前の家のものを残して使うNさんのお母様が暮らしていた築50数年の家を取り壊したのが3年前。設計を依頼した若原さんに、解体作業の前にその古い家を見てもらったことがN邸のあり方を決めるうえで大きなポイントとなった。「若原さんが“まずは見に行きます”って言ってくださったんですね」と話すのは奥さん。N夫妻は建て替えに際して、前の家のものを何か残して新しい家で使うとは思ってもみなかった。また、前の家のイメージをどこか引き継ぐような家にしてほしいという要望もなかったという。若原さんによるとそれは、「残す残さないは別として、前の家がどういうものだったのか設計をする前に見ておきたかったし、ただ更地にして新しい家を建てるのはもったいないかなと思って発した言葉だった」と話す。1階道路側の窓。解体された家の窓をそのまま使っていて、昭和中期頃のレトロな雰囲気が漂う。周りの壁などの木はこのサッシの色味に合わせて塗装が施されている。家を実際に見た結果、応接間に使われていた窓の一部を残すことに。「前の家でいちばん印象的だった」と奥さんが言うその窓は、現在は国内生産されていないガラスが木のサッシにはめ込まれている。1階道路側の窓で使われることになったこの窓は、柔らかな凹凸がつくり出すラインが水平に並んだガラスと、焦げ茶色の木のサッシとのコンビネーションで、昭和のレトロな雰囲気を醸し出している。竣工する少し前、はじめてこの家を訪れた息子さんが一目見て思わず、「あ、おばあちゃんちだ!」と言ったそう。これはこの窓を見ての発言だったという。応接間をぐるりと囲んでいたこの窓は、N家の人たちにとって前の家のイメージを代表するものだったのだ。書をマグネットで留められるように壁の最上部にフラットバーが取り付けられている。焦げ茶色の壁は書道紙を留めたときにコントラストがついて書がより映えて見える。リビングの天井に開けられたトップライトが手前の北側のスペースにまで光を注ぐ。家を開くこの窓が設置されたスペースは焦げ茶色の木の壁面が特徴的だが、これは奥さんが書道をされる関係でまずは計画されたもの。「書道教室を必ずしようとまでは決心が固まっていなかったんですが、個人で書くための場所はほしいと話をしている中で、それであればリビングとつなげることで書道教室をすることもできるし、別の用途にも使えるといったご提案をいただいたんです」若原さんの提案は、Nさんが定年になってずっと家にいるようになることも見越してのものだったと話す。「“家を開く”というか、書道教室をやるためだけのスペースではなくて、たとえばご主人が趣味のサークルに入ったらその会合に使ってもいいし、展示スペースとして貸すこともできるような、外へと開かれたスペースとして計画しました」パブリックな用途にも使用することが想定されている手前のスペースとリビングは低い壁でゆるやかに分節されている。白い壁には漆喰が塗られているが、Nさんはこの漆喰壁に当たる光の感じが素敵で気に入っているという。住宅にしては大きな気積をもつ空間。これはNさんのお母様が描かれた「秋の日」という日本画作品をかけるために大きな壁面が必要だったためだが、同時に多人数の人が来ても対応可能な空間となった。日本画とピアノと松ぼっくり残したのはガラス窓だけではなかった。Nさんのお母様が自身で描いた日本画のうちの1枚がリビングの壁にかけられているのだ。若原さんも加わって大量に遺された絵を片づけているうちに、やはり何枚かは取っておこうと決まった。また打ち合わせ時にお母様にまつわる思い出話が盛り上がる中で、厨子を置くコーナーをつくること、そして1962年頃にイギリスで購入されたという古いピアノを絵と厨子の近くに置くことも決まっていった。厨子には木彫作家のクロヌマタカトシさんに彫ってもらった松ぼっくりがおさめられている。これは葬儀の際には棺の中に入れてほしいというくらい松ぼっくりが好きで、海外滞在時も含めて膨大な数の松ぼっくりを収集していた故人を偲ぶものだ。「結局、窓と絵とピアノと松ぼっくりとが集合することになって、日常の生活の中でもお母さんの影というのか存在を感じられるスペースになったのではないか」と若原さん。テーブルはこの家のために製作されたオリジナル。リストアされて新品同様に見えるピアノの右隣には厨子の置かれたコーナーがつくられている。奥さんがとても好きだという庭。大きな窓を通して庭を体感することができる。窓の上部が壁から突き出て段状になっているがこれは「リビングのある空間の断面のプロポーションが最後までしっくりこなくてスタディを重ねた結果」できたもの。1962年頃、Nさんのご両親がイギリス滞在時にハロッズデパートで買い求めたドイツ製のピアノ。リビングの開口近くから見る。左手にキッチンがある。厨子の中にはお母様が大好きだった松ぼっくりを象った彫刻がおさめられている。最初から懐かしい家この家に越してきてから4カ月ほどだが、奥さんは新築であるにもかかわらずどこか懐かしい感じがするという。「不思議な感覚ですが、それがすごく楽しい。あと、素人にはこのような家になるとは想像もつかなかったんですが、メリハリがあって広いところとこもることのできる空間の両方があるのもすごく楽しいですね」Nさんはリビングの空間がとても落ち着けて好きだという。さらに「この裏庭に向けて開いた窓の上の段になった部分が一見無駄なように見えながらすごく味があってとてもいいです。夜、光が当たるとまたこれがいいんですよ」と話す。新築の家はなじむまで時間がかかるものだが、N邸は越してきた当初から「落ち着けて」また「懐かしい」。これはN邸が前の家とお母様の記憶をしっかりと継承しているからこそなのだろう。1階のダイニング・キッチン。コンパクトにデザインされたテーブルのスケール感も良く落ち着く空間となっている。ダイニング・キッチンからリビングスペースを見る。リビングからダイニング・キッチンを見る。キッチンはリビングからでも火元が見える位置に配置してもらった。書道教室などで左の空間が使われているときのために、プライベート空間にダイレクトに行ける動線を用意した。2階に上って左手にある空間。手前左側が奥さんの部屋で奥がNさんの部屋。Nさんの部屋にはハイサイドライトから光が入る。奥さんの部屋を仕切った状態。奥に見えるのが息子さんの部屋。家族全員が「小さなスペースで十分」ということから、2階の個室はコンパクトに納め、その分、1階のリビングを広くした。N夫妻は「漆喰や木などを使って自然な感じにしてほしい」という希望は持っていたが、このような空間になるとはまったく予想をしていなかったという。左側とのバランスを考え右の部分を思い切って高くデザインした。ご近所では「塔のある家」と言われているという。手前の窓ガラスは強度が不足していて割れやすいため、内窓として使用している。N邸設計若原アトリエ所在地神奈川県藤沢市構造木造規模地上2階延床面積101.92㎡
2019年03月13日20世紀を代表する建築家、ル・コルビュジエ。彼の建築作品で世界文化遺産でもある国立西洋美術館(本館)で、ル・コルビュジエの絵画とそのルーツに迫る展覧会『ル・コルビュジエ絵画から建築へ—ピュリスムの時代』が開催されている。『ル・コルビュジエ絵画から建築へ—ピュリスムの時代』()
2019年02月26日展覧会「インポッシブル・アーキテクチャー ―建築家たちの夢」が、2020年1月7日(火)から3月15日(日)まで、大阪の国立国際美術館にて開催される。「インポッシブル・アーキテクチャー」展では、完成に至らなかった建築の構想や、あえて提案に留めた刺激的な建築のアイディアに着目。一口に“未完”=“アンビルト”といっても、実現しないまま残された建築案の数々は、必ずしも無理難題な構想であったわけではない。未来に向けて夢想した建築をはじめ、技術的には実現可能であっても社会的条件や制度により作られなかった建築、実現よりも既存の制度に対して批評精神を打ち出す点に主眼を置いた提案など、豊かな発想で練り上げられた多彩なアイディアを紹介。結果的に“未完”に終わり、不可能と認識されたアイディアに目を向けることで、逆接的に建築における極限の可能性や、ポテンシャルを浮き彫りにしていく。会場では、安藤忠雄やザハ・ハディド・アーキテクツ+設計JV、広島市現代美術館の設計者でもある黒川紀章、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ、岡本太郎、ダニエル・リべスキンドといった約40人の建築家・美術家による「インポッシブル・アーキテクチャー」を紹介。図面、模型、関連資料などを通して、未だ見ぬ新たな建築の可能性を模索する。【詳細】インポッシブル・アーキテクチャー ―建築家たちの夢会期:2020年1月7日(火)~3月15日(日)※会期中に一部展示替えあり。前期 1月7日(火)~2月9日(日)/後期 2月11日(火・祝)~3月15日(日)休館日:月曜日(ただし、1月13日(月・祝)、2月24日(月・休)は開館し、翌日休館)場所:国立国際美術館住所:大阪府大阪市北区中之島4-2-55開館時間:10:00~17:00 金曜・土曜は20:00まで ※入場は閉館30分前まで観覧料:一般 900円(600円)、大学生 500円(250円)※( )内は20名以上の団体料金※高校生以下・18歳未満無料(要証明)※心身障がい者とその付添者1名無料(要証明)※本料金でコレクション展も観覧可能。※夜間割引料金(対象時間:金曜・土曜の17:00~20:00)は一般 700円、大学生 400円。■主な出品作家(アルファベット順)会田誠、安藤忠雄、荒川修作+マドリン・ギンズ、アーキグラム、ヤーコフ・チェルニホフ、ヨナ・フリードマン、藤本壮介、マーク・フォスター・ゲージ、ピエール=ジャン・ジルー、ザハ・ハディド・アーキテクツ+設計JV、ジョン・ヘイダック、ハンス・ホライン、石上純也、磯崎新、川喜田煉七郎、菊竹清訓、レム・コールハース/OMA、黒川紀章、ダニエル・リベスキンド、前川國男、カジミール・マレーヴィチ、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ、村田豊、長倉威彦、コンスタン(コンスタン・ニーヴェンホイス)、岡本太郎、セドリック・プライス、エットレ・ソットサス、スーパースタジオ、瀧澤眞弓、ウラジーミル・タトリン、ブルーノ・タウト、ジュゼッペ・テラーニ、山口晃、山口文象(岡村蚊象)■関連イベント例磯崎新(建築家)×浅田彰(批評家) 対談開催日時:2020年2月15日(土) 14:00~会場:国立国際美術館 地下1階講堂※参加無料、定員130名※要事前申込。往復はがきに「郵便番号・住所/⽒名(1枚につき1名)/電話番号」を記入、返信面に必ず住所・名前を記載の上、下記宛先に応募。抽選となった場合、結果は1月24日(金)頃に復信はがきで通知。応募宛先:〒530-0005 ⼤阪市北区中之島4-2-55 国⽴国際美術館「2⽉15⽇対談」係 ※1月17日(金)締切※消しゴムで消えるボールペン・鉛筆の使用は不可。※その他詳細・イベント情報は国立国際美術館公式ホームページに記載。【問い合わせ先】国立国際美術館TEL: 06-6447-4680(代表)
2019年02月22日スペインの南部、アンダルシアにはパティオ(中庭)のある家が一般的です。パティオという中庭は、スペイン建築でよく見られます。なぜ、パティオ(中庭)のある家が多いのかを考えてみました。■ アンダルシアの古い町並みは、細い道が特徴アンダルシアの夏は暑いことで有名です。午後3時くらいが最高気温で、45度になるなんてしょっちゅう。2018年の夏、メスキータがあるコルドバは52度を記録しました。そのように暑いアンダルシアでどうやって生活しているの?と思う人も多いのではないでしょうか。実は意外に家の中は涼しいのです。その秘密は、細い道。細い道だから、家と家があまり離れていません。そのためお互いに影を作り合うのです。おまけに古い家は、分厚い壁で覆われています。壁の厚さがなんと60cmもあるため、外の温度に左右されません。外壁が白いのは、細い道で影を作りあっても光を反射して、暗くならないようにしているのです。■ 家と家が近くにあっても中庭を作れば影ができる!いくら道を細くしても家が庭で囲まれていては当然、家と家の間隔が広くなってお互いに影を作れません。家と家をくっつけて建造し、真ん中に庭を作ること、これがパティオ(中庭)の始まりなのでしょう。数件がパティオを共有しているところもあります。古い学校や病院、市場にもパティオがあり、くつろぎ空間を作っています。■ パティオを飾るのがアンダルシアの楽しさパティオは建物に囲まれているため、車道とは切断されています。それは、干して貯蔵する食材を作るためにも有利です。昔は特に舗装されていない道を馬車が走ると埃が舞い上がったことでしょう。そのため、アンダルシアでは赤ピーマンなど野菜類を干して貯蔵する習慣が多いのです。例えば、私の住んでいるハエン県では赤ピーマンだけではなく、豚肉のロース肉にお塩をしっかりまぶして干します。これはもちろん冬だけです。アンダルシアというと年中温暖だと思う人も多いのですが、冬は0度を切るほど寒くなります。壁の鉢植えに水やりをする方法(コルドバの街にある彫刻)パティオの長所は、ほかにもあります。外側に庭ですと外からの視線が気になりますが、パティオならパジャマのまま水やりをしていても問題ありません。外にテーブルを置いて食事をしても外から見えるわけではないというのもメリットです。そして暑い時期になるとギラギラ太陽で枯れてしまう花たちが元気に花を咲かせ、冬の間太陽不足で花を咲かせない植物も白い壁の反射で太陽の光がたくさんあり1月でもゼラニウムの花が咲いています。その土地にある家の形にはやはり理由があるのですね。伝統的なことには意味があるようです。確か京都にも中庭文化がありました。京都には京都の理由があるのでしょう。長所がたくさんあるパティオ。新しく家を考えるときに取り入れてみてはいかがでしょう。きっと素敵な空間が作れますよ。
2019年02月19日今回は、女性一級建築士である筆者が、失敗しない間取りにするために注意すべき3つのポイントについてお話いたします。家を建てる際に間取りを決められないという人は意外と多いようです。1年近くも打合せしても、なぜか堂々巡り……。どのようにすれば、理想の間取りにすることができるのでしょうか?■ 1.インターネットの情報だけに踊らされない!Mills / PIXTA(ピクスタ)インターネットの利用によって、多くの人が、家に関しての情報を得ることも、発信することもできるようになりました。リビングにサンルームを造ったら、室内物干しができて便利だった!玄関に、キッチンからも出入りできる収納をつくったら、家事が楽になった!上記のような「便利だった!」「よかった!」という情報を、我が家にも取り入れたいと思うことは、決して間違ってはいません。しかし、家の設計は、敷地や道路、方位、法令などの条件から作成していくため、まったく同じ条件の家はありません。そのため、取り入れたい間取りが、自分の家で可能であるとは限りませんし、無理に取り入れたことで、別の場所が使いにくい間取りになることもあるのです。インターネットの情報は、参考程度にして、設計者や施工者など、専門家の意見を大切にしましょう。マハロ / PIXTA(ピクスタ)■ 2.間取りへの要望は「引き算」で考える!プラナ / PIXTA(ピクスタ)「明るくて広いリビングダイニングがほしい」「庭でバーベキューがしたい」「書斎がほしい」「家事コーナーでよいから、私専用のスペースがほしい」。ふじよ / PIXTA(ピクスタ)このように、家族それぞれの希望はたくさんあると思います。しかし実際には、敷地や予算の制限から、ご家族すべての希望をかなえるのは難しいのが現状です。間取りの要望をまとめて設計者に伝えるには、以下のようにするのが最適です。まず初めに、家族それぞれが自由に、家への要望を紙に書きだす家族で重なった要望は、「家に求めるもの」として残す要望が重ならない、または意見が拮抗するものは、引き算をして要望から消していく残った要望を紙にまとめ、設計者に渡すRina / PIXTA(ピクスタ)こうすることで、家族の思いもまとまりやすく、また設計者にも「家に求めるもの」のイメージが伝わりやすくなります。また、同時に「家に求めないもの」も補足として伝えてみてください。余計なところにお金をかけない配慮が可能になり、具体的な家へのイメージが設計者に伝わります。■ 3.専門家のセカンドオピニオンを聞く要望を整理し、設計者に伝えたけれども……、なかなか希望通りの間取りにならない、間取りにピンと来ない場合も多いと思います。そんなときは思い切って、専門家のセカンドオピニオンを聞く方法もあります。IYO / PIXTA(ピクスタ)病院と並び、建築の世界も、専門家によるセカンドオピニオンを聞くことが普通になってきています。そして設計事務所や不動産コンサルタント事務所では「間取り相談」や「間取り診断」を実施しています。「間取り相談」のメリットとしては、建築士が変われば、まったく違う間取りができることが多いデメリットとしては、今の設計者との空気感が、若干、悪くなる場合があるなどです。こちらの図面は「間取り相談」を行う前のものです。セカンドオピニオンの意見を参考に建物の大きさや配置は一切変えずに、間取りだけ変えると以下のようになりました。ここまで間取りを変えることができます。いかがでしたか?マイホームへの夢は、十人十色、さまざまです。間取りづくりのポイントをおさえ、後悔や失敗のないマイホームづくりを進めてくださいね。(しかまのりこ)
2019年02月18日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。ほぼ諦めていた「建築条件外し」がとんとん拍子に実現してしまい、愛する新宿の土地を手に入れられることになり、喜びと戸惑いが冷めやらぬ鳥夫婦です。■ 営業Sさんは最後までやり手さて、晴れて新宿くんと結婚できることになった鳥夫婦。Sさんから電話を受けた一週間後にはY社へと伺い、「建築条件外し合意書」に判を押しに行きました。Sさん「保奈美さん(40代半ばだと思われる女性設計士さん)には何か話されました?」鳥夫婦「いいえ、まだ何も。近々謝罪の電話でもしようかと思っていたのですが……」Sさん「あ、それは、ちょっと、待っていてもらえますかね?」Sさんの指示通り、その後はR社に何もアクションしないようにしていました。そして次にR社の人と接することになったのは、土地決済日。銀行の来客室にて、R社の設計部長さんと久しぶりにお会いしました。設計部長さんさんは鳥夫婦の顔を見るなり立ち上がり、「このたびは、大変申し訳ございませんでした!」と謝罪されました。ビックリしてしまい、「いえいえ、とんでもありません!こちらこそ……」と慌てて鳥夫婦も頭を下げました。この状況から、Sさんが、すべて、うまくやってくれたのだと察しました。きっと「R社の方が良くなかった」という流れに持って行ってくれたのでしょう。だから建築条件外しの土地代も請求されなかったのかもしれません。本当にSさんには良くしていただきました。竣工の暁には、Sさんに写真と御礼メールを送らせていただこうと思いました。(しかし竣工後にメール送ったところ、宛先不明で返ってきてしまいました。残念ながら転職されていたみたい)また、保奈美さんには会わないまま「保奈美さんにも、申し訳なかったとよろしくお伝えください」と設計部長さんに伝える形で終わりました。■ なぜ土地代アップなしで建築条件外しができたか?個人的な状況なのでお役に立たないと思いますが、一応、今回のありがたい結末を迎えた要因について、まとめておきます。以下がSさんからお聞きしたもの。今回の分譲地は、諸事情あり、手続きの結果によっては分譲の話自体がなくなるリスクがあったので、そもそもR社が弱腰だった(当初の契約書にも、もし分譲不可能になっても了承するよう記載されていた)最初から「建築条件を外せ」と要求していたら、おそらく土地代アップを求められていただろうが、鳥夫婦も検討した上での要求であったY社は老舗、R社は新しい会社であり、つながりで成り立っているこの業界でY社の立場は強かった(R社はいつも非公開で仲介業者に売ってもらっている)R社社長とマブダチの反町(隆史似の)支店長が、ちょうど2か月前にSさんの支店に配属されてきたのもラッキーだった以下は鳥の思う、その他要因。複数棟を同時設計&施工することによるコストダウンが得られず、1棟分だけまた新たに客を探して設計し直し&施工するのは、R社としてもやりたくなかったのではないかR社がちょうど今後の経営方針に「個人住宅の注文住宅設計に力を入れていく」と打ち出していたので、社内的に「設計力を高めよう」「設計力がないといけない」という自省の雰囲気があったのではないか老舗のY社、やり手のSさんに担当してもらえた地縁があったということで、ほとんど運によるところが大きいですかね……。でもね、ジタバタ努力すると、運が(同情して)向いてくれると思うんですよ!(鳥)
2019年01月18日1月15日発売の「住まいの設計2月号」では、家好き芸人、アンガールズ・田中さんが建築家の自邸を突撃取材する3回目の連載が掲載されています。アンガールズ・田中さんは広島大学工学部第四類建築学部卒業。大学では建築の構造を研究し、得意分野は日本建築だそうです。今回は、緑に囲まれた落ち着いた住宅街に溶け込むように建つ、建築家・佐藤重徳さんのお宅を取材しました。■ 大開口により感じつつ薪ストーブの温もりに包まれる佐藤重徳さんは12年前、長女が小学校に入学したのを機に土地を購入し、RC造3階建ての家を建てました。「緑が多い住宅地ですけど、ちょっと面白い立地ですよね」と田中さんが言うように、北と南の2つの道路に挟まれている敷地。「せっかく道が2つあるから、トンネルのような家にして両方の道とつなげようと思いました。近くの公園とも緑を通してリンクすれば、大きな居住地になると。街並みに楽しく緑を提供。環境をつくることも建築家の仕事ですから」(佐藤さん)。「薪ストーブはどうですか?」と田中さんが尋ねると、「南の大きなガラス面から冷気が下りてくるので、薪ストーブの暖かさで空気のバリアをつくっています。最新の薪ストーブはとても性能がよくて、快適」と佐藤さん。剪定した庭木も薪に使うと聞いた田中さんは、「無駄がなくて、めちゃくちゃいいじゃないですか!」と大絶賛。「ヨーロッパやアメリカでは、車と同じように薪ストーブの性能検査があるんです」(佐藤さん)との話に興味津々の田中さんでした。■ 吹き抜けに浮かぶ「ブリッジ」が空間のダイナミックさを強調!ブリッジからLDKを見下ろし、「これだけ大きな“抜け” があると、かなり開放的ですね」と、田中さんがその眺めに圧倒されていると、「うちの両親は、『ここに部屋が2つはつくれる』って言うんです(笑)」と、2階から奥さんの声。「たしかに2部屋つくりたくなる気持ちも分かりますけど(笑)、あえて思い切って“抜く” ことで余裕が生まれて、こんなに気持ちいいっていうことを、みんなにぜひ分かってほしい!」と田中さんは力説していました。「南側の隣家は幸い2階建てですが、将来3階建てが建つ可能性もあるので、そうなっても採光できるように吹き抜けを設けています」(佐藤さん)。3階北側には子ども室が配されており、吹き抜けに面した通路には本棚とデスクを設置した家族共用のライブラリーを配置しています。また上部には、トップライトが設けられています。「この家は自然の光をたくさん取り入れていますね」と田中さんが言うと、「本が日焼けしちゃうので、トップライトにすだれを掛けたほうがいいかなと思っています」と佐藤さん。トップライトには屋根に出られるようハッチが設けられており、佐藤さんは自分でガラスや煙突の掃除をしているそうです。こちらはブリッジからLDKを眺めた写真。南面の大開口が開放感をもたらすリビングダイニングは、窓を開けると外にいるようです。さらに、佐藤さんがデザインした円形のダイニングテーブルが、四角い空間にやさしい表情を与えています。■ 鳥のさえずりと植栽の緑にホッとひと息するバルコニーこちらは南の庭に植えられた2本のシマトネリコの緑が美しい、リビングからの眺め。バルコニー越しに見える緑がとてもきれいです。バルコニーの庇は2階が深く、3階は浅めにすることで、夏の日差しをカットし冬は奥まで光を取り入れている。「鳥の巣箱にシジュウカラが来るんですって」と田中さん。3階にも2階と同様にバルコニーが設けられており、窓拭きが可能。田中さんはちょっと怖そうでしたが、街を見渡すこともできます!もっと詳しく見たい方は、「住まいの設計2019年2月号」をご覧ください!【取材協力】佐藤重徳建築設計事務所東京都府中市府中町1-30-2-101年生まれの佐藤重徳さんは、レミングハウス(建築家・中村好文氏)勤務を経て、’97年に佐藤重徳建築設計事務所を設立。住宅のほか、保育園の設計、家具デザイン、薪ストーブの開発などを手掛けている。撮影難波雄史住まいの設計2018年12月号豊富な実例ときめ細やかな情報で快適・便利な住スタイルを提案。家作りの夢が広がる!住まいのお役立ちマガジン【巻頭特集】「猫だってハッピーにしてほしい!猫と一緒に暮らすための家」 【第二特集】「自分らしいインテリアと暮らしています」
2019年01月15日フランスを拠点に世界で活躍する建築家・田根剛の西日本での初個展「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the FutureーImage & Imagination」が、2019年1月19日から3月10日まで、福岡・三菱地所アルティアムにて開催される。フランスを拠点に世界各地でプロジェクトを進め、現在幅広い注目を集める気鋭の建築家・田根 剛。20代の若さでドレル・ゴットメ・田根(DGT.)として〈エストニア国立博物館〉の国際設計競技に勝利し、選出から約10年の歳月を経た2016年秋に同プロジェクトが竣工を迎えるなど、国内外の注目がさらに高まっている。また、2012年に行われた新国立競技場基本構想国際デザイン競技(ザハ・ハディド案選出時)に参加し、11人のファイナリストに選ばれた〈古墳スタジアム〉は幅広い層に知られるきっかけとなった。2017年のDGT.解散後はAtelier Tsuyoshi Tane Architectsをパリに設立し、活動の場をさらに広げている。場所の記憶から未来を発想する「Archaeological Research(考古学的リサーチ)」の手法で進められる田根のプロジェクト。そのリサーチは、個人や歴史上の事実にとどまらず、時間や場所に蓄積する記憶、それらの断片が結びつき生まれる記憶を対象としている。「Image & Imagination」と題した本展では、眼に見えるイメージを手がかりにリサーチを行いながら、まだ見ぬ建築へのイマジネーションへと飛躍させる田根の思考と考察のプロセスを、数々の資料や模型、映像を通して紹介する。「記憶は現在を動かし、未来をつくる」という信念にもとづいた田根の創造は、都市の担い手である私たち一人一人にとって建築のもつ力や使命、未来への可能性を考えるきっかけとなるだろう。初日の1月19日には、田根が登壇するトークイベント「Archaeology of the Future 未来の記憶 Image & Imagination」を、九州大学大学院芸術工学研究院 准教授・池田美奈子を聞き手に迎え、福岡アジア美術館内のあじびホールにて開催。要予約、先着120名、料金は500円。申し込みは、電話(092-733-2050)にて受け付けている。【イベント情報】田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the FutureーImage & Imagination会期:2019年1月19日~3月10日会場:三菱地所アルティアム住所:福岡市中央区天神1-7-11 イムズ8階時間:10:00~20:00休館日:2月19日、20日料金:一般400円(300円)、学生300円(200円)、高校生以下無料、再入場可※()内は前売料金、チケットぴあ・10名以上の団体料金。アルティアムカード会員・三菱地所グループCARD(イムズカード)会員は無料
2018年12月28日建築事務所が手がける新キオスク建築家が手がける千代田区一番町のキオスク「BIRD BATH&KIOSK(バードバスアンドキオスク)」では、「Biople by CosmeKitchen(ビープル バイ コスメキッチン)」が厳選したオーガニック商品の取り扱いを開始しました。いつでも気軽にオーガニックアイテムを「BIRD BATH&KIOSK」は、建築家谷尻誠氏らの手によって企画設計された、キオスク型のコーヒースタンド。“水飲み場”という意味の同店は、小鳥が羽を休める止まり木のような、ほっとできる空間作りがされています。そんなコーヒースタンドで取り扱われているのは、ナチュラル&オーガニックショップ「Biople by CosmeKitchen」がセレクトした、自慢のオーガニック商品の数々。通勤途中や休憩中に気軽に立ち寄り手に取ることができます。オーガニック食品や自然派コスメが、より身近な物になることでしょう。(画像はプレスリリースより)【参考】※株式会社マッシュホールディングスのプレスリリース
2018年12月26日寺⽥倉庫が運営する建築倉庫ミュージアムでは、企画展「- Green, Green and Tropical - 木質時代の東南アジア建築展」を2019年2月6日から5月6日まで開催する。Eleena Jamil「Bamboo Playhouse」2015年 © Eleena Jamil Architect同企画展は、東南アジア諸国で注目を集める新世代の建築家やデザイナーによる木質デザインおよび建築空間の新潮流に焦点を当て、建築や家具デザイン、さらには調査研究を通して俯瞰するもの。紫檀、黒檀、チーク、マホガニーといった高品質の木材だけでなく、竹や籐などの植物材料も揃う東南アジア圏。古くから地元住民の間で共有されてきたノウハウの蓄積によって、多種多様な木質建築に富んでいる。同展では、伝統的あるいは慣習的に展開されてきたスローテクノロジーとも分類されるような建築群を紹介すると共に、「科学的に再現できない素材と技術」に注目し、隠されたシステムを明らかにしていく。坂茂「Paper Temporary Shelter - Philippines」2014年 ©Voluntary Architects Network素材は、時間と環境の流れの中でそれ自体が少しずつ変化していく。本来、自然由来の生の素材は、加工されて“地域の土着材料”による製品として日々の生活に取り入れられていく。また、たとえ製品として完成されたものでも“再生材料”として再構築され活かされ続ける可能性を持ち、そして予期せぬ災害が発生した場合、人々は従来の材料や技術による“緊急対応”によって、自身の知恵を活かそうとする。会場では、東南アジア圏におけるこれらの素材活用方法に関する3つのテーマセクション「<Vernacular / Conventional>地域性と土着材料」、「<Recycled Materials>再生材料の可能性」、「<Emergency Response>緊急対応の建築」に加え、同地域で実施されてきた調査研究やフィールドサーベイの成果、未来を見据えたレジリエントな建築技術の展望が紹介される。Adi Purnomo「Tanah Teduh #4」2013年 ©Adi Purnomo,Riichi Miyake参加作家は、建築家のAhmad Djuhara、Adi Purnomo、Andry Widyowijatnoko、Eleena Jamil、Ling Hao、Eriksson Furunes&Leandro V. Locsin Partners+Boase、坂茂、芦澤竜一、柄沢祐輔、デザイナーのAlvin Tjitrowirjo、Kenneth Cobonpue、研究者の岡部明子、畑聰一+清水郁郎、Joseph Yumi Espina+サンカルロス大学など。2019年2月23日の14時からは、Eleena Jamilを始めとしたゲストによる記念対談も開催。参加費は無料、事前申し込みが必要となる。【展覧会情報】- Green, Green and Tropical – 木質時代の東南アジア建築展会期:2019年2月6日〜5月6日会場:建築倉庫ミュージアム 展示室B住所:東京都品川区東品川2-6-10時間:11:00〜19:00(最終入館18:00)入場料:一般3,000円、大学生・専門学校生2,000円、高校生以下1,000円(展示室Aの企画展示「新素材研究所」の観覧料含む)※障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名無料休館日:月曜(祝日の場合、翌火曜休館)、2019年3月4日~3月26日の期間
2018年12月21日ロエベ(LOEWE)は、建築家・デザイナーのチャールズ・レニー・ マッキントッシュから着想を得た、クリスマスシーズンに向けた限定アイテムを2018年11月15日(木)から12月にかけて順次、ロエベ各店舗にて発売する。ポスターや装飾品のデザインから、オリジナリティ溢れる建築、家具、テキスタイルに至るまで、幅広い作品を残したマッキントッシュ。スコットランドの伝統的な建築の形状や素材をベースとした、独自の表現で、グラスゴー美術大学やブラッキー邸等を手掛けた。今回登場する限定アイテムは、マッキントッシュを称えるメンズ・ウィメンズのレディ・トゥ・ウェアやアクセサリーを展開。マッキントッシュの芸術性や世界観をデザインに落とし込んだアイテムを揃える。象徴的なのは、ステンドグラスの窓に着想を得たモダンな薔薇柄の「パズルバッグ」や、マッキントッシュのフラワーモチーフを参考にした「ハンモック バッグ」。グラフィカルなマッキントッシュの世界観を、ロエベならではの細やかなレザークラフトや、クリエーションの高度な技術で表現している。また、マッキントッシュの格子デザインを彷彿させる「グリッド」仕様となった「ゲート」バッグも登場する。その他、ウェアはカシミアやシルク、モヘアを採用した、アーシーでナチュラルな色彩のドレス、ニット、シャツ、ジャケット、パンツ等を展開。コートやブランケットには、マッキントッシュが描いた植物の絵が施されている。【詳細】ロエベ ホリデー限定アイテム発売日:2018年11月15日(木)より順次取扱場所:ロエベ各店アイテム例:・パズルバッグ・ハンモック バッグ・「ゲート」バッグ・メンズ・ウィメンズウェア(コート、ドレス、ニット、シャツ、ジャケット、パンツ、ブランケットなど)【問い合わせ先】ロエベ ジャパン カスタマーサービスTEL:03-6215-6116
2018年11月22日先日もご紹介した建築業で働いているカルロスさんの生活のアイディアを紹介します。どこの国でもそうなのかもしれませんが、家を建て直すときは古いものが邪魔になります。全部のものを大切にしまい込むということは少ないようです。特に親の家を譲り受けて建て直すときなどは、いろいろと古いものが出て来たりしますよね。しかし、カルロスさんはそのような古いものを無料か、かなり低価格で受け取り、自宅で使っています。今回は超レトロなアイテムの再生法をご紹介いたします。■ 「古いドア」大邸宅の大きすぎるドアを小さくして使う!まず玄関のドアです。このドアはだいたい400年前のドアだそうです。そのため、高さが3m以上あり大きすぎるので、家を壊すときに払い下げになりました。ちなみにドアは比較的売りやすいもののひとつです。というのは、古いドアは乾燥しているので良いギターが作れるからです。ギターを作る人は、街を歩いて取り壊すことが決まった古い家などを訪ねて譲ってもらいます。古いドアから何百万円もするギターが作られこともあるのです。しかし、このドアはカルロスさんのおかげで、ドアとして生き続けることが決まりました。実は大きすぎるドアの真ん中部分を切ってもう一度繋げ、現状に合った大きさのドアに作り変えたのです。古いドアの問題は鍵のセキュリティですが、このように古いドアに鍵を付け替えています。古いドアの鍵は開けにくいというデメリットもありますがこれなら大丈夫です。■ 「古い照明器具」温かい光が溢れる家に!ランプを使ったことがない人には、これがびっくりするものだとは感じないかもしれません。こういうデザインの照明器具だと思った人も多いと思います。でも、これはオイルランプをリメイクしているのです。元々は電球のところに本当の「火」が付いていたのです。昔のものはデザインが素敵ですよね。私はろうそくも好きですし、普段、火を見る生活を好んでしていますが、やはり現実的に考えると電気を使った照明の方が安全です。カルロスは、しばらくはオイルを使って利用していたそうですが、とても気に入っていたので電化することにしたのだそうです。こちらはアンティークな照明器具。スペインなら病院などに使われていたようなタイプのデザインです。こちらは書斎の机に置くタイプの照明器具を絵画の照明に。ピラミッド型の照明をあえて逆さにつけました。モロッコ製のエスニックなデザインが素敵です。これは、屋根瓦です。スペインの屋根瓦はこんな形。屋根瓦にペイントして、壁に取り付け、内部に電球を設置して照明器具として使っています。■ 「テラスの洗面所」台は昔、おばあちゃんが使っていた(と思われる)ミシン台これはテラスの洗面所。テラスの掃除やちょっとした手洗いなどに使います。洗面の下の台は、なんとなく見たことがあるもの?若い方は見たことがないかもしれません。昭和博物館にあったような……。これは足踏みミシンの台です。足踏みミシンは、簡単に電気ミシンにできるんです。電気ミシンに作り変えてもらうと、台が不必要になるのですが、カルロスはデザインがとても気に入り、ミシンの台に大きな陶器の深鉢を置いて洗面所にしたのです。■ 「洗面台」寝室にあったサイドベッドテーブルを使用!バスルームにもいろいろな工夫が見られます。こちらの洗面所は、寝室にあるサイドテーブルに昔のホウロウの白いタライを乗せています。こちらの角度の方がわかりやすいですか?奥に見えるのは、トイレットペーパー。植木鉢を置くアイアンの三脚の上に陶器の深鉢を置いてトイレットペーパー置きに。アイアンの三脚は結構色々使えますよ。こちらは別のトイレにあったペーパーホルダー。モルテロというスペイン版すり鉢を置くための台なんです。下の部分はスパイスを入れる引き出し。本来はキッチンにあるものですが……。■ 建築家ならでは!レトロアイテムを取り入れた暮らし捨てる前にこれは何かに使えないかなと考えて、まったく別の使い方をしていく暮らし。素敵なものが次々生まれて、楽しくなりますね。改めて、古いものをもっと大切にしたいと思いました。
2018年11月17日11月15日発売の『住まいの設計12月号』では、家好き芸人、アンガールズ・田中さんが建築家の自邸を突撃取材する連載の2回目が掲載しています。アンガールズ・田中さんは広島大学工学部第四類建築学部卒業。大学では建築の構造を研究し、得意分野は日本建築だそうです。今回は東京・北区で築18年、470.00平米(142坪)、鉄骨造5階建てのビルをリノベーションしたSTARの佐竹永太郎さん宅を取材しました。■ だ円形の「吹き抜け」と有機的な「螺旋階段」が美しい空間JR東十条駅から徒歩2分の場所にある5階建てのビルが、佐竹永太郎さんが代表を務める「STAR」の事務所兼自宅。ビルの入り口には明治16(1883)年製という趣のあるくぐり戸が設置されており、独特の世界観があります。この入り口には田中さんも驚いた様子でした。このビルは18年前にオーナーの依頼により佐竹さんが設計し、15年後に自身が買い取りリノベーション。1階はラウンジ、2階はオフィス、3階は倉庫、4・5階が自邸という構成になっています。さっそくエレベーターで4階に向かうと、中心に螺旋階段が設置されたLDKが。ソファに座って吹き抜けを見上げ、「螺旋階段って、もっと単調なイメージだったけど、こんな変わった形もできるんですね。計算は難しそうだけど」「はい、難しく計算すればできます(笑)」と、田中さん。建築談義に花を咲かせるふたりでした。■ 最上階のガーデンと寝室はまるでリゾートホテル!螺旋階段を上っていくと、寝室の外に広がる屋上ガーデン。「朝はまぶしくて自動的に目が覚めます」(佐竹さん)という寝室は、庭に面したホテルライクな空間になっていました。4・5階とも床暖を採用しているため、冬も快適に過ごせるそうだ。5階ホールの床にはアズサ、寝室には杉を採用している。「いろんな素材を使っているけど、ちゃんと調和している。個性派集団をうまくまとめる名監督みたいだな」(田中さん)。寝室からデッキテラスにそのまま出られるのも佐竹さんのこだわり。「駅前だけど、ここなら外からの視線を気にせずに過ごせますね。土があって、外の空気も感じられて…都会ではなかなかこういう空間を持てないですもんね」(田中さん)と、屋上ガーデンの開放感を満喫していました。■ 1階のラウンジは、能舞台の襖を設置したこだわりのおもてなし空間1階のラウンジは、バーカウンターのあるラグジュアリーなおもてなし空間だ。カウンターは大谷石、カウンターの天板にはアフリカンチークを使用。奥のミーティングスペースには、旧家の能舞台の襖が扉になっている豪華版です。「すごいな。設計事務所とは思えないですね。何でもやってくれそう(笑)」と、圧倒される田中さん。「“正しく古いものは、常に新しい” というのが僕の信念です。正しく時を重ねてきたものは、時を経ても古びない。そういうものの力を借りながら、オーダーメイドのスーツのように、住む人の体に馴染む空間をつくっていきたい」と佐竹さん。まるで、おしゃれカフェみたい!まさに、建築家の美意識を体現した住まいとなっていた佐竹さん邸。もっと詳しく見たい方は、「住まいの設計2018年12月号」をご覧ください!【取材協力】STAR(エスティエイアール)「クライアントの課題を美しいデザインで解決する」をミッションにデザインチームという独特の設計スタイルで活動。個性的なホテルや商業施設など企画より幅広く手掛ける。撮影山田耕司住まいの設計2018年12月号豊富な実例ときめ細やかな情報で快適・便利な住スタイルを提案。家作りの夢が広がる!住まいのお役立ちマガジン【巻頭特集】「だから選びました!ハウスメーカーで建てたこだわりの詰まった家」 【第二特集】「毎日緑に触れられる幸せ…ガーデンハウスで暮らそう!」
2018年11月15日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。300万円値引きをしてもらえるなら建築条件付きの家の契約をしようと決断し、土地仲介の営業Sさんに交渉しに来た鳥夫婦です。■ やり手の営業Sさんに会う久しぶりに仲介Y社の営業Sさんにお会いする。あの、コロコロ笑いながら、ソフトな語り口で、相手の心を開かせながら、キチッと落としどころに落とさせるSさんに……。3か月前のあの日……。Sさんの運転する車に乗せられ、設計R社に連れて行かれた日……。道中の会話で、Sさんには奥さんとお子さんがいらっしゃって、数年前に東京の外れの建売住宅を購入されたと聞きました。「不動産業のプロは、建売を選んだんだ」と印象に残ったのと同時に、ご家庭でのSさんを垣間見てしまいました。こんなに紳士で礼儀正しいSさんも、腹を出したままブーと寝屁したりするのだろうか?風呂前に裸になると、腰振りダンスしながら家人に近づいたりするのだろうか?(え?鳥夫だけ?)仕事でやり手なSさんそのままに、夜もキッチリ落とすのだろうか?あの日、そんなことを考えながら車に揺られていたなあ……。やだねえ、下世話な男性雑誌の表紙を見ては「ったく、しょうもないな」と苦笑しているくせに、自分も同類じゃん。などとつらつら思いながら、Y社の最寄駅で、鳥夫を待っていました。■ 鳥夫婦で最後の戦略会議さて、腰振りながら……ではなく普通に現れた鳥夫と、しばらく二人で周囲を散歩しながら、最後のすり合わせをしました。「いいか、鳥は女だから、感情的な役をやってくれ。いかにもR社のプランニングに残念な気持ちでいるか、土地は気に入っているのに、R社の家を買わないといけないことが悲しいか、訴えるんだ。でも鳥は空気を読めず、余計なことを口走る癖があるからな。基本的にはしゃべるな。俺がしゃべるから」「わかった!!」万が一、建築条件付きを外してもらえる可能性も考え、いきなり上物の値引き話にいくのはやめました。「土地はとても気に入っている」ということを強くアピールし、「もし条件を外してくれるとしたら、いくら土地代をアップされるか」を聞き出すシナリオに微修正。Sさんのご尽力で土地代80万円値引きをしてもらったとはいえ、すでに当初の予算より400万円オーバー。建築条件外しにより土地代1割アップしたとして、さらに340万追加。これで当初の予算より740万円オーバー。こうなると、もう諦めざるを得ないのですが……。■ Sさんとの交渉スタート!!そしてY社のビルの前に着きました。階段を上り、念のため携帯の録音アプリをONにして、Y社のドアを開けました。「ああー、どうもどうも、お久しぶりですねえ」Sさんは、相変わらずコロコロとした笑顔にソフトな語り口で迎えてくれました。コミュニケーションがそれほど得意ではない上に緊張MAXの鳥夫。人見知りで狂女予備軍の鳥。二人とも気の利いた挨拶や世間話のひとつもできず、Sさんのそつないアイスブレイクの会話に、ニヤニヤ相槌を打つばかり。ましてや緊張に耐え切れず上の空状態である今は、世間話をする余裕などありません。顔を紅潮させた鳥夫が、メモを片手に、すぐに本題を切り出しました。Sさんに新宿くん(※土地のこと)をご紹介いただいた頃は、家造りの知識のまったくないド素人だった鳥夫。あれから約3か月。鳥夫は、コンサルさんにに教わった知識のおかげで、Sさん相手に説得力のある話を展開していきました!(鳥)■この連載の一覧を見る■
2018年11月15日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。不満だらけの建築条件付き工事請負契約を「300万値引きしてくれるなら契約しよう」と腹をくくった鳥夫婦ですが……。■ 急に善人サイドに回りやがったコンサルさんそして翌日、コンサルさんから以下のようなフォローメールが届きました。************************************************昨夜の電話は厳しい内容になってしまいましたが、どうぞお許しくださいませ。あれから今後の交渉についてずっと考えておりましたが、やはりいきなりの大幅値引き要求は避けられた方がよろしいように思います。お二人が譲れるところは譲っていくという姿勢を見せ、「もうこれ以上は無理」となった段階でお願いする、というようにされませんか?家づくりの仕方や品質は抜きにして、彼らは彼らなりにやっていると思いますし、こうしてお付き合いくださっているわけですから、歩み寄りの姿勢は見せてあげた方が……。仮に契約まで至らなかった場合でも、鳥ご夫妻のことを「(彼らに言わせれば)無理難題を言い、結局大幅値引き要求してきたお客」というようなイメージを持っていただきたくないということもあります。鳥夫さんがおっしゃっていたように、家づくりに対する考え方や姿勢の違いが少しずつ明らかになってきたわけですし、こうして家づくりについて学ばせていただいているわけですから、最後まで誠意を持って進めていただけると私も救われます。なお、私は現時点でも「気に入られている土地ですから、できれば手に入れていただきたい」と思っております。どこでどんな業者とお建てになろうが、最後は予算に合わせなければなりませんから、優先順位にしたがってお決めいただければと思います。その都度、進捗状況をお知らせくださいね!よろしくお願いいたします。************************************************正直、このメールを読んで、「えっ、今までさんざんR社に悪い印象を持つように煽ってきたのはあなただよね!?」とモヤッとしました。(読者の方々には分かりにくいかもしれませんが、急に態度を翻したという印象なのです……)でもこのコンサルさんのメールを読んで、大幅値引きの理由をもう少し詰めようと思いました。■ 鳥夫の交渉シナリオそして鳥夫がこんな交渉案を出してくれました。「(仲介業者の営業)Sさんにサポートしてもらおう。俺達が白紙解除したときの機会損失は、R社よりも仲介業者の方が大きいでしょ。最初の土地の値段もSさんが交渉してくれたしね」それを聞いて「ナルホド!」と思いました。鳥はすっかりSさんの存在は忘れていたので。もし私達が白紙解除しても、R社は次の客を見つければ良いだけ。でもSさんは、今まで鳥夫婦にかけた労力がパーになる上に、また一から別の客を見つけなくてはなりません。最悪、他の仲介業者に取られてしまうかもしれません(実際に、南向きの別区画は、別の仲介業者が客を見つけてきました)。しかも上物の値段は、Sさんには関係ないのです。Sさんとしては、ここで鳥夫婦に土地を決めさせたいはず!ということで、鳥夫がSさんへ話をするシナリオを詰めてゆきました。■ いよいよ決意の時そして数日後、鳥夫から鳥に、最後の指令が出ました。************************************************Sさんに、23日18時でアポイントをとってもらえる?************************************************与えられた状況のなかで、こうして最大限あがきながらも、内心「無理だろうな」という気持ちがありました。人は日々、生と死を繰り返していると言います。「もう少しで大好きな新宿くんとの日々も終わるんだな」と思うと、切なかったです。建築条件付きに迷い抵抗した私達は、もうすぐ死を迎える。新しく生まれる私達は、どういう状態になっているのだろう?値引きをしてもらえて、ダサい外観の家を受け入れている私達だろうか?いや、きっと、値引きを突っぱねられ、また一から土地探しを始める私達でしょう。でももうこんな好条件の土地には出会えないだろうな。私達の予算では、きっと西新宿も諦めないといけなくなるでしょうね。でも、もう、建築条件付きの土地を買うことはないけどね……。あんなに感情がかき乱された設計期間中が夢だったのではないかというほど、気持ちが落ち着いていました。最大限もがいた後、自らの手で幕引きをするとき、人は、静かな気持ちになるのかもしれません。(鳥)■この連載の一覧を見る■
2018年11月06日建築家・隈研吾とデザイナー大村真有美のデザインユニットがコラボレーションした「ケンゴ クマ + マユ by ヴァンドーム青山」から、2018年秋冬の新作ジュエリーが登場。2018年10月30日(火)まで開催される、日本橋三越本店期間限定ショップにて先行発売される。その他、バーニーズ ニューヨーク銀座本店、西武渋谷店、阪急うめだ本店他、全国11店舗にて展開する。新国立競技場「杜のスタジアム」をはじめ、世界的な有名建築物を手がける隈研吾。そんな人気建築家が、プロダクト、アクセサリー、インテリアのデザインユニットとして活動するデザイナー大村真有美によるMA,YUとタッグ。「ケンゴ クマ + マユ by ヴァンドーム青山」の新作ジュエリーは、建築物をモチーフにしたコンセプチュアルなデザインが特徴だ。白い森人々が集まる樹と人々が流れる道を持つ、白く輝く森をコンセプトにした「白い森」」シリーズ。ホワイトゴールドをベースに、折り紙のように織り込み、地金をプリーツ状にアレンジして光を反射する華やかなデザインを完成させた。ピアスやイヤリングは、アクセサリーがまるでレフ版のように力を発揮し、顔周りを明るく見せてくれる効果も。クリーンなデザインなので、洋服を選ばず、様々なシーンで活躍してくれそうだ。ロータス隈研吾の代表的建築「ロータス・ハウス」を着想源にした「ロータス」。同建築で印象的な規則的なチェッカーパターンは、ウォッチのベルトに落とし込まれた。表面にヘアラインのテクスチャを加え、ステンレス素材の光沢を軽減。半分透けたベルトは、肌なじみがよくすっと溶け込むように腕にフィットする。同デザインのリングとの相性は抜群。同じモチーフになっているので、重ねづけしてもうるさくならず品よく決まる。【詳細】「ケンゴ クマ + マユ by ヴァンドーム青山」2018年秋冬ジュエリー取り扱い店舗:全国11店舗(仙台三越、高崎髙島屋、西武渋谷店、横浜ランドマークプラザ、新潟三越、阪急うめだ本店、バーニーズ ニューヨーク神戸店、鶴屋百貨店、バーニーズ ニューヨーク福岡店、バーニーズ ニューヨーク銀座本店、バーニーズ ニューヨーク横浜店)、日本橋三越本店期間限定ショップ・日本橋三越本店期間限定ショップ期間:2018年10月24日(水)~10月30日(火)住所:東京都中央区日本橋室町1丁目4-1 本館1F<アイテム例>・白い森ネックレス 36,000円+税~、ピアス 44,000円+税、ブローチ 30,000円+税、2wayピアス 40,000円+税・ロータス時計 53,000円+税、リング 46,000円+税/12,000円+税/14,000円+税【問い合わせ先】ヴァンドームヤマダTEL:03-3470-4061
2018年10月29日「ちっちゃな家」シリーズで有名な、建築家・杉浦伝宗さんの名言、狭小住宅の空間三原則「透ける」「抜ける」「兼ねる」前々回は「透ける」について、前回は「抜ける」についてご紹介しました。最後にご紹介するのは「兼ねる」です。■ 「空間の共有・共存」という昔からの知恵おそらく「兼ねる」については、皆さんも聞いただけで、なんとなく想像がつくかもしれません。限られた平米数の狭小住宅に、部屋を幾つも作るのは物理的に難しい……。そこで、部屋や空間に複数の用途・機能を持たせ省スペース化していこうというのが、この「兼ねる」です。思えば昔の日本で庶民の暮らしといえば、ちゃぶ台を置いた畳の部屋で食事をし、時にお客様を迎え、夜は布団を敷いて寝ていたことからも、「兼ねる」は日本人には腑に落ちやすいのではないでしょうか。polkadots / PIXTA(ピクスタ)■ 事例でより具体的に「兼ねる」をご紹介1.玄関を省略してLDKと兼ねる先日お亡くなりになった樹木希林さんのナレーションも印象的だった、昨年大ヒットしたドキュメンタリー映画『人生フルーツ』では、故・津端修一さんが自ら設計された玄関を省略してLDKと兼ねるご自宅を見ることができます。写真はイメージです家が1つの大きなワンルーム形式になっているだけでなく、玄関らしい玄関もなく、庭に面した掃出し窓からの出入りになっているのが印象的でした。2.廊下を省略して「洗面所」と「脱衣所」と兼ねる長い廊下は、狭小住宅にとって極力避けたいプランです。古い木造一戸建てをリノベーションした筆者の元・自宅ですが、奥に位置する洗濯機や浴室までの廊下の途中に、トイレや洗面脱衣を配置しました。洗濯機側からの見返し、左手のピンク色のタイルは浴室部分ただし、玄関からも丸見えなので、いざという時の目隠しドアに、隣接する納戸のドアを90度ふって兼用です!しかし、こういった「玄関がない」「廊下が脱衣になる」等のプランは、住むにあたり、それなりの覚悟が要求されます。ライフスタイルや家族の希望などを充分に検討シミュレーションして、決定してください。■ もっと身近で取り入れやすい事例も!洗面所やキッチンの一角に家事コーナーを作ったり、ワンルームでベッドをソファ代わりにする、というのも「兼ねる」ですよね。LDに大きめのダイニングテーブルを置き、子どもの勉強や家事、事務作業をするのだって立派な「兼ねる」です。プラナ / PIXTA(ピクスタ)さらに外へも目を向けて、庭やテラス、バルコニーや屋上との繋がりを感じさせるプランも、広い意味での「兼ねる」となります。■ 総論:3原則のもたらす大きなメリットいかがでしたか?「透ける」「抜ける」「兼ねる」は、改めて名言だと思いました。柔軟な発想と工夫・大胆な割り切りで、小さな家でも窮屈にならずに、楽しく住まうことができる……。また、資材や内装材が節約できるので、工事費の削減も狙えるかもしれません。杉浦さんも、小さな家でコンパクトに住まうことは、結果として冷暖房効率もよく、掃除にかける労働力が減る、つまり家事効率も上がると嬉しいメリットを挙げられていました。ぜひ今日からでも、この「透ける」「抜ける「兼ねる」の中から、皆さんの住まいに取り入れられる技を探してみてください!
2018年10月19日建築家と最初にした打ち合わせのとき、「寝室は一人一部屋欲しい」と夫への事前の相談なく唐突に伝え、実際、寝室は一人一部屋で設計を進めてもらいました。今回は、夫婦の寝室を別にした理由をお話しします。■ 夫婦のライフスタイルの違いが最大の理由karandaev / PIXTA(ピクスタ)仕事の都合で、ときどきですが、午前3時、4時に起き出して仕事に出かけることがある夫と、気分が乗ると深夜まで仕事に取り組むことがある私。もともと暮らしていた借家では、息子を真ん中に、まさに川の字で眠っていました。日付が変わる頃、息子を起こさぬようにそっと布団に入り、ようやく深い眠りに落ちるのが午前1〜2時。やっと眠れた……、そんなタイミングで夫のスマホのアラームが鳴り出して、そのまま眠れなくなる、ということも。Mills / PIXTA(ピクスタ)翌朝、寝不足でふらふらになりながら息子を送り出す、という日も少なくありませんでした。私は寝つきが悪い性質で、横になってから寝付くまでに時間がかかるタイプ。午前0時に布団に潜り込んでも、午前2〜3時まで眠れない、なんてこともよくあります。目を閉じると、頭の中に次から次へとさまざまなタスクが湧いてきて、眠れなくなってしまうのです。■ 40歳を過ぎて、質の高い睡眠をとることの大切さに気付いたVerasimon / PIXTA(ピクスタ)家を建てるきっかけの1つは、思春期を迎える息子の自室を作ること。ならば私にも、ゆったりと休息を取れる部屋があってもいいのではないかと思いついたわけです。建築家の前で「寝室は各自ひと部屋」と告げたら、夫は「それ、オレ知らないよ?」という顔。そりゃそうです。事前になんの相談もしなかったのですから。でも、夫自身、ヘルニアの手術の経験者で腰痛持ちで眠りが浅いこと、春先になると気持ちが塞ぎ込みがちで寝つきが悪くなるなど、加齢による不調が出始めていました。不惑を過ぎた私たちにとって「昨日のいびきがうるさかった」「寝言が面白かった」と笑うことよりも、質の高い睡眠をとることの方がずっと大切。だから別がいいのでは?と今ある現実をそのまま説明したら、納得できたようです。40代半ばに差し掛かって知った疲労や睡眠の悩みは、30代の頃には想像もできませんでした。■ 寝室を別にして1年半経ちましたさて。引き渡しからおよそ1年半が過ぎ、実際に一人で眠るようになってどうかといえば……、シングルベッドとはいえ、自分以外の人の寝返りによる振動や物音を感じずに眠り続けることができるのは、本当に幸せなことだと喜んでいます。目覚めたときのすっきり感に、大きな変化が生まれました。また、夜型で朝がてきめんに弱い私が、朝、気持ちよく起きられるようになったのは大きな収穫。禁煙したとき以上に、時間を有効に使えるようになりました。職業柄、自宅で仕事をする私にとって、仕事部屋としての書斎は必須でした。ですが、もしそういう環境が必要ではないご家庭で、書斎やママスペースのようなゆとりの空間としての個室を考えているのなら、それらを兼ねて、寝室を別々にするのもひとつの手ではないか……とも思います。■ 将来、介護が必要になったときのことも考えたまた、新築の注文住宅の取材をしていて、2階に主寝室を設けるお宅が非常に多いことに気づきました。40歳を過ぎて家を建てることになり、35年後の年齢を考えると、どうしても介護を意識せずにはいられません。どちらかが要介護になったときに、階段の上り下りが毎日、毎回、必要になることに不安があります。でも、我が家のように1階と2階に夫婦それぞれの寝室があれば、先に介護が必要になったほうが1階の部屋を使えばいいのです。1階にあるバスルームやキッチンまで、階段を使わずにアクセスできるのは、非常に大きなメリットだと感じました。あとは、2人同時に要介護にならないことを祈るばかりです(笑)。結局、夫婦の寝室を別にしたのは、大正解だと感じています。
2018年10月16日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。不満だらけの建築条件付き工事請負契約を飲むのか、それとも契約を白紙解除して理想の土地を諦めるのか……。とうとう鳥夫婦は結論を出しました。■ 建築条件付きの設計で叶わなかったこと鳥夫が、鳥に言い渡しました。「叶ったもの、叶わなかったもののリストを作って」そして言われた通りに鳥がまとめたものが以下です。************************************************叶ったもの間取り立地(西新宿・駅近・整形地・大通りから奥まっている)壁紙・床の色延床面積100平米以上ルーフバルコニー引き戸を多用叶わなかったものゆっくり設計注文住宅スタイリッシュな外観デザインテーマ・情緒・ストーリー等のある設計デザインプロならではの提案(ほぼこちらからの提案だった)自由な室内収納リビングとバルコニーの間に立ち上がりがない設計好きなメーカーの住宅設備機器施主支給構造材の種類・太さなど(白蟻対策も)希望した○○工法明確な詳細見積書を見ながらの細かい意思決定(窓の枚数・サイズなど)見積りや性能を見ながらの耐震等級の意思決定対等な約款・契約書相見積り職人気質をもった大工さんによる仕事************************************************上記のような叶わぬことばかりだった家造りで、この見積金額です。仕様の水準から判断して、2,400万円もかかるとは思えない。設計R社→施工T社→孫請け工務店(→日当大工?)、という下請け構造から、3社分の利益が乗っけられてこの金額になっているのは明白です。コスパにうるさい鳥夫婦としては、ここはどうしても気になりました。■ 鳥夫の決断鳥夫は、そもそも家にまったく興味がありませんでした。鳥夫にとっては立地(土地)がすべてであり、あのダサい外観図を見させられても「こんなもんかな」ぐらいにしか感じなかったそう。でも例の「手すりI型」以降、魂の抜かれた状態になってしまった鳥の姿を見て、「これはまずいな」と感じていたとのこと。まだ独身の頃、「人を養うなんて荷が重い。俺は楽しむために付き合ってる」と言っていた鳥夫。あれから同棲を経て、結婚し、早5年。いつしか鳥夫は「鳥が喜んではしゃいでいる様子を見るのが生きがい」と言ってくれるような男性に変わっていました。大好きな新宿。しかも20代の若者だった鳥夫が、上京当時に親戚を頼って住むことになった地縁ある土地。この良き思い出が残る土地を手放すのは、身を切られるようにつらかったことでしょう。だけど鳥がまとめた「叶わなかったことリスト」を見て、鳥夫はこう言ってくれました。「R社に2,000万まで値引きするように要求しよう。もしR社がそこまでしてくれるなら、こちらも腹を括ろう。そして、もしR社が断ったら……、あの土地は……諦めよう……」鳥も、鳥夫の目を見つめ、頷きました。■ コンサルさんの見解コンサルさんに最終見積書を転送したところ、以下のような返信がきました。************************************************しかし、すごい金額になりましたねぇ。いよいよすべてを決めなければならない時が来ましたが、明晩以降で電話をお願いできればと思います。予算に合わせるために希望をあきらめて行くか、それとも予算アップするか、これから悩まれると思いますので、その前にお話をお聞きしておこうと思いまして……************************************************ということなので翌日の夜。鳥夫がコンサルさんと電話して、我々の意思を伝えたところ、「いやー、値引きは絶対しないと思いますよ……。ましてや300万値引きなんて聞いたことないですし……」とネガティブな見解を伝えられてしまいました。(鳥)■この連載の一覧を見る■
2018年10月15日「ちっちゃな家」シリーズで有名な、建築家・杉浦伝宗さんの名言、狭小住宅の空間3原則「透ける・抜ける・兼ねる」前回は「透ける」についてお話しましたが、今回は「抜ける」ついてお話いたします。■ 狭小住宅テクニックの「抜ける」とは?杉浦さんが提唱した住宅の「抜ける」は、ファッションで言うところの「抜け感」とは異なります。ガチガチに決めず、カジュアルアイテム等で「すき」を作るのがファッションの抜け感狭小なのに広く見える住宅には、以下のこんな共通点がありませんか?それは、「取り払われた壁」「高い天井」「吹き抜け」「オープンなロフトや階段」などで、開放感のある空間になっている点です。つまり床壁天井等を上手に抜くと、風が抜ける・光が抜ける・そして視線が抜けるので、広く快適に住めるという事なんですね。■ 「抜ける」は3原則の中でもハードルが高い?しかし、この「抜ける」の場合は、「設計段階でないとダメでしょ」とか、「既にでき上がっている家や賃貸住宅では無理!」と思われるかもしれません。確かに床壁天井を抜いたり、階段に手を加えるのは、基本大規模な工事になってしまいます。ですが、うまく使って空間に「抜け」を作ることが可能、しかも知らない人はいないポピュラーなアイテムがあります。そう、それは鏡・ミラーを使うことです!■ その先も空間が続いて見える!「鏡」の有効活用法鏡は、左手の壁に大きく貼られていますこの場合、できればなるべく大きくシンプルな鏡を選び、床も映り込む位置に設置すると効果は抜群です。壁一面に大きな鏡を貼ったヨガやダンススタジオが、驚くほど広く見えることを思い出してください。つむぎ / PIXTA(ピクスタ)ただし、場所の検討は充分に行いましょう。鏡に映ったテレビとローテーブル落ち着かないと感じる人もいますし、もし多くの物が映り込んで、ごちゃつき感が倍になってしまっては本末転倒です。これは筆者の狭小平屋での導入例です。長方形の鏡を前の家では、姿見として縦長に使っていましたが、ふと思いついて窓の上に横長で当ててみたら、なんだかとても新鮮に見えたんです。しかも照明が映り込んで、光熱費ゼロで明るくなる(笑)というオマケが付いてきました。ペンダント照明、実際は2つなのに3つ分の明るさ(右が鏡に映ったもの)このように部屋とバランスが取れていて、インテリアにマッチすれば、サイズやフレームデザインは好みのものでも、充分その効果を狙えるでしょう。もう一つ「抜ける」のお手軽な取り入れ方を。大きめのテーブルの天板がガラスだと、視線が床壁に抜けて、圧迫感がありません。これは置くだけでできる、「抜ける」と「透ける」の合わせ技ですね。いかがでしたか?気になる技がありましたら、ぜひチャレンジしてみてくださいね。次回は3つ目の「兼ねる」です。
2018年10月12日『リノベーション・エキスポ・ジャパンin東京』が2018年9月29日(土)、30日(日)に東京・新宿の〔ルミネゼロ〕で開催されました。住まいを自分好みに自由に作り上げたいという夢がある人、これから想像を膨らませていきたい人が気軽に第一歩を踏み出せる、クリエイティビティ溢れるイベントの様子をLIMIA編集部がレポートします♪今年も盛り上がりました!リノベーションの祭典マーケット内に設置された『リノベーション・エキスポ・ジャパン in 東京』のフォトブース。リノベーションの可能性や楽しさを、見て、知って、感じて欲しい。そんな想いがカタチとなったイベント『リノベーション・エキスポ・ジャパン』(運営:リノベーション協議会)。9月から11月にかけて、全国18エリアで開催されるうちの東京会場へLIMIA編集部が行ってきました!『リノベーション・エキスポ・ジャパン2018』の東京会場は新宿駅南口にある〔ルミネゼロ〕。エントランスからすぐのところに広がるマーケットにまず心が踊ります♪こちらは、「家をリノベしたら飾りたいなぁ」と想像を掻き立てられる照明がずらりと並んだ〔アンティークディーラーズクラブ〕。ひとつひとつに味があり、時間を忘れて選んでしまいます。そしてこちらはモノトーンアイテムにこだわった〔sisdesignMONOTONEMARKET〕。インテリアを損なわないブラック&ホワイトの雑貨が手に入るって嬉しいですよね!つい手に取ってしまうクールなアイテムばかり。この他にもマーケットにはアウトドアグッズのお店やアロマ&ビューティーのお店などがあり、賑わいを見せていました。未来の暮らし方を学べるトーク&セミナー『リノベーション・エキスポ・ジャパンin東京』の注目コンテンツはトーク&セミナー。固定概念にとらわれない、自由なライフスタイルを体現するパネラーが登壇します。9月29日(土)の11:30の回は、吉祥寺の〔ダンディゾン〕のオーナー・引田ターセンさん、代々木八幡から始まった人気レストラン〔LIFE〕のオーナー・相場正一郎さんによるトークセッションでした。左から〔ダンディゾン〕の引田ターセンさん、〔LIFE〕の相場正一郎さん。オープン当初、スタイリッシュな佇まいが「本当にパン屋さん!?」と驚かれて話題となった〔ダンディゾン〕。一方の〔LIFE〕は、誰かのお宅に招かれたようなアットホームなレストランとして代々木八幡、参宮橋、藤沢、代官山で展開中。それぞれのお店の世界観も素敵ですが、両オーナーがリノベーションしたご自宅もこだわりが凝縮された空間で、リノベのお手本になります。ターセンさんは大手企業をリタイア後に奥様に「生活者としてフルリノベーションされた」というお話が印象的でした。また相場さんは東京の自宅以外に那須にロッジを構えていて、週末はそこで過ごすというデュアルライフを実践中。その形がゴールではなく、いまも自分にとってしっくりくる生活スタイルを模索しているのだそうです。リノベーションはそれなりにお金も手間もかかるから踏み切るのにエネルギーが必要ですが、お2人のお話を聞くうちに、「いきなり完成形を求めなくても、できる範囲からトライして、自分らしいライフスタイルを目指していけばいいのかもしれない」と思い至りました。自分の「好き」が見つかるギャラリー続いてはリノベの事例が展示されたギャラリーコーナーです。さらにスタンプコーナーにもなっていて、「誰と住む?」「暮らしの中心は?」「なにで飾る?」をテーマにした3つのゾーンごとに好きなスタンプを押すことができます。スタンプを押すのは、エントランスで手渡されたオリジナルトートバッグなんです!「壁面にこんなクローゼットが欲しいなぁ」「窓の外は海の見える景色がいい」などなど、スタンプの柄を選ぶうちに、自分が家に求めているものが見えてくるという楽しい仕掛け。こうして遊び感覚でアウトプットすることで、意外と自分の内側が見えてくるものですよね。“オリジナル”を持ち帰ろう!工作ワークショップワークショップも『リノベーション・エキスポ・ジャパン』の人気コンテンツのひとつです。子どもから大人まで楽しめる工作メニューが充実!お米のねんどで遊んだり、ねじブロックでオブジェを作ったり。エキスポに一緒にきてくれたお子さんの息抜きタイムにおすすめですよ。LIMIAスタッフが挑戦したのは大人向けワークショップ。〔AROMAVITA+〕によるオリジナル・アロマバスソルト作りです♪バスソルトって気分転換になるからいくつあってもいいですよね。それが自分好みの香りだとなおよし。まずは香りの方向性をチョイス。元気が出てシャキッとする系、リラックスできる系……。そして選んだ精油を岩塩に加えていきます。一箇所に集中しすぎないようにスポイトでまんべんなく垂らしていくのがポイントだそうです。精油が岩塩にゆきわたるように袋をシャカシャカと振ったら、瓶に移し替えて完成!好きなアロマで作ったオリジナルのバスソルトに感動です♪選んだ精油の種類を記録しておけば、後日自分でまた作ることができますよ。バスソルトって意外と簡単にできるんだな、と驚きました。リノベをゼロからはじめる人のための相談コーナーこちらは『リノベーション・エキスポ・ジャパン』のメインゾーン。「こんな家にしたい!」を叶えてくれるリノベーション会社による相談コーナーです。『リノベーション・エキスポ・ジャパンin東京』には17社がブースを出店。工事を検討中の人にとっては、各社の強みや個性を一挙に知ることができるまたとないチャンス。「まだ物件も探していないけどリノベに興味がある」「そもそもリノベの良さをまだわかっていない」など、興味・関心の度合いに応じてプロが相談に乗ってくれるから安心です。すでに家を保有していても、新築に憧れを抱いていても、おしゃれな事例を見ているうちに「リノベしたい!」とがぜん気持ちが高まってきますよ!リノベーションあるあるです。ワークショップあり、マーケットあり、セミナーありと、会場で一日楽しく過ごせる『リノベーション・エキスポ・ジャパンin東京』でした。『リノベーション・エキスポ・ジャパン』は11月中旬まで続きます。詳しい場所と日時はホームページでご確認ください。具体的にリノベをしてみたい人は、来年開催の『リノベーション・エキスポ・ジャパンin東京』へもぜひ足を運んでみてくださいね。夢の住まいづくりを、長期的に計画していきましょう!リノベーション・エキスポ・ジャパン 2018
2018年10月10日暑い夏が過ぎ、クリエイティブな事をするのにちょうど良い季節が到来しました。中でもオススメなのが、手をつかって考えることができるDIY。でもDIYって、いざやろうとしても何からスタートすればいいか分からない、という方も多いと思います。自分自身で一からデザインするのも初めはすごく難しいし……。でも、モジュール化されたデザインでかつ気軽にDIYが体験できちゃうプロダクトがあるんです。その名も「モクタンカン」。今回はその「モクタンカン」がなぜDIY初心者にオススメなのか、どんなプロダクトなのかをご紹介します。■ クランプで固定するだけ!の簡単DIYモクタンカンの組み立て手順はいたってシンプル。あらかじめ用意したモクタンカン同士をクランプで固定していくだけのシンプルでカンタンな作業です。17ミリのラチェットレンチ1本で組み立てられるので、初心者にとってハードルとなりやすい工具などの準備がいりません。組み立てるものの大きさや細かさによって、組立作業にかかる時間がちがってきますが、それはDIYの醍醐味ですね。■ 工夫次第でなんでもできちゃう優れものこちらは、骨組みに布を張ったハンモックです。気持ち良いお昼寝ができそうですハンガーラックにだってなっちゃいます。これは実際のお店でも使用されています屋外映画のスクリーンにだってなります。企業のエントランスのインスタレーション等の棚につかわれることも。■ 環境にも優しいエコなプロダクトもともと日本は森林大国。国土面積の約7割が森林だと言われています。平成28年度の日本の木材自給率は34.8%。森林大国にしては低い値ですよね。この「モクタンカン」は、「きちんと管理された品質に保証を持てる国産材を、しっかりと流通させていく」というヴィジョンに基づき、北海道の下川フォレストファミリー株式会社という工場から産地直送された、安価で質の良い木材を利用したエコロジカルな商品なんです。DIYを始めてみたいという方や、なかなかちょうどいい家具がない、という方はトライしてみてくださいね。【モクタンカン】クランプ800円〜1,500円(税込)丸棒(トドマツ)L=800mm 1,800円(税込)、1800mm 3,200円(税込)原産国日本取材協力:A+Sa 株式会社アラキ+ササキアーキテクツ
2018年10月10日今回は建築業で働いているカルロスさんの家を訪問しました。カルロスさんは建築で使われる素材に対して深い愛情を持っている人です。建築素材だけではなく、家具や家にある小物類にいたるまで大切にしています。古くなって捨てられているとどうにかして使えないかをいつも考えています。そんなカルロスさんの家をご紹介いたします。■ スペインの典型的な家をリノベーションスペインの細い道。ここにある家はどれも少なくとも築150年です。カルロスさんの家は左側の列の2番目。家の下にあるトンネル状のアーチをくぐり抜けて行きます。ここではよく観光客が写真を撮影してるんですよ。くぐり抜けると、玄関が見えてきました。■ 玄関は2階に!下にある入り口ではなく、階段を登ると玄関です。階段にもタイルが貼り付けてあります。■ 好きなものを好きなように飾る!こちらが玄関です。玄関には額装された古い家の窓。存在感があり、どっしりして、そしてこの窓を何百年もの間に開け閉めしていた人たちの息遣いが感じられます。玄関を上にしたのは、日の当たる部屋を居間と台所にしたかったから。いつもいる場所や人を招待する場所は明るい方がいいですよね。■ 窓のある明るいキッチンキッチンは自然光の中でお料理したい。お風呂やトイレ、キッチンには窓がない場合がありますが、湿気のこもりやすいところこそ窓が必要です。キッチンの家具の台の部分はスペインでは石を使うのが普通です。大理石やブラジル産のグラーノと呼ばれる石などですが、カルロスの家の台所はイケアの板を使っています。木のぬくもりがあっていいですね。窓のあるキッチンはやはり和みますね。おまけにここは2階。そして興味深いことに坂の多い街は裏と表とでは高さが違うため、実は表通りからすると4階に当たるのです。そのためこの窓から誰かが覗き込むということもなく、時には鳥のさえずりを聞きながらお料理ができます。キッチンはオープンタイプでダイニングとリビング、応接室、すべてを兼ねた部屋が隣に繋がります。キッチンがオープンだと臭いや煙などがソファーを汚してしまうのではないかと心配する人もいるかもしれません。だからキッチンには窓が必要なのです。そして、ちょっとしたおつまみを作りながらゲストとおしゃべりができるキッチン。理想的です!あちらこちらに並べられたアート作品。■ 1階に降りると「プライベートスペース」こちらは階下にある寝室。寝室はふたつあります。書斎。日本的に言えば多分4畳半くらいの小さなスペース。でも、その方が集中できます。シャワーのスペースにも窓があります。窓にもお気に入りのものがたくさん。バスマットは丸めてカゴにのせています。バスマットのカゴの右側は古いお香を炊くもの。骨董品です。多分イスラム教の寺院で使っていたものでしょう。左側にある蓋つきのツボ。日本なら梅干しが入っているようなツボですが、これはトイレのゴミ箱です。床は磨いていない大理石。自然の石の温かさを重視しています。■ 好きなものが周りにある幸せキッチンのある階の上は屋根の一部を取り払ってルーフバルコニーにしています。お気に入りの骨董品や素材についての詳細は、またの機会に紹介します。
2018年10月06日今回訪れたのは、世田谷区にある築42年のマンションをリノベーションして暮らす、Aさんご夫婦のお宅です。旦那さまがグラフィックデザイナー、奥さまはグリーンコーディネーターというクリエイティブなご夫婦が設計を依頼したのは、建築家・松島潤平さん。こだわりを共有しながら作り上げたおうちは、2人の美意識が詰まったステキな空間に仕上がっていました。さらに、奥様から教えていただいた、インテリアを彩る「グリーンのコーデポイント」も必見です♪クリエイティブな夫婦が求めた理想の住まいスケルトンにした部分を残しながら、広々とした温もりのある空間に壁を取り払った広々とした空間に、温もりのある木材と、コンクリート、瑞々しいグリーンの質感が共存し、居心地のいい空間に仕上がっているA邸。ご夫婦ともども、以前から「自分の住むところを自分でデザインしたい」という思いがあったといいます。まずは、ご夫婦がリノベーションを決めたきっかけを伺いました。「いままで賃貸の部屋に住んできて、引越しの度に不満点を解消する部屋を選んでも『ここが嫌だ』と気になるところがどうしても出てきて。『賃貸だと満足のできる部屋には住めないな』という実感がありました。かなり前から中古マンションのリノベーションには興味があって、たまたまこのマンションが売りに出ていたのを見つけた時に、これならやりたいことが色々できるんじゃないかと思って購入を決めたんです」(ご主人)「ほしい条件がそろっているこの物件と出会えたのが大きかったです。壁を取り払ったワンルームの部屋にしたいと思っていて、もともとは3LDKの部屋でしたが、壁を取り払った後の想像がしやすい間取りでした。さらに、近所に住んでいたので、生活圏も一緒で、リノベーション後の暮らしのイメージもしやすかったんです。古いマンションですが、修繕工事もされていて、新耐震マンションだったのも決め手でしたね」(奥さま)インダストリアル系のインテリアが2人そろって好きだというAさんご夫婦。リノベーションにおいても、必要最低限の状態に、暮らしに必要なものを少しずつ足していける、機能的なお部屋が理想だったそうです。理想を叶えてくれる頼もしい相棒として、建築家に依頼ご主人が自ら作成した内装イメージイメージが明確にあったこともあり、ご主人はなんとお部屋の内装イメージを作成。そのイメージを元に、設計を建築家の松島潤平さんに依頼したそう。「中古マンションって、実はスケルトンにしてみないとわからないことが沢山あるんです。例えば、天井からハンモックや植物などを吊るせるようにしたいと思っても、工事を始めてみないと吊るせるのかわからないし、予算が変動する可能性もある。そういった場合のプランも松島さんに考えていただきました」(奥さま)Aさんの住むマンションは築42年。古いマンションをスケルトンにすると、ボルトが躯体壁面全体に等間隔に突き出ていたり、窓枠の処理が甘かったりと、思いがけないところの対処に迫られることも。そういった「開けてみないとわからない」中古マンションのリノベーションは、途中途中で臨機応変に対処する必要があったといいます。さらに、建築家ならではの提案に驚いたこともあるそう。「最初、来客用に部屋を作ることも考えていたんですけど、それだとあまり間取りが変わらないので、結局全て取り払うことにしました。でも寝る場所と生活スペースは気分を変えたかったりもする。そこで、壁と床の色を変えてゾーンを分けるという方法を提案してもらったんです。このアイデアは目からうろこでしたね」(ご主人)壁や床の色の塗り分けで「見えない壁」を作るという手法は、同じくキッチン部分にも生かされています。遊び心と機能性。あらゆるところに意匠が凝らされたおうちもともと水回りが1箇所に集約された間取りの物件を選んだこともあり、配置をそのままにリノベーション。清潔感のある真っ白な浴室は、既存のユニットバスを撤去したあとの空間をFRP防水材で塗りこめることで、コストを抑えながら、広さと高い防水性を確保しています。部屋の中心部にあるフラットな木の壁は、裏側にあるキッチンや浴室、トイレの水回り部分を目隠ししつつ、収納スペースとして活用。お部屋を美しく見せながら、機能性も追求しています。照明のスイッチは、一点ものの真空管アンプを制作している知人に特注で作ってもらったそう。フラットな木の壁と金属パーツとのコントラストが映えます。キッチンは料理好きのご主人仕様に!料理が得意だというご主人。カウンターテーブルがついたキッチンにもこだわりが詰まっています。「設計はプロである松島さんに任せながら、インテリア的な部分は全体的にかなりこだわりましたね。キッチンの壁には、ニューヨークの地下鉄構内に使われている『サブウェイタイル』を意識して選びました」(ご主人)コンロとオーブンは火力の強い業務用を導入。以外にも、お手頃価格なのだとか。料理好きだけでなく、インダストリアル好きにもたまらないキッチンです。インテリアもステキ!奥さま直伝、グリーンコーデのポイントお部屋を見渡すと、グリーンがいたるところにセンス良く置かれています。実際に仕事でオフィスやお部屋のグリーンコーディネートをしているという奥様に、センス良くグリーンを置くポイントや、植物の選び方についてアドバイスをしていただきました♪「まずは、『シンボルになるもの』『風景になるもの』『趣味性のあるもの』『機能性があるもの』といったふうに、植物に意味合いを持たせると選びやすくなります」(奥さま)例えば、棚に置かれたグリーンは「風景になるもの」。さらに、下に垂れるタイプのグリーンを使うことで縦のラインが生まれ、空間の印象をがらりと変える「機能性」もあわせ持っています。一方で、壁にかけられたグリーンは、「趣味性のあるもの」として、アートのような主張の強いグリーンを選んでいます。寝室のパーテーションに置かれた、全方向に広がる3つのグリーンは、目隠しの「機能性」が。「グリーンは置き場所によって、上に伸びるものがいい、下に伸びるものがいいと、適している品種が決まってきます。それを知っているだけでも、ひと部屋全体をコーディネートできますよ」(奥さま)難しい印象があるグリーンコーディネートも、グリーンにどういう役割を持って欲しいか、植物がどう成長するかを抑えれば挑戦できそうです!植物とくらしながら、一緒に成長していく。そんなグリーンのあるくらしを実現してみましょう。満足のいく住まいづくりは、自分の「好き」を大切に「スケルトンにしてみたら、いい意味でも悪い意味でも、想定外なことが沢山あった」というAさん宅のリノベーション。施工費も当初の想定費用から+100万円ほどかかったそうですが、しっかりと話し合いながら細かい部分も決めていったことで、納得の仕上がりに。「賃貸に住んでいた時に感じていた『この部分はちょっとな......』と気になる気持ちも完全に消滅して、ストレスフリーになりました(笑)」(ご主人)「この家、実は春には桜の花が楽しめるんです。これから20年住む家として、色々な使い方ができる家にすることができたので、気に入っています」(奥さま)自分たちの「好き」を大切にしながら、物件の状態や予算など、現実的な問題をうまくすり合わせて決めていく。そのバランス感覚が、理想の住まいを実現させたのかもしれません。世の中のノイズが建築を面白くする。建築家 松島潤平氏インタビュー松島潤平建築設計事務所ウェブサイト●取材協力松島潤平建築設計事務所●テキスト宇治田エリ●写真土佐麻理子
2018年10月03日フランス・パリを拠点に活動する気鋭の建築家・田根剛の展覧会「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Digging & Building」が、東京オペラシティアートギャラリーで10月19日から12月24日まで開催。連携企画として「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research」を、乃木坂のTOTO ギャラリー・間で、10月18日から12月23日まで開催する。〈新国立競技場案 古墳スタジアム〉東京 2012image: courtesy of DGT.フランスを拠点に世界各地でプロジェクトを進め、現在幅広い注目を集める気鋭の建築家・田根 剛。20代の若さでドレル・ゴットメ・田根(DGT.)として「エストニア国立博物館」の国際設計競技に勝利し、選出から約10年の歳月を経た2016年秋に同プロジェクトが竣工を迎えるなど、国内外の注目がさらに高まっている。また、2012年に行われた新国立競技場基本構想国際デザイン競技(ザハ・ハディド案選出時)に参加し、11人のファイナリストに選ばれた「古墳スタジアム」は幅広い層に知られるきっかけとなった。2017年のDGT.解散後はAtelier Tsuyoshi Tane Architectsをパリに設立し、活動の場をさらに広げている。本展は、「Archaeology of the Future— 未来の記憶」を共通のテーマにしながら、田根の密度の高いこれまでの活動と、建築は記憶を通じていかに未来をつくりうるかという挑戦を、ふたつの会場で紹介。東京オペラシティアートギャラリーでは「Digging & Building」と題して、場所をめぐる記憶を発掘し、掘り下げ、飛躍させる手法と、そこから生み出された「エストニア国立博物館」や「古墳スタジアム」といった代表作や、最新プロジェクトを大型の模型や映像などによって体感的に展示する。〈エストニア国立博物館〉タルトゥ 2006-16photo: Eesti Rahva Muuseum / image courtesy of DGT.本展の冒頭、“gallery 1”では田根がどのプロジェクトにおいても実施するイメージとテキストを使ったリサーチの手法を、天井高6mの空間を使って展示。場所から連想される膨大なイメージを壁面に貼り、分類/調査を繰り返すことで思考を整理していくこの方法を田根は「Archaeological Reseach(考古学的リサーチ)」と呼んでいる。本展では、「記憶」という概念そのものを、リサーチする実験空間として体験できる。“gallery 2”では、「エストニア国立博物館」や「新国立競技場案 古墳スタジアム」をはじめ、現在進行中のプロジェクトなどを含む7つの作品を、展示室全体を使って空間的に展示。各プロジェクトは1/10から1/100のスケールの大型模型で紹介され、全長10mにおよぶ「エストニア国立博物館」は、身体的な空間体験を可能にする。いずれのプロジェクトにも「Archaeological Research」の過程で集められたさまざまな資料やオブジェクトが伴い、ひとつの建築ができあがるまでの思考をたどる手掛かりとなる。また「エストニア国立博物館」については、設計競技に提出された模型の実物が展示される他、短いながらも密度の高い2004年以降100作品以上の田根の全活動を、30mのコリドールを使ったタイムラインとして総鑑できる展示も登場する。そして「建築は未来の記憶をつくること」という田根の思想に共鳴したアーティストの藤井光が、各プロジェクトの映像制作で参加。歴史や記憶の生成に着眼し、現代社会の諸事項を再検証する作品で知られる藤井が、竣工プロジェクトおよびパリの田根のアトリエを訪問し、撮影を行った。「エストニア国立博物館」は、2画面の大型プロジェクションで展示。場所の記憶を継ぐ建築とそこに住まう人が、あらたな記憶を重ねながら未来をつくっていく姿を見ることができる。〈Archaeological Research〉 2018TOTO ギャラリー・間においては「Search & Research」に基づき、建築における思考と考察のプロセスが展開され、「Archaeological Research」の方法論を展観。ふたつの展覧会は、場所の記憶をさまざまな角度から分析することで新たな系をつくり、未来につながる建築へと展開させていく、田根の探求と実践のプロセスを総合的に提示しようとするものとなる。「記憶は現在を動かし、未来をつくる ——」 この信念にもとづいた田根の創造は、都市の担い手である私たち一人ひとりにとって建築の持つ力や使命、未来への可能性を考えるきっかけとなるだろう。【展覧会情報】田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Digging & Building会期:10月19日〜12月24日会場:東京オペラシティ アートギャラリー住所:東京都新宿区西新宿3-20-2時間:11:00〜19:00、金・土11:00〜20:00(最終入場は閉館の30分前まで)休館日:月曜日(12月24日は開館)料金:一般1,200円(1,000円)、大・高生800円(600円)、中学生以下無料 ※()内は15名以上の団体料金、障害者手帳をお持ちの方および付添1名は無料、割引の併用および入場料の払い戻し不可 ※同時開催「収蔵品展064 異国で描く」、「project N 73 中村太一」の入場料を含む ※収蔵品展入場券200円(各種割引は無し)あり田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research会期:10月18日〜12月23日会場:TOTO ギャラリー ・ 間住所:東京都港区南青山1-24-3 TOTO 乃木坂ビル3F時間:11:00〜18:00休館日:月曜・祝日(11月3日、12月23日は開館)料金:入場無料
2018年09月28日建築家の仲條雪さんの実家について、子ども時代の思い出から、今だから話せるエピソード、実家を巣立つときの心境などをざっくばらんにお話を伺いました。仲條雪さんにとって実家とは?A. 街や暮らす人も含めて、帰る場所 「兄が2人いるのですが、父が私たちの部屋の壁をぶち抜いちゃったので、子ども部屋は広かった(笑)。ただ、築35年と老朽化していたし、梁も落ちて強度的にも怪しくなってきて……。そんな折、父から“おまえ、建ててみるか?”と言われたんです」私が子どもの頃、父・仲條正義がデザインした家具(写真上)に合わせて、スパンを決めました」という父親のアトリエは、前の家の居間の雰囲気を引き継ぐ設計。愛猫も居心地がよさそうだ建築ユニットJAMMSの建築家・仲條雪さんの作品「仲條パパの家」は、彼女の実家。「あまりこじゃれるな。とはいえ、少しはこじゃれろ。建築家が建てたような家はイヤだからな」——。これが父親からのオーダー。さながら禅問答のようなオーダーだったが、それもそのはず。お父上は日本を代表するグラフィックデザイナー・仲條正義さん。自分の父親とはいえ、一流クリエイターの希望に沿うのは大変そうですが……。「前の家では、父は居間でよく仕事をしていたので、新しい家でも父のアトリエはその居間と同じようなつくりにしました。ただ、母にやさしい家にしようと考えていたので、私や父が“こっちのほうがカッコイイ!”と突っ走らないように気をつけてましたね(苦笑)」しかし、雪さんは実家が完成したら、ひとり暮らしを始める。せっかく、思い入れのある家ができあがったのに、なぜ?「亡くなった母とは距離が近すぎて、私も大好きだったけど、母も私を頼りにしていて、このままじゃマズいって思って……。この家を建て替えるとき、いい機会だからと35歳でひとり暮らしを始めました。今は横浜に住んでいますが、実家には私の事務所を構えているし、父の顔を見に週1回は顔を出しています」仲條さんにとって、実家とはどんな存在なの?階段を挟み、雪さんの事務所の隣に父親のアトリエがある。部屋にいながらにして互いの存在を確認できる。「吊り戸棚がガラスで、父がよくのぞくので、クッションでふさいでいます(笑)」仲條さんにとって、実家とはどのような場所なのでしょうか?「前の家では、新盆になると庭先に出て、家族みんなで迎え火をするのが恒例。父が“ご先祖さまに飲ませてあげよう”と言って、それを口実に縁台でお酒を飲んだり(笑)。夏の夕方になると打ち水をして、庭に集まったり……っていうのが実家の原風景ですね」まさに古き良き昭和の趣のある雰囲気。今の実家でもその雰囲気を残している空間になっているとか。「でも、新盆には家族が集まって迎え火をしています。私にとっての実家は、街やそこに暮らす人たちも含めて、帰る場所。誰かに聞かなくてもどこに何の店があるか分かっていたり、話し込むわけじゃないけど“薄〜い”知り合いがいたり、ホッとしますね(笑)」pfofile1970年、東京都生まれ。’94年、日本大学理工学部建築学科卒業後、ワークショップに入社。木下道郎/ワークショップを経て、’02年、建築家・横関和也が主宰する建築ユニット JAMMSに参画photo seiji ito
2018年09月21日建築家・石井秀樹さんの自邸は、2年半かけて探し求めたという鎌倉の丘陵地の一角に建っています。建物は正方形の総2階。古都の落ち着いた雰囲気と緑を丸ごと味わえるようにと、LDKを配した2階は4面すべてガラス張りに。一方でバスルームや寝室などプライベート空間を集めた1階は外部に対して閉じていて、その対比が豊かな空間を生んでいます。■ 緑の眺望をぐるりと楽しむ4mのキッチンカウンター視線を遮る柱も壁もない、大空間の2階LDK。開口高は1.6mと低く抑え、建物を覆うように屋根がかかっているので、開放的でありながら屋根に包まれているような安心感も味わえます。最も美しい景色が広がる東側に向けて配置された家具のようなキッチン。その主役は、冷蔵庫やレンジフードなどをすべて下部に収容した長さ4mのカウンターです。食器をはじめ炊飯器や電子レンジなどの家電製品は背部の収納に収め、スッキリとした空間を保っています。キッチンとオープンにつながるリビングダイニングは、くつろげる畳敷きにローテーブルや低座椅子を組み合わせて。蓄熱床暖房のおかげで畳に座るとほんのり温かく、発熱ガラスを使った窓は結露に悩まされる心配もないそう。コンクリートのようなカウンタートップは、ベルギーの左官材「モールテックス」で継ぎ目のない仕上げに。オープンなキッチンで極力隠したいレンジフードは、イタリア製の昇降タイプを採用。カウンター内部に格納でき、使用時はスイッチを押すとせり上がってくるスグレモノです。■ 壁も扉もない!露天風呂のような十和田石のバスルーム緑が迫り来るような開放感あふれるガラス張りの2階から一転、寝室などプライベートな空間を配した1階は、外部に対しては閉じた箱。窓も極力小さくし、ほの暗い中で落ち着いた雰囲気を楽しめるようにしています。そんな1階で印象的なのが、テラスに面した壁も扉もない十和田石のバススペース。窓をフルオープンにすれば、まるで露天風呂のように気持ちのいい空間が生まれます。テラスからバススペースを見た様子。洗面カウンター左側の両開き戸で隠れた部分に、洗濯機を収納しています。玄関から通路を進んでいくと、左奥の白いカーテンの向こうに十和田石の浴槽が現れるドラマチックな間取りです。「バスルームは1日の中で使う時間は短いのに決まったスペースを取られてしまい、そのぶんほかの部屋が狭くなります。オープンな空間にすれば視線が抜けて空間全体に広がりが与えられるので、限られたスペースも有効に生かせると考えました」と石井さん。視線が気になる場合は、入浴時のみシャワーカーテンを閉めればOK。湿気もこもらず、掃除も簡単です。■ 黒いボックスを中心に回遊する機能的な動線1階の中心には、外壁の黒い焼杉板と呼応するように黒い壁で囲われた大きなボックスが配置されています。ボックスの周りに玄関や寝室、テラスに面したオープンなバスなどが配され、シームレスにつながる設計。床の高さや仕上げを替えることで、つながりつつ緩やかに空間に変化をつけています。中央の黒いボックスを囲んで右側に玄関、奥に寝室があり、左手に行くとバスルーム。さらにボックス内部にはトイレや洗面、靴収納なども備えられていて、ぐるぐる回りながら身支度ができます。床にはしっとりとした質感の敷瓦を採用。「住宅を設計する際は、いつも回遊性を念頭に置いています。外階段も設けてどこも行き止まりなく、ぐるりと動けるので、機能的で快適性も高まります」と石井さん。中央のボックス内部はウォークスルークロゼットで、ここも行き止まりなし。ボックスの玄関側には大容量の靴収納も設けています。ほの暗い1階と、開放的な2階。豊かな表情を楽しみながら、快適に暮らせる住まいです。もっと詳しく見たい方は、ぜひ『住まいの設計2017年05.06月号』も参考にしてみてくださいね。設計/石井秀樹建築設計事務所撮影/飯貝拓司【巻頭特集】自分らしいキッチン&くつろぎのバスルーム北欧スタイル、アジアンリゾート、モダンテイスト…理想のキッチンやバスルームスタイルは、十人十色。今号は、住まい手の希望に設計者を叶えた、4つのキッチンと4つのバスルームをご紹介します。「使い勝手にこだわったプロ仕様の土間キッチン」や「開放感と非日常感を味わう至高のリラックス空間のバスルーム」など、きっとあなたの好きなスタイルが見つかるはずです。
2018年08月13日憧れのおうちは「開放感のある家」という方も多いはず。天井まで続く大きな窓、ウッドデッキや縁側、アウトサイドリビングなど憧れは尽きないもの。今回は、そんな願望を叶えた開放感たっぷりのステキなおうちを特集します♪お気に入りの一軒をぜひ見つけてみてください♡日本ならではの縁側で家族だんらんを現代の家にも一昔前までは縁側で家族だんらん、なんて風景がありましたが今では縁側のあるおうちも少なくなりなりましたよね。そんな縁側をモダンに取り入れたのがこのおうち。全面開放できる窓なので、開け放てばリビングと縁側が一体化するようなデザインです。ウッドデッキに囲まれた楓の木がシンボルツリーの役割を果たし、家族で集まりたくなるスペースに♪プロの設計士が自分の家を本気で設計したらこうなった。こだわりの”縁側モダン”〜『10年愛♡の家』Vol.5〜窓から見える絵画のような日本庭園がすぐそこにフローリングと窓のサッシの色を木質系に統一することで、サッシ枠の存在感が和らぎますね。そんな窓の先に見えるのがまるで絵画のように美しい和風庭園。こんなに景色をいつでも眺められるなんて、なんてステキなんでしょうか。和な空間に心が和みます。窓回りを愉しむコツ|サッシ色の選び方(室内)もはや外!自然とつながるアウトサイドリビング「これぞ開放感!」と言いたくなる、ウッドデッキを兼ね備えたおうちです。自然に囲まれた白くモダンな邸宅は全面開放の窓と大きなウッドデッキのおかげで、外とダイレクトにつながっています。天気のいい日には、リビングの窓を開け放って思わず外で過ごしたくなるステキな空間です♡思わず外で過ごしたくなる!おしゃれなウッドデッキ&アウトサイドリビングまとめ壁一面の窓から光がたっぷり注ぎこむこちらは、天井まで続く壁一面の窓ガラスから広いお庭が眺められるおうち。外からの光や風をたっぷりと取り込むことができます。黒のサッシがモダンで、空間の締め色としても一役買っています♪【話題】有名漫画家さんが建てた理想の「アトリエ兼平屋住宅」に潜入!!開け放たれた窓から今にもパンのいい香りが漂ってきそう♡こちらはパン屋さん。大きな県道に面した建物でなので、道路からでもお店の中が見えるように建物の正面と側面に窓を設置したそう。6枚のガラス扉で構成された正面入り口を開け放てば、今にも焼きたてのパンの香りが漂ってきそう♡お客さんも入りやすい明るい空間です。Boulangerie 粉桜おわりに今回は大きな窓のあるおうちを特集しました。光や風がたくさん入ってくるので開放感たっぷり!また、ウッドデッキやアウトサイドリビングで、お部屋と外がつながっていているのもとってもステキですよね。他にもLIMIAではさまざまなおうちが紹介されているので、憧れの一軒を見つけてみてくださいね!
2018年08月07日屋上のあるおうちに憧れを抱いている方も多いのではないでしょうか?敷地が狭いからなど、スペースが限られるおうちほど、屋上はよりよい暮らしを演出してくれるかもしれません。今回は、すてきな屋上のあるおうちをご紹介していきます♪憧れの屋上庭園をわが家にも!高級マンションやリゾートホテル、テレビドラマなどでもよく見かける「屋上」。開放的でおしゃれな空間がわが家にあったら……と憧れをもつ方も多いのではないでしょうか。今回は、すてきな屋上空間を実現したおうちをご紹介していきます♪至福のひととき……憩いの空間を実現リビングから伸びるハシゴ階段を登ると、そこには至福のひとときをゆったり過ごせる空間が。実はここ、ビールを楽しむために作った空間なんだとか!このように、下の階の屋根を利用して作られる「ルーフバルコニー」。ひとりでホッとくつろぐための空間を演出しています。木目調のお部屋に合わせて、バルコニーもウッドデッキに。周囲の自然や、バルコニーから降り注ぐ陽の光とも相まって、お部屋全体が開放的でナチュラルな印象になっていますね。屋上というと文字通り「最上階の屋根の上」という印象があるかと思いますが、このルーフバルコニーという形もまた、開放感があって魅力的ですね!▼詳しい記事はこちら▼住宅に屋上をつくった理由お庭がなくてもガーデニングをこちらのおうちは、敷地面積がわずか15坪のいわゆる「狭小住宅」。なので、敷地内にお庭がなかったんだとか。そこで、3階の上に屋上を作りました!屋上には、実は重量制限などの細かな建築基準が存在します。こちらの屋上は、屋上菜園にすることを見込んで、土の重さなどを計算したうえでの構造に。このように、屋上を作るためには用途や具体的なイメージをもつことが大切と言えそうですね!▼詳しい記事はこちら▼木造でも屋上庭園都心の住宅に自然を想設計工房さんの手がけた物件は「自然ととも生活できる家」をテーマに、こんな屋上空間が生まれました。芝生とウッドデッキのツートンで、お子さんの遊びからお洗濯などの家事まで、住・遊そろった使い勝手のよさそうなスペースになっていますね。とくに都心で、屋上やバルコニーの注意点としてあげられるのがプライバシーの問題。こちらのおうちは、鮮やかな赤い塀で目線をさえぎっているから安心です。お部屋の中央は吹き抜けになっていて、シンボルツリーが各階を貫いています。屋上から取り込んだ光がおうち全体に注ぎ込む構造になっているから、家じゅうどこにいても明るく開放感を得ることができそうです♪実は都心の住宅密集地に位置しているおうちなのですが、空間の使い方しだいで、これだけの開放感を手に入れられるんですね!▼詳しい記事はこちら▼上下に2つの庭を持つ家限られたスペースを最大限に活用する!今回は、「屋上」をテーマにさまざまなおうちの屋上をのぞいてみました。都心や住宅密集地では、生活スペースも限られるから、余暇の空間は手の届かない存在と感じがちです。でも、今回ご紹介したように「屋上」という空間によって、今あるスペースを最大限活用することで、自宅がより快適な場所にすることができるんですよ♪みなさんもぜひ、「屋上」という選択肢をもっと身近に感じてみてくださいね!▼屋上リフォームに関するハウツーはこちらから▼屋根に屋上・テラスを作りたい!屋根リフォームで実現できる?リフォームで自宅に夢の「屋上庭園」を!快適な空間を実現するためのポイント
2018年07月22日自然豊かな雑木林を見下ろす約106坪の傾斜地に建てられた、建築家・平真知子さんとドッグトレーナーの夫の家。玄関・室内間は床がフラットにつながり、イヌも夫妻も移動しやすい仕様です。夫妻とワンコ、さらに2羽のインコが仲良く暮らす憩いの空間をご紹介します。■ 時間帯に合わせ、1日中快適でいられる六角形の住まいそれまで集合住宅住まいだった夫妻が見つけた物件は、雑木林が眼下に広がる傾斜地。ドッグランもOKの余裕ある敷地に、地上2階&地下1階の家を建築しました。設計はもちろん建築家である妻。「採光と眺めを最大限得られるよう、六角形の家をプラン。1階は吹き抜けのダイニングを中心に配置し、その周りを生活空間やイヌのスペースが取り囲むデザインです」と妻。平さん夫婦の愛犬は、ピークという名のゴールデンレトリーバー(オス・2歳)。新居完成のタイミングで迎えた、念願の大型犬です。ピークの基本的な居場所は日当たりのいい南側。掃除のしやすいタイル敷きで、扉は必要に応じて開閉します。開口部は引き違い窓で、直接外に出られて便利!ダイニングと周囲の部屋との間には扉がなく、ピークは移動が自在。「イヌができるだけ広い空間で過ごせるよう配慮しました」(妻)。ピークの居場所からダイニングを横切ると玄関です。東側の玄関にはお散歩グッズを置き、こちらからも出入りOK。置き家具は最小限とし、ピークが動き回ってもぶつからないようにしています。タイル敷きの床はひんやりとして、暑い季節は「避暑地」として活躍!ピークの居場所の隣の窪みを利用したのがキッチン。壁に沿った扇型で、手が届きやすく使いやすそう。「ピークのご飯をつくり始めると、ピークが一歩ずつにじり寄ってきて、よだれをポトッと垂らします(笑)」(妻)。■ リビングにはインコが!空間に放つ「放鳥」が日課!南西側の部屋はリビング。キッチン、ダイニングとひとつながりで動線が快適そう。そのリビングの主が、セキセイインコのプルプル(5歳)とポン(3歳)。インコたちは夫妻が以前から飼っていた、いわばピークの先輩です。「インコも家族の近くが好きなので、鳥カゴをリビングに置くようにしました」(妻)。インコは1羽1つずつのカゴですが、カゴの手前部分で連結させ、自由に行き来できる工夫をしています。「DIYでつなぎました。運動量も増えていいようです」(夫)。地震対策のロープも止まり木として活躍!インコの適度な運動のため、1日1~2時間「放鳥」を行っています。「ピークの部屋や眺めの部屋などのスクリーンを下げ、目の届く範囲で放ちます。スクリーンはピークのちょっかい防止の目的も」と妻は話します。一方、北側は階段室で、壁面に沿って大容量の書棚を設置。踏み板に腰かけながら読書でき、書斎としても機能します。「ピークは大型犬なので隙間から落下しませんが、転げ落ちないよう踊り場を広く取り、さらに安全策として途中で折れ曲がる設計にしました」(妻)。■ 2階はドーナツ状のワンルーム。愛犬と楽しくかくれんぼも!2階は、中央の吹き抜け部分を囲むドーナツ状のワンルーム空間。寝室、水回り、室内物干し、休憩室兼ゲストルームで成り立っています。「ワンルームでぐるりと1周できる間取り。吹き抜けとの間は3面が壁なので、ピークが退屈気味のときはかくれんぼのように遊び、いい刺激になっているようです」(妻)。外観はこのとおり。地上1~2階は木造、地下1階はRC造の混構造で、地下部分は夫の仕事場になっています。大開口の前の広いデッキスペースは、ピークと体を使って遊ぶのにぴったりな場所。ここから雑木林を下り、1日2回、それぞれ1時間程度の散歩をするのが日課です。大型犬の足腰を鍛えるには坂道が最適で、勾配のきつい斜面のロケーションが大いに役立っています。散歩は、体力のある夫が担当しています。「ピークには恵まれた住まいなどの環境のもと、気持ちよく過ごしてほしいですね」(夫)。自然に囲まれたロケーションに多角形を配置し、間仕切りを最小限とすることで、ハッピーで健康的な暮らしを獲得した平さん夫妻とペットたちです。もっと詳しく見たい方は、ぜひ「住まいの設計2017年5.6月号」を参考にしてみてくださいね。設計/平真知子一級建築事務所撮影/飯貝拓司【巻頭特集】「美キッチン and 極楽バスルーム」/「“ネコと暮らす”ということ、“イヌと暮らす”ということ」豊富な実例ときめ細やかな情報で快適・便利な住スタイルを提案。家作りの夢が広がる!住まいのお役立ちマガジン
2018年07月16日