるでしょう。そういうときは、少し息子さんのこの問題と距離を置きましょう。たまには、練習や試合を休んで二人でどこか遊びに行ってもいい。たまには、お父さんがおられれば、お父さんに、いなければ他の大人に任せてもいい。子育てをお休みする時間が必要です。常に頑張ったりしなくていい。とにかくぼちぼちいきましょう。■昔ながらの忍耐と根性ではなく、逃げ場を作ってあげてその2。母子とも自己肯定感を上げる。「おれだけが全部悪い」「おれがバカだから」「おれは全然できてない」と涙をこぼし、頭を自分でゲンコツで殴る、と書かれています。これはいけません。まだ7歳で、ゆっくりめの彼にとって、少々ハードな環境のようです。ここはぜひ「ダメなんだから頑張れ」と圧迫して、這い上がらせる昔ながらの手法で接するのではなく、まずは彼がそう感じることに心を寄せましょう。「辛いね。でも、気にしなくていいよ」「きつかったね。でも、大丈夫だよ」「バカとか誰が言ったの?お母さんは全然そう思わないよ」と慰め、励ましてください。無言で背中をさするだけでもいいです。そして、サッカーについては「一度始めたのだからやり通せ」などと言わず、「嫌だったらいつでもやめていいよ」「他のことをしてもいいよ」「他のチームを探そうか?」と逃げ場所を作ってあげてください。それとともに、お母さんも自信を持ってください。サカイクにメールを出してまで、成長がゆっくりめな彼と真剣に向き合っている。そんなお母さん、素晴らしいと思います。ピンチの時は、成長するチャンスの時間です。いつの間にか解決して、子どもは成長していきます。チームの子とうまくいかない。サッカーがなかなか上達しない。指導者からも問題児と認識されている。息子自身が自分をダメだと言い始めている。どこから手をつけていいかわかりません、とありますが、これらはすべて繋がっています。他者を変えるのはなかなか難しいので、まずは自分をダメだと思っている息子さんの心をほぐすことから始めましょう。■時には親が言葉で補ってあげることも大事(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)その3。コーチに相談する。サッカーの活動が始まれば、そこは選手とコーチたちの空間です。親御さんがさまざま口を出すことではありませんし、ただ見守っていれば良いのです。指導者の方については「すぐに怒って輪を乱すことなど息子に非があることが多いので、普段のちょっとしたことで過剰に怒られている感じがする」と述懐されています。であれば、そこはお母さんの言葉で補ってあげてください。「少し発達がゆっくりめなので、ご迷惑をかけることがあるかしれませんが、長い目でみてもらえませんか?」と。もしそれで迷惑がられたり、叱り飛ばすようなことが続くのなら、一度お子さんと相談してチームを替えたほうがいいかもしれません。以前に比べて、サッカーのコーチの方々は子どもについてとても勉強されています。子どもの発達は個人で大きな差があり、そこを受け止める重要性をご存知の方は多いです。担当コーチが難しそうなら、クラブの代表の方に相談してもいいでしょう。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2020年11月03日サッカーを思いきり楽しんでほしいけど、勉強も疎かにしてほしくない。親御さんたちの本音ですよね。元日本代表のキャプテン長谷部誠選手や中山雅史選手の母校で、サッカー強豪校であり、県内でもトップクラスの進学校、藤枝東高校ではどのように文武両道を実現しているか、小林公平監督にお話を伺いました。セレッソ大阪のU-15出身で、卒業後はプロ入りが決まっている稲葉楽選手からも、どのように毎日サッカーと勉強に取り組んでいるか聞いたのでご覧ください。(取材、文:本川悦子)藤枝東高校サッカー部の部員たち。この日はテスト明けで1週間ぶりの部活ということもあり、練習後もグラウンドで会話を楽しんでいました■長谷部誠選手らを生んだ文武両道の名門新型コロナウイルス感染拡大で開催が不安視されていた第99回全国高校サッカー選手権大会が、12月31日から1月11日に予定通り実施されることが決まりました。全国の高校サッカー部員にとって非常に明るいニュースと言えるでしょう。サッカー王国・静岡の名門・藤枝東高校もその朗報を受け、11月の決勝トーナメントに挑みました。J2・ツエーゲン金沢入りが決まっている3年生のDF稲葉楽選手も「今年は夏の高校総体がなくなり、全国大会は冬の選手権だけなので、何とか県大会で勝って本大会に行きたいです」と力を込めていました。残念ながら1日の東海大翔洋戦で0-2と黒星を喫し、全国行きは叶いませんでしたが、彼らは精一杯戦い抜いたことでしょう。過去4度の選手権優勝を誇り、中山雅史選手(アスルクラロ沼津)や長谷部誠選手(フランクフルト)ら数々の日本代表選手を輩出した同校は文武両道の名門として知られています。2020年度の偏差値は66と静岡県でトップ5に入っており、100人近いサッカー部員たちも勉強とサッカーを両立させています。セレッソ大阪U‐15出身の稲葉楽選手も「入学時点では成績が学年でも下の方だったけど、練習が終わって家に帰ってから必ず勉強をすることを日課にしたら目に見えて上がりました。周りも頭のいい子ばかりだし、『何事も自分から率先してやろう』という自立心が自然と養われたのがよかったと思います」とチーム全員の学習意識の高さを強調していました。■選手たちの精神的な不安を取り除くためにオンラインを活用藤枝東OBで長谷部選手の1学年下、大井健太郎選手(ジュビロ磐田)と同期に当たる小林公平監督も選手たちの自主性を尊重しています。「最後の選手権まで部活動を続けてほしい」という指揮官の思いに応えて、例年であれば、トップチームの選手は全員残り、Bチームの選手が早めに引退するのが常でした。しかしコロナ禍の今年はトップチームから引退者が出たといいます。「2月末に全国一斉休校となってから、僕らは3か月間活動を休止しました。まず感染しないことを第一に考えましたが、いつ再開できるのか、どの大会が行われるのか全く分かりませんでした。そういう中で受験を重視する選手が出るのは仕方ないという思いもありました。そんな中でも体力面をキープし、マイナスを最低限にとどめるための工夫は凝らしました。まず運動生理学やトレーニング理論を学んでもらおうと週1回のズームミーティングを始めました。加えて、管理栄養士による食事管理のミーティングを1回、トレーナーのリモートトレーニングを1回と合計週3回はオンラインで交流を持てるようにしたんです。選手たちは学校に来られず、練習もできなくて精神的な不安感を感じていました。私も精神科医の先生に相談しましたが、『オンラインでもいいからつながりを持てるようにした方がいい』とアドバイスを受け、実行に移しました」小林監督からのアクションに呼応するように、選手たちも絆を深める活動を率先して始めました。その1つが動画を使ったリレー。各自の目標を、動画を通じて伝えあったり、リフティングリレーをするなど、今どきの高校生らしい試みを始めたのです。4人1組でラインビデオを使ったリモートトレーニング動画を投稿するといった取り組みもありました。仲間が懸命に追い込んでいるのを見れば、「自分もやらなければいけない」という意識になるもの。そうやって選手個々が向上心を持ち続けて苦しい3か月間を乗り切ったのだといいます。■もっと選手を信じていい、選手たちは十分やれる「教師の自分にとっても、これだけ長期間の空白期間は初めてで、選手以上に不安感は強かったと思います。そこで自分もJFAのフィジカルトレーニングメニューを配信していただけるように旧知の先生にお願いしたり、指導者同士のオンライン交流会に参加したりしました。そこで感じたのは『もっと選手を信じていい』ということ。僕らが直接的に行動を起こせる機会が少なくなる中、彼らに自主的かつ主体的に行動してもらう場が増え、十分やれるなという手ごたえを感じたんです。3年生のレギュラーの選手が引退を決断したのは残念ですが、藤枝東としては進路も非常に重要だと考えています。我々としては高1の段階で希望を出してもらっていますが、スポーツ推薦や指定校推薦で関東大学1部や関西1部の大学には毎年選手がお世話になっていますし、一般受験で国公立やMARCH以上の大学に進む子も多い。そのあたりを基準にして文武両道にチャレンジしています。コロナを経てそういう意識を高めてくれる選手が増えたのは、前向きな点だと思っています」■サッカーノートを通して選手の内面を良く知ることができる藤枝東では小林監督就任2年目の2015年からアプリのサッカーノートを導入していますが、それも選手の自立心の高さを実感する一助になったようです。朝晩の体温・体調管理はもちろんのこと、選手が不安に感じていること、サッカーと学業を両立する上での懸念材料などを書いてもらい、毎日提出してもらうことで、彼らの内面に深く切り込むことができたといいます。「アプリだと休校期間も共有でき、選手とコミュニケーションを定期的に取れたので、非常に有難かったですね。6月の活動再開後は往復の電車や移動途中などに記入し、送ってもらっていますが、時間の有効活動という観点から見ても助かります。サッカーノートの中には、疲労度を1~10段階で判定し、選手自身に申告してもらう項目があるのですが、それも強度の高い練習を取り入れるに当たって有効です。選手権予選などの大きな大会前は追い込みたいという一方でケガも防がなければいけません。一番いい落としどころを探るうえでも役立っています。こうやって要所要所で数値を取り入れながら可視化できるデータを蓄積していけば、いずれは藤枝東サッカー部の大きな財産になる。そんな期待も抱いています」この記事が掲載される「サカイク」は、小学生向けなのでアプリではなく紙のノートですが、子どもたちがたくさん書けるようになる工夫を施したサッカーノートを販売しています。編集スタッフの依頼で小林監督にその内容を見ていただくと、「なるほど、これは書きやすいですね」と回答いただきました。サカイクサッカーノートの内容を見ていただきました小学生年代で、特にサッカーを始めたばかりでサッカーノートを上手く書けない子のために、いくつかの質問を用意して、書くのが苦手な子どもたちも自分の考えをたくさん書けるようになる工夫が施されているのですが、ページごとの設問を見て「ただ自由に書くのではなく、設問があることで思考力をつけるベースになりそうですね」「うちの選手たちにも聞いてみたい設問ですね」など高く評価してくれました。もともとITを駆使できる小林監督ですが、今回のコロナ禍を通して、利用できるテクノロジーを最大限生かしながら、強い藤枝東を築き上げていくことの重要性を再認識したようです。ご自身がITが好き、というのもあるそうですが「社会に出て重要なビジネスシーンで活躍する生徒も多く輩出する学校なので、最先端の情報に触れさせたいという思いもあるのです」と語ってくれた小林監督。彼らには文武両道の名門ならではのやり方で高校サッカー界に新風を吹かせてほしいものです。(後編に続く)小林公平(こばやし・こうへい)藤枝東高校出身。高校時代は県を代表する左サイドバックで、全国総体準Vや国体制覇などに貢献。国士舘大卒業後、藤枝東高非常勤講師、湖西高監督を経て2015年に藤枝東高校サッカー部監督に就任。
2020年11月02日