映画『キャラクター』の原案者・長崎尚志さんに聞く作品が生まれるとき。心を掴む魅力的なストーリーやキャラクターは、どんなふうに生み出されるのか。稀代のストーリーテラーが明かす、創作の秘密を明かします。浦沢直樹さんとの大ヒット漫画『MASTERキートン』や『20世紀少年』をはじめ、漫画や映画の原作を数多く手がけてきた長崎尚志さん。その長崎さんが原案・脚本を担当したのが、映画『キャラクター』だ。企画から完成まで約10年。書き上げたシナリオはゆうに20稿あるという。まさに渾身の一作だ。「映画化を待たされ続けたので、ずっと疑心暗鬼でした。本当に映画になるんだと喜んだのは、撮影がクランクインしたと聞いたときでしたね(笑)」『キャラクター』は、相対するふたりの青年の運命が、衝撃的な形で交錯する物語だ。冴えない漫画家アシスタントの山城圭吾は、一家4人の殺人事件に遭遇、犯人の顔も目撃してしまう。そしてその犯人をモデルに冷酷な殺人鬼“ダガー”が犯行を繰り返すサスペンス漫画『34(さんじゅうし)』を描き、一躍人気を獲得。一方で、刑事の清田俊介は、連続して起きた惨殺事件が漫画の内容と酷似していることに気づき、捜査していく。そんなある日、山城の前に現れた青年は両角と名乗り、「『34』で描かれた事件を再現しておきました」と告げる。「才能がいまひとつの漫画家が、人間離れした殺人鬼と出会ってしまったら、どんな行動を取るか。もともとのアイデアはそれでした。ただ僕の場合はキャラクター作りも『こういう設定で、こういうシーンで、自分ならどう行動するだろう』というのが軸になるんです。そんな中で、登場人物たちがどう化学変化を起こしていくかが肝だと思います。実際、そうした論理からしか、物語は生まれないと思っています」長崎さんは、キャリアを通して、山城のような漫画家志望の青年をごまんと見てきた。「僕自身もそうなんですが、漫画界は、煮え切らないヤツの集まりです(笑)。漫画家や漫画編集者、あるいは漫画家になりたいとあがいているような人は、『そんな自分はどこかダメなんじゃないか』と思いながら生きている。気が弱くて、そのくせ、わずかしかない長所に強烈な自信を持っている。そういう偏った人間が多いですよね。一方、両角のような超人的な殺人鬼というのは、人類の歴史にときどき現れ、恐怖が入り交じった中で語り継がれています。そういった知識や情報は、その人物造型の参考にはしますが、結局は、自分自身と照らし合わせながら肉付けしていく感じです」さまざまなアイデアをうまく化学変化させたい。執筆の仕事は基本的にはひとり作業だ。しかし映画の場合は、監督やプロデューサー、俳優との共同作業になってくる。そうした過程において、どんなところに悩むのだろうか。「この映画の場合は、永井聡監督が『こう変えていいか』などマメに聞いてくれたので、原案者としては、物語をより理解してもらえるよう書き換えたところもあります。表現者同士、解釈が多少ずれるのはしょうがないし、そこが面白いとも思っていますね。漫画と違って、僕の担当者は面白いアイデアを出す人も多かったし、映画は特に、いろんな部品が合わさって変化していく分、発見もありました。たとえば両角のキャラクターは、僕の中ではもっと大柄な男のイメージだったんです。最初に浮かんだのは、『ヒッチャー』という古い映画で怪物的殺人鬼を演じていたルトガー・ハウアーみたいな。だから圧倒的に殺人者が強くて漫画家は弱い、そんな感じでストーリーを作っていたので、SEKAI NO OWARIのFukaseさんがあの役を引き受けるなんて予想もしていなかったんです。ただ、MVなどいろいろな映像を見ていると、表情が多彩でちょっとヤバい顔もする人なんだとわかった。そこから、彼を思い浮かべて当て書きしました」もともと映画化が動き始めるまでに、作品をめぐるやりとりを、関係者の間で無限に繰り返してきたという。「勝手にいじられたりするのがイヤなたちなので、この脚本は『こうしたら満足か?』と挑戦状を叩きつける気持ちで先回りして変えていきました。山城と夏美という恋人との関係も、結婚していたりしていなかったり版ごとにいろいろです。ひとつの話を変奏していくことは、僕にとってはそう大変でもないんですね。つらそうなふりはしますけど(笑)」ちなみに、発売中の『キャラクター』のノベライズ版もコミカライズ版も、映画とは違う結末に仕上げたという驚異のストーリーテラー。「特に小説版では、山城、両角、清田という3人の視点が入れ替わりながら、映画では語られなかった背景や動機なども全部明かしています。山城はどういう理由で漫画家を目指したのかや、両角はどういう家庭で育ったのか、清田はなぜこの事件を執拗に追うのか。そういった部分がわかると、映画もより楽しんでもらえるのではないかと思います」自分を楽しませることを忘れちゃいけない。ところで、長崎さんにとって、作品を書くモチベーションが上がるのはどんなキャラクターなのだろう。「僕自身は、いじいじした弱虫が変貌していくのが好みなんです。その対抗で、すべてにおいてすごい能力や魅力を備えた超然とした人にも憧れる。そうした二人が相まみえる物語がいちばん好きで、これまで作ってきた作品もそういうのが多いです。もともとエンタメは作るも見るも、人がどう言おうが、自分が面白いと思うことがいちばん大事じゃないかなと思います」コロナ禍になって、エンタメの可能性はむしろ広がった部分もある、と長崎さんは言う。「僕が若いころの読者やマニアは、読むモノも観るモノも当たって砕けろというか、評判なんか気にせずに自分で選んでいき、いいも悪いも自分でジャッジしていました。しかし、それがいつからか、グルメにしてもエンタメにしてもガイドブックの言うなりになっている人が増えた気がしていました。外出自粛期間などの影響なのか、時間がある分、自分の感性で探し出して見始めてくれてるんですよね。それは面白い現象だなと思っています」ながさき・たかし作家、マンガ原作者・編集者。マンガ雑誌編集長を経て2001年に独立。原作者としてはリチャード・ウー名義でも活躍。「醍醐真司シリーズ」など小説も手がけ、好評発売中のノベライズ版『キャラクター』も発表。『キャラクター』画力はあるが、悪人が描けずにくすぶる漫画家アシスタント・山城(菅田)は、殺人現場に遭遇し、殺人鬼・両角(Fukase)を目撃する。両角をキャラクターにした漫画で、山城は人気漫画家となるが、作品と酷似した殺人事件が次々と起こり…。6月11日公開。※『anan』2021年6月2日号より。写真・内田絋倫(The VOICE)取材、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年05月27日2019年7月に75歳でこの世を去った『ブレードランナー』で知られる名優ルトガー・ハウアーが、謎の殺人ヒッチハイカーを怪演し話題となった映画『ヒッチャー』。そのニューリマスター版が日本で世界初上映決定、本日誕生日を迎える主演のC・トーマス・ハウエルが貴重な撮影秘話を明かす特別映像が到着した。本作は、殺人ヒッチハイカーを乗せたばかりに、その後逃げても逃げてもひたすら狙われ続ける青年の恐怖と絶望を描き、アメリカ全土にトラウマを植え付けた1986年のサイコ・スリラー。シンプルなストーリーながら、全編に異様な緊張感を持続させることに成功、と同時にド派手なアクションの連続で、観る者に恐怖と興奮を与える傑作として、いまもなお多くの映画ファンに愛されている。この度解禁となるのは、『ヒッチャー』旧DVD特典より抜粋したインタビュー映像。フランシス・フォード・コッポラ監督『アウトサイダー』(1983)の主演で人気を集め、その後も80年代青春映画に出演し、若手俳優集団「ブラット・パック」の一員となったC・トーマス・ハウエルが、本作冒頭シーンの撮影秘話を明かしている。当時、憧れのハウアーとの共演が決まって大興奮し、彼から多くの影響を受けたというハウエルは「ただ感じた“この映画をやらねば”」と映像の冒頭で真剣に語る。本作のロバート・ハーモン監督に「無限の可能性を秘めている」と演技を評価されるハウアーは、自身が演じたジョン・ライダーについて「できる限り独創的にしたかった」と話しており、そんなハウアーが冒頭シーンで見せたアドリブの演技をハウエルが興奮気味にふり返る。それは車に乗せたヒッチハイカーが危険な人物だとジムが気づくシーンで、殺人鬼ジョンがジムの目元に突きつけたナイフで涙をすくう演出は、台本にはなくハウアーの即興だったとか。観る者のみならず共演者のハウエルも当時心を奪われたアドリブ演技には注目。メガホンをとったのは本作で監督デビューしたロバート・ハーモン。殺人鬼の動機や人物背景などをほぼ排除し、彼らの置かれた状況だけを綿密に描くことで登場人物の本質をにじませていく演出が光っており、J・J・エイブラムス監督は『10 クローバーフィールド・レーン』製作時に本作の影響を受けていることを明かしている。撮影は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のジョン・シールが担当、盛大に横転する車や燃え上がるヘリコプターなど、サービス精神旺盛な場面が多い上、霧の中に佇む怪しげなヒッチハイカーや人影もなくどこか不安を煽る広大なハイウェイなど、ハッとするほど美しい場面もあり、どのシーンも見どころだ。『ヒッチャー ニューマスター版』は2021年1月8日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開(text:cinemacafe.net)
2020年12月07日映画『ブレードランナー ファイナル・カット』が、2019年9月6日(金)より全国のIMAXシアターにて2週間限定で上映される。SF映画の金字塔『ブレードランナー』、IMAXシアターで2週間限定公開映画『ブレードランナー』は、フィリップ・K・ディックによる名作SF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を原作に、監督リドリー・スコット×主演ハリソン・フォードで実写化した作品。映画ファンはもちろん、数多くのクリエイターたちに影響を及ぼしてきた“SF映画の金字塔”だ。舞台は放射能汚染によって荒廃しきった2019年のロサンゼルス。賞金稼ぎの主人公リック・デッカードは、外見からは人間と見分けがつかないアンドロイド処刑のために単独で追跡を開始するが、その過程で自身のアイデンティティーをも覆す事件に巻き込まれていく。映画版では原作から設定の多くを変更しているものの、哲学的要素が多く含まれるストーリーと、シド・ミードによる美術デザインやVFXを駆使した映像が生む退廃的な近未来ビジュアルでカルト的な人気を獲得。2017年には、30年後の世界を描いた続編『ブレードランナー 2049』も公開されている。ちなみに、これまでオリジナル劇場公開バージョンの『ブレードランナー』(1982)、リドリー・スコット監督編集による『ブレードランナー ディレクターズ・カット/最終版』(1992)、『ブレードランナー ファイナル・カット』(2007)と、複数のバージョンで公開されているが、スコット監督自身は今回上映される『ファイナル・カット』版を一番のフェイバリットに挙げている。あらすじ舞台は放射能で汚染され酸性雨が降りしきる2019年ロサンゼルス。強靭な肉体と高い知能をあわせ持ち、外見からは人間と見分けがつかないアンドロイド=「レプリカント」が5体、人間を殺して逃亡。「解体」処分が決定したこの5体の処刑のため、警察組織に所属するレプリカント専門の賞金稼ぎ=「ブレードランナー」であるデッカード(ハリソン・フォード)が単独、追跡を開始するが…。公開情報『ブレードランナー ファイナル・カット』公開日:2019年9月6日(金) 2週間限定公開上映予定劇場:・109シネマズ(二子玉川、名古屋、木場、湘南、菖蒲、箕面)・TOHOシネマズ(日比谷、新宿、ららぽーと横浜、なんば、二条、仙台)・ユナイテッド・シネマ(としまえん、浦和、札幌、豊橋18、岸和田、キャナルシティ13、PARCO CITY浦添)・シネマサンシャイン(グランドシネマサンシャイン、大和郡山、衣山、土浦)・T・ジョイPRINCE品川/横浜ブルク13/広島バルト11/鹿児島ミッテ10/イオンシネマ大高/成田HUMAXシネマズ/USシネマちはら台/エーガル8シネマズ※計31館(7月22日現在)<スタッフ>監督:リドリー・スコット製作総指揮:ブライアン・ケリー&ハンプトン・ファンチャー原作:フィリップ・K・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」デザイン:シド・ミードオリジナル音楽:ヴァンゲリスキャスト:ハリソン・フォードショーン・ヤングルトガー・ハウアーダリル・ハンナエドワード・ジェームス・オルモス製作:1982年・2007年/原題:BLADE RUNNER: THE FINAL CUT/本編時間:117分Blade Runner: The Final Cut © 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
2019年07月27日『ブレードランナー』のロイ・バッティ役で知られるルトガー・ハウアーが死去した。享年75。19日(現地時間)、オランダの自宅で病気により亡くなったといい、本日葬儀が行われるという。エージェントのスティーヴ・ケニスが「Variety」誌に明らかにした。1944年、オランダのブルーケレンで誕生したルトガー。両親ともに演技指導者でありながら、ルトガー本人は早くから俳優の道を志したわけではなかった。15歳で家を出て、海軍に在籍していたことがある。演技の始まりは舞台からだった。実験的劇団「 Noorder Compagnie」の公演ツアーで俳優、監督、衣装デザイナー、通訳を数年務めた。1969年、ポール・バーホーベン監督に見出され、主演を務めたドラマ「Floris」(原題)でブレイク。その後、バーホーベン監督とは何度もタッグを組んだ。代表作となった『ブレードランナー』では、ハリソン・フォード演じるリック・デッカードとの対決シーンのセリフを自ら書くほどの没頭ぶりだったという。テレビ映画『脱走戦線 ソビボーからの脱出』ではゴールデングローブ助演男優賞を獲得した。近年も『シン・シティ』、『バットマン ビギンズ』、「トゥルーブラッド」などで活躍しており、これから公開される作品も多数ある。(Hiromi Kaku)
2019年07月25日『レオン』『フィフス・エレメント』『LUCY/ルーシー』など、数々の名作を世に送り出してきた世界的巨匠リュック・ベッソン監督最新作にして、デイン・デハーン、カーラ・デルヴィーニュ、リアーナらの共演でも話題を呼ぶ『Valerian and the City of a Thousand Planets』が、邦題『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』として2018年3月に全国公開されることが決まった。本作の原作「ヴァレリアンとローレリーヌ」は、あの『スター・ウォーズ』にも影響を与えたSFコミックスの金字塔。28世紀の宇宙を舞台に、銀河をパトロールする美男美女コンビが全宇宙の存亡を揺るがす陰謀に立ち向かう。熱狂的なファンを持つ名作群で知られるベッソンは、30年を超えるキャリアでも最強にして最大のスケールでこのSF超大作に挑戦。自由奔放なイマジネーションとエキサイティングなアクションが炸裂、最新鋭のVFX技術で自らの夢を具現化させた。宇宙を守る任務を帯びたスペシャル・エージェントのヴァレリアンとローレリーヌは、星から星へと飛び回り、あるときは失われた高度な文明を探り、あるときはアクの強い闇商人と渡り合う。そしてプレイボーイでもあるヴァレリアンのもう1つの目的は、なんとしても愛するローレリーヌの心を射止めることだった――。コミックが誕生した1967年から愛され続ける主人公であり、広大な銀河を守る任務を帯びたエージェントのヴァレリアン少佐役を演じるのは、『アメイジング・スパイダーマン2』『クロニクル』でその名を世界に知らしめたデイン・デハーン。これまで繊細で鬱屈とした役どころが多かった彼が、本作では一転、仕事はデキるが私生活ではちゃらんぽらんなプレイボーイに扮する。そして、頼れる相棒にしてクールビューティーのローレリーヌ軍曹を演じるのは、イギリスを中心にファッションアイコンとして数々のファッション誌を飾り、『スーサイド・スクワッド』『ペーパータウン』など女優に転身し活躍するカーラ・デルヴィーニュ。ヴァレリアンとは正反対の性格で、強い意志と強烈な自立心を備え、任務においても強靭さを兼ね備えた才色兼備なエージェントを演じる。加えて、クライヴ・オーウェンやイーサン・ホーク、クリス・ウー、ジョン・グッドマン、ハービー・ハンコック、ルトガー・ハウアーら、個性豊かな実力派俳優が仲間・敵・謎めいたキャラとしてスクリーンを彩る。極めつけは、ポップス界の世界的スーパースターのリアーナが銀河系SFエンターテインメント作品に初挑戦するのも見逃せない。今回公開された場面写真は、スペシャル・エージェントとして宇宙の様々な場所で任務に挑むヴァレリアンたちの1シーンをとらえたもの。“私服”の2人は、アロハシャツに短パンとまるでバカンス中のようなラフな格好だが、その表情には遊んでいる様子は微塵も見られない。2人の身に一体何が起きたのか…?ヴァレリアンとローレリーヌが広大な宇宙を舞台にどんな活躍を見せるのかが、大変気になるビジュアルとなっている。ベッソン自身が手がけた伝説的SF『フィフス・エレメント』というハードルを、軽々と凌駕してみせる新たなSFエンターテインメント超大作。引き続き注目していて。『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』は2018年3月、全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2017年10月26日