現代ミュージカルの巨星、スティーヴン・ソンドハイムの傑作を宮本亜門が演出。市村正親、大竹しのぶという名優の主演で、2007年、2011年、2013年に上演されたブロードウェイ・ミュージカル『スウィーニー・トッド~フリート街の悪魔の理髪師~』が、4度めの幕を開ける!ブロードウェイミュージカル「スウィーニー・トッド」チケット情報18世紀末のロンドン、高名な判事に妻子を奪われ、無実の罪を着せられた理髪師が、脱獄をし、名をスウィーニー・トッドと変え、復讐の機会を狙う。その協力者となるのが、ロンドン一まずいと悪評のパイ屋のおかみ、ミセス・ラヴェットだ。トッドの企みを隠しながら、パイ屋も繁盛をする。そのためにふたりが考えだした、とんでもない作戦とは…!?ロンドンに実在したと言われる理髪師に扮するのは、市村正親。「またこの複雑でおもしろい作品で、ソンドハイムの音楽に身を委ねることができる。役者冥利に尽きますね」と、うれしそうに語る。大ベテランの市村も、初演時には、独特の変化の多い曲に苦労したのだとか。「非常に難しいのに、やっているうちに心地よくなる。多彩な変化が、ドラマチックな物語を表していて、まさにソンドハイムのミラクルが体感できる作品なんです」。トッドの残酷な運命を予感させるように、不安げなメロディで幕が開き、物語はスリリングに展開する。血なまぐさいトッドの企みを、ブラックジョークへと変え、コミカルな笑いで盛り上げるのがラヴェット役の大竹しのぶだ。「しのぶちゃんあっての『スウィーニー・トッド』」と市村が言うように、大竹のおかみぶりは、豪快でお茶目。憎しみの炎をたぎらせる市村のトッドと絶品のコンビで、観客をぐいぐいと引っ張っていく。ふたりがカミソリと鉈を手に歌い上げるシーンは、恐ろしくもおかしく、盛り上がりどころのひとつだ。恐怖と笑いが交錯する物語は、ハラハラドキドキの連続で目が離せないと市村。「特に2幕の後半はスピーディで見事です。あり得ない話だけどリアリティもあって、このハラハラドキドキ感は観る甲斐ありですよ」。宮本演出のもと、市村、大竹の巧みなタッグに見事なアンサンブルを添えるのが武田真治、芳本美代子、田代万里生、斉藤暁、安崎求ら個性派の共演者たち。いずれも本作品の出演経験者で、「芝居も歌も確実に深まっています。みんな音符に追われるのではなく、物語の中で生きている感じ」。2007年から10年が経ち、市村はふたりの子どもを持つ父親に。「僕自身も父になって、トッドの妻子を思う気持ちがリアルに体感できるようになりました。トッドは頭では妻と娘を思いながら、手ではすごく残忍なことをやっている。その二面性でお客様がジレンマに陥って、よりハラハラドキドキするような舞台にしたい。今回がファイナルだと思って、悔いのないよう、そしてお客様が喜んで下さるよう、精一杯つとめます」。東京公演は4月14日(木)から5月8日(日)まで東京・東京芸術劇場にて上演。その後、大阪、名古屋を巡演。取材・文:大西美貴
2016年04月07日堤真一、寺島しのぶ、井上芳雄、浦井健治らの華も実力も兼ね備えた俳優陣たちが出演する舞台『アルカディア』が4月6日(水)、Bunkamuraシアターコクーンにて開幕する。舞台『アルカディア』チケット情報物語は、英国の貴族の屋敷を舞台に、「19世紀初頭」と「現代」のふたつの時代が、時には交互に、時には複雑に交錯し合いながら進行する。一見何の関連もなさそうなふたつの世界が、「ある謎の追究」を巡り、時空の隔たりを感じさせないほど絶妙にリンクし合いながら躍動する。そんな名作戯曲に挑戦する出演者から最終通し稽古後のコメントが到着。堤真一膨大な台詞の多くは、哲学的であったり数学的な言葉なので、高尚で重苦しい文芸作品のように思われがちです。ところが、実はそういう学術的な言葉は本筋ではなく、軽やかでユーモラスに、登場人物たちの恋愛熱や研究への情熱が 200 年の時空を駆け巡ります。学術的な話が多いので、確かに台詞を喋る役者は大変(笑)。でも、そこで描かれている人間たちの姿をハッキリとお見せできれば、お客様により一層楽しんでいただけるはず。まずはその「人間ドラマ」に集中したいと思っています。寺島しのぶここに登場する人物は皆、研究なり恋愛なり、一つのことに「熱」を傾けている人たちです。私が演じる「ハンナ」も、19世紀の詩人バイロンの研究にエネルギーを燃やしていて、研究以外には全く無頓着。でも自分の研究への愛と情熱は誰にも負けない。そんな「熱」が伝えられれば、素晴らしい舞台になると思っています。栗山さんが、「これは愛の話」と仰っていたように、劇中には色々な形の愛があり、ハンナもその中で成長していきます。劇中に生まれる変化を演じられるのは、とても楽しいことですね。井上芳雄ストッパードの伝説的な作品で、それを栗山民也さんの演出で、堤真一さん、寺島しのぶさんをはじめとする憧れの役者さんたちとご一緒できる!それだけで、台本を読む前に即答で出演を決めました。栗山さんの舵取りで、皆さんと一緒に掘り下げて行った稽古は、謎解きの面白さと演劇の喜びに溢れた現場でした。間違いなく、「日本最高峰のメンバーが集結した舞台」と言っても過言ではないです!ぜひ多くの方々に観に来ていただきたいですね。浦井健治稽古初日の本読み後、思わずため息をつきながら、机に突っ伏してしまったんです(笑)。学術的な台詞が多いし、意味もよくわからないし……。それが、立ち稽古が進むにつれ、どんどん見えてくる景色も広がって、この戯曲の凄さや面白さを発見する毎日でした。栗山さんや皆さんとご一緒できる現場は、僕にはかけがえのない時間。そこから生まれる「熱」をお客様に感じていただけたら嬉しいですね。4月30日(土)まで東京・Bunkamuraシアターコクーンにて上演後、5月4日(水・祝)より森ノ宮ピロティホール(大阪府)へと舞台を移す。
2016年04月06日詩人、翻訳家、映画評論家、映画監督とマルチに活躍する福間健二の最新作『秋の理由』の今秋公開がこのほど決定。キャストには、伊藤洋三郎と佐野和宏がW主演を務め、共演に趣里、寺島しのぶが配役されていることが明らかとなった。宮本守(伊藤さん)は本の編集者で、小さな出版社「黙示書房」を経営しているが、経営は苦しく事務所をたたむことになる。宮本の友人・村岡正夫(佐野さん)は作家だが、代表作「秋の理由」以降、小説を発表していない。精神的な不調から声が出なくなり、筆談器を使っている。宮本は村岡の才能を信じ、彼の新作を出したいと思っている。そして実は、村岡の妻・美咲(寺島さん)が好きなのである。ある日、宮本と村岡の前に「秋の理由」を何回も読んだというミク(趣里さん)が現れる。ミクは「秋の理由」のヒロインに似ていて、まるで村岡の言葉から生まれたかのような存在である。ミクと過ごす時間の中で、宮本は美咲への思いをはっきりと自覚するが、美咲はそれを受け入れてくれない。けれど、美咲と村岡の関係は険悪になる。村岡は、正気と狂気の間を揺れ動き、難民的な男女の群れの中に自分がいる夢をよく見る。村岡は自分のそばに宮本がいることを苦痛に感じ、宮本にそれを言ってしまう。すると、宮本は怒りを爆発させる。村岡に、自分に、そしてこの世界のあり方に…。詩集「青い家」で「萩原朔太郎賞」「藤村記念歴程賞」を受賞し、『わたしたちの夏』などの監督も手掛ける福間監督の長篇第5作目となる本作。脚本は、<a href="">『婚前特急』</a><a href="">『そこのみにて光輝く』</a><a href="">『セーラー服と機関銃 -卒業-』</a>を手掛ける高田亮が、福田監督と共に担当している。主人公・宮本守役には、「あぶない刑事」シリーズ、<a href="">『百円の恋』</a>の伊藤さん。そしてもう一人の主人公・村岡正夫役を、現在公開中の18年ぶりの監督作『バット・オンリー・ラヴ』で自ら主演務める佐野さんが務める。また、ヒロイン・ミク役には、水谷豊と伊藤蘭の娘で、<a href="">『おとぎ話みたい』</a>『東京の日』で主演を務める趣里さん、村岡の妻・美咲役に、<a href="">『キャタピラー』</a><a href="">『蜩ノ記』</a><a href="">『シェル・コレクター』</a>などの寺島さんが出演している。本作について監督は、「苦悩するひとりの作家とその友人の編集者、60代を迎えた2人の男の友情と、かれらを取り囲む人々の秋を描いています。その秋は現実と夢が入りくむ季節です」と語る。さらに、「メインキャストの4人が、ぼくの目にはそれぞれのベストと言えるくらい持ち味を発揮してくれています。ひとりの力ではどうにもならないことの多いこの世界の、悲しい秋。でもそれに負けてはいないという光をとらえたと確信しています」と出演陣を絶賛し、本作への自信を覗かせている。声にならない声で叫び、全身全霊で演ずる佐野さんと、実力派女優の寺島さんが真っ向勝負に挑む本作。伊藤さんと趣里さんが見せる新境地にも期待したい。『秋の理由』は2016年秋、K’s cinemaほか全国にて公開予定。(cinemacafe.net)
2016年04月05日舞台『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』や映画『恋におちたシェイクスピア』の脚本で知られるトム・ストッパード。彼の最高傑作と称される『アルカディア』がついに日本で初上演される。演出に栗山民也、キャストに堤真一、寺島しのぶ、浦井健治など豪華なカンパニーで構成されたこの作品。なかでも、キーマンとなるセプティマス役を演じる井上芳雄は「これは日本最高峰の舞台と言っても過言じゃない」とすでに強い手応えを感じている。舞台『アルカディア』チケット情報舞台となっているのはイギリスの豪壮な屋敷。物語は、そのひと部屋で“ある謎の追求”をめぐり、19世紀と現代が交錯する二重構造となっている。「セットは同じで、登場する人物だけが違うというのが、どのようにお客さんに見えるのか、興味がありますね」と井上。「しかも、ときには200年の時代を超えて、それぞれの人物が同じ空間に現れる。お互い直接会話を交わすわけではないけれど、同じノートを見ながら、同じテーマの話をするんです。ノートに限らず、その部屋で200年もの間、多くの人がいろんな会話をしてきたんだなと思うと、すごくロマンがありますよね」稽古場では19世紀組と現代組に分かれて稽古をすることがほとんど。でも、ここにもそれぞれのカラーが出ているそうだ。「19世紀組はストイックですね。当時は階級社会なので、その階級の中での登場人物の立ち位置や発言がとても重要になってくる。そのため、セリフの一つひとつに気を遣って繊細に表現しています。一方、現代組はライトな雰囲気。しかも、堤さんも、寺島さんも、演出家が求めるその先の表現を求めてお芝居をされているので、どんどんいろんなアイデアが生まれてくるんです。たまにやり過ぎて芝居が崩壊することもありますが(笑)、それも含めて楽しい稽古場になってます」また、作品の内容について、「難解で、最初はよく理解できないところが多かった」と井上は笑う。しかし今は、共演者や演出家の栗山たちと意見を重ね、「その作業が謎解きみたいで面白い」そうだ。「テーマは“熱”なんですよね。そこで生きている人たちの情熱や愛情、それに愛欲などが描かれている。それって、どの時代でも誰しもが持っているものだと思うんです。ですから、時代を超えてもあふれだす人間の壮大なエネルギーを舞台上で表現できたらなと思ってます」公演は4月6日(水)から30日(土)東京・シアターコクーン、5月4日(水・祝)から8日(日)大阪・森ノ宮ピロティホールにて。取材・文:倉田モトキ
2016年03月25日公開初日を迎えたリリー・フランキー15年ぶりの単独主演映画『シェル・コレクター』の舞台あいさつが27日、東京・テアトル新宿で行われ、リリー、寺島しのぶ、池松壮亮、橋本愛、坪田義史監督が出席した。作家アンソニー・ドーアの同名小説を基にした本作は、沖縄の離島を舞台に、盲目の貝類学者(リリー)の静かな生活が、世界に蔓延する奇病を偶然にもイモガイの毒で治したことで揺らいでいくさまを、独特の世界観で描いたファンタジー。立ち見客も出るほどの盛況ぶりだが、会場の微妙な空気を察したリリーは、MCに上映後であることを確認すると、「どうりでお客さんがポカンとしてると思いました」と軽いジャブで笑いを誘いつつ、「企画の段階から映画にならないだろうと思い、撮影が終わると上映はないだろうと思った」、「試写では拍手もなく、しゃべる人もいなかった」などとシニカルなリリー節をさく裂させて会場の笑いを誘った。ところが、坪田監督は「視覚的にも聴覚的にも触発するものを作ったので、お客さんがシーンとするのは悪いことではない。僕の作品がお客さんの体に溶け込んでいる」とにんまり。また、寺島が「わかるものじゃなく感じる映画」と称賛すれば、橋本も「前衛的で実験的な映画に関わることができてとても幸せです」と喜びの表情を見せた。そして池松も「圧倒されたというのが一番しっくりくる。しばらくこういう日本映画を観ていなかったですし、こういう体験したかったんだよなぁと思いました」としみじみ。それぞれが本作に賛辞の言葉を贈った。そんな中、池松の発言から、最終的にカットされたものの寺島の自慰シーンがあったことが明らかに。寺島は本作で学者の運命を翻弄する女性を演じており、「台本を読んだ時に、子供が生まれてもわたしにはこういう役が来るんだとうれしかった。『アンパンマン』の声優じゃないんだ」とにっこり。すると、リリーは「いや、あなたが次やるのは福田和子さんでしょ? (本作は)全然そのラインですよ。アンパンマンの声優の方が相当遠いと思いますよ」と鋭いツッコミ。福田とは、整形を繰り返して時効まで全国を逃げ回った強盗殺人犯で、寺島は「私が求められているところはそこなんだと思ってうれしくて」と、ママになっても落ち着かず、ハードな役を演じられる喜びを噛みしめていた。
2016年02月28日映画『シェル・コレクター』の初日舞台挨拶が2月27日(土)、東京・テアトル新宿にて行われ、主演のリリー・フランキーのほか、寺島しのぶ、池松壮亮、橋本愛、坪田義史監督らが出席した。本作は、ピューリッツァー賞受賞作家アンソニー・ドーアの同名小説を原作に、坪田監督が舞台を日本に置き換え映画化。沖縄の離島で厭世的生活を送る盲目の貝類学者をリリーさんが演じた。「上映後なんですね。どうりでお客様がポカーンとしているわけですね」と、リリーさんが会場を見渡すと、「タイムラグがある作品だと思うので、狙い通りです」と監督は余裕の発言。リリーさんはこの日集まった観客に「企画の段階で映画化はないだろうなと思って、撮影が終わった段階で上映はないだろうなと思ったら上映されて、まさかの満席で、ありがとうございます。幅広くというよりも、ひとりに何度もっていう映画だと思います」と挨拶。共演者の方たちも、「ぶっとんだ台本と、ぶっとんだ監督と、ぶっとんだ共演者に囲まれて、ぶっとんだ作品になっています。子どもが生まれてもこういう役が来るんだと思って嬉しかったです。見終わってモヤモヤする感じが気に入っています」(寺島さん)、「出ていなくても観ただろうな、と思うくらい気に入っている映画です。久しぶりに圧倒された日本映画でした」(池松さん)、「これだけ前衛的で実験的な映画に関わることができて幸せです」(橋本さん)とそれぞれ挨拶をした。カットされているシーンも多くあるそうで、「私の超人的なシーンもあったんですけど、カットされました」と橋本さんが話すと、リリーさんは「どうせデタラメなら全部入れちゃえばよかったのに、愛ちゃんの撮影では腹がちぎれるぐらい笑いましたからね。寺島さんのカットされてしまった官能的なシーンは後からみなさんに僕が現像して渡しますよ」と茶化してみせた。第45回ロッテルダム国際映画祭では正式出品されたものの、惜しくも受賞できず「久しぶりに号泣している大人をみた」と悔し涙を流す監督の姿や、「監督があまりにキラキラした表情で撮影をするので、監督の言うことは聞こうねと四人で何度も話し合っていた」と明かすなど、監督と出演者が深い信頼で結ばれた様子も紹介。リリーさんの機転の利いた対応で、誰かが発言するたびに笑いが起こるほど、すっかり会場は和やかな雰囲気になっていた。最後に、「暗闇の中に一筋の光を追い求めながら進んでいくような感覚的な映画なんですけど、感覚を触発できたらと思って作りました」(坪田監督)、「元気な友達に勧められるような映画ではないかもしれませんが、心が弱っている友達がいたら是非勧めてあげてください。目を閉じて感覚を感じてもらえる映画になったと思います」(リリーさん)とそれぞれ真剣な表情を見せた。『シェル・コレクター』は公開中。(text:cinemacafe.net)
2016年02月27日●飲みの席で次回作を知る映画界で"引っ張りだこ"状態の俳優・池松壮亮(25)。その勢いは増すばかりで、今年はすでに『デスノート2016』、『セトウツミ』、『無伴奏』など6本の出演作が公開を控えている。これほどまでオファーが殺到している理由とは?そのヒントはdTVオリジナルドラマ『裏切りの街』に隠されている。"池松フィーバー"の起爆剤にもなった『愛の渦』(14年)の三浦大輔監督と再タッグを組む同作。同棲中でありながら、寺島しのぶ演じる主婦との不倫におぼれるフリーター・菅原を演じ、裏切りの連鎖の中でどん底へと堕ちていく。三浦監督が自身を投影させた菅原。池松にオファーしたのは、俳優として全幅の信頼を寄せていたからだという。ファンだけでなく、監督の心も鷲掴みする池松の"俳優力"。数多くの映画賞を手にした時の本音、監督と俳優の関係性、俳優業との向き合い方――本人取材で語られる言葉の数々が、その真の魅力を浮かび上がらせる。――生々しくリアルな会話劇がとても印象的な作品でした。2010年に上演された三浦大輔監督の作・演出舞台が原作となっているわけですが、映像化の話は飲みの席で聞いていたそうですね。三浦さんとは、『愛の渦』(14年)という映画で出会いました。意気投合して家も近かったので、その後もよく会って飲みに行ってたんです。それから『母に欲す』という舞台でご一緒して、その頃に今回の映像化の話を聞きました。作品については踏み込んで聞かなかったんですが、三浦さんが次やるとしたら『裏切りの街』なんじゃないかとはなんとなく思っていました。『愛の渦』と『裏切りの街』は、三浦さん渾身の作品ですから。――なぜ、踏み込んで聞かなかったんですか?監督と俳優の間でのマナーみたいなものなんでしょうか。いえいえ(笑)。次回作の話を聞いて、「俺も出してくださいよ」というタイプでもないので、三浦さんがまた何かに挑戦するんだなと思うくらいで。でも、呼ばれれば行く準備は常にしています。「もしかしたら話が行くかも」とおっしゃっていたので、「分かりました」とだけお伝えしました。三浦さんの立場からすると、正式な本が上がってそれを読んでから返事をしてほしいという思いがあるはずなので、互いにそういう尊重があるんだと僕は思います。――今回、池松さんが演じた菅原は、三浦監督いわく、「自分そのもの」だそうです。実際に演じてみて、それを感じる部分はありましたか。すごく感じました。あの方の作家性は一貫していて、『愛の渦』と『裏切りの街』を見比べると、主人公が実は同じようなことをやっていることが分かります。名前も実は同じなんですよね。人物像もかぶることが多くて、世界観にもつながりを感じます。今回でいえば、人間の愚かさと醜さを浮き彫りにし、そこから人間の儚さや美しさも伝わってきます。僕は、三浦作品で"どうしようもない主人公"しか見たことありません(笑)。――でも、自分のダメな部分を見つめ直すと、個人的には共感してしまう描写も多かったです。三浦監督が「自分そのもの」とおっしゃるぐらいだから、普段の三浦監督は……。そんなに社会性を欠いているわけではないですよ(笑)。もちろん、何かを隠しているわけではないですし、接すると意外と普通の方です。人間の一部分を深くえぐるのが大好きな方なので、だからこそ、作品とギャップを感じる人もきっと多いんじゃないかなと思います。――三浦監督は池松さんと共鳴し合う部分があり、信頼しているからこそ今回オファーしたそうです。作品作りにおいて、そういった「監督と役者の信頼関係」は重要ですか。そうですね。ただ、日本の作品はそんなに時間があるわけではなくて。例えば今日も「はじめまして」からこうしてお話をして仕事がはじまる。映像の現場でも、どういう方かも分からないまま演出をしてもらうこともありますし、やっぱり1本目より2本目、2本目より3本目の方がそういうストレスは少なくなります。三浦さんがやりたいことや狙いも、そばにいると何となく伝わってきます。そういう意味では年々信頼関係は増してきてますし、演出家としてよりよくしていきたいという意欲がすさまじいので、その分求められるものもハードになります。――今のお話だと作品の中で熟成されていく関係性だと思いますが、例えばプライベートでは? 監督との飲みの時間も大切になさっているとか。暇だったら行きます(笑)。でも、一方的に誘われているわけではなくて、何となく話したくて、僕から誘っていることもありますよ。――となると気になるのは、映像化決定のニュースで池松さんが寄せたコメント「三浦組に参加できることが光栄」。三浦組にはどのような魅力があるのでしょうか。とにかくすごい監督です。『裏切りの街』のような作品を作れる監督は本当にいないと思います。ただ、監督一人一人それぞれの感性も違いますし、具体的に魅力を語るとなると……難しいですね。●受賞後は「すぐに隠しました」――寺島しのぶさん演じる主婦・智子との初めてのキスやラブホテルに行くまでの流れ、やりとりは、演技を超越するようなリアリティを感じました。そこに三浦監督の武器というか、魅力が潜んでいそうな気がしたのですが。僕もそう思います。男性側と女性側、それぞれ実際にやってみせてくれたりもします。その分、一瞬でも「嘘」があったら何回でもカメラを回す。互いに探りを入れながらホテルに行くシーンは、30テイクぐらいやりました。2日目にようやくOKで(笑)。――丸一日あのシーンを撮ってたんですか?はい。途中、雨も降りました(笑)。――どのテイクがOKテイクか、ピンと来ます?だいたい分かります。何テイク目かというよりも、あのOKテイクを使ったんだという感じで。――30パターン全部見たいです(笑)。そうですか(笑)。全然2人とも気持ちが乗ってないテイクもありますよ。互いの"生の響き合い"が一番ハマったのがOKテイク。もちろんお芝居をやっているわけですから、決められた言葉で一定のテンションに持って行かないといけないんですが、そういう道筋を通ってもなかなか一発でハマることはないので……お芝居の難しいところだと思います。別の監督であればOKテイクにするところでも、決して妥協しないのが三浦さん。僕としては引き受けた以上、それを全うするのみです。――ということは、相手役の寺島しのぶさんの存在ももちろん重要になってきます。『シェル・コレクター』(2月27日公開)で共演済みですが、本格的な絡みは今回が初めてだったそうですね。一番近くで向き合って、重みというか迫力というか、何かものすごい蓄積をされてきた方なんだろうなと感じました。いろんな監督や作品に身をささげて、渋みというのか魅力というのか。たたずまいで見せる人生の重みを寺島さんから感じて、僕もこうなりたいなと思いました。――寺島さんは、池松さんの現場での振る舞いを「職人」と受けとめていたそうです。現場での雰囲気が変わらなかったり、ベッドシーンでカットがかかるとさり気なく隠したり。そういうことは意識的にやっていらっしゃるのですか。いえいえ。そのまま「職人」というお言葉を返したいくらいです(笑)。僕なんかと全然レベルの違う方なので。「職人」という言葉にふさわしいのは、僕より寺島さん。共演させていただいて、何のストレスも感じませんでしたが、本当にすごい方なので緊張していました。すべてを受け入れた上で返してくれて、偉大な俳優とはこういう人のことを言うんだと感じました。――ここ最近は、出演作のニュースが次々と発表されているので、順調に実績を積み上げていらっしゃると想像します。客観的にこの状況をどのように捉えていますか。「なぜ出演が増えているのか」みたいな自己分析はしていませんが、思うがままに動いているというのが現状です。目の前の選択をしていった結果、今があります。まだ、お客さんの声がすべて返ってきていないので……その辺もちょっと様子を見て(笑)。――慎重ですね(笑)。そうですね。皆さんの声を受けとめてから、今後どうやって攻めていくのか考えたいと思います。――日本アカデミー賞の新人俳優賞をはじめ、2014年から2015年にかけて、数々の賞を受賞されました。俳優にとって、映画賞はどのような意味があると思いますか。うれしさもありつつ、もらったら何も残らないんです。受賞を望んでいた3年前ぐらいの自分がこれを聞いたら「何を言ってるんだ」と怒るかもしれませんが(笑)、でも本当に何も残りませんでした。残るのは、「逃げ道がなくなった」という現実。より責任が増したというか、とにかくやるしかないという覚悟しか残らなくて。今となっては、過去に何があったかは作品に関係ありませんから。とはいえ、若い自分にとっては早く欲しかったものでもありますし、何よりも自分の仕事は人から評価されてこそ。自分の好きなことをやっているから賞なんかいらないと思っていた時期もありましたが、やっぱりもらったらもらったでうれしかったです。自宅に持ち帰ったら、すぐに隠しましたけどね(笑)。――私だったらすぐに飾ります(笑)。僕は飾れませんでした(笑)。きっと自分にまだ納得していないからだと思うんですけど……。ぜいたくな話だし、生意気な話ですね。でも、飾れる日が来ればいいなと思います。――そんな池松さんも、俳優としてデビューされてから約15年。これまで積み上げてきたからこそ見えたてきたこともあると思います。一俳優が大それたことをできないことは分かっているんですけど……とはいえやっぱり、人を豊かにする仕事ですから、そういう点では性に合っているのかなと思います。本当はプロ野球選手になりたかったんですけどね(笑)。――だいぶ違う人生ですね。でも、私は『裏切りの街』を観て恋愛がしたくなったので、おかげさまで豊かになりました。よかったです。でも、不倫はしないでくださいね(笑)。■プロフィール池松壮亮1990年7月9日生まれ。福岡県出身。A型。身長172センチ。2003年に公開された映画『ラストサムライ』で注目を集め、以後、ドラマ、映画、舞台などで活躍。2014年から2015年にかけて、日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ数々の映画賞を受賞。今年は『シェル・コレクター』(2月27日公開)、『無伴奏』(3月26日公開)、『ディストラクション・ベイビーズ』(5月21日公開)、『海よりもまだ深く』(5月21日公開)、『だれかの木琴』(9月公開)、『セトウツミ』(7月2日公開)、『デスノート2016』(秋公開)などの出演映画が公開される。dTVオリジナルドラマ『裏切りの街』は映像配信サービス「dTV」にて、全6話を独占配信中(R15指定)。
2016年02月26日リリー・フランキーが主演を務め、寺島しのぶ、池松壮亮、そして橋本愛という映画ファンが気になるメンバーが顔をそろえた『シェル・コレクター』が完成。盲目の貝類学者を演じたリリーと、物語のキーパーソンに扮した橋本愛を直撃。ともに「こうした映画は必要」と語る不可思議な雰囲気を湛えた本編を振り返った。その他の写真「ま、これは実現しないパターンの企画が来たなと思って、実現しなそうな枠フォルダに入れておきました」と、最初に企画が来た段階での印象を笑いながら語るリリー。ピュリッツァー賞作家の外国小説を、舞台を日本に置き換え、『美代子阿佐ヶ谷気分』で海外からも一躍注目を浴びた坪田義史監督がオリジナリティを加え映画化した本作では、沖縄の離島で孤独に過ごす盲目の貝類学者が奇病を治したことから、身辺にさざ波が立つ。リリーが続ける。「これだけ特殊な企画が通るのかなと。でも、物語とかリアルとか、泣けるとか笑えるとかではなく、映画っていう芸術のなかの何かが身体に入ってくるような、こういう映画はなきゃいけない。それにこうしたカルト的な映画の主演依頼が来て、俺が断ってどうするんだという思いもありました。メインキャスト4人ともサブカル臭がありますよね(笑)」橋本は安心して参加したと述懐。「私がお話しをいただいたときには、リリーさんたちがすでに決まっていました。信頼感抜群の布陣だなと感じましたね。ただ原作では私が演じた嶌子(しまこ)にあたる人物の心情の描写もあったのですが、脚本にはそういった人間的な描写はなく、監督からは希望の光に導く役割だとお話しいただきました。形而上的なセリフが多かったので、私としては成立させるのに必死でしたね」一方、リリーは自身の役柄についてこう分析する。「『孤独とは親密なものだよ』とか、普通に聞いたら何事ですか?みたいなことを言う人物なんですが、でもこの人の存在自体はそんなに珍しくはないという認識でやってました。現実逃避して、ひとり趣味に埋没しながらも、結局ひとりになれない。現代人の典型的な悩みを抱えている人だと」。そのうえで、やはり特異に仕上がった本作を「監督の妄想に付き合った映画」との言い回しで賞し、「比類なきというか、観たこともない映画を作りたいというところから監督は始めているので、観終わってみんながポカンとするのは、成功なんだと思います(笑)」と締めた。橋本も「監督には人を巻き込む力があるんだと思いました。本当に純粋で、撮影中は少年のようでした」と破顔し、先のリリーの思いに同調した。「こういう作品がなくなっていくと、均されてしまうというか、怖いことだと思います。それに、やっぱり文化に触れるというのは豊かなことなんだと思います」『シェル・コレクター』2月27日(土) テアトル新宿、桜坂劇場ほか全国ロードショー取材・文・写真:望月ふみ
2016年02月24日リリー・フランキーが15年ぶりの単独主演で、盲目の貝類学者役を演じる『シェル・コレクター』。この度、公開を間近に控えた本作から、リリーさんが決死の覚悟で挑んだ水中シーンの映像がシネマカフェに到着した。貝の美しさと謎に魅了され、その世界で名を成した盲目の学者(リリー・フランキー)は妻子と離れ、沖縄の孤島で厭世的生活を送っていた。しかし、島に流れ着いた女・いづみ(寺島しのぶ)の奇病を偶然にも貝の毒で治したために、それを知った人々が貝による奇跡的な治療を求めて次々と島に押し寄せるようになる。その中には息子・光(池松壮亮)や、同じく奇病を患う娘・嶌子(橋本愛)を助けようとする地元の有力者・弓場の姿もあった…。ピューリッツァー賞受賞作家アンソニー・ドーアの同名小説を原作に、ニューヨークでも活躍してきた坪田監督が、「自然と人間が対峙するような場所」として監督が当初から思い描いた舞台を沖縄に置き換え、オール沖縄ロケで撮影された本作。また、映画撮影は本作が初となる渡嘉敷島では、主人公が生活を送る場所として撮影。そして橋本さん演じる嶌子が暮らす家は、沖縄本島の民家では初めて国の重要文化財に指定された民家・中村家住宅を使用するなど、背景にも沖縄を存分感じられる作品となっている。今回解禁された映像は、リリーさんが実際に水中に潜って撮影を行った本作一番の見所ともいえるシーン。「生物には、自分が生きるために最適な場所がある」というリリーさんのナレーションと共に、水中でのリリーさんが映し出される。海中の美しいサンゴや魚たちが登場し、沖縄の海ならではの美しさが感じられる映像となっている。海は、慶良間諸島「ケラマブルー」の名を持つ世界的にも知られた海で撮影され、解像度の高い4Kカメラを駆使し、ほぼ撮り下ろしで撮影されている。決死の覚悟で挑んだという水中シーン。そんなシーンについてリリーさんは「『海猿』にでるつもりは全くなかったんだけど、もういつでも『海猿』に出れる準備はできたよね(笑)。でも『海猿』なんて甘いでしょ。向こうはボンベもメガネもつけてるんだから。こっちはガチで潜って、無呼吸なんだから、決死の覚悟だよね」と大変だったことを明かし、また「椅子に座ってあっちむいてこっちむいて、終わったら5時間目のプールが終わった感じになってしまう。あそこで相当息とめて何回もやったんで、その後のセリフが朦朧とする。本当にいい経験でしたね。とても不思議な気持ち。日本にいるのか海外にいるのかの境目みたいな。これからの人生を考えてしまいますね」と貴重な体験でもあったと語る。また同じく緊張したシーンだったという監督も「この映画は、人が自然と対峙する野外でのシーンが多数あって、リリーさん演じる学者が海底に佇むシーンの撮影は、渡嘉敷島からボートで沖に出て、実際にリリーさんに水中に潜って頂いて撮影をしたので、現場でのリリーさんの身体を張った生身のアクションに気迫を感じて、船酔いの中で大変緊張したこととあわせて、とても印象に残っています」と監督にとっても重要なシーンだったと語っている。海の中で何を思い、何を感じているのか。その答えはぜひスクリーンで水中の映像美と共に確認してみて。『シェル・コレクター』は2月27日(土)よりテアトル新宿、桜坂劇場(沖縄)ほか全国にて順次公開。(cinemacafe.net)
2016年02月16日リリー・フランキーが自身15年ぶりとなる単独主演作『シェル・コレクター』の沖縄プレミア上映の舞台挨拶に登場。さらに、県庁へも表敬訪問したことが分かった。貝の美しさと謎に魅了され、その世界で名を成した盲目の学者(リリー・フランキー)は妻子と離れ、沖縄の孤島で厭世的生活を送っていた。しかし、島に流れ着いた女・いづみ(寺島しのぶ)の奇病を偶然にも貝の毒で治したために、それを知った人々が貝による奇跡的な治療を求めて次々と島に押し寄せるようになる。その中には息子・光(池松壮亮)や、同じく奇病を患う娘・嶌子(橋本愛)を助けようとする地元の有力者・弓場の姿もあった。本作は、ピューリッツァー賞受賞作家アンソニー・ドーアの同名小説を原作に、ニューヨークでも活躍してきた坪田義史監督が、「自然と人間が対峙するような場所」として舞台を沖縄に置き換え、オール沖縄ロケで撮影された。また、那覇から40kmにある白い浜辺が続く美しい離島・渡嘉敷島では主人公が生活を送る場所として撮影。しかもこの渡嘉敷島での映画撮影は、本作が史上初。そして橋本さん演じる嶌子が暮らす家は、沖縄本島の民家では初めて国の重要文化財に指定された民家・中村家住宅を使用し、背景にも沖縄を存分感じられる作品となっている。2月4日(木)に行われた沖縄でのプレミア上映では、先月31日(現地時間)にワールドプレミア上映を行ったばかりの「ロッテルダム国際映画祭」から帰国し、その足で沖縄入りしたリリーさんと坪田義史監督、さらに本作にも出演し、沖縄で人気を誇る俳優・普久原明、新垣正弘が駆けつけた。上映後の舞台挨拶でリリーさんは「あまり見たことのない映画が出来ました。沖縄に住んでいる方たちもこの映画をみて多国籍・無国籍な感覚を持つと思います。荒唐無稽なファンタジーですが、こういう世界もあるかもしれない、と思わせる沖縄の風景に助けてもらいました。娯楽作とはまた違う、皆さんのイマジネーションの中で完成される映画です」と挨拶をした。また普久原さんは「近くからやって参りました(笑)。私は、船の上で太鼓を叩いて登場するシーンがとても印象に残っています。私自身おいしい役を頂きましたが、実はリリーさん演じる学者の子ども時代を私の息子が演じていまして…監督からは私より上手いと褒められていました(笑)」と語ると、新垣さんも「リリーさんは最初クールな印象だったので取っ付きにくい人かと思っていましたが、弁当を食べながら『よく宮古に行くんですよ』と話をしてくれてホッとしたことを覚えています(笑)」とお互い撮影中のエピソードを話した。さらに撮影時、渡嘉敷島が予想以上に寒く海中シーン苦労したことや、撮影中はほぼ毎日みんなが島にある同じ飲み屋に通っていたなど、話しが弾み予定時間を大幅に超す盛り上がりをみせていた。そして翌日、リリーさんと坪田監督は沖縄県庁に表敬訪問。副知事に挨拶をすると、副知事から渡嘉敷島での撮影の感想を聞かれ、リリーさんは「自然はワイルドなのに、人はとても穏やかなのがいいですね。美味しいものも食べることができて、人間のあたたかさと自然が共存しているのを肌で感じられたことは、貴重な経験でした」と話し、続けて本作の魅力について強く語ると、副知事からは「映画を観てやって来る観光客も増えているので、『シェル・コレクター』には期待しています」と応援の声も上がっていた。『シェル・コレクター』は2月27日(土)よりテアトル新宿、桜坂劇場(沖縄)ほか全国にて順次公開。(cinemacafe.net)
2016年02月06日作品数、会員数No.1の映像配信サービス「dTV」から、オリジナル作品として初の「R15」の大人向けドラマ『裏切りの街』が配信されました。内容は平凡な主婦と年下男性による禁断の不倫ドラマ。煮えきらない毎日を過ごす専業主婦の智子と、同棲中の恋人に依存しながら仕事もせずモラトリアムな日々を過ごす菅原。ふとした気の迷いからか、二人は出会い、「なんとなく」ひかれあい、体を重ねていきます。菅原を演じる池松壮亮くんと、智子を演じる寺島しのぶさんの大胆で濃厚な情事シーンはR15指定もうなずける迫力もの。やがて不倫という罪は、残酷すぎる罰として二人を襲うことになるのですが…。どんなに大恋愛からはじまった結婚生活でも、長く続けばときめきは減速し、パートナーに不満を抱くこともしかたありません。そんなとき、現実のわたしたちはどうすればいいのでしょうか。今回は、智子役を演じた女優の寺島しのぶさんにお話を伺いました。■居心地のよさに、年齢は関係ない――女優として、また国際結婚をした妻として、たくさんの価値観に触れてこられた寺島さんにとって、劇中の智子と菅原のような15才も年下の男性との恋愛や不倫をどう思われますか?菅原役を演じた池松くんは一緒にいて楽で、カメラが回っていてもいなくても、気をつかうこともなくリラックスして過ごせました。智子と菅原も、年齢差より「何にひかれたのか」ということが大切だったのではないでしょうか。初めて二人が出会ったとき、智子は自分の年齢に引け目を感じたのか、帰ろうとしましたが、その後、ちょっとした趣味の共通点を見つけたことで、菅原に居心地のよさを感じたのだと思います。そこに年齢は関係なかったのかもしれません。そもそも、どこからが「不倫」なのか、というのも大きな問題です。たとえば、体の関係はあっても、お互いの生活については干渉しないと約束して、割りきった関係は、不倫といえるのか疑問です。やっかいなのは、やはり「心の関係」。心は意識してひかれていくものではないと思うので、いいとか悪いとかではなく、本当に難しいですね。■少し先のことを想像すれば、決断できる――たしかに「心」がひかれあったからこそ、智子と菅原はずるずると関係を続けていってしまったように思います。そんなふうに流されてしまう智子とは真逆で、寺島さんはご自身で道を切りひらかれてきた印象ですが、智子のように「なんとなく」流されてしまう人は、どうやって決断していけばいいのでしょうか。「自分にとっていい」ことをよく考えることだと思います。「自分にとって」というのは、先のことや、周りのこと、居心地の良さなどです。たとえば、智子なら専業主婦なので自由になるお金も限られている。夫から逃げようと思っても先立つものがない。でも、少し先のことを想像できれば、パートに行ったり手に職をつけたりと行動せざるを得ないと思うんですよね。それが、未来の選択肢を広げ、決断していくことにつながるのだと思います。また、守るものがあればがんばれるのかもしれません。――もし智子のように過ちを犯した友人がいたら、なんと伝えますか。「好きなようにすればいい」それしかないんですよね、結局。モラルは別にして、人との出会いは大切な体験だとは思います。でも、その先に続くのは「どうしようもない現実」ですから、「ほどほど」「寸止め」が一番いいと思いますよ。いききってしまったら、終わるしかないですから。でもね、突きつめてしまいたくなる気持ちもわかります。止められないですよね。そうなってしまったら、賢く生きることです。決断して開きなおる強さを持って生きるしかないのかな。■いまある場所で咲くことを考える――最後に女優・母・妻として輝きつづける寺島さんのように、仕事もプライベートも両立させたいアラサー読者にアドバイスをお願いします。とにかく、私の場合は目の前にある敵から倒していけ、です!(笑)仕事もプライベートもがんばりたいなんてね、欲ばりなんだからきっとやらなくちゃいけないことに追われることが多いと思います。よくわかります。でも、1日は短いんです。迷っているうちにあっという間に過ぎてしまう。効率よく「うまくやる」方法もあるのかもしれませんが、結局、目の前のいま、まず「やるべきこと」をバッサバッサと切りたおしていくのが一番早いように思います。いまある場所で咲くことしか、考えられません。――はい! ありがとうございました!実際にお会いした寺島さんは、テレビで拝見していたとおりのさっぱりとしたお人柄で、人生の先輩としてとても励みになりました。禁断の恋愛もあこがれますが、できればドラマを視聴することですませたいものです。ドラマ『裏切りの街』はdTVで独占配信中。ほかにもdTVでは『人のセックスを笑うな』『セカンドバージン』など禁断の恋愛を描いた映画やドラマ12万作品が見放題で配信中(月額500円)。初回31日間は無料お試し中です。・ dTVオリジナルドラマ「裏切りの街」 ※寺島しのぶさんインタビュー衣装協力トップス&パンツ:レ・コパン/サン・フレール(TEL 03−3265−0251)シューズ:レヴィ ケー ショップ/レヴィ ケー ショップ 南青山(TEL 03-3407-0131)ピアス&リング:イー・エム/e.m.表参道店(TEL 03-5785−0760)スタイリスト:中井綾子ヘアメイク:EFFECTOR 片桐直樹
2016年02月05日リリー・フランキー15年ぶりの単独主演最新作にして、池松壮亮、橋本愛、寺島しのぶら豪華俳優陣が共演する『シェル・コレクター』。このほど「第45回ロッテルダム国際映画祭」Bright Future部門に正式出品され、本映画祭へ主演のリリーさん、橋本さん、そして坪田義史監督、抽象映像監督を務めた牧野貴が登壇した。貝の美しさと謎に魅了され、その世界で名を成した盲目の学者(リリー・フランキー)は妻子と離れ、沖縄の孤島で厭世的生活を送っていた。しかし、島に流れ着いた女・いづみ(寺島しのぶ)の奇病を偶然にも貝の毒で治したために、それを知った人々が貝による奇跡的な治療を求めて次々と島に押し寄せるようになる。その中には息子・光(池松壮亮)や、同じく奇病を患う娘・嶌子(橋本愛)を助けようとする地元の有力者・弓場の姿もあった…。世界各国からインディペンデント映画や実験映画、視覚芸術分野における新たな才能を発掘し次々と世に輩出する「ロッテルダム国際映画祭」の中でも、本作が出品されたのは、映像的に革新的かつ固有の個性を持ち、今後の活躍が期待される映画作家の作品がセレクションされる“Bright Future部門”。そして上映時間帯も、映画祭の中でももっとも注目度の高い日曜日の19時15分からワールドプレミアが開催され、満席の会場には地元ロッテルダムの観客だけでなく、各国映画祭のディレクターやプロデューサー、そしてキャストファンのアジアの観客など幅広い観客が詰めかけるなど、本映画祭の本作への注目度の高さが伺えた。リリーさんと橋本さんは、それぞれに海外映画祭への参加経験はあるものの、本映画祭への参加は初めて。上映前の舞台挨拶では「この映画は監督の妄想世界を映像化しまして、観たら不思議な気分になられるかもしれません。外は雨が降っておりまして、最後まで観ていただけると、雨もやんでいるかもしれません。最後まで頑張ってみてください」(リリーさん)、「この作品は日本でもすごく稀有な作品となったと思いますので、観終わったあとにちょっとびっくりされるかと思いますが、是非最後の言葉にできない余韻まで楽しんでいただけると幸いです」(橋本さん)とそれぞれに思いを伝えた。また、北野武を世界に紹介したことで知られる著名な映画評論家であるトニー・レインズが司会を務め、リリーさんへ「本作で盲目役を演じることの難しさはどういうものだったか」と質問。それに対しリリーさんは「盲目役は盲目指導の人もいたので難しくはなかったが、それよりも本作はCG全盛の時代に反してアナログな撮りかたで、実際に水中5mもぐって演技をしなければならないことが一番大変だった」と答え、本作の映像美を支える舞台裏の苦労を明かした。坪田監督は「この映画は盲目の貝類学者が自然への畏怖を感じる映画ですので、観客の皆さんにも何かを感じ取っていただければと思います」と本作を世界に向けてアピールしていた。『シェル・コレクター』は2月27日(土)よりテアトル新宿、桜坂劇場(沖縄)ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2016年02月02日世界的シャンソン歌手、エディット・ピアフの若き日から晩年までを、大竹しのぶが全身全霊で演じる『ピアフ』。イギリスの劇作家パム・ジェムスの傑作として知られ、2011年、2013年に上演されて大絶賛を浴びた舞台が、ピアフ生誕100周年の今年、再び幕を開ける。大竹にとっては読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞した、まさに当たり役への3度目の挑戦。とはいえ「稽古をしながら、新たに発見することがいっぱいあります」と語る。舞台『ピアフ』チケット情報この日、稽古が行われていたのは、ピアフが47歳で亡くなる直前のラストシーン。最愛にして最後の夫・テオ(碓井将大)に寄り添われて、車いすに座ったピアフのもとに、貧しい時代を共に生きた仲間トワーヌ(梅沢昌代)がやって来る。もう長い間会っていないのに、顔を見るなり毒舌を吐いて笑い合うふたり。その姿はこの舞台の冒頭で描かれる、20代の頃のままだ。懐かしい友の昔話を聞きながら、安堵したのか目を閉じるピアフ。テオとトワーヌがゆっくりと去った後、甦ったかのように立ち上がり「水に流して」を歌い始めた。「もういいの、もう後悔しない…」と静かに自らに問いかけるような歌い出しから、歌っていくほどに、大竹のピアフは大地から沸き上がる水のごとく力を蓄えていく。そして歌い切った瞬間、まるで雷に打たれたように。その姿は神々しいほどだ。「ピアフは生前、もし歌えなくなったら、ただ長く生きるより死んだほうがいいと語っていたそうです。そう言えるのがすごいし、壮絶な人生を送ってきたからこそ、すごく愛したいし、愛されたかった人。『愛の讃歌』もこのお芝居の中で歌うと、こんなにも深い愛を叫んでいたんだなって。だからこそピアフの歌は人に生きる力をくれるし、私も歌う時にはお客様にパワーを与えたいと強く思うんです」その後、冒頭のシーンの稽古に移ると一転、路上で命をつなぐために大声で歌う20代のピアフは、野良猫のようにたくましく愛らしい。約3時間、駆け抜けるような人生を演じ、14曲を歌う舞台はハードに違いないが、逆に「歌うほどに力をもらえる」という。「“あたしが歌うときは、あたしを出すんだ。全部まるごと”“エディット・ピアフがステージに上がったら、何かが起きなくちゃ”といった台詞をいうたびに、ああそうだなって、同じ舞台に立つ人間として教えられます。ピアフのように私も1回1回全力を尽くします」そう語る大竹が再びピアフになる。そしてステージに立った時、愛と歌に生きた人生を私たちは体感するはずだ」公演は2月7日(日)から3月13日(日)まで、東京・シアタークリエにて。その後3月19日(土)から21日(月・休)まで大阪・森ノ宮ピロティホール、3月23日(水)に広島JMSアステールプラザ 大ホール、3月26日(土)・27日(日)に愛知・中日劇場で上演。取材・文:宇田夏苗
2016年01月29日「渾身の『夕鶴』、かつてなかった『夕鶴』を、是非ご鑑賞いただきたいと思ってまいりました」。華やかなオーラとともに佐藤しのぶの気迫が伝わる記者会見の始まりだった。2014年、新装なったフェスティバルホールで“大阪国際フェスティバル”のオープニングを飾った、團伊玖磨作曲のオペラ『夕鶴』。主演は佐藤しのぶ、そしてスタッフに、演出・市川右近、美術・千住 博、照明・成瀬一裕、衣裳・森 英恵という最強の布陣を配した前回公演は完売の人気だった。チケットを取れなかった多くの人の声に応えて再演が決定、佐藤が来阪し、意気込みを語った。オペラ「夕鶴」チケット情報「フェスティバルホールがあって、私の青春時代があった。前回、この團先生の『夕鶴』初演の地で歌えて感無量でした」。日本の民話『鶴の恩返し』を題材にしたオペラ『夕鶴』は、これまで国内外で800回以上も上演されてきた名作だ。團自身から演じてほしいと望まれながらも、先輩たちの完成度の高さに長く固辞してきた佐藤。「いろいろなヒロインをやって来ましたが、つうは人間じゃないから今までで一番難しい」と、時間をかけて勉強を重ね、前回「このプロジェクトなら」と出演を決めた。「これまでのつう(役)で、着物を着なかったのは私だけです(笑)」。前回は「これまでのように鍋釜も囲炉裏も家もいらない。なるべくシンプルに新鮮な形で、洗練された2014年の夕鶴に生まれ変わらせよう。一番大切な作品の本質をみなさんにお伝えするようなものを作りましょう」と作り上げた。傾斜のある回り舞台を用いた演出、何もない空間に立体的で美しい世界を生み出した映像、照明はつうの心を映し出し、衣裳にはファンタジーとリアルが織り込まれた。多くの素晴らしい才能が初めて出会い、舞台上でひとつになって誕生した、斬新な『夕鶴』だった。作品については「本当に不思議なファンタジーだと思う。愛や欲望など、人間の普遍的なものを描きながら、今私たちが直面している問題もはらんでいる作品ですね。これからの未来を明るく作っていく糧になればと思って歌っています」と語る。今回の再演を喜びながらも、また新たな高みに挑む日々。「今回は前回を上回る精度の高いものにして、オペラの臨場感を伝えたい。全員が自己ベストを更新する緊張感を持って臨んでいます。前回ご覧になった方は、観比べていただきたいですね。オペラは人間の人間による人間のための芸術。初めての方には、是非一度、生で体験していただきたいと心から思っています。でも、この舞台、私も客席で観てみたいですよ~!(笑)」。公演は、2月14日(日)の神奈川県民ホール 大ホールを皮切りに、3月5日(土)大阪・フェスティバルホールを経て、3月末まで全国各地で開催。チケット発売中。取材・文=高橋晴代
2016年01月27日池松壮亮と寺島しのぶが繰り広げる禁断の恋を描く「dTV」オリジナルドラマ「裏切りの街」。この度、本作の主題歌に「銀杏BOYZ」の「ピンクローター」が起用されることが決定。さらに、官能シーン満載の予告編と劇中の場面写真が解禁された。平凡な日常を送る専業主婦の橋本智子(寺島しのぶ)は15歳も離れた年下男性の菅原(池松壮亮)と出会う。彼には同棲している恋人が、自身には夫がいることを互いに知りながら、はっきりとした目的もないままに中央線沿いの狭い街の中で二人は逢瀬を重ね、遂にはカラダを重ねていく。終わりのない空虚な現実から逃げるようにして身を寄せあう二人の逃避行。しかし、ある出来事をきっかけに二人を待ち受けていたのは、あまりにも非情な現実だった…。本作は、「dTV」が手掛けたオリジナル作品では初となるR15作品。岸田國士戯曲賞を受賞した劇作家で映画監督としても活躍する三浦大輔が演出を手掛け、2010年に上演された同名タイトルの舞台を自らの手で映像化した意欲作。平凡な専業主婦と年下男性による禁断の恋を描いたリアル不倫ドラマだ。フリーター・菅原には、『ぼくたちの家族』『紙の月』などの演技が評価され4つの助演男優賞を受賞するなど、若手きっての演技派俳優・池松さんが、また菅原と禁断の関係に堕ちていく専業主婦・橋本には、『キャタピラー』でベルリン国際映画祭「銀熊賞(女優賞)」を受賞し、リリー・フランキー主演の『シェル・コレクター』も控える演技派女優の寺島さんが扮する。そのほか、中村映里子、落合モトキ、駒木根隆介、平田満、佐藤仁美らがキャストとして名を連ねている。そして今回本作の主題歌が、ストレートな歌詞と情感溢れるメロディで多くの若者の支持を集め、今なお熱狂的なファンの多い「銀杏BOYZ」の楽曲「ピンクローター」に決定。原作である舞台版の主題歌としても起用されており、原作の世界観を見事に表現したロックバラードだ。また今回の起用に関して三浦監督は「原作では『ピンクローター』ありきで物語を拡げていったので、他の曲は映像化に於いても考えられなかったです。『ピンクローター』を書いてくれたから、この物語があると思っています」と楽曲への思い入れを明かした。今回解禁された予告編は、智子と菅原の出会いから、ラストに訪れる非情な現実によって窮地に立たされていく二人の姿まで、本作のスリリングな魅力が垣間見える内容となっている。中でも、一糸まとわぬ姿でお互いを激しく求め合う二人の官能シーンは必見だ。さらに、初公開となった場面写真は、艶やかな“赤”を背景として、初めて体を重ねた二人を切り取った象徴的なワンシーンとなっており、予告編と共に強いインパクトを残す。三浦監督が“いま最も信頼の置ける役者”だと語る池松さんと再びタッグを組んだ本作。まずはこちらの映像から、切なさと虚しさが交錯する登場人物たちの姿を覗いてみて。「裏切りの街」は2月1日(月)よりdTVにて全6話一挙配信(R15指定)。(cinemacafe.net)
2016年01月25日過去に個人で2つのアカデミー賞を受賞しているケイト・ブランシェットがさらなるオスカーの期待がかかる主演映画『キャロル』を携えて来日。1月22日(金)に開催されたジャパン・プレミアに出席しファンの声援に応えた。ケイトの主演女優賞、ルーニー・マーラの助演女優賞をはじめとするアカデミー賞計6部門にノミネートされた本作。いまよりもずっと性的マイノリティへの世間の圧力が強かった1950年代にニューヨークで出会い、互いに惹かれ合っていく2人の女性のドラマを魅惑的に描き出す。ケイトが映画のプロモーションで来日するのは意外にも今回が初めて。劇場内のレッドカーペットに黒いシックなドレス姿のケイトが登場すると、会場は拍手と歓声に包まれ、会場のあちこちでフラッシュが焚かれる。ケイトは観客の声援に手を振り、握手の求めに丁寧に応じながら壇上へと進んだ。オスカーノミネートについて会場から祝福の拍手がわき上がるとケイトは「ありがとうございます」と微笑む。特に共演のルーニー・マーラとのWノミネートに言及し「この映画は2人の女性とその間にある“愛”を描いた作品であり、ルーニーとのノミネートが何より嬉しいです」と語った。同性愛を描いた内容に関しては「1950年代において、同性愛は犯罪的な行為。原作のパトリシア・ハイスミスは“クライムサスペンスの女王”と呼ばれた作家ですが、ここで描かれる犯罪は、銃によるものでも殺人でもなく、愛そのものです」と語る。ルーニーとのラブシーンについても「(男女で)ちょっと細かいところが違ってくるでしょ(笑)?」と冗談めかしつつ「結局のところ、愛は愛なんです!」と客席に向かって力強く語りかけた。この日は、ゲストとして寺島しのぶが着物姿で登場。「女優として尊敬している」というケイトに花束を手渡した。寺島さんは過去に本作と同じヘインズ監督の下でボブ・ディラン役で男性まで演じたことのあるケイトに「今度は何の役をやったら新しい自分を見つけられると思いますか?」と質問。ケイトはしばし思案し「相撲の力士の人生はどうかしら?」と軽妙な答えで笑いを誘っていた。改めて作品について寺島さんは「夢のような美しい映画です」と称え、ケイトは「私たちは愛でこの映画を作りました」と語り、最後まで会場は温かい雰囲気に包まれていた。『キャロル』は2月11日(祝・木)より公開。(text:cinemacafe.net)
2016年01月23日豪女優のケイト・ブランシェットが22日、都内で行われた、主演映画『キャロル』のジャパンプレミアに出席した。2月11日に全国公開する本作は、パトリシア・ハイスミスの小説を実写化した愛の物語。1950年代の米・ニューヨークを舞台に、美しい婦人キャロル(ケイト)と高級百貨店でアルバイトをするテレーズ(ルーニー・マーラ)、2人の女性の出会いと禁断の愛を描く。約6年ぶりに来日したケイトは、黒レースのシックなドレスでレッドカーペットに登場し、「日本のみなさんに会えて、本当にうれしく思っています」と大歓声を上げる観客にあいさつ。本年度アカデミー賞では、主演女優賞、助演女優賞をはじめとする計6部門でノミネートされ、「本当に素晴らしい。この作品は2人の女性の間の愛が描かれているので、ルーニーとのダブルノミネートが何よりもうれしい」と喜びを語った。続けて、女性同士の愛を描く本作について、「当時は同性同士の愛は犯罪だった。キャロルは、『ありのままの自分でいるか? 母親としてどうあるべきか?』という中で、辛い選択をする場面もある」と語ったケイト。テレーズを演じるルーニーとのラブシーンもあり、「ジェンダーの垣根を超え、『ロミオとジュリエット』のように壮大で純粋な愛が描かれている。愛が愛であることには変わりない」とアピールした。また、イベントには、日本を代表する女優として寺島しのぶが花束を持って駆けつけ、「2人のお芝居が素晴らしかった。2回も3回も見たくなる美しい映画。ケイトは役のつかみ方が素晴らしく、女優さんとして尊敬してます」とにっこり。「これからどんな役をやったら新しい自分が見つかりそうですか?」と聞く寺島に、ケイトは、「相撲レスラーの人生物語かしら」とおどけながら答え、会場の笑いを誘っていた。
2016年01月23日アカデミー賞6部門ノミネートの『キャロル』主演のケイト・ブランシェットが来日し、1月22日に開催されたジャパンプレミアに出席した。その他の写真『アビエイター』での助演女優賞、『ブルージャスミン』での主演女優賞に続き、ブランシェットに3つ目のオスカー(主演女優賞)をもたらすのではと期待がかかる本作。トッド・ヘインズ監督がメガホンを握り、1950年代のニューヨークを舞台に、カメラマン志望の女性と魅力あふれる婦人・キャロルの愛を描き出す。ケイトは黒のドレスでレッドカーペットに登場し、観客の声援に応えつつ壇上へ。共にアカデミー賞(助演女優賞)にノミネートされた共演のルーニー・マーラ、トッド・ヘインズ監督抜きでひとりでの来日に「寂しいです」と語りつつも「この映画はふたりの女性とその間にある“愛”を描いた作品で、ルーニーとふたり揃ってのノミネートが何よりうれしいです」と満面の笑みを浮かべた。ルーニーとの同性愛のシーンに関しては「(男女で)細かいところが違うじゃないですか(笑)。これこそ映画の力だなと感じますし、ヘインズ監督だからこそのシーンだと思います。ジェンダーの垣根を越えた『ロミオとジュリエット』のような壮大な物語が紡がれており、何よりも愛は愛なんです!」と語った。この日は、ゲストとしてベルリン映画祭の主演女優賞を受賞したこともあり、ブランシェットの大ファンだという寺島しのぶが来場。大きな花束をブランシェットに手渡した。作品について寺島は「これぞ映画!理屈なしで自然に入り込めました。おふたりの見る人の心をつかんで離さないお芝居もすごかったです」と絶賛。ブランシェットは寺島の言葉に「ルーニーにも伝えます!」と嬉しそうに笑みを浮かべた。また、寺島から「これまでいろんな女性を演じられてきて、男性の役(『アイム・ノット・ゼア』でのボブ・ディラン役)もやられていて、今度は何の役をやったら新しい自分を見つけられると思いますか?」と質問されると、ブランシェットは「スモウレスラー(力士)の人生ものはどうでしょう」とユーモアたっぷりに語り、会場は笑いに包まれた。『キャロル』2月11日(木・祝)全国公開
2016年01月22日日米合作でつくられたリリー・フランキー15年ぶりの単独主演最新作『シェル・コレクター』がこのほど「第45回ロッテルダム国際映画祭」Bright Future部門に正式出品されることが決定。さらに主演のリリーさん、共演の橋本愛、そして監督の坪田義史、抽象映像監督の牧野貴が同映画祭へ参加することが明らかとなった。貝の美しさと謎に魅了され、その世界で名を成した盲目の学者(リリー・フランキー)は妻子と離れ、沖縄の孤島で厭世的生活を送っていた。しかし、島に流れ着いた女・いづみ(寺島しのぶ)の奇病を偶然にも貝の毒で治したために、それを知った人々が貝による奇跡的な治療を求めて次々と島に押し寄せるようになる。その中には息子・光(池松壮亮)や、同じく奇病を患う娘・嶌子(橋本愛)を助けようとする地元の有力者・弓場の姿もあった。本作は、ピューリッツァー賞受賞作家アンソニー・ドーアの同名小説を原作に、ニューヨークでも活躍してきた坪田監督が、舞台を沖縄に置き換え、オール沖縄ロケで撮影。原作に始まり、音楽、劇中絵画、プロデューサーなど日米の才能が集結、さらにリリーさんを含め、多くの美大出身者が勢揃いしているからこそ創り出せた映像美も大きな魅力となっている。今回正式招待された「ロッテルダム国際映画祭」は、オランダのロッテルダムで開催される映画祭で、世界各国からインディペンデント映画や実験映画、視覚芸術分野における新たな才能を発掘し次々と世に輩出する、国際映画祭の中でも権威ある映画祭のひとつ。毎年1月終わりに開催され、今年も現地時間1月27日~2月7日に開催。本作が出品されるのは、映像的に革新的かつ固有の個性を持つ映画作家の作品をセレクションする「Bright Future部門」で、今後の活躍が期待される才能豊かな監督の作品が例年上映されている部門だ。そして、1月31日 (現地時間)、日本に先駆けてのワールドプレミア上映に、本映画祭初参加となるリリーさんと橋本さん、前作『美代子阿佐ヶ谷気分』がコンペティション部門に出品された経験を持つ坪田監督、本作で抽象映像監督を務め、最高賞であるタイガーアワードも受賞している実力者た牧野監督が登壇。さらに牧野監督は「cinema concret」が、短編部門のタイガーアワードコンペに出品されることも決定している。また本作の出品について坪田監督は「日本の公開に先駆けてワールドプレミア上映出来ることを大変嬉しく思っています」と喜びを語り、「ロッテルダム映画祭は、前作で招待されていてご縁を感じます。アメリカの原作小説を日本に置き換えて脚色したこの映画は、リリー・フランキーさんはじめ日本を代表する名優の皆さんが彩ってくれました。海外の皆さんがどのように反応するか楽しみです」と期待に胸膨らませている様子だ。『シェル・コレクター』は2月27日(土)よりテアトル新宿、桜坂劇場(沖縄)ほか全国にて順次公開。(cinemacafe.net)
2016年01月22日若手きっての演技派・池松壮亮とNHK連続テレビ小説「あさが来た」への出演も記憶に新しい寺島しのぶが、『愛の渦』の監督・三浦大輔のもと、dTV初の“R15指定”となるオリジナルドラマ「裏切りの街」に出演。2月1日(月)より、4K画質にも対応して配信されることになった。平凡な日常を送る専業主婦の橋本智子(寺島しのぶ)は、ある日、15歳も年下の菅原(池松壮亮)と出会う。彼には同棲している恋人が、自身には夫がいることを互いに知りながら、はっきりとした目的もないままに中央線沿いの狭い街の中で、2人は逢瀬を重ねていく。終わりのない空虚な現実から逃げるように身を寄せあう、つかの間の2人の逃避行。しかし、ある出来事をきっかけに2人を待ち受けていたのは、あまりにも非情な現実だった…。本作は、岸田國士戯曲賞を受賞した劇作家・三浦大輔が、2010年に自身のオリジナル脚本、演出で上演した同名タイトルの舞台を自ら映像化。寺島さん演じる平凡な専業主婦と、池松さん演じる15歳年下のフリーターによる禁断の恋愛とその果てを描き、男女の過激な官能シーンをはじめとする原作の持つ刺激的なエッセンスを忠実に再現。さらに、原作では描かれなかった衝撃の結末を新たに加え、dTVオリジナル作品としては“初”のR15指定作品となっている。フリーターの菅原を演じるのは、『紙の月』『海を感じる時』などで日本アカデミー賞「新人俳優賞」など数々の映画賞を受賞した若手実力派の池松さん。また、菅原と禁断の関係に堕ちていく専業主婦の智子を演じるのは、『キャタピラー』でベルリン国際映画祭「銀熊賞(女優賞)」を受賞し、リリー・フランキー主演の『シェル・コレクター』も控える演技派女優の寺島さん。人気、実力申し分なしの2人が体当たりで挑んだ官能シーンのみならず、不倫関係であることを知りながらも罪を重ねていく空虚なキャラクターをそれぞれが見事に演じ切っている。三浦監督といえば、劇作家、演出家としてだけではなく映画監督としても、池松さん主演の衝撃作『愛の渦』などで高い評価を受け、2016年秋には『何者』(原作:朝井リョウ/東宝)の脚本・監督を務めることも決定している。自身でも「僕の舞台作品の中でも最も映像化したかった作品」と語る通り、三浦作品の魅力であるリアリティーを追求した演出と人間の本質をえぐるテーマ性が共存する。池松さんは、「愛の渦に続き、三浦さん渾身の戯曲を映像化出来ることがとても嬉しかったですし、何よりまた三浦組に参加できることがとても光栄でした」とコメント。「人は何度も過ちを繰り返し、取り返しのつかない日々をそれでも生きてゆく。これは、裏切りの街に暮らす、私たち自身の物語です」とメッセージを寄せる。相手役を務めた寺島さんに対して、「凄い方だということは僕が言うまでもなく、沢山の事に身を捧げてきたその人柄の深さを垣間見せてもらうことが出来て、とても刺激的な日々でした」と賛辞を贈ると、寺島さんも「職人のような人でした。2人で目を合わせながら空気を感じながらその場で感じるお芝居をするのは快感でした」と絶賛し、池松さんとの共演をふり返っている。三浦監督はそんな主演2人に対し、「池松くんとはいろんな作品で一緒にやってきて、いま僕が最も信頼を置ける役者さんだと思っているので主役は彼に託しました。寺島さんも同じく、そうです。自分の中で大事な作品ということもあって、2人以外の役者さんのほとんどは、過去に一緒にやったことのある信頼の置ける方々を選びました」と明かす。さらに、「不倫ドラマではありますが、ありきたりなメロドラマではなく、人間の細かい感情の起伏や視点にこだわっているのが従来のそれとは全く違い、見たことのない感触の作品になっていると思います」と語り、人間同士だからこその生々しさを映し出すことに自信を覗かせている。「裏切りの街」は2月1日(月)よりdTVにて全6話配信(※R15指定)。池松壮亮出演『紙の月』「MOZU」シリーズ。三浦監督作品『ボーイズ・オン・ザ・ラン』なども2月配信開始予定。(text:cinemacafe.net)
2016年01月20日フジヤマ・クオリティは1月1日、山梨県忍野村で同社が運営する忍者テーマビレッジ「忍野 しのびの里」に、忍者アトラクション「忍術皆伝の道」をオープンした。「忍術皆伝の道」は、楽しみながら忍者修業を体験できるアスレチック。同施設の既存の「忍者からくり屋敷」「忍野手裏剣道場」に加え、3つ目の忍者アトラクションとなる。忍者のように壁をつたって進む「つたい壁」や、鳴子のついたロープをかいくぐる「鳴子地獄」、随所に仕掛けが潜む「からくり迷路」など、忍者に必要なさまざまな能力を鍛える7つのエリアで構成されている。なお、同アトラクションの利用料金は大人(中学生以上)500円、子供(3歳以上)400円となる。入園料は別途必要で、大人700円、子供400円(庭園入園料+アトラクション1回利用券付き)。営業時間は9:00~17:00(最終入場16:30)。※価格は全て税込
2016年01月04日俳優としても高い評価を受けるリリー・フランキーが、盲目の貝類学者役で15年ぶりの単独主演を務める『シェル・コレクター』。寺島しのぶ、池松壮亮、橋本愛など豪華キャストの出演で話題を集める本作の、美しくも妖しい魅力あふれる予告映像と、リリーさんのコメントが到着した。貝の美しさと謎に魅了され、その世界で名を成した盲目の学者(リリー・フランキー)。妻子と離れ、ひっそりと彼が暮らす沖縄の孤島に、一人の女性・いづみ(寺島しのぶ)が流れ着く。彼女が患っていた奇病を偶然にも貝の毒で治療したことから、それを知った人々が続々と島に押し寄せるようになり、彼の静かな生活は一変。その中には自らの息子・光(池松壮亮)や、同じく奇病を患う娘・嶌子(橋本愛)を助けようとする地元の有力者・弓場の姿もあって…。アメリカの作家アンソニー・ドーアの処女短編集で、「O・ヘンリー賞」を始めとする多くの賞を受賞した「シェル・コレクター/貝を集める人」を原作に、舞台を沖縄に移して新たに生まれ変わった本作。メガホンを取ったのは、デビュー作『美代子阿佐ヶ谷気分』が各国の映画祭で絶賛された坪田義史監督だ。このたび解禁された予告編は、美しい沖縄の自然を背景に映し出しながらも、どこか不穏な空気を纏った、不思議な魅力あふれる映像となっている。心を閉ざした盲目の学者、島に突然現れた女、謎の奇病…。日々を淡々と送っていた主人公が人々の欲望に巻き込まれていく様子や独特の世界観には、恐ろしさすら感じ、つい引き込まれてしまう。『そして父になる』『凶悪』などの出演により、俳優としても確固たる地位を確立したリリーさんは「15年ぶりの単独主演作は、またしてもカルト映画になりました。坪田監督は独特の感覚を持っている人。『シェル・コレクター』のような作品は今の日本映画界において貴重です。いろんな意味で稀な映画。美しさと醜さのファンタジーをお楽しみください」と語り、唯一無二の“坪田ワールド”作品への自信をのぞかせている。『シェル・コレクター』は2016年2月よりテアトル新宿、桜坂劇場(沖縄)ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2015年11月30日2011年の初演から3度目の上演となる『ピアフ』で、大竹しのぶが再びエディット・ピアフになる。演じるというより、まさしくピアフが降りてきたとしか言いようのなかったあの舞台に、再び立つ思いを聞いた。舞台『ピアフ』チケット情報舞台『ピアフ』は、シャンソンの女王、エディット・ピアフの人生を、短くも鮮烈なシーンを積み重ねながら表現した作品。そこに、『愛の讃歌』『バラ色の人生』『水に流して』などのピアフの珠玉のナンバーが加わっていく。再演にあたって大竹が改めて感じているのは、そのピアフの歌が持つ力だ。「音楽番組で歌う機会があったんですけど、演劇と離れて歌っても、やはりピアフの歌は別格でした。演出の栗山(民也)さんも『ピアフが歌うときは神々しい』とおっしゃっていましたが、地と天を結ぶような力があって、聴く人にその力を与えられないと歌う意味がない感じがするんです。『あたしが歌う時は、あたしを出すんだ。全部まるごと』という台詞があるように、私も全部を出して歌わないと歌えない」。それだけに、「ピアフをやると疲れる(笑)」のだと苦笑する。「でも、ピアフの台詞に私自身が力をもらえる。そして、“何があっても生きていかなくちゃいけないね”っていうような気持ちを、舞台にいる私たちとお客さんとで、共有し合えたような感覚になるんです」。歌のみならず、ピアフの人生自体も壮絶だ。最愛の人を亡くし、病に身体も心も蝕まれながらも、歌い続ける。「愛を求めた孤独な人だったんだろうなと思います。歌っているときだけは喜びがあって自分になれて。そんなふうに人生の苦しみやつらさを知っている人の歌だからこそ、あの人の歌声は多くの人を惹きつけたんじゃないかなと思うんです」。その人生を本当に生きたように演じた大竹は、初演の年に読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞した。「評価していただいたことがプレッシャーにならないと言ったら嘘になります。でも、どう思われるかということは考えずに、今の自分と共演者のみんなでまた一から作っていって、1回1回やるだけだと思っているんです」。おそらく大竹は、また毎公演、エネルギーをあふれさせて、ただピアフを生きるのだろう。「私たちの身体を通してピアフの愛と力を感じてもらって、頑張って生きていこうと思ってもらえたらうれしい」。ピアフにとって歌うことが喜びであったように、大竹にとっても演じることが喜び。その純粋な思いに心動かされないはずがない。公演は2月7日(日)から29日(月)まで東京・シアタークリエにて。その後、大阪、愛知、広島でも公演。東京公演のチケット一般発売は11月28日(土)午前10時より。取材・文:大内弓子
2015年11月27日湊かなえ、三浦しをん、角田光代という現代を代表する女性作家の短編小説を映像化するオムニバスドラマ「女性作家ミステリーズ 美しき三つの嘘」が2016年1月4日(月)にフジテレビにて放送されることが決定。それぞれのドラマの主人公に永作博美、土屋太鳳、鈴木京香、そして全話に三浦友和が登場することが明らかになった。「女性作家ミステリーズ 美しき三つの嘘」は、これまで多くの作品が映像化されてきた湊氏、三浦氏、角田氏のいまだ未映像化の短編小説を題材に、“短編”ならではの長さをそのまま活かして映像化。“大人の鑑賞に堪えうるミステリー”をテーマに、現代を生きる様々な世代の女性たちが抱える“秘密”と“ウソ”にまつわる珠玉のミステリードラマが全3作品で紡がれる。第1話は、湊氏原作の「ムーンストーン」(ハルキ文庫刊「サファイア」所収)。主人公の私は、市議会議員の夫が県会議員選挙で落選したことをきっかけに彼からDV被害を受け、抵抗したはずみで夫を殺してしまう。逮捕され警察の取り調べを受ける私のもとに、ある女性が現れて…。主人公の私には永作博美、私を訪ねる女性に檀れい、私を取り調べる刑事役に村上淳、私の夫に滝藤賢一、夫側の弁護士に柄本明という豪華キャスト陣が集結。また、監督は『神様のカルテ』シリーズ『トワイライト ささらさや』などで知られる深川栄洋が務める。永作さんは本作が深川監督とは初タッグとなるが「ある意味、挑戦的な、とても新しいアプローチで描く作品です。深川監督と一緒に、“新しい表現”をお見せできるよう頑張りたい」と撮影を楽しみにしている様子。第2話は、三浦氏原作の「炎」(新潮文庫刊「天国旅行」所収)。毎朝、通学バスで登校する高校生の香川亜利沙の日課は、憧れの先輩・立木尚吾の横顔を眺めること。図書委員の亜利沙は、図書室で仕事をしながらも、テニス部で練習に励む立木の姿を追ってしまう。そんな憧れの立木がある日突然、学校のテニスコートで…。主人公・亜利沙に土屋太鳳、立木の元彼女・初音に門脇麦、立木に村上虹郎、亜利沙の担任で社会科教諭・木下に柄本佑と最旬若手俳優がずらり。土屋さんは「誰の心の中にも“炎”のような何かが必ずあると思いますが、この作品で亜利沙という役としての“心の炎”と一緒に、いまの私自身がこの作品と出会って生まれた“心の炎”を監督や、共演の麦ちゃんをはじめとした素晴らしいキャストの方々に引き出していただいたので、是非この“熱”を感じていただけたら」と熱いコメントを寄せた。そして第3話は、角田氏原作の「平凡」(新潮社刊「平凡」所収)。宮本紀美子は、結婚生活も20年を越えた主婦。紀美子の中高校の同級生・榎本春花は人気料理研究家で、テレビに出ない日はないほどの有名人。彼女の活躍を見るにつけ自分が地味で不幸に思えてしまう紀美子は、春花に会えば、退屈な毎日から脱却できるのではと考え20年以上ぶりに再会を果たす。しかし突然、春花が「わたし、人を殺したかも」とつぶやき…。「平凡」には、主人公・紀美子に鈴木京香、榎本春花に寺島しのぶ、紀美子と春花の高校時代の教育実習生・宮本に染谷将太、紀美子の夫に寺脇康文と、豪華実力派キャスト陣を迎え、『64-ロクヨン-』前編&後編の公開を控える瀬々敬久がメガホンを取る。本作で初共演となる鈴木さんと寺島さんだが、それぞれの印象について「“春ちゃん”のイメージ通りで、台本で描かれているように快活で活発、そして才能あふれる女性ですので、ご一緒していてとても楽しいです」(鈴木さん)、「鈴木京香さんは、いつまでも本当にきれいな方だなと思って、現場でも見とれていました。日傘を差している姿がとても似合う方です」(寺島さん)と明かした。さらに、3作それぞれに、三浦友和が刑事として出演。三浦さん演じる刑事が全く異なる3作品を連結させる役割を担い、各作家の独立した短編作品が、まるでリレー小説のように一連のドラマとして連なりを見せることもこのドラマの見どころの一つといえるだろう現代を代表する女性作家たちの短編を、それぞれの世代のトップランナーと言っても過言ではない女優陣を主演に迎え紡ぎ出す、新春にふさわしい豪華絢爛な本格ミステリードラマの本作に期待が高まる。「女性作家ミステリーズ美しき三つの嘘」は2016年1月4日(月)21時よりフジテレビ系にて放送。(text:cinemacafe.net)
2015年11月25日永井愛が作・演出を手掛ける二兎社。2016年1月に世田谷パブリックシアターにて行われる第40回公演『書く女』は、わずか24年の生涯で『たけくらべ』『にごりえ』などの名作を残し、日本人女性初の職業作家としても名を成した樋口一葉の姿を描いた作品。10年ぶり待望の再演で、今回主演の一葉役を務めるのは、永井作品に初出演の黒木華だ。二兎社『書く女』チケット情報演技派若手女優としての高い評価は、もはや言わずもがなだろう。しかし、最初に出演の話を持ちかけられた時にまず思ったのは「……大丈夫かな、と思いました(笑)」と意外な(?)答え。「初演の映像で寺島しのぶさんが演じられているのを観て、『これを私がやれるんだろうか』と。しかも主役だから、物語自体を自分が流していかなくてはいけない。それを自分ができるだろうか、というのをまず考えましたね」しかし、心強い存在もある。今回は新演出版となり、初演よりキャストを全て一新。平岳大、木野花ら実力派俳優たちが顔を揃えた。「今回初めてご一緒する方が多いんですけど、皆さんすごく魅力的なので、そこにのっかっていこうかなと(笑)」今の黒木とほぼ同世代で短い一生を駆け抜けた一葉。創作と恋、背負うものの狭間で苦悩するその姿はむしろ、現代に生きる女性たちのほうがより深い共感を得るのかもしれない。「今で言うキャリアウーマンみたいなところはありますし、カッコいいですよね。『女性は家のことをやる』という時代に大黒柱となって家を支える、しかも小説で、という。すごく意思のある人だと思うし、魅力的だと思います」そう、今回何よりも彼女の背中を押したのは、“永井先生の面白さ”。「本当に、どれも面白いですよね。永井先生の作品は、出てくる登場人物がとにかくみんなチャーミングなんですよ。だから舞台が遠い時代でも、観ている今の時代の人と繋いでくれるというか……あんなにワクワクさせてくれるお芝居をどうやって作るのか、それを身近で見られるのが楽しみなんです」インタビューの言葉から伝わってくるのは、自分の人生を変えた“演劇”への愛。例えば心を揺れ動かされるようないい舞台作品と出会えたなら、思うのは「羨ましい」ということ。「こんな素晴らしい舞台に私は呼ばれてない、もっともっと頑張らなければ、と思うんです。私もその空気を吸っていたかったな、と。だから今回、自分が『面白い』と思った作品に出られるのが幸せなんです」久々の舞台作品出演ということもあり、とにかく稽古・本番が待ち遠しいといった様子。黒木華が演じる一葉を、楽しみにしていようではないか。公演は1月21日(木)から31日(日)まで東京・世田谷パブリックシアターにて。その後、全国を巡演。東京公演のチケット一般発売は11月29日(日)午前10時より。取材・文:川口有紀
2015年11月06日リリー・フランキーを主演に迎え、寺島しのぶ、池松壮亮など豪華キャストが出演することで注目を集める日米合作の映画『シェル・コレクター』。来年2月の公開に先駆け、本作のティザービジュアルと特報映像が解禁した。主人公は“貝”の美しさと謎に魅了され、もう目ながら貝類学の世界で名を成し遂げた学者。彼は妻、息子と離れ、沖縄の孤島で貝を蒐集しながらひっそりと静かな厭世的生活を送っていた。しかし学者の静謐な日々は、島に流れ着いた画家の女・いづみが出現し、学者とひとつ屋根の下に暮らし始めることで次第に狂い始める。そして、ある日いづみの患っていた奇病を偶然にも貝の毒で治したために、それを知った人々が貝毒による奇跡的な治療法を求めて次々と島に押し寄せるようになる。その中には息子・光や、同じく奇病を患う娘・嶌子を助けようとする地元の有力者・弓場の姿もあった。原作は、本年度ピュリッツァー賞を受賞した、アメリカの作家アンソニー・ドーアの同名短編「シェル・コレクター/貝を集める人」。同名処女短編集で「O.ヘンリー賞」を始めとする多くの賞を受賞したアンソニー・ドーア作品初の映画化となる。今回、盲目の貝類学者の主人公を演じるのは『そして父になる』『凶悪』で各映画賞を総ナメにしたリリー・フランキー。そして島に流れ着き学者と奇妙な同居生活を始める画家・いづみには『キャタピラー』でベルリン映画祭最優秀女優賞を受賞し、映画はもちろん舞台やテレビにも幅広く活躍する寺島しのぶが演じる。また主人公の息子・光役には『ぼくたちの家族』『紙の月』などで受賞が続き目覚しい活躍をみせる池松壮亮、奇病を患う娘・嶌子を演じるのは、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」でお茶の間の誰もが知る存在となり、若手実力派女優として本年も話題作の公開が目白押しの橋本愛といった豪華キャストで脇を固めている。全編沖縄でロケを敢行したという本作。今回公開された特報映像はリリーさんが歩く海の映像から始まる。沖縄の手つかずの自然が映し出されており、その風景の中で盲目の貝類学者である主人公が静かな生活から一変、運命が転換していくことを予感させる映像となっている。併せて解禁されたティザービジュアルは、“見えずとも指先が感じる貝の螺旋…ここにあるのは、まるで奇跡だ”という文と共に、盲目の学者演じるリリーさんが沖縄の海辺を歩く。夕日に染まるその姿がドラマを感じさせる、そんなポスターとなっている。沖縄の美しい映像と盲目の主人公という難しい役どころを演じることとなるリリーさんの演技や脇を固める豪華キャスト人たちの演技にさらに注目を集めそう。『シェル・コレクター』は2016年2月よりテアトル新宿、桜坂劇場(沖縄)全国にて順次公開。(cinemacafe.net)
2015年09月24日今秋から放送開始予定のNHK連続テレビ小説「あさが来た」の主題歌発表会見が18日(火)、東京・渋谷NHKで行われ、主題歌がAKB48の「365日の紙飛行機」に決定したことが明らかとなった。同ドラマは、連続テレビ小説では初の幕末からスタート。激動の時代の大阪を明るく元気に駆け抜けたおてんば娘と、陽気にヒロインを支え続けたボンボン夫の「おもろい夫婦」を中心に、様々な人間ドラマが繰り広げられる。ヒロイン・今井あさ役には女優の波瑠。夫の白岡新次郎役には、玉木宏、そして、あさの姉・はつ役には、宮崎あおいが決定しているほか、寺島しのぶや、近藤正臣、柄本佑ら豪華キャスト陣が物語を支える。制作統括の佐野元彦エグゼクティブ・プロデューサーは「もの凄くお話の内容には自信を持っています。でも、朝の8時に丁髷かよ!という不安もやっぱりあります。若い人たちに丁髷でも面白いよ、って思ってもらうために、まずはどんな主題歌がいいかな、と考えた結果、秋元康先生に相談にいきました」と経緯を紹介。完成した楽曲を聞き、「ドラマにスッと寄り添いつつも、ベタッと張り付かない、心地のよい曲で大感謝です!」と満足気な表情をみせた。会見には、AKB48のメンバーである山本彩、高橋みなみ、渡辺麻友、柏木由紀、横山由依が登場。初めてAKB48のセンターを務める山本さんは、「同世代の方たちにもしっかり見て頂けるように頑張りたい」と力強く語った。高橋さんは「紙飛行機のように真っ直ぐな気持ちを持って歌っていきたい」と話し、渡辺さんも「夢のようです」と笑顔を見せた。柏木さんは小学生の頃、朝ドラの再放送を学校全体で見ていたというエピソードを紹介。「その頃の朝ドラの主題歌だったKiroroさんの『Best friend』が学校の歌になって、ずっと歌っていた経験があるので、『365日の紙飛行機』もみなさんに愛される曲になって欲しいです」と話した。そんな中で、横山さんは「いずれ、朝ドラのヒロインをやらせて頂けるように頑張りたい!」と抱負を宣言した。渡辺さんが、「さや姉(山本さん)の歌声は、AKBのレベル以上」と言うと、メンバーからは次々にブーイングが。それでもなお、「でも、わかりますよね?歌が上手なので、新しい層の方にAKBにも興味を持ってもらえたら嬉しいです!」と山本さんの歌声を高く評価した。連続テレビ小説「あさが来た」は9月28日(月)8時よりNHKにてスタート。(text:cinemacafe.net)
2015年08月18日日本が「戦後71年」への第一歩を踏み出す日となる8月15日(土)、激動する世界の現場を訪ね、グローバルな視点で、日本人が未来のために何ができるのかを考えてゆく「戦後70年 ニッポンの肖像戦後70年を越えて 日本人は何ができるのか」がNHKにて放送される。本番組の中で、石原さとみがウガンダを、寺島しのぶがフランスを訪れていることが明らかとなった。日本人だけでも310万人という甚大の犠牲を礎に、平和国家として歩んできた日本。一方、世界に目を転ずると、この70年、戦争の無い年はなかったと言っても過言ではないほど凄惨な争いが繰り返され続けてきた。そして、グローバル化が極限に達した現代の世界は、さまざまな“対立”が激化し、出口の見えない混沌とした状況が続いているのが事実でもある。本番組で、10万人が犠牲になった内戦の爪痕がいまも色濃く残るウガンダを訪ねた女優の石原さんは、「知る事の大事さ。やっぱり、知ったからには責任を持ちたいということをすごく感じました」と現地に訪れた感想を語る。「知らなくて良い事なんてない。知ってしまったら怖いし、避けたくなるかもしれないし、見て見ぬフリをしたくなるかもしれない。でも、まずは知る事が大事ということが、身をもって分かりました。そしてもうひとつ、一人の人を、目の前の人を励ませるって、すごく大事なことだと思いましたね」と心情を明かした。さらに寺島さんは、シャルリ・エブド事件の余波が続くフランスで、民族や宗教の対立をどう乗り越えればいいのかを見つめる。寺島さんは「日本は、いまはとても平和ですが、私たちはもっと世界に目を広げ、他の国で起こっていることや他の宗教について色々な人の話を聞き、いま話し合わなくてはいけないことをしっかりと話し合っていかなければいけないと思います」とコメントを寄せた。スタジオには世界を舞台に活動する各界の第一人者を招き、生放送で、明日の世界を考えていくという。日本を代表する2人の女優は、この旅を経験し、平和を実現していくために何が必要だと感じたのだろうか。NHKスペシャル「戦後70年 ニッポンの肖像戦後70年を越えて 日本人は何ができるのか」は8月15日(土)21時15分~放送。(text:cinemacafe.net)
2015年08月14日映画『インサイドヘッド』のヒットを記念して日本語吹替版の声優を務めた大竹しのぶが7月28日(火)に舞台挨拶に登壇。大竹さんが演じた“カナシミ”にそっくりだと自他共に認める「ハリセンボン」の近藤春菜が相方の箕輪はるかと一緒にキャラクターになりきって登場した。主人公の少女・ライリーの脳内を舞台にした本作。ヨロコビ、カナシミ、ムカムカ、イカリ、ビビリという5つの要素で構成されているライリーの感情だったが、ヨロコビとカナシミが脳内の司令部から放り出されてしまったことから思わぬパニックが起き…。近藤さんは青いカツラに黒ぶちの丸メガネというカナシミそっくりの格好で登場しつつも「カナシミじゃねーよ!」と怒声を張り上げ笑いを誘う。箕輪さんから「映画の中でカナシミが歩けなくなって引きずられるところは普段の春菜そっくり!」と指摘されると「歩くわっ!引きずれないでしょ、重くて!」と返し、会場は再び笑いに包まれた。箕輪さんは一見、分かりづらいが劇中のヨロコビをイメージした衣裳で「私の感情は喜びで占められています!」と主張。「先日、歯を白くしまして、丈夫になってお菓子の袋を歯で開けられるようになりました。憧れだったので喜んでます」と語った。「○○じゃねーよ!」という芸風に「カナシミ」を加えた近藤さんだが「『○○じゃねーよ!』と怒りに満ちて否定してますが、実は私って何にでもなれるという喜びに満ちてます。最近では人間じゃないものまであって、男女年代を問いません」と胸を張る。大竹さんは、少し前に放送されたドラマ「Dr.倫太郎」における、近藤さんの心を病んだ女性の演技を絶賛!「すごく上手でした。『女優だ!』って思いました」と語り、これには近藤さんも「大竹さんからそう言っていただけるとドラマのオファーが増えるかも!泣きそうです!」と喜びを爆発させていた。また、大竹さんは歌舞伎役者の中村勘九郎と前田愛の息子たちとの交流を明かす。深い親交があった故・中村勘三郎(第十八代)の孫でもあるが、映画の中のキャラクターたちのように感情を思い切り発散させる「ヨロコビごっこ、カナシミごっこ、イカリごっことかをして遊んでいます。楽しいです」と笑顔で語った。また報道陣から元夫の明石家さんまが、以前から「60歳の還暦で引退する」と語っていたことについて尋ねられると「多分ない。ずっと仕事していくと思います。(仕事していないと)生きていけないんじゃないかな?」と否定した。『インサイドヘッド』は公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:インサイド・ヘッド 2015年7月18日より全国にて公開(C) 2015 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
2015年07月28日歳の離れた二人が惹かれあう様を描く、西炯子による大ヒットコミックを映画化した『娚の一生』。今年既に『さよなら歌舞伎町』『ストロボ・エッジ』と公開作が相次ぐ廣木隆一が監督を務めた本作は、“枯れ専”や“足キス”など、刺激的なキーワードと共に話題となったが、本編に漂うのは三重県伊賀市の美しい景観に包まれたおだやかな空気感だ。これまでの可愛らしいイメージから一転、影のある落ち着いた女性を演じた榮倉奈々と、ロマンスグレーに関西弁の大学教授という個性的なキャラクターを演じた豊川悦司、どちらも過去に廣木作品に出演し、今回の参加を待望していたという。“枯れ専”“足キス”に加え、“田舎暮らし”や“スローライフ”などといった言葉も飛び出す中、不思議なバランスで成立する『娚の一生』の物語をどのように演出していったのか、廣木隆一監督に話を聞いた。“大人の女性のバイブル”と称される原作の同名漫画。寺島しのぶの体当たりの演技が話題を呼び各賞を受賞した『ヴァイブレータ』をはじめ、近作ではラブホテルを舞台にした『さよなら歌舞伎町』など、多くの作品の中で“性”を扱ってきた廣木監督は、原作の中でエロティックな部分に惹かれたと語る。「西さんのマンガはもともと『娚の一生』以外も読んでいたんです。西さんの漫画は男と女の関係の中で、きちんと“性”というか、エロティックな部分もちゃんとあって、それに惹かれる部分がありました。『娚の一生』の場合は、主人公二人の関係性が、彼がおばあちゃんの元カレっていうのを、リアルなものとして映画にしたら面白いなというのはありましたね。」主演を務めた榮倉さんは、本作では肌を大胆に露出するシーンがあるなど、これまでの可愛らしい清純派のイメージから、大人の女性としての魅力を切り取るシーンが数多く映し出されている。榮倉さんが主人公を演じるにあたってどのような経緯があったのだろうか。「等身大の榮倉で何かやれる企画がないかというのは前からあって、榮倉が主演で何かやりたいっていうのを最初からプロデューサーと話していたんです。榮倉とは普段から会っていたりもあるんですけど、『余命一ヶ月の花嫁』のときは19、20歳くらいだったので、そこからどんどん大人の顔になってきたんで、そういう部分が見える映画になればいいなと」と語る廣木監督。さらに、女優・榮倉奈々の魅力についても「榮倉ってすごく面白くて、最初はすごく不安そうにしてるんですけど、やっていくうちにどんどんつぐみになっていってくれちゃうんですよね。最初は、海江田っていうちゃんと濃いキャラクターに対してのお芝居のリアクションとかを、合わした方がいいのかとかは悩んでたと思うんですけど、つぐみはつぐみでいて欲しいなと思ったんで、それに合わせる必要はないと言ったりはしましたけれど、後半は全然何も言わなくてもつぐみになりきってくれてました。すごく不思議な女優さんですね」と言及する。一方、強烈なキャラクターに、ダンディでセクシーな海江田醇を魅力たっぷりに演じた豊川悦司。『やわらかい生活』以来8年ぶりの廣木作品への出演だが、監督は“大人の男”豊川さんへに賛辞を送る。「豊川さんと久々にやりたいなあというのもあったんですけど。二人がいたら『娚の一生』は成立するという気がしました。豊川さんは、普段やってるような男社会というか、そういう世界観の中で演じられているのも好きだけど、普通のおっさんだけどかっこいいみたいな(笑)、大人の男として格好いいって思えるし、さらにコミカルな演技ができる一面ももっていらっしゃるので、そこが大好きですね」。主演二人もさることながら、『僕らは歩く、ただそれだけ』の安藤サクラや、『きいろいゾウ』の向井理など、 これまで廣木作品に出演してきた俳優陣をはじめ、美波、前野朋哉、落合モトキなど、個性派が脇を固めているのも本作の魅力だ。中でも、思わず笑ってしまう安藤サクラのアドリブシーンのエピソードについて話が及んだ。「キャスティングはプロデューサーと相談しつつやっていきましたね。サクラは『僕らは歩く、ただそれだけ』に出てもらっていたんで、いつかまたやりたいなと思っていたので。向井君は少しだけの出演なのに、本当によく出てくれたっていう感じですね。今回の映画は全然アドリブのシーンはないんですけど、安藤サクラのシーンだけ一箇所アドリブがありますね。海江田と一緒に薪割っているところ。笑っちゃいましたけどね、オカマって(笑)。あそこだけはサクラがなんか言っちゃったから、まあいいやって、使いました(笑)」。『余命一ヶ月の花嫁』においても主演を果たした榮倉さんだが、『娚の一生』にて、前野さんや落合さんとのコミカルなやりとりがある中、榮倉さん演じるつぐみが広大な田園をバックに自転車を漕ぐ姿を長く捉えたシーンは、『余命一ヶ月の花嫁』で榮倉さんと瑛太が二人で自転車を漕ぐ姿を長く捉えたとても印象的なシーンと似ているところもあり、それについても尋ねてみると、監督はおどけながらも“自転車”へのこだわりについて語ってくれた。「僕はレーン使わないで、移動しながらの撮影が好きなんです。『娚の一生』はあの自転車のシーン一箇所だけなんですけどね。僕の映画はやたらと自転車が出てくるシーンが多いんですよ。『さよなら歌舞伎町』もそうですし。自転車を撮らせたらオレだって言わせようかなあと(笑)」。廣木監督の映画は、撮影された場所の雰囲気をそのまま伝えるような映像がとても印象的だ。『さよなら歌舞伎町』の歌舞伎町はもちろん、『やわらかい生活』の蒲田、『きいろいゾウ』の三重県松阪、『余命一ヶ月の花嫁』の屋久島、そして『RIVER』の秋葉原や福島。どの作品も、その街の空気を閉じ込めたような映像が観るものを惹きつける。本作は、三重県伊賀市や京都の竹林にて撮影が行われ、美しい緑が広がる田舎の景観が、物語の落ち着いた雰囲気を与えている。どんなこだわりをもって撮影に臨んでいるのかについて尋ねると、田舎の出身だと語る監督ならではの思いについて語ってくれた。「僕はひとつの作品の中でいろんな場所の組み合わせ方をするよりは、同じ場所で撮影したいなって思うんですよね。『やわらかい生活』の蒲田には蒲田の空気感があるし、新宿には新宿の空気感、そして今回の作品だと三重県伊賀の空気感があるので、そこで撮りたいっていうこだわりがあるんです。例えば、映画の中で出てくる電車、あれは本当に動いている電車なんで止められないんですよ。だから、サクラや向井くんが電車から降りてくるシーンで遅刻しそうな女子高生がいるんですけど、あれはエキストラじゃなくて本当に遅刻しそうなんです(笑)。そういうのはその場で撮る面白さですよね」。そして本作で最も注目を集めた“足キス”シーン。もともと原作にあった描写ではあるが、おだやかな空気が流れる本作において、突飛なシーンとも捉えられかねないこの場面の思わぬ“誤算”について、監督は笑いながら「どういう風にとらえられるんだろうって気はしてましたし、面白いなって思いましたね。普通に男女が好きだって言ってベッドシーンというよりは、中年の男の無様なところと突飛なところ、思わずやってしまう、みたいなのを描くつもりだったんですけどね(笑)。ああいう転んだ拍子に、ついついそこに足がありましたっていうね(笑)。だからね、もうちょっとくすって笑ってくれるかと思ってたんですけど、観客の皆さんシーンとしてて。ちょっと失敗したかなあと思いましたね、エロすぎたかなと(笑)」と冗談交じりで明かした。そんな廣木監督いわく“突飛なところ”がある52歳の海江田醇は、劇中では「好きになってしまったからしかたがない」といったつぐみへのストレートなプロポーズしかり、2人のもとにやってくる少年のまこと君をしかりつける様など、“父性の喪失”や草食系男子といった言葉が謳われる昨今においては、古風といえるほどの男性性を感じるキャラクターだ。さらに、劇中でつぐみの作る食事や、田舎の風景の中で流れるゆったりとした時間は、東京での暮らしに疲れて田舎にやってきたつぐみの姿を、「地方」や「田舎」、「スローライフ」といったことが取りざたされる現在において、ある種のリアリティを持った物語として観るものに訴えかける。そこにはどんな思いがあったのだろうか。「海江田に関しては父性を描きたかったと、西さんが言ってましたね。日本ならではの古風な、包容力だったり、どっしりした父親像を描きたかったと。最近そういった田舎暮らしが言われているのは、人って自分一人でもがいてると思ってるけど、そのひとにも家族、お父さんお母さんがいて、家があるんだとか、そういう風に考えられるようになったからだと思いますね。『娚の一生』では、時代遅れっていうわけではないんですけど、この古い家だとか、家族、父親がいて母親がいて、時代からは少しはずれた場所に、東京でリアルに暮らしていたつぐみがやってくる。だから、一人でもがいている彼女が、だれかと出会うことで立ち直るんじゃなくて、何かが見えるようになる、というか。僕自身が、もうちょっと世間を見れるようになったのかもしれないですが」。廣木作品の多くには、大きな喪失に対して、向き合おうともがき、そして再生していく人物が多く登場する。『娚の一生』のつぐみも喪失を抱えた登場人物ではあるが、本作の穏やかで優しいタッチの描写は、これまでの作品とは趣が少し異なる。これまでの映画作りを経て、本作で描いた”シンプルな生き方”について監督は語る。「そんなに前向きに再生していくっていう話は、はっきり言ってそんなに好きじゃないんです(笑)。みんな頑張ったら頑張った分だけいろんな障害があるわけで、いままでそういう描き方が多かったんですけど、今回はそういうものをいったん置いておいて、ラフでシンプルに生きた方がいいじゃんっていう、そういうのありだなって思ったんです。今回の場合は、出会った相手がおばあちゃんの彼氏だったっていうだけで、普通に人間として付き合ってみたらいい人じゃんっていう。やっぱりラブストーリーって、男と女が出会って、生活があるんですよね。めっちゃわかりやすく言っちゃうと、台風のシーンがあるじゃないですか、そういう時も寄り添って生きていく、困難でも二人で生きていけるってことだったりするんで。誰かが好きでフラれてとかいう話じゃなくて、もうひとつ先の、夫婦の話っていうのを描きたかったなという気がします」。“足キス”や“枯れ専”といった女性を引きつける刺激的なテーマはあるものの、『娚の一生』で描かれたおだやかさは、古風な男性像や、共に歩んでいく夫婦など、不変的なテーマが持つ力強さを感じさせる。そしてなにより、廣木監督が本作で描いた、肩の力を抜いたシンプルな生き方は、多くのひとの心に感動を呼ぶに違いない。最後に、今後撮りたいものについての伺うと、監督が大好きだという音楽映画を撮ってみたいと即答。さらに、現在リーアム・ニーソンにはまっているという廣木監督は、冗談混じりに展望を語ってくれた。「『007』みたいなスパイものとかね、言っておこうかな(笑)。誰が撮ったかすぐわかるように、自転車のって拳銃打つみたいなやつね(笑)」。(text:cinemacafe.net)
2015年07月10日