皇居のさくらをバスルームに株式会社OTOGINOは一般社団法人千代田区観光協会と共同で、千鳥ヶ淵のさくらエキスを使った美肌入浴料「SAKURA BATH(サクラバス)」を発売中だ。さくらが咲き乱れる春の美しい風景をバスルームで感じられるアイテム「SAKURA BATH」は、皇居のほとり・千鳥ヶ淵に咲くソメイヨシノの葉から抽出したうるおい成分を配合した入浴剤。さらに肌のキメを整えるシルクもくわえ、しっとりとした湯上がり肌を実感できる美白入浴剤となっている。ちょっとした贈り物にもぴったり湯質はなめらかな白濁の湯で、さくらをイメージした和の香りを天然オイルで演出。さくら、そして和の雰囲気にこだわって作られた「SAKURA BATH」は、日本の心と花見の風情、そしてお風呂の文化を優雅に伝えてくれる。水引を添えた祝儀袋のようなデザインのパッケージは、春の新生活に向けた挨拶の品としても喜ばれそうだ。価格は3包入りで900円(税込み)。オンラインショップにて購入できる。なお売り上げの一部は、さくらの再生活動や維持管理を行う千代田区の「区の花さくら再生計画」に寄付される。(画像はプレスリリースより)【参考】※プレスリリース※SAKURA BATH
2018年04月07日「みなとみらい21 さくらフェスタ2019」が、2019年3月23日(土)から3月31日(日)の期間で横浜・みなとみらいで開催される。「みなとみらい21 さくらフェスタ2019」の中心会場となる"さくら通り"は、約500メートルに103本の桜の木が並ぶみなとみらいエリアの桜の名所。期間中はそんな"さくら通り"の周辺施設をライトアップするほか、イベントなどが開催される。3月30日(土)には、"さくら通り"が歩行者天国となり、パレードや、綱引き、グルメストリートなど様々な企画を実施。また、周辺施設での関連イベントも開催予定だ。【詳細】みなとみらい21 さくらフェスタ2019開催日:2019年3月23日(土)~3月31日(日)会場:さくら通り ※その他周辺施設でもイベント開催予定【問い合わせ先】みなとみらい21 さくらフェスタ2019実行委員会事務局TEL:045-662-0081(平日10:00〜18:00)
2018年03月14日桜咲く季節にぴったりの「さくらの香り」株式会社グライド・エンタープライズから、「2018年春限定プレミアムルルルン(さくらの香り)」が発売された。桜咲く季節にぴったりの、特別なルルルンとなっている。春の素材で作った特別なルルルン貼る化粧水でおなじみのシートマスク「ルルルン」シリーズから、さくらの香りの「2018年春限定プレミアムルルルン」が登場した。保湿成分として、サトザクラの花びらから抽出した「サトザクラ花エキス」、孟宗竹タケノコの皮から抽出した「モウソウチクたけのこ皮エキス」を、肌を整える成分として、青シソの葉から抽出した「シソ葉エキス」を使用。貴重な春の素材で特別なルルルンが出来上がった。フィット感と水分量がアップした超極厚のふっくらシートに、春の素材からの美容成分をたっぷり含んだ「貼る化粧水」となっている。「2018年春限定プレミアムルルルン(さくらの香り)」は、7枚入り×5袋で、価格は1,500円(税抜き)となっている。PLAZAと一部のドラッグストアで発売中だ。(画像は「2018年春限定プレミアムルルルン」公式サイトより)【参考】「2018年春限定プレミアムルルルン」公式サイト
2018年03月07日豆腐・豆乳の製造販売と、豆乳化粧品の販売を手掛ける株式会社 豆腐の盛田屋は、新商品となる春季限定の夜用パック「さくら※1ぱっく」。毎春ご好評をいただいている「さくら※1ろーしょん」をリニューアルし、3月1日(木)に発売します。■春先のゆらぎがちな肌に 春季限定「さくら」シリーズ春先の肌は冬の間の乾燥ダメージの蓄積により、肌表面のバリア機能や保湿機能が低下しています。さらに、急激な“紫外線の増加”と“寒暖差”によって、肌が不安定になり、わずかな外部刺激でも「肌荒れ」を引き起こしやすい敏感な状態です。また、花粉の季節ということもあり、スギやヒノキの花粉などの影響で肌に不調を感じる方も増加します。そこで豆腐の盛田屋「さくらシリーズ」は、春先のゆらぎがちな肌のために、「さくら※1」や「豆乳※2」をはじめとする植物由来の美容成分や、角質層の水分を保つ重要な役割を果たし、肌のバリア機能をサポートする「米セラミド※3」を配合しています。さくらぱっく<商品名> さくら※1ぱっく<容量> 50g<価格> 3240円(税込)<主な天然由来成分>・豆乳発酵液※2(豆腐の盛田屋オリジナル原料)・米セラミド※3・エグゾシン※4・サクラ葉エキス※5・ヒメフロウエキス※5・オウゴン根エキス※5<使用方法>1、夜のお手入れの最後にご使用ください。2、さくらんぼ1粒大を手にとり、目や口のまわりは避け、顔全体に広げます。3、洗い流さずに、そのままおやすみください。※1 サクラ葉エキス(保湿成分)※2 乳酸桿菌/豆乳発酵液(保湿成分)※3 コメヌカスフィンゴ糖脂質(保湿成分)※4 アルテロモナス培養液(保湿成分)※5 保湿成分さくらろーしょん<商品名> さくら※1ろーしょん<容量> 120ml<価格> 3240円(税込)<主な天然由来成分>・豆乳発酵液※2(豆腐の盛田屋オリジナル原料)・米セラミド※3・サクラ葉エキス※5・ヒメフロウエキス※5・オウゴン根エキス※5<使用方法>洗顔後に、適量(500円硬貨大)を手のひらにとり、顔全体にやさしく馴染ませます。※1 サクラ葉エキス(保湿成分)※2 乳酸桿菌/豆乳発酵液(保湿成分)※3 コメヌカスフィンゴ糖脂質(保湿成分)※5 保湿成分(お問い合わせ先)豆腐の盛田屋TEL 092-517-8001
2018年03月01日さくら舞うフォトブースで、世界に一つの写真をさくらのフォトブースでウェディングフォトの撮影ができる「and photo」は、東京・渋谷にお店を構えています。2018年2月22日(木)~4月末まで行われるこのイベントでは、春を感じさせるフォトブースで好きなだけウェディングドレス姿のセルフィーが撮り放題。友達同士や恋人同士で誰もがきゅんとする写真を撮ることができます。ふわふわのピンクチュールで可愛く仕上がったさくらのフォトブースで、忘れられない思い出を作ってみてください。3つのFreeが人気の秘密!ウェディングフォトの撮影と聞くとお金が掛かると想像される方も多いはず。ここ「and photo」では、予約不要・ドレス無料・セルフフォト無料。必要なものはスタジオ側が用意してくれているので、誰でも気軽にウェディングフォトの撮影を楽しむことができます。ドレスだけでなく、海外から買い付けたアクセサリーなども身に付けることも可能。スマートフォンでのセルフィー撮影であれば撮り放題、スタジオ使用料も一切かかりません。もっとこだわりたい方には洋装・和装から選べる有料サービスも用意されているので、興味のある方は公式HPをご覧ください。サービス概要■フォトブース数:8ブース(1ブースは2ヶ月ごとにテーマに沿って装飾が変わります)■料金:セルフフォト無料/ウェディングドレス&タキシード 小物無料 ※一部商品は有料となりますプロカメラマンの撮影・ヘアメイク・和装のご利用は有料にて承ります■時間:10:00~20:00(最終受付19:00)■場所:and photo (スマ婚渋谷ショールーム内)スポット情報スポット名:and photo住所:東京都渋谷区道玄坂2-11-1 G-SQUARE 3F電話番号:03-5457-1035
2018年02月27日ゴディバ(GODIVA)は、チョコレートドリンク「ショコリキサー」の新フレーバー「ショコリキサー ホワイトチョコレート さくら」を、2018年2月16日(金)から4月10日(火)まで、ゴディバ限定店舗にて期間限定販売する。だんだん暖かくなり、春の足音を感じられるようになってきた昨今。ゴディバから登場する「ショコリキサー ホワイトチョコレート さくら」は、そんな季節にぴったりの春が待ち遠しくなる華やかな味わい。ショコリキサー初となる“さくら”フレーバーだ。1杯の中で、優しくふんわりと香るさくらとチェリーが、ホワイトチョコレートと溶け合う。小さく砕いたホワイトチョコレートの食感も楽しめ、さらにホイップクリームの上にトッピングされたさくらソースの華やかなデコレーションが、春らしさを演出する。【詳細】ショコリキサー ホワイトチョコレート さくら販売期間:2018年2月16日(金)~4月10日(火)取り扱い:ゴディバ限定店舗価格/内容量:600円(税込)/270ml【問い合わせ先】ゴディバジャパン株式会社TEL: 0120-116811(受付時間10:00~18:00)
2018年02月19日資生堂パーラーは2月15日より、春の訪れを感じさせるスイーツ「春のチーズケーキ(さくら味)」「春の手焼きチーズケーキ(さくら味)」の2種3アイテム、「マカロン フレーズ」「ビスキュイ トロワ」の2アイテムをそれぞれ発売する。「春のチーズケーキ(さくら味)」は、この時期恒例の季節のチーズケーキ。ひと口食べるごとにさくらの香りが口いっぱいに広がる。桜の花由来のペーストを加えた濃厚なデンマーク産クリームチーズを、北海道産の小麦粉を使った桜の香りのビスキュイで包み焼き上げた。春のチーズケーキ(さくら味)3個入 918円(税込)/6個入 1,836円(税込)「春の手焼きチーズケーキ(さくら味)」は、デンマーク産の濃厚なクリームチーズに、桜の花由来のペーストとさくらんぼ果肉を加え、1本1本手作りで焼き上げた一品。ビスキュイに練り込んだ塩漬けの桜葉がさらに桜の風味を引き立て、やさしい桃色や桜の香りがひと足早い春の訪れを告げる、このうえなく濃厚で贅沢な季節限定のチーズケーキとなっている。春の手焼きチーズケーキ(さくら味)1本入 2,700円(税込) ※銀座本店ショップ他取扱店限定商品これらのチーズケーキを包む、資生堂パーラー創業115周年記念の特別パッケージも今回で見納め。資生堂アイスクリームパーラー開設当時の1928年は、銀座中央通り側にはショーウインドーが設けられており、パッケージではそこに展示された満開の桜に目を奪われる銀ブラ中のモガ(モダンガール)の様子が描かれている。春の暖かさを感じる特別パッケージは、新しい旅立ちを応援するギフトにもオススメだ。マカロン フレーズ 1,242円(税込)/ビスキュイ トロワ 540円(税込) 一方、新商品の「マカロン フレーズ」は、福岡県産の苺“あまおう”のピューレを加えた生地を焼き上げ、あまおうピューレとマダガスカル産バニラビーンズ入りのバニラペーストを合わせたクリームをサンドしたマカロン。外はさくっと、中はしっとりとした食感と、愛らしいピンク色が特徴だ。そして「ビスキュイ トロワ」は、資生堂パーラー定番のビスキュイ3種の詰め合わせ。小さくても個性豊かな菓子として、カネル、キャラメリゼ、ヴァニーユが、それぞれにふさわしい素材を吟味して焼き上げられている。どちらも春らしくかわいいパッケージで、ホワイトデーや春のプチギフトにぴったりだ。
2018年02月13日演劇界で多くの名作に携わってきた謝珠栄が、構成・演出・振付を担当する『Pukul(プクル)』。ダンスと歌で綴られるストーリー仕立てのオリジナルショーで、宝塚歌劇団を除いては、今の日本では珍しいとされるショー作品だ。湖月わたるや水夏希、蘭乃はな、舞羽美海ら宝塚OGに加え、坂元健児、大貫勇輔、岡幸二郎、島地保武ら豪華キャストが勢ぞろいした本作。その公開稽古が、11月17日、都内のスタジオで行われた。舞台『Pukul~プクル~』チケット情報謝が「インドネシア語で“鼓動”“時間”、それからマレー語でも“時”を表す『pukul(プクル)』という言葉をタイトルにしました」と話すように、ACT1は「アジアの音色」、ACT2では「西洋の音色」をモチーフにして展開。過去、現在、未来をつかさどる神々が見守るなか、“地球”と“人類”のストーリーが描かれる。公開稽古では4場面から一部を抜粋。『宇宙の鼓動』では“現在”の神である姿月あさと(スペシャルゲストとして出演)、“過去”の神の岡、“未来”の神・坂元が登場。宇宙の創世を壮大なスケールで歌い上げる。傍らで何かの始まりを暗示するかのように、激しく踊り続ける大貫の姿が印象的だ。続く『星たちの鼓動』は、湖月、水、蘭乃、舞羽らが腰を低く落とし、指先をつまむようにして踊るインド舞踊の型を取り入れたダンスで、星々の誕生を表現。ガムランの音が高まってゆくなか、『星の一生』の場面へとなだれ込む。男性キャスト陣も合流し、最高潮に達したところで突然音楽がやみ、春野寿美礼(スペシャルゲスト)が現れた。星々に語りかけるような春野の歌声が静寂の中に響く。公開稽古の最後は、『銀河の回転』の場面だ。彩吹真央(スペシャルゲスト)が、銀河の頂点に君臨する太陽について語ると、岡の歌、大貫のダンス、湖月ら他のキャストも次々に加わり、太陽と、その周りを公転する惑星をダンスで表してゆく。いずれも主演級のキャストだけに、その迫力は圧巻のひと言だ。ゲネプロ後の囲み会見では、謝と姿月、湖月、水が登壇。「人々が忘れてはいけないことを、私たちなりに伝えられる作品」(姿月)、「宝塚OGの踊りに、男性キャストの力強さが加わったショー」(湖月)、「謝先生らしい生命賛歌の物語」(水)といった言葉が聞かれた。一方、謝が「バリ、韓国、中国、インド……それからグルジア、ロシア、中近東など、6~7種類のダンスを取り入れてますね」と語る場面では、水が取材陣に「ほんと大変!」と漏らして笑いを誘うひと幕も。「稽古場の“戦い”が出演者一人ひとりのエネルギーとなってお客様に伝われば」との水の言葉に、思わず納得した公開稽古となった。公演は12月9日(土)から14日(木)まで東京・日本青年館ホール、12月21日(木)から25日(月)まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて。取材・文佐藤さくら
2017年11月22日左から、井上芳雄、成河撮影:源 賀津己ヘアメイク:高橋幸子スタイリング:吉田ナオキ、市川みどり(ルミナス)江戸川乱歩の原作を三島由紀夫が戯曲化、これまで何度も映像化・舞台化されてきた『黒蜥蜴』。その世界観に惹かれ続けてきた英国人演出家のデヴィッド・ルヴォーが、長年の演出プランをもって、ついに舞台化に着手する。黒蜥蜴を演じるのは、舞台活動でも高い評価を得ている中谷美紀、また彼女と対峙する名探偵・明智小五郎に井上芳雄、緑川夫人の部下・雨宮には成河と、華も実力も兼ね備えたキャスティングが実現した。本作への想いを井上と成河に聞いた。舞台『黒蜥蜴』 チケット情報大阪の宝石商・岩瀬(たかお鷹)は、娘の早苗(相楽樹)を誘拐するという脅迫状に怯え、私立探偵の明智小五郎(井上)を呼び寄せる。宿泊中のホテルには岩瀬の上得意である緑川夫人(中谷)もいたが、実は彼女こそ脅迫状を送った女賊の黒蜥蜴その人であった。互いに尋常ならざるものを感じとる明智と緑川夫人。そんな中、緑川夫人は早苗に、部下の美青年・雨宮(成河)を紹介し……。2012年の舞台『ルドルフ ザ・ラスト・キス』でルヴォーの演出を受けている井上は、「ルヴォーさんは、とにかく人たらし。スタッフ一人ひとりにまで声をかけてくださるから、誰もが彼のファンになってしまうんです(笑)。僕もルヴォーさんの作品にまた出たかったので、こんな素晴らしい作品でご一緒できるなんて二重の喜びですね」と語る。一方、今回が“ルヴォー組”初参加となる成河からは「当初、もっとフレッシュな俳優さんが雨宮役に相応しいのではと思っていたので、そうルヴォーさんにお伝えしたんですよ」と驚きの発言が。「でも実際に彼と演劇について話しているうちに、段々と考えが変わってきて。『成河が蓄えてきた、フィジカルな部分も引き出して舞台を作りたい』と言っていただいたことが、出演の決め手となりました」と、絶妙な配役に至る一端を明かしてくれた。インタビュー中も互いに茶々を入れるなど、仲の良い様子がうかがえるふたり。井上は成河について、「オン・オフ含めて『いま何を考えてるの?』と、つい聞きたくなる人。自然と本音を漏らしてしまう相手でもありますね」と話す。成河はそれを「井上くんはミュージカル出身で、僕は泥臭い小劇場演劇から始めた人間。守備範囲が微妙に異なるから、他では言えない話もできるんじゃないかな」と分析する。「それでも、根本的なところで話が合うのは事実。僕は彼のことを、輸入品である“ミュージカル”を日本に浸透させることができる人だと思ってますから」と盟友への言葉は止まらず、思わず井上が笑いだすひと幕も。信頼で結ばれた井上と成河が響き合い、共に作り出す『黒蜥蜴』の世界。それがどんな様相を示してくれるのか、本番が楽しみだ。舞台『黒蜥蜴』は2018年1月9日(火)から28日(日)まで東京・日生劇場、2月1日(木)から5日(月)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。取材・文佐藤さくら
2017年10月13日ふだん美術に興味がない人でも、モネやルノワール、セザンヌ、マネ、ファン・ゴッホなどの名前は聞いたことがあるだろう。加えてドガ、ゴーギャン、ピカソといった“超スター級”の画家の作品が集結する夢のような展覧会が、この『至上の印象派展 ビュールレ・コレクション』だ。スイスの実業家エミール=ゲオルク・ビュールレ(1890~1956年)が収集した、世界有数のプライベート・コレクション。まとまって来日するのは実に27年ぶりのことで、2020年にはチューリヒ美術館に移管されることが決まっていることから、その全貌を日本で見られるのは、これが最後のチャンスとなる。その記者発表会が7月12日、東京の会場となる六本木の国立新美術館で行われた。至上の印象派展 ビュールレ・コレクション チケット情報会見では、在日スイス大使館公使のピーター・ネルソン氏が「スイスにとっても重要なコレクション」と、本展の内容が国家レベルであることに言及。続いてE.G.ビュールレ・コレクション財団館長のルーカス・グルーア氏が登壇し、門外不出といわれてきたモネの《睡蓮の池、緑の反映》が日本初公開となることが明かされた。同作品はモネが描いた一連の睡蓮作品のなかでも、高さ2メートル、幅約4メートルもの大きさを誇る大作。モネの死後、アトリエに保管されていたものを、ビュールレが自分の目で見て購入を決めた作品で、モネの最高傑作のひとつと言われている。その後、国立新美術館主任研究員である山田由佳子氏が、本展の構成を解説。テーマごとに分けられた各セクションの中でも、同コレクションの中核を成す印象派とポスト印象派の作品を展示するチャプター4から7は、美術ファン垂涎の傑作が並んでいる。「背景の深緑の茂みがあどけない少女の表情を浮き立たせている」(山田氏)ルノワールの《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》。近代美術の金字塔といわれるセザンヌの《赤いチョッキの少年》や、マネが印象派への興味を深めていったことを示す《ベルビュの庭の隅》、のちの点描のような筆致がうかがえるモネの《ジヴェルニーのモネの庭》。さらにファン・ゴッホ、ゴーギャン、ピカソ……と、本展の見どころを語れば枚挙にいとまがない。同展は東京・国立新美術館(2018年2月14日(水)~5月7日(月))で開催後、九州国立博物館(同5月19日(土)~7月16日(月・祝))、名古屋市美術館(同7月28日(土)~9月24日(月・祝))でも開催の予定だ。繰り返すが、同コレクションの中から約60点もの傑作がそろって来日するのは正真正銘、これが最後。しかもその半数が日本初公開というのだから、この機会にぜひ目にしておくべきだろう。チケットぴあでは、東京開催分のペアチケットを10月12日(木)午前10時より発売。取材・文佐藤さくらAll images:(c)Foundation E.G. Buhrle Collection、Zurich (Switzerland) Photo: SIK-ISEA、Zurich (J.-P. Kuhn)
2017年10月12日芝居にダンスコンサートにと精力的に活動を続けている水夏希。彼女が2年前に出演した朗読劇が、同じ石丸さち子の脚本・演出によって、今度はストレートプレイとしてよみがえる。今もアルゼンチンの国民に愛され続けているエバ・ペロン(エビータ)の波乱の人生を、タンゴの生演奏に乗せて描く意欲作。「人生は車輪みたいなものよ。上になる時があれば、下になることもある」というエバの言葉も印象的な本作について、稽古中だった水に聞いた。舞台『ラストダンス-ブエノスアイレスで。聖女と呼ばれた悪女エビータの物語』チケット情報バンドネオンの演奏が流れる、とある酒場。泥酔した政治家アロンソ(福井貴一)の目に、死んだはずのエビータ(水)と彼女の兄ファンシート(伊万里有)の姿が浮かび上がる。エビータは、女優を夢見て田舎町からブエノスアイレスにたどりついた少女時代から、より大きな夢を追い求めるうちに大統領夫人となっていたことなど、33年の短い人生を語り始める。ファーストレディの枠を超えた行動に眉をひそめる者が多かった一方、 “エビータ”という存在を支えていたのはデスカミサドス、つまり労働者たちだった。影のように彼女にまとわりつく“デスカミサドス”(SHUN/大村俊介)を傍らに、エビータは愛を求め続けた人生について振り返る。台本は、蜷川幸雄のもとで研鑽を積み、近年演出家としてひっぱりだこの石丸さち子によるオリジナル脚本。美しく硬質な文体が印象的だが、エビータのセリフは膨大だ。「石丸さんの選び抜かれた言葉は、一つひとつをどう言うかで芝居が変わってきますし、その背景にきちんと意味を持たせるには、やっぱり自分自身の人生とひもづけていくことが必要になる。たった3行のセリフに何時間も稽古の時間を割いていて……まぁ大変です(笑)」と語った水。一方で「エビータの人生を表す演者の共通認識として、“絶望”というのがあるんです。ただそれは真っ暗な“絶望”ではなくて、まぶしくて目がくらむほどの“絶望”だったんじゃないかと。そのイメージを手がかりに稽古を進めています」と、役への手応えを感じている様子だ。穏やかな表情でインタビューに答える水と、いまだ毀誉褒貶が相半ばするエビータ。「私はいたって普通の人間なので、確かにエビータをそのままなぞることは難しいですね(笑)。ただ彼女のエゴイスティックに見える部分は、コンプレックスを抱いているから上を目指して努力する、そんなところから始まっているように思えます。それは確かに私の中にもあるし、もしかしたら誰でも覚えのあるものなのかもしれないですよね」と水は言う。「だからこそ、いろんな人に観てもらいたい」と充実の表情を浮かべる水。新たな“エビータ”が息づく舞台を、ぜひ劇場で目撃したい。本公演は9月28日(木)から10月9日(月・祝)まで、東京・DDD AOYAMA CROSS THEATERにて上演中。取材・文佐藤さくら
2017年09月29日ファッションや映画など多様な文化を滋養にして、美しくしなやかに生き方を主張するパリジェンヌたち。世田谷美術館で開催する『ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち』のキャッチコピーも「『パリジェンヌ』は流行じゃなくて、生き方です!」とある。アメリカ・ボストン美術館所蔵のマネやドガ、ルノワールなど印象派の絵画のほか、写真やイラスト、服飾資料なども展示し、多角的に“パリジェンヌ”の源泉をたどる本展。その記者発表会が9月5日、三軒茶屋の世田谷文化生活情報センターで行われた。【チケット情報はこちら】会見では世田谷美術館・学芸部主査の塚田美紀氏が登壇し、5つのチャプターに分けられた本展について解説。チャプター1では、ルイ14世の死去により、文化の中心がヴェルサイユから、裕福な市民のサロンがあるパリへと移行する様子を紹介。技巧を凝らしたドレスや、日本の有田焼まで取り入れたティーセットも展示される。チャプター2では、フランス革命後、19世紀に見られた女性への視線が示される。小説家として活躍するような進歩的な女性も当時は登場していたが、フラゴナールの『良き母親』に見られるように「パリジェンヌの実態というよりは、社会的に期待されたイメージ」(塚田氏)が数多く描かれた。チャプター3では、19世紀半ばにパリの街の大改造が行われたことで、市民の消費も拡大。パリジェンヌのモードが発展を遂げ、ついには世界中で注目を浴びるに至った様子が示される。サージェントの『チャールズ・E.インチズ夫人』は、パリジェンヌ風のドレスに身を包んだアメリカの女主人を描いた名作だ。続くチャプター4では、いよいよ19世紀後半にルノワールやドガら印象派の巨匠たちの作品が登場する。中でも注目は、マネの大作『街の歌い手』。今回は約70年ぶりの修復後、初の公開となる。その後も画家たちのミューズとなった多くの女性たちや、カサットやモリゾなどの女性画家、またサラ・ベルナールら女優の台頭によって、パリジェンヌの名声は高まってゆく。チャプター5では、20世紀に入ってのカルダンやバレンシアガのドレスや、踊り子のイラスト、モデルや女優の写真までを紹介。5つのチャプターをたどることで、パリジェンヌが後世の文化にいかに影響を与えたかを改めて感じられる内容になっている。本展は2018年1月13日(土)から4月1日(日)まで東京・世田谷美術館で開催。その後は4月11日(水)から6月10日(日)まで広島・広島県立美術館にも巡回予定。取材・文佐藤さくらPhotographs(C)Museum of Fine Arts, Boston
2017年09月19日2015年に宙組トップスターとして宝塚を退団後、『1789-バスティーユの恋人たち-』のマリー・アントワネット役や『花・虞美人』の虞姫役など、圧倒的な美貌と三拍子そろった実力で女優活動を続けている凰稀かなめ。そんな彼女が大切にしてきたライブ活動の一環として、今年は『凰稀かなめ Autumn Show』が帝国ホテル大阪とヒルトン東京お台場で開催される。昼のランチショーは『付き人さんと秋の空』、夕刻のカクテルショーは『今宵あなたとBar Phoenix』とサブタイトルに掲げられている本公演。気になるその内容について、凰稀に聞いた。凰稀かなめ Autumn Show チケット情報“付き人さん”“Bar Phoenix(のマスター)”とは、凰稀が昨年、一昨年と上演してきたライブコンサート『The Beginning』シリーズで登場したキャラクター。前者はおかっぱ頭に丸メガネのジャージ姿、後者はオールバックも端正なイケメンで、どちらも観客から絶大な人気を得ている。「『The Beginning』シリーズのテイストは残しつつ、今回はお食事付きなので、ショー部分は1時間にまとめなくちゃいけない。その中でいかにお客様に楽しんでいただけるか考えていて、メインの内容はランチショーとカクテルショーとで分けることにしたんです」と凰稀は話す。「私自身お笑いが好きなので、まずコメディ要素は必須。その上で、久しぶりにお客様がキュンキュンする男役っぽいシーンも取り入れてみようかな」と言う凰稀。今回のテーマは“一体型”ということで、客席はどの程度参加するのか問うと、即答で「だいぶ」という答えが返ってきた。「恥ずかしがらずに一緒に楽しみましょう」との発言は、最後列や隅々まで客席のお客様の顔を見るのが好きという凰稀の想いからだろう。演出は『The Beginning』も担当したTETSU(Bugs Under Groove)、共演は白華れみ他、こちらもおなじみの面々。“サプライズ”も考え中というから、お楽しみ満載のショーになりそうだ。舞台以外にも、ドラマ『トットちゃん』(10月より、テレビ朝日系列)にエミー市川役として出演。11月22日(水)には全10曲収録のファーストアルバムをリリースするなど、着々と活躍の場を広げている凰稀。「舞台とは違う作り方をするドラマや、アルバムのレコーディングなど、毎日いろいろやらせていただいて楽しい」と笑うが、「“瞬発力”を必要とされるドラマの演技は、初めてのもの。まだまだ勉強中ですね」とサラリ。しなやかに、誠実に、ひとつひとつの作品と向き合う凰稀の活躍が、今後も楽しみだ。公演は9月10日(日)帝国ホテル大阪 孔雀西の間、9月24日(日)ヒルトン東京お台場 ペガサスにて。取材・文佐藤さくら
2017年09月06日人気アニメ「カードキャプターさくら」とファッションブランド「リディア(Rydia)」がコラボレーション。アニメの世界観を反映したバッグパックとマルチケースが、2017年9月下旬より発売予定だ。「カードキャプターさくら」は、少女漫画雑誌『なかよし』にて連載した人気漫画。主人公のさくらと守護獣ケルベロスにまつわるストーリーで、その後アニメ・映画となり、さらにゲーム化もされ多くのファンを魅了した。登場するバックパックは、さくらが通う学校の制服イメージをデザインに落としこんだもの。フロントには"星の杖"をイメージしたエンブレムが刺繍されている。コラボレーションの証として、ジップ部分には「リディア」のアイコンであるコビニャーのチャームをあしらった。かわいいだけでなく、A4サイズも楽々入るサイズ感で機能性も抜群。サイドジップからは、バッグを背負ったまま中の物を取り出せるなど、細やかなディテールにもこだわっている。そして、アニメの中に登場する”さくらカード”をモチーフにしたマルチケースも展開。ジップにはケロちゃんこと守護獣ケルベロスのチャームが付いている。窓付きクリアポケットには、定期やIDカードも挿入可能。こちらもコラボレーションを記念して「リディア」のアイコンコビニャーのブランドロゴがプリントされている。【アイテム詳細】カードキャプターさくら×リディア(Rydia)・カードキャプターさくら×Rydiaセーラーリュック 12,000円+税カラー:ブラック発売時期:2017年9月下旬~10月上旬予定・カードキャプターさくら×Rydia パスマルチケース 5,990円+税カラー:ピンク発売時期:2017年9月下旬~10月上旬予定取扱店舗:WORLD WIDE LOVE!、Rydia各店、Rydia公式サイト、WEB SHOP「ZOZOTOWN」「ファッションウォーカー」など※「ZOZOTOWN」「ファッションウォーカー」のみ8月31日(木)より先行予約開始。
2017年09月03日民族舞劇や歌舞、器楽などを融合してオリジナル作品を上演する総合芸術団体・上海歌舞団が、2年前の日本ツアーで大好評を博した『朱鷺』で待望の再来日中だ。『羽衣伝説』や『白鳥の湖』などの伝承・民話をモチーフに、村の青年ジュンと朱鷺の精ジエの時空を超えた愛を描いた物語。8月29日、東京・Bunkamuraオーチャードホールで全国公演の幕が開いた。舞劇『朱鷺』チケット情報一幕は、淡いグラデーションで水墨画のように描かれた山々を背景に、古代の農村の様子が綴られる。村の青年ジュン(王佳俊)が薪を拾いに山の奥深くに入ると、湖のほとりで仲間たちと無邪気に集う朱鷺の精ジエ(朱潔静)がいた。朱を含めて朱鷺を演じるダンサーたちは細くしなやかで、羽衣とも朱鷺の羽根とも見える布をなびかせながら踊る姿は、まさに『羽衣伝説』に登場する天女のイメージだ。ジュンとジエはひと目で恋に落ち、夕陽が落ちるまでのひと時を睦まじく過ごす。だがジュンがふと目を覚ますと、ひとひらの羽根を残してジエの姿はなく……。ジュン役の王は、薪を村人に分け与えるほどの誠実さをもった青年が、初めて出会ったジエにもまっすぐ惹かれていくさまを好演。一方、「佐渡島で朱鷺の様子を観察しました」という朱は、朱鷺らしい動きを巧みに取り入れつつ、ジュンへの想いを優美に表現している。それは儚い女性性の表れのようでもあり、疲れて眠るジュンを包み込む、母なる大地の象徴のようでもある。壮大でドラマチックな楽曲に乗せて、朱鷺の精たちが一糸乱れぬアンサンブルを繰り広げるシーンも必見だ。一幕のラスト、消えたジエを探してさまようジュンの後ろを、朱鷺たちが滑るように次々と横切って消えてゆく場面は神秘的ですらある。物語は二幕で、産業革命を迎えて朱鷺が絶滅の危機に瀕した近代、さらに21世紀の現代へと続く。ジュンとジエの魂が時を越えて出会い、別れてゆく中で、次第に浮かび上がってくるものとは。観終わった後、観客それぞれの胸にその答えが残るだろう。初日公演を前に行われた囲み会見では、オフィシャルサポーターとして谷村新司と草刈民代が登壇。「初めてDVD(で舞台映像)を観た時、アンサンブルの凄さにビックリしました」というのは谷村だ。「朱さんの踊りは素晴らしいし、王さんはチャーミングなので、日本でもファンがとりこになりそう(笑)。この後、ナマで観られるのでワクワクしています」と話した。草刈は「『白鳥の湖』の群舞は有名ですが、『朱鷺』の群舞はそれとは全く別の凄さがあり、心が奪われます。なかなかこういう出合いはないと思うので、ぜひ堪能してください」と、元ダンサーならではの視点で魅力を語ってくれた。オーチャードホール公演は本日8月30日(水)まで。その後、9月2日(土)・3日(日)愛知県芸術劇場 大ホール、9月6日(水)から10日(日)まで東京国際フォーラム ホールC、9月13日(水)・14日(木)大阪・オリックス劇場を巡演。取材・文佐藤さくら
2017年08月30日昨年、人気声優と俳優が勢ぞろいしたキャストと美しい舞台装置、豪華な衣裳という、朗読劇の枠を超えたステージで話題を呼んだ『VOICARION(ヴォイサリオン)』。第2弾となる今回は、サブタイトルに『GHOST CLUB(ゴーストクラブ)』と銘打ち、作家のコナン・ドイル卿が奇術師ハリー・フーディーニと共に事件を解決していくさまを描く。原作・脚本・演出を担当する藤沢文翁と、日替わりキャストの中から宝塚OGの紫吹淳と春野寿美礼、妃海風に話を聞いた。朗読劇「VOICARIONII~ヴォイサリオン~」チケット情報19世紀のロンドン。小説『シャーロック・ホームズ』で人気作家となったコナン・ドイル卿(春野)は、最終巻でホームズを死なせたことで世間の批判にさらされていた。しかもホームズ(朴ロ美 ※ロは王偏に路)までもが妄想の中に現れ、ドイル卿をからかう始末。そんな中、天才奇術師ハリー・フーディーニ(紫吹)と出会ったドイル卿は、霊媒師のインチキを見抜いた彼にホームズの面影を見る。ロンドン中にあふれる幽霊事件を解決するべく“ゴーストクラブ”を結成したふたりの前に、貴族の当主で15歳のデズモンド(妃海)が現れて……。「藤沢さんの世界観が大好き」と言う紫吹は、「男性の役とはいえ、藤沢作品でのメイクや芝居は宝塚の“男役”とは別。声や仕草で男に見せ、ドラマチックな空間に仕上げるのが“藤沢マジック”だなぁと思います」と全幅の信頼を寄せる。一方、「宝塚OGのイベントなどで“男役”をすると、いまだに気持ちが盛り上がっちゃう」と笑うのは春野だ。「ただ、今回は初めての朗読劇。ドイル卿を演じるにあたって今まで培ってきたものがどう出るのか、自分でも楽しみです」と話す。また、大先輩の紫吹と春野を前に「同じ舞台でご一緒できるなんて夢みたいです」と緊張の面もちの妃海。「宝塚では元気な役が多かったので、謎めいた少年の役なんて初めて。新たな挑戦だなと思っています」と初々しく語った。気になる衣裳については、「フーディーニはアメリカ人のマジシャンなので、優男の遊び心が入った衣裳。ドイル卿は英国紳士らしく、スーツのイメージですね」という藤沢。「東宝の衣裳部さんがやけに力を入れてくださっているおかげで(笑)、キャストはシリーズのアイコンである、王冠を模したチャームを衣裳のどこかに付けています。ぜひ客席から探してみてください」と、観劇のヒントも教えてくれた。さて、紫吹と春野は意外にも、今回が退団後初共演。だが「“同じ釜の飯を食った仲間”の安心感」(紫吹)、「ずっと勝手に親近感を持ってました」(春野)と、早くも息はぴったり。彼女たちによるめくるめく舞台を、今から期待して待ちたい。公演は8月31日(木)から9月7日(木)まで東京・シアタークリエにて。取材・文佐藤さくら
2017年08月24日日本の映画黄金期より、第一線で活躍を続けてきた女優・岸惠子。パリ生活を綴ったエッセイや中東へのハードなルポ、近年では小説『わりなき恋』のヒットで作家としても知られる岸が、秘蔵写真と共にトークを繰り広げるのが本作だ。1932年に横浜で生まれた岸は、映画『君の名は』の真知子役で国民的スターとなりながらも、その進取の気性としなやかな感性によって、自らの人生を選び取ってきた。8月9日、全国ツアーの幕開けとなった東京・なかのZERO大ホールに足を運んだ。岸惠子スペシャルトークショー~夢のあとさき~ チケット情報スクリーンに懐かしい写真が次々と映し出され、岸のナレーションが重なってトークショーがスタート。ほどなくして登場した岸は、「50年前にあつらえた」というゴールドのドレスで登場。“スター岸惠子”の変わらぬあでやかさに、満員の客席からはため息が漏れる。第1部は、岸が12歳の時に被災した横浜大空襲の話から。「この日、自分の意思で動くという意味で“大人”になったのだと思います」というエピソードが、聞く者の胸に迫る。続いて、出演作の中でも岸が大好きだという映画『雪国』(豊田四郎監督、1957年)と、『おとうと』(市川崑監督、1960年)の紹介と、監督や共演者との逸話を。それぞれ「(役作りに)苦労したから好きなんです」というのがいかにも気骨のある岸らしく、当時の映画界の裏話も興味深い。一方、当時のハリウッドで行われたという岸のお披露目パーティーには、ウィリアム・ホールデンやジョン・ウェインなど名だたる映画スターが登場。ケーリー・グラントの名前をゲイリー・クーパーと間違えるなど、岸自身が「そそっかしいの」と認めるエピソードには、客席からも笑いが起こった。休憩を挟んだ第2部では、鮮やかな赤いジャケットに衣装替え、トークは作家・岸惠子の本懐へと触れてゆく。「たくましさの中のお茶目なユーモアが素晴らしいと思った」というユダヤ人の友人との話。1980年代に、すんでのところで暗殺事件に遭遇しそうになり、「イスラムってなんだろう」と思うようになったという話。どれも過去の出来事ではなく、現在の世界と日本につながっていると語る岸の姿が印象的だ。初日の前に行われた囲み会見では、「来てくださった方に“こんな人生もあるんだ”と思っていただければ」と話していた岸。ちょうど初日直後の8月11日に85歳の誕生日を迎えるとあって、変わらぬ美しさとバイタリティについて問われると、岸は「元気に見えるとしたら“苦労が多いこと”ね。いろんな“事件”に対処するため、普通の優しいおばあさんにはなれないのかもしれません」と笑顔で語った。過去を振り返るだけでなく、そこから未来への眼差しも感じられた本作。公演地によって内容も変わるというから、今後の上演も楽しみに待ちたい。「岸惠子スペシャルトークショー~夢のあとさき~」は8月から11月まで日本全国全19会場にて開催。チケット発売中。取材・文佐藤さくら
2017年08月21日中国の伝統舞踊や歌舞、声楽、器楽にクラシックバレエやモダンダンスを融合させた総合芸術団体として、世界中で上演を重ねている上海歌舞団。日本でも2005年に『覇王別姫』、2007年には『WILD ZEBRA』と公演のたびにファンを増やしており、今回は2年前の日本ツアーで絶賛を浴びた『朱鷺』が待望の再来日だ。日中国交正常化45周年を祝う記念公演でもある本作。8月の公演を前に、7月19日、メインダンサーの朱潔静と王佳俊、オフィシャルサポーターを務める草刈民代を迎えて制作発表会が行われた。舞劇『朱鷺』-TOKI- チケット情報本作では『羽衣伝説』や『白鳥の湖』などの異類婚姻譚をモチーフに、村の青年ジュンと朱鷺の精ジエの時空を超えた出会いと別れが描かれる。朱と王の表現力豊かな踊りはもちろん、東洋の切り絵を思わせる舞台美術や、切なくドラマチックな楽曲、美しいグラデーションの衣装、一糸乱れぬアンサンブルなど見どころも満載だ。物語は終盤、自然破壊を繰り返す人類と消えゆく朱鷺の姿も描かれ、現代社会に警鐘を鳴らす作品となっている。上海歌舞団団長・陳飛華は「今年は総勢70名と、2年前より大きな規模で来日いたします。本作のテーマは“地球、生命、人類”。細かいところまで手を加えており、さらに良い舞台になっていると思います」と話した。「セットや衣装など、すべての面でアジアの美学を込めた作品。必要なのは、とても細かい動きや表現です」と言うのは、スラリとした美女の朱だ。「こういう朱鷺の動きを踊りに取り入れています。実際に朱鷺の様子を一日中観察したんですよ」と、立ち上がって腕を背と頭に巻き付けるような動きを披露した。王も「最後のほうの現代の場面では、無機質なセットに、踊りもコンテンポラリーダンスに近いものになります」と、叙情的な古代の場面とは異なる面もあることを解説。「日本のアニメやラーメンが大好き。終演後の楽しみです」と照れ笑いするなど、端正な横顔に若い青年らしい素顔をのぞかせた。オフィシャルサポーターとして登壇した草刈は、上海歌舞団の魅力を「中国文化のテイストが土台にある上で、素晴らしい舞台が展開されているところ。それはこの舞踊団にしか表現できないものです」と語る。「ダンサーも国によって特徴や魅力があるんですよ。王さんは美しくてたくましいですが、けしてマッチョではない。朱さんも優しいたたずまいですが、強さも感じさせるのが魅力です。アンサンブルのフォーメーションがビシッと揃っているところも、東洋のカンパニーならではと感じますね」と、海外での舞台経験も多い元ダンサーならではの視点で話した。草刈も太鼓判を押す、唯一無二の舞台。公演は8月29日(火)・30日(水)東京・Bunkamura オーチャードホール、9月2日(土)・3日(日)愛知県芸術劇場 大ホール、9月6日(水)から10日(日)まで東京国際フォーラム ホールC、9月13日(水)・14日(木)大阪・オリックス劇場にて。取材・文佐藤さくら
2017年08月04日グレゴリー・ペックが新聞記者のジョーを、そしてオードリー・ヘプバーンがアン王女を演じた名作『ローマの休日』(1953年)。近年では、当時のアメリカで吹き荒れた“赤狩り”でハリウッドを追われた脚本家ダルトン・トランボが、名前を隠して原作を書いたことでも知られている。この舞台版では、脚本・演出担当のマキノノゾミが、ダルトンが抱えていた背景をジョーに投影。映画版の叙情性にひとさじの社会性を加え、2010年の初演時には見事、菊田一夫演劇賞を受賞した。今回は再々演にして、初演でアン王女を演じた朝海ひかるが復活。7月30日、東京・世田谷パブリックシアターで初日の幕が開いた。【チケット情報はこちら】1950年代のイタリア。新聞のローマ支局に勤めるアメリカ人記者ジョー(吉田栄作)は、ある晩、泥酔した様子の若い娘を部屋に泊めることになる。翌朝彼は、その娘が表敬訪問中の某国のアン王女(朝海)であること、さらに今朝の会見が中止になっていることを知る。早速スクープのネタにしようと、カメラマンのアーヴィング(小倉久寛)を呼び出し、アンを“ローマの休日”に連れ出すジョー。そんな中、アンは、ハリウッドのシナリオライターだったジョーが新聞記者をしている理由を聞かされる。一方のジョーも、次第に無邪気でまっすぐなアンに惹かれてゆき……。吉田は安月給の記者に身をやつしながらも、アンとのやりとりの中に本来の誠実さをのぞかせるジョーを好演。しなやかな立ち姿がオードリーのアン王女そっくりの朝海は、コミカルな序盤から終盤の毅然とした振る舞いまで、生き生きと演じて魅力的だ。生硬さが持ち味のふたりに対し、小太りながら伊達男を気取るアーヴィング役、小倉の軽妙さが効いている。ジョーと自分が巻き込まれた“赤狩り”をアンに語る場面では、小倉の静かな語り口に味わいがある。ヘプバーンやイタリア名所を味わう映画版が水彩画とすれば、本作は、ジョーの物語を鉛筆で丁寧に描いたスケッチのおもむきだ。シンプルだが温かみにあふれた舞台は、物語に潜む普遍性をハッキリと浮き彫りにする。ジョーがふと漏らす“人生は、ままならない”という言葉に、アン王女が“私もそうよ”と返すシーンが、新たな感慨をもって胸に迫る。初日の特別カーテンコールでは、吉田が「ひとつの作品に7年ごしに携われる幸せを感じています。こうして今日、舞台で生きていられることに感謝したい」と想いを込めて挨拶。朝海も「この作品に再び戻れることが出来て、本当に幸せです」と感動しきり。小倉が「今回は3回め(の上演)なので、ひと回りもふた回りも(演技を)大きくして……」と言いながら腹を揺らすと、客席からは大きな笑いが。舞台版ならではの温かさを存分に感じた初日となった。公演は8月6日(日)まで。チケット発売中。取材・文佐藤さくら
2017年08月01日日本でも人気の画家フィンセント・ファン・ゴッホ(1853ー1890)は、浮世絵など日本美術に強い興味を抱いていたことが知られている。一方で日本でのゴッホブームも意外に早く始まっており、彼の死後30年が経った1920年代には、多くの日本人画家がフランス・オーヴェール(ゴッホの没した地)を訪れている。今夏開催される『ゴッホ展 巡りゆく日本の夢』は、ゴッホが愛した“日本”とその作品の軌跡をたどると共に、日本の画家や作家がゴッホから受けた影響までを展示する大規模な展覧会だ。オランダにあるファン・ゴッホ美術館と6年をかけた初の本格的共同企画展で、日本初公開作品も目白押しというから見逃せない。ゴッホ展 巡りゆく日本の夢 チケット情報3月14日に行われた会見では、総合監修を務めた圀府寺司氏(大阪大学文学研究科教授)が本展のユニークな内容を解説。第1部「ファン・ゴッホのジャポニズム」では、オランダに生まれ、1886年にはパリに移ったゴッホが、浮世絵などから構図や色彩を学んでいく課程が示される。渓斎英泉の『雲龍打掛の花魁』を模写し、理想郷“日本”に似た風景を追い求めて移り住んだアルルでは『雪景色』(日本初公開)を描き上げたゴッホ。「雪の中で雪のように光った空を背景に白い山頂を見せた風景は、まるでもう日本人の画家たちが描いた冬景色のようだった」と自ら語るとおり、その灰色の色彩は確かに日本の寒村を思わせる。また『寝室』については「日本人はとても簡素な部屋で生活した」「(この作品では)陰影は消し去った。浮世絵のように平坦で、すっきりした色で彩色した」とも語っており、日本文化そのものへの敬愛がうかがえる。続く第2部「日本人のファン・ゴッホ巡礼」では、今度はゴッホに魅せられた日本人の、ゴッホへの想いが明らかにされる。ゴッホの死後まもなく彼の生涯や作品を紹介したのは、武者小路実篤や岸田劉生ら白樺派と、その周辺の文学者や画家たち。ゴッホを看取ったガシェ医師の家には、生前売れなかったゴッホの作品が残されていたこともあり、多くの日本人が同家を訪れて芳名録に署名した。本展ではこの芳名録(フランス・ギメ東洋美術館蔵)を日本初公開するほか、同地を描いた佐伯祐三ら日本人画家の作品や、日本画家の橋本関雪がガシェ家を訪問した際の記録映像など、貴重な動画も併せて公開される。本展は北海道立近代美術館(8月26日~10月15日)、東京都美術館(10月24日~2018年1月8日)、京都国立近代美術館(2018年1月20日~3月4日)と巡回。その後はアムステルダムのファン・ゴッホ美術館でも開催され、カタログは最新の情報を盛り込んで日本語、英語、オランダ語など数ヶ国語で出版される予定だ。ここでしか見られない、人間・ゴッホのリアルな姿。想像以上の日本との関わりに、新鮮な感動を呼び覚まされる展覧会になりそうだ。取材・文佐藤さくら
2017年06月30日越路吹雪の『愛の讃歌』やミュージカル『レ・ミゼラブル』などの訳詞、さらに加山雄三や郷ひろみら名だたる歌手たちへの作詞提供で知られる故・岩谷時子。その遺志を汲み、音楽・演劇関係の功労者と、新たな人材に向けて授与されるのが「岩谷時子賞」だ。第8回となる今年、受賞者の加山雄三や斉藤由貴らが顔を揃えるなかで「岩谷時子賞奨励賞」を受賞したのが、発達障害のあるピアニストとしてメディアでも注目の野田あすかだ。その受賞式が6月12日、都内ホテルで行われた。野田あすか チケット情報「発達障害」は生まれつきの脳機能障害だが、知的障害が伴わない場合は家族も気づかないことがあり、単に“人とコミュニケーションが出来ない人”“空気を読めず衝動的な行動をする人”として集団生活になじめないことが多い。その苦悩から、鬱病やパニック障害などの二次障害を引き起こすこともしばしばだ。野田も4歳からピアノを習い、宮崎大学に進学したが、それまでにいじめや転校、自傷などを経験。大学を中退し、ようやく「広汎性発達障害」の診断を受けたのが22歳の頃。その後は宮崎学園短期大学で本格的に音楽に取り組んだことで、見事に才能が開花した。24歳で受賞した第12回宮日音楽コンクールのグランプリを筆頭に、35歳になる今日まで受賞歴は多数。2015年と2016年にはCDブックを上梓し、今春、東京で行われた2日間のリサイタルは満員を記録し、大阪に続き、7月1日(土)には野田の地元・宮崎でもリサイタルを予定している。車椅子に乗って登壇した野田は、プレゼンターの市村正親から記念のクリスタルを受け取ると、さっそく光にかざして大喜び。「綺麗です、ありがとうございます」と挨拶すると、ピアノの前に移動。そこで再びマイクをとると、「私はプロのピアニストとしてスタートしたばかり。こんな立派な賞をいただけたのは、もしかしたら岩谷先生が『あなたは周りに幸せをもらったから、今度はたくさんの人が“生きていて幸せだな”って思える音楽を伝えていってね』とおっしゃっているのかなと思いました」と素直な胸中を語った。続いて演奏は、「どんな人でも毎日が楽しいという人はいない。哀しみを乗り越えるのも大切かもしれないけれど、どっぷり浸ることでいつか希望が見えてくるという気持ちを込めました」という自作曲『哀しみの向こう』。薄明かりの中を進むような、繊細で切ない旋律から、後半は次第に明るさを増していく曲調が印象的だ。最後に登壇した審査委員で作曲家の都倉俊一からは、「僕もいろんな音楽を聴いてきたけれど、野田さんのは心にジーンとくるピアノ。よく“その人の経験が音色に表れる”というが、このことだなと思った」との言葉が聞かれた。野田だからこそ出せる音色の数々。今後のさらなる活躍に期待したい。取材・文佐藤さくら
2017年06月16日英国北部の炭鉱町で普通の少年が偶然バレエに夢中になり、大人たちを巻き込みながらも、やがてプロのダンサーを目指すまでを描いた映画『ビリー・エリオット』(邦題は『リトル・ダンサー』スティーヴン・ダルドリー監督)。2005年にはダルドリー自ら舞台化、エルトン・ジョンが楽曲を担当してトニー賞の10部門を獲得するなど、21世紀のマスターピースともいえるミュージカルだ。その待望の日本版を7月に控え、6月10日、都内のスタジオで公開レッスンが行われた。ミュージカル『ビリー・エリオット』チケット情報まずは演出補のサイモン・ポラードより、「私たちは昨年4月から1年かけてレッスン形式のオーディションをし、(主人公の)ビリー役を5人、(友人の)マイケル役を4人、500人以上の男の子から選びました」とアナウンス。これは初演のロンドン版、その後のブロードウェイ版も同様で、今回の日本版が世界基準に倣っていることを示すものだ。まずは1幕6場。ボクシングの練習に来ていたビリーが、女の子たち(バレエガールズ)のバレエレッスンに紛れ込んでしまう場面だ。登場するウィルキンソン先生(柚希礼音/島田歌穂とWキャスト)は色あせた服にくわえタバコという、いかにも場末のバレエ教師といういでたち。だが厳しくも的確にレッスンをつけていく様子は、ただ者ではない風格がある。年齢も体型もバラバラのガールズと繰り広げるナンバーはどこかコミカルで、面食らって右往左往するビリーがほほえましい。ふたつめは、炭鉱夫と警官とがストで衝突するナンバーに、ビリーのレッスン風景も織り交ぜて町の日常を描く1幕9場。バレエの稽古場に炭鉱夫の父親(吉田鋼太郎/益岡徹とWキャスト)が怒鳴り込んでくる1幕10場へと続く。“バレエは女の子かオカマがやるもの”と決めてかかっている父親なのだが、息子ビリーへの不器用な愛情が伝わるのは吉田ならでは。一歩も引けを取らない柚希との対峙は迫力がある。3つめは1幕12場、ビリーとマイケルのタップダンスだ。公開レッスンということで5人のビリーと4人のマイケルが登場、芝居をしながら難しいタップを踏むさまに驚く。初々しくも充実した表情を見せる彼らに、ますます本番の期待が高まった。囲み会見では「子どもたちは厳しいレッスンにもまっすぐ取り組んでいてすごい」と明かした吉田。続けて「来日スタッフも“今日はここまでにしましょう”という妥協がない。歌とダンスと芝居の三位一体を目指して頑張りたいね」と語った。また「稽古場でいいところも悪いところもさらけ出す子どもたちを見ると感動して……」というのは柚希だ。「(その過程も)この作品の演出の一部ということ。ぜひ細かいところまで見てほしいです」と、役柄そのままに子どもたちを思いやった。公演は7月19日(水)から10月1日(日)まで東京・TBS赤坂ACTシアター、10月15日(日)から11月4日(土)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて。取材・文佐藤さくら
2017年06月12日1989年にスタジオジブリでアニメーション映画化され、大ヒットしたことで知られる『魔女の宅急便』。児童文学作家・角野栄子氏の原作をもとに、3年前には実写映画化。昨年にはブロードウェイに並ぶ演劇の聖地、イギリスのウエストエンドで舞台化されるなど、その人気はますます広がりを見せている。ミュージカル『魔女の宅急便』は、注目の17歳・上白石萌歌を主人公のキキに据え、若手制作陣で贈るフレッシュな舞台。ミュージカル『魔女の宅急便』チケット情報魔女のキキ(上白石)は、父オキノ(横山だいすけ・中井智彦/Wキャスト)と母コキリ(岩崎ひろみ)と暮らす女の子。“13歳になったら独り立ちする”という魔女のしきたりにのっとり、黒猫のジジと一緒に空飛ぶほうきで旅へ出る。偶然降り立った町コリコで、飛ぶ機械づくりに熱中するトンボ(阿部顕嵐)に出会ったキキ。パン屋の夫婦で出産間近のおソノ(白羽ゆり)とフクオ(藤原一裕・なだぎ武/Wキャスト)に見守られながら、新生活をスタートさせるのだが……。キキ役の上白石は、愛らしい顔立ちにキキの服装がピタリとはまり、物語から抜け出してきたような立ち姿だ。紅茶のCMでも話題になった透き通るような歌声が、繊細ながら耳なじみのよいメロディ(作曲・音楽監督は小島良太)に重なり、一気に物語の世界観を形づくる。トンボ役の阿部は“飛行オタク”ゆえに最初はキキを怒らせるものの、その純粋さで次第に親しくなる少年を好演。さらにコキリ役・岩崎の芯の強さ、おソノ役・白羽の明るいたくましさが物語に厚みをもたらした。ゲネプロでのオキノ役・横山は少しとぼけたお父さん像がほほえましく、NHK教育テレビ『おかあさんといっしょ』で人気を集めた温かい歌声はここでも健在。終始無言というフクオ役を、静かな眼差しと茶目っ気のある表情で演じた藤原も印象に残った。ゲネプロ後の囲み会見では、「舞台に立ってみて、キキとしての気持ちがつながりました」と初々しく語った上白石。阿部も「共演の方から(演技の)いろんなことを盗んでいます」と話すと、「萌歌ちゃんと顕嵐くんの芝居がどんどん変わっているのが分かるので、見てキュンキュンしています」と白羽が言い、ベテラン陣がうなずくひと幕も。一方、横山が「お父さんとして、キキちゃんや奥さんを感じて演技をするようにしています」と話すと、岩崎も「普段から色々お話ししていますよね」と返すなど、役づくりの一端も明かされた。また、稽古中に実生活でも第1子のパパとなった藤原が「役づくりの苦労はなかったです」と言うと、キャストたちから思わず笑いが。温かな舞台そのままの会見となった。東京公演は終了。大阪公演は8月31日(木)から9月3日(日)まで梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて。取材・文:佐藤さくら
2017年06月07日2016年本多劇場にて演出小泉今日子、主演安田顕で「日の本一の大悪党」の初公演を行った明後日プロデュース。その第2弾公演が芝居噺『名人長二』だ。豊原功補が自ら企画と脚本、演出、主演の4役を初めて担当する話題作。江戸・明治期の落語家、三遊亭圓朝が落語速記(口演を速記で記録したもの)としてまとめた本作を、舞台上にどうよみがえらせるのか。豊原に聞いた。芝居噺『名人長二』チケット情報モーパッサンの短編『親殺し』を下敷きに、圓朝が翻案・創作した『名人長二』。職人気質の指物師・長二郎が偶然自分の出生を知ったことから運命の渦に飲まれていくさまが、圓朝らしく人情味たっぷりに描かれる。「元々落語は好きで、この作品も大ファンの古今亭志ん生のCDで知ってはいたんです。ただ色々と調べているうちに、圓朝本人も高座に上げておらず、その後の落語家も志ん生のほか数人しか手をつけていない“幻の名作”だというのが分かったんですね。だからこそ、これを芝居にしてみたいという気持ちが強くなりました」と豊原は話す。実は『親殺し』と『名人長二』とは、内容がかなり異なる。国はもちろん、発表された19世紀当時の宗教観の違いもあるのだろう。「ただ、今回の舞台化ではモーパッサンの原作に漂う陰惨さと、江戸の匂いがする円朝の世界観、両方の要素を取り入れようと思っています。そうすることで、時代や国を越えて人々の間にどうしようもなく“残ってしまったもの”、普遍的な人間の姿というか、そういった部分が僕なりに描けるような気がしています」と豊原。「落語の“語り”がもつ気持ち良さは残したかったので、初めての脚本書きは大変でしたね(笑)」としながらも、「長二郎の周りの人物像を膨らませて、その背負っているものを描くことで、ひとつの物語としてまとめていきました」と内容の一端も明かしてくれた。一方、こだわりはキャスティングにも及んでいる。これが初舞台となる森岡龍を始め、モロ師岡に梅沢昌代、花王おさむ、山本亨、高橋惠子ら、演劇・映画ファンにはたまらない顔ぶれが揃った。「俳優って、もっともっと“遊べる”と思うんですよ。落語がそうでしょう。声の出し方やリズム、表情やたたずまいで、いくらでも作品の奥行きが広がってゆく。この演者たちとならそれが出来るし、また、出来るんですよっていうのを観る人に知ってほしくて」と豊原は語る。「なんて、自分でハードルを上げてますけど」と笑いつつ、言葉の端々には本作への思い入れがひしひしと。豊原らの身体を通して現代によみがえる“長二”の世界。ナマの舞台の醍醐味を、存分に味わいたい。*明後日プロデュースとは…小泉今日子が仲間たちと立ち上げたプロジェクト。舞台、映像、音楽、出版など、ジャンルに捉われず企画製作している。舞台は東京・紀伊國屋ホールにて上演中。6月4日(日)まで。取材・文佐藤さくら
2017年05月29日2015年3月の配信開始以来、400万以上ダウンロードされている大人気女性向けスマホパズルRPG『夢王国と眠れる100人の王子様』(通称“夢100”)。今年3月からはショートアニメも公開されて、ますます盛り上がりを見せている同作の舞台版が、この夏ついに登場する。公演ごとに〈太陽エンディング〉と〈月エンディング〉のふたつのエンディングがあるというのも注目の本作から、“宝石の国・サフィニアのサイ王子”役の安達勇人と“不思議の国・ワンダーメアのハーツ王子”役の小林竜之、そして“雪の国・スノウフィリアのグレイシア王子”役の高橋里央に意気込みを聞いた。舞台『夢王国と眠れる100人の王子様~Prince Theater~』チケット情報インタビューが行われたのは、4月下旬に開催された“夢100”2周年記念イベント『プリンスパレード』の楽屋。舞台版キャストとしてゲスト出演した彼らは、なにより客席の熱気に驚いたという。「満員のお客様の笑顔が見えた時、“本当に愛されている作品なんだな”と実感しました」と言うのは安達だ。隣の小林も「いろんな王子様役の声優さんが舞台に勢ぞろいしたのを観たら、僕も“キャー!”って言いたくなっちゃって」と興奮さめやらない様子。「(ゲームを)やり込むほどに王子たちを解放できる面白さはもちろんですが……」と、穏やかな口調で話すのは高橋だ。「キャラクターが多彩だから、必ず“この人イイな”っていう王子様が見つかるのが楽しいですよね」と、その魅力を語ってくれた。役づくりについては「元々ゲームに王子たちの物語が丁寧に書き込まれているし、キラキラしているだけじゃない複雑な背景があるから、自然に共感できるんですよ」と安達。「その上で、歌やダンス、アクションなどで生身の人間を感じられるのが舞台版の魅力。僕なりのサイを作っていきたいですね」と笑顔を見せる。高橋も「僕が演じるグレイシアは、気持ちを表情や言葉にあまり出さないタイプ。でも実はいろんな感情を抱えているので、それをどうお客様に伝えるかというのが今の課題です」と意気込み充分だ。一方、「ハーツはコロコロ表情が変わる、元気な子」と言う小林。「舞台では、彼の純粋な部分をより意識して演じたいです」と表情を引き締めた。「“夢100”の世界観に酔いしれたい」(安達)、「演じることを越えて、役として生きられたら」(高橋)など、それぞれが本作への想いを語り出すと、「“姫”(プレイヤー)がパズルをクリアしていくことで王子様にパワーを送るのもワクワクするし、イベントごとに王子様の衣裳が変わるのも楽しい!」と小林もさらにヒートアップ。周りから「“姫”の気持ちになる?」と聞かれ、頬を紅潮させつつも「“無”の気持ちです!」と返す小林に、笑い出す安達と高橋。このチームワークで挑む本番が、今から楽しみだ。公演は7月21日(金)から25日(火)まで、東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoにて。チケット発売中。取材・文:佐藤さくら
2017年05月29日日本を代表する女優であり、また、作家としても多くのエッセイや小説を発表している岸惠子。昨年と一昨年は、小説『わりなき恋』を自ら脚色した朗読劇であでやかな姿を見せつけた彼女が、2017年は『スペシャルトークショー夢のあとさき』と題したツアーで全国を回る。公演では貴重な秘蔵写真とエピソードトークで改めて岸の半生が語られるほか、未来へ向けた彼女自身の想いも発信してゆく予定だ。内容について、岸に聞いた。岸惠子 スペシャルトークショー チケット情報映画『君の名は』(1953年)で国民的な女優となった岸は、1956年の日仏合作映画への出演がきっかけで、映画監督イヴ・シァンピと結婚、24歳で渡仏する。その後は離婚を経験しながらも、小津安二郎や市川崑ら名匠の映画に出演を重ね、1980年代に入るとパリの日常を綴った『巴里の空はあかね雲』、中東と南アフリカでの取材経験をもとにした『ベラルーシの林檎』など作家としても活動を開始。2013年には69歳のドキュメンタリー作家の女性と、大企業に勤める58歳の男性との関係を描いた『わりなき恋』を発表、大きな話題を集めた。「どういう内容にしようかと考え始めたら、今このトークショーをやっておくことは、確かに意味のあることかもしれないと思いました」と岸。「横浜大空襲を経験したのは12歳なんですが、家の周りが焦土と化したあのにおいは、今でも鮮明に記憶に残っているほど。そんな具体的なお話も含めて、戦争を知らない世代に伝えられることがあるかもしれないということがひとつ。それに映画の現場での思い出はもちろん、渡仏生活やイスラエルでの取材など、この世代の日本人としては珍しい経験を積んできたという気持ちもあります。私もウソの“芸能ニュース”には苦労しましたし(笑)、そろそろ自分のことを自分の言葉でお伝えするのもいいかなと思って」と岸は話す。一方で、日本人とヨーロッパ人との文化的差異も、常に岸の心を占めてきたテーマだ。「日本人って、人がいいんです。繊細で優しいということなんですけど、ヨーロッパ人から見れば、外交や政治に関して“どうしてそうなるの”と思うこともしばしば」と岸は言う。「ただその性質は私の中にもあるもので、今の“岸惠子”はパリで鍛えられたからこそ出来上がったもの。困難や苦労もいろいろありますが、どうせなら単なる苦労話にはしたくないですね。トークショーでは面白おかしくお話しするつもりですので、気軽に楽しんでいただければ」と話す岸。シリアスな話題も軽やかな筆致で読者を魅了するのが岸の著書の魅力。今回も同様に、お楽しみが満載のステージとなりそうだ。8月9日(水)東京・なかのZERO 大ホール公演を皮切りに全国を巡演。取材・文佐藤さくら
2017年05月24日落語の伝統を守る一方で、独演会ではさまざまな挑戦を続けている柳家三三。昨年は文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞するなど、その活躍がいっそう注目されるなか、六ヶ月連続独演会〈たびちどり〉で挑む演目が、大作『嶋鵆沖白浪(しまちどりおきつしらなみ)』だ。幕末から明治期に活躍した柳派の談洲楼燕枝(だんしゅうろう・えんし)が創作した長編人情噺を、毎回2話ずつ高座に上げ、全12話を通すという試み。長らく演じ手が途絶えていたという本作への想いを、三三に聞いた。たびちどり 柳家三三 六ヶ月連続独演会チケット情報大商人の跡取りでありながら侠客となった“佐原の喜三郎”。物語は彼と、やはり裕福な家の娘ながら芸者から遊女へ身をやつすお虎の運命を軸に、巾着切りの庄吉や、なまぐさ坊主の玄若、三宅島に流された罪人の長・勝五郎、旗本の優男・梅津長門ら多彩な人物を巻き込んで展開する。「人情噺というと泣ける話をイメージするかもしれませんが、元々は広い意味で人情の機微を描いた話のことなんですよ」と三三は言う。「燕枝は九代目市川団十郎と親交が深かったこともあり、この作品も“白浪物”(盗賊を主人公とする物語)や“三尺物”(博徒や侠客が主人公)、“世話物”(町人の人情を活写した芝居)と、色々な要素がたっぷり詰まっているんです」と、その口調にも自然と熱がこもる。今回はこの大作を12話に分け、三三自ら再構成。「怪僧玄若坊」「闇の島脱け」「お虎の美人局」など、内容に合わせて付けられたタイトルは、どれもワクワクするものばかりだ。「本当にね、なぜこの演目が長い間忘れ去られていたのか不思議なくらい」と三三は話しつつ、「ただ、長編だけにダイナミックな場面と地味な場面とがありますから、そこは1話ずつ観ても楽しめるように調整しました。あとは、初見でも、途中の回を観ていなくても内容が分かるように、前回までのあらすじは読み物で配る予定です」と“続き物”ならではの工夫を明かす。そんな苦労もいとわないのは、落語のもつ豊かな世界をもっと知ってもらいたいから。「燕枝が活躍した当時は町内に1軒ずつくらい寄席があって、人々は晩ご飯を終えた後、ちょうどテレビを観てくつろぐ感覚で寄席に足を運んだそうですよ」と三三は語る。「だから『あの寄席で面白い“続き物”をやってるぞ』と評判になると、その寄席によその町からわーっとお客さんが集まったりしてね。艶のある場面にドキドキしたり、切った張ったの立ち回りにハラハラしたり。そういった楽しさを、現代のお客さんにどうやったら届けられるか。それだけを考えて演りたいですね」という三三。その言葉からは、名作を伝える演じ手としての覚悟が伝わってきた。公演は愛知・大須演芸場と大阪・グランフロント大阪にて、5月から10月まで毎月1回ずつ開催。チケット発売中。取材・文佐藤さくら
2017年05月08日俳優・佐藤健による書籍「るろうにほん 熊本へ」の発売記念会見が4月16日(日)に行われ、佐藤さんが記者陣に熊本の“うまかもん”名物だご汁をふるまった。佐藤さんは、熊本への特別な思いを語った後、「映画の撮影で訪れて、そこで初めてくまモンと出会って。それからマブダチなんですけど(笑)」と、無類のくまもん好きであることを告白し、大きな笑みを広げていた。佐藤さんにとって、熊本県は映画の撮影で度々訪れている縁の深い土地。撮影地であり、自身の代表作でもある映画『るろうに剣心』と、「日本」を掛け合わせたオリジナルの言葉がタイトルになった書籍「るろうにほん 熊本へ」は、熊本地震の復興を願って佐藤さん自らが企画した1冊。売上の一部を熊本の地元自治体へ寄付することも発表されている。この日、はじめに1分間の黙とうをささげた佐藤さんは、出版までの道のりについて、震災後、自分にできることがないかを考えていたという。「復興支援本とでも言うんでしょうか。以前、熊本に炊き出しに行ったとき、観光客が減っていることがすごく困っていると聞きました。熊本の素敵な場所や景色、食べ物を改めて紹介することで、足を運ぶきっかけになったらいいという思いで、出しました」と、佐藤さんなりの復興支援の気持ちから生まれたことを明かした。本の撮影は、トータルで4日かかったそうで、地元の人も知らないような、とっておきの穴場なども収められている。佐藤さんは、「僕は、熊本以外の方に作りました。ガイドブックはたくさんあるけど、そういうのには載っていないところが載っています。山の中にある水源とか牧場とか、自然の景色がすごく印象に残っています」と熱弁した。ちなみに、佐藤さんが好きな熊本グルメは、「馬刺しを食べるのは決まり事で儀式みたいなもの。新しく出会ったもので言うと、あか牛のステーキをいただいて。全然肉の質が違うんです!いつもは150gくらいだけど250gくらいいける」と、目を輝かせ饒舌になっていた。「るろうにほん 熊本へ」は現在発売中。(cinamacafe.net)
2017年04月16日「タリーズコーヒー」は、 「SAKURA 抹茶ラテ」や「SAKURA ティーカプチーノ」、 「SAKURA ミルクレープ」などの東京都23区限定商品を、“お江戸さくら祭”と題し、3月22日(水)より期間限定で発売!「地域社会に根ざしたコミュニティーカフェとなる」ことを経営理念の一つとして掲げる同社では、2015年2月の北海道を皮切りに、2016年に九州、京都で限定ドリンクなどを販売してきた。第四弾となる今回は、東京都23区(168店舗)のエリアにて、「お江戸さくら祭」と題し、江戸の風情と、桜をモチーフにした限定品を展開。東京都の桜が美しい季節に、さくらフレーバーのドリンクやフードが登場するほか、グッズやコーヒー豆、 タリーズカードには江戸テイストを取り入れながら、 華やかなさくら祭りを演出する。「SAKURA 抹茶ラテ」 (HOT/ICED、580円、トールサイズのみ)は、上品な風味の宇治抹茶と、桜の花びらを使用したソースをトッピングして仕上げたふんわり桜が香る抹茶ラテ。「SAKURA ティーカプチーノ」(HOTのみ、530円、トールサイズのみ)は、しっかりと濃く抽出した紅茶にさくらソースを合わせ、きめ細かなふわふわのミルクで仕上げた優しい甘さのロイヤルミルクティーだ。スイーツには、花びらをイメージしたさくら餡が乗った「SAKURA ミルクレープ」(480円)とチーズムースと、 ほんのり香る桜の風味をふんわりワッフルで包んだワンハンドスイーツ「ワッフルサンド SAKURAストロベリー」(600円)も登場。夜桜を背景に力強い江戸文字を施したパッケージのコーヒー豆「江戸限定ブレンド」(1,300円/200g)や、「タリーズカード(お江戸限定デザイン)」、春らしい桜モチーフの「SAKURA マーブルマグ」(1,600円)や 「タリーズミニテディ“春錦”」(580円)、古きよき江戸の景色や活気、 力強い江戸の“粋”を表現した「お江戸限定タンブラー(-景-/-粋-)」(各1,540円)などのアイテムも充実だ。タリーズのお江戸さくら祭で、東京の春を愛でる楽しい気分を盛り上げてみて。(text:cinemacafe.net)
2017年03月24日昨年ロサンゼルスで行われた単独公演の成功などで、ますます注目を集めているピアニストの桑原あい。リリースされたばかりのアルバム「Somehow,Someday,Somewhere」は、なんとエレクトリックベースにウィル・リー、ドラムスにスティーヴ・ガッドという超一流のメンバーを迎えたスペシャル盤。オリジナル楽曲に加え、バーンスタインやビル・エヴァンスなどもカバーしたラインナップで、素晴らしくグルーヴィーな仕上がりとなっている。4月2日(日)~3日(月)と7日(金)~9日(日)に行われる桑原のライブ『Ai Kuwabara Shinjuku Pit Inn 5days "5 Souls"』では、石若駿(ドラムス)や菊地成孔(サックス)ら、こちらも名だたるプレイヤーが日替わりで登場する。『Ai Kuwabara Shinjuku Pit Inn 5days "5 Souls"』チケット情報「ウィルとスティーヴは、知り合った時から『いつか一緒にやろうね』と言ってくれていたんですけど、まさか私がと思っていたんです。でも“本当に一緒にやりたい人は誰?”と考えた時、やっぱりふたりの名前が浮かんできた」という桑原。ニューヨークでのレコーディングは、リラックスした空気で進んだとか。「目を見なくても、音がピッタリ合ってしまうのが不思議でした。全員が余計な力を抜いて、ただ音楽のことだけを感じた結果、そうなったとでもいうような。だから私のピアノも、これまでで一番ナチュラルな音が出ていると思います」と桑原は語る。「たとえばスティーヴのカウントオフなんて、テンポが譜面とは違うんですよ(笑)。でもなぜかそれが心地よくて、そのまま演ってみたらやっぱり正解だったということも多かったです」と桑原は振り返る。そのエッセンスは各曲に浸透し、寺山修司の言葉をタイトルにした『All life will end someday,only the sea will remain』、桑原がフェンダーローズを弾く『Extremely Loud But Incredibly Far』など、アルバムには匂い立つような楽曲が並ぶ。話は前後するが、以前は「極限まで自分を追い込んで曲を作るタイプだった」という桑原。3年前には長いスランプに陥ったが、日本を代表して出演したモントルー・ジャズフェスティバルで出会ったのが、あのクインシー・ジョーンズだ。「『いま出せる、あなたの音楽をやりなさい』と言ってくれて、思わず即興を演ってしまいました」と桑原は笑う。クインシーは演奏を終えた桑原にハグをして、何を悩んでいるのか聞いてくれた。憑き物が落ちたようにふっきれた桑原が、帰りの飛行機の中で一気に書き上げたのが、名曲『The Back(背中)』だ。「帰って行くクインシーの広い背中を見ていたら、大切なものが見えなくなっていた自分が恥ずかしくなりました。私はもっと音楽に、貪欲になっていいんだなって」と桑原はかみしめるように語る。次のフェーズに踏み出した彼女の、新たな魅力が詰まった『5 Souls』。彼女の“今”を、ピットインという密な空間でたっぷりと味わいたい。取材・文佐藤さくら
2017年03月16日