"250万乙女" というフレーズに聞き覚えのある読者は全員集合!かつて発行部数255万部の記録をたたき出した少女マンガ誌の金字塔〈 りぼん 〉のふろくたちが、現在京都に大集結しているのです。その数およそ2,000点。もはやムズキュンのルーツ(!?)ともいえる乙女心を育み続けた源流をとくとご覧あれ。黎明期から今日までのふろくの変化【〜1960年代】りぼん黎明期最初の少女雑誌〈 少女界 〉が創刊されたのは今から1世紀以上昔の1902年。ふろく文化も少女雑誌の隆盛とともに花開きましたが、戦時下の紙不足により一時的に姿を消し、戦後に再び登場します。そんな中、戦後のふろく文化を牽引したのが、1955年創刊の〈 なかよし 〉と〈 りぼん 〉でした。内藤ルネ、田村セツコ、藤井千秋、水森亜土といったイラスト付きふろくも一時代を築き、わたなべまさこ、牧美也子といった少女マンガ家たちの連載マンガのキャラクターがふろくに起用されることも増えていきます。展示作品にはそれぞれ所蔵元が記載されていますが、中には "個人所蔵" のふろくも。つまり当時の購入者が現在まで大事に保管しているのです!その事実にすでに時代を超越した少女文化への愛情が……!【1970年代】ふろくで乙女心を鷲掴みに高度経済成長を経て豊かさを取り戻した生活の変化は、もちろん少女の生活環境にも。ちなみに〈 ハローキティ 〉誕生は1974年。〈 りぼん 〉は連載マンガ家描き下ろしのハイセンスな紙ものふろくを提供することで少女たちの心を掴んでいきました。陸奥A子、田渕由美子、太刀掛秀子ら当時の人気マンガ家たち手がけたふろくは、流行のアイビールックを取り入れたものも。いまのわたしたちでも持ってても恥ずかしくない!と思えてしまう大人っぽいテイスト。マガジンラックなど、ふろくのバリエーションがより一層増えてきたのもこの時代。【1980年代】"250万乙女" の支持を受け、No.1少女マンガ誌に池野恋の〈ときめきトゥナイト 〉はじめ、キャラクターを売りにしたふろくが増えていった1980年代。〈ときめきトゥナイト〉だけでなく部数を上昇させた作品は続き、例えば "250万乙女のバイブル" のキャッチフレーズで人気を博した柊あおいの〈 星の瞳のシルエット 〉もそのひとつ。さくらももこの〈 ちびまる子ちゃん 〉といった今でも続く人気作もこの時期に生まれ、〈 りぼん 〉はいつしか名実ともに売り上げナンバーワン少女マンガ誌としてその地位を不動のものとしていきます。また、当時の連載マンガ家たちは連載用の原稿にプラスして、ふろく用にイラストを描き下ろしていたというからそのハードワークぶりは計り知れません。今回の展覧会では当時の貴重なふろく原画も特別に展示されています。時を超え、制作背景を辿れるのはファンにとっては至極。【1990年代】発行部数255万部の記録達成1994年2月号でついに255万部に(記事上部写真参照)。255万部の表紙に名を連ねるのは〈 赤ずきんチャチャ 〉〈 天使なんかじゃない 〉〈 ときめきトゥナイト 〉〈 ママレード・ボーイ 〉〈 有閑倶楽部 〉ほか、世代を超えて誰もが一度は聞いたことのあるタイトルばかり。これだけのタイトルがリアルタイムで連載されていたなんて、贅沢すぎます。【2000年代・2010年代】規制緩和による雑貨の台頭2001年に日本雑誌協会がプラスチックや金属を使ったふろくの流通に関する規制緩和をしたことで、大きく変化したふろくを取り巻く環境。この規制緩和によって、紙 "以外" が目立つようになります。〈 りぼん 〉ではCD-ROMでゲームを楽しめるふろくも。〈 神風怪盗ジャンヌ 〉〈 超GALS!寿蘭 〉など、20代の乙女心の源流はここに。2010年代には文房具や美容グッズ、マフラー、リュックサック……、と、単一販売していてもおかしくないアイテムばかり。それでも一貫しているのは、ふろくを作る軸があくまで「少女たちがちょっと背伸びできる憧れのアイテム」であること。その中でも、特に昨年話題になった「まんが家デビューセット」は、ふろくでついてくる画材を使って、描いたマンガをそのまま投稿までできるという新人発掘を兼ねた変わり種!ふろくファンル〜ム に寄せられた感謝の声会場内には来場者の寄せ書きコーナー!年代も国籍もバラバラの "乙女" たちからの声が数多く寄せられています。「なつかしすぎて泣きそう」「中学生の頃仲の良かった男子と半分ずつおこづかいを出し合って買って読んでいた」「見たら思い出すふろくばかりでテンション上がる」「姫ちゃんのりぼんレターセット入れ、今も現役です」「幸せ感いっぱいの企画でした」などなど……その言葉多くは乙女心を教えてくれた〈 りぼん 〉への感謝の言葉ばかり。中には母娘で熱狂的なファンというツワモノも。さいごに関東圏内の "乙女" たちへ朗報を。東京スカイツリーでは〈 250万乙女のときめき回廊 at TOKYO SKYTREE(2017年1月9日〜3月31日)〉の開催が決定しました。忘れられない名シーンとともにスカイツリーの回廊を歩けば、胸キュンと共にあの頃にタイムスリップできるはず。2017年もキュンとさせていきましょう!〈 LOVE♡りぼん♡FUROKU 〉展会期2016年12月8日(木)〜2017年2月5日(日)休館日毎週水曜日、12/28~1/4 会場 2階 ギャラリー1・2・3料金無料(※ミュージアムへの入場料は別途必要)主催京都国際マンガミュージアム、京都精華大学国際マンガ研究センター協力集英社公式サイト-・高須賀由枝(〈 グッドモーニング・コール 〉作者)トークイベント&サイン会2017年1月22日(日)14:00 〜 16:00(サイン会 16:30〜)撮影協力:京都国際マンガミュージアム / ※作者敬称略Text. Midori Tokioka (@mdrtkk)
2016年12月28日若手トップ俳優をひた走るエマ・ロバーツとデイヴ・フランコの若手ハリウッド俳優の共演で話題の映画〈 NERVE [ナーヴ] 世界で一番危険なゲーム 〉。架空のソーシャルゲームが若者にもたらした恐るべき展開に、自分自身のSNSとの付き合い方を見直すきっかけになるかもしれません。気軽さと匿名性がもたらす世界一危険なゲーム・NERVE(あらすじ)親友シドニーのお節介に苛立ったのがきっかけで裏オンラインゲームに参戦した女子高生ヴィー(エマ・ロバーツ)。視聴者が出した「見知らぬ人と5秒間キス」という挑戦を達成し賞金 100ドルを手にした彼女は、実は挑戦者でもあったキスした男性イアン(デイヴ・フランコ)とコンビを組んで、次々に挑戦をこなしていくうちに瞬く間に多額の賞金を手にし、人気プレイヤーの仲間入りをする。ヴィーは、ライブストリーミングをシドニーが見ているとも知らずにイアン相手に彼女の欠点をもらし、親友と大げんか。さらにイアンが実はゲームのリピーターと知り、彼への不信感をも募っていく。スリリングで楽しく、引っ込み思案な自分を変えてくれるはずのゲームは、次第に危険なものに変わり…。“WATCHER” と “PLAYER”ナーヴを登録するにあたって最初に選択するのが「あなたはWATCHER?それともPLAYER?」か。簡単な流れは下記の通り。 PLAYERはWATCHERから金額と合わせて提示されるチャレンジを受ける 遂行中の様子をスマホでライブ配信する チャレンジをコンプリートしたら、相当の金額が口座に自動振り込みされる最初のうちは知らない相手とキスしたり、ブティックでドレスを試着したり…、と比較的ライトな要求が続く。しかし、見飽きたWATCHERたちは次第にエスカレートした要求をかかげ始める。試着したドレスを着たまま逃げる!なんて、犯罪まがいに加担するか否かは、劇中をお確かめあれ。当初は、文字通りゲーム感覚で楽しむ場だったはずのナーヴは、感覚が麻痺したWATCHERの提示するエスカレートな要求によって、PLAYERの精神はもとより、人間関係をも破壊に導いていく。若手ハリウッド俳優の共演郊外にある高校に通う冴えない女子高生ヴィー役を演じたのは、エマ・ロバーツ。ジュリア・ロバーツの姪として注目されていたのも今は昔、と言わんばかりの存在感を放つ。また彼女がナーヴでペアを組む相手・イアンを演じたのは、デイヴ・ブランコ。どこかで見聞きした記憶をさかのぼれば、兄が〈スパイダーマン〉シリーズで有名なジェームズ・ブランコであることに気づく人は少なくないはず。最近はザック・エフロンやクロエ・グレース・モレッツが出演している〈ネイバーズ2〉等にも出演している。両者ともに家族の七光りに頼ることなく、着実にキャリアを築く美男美女の勇姿もお見逃しなく。とは言え、個人的に注目してもらいたいのはヴィーの同級生・トミー役で出演のマイルズ・ヘイザー。子役時代からテレビドラマを中心に活躍していたマイルズも、もう21歳。セクシーで肉体派のイアンもいいけれど、頭脳派としてクライマックスで見せる活躍ぶりに心奪われる女子はきっと多いはず。次の週末に着こなしたいヴィーの◯◯×定番スニーカーヴィーが劇中を通じて履いていたのは、アディダスのSUPER STARスニーカー。ラグジュアリードレスと併せてカジュアルダウンすれば抜け感演出もお手の物。(写真下)残念ながらこのドレスは本作のために制作されたオリジナルとのことですが、その他のカジュアルルックもすぐ参考にできそうなものばかり。デバイスや環境が変われど、ティーンが抱える閉塞感や屈折した思いはいつの時代も似たり寄ったり。映画を通じて、あの頃の自分たちと重ね合わせてみるも良し、オンラインという似て非なるもう一つの世界との付き合い方を考える機会とするも良し。エンドロールが終わって劇場内が明るくなったときに、思わずスマホの通知を確認している?していない?『 NERVE [ナーヴ] 世界で一番危険なゲーム 』監督:ヘンリー・ジュースト、アリエル・シュルマンキャスト:エマ・ロバーツ、デイヴ・ブランコこんな時に観たい:ちょっと羽目を外したいとき2017年1月6日(金)より TOHO系にて全国ロードショー配給:プレシディオ©NERVEText. Midori Tokioka (@mdrtkk)
2016年12月26日化粧品一式は定期的に買う一方、香水は馴染みが薄いというのが正直なところ。だったらまずは、鑑賞物として楽しむのはいかがでしょう。 現在、東京・銀座にある資生堂ギャラリーでは資生堂の香水を振り返る特別展がクリスマス当日の12月25日まで開催中。テーマは「日本の香水」「商品の芸術化」もともと科学技術の発展に伴い、20世紀初頭に資生堂創始者・福原信三の強い想いで製造をはじめられた香水事業。「耳で聞く音楽がある。目で見る絵画とか彫刻。だけど鼻に感じる芸術はない。香水は鼻で感じる芸術として」という言葉からも、自身のその思いの強さが伺えます。今回は1910年代後半以降のアール・ヌーヴォーの影響を受けデザインされたものから、近年に至るまでの貴重な "日本の" 香水瓶約40点が特別展示されています。ちなみに記事最上部の3点の香水は、株主宛の贈り物として制作された香水だとか…!ところで写真を見て気づかれたかもしれませんが、展示されているどの香水瓶にも販売年や商品名などのクレジットが一切書いてありません。あえて子細を記載しないことで、現代の『かわいい!』や『綺麗!』という感性で、香水瓶やインスタレーションを鑑賞できそう。持ち合わせていることに越したことはなくても、アートは知識がなくたって十分に楽しめるはず。なぜって、実物はそこにあるんですもの!こういった細かい気配りもビギナーには嬉しい配慮ですね。(館内配布用紙で、それぞれのプロダクトの詳細情報は確認していただけます。) ROBEさん(@robetokyo)が投稿した写真 - 2016 11月 4 8:36午前 PDTまた、館内は撮影が可能!さっそくSNSには日々着々と投稿が寄せられています。本展の人気ハッシュタグは〈#香りの意匠〉もしくは〈#資生堂ギャラリー〉。撮影禁止の美術展が多いなか、ハッシュタグで参加者と繋がれれば、楽しみも倍増です。溢れるロマンチックムードは男性の感性だからこそ真っ白の箱のような空間に整然と並べられた香水は、雫をイメージした透明な半球のショーケースにひとつずつ収められ、幻想的な統一感を放っています。計算されつくされながらもスッキリとした館内は男性的な印象を一見受けます。しかしながら男性らしさが遺憾なく発揮されているのは、実はさらに深掘りした、その奥。ひとつずつ印象的な名前が付けられる香水ですが、梅をモチーフにしているこちらの名前はズバリ「WOO-MÈ」。梅か、と見過ごしてしまいそうなこの名前、実は「わたしを愛してください」の意味が込められているのだとか。発売された当時の時代は、男性が女性に贈るプレゼント上位だった香水。花言葉のように思いを秘めた贈り物をするなんて、なんてロマンチック!このほか「さよならは言わない」「いちずな想い」などラブレターのような淡い想いを背負った香水がつづきます。当時、誰の想いを運んでいたのでしょう。香水名と音の流れる演出が、余計に胸がキューっとさせる!現在 #資生堂ギャラリー (@ShiseidoGallery) では資生堂ギャラリー香水瓶 "LES PAREUMS JAPONAIS" の展示を開催中。文字の流れる演出が官能的! pic.twitter.com/fWNpownCDQ— ROBE (@robetokyo) 2016年11月4日香水に馴染みのない人向けにワークショップ開催もなかなか日常で香水を使うのはちょっとハードル高いな〜と思っているみなさんへ。来月12月に資生堂パフューマーによるワークショップが開催予定。ワンコインで楽しめるワークショップの概要は下記をチェック。《ワークショップ「香りの世界を楽しもう」》講師: 資生堂 グローバルイノベーションセンター パフューマー 城市 篤氏開催日: 12月4日(日)時間: 14時~16時場所: 資生堂銀座ビル2階(東京都中央区銀座7-5-5)(Google Mapsへ飛ぶ)材料費: 500円定員: 20名※締切日:2016年11月18日(金)参加問い合わせはこちら→資生堂ギャラリー (Tel. 03-3572-3901 / Fax. 03-3572-3951)「Les Parfums Japonais ―香りの意匠、100年の歩み―」 会期:11月2日(水)~12月25日(日) ※開催中展覧会HP資生堂ギャラリー Address〒104-0061 東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階(Google Mapsへ飛ぶ) Tel03-3572-3901 / Fax03-3572-3951 Open平日 11:00~19:00 日曜・祝日11:00~18:00 毎週月曜休(月曜日が祝日にあたる場合も休館) 入場無料 主催: 株式会社 資生堂資生堂ギャラリー公式HPText. Midori Tokioka (@mdrtkk)
2016年12月15日2017年最初の映画はカナダ発のシスターアクトで決まり?! 第18回 ケベック映画賞にて最多部門(作品賞 / 監督賞 / 主演女優賞 / 助演女優賞 / 衣装賞 / ヘアスタイリング賞)を受賞したのは、カナダを代表する映画監督レア・プールの最新作『天使にショパンの歌声を』。寝ぼけ眼に神父様のお話を聴いたミサ、学内に居るのが当たり前だったシスター方、廊下の端にひっそりたたずむマリア様像……、これらに懐かしい記憶を呼び起こすレディの皆さま、ごきげんよう。崖っぷちを跳ね返すシスターアクト本作は、廃校に直面したシスターたちが音楽の力をもとに立ち上がる、静かながらも心温まるストーリー。シスター×音楽で、真っ先に思い出すのは『SISTER ACT(邦題:天使にラブソングを)』ですが、ゴスペル中心の『SISTER ACT』と比べ、タイトル通りクラシック音楽中心の本作は派手な展開ではなく、鑑賞後にじんわり温まるヒューマンドラマ。全編フランス語のセリフも、物語に余韻を残すストーリーに一役買っています。いまだからこそ俯瞰して見える景色鑑賞後まず思ったことは、音楽を通じた主人公・アリスの成長物語でもある本作は、ROBE世代のわたしたちが観るべきだということ。なぜって、レディになったわたしたちは、もうあの頃のわたしたちを俯瞰することができるはずだから。高い塀に囲まれて、保守的な制服に厳しい学校規則、グッドガールの装いに身を包み、ただ淡々と毎日をやり過ごす毎日。思い出してもみてください、思春期(という名の反抗期)の女子の熱量を。もちろんアリスも例外でなく、寮を抜け出してナイトクラブに繰り出したり、意中の男子と雪原デートでいちゃついたり。当時のわたしたちだったらもしかしてアリスに共感したかもしれないけれど、今のわたしたちは、アリスにしつこく指導し続ける校長・オーギュスティーヌの気持ちにも、初めて気づくことができるはず。とはいうものの、当時の学生時代に戻りたいか否か、意見の相違は承知の上。品行方正だったとは言い難いわたし自身、問答無用で後者をチョイス。それでも、当時の時間があったから今があるという事実に疑う余地はないのです。ティーン衣装だと侮らないで。ヘア・ファッションは注目必至前述通り、衣装賞 / ヘアスタイリング賞を受賞している本作は、ROBE読者ならばファッションも注目しておきたいところ。ティーン衣装だからといって侮ってはいけません。穿った時期を一通り過ぎた今だからこそ、参考にしたグッドガールな着こなしはお見逃しなく。デイリーな定番ルックこそ、足元をひと工夫アニエス・ベーを彷彿とさせる制服ルックは黒タイツ+黒シューズで足長効果が狙えそう。第二ボタンを開けてたわたしたちでも、今となっては第一ボタン締めがかわいくみえる?寝間着はコットンレースのワンピース寄宿学校の寝間着は、誰もが似合う真っ白なレースコットンのワンピース。これ一枚で清楚、清純さ満点です。デザインが個々で微妙に異なっているのもぜひ劇中でチェックしてみるのも鑑賞の楽しみに。ニット帽ルックはヘア重視一面真っ白な雪原世界ではカラーコーディネートが必要不可欠。バーガンディカラーを基調に、ピンクやレッド、エメラルド色などのオリジナルカラーで色付けしましょう!ポニーテール×ニットヘアバンド、ニット帽×サーモントのメガネのダサルックも一周回って全然あり。もちろん、ワンサイドの三つ編みヘア×ニット帽との相性はいつの世代も大本命。あらすじ白銀の世界に佇む小さな寄宿学校。そこは音楽教育に力を入れ、コンクール優勝者も輩出する立派な名門校だった。しかし、修道院による運営が見直され、採算の会わない音楽学校は閉鎖の危機に直面する。校長オーギュスティーヌは抵抗し、音楽の力で世論を動かす秘策を考える。一方、転校してきた姪・アリスに天性のピアニストの才能を見出すが、孤独で心を閉ざしたアリスは一筋縄ではいかない問題児だった。 『天使にショパンの歌声を』監督:レア・プールキャスト:セリーヌ・ボニアー、ライサンダー・メナードこんな時に観たい:女子高時代の友達と久しぶりに再会したとき2017年1月14日(土)より角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国ロードショー《 特典付き前売券販売中。詳細は公式サイトより 》配給:KADOKAWAAll pictures ©2015-9294-9759 QUEBEC INC. (une filiale de Lyla Firms inc.)Text. Midori Tokioka (@mdrtkk)
2016年12月15日『プロフェッショナル・ミーティング』(長田英知著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は元政治家で、現在は大手外資系コンサルティングファームのシニアマネジャー兼新規事業部門副責任者として事業開発に携わっているという人物。国内最大手の生命保険会社を筆頭とする、さまざまなキャリアの持ち主でもあります。つまり本書ではそんな実績を軸として、「成果を挙げるミーティングを行うための考え方と手法」について解説しているわけです。■業務時間の15.4%は会議だという現実NTTデータ経営研究所が2012年10月に行った「会議の革新とワークスタイル」に関する調査によると、会社で開催される会議の全体業務に占める割合は平均して15.4%になるのだそうです。業種別でもっとも会議の割合が高かったのは通信・メディア業で、会議が業務の約2割を占めていたのだといいます。つまり週5日勤務の社員は、毎週1日をまるまる会議に費やしている計算になります。また、同じ調査で「会社で開催される会議等は価値創造(仕事の生産性向上、イノベーションの創出等)に貢献していると思いますか」と尋ねたところ、「まったくそう思わない」「あまりそう思わない」と答えた人の割合は66.9%。実に3人に2人は、会社の会議が生産性向上やイノベーションといった価値の創造に貢献していないと答えたわけです。■外資系企業では会議の業務専有割合が高いなお外資系企業では会議の業務専有割合が20.1%と、日本企業の平均よりも約5%高い数値を示していのだとか。一方、会議が価値創造に貢献していないと答えた外資系企業は56.2%で、日本企業の平均よりも10%低い数値となっているのだそうです。また、さまざまなタイプの会議を、ビジネスプロセスのさまざまな場面に合う形で組み合わせているのが外資系企業の特徴。そうすることによって、「強いチーム」と「確実な目標達成」の実現を図っているというわけです。著者はこれまで政府・自治体の政策立案、企業における新規事業戦略や実行計画の策定、不採算事業の改革やオペレーション改善といったプロジェクトに携わってきたのだそうです。そんななかで意識していたのは、「どんなに優れた戦略や実行計画を立案しても、実際に実行されなくては意味がない」ということだったといいます。■PDCAで真のイノベーションを促進する先に触れたとおり、著者は政治家からコンサルタントに転身したという異例のプロセスの持ち主ですが、いかに「実行される」戦略や計画を立案するかについて悩んでいたときに思い当たったことがあるのだと記しています。それは、自分が勤めている外資系企業が、複数のタイプの会議を使い分けることによってビジネスを推進する仕組みを採用しているということ。そこで、以来、ビジネス戦略・計画の実行を管理する仕組みであるPDCAに対し、PDCAの各場面で適切と思われるタイプのミーティング手法を適宜組み合わせるようにしたのだとか。そうすることによって、業種、製品、サービス、社風、計画の中身にかかわらず、ビジネスを自然な形で望む方向へと動かし、真のイノベーションを促進できるようになったというのです。■そもそもミーティングはPDCAを回す動力源「Plan」「Do」「Check」「Act」からなるPDCAは、もともと工場現場で製造工程を管理し、製品の品質を改善する手法として考案されたもの。当然のことながら、そんなPDCAをビジネス管理の手段として活用する場合には、より長い時間軸で活動管理を行い、外部影響を考慮した計画調整を頻繁に行うことが必要になってきます。そしてミーティングは、常に変化していくビジネスの状況を把握し、目的達成の落とし穴がないかを探り、他者との競争のなかで自社を差別化するための対策を適切なタイミングで実行し、PDCAの各フェーズを円滑に回す歯車としての役割を果たしているもの。つまりミーティングは、PDCAを回す動力源だという考え方なのです。■ミーティングを有効に活用するためには本来であれば、社内ミーティングはビジネスを推進させるために行われているはず。しかし多くの人は、ビジネスの現場で会議を行うことに価値を見出せなくなっていると著者は指摘しています。そこで本書では、ビジネスリーダーを目指す人が、ビジネスミーティングを有効に活用できるプロフェッショナルとなるための基本的な考え方と実践的なコツを明かしているわけです。*一向に進まず、有効なアイデアも生まれない会議の経験は誰にでもあるもの。しかし、ミーティングの設計をきちんと行っておけば、コンスタントに成果を上げ、ビジネスを前に進めていけると著者はいいます。効率的な会議を実現するために、ぜひ読んでおきたい一冊です。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※長田英知(2016)『プロフェッショナル・ミーティング』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年10月20日『脳神経外科医が教える病気にならない神経クリーニング』(工藤千秋著、サンマーク出版)は、著者の言葉を借りるなら「あらゆる不調を招く『老化した神経』を若返らせて、病気にならない体をつくる本」。そして著者は、神経とは、命をつなぐ生命線であり、「若い神経には、すべての不調を遠ざける力が備わっている」と考えているのだそうです。つまり、神経が体のなかではいちばん大事で、その神経が若返ればすべての不調は吹き飛んでいくということ。■替えのきかない神経はクリーニングするしかないそのような考え方をもとに、神経を若返らせる方法として著者が考えたのが「神経クリーニング」。なぜなら神経は体のなかで唯一替えがきかない部分であり、簡単には新しくつくれないから。心臓や肝臓などの臓器や血管ですら移植は可能なのに、現代の医術をもってしても、神経の移植はとても難しいのだそうです。また、細胞や血液は毎日新しいものがつくられて入れ替わりますが、神経は新調することが不可能。だとすれば、神経を若返らせたいのなら、クリーニングをしていまある神経を磨くしか方法はないということ。■人間は20以上もの感覚を神経から脳に伝えているそもそも著者は常日頃から、「人間は神経でできている」と考えているのだそうです。その証拠に、「五感を研ぎ澄ます」どころか、人にはもっとたくさんの感覚があるのだといいます。私たちはバランスや痛み、温度、のどの渇きなど、20以上もの感覚を認知できるといわれているそう。こうした感覚をもとに、まわりでどんなことが起きているのかを感じ取ることができるということです。視覚や聴覚、嗅覚、味覚、触覚をはじめとするこうした感覚は、神経の働きに大きく依存しているもの。いわゆる五感も、神経を通さなくては脳に伝わらないわけです。よって、「五感を研ぎ澄ます」ということは、「神経を研ぎ澄ます」ことと同じだという考え方です。たとえば本を読んでいるとしたら、その間にも神経はフル活動し、さまざまな感覚を脳に伝えてくれているといいます。文字を読むためには視覚から得た情報が欠かせませんし、本のページをめくるときにも指先から伝わってくる感覚が必要。また、開いた本がぐらつかないように固定できているのも、バランス感覚をつかさどる神経が働いているから。こうしたさまざまな感覚が電気信号となって神経を流れ、瞬時に脳へと届けられているからこそ、本を読むことができるというのです。何気なく行っているように思えても、実はとても複雑なことだということ。■健康の維持には中枢神経より末梢神経のほうが大切ところで、人間の体じゅうに張り巡らされた神経の長さは、72キロメートルにもなるといわれているのだそうです。しかも、そのなかを走る電気信号は、時速400キロもの超高速スピードで行き来しているのだというのですから驚き。まさに人間の神経は、スーパーコンピュータを凌ぐほど精巧で、複雑な構造になっているということ。地球上の生き物で、これほどまでに神経が発達しているのは人間だけ。知能が高いチンパンジーですら、人間にくらべたら神経のつくりはずっと単純なのだそうです。そして医学的に厳密に分けると、神経は次の2つに分類されるといいます。(1)中枢神経:脳と脊髄のこと。指令を出す役割。(2)末梢神経:脳や脊髄と体をつなぐ神経。指令や情報を伝える役割。末梢神経のなかでも、呼吸や心臓の鼓動、食べものの消化や汗をかくことなど、自分の意思とは無関係に体の機能を調節している自律した神経のことを「自律神経」と呼ぶのだそうです。このように医学の世界では、中枢神経と末梢神経の2つをひとくくりにして「神経」と呼んでいるわけですが、著者はこの2つのなかでも末梢神経のほうが大切だと考えているのだとか。なぜなら、末梢神経を若く健全な状態にすることこそが、真の健康につながるから。*こうした考え方を軸として、本書の以後の章では神経クリーニングの方法をわかりやすく解説しています。神経クリーニングをするだけで、血圧が正常値に戻ったり、体脂肪が減ったり、近くが見えはじめたり、記憶力が戻ったり、ひざが曲がるようになったりするなど、全身に多くの効果が表れるのだとか。病気になりにくい体をつくるために、読んでおくといいのではないでしょうか?(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※工藤千秋(2016)『脳神経外科医が教える病気にならない神経クリーニング』サンマーク出版
2016年10月19日『やる気に左右されず結果を出す あらゆる目標を達成するすごいシート』(佐藤耕一著、日本実業出版社)は、日本で数少ない目標達成の専門家である著者が、誰でも目標をクリアできるようになるノウハウを明かした書籍。コピーして使える折り込み式の目標達成シートを使用して、モチベーションが下がったり、行動に迷ったりしたときに乗り越える方法を伝授しているわけです。しかし、その方法を試すよりも先に、「なぜ、目標が達成できないのか」を確認しておくべきではないでしょうか?そこできょうは、第1章「その目標、達成できなくて当然です」に注目してみたいと思います。■意外に多い目標とどう向き合うべきか具体的な目標はもちろんのこと、「こうなったらいいなあ」というような夢なども含めれば、目標は意外なほど日常のなかに多くあるもの。また、数年後に実現させたい夢もあれば、1カ月先までにやらなければいけないこともあるはずです。しかし残念ながら、その目標をしっかり達成しているということは、それほど多くないはず。目標は、いま現在、“その状態になっていない状況”からはじめるものなので、達成するためにはなにかしらの「行動」をしなければならないわけです。しかも「チャレンジ」と呼ばれるような、新しく、しかも高い目標だと、行動そのものをかなり変えていく必要があるでしょう。■行動を変えられる人は100人に3人つまり「目標を設定し、行動を変えて、達成する」という“当たり前”の方法は、極端にいえば一部の天才か、もともとそういう資質がある天才型予備軍、あるいは目的意識の高い人が集まっている一部の企業でなければできないだろうと著者は考えているのだそうです。それどころか、さまざまな組織で目標達成のコンサルティングをしてきた実感として、一般のビジネスパーソンのなかで、きちんと目標を設定して行動を変えられるような人は「100人に3人いるかいないか」だとすらいうのです。そういう人は、いまは一般社員だったとしても、将来は経営幹部になっていく可能性があるので、結局は天才型。だとすれば、もし天才型でないのなら、そもそも目標を設定し、それに向かっていこうという通常の目標達成の方法自体が間違っているということになるはず。だから、目標をクリアできなかったとしても当然だというのです。■目標を達成できない人は3分でわかる「目標に向かって取り組んでいきそうな人か」「達成しそうかどうか」は、3分ほど目標や達成の方法について話してもらっただけで、ある程度わかると著者はいいます。また、明らかに達成しない人もすぐにわかるのだそうです。そして、目標を達成できない人は面談のなかでの発言に、次のような特徴があるのだとか。・直接的な否定が多い例:~できません。~ないです。・間接的な否定が多い例:~は難しいです。~は厳しいです。・周囲の環境を言い訳にあげる例:~の地域の市場はA社が強くて~。為替の影響で~。・いい切りや断定をしない表現が多い例:~と思います。~するつもりです。~の努力をしようと考えています。・根拠のないお気楽な言葉を言う例:できます、やります、がんばります、だけの繰り返し。・他人ごとで自分の目標として捉えていない例:~に与えられた~。上から降ってきた~。上からいわれた~。このような発言をよく見てみると、これらの言葉を使っている人は、最初から目標を達成するつもりがないことがわかると著者は指摘しています。「どうせ無理です」「やろうとは思うけど、たぶんやりません」「あまり自分には関係ありません」と宣言しているようなものだというのです。■変化を嫌うのが人間の普通の心理状態ただし、このような発言が悪いということでもないのだそうです。むしろ普通の人にとっては、これが当たり前なのだとか。誰しも、「目標を達成したくない」などとは思っていないはず。しかし、よほどのことがない限り、人はいまの状態を変えたくないと思っているというのです。なぜなら、変化を嫌うのが人間の普通の心理だから。しかし、いまの状態を変えないのであれば、行動も変わりませんから、目標の達成は困難になります。つまり、「目標を設定して達成する」ということは、普通の人にとっては、どちらかといえば苦手なこと。だからこそ、「目標を設定しても達成できない」ということになってしまうわけです。*こうした考え方を素直に受け入れたうえで先に進み、ぜひ目標達成シートによるメソッドも実践してみてください。いつの間にか、目標達成のコツをつかめるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※佐藤耕一(2016)『やる気に左右されず結果を出す あらゆる目標を達成するすごいシート』日本実業出版社
2016年10月13日がんは今や誰にとっても他人事とはいえない病気。国立がん研究センターが発表した「2016年がん統計予測」によると、2016年のがん罹患数予測は101万200例(男性57万6,100例、女性43万4,100例)で、昨年よりも約28,000例増加しているといいます。今回ご紹介する『がんは治療困難な特別な病気ではありません!』(真柄俊一著、イースト・プレス)の著者は「がんと食」「自然治癒力」を軸に置いたがん専門クリニックで多くの患者さんのがんを治すのに成功しています。そこで本書の中から、あまり知られていないがんに関するデータをご紹介します。■日本と欧米の「がん死亡率」には大きな差があるイギリス、フランス、アメリカ、日本の「がん死亡率」の推移を比較すると、1950年の時点では、日本人のがんでの死亡率は最も少なく、トップのイギリスの40%程度でした。その後各国ともに死亡率が上昇しますが、1990年頃を境に日本以外の3カ国はがん死亡率が軒並み下がり始めます。しかし日本だけはぐんぐん死亡率が上昇し、90年代半ばでアメリカを抜き、2000年代に入るとフランスを抜き、主要先進国の中でがん死亡率が1、2を争う国になってしまいました。もし他の3つの国のように日本も死亡率が下がっていたとしたら、10万人以上が亡くならずにすんだという計算になります。■アメリカではがん死亡率が20%も減少しているアメリカでは1970年代から国をあげてがんの対策を行ってきました。そのため、1990年を境にがん死亡率が年々減少しています。アメリカがん協会は2013年版の発表で、ピークとなった1991年から20%減少したと述べています。著者は、日本とアメリカではがん医療の違いがはっきりあるといいます。日本では臓器転移のあるがんの場合、治癒は困難で「がん放置療法こそが最善である」という風潮があります。しかし、アメリカの医療現場でそんな指導をする医師がいれば、医師免許が剥奪されてもおかしくありません。■肉の発がん性はタバコ並みに高いことが明らかに2015年10月、IARC(国際がん研究機関)が「肉にはアスベストやタバコ並みの発がん性がある」と発表しましたが、うやむやのうちにこの話題は消えてしまいました。しかし、WHO(世界保健機関)の傘下であるIRACが肉や肉加工品の発がん性をはっきり認めたということは極めて重要です。動物性食品の危険性に関する研究は進んでおり、イギリスの研究論文では「赤身肉の大量消費は体内のDNAにダメージを与え、がんの発生を引き起こす」と発表しているのです。■じつは移民労働者は高齢者ほど元気に生きているイギリス王立会議の医師トロウエル博士は、「先進国民は動物タンパク狂」だと指摘しています。肉食中心の食生活が現代病の原因だということです。同じように食生活と病気の発生について指摘している医師は大勢いるといいます。1972年にアメリカ人医師がハワイに赴任した際、ハワイの農園で働く日系人は高齢者ほど元気だということに気づきました。アメリカ本土では同じ年代の老人たちは心臓疾患やがん、リウマチなどの何かしらの病気を抱えているのが普通でした。しかし、ハワイの農園で働くアジア系の高齢者たちは病気とは無縁。90歳になっても元気に働いている人もいました。ところが、そんな移民の人たちも第2世代になるとやや不健康、第3世代以降では本土のアメリカ人と同様、肥満や糖尿病、心臓病などを抱えていました。さらに彼らの食生活について調査すると、上の世代では出身地で食べていた米と野菜を多く食べていたものの、子どもたちの世代になると食生活が欧米化していました。やがて食事を植物性食品から動物性食品に変えるととたんに病気になるとわかりました。実際、彼のもとを訪れた乳がん患者が動物性食品と油脂分をやめ、穀物は全粒粉、果物や野菜を多くとる食事に変えたところ、がんを克服し、トライアスロン選手になって30年経った今も活躍しているそうです。*本書では病院で治らないといわれたがんが「自然療法」によって完治した事例も掲載されています。がんには特効薬がなく、未だ解明されていないことも多いです。しかし、いつ誰がかかってもおかしくない病気だからこそ、最新の情報やデータをチェックしておきたいものです。(文/平野鞠) 【参考】※真柄俊一(2016)『がんは治療困難な特別な病気ではありません!』イースト・プレス※2016年のがん統計予測-国立研究開発法人国立がん研究センター
2016年10月11日ハーバード大学といえば、歴代大統領やノーベル賞受賞者、起業家などを多く輩出する世界最高峰の大学のひとつ。今回ご紹介する『世界に通用する一流の育て方』(廣津留真理著、SBクリエイティブ)の著者は独自の家庭教育法で、娘をハーバード大学現役合格へと導きました。地方の公立高校出身で、なおかつ塾に一度も通ったことがない、など普通では考えられない環境のなかで彼女はどのように学力を伸ばしていったのでしょうか?本書の中から、著者が人格形成上とても重要な時期だという6歳までの家庭学習の方法をピックアップしてご紹介します。■1:親が不得意なことは一緒に学ぶ家庭学習では親が得意なことを教えるのが基本だといいます。著者は自身で英語教室を開いているので、特に英語を熱心に教えていました。また、クラシック音楽も好きなので子どもにはバイオリンを習わせました。もし、親が苦手なものをやりたい場合は、親も子どもの頃を追体験するつもりで一緒に学ぶことが大切。例えば、親が英語が苦手な場合はアプリなどを使って発音の練習をすることもできます。我が子と一緒に苦手分野を学び直すつもりで取り組んでみましょう。■2:英語の絵本で読み聞かせをする著者は子どもが2歳になるまでは、日本語と英語で行う絵本の読み聞かせに力を入れていたそう。読み聞かせを通じて親子のコミュニケーションをとることは、子どもが楽しめるのはもちろん、想像力を育むことができます。英語で読み聞かせを行う場合は、絵本や英検の教材などを読むことから始めます。もちろんはじめは子どもは単語を読むことはできませんが、隣に座って読み聞かせをするうちに音真似をしながら少しずつ読めるようになるのです。発音に自信のない人はCD付きの教材を活用することもできます。ただし、読んだ英語を一つずつ日本語に訳すのはNG。これでは親も子どもも混乱してしまうだけで英語の上達にはつながりません。■3:漢字のオリジナル教材をつくる著者は子どもが2歳を過ぎたら、子どもが漢字を読めるようにオリジナル教材を作っていました。教材といっても難しく考える必要はありません。子どもが好きそうな絵本のひらがなの部分の上に漢字を書いて上から貼り付けるだけ。これで絵本を楽しみながら漢字を覚えることができます。幼い子どもには漢字は難しいと思うかもしれませんが、実は漢字は子どもが楽しく覚えやすいもの。意味を形に置き換えて表す漢字は、文字を見れば意味が理解できるようになります。読める漢字が少しずつ増えると、それまでよりレベルの高い本や新聞も読めるようになるため、触れる情報量を格段に増やすことができます。それにより学習能力も高まるという良い循環が生まれます。■4:6歳までは書くより読むを重視する著者の子育ての基本方針のひとつに、大きくなれば誰でもできるようになることは、焦って早くからやらせないというものがあります。幼児は筆圧が弱く、うまく書くことができません。そのため書くことにこだわるのは非効率で、モチベーションが下がる恐れがあります。対照的に子どもは読むことが得意なので、読むたびに褒めてあげると、それが成功体験となり、さらに難しいものにチャレンジする気持ちになります。筆圧が上がってスムーズに文字がかけるようになると、計算ドリルなども取り組めるようになるでしょう。■5:日本文化を自然に学ぶ環境をつくる将来海外で学んだり、働いたりする際に、自国の伝統や文化について話すことができないというのは恥ずかしいこと。著者の家庭では、日本の四季の移り変わりや伝統行事に親しめるような環境をつくるように心がけていたそう。週に1度は花を買ってリビングに飾る、ひな祭り、お月見、お正月を家族で楽しむなど、難しく考える必要はありません。子どもたちは、このような体験を通して大人が思っている以上に様々なことを吸収するものです。■6:親子で散歩を習慣にする著者が自身の英語教室で多くの子どもに接する中で、勉強や習い事ができる子は筋肉がしっかりしていて、引き締まっている印象が強いといいます。子どもの頃からちゃんと筋肉を動かすことは大切です。本格的にスポーツをするのもいいですが、散歩でも十分。道端の草花を見たり、季節の移ろいを感じたりしながら歩くとよいでしょう。*著者は冒頭で「親は学校や塾に子どもの勉強を丸投げしてはいけません!」と述べています。そのため、娘が高校に入ってからも、苦手科目は捨てる、模試は受けない、宿題は答えを丸写ししてから丸暗記する、など一見非常識ともとれる家庭学習を取り入れてきたそうです。他人任せではなく、親が子どもの学習に積極的に関わることで、子どもの個性や特性をより伸ばすことができるはずです。(文/平野鞠) 【参考】※廣津留真理(2016)『世界に通用する一流の育て方』SBクリエイティブ
2016年10月06日「臨死体験」というとオカルトや似非科学的なものというイメージを持つ人も多いでしょう。しかし、近年救急救命医療が発達したことにより、仮死状態から意識を取り戻す例が増えたため、臨死体験者は急増しているといいます。『死んだ後には続きがあるのか』(エリコ・ロウ著、扶桑社)に掲載さいれている臨死体験は、臨死体験研究のエキスパートである科学者が、実際に死後の体験の記憶だと判断し、研究対象としているもの。欧米では、臨死体験は人の「生」と「死」の境界で発生する現象とだと認めるべきだという動きも出ているそうです。今回は本書の中から、臨死体験に関するデータをご紹介します。■アメリカでの臨死体験者は1300万人!国際臨死体験協会の推測によると、臨死体験は4~15%の確率で発生するといいます。オランダの研究報告では心肺停止患者の18%が臨死体験をしていたというデータがあり、アメリカで1992年に行われたギャロップ世論調査では臨死体験のあるアメリカ人は1300万人にものぼるという結果が出ました。これは人口の5%にあたり、1日に774人が臨死体験をしているという計算になるのです。とはいえ、これらのデータは臨死体験があったことを覚えている人の数。臨死体験をした後、そのまま生き返らなかった人や、意識を取り戻すまでの間にその記憶を失くしてしまった人は含まれません。そのため、実際に臨死体験がどのくらい起きているのかは正確にはまだわかっていません。■実は臨死体験はどんな人にでも起こりうる霊感がある人とない人がいるように、臨死体験が起こりやすい人がいるのかというと、そんなことはありません。報告例を見ると、人種や性別、年齢、性格、体質にかかわらず臨死体験が発生していることがわかっています。子どもとお年寄りでは人生経験が異なるのにも関わらず臨死体験の内容や過程にも大きな差はないといいます。つまり、誰にでも臨死体験が起こる可能性はあるのです。■臨死体験後に奇跡的な回復をする例もある臨死体験に至る経緯も様々です。病気が悪化して入院先で臨死体験をした人もいれば、発作など急性の病気で救急車の中で臨死体験が始まる場合もあります。また、交通事故などで即死状態になり、その場で意識が体の外に出て臨死体験をするケースや、殺されかけて臨死体験をして生き返ったという例もあります。殺人現場での臨死体験で共通するのは、激痛や窒息状態で苦しんでいると急にラクになり、意識が体の外に出て中に浮かび、下にある惨状を見て自分が死んだことを認識したという記憶です。そうした例では、ひどい致命傷を負っているにも関わらず奇跡的に生還し回復をとげているケースが多いといいます。■臨死体験では超常的な記憶力を発揮する!臨死体験は夢や幻想とは異なり、その人が知るはずもない出来事を記憶している例も少なくないといいます。例えば、心臓のバイパス手術中に臨死体験をした患者は、気がつくと自分の意識が体外に出て、自分の体を上から見ていたといいます。そのとき、自分の主治医が執刀医の後ろで腕組みをし、ひじを上げ下げしているのを記憶していました。生き返った後、そのことを主治医に尋ねると「誰にそんなことを聞いたのか」と動揺したそう。主治医は患者には知らせず、助手に執刀を任せて背後から監督していたのです。手先が雑菌に触れるのを防ぐために、彼はひじ先だけを動かして指示をしていたということです。臨死体験というのは、超常的な記憶力が発揮されるといわれています。特に、自分が臨死体験で蘇生措置をされている現場を見たという人は、その詳細が事実と合致していた割合は92%にもなるそう。このような証言が確認できる例が増えてきたため、それまで懐疑的だった研究者たちも臨死体験を確信するようになったといいます。*臨死体験をした人の多くは生き返った後、「死後の世界」を信じるようになり、死を恐れなくなったといいます。また他人に対して寛容になり、思いやりや博愛の精神が強まるなど社会的な意識が高くなる傾向にあるといいます。自分の死を客観的に見たという強烈な体験は、与えられた残りの人生をどう生きるかに大きな影響を与えるものでしょう。本書で語られている臨死体験を読むことで、死に対する考え方が少し変わるかもしれません。(文/平野鞠) 【参考】※エリコ・ロウ(2016)『死んだ後には続きがあるのか』扶桑社
2016年09月28日『「運」を育てる 麻雀界の異端児 土田浩翔の流儀』(土田浩翔著、KADOKAWA)の著者は、プロデビュー30周年を迎えるというプロ雀士。本書では長い実績に基づいて、「運」を引き寄せるためのメソッドを公開しているわけです。つまり、ここに書かれていることを実践すれば麻雀が強くなるということ。ただし、必ずしも麻雀だけに限った話ではなく、人生における「運」の重要性と、その活用の仕方を学べる内容でもあります。■時刻表を買ってもらうほど数字の虜だった著者は幼少時代、数字の虜だったのだそうです。たとえば5歳のころは電車が大好きだったといいますが、そこで母親に頼んで買ってもらったのは電車のおもちゃ……ではなく時刻表だったというのです。当然、母親には不思議がられたそうですが、「電車を乗り継いだらどこに行けるんだろう?」ということに興味を持っていたということ。最初のページをめくると地図があり、さらにめくると時刻表には数字の羅列。吸い込まれるような感覚のなか、夢中になって数字を辿っていったのだといいます。そんな姿を見ていた両親は、「数字が好きな子なんだな」と思い、家でやっていた麻雀を見せてくれるようになったのだそうです。その結果、今度は短期間のうちにキレイな図柄の牌(パイ)の世界に引き込まれていったのだとか。いうまでもなく牌も数字なので、両親に教わるまでもなく、自然に数牌を覚えていったのだといいます。■麻雀は数字至上主義では太刀打ちできないそして7歳の冬休みに父親から麻雀を教えてもらい、以後、小中高を通じてメキメキと実力をつけていき、大学2年の春方麻雀業界入り。大学卒業間近に『第3回日刊スポーツアマ最高位戦』に出場して優勝し、1986年には『日本プロ麻雀連盟』のプロテストにも合格し、27歳でプロ入りしたのだそうです。しかしプロの世界へ足を踏み入れてみると、“数字至上主義”では太刀打ちできないものがあることを知らされたのだといいます。それは「運」。麻雀は運がすべてで、運をつかんだ者が勝つ世界。そこで、その運について知りたいと強く思雨ようになり、そこから大きく可能性を伸ばしたというのです。では、運とはなんなのでしょうか?■そもそも運は大きく分けて3つの形がある大辞林によると、運とは「1.人知でははかり知れない身の上の成り行き。めぐり合わせ。幸運」。そして著者は「運気」「運勢」をバイオリズムに置き換え、強く意識するようになったといいます。そのバイオリズムをつかみ、自分に向けるためには、「運を肌で感じられる=気づける」かどうかが肝。そう考え、運を次の3つに大別したのだそうです。(1)そもそも備わっている運(2)日によって変わっていく運(3)自分で育てていく運“天運”ともいわれる<そもそも備わっている運>は、生まれながらにして天から与えられた運命。自分の力ではどうにもならないわけです。しかし残りふたつの運は、意識の持ち方次第で、「感じられる=気づける」ようになっていくといいます。<日によって変わっていく運>は、朝、起きたときからはじまるもの。運の高低に気づかなければ、わからないままその日を過ごし、結果として「きょうは運が悪かった」と嘆いてしまうわけです。しかしそれでは反省にもならず、ただの感想で終わるだけ。■運気を自覚しながら行動するとうまくいく運気の高低に早く気づくためには、基準となる判断材料が必要になるとか。しかも、少しでも早く、より多いほうが根拠が強まるので、著者は起床直後の行動を大切にしていったそうです。起きてすぐ、まわりの風景に対して、人の動きに対して、どう感じるのか。その感じ方が、日常生活における運気の高低の判断基準になるというのです。いうまでもなく、風景や人の動気を違和感なく自然に受け入れられたら運気が高い日。リズムが崩れるような違和感がある場合は、運気が低い日だというわけです。起きてからの行動を習慣にしていくと、運気の高低を測るための情報を、早く多く感じられるようになっていくそうです。そうなれば予測を立てられるので、あらゆる行動に備えていけるということまた、とくに運気が低いと感じる日は、やりたいこともあえてやらないのが得策だとか。麻雀ならリーチをかけたいと思ってもかけない。日常生活なら、新たなチャレンジをしたくてもしない。そのように、運気が低いことを自覚しながら自制していくということです。何事も、予測できるに越したことはないもの。朝、起きた時点で<日によって変わっていく運>の高低に気づくことができれば、いろいろな事態に備えていけるというわけです。*このように、麻雀が好きな人も、まったく興味がない人も、ともに納得できる内容になっています。運をさらに育てたいという方は、読んでみてはいかがでしょうか?(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※土田浩翔(2016)『「運」を育てる 麻雀界の異端児 土田浩翔の流儀』KADOKAWA
2016年09月27日『100歳の精神科医が見つけた こころの匙加減』(髙橋幸枝著、飛鳥新社)は、数えで100歳になるという精神科医が語る人生訓。といっても、単に「100歳だから」という数字の問題だけではありません。高等女学校卒業後に海軍省のタイピストとして勤務したのち、中国・北京で日本人牧師の秘書として勤務。そうした経緯を経て医学部受験を決意し、勤務医としての経験を積んだあと、1966年に「秦野病院」を開院し、院長に就任したという人物なのです。そのぶん、私たちに学べることが多々あるということ。そしてタイトルにもあるように、人生について考えるうえで著者が重視しているのは「匙(さじ)加減」です。■人生は匙加減を見極めることが大事どんなことにも適度な塩梅、つまり「匙加減」というものが存在すると著者はいいます。それは人生にも当てはめることができるもので、つまりそれらをひとつずつ見極め、把握していくことこそが、「生きる」という営みだというのです。そもそも匙加減とは繊細なもので、そこには難しさがつきまとうことになるそうです。そればかりか、人それぞれ微妙に異なってもくるため、二重に複雑になるということ。だから「匙加減をうまく見極めようと思ってもお手本などはないだけに、誰かを真似ることはできない。けれども、自分の軸が1本しっかり貫かれていたなら、言動も一貫してくるものだ」と著者は主張します。■昔のがん告知はかなり苦労があったところで近年は、日本人の2人に1人が、がんで逝く時代となっています。そうであるだけに、ますます大切になっているのは、がん患者さんへの心のケアです。ましてや著者が若かったころは、治療法がまだ少なかったこともあり、「がん=死」というイメージが強かったといいます。そのためか、「がん告知」はいまよりデリケートな問題だったのだそうです。著者が医師の仲間に聞いた話によれば、昔は「患者さんご本人に、がん告知をしない」のが常識だったというのです。そこで医師は患者さんのご家族と綿密に打ち合わせをして、「いかに本人にがんであることを悟らせないか」、心を砕いていたのだそうです。もちろんいまでは、患者さんご本人にきちんとがんの種類などについて説明し、治療方針を決めることが常識になっています。とはいえそれは、がんの治療法が進歩したことの裏返し。昔とくらべれば「ありがたい」というだけのことです。ただし、いくら「時代が変わって医療が進歩した」と説得されたとしても、「がん」と診断されれば、不安や恐怖を伴う大きなストレスになったとしてもそれは当然のこと。そこで著者が引き合いに出しているのは、知人についてのエピソードです。■がんと仲よく生きれば気持ちも楽!その人は「がんの治療を10年続けてきたけど、大きくもならず、特別変わりないので、薬も治療もやめた」と話してくれたというのです。著者は「私はがん治療が専門ではありませんが」と前置きしたうえで、その知人の気持ちは勇気ある素晴らしいものだと感じたのだそうです。がんに無闇に抗わないことで、がんが静かになるかもしれないということ。事実、その知人は、まさにそんな状態なのでしょう。がんと仲よく生きることも大切ですし、そうすることで患者さんの気持ちも楽になるということです。著者の専門分野である精神科の治療においては、「苦しみをよく聞いてあげること」がなにより大切なのだといいます。たしかにそれは、医学的には正しい態度なのでしょう。しかし、そのことを認めたうえで、著者は実際には「苦しみをよく聞いてあげる」だけでは足りないと指摘してもいます。なぜなら、ひとつひとつ異なる問題すべてを「こういう場合はこうしましょう」というようなマニュアルで解決できるはずがないから。■心の匙加減は百人百様なので難しいそこで、「匙加減」を意識することが大切だというわけです。ご存知の方も多いと思いますが、「匙加減」とは、もともと薬の「分量」を測るときに用いた言葉が転じて、あらゆる場面で使われるようになったもの。細かな配慮や集中力などが求められるということで、だから「心の匙加減ほど、難しいものはない」もの。100歳を超えるいまも、「心は百人百様である」と痛感しているのだそうです。*柔らかな言葉で綴られているものの、そこに深みを感じずにはいられないのは、根底に100歳の人生の重みがあるからなのでしょう。人生に迷ったとき、ふとページを開いてみるといいかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※髙橋幸枝(2016)『100歳の精神科医が見つけた こころの匙加減』飛鳥新社
2016年09月26日『稼ぎたければ、捨てなさい。―起業3年目までに絶対知っておきたい秘密の裏ルール』(船ヶ山哲著、きずな出版)の著者については、その名を聞いたことがあるという人もいらっしゃるかと思います。心理を活用したマーケティング手法により「人脈なし、コネなし、実績なし」の状態から急成長を遂げた起業家。起業後3年にして、上場企業から町の小さな商店まで300社以上のクライアントを獲得したのだといいます。つまり、そんな実績をベースとして、「永続的にビジネスを成功させるための秘密」を明かしたのが本書だということ。■価値にフォーカスすれば失敗しないビジネスとは、「価値と価値の交換」で成り立っているもの。著者は本書で改めて、その点を確認しています。商品という価値をお客様に届け、お金という価値を対価として受け取る。それこそが、ビジネスの本質だということ。だから、もし手元に資産や貯金がないのだとしたら、それはこれまで価値を届けてこなかった証拠だというのです。そして、その価値にさえフォーカスしておけば、大きな間違いを犯すことはないともいいます。なぜなら、「商品=価値=お金」だから。いいかえれば、価値が商品とお金を生み出してくれるということです。■価値の量が最終的な価格に比例するお金儲けが下手な人は、一生懸命やることと、売り上げは比例すると信じているもの。しかし、それが勘違いなのだと著者は指摘します。ビジネスがお客様に価値を届けるものである以上、それは自分のエゴを満たすことではないはず。だからビジネスを行う際には、お客様の価値にフォーカスしなければいけないというのです。そして、そのお客様が期待する結果の大きさや価値の量が、最終的な価格に比例する。すなわち、大きな売り上げを目指すのであれば、労働に頼らない仕組みや考え方を取り入れていく必要があるのだそうです。なお、それを叶えてくれるもののひとつが、著者のいう「秘密」に隠されているのだとか。■話していいor話すべきでないことその真実とは、「『what to(なにをやるか)』は話してもいいが、『how to(どうやってやるか)』は話してはいけない」といことだといいます。さらに、もうひとつ気をつけなければならないポイントがあるといいます。それは、「what toを聞くと、知った気になってしまう」ということ。そうなってしまった人は、自分の能力を過信してしまうというのです。でも、それは仕方がないと。「平均以上効果」という心理が働いてしまうため、自分の能力を過信してしまうのが人間だから。多くの人はなにかを行う際、「自分は最低でも平均以下になることはない」と信じているもの。そして、そのような“錯覚する行為”が自分を過信させ、失敗に導いてしまうというのです。しかし、それはあくまで幻想でしかなく、本当の答えなどそこにはないと著者は指摘します。なぜなら大切なのは手段ではなく、本質だから。しかし多くの人は、そのことに気づいていないというのです。■どうやってやるかを説明しない理由では、販売者はなぜ「how to(どうやってやるか)」をいわないのでしょうか?それは、「目的の違い」なのだそうです。販売者の最終目的は、商品を売ること(how to)です。しかし購入者の目的は、お客様を増やすこと。だとすれば、商品の先にある結果がそもそも違うのですから、成果が出なくても当然。だからこそ、本気で成功を望むのであれば、その目的の違いに気づき、これらの手法を知ることが大切だと著者はいうのです。ビジネスですから、目的の違いがあるのは仕方がないこと。たとえば、デパ地下で試食を延々と続ける人はいないでしょう。試食はあくまでお試しであって、信用を得るための手段にすぎないからです。大切なのは、目の前に来た情報をチャンスと捉えるのではなく、お互いの目的の違いに気づくことだといいます。なぜなら現代のビジネスは昔と違い、「仕組み」が成否を分けるから。■仕組みの裏側に潜む本質を知るべしいい商品さえつくれば売れるという過去の時代とは違い、現代では「いわれたことしかできない人=使えない」ということになります。いわれたことだけをきちんとやっていても、勝てる時代ではないということ。逆にいえば、いまは個人であっても、気軽に仕組みを構築できてしまう時代であるわけです。そこで、目先のものだけにフォーカスするのではなく、裏側に潜む本質を知ることが重要。それを知ることで、販売者の真意や本当の目的を知ることができるのだと著者は主張します。*著者の言葉はときにシリアスですが、だからこそ訴えかけるものがあるのも事実。稼ぎたいという思いを持っているのなら、その糸口をつかむためにも読んでみて損はないかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※船ヶ山哲(2016)『稼ぎたければ、捨てなさい。―起業3年目までに絶対知っておきたい秘密の裏ルール』きずな出版
2016年09月24日仕事をしているなかで、「自分なりの意見」や「自分らしさ」「自分にしかできないこと」にこだわっていませんか?実はそれは、自分を苦しめる原因かもしれません。今回ご紹介する『自分を捨てる仕事術』(石井朋彦著、WAVE出版)の著者は、現在アニメーションのプロデューサーとして第一線で活躍する人物。21歳のときスタジオジブリに入社し、鈴木敏夫氏のもとでプロデューサー補をつとめていました。鈴木氏といえば、スタジオジブリでいくつもの映画をヒットさせた名プロデューサーです。鈴木氏は著者に対し、繰り返し「自分を捨てろ」と言ったそう。自分を捨ててひたすら他人の真似をすることで、人生における学びがあり、仕事を楽しむこともできるといいます。そして、どうしても真似できないと思うところが、その人の個性になるのです。きょうは本書の中から、著者が鈴木氏から教わった実践的な仕事メソッドをピックアップしました。■1:人に伝える文章はテーマを明確にする文章を書くときは、「何が言いたいのか」というテーマを明確にする必要があるといいます。これは当たり前のように感じるかもしれませんが、鈴木氏の手法は具体的です。まず今自分が考えていることや言いたいことを紙に書き出します。その後で並べた要素を客観的に見直し、その要素のなかでひとまとまりにできるものをまとめていきます。一番要素が多かったものが自分の一番言いたいことでありテーマということ。そのため、テーマ以外のものは思い切って外してしまいます。そして、文章は「当たり前のまとめ」をしないこと。たとえば『天空の城ラピュタ』を「夢と冒険の物語」と書いたら、どんな映画にも当てはまるものになってしまいます。ところが、「バスーとシータは、天空に浮かぶ城・ラピュタへ向かった」としたら、読む人が想像を膨らませることができるでしょう。そして、結果として『夢と冒険の物語』であるということは伝えられるのです。人に伝える文章にするためには、とにかく具体的に、そして固有の表現や言葉を積み重ねることが大切です。■2:スケジュールには余白をつくる著者は鈴木氏のスケジュール管理を任されていました。先方から鈴木氏へのアポ依頼があったときは、複数のスケジュールを出さず、都合のいい時間を1カ所だけ指定していたそう。それによって自分の思い通りにスケジュールを組むことができるのです。これは鈴木氏だからできることだという見方もありますが、極力自分の都合で予定を出した方が先方も対応しやすくなるといえるでしょう。著者自身も現在この方法を実践しているといいます。また、予定を立てるときには必ず「余白」を作っているそう。毎朝業務が始まるまでの1時間のほか、月曜の午後と水曜の午後に2時間ほどスケジュール表に「空けておく」と書いて予定を入れないようにします。月曜はその週にやるべき仕事について考え、水曜は煩雑になった思考を整理するために充てているといいます。じっくりと考える時間を作ることで対策を練ったり、問題を解決することができるのです。忙しいというのは仕事の量というより、精神的にキャパオーバーになっている状態。毎朝課題を種類別に分けて、あまり時間のかからないことならどんどん片付けていくと、頭の中にも余白が生まれます。それによって集中して考えたり、正しい判断を行ったりすることができるのです。■3:話すときは全体像を明確に伝える鈴木氏の話は、ものすごく論理的でも独創的な発想を語るわけでもないのに、その場にいる人を引き込む魅力があるといいます。鈴木氏は話の前に必ず「大きく3つあります」と言います。これによって聞く人がこの話はどれくらいの分量なのかと理解できます。全体像がわからないで聞いていると人はイライラしてしまうのです。事前に話すことをまとめておくのはいいことですが、丸暗記はNG。丸暗記をするとひとつ忘れた時にその後を完全に見失ってしまいます。8割くらい覚えたらなんとなく頭の上に小分けした記憶を放り投げておくというのが鈴木氏流。相手の反応を見て次に話すことを考えればいいのです。忘れてしまうことはむしろその場では必要なかったものです。また、本題に入る前には必ず場をあたためるために話す雑談「枕」が必要。枕が仕事の話につながったり、言いにくい話でもいい反応を得られたりすることもあります。打ち合わせなどがあるときは、事前にいくつかネタを考えておくとよいでしょう。*本書には著者が記録した鈴木氏の言葉がふんだんに盛り込まれています。そのなかのひとつに、「自分のモチベーションとか、成功とか、自己実現とか、そういうものにこだわりすぎる人は、どんどん心が狭くなる」という言葉があります。自分を捨てて、誰かのために仕事をすることで今までとは違う世界が見えてくるかもしれません。(文/平野鞠) 【参考】※石井朋彦(2016)『自分を捨てる仕事術』WAVE出版
2016年09月23日『「不思議な会社」に不思議なんてない』(荒木恭司著、あさ出版)の著者は、島根県松江市に本社を構える島根電工株式会社の代表取締役社長。営業エリアである山陰は、は所得・人口ともに最下位。しかも業種は、不況型産業の建設業。にもかかわらず同社は躍進を続けており、業界活性化を目的としてフランチャイズを全国展開しているのだそうです。根底にあるのは、徹底した社員教育。その結果、ひたすら「お客さまのために」と自発的に考えて行動(考動)する社員と、彼らの姿勢に共感するお客さまとの間でコミュニケーションが好循環しているのだといいます。つまり本書は、パナソニック、東芝などナショナルカンパニーからも注目されている同社の姿勢を明らかにしたもの。■コンセント1個から小口の工事を受注島根電工グループは2001年から、一般向けに「住まいのおたすけ隊」という取り組みを展開しているそうです。コンセント1個から、小口の工事を引き受けるというサービス。2006年からは島根県と鳥取県の一部限定でテレビCMを流しはじめ、その認知度が高まったことから、受注は年々うなぎのぼりなのだとか。注目すべきは、驚くべきその実績です。■7割が5万円以下なのに年間70億円小口工事件数の7割が5万円以下の受注であるにもかかわらず、現在では小口工事と、お客さまにとってプラスになる「ご提案工事」だけで年間70億円を超え、グループ全体の総売上155億円の45%を占めるまでになっているというのです。多くは個人宅の工事であるわけですから、一般家庭からのニーズがいかに多いかがわかるはず。つまり同社は、なかなか注目されにくいそのニーズをキャッチしたからこそ成功できたのでしょう。一般家庭から請け負う工事であれば、中間業者が入らないため、確実に利益が上がることになります。しかも、最初はコンセント1個の小口工事で訪問したとしても、結果的に「ついでにこれもお願いしよう」「今度リフォームするときはお宅に頼むわね」「よくしていただいたから、お客さんを紹介するわ」というように、派生的に仕事が増えていくメリットもあるといいます。■スタッフは常に最高の顧客満足を追求ただし、そうなるためには、お客様から「次も頼もう」と思ってもらえるサービスを提供しなければなりません。そこで「住まいのおたすけ隊」のスタッフは、常に最高の顧客満足を追求しているのだとか。「お客さまのために、お客さまが幸せになってもらうために、お客さまが本当に欲しがるものを、お客さまが気づく前に提案する。そこに感動が生まれる」そう考えることが、「おたすけ隊」のアイデンティティなのだといいます。■高品質なサービスでリピート率90%「おたすけ隊」はリピート率90%を誇っているのだそうです。一度依頼をしたお客さまは、90%の確率でまた仕事を依頼するということなのですから、これは驚くべき数値だといえます。なぜ、そんなに高いリピート率が維持できるのかといえば、前述したとおり、お客さまの期待を超えるサービスを提供しているから。お客さまが困っていたら、すぐさま飛んでいって対応。ときにはお題を受け取らないこともあるといいますが、そうした親身の対応に感動してもらえることがリピートにつながっているわけです。■些細なマナーでお客様の信用が変わるそして、高いリピート率を支えるもうひとつの要因が、社員に対するマナー研修の徹底。お客さまと直接接するのは現場の社員だからこそ、その印象で島根電工に対するイメージも大きく変わることになります。そして一般家庭向けの仕事では、そうしたことがとても大切だというのです。それは、靴の脱ぎ方と揃え方だったり、座布団を出されたときの座り方だったり、さまざま。しかし、そんな些細なことでも、お客さまの信用はまったく違ってしまうというのです。■社員みんな相手の目を見て明るく挨拶同じく、あいさつの仕方も重要。具体的にいうと、島根電工グループでは「まいどー、こんちは!」ではなく、相手の目を見て、「こんにちは」「おはようございます」といってから頭を下げるように教育しているのだそうです。そうすればお客さまは、「若いのになかなかしっかりしている」「真面目そうだ」「これなら工事をしっかりやってくれそうだ」などと感じるわけです。照明器具をちゃんとつけたり、コンセントをまっすぐに取りつけたりすることは、どの工事業者でもできること。でも、さわやかに挨拶できる、お行儀のいい若者が来たら、そちらに頼みたくなるのは当然だということです。*こうしたエピソードからは、驚異的な実績を裏づけているものは「人の力」だということがわかるはず。山陰が叩き出した小さな会社の大きな数字には、企業経営についての大きなヒントが隠されているといえそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※荒木恭司(2016)『「不思議な会社」に不思議なんてない』あさ出版
2016年09月22日『小さな野心を燃料にして、人生を最高傑作にする方法』(はあちゅう&村上萌著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、日本最大規模のオンラインサロン『ちゅうもえサロン』を主宰するブロガー・作家のはあちゅうさん、NEXTWEEKEND代表・ライフスタイルプロデューサーの村上萌さんによる共著。いうまでもなく両者ともまったく違う仕事をしているわけですが、そんななか、ひとつだけ共通していることがあるのだそうです。それは、「一度夢をあきらめている」ということ。つまりここでは、そのような共通点とそれぞれの視点に基づき、自分らしい人生の創り方、仕事、恋愛、暮らしへの考え方、小さな野心を叶え続けるための方法などについての考え方を記しているわけです。きょうはPART 4「小さな野心を叶え続ける私たちのマイルール」のなかから、時間についての考え方を引き出してみましょう。■1週間の最初に予定を見なおすはあちゅうさんが運営しているサイト『ちゅうもえサロン』では、毎週自分の「来週の予定」を投稿するようにしているのだそうです。最初にするのは、毎週日曜日に翌日からの1週間の予定を見て「今週はこんな週だな」「こういう予定があるな」ということを頭のなかで把握すること。そのうえでしっかり時間配分をし、効率的に動くことや、バランスよく予定を入れることを心がけるというのです。そして週末には、「今週はインプットが多い週だったな」「人前に出ることが多かったな」など、どんな週だったかを振り返っているのだといいます。■朝の時間を自分のものにする!萌さんはもともと、朝起きるのがとても苦手だったのだとか。そこで以前は、翌朝のために食べたいものを用意し、おいしいもので自分を釣って起きる作戦をとっていたのだといいます。しかしいまでは、朝の時間、朝ごはんをとても大切にしているのだとか。そんな著者は、「一年の計は元旦にあり」という以前に、「1日の計は朝にある」と考えているそうです。なぜなら、朝のプチリセットの時間をどう過ごせるかによって、「きょうも頑張ろう」と思えるかどうかが変わってくるから。■一石二鳥のながら時間を増やす「同じ時間を何倍にも濃く使いたい」という思いから、はあちゅうさんは“一石二鳥のながら時間”をたくさんつくるようにしているといいます。たとえばドライヤーで髪の毛を乾かしながらアマゾンビデオで映画を見たり、お掃除をしながら音楽を聴いたり。また、そのように趣味の時間にあてるだけではなく、「インプットの時間が少ない」と感じるときは、ポッドキャストやラジオなどメディアをフル活用し、移動時間や家事をしているとき、メイク中に情報収集をするのだとか。■どんなに短い時間でも集中する萌さんは旦那さんの仕事が特殊で、朝ごはんを食べて見送ったら、13時には帰ってきて昼ごはんを食べ、18時半くらいには夜ごはん、23時には消灯というスケジュールで動いているのだそうです。そのため、時間の密度を濃くし、深く集中することが重要になってくるのだといいます。そこでまず、「朝のうちにやらなければいけないこと」と、「やれたらやりたいこと」をすべて付箋に書き出し、パソコンに貼るのだとか。それらを次々と片づけていき、「やれたらやりたいこと」が終わらなかったら翌日に繰り越すというのです。ちなみに好きなのは、やることが終了した付箋を毎回捨てず、机の上にためて行って一気に捨てることだとか。些細なことではありますが、たしかにストレス解消にはなりそうです。■1日の予定にメリハリをつけるはあちゅうさんは、打ち合わせやプレゼンなどの「人に会う予定」は、できるだけ同じ日に集約させ、「喋る」モードの自分で挑むのだといいます。そして逆にデスクワークがメインの日は、1日中作業に集中できるようにする。つまり、意識的に予定にメリハリをつけるようにしているということ。「人と会う」と決めた日は朝から人としゃべる予定をどんどん入れておくと、舌や脳が「しゃべる」モードになり、その日1日なめらかに話せるような気がするというのです。また自身の1か月を俯瞰してみても、人にたくさん会う「開いてる」モードのときと、少し自宅作業の多い「閉じてる」モードのときが自然に交互になっているのだといいます。自分のリズムを保つために、このメリハリが自分に必要なのだと実感するそうです。*決して難しいことが書かれているわけではなく、両社がそれぞれのスタンスから、思うこと、してきたことを紹介するという体裁。だから肩の力を抜き、リラックスしながら読むことができるでしょう。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※はあちゅう&村上萌(2016)『小さな野心を燃料にして、人生を最高傑作にする方法』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年09月22日人間は24時間、絶えずなんらかの仕事をしていて、なにもしていないときでさえ「なにもしていない」という作業をしているもの。だからこそ、脳と身体に備わっているスケジュールを知り、そこに自分のスケジュールを噛みあわせることが大切。そうすれば仕事でもプライベートでも、やりたいことにしっかりと力を注ぐことができるようになる。そう主張するのは、『脳にいい24時間の使い方』(菅原洋平著、フォレスト出版)の著者です。「作業療法士」と呼ばれるリハビリテーションの専門家として、脳と体の力を最大限に引き出し、ひとつひとつの作業を充実して行えるようにサポートしているのだそうです。また、クリニックでの臨床や、全国規模の企業研修も行っているのだとか。■人間が持つ「2つの基本的な原理」で治療そんな著者は、患者さんの能力を引き出すために、人間が持つ「2つの基本的な原理」に従って治療をするのだといいます。ひとつ目は、人間は同じ作業でも、より能力が発揮される時間帯に行ったほうが上達が早いということ。2つ目は、すべての作業を行う際に、脳と体にとって最適な時間帯があるということ。なお、この科学的根拠をもとにして、ビジネスパーソンが生産性の高い仕事をするためにやることはいたってシンプル。まず、脳には「この時間帯に、この仕事をすれば、質もスピードも上がる」という時間の使い方があるということを知ったうえで、仕事のスケジュールを組む。そのために、脳と体が正常にリズムを刻むための「コンディションを整える習慣」を生活のなかに持つ。それが大切だというのです。つまり本書では、“無理”“ムダ”“根性論”なしでこれらを実践できる方法を紹介しているのです。■脳は「1日に2回」働かない時間帯がある生体リズムには「睡眠—覚醒」リズムがあり、私たちの脳は1日に2回働かなくなる時間帯があるのだそうです。それは、起床から8時間後と22時間後。最初の「起床8時間後」は、午後の時間帯にあたります。昼食後は眠くなるものですが、生体リズムの研究では、たとえ昼食を摂っていなくても、あるいは少量の食事を2時間おきに摂り続けるという条件でも、起床8時間後には眠くなることが明らかになっているというのです。そして2回目の眠気は、普段の起床時間の2時間前であり、多くの人にとって明け方にあたる時間。どうしても眠れなくても、明け方にはウトウト眠っていたという体験をしたことがある人も多いはずですが、それはこういう理由があるからだというのです。■「深部体温」もパフォーマンスに影響するさらに、内臓の温度である「深部体温」の影響も。人間は深部体温が上がるほど元気にハイパフォーマンスになり、下がるほど眠くなるといいます。なお深部体温が最高になるのは、起床から11時間前後。6時に起床していたら夕方の17時がいちばん体が元気に働く時間帯であり、この時間帯には眠気が起こらないということ。これらの組み合わせにより、私たちは「午前」に冴えて「午後」に眠くなり、「夕方」に元気になって、「眠る前」に眠くなるというリズムになるわけです。■「4・6・11の法則」で脳は鍛えられるつまり人間の理想的なリズムは、午前に頭を使い、午後に短い睡眠をとり、夕方に体を使うと、夜には質の高い睡眠が取れるということ。著者はこれを、起床から4時間以内に光を見て、6時間後に目を閉じ、11時間後に姿勢をよくする「4・6・11睡眠の法則」として、さまざまな現場での安全な業務と生産性の向上に活用しているのだそうです。生体リズムには、ひとつのリズムが整うと、それが基準となって他のリズムが同調する仕組みがあるのだといいます。ですから、4・6・11の時間、すべてのことを実行する必要はないのだとか。■もっともやりやすいことだけを実行すべしそこで、どれかひとつ、もっともやりやすいことだけを実行してみることを著者は勧めています。たとえば夕方に運動したり、帰りの電車で一駅前で降りて歩いたり、体温を上げることをすると、自然に朝、目覚めやすくなるというのです。また、朝は目覚めたら窓から1メートル以内に入るようにすれば、昼間はいつも眠かったとしても、やがて理想的な就寝時間に眠くなるようになっていくそうです。たったひとつのリズムが基準となって、他のリズムが同調していくということ。なお、生体リズムを整えるときには、まず4日続けてみることが大切だと著者はいいます。*医療現場や企業研修で実証されたことだということもあり、強い説得力が本書にはあります。仕事のパフォーマンスを向上させたい人は、読んでみるといいかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※菅原洋平(2016)『脳にいい24時間の使い方』フォレスト出版
2016年09月22日『新版小さな会社★儲けのルール』(竹田陽一・栢野克己著、フォレスト出版)は、2002年以来のロングセラーを30ページ以上増補し、内容当時の成功事例を最新版にしたリニューアル版。おもに中小企業を対象としたものではありますが、将来的に独立起業する人などにも適しており、活用範囲の広い内容だといえます。基盤となっているのは、「ランチェスター法則」。「戦略」と「戦術」の違いを知ったうえで商品・客層・エリアを絞り、小さい部分で1位をつくり、シェアを徐々に拡大していくという考え方です。それは、中小・零細企業が生き残るために重要なメソッドだといいます。別な表現を用いるならばそれは、「大企業に競合しない戦略・戦術を打ち立てることで、顧客に忘れられないような戦術を行っていくという『勝つための法則』だということにもなります。事実、現在までに5,000社以上が実践しており、そのなかには創業期のソフトバンクやセブンイレブン、旅行業者のH.I.Sなども含まれるのだそうです。そんな本書のなかから、スタート時点で知っておきたい基本的な考え方を確認してみましょう。■日本にいる大人の14人に1人は社長大企業に就職し、部長や支店長、取締役などになるのは、たしかに楽なことではありません。実力に加え、派閥や上司に対する処世術なども必要になるため、長く辛抱する必要があるからです。しかし現実的に、「社長」になるのは簡単なこと。その証拠に日本には法人企業が200万社近くあり、個人事業主も同程度いるそうです。つまり企業と個人商店を合わせると、約400万人の社長が存在するのです。日本の労働人口は約5,400万人なので、大人の14人に1人は社長だということになります。■独立後10年続くのはたった2割だけしかし問題は、「続ける」ことの難しさ。2011年の「中小企業白書」によると、独立して1年で約4割が廃業し、10年間同じ会社を経営している人は2割弱しかいないのだとか。つまり、独立した人の大半は失敗しているということです。また別のデータによれば、3年以内に取扱商品や業種が8割以上変わっているのだそうです。コピー機の販売をしていた会社の扱い商品が、2年後には健康食品に変わっていたりすることは、決して珍しくないわけです。いってみればそれほど、独立・開業は思うようにいかないということ。■倒産は「富の再循環」システムである著者は東京商工リサーチという企業調査会社に16年間勤め、約3,500社を実際に取材、調査してきた実績を持っているといいます。また、それとは別に約1,600社の「倒産した企業」も取材してきたのだとか。倒産取材を1,600件も行うことは精神的にもつらいでしょうが、その過程において、ある意味では倒産・廃業も当たり前なのだと気づいたのだそうです。人と同じように、法人もいつかは死ぬということ。もちろんそれは、当事者にとっては大事件。しかし、会社の倒産後に従業員型の企業へ転職し、お客様も他の会社へ流れていくと考えると、それは単なる「富の再循環」であるというのです。■成功も失敗もその理由の90%は同じまた著者はおよそ1000社から個別の経営相談を受けているそうですが、そのなかでわかったことがあるといいます。成功も失敗も、その理由の約90%は共通しているということ。いまも昔も、経営の3分の2は江戸時代から変わらないルールに基づいたもの。3分の1は時代とともに変わるものの、根本の経営原則あるいは経営戦略は変わらないというのです。だから、「この基本さえ知っていれば倒産することもなかったのに」「この原則さえ守れば、もっと成功したのに」と、失敗事例を目の当たりにするにつけ、著者自身も悔しさを感じるのだそうです。しかし、だとすれば、その原則を先に学んでおくことによって、不必要な倒産を避けることは可能だということにもなるはず。そこで本書では、そのメソッドを開設しているのです。■情報の9割はビジネスに適用できない大学生は3年生くらいから就職活動をはじめますが、こんな時代であっても、依然として変わらないのが「大企業志向」。優秀な大学になればなるほど、いまだに「どれだけ大企業・上場会社に就職したか」が競われるわけです。そもそも、多くの人の価値観に影響を与えるマスコミ自体が大企業。その情報やCMを集める記者や営業マンも、大企業志向で入社した人たち。そして大企業のCMが集まらないと、マスコミ自体が成り立たないような仕組みができあがってしまっている。そのため大企業のマスコミからは、中小企業にとって本当に価値のある情報は流れてこないわけです。いってみれば世の中で紹介されている情報の9割は大企業のためのもの。大企業経営者でない人は、それを自身のビジネスに活用しようとしてもムダ。そこで、自分に役立つ情報は、自分で集めなくてはならないということです。当たり前のことじゃないかと思われるかもしれませんが、実のところこれはとても大切なポイントではないでしょうか?*このような、「大切なのに、なかなか気づきにくいこと」を再確認したうえで、本書では「小さな会社の成功法」が緻密に解説されていきます。成功事例も豊富に収録されているため、その要点を無理なく理解できるでしょう。中小企業経営者や起業を目指す人、ひいては未来を見据えて経営を真剣に考えている人、あるいは「社会で会社が成り立っていく仕組み」を理解したい人にとっても、必読の書といえそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※竹田陽一・栢野克己(2016)『新版小さな会社★儲けのルール』フォレスト出版
2016年09月22日毎日のように「今日の夕飯は何にしよう?」と頭を悩ませていませんか。献立作成サイト『me:new』が全国の20代~40代の主婦を対象に行った調査によると、働く主婦の料理に関する悩みの第1位は「献立を考えるのが面倒(63.8%)」、第2位は「毎日、何を作るか迷う(62.4%)」という結果になりました。『「めんどくさい」がなくなる台所』(足立洋子著、SBクリエイティブ)はそんな悩みを解消する方法がたっぷりつまっています。著者は「台所仕事は、頭が7割」だといいます。どうしたらもっとラクになるかと考えることで、実際に手を動かすことは3割にまで減らせるそう。今回は本書の中から特にお悩みの多い、献立の「めんどくさい」がなくなるコツをご紹介します。■1:翌日のメイン食材をトレイの上に準備しておく夕食の準備に取り掛かるタイミングになっても献立が決まらず、悩んでしまうことはありませんか。そんな人におすすめなのが、前の晩に翌日のメイン食材だけを決めてしまうこと。夕食の片付けが終わった時や寝る前などに、トレイの上にメイン食材になりそうな肉や魚をのせて冷蔵庫に入れておきます。これならあとは「どう料理するか」を決めるだけ。冷凍食材なら次の日の夕方には解凍されているので調理がスムーズにできるでしょう。メインの食材さえ決まっていれば、買い出しに行っても悩まずにすみます。■2:メイン料理に揚げ物を取り入れる「油の処理が面倒」「キッチンが汚れる」などの理由で揚げ物を敬遠している人は多いもの。しかし、揚げ物を取り入れることで献立はもっとラクになります。揚げ物をする都度、油を捨てる必要はありません。揚げ終わった油は熱いうちにオイルポットに移せばOK。油が熱いうちにこすことで、細かい不純物も取り除くことができます。キッチンペーパーを重ねてこすとさらによいでしょう。消費者協会の調査でも、何度か使った油でも酸化しないことが明らかになっています。揚げ物に慣れていない人はまず、衣をつけないか小麦粉を薄くまぶしただけの「素揚げ」からチャレンジしてみましょう。■3:献立を考えたくない日用のメニューを用意しておくどうしても献立を考えたくないという日は誰にでもあるもの。そんな日のための献立をあらかじめいくつか決めておきましょう。著者は「どんぶりもの」「焼きそば」「スパゲッティ」「煮込みうどん」を考えたくない日の献立にしているそう。お刺身丼のようなご飯の上に乗せるだけのものなら美味しくて手間もかかりません。麺類も手早くできる上、家族も喜ぶメニュー。「品数をたくさん作らなきゃ」と考えると憂鬱な気分になってしまうので、自分の得意なもの、好きなもの、家族の喜ぶもの、ラクなものと気持ちを切り替えてみてください。■4:常備菜は作りすぎない常備菜や作り置きが流行っていますが、あまりたくさん作りすぎると食べ切るのが大変になることがあります。煮物などは美味しく食べられるのは3日間程度。とはいえ3日間連続で同じものを食べるのは飽きてしまいますし、もったいないからといって味が落ちてしまったものを食べ続けるのも悲しくなってしまいます。面倒くさがり屋の人ほど、実は作ってすぐ食べる方が向いているのです。■5:一汁三菜はワンプレートでOK一汁三菜というと、ご飯に味噌汁、焼き魚、煮物、酢の物・・・などというイメージを持つ人が多いでしょう。しかし、毎回こんな献立を考えるのは難しいですよね。一汁三菜とは栄養バランスをとるためのものであり、それさえ満たされれば内容は気にしなくてもいいのです。おすすめは「ワンプレート」。例えば献立のメインが豚の生姜焼きなら、千切りのキャベツを添えるのが定番ですよね。これでもう「二菜」になります。切ったトマトをプラスすれば「三菜」の出来上がり。これにご飯と味噌汁をつければ立派な一汁三菜になります。ハンバーグに炒めたほうれん草とプチトマトを添えて、ご飯とコーンスープを組み合わせるのでも十分です。またワンプレートでなくても、親子丼と味噌汁でも肉・野菜・ご飯が一通り揃っていますし、ご飯と豚汁という2品だけの献立でも肉・野菜・大豆製品・ご飯をすべて摂ることができます。一汁三菜の固定概念にとらわれることなく、栄養バランスがとれればOKと広くとらえましょう。*「ちゃんとやらなきゃ!」と考えすぎないことも大切なポイントだということがわかりました。本書では献立以外にも買い物や冷蔵庫の整理、片付け、収納などあらゆる家事をラクにするコツが紹介されています。何がめんどくさいのかを明確にしていくことで、自分なりのアイデアも見つけられるでしょう。(文/平野鞠) 【参考】※足立洋子(2016)『「めんどくさい」がなくなる台所』SBクリエイティブ※料理に関するアンケート調査-株式会社ミーニュー
2016年09月20日突然ですが、みなさんは毎月の給料が10万円アップしたら何をしたいですか?「旅行に行きたい」「趣味に使いたい」「しっかり貯金をしたい」など、考えただけでワクワクしますよね。とはいえ、給料を10万円上げるのは至難の技。そこで最近は本業以外の副業で稼ごうという人が増えています。MMD研究所が行った調査では、副業をしているビジネスパーソンは14.0%にのぼることがわかりました。そのうち49.4%は、インターネットを使って副業をしているそうです。今回ご紹介する『月10万円ラクに稼げる 「スマホせどり」入門』(斉藤啓太著、日本実業出版社)ではインターネットの中でも、特にスマホを使って副収入を稼ぐための方法が紹介されています。著者の手法を使えば月10万円の収入も夢ではないといいます。さっそく、気になる内容をピックアップしてみました。■せどりは江戸時代から行われている商売「せどり」とは古書店で安く買った本を他の古書店で売り、その差額を利益にするというもの。簡単にいうと「転売」ですが、これは江戸時代から行われている商売なのです。同じものでも販売店によって価格差があるため、安く仕入れて高く売ることができればその分利益を得ることができます。儲けるためには、相場より安くなっている商品を探すことが基本です。現在では本に限らずゲームや家電、フィギュア、おもちゃなど様々な商品でせどりが行われています。■手軽なスマホせどりは初心者向きの副業せどりと一言でいっても、実店舗で仕入れる「店舗せどり」や、ネットショップで仕入れる「ネットせどり」など色々な方法があります。著者が今一番稼ぎやすいというのが「スマホせどり」。これはフリマアプリの「メルカリ」や「ラクマ」で商品を仕入れてAmazonで販売するというもの。著者はこの方法で月100万円以上の利益を出しているそう!まだ実践している人が少なく、スマホ1台で手軽にできるので初心者にもおすすめです。せどりで扱う商品は、あれもこれもと手を出さず1つのジャンルに絞りましょう。それによって相場がわかるようになり、商品の知識も身につきます。1つのジャンルで稼げるようになると、他のジャンルでも稼ぎやすくなるでしょう。■メルカリ売買で実際に稼げた3つの事例「スマホせどり」ではメルカリは仕入れに使いますが、メルカリの仕組みを知るために自分の不用品を出品してみるとよいでしょう。「こんなものでも売れるの?」と思うような商品でも売れてしまうことがあります。たとえば画面の割れたiPhoneや、道に落ちていそうなドングリなどでも買い手がいるのです。また、メルカリの特徴のひとつにコメントのやりとりや値下げ交渉があります。多少面倒に感じるかもしれませんが、これらを通じて商品の適正価格がわかってくるでしょう。(1)ゲーム機ゲーム機は古い機種でも欲しい人が多いので狙い目。著者は4年前に発売されたPSPというゲーム機を当時の定価よりも1万円以上高く売ることができたそうです。このようにAmazonで定価よりも高くなっているものはプレミア商品となります。今は懐かしいスーパーファミコンもAmazonでは3万円以上で売られていますが、メルカリでは1万円代で購入できることもあるといいます。プレミア化しやすい商品は、このように生産が終了しているものや生産数が限定されているもの、初回限定版など。売るなら最新機種のものと考えがちですが、古いものでも需要があるので要チェックです。(2)家電著者はメルカリで1300円で購入したデジタルフォトフレームをAmazonで5倍以上の価格で販売できたそう。ギフトでもらうことの多い商品はメルカリで新品を格安で販売しているケースがあるので狙い目です。儲かる家電商品は中古でもたくさんあります。安い価格で入手することができるので、利益につながりやすいでしょう。ただし、中古で購入した家電はAmazonで出品する前にきちんと動くかどうか動作確認が必要。また一通りクリーニングを行うことで購入者からのクレームを減らすことができます。家電ジャンルは儲かる商品が多数ある一方、まったく需要のない商品もあります。先入観を捨てて、売れる商品をしっかりとリサーチすることを心がけましょう。(3)カメラ・レンズカメラのレンズはどのメーカーのものでも人気があり、著者はSONYのレンズで9000円以上儲かったことがあるそうです。自分が使うために購入して、不要になったらAmazonで売るというのも一つの手です。*本書では効率的な仕入れの方法や、買い手をつけるための売り方などのテクニックが多数紹介されています。メルカリで仕入れてAmazonで売るというシンプルな方法で副収入を得られるなら、チャレンジしない手はありません!(文/平野鞠) 【参考】※斉藤啓太(2016)『月10万円ラクに稼げる 「スマホせどり」入門』日本実業出版社※ビジネスパーソンの副業に関する実態調査-MMD研究所
2016年09月20日「覆面調査員(ミステリーショッパー)」とは、お店のサービスを総合的に評価する役割の人。一般客を装ってお店を利用し、数多くのチェックリストにもとづいてお店の清潔度、接客態度、商品やサービスの質、雰囲気などを評価し、最終的な結果を各店舗にフィードバックするわけです。そしてタイトルからもわかるとおり、『日本一の覆面調査員(ミステリーショッパー)が明かす100点接客術』(本多正克著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は覆面調査の第一人者。飲食店、小売店、サービス会社などから幅広く依頼を受けており、「調査したことのない業界はない」といえるほどだといいます。つまり本書ではそうした実績を軸として、「感じがいい」といわれる接客術を紹介しているのです。■評価は働いている年数に比例しない著者は本書で、あるスーパーで覆面調査を行ったときのことを明かしています。そのお店で働いている人は、正社員はもちろん、アルバイト歴数十年の方、はじめたばかりの高校生までさまざま。しかし何度か調査を行っているうち、おもしろいことに気づいたというのです。それは、お客様からの評価が、働いている年数に比例しないということ。経験が浅くても評価の高い人もいれば、長年やっていても評価の低い人もいたということです。■たった15度のおじぎで差が出る!もちろん仕事についていえば、長年やっている人のほうが高いレベルのことができるでしょう。とはいえお客様の満足度は、長年やっているからといって必ずしも高いとは限りません。たとえばお客様は、働きはじめてまだ5カ月の高校生アルバイトに高い評価を与え、7年もやっているベテランに低い評価を与えたそうなのです。なぜ、そのようなことになったのでしょうか?著者によれば、それは「たった15度のおじぎの差」。アルバイト5カ月目のスタッフは、レジでひとりひとりのお客様に「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」といいながら、ていねいにあいさつとおじぎをしていたのだといいます。まだ5カ月目で、自分は未熟な点が多いと自覚していたために、一生懸命だったのだろうと著者は分析しています。一方、経験の長いスタッフは、お客様と目を合わせることなく、あいさつも頭だけペコリと下げる程度だったのだとか。■お客様は頭の下げ方にも敏感であるお客様のなかには、だらだらと作業されるのを嫌う方もいらっしゃるもの。しかし、単にスピードが速ければいいということでもないはず。あいさつもなく、商品を乱暴に入れられたのでは、やはりいい気持ちはしないからです。つまり、頭だけペコリと下げる人と、ていねいに頭を下げる人なら、後者のほうがよい印象を与えるのは明らか。お客様は、頭の下げ方をも敏感に感じ取っているもの。だからこそ、たった15度のおじぎの差は、想像以上に大きいということです。■もう15度だけおじぎを深くすべしそこで著者は読者に対し、「自分の仕事を振り返ってみて、なんとなくあいさつをしていませんか?」と問いかけています。いうまでもなく、もし「とりあえずのあいさつ」になっていたり、あるいは頭を下げずに声だけであいさつをしたり、逆に、頭だけをペコリと下げるだけだったりするのであれば、とても損をしているということになります。だからもう15度だけ、おじぎを深くしてみることが大切だというのです。なお別の側面から見てみても、あいさつというのは、「自分ではやっているつもり」というケースがよく見られるのだそうです。たとえばあるレストランで著者が接客教育を行っていたとき、ひとりの若い男性スタッフが、ほとんどおじぎをしていないことに気づいたのだそうです。ところが、そのことを指摘しても、本人にはまったく自覚がなかったというのです。そこで仕事の様子をビデオで撮影し、本人に見てもらったところ、自分ではおじぎをしているつもりだった彼は、自分の仕事の様子を見てとても驚いていたとか。そして自分の姿を客観的に見ることで、ようやく自分のおじぎの仕方がよくなかったことを自覚し、「もう15度深く頭を下げるように」という言葉の意味を理解してくれたのだといいます。■おじぎをセルフチェックしてみようそんな経験があるからこそ、普段の仕事の様子を客観的に見てみることが重要だと著者は主張します。方法は簡単。スマートフォンなどで動画を撮ってもらい、それをチェックすれば、普段どのようなおじぎをしているかを客観的に見ることができるわけです。「たった15度の差」だと思うかもしれませんが、その差が満足度の大きな差として表れてくるもの。著者はそう断言します。ちょっとしたおじぎの違いでそこまで印象が変わってしまうのですから、意識して取り組むべきかもしれません。*ミステリーショッパーとしての自身の経験をベースとしているだけに、本書での著者の接客に対する考え方には強い説得力があります。人と接する仕事についている人は、目を通してみるべきだと思います。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※本多正克(2016)『日本一の覆面調査員(ミステリーショッパー)が明かす100点接客術』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年09月19日『あなたの魅力を爆発させる方法』(文響社)の著者・山田マキ氏のなかには以前から、「魅力がほしい」「人に愛されたい」「幸せを手に入れたい」という思いが強くあったのだそうです。そこで30代になったとき、服装、メイク、ネイル、仕草、資格や習いごとなど、さまざまなものに手を出して努力をしたものの、状況はまったく変わらなかったのだとか。それもそのはずで、つまりは「間違った自分磨き」ばかりしていて、むしろ自分の本当の魅力を失わせていたということ。そこで自分や友人たちの失敗体験を振り返り、負の連鎖から見事に脱出できた人たちの事例などをもとに、「本当の魅力」を手にいれる方法をまとめたのが本書だということ。第4章「イイ女は年齢を隠さない30歳を超えたら変えるべきこと」から、いくつかの要点を引き出してみましょう。■自分の年齢はオープンにする独身女性は、加齢とともに生きづらさを感じることが増えると著者は指摘しています。合コンやお見合いにおいても年齢で明確に線を引かれるようになるため、存在自体も認めてもらえていないような、自分のすべてを否定されたような思いをすることもあるというのです。そして、そんな経験が一度でもあると、とたんに自分の年齢が重くのしかかってきて、後ろめたい気持ちになってくるのだとか。そのため自分を守ろうとするものの、反応は過剰なものになりがち。だから結果的に、まわりに余計な気を使わせることがあるというのです。事実、著者の周囲にも、30代になってから年齢を気にしてしまい、過剰に守りに入る友人がたくさんいるそうです。■隠さなければ相手も楽になるしかしその一方には、なんの抵抗もなく自分をオープンにできる人がいるものです。たとえば、初めて会った人に対しても自分から「婚活しているから、誰か紹介して!」「本当は40歳だけど、まだ若く見えるかな?」と、積極的にオープンにしていくようなタイプ。そのようなアプローチをされると、相手も遠慮することなく打ち解けることができ、すぐに仲を深めていけるものです。著者にも、そういう人を見ていて安心できた経験があるといいます。後ろめたいことは、隠そうとすればするほど、それが本当にいけないことのように見えてしまうもの。そこで、まわりに気を使わせないためには、・聞かれたくないことこそ、気にかけていないそぶりで堂々と答える・事実をいいたくないときは、あからさまな嘘で茶化す・「気にしていない」態度で、先に後ろめたい情報を伝えることが大切だといいます。まわりの人に気を使わせていると。誰も近づかなくなってしまうもの。年齢を重ねることは罪でもなんでもないのですから、意地になって隠す必要はないということです。■女子力と人間力は「3:7」に世の中の多くの女性が、女子力を高めるために自分を磨いています。ところが、大人になると女子力だけではどうにもならないことも出てくるもので、たとえばそのひとつが恋愛。たしかに女子力が高ければ、それなりにおつきあいはできるでしょう。しかし、ずっと一緒にいるとなると話は別。重要なのはお互いの人間性なので、いくら女子力が高くても、人間力が低ければ「長く一緒にいたい」とは思わないものだと著者はいうのです。ちなみに人間力とは、具体的に次のようなものだそうです。・誠実さがあらわれる言動を取っている・いつも心穏やかにしている・表裏なく、誰に対しても思いやりがある・人の批判をしない・自分を磨く努力をしている大人になればなるほど、表面的なかわいさや美しさだけではなく、こうしたことができるかどうかのほうが重要になってくるというのです。そして女性の心を動かすことができると、「女性からも好かれる人間力が高い人」だと見られるのだともいいます。それなら、女子力も人間力も高いとみなされるわけです。そこで、人として大切にされるために、女子力と人間力の割合は「3:7」くらい、つまり「人間力多め」を目指すといいのだとか。*自分自身の失敗を基にしているからこそ、著者の語り口には不思議な説得力を感じさせます。自分自身の魅力を最大限に活用するために、目を通して見るのもいいかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※山田マキ(2016)『あなたの魅力を爆発させる方法』文響社
2016年09月19日子育てをしている人なら、一度は「モンテッソーリ教育」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。イギリスのジョージ王子がモンテッソーリの保育園に入園したことでも話題になりました。そもそもモンテッソーリ教育とは、イタリアの女性医師が創始した教育メソッドで、子どもの自主性を大切にし、子どもが本来持っている力を引き出すというもの。この教育法は欧米だけではなく、日本を含むアジア諸国でも多く導入されています。『ふじようちえんのひみつ』(加藤積一著、小学館)の、ふじようちえん(東京都立川市)も、1972年からモンテッソーリ教育を取り入れている幼稚園です。今回は本書の中から、モンテッソーリ教育の5つの基本をご紹介します。■1:本物の道具を使う「日常生活の練習」モンテッソーリ教育で出発点になるのが日常生活の練習。着替え、靴を履く、並べる、そろえる……など日常生活の基本動作を思い通りにできるようにします。ふじようちえんでは、子どもサイズの本物のアイロンや洗濯機、ほうき、包丁などを用意して実際に使わせているそう。針や糸を使うこともあります。そして、これらの活動は遊びではなく「お仕事」と呼んでいます。成長に合ったお仕事に対して子どもたちはすごい集中力と意欲で取り組むのだそうです。保護者から見ると「ケガをしないか」と心配になるお仕事ですが、先生がきちんと伝えれば子どもも危険な使い方はしません。■2:五感を洗練させる「感覚教育」五感をフルに働かせることで、情報を脳に取り入れることができると考えられています。色や形、大きさ、長さ、重さなどに関心を持ち、並べたり比べたりするなかで五感を洗練させていくのです。普段の生活では、一つの感覚に集中する機会はあまりありません。食べながら話す、音楽を聴きながら本を読むなど様々な刺激を同時に受けています。そのためモンテッソーリの「感覚教育」では、重さの印象、形の印象、色の印象など、あえて一つ一つの感覚に意識を集中させて五感に訴えかけていきます。■3:身近なもので理解する「言語教育」子ども達は日常生活を送るなかで、自然に文字への興味を持っていくものです。例えば、看板などに書いてある文字を見て「あれなあに?」と親に聞いてくるようになるのは文字に興味を持っている証拠です。ふじようちえんの年少組では文字のゴム印を押したり、紙やすりでできた文字を指先でなぞったりするなどで文字に触れています。年長組になると劇発表会のセリフを文字で見て覚えます。劇を演じるなかで、ストーリーと言葉が結びついてはじめて「読めた」ということになるのです。これを繰り返すことで、知識がどんどん増えていくでしょう。■4:数の概念を体感する「算数教育」算数といってもいきなり計算をするのではなく、数の概念を体で感じることが大切です。たとえば「錐形棒」というものは、0から9までの数字が書かれた箱にその数の棒を入れていきます。実際にその本数の棒を手にすることで数量を手のひらで感じることができます。また1本1本の棒を輪ゴムで束ねてみると、個々のものが集まって数を表していることを体感することができます。■5:五感を使って四季を感じる「文化教育」ふじようちえんで行っている文化教育のひとつは五感を使って季節を感じるということです。たとえば園の畑では、春はイチゴ、夏はトウモロコシ、冬は大根などの収穫を行うことができます。また田植えの見学や稲刈りをはじめ、お米ができるまでの工程を実際に見たり触ったり、実際にできたお米を味わったりすることで本当のお米の味を感じます。こうして1年中にたくさんの体験をすることで、先人たちの知恵なども理解することができるのです。*ふじようちえんは、佐藤可士和氏がディレクションしたユニークな形の園舎や、本書の著者である園長先生の型破りな教育方針で世界から注目されている幼稚園。伸び伸びと育つ園児たちの生活の様子から、子育てのヒントを見つけることができるのではないでしょうか。(文/平野鞠) 【参考】※加藤積一(2016)『ふじようちえんのひみつ』小学館
2016年09月18日みなさんは社内恋愛の経験はありますか?日本法規情報株式会社が男女649人に行った調査では、「職場恋愛の経験がある」と回答した人は全体の42%でした。さらに社内で相手に好意を持ったきっかけを聞いたところ、「挨拶するうちに仲良くなった」(17%)「仕事をする姿が誠実だった」(13%)など、些細な場面がきっかけだったということがわかりました。ということは、誠実で良い印象を与えられる人は、特別目立ったことをしなくても社内恋愛のチャンスがあるかもしれません!そこで今回は、『マンガでわかる女性とモメない職場の心理学』(ポーポー・ポロダクション著、SBクリエイティブ)から、男性の第一印象をよく見せるためのコツをご紹介します。では、さっそく見ていきましょう。■1:「ワル自慢」はしない男性はルックスから女性を選ぶ傾向がありますが、女性は男性の仕事ぶりや社会的地位に惹かれる場合が多くあります。収入の多い男性や仕事のできる男性と付き合うことは自分のステータスが上がることであり、女性にとって最も大切な「安心感」をもたらしてくれるのです。業績がよい会社で社内恋愛が多い理由のひとつは、相手の年収が容易に想像でき、それが安心につながるからだといいます。ですから職場で男性が女性に「ワル自慢」をするのは逆効果。勤勉で真面目なところを自然にアピールできる男性が女性に好感をもたれやすいでしょう。■2:真っ先に「清潔感」を意識する女性は脳の構造上、短時間で「好印象」「悪印象」を判断することができます。また、心理的に最初の印象があとまで強く残るという特徴もあります。自分に危険を及ぼしそうな相手を察知し、距離を置くためだと考えられます。初対面の印象で女性が重視するのが「清潔感」。女性は無頓着な男性に対して苛立ちを覚えます。恋愛対象に見られないことはもちろん、上司や同僚であっても清潔感のない男性が近くにいることは耐えられないことなのです。gooランキングによると、男性に気をつけてほしい身だしなみ1位は「飛び出した鼻毛」次いで2位「ふけ」、3位「歯についた食べかす」、4位「垢だらけの爪」となっています。どれもいかにも不潔な印象ですね。毎日きちんとお風呂に入って、洗濯したシャツを着ているから大丈夫だと勘違いしている男性もいるかもしれませんが、相手から見て清潔なイメージを持たれない限りは「清潔感がある」とはいえません。■3:スーツはジャストサイズのものを選ぶ心理学の用語で「ハロー効果」というものがあります。これは何か目立った特徴があるとそれに引きずられて他の特徴の評価が変わってしまうというもの。たとえば身なりや外見のいい人は、中身まで良いのではないかと錯覚してしまうのです。そのため、清潔感はもちろんのこと、相手から見える面積の多い服装にも気を遣いましょう。男性はやや大きめのスーツを選ぶ傾向にありますが、女性から見るとサイズの合っていないスーツは仕事ができなさそうな印象を受けます。スーツはジャストサイズのものを選び、ブラッシングなどきちんと手入れをしましょう。■4:自然なボディランゲージを取り入れる姿勢も印象を左右するので要注意。体が左右のどちらかに傾いている人は自信がないと思われがちです。背筋が伸び、胸を張っていると安心感を与えられるので、特に女性の部下を持つ人は姿勢に気をつけましょう。また女性は言葉以外のメッセージを強く受け取るもの。相手の話を聞くときに腕を組むと「あなたの意見は聞かない」という無言のメッセージと受け取られる可能性があります。手を使って自然にボディランゲージを交えると相手の印象に残りやすく、身振りを交えて相槌を打つことで女性は「共感してもらっている!」という安心感を得ることができます。また、女性が好きな仕草のひとつとして、長袖のシャツをまくりながら話すというものがあり、ポジティブな印象を与えることができます。著者が行った調査によると、ひとめぼれの経験がある男性は61%と女性よりも多いことがわかりました。アメリカで行われた調査でも同じ結果が出ており、男性の方が女性よりもルックスを重要視しているといえるでしょう。男性は本能的に顔だけではなく相手の身体的な部分を見て「子育てに適しているか」を見極めようとします。そして相手に触れて親密になろうとしてしまう傾向があります。こういった感覚は女性にはないもの。女性は相手と信頼できる関係になって初めて、相手に触れたいという欲求が出るのです。ある心理学の実験で、映画館と動物園にいるカップルを対象にどちらが先に相手の手に触れるかを調べたところ、気軽なデートをしているカップルは男性から、恋人どうしでは男女半々、夫婦になると女性から手に触れているという傾向があることがわかりました。ですから、いくら相手と距離を縮めたいと思っても、信頼関係が築けていないうちは触れるなどの行為は絶対にNGです。*本書は心理学に基づいて男性と女性が職場でうまくやっていくための方法が紹介されています。言葉の選び方やコミュニケーションの取り方を少し工夫するだけで、人間関係がうまくいくこともあるはず。女性も、「男性と女性はこんなに考え方が違うんだ」と知っていれば、無駄に傷ついたりイライラしたりすることを減らすことができるでしょう。(文/平野鞠) 【参考】※ポーポー・ポロダクション(2016)『マンガでわかる女性とモメない職場の心理学』SBクリエイティブ
2016年09月17日『めんどくさくて、「なんだかやる気が出ない」がなくなる本』(西多昌規著、SBクリエイティブ)は、数々のベストセラーを生み出してきた精神科医・医学博士による最新刊。今回のテーマは、ずばり「めんどくさい」。人間なら誰しもが持っている「めんどくさい」「やる気が出ない」という気持ちに焦点を当て、やる気を取り戻すための方法を指南しているわけです。きょうはそのなかから、「100%を目指そうとするからいけない」という考え方をご紹介しましょう。■強迫的だとまじめさに疲れることも人間は、とても些細なことにも、妙にこだわってしまうところがあるもの。日本人は特に几帳面ですが、それはよいクセでもあり、悪いクセでもあると著者は指摘しています。そして、そのような、あまりに「きっちり」「まじめすぎる」性格のことを「強迫的」と呼ぶのだそうです。料理のレシピは1グラム単位で正確に量ってつくりたいとか、あるいは仕事でもミスなく完璧に仕上げなければならないと思い込み、完全主義を貫いているような人がこのタイプだとか。強迫的な正確も、ほどほどであれば「きちんと仕事をする人」というプラスの評価を受けることになります。しかし完全主義がオーバーになったり、不完全に陥ることを恐れて後ろ向きになったりするなど、度がすぎると自分の「まじめさ」に疲れてしまうことになります。たとえば複数の仕事を同時に抱えるビジネスパーソンが、そんな心理状態で仕事に取り組めば、どんどん自分を追い込んでいくことになるわけです。失敗を恐れるあまり、あるいは承認欲求が満たされないあまり、不安や抑うつ、自分へのいらだちが高まっていくということ。そしてワーキングメモリが一気にパンクし、ヤル気を失ってしまう状態に陥ることに。無理が続けばやる気を失うだけではなく、うつ病の発症、果ては自殺へとつながっていく可能性もあるのだそうです。■失敗を恐れず思い切ることも必要!しかし大事なのは、まず失敗を恐れないことだと著者はいいます。「不完全を認めるスタンスを持つ」ということが、過度の完全主義から脱出するポイントだというのです。完全なクオリティを求めることだけがゴールではないわけです。だから、完全に仕上げなければ周囲から認められないという誤解にも、できるだけ早く気づくべきだといいます。とはいっても、融通の利かない強迫的な考えを変えるのは決して簡単なことではないでしょう。そこで意識したいのは、目標をゆるめて、失敗を恐れない態度を持つこと。仕事にしても完全だけを求めるのではなく、ある程度のところで「エイヤッ」と提出してしまう、そんな思い切りも必要だということ。何故なら100%を求めてイライラしていても、結果はあまり変わらないものだから。■悩みや不安を脇に置く効果的な方法では、具体的にどうすればいいのでしょうか?この問いに対して著者は、「悩みや不安があっても、いったんそれは脇において、ほんの少しの間でも別のことを考えてみてはいかがでしょうか」と提案しています。仕事のことしか考えられないような人だったとすれば、無理やりにでも温泉旅行の計画でも考えてみようということ。仕事の悩みや不安以外のテーマで頭を使う時間を、少しずつ長くしていくという発想です。往々にして、強迫的な人ほど型にはまることを得意とするため、悩みや不安以外のテーマを考える時間をパターン化するのは簡単だといいます。悩みや不安を「脇に置く」ためのもっとも効果的な方法は、考えることも行動も、やりすぎないように80%で抑える訓練をすること。常に100%を目指すのではなく、「80%できれば上々」だという思い込みを持つべきだというのです。■80%主義はパレートの法則と同じ「パレートの法則」をご存知でしょうか?全体の20%のなかに重要なものが80%あるという経済理論。たとえば最新型のパソコンの機能のうち20%を使いこなせれば、本来の目的の80%は達成したと考えられ、他の80%の機能は知らなくてもいいという考え方。それと同じことで、たった20%をマスターして、目的の80%が達成されたと考えるのなら、さほど難しくないわけです。だからこそ、こうした考え方を知るだけでも、過去の強迫的な行動のなかに「やりすぎ」だったものがあると気づくはず。そして、こうしたスタンスを持つことができれば、パンクしていたワーキングメモリも少しずつ回復し、徐々にやる気も戻ってくるだろうと著者は結論づけています。*著者の表現は今回も柔らかく、親しみやすいもの。押しつけがましさがないからこそ、無理なく心に入り込んできます。「やる気が出ない」ときに目を通せば、気持ちをうまく切り替えられるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※西多昌規(2016)『めんどくさくて、「なんだかやる気が出ない」がなくなる本』SBクリエイティブ
2016年09月17日『超・箇条書き―――「10倍速く、魅力的に」伝える技術』(ダイヤモンド社)の著者・杉野幹人氏は、米シリコンバレーで、そして外資系のコンサルタントとして、グローバルビジネスの第一線の人たちと仕事をしてきたという人物。世界最高峰のビジネススクールとして知られるINSEADのMBAプログラムでは、世界60カ国から集まった次世代のリーダー達と一緒に学んだそうです。そんななかで「伝えること」が傑出してうまい人たちと出会ったといいますが、彼らには共通することがあったのだとか。それは、「箇条書きが抜群にうまい」ということ。■忙しくて時間がないときこそ箇条書き事実、外資系コンサルのプレゼン資料の最初のページに図やグラフはなく、十中八九、箇条書きなのだといいます。理由は簡単。クライアントの多くは企業の経営者なので忙しい、そして時間がない。だから図やグラフによる分析や背景を聞くよりも、要点をすぐ理解したい。そのためコンサルタントは、伝えなくてはいけない要点を、短く、魅力的に伝える必要がある。そこで、その手段として、箇条書きが選ばれているというわけです。■同じ内容でべた書きと箇条書きを比較では、箇条書きにはどのような機能があるのでしょうか? それを知るために、ベタ書きと箇条書きを比較してみましょう。【ベタ書き】チェーンの牛丼はとても安くて、多くの人にとって買い求めやすいものだ。このため、お金のない学生であっても気軽にお店に入ることができる。そして、チェーンの牛丼はとても速くつくられて、速く提供される。だから、ビジネスパーソンにとっては、あまり時間がなくても、次に予定があっても気兼ねなく食事ができる。また、小さい子ども連れのファミリーにとってもありがたいだろう。待ちきれない子どももいるからだ。そして、チェーンの牛丼はとてもうまい。何度食べても飽きがこない。だから、朝に食べたとしても、夜にも食べることができる。【箇条書き】チェーンの牛丼のすばらしさは3つ。(1)安い(2)速い(3)うまいベタ書きは情報量が多く説明もていねいですが、なかなか頭に入ってきません。しかし箇条書きはシンプルで、すぐ理解することが可能であるわけです。■箇条書きで「10倍速く」伝わる理由いわば箇条書きは、ベタ書きにくらべて文章量が少ないことが特徴。すなわち、情報量が少ないわけです。つまり相手に届けることのできる情報量だけで考えれば、ベタ書きのほうが箇条書きよりも優れていることになります。しかしベタ書きは情報量が多いだけに、相手がそれを処理しきれなくなる、すなわち読み切ってくれない可能性があるわけです。あるいは中途半端に処理され、「情報は届くが、意味は伝わらない」ということも起こりうるということ。一方で箇条書きは、本来なら相手がすべき情報処理を、送り手が代わりに「短く」まとめています。ですから相手は情報処理が楽になるため、送り手の伝えたいことがより正確に伝わることになるのです。箇条書きの機能を理解すると、「箇条書きを使うのに向く状況」と「そうではない状況」がわかるようになるそうです。箇条書きが向くのは、相手に情報処理の手間をかけさせたくないとき。相手が忙しい場合などがそれにあたり、たとえば目上の人への報告などがその典型。また売り込みのプレゼンテーションなど、相手がこちらに対してあまり関心を持っていないときにも効果的なのだとか。■要点を「3つにまとめること」が大切ところで経営コンサルタントは「なんでも要点を3つにまとめる」とよくいわれるのだそうです。ただし重要なポイントは「3つ」ではなく、2つでも4つでもよいのだとか。いってみれば大事なのは「まとめること」、短く、箇条書きにすることだというわけです。経営コンサルタントが向き合うのは、時間に制約がある忙しい人たち。そのため、情報処理の負担を減らすことができる箇条書きで伝わることが求められるということ。■相手が勉強家だと箇条書きが向かないしかし、逆に箇条書きが向かないときもあるといいます。相手が情報処理の負担をいとわない場合は、箇条書きよりもベタ書きのほうが適しているわけです。相手は勉強家で、時間もあり、熱心に読んだり聞いたりしてくれるときには、情報量の多いベタ書きのほうが伝わるということ。また学んで実行に移そうとしてくれる相手には、あえて箇条書きにまとめず、じっくり時間をかけて説明することもあるでしょう。箇条書きとベタ書きは対立するものではなく、場面や相手に応じて使い分けるものだということです。*実際に目にしてきた多くの実例がベースになっているだけあり、著者の主張には強い説得力があります。本書を参考にしながら箇条書きを取り入れてみれば、ビジネスがよりスムーズになるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※杉野幹人(2016)『超・箇条書き―――「10倍速く、魅力的に」伝える技術』ダイヤモンド社
2016年09月17日「もっと仕事のパフォーマンスを上げたいのに、気分が乗らず、はかどらない」こう考えるのは、向上心のある、真面目な人。そう指摘しているのは、『気力より体力 一流のコンディションを手に入れる』(KADOKAWA)の著者・吉越浩一郎氏です。仕事に一生懸命で、「もっと仕事ができるようになりたい」と考える人ほど、「気力をもう少し出せれば、もっと成果を上げられるのに……」と悩んでしまうということ。しかし“もっと気力が欲しいビジネスパーソン”に欠けているものは、気力でも仕事の能力でもないというのです。なぜなら、そこには大前提=土台となるものが欠けているから。それはなにかといえば、ずばり体力。自身のビジネス経験、そして成果を出しているビジネスパーソンの共通点を探った結果、そのような結論に至ったのだそうです。つまり仕事に必要な体力がわかないのだとすれば、「とりあえずやる気を出そう」などという無謀な試みをするのではなく、仕事に必要な「体力」を整えればいいだけだというのです。だとすれば気になるのは「体力をどうつけるか」ですが、このことについてのキーワードは「8時間睡眠」「赤身肉」「1万歩」なのだそうです。■1:悩むヒマがあったら「8時間寝る」体をリセットする究極の方法は、毎日の睡眠。つまり誰にも毎晩、自分をリセットするチャンスが訪れるということです。そして睡眠の基本は「十分な時間」をとること。枕を変えたり睡眠に関する本を読んだりするよりも、とにかくまず「8時間眠ること」が大切だというのです。では、なぜ8時間なのでしょうか? 著者によれば、それは「自分に最適な睡眠時間」を知るため。もっと短い時間で十分な睡眠が取れる人もいるでしょうが、まず8時間眠ってみることで、その時間が自分に合うか否かがわかるというわけです。それを続けてみて、もし辛ければ、少し短くすればいいという考え方。そこで著者は、「早速今夜から8時間寝ることを自分に課してください」と勧めています。そしてそれだけで、疲労感が激減するというのです。8時間寝るためのコツはなく、大切なのは夜、早くベッドに入ること。もしもそのせいで朝早く目が覚めたら、ゆっくり二度寝を楽しめばいいのだとか。ちなみに著者は、トリンプ・インターナショナル・ジャパンの社長を務めていた人物。「いいリーダーの条件は『よく寝ること』」を持論とし、現役時代から8時間睡眠を自らに課していたといいます。時間に追われる企業のトップにとって、8時間睡眠をキープすることは現実的になかなか難しかったはず。しかしその意義を理解していたからこそ、続けることができたのでしょう。■2:赤身の肉を食べる日本人の肉の消費量は少しずつ増えているといいますが、それでもまだまだ少ないと著者は考えているそうです。そして、日本人が欧米人にくらべて体力がないといわれるのも、肉不足が大きく影響しているのではないかと推測しています。「肉は太る」「体に負担をかける」などという人もいますが、それは牛肉でいえば、脂たっぷりの霜降り肉をイメージしているから。しかし、探せば本当においしい赤身があるので、そういった脂の少ない部位を食べれば問題はないといいます。また、そもそも肉に一部は含まれる「脂」も、一概に悪いとはいい切れないもの。牛肉や豚肉の脂肪に含まれるアラキドン酸の一部は脳の内部でアナンダマイド遠いう物質に変わるそうですが、このアナンダマイドには「至福物質」という別名があるのだといいます。つまり、肉の油は幸せな気持ちをもたらすともいえるわけです。肉を食べたいと思うのは、「幸せになりたい」という思いの表れともいえるかもしれないと著者。だとしたら、それを禁じる必要などあるはずがないわけです。もちろん食べすぎるとまた別の問題が出てくる可能性はありますが、消費量がまだまだ少ない日本人は、むしろ積極的に食べたほうがいいといいます。ただし、脂を油で調理するトンカツや唐揚げよりは、ステーキや焼き肉など、余計な油はあまり使わず、脂を落とす料理法を選んだほうがいいそうです。■3:毎日1万歩歩く著者は会社をリタイアしてからジムに通っているそうですが、そんな時間が取れなかった現役時代は、普段の生活の延長で体のメンテナンスを行っていたのだといいます。そのうちのひとつが、歩くこと。代謝がよくなり、運動習慣も身につくので「1日1万歩歩こう」とよくいわれますが、それを実行したというわけです。でも、1万歩歩くためには、大人ならざっと1時間40分=100分、100歩には1分、1,000歩には10分が必要。「自由に使える時間が1日に5時間しかないのに、100分間も歩くなんて無理だ」と思われるかもしれません。しかし国民健康・栄養調査によると、日本人(成人)の平均歩数は男性で7,043歩、女性で6,015歩だというのです。つまり毎日すでに平均分は歩いているわけですから、あと3,000~4,000歩プラスして歩けば、1万歩を実現できるわけです。時間になおすと、30~40分余計に歩けば、目標を楽々クリアできることがわかります。しかもウェアを着て腕を振ってのウォーキングである必要はなく、ただただ歩けばいいのだそうです。この40分は、通勤時間のなかでも捻出することが可能。エスカレーターを使うのをやめて階段を使ったり、目的地の一駅前で電車を降りて歩いたりすれば、無理なく実現することができるわけです。*「体力をつける」というと難しいこと脳ようにも思えますが、このように、ちょっとした工夫で大きな効果を生み出せるもの。本書を参考にして、体力をつけてみてはいかがでしょうか?(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※吉越浩一郎(2016)『気力より体力 一流のコンディションを手に入れる』KADOKAWA
2016年09月17日「やる気があるのにダラダラしてしまうのは、自分が悪いからではない」と断言するのは、『ダラダラ気分を一瞬で変える 小さな習慣』(大平信孝、大平朝子著、サンクチュアリ出版)の著者。ダラダラしてしまうのには理由があり、それは「コントロールできないものをコントロールしようとする」からだというのです。だから結果的に、気疲れしたり、心が折れたりしてしまい、仕事がはかどらないということ。そこで本書は、脳科学や心理学に基づいた「ルーティン」と呼ばれる簡単な習慣により、「ダラダラ気分を一瞬で変え、いつでも仕事モードに入る方法を明かしているわけです。「ルーティン」と聞いてピンとこない人でも、ラグビーの五郎丸選手がキックの前にする一連のアクションや、イチロー選手が打席に入る前にするアクションはご存知のはず。つまりは、あれがルーティン。一流アスリートたちが集中するために行っているそれら一連のアクション(=ルーティン)を、ビジネスパーソンも取り入れるべきだと著者は考えているのです。でも、具体的にどうすればいいのでしょうか? その点を確認するため、「時間」に関連するルーティンを引き出してみましょう。■朝は「10秒ベッドメイキング」する朝は自分にとって意味を持つ「マイ・オープニングテーマ」を聴きながら、ベッドメイキングをするルーティンをするといいのだとか。忙しくてバタバタしがちな朝に、あえてベッドメイキングをして環境を整えることによって、落ち着き、清々しい気持ちで1日をスタートすることができるという考え方です。しかも朝にベッドメイキングをしておくと、夜に疲れて帰宅しても、ホッと一息つけて、くつろぎやすくなるもの。朝のわずかなアクションが、夜の眠りにも好影響を及ぼすということ。ちなみに著者はこれを「未来貯金」と呼んでいるそうです(当然ながら、逆の状態は「未来借金」)。■通勤電車では「1分何かの勉強」する毎日の通勤時間が手持ち無沙汰だという人も少なくないでしょう。そんなとき、ツイッターやフェイスブック、LINEを開いてみるのもひとつの選択肢ではあります。しかし通勤中は、電車に乗ってさえいれば、なにをしようと自由な時間。だからこそこのスキマ時間を、受け身ではなく、「自分のため」に活用しましょうと著者は提案しています。ちなみに電車の時間を有効活用できるかどうかは、「乗った直後」がポイントだとか。うまく活用できる人は、電車でなにをするか「あらかじめ決めている」というのです。逆にいえば、なにをするか事前に決めていないと、「なんとなく」「手持ち無沙汰だから」と、無意識のうちにスマホや携帯を開くことになってしまうわけです。そこで著者が勧めているのは、電車に乗ったら“最初の1分間だけ”「○○の勉強をする」と決めてしまうこと。勉強というと堅苦しく感じられるかもしれませんが、たとえば「Yahoo!ニュース」の英語版を読むだけでも、十分に英語の勉強になるわけです。■仕事は「2つの締め切り」を決める!企画書や報告書の作成、中長期にわたるプロジェクトなど、時間も手間もかかる仕事は、ついつい後回しにしてしまいがち。その結果、締め切り直前にようやく手をつけたら、「明らかに時間不足だった」という事態になることも珍しくありません。そんなことを避けるために大切なのは、仕事をしっかり「スケジュールに入れる」ためのルーティンを行うことだといいます。具体的には、「いつ手をつけるか」と「いつまでに仕上げるか」と“2つの締め切り”を決め、すぐにスケジュールに書き込むといいのだそうです。タイムリミットをつくることによって、集中して仕事をすることができるという考え方です。■余裕ゼロの時は「1分間目を閉じる」人に集中力が続く時間は、私たちが思っている以上に短いもの。そして私たちは機械ではないため、長時間のプレッシャーには強くありません。たとえ訓練したとしても、人が高度な集中力を何時間も持続させることは難しいのです。だから有効なのが、仕事が立て込んでいて追い込まれているときや、食事する時間すら惜しい時でも、短時間で回復できるルーティン。といっても簡単なことで、とにかく1分間、目を閉じればいいというのです。なお1人になれる場所であれば、トイレの個室でも、屋上や非常階段、あるいはベランダでも、どこでもOK。席を外せないのであれば、自分のデスクでもかまわないそうです。もちろん昼寝が許されるのであれば、10分でも15分でもソファに横になるのが効果的。しかし現実的に、オフィスには昼寝をする場所がなかったり、昼寝をできる雰囲気でもなかったり、ということのほうが多いはず。しかし1分間目を閉じて「寝たふりをする」ルーティンであれば、誰にでも簡単にできるわけです。*著者が紹介しているルーティンは決して難解なものではなく、このようにシンプルで簡単なものばかり。そのぶん日常に、無理なく取り入れることができそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※大平信孝、大平朝子(2016)『ダラダラ気分を一瞬で変える 小さな習慣』サンクチュアリ出版
2016年09月15日知っておきたいという気持ちはあっても、意外に知る機会が限られているのが政治についてのいろいろなこと。けれど人にも聞きづらく、結果的には疑問を疑問のまま放置しているという方も決して少なくないはずです。そこでおすすめしたいのが、『“知ってるつもり”から抜け出す! 「政治のしくみ」がイチからわかる本』(坂東太郎著、日本実業出版社)。日本ニュース時事能力検定協会委員でもあるニュース会社者の著者が、政治に関する基礎知識をわかりやすく解説した書籍です。ところでニュースを聞いていると、「予算」についての話題が登場することがよくあります。しかしそうでありながら、その基礎的な部分は置き去りにされがち。そこできょうは、その基本的な部分について取り上げてみましょう。■毎年1月の通常国会で予算案を提出!国会は、法律だけでなく、国のお金の使い方を決める場でもあります。そして通常、単に「予算」という場合は、年度(当年4月1日から翌年3月31日まで)に入ってくるお金と、その使い道を示した「一般会計予算」をさします(「当初予算」といわれることも)。なにをするにもお金が必要で、それは国のサービスも同じ。そこで毎年1月、必ず開かなければならないことになっている「通常国会」で、新春から3月末までのうちに国が見込んだ収入(歳入)と使い道(歳出)の見積もりを、憲法の規定によって内閣が「作成して、国会に提出」(86条)します。すなわち、これが「予算案」。まず前年8月ごろまでに「省」や「内閣府」など、国の機関が翌年の見積もりをつくります。これが「概算要求」。ところがこれは、各省庁が欲しいぶんだけ要求しがちなので、「盛った」数値もあるのだとか。そこで財務大臣が年末近くに審査をし、「予算原案」にするのです。ところが、ここで概算から削られたり、なくなったりする要望も出てくることになります。そこでもう一回、原案との突き合わせ・微調整を行うことに。そしてそこまでを根回ししたあとに、首相をリーダーとする内閣の決定(閣議決定)に至り、それが翌年早々、国会に提出されるというわけです。■国会の演説や質問は「いいっぱなし」予算案の場合は、1月からはじまる通常国会の冒頭にある首相の施政方針演説で年間の方針が語られたあと、国の財布を預かる財務省トップの財務大臣が、「財政演説」というかたちで示します。そしてそののち、与野党各会派の代表による質問が行われるのです。とはいっても、ここまでの演説や質問は「いいっぱなし」。具体的な問答が行われるのは、次に開かれる予算委員会となるのだそうです。なお法律案は原則として衆議院・参議院どちらに出してもかまわないといいますが、予算案は衆議院が先(先議権)と決まっているそうです。最近の当初予算の歳入面では、本来それでまかなうべき「税収」だけでは歳出には足りず、国債(国の借金)頼り。そして歳出のトップは年金や医療などの「社会保障」で、次いで「国債費」(借金返済)が続きます。なお予算には、当初予算以外に「補正予算」「暫定予算」があります。補正予算は、年度の途中に、自然災害の被害や不景気などで追加のお金が必要だと内閣が判断した場合に計上されるもの。暫定予算は、年度内に次の年度の当初予算が決まらなかった場合、公務員の給与など当面の間必要な支出だけを計上するもの。■予算委員会は結果的になんでもあり!予算委員会(予算委)は衆議院で50人。会派の大きさに合わせて割り当てられ、委員長が委員のなかから選ぶそうです。通常国会の前半最大の課題は予算で、質疑のスタートが衆議院予算委員会なので必然的に注目が集まることになります。予算案はあらゆる国家機関の見積もりであり、内閣の責任で出されるので、答弁に立つべき国務大臣も原則的には全員出席。すると予算委以外の委員会に大臣が出席できないため、結果的に予算委優先、予算委のみ開催となるそうです。なお、予算は提出者も執行者も内閣なので、首相や国務大臣がどういう姿勢で1年間を過ごすかまでが話題になります。スキャンダルの話題なども出ますし、結果的に「なんでもあり」になってしまうというのです。■予算を人質に揺さぶられることもある衆議院の委員会で採決して可決し、本会議も通ると、予算案は参議院に送られます。その結果が秘訣や修正となったとしても、「衆議院の優越」規定があるため、最終的に衆議院の議決で決まることになります。つまり予算そのものについてあれこれいっても、多くの場合は上手にかわされて終わり。そこで攻める側の野党は、「こんな内閣のつくった予算案を信用できるのか」とスキャンダルを追求したり、「態度がなっていない」などと理事に文句をつけて引き伸ばしをはかるなどして「成果」を得ようとしたりするわけです。内閣にとって、予算の3月末までの成立は至上命題で、それができないと非力な内閣とみなされるため、野党から痛いところを握られたりしている場合は、問題大臣のクビと引き換えに審議促進を非公式に伝えるといった手段に出ることも。「予算を人質に揺さぶる」という行為です。このように予算委員会は華々しい割に、(1)どのみち衆議院で多数を取っている与党が選んだ首相による内閣提出だから、原案どおりに可決する(2)「可決する」とわかっている野党は、仕方なくスキャンダル攻撃などでがんばっているふりをするという2点があらかじめほぼ決まっているので、「出来レース」との声も浴びせられるといいます。*基礎的なことがコンパクトにまとめられているため、知りたいことを確実に理解できるはず。困ったときのため、手元に置いておくといいかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※坂東太郎(2016)『“知ってるつもり”から抜け出す! 「政治のしくみ」がイチからわかる本』日本実業出版社
2016年09月15日『モルガン・スタンレー 最強のキャリア戦略』(カーラ・ハリス著、堀内久美子訳、CCCメディアハウス)は、モルガン・スタンレー資産管理部門のバイスチェアマンであり、キャリアアドバイザーによる著作。自分のコンテンツ(=売りとなるもの)の見つけ方、成果貯金(=信用・評判・強み)を使ったさらなる成果の出し方、そして人間関係貯金(=昇進するために必要な人間関係)の貯め方と効果的な使い方を解説しています。そして著者は、本書を通じて多くのビジネスパーソンが、景気や社内政治の状況に振り回されることなく、成功の高みへと登っていくために必要な対策と手段を見つけられることを願っているのだとか。今日はステップアップについて書かれた第1部のなかから、「成果貯金」という考え方をご紹介したいと思います。■成果をあげて得た信用が成果貯金に成果貯金とは聞きなれない言葉ですが、著者によればそれは、職務をきちんとこなし、個々の仕事ですぐれた成果をあげることで生じる信用や評判、強みのこと。「予想より早く仕事を終えた」「求められている以上の分析や考察を加えた」「創造的で明快、建設的な方法で情報を提示した」など、常に期待される以上の結果を出すと、「成果という貨幣」の貯金ができるという考え方です。つまり、成果貯金=(知性+経験+効果的な実行)×頻度となるわけです。ウェブスターの辞書では、「貨幣」は「交換の媒介物として流通しているもの」と定義されているそうです。つまり評判がよく、すぐれた成果を上げたという実績があれば、それと「交換」できるものを持っているということになるのです。それは、誰もが就きたがる社内のポスト、昇給、上級幹部への紹介、意思決定会議で尊重される発言権、大きな取引で担当チームに加わること、顧客の前でプレゼンテーションする機会、ミスをしたときの埋め合わせをするチャンスなど。■成果貯金がなければ前進できない!著者によれば成果貯金はきわめて有益で、なににも代えられないもの。組織内で政治力がなく、特に際立った地位でもない場合には、特に重要になるといいます。なぜなら駆け出しのころは、どんな組織にいたとしても、その種の力は持っていないものだから。そこで新しい組織に入ったら、早いうちに点数を稼ぎ、成果貯金を手に入れることが大切。具体的には、与えられた仕事をきちんと実行し、その仕事ぶりを上司とまわりの人に認めてもらう必要があるわけです。成果貯金がなくては、昇進もなければ、組織内での認知度を上げるような任務に抜擢されることもないからです。そして成果を出したことは、上司か、もしくは組織内で信用と権限を持つ人物に承認してもらうことが必要。そうして初めて、成果貯金に価値が生まれるからです。いくら自分で素晴らしい仕事をしたと思ったとしても、誰もそれに気づいてくれなかったり、組織が努力や仕事を評価してくれなかったりしたら、昇進や昇給、異動のチャンスのきっかけとはなりません。上司が成果を認める機会や方法はさまざまですが、重要なのは、自分が組織に対してしたことが、組織内の人から評価され、期待どおりかそれ以上の成果を出したといわれること。■新環境で成果貯金を手に入れる方法組織に新人が入ると、その人の品定めがはじまるのは人の世の常。そして「新しい環境に馴染むのに苦労している」とか、「よそよそしい」と思われたりしたら、成果貯金をはじめる前から成果という貨幣価値が下がることになるのです。また、はじめにあまりミスをしすぎると、期待以下の人間だと決めつけられ、場合によっては「組織にふさわしくない」という烙印を押されることも。人はすぐに思い込みや決めつけをするものなので、一度誤解を受けると自分の貨幣価値が傷つき、貯金が難しくなりかねないということ。そこで新しい仕事をはじめたり、新しい環境に入ったりするときは、必ず最初の24時間から48時間で手早く点数を稼げる方法を見つけたほうがいいと著者はいいます。そして同時に、「約束は小さく、成果は大きく」の考え方を実践することも重要。つまり、どんな仕事であっても、求められたことより大きな成果を出すよう努力すべきだということ。たとえば上司から「午後2時までに仕事を上げるように」といわれたら、午前11時までに仕上げるようがんばってみる。ある企業に関する調査報告を作成するようにいわれたら、その企業の最大の競合企業についても調べ、簡単に2社の比較分析をしてみる。そうした努力をするのです。まったくなじみのない環境や業界に入った場合、簡単に成果貯金をはじめるには、自分の仕事について知的で鋭い質問を同僚に投げかけてみることだといいます。一緒に働く人に、そうした“考えさせるような質問”をすれば、自分が仕事についてよく検討し、どうすれば成功するかを考えていることが伝わるから。つまり、「きちんと仕事をする人なのだろう」という認識と期待が生まれるわけです、*このように、著者の主張は力強く、そして明快。そのすべての方法論が日本の企業でのビジネスに応用できるとは限らないかもしれませんが、それでも役立つ部分は多いはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※カーラ・ハリス(2016)『モルガン・スタンレー 最強のキャリア戦略』CCCメディアハウス
2016年09月13日