紅ゆずるが主演するブロードウェイ・ミュージカル「エニシング・ゴーズ」が8月11日、東京・明治座にて開幕した。豪華客船を舞台に、様々な立場の人々がそれぞれの思惑があるがゆえにトラブルを引き起こし、巻き込まれていく、トニー賞3部門を獲得したミュージカル・コメディの傑作。明治座では劇場創立以来初のブロードウェイ・ミュージカル作品の上演となる。舞台は1930年代半ばのニューヨーク。ナイトクラブの大スター、リノ・スウィーニー。そして一筋縄ではいかない登場人物たちが、偶然か必然か、ロンドン行きの豪華客船S・S・アメリカ号に乗り合わせたことから物語が進んでいく。ナイトクラブの大スター・リノを演じるのは、元宝塚歌劇団・星組トップスターで、退団後初のミュージカル出演となる紅ゆずる。豪華客船でトラブルや思惑に巻き込まれながら、それすらも笑い飛ばすパワフルなリノを、軽快に演じている。リノに猛アタックされながらも、自身は社交界の華・ホープが愛しているビリー役には大野拓朗、エリートのはずなのになんだか情けないビリーだが、愛嬌たっぷりなのは大野ならでは。そして陣内孝則演じるギャング・ムーンフェイスと、平野綾演じるその情婦・アーマ。ふたりが乗船したことで、またトラブルに繋がっていくわけだが、ヒールのはずがどこか憎めないキャラクターの二人が引き起こすドタバタが、タイトルでもある「エニシング・ゴーズ」=なんでもあり!な本作をより一層盛り上げている。演出・原田諒(宝塚歌劇団)の手腕で、歌・ダンスはもちろん、各場面が一層ショーアップされた本作。主題歌「エニシング・ゴーズ」では、キャストが集合。タップダンスで盛り上がる大ナンバーは圧巻だ。さらに松井るみが手掛けた、舞台美術は、盆が回るごとに船室、デッキ、さらには客室と、まるで乗船したような気持ちで楽しむことができる。舞台となった1930年頃は大恐慌からようやく落ち着きを取り戻した時期。当時の時代も求めた明るいミュージカル・コメディをぜひ劇場で体感してほしい。公演は8月29日まで、東京・明治座にて。その後は、愛知・御園座、大阪・新歌舞伎座、福岡・博多座を回る。チケットぴあでは東京公演は公演前日17時まで購入できる当日引換券を発売中。愛知、大阪、福岡公演はチケット一般発売中。
2021年08月17日1934年にブロードウェイで初演されたミュージカル『エニシング・ゴーズ』。豪華客船を舞台に、ナイトクラブのスター歌手リノ、指名手配中のギャング・ムーンフェイスら個性的な登場人物が繰り広げる、恋ありスリルありドタバタありの楽しい物語を、アメリカで最も偉大な作曲家とも称される巨匠コール・ポーターの名曲が彩る人気ミュージカルだ。日本でも何度も上演を重ねる人気作だが、今回は宝塚歌劇団の原田諒が演出・潤色を担当、主役のリノを元宝塚歌劇団星組トップスターの紅ゆずるが演じるニューバージョン。これぞブロードウェイ・ミュージカル! のゴージャスさ、明るさがある作品にふさわしく、製作発表もクルーズ客船「にっぽん丸」で開催する豪華さだったが、その会見後同じく客船内にて、ハーコート夫人を演じる一路真輝、その娘ホープを演じる愛加あゆに本作の見どころや意気込みを訊いた。宝塚歌劇団の先輩・後輩の共演――船の上での製作発表、豪華でしたね。一路本当に、作品にぴったりで。私、自分の車でここまで来たのですが、ずっと『エニシング・ゴーズ』を流しながら運転していて。この曲を聴きながら船に向かっているというシチュエーションがとてもワクワクしました。愛加私も、この埠頭をお散歩したりすることはあったのですが、まさか乗船できるとは。こんな機会はめったにないので嬉しいし、何より、お稽古が始まる前に、客船の雰囲気を知ることができて良かったです。一路今は旅行もあまり行けないからね。疑似体験じゃないけれど、船に乗って旅行をする気分を味わえて、このまま稽古に突入できるというのはありがたいですよね。――おふたりは宝塚歌劇団の先輩・後輩ですが、共演は初めてですか?愛加はい!私は宝塚を知ったきっかけが、姉(夢咲ねね)が音楽の先生に借りてきたビデオなのですが、その中の一つが一路さん主演の『エリザベート』(1996年雪組)。それはそれはハマりまして、親友とずーっと学校で『エリザベート』について語った思い出があります。そんな一路さんとご一緒させていただけるなんて……!一路(笑)。私はもう辞めて約25年もたちますし、愛加さんも、紅さんも宝塚時代は存じ上げないんです。先ほど聞いて驚いたんですが、もう退団して6年なんですって?愛加今年の8月で、7年になります。一路それを聞いてびっくりしちゃって。そう思えないくらい初々しいですよね。でも、ということはもう、ミュージカルも何本も出ているのね。愛加そうですね。ただ、今回のホープのような令嬢役は久しぶりで……。一路娘役の経験が活きる役ね!愛加はい、昔を思い出して頑張らないと(笑)。一路……という事情も知らないくらいで恐縮なのですが(笑)。でも、私は人見知りで、どの現場に行ってもいまだに緊張するのですが、宝塚の後輩がいる現場は、宝塚の生徒だったというだけで共通の話題があるし、先輩として敬ってくれるし(笑)、心が落ち着くんです。だから私の方がありがたいなと思っています。愛加やめてください、そんな……。今回、稽古初日にご挨拶させていただいた時に「何て呼ばれているの」とまず聞いてくださって、そのあとに「私のことはお母さんって呼んでいいよ」とおっしゃってくださって。なんてお優しい……! と、感動しきりでした。一路いやいや(笑)。実際に母親ですし、こないだまでやっていた『舞台「刀剣乱舞」无伝 夕紅の士 -大坂夏の陣-』では40人近い男の子たちのお母ちゃんになっていましたので。楽屋では「母上」「おふくろさま」と呼ばれていたのでそれに慣れちゃった(笑)。だからあゆちゃんにも「お母さんでいいよ」って。――愛加さん、実際にはなんとお呼びしているんですか?愛加まだそんな、一路さんとしかお呼びできないです(笑)! でも、大先輩でいらっしゃるのに、こんなに歩み寄ってくださって、本当に嬉しかったです。ありがとうございます。私、『あかねさす紫の花』も大好きで。私自身、和物をさせていただく機会が多かったのですが、やはり一路さんたちが作られたものをすごくたくさん拝見して、勉強して、憧れていました。……すみません、昔の話、嫌ですよね……?一路ぜんぜん大丈夫よ。私はもう女優生活の方が長くなっていて、わりと昔の記憶が消えていることが多いんですが、宝塚の方とご一緒して昔の作品のお話をしたりすると、細胞がちょっとずつ思い出していく。そして「とってもいいところにいたんだな」とか、「宝塚の先輩・後輩の関係って素敵だな」とか再確認できることが嬉しくて。でもあゆちゃんの方が「お母さま」と呼びながら、私の横にトートの顔が見えたりするとやりづらいかなと思って「お母さんと呼んで!」と言ったんだけど、トートの顔してと言われたら全然出すよ(笑)? ……でも原田先生に怒られちゃうね!愛加わあ(笑)。……私、一路さんのエリザベート(2000年~東宝版)も大好きで……!!一路ありがとう(笑)。――話は尽きませんね(笑)。ホープの一途なところはきっと、リノに負けない(愛加)――そんなおふたりは今回、親子役を演じますね。一路さんがハーコート夫人、愛加さんがその娘のホープ。現時点で、それぞれの役をどういう人物だと考えていらっしゃいますか。一路ハーコート夫人は、娘をお金のために政略結婚させる、欲の塊のような女性なのですが、あまり細かく描かれていないのでその分作りやすいかなと思っています。原田先生からは「もっと貪欲に、物欲に溢れたおばちゃんにしてください!」とオーダーされました(笑)。これからもう少し研究しようかなと思っているところです。――ハーコート夫人の飼っている犬も、ポイントになってきますよね。犬は実際に登場するんでしょうか?一路本物のワンちゃんを使うんです! シングルキャストです(笑)。愛加昨日初めて稽古場に来ていましたね。一路可愛かった~。私も犬好きで、実家では犬を飼っていました。でも中型犬なのでそんなに抱っこをしていないんです。今回はずっと抱っこしているような小型犬なので、抱っこの練習をしなきゃと思っているところです。あゆちゃんは、犬は?愛加私も飼ってます! チワワと、チワワとチンのミックスの、2匹。一路わぁ。じゃあ、抱っこのしかた、教えて? きっと、どこか押さえたら安心する、とかあるよね?愛加でも一路さん、お子さんがいらっしゃるのだから……。一路赤ちゃんとはちょっと違ったわ~。やっぱりワンちゃんは、抱きなれている人にはおとなしいみたい。私はまだまだだったから頑張らないと!――愛加さんが演じるのは、社交界の華、ホープ。愛加いわゆるデビュタント、社交界デビューしたばかりの娘です。でもすでにお母さまに、結婚への道を作られてしまっている。時代的にはそういう娘さんはたくさんいたと思うのですが、ホープはそこから自分の意思で、自分の進みたい道を模索している状態の子です。私も最初は、言われるがままに生きている娘なのかなと少し思っていたのですが、原田先生ともお話させていただいて、そうではなくもともと強い芯がある女性で、自由に生きているお母さまの背中をみつつ、でも自分はこうしたいというものを持っている。単なるお嬢様として作らないように、私も模索しながらやっていきたいと思っています。一路このミュージカルはたった4日間の話。4日で人間が大きく変わるわけないもんね。だから乗船するシーンからそのキャラクターを作っておかないと。あゆちゃんの役は、すごく個性的な登場人物の中で一番まともな人だから、逆に悩んじゃうよね。愛加そうなんですよね。皆さんが強いから。一路でもだからこそ、どうとでも作れる。私たち、すごくポテンシャルの高い親子よね!――紅さん演じるリノはビリーが好きで、でもそのビリーはリノじゃなくてホープが好き、という関係性です。愛加さん、ホープがリノに勝っているところはどこだと思いますか?愛加えーっ(笑)。でも原田先生に言われてハッとしたのは、強さを持っているところ、です。お金持ちのお嬢様というところにビリーは惹かれたのではなく、彼女の信念、自分の進みたい道がきちんとあるところから醸し出る何かに惹かれたんでしょうね。それと、たぶん彼女はきっとひとりの人しか愛さない。そういう一途なところはきっと、リノに負けないところじゃないかなと思います!――そして何と言っても音楽がコール・ポーターというのも、この作品の大きな魅力ですね。おふたりとも、コール・ポーターの音楽がお好きだそうですが……。一路私は同じくコール・ポーターの『キス・ミー・ケイト』なども出演しています。彼の音楽はポピュラーすぎるくらいポピュラーなものと「こんな曲、このミュージカルにあったんだ」という意外性がある。曲調もジャージーなものからクラシカルなものまで幅広く、そういうところも魅力です。愛加私はコール・ポーターで特に好きなのは『ナイト・アンド・デイ』。『風と共に去りぬ』のデュエットダンスのナンバーなのですが、この曲がコール・ポーターだと知った時に「私、知らないあいだにコール・ポーター大好きだった!」と思いました(笑)。『エニシング・ゴーズ』も、独特の旋律がありますね。半音で行ったり来たりするところはすごく難しいのですが、それが複雑な恋愛模様を表現していたりして、おしゃれ。素敵だなと思って、頑張って曲と向き合っています。一路難しい曲、なかなか入り込めない曲ほど、身体に入ったときに何とも言えない快感があって、大好きな曲に変わるわよね。私、まさに『エリザベート』がそうだった。今回もそうなるんじゃないかな。愛加がんばります!“すべての人が主役”という作品になりそう(一路)――演出は、宝塚歌劇団の原田諒さん。ただ、製作発表の場で、「宝塚的なものを求められているかもしれませんが、あえてそうではないものを」と仰っていましたね。一路原田さん、最初の本読みの時点で「一人ひとりの個性をしっかり立たせてほしい、ただのコメディにしたくない」と仰っていました。この作品はお気楽なアメリカン・ミュージカルと思われがちなのですが、時代的には大恐慌の直後、それぞれの人が様々な思いで生きてきて、乗船してくるというバックボーンをしっかり持って欲しいと。私の役も、なぜそこまでお金に執着し、娘を政略結婚させたいかというと、それはつまり、娘の生活を考えてのことなんですよね。もちろん自分が楽をしたいという面があるにしても(笑)。ただの賑やかしのキャラクターにしてはいけないというのは強く思いました。愛加原田先生、アンサンブルに至るまで、それぞれのキャラクターの思いに時間をかけて言及していらっしゃいましたね。一路振りがすでについている場面に関しても、キャラクターがはっきりした後で、振りを変えてもかまわないとまで仰っていて。こういう作り方、ステキだなって思った。愛加みんなの士気が高まりましたよね。一路“すべての人が主役”という作品になりそうよね。様々なタイプの演出家の方がいらっしゃって、こちらに全て委ねてくださる時もありますが、原田先生の中のビジョンがきちんと決まっていて、まず最初にそれを提示してくださると、私たちもそれを起点に広げていくことができる。心強いですよね。――ちなみに紅さんはどんな座長になりそうですか?一路自然体でいらっしゃるんじゃないでしょうか。市川猿弥さんや陣内孝則さんが個性的でいらっしゃるから (笑)。とても楽しく盛り上げてくださる中で、みんながそちらに巻き込まれつつ、でもヘンな方向に行ったら(笑)紅さんが一喝してくれそう……というのはどうでしょう?愛加そんな図が見えますね、まだわかりませんが(笑)。一路今やっぱりマスクをして、会話も極力減らして……という状況ですが、さすがに2か月も公演があるから。心通じるものが生まれると、いいわよね。きっとそうなると思う!――最後に、見どころがたくさんある『エニシング・ゴーズ』ですが、あえて「ここ!」というポイントを挙げるとしたら、どういうところが魅力でしょう?一路先ほど時代背景が……とも申しましたが、でも題名(エニシング・ゴーズ=なんでもあり)のとおり、何もかも忘れて、色々なことを吹き飛ばしてくれるパワーのある作品です。曲調も、登場するキャラクターたちも、ダンスナンバーも、今の時代のうっぷんを吹き飛ばしてくれる。そんな魅力のある作品です! 演出の原田さんが、おしゃれな作品にしてくれます!愛加セットもすごく豪華。楽しみにしていてください。一路……あゆちゃんはタップ(ダンス)するの?愛加ないと思うのですが……台本に「全員タップ」と書いてあるところがあって……どうなるんですかね(笑)。全員!? と思って……。一路でもこの作品の大ナンバーはすごいよね、私も今までの公演を観ていて圧巻でした。それをみんながやるのを見るのが、楽しみ! 台本には大ナンバーになるとちゃんと「ハーコート、引っ込む」と書いてあるから(笑)。袖から観ーよう! と思ってます。一緒に観に行こうね!愛加はい! 特等席で観ましょう!取材・文:平野祥恵撮影:川野結李歌ブロードウェイ・ミュージカル『エニシング・ゴーズ』2021年8月1日(日)~2021年8月29日(日)会場:東京・明治座ほか、愛知・大阪・福岡公演あり※新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、8月1日(日)~9日(月・祝)全ステージと11日(水)・17日(火)・19日(木)18:00開演、14日(土)・21日(土)17:00開演公演中止(7/30追記)チケット情報
2021年07月24日元宝塚歌劇団星組トップスター紅ゆずるが主演するブロードウェイ・ミュージカル『エニシング・ゴーズ』の製作発表が7月3日、横浜港に停泊するクルーズ客船「にっぽん丸」で開催された。登壇者は紅のほか大野拓朗、廣瀬友祐、愛加あゆ、一路真輝、平野綾、市川猿弥、陣内孝則の出演者、演出・潤色を担当する原田諒。『エニシング・ゴーズ』は1934年にブロードウェイで初演されたミュージカル。豪華客船を舞台に、ナイトクラブのスター歌手リノ、指名手配中のギャング・ムーンフェイスら個性的な登場人物が繰り広げる、恋ありスリルありドタバタありの楽しい物語だ。劇中にはタイトル曲のほか「ユー・アー・ザ・トップ」「フレンドシップ」などいまやジャズのスタンダードナンバーとなっている名曲が揃い、巨匠コール・ポーター最大のヒット作と呼ばれている。日本でもこれまでに大地真央、瀬奈じゅん主演で上演されているが、このたび“三代目リノ”を演じるのが紅ゆずる。宝塚歌劇団退団後、初のミュージカル出演だが「男役の時にはとうてい見せることのなかったものがたくさん詰まっています。20年弱ずっと男役を突き詰めてきて、私は女性ですが突然「女性を演じて」と言われても「んっ」となってしまうのですが、リノという役はパワフルでエネルギッシュで、私自身にとても近いものがある。自分に流れる血をリノに活かせるだろうし、逆にリノから学ぶところもあります。リノという役が私なのか、私がリノなのか……というところまでいけたら」と気合い十分で意気込みを語った。リノの友人で身分を隠して船に乗り込むギャング、ムーンフェイスに扮するのは陣内孝則。「“ミュージカル俳優の”陣内孝則です!」と挨拶をし、「ライバルは井上芳雄君と山崎育三郎君です。ご婦人方にキャーキャー言われるミュージカルスターになりたい」と語り会場を沸かせる一方で、「この作品を上演する劇場、明治座、御園座、新歌舞伎座、博多座という芝居小屋的な劇場のお客さまは目が肥えている。その方々を満足させなきゃという使命感を感じています」と気を引き締める。ハーコート夫人役の一路真輝は「初演も再演も全部観ていますし、劇中歌を自分のコンサートでも歌ったりするほど楽曲が魅力的で素敵な作品。今回参加させていただくのがとても楽しみ」と語り、その娘・ホープを演じる愛加あゆも「ミュージカルの原点というべき作品に、今の自分が出演させていただくことを嬉しく思います」と心境を語った。一路は宝塚の後輩である紅、愛加について「私はかなり前に退団していますので、紅さんや愛加さんから発せられる宝塚のオーラを懐かしく思いながら接しています」とも。リノが恋し、一方的に追いかけまわすビリー役は大野拓朗。「何かと不安な世の中ですが、何も考えずにたくさん笑って元気をもらえる作品。僕はリノとビリーが歌う「ユー・アー・ザ・トップ」という曲が大好きで、これはお互いをひたすら褒め合う歌なのですが、観に来た方が自分に置き換え、リノに褒めてもらっている気持ちになって元気や勇気をもらえるものになっていると思います」とアピール。ホープの婚約者、オークリー卿に扮する廣瀬友祐は「素敵な作品をお客さまに届けられるようにカンパニーの一員として精一杯頑張りたい」と意気込んだ。ムーンフェイスの情婦のアーマを演じる平野綾は「私、今年になって舞台ではギャングの情婦の役しかやっていない!」と笑いつつ、「この時代のアメリカを象徴しているような女性でもあるので、アイコン的な存在としてコケティッシュに演じられたら」と話し、ビリーの上司・ホイットニー社長を演じる市川猿弥は「(尾上)松也くんとか尾上右近ちゃんとか、最近は歌舞伎界からミュージカル界への進出が目立っていますが……私は何で呼ばれたんだろう?」と嘯きながらも「少しでも爪痕を残して(歌舞伎界へ)帰りたい」と気合いを入れていた。劇中曲『エニシング・ゴーズ』を披露するカンパニーの面々劇中さまざまな事件を巻き起こすユニークな登場人物さながら、それぞれのコメントからも個性があふれるキャスト陣だが、彼らをまとめ、演出を手掛けるのは宝塚歌劇団の原田諒。「宝塚歌劇団所属の僕を演出に呼んでもらって、宝塚的なものを期待されているのかもしれませんが、あえてそういう意識は持っていません。本場NYのブロードウェイがクローズされている状況で、日本でこうして、もっともブロードウェイらしいコール・ポーターの楽曲を使ったミュージカルをやるというのは、とても意味のあることだと思う。作品自体、NYの大恐慌が終わった5年後の話で、町にも音楽にもパワーがみなぎっていた時代の話。暗い時代を打破する楽しく明るい作品です。今この時期にやることも運命のような気がします。舞台は不要不急と言われたり、中止を余儀なくされる昨今ですが、こんな時だからこそやっぱり心のうるおいになるものはすごく大事だと思う。それを肝に銘じ、観に来た方が「観てよかったな」と思えるものにしたい」と熱く語る。また主演の紅についても「男役くさくなく、自然に女性になっている上、男役当時から持っているコケティッシュで個性的な彼女らしさがいい意味でブレンドされている。とてもいいリノになるんじゃないかな。彼女の当たり役になると僕は思っている」と自信と期待を語った。会見では紅が、豪華共演陣をコーラスに、劇中歌「エニシング・ゴーズ」も披露。パワフルでチャーミングな歌唱に本番への期待を誘った。豪華客船を舞台にした物語同様、海上で行われたゴージャスな製作発表は、最後に紅が「今はコロナ禍で皆さんもたいへん窮屈な思いをされていると思いますが、『エニシング・ゴーズ』をご観劇いただいているあいだだけは心を解放してほしい。そして「もっと頑張れるかも」とプラスに思ってもらえる作品にしたいと思っていますので、ぜひ劇場に足をお運びください」と締めて終了となった。なかなか旅行にも行きづらい昨今、ぜひ劇場で、豪華船旅の楽しさを味わってみては。公演は8月1日から29日まで東京・明治座にて。チケットは発売中。その後愛知・御園座、大阪・新歌舞伎座、福岡・博多座でも上演される。取材・文:平野祥恵ブロードウェイ・ミュージカル『エニシング・ゴーズ』2021年8月1日(日)~2021年8月29日(日)会場:明治座ほか、愛知、大阪、福岡公演ありチケット情報
2021年07月05日ブロードウェイ・ミュージカル『エニシング・ゴーズ』が東京・明治座にて8月に上演される。数々のミュージカルや映画作品で名曲を残した巨匠コール・ポーター最大のヒット作と呼ばれ、楽しく陽気なストーリーをジャズのメロディーとダンスで魅せるこのミュージカル・コメディは、1934 年にブロードウェイで初演され、1988 年に第 42 回トニー賞で 3 部門を獲得、更に 2011 年の第 65回トニー賞において再び 3 冠に輝いた傑作。日本では1989年に初演され再演を重ねてきたが、今回は 8 年ぶりの上演となり、演出・キャストを一新。演出は宝塚歌劇団の原田諒、ニューヨークで一番のナイトクラブの大スターリノ・スウィーニー役は元宝塚歌劇団星組トップスターの紅ゆずるが務める。作品について、原田諒と紅ゆずるに話を聞いた。「生きてこれを観ることができて良かった」と思ってもらえるように――『エニシング・ゴーズ』は8年ぶりの上演で演出、キャストを一新ということですが、おふたりは今、どんなふうに作品に臨もうと思われていますか?紅ゆずる(以下、紅)日本版ではこれまでにも大地真央さんと瀬奈じゅんさんが主役のリノ・スウィーニー役を務めて来られましたが、今回はイチから新しくこの作品をつくるためにも、あえて過去のバージョンは見ずに取り組もうと思っています。それを強みにして、自分が考える私なりのリノをつくっていくつもりです。――そのうえで、どうつくっていきたいと思われますか?紅タイトル通り“なんでもあり”だと思っています(笑)。でも、今この時代に喜劇をやる意味は大きいと思います。劇場にわざわざ足をお運びいただくので、笑って「楽しかったね!」と言っていただける作品にすることは第一の目標です。――原田さんは初めてこの作品を演出することをどのようにお考えですか?原田諒(以下、原田)『エニシング・ゴーズ』は、ずっとやりたかった作品なんです。ですからオファーを頂いた時は驚いたのと同時にとても嬉しかったですね。ニューヨークからロンドンに行く豪華客船に個性豊かな人物たちが乗り合わせて、そこで起きる出来事が描かれた、ミュージカル・ショーのような面白さがありますし、コール・ポーターが音楽を手がけたミュージカルの中でもとびきりの名曲揃い。ブロードウェイ・ミュージカル『エニシング・ゴーズ』この作品が(ブロードウェイで)初演された1934年は、1929年の大恐慌による不景気からアメリカが再び立ち上がってきた、パワーのみなぎった時期ですから、街にも楽曲にも作品にも溢れんばかりのエネルギーがありますよね。そういう作品を、今のこの時代に上演するのはとても意義あることだと思います。ましてや紅さんは宝塚歌劇団時代(’19年10月に退団)から屈指のコメディエンヌと言われた人ですから、このお話をいただいた時、直感的に「ピッタリだな」と思いました。――どんな風につくっていこうと思われていますか?原田今はコロナ禍で世界中が沈んでいる状況ですから、そんな暗い空気を打破するような楽しくて、明るくて、綺麗な舞台をつくりたいです。オーバーかもしれませんが、「生きてこれを観ることができて良かった」と思っていただけるようなものにしたい。翻訳は(日本初演版の)青井陽治先生のものをもとにしていますが、今回版に合わせてほぼ新たに仕立て直しました。――どう仕立て直されたのですか?原田この作品は、ちょうどオペラ・オペレッタからミュージカルに移行する時期、ミュージカルの黎明期の作品なんですね。ナンバーが続く現代のミュージカルとは違い、芝居の部分は芝居としてきちんとあるし、ナンバーはナンバーとして存在するという構成で、やりようによってはオールドファッションな作品に見えてしまいかねない。ですから今回は2021年版として一新し、ポップに華やかに、ショーアップしてお届けしたいと思っています。紅さんは宝塚時代からショースターとしての評判も高かったので、このリノという役が、女優になった彼女の魅力を120%発揮させることのできる“当たり役”になればと思っています。“原点”をずっと持ち続けているリノの姿は紅ゆずると重なる――紅さんはリノという役をどのように思われてますか?紅このお話をいただいた時に主催者の方から「天真爛漫、何をしでかすやらわからないような感じがピッタリなんです。そのままやってほしい!」と、言われました。自分ではそんなめちゃくちゃな人ではないと思っていますけど(笑)、大胆なところは共通すると思いますし、自分に流れている血を生かしていきたいです。そして稽古場で皆さんとのセッションを重ねて、役をカタチにしていきたいですね。原田リノはナイトクラブのスターで華やかさも必要ですし、若い娘にはない人生経験を重ねた手練手管も必要な役です。宝塚で共に同じ時代を過ごしてきて、僕が紅さんに感じるのは、とても明るくて楽しい人なのだけど、すごく繊細で涙もろいところがある人情家だということ。リノもただ派手なスターではなく、お節介で人の痛みがわかる女性ですから、そういうところは紅さんとリノはとても似ていると感じます。そんなふたりの感受性はリンクすると思うので、「そのままやればいい」と言われたのはそういうところではないか思いますし、そんな魅力を思う存分発揮して、大暴れしてもらえたらと思っています。――原田さんは、紅さんが星組トップ時代に『ベルリン、わが愛』で作・演出としてタッグを組まれましたが、その時とはまた違ったイメージの役柄ですね。原田『ベルリン、わが愛』の時は、彼女の宝塚男役としての二枚目像をすごく出したいと思っていました。先ほども申しましたが、紅ゆずるという人はコメディエンヌな部分が評価されがちですが、その中にはいろんな思い……情熱、人情、知性、さまざまなものが詰まっている。だからこの人の言葉はとても瑞々しいし、面白いんですね。今回はそんな彼女の個性をリノに重ね合わせて、リノ・スウィーニーが紅ゆずるなのか、紅ゆずるがリノ・スウィーニーなのか、役と演者が不即不離の関係になるところまで持っていければと思っています。――再び一緒に作品をつくることはどのように思われていますか?原田すごく嬉しかったです。ピッタリな配役ですしね。約2年前に宝塚を卒業して、男役だった彼女が女優になって、今日もお会いして「こんなに綺麗な人だったのか」と改めて思いました。きっとこの2年で紅さんの中で変化した部分も大いにあるんだと思います。紅私と原田先生は地元がとても近いんですよ。原田そこ話すの!?(笑)紅しかも宝塚に入ったのも一年違い。原田年齢は僕の方が一つ上なんですけど、宝塚では僕が一年下級生なんです。一緒に地元に帰った時、ご飯食べたの覚えてる?紅覚えてるよ。原田その時に忘れもしない、「私がトップになったら泣くやろ?」「泣くなあ」っていう会話をしたんですよ。当時、彼女は成績的には優等生ではなかったんですね。その頃からとても個性的な男役ではあったんですけど。それもあって、「泣くなあ」は「それはないやろ」という気持ちで言ってました。でもトップになったんですよね。だから本当に泣いた。紅(笑)原田そんな下級生の頃でも、一番後ろの列の端にいても目立つ存在でした。そんなポジションから努力を重ねて、他の人は経験しなかった悔しさやいろいろな思い、広い視野を持ってトップになっていく様を見てきているので、僕は彼女は人情味のある演技にこそ真価があると思うんですね。リノという役も紅さんと同じで、ただただ明るいだけでなく、上っ面ではない情にほだされたり、ホロっとさせられたりしますから。ですから今回は一曲、これまでの日本版ではやってこなかった楽曲をカーテンコールでやろうと思っているんです。『Take Me Back to Manhattan』という曲で、ロンドンに到着したリノが、ロンドンも素晴らしいところだけれど、やっぱりあのゴチャゴチャしたニューヨーク、つまりは彼女の原点に帰りたいと歌う曲です。いわゆる“原点”をずっと持ち続けているリノの姿は、紅さんと重なります。そういった原風景を失わない限り、リノも紅ゆずるも魅力的であり続けるし、味わいのあるスターであると思います。カンパニーそのものが記憶に残る作品になれば――共演者の皆さんもそれぞれ個性的で魅力的ですね。紅豪華ですよね。ホープ役の愛加あゆちゃんは同じ星組だった夢咲ねねの妹さんなので、勝手な親近感があります。ねねからも「よろしくお願いします」みたいなLINEが届いて「こちらこそです」と返しました(笑)。そして……一路真輝さん!私、宝塚歌劇団を初めてテレビで観たのが一路さんなんですよ。だからとっても感動なんです!原田ははは!紅まさか一路真輝さんと共演させていただくことがあるなんて考えないじゃないですか。退団されるときは世界の終わりみたいな悲しみだったし。一路真輝さんのビデオを何回も何回も巻き戻して観ていたら、ビデオが壊れましたからね。そのくらい大好きな方で。稽古場で震え上がるかもしれません。原田(笑)。今までお会いしたことないの?紅ないよ!だから実際にお会いしたら衝撃を受けると思う。――最後にお客様にメッセージをお願いします。原田大変な状況が続く中で、演劇をやるということはどういうことなのかを考える毎日です。我々の仕事は時に不要不急と言われがちですが、こんな時だからこそ必要な仕事であらねばと思います。決して明るいとは言えない今の時代の中で、観にいらしてくださったお客様が「ああ、来てよかった。楽しめてよかった」と思ってくださるものをお見せしたいと思っています。紅さんをはじめ本当に魅力的なキャストが揃いましたので、ぜひ楽しみにお越しいただけたらと思います。紅原田先生もおっしゃいましたが、「来てよかった」と思っていただけるものにしたいです。そして、劇場にいる時間だけではなくて、家に帰っても、次の日も、その次の日も「よかったな~。楽しかったな~」と思っていただけたら最高です。そしてこのカンパニーそのものが私自身も「一生忘れられないメンバーだ」というような作品になればいいなと思っています。心からお待ちしております!取材・文:中川實穗撮影:川野結李歌衣装:MSGM/アオイ公演情報ブロードウェイ・ミュージカル『エニシング・ゴーズ』作詞・作曲:コール・ポーターオリジナル脚本:P.G.ウドハウス&ガイ・ボルトン&ハワード・リンゼイ&ラッセル・クラウス新脚本:ティモシー・クラウス&ジョン・ワイドマン翻訳・訳詞:青井陽治演出・潤色:原田諒出演:紅ゆずる大野拓朗 / 廣瀬友祐 / 愛加あゆ一路真輝平野綾 / 市川猿弥陣内孝則他【東京公演】2021年8月1日(日)~2021年8月29日(日)会場:明治座※新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、8月1日(日)~9日(月・祝)全ステージと11日(水)・17日(火)・19日(木)18:00開演、14日(土)・21日(土)17:00開演公演中止(7/30追記)【愛知公演】2021年9月4日(土)~2021年9月12日(日)会場:御園座【大阪公演】2021年9月17日(金)~2021年9月26日(日)会場:新歌舞伎座【福岡公演】2021年9月30日(木)~2021年10月5日(火)会場:博多座チケット情報
2021年06月19日明治座にて2021年8月に上演されるブロードウェイ・ミュージカル『エニシング・ゴーズ』のメインビジュアルが公開された。楽しく陽気なストーリーをジャズのメロディーとダンスで魅せるミュージカル・コメディの傑作『エニシング・ゴーズ』は、数々のミュージカルや映画作品で名曲を残した巨匠コール・ポーター最大のヒット作と呼ばれている。1934年にブロードウェイで初演された後、1988年に第42回トニー賞で3部門を獲得し、更に2011年、第65回トニー賞において再び3冠に輝くという快挙を成し遂げた。初演から80年以上経つ今も世界各国で上演され、多くの観客を魅了。日本では、1989年に初演され、大好評を博した。以降、再演を重ねてきた本作だが、今回は8年ぶりの上演で演出・キャストを一新。演出には宝塚歌劇団の新鋭・原田諒を迎え、ニューヨークで一番のナイトクラブの大スター「リノ・スウィーニー」役に、宝塚歌劇団で星組トップスターを務め、2019年の退団後も女優として幅広く活躍をする紅ゆずるが挑む。またビリー役に大野拓朗、オークリー卿役に廣瀬友祐、ホープ役に愛加あゆ、ハーコート夫人役に一路真輝、アーマ役に平野綾、ホイットニー役に市川猿弥、そしてムーンフェイス役には陣内孝則が集結。明治座初のブロードウェイ・ミュージカル『エニシング・ゴーズ』に期待してほしい。■紅ゆずるコメント宝塚歌劇団ではずっと男役で出演していたこともあり、オファーが来た時は驚きましたが、挑戦して思いっきり振り切ることができれば、演技の幅が広がるのではないかと今から楽しみにしています!華やかなドレスを着たビジュアルを撮影して、改めて新鮮な気持ちになっています。演じる際にも、私ならではの表現が出来るよう取り組んでいきたいです。楽しく華やかなミュージカル『エニシング・ゴーズ』を今、この時代にお届けできることはとても意味のあることだと思っています。劇場に足を運んで良かったと皆様に思っていただけるようなパフォーマンスができるように頑張りますので、是非楽しみにしていてください!【公演概要】ブロードウェイ・ミュージカル『エニシング・ゴーズ』作詞・作曲:コール・ポーターオリジナル脚本:P.G.ウドハウス&ガイ・ボルトン、ハワード・リンゼイ&ラッセル・クラウス新脚本:ティモシー・クラウス&ジョン・ワイドマン翻訳・訳詞:青井陽治演出・潤色:原田諒(宝塚歌劇団)製作:東宝出演:紅ゆずる / 大野拓朗 廣瀬友祐 愛加あゆ / 一路真輝 / 平野 綾 市川猿弥 / 陣内孝則手塚秀彰 さけもとあきら 加賀谷真聡 佐々木 崇岡崎大樹 神澤直也 坂元宏旬 常住富大 福永悠二 堀江慎也 丸山泰右 山名孝幸 横山達夫石原絵里 伊藤典子 岩﨑亜希子 織 里織 神谷玲花 輝生かなで 小山侑紀 豊田由佳乃 樋口 綾 柳本奈都子公演期間:2021年8月1日(日)~29日(日)会場:明治座(東京都中央区日本橋浜町 2-31-1)開演時間:12:00 / 13:00 / 17:00 / 18:00料金:S席(1・2 階席)13,500円 / A席(3階席)6,500円※6歳以上有料 / 5歳以下のお子様のご入場はご遠慮ください。※車いすスペースのご予約は明治座チケットセンターにて承ります。チケット発売日:6月20日(日)10:00~9月~10月上旬、[名古屋]御園座・[大阪]新歌舞伎座・[福岡]博多座 全国四大都市にて上演お問い合わせ:明治座チケットセンター 03-3666-6666(10:00~17:00)グループ観劇(10名以上)のお問い合わせ 03-3660-3941(営業部団体課)明治座HP:
2021年04月30日