小1からサッカーしているが、小6の現在レギュラーではなく公式戦に出れない。今のチームのジュニアユースに進んでも、指導者が同じ人なので状況の改善が見込めない。中学で他のクラブに行った方が良い?息子は試合に出たいと言うけど候補のクラブは、現所属クラブよりレベルが下がる。サッカーは続けたい、部活じゃなくクラブチームでやりたいと言うが、親として進路選びに迷う。と悩むお母さんからのご相談。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとに、お母さんに寄り添いアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<スタメンのレベルじゃない子を監督が贔屓。県大会出場が危ういです問題<サッカーママからの相談>6年生の息子は、小学1年生から今まで地元のクラブチームでサッカーをしていますが、現状レギュラーにもなれず、公式戦にも出られてない状態です。通っているクラブチームには、ユースもあるので、レギュラーのほとんどの子がそのまま同じチームで上がりそうです。ジュニアユースは、ほかチームからも大勢入ってくるので、一学年50名位います。相談は、進路についてです。中学に上がるタイミングで、他のクラブに行った方がいいのか、悩んでいます。息子ともそれぞれの進路についての考えを話しました。息子は、試合に出られる方がいい! と言っています。が、上で上げた「他のクラブ」は、今所属しているクラブよりも少しレベルが下です。今のチームでジュニアユースに進んでも、コーチは今見てくれている人が引き続き見る形なので、形勢は変わらないと思います。本人は、自分には個の実力はあると自負しています。違うチームで一からの初めましてメンバーでのスタートの方が平等にスタート出来るメリットもありそうですが、親として提案はしたものの、本当にそれで良いのか不安です。現在、クラブの他に外部のスクールにも通っています。スクールコーチには確実に上達していると言われていますが、すごく迷います。サッカーは続けたいし、本人は部活ではなくクラブでバリバリやりたいらしいです。進路選びについて、親としてどうすればいいのか、教えてください。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。大切なわが子ですし、なるべくならその子にとって良い環境でやらせたいと思うのが親心です。よって進路選びについて「親としてどうすればいいのか?」と悩むのでしょう。私もサッカーをしていた長男、長女二人とともに生きてきたのでお気持ちはわかります。そこで3つアドバイスさせてください。■アドバイス①進路を自己決定させることが親にとって最も重要な振る舞いひとつめ。とにもかくにも息子さんに任せることです。お母さんからのメールを読むと、息子さんなりにきちんと自分で考えているように見えます。今のチームで試合に出られていない。そのチームのジュニアユースは1学年50人の大所帯だから試合に出られる可能性はほぼなさそう。よって、息子さんは少しレベルが下の他のクラブで考えているわけですよね。「本当にそれでいいのか不安です」と書かれていますが、先のことをあれこれ考えても予測した通りに行くとは限りません。私が「それでいい」と思えるとすれば、息子さんがお母さんの意見に左右されることなく、自分の進路を自己決定できることです。万が一、今のクラブでそのままジュニアユースに行くと決めて、補欠のまま3年間過ごしたとしても「あのとき他のクラブへ行けばよかったのに」などと親は言ってはいけません。すべて本人の決定に委ね、結果云々ではなくそれを認めてあげること。そこが親の振る舞いで最も重要なことです。なぜ、自己決定しなくていけないか。それは親の考えや導きによって子どもが進路を決めてしまうと、その先で試合に出られなかったり、例えばいじめに遭うなど嫌なことが起きたときに「お母さんがこうしろって言ったから入ったのに」と親のせいにしがちだからです。サッカーのみならず、受験などで親が干渉しすぎてしまった先で苦難に陥る話は取材でたくさん聞いてきました。「お母さんが僕(私の)の人生をめちゃくちゃにした」そう言って子どもたちは泣きます。悪くすると激しい家庭内暴力につながることさえ少なくありません。大袈裟なと思わないでください。自己決定させなかった親にはそのような結末も待っていることは、ぜひ知っておいてください。干渉しないこと。息子さんの考えや決定を尊重することをぜひ心がけましょう。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■アドバイス②親の振る舞いが子どもの印象を悪くすることもあるふたつめ。もし、お母さんが気になってしまい息子さんについ何か言いそうになってしまうようであれば、進路を決めるまでのプロセスの段階は、顔を出すのは控えましょう。わが子のセレクションに付き添ったお母さんが「セレクションはまるで中学受験のようだった」と話すのを聞いたことがあります。クラブチームに所属するには、セレクションに合格しなくてはなりません。定員人数はクラブで異なりますが、Jリーグ下部組織のクラブなどはおおむね1学年20数人で、ほかのクラブは20~30人、多いところだと50人前後加入させます。多くはその前に練習会とか体験会という名称のトレーニングが行われます。どのチームも複数回行われるようなので「ここに入りたい!」と希望するクラブの練習会に息子さんは参加することになるでしょう。練習会に参加する意味もあります。ほかの参加者とサッカーをすることによって、そこに入団したいと考えている仲間のおおよそのレベルを体感できることです。その子たちと一緒にサッカーをやっていくことを想像して、自分がついていけるのか、競争しても試合に出る可能性がありそうか。子ども自身が検討する目安になります。ジュニアユースの練習会をのぞくと、子どもの数の倍以上の大人がピッチの周りに立っています。なぜならひとりの子どもに両親や、中には少年団やジュニアクラブのコーチまで付き添っているからです。数年前ですが、練習会に出ているわが子にピッチサイドから終始、指示命令をしているお母さんがいました。よくサッカーを知っていらっしゃるようで「開け」とか「裏!」などと声をかけていました。その彼女の視線の先にいた息子さんはとても苦しそうな顔をしていました。委縮し、恥ずかしそうでもありました。親は子どもに良かれと応援しているのですが、そのような態度を見せてしまえば、ジュニアユースクラブの指導者たちに対する印象を逆に悪くしてしまいます。そのクラブのコーチは知り合いだったのでそのことを尋ねたら「いくらスーパーな選手でも、あの親御さんではちょっと難しい」と首を横に振っていました。■アドバイス③親がチェックすべきは勉強との両立ができるかどうか(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)唯一親御さんが口を挟んでいいところは、どこで練習するのかということです。自宅から遠過ぎないか。勉強時間は確保できるか。そこはチェックしなくてはいけません。市・区・町内の居住地域にあるクラブがベター。私は個人的には1時間以内がよいと思います。中学生になると練習は放課後から夜にかかりますので、通うのに時間がかかると子どもには大きな負担です。加えて、サッカーを続けるにあたって、お子さんとは勉強との両立が可能かどうかをきちんと話したほうがよいでしょう。移動時間が長く勉強時間が確保できないため、成績が思うように上がらず高校に行けなくなる可能性もあります。また、クラブが多い地域になると中学校のサッカー部にはあまり子どもが集まらないようです。しかしもしセレクションに全部落ちたらどうしますか。そのときは「中学の部活で楽しめばいいね」と寄り添う余裕を持ちたいものです。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『高学歴親という病』(講談社α新書)。
2023年09月06日U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジで決勝トーナメントに進出し、ラウンド16でFCバルセロナと対戦した、セレッソ大阪U-12。10番の石渡悠吏選手を中心に、バルサの攻撃を粘り強く跳ね返していましたが、0-3で敗れました。セレッソのみなさんは、バルサと試合をしてみて、どのようなことを感じたのでしょうか?試合後、久川直裕監督(以下、久川)と選手たちに話をうかがいました。(取材・文:鈴木智之、写真:高瀬波音也)試合の感想を語ってくれた選手たち(C)高瀬波音也<<関連記事:今年も熱い試合がたくさんあったワールドチャレンジ2023を振り返る■バルサは次の目的を持ちながらボールを受けている対戦してみて分かった自分たちとの違い――バルセロナ戦の感想を聞かせてください。久川子どもたちも言っていましたが、止める蹴る運ぶという、こだわをりを持ってやっているところが出せませんでした。どれぐらい通用するかを試してもらいたかったのですが、運んだら取られるのではないかと、怖がっている部分もありましたね。バルセロナと対戦してみて止める蹴る運ぶの質の高さを実感したと語った久川監督(C)高瀬波音也――セレッソのアカデミーでは「止める蹴る運ぶ」にこだわっていますが、バルサの質に関してはどう感じましたか?久川バルサの選手は、プレーの次の目的を持ちながらボールを受けていますよね。うちの子達は、とりあえずボールを受けるといった感じで、止めるという一つのことはできるのですが、その先の二つ三つまで、意識するところが少なかったのかなと思います。あそこにボールを出したいからここに止めるとか、目的があって、そのために体の向きやボールを止める場所があるわけで、その部分で質の違いを感じました。これからの課題にしていきたいです。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■止める蹴る、運ぶのクオリティを高めるための今後の課題――止める蹴る運ぶのクオリティを高めるために、普段どのようなアプローチをしていますか?久川止める蹴る運ぶをバラバラに取り組むことも、混合させたトレーニングをすることもあるのですが、もう少し「止めて蹴る」ではなく「止めながら運ぶ」「運びながら蹴る」といったところが出せればなと。そこが今後の課題ですし、僕にとってもいい勉強になりました。――セレッソのアカデミーで目指す姿はどのようなものですか?久川一番は技術の向上です。もちろん年齢が上がればスピード、パワーも必要になってはきますが、まずは技術を向上させて、個人で戦える選手を育成したいと思っています。■ワールドチャレンジは世界を垣間見ることができる大会――去年に続くワールドチャレンジの出場ですが、大会の意義はどう感じていますか?久川ワーチャレは世界を垣間見ることのできる大会です。僕自身、ワーチャレで感じたことを子どもたちに伝えながらやってきました。大事にしていることは去年も今年も同じなので、それをどれだけ突き詰めてできるか。彼らの今後の成長に期待したいです。■選手たちはバルサとの対戦をどう感じたのかバルセロナとの試合後、選手に話をうかがいました。インタビューを受けてくれたのは中杉環くん(11番)、石渡悠吏くん(10番)、大村憲心くん(8番)、藤田大智くん(7番)、梅本淳正くん(6番)、泊樹佑くん(4番)■バルサは止める蹴る、運ぶの一つひとつが上手かった――バルセロナと試合をした感想を聞かせてください。中杉バルセロナは広がってプレーしていて、真ん中で引きつけた後にボールを戻して、次にサイドを使ったりと、常に遠くを見ながらプレーしていました。もっと縦と中を切って守備をすれば良かったです。ポジショニングの微調整が大事だと思いました。石渡バルセロナは真ん中にボールをつけて戻して、サイドに振ってから縦に突破することが多かったです。2人の間を強引に割られて危ない場面があったので、次に生かせるように頑張りたいです。大村バルサは止める蹴る、運ぶ、一つひとつのプレーが上手くて、いろんなところが見えていました。藤田一人ひとりが強くて、何人かでボールを取りに行っても抜かれるし、一つのミスが大きなピンチになってしまうので、これからはミスを少なくしていこうと思います。梅本フィジカル面が自分たちと違って、世界レベルで速かったです。自分たちが守備をしていても、バルサは集中が切れた隙を逃がさず、攻撃してきました。泊個人能力が高くて、3人で囲んでも取れないこともあったので、ひとりでも取れるようにディフェンスを高めていきたいです。■バルサとの対戦を今後どう生かすか――バルサと試合をした経験を、今後どう生かしていきたいですか?中杉ワンタッチの質を上げて、駆け引きして、一歩外れて、持ちすぎずにはたいてもう1回受ける回数を増やしていきたいです。石渡1人でも守れるように強く行って、ボールを取り切り、前に繋げられるようにしたいです。大村バルサみたいに一つひとつのプレーが上手くなれるようにもっと練習して、試合で生かせるように、頑張りたいです。藤田攻撃のときにもっと落ち着いボールを回して、何人かでパスを回して、ゴール前まで行って決めきることができるようになりたいです。梅本体で劣っていても、技術で勝るために磨いていきたいです。泊バルサよりも上というか、どのチームにも通用する技術を身につけたいです。ワールドチャレンジ2023決勝戦の動画はこちら>>ワールドチャレンジ2023の記事はこちら>>サッカーにおける認知・判断を高める賢いサッカー選手を育てるトレーニング
2023年09月05日U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジで、ベスト4に進んだ、横浜F・マリノスプライマリー。ラウンド16ではしのぎを削るライバル、柏レイソルU-12に勝利。準々決勝ではエクセレントフィートFCに逆転勝ちを収めました。準決勝では、念願だったFCバルセロナと対戦。強豪相手に真っ向勝負を挑むなど、貴重な経験をしました。ラウンド16の試合後と準決勝の後、土井孝徳監督(以下、土井)と選手たちに話をうかがいました。(取材・文:鈴木智之、写真:新井賢一、高瀬波音也)準決勝ではバルセロナと対戦(C)新井賢一<<関連記事:今年も熱い試合がたくさんあったワールドチャレンジ2023を振り返る■横浜F・マリノスプライマリーの育成コンセプトとはた――ラウンド16で柏レイソルU-12に勝ちました。試合の感想をお願いします。土井次のステージに進めたので良かったです。最近は守備をテーマにしていたので、相手の陣地でミスを誘ったり、ボールを奪ってチャンスに繋げる部分は良かったと思います。攻撃においてはもう少し、主導権を持ってやりたかったです。――横浜F・マリノスプライマリーの育成コンセプトはどのようなものでしょうか?土井攻撃的かつ主体的に、トップチームが掲げている「アタッキングフットボール」に繋げられるような選手を育てていければと思っています。個人では技術的にいろんなことができて、自分で考えて判断ができる選手。そして特徴を持っている。このあたりがしっかりと備わって、次のステップに進んでいくことが大事だと思っています。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■ワールドチャレンジは普段できない経験ができて、成長するきっかけになる――U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジは、世界にチャレンジする場です。どのようなモチベーションで臨んでいますか?土井この大会は11人制なので、6年生から中学生に近づいていく中で、8人制とは違う経験をすることができます。海外のチームも参加しているので、普段できないような経験ができて、選手にとって成長するきっかけにもなると思っています。海外チームとの対戦など普段できない体験ができるのは成長のきっかけになると語ってくれた土井監督(C)高瀬波音也■映像で見るだけでなく、バルサと直接対戦したからこそ分かったこと土井監督には、準決勝終了後も話をうかがいました。――FCバルセロナとの準決勝は大差(1-8)がつきました。試合の感想を聞かせてください。土井相手はバルセロナでしたが、腰が引けるのではなく、ぶつかってみようということで挑みました。それがこの大会に出た意義でもあるかなと。その結果、選手たちはまだまだだなと痛感したと思います。そのような経験ができたことは良かったと思います。――映像で見るバルセロナと、実際に試合をしたバルセロナでは、印象に違いはありましたか?土井一人ひとりの上手さがありましたね。試合をしてみて、なかなかボールが取れませんでした。個の部分で落ち着いているし、余裕がある。我々は相手からボールを奪うことにパワーを使って、攻撃でパワー不足になってしまったところもあったと思います。――改めて、ワールドチャレンジの意義について聞かせてください。土井バルサも準決勝の大きな舞台で一生懸命やってくれましたし、そういう中で選手は様々な経験ができました。それも大会に出場する狙いの一つだったので、すごく感謝しています。■選手たちはどう感じたのかラウンド16の柏レイソル戦(3‐1)後、選手たちに話を聞きました。インタビューを受けてくれたのは板東仁くん(10番)、山田湊斗くん(11番)、小川陽くん(4番)。試合の感想を語ってくれた選手たち(C)高瀬波音也■最後まであきらめない気持ちが大事――試合の感想をお願いします。板東別の大会のリーグ戦で大差で負けた相手で、チームメイトが熱を出して出られなかったこともあって、その分も頑張りました。先制点を取れたのが良かったです。山田僕は2点決めることができたのですが、クロスのときに走り込むとか、こぼれ球に対して、最後まで諦めない気持ちが大事だと思いました。小川試合前にみんなで気持ちを高めて、全員で円陣をしたり、昨日の夜もホテルでミーティングをして準備は万全だったので、勝ててよかったです。■大会を通じてチームとして成長したと感じるところ――チームの特徴、ストロングポイントはどんなところだと思いますか?板東みんなが声出すところや、1対1で体を張ってプレーするところです。山田同点になっても先に失点せず、得点に繋げられるチームワークです。小川プロもやっているアタッキングフットボールです。攻撃をして、ボールを奪われてもすぐ取り返して、また攻撃するところです。――今大会、成長していると感じるところは?板東暑い中でも走ってゴール前に顔を出したり、ピンチのときはみんなでカバーしてディフェンスをすることです。山田点を取ることです。先制した後に追いつかれちゃったけど、その後、逆転できたのは成長できたところだと思います。小川これまでは失点するとネガティブな感じになることもあったのですが、この大会では先制点を取って、追いつかれても冷静に、みんなで助け合って、話し合ったから逆転できたと思います。そこが成長できたところかなと思います。ワールドチャレンジ2023決勝戦の動画はこちら>>ワールドチャレンジ2023の記事はこちら>>サッカーにおける認知・判断を高める賢いサッカー選手を育てるトレーニング
2023年09月04日U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジで、2年連続ベスト4に進出したヴィッセル神戸U-12。昨年度は準優勝、今大会は3位と好成績を残しました。意図のあるボール保持から相手の守備を攻略し、ゴールを奪う姿は大会屈指の完成度でした。昨年に続き、チームを率いる坪内秀介監督(以下、坪内)と選手にラウンド16(3-1)と準決勝(0-1)終了後、話を伺いました。(取材・文:鈴木智之、写真:新井賢一、高瀬波音也)準決勝ではソレッソセレクトと対戦(C)新井賢一<<関連記事:今年も熱い試合がたくさんあったワールドチャレンジ2023を振り返る■相手のどこの間を壊していくか、その判断が足りなかった――SORISSO SELECTとの準決勝(0-1)では、相手のフィジカルや高さに手を焼いた印象を受けました。試合を振り返って、感想をお願いします。坪内攻撃が縦に早くなってしまいました。もっとボールを保持して、相手を横にずらして、ひとつずつラインを押し上げたかったのですが、相手の重心がかかっている方へスルーパスを出したりと、攻撃面で急ぎすぎてしまいました。判断の部分で、狭いところに行くのではなく、方向転換してとか、立ち位置をとって、相手のどこの間を壊していくか。そのあたりを、前半からできればよかったです。相手の守備が整っていない状況であれば、カウンターを仕掛けてもいいのですが、相手のブロックがしっかりしている状況でパスを差し込んでいたので、センターバックを引き出したりとか、相手の矢印を観てとか、もうちょっと相手を食いつかせてから攻撃したかったです。「バルサと決勝で戦いたい」という想いから、高揚してしまった部分もあったと思います。そんな状況でも冷静に判断できるようにならないといけません。メンタル面も含めて、いい経験になりました。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■普段より幅もスペースもある中でどうプレーすればいいかが課題――SORISSO SELECTの印象はいかがですか?坪内フィジカルで優位性を作られるのはしょうがないと思っていました。シンプルにボールを動かしてサイドの勝負、FWの質の勝負を挑んでくる中で、ある程度ピンチになる場面もあるだろうとは思っていました。その中で選手たちは気持ちを見せて、粘り強くやってくれたと思います。今大会に出場しての収穫や今後の課題を語ってくれた坪内監督(C)新井賢一――昨年(準優勝)に続きベスト4に残り、フクダ電子アリーナに立ちました。大会を振り返って感想をお願いします。坪内有名なチームとたくさん試合ができましたし、来年から11人制に移行する中で、ヴィッセルとしてのやり方も含めた感覚がわかったのは良かったと思います。普段より、幅も深さもスペースもある中で、どうプレーしていけばいいのか。フィニッシュゾーンでの引き出しが少なかったと感じているので、次につなげていきたいです。■いくらサッカーを頑張っても選手自身が身体のケアにおざなりでは上に行けない――選手に話を聞くと、トレーナーさんがついてくれるおかげで、連戦の疲労感が少ないと言っていました。坪内それはすごく大事なところですよね。いくらサッカーを頑張っても、そこがおざなりになると意味がないですし(体のケアも)やっていかないと、上には行けないよと、日頃から言っています。「お菓子やアイスを食べていて、プロになれるの?なれないよね。じゃあ止めないとね」って。12歳という入り口の段階で言わないと「なんであのときに言わなかったんだ」となってしまいますから。気づいたときには戻れないので、小学生だからこそ言わなくてはいけないと思っています。■選手たちが大会を通じてチームとしてうまくいったと感じる部分ラウンド16終了後(大和DREAMSに3-1で勝利)、選手たちにも話をうかがいました。インタビューを受けてくれたのは石丸悠羽くん(10番キャプテン)、岡田隼輝くん(9番)、三崎屋史虎くん(7番)。試合の感想を語ってくれた選手たち(C)高瀬波音也■選手たちが大会を通じてチームとしてうまくいったと感じる部分――大和DREAMSに3-1で勝利しましたが、試合の感想を聞かせてください。石丸チーム全体で守備にも攻撃にも参加して、ゴールに向かうことができていたと思います。岡田いい形で試合に入ることができて、うまく試合を進められたと思います。三崎屋みんなが一丸となって、しっかり戦えたことがよかったです。――今大会、チームとしてうまくいっている部分は?石丸ボールを動かすところや、サイドチェンジをしてから縦パスを入れて、ゴールに向かうところです。チーム全体での攻撃、守備がうまくいっていると思います。岡田サイドで数的優位を作って、クロスを上げて点を決めることができているところです。三崎屋センターバックがしっかりボールを運んで、ウイングも幅をとって、サイドで1対1や2対1を作れているところです。■トップチームの憧れの選手――目標にしている選手、好きな選手はいますか?石丸ヴィッセルでは齊藤未月選手、海外ではバルセロナのペドリ選手です。ドリブルもありながら、パスがうまくできるところが好きです。岡田古橋亨梧選手(現在セルティック所属)です。足元でボールをもらうだけでなく、相手の背後をとって裏抜けもできて、大事なところで点を取れるのがすごいと思います。三崎屋ヴィッセルでは汰木康也選手で、海外では三笘薫選手です。ドリブルで運ぶところや仕掛けのところ、無理だったらすぐ変えるという判断がすごいと思います。ワールドチャレンジ2023決勝戦の動画はこちら>>ワールドチャレンジ2023の記事はこちら>>サッカーにおける認知・判断を高める賢いサッカー選手を育てるトレーニング
2023年09月01日U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジで、準優勝に輝いたSORISSO SELECT。ソレッソ熊本、鹿児島、宮崎の選抜チームで、ソレッソ熊本U-15は、先頃行われた『日本クラブユースサッカー選手権(U-15)大会』で全国2位に輝くなど、目覚ましい活躍を見せるクラブです。ソレッソ熊本U-12を率いる広川靖二代表(以下広川)に、準決勝、決勝戦終了後に話をうかがいました。(取材・文:鈴木智之、写真:新井賢一)決勝戦では早い段階で先制点を奪ってバルサにプレッシャーを与えたソレッソセレクト(C)新井賢一<<関連記事:今年も熱い試合がたくさんあったワールドチャレンジ2023を振り返る■普段別の場所で練習している子たちをチームにするために心がけていたこと――準決勝ではヴィッセル神戸U-12に1対0で勝利しました。感想をお願いします。広川ボールを動かされるというか、持たれるのはある程度覚悟の上でしたが、やっぱりヴィッセルさんは上手でしたね。子どもたちだけで中盤を整理するのは難しかったので、ハーフタイムを使って改善しました。前半はふわっと入ってしまったので、前半の飲水タイムまでに何人か交代したのですが、フレッシュな子たちを入れたことで、うまくいったかなと思います。もうちょっと、チャンスのときは堂々とやってほしいと思っていて、後半の最初の方は何回かその形が出ました。とはいえ準決勝という大きな舞台で、緊張がある中で「硬くなるな」というのは酷かなと。今回のチームは各地の選抜ですが、僕は毎週顔を合わせている子たちです。コミュニケーションを取っていく中で、今までの歴史として、熊本の子たちが、先輩たちの存在を意識している部分もあったかもしれません。彼らは堂々とプレーしていました。ソレッソ宮崎や鹿児島は作って間もなく、チームとして大舞台に立った経験が少ないので、僕らがサポートしてあげなければいけないと思っていました。彼らを気持ちよくピッチに送り出すために、声がけや心づかいはしているつもりです。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■今回の挑戦を見て「俺も出たい」という気持ちが生まれてくれればいい――ソレッソ熊本U-15の選手たちが、クラブユース選手権で全国2位になりました。彼らが成し遂げたことは、ジュニアの子たちにどんな影響がありますか?広川影響という意味では、うちの子たちだけに限らず、日本中の街クラブの指導者から、エールや感謝の連絡をもらいました。ワーチャレに出場したチームもセレクトとはいえ、特別な選手がいるかというとそうではありません。そんな中で、みんなで頑張ってくれました。今回はセレクトでワーチャレに出るという初めての挑戦だったので、「俺もこのメンバーに選ばれたい!」という気持ちが、各県の選手の中で生まれるといいなと思います。■先制点でバルサにストレスを与えることに成功したが......広川代表には、決勝戦の後にも話をうかがいました。――FCバルセロナとの決勝戦は1‐3でした。先制点を奪い、あわやの雰囲気も感じましたが、試合を終えた感想をお願いします。広川試合の入り方も含めて、バルセロナにストレスを与えることには成功したと思います。彼らがやりたいボールの動かし方は遮断できたのですが、そうすると長いボールを使いながら攻めて来ました。バルサを慌てさせるには、1点では足りなかったかなと。選手たちはすごく頑張ったと思いますが、普段は攻撃の練習をたくさんしているので、そこをあまり発揮できなかったのが心残りです。また頑張ります。ワールドチャレンジ2023決勝戦の動画はこちら>>ワールドチャレンジ2023の記事はこちら>>サッカーにおける認知・判断を高める賢いサッカー選手を育てるトレーニング
2023年08月31日U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジで、昨年に続き二度目の来日を果たしたユベントス。予選リーグは3引き分けに終わりましたが、下位トーナメントではバルサアカデミージャパン選抜、サンフレッチェ広島ジュニアを相手に、2連勝で大会を終えました。イタリアの名門ユベントスでは、育成年代の指導に対し、どのような考え方を持っているのでしょうか?チームを率いるマッシミリアーノ・マルキオ監督(以下マルキオ)に話をうかがいました。(取材・文:鈴木智之、写真:新井賢一)ワールドチャレンジに2年連続出場のユベントスアカデミー(C)新井賢一<<関連記事:今年も熱い試合がたくさんあったワールドチャレンジ2023を振り返る■ユベントスのアカデミーにいても全員プロになるわけではない――4日間、大会に参加した感想を聞かせてください。マルキオ選手たちにとって、とても素晴らしい経験になりました。日本まで来ることは、人生で何度も起こることではありません。今回、来日した選手全員がプロになるわけではない中で、人生経験という意味でも素晴らしい経験ができたと思っています。チームは8月16日に集まり、数回のトレーニングしかできませんでした。日本まで長時間の飛行機移動があり、コンディション調整も難しい面がありました。彼らにとって、11人制サッカーをするのは初めてなので、日本のチームに比べて準備面で難しく、厳しい戦いになるというのが、去年、そして今年を通じた感想です。初めての11人制と長時間フライトによるコンディション調整に苦戦したが、随所に強さ・上手さを見せたユベントスアカデミー(C)新井賢一――ヨーロッパの人は日本の夏が苦手だと思いますが、実際に体験してみてどうですか?マルキオ確かに暑いですが、イタリアもだんだん暑くなってきたので、言い訳にはなりません。実際、35度の気温の中で練習をしてきました。この年代の子達はアジアで試合をするのが初めてなのですが、湿気がありますね。当然、それにも順応しなければいけませんが、これだけ長い飛行機移動は経験したことがないので、その影響はあったのかなと思います。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■日本のチームの技術、戦術、個人のクオリティなどすべてレベルが上がってきている――日本で多くのチームと対戦しましたが、どのような印象を受けましたか?マルキオ技術、戦術、個人のクオリティ、全てのところでレベルが上がってきていると感じました。3位決定戦でヴィッセル神戸の試合を見ましたが、素晴らしいサッカーをしており、しっかりとした準備をしてきたチームだと思います。バルセロナに関しては、クオリティが高く、個々の技術に優れており、どの大会に行っても結果を残す、素晴らしいチームだと思います。■ユベントスのアカデミーとしてU-12年代で大事にしていることサッカーを通じた人間形成を大切にしていると教えてくれたマルキオ監督(C)新井賢一――ユベントスのアカデミーとして、この年代で大切にしていることは何ですか?マルキオサッカーを通じた人間形成を大切にしています。その意味でも、このような海外の大会に参加できることは素晴らしく、積極的に参加したいと思っています。選手にとっては、ピッチ内での振る舞いはもちろん、このような経験を通じて、人として成長していってほしいと願っています。――この年代からトップまで上がることのできる選手の割合はどのぐらいなのでしょうか?マルキオ当然、アカデミーからトップチームへの道のりは長く、険しいのですが、ユベントスにはU-23チームがあり、現在は2003年、2004年生まれのアカデミー出身者たちがそこでプレーしています。その面から考えると、徐々に育成が実ってきていると感じています。ワールドチャレンジ2023決勝戦の動画はこちら>>ワールドチャレンジ2023の記事はこちら>>サッカーにおける認知・判断を高める賢いサッカー選手を育てるトレーニング
2023年08月30日8月下旬に行われた、U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ。優勝を果たしたのが、スペインの名門FCバルセロナです。過去に何度も出場しているバルセロナですが、今大会はMVPを獲得したジャン・リソス・トレス選手(7番)を筆頭に、ゴールを量産したディバイン・ジョン選手(9番)、エクトル・オヤナ選手(11番)、ケイタ・ママドゥー選手(17番)など多くのタレントを擁し、歴代最強クラスのチームでした。準決勝では横浜F・マリノスプライマリーから8ゴール、決勝戦ではSORISSO SELECTから3ゴールを奪取。大会7試合で28ゴールをあげる、圧倒的な強さを見せつけました。選手個々の技術、身体能力、そしてチームとして攻守に連動したスタイルを、どのように実現させているのでしょうか?決勝戦終了後、ジョルディ監督に話をうかがいました。(取材・文:鈴木智之、写真:新井賢一)※カッコ内の数字は今大会での背番号大会7試合で28ゴールをあげ、圧倒的な強さで優勝したFCバルセロナ(C)新井賢一<<関連記事:今年も熱い試合がたくさんあったワールドチャレンジ2023を振り返る■ソレッソセレクトのプレーに飲み込まれた部分もあった――優勝おめでとうございます。決勝戦(3-1で勝利)を終えて、試合の感想をお願いします。ジョルディ立ち上がりにコーナーキックから失点してしまい、最初は緊張もあって落ちつかないように見えましたが、徐々にプレーの仕方を取り戻してきました。相手チームの戦いは素晴らしかったですが、最終的に良い結果を出すことができてうれしいです。――対戦したSORISSO SELECTの印象について聞かせてください。ジョルディとてもフィジカルが強いチームでした。マンツーマン気味にハイプレッシャーをかけてくる勇気に驚きました。それもあって、我々は簡単にプレーすることができませんでした。また、相手のダイレクトプレーに巻き込まれる時間もあり、とくに立ち上がりは、相手のプレーに飲まれた部分もあったと思います。すごく良いチームでした。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■ボールをコントロールする意味を教えることが大事――バルセロナの選手の基礎技術の高さは、大会を通じて群を抜いていましたが、トレーニングで、どのようなことを意識していますか?ジョルディ当然、ボールをコントロールする技術は必要なのですが、コントロールをすることイコール、次のアクションの準備です。なにより「チームとしてどのようにプレーしたいか」が大切で、コントロールの理由、意味を子どもたちに教えることが重要だと考えています。ボールコントロールに意味を持たせること、コントロールの次のプレーを考えることを重視しています。■大事なのはボールを保持することではなく、前進させゴールを狙うことU-12年代の指導で大事にしていることを教えてくれたジョルディ監督(C)新井賢一――大会を通じて、バルサの選手はチャンスと見るや120%の力でプレーし、ゴールを奪っていました。その強度、迫力は素晴らしいものがありました。普段、どのようなアプローチで意識させているのでしょうか?ジョルディバルサのプレーの仕方として「常にボールを保持していたい」という考えがあります。なのでボールを失った瞬間は「取り戻すために、必ず120%の力で行かなければいけない」と伝えています。攻撃では相手の状況を見て、自分たちのプレーを変えていくことが重要です。例えば、ただパスを繋いでボールを保持するのではなく、相手がどこにいるのか、どこにスペースがあるのかを見ながらプレーしています。大事なのはボールを保持することではなく、前進させること、そしてゴールを狙うことです。■バルサの選手たちも大会を通じて11人制に慣れていった――日本で7試合を戦いましたが、チームとして成長した部分はどのようなところでしょうか?ジョルディバルサにとって『U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ』は、シーズン開幕前、新チーム立ち上げの時期の大会です。選手たちはそれまで7人制サッカーをしていました。この大会は11人制で行われるので、11人制ならではのスペースの使い方やポジショニングに慣れていきました。我々は大会に来る前、練習3回と練習試合を1度しただけでした。その頃から見ても、大会を通じて成長してくれたと思います。ワールドチャレンジ2023決勝戦の動画はこちら>>ワールドチャレンジ2023の記事はこちら>>サッカーにおける認知・判断を高める賢いサッカー選手を育てるトレーニング
2023年08月29日28日、U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジの準決勝、3位決定戦、決勝戦がフクダ電子アリーナで行われました。最後まで目が離せない試合が続いた、最終日の様子をレポートします。(取材・文:鈴木智之、写真:新井賢一)FCバルセロナがその強さを見せつけ優勝(C)新井賢一<<関連記事:昨年準優勝のヴィッセル神戸は終了間際の劇的ゴールで準決勝進出ワールドチャレンジ3日目結果■ヴィッセル神戸対ソレッソセレクトはセットプレーが明暗を分けた準決勝1試合目はSORRISSO SELECT対ヴィッセル神戸U-12。SORRISSO SELECTは熊本、鹿児島、宮崎、そして長崎で活動するソレッソグループの選抜チーム。U-15は先日行われた、クラブユース選手権で準優勝するなど、全国の舞台で存在感を高めています。身体能力に優れた選手を揃え、攻守に強度の高いプレーが特徴のSORRISSO SELECTと、ボールを保持し、グループの連携で相手を崩すヴィッセル神戸U-12の一戦は、セットプレーが明暗を分けました。前半20分、SORRISSO SELECTが得たコーナーキックを、上野琥生選手が打点の高いヘディングで突き刺します。これが決勝点となり、SORRISSO SELECTが決勝戦へ駒を進めました。ソレッソセレクト対ヴィッセル神戸(C)新井賢一■横浜F・マリノスプライマリー対FCバルセロナは、開始からバルサが猛攻準決勝2試合目は、横浜F・マリノスプライマリー対FCバルセロナ。歴代でも屈指の強さを誇るFCバルセロナが、開始から猛攻を仕掛けます。前半7分、類まれなスピードを持つエクトル・オヤナ選手が突破し、左足で鮮やかなシュートを決めて先制点を奪うと、12分にもオヤナ選手の突破からディバイン・ジョン選手が頭で押し込んで2点目。その後、怒涛の連続ゴールで8得点を奪います。横浜F・マリノスプライマリーは終了間際、GKのキックミスを拾った木村斗空選手が右足で蹴り込みゴール。一矢報いましたが、試合は8対1で終了しました。横浜・Fマリノスプライマリー対FCバルセロナ(C)新井賢一試合後、横浜F・マリノスプライマリーの土井孝徳監督は「バルサは一人ひとりが上手くて、なかなかボールが取れない。個の質の高さを感じました」と話しながらも、「正面からぶつかっていった結果がこれなので。(バルサと試合をして)まだまだだと痛感できたことは良かった」と、貴重な経験ができたことを前向きにとらえていました。決勝戦の前に行われた3位決定戦は1対1の末、PK戦に突入。ヴィッセル神戸U-12が横浜F・マリノスプライマリーを下し、3位に輝きました。横浜・Fマリノスプライマリー対ヴィッセル神戸PKで決着(C)新井賢一サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■決勝はSORRISSO SELECTが先制点を奪うもバルサが前半で追いつき......そして迎えた決勝戦。FCバルセロナとSORRISSO SELECTの一戦は、いきなりのゴールで幕を開けます。前半2分、SORRISSO SELECTのコーナーキックから、野口壱斗選手が蹴ったボールが相手のオウンゴールを誘い、SORRISSO SELECTが先制点を奪います。1点ビハインドのFCバルセロナは前半10分、今大会、再三ゴールに絡んでいるエクトル・オヤナ選手が左サイドを抜け出し、コントロールシュートをゴールに突き刺します。1対1の同点で後半に突入すると、勝ち越しゴールを奪ったのはFCバルセロナでした。後半7分、マルビン・ドゥルドゥル選手が中央をスピードで破ると、GKを外して無人のゴールに蹴り込みます。後半23分には、エクトル・オヤナ選手が鮮やかなドリブルで相手をかわしてクロスをあげると、ファーサイドに走り込んだジャン・リソス・トレス選手がシュート。DFに当たってコースが変わったボールがゴールに吸い込まれ、FCバルセロナが3対1で勝利しました。決勝はFCバルセロナ対ソレッソセレクト(C)新井賢一■バルサ監督「ソレッソセレクトがプレッシャーをかけてきたから自由にプレーできなかった」試合後、FCバルセロナのジョルディ監督は「立ち上がりは少し緊張していたのと、相手に勢いがあって失点してしまったが、徐々にボールを支配するようになってリズムが出てきた。相手はフィジカルが強く、勇気を持ってプレッシャーをかけてきた。そのため、なかなか自由にプレーができなかった」と、SORRISSO SELECTの健闘を称えていました。決勝戦を3対1で制したFCバルセロナが優勝。準優勝はSORRISSO SELECT。3位がヴィッセル神戸U-12となり、今大会は幕を閉じました。連日、熱戦が繰り広げられたU-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ。試合に出た選手、客席から観戦した子どもたち、大会に関わるみなさんにとって、大きな刺激と新たな発見を得ることのできた4日間だったのではないでしょうか。【大会結果】優勝:FCバルセロナ準優勝:SORRISSO SELECT3位:ヴィッセル神戸U-124位:横浜F・マリノスプライマリーワールドチャレンジ2023最終日結果はこちら>>準決勝~決勝までの試合動画はこちらでご覧いただけます>>サッカーにおける認知・判断を高める賢いサッカー選手を育てるトレーニング
2023年08月28日大会3日目を迎えた、U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ。最終日にフクダ電子アリーナで行われる準決勝・3位決定戦・決勝に進む4チームが決定しました。ラウンド16、準々決勝の様子をお届けします。(取材・文:鈴木智之、写真:高瀬波音也)優勝候補FCバルセロナ(C)高瀬波音也<<関連記事:バルサが決めればジェフが追いつく一進一退の好ゲームもワールドチャレンジ2日目結果■「当たり前のことをしっかりやる」ソレッソセレクトがSOLTILO SELECTを下し準決勝進出3日目、注目の一戦は前回優勝のmalva future select対SORRISSO SELECT(ソレッソ熊本、宮崎、鹿児島の合同チーム)。両チームとも個の力強さが特徴のチームです。試合はmalva future selectが押し込む展開ながら、SORRISSO SELECTが対人の強さを見せ、ゴールを許さず。スコアレスドローで突入したPK戦の末、SORRISSO SELECTが準々決勝に進みました。SORRISSO SELECTは、続く準々決勝でSOLTILO SELECTと対戦。広川靖二監督が「立ち上がりが大事。出足や寄せ、切り替えなど、当たり前のことをしっかりやろう」と選手を送り出すと、その激に呼応するかのように、早い時間帯にゴールを奪取。個の力に特徴のあるSOLTILO SELECTから3ゴールを奪い、準決勝進出を決めました。広川監督は「4チームしかできないフクダ電子アリーナで、あと2試合(準決勝、3位決定戦or決勝)できるので、子どもたちの成長のために、みんなを使いながらやりたい」と、笑顔で話してくれました。■優勝候補バルサは2試合とも相手を完封グループリーグ3連勝のFCバルセロナは、セレッソ大阪U-12と対戦。後半8分に左サイドの快速ウイング、ケイタ・ママドゥー選手のクロスに、こちらもスピードとテクニックが武器のリソス・トレス選手が合わせて先制すると、その後も立て続けに2ゴールを奪取。セレッソ大阪U-12に攻撃の隙を与えず、3対0で完勝しました。FCバルセロナは準々決勝で、スペイン・バルセロナで誕生した『エコノメソッド選抜』に4対0で圧勝。昨年に続き、準決勝進出を決めました。バルサはこの日2勝で準決勝進出を決めた(C)高瀬波音也サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■昨年準優勝のヴィッセル神戸は終了間際の劇的ゴールで準決勝進出昨年度準優勝のヴィッセル神戸U-12は、ラウンド16で近藤直也監督率いる、大和DREAMSと対戦。試合はゲームコントロールに秀でるヴィッセル神戸U-12が主導権を握り、3対1で勝利。続く準々決勝では、千葉県トレセンU-12に対し、ボールを支配しながらもゴールを割ることができず。PK戦突入かと思われた終了間際、キャプテンの石丸悠羽選手が狙ったフリーキックをGKが弾くと、平田一翔選手が押し込みゴール。終了間際の劇的ゴールで、ヴィッセル神戸U-12が2年連続で準決勝に駒を進めました。試合終了間際劇的ゴールで2年連続準決勝進出を決めたヴィッセル神戸(C)高瀬波音也試合後、坪内秀介監督は「最後の詰めの部分や切り替えの所がまだまだ。映像で振り返って、いい準備をしたい」と気を引き締めていました。■横浜F・マリノスは先制を許すも逆転劇で勝利横浜F・マリノスプライマリーは、ラウンド16で柏レイソルU-12に3対1で勝利すると、準々決勝ではエクセレントフィートFCに先制を許す展開ながら、後半11分にこぼれ球を髙橋龍之介選手が押し込み、同点に追いつきます。その後も一進一退の攻防が続く中、18分に中島颯汰選手が左足でシュートを流し込み、逆転に成功。鮮やかな逆転劇で準決勝の切符を手に入れました。先制を許すも逆転で準決勝進出を決めた横浜・Fマリノスプライマリー(C)高瀬波音也■最終日はフクダ電子アリーナで開催動画配信もあるのでチェックついに、準決勝に進む4チームが出揃いました。フクダ電子アリーナで行われる準決勝1試合目(9:30 K.O)はSORRISSO SELECT対ヴィッセル神戸U-12。2試合目は横浜F・マリノスプライマリー対FCバルセロナ(11:00 K.O)です。試合は観覧無料。You Tubeで準決勝、3位決定戦、決勝戦の生配信があるので、ぜひ御覧ください。日本のU-12年代の最高峰のチームは、どんな戦いを見せるのでしょうか?昨年に続き、FCバルセロナを倒すチームは現れるのでしょうか?同年代のトップレベルのプレーを観戦することで、成長のヒントが得られること間違いなしです。ワールドチャレンジ準決勝、3位決定戦、決勝の配信はこちら>>ワールドチャレンジ20232日目の全チーム対戦結果はこちら>>サッカーにおける認知・判断を高める賢いサッカー選手を育てるトレーニング
2023年08月25日U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジも2日目が終了。決勝トーナメント進出チームが出揃いました。注目のFCバルセロナは3連勝で1位通過。昨年優勝のmalva future select、準優勝のヴィッセル神戸U-12なども順当に勝利し、26日に行われるラウンド16に駒を進めました。(取材・文:鈴木智之、写真:新井賢一)クラブユース選手権準優勝のソレッソ熊本の弟分「SORRISSO SELECT」は初日の硬さが取れ躍動(C)新井賢一<<昨年優勝チームは初戦黒星スタート初日の結果はこちら■クラブユース選手権準優勝チームの「弟分」が躍動2日目の第1試合では、先日行われた『第38回 日本クラブユースサッカー選手権(U-15)大会』で準優勝を果たしたソレッソ熊本の弟分『SORRISSO SELECT(ソレッソ熊本、宮崎、鹿児島の合同チーム)』が躍動。SORRISSO SELECTは大量5得点で快勝(C)新井賢一大連体育集団倶楽部(中国)を相手に、開始1分に藤岡鉄大選手が左サイドを突破し、鮮やかなゴールで先制すると、3分には須賀友咲選手が追加点。その後もボールを支配すると、前半13分には中島凰裕選手が強烈なシュートを突き刺して3点目。終わってみれば、大量5ゴールを奪っての勝利となりました。初日の指揮を執った三角将行コーチは「1日経って、硬さがとれたかな。選抜チームなので、個の力を持った子たちはいる。彼らの特徴をどう活かすかがテーマ」と、狙いを話してくれました。その中で「(この日からベンチに入った)広川代表は、普段から熊本と鹿児島、宮崎を行き来していて、選手の特徴もわかっている。選手を束ねるのがすごく上手なんです」と、一段上のマネジメントができたことを、快勝の要因に上げていました。SORRISSO SELECTは、26日のラウンド16で、昨年優勝のmalva future selectと戦います。強豪同士の一戦とあり、好ゲームが期待できそうです。■バルサがゴールすればジェフが追いつく一進一退の好ゲームを制したのは......2試合目では、地元のジェフユナイテッド市原・千葉U-12とFCバルセロナが対戦。バルサが早い時間に先制し、ジェフが追いつく、一進一退の好ゲームが繰り広げられました。バルサがゴールすればジェフが追いつく一進一退の好ゲームだった(C)新井賢一後半開始早々、バルセロナがセットプレーから勝ち越しますが、後半15分にコーナーキックから永沼瑠晟選手が頭で突き刺し、ジェフが再び同点に追いつきます。このまま終了かと思われた直後、勝たなければ決勝トーナメント進出の道が絶たれてしまうジェフが前がかりになったところを突き、バルサが高速カウンターを発動。ディバイン・ジョン選手の折り返しをエクトル・オヤナ選手が決めて、追いすがるジェフを突き放しました。試合後、ジェフの茂垣将太監督は「バルサにボールを持たれる可能性が高い中で、中盤3人のところで奪ってショートカウンターを狙っていて、その形はある程度できた」と話しながらも、「開始直後、終了間際の大事な時間帯にやられた。彼らは勝負の別れ目をわかっている」と、勝負どころを見極める力に差があったと感じた様子でした。この結果により、FCバルセロナが堂々の1位通過。ラウンド16でセレッソ大阪U-12と試合をすることが決まりました。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■街クラブ選抜2チームとも決勝トーナメント進出その他、街クラブ選抜の『大和DREAMS』『大和FUTURES』も決勝トーナメントに駒を進めるなど、大会3日目も注目の試合が繰り広げられます。街クラブ選抜2チームとも決勝トーナメント進出写真は大和ハウスFUTURES(C)新井賢一3日目もフクダ電子スクエアで試合が行われます。午前中にラウンド16、夕方に準々決勝と一日にたくさんの試合を見ることができるので、お時間のある方はぜひ会場に足を運んでみてください。ノックアウトステージに入り、負ければ終わりの緊張感の中で、子どもたちはどんなプレーを見せてくれるのでしょうか。同年代のプレーを見て学ぶのも成長につながります。ワールドチャレンジ20232日目の全チーム対戦結果はこちら>>サッカーにおける認知・判断を高める賢いサッカー選手を育てるトレーニング
2023年08月25日お互いのフォローをするために声を出すことが大事だと言い続けているが、実際声を出せる子が限られている。大人しい子でも声を出せるようにするには、具体例を挙げて教えるのが良いか、サッカーの理解を深めるべきか、教えて。とお父さんコーチからの相談。ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、子どもたちが声を出せるようになるおすすめメニューなども交えてアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<レベル差があるから学年ミックスのグループ分けを検討するも、保護者から「劣等感を抱く」と反対が......。レベル差のあるチームの指導、どうすればいい?<お父さんコーチからの質問>こんにちは。少年団でU-9年代を指導しています。サッカーではお互いに声をかけあってプレーすること、フォローすることが大事だと思っており、練習中も試合中も声を出すことが大切だと言い続けていますが、声を出せる子が限られています。性格によるものも大きいと思いますが、おとなしい子でも声を出せるようにするにはどのような指導法がありますか?状況ごとにどんな声を出せばいいか、いくつか具体例を教えてあげるのが良いですか?それとも、サッカーへの理解を深めることが大事なのでしょうか。だとしたら、どんな風に理解させるのが良いか、ヒントをいただけませんでしょうか。よろしくお願いいたします。<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。今に限らず、かなり以前から子どもは声を出すことが苦手です。サッカーをしているときに声を出す以外でも、トレーニングの際に「今の練習はどうでしたか?」と質問しても、ほとんどの子どもは自分から答えません。■声を出さない背景に、自信がない、間違えるのが恥ずかしいという感情がある同じ集団を教えると、私の質問に積極的に自分から答えるのがひとりか二人の"決まった子ども"になる印象です。多くの子が、小学校のように「はい、君、答えてください」とあてられない限り、じっと黙って誰かが何か言うのを待っています。そうなってしまう背景に目をやると、そもそも自分に自信がなかったり、間違えることをとても嫌がる。間違えることが恥ずかしいという感情があるようです。加えて、彼らの日常生活で「大声を出す」という状況があまりありません。逆に、ちょっと声が大きくなると「どうしてそんな大声出すの?」と大人に言われたり、仲間から「静かにしろよ」と注意されてしまう。感情を表に出す、一緒になって大声でわいわいやる、みたいな経験が、親世代よりも圧倒的に少なくなっているようです。まずは、そのような子どもの実態と背景を理解しなくてはいけません。そうすれば、あの子は声を出せないと否定するような考えや態度にならずに済みます。そのように考えると、声を出すことはサッカーをするうえで必要なので、できるようになるトレーニングをすればよいのです。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■空間認知力を養うためにもおすすめの「ハンドパスゲーム」例えば、私がよく行うメニューに「ハンドパスゲーム」があります。子どもたちがバスケットボールの手前で行う、ポートボールのような感覚です。バスケットはリングにシュートしますが、ポートボールは台の上に立った味方に直接渡します。サッカーで行う鳥かごのような形にして、真ん中に守備を入れます。守備をうまく避けてボールをつないでいくポートボールのイメージで、手から手にボールを渡す動作から始めます。次に「鳥かごから、全員動いていいよ」と言って、固定ではなく動くのをOKにします。つまりはサッカーボールで行うバスケットです。どこに走って、どこに投げるとつながるか。このメニューは空間認知力を養うことにも役立ちます。このハンドパスゲームで、味方同士で5本つなぐと1点というルールにします。最初のパスを出す人は「1」と言ってパスを出す。次の人は「2」と言ってパスを出すようにして、6人目がパスを受けた瞬間にチーム全員で「一点!」と叫ばなくてはいけない。そんな決まりをつけます。パスの数を告げる声もコーチに聞こえなくてはいけません。ここで声が小さいと「おーい、聞こえないよ~」と言ってあげてもいいでしょう。子どもたちは勢いづいて大声を出すようになります。全員で一点!と叫ぶのを誰かが忘れたりします。子どもたちが笑顔になるので、アイスブレークにも最適なメニューです。■「左側に相手DFが来ているから右行って」など、どんな声を出せばいいかこの夏休み中にドイツから帰国し全国をまわって指導していた、育成コーチの中野吉之伴さんが行っていたトレーニングも自然に声を出すものです。2メートルくらいの範囲にマーカーを置いてグリッドを作り、そこでボールコントロールの練習をします。パス出す人に「右」と言われたら、右足でコントロールします。右へ出ていかなくてはいけません。グリッドの外にボールを置く決まりです。「後ろ」と言ったら、後方にボールを動かします。つまり指示されたほうにボールを動かさなくてはなりません。このような状況は試合の中でも起こります。仲間から「右行って」とか「左行って」と言われることがあります。言うほうも、聞くほうも瞬時に判断しなくてはなりません。このトレーニングをすると、子どもたちは声を出します。最初はパスを出すときに相手に言うのを忘れてしまうこともあります。決められなくて口ごもり「早く言えよ!」と言われたりします。が、よく考えたら試合の中でもそんなことが起きます。そのことをぜひ子どもたちに伝えてください。「試合の中でも起きるよね。左側に相手のディフェンスがきてるから右に行けよと言ってあげよう」そんなふうに、どんな声を出せばいいのかを明確にしてあげてください。■「最終形は何か」を話し合うこと(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)練習するなかで「最終形は何か」ということも話し合ってください。声を出さなくても通じ合うこと。そんな話が出るでしょう。子どもが賢くなれば「どっちに欲しいか指示しなさい。右足に欲しいときは右手を出すように」とコーチに言われても、それでは相手にばれてしまう、と考えます。そうしながら逆に出すことを考え出す子もいます。チームとしてサッカーの理解が進むと、逆に声は出さなくなります。相手をだまして、かわしてゴールに進む。サッカーのようなボールゲームはその連続なのです。そのなかでお互いの阿吽(あうん)の呼吸みたいなものを作っていきます。そのためにプロ選手は毎日一緒に練習するし、代表でも長く一緒にやっていればそれが強みになります。「サッカーってチームでやるよね。右に行ってほしいなと思ってたら、行ってよって言ったほうがいい。もらう側も、ちょうだいって言えばいい。そこはオフサイドポジションだからパスしないよ、というのもあるね。チームで助け合ってサッカーをするために声を出そう」例えば、そんなふうに子どもたちに話してみてください。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2023年08月25日今年も熱戦の季節がやってきました。8月22日、U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジが開幕し、3年ぶりとなるFCバルセロナや初出場のユベントスが登場。夏休み期間という事もあり、会場である千葉県のフクダ電子スクエア/フクダ電子フィールドにはたくさんの観客が詰めかけました。(取材・文:鈴木智之、写真:新井賢一)FCバルセロナは初日2連勝と好発進(C)新井賢一<<関連記事:前回大会は守備の練習をしたこともなく11人制も初めてのマルバスクール選抜■昨年優勝のマルバスクール選抜が初日第一試合に登場第一試合に登場したのが、昨年の優勝チームmalva future select。横浜F・マリノスプライマリーとの一戦は、前半10分に失点を喫すると、焦りからかゴールを割ることができず、0対1の敗戦。前回優勝チームが黒星スタートとなりました。続く2試合目。昨年も同大会に出場し、大活躍を見せた郷内煌生選手が、浅野智久監督に「守備を安定させたいから、自分が後ろでプレーする」と直訴。それが奏功し、FC PORTAの攻撃を封じ込めると、攻撃では郷内選手が2得点の活躍を見せ、malva future selectが3対0で勝利しました。前回大会優勝のマルバスクール選抜(C)新井賢一■ヴィッセル神戸対セレッソ大阪の関西勢対決を制したのは......前回準優勝のヴィッセル神戸U-12は、初戦で同じく関西勢のセレッソ大阪U-12と対戦。「2週間前に試合をしたばかり」(ヴィッセル神戸U-12 坪内秀介監督)という、互いに特徴を知り尽くすチーム同士の試合は、前半6分に稲田夏希選手が左足のミドルシュートを沈め、ヴィッセル神戸U-12が先制。その後、セレッソ大阪U-12のストライカー、石渡悠吏選手の鋭い突破にもゴールを許さず、1対0で逃げ切りました。ヴィッセル神戸U-12は2試合目の江南南サッカー少年団との試合を2対1で勝利し、2連勝で決勝トーナメント進出を決めました。ヴィッセル神戸対セレッソ大阪の関西チーム対決の結果は......(C)新井賢一サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■バルサはミャンマーU-12と対戦注目のFCバルセロナは、Myanmar U-12と激突。前半5分、13分と、セットプレーからキム・カルセル・イ・ヴィダル選手が2ゴールをマークすると、スピードとテクニックに優れた突破が特徴のケイタ・ママドゥー選手が左足で3点目を奪取。ジャン・ジラル・ロドリゲス選手もゴールを決め、4対0で完勝しました。2試合目は、近藤直也監督率いる大和ハウスDREAMSに3対1で勝利。詰めかけた観客の前で2連勝を達成したFCバルセロナが、決勝トーナメントに大きく前進しました。■2年連続出場のユベントスはエコノメソッド選抜と対戦優れたスピード、テクニックを見せたもうひとつの注目チーム、ユベントスとの一戦に挑んだのはエコノメソッド選抜。スペインのバルセロナで誕生し、日本各地でスクールを展開する中で、選ばれた選手たちで臨むチームです。球際の強度、守備の個人戦術、グループ戦術に優れたエコノメソッドが先制すると、後半終了間際に追いつかれましたが、スピードとパワー、テクニックに優れたユベントスの攻撃に立ち向かい、勇敢なプレーを見せました。エコノメソッド選抜のベルナ・シウラーナ監督は「ユベントスは難しい相手だと思っていました。最終的に失点して引き分けてしまいましたが、全体的にはいい形でプレーできたと思います」と、強豪相手に一歩も引かずにプレーした選手たちを称えていました。2年連続出場のユベントスはエコノメソッド選抜と対戦(C)新井賢一■街クラブ選抜がグループ唯一の2連勝で決勝トーナメント進出決定そのエコノメソッド選抜を1対2で下したのが、橋本英郎監督率いる大和ハウスFUTURES。ユベントスに引き分け、自信をつけた相手に2対1で勝利。初戦でFC大泉学園に3対0で勝利していたため、グループ唯一の2連勝で決勝トーナメント進出を決めました。大和ハウスFUTURESは初日2連勝で決勝トーナメント進出を決めた(C)新井賢一今年も、様々なスタイルのチームが一同に介した、U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ。海外勢、Jクラブ、街クラブ、選抜チームなど、多様なチームを一度に観ることができるのも魅力のひとつです。会場のフクダ電子スクエア/フィールド/アリーナでは、25日から27日にかけて、試合が目白押しです。観覧無料なので、ぜひ親子で観戦に出かけてみてはいかがでしょうか。日本の、そして世界のジュニアのレベルを知ることで、たくさんの刺激を得られることでしょう。ワールドチャレンジ2023初日の全チーム対戦結果はこちら>>サッカーにおける認知・判断を高める賢いサッカー選手を育てるトレーニング
2023年08月24日お気に入りの保護者の子をいつも出場させるが、その子はスタメンになれるレベルじゃない。県大会出場を目標にしていると言っているが、その子がいたら無理。まともな采配をしてほしいが、他の親たちもチームに意見するつもりはない。誰か監督に注意できる人がいればいいのに......。と悩むお母さんからのご相談。指導者から贔屓されているように見える子がいると、親たちの関係性がギスギスしたりしますよね。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとに、アドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<セレクションを目指しているのにBチーム落ち。親のほうが立ち直れません問題<サッカーママからの相談>島沢様はじめまして。11歳の息子が所属するチームの監督は、小学校教諭をしている20代の方です。チームにお気に入りの保護者(30代)がいて、いつもその方の子を試合に出します。その子はとてもスタメンになれるレベルではなく、コーチ陣にも困惑している方もいます。最初は保護者から声をかけ仲良くなり、今ではチームの飲み会などあると2人でべったりです。その保護者はいわゆるうるさい保護者で、自分の息子が試合に出ていないと騒ぎ出します。違和感を感じている方もいますが、誰も意見をするつもりはなさそうです。県大会出場を目指していると言いながらその子が出ていては無理です。なんとかまともに采配をする様にならないものかと悩んでいます。誰か注意できる方がチームにいればいいのですが........。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。お母さんの悩みは「その子が出ていたら県大会出場は無理だと考えるから、まともな采配をしてその子を出さないで欲しい」ということですね。回答するにあたり、私が疑問に思ったことと関連付けて3つほどアドバイスさせてください。■苛立ちは分かるが、挙げている内容はどれも「主観」の域を出ないひとつめ。私が気になったのは、お母さんの話がどれも「主観」だということです。・その子がスタメンのレベルであるか否か。・その子が試合に出たら県大会出場は無理なのか否か。・保護者とべったりだから試合に出すのか否か。・まともな采配なのか否か。お母さんからすれば「だって誰から見てもそうだよ。みんなそう思ってるよ。おかしいよ!」と言いたくなるでしょう。もし、上記の4項目において、自分は間違っていないと思われたとしても、そのいずれもが根拠のない主観だということを、まずは理解してください。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■他者を説得するためには根拠が必要そして、他者を説得するためには根拠がなくてはいけません。このご相談文には今のところ根拠が見当たりません。お母さんの苛立ちは何となく想像はできますが、あくまでお母さんの言い分なので、この監督に話を聞いてみないことには迂闊なことは話せません。話してはいけないと考えます。他人が掌握していることに対し、異議申し立てをする場合は大義が必要です。大義というのは「どうしても変えてほしい、なぜならばこういう理由だからです」という限りなく正当で常識的なものです。では、このケースの場合、監督に「この子を起用するのはやめてほしい」という大義があるとすれば、「チームのためにならない」ということでしょうか。それについては、やはりお母さんひとりではなく、他の保護者の方々や、困惑しているというコーチ陣の意見をまずは丁寧に聞きましょう。そのうえで、大勢が「この状況はチームのためにならないね」という結論に達したのなら、監督を交えて話せばいいことかと思います。また、その子の親御さんのことについては「自分の息子が試合に出ていないと騒ぎ出す」と書かれていますが、どんなふうに騒ぎ出すのかちょっとわかりかねます。その親御さんにはそのようになってしまう何か原因があり、監督さんがそこを配慮したうえで付き合っているとは考えられないでしょうか。■子どもたち自身が騒ぎ出したり、チーム運営に支障が出るならば話し合う必要があるこのご相談文を読む限り、チームのためにならないから何とかしなくてはならない、というような事態ではなさそうです。例えば、子どもたちが「贔屓されている」と騒いでしまい、その子が仲間外れにされている。もしくは、監督とその子の親が仲良くしすぎて、他の親たちとも亀裂が生じてしまい、運営がやりづらくなっている。そういった支障があれば、チームで話し合う必要がありそうです。話し合ったほうがいいなと思えば、仲のいい親御さんにも声をかけて集まってはどうでしょうか。■「誰か」ではなくあなた自身が監督と話しをしてみては二つめ。「誰か注意できる方がチームにいればいいのですが」と書かれていますが、注意するという行動は少し違う気がします。保護者も監督も、子どもの成長を見守る地域の大人として全員平等であるべきです。明らかに規律を乱しているとかではないようなので、ここは監督さんに「全員と同じ温度で接してもらったほうがいいのではなか」といった話をしたほうがいいかと思います。お母さん自身が監督さんと話してはどうでしょうか。■家でも「あの子が出たら負けるのに」なんて言っていませんか?三つめ。サカイクの読者が「この子を出したら負けるのに」といった感覚をもたれていること自体が、私にはショックでした。全員が同じだけ出場機会を得る。小学生の場合はそれが理想です。監督も保護者もそのような状況にないのは百も承知ですが、であれば試合に出た子どもたちを応援するのがそこに集った大人のあるべき姿ではないでしょうか。よもや、ご自分のお子さんに「あの子が出たら負けるのに、なんで選ばれるんだろうね」などとおっしゃってはいないかとは思いますが、お子さんはお母さんがそう思われていることを知ったらショックかもしれません。もし、そうではなく「そうだよ、あの子が出ないほうが勝てるのに」と言ったとしたら、お母さんはどう答えますか?「そうだね。あの子が出ないほうが勝てるのに」とおっしゃるのでしょうか。■チームに任せられない、親が口をはさむべきと思ったらみんなで意見交換をして変えていこう(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)スポーツは楽しむためのものですが、その一方で教育的な要素もたくさん含んでいる素晴らしいコンテンツです。勝ち負けは重要ですが、試合をするのは子どもたちで、サッカーが始まれば、そこはコーチと子どもたちの世界です。信じて任せるしかありません。任せられない、これは口を挟むべきだと思えば、みんなで意見を交換して良いチームにしていくことです。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『高学歴親という病』(講談社α新書)。
2023年08月23日夏季休暇を取得されている方も多い時期ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。本日は、ジュニアサッカー(少年サッカー)の保護者向け情報サイト「サカイク」で2023年1月から7月に配信した連載記事の中でみなさんの注目度が高かった記事をランキングでご紹介します。子どもへの接し方をはじめ、サッカーを通して子どもを自立させる方法など参考になることがたくさんありますので、記事配信当時に見逃した方も、いま一度ご覧ください。第3位チーム内で技術差が大きい、上手い子とそうでない子に分けて練習するべき? レベル差のあるチームの指導を教えて第3位は、池上正さんの連載に寄せられたレベル差の大きいチームでの指導について。最近では、2学年ミックスにして習熟度などで分けて上手く運営できているチームも増えているようですが、子ども達ではなく保護者からの「下の学年と一緒なんて劣等感を抱くから嫌だ」といった反応もあり、悩んでいるという指導者の声も聞きます。どのレベルの子も、せっかくチームに所属したのだからサッカーを楽しんでほしい。そんな悩める指導者に向けたアドバイスが支持を集めました。同じような悩みを抱えるチームは多いと思います。ぜひいま一度池上さんのアドバイスをご覧ください。記事を読む>>サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!第2位最近練習に身が入らない息子、ライバルに差をつけられ親が焦っています問題第2位は、島沢優子さんの連載「蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~」に寄せられた、子どものサッカーについてのお父さんからのお悩み。「エースだったわが子が最近練習に身が入らず、ライバルに差をつけられていることに、子どもではなく親の自分がツライ」というお悩みですが、「親の方が焦る気持ち、正直理解できる」という保護者も多かったようです。サッカー少年少女の保護者として先輩であり、スポーツと教育のジャーナリストとして数々の取材を行っている島沢優子さんが送った、子どものサッカーに関わる保護者としてどうあればいいかを改めてご覧ください。記事を読む>>第1位ドリブルが上手い子に個人プレー制限で得点減少、小学生年代までは個性的でもいいのでは? どんな指導が良いか教えて第1位は、ドリブルが上手くてたくさん点を取る子に、ヘッドコーチが個人プレーを制限し「パスを回せ」と指示されたけど、小学生年代ではチャンスがあればドリブル突破からのシュートもありなのでは?という指導者の悩み。チームとしての連携は大事だけど、小学生ぐらいだと自分で運んでシュートまでもって行くプレーを許容してもいいのでは......。最初から連係プレーを教えるものなの?個性も大事にしたいのだけど、個人技はどの年代で力を入れればいいの?と悩む指導者も少なくないですよね。そんな指導者の悩みに池上さんが回答していますので、ご覧ください。記事を読む>>いかがでしたでしょうか。これからも親御さんご自身が考えるきっかけになったり、チームがよくなるきっかけになる記事を配信していきますので、ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2023年08月17日学年の人数が多いのは良いけど、レベル差がある。止める、蹴る、運ぶの基礎技術だけでなく、その場その場での判断力も......。学年ミックスにして能力別にチーム分けも考えたが、うまい子たちのメリットを考えると悩むし、下の学年と一緒にされると劣等感を感じそうだからという保護者からの反対もある。同じ学年でもレベル差の激しい子たちに、どう指導したら良い?と悩むコーチからのご相談。レベル差のある子たちへの指導で悩んでいる指導者は多いのでは。ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、チームのみんなをうまくするための3つのアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<ポジションの意識がない低学年の団子サッカーを解消したい、子どもたちに伝わる言い方を教えて<お父さんコーチからの質問>地域の少年団でコーチをしています。担当はU-10なのですが、1学年に所属している選手は25人を越えており、選手の上手さにもかなり差があります。なので、止める、蹴る、運ぶの、基礎的な技術が習得できていない選手達やその場面でどうしたら良いか考える力が足りていない選手達がいます。一方で、基礎的な技術も考える力も持っている選手もいます。そんな中で、全員で同じ練習に取り組むべきなのか、グループを分けて練習内容を変えるべきなのか悩んでいます。上手くない選手にとっては上手い選手と一緒にやることで成長は見込めると考えていますが、その逆はどうなのでしょう。同学年は一緒にしてほしいと言う親御さんもいます。下の学年と一緒のグループになると劣等感を抱きそうだからと......。そんな方々への説明にも悩んでいます。上手い選手が上手くない選手と一緒にやることでメリットはあるのか、上手い選手だけでやる方がより成長できるのではないか、といったあたりが気になります。少年団なので、どちらか一方だけに焦点を当てて指導することはありません。何か良い練習方法や考え方がありましたら教えていただきたいです。<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。ご相談の文章を読んで、個人よりもチームとして考えることが必要ではないかなと感じました。「上手い選手が上手くない選手と一緒にやることでメリットはあるのか、上手い選手だけでやる方がより成長できるのではないか」「上手くない選手にとっては上手い選手と一緒にやることで成長は見込めると考えていますが、その逆はどうなのでしょう」これらの疑問を持たれているようですが、そう考えてしまうと「上手くない子を入れると試合に勝てない」という考えにつながります。■チームとして全員が上手くなるにはどうしたら良いか、子ども達自信にも考えさせるチームとして全員が上手くなるにはどうしたらいいか考えることが重要です。であれば、上手くない子に上達してもらうにはどうしますか?ということを、子どもにも考えてもらったほうがいいでしょう。子どもは自分の感情をストレートに表現するので「アイツは下手だからパスを出してもダメだ」ということを平気で言います。それに対し、大人はうなずいてしまってはいないでしょうか。「いや、サッカーはチームでやるスポーツだよ。仲間をどう助けるか。あの子がとれるパスをどうやって出すかを考えよう」そういったことを、まず指導者が言えるようにしてください。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■サッカーは「チームでどう戦うか」が大事では、どうするか。10歳以下ということなので4年生くらいでしょう。例えばチームに25人いて8人制の大会に出るとしたら、最低2チーム組めますが、できれば全員出場するために3チーム出してはいかがでしょうか。その際はある程度のレベル分けをしてもいいでしょう。ただし常にそうするのではなく、大会によって全チームの力を平等にして編成してほしいと思います。レベル分けをしても、結局同じチームの中でも差はあります。常に同じ問題をはらむわけです。上手い子だけにボールを持たせて試合をしてしまうと、サッカーではなくなります。だからこそチームでどう戦うか?が大事になってきます。■アドバイス①「勝つための起用」「点を取らせる」という考えを捨てるそこで三つほどアドバイスします。ひとつめ。「みんなでやる。それがサッカーというスポーツなんだよ」という概念を子どもに強く持たせてください。そのためには、この感覚をまずは指導者が深く理解したうえで「勝つためにはこの子を起用する」とか「点を取らせる」といった考えを捨ててください。そして「みんな同じだけ出場して勝つにはどうするか?」を考えてほしいのです。よく聞かれるのは「子どもは勝ちたいでしょう?」という意見です。その通り、子どもは技術が劣る仲間が交替で出ると「そいつに替えたら勝てないのに」などと平気で言います。そのときに、協力し合うこと、上手い下手ではなくリスペクトし合う大切さを教えなくてはいけません。「このメンバーでどうやったら勝てる?みんなで相談して」と言って一緒に考えてあげてください。もし負けても次どうするかを考えます。それがスポーツです。そこを大人がわかっていないと、敗戦の原因だとひとりが責められていたり、いじめに発展することを止めることはできないでしょう。■アドバイス②相手へのリスペクト、仲間との協働を意識させる最近の少年サッカーはヒエラルキーが生まれやすくなっている2つめ。子どもに伝えなくてはいけないことを整理し、徹底してください。小学生のサッカーにしても、みんながみんなプロになるわけではありません。リスペクトや、仲間と協働すること、ルールを守ること。子どもが学ぶべきこと、大人が伝えるべきことはたくさんあります。そこを優先すれば、やるべき指導は見えてくるはずです。つい最近、小学校の先生からこんなことを聞きました。「少年サッカーにヒエラルキーが生まれやすくなってますね。ひと昔前は少年野球をしている子どもの中でいじめのようなことが発生し、それが学校にまで持ち込まれていて私たちも対応に追われました。でも、今はサッカーのほうが問題になることが多いです」そのような時代だからこそ、チームでやるということを強調し実践してほしいです。スポーツの指導現場での暴力根絶についての講演を頼まれることもあります。その際、「皆さんはなぜ子どもにスポーツをさせますか?一体スポーとは何でしょう?」と問いかけます。日本は、そこが欧米に比べて圧倒的に抜けているからです。スポーツに対し「勝負する」という側面が強すぎます。勝ち負けや成績ばかりに一喜一憂します。レギュラーの子どもは上手いからいいけど、補欠の君はダメだから試合に出られないのは当然だよと評価してしまいます。サッカーを学ぶ目的は「勝つ」ことではありません。試合の目的が「勝つ」ことなのです。このことを間違えずに私たち指導者は子どもに伝えなければならないのです。■アドバイス③練習法を変えてみる様々な子を混ぜてやるとみんなできるようになってくる(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)3つめは練習方法です。能力別ではなく、様々な子どもたちを混ぜてやっていると、みんなができるようになってきます。前述したように、できない子がいれば「周りの人は何したらいい?」とできる子に問いかけてください。彼のキックがここまで届くと思う?うん、思わないよね。じゃあ、どうして離れていくの?もっと近づいて相手がいないところでボールをもらってあげたら?みんな特徴あるよね?助けてあげるのがサッカーだよね?例えば、仲良くない二人を私はわざと一緒にやらせます。この子をうまくするにはどうしたら?と考えてもらいます。スポーツは競争だ、悔しかったらうまくなれ――。プロであればそうでしょう。プロは自分の価値を高めたり、磨かなくてはなりません。しかし一方で、自分だけ良ければいい、というエゴイストは一流になれないのも確かです。プロのような競争を小学生からやらせる必要はありません。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2023年08月11日夏季休暇を取得されている方も多い時期ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。本日は、ジュニアサッカー(少年サッカー)の保護者向け情報サイト「サカイク」で2023年1月から7月に配信した記事の中でみなさんの注目度が高かった記事をランキングでご紹介します。サッカーを通して子どもを自立させる方法など参考になることがたくさんありますので、記事配信当時に見逃した方も、いま一度ご覧ください。第3位「上手くなること」の倍以上! 親が「子どものサッカーに望むこと」1番多かった回答は?第3位は、サカイク読者アンケートからわかった「サッカーをする子を持つ保護者」が子どものサッカーに何を望んでいるか、の回答記事でした。サッカーを始めて何年か経つと、技術の向上やよりレベルの高い場所でのプレーに意識が向いて、そもそもどうしてサッカーをさせているのか考えることは少なくなりますし、チームの保護者ともそのような話をすることは少ないですよね。上手くなること以上に保護者が子どものサッカーで大事にしていることに、多くの共感をいただきました。ぜひ、いま一度ご覧ください。記事を読む>>サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!第2位「小学生年代で習得しておく技術は?」「親がサッカー経験者じゃないと上手くならない?」気になる読者の質問に柴崎岳選手が回答第2位は、サカイクにもよく寄せられる「親がサッカー経験者じゃないと子どもは上手くならないの?」という質問に、柴崎岳選手が明確な回答をしてくれたこちらの記事。最近はいろんな情報を目にしやすくなったからこそなのか、なぜか親が経験者でないと子どもはそのスポーツが上手くならないと感じる保護者も増えているようで、そんな読者の興味を引いたようです。柴崎選手の回答と、ご両親のかかわり方をいま一度ご覧ください。記事を読む>>第1位サッカー少年の親に聞いた、全国の保護者を悩ます「家の中に持ち込ませたくない」ある悩みとは第一位は、サッカーをする子を持つ親にとって「親のかかわり方」「親としてどうあれば良いか」と同じぐらい悩む「スパイクやソックス、足のにおい問題」に関する記事。実際にサカイク読者のお母さんたちに話を聞いて、リアルな悩みやご家庭での対策をご紹介したので身近に感じられた方も多かったようです。続編として、読者の皆さんが実際に行っている対策も記事にしていますのでそちらもご覧ください。(記事内リンクで確認できます)記事を読む>>いかがでしたでしょうか。これからも親御さんご自身が考えるきっかけになったり、チームがよくなるきっかけになる記事を配信していきますので、ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2023年08月10日Aチームにいた息子が、Bチームに落ちてた。来月セレクションがあるのに、現実は厳しいのか......。と親の方がショックを受けて立ち直れない。子どもにどう声をかけていけばベストな状態でセレクションを受けられるか教えて。とのご相談。スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見やご自身の体験をもとに、悩めるお母さんに3つのアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<息子に意地悪する子に注意したらコーチに叱られた、わが子をいじめる子に親が問いただすのはダメなのか問題<サッカーママからの相談>はじめまして。いきなりですが相談です。息子は来年中学生なのですが、来月セレクションがあります。ですが、4月からAチームにいた息子が、今日Bチームに入っていました。なんだか私が凄くショックを受けてしまって立ち直れません。まだセレクションが終わったわけではないのに、やはり現実は厳しいのかと悲しくなってきます。どう声をかけていけばベストな状態で受けることが出来るでしょうか?<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。「現実は厳しいのか」この言葉を、私も思わず漏らしたことがあります。■子どもにとってネガティブなことに親がいつまでも悲しんでたら子どもを2度傷つけることになりかねない私の子どもAが中学3年の夏か秋だったかと思います。地元のジュニアユースクラブでプレーしていたその子は、高校では別のユースクラブへ入ってサッカーを続けることを考えていました。私たち親はAに「好きなようにすればいいよ。任せるよ」と伝えていました。ある日、Aが鉛筆で何か走り書きしたような一枚のレポート用紙を私に見せました。そこにはこうありました。「初めまして。〇〇と言います。ジュニアユースクラブの〇〇でプレーしています。今中学3年です。そちらのユースチームの練習に参加させてもらえないでしょうか。プレーを見てもらいたいです」そして、私に首都圏の強豪ユースクラブ2つに自分で電話をかけて頼んでみようと思う、と言いました。私は「へえ。すごいチャレンジだね。いいじゃん。やってみたら」と言って、その紙を返しました。ひとつのクラブは「ユースからはとっていません」と事務職員の方に断られましたが、もうひとつのクラブはコーチにつないでくれました。保護者同伴で来るように言われ、練習に参加しました。私は仕事だったので、夫が付き添いました。コーチから「もう少し見たいので、もう一度来てほしい」と言われ、2度目の練習に参加しました。練習後少し待たされた後、コーチから「クラブの事情であなたをとれない。残念だけど」と落選を伝えられました。Aは唇を嚙み悔しそうだったと夫から聞きました。もしかしたら受かるかもと思っていた私も「現実は厳しいねえ」と漏らしました。あなたと同じようにショックではありました。悲しくもありました。ただ、そこで考えたのは「一番悲しいのはわが子だ」という事実です。ずっとAチームだった息子さんは、Bチームに落ちてショックだったことでしょう。セレクションを控えているのですから余計に落ち込みます。そんなときに、お母さんが落ち込む姿を見たり、ショックを受けていることを知ったら、彼はどう感じるでしょうか。いえいえ、そんな姿は見せていませんとおっしゃるかもしれませんが、子どもは親の気持ちを感じ取る天才です。子どもがやってしまった失敗やネガティブな出来事を、親がいつまでも嘆き悲しんでいては、子どもを二度傷つけてしまうことになりかねません。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■結果よりプロセス小6でBチームだったりセレクションに落ちることは人生でそんなに重要かそこでお母さんに三つアドバイスさせてください。ひとつめは、息子さんにまつわるどんなことも「結果」よりも「プロセス」を見てください。寄り添う大人がプロセスを重視するほうが、脳科学的に子どもを成長させることがわかっています。目先の結果ばかりを追いかけて干渉してしまうと、子どもの意欲やモチベーションをつぶしかねません。Bチームに落ちたことは結果です。息子さんが楽しく精一杯自分なりにサッカーに取り組んでいるのであれば、そのことを認めましょう。小学6年生でサッカーでBチームだろうが、セレクションで結果が出なかろうが、それらは彼の長い長い人生の中でどれだけ重要なことでしょうか。ぜひそこを考えてください。■子どもにとってベスト場状態に持っていく力は本人の主体性からしか生まれないふたつめ。これまでも何度かこの連載でも書いてますが、わが子の感情に共感しても同化してはいけません。Bチームに落ちたことなんて話題にしなければいいのです。知らん顔する。もし、息子さんが「落ちたんだ」と言ってきたら「そっかー、残念だったね。でも、お母さんは君がサッカーを楽しんでくれているだけで嬉しいよ」と答えてください。そうやって息子さんの残念で無念な気持ちに共感して寄り添うことは、親として大事なことです。しかし、親のほうが落ち込んでしまうと、子どもの感情に同化することになります。同化すると、親としての立ち位置や役割を見失ってしまいがちです。お母さんの役割は何でしょうか?ただ見守ることではないですか?ご相談文に「どう声をかけていけばベストな状態で受けることが出来るか」と質問されていますが、私たち親にそんな力があるでしょうか?自分なりに気持ちを整理してベストな状態にもっていく力は、子どもの主体性からしか生まれません。■もう12歳、この機会に少しずつ自立させよう(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)そして三つめ。もう12歳。この機会をぜひ「子どもの手を離す時間」にしてください。何かについて「お母さんはどう思う?」と相談されたとき、「君に任せるよ」と言える。ちょっぴり心配でも「好きなようにしなさい」ときっぱり言える。そんな態度が息子さんの主体性につながります。もしかしたら揺れる、戻るの繰り返しかもしれませんが、少しずつ自立させてください。ところで、わが子Aは結局、高校から別のクラブでプレーすることになりました。奇遇にも二度練習参加をしてとってもらえなかったクラブと同じエリアでした。Aはそのユースクラブに入ってよく努力しました。しかも、在籍した3年間で、自分を落とした強豪クラブに一度だけ公式戦で勝ちました。他の選手も活躍していましたが、Aもとてもいいプレーを見せてくれました。試合後、泣いていました。嬉しいのはわかるけど、そんなに泣くか?というくらいに。涙の理由は私たち家族だけが知るものでした。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『高学歴親という病』(講談社α新書)。
2023年08月09日猛暑の夏。この暑さで夏バテになる子どもたちも多く、食事量が減ったり、体力が落ちたりと、心配になる親御さんは多いはずです。サッカーの練習や試合で運動量が多いと思うとさらに不安になってしまいますよね。香川真司選手の管理栄養士であり、プロアスリートやサッカーチームを栄養面で長年サポートしてきた管理栄養士の吉村俊亮さんに「夏バテ」の基礎知識や、夏バテしやすい子について伺いました。夏バテは熱中症になりやすいこと、朝ごはんが大事な理由も伺ったので、ぜひご覧ください。(取材・文:小林博子)■そもそも夏バテはどんな症状のこと?そもそも夏バテとはどんな症状のことを指すのか聞いてみると、「夏バテには、実は明確な基準はありません」と意外なお答えが返ってきました。そのため、「こうなったら夏バテです」と言い切ることは難しいのですが、夏バテには様々な症状があり、その中でも多くの人が経験したことがあるのは、以下の2つになるのではということです。・食欲低下・身体がだるくなる多くの方が1度は、または毎年のように夏になると経験する症状ではないでしょうか。明確な基準がないだけに迷うかもしれませんが、子どもが夏場に食欲が落ちて普段より食べない日が続いていたり、だるそうにしていたら夏バテと判断してよさそうです。<夏バテのサイクル>気温の上昇によって深部体温(身体の内部の体温)が上昇することで胃腸の機能が弱まり、食欲が低下する↓食欲低下により1日の食事の摂取量が少なくなることが続き、長期的なエネルギー不足に↓疲労回復が間に合わず、身体のだるさを強く感じる↓夏バテ■夏バテ予防は熱中症対策にもつながる「夏バテになっていると熱中症になりやすくなるのでは?」という懸念もありますね。実際のところ、「夏バテになるとそうでないときに比べて熱中症の危険性は高まる」と言えるそうです。熱中症に限らず、夏バテが続きコンディション不良の状態では、体調が万全のときよりさまざまなトラブルを起こしやすくなるものです。熱中症は身体の中の水分量が低下して脱水状態になり、発熱やけいれん、意識障害などを起こしてしまう恐い症状です。予防法として有効なのは適切な水分摂取と言われています。水分摂取というと、練習や試合前後に「飲む」イメージが強いものですが、実は「食べる」ことによる水分摂取も重要。汁物だけでなく、野菜や米、肉や魚などにも水分は含まれています。そのため、夏バテによる食事量の低下は体内の水分量を減らし、身体が脱水状態になり、「熱中症のリスクが高い状態」につながってしまいかねません。■夏バテ予防/夏バテからの回復のために摂りたい栄養素せっかく食べるなら、夏バテ予防にもつながる食材や栄養を積極的に摂りたいですね。吉村さんに伺うと、夏場に意識して食べてほしい食材として下記をあげてくれました。・柑橘類・梅干しこれらには「クエン酸」が豊富に含まれます。クエン酸は疲労回復に一役かってくれる存在で、疲れやだるさを感じにくくするサポートをしてくれるのだそうです。食欲が落ちがちな暑い日でも、レモンやグレープフルーツ、梅干し入りのおにぎりなどなら、さっぱりとしているので比較的食べられるという子どもも多いはずです。■クエン酸の摂取は「練習後」クエン酸を含む食材に関して1つだけ注意事項があると吉村さんは言います。それは、夏バテ予防のために積極的にたくさん摂取するなら、タイミングは練習「後」がベターということ。理由は、クエン酸が「エネルギー代謝効率を低下させる」という作用を持ち、身体からエネルギーが発散されにくい状態にするからだそうです。つまり身体が「省エネモード」になるので、「夏場の練習時、特に夏バテ予防を意識するとしたら摂取するタイミングに注意しましょう」とアドバイスをくれました。■注目は「朝ごはん」食べないと熱中症にもつながる「うちの子は毎年夏バテになる」と悩む親御さんがいる一方で、「夏バテとは無縁」という子もいます。体質や生活習慣の違いからくるものなのでしょうか。吉村さんは長年の経験から、「夏バテになりにくいのは"食べられる"子」に圧倒的に多いと言います。普段から食が細く、あまり食べられない子どもは、夏バテ予防を入念に行ったほうがよさそうです。朝昼晩、3食すべてが大切ですが、特に注目したいのが朝食だそうです。朝食で水分や塩分、ミネラルを身体に蓄えた状態で1日のスタートができるかどうかに身体のコンディションが左右されるからです。前述した熱中症のリスクのことも考えると、以下のような流れになるのです。しっかり食べられる↓夏バテしにくい↓食べられるから食事で水分も摂取できている↓熱中症にもかかりにくい食事の大切さがよくわかりますね。■超簡単朝ごはん写真はイメージですそうはいっても、この暑さの中でしっかり食べさせることに苦心している親御さんはたくさんいるはず。特に時間に追われがちな朝ごはんをしっかり食べさせるというのは負担が大きいものです。そんなお悩みを解決してくれる吉村さんおすすめの朝ごはんメニューがこちらです。・ごはん 1膳・納豆 1パック・卵1個・牛乳 1杯・オレンジなど柑橘系フルーツジュース 1杯「え?これだけでいいの?」とびっくりしますが、朝食で摂りたい栄養を理想のバランスで摂れるのだとか。火も包丁も使わずに5分で用意できるのもありがたいですよね。なお、上記でだいたい500~600kcalになります。小学校高学年以上の子どもたちはご飯は山盛り(260g目安)にし、納豆は2パックにすると必要なエネルギー量を満たします。まだまだ暑い日が続きます。夏バテのリスクは常に隣り合わせです。夏バテ知らずの夏になるよう、食事を少し工夫してみてください。また、子どものサポートをする親御さんも炎天下のグラウンドで過ごすことが多いはず。夏バテにならないように子どもとともに食事を工夫してご自愛くださいね。後編では、夏バテでどうしてもご飯を食べられないときはどうしたらいいのかを伺います。吉村俊亮(よしむら・しゅんすけ)株式会社AND-U代表取締役。管理栄養士、NSCA-CPT、フードスペシャリスト、サプリメントアドバイザー、AHA-BLS-HCP。2012年より栄養指導を開始、サッカーの香川真司など世界で活躍する多くのトップアスリートをサポートしている。※2023.8.2内容を修正して再アップしました
2023年08月02日さる7月22日、神奈川県相模原市でFC今治高校×伊勢原FCフォレストによるトークセッションが開催されました。「これからの時代を創造的に生きるための教育・学びとは?」をテーマにしたこのイベントには、FC今治の会長を務める岡田武史さん、日本にイビチャ・オシム監督を招聘したことでも知られ、現在は伊勢原FCフォレストのGMでもある祖母井秀隆さん、伊勢原FCフォレストの指導者である一場哲宏さん、来春開校のFC今治高校の校長に就任予定の辻正太さん、神戸市のSDGs担当を務める長井伸晃さんが登壇。そこで語られた、これからの時代に求められる「教科書には載ってない」スキルについてなどのお話を紹介します。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■自分が何が得意で不得意か、知ってもらうことで仲間に助けてもらいやすくなる人と人、人と地域、地域と地域を結び、自分の意志で楽しむ仲間をつくるためのサッカーとまちづくり、教育から考える私たちの明るい未来について、集まった周辺地域の中学生と保護者の方に語りました。第一部では、伊勢原FCフォレストの一場さんによる「公開チームビルディング」として、集まった中学生が参加するワークショップが行われました。周りと打ち解けるための「氷おに」では、選手に指名された岡田さんと祖母井さんが鬼を務めました。鬼にタッチされた子は「助けて」と声をあげるルールで行われたこのゲーム。終了後に一場さんが、仲間や周囲に「助けて」を言えること、人を助けようとすること、お互い助け合うことはサッカーでも社会を生きる上でも大事な事だと伝えると、中学生たちは納得の表情でうなづいていました。ほかにも、自分のチーム以外の子と3人組を作って自己紹介をするコーナーでは、はじめましての人に自分を理解してもらうために、好きな事や共通点を見つける作業、自分の得意な事・不得意なことをシェアする時間も。これらも、サッカーでも社会でも、自分を知ってもらうことで人に助けてもらいやすくなるために重要な事だと一場さんは語りました。■いろんな人が社会・まちづくりに関わるのが良い休憩を挟んだ第二部は、登壇者たちによるパネルトークを開催。これからの社会を生きるために大事な要素とは何か、というテーマで話が進みました。祖母井さんは「スポーツには勝ちや負けがある。その延長が今の社会を作っているのが課題なのかなと思います。勝ったとか負けたとか......。だけど、弱くてもスポーツしていいわけで、いろんな人が関わる今治のまちづくりは良いと思います」と今治市における活動を賞賛。そのうえで「社会は勝ち負けだけじゃない。中間のポジションの人たちが社会づくりに関わっていくのは大事だと思います」と語りました。■想定外の出来事への対応は教科書には載っていない現在のサッカー監督業に加え、24年開校のFC今治高校の学園長という新しいチャレンジを始める岡田武史さんは、教育に関わることになった経緯をはじめ、FC今治高校が目指すもの、そしてこれからの社会を生きるために必要なスキルについて話しました。「今まで想定してたものがそのまま行かない時代が来ます。自然災害も増えるでしょう。心身ともにタフでないといけない。想定外のことしか起こらないです。対応策は教科書に載っていないので適応する能力や主体性が必要になります」そしてこう続け、共助が大切な時代になることを伝えました。「自分で考えて生きていかなきゃいけない時代が来ます。だから主体性を持たなきゃいけない。そして、人は1人じゃ生きていけないので多様な力が必要です。想定外の事象が起きたとき、みんな同じ考えだと対応ができなくて困窮してしまいます。周囲にいる人間をお互い受け入れて、認め合って、力を合わせることが大事です。考え方も価値観も違う、いろんな人がいるんだって認めないといけない。大人がその環境を作っていくのです」■生徒が失敗しないように先回りすることで、やる気や意欲を削いでいたことを後悔FC今治高校の校長就任予定の辻さんは、これまで教員として生徒に関わるなかでやってしまっていたこととして、「生徒が失敗しないように、先回りしていろんな道を作っていたこと」と振り返りました。子どもが失敗して、へこんで立ち直れなくなってしまわないようにと生徒のためを思って先回りしていたはずが、結果として子どもの意欲など「牙」を抜いてしまっていた経験から、FC今治高校では生徒がやりたいことをとことんやれる環境を作りたいと意気込みを語りました。大人の先回りに関しては、岡田武史さんも言及。「子どもたちはもっと自由にやっていいんです。逆に我々大人が余計な口出しばっかりして夢を壊したりするのが良くないんです。子どもを1人の人間として尊重してやっていかないとダメ。ものの豊かさより心の豊かさを大切にする社会をつくらないと。心の豊かさは数字で表せない信頼や共感。それは共助のコミュニティです。そういう場を一緒に作っていきたい」と、改めて助け合って生きることの重要性を説くと、保護者の皆さんも真剣に耳を傾けていました。また、神戸市のSDGs推進担当の長井さんは、まちづくりは人づくりであることや、人と人とのつながりが地域を作ることなどを説明。AIなどテクノロジー化が進む社会でこれから社会で求められることとして「相手の表情とか、対話でしか読み取れない部分は機会にはできない。だから、人間の強みとして対話や創造的な発想、機械には導き出せない答えが大事になると思います」と語ると、デジタルを使いこなす中学生たちも納得の表情で話を聞いていました。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!
2023年07月26日ジュニア年代における国内最大規模のサッカー年間リーグ「プレミアリーグU-11」を⾏っているプレミアリーグU-11実⾏委員会(委員長・幸野健⼀)は、女川町、女川町教育委員会との共催で、2023年7月25日(火)から3日間、全国33都府県の代表が⼀同に集う「アイリスオーヤマ第8回プレミアリーグU-11チャンピオンシップ2023」を開催します。 東北初のサッカー全国大会として宮城県女川町での開催へ移行し、2年目となるこの大会。7月27日(木)12時半からの決勝はWACK女川スタジアムで実施され、大会会アンバサダーを務める元サッカー日本代表・佐藤勇人氏と佐藤寿人氏が試合を観戦、閉会式に出席予定です。また閉会式では女川潮騒太鼓轟会による太鼓演奏も行われます。今年も震災の教訓を後世に語り継ぐ取り組みとして、全参加チームに震災学習プログラムを実施し、選手たちの内面的な心の成長にも繋げています。冠協賛のアイリスオーヤマ株式会社をはじめとして多くの協賛企業が連なる本大会は、今年も延べ3,000人以上の来場が見込まれています。お子さんの夏休みの思い出に、お近くの方はぜひ会場に足を運んでみてください。参加チーム一覧はこちら>>■大会概要 大会名:アイリスオーヤマ第8回プレミアリーグU-11チャンピオンシップ2023主催:アイリスオーヤマ第8回プレミアリーグU-11チャンピオンシップ2023実⾏委員会共催:宮城県女川町/女川町教育委員会主管:プレミアリーグ宮城U-11後援:宮城県/宮城県教育委員会/(⼀社)宮城県サッカー協会/石巻サッカー協会/NPO 法人女川町スポーツ協会/女川町観光協会特別協賛:アイリスオーヤマ株式会社協賛:名鉄観光サービス株式会社期日7月25日(火)、26日(水)1次ラウンドおよび2次ラウンド7⽉27日(木)決勝ラウンド・閉会式会場女川町総合運動公園第⼀多目的運動場および第⼆多目的運動場女川小学校・女川中学校セイホクパーク⽯巻フットボールフィールド第1WACK 女川スタジアム 会場へのアクセスはこちら<<本件に関するお問い合わせ>>アイリスオーヤマ第8回プレミアリーグU-11チャンピオンシップ2023実⾏委員会 事務局 佐々木和之電話:090-4590-5713Email:sasaki@pl11.jp 公式ホームページ ※下記の画面が表示されて詳細に行けない方は、画像右上の×印(赤枠部分)を押してください。
2023年07月25日サッカー日本代表のエース・三笘薫選手の初の著書『VISION 夢を叶える逆算思考』(双葉社)が出版され、サッカー少年、世界に子供を羽ばたかせたいサッカー少年の保護者、指導者など、すでに多数のサッカーファミリーに愛読され、7万部を超えるベストセラーとなっています。同書には、普通のサッカー少年がなぜ"世界のMITOMA"と評価されるようになったのか――。三笘選手を形作る「120のメソッド」が初めて公開され、親子で分かりやすく学べる「世界に最速で行くための伸ばし方」や、「サッカーの未来を担う子どもたちに伝えたいこと」を詰め込んだ教科書となっています。<<第一回:三笘薫選手が著書に記した「サッカーの未来を担う子どもたちに伝えたいこと」■自分を動かしているのは「意志」強い意志こそが夢を叶えるために一番大事なこと前回に続き、その一部をご紹介すると――。三笘選手は『VISION』の中で、「子供の頃から、僕の背中を押していたのは、絶対にサッカー選手になるんだという強い意志だった......」とこう説いています。《テレビ番組の企画で母校を訪れ、僕と碧の後輩にあたる鷺沼小学校の子供たちと話をした際にも、「絶対にプロサッカー選手になるという強い意志こそが、その夢を叶えるために一番大事なこと」だと伝えた。 今でもそうだが、僕を動かしているのは〝意志〟だと思う。サッカー選手になると強く思えば思うほど練習に打ち込めると思うし、それが苦だとは思わないはずだ。だから、後輩の子供たちにもそのことを伝えたいと思ったのだ。小学校の頃の僕が、まさにそんな子供だった......》(『VISION 夢を叶える逆算思考』より)■大事なのはゴール(目標)ラインの設定ではなく、ゴールに向かって自分の背中を押せることさらに、三笘選手は「目標を立てることは、特に子供の頃にはとても重要になると思う」と、『VISION』で子供時代の目標設定ついて、こう明かしています。《ただし大事なのは、ゴール(目標)ラインの設定そのものではなく、そのゴールに向かって自分で自分の背中を押すことができる「強い意志」を発動させることなのだ......》(同書より)■夢に到達するための具体的な目標を立て、自分で考えながら実践することの方が重要また、三笘選手は母校である鷺沼小学校の子供たちを前に、小学生の頃に何回リフティングができたかを聞かれ、このように語ったとも『VISION』で綴っています。《「100回以上できた」と答えると、ちょっとびっくりしていた。でも、僕も最初から上手にリフティングできたわけではない。失敗して悔しい思いをして、何度も何度もボールを蹴って、どうして上手くいかないのかを考えたのだ。そして、自分なりにトライ・アンド・エラーを重ねていった。 失敗したら悔しいが、トライし続けることが嫌だとは感じなかったのは、「サッカーが上手くなりたい」という強い意志があったからだ。 大きな夢を持つことは大切だが、そこへ到達するために必要な具体的な目標を立て、それをクリアするために必要なことを考え実践していくことのほうが重要だ......》(同書より)三笘選手が「プロサッカー選手になる」という子供時代の目標をなぜ達成できたのか?『VISION 夢を叶える逆算思考』には同選手が日本サッカー界の将来を担う子供たちに伝えたい、その全てが書かれています。
2023年07月24日事前に練習内容を共有しないのでアシスタントコーチの準備が無駄になったり、練習でしてないことを試合で求める年上コーチ。練習も単調で子どもたちの成長が見えづらい。いくつか改善したら子どもたちの楽しさも増幅すると思うのでお願いしたいが、年上コーチと上手く付き合い方が難しい......。と悩むスクール代表からのご相談をいただきました。ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、コーチ間のコミュニケーションについてアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<事前に練習内容を共有しない、練習でしてないことを試合で求める年上コーチに対応を改善してもらう方法を教えて<お父さんコーチからの質問>初めまして。池上さんの記事、大変勉強になります。私が担当しているのは、まだ団子サッカーを続ける小学2年生のチームで、3年生になる前にポジション意識させ、3年生になったらポジションをハッキリさせていこうと考えています。現状は、みんな自分が点数を取りたくてしょうがない様子で、パスをしません。これから先パスの意味、意義をどの様に教えたらその重要性を理解してもらえるのか悩んでいます。現在は「シュートを打とう打とうとしてGKに向かって行ったって、そのままシュート打ったってそれはGKに当たってしまう。だから騙そう」と説明していますが理解している気配がしません。この年代の子どもたちに伝わるような何かいい言葉はありますでしょうか?今のままの伝え方でも成長とともに分かってくれるのか、ご意見伺えましたら幸いです。よろしくお願いします。<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。つい最近まさしく同じような話題を、私のクラブの子どもたちの試合を観ながらコーチと話しました。■まずは子どもたちが自分の判断でプレーしていることを見守ってあげる方が良いそれぞれの子どもたちのポジションを私が決めてしまえば、多分もう少しスムーズにいきます。ただし、そうしてしまうと子どもたちの伸びしろを奪うかもしれません。違うポジションの経験をすることで、その子がもっと違う発見をするかもしれないのに、私が「この子にはここが合っている」と主観で決めることの弊害がきっとあります。プレーの一つひとつを見ても「いや、そっちに行くよりこっちのほうが良かったね」と思ったりすることがあります。でも、それは外から見るとそうなのですが、プレーした子がその状況をどう打開するかというのは、そのとき、その子にしかわからない。その子の判断になるわけです。もしかしたらそのとき「自分の技術では抜けない」とか「パスできない」と思ったかもしれません。だからこそ、何も言わずに見守ってあげたほうがいいのです。そうすると、それぞれの子どもがやりたいように、あるいはやれる範囲で、あるいはやれないかもしれないけどチャレンジしようとします。その行為こそが、後々大きな成長につながります。ここでため息が出たのではないでしょうか。「後々」の成長になる。育成年代の指導者は現在地ではなく、そこを見なくてはなりません。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■団子サッカーを脱却するための指導私のトレーニングを見た指導者からよくいただく質問が「パスばっかりする選手になりませんか?」です。私は微笑みながら「パスすることの何がいけないのでしょうか?」と話します。私は小学生に、ワンツーで抜け出すことを指導します。パスしたらまた自分がもらいに動く。そうすると、もらった子も次にまたパスを出して動く。つまりずっと流動する。だんだんサッカー自体がダイナミックになります。それを小学生のスタートのところから教えておかなくては、今の世界のサッカーの潮流には乗れません。したがって、団子サッカーを解消する際は、ポジションを決めるといったことよりも「パスを出したら、次どこに行ったらもらえる?」「その次はどこに出したらシュートが打てる?」と言った問いかけをし、必要があれば原理原則を伝えます。そんなふうに指導をしていってもらえるといいかなと思います。■スペインで指導経験のある佐伯夕利子さんもかつて団子サッカー解消で失敗私も何度かお話ししたことのある佐伯夕利子さんはスペインで指導者をしてきた方です。彼女は著書『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』に、かつて低年齢の子どもたちが団子にならないようにするためにマーカーを置いた話を書いています。マーカーを置いて、子どもに自分のポジションをわかりやすく示していた、と。その指導をこう振り返っています。「何と幼稚な指導をしていたか」そんなことでは、団子サッカーからは脱却できません。日本では、指導者のみなさんは「広がれ、広がれ」と団子にならないよう声をかけます。一瞬広がりはしますが、チームとして繋がってはいません。それが現状なのです。■サッカーを理解すると子どもたちの視点が変わる「この年代の子たちに伝わるような何かいい言葉はありますでしょうか」とあります。例えば「サッカーで大切なのはチームゲームだよ」と言い続けてください。団子になりがちな幼児や1年生からそのことを理解させるのです。理解すると、子どもたちはこんな視点を持つようになります。「(小学)2年生の子たちが誰もパスしないんです!」ある日、高学年の女の子たちが、不満そうな顔で私に訴えてきました。「そうなの?それは大変やな」と彼女たちに対して共感を示したのち、「ちょっとみんな集まって」と声をかけ、話し合いをしました。まず、私がこんな問いかけをしました。「サッカーはチームでやります。みんなにすごいね!って言われたら、誰でも嬉しいよね。楽しくなるためにチームがあります。みんなが楽しめるようにするためにはどうしたらいい?」すると、私に訴えてきた高学年の女の子が「チームのメンバー全員がボールに触らないとシュートできないっていうルールにしたら?」と言ってきたのです。これはいい勉強になると思いました。じゃあ、そうしよう!と言って始めたら、みんながパスをつなぎ始めました。2年生の子どもたちも周りを見始め、パスを出し始めたのです。全体的にとてもダイナミックになりました。■大事なのは「ひとりでやるトレーニングをしない」こと(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)そんなふうにみんなで勉強できたのは、チームのなかに子どもたち全員が何でも言える雰囲気があったからです。心理的安全性とか、安全基地になるといったことを、指導者が意識して運営していけば、このようなことが起きるのです。もう一つ大事なことは、絶対ひとりでやるトレーニングをしないこと。2人組なら、いつも違う人としてもらうよう配慮してください。他者を感じることがとても重要です。そのことをこころとからだに刷り込んでいく。そう言った工夫を意識してください。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2023年07月21日もうすぐ夏休みがやってきます。夏休みは学校がないので、学習習慣が身についてない子は、勉強から距離をとりがち。保護者の立場としては、夏休みの終わりに課題を一気に片付けるよりも、毎日取り組む姿勢を身に付けてほしいもの。では、お子さんに「自ら学習する姿勢」を身につけてもらうには、どうすればいいのでしょうか?この悩みを解決するためのヒントを関西学院初等部教諭の森川正樹先生にうかがいました。『自学』を通じて、子どもたちの学ぶ力の向上に取り組む森川先生のアドバイス。後編では「勉強を習慣づけるための方法」をお届けします。(取材・文鈴木智之)<<前編:夏休みもコツコツ勉強するようにはどうすればいい?「小学生の究極の自学ノート図鑑」著者の森川先生がアドバイスサカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■勉強を「見える化」したり、イベントを作って親子で楽しむ勉強を習慣づけるための方法について、森川先生は「見える化すること」と言います。「一覧表を作り、たとえば自学をした日はそこにシールを貼ります。そうすることで、自分がどれだけやったかがひと目でわかりますよね。それを見た保護者が『これだけやって偉いね』と感心してあげることも大切です」ほかに「イベントを作ること」も、習慣化するための良い方法だそうです。「自学が3回できたら、お子さんが自学で使いたい本を保護者の方と一緒に買いに行くといったように、イベントを作って親子で面白がること。これは学習を継続する上で、効果があると思います」■勉強したらゲームをしていい、では勉強が苦痛な作業になってしまう反対に、やってはいけないのが「勉強を1時間したら、ゲームを1時間してもいい」といったような提案をすること。森川先生は「このやり方だと、勉強をゲームと対局のものととらえてしまいます。『楽しいゲームをするために、苦痛な勉強をしなければいけない』という考え方だと、勉強が学びではなく、作業になってしまいます」と注意を呼びかけます。「勉強も遊びもスポーツも同じカテゴリーにある『学び』で、対局にあるものではありません。遊びやスポーツからも、学べることはたくさんありますから」サッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは■コツコツ勉強する習慣を身に付けるために大事な事保護者はお子さんに、毎日とは言わなくても「コツコツ勉強してほしい」と願うもの。森川先生は「勉強の適切な頻度は、お子さんによって違うので、見極めることが大事」と優しく語りかけます。「まずは毎日ではなくても、2日に1回や3日に1回できるようになってきたら、だんだん毎日にするのもいいですね。適切な頻度はお子様によるので、それを見極めるのも大切です。勉強を毎日強いることが、モチベーションになる子はいいのですが、そうではない子もいますからね」その上で、保護者が「毎日勉強してほしい!」と思うのであれば、進め方に工夫をすると良さそうです。「たとえば好きな図鑑を、机の前に座って20分読むでもいいと思います。ほかには、月曜日は自学をやって、火曜日はその続きをやる。水曜日は好きな本を読む。木曜日は苦手な計算ドリルをやってみよう。金曜日は親と一緒に料理を作るといったように、親子でワクワクするようなプログラムを作ってみてはいかがでしょうか」■学習の習慣をつけたい親がやりがちな失敗例学習の継続を妨げる、やりがちな失敗として、次のような例をあげます。「失敗しやすいのが、保護者がドリルを買ってきて『漢字が苦手なんだから、夜ご飯の前、毎日30分やりなさい』と、一方的に言ってやらせること。それをモチベーションにできる子はいいのですが、多くの子が『面倒くさいことがひとつ増えた』と感じてしまいます」そうなると、勉強ではなく作業になり、苦痛をやり過ごすための時間になってしまいます。本来の目的である学びにはつながりません。「それはなるべくやめて、親子で『作戦会議しよう』みたいにして、月曜日はこれ、火曜日をこれをやってみようと決めるのがおすすめです。そして2週間経ったら、作戦を練り直す時間を設けましょう。この曜日は他の習い事で時間がとれない、毎日だとしんどいので休憩も必要だねといった意見が出てくるので、「見直す時間」を持つといいと思います」親から子へ、一方的に「これをしなさい」と与えるのではなく、互いに話し合って決める「親子の約束」にすると、勉強に対するモチベーションも上がりそうです。「毎日やる習慣をつけるのであれば、現状を振り返って、定期的にフィードバックして改善していくこと。長い目で見ると、そのやり方が続きやすいのではないかと思います」■保護者もそれなりの覚悟を持つことさらに森川先生は「勉強を毎日やらせたいのであれば、保護者もそれなりの覚悟を持つべき」とアドバイスを送ります。「子どもを子ども扱いせず、『なぜ毎日勉強したほうがいいのか』を、論理的に説明することが大切です。『あなたのことを思って言っているよ』と口に出して、こういう理由で勉強が必要なんだと伝えてあげることですね」『子どもを子ども扱いしないこと』は、勉強に限らず、サッカーや日常生活においても、心のどこかにとどめておくと良さそうです。■スポーツやレジャーでの学びもある!夏休みは普段できないことを経験するチャンスいよいよ夏休みがやってきます。森川先生は来たる長期休暇に向けて、次のようなメッセージをくれました。「夏休みは、普段できない経験をする絶好のチャンス。机の前に座ってする勉強以外にも、スポーツやレジャーから気づくこと、学ぶことはたくさんあります。せっかくの夏休みなので、お子さんに『考えさせる経験』をたくさんさせてみてはいかがでしょうか」さらに、こう続けます。「たとえば料理が失敗してしまった。昆虫を上手く捕まえられずに、逃げられてしまったといった、小さな失敗をすることも必要です。失敗は体験からしか生まれません。そこには必ずなぜ? という理由や学びがあるので、AIでは代替できない、体験の貯金をさせることは、すごく大切なのかなと思います」夏休みは体験の貯金をするのにうってつけの時期。サッカーや勉強に加えて、様々な行事やイベントにチャレンジしてみましょう。森川正樹(もりかわまさき)関西学院初等部教諭平成32年版学校図書国語教科書編集委員教師塾「あまから」代表教師のためのセミナー「詳細辞典セミナー」講師日本シェアリングネイチャー協会ネイチャーゲームリーダー、日本キャンプ協会キャンプディレクター、日本自然保護協会自然観察指導員、CEEプロジェクトワイルドエデュケーター国語科の「書くこと指導」「言葉の指導」に力を注ぎ,「書きたくてたまらない子」を育てる実践が,朝日新聞,読売新聞,日本経済新聞,日本教育新聞などで取り上げられる。県内外で「国語科」「学級経営」などの教員研修,校内研修の講師をつとめる。社会教育活動では,「ネイチャーゲーム講座」「昆虫採集講座」などの講師もつとめる。★森川正樹の教師の笑顔向上ブログサッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは
2023年07月20日チーム内に存在するヒエラルキー。みんなレベル差はないのに、同じミスでも優しく言い返せない息子だけチームメイトに怒られる。コーチからも息子のせいにされた。サッカー経験者の父から見ると息子の方が周りよりセンスもあるし基礎技術も高いのに、日に日に自信をなくしている息子が不憫。他の親は、自分の子がターゲットにならないので何も言わない。6年生だけど無理やりでも辞めさせるべき?とのご相談。スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見やご自身の体験をもとに、悩めるお父さんにアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<息子に意地悪する子に注意したらコーチに叱られた、わが子をいじめる子に親が問いただすのはダメなのか問題<サッカーパパからのご相談>小学6年生の息子は町のサッカークラブに所属しています。チームはそこまで強くないのですが、最後の大会になりチーム内のヒエラルキーが強くなり、真面目で優しく言い返せない息子はチームメイトにいつも怒られています。長年サッカーを経験してきた私からすると、みんな対してレベルの差はなく、基本技術はむしろ息子の方がうまかったりします。ですが、同じようなミスを犯しても息子ばかりチームメイトに怒られ、挙げ句の果てにコーチまでも息子のせいにます。「いつ辞めても良いよ」と伝えていますが、悔しいから続けると健気に言っています。しかし、練習や試合では日に日に自信をなくして、ゴルフでのイップスのように簡単なキックもミスしてしまい、状況は悪化してきているように思えます。無理にでも辞めさせたい気持ちと、コーチに話をすべきか、相手の親に話すべきか悩んでます。親から見ても息子は良いセンスを持っていてサッカーも好きなのに、かわいそうでなりません。私の経験のもとに息子が決してみんなより劣っていないことを伝えても信じてもらえず、「俺なんか下手だから」と、周りに言われるのは仕方がないと無理やり納得している様子です。他の親も、自分の子がターゲットにならないのでいじめられ役がいてラッキーぐらいにしか思っていないみたいです。無理やり辞めさせた方が良いのでしょうか? なまじ我慢強いため心配です。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。ご相談メールの説明だけなので、どこまで踏み込んでお話すればいいのか迷いますが、私の個人的な見解としてお聞きください。最後にお書きになった「無理やり辞めさせた方が良いのでしょうか?」が相談文で唯一の質問なので、まず最初にそれに対してお答えします。■小6なら自分で様々な判断がつく年齢、最終的には本人に決めさせよう結論から言えば、暴力指導や精神を病むような苛烈なパワーハラスメントがない限り、親が無理やり辞めさせてはいけません。最終的には本人に決めさせてください。ただし小学6年生といえば、自分でさまざまな判断がつく年齢です。身を置くサッカー環境が自分にとって良いものかどうか。そこに向き合う手助けをしてあげてください。例えば、以下のように話してはどうでしょうか。「サッカーをしていて楽しいかな?」と尋ねてあげてください。楽しく前向きにサッカーができる状況でなければ、上達もしません。息子さんに「いつ辞めてもいいよ」と声掛けしているのは良いことですが、彼の気持ちや考えをさらにじっくり聞いてあげましょう。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■息子さんの自己肯定感の低さは問題親子ともに価値観の転換が必要かもそのうえで、お父さんはどう思うのか意見を伝えてください。ご相談文を読むと、息子さんがチームメイトから怒られているけれど「息子のほうがうまかったりする」とあります。加えて「息子は良いセンスを持っていてサッカーも好きなのに、かわいそう」とも書かれています。しかし、うまくなかったり、センスがなければ仲間を怒っていいわけではありません。そう考えると「俺なんか下手だから」「周りに言われるのは仕方がない」と話す息子さんの自己肯定感の低さが、私はとても気になります。息子さんがそういったとき、お父さんは「そんなことはないよ。おまえは長年サッカーを経験してきたパパからすると、みんな大してレベルの差はなく、基本技術はむしろおまえのほうがうまいよ」と言って励ましているのではないでしょうか。もし間違っていたらごめんなさい。ただ、この分脈でいくと、そんなふうにお父さんが答えている姿が目に浮かぶのです。もしそうであれば、父子ともに、価値観の転換が必要と考えます。■このようなとき、親が絶対にやってはいけないこと「俺なんか下手だから」子どもにそう言われたら、以下のような要素の話をしたほうがいいと思います。「上手い下手は関係ないよ。ミスは誰だってするだろう。サッカーはミスするスポーツだよ。みんなで助け合ってプレーするのがサッカーだろう」と。ぜひ視点を変えてください。次に、絶対やってはいけないことを伝えます。それは、息子さんに文句を言うチームメイトの親にお父さんが話をすることです。相手の「親に話すべきか」とありますが、話すべきではありません。言ってみれば、子どものいさかいです。しかも、サッカーというスポーツの場に起きていることです。息子さんに自分の力で解決するにはどうすればいいかな?と尋ねて、考えさせてください。そこで彼が「我慢するしかない」と言えば、そこでお父さんの意見を言ってください。スポーツマンシップに欠けているのは仲間なのだとコーチに自分で訴えることもできるはずです。■中学、高校になっても子どもの困難に親が対応するのか(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)加えて、息子さんに「かわいそう」と同情するのは一瞬にしてください。親からすれば、大事なわが子がそんなふうに傷つけられているさまを見るのは辛いことでしょう。が「かわいそう」だけでは、息子さんの成長につながりません。今後、中学生、高校生になって、大人になる段階で大なり小なりさまざまな困難が待ち受けています。かわいそうだからと、親がその都度わが子を傷つけているかもしれないと、それを正すよう他者に申し入れをし続けますか?この連載でも何度か書いていますが、親は何かに悩んでいる子どもに「それは辛いね」「嫌だね」と共感してあげるべきです。ただ、共感しても、子どもに「同化」してはいけません。親が子どもと同じだけ傷つき、右往左往してしまうと、子どもはその苦難を糧に成長できません。■仲間に反論したい気持ちがあるなら親がリミッターを外してあげてご相談分の最後に「なまじ我慢強いため心配です」とあります。ここについても、ぜひ見方を変えてください。この分脈で言うと、息子さんの「我慢強さ」は理不尽なことに対する「耐性」ではないでしょうか。考えることをやめている。諦めているのではないか――そうとらえられないでしょうか。それは、息子さんのやさしい性格によるものなのかもしれません。それによって、自分の感情や主張を表に出せない、言語化できないのかもしれません。文句を言われたら言い返したい。でも、下手のくせにと言われるかもしれない。下手なやつは文句を言ってはいけない――そう考えているのかもしれません。そのあたりの話を聞いてあげてください。話を聞いた結果そうであれば、そのリミッターを外すよう働きかけましょう。それは、自信を持て、とか、おまえは下手じゃないとかではなく、前述したように「サッカーはミスするスポーツだよ。みんなで助け合ってプレーするのがサッカーだと思わないか?」と問いかけてください。それでも、状況が変わらなければ、息子さんに「コーチに一緒に話してみるか?」と聞いてみてください。夏休みを超えれば、あっという間に中学生。次のチームになります。そこまで今のチームで楽しくサッカーができるのかどうか。何よりも楽しくサッカーができる環境が一番ではないかということを、息子さんに考えてもらいましょう。サッカーが楽しい。ジュニア期はそれこそが、一番の価値だと私は思います。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『高学歴親という病』(講談社α新書)。
2023年07月19日サッカー日本代表のエース・三笘薫選手の初の著書『VISION 夢を叶える逆算思考』(双葉社)が出版され、サッカー少年、世界に子供を羽ばたかせたいサッカー少年の保護者、指導者など、すでに多数のサッカーファミリーに愛読され、7万部を超えるベストセラーとなっています。同書には、普通のサッカー少年がなぜ"世界のMITOMA"と評価されるようになったのか――。三笘選手を形作る「120のメソッド」が初めて公開され、親子で分かりやすく学べる「世界に最速で行くための伸ばし方」や、「サッカーの未来を担う子どもたちに伝えたいこと」を詰め込んだ教科書となっています。(C)中河原 理英<<関連記事:「緊張は悪い事ではない」サッカー日本代表三笘薫が著書出版記念イベントで小学生の悩みに回答■自分にしかない武器を持っていることは、サッカーだけでなく社会でも大きな強みになるその一部をご紹介すると――。海外に挑戦したい子供に向けて、『VISION』には3つのアドバイスが記されています。《今、僕が何を考えているか――その答えは2023年1月に前述のJPFA最優秀選手賞をいただいた時に、海外に挑戦してみたい子供たちに向けて送った「3つのアドバイス」の中にある。ここに改めてまとめておきたいと思う......》(『VISION 夢を叶える逆算思考』より)三笘選手は同書にて、その1つ目のアドバイスとして「自分にしかない武器を持つこと」だと明かしています。《少年時代、大学時代はもちろん、川崎フロンターレ、ベルギーのロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ、プレミアリーグのブライトンでプレーする現在も、僕には「ドリブル」という武器があった。ドリブルという自分の武器があるからこそ、常に自信を持って相手に立ち向かうことができた。自分にしかない武器を持っていることは、子供たちからJリーガーまでプロアマを問わず、必ず大きなアドバンテージになる。サッカーだけではない。社会に出て企業で働く際、自分にしかない武器があれば、大きな強みや自分を信じる力につながると思う......》(同書より)■自分を分析する力を身につけること三笘選手は『VISION』にて、2つ目のアドバイスとして「自分を分析する力」を身につけることだとも説いています。 《将来、海外に出て活躍したいのならば、自分が「なりたい姿」をイメージすることが重要になる。みなさんも、理想の自分を漠然とではなく具体的に思い描いてみてほしい。将来のイメージは具体的であればあるほど効果的だと思う。そして、現在の自分の体力、技術、得意なプレーの特徴やプレースタイルなどをしっかり分析したうえで、そこにたどり着くまでに必要なことを試合などから逆算して、日々の練習や生活に落とし込んでいくのだ......》(同書より)■少年時代、海外で活躍する日本人選手の考え方に感化された3つ目のアドバイスについては、同書に譲るがてご確認いただければと思いますが、三笘選手は自分がそうであったように、プレミアリーグを始めとする世界のトップリーグや日本代表での自らの経験やメソッド、考えなどを、自著『VISION』を通じ、多くの子供たちに伝えたいという強い思いがあるのだと言います。《僕自身も子供の頃、日本代表の先輩でありヨーロッパで長くプレーされた本田圭佑さんを取り上げたテレビ番組を見て、どんどん上へと進んでいく選手の考え方に感化されたことを覚えている。僕には、「自分が学び取ってきたことを、次に続こうとする日本人選手や子供たちに伝えたい」という気持ちが強くある......》(同書より)三笘選手が「自分が学び取ってきたこと」とは何か?将来のサッカー日本代表候補であるサッカー少年に向け、『VISION夢を叶える逆算思考』では、その全てを分かりやすく説明してくれています。
2023年07月19日もうすぐ夏休みがやってきます。夏休みは学校がないので、学習習慣が身についてない子は、勉強から距離をとりがち。保護者の立場としては、夏休みの終わりに課題を一気に片付けるよりも、毎日取り組む姿勢を身に付けてほしいもの。では、お子さんに「自ら学習する姿勢」を身につけてもらうには、どうすればいいのでしょうか?この悩みを解決するためのヒントを関西学院初等部教諭の森川正樹先生にうかがいました。『自学』を通じて、子どもたちの学ぶ力の向上に取り組む森川先生のアドバイスを、ぜひ参考にし、夏休みを過ごしてみてください。(取材・文鈴木智之)サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■「学び」を遊びにしてしまえば勉強に対して前のめりになる関西学院初等部教諭で『自学』を教育に取り入れている森川正樹先生は、自学ノートなどを通じて「自ら進んで学ぶ力」をつけるためのアプローチをしています。森川先生は「僕がしているのは、『学びの遊び化』です」と柔らかな口調で語ります。「学びを遊びにしてしまえば、子どもたちは勉強に対して、前のめりになるのではないか? と思い、自分で好きなテーマを決めて、見開き2ページにまとめる『自学』を始めました」自学の輪は全国に広がっており、子どもたちが作成した自学ノートが掲載された書籍が出版されるなど(昨年の自学コンテスト(小学館さんとの共催)では応募総数約1700作品)、日々の学習に取り入れるケースも増えてきています。「『自学』は見開き2ページにひとつのテーマをまとめる学習のことです。テーマは何でもOK。好きなサッカー選手でも恐竜でも生き物でも、スイーツでも宝石でも、興味があるものについて、まとめてみようという取り組みです」■これからの時代に必要なのは、調べればわかる知識ではなく情報をもとに考える力森川先生は自学の良さを「学びを俯瞰することができ、見開き2ページで自己完結できること」と言います。「自分の好きなこと、興味のあることに対して、本やインターネットから情報を集めて、見出しを作って項目を立てて、イラストなどで表現する過程に、様々な学びの要素が入っています。いまの時代、インターネットやAIの発達で『知っていること』の価値は減ってきています。調べればわかる知識ではなく、『この情報をもとに、どう判断するか』といった、考える力や取捨選択の力が大切になってきています」自学では、自分の感想を書くようにしているそうで、そうすることで「情報の書き写しではなく、考えることにもつながる」と言います。「例えば恐竜をテーマにした場合、『ティラノサウルスは肉食だとわかった』『足はあまり速くないと知って驚いた』など、自分の考えがとても大切なんです。最初は1行でもいいので、感想が入っていたら『これはあなたの自学だよ。すごいね』と褒めています」高学年にもなると、感想をたくさん書けるようになり、自分の考えをまとめて、文字で表現することに慣れてくるそうです。「子どもたちは自学のノートを、得意気に見せてくれます。その表情を見たときに、やらされている勉強ではなくて、自ら進んでやる学びになっているなと感じます。ノートを上手に書けるようになると、自己肯定感も上がっていくんですよね」サッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは■保護者など身近な存在が感心してあげることで子どもは伸びる森川先生は「自学を通じて、最後までやりきる力がつくことで、学校の成績にも影響がある」と言います。「自学ノートに文字をていねいに書くことや、定規を使ってスペースを作り、その中に文字を入れて見やすくまとめることを身につけることで、学校の勉強にも良い影響があると思います」とはいえ、子どもに突然「自学をしなさい」と言っても、何をどうすればいいかわかりません。また、何のためにするのかがわからないので、やる気が出ないといったことになりがちです。そこで森川先生は「大切なのは、保護者や教師が、ちゃんと感心してあげること。身近に感心してくれる存在がいるといないのとでは、圧倒的に伸びが違うと感じています」とアドバイスを送ります。「大人の当たり前は子どもの当たり前ではないので、自学のノートを見て『定規できれいに線を引いて、タイトルを揃えて書けてすごいね』など、些細なことでもいいので、良いところをみつけて褒めてあげるといいと思います。その環境で育まれるお子さんは自己肯定感も高いので、落ち着いて勉強に取り組むことができるようにもなります」■保護者が一緒に取り組むのも大事、きれいに完成するとやる気が出ることもまた「親子で一緒に取り組むのも大事」と言います。「お父さん、お母さんが『あなたの好きなことについて教えてほしいから、ノートにまとめてみて?』と言うのもいいですよね。そして『夏休みの間、1,2週間に1つのペースで自学ノートを作ろう』など、やれる範囲で目標を立ててみましょう。低学年の子であれば、保護者の方が手伝ってあげるのもいいと思います」自学ノートの挫折ポイントは、ハサミで上手に切れない、線がまっすぐ引けないなど、技術的なことも多いそうです。保護者が手伝ってあげて、きれいに切れたり、ぴったり貼れたりするとやる気が出るので、助けてあげられるところはやってあげると良さそうです。「最初はどんな形でもいいので、完成品を作ってみてください。そこで『すごいね』『いいのができたね』と声をかけると、お子さんはニコっと笑顔になって、やる気が出てくるはずです」夏休みの自由研究など、テーマを自分で決められるものがあれば、自学ノートを作成するのもおすすめ。自学の書籍もたくさん出ているので、参考にしてみてはいかがでしょうか?きっと、学びの楽しさ、面白さに気づくことができるはずです。森川正樹(もりかわまさき)関西学院初等部教諭平成32年版学校図書国語教科書編集委員教師塾「あまから」代表教師のためのセミナー「詳細辞典セミナー」講師日本シェアリングネイチャー協会ネイチャーゲームリーダー、日本キャンプ協会キャンプディレクター、日本自然保護協会自然観察指導員、CEEプロジェクトワイルドエデュケーター国語科の「書くこと指導」「言葉の指導」に力を注ぎ,「書きたくてたまらない子」を育てる実践が,朝日新聞,読売新聞,日本経済新聞,日本教育新聞などで取り上げられる。県内外で「国語科」「学級経営」などの教員研修,校内研修の講師をつとめる。社会教育活動では,「ネイチャーゲーム講座」「昆虫採集講座」などの講師もつとめる。★森川正樹の教師の笑顔向上ブログサッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは
2023年07月18日事前に練習内容を共有しないのでアシスタントコーチの準備が無駄になったり、練習でしてないことを試合で求める年上コーチ。練習も単調で子どもたちの成長が見えづらい。いくつか改善したら子どもたちの楽しさも増幅すると思うのでお願いしたいが、年上コーチと上手く付き合い方が難しい......。と悩むスクール代表からのご相談をいただきました。ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、コーチ間のコミュニケーションについてアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<絶えず口ゲンカ、相手の気持ちを考えない、準備・片付けをしない子どもたちの意識改善をどうすればいいか教えて<お父さんコーチからの質問>こんにちは。私はサッカースクールを運営している者です。コーチスタッフは10代から50歳代の幅広い年齢層です。私はスクール運営・代表として、各年代(U-6からU-13以上)で自分のチームの選手に合う練習方針を考えております。しかしながら50代のコーチの指導方法(U-12以上担当)に疑問を持つ事が増えてきています。気になることがあれば対話をしていきましたが、あまり改善がみられません。やはり年下の私(40代)から指示されることが気持ちよくないのでしょうか?これまでにあったことです。・事前に練習内容を共有しないので、アシストコーチの準備が無駄になった・声かけが曖昧で「一生懸命やる」を紐解いて伝えてほしいが、具体的な説明をしない・練習でしてないことを試合で選手に要求するので、選手はコーチの指示でしか動けなくなる・練習が単調で工夫が見られないため、選手たちの成長が見えづらい今までたくさんの選手を見てきてくれたことに対する感謝や、送迎などたくさんやってきてくれているため、こちらもしっかりと言い出せない部分もあります。そして何より教わっている子どもたちは「楽しい」と発します。運営者としては、「もっとこうしたら子どもたちの楽しいは増幅するだろうし、成長速度も変わり卒業してからでも色々な所でサッカーを楽しめる」と思っているため、改善をお願いしたく悩んでいます。年上50代のコーチスタッフとの正しい付き合い方のアドバイスを頂けたらうれしく思います。<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。選手と指導者との間に円滑なコミュニケーションが必要であるように、コーチ間の共通理解は重要です。その点からすると、ご相談者様のお悩みは、やはりコミュニケーションの問題だと感じます。■修正を求めるときは、こちらがどれだけ心を開くかがカギ相手にいわゆる修正を求めたり、新しいものを提案する場合は、こちらがどれだけ心を開くかがカギになります。例えば、50代のコーチスタッフを攻撃するような言い方ではなく「みんなでより良くなりたいから、こんな考え方はどうでしょう?」といった表現で話をしてはいかがでしょうか。逆に、「どうして変わらないのか?」「時代が違います」というような否定的な言い方では、コミュニケーションができません。基本的な構えとして、この50代のコーチが言うことを聞いてくれないという感情をもって話してしまうと、なかなか伝わらないでしょう。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■正論であっても言い方によってはすんなり納得してもらいづらいご相談文に書いてあるように、チームの子どもたちは楽しいと言っています。であれば「子どもたちは楽しいと言ってくれているのでいいチームだと思う。ただ、もっとよりよくするためにこうしませんか?」「ここを話し合いませんか?」「僕らももっと学び合いたい」と提案することをお勧めします。あるいは「子どもがうまくなる」「こんなふうにしたほうがもっと楽しくなるかもしれません」という言い方です。私自身、「子どもに対する言い方がやさしいですね」とよく言われます。それは、相手のことを正しくリスペクトしているからだと思います。さらにいえば、その姿勢は大人に対しても同じです。私はこう思いますけどいかがですか?という言い方をします。それ間違っていますよとか、そうじゃなくてこっちがいいですよみたいな言い方はしません。もしそれが正論だとしても、言い方によっては、すんなり納得してもらいづらいからです。■本人が言わないのなら、こちらから尋ねるなど歩み寄りをまた、ご相談文に「練習内容を共有しない」「一生懸命やれと言う言葉を紐解いてほしい」といったことが書かれていますが、まさにコミュニケーションの問題です。例えば、その50代のコーチが何も言わないのであれば、周りのコーチたちも何も準備しなければいいのです。あるいは準備が必要だと思えば、「何が必要ですか?」と尋ねればいいと思います。「準備が無駄になる」と書かれているということは、そのベテランコーチに何も聞かずに準備しているようです。他のコーチはアシスタントなのですから、核になるメインのコーチにいったん聞く必要があります。もしかしたらメインコーチは「何も聞いてくれない」と思い、アシスタントの方々は「何も言ってくれない」と考えているのかもしれません。ひと言「今日、どうしますか?」と聞けば住む話です。「一生懸命の意味」についても、尋ねればいいことです。子どもがさぼっているのか、やっているけれどいまひとつ夢中になっていないのか。例えば「考えながらやれ」の一言でも、「何を見て、伝えたのですか?」とやんわり尋ねてみてはどうでしょうか。こちらから歩み寄る必要があります。■コーチ同士のミーティングで提案するという手も「練習でしてないことを試合で選手に要求するので、選手はコーチの指示でしか動けなくなる」についても、そのことをかみ砕いて実例を挙げて話してみましょう。「こないだこんなことがありましたが、子どもたちが指示でしか動けなくなるかもしれないと少し思ったのですがどうでしょう?」コーチのミーティングやコーチ会議など、皆さん行っているはずです。その場で提案してもいいかと思います。「すべてを教え込むのではなく、子どもたちが自分で考えて学んでいくことに軸足を置いた指導ってどうでしょうかね?」■指導者間のコミュニケーションが取れている方が、子どもも楽しくサッカーができる(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)つまり、「すべてを教え込むのではなく、子どもたちが自分で考えて学んでいくことに軸足を置いた指導ができていない」とか「そこに転換すべきだ」といった主張ではなく、あくまで提案です。そのような視点で「練習が単調で工夫が見られないため、選手たちの成長が見えづらい」ことについても「もっと楽しくなる練習ってないですかね?」と提案してみましょう。コーチ同士のコミュニケーションがとれているほうが、子どもも気を遣わず楽しくサッカーができるはずです。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2023年07月14日正確なキックで攻撃を司る柴崎岳選手。その思考力やサッカーでも常に自分の目指す方向に努力し続ける姿はサッカー少年少女やその保護者にとっても憧れです。今回、スパイク、ウェアの契約メーカー「アンブロ」を展開するデサント社にて1日社員として活動した柴崎選手にインタビューする機会をいただいたのでサカイク読者の子どもと保護者から、柴崎選手に聞きたいことを集めました。「どんな練習をしていたの?」「親もサッカーしてなきゃ子どもは上手くならない?」など、気になることを質問しましたので、ぜひご覧ください。(取材・文:前田陽子)小学生、保護者それぞれの質問に回答してくれた柴崎岳選手<<関連記事:プロになった今も自分でシューズを磨くという柴崎岳選手が語る、スパイクのこだわりとキック制度を高める練習サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!小学生からの質問)小学生年代でどんな練習をしていましたか?基礎練習をとことんしていました。キックが好きだったので、パスで足のどこに当ててどこに出すかということを、本当に時間をかけてやっていましたし、それは今でも生きています。本当に基礎練習は大人になってもサッカーのベースです。それが完璧にできるようになれば、Jリーガーになることだって夢ではないと思いますよ。自分にしかできないプレーというのはあると思いますが、誰もができる基本的な技術をどれだけ精度良くできるかで、プロにもなれます。子どものころは、アクロバティックなプレーをしたくなると思います。僕もそういうプレーに興味はありましたけど、まずは基礎をトレーニングして、自分のイメージしたボールを蹴れるように、パスを出せるようにという練習をしていました。小学生からの質問)小学生のころ、コーチや親から言われてうれしかった言葉は何ですか?何も言われなかったことが僕には良かったですね。自分で解決したいタイプで、あまり人にもアドバイスを求めなかったです。なぜうまくできないんだろう、ということも自分で考えて解決するのが好きでした。両親はそんな僕を理解してくれたのか、「今日の試合よかったね」等の言葉は言ってくれましたが、多くの場合はそばにいてほぼ何も言わなかったです。サッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは小学生からの質問)小学生年代で習得しておく技術は何ですか?小学生年代に限らず、幼稚園からでもいいですし、サッカー初めたらなるべく早く基礎技術の練習をしてほしいです。ある程度できるようになって、習得したと思い込んでやめてしまうのはダメです。毎日同じパスが出せる、トラップができることが大事なので、毎日続けてください。大人になるまで、プロになれるまで続ける"習慣"という力が必要です。さらに、自分の強みは何なのかを理解して、自分の武器を作れるといいですね。例えば足が速い選手なら、ドリブルが得意になるかもしれないし、僕のようにキックが好きなら自分のイメージしたボールが蹴れる、背が高かったらヘディングが自分の強みとか。自分のプレイヤーとしてのキャラクターでアピールポイントを作れるといいですね。小学生からの質問)レアルやバルサから得点を取ったときの気持ちを教えてください対戦相手に関わらず、点が入ってすごく喜んだことはないです。相手がレアルでもバルサでもそれはただの1試合。ゴールを決めることより、試合に勝った時の方がうれしいです。レアルやバルサの試合は、結果負けました。点を決めても、あの時はまだ残り時間が40分くらいあって、試合も終わっていなかったので、特別な感情はなかったです。小学生からの質問)スペインでプレーし続けるにあたって、日本とのコミュニケーションの違いは何ですか?言葉以外の部分で教えてください。スペイン人は自己主張がすごくて、私はこう思うということは決して譲りません。例えば、何か一つのことを決めるにしても、日本人的な忖度とかはなくて、スペイン人は誰が何を言おうと各々が私はこう思うと意見をきちんと言います。その上で自分と違う意見に決まったら、それを尊重します。後腐れがないですね。私はこう思うけど、そうまとまるならしょうがないという部分は、言語に関わらず、パーソナリティだと思います。保護者からの質問)柴崎選手のご両親はどのくらいサッカーに関わっていましたか?母はいわゆる、ママ友応援団という感じで応援に来ていました。ピッチの外からワーキャー言っていましたね。○○しなさいとかではなく、単純に子どもたちのプレーに対して「惜しい~」などとリアクションする程度でした。母は僕のサッカーに対しては何も言わなかったです。父もサッカー経験者ではないですし、サッカーについて何か教えるというのではなく、子どもと遊ぶ一環でパスの交換相手になってくれて一緒にサッカーをしたくらいです。保護者からの質問)サッカーを知らない、もしくは経験のない親の子は上手くなりませんか?そんなことはないです。僕がそうなので。父は陸上の選手で母は軟式テニスと、サッカーとは無縁でした。親御さんがサッカーを良く知らなくてもプロサッカー選手にはなれます。保護者からの質問)子どもから見て親はどうあったら良いと思いますか?僕は自分の思っていることや考えがある子どもだったので、それを尊重してくれたことが自分の中で大きいことだったかなと思います。それを跳ね除けられたり、否定されたりしていたら、多分、今とは違った人生になっていました。ただ、自分がどうしたいかがわからない子もいると思うので、そういう時は一緒に自然と好きなことや考えを見つけてあげられるといいんじゃないかなと思います。あくまでも主体が子どもであって、サポートする役目いうことを親御さんが自覚していれば。子どもの人生はその子のものなので、そういう風に接していけたらいいんじゃないかなと思います。サッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは
2023年07月13日そこそこ強いクラブチームに所属する息子。実力でチームを分けるのは分かるけど、控えチームには90分の練習中一度も指導してくれず放置され、胸が痛い。3対3なんかでも、スタメン組にはずっと指導しているのに、控えには基本すら教えてくれない。子ども自身は「チームが強いから」ここで頑張ると言うけど、どんな風に励ませばいい?とのご相談。スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見やご自身の体験をもとに、いまお母さんがラクになるための3つのアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<控えは基本的な動きも指導されず放置、スタメンと控えで指導に差がありツライ問題<サッカーママからのご相談>息子は現在4年生でそこそこ強いクラブチームで控えです。3年生から入れるチームでコーチは1人です。実力で分けるのは当たり前だと思うのですが、コーチはずっとスタメン組を指導し、控え組を全く指導しません。これから中高とサッカーを続けるためには、教えられるのではなく自分で考える力をつけるのが大事と理解してます(必死に自分に言い聞かせています 笑)が、90分間の練習で1度も指導されず放置されてるのは胸が痛いです。例えば3対3。基本的な動き方くらい最初に教えてくれてもいいんじゃないの?まだ育成年代だし、スタメン組にはずーっと教えてるのに......。と感じてしまいます。辛いし、何か言いたくなるのでなるべく練習を見ないようにしていますが、時々練習会場の送迎の関係で見てしまい、心が締め付けられています。試合では、控え組にはコーチング皆無。失点すると、お前のせいだ、自分で考えろなど言われますが、スタメン組にはサイドコーチングしまくりです。右行け、中に切り込め......など。それを見てまた、「何なんだ、この差は!?熱量の差すごい!!」となります。控え組といっても、努力している子が大半です。息子も外のスクールや、本での独学、毎日自主練を頑張ってます。みんなやる気がないわけではないです。なのに、控え組は指導してもらえず自分で考えて自分で努力しなければならない現状。強くなれると信じたいです。 息子はこのチームが強いからここで頑張ると言っています。私としては息子の意思を尊重して、ぐっと我慢して見守る考えですが、何か励ましの言葉を下さい。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。頑張っている息子さんの姿を見ていれば報われてほしいと思うのが親心です。お母さんにとっても辛い日々かとお察しします。何か励ましの言葉を、とのことですが、私がお母さんに一番に伝えたいのは「もう頑張らなくていいよ」の一言です。■口に出さずともお母さんのつらさは息子さんに伝わっているご相談文からしか判断できませんが、お母さんは「辛い」と書かれています。息子さんの練習を見れば心を締め付けられ、このままこのチームで頑張るという息子さんを尊重してぐっと我慢している。つまり、息子さんのサッカーはお母さんにとってネガティブなコンテンツでしかありません。そのことは例えば「お母さんはあなたのサッカーが辛い」と口に出さずとも、息子さんには伝わっているはずです。自分がサッカーをすることで大好きなお母さんを悲しませていると感じているでしょう。そう考えると、母子にとって今の状況は決して良いものではない気がします。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■アドバイス①サカイク的な視点で見ると、スタメン組の方が考える力をつける機会を阻害されているそこで、三つほどアドバイスさせてください。ひとつめ。90分間の練習で1度も指導されず放置されている、スタメン組の指導とは熱量が違いすぎる等々、コーチに対する不満が募っているようです。が、指導方法については、暴力や目に余るハラスメントがない限りコーチに任せるしかありません。そのうえ、息子さんは今のチームで頑張りたいと主張しているなら、好きなようにさせればいいのです。また、「控え組は指導してもらえず自分で考えて自分で努力しなければならない現状」と書かれていますが、それは実は息子さんにとって良い環境とも言えないでしょうか。スポーツは習い事ではありません。もう4年生です。YouTubeなどの動画コンテンツを見たり、サッカーの試合を観戦したり、テレビで見るなどして、自分でサッカーを学ぶことのできる年齢です。もし、そこまで自分でやらないのであれば、それは「そこまでサッカーにはまらなかったんだな」と考えればいいことです。それに、4年生の今ははまってなくても、中学に行ったら猛然とはまり始めるかもしれません。子どもがいつ伸びるかは誰にもわかりませんから。私は息子さんよりも、お母さんが「サイドコーチングしまくり」と書いておられるスタメン組のほうが心配です。サカイクの読者ですから、サッカーは自分で考えるスポーツだという捉え方をご理解いただいているかと思います。その視点で考えると、スタメン組の子どもたちには、自分で考える余裕(余白)を与えられていないようです。これでは、大人の言うとおりにしか動けない子どもに育ってしまいます。サッカーでの習慣がすべてに影響するとは言いませんが、本来スポーツの育成現場は主体性や創造性を身につける場なのにと非常に残念です。■アドバイス②何のためにサッカーをさせているのか、子ども自身はどうなのか、今一度確認しよう二つめ。一度、「何のためにサッカーをさせているか」という原点に立ち返りましょう。ご相談文に「強くなれると信じたい」とありますが、何が何でもプロにさせたいのでしょうか?高校や大学を、受験勉強しなくてもいいスポーツ推薦で行かせたいのでしょうか?そういった思惑は、恐らく皆無かと思います。そうであれば、サッカーを楽しむこと、サッカーに一生懸命取り組むことができていれば、それでいいと考えられないでしょうか。相談文を見る限り、お子さんは懸命にサッカーに取り組んでいます。ただ、ひとつ気になるのは、息子さんが「チームが強いからここにいたい」と話していることです。強豪チームに属するのは試合に勝つことが多く、周囲から羨望の目で見られもするので誇らしい感覚もあるでしょう。しかし、スポーツで一番楽しいのは試合をすることです。実践機会があまりに少ないのであれば、その部分を息子さんに話してみるのもいいでしょう。ただし、どうするかを決めるのはあくまでも本人です。■アドバイス③コーチの言動を片時も目を離さずチェックする親を、子どもは望んでいるのか三つめ。冒頭でお伝えしたように、息子さんのサッカーについてお母さんは頑張るのをやめましょう。私から見ると、お母さんは少々息子さんのサッカーに注目しすぎているようです。90分の練習で息子さんが一度も指導されなかったと書かれていますが、90分間一時も目をそらさず息子さんだけを目で追っていたということになります。目で追いながら「ああ、今のシュート惜しい!」とか「よく頑張って最後までボールを追いかけたなあ」とお母さん自身がサッカーを楽しんでいるのなら良いのですが、どうもそうではなさそうです。そこまで必死になってコーチの言動をチェックすることを、息子さんは決して望んでいないはずです。■子どものサッカーは子どものもの、親が子どもの人生に乗っかると......(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)子どものサッカーや時間は、子どものもの。子どもの人生です。子どもの人生に親が乗っかって生きてしまうと、その重みに子どもは耐えられなくなってしまいます。したがって、お母さんはこれを機会に、趣味など自分の楽しみを見つけるなどして息子さんのサッカーと少し距離を置いたほうがいいと思います。子どもがぐっと伸びるとき、ほとんどの親御さんが「いつの間にか成長していたんですよ」とおっしゃいます。そこに親の干渉はありません。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『高学歴親という病』(講談社α新書)。
2023年07月11日サッカー選手にとって大切なシューズ、そのこだわりについて、契約メーカー「アンブロ」を展開するデサント社にて1日社員として活動した柴崎選手に聞きました。小学生の頃にやっていた、キックの精度を高めた練習についても話してくれました。(取材・文:前田陽子)プロになった今でも自分でシューズの手入れをするという柴崎岳選手<<関連記事:「子どものころから、自分のプレーを自問自答するタイプだった」という柴崎岳選手の考える力とはサカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■シューズでこだわっているのはフィッティング正確なパスから攻撃を組み立てる柴崎選手にとって、スパイクとボールとの相性がとても大事だと言います。「シューズでこだわっているのは履いた時のフィッティングです。自分の足に対して不快な部分がないかどうかを、履くだけでなくてちゃんと動いて確認します。自分のプレースタイルの中でキックの部分は非常に重視しているし、大事なポイント。ボールを蹴った感覚、技術もそうですが、思ったところにボールが行くかとか、そういうところを重視しています」■自分のスパイクは自分で手入れしている試合では前後半でスパイクを履き替えるという柴崎選手。それは長くいい状態でスパイクを履くためだそう。試合で履く2足と練習用で2足。長いと半年ほど同じものを使用しているそうです。レザーのスパイクは手入れをしないとすぐにダメになってしまいます。チームに用具係の人がいますが、スパイクの手入れはご自身でされています。「チームにも用具係がいますけど、自分のスパイクは自分で管理をしています。使用後、水で汚れを落として、拭いて、オイルを塗って皮のいい状態を保っています。時間にしたら5~10分くらい。子どものころは、自分で手入れはしていなかったですね。使う物は綺麗な方がいいし、自分のスパイクなので自分できれいにした方がいいと思うので、子どもたちにはやってほしいです。どんなスパイクでも、土などの汚れを落とさないと、すぐにダメになってしまうものです。ちゃんと手入れをしていけば、自分の足に馴染んだ状態で履けます。皮の状態によって蹴った感覚も変わります」シューズのケアを親に任せっぱなしの子は多いと思いますが、自分がサッカーで使う道具だからこそ、自分で手入れして大事に使うことで良いプレーにつながるのです。■ボールを正確に蹴り分けるためにスパイクに蹴るポイントを書いたことも柴崎選手が子どものころは、ジュニア用のシューズのほとんどが合成皮革だったので、素材でスパイクを選ぶことはなく、デザインを見て、履いてみて、足に合うものを選んでいたそう。当時から重要視していたのはフィッティング。そして、ボールをキックすることが好きだったので、自身のシューズに蹴るポイントをマークして、そのマークにボールを当てて蹴る練習をしたこともあったそうです。「小学5年生の一時期だけ、スパイクにマジックで印を付けていました。でも、書いたら消えなくなるし、そのまま履くのは恰好が悪いなと後から思ったので、子ども達に真似してほしいとは思わないですね」小学生時代に柴崎岳選手が実際に印をつけたスパイクご実家に保管されていたそう■蹴りたいボールをイメージして、スパイクのどこにどう当てるかを考えるアンブロのはじめてサッカーシューズは、止める、蹴る、運ぶのポイントを色分けして足のどこに当てるかボールタッチの部分を色で覚えることができるシューズなので、サッカーを始めたばかりの子におすすめです。アンブロはじめてサッカーシューズを手に小学生時代を語る柴崎岳選手柴崎選手は小学生のころ、このシューズの甲の部分や、かかとでも蹴る練習をしていたそうです。「どこで蹴るとまっすぐに行く、ボールを上げられるというのを気にすると同時に、足の入れ方や足首の角度などを変えながら蹴って、自分がイメージしている通りのボールをどうやったら出すことができるかを考えていました」ボールを何となく蹴るのではなく、どんなボールを出したいかを意図し、そのイメージに合ったものが出るまで探求する。これからの練習にぜひ取り入れたい方法です。スパイクのどこに当てれば蹴りたいボールを蹴れるか考え、実践した柴崎選手の「考える力」も大いに参考になるのではないでしょうか。上手くなるために何をすればいいか、考えて行動することの大切さがわかるお話でした。サッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは
2023年07月11日