自身の私生活を深く見つめる作風で、1960年代以降の日本の写真表現に独自のポジションを築いていった写真家・深瀬昌久。彼の作風は’70 年代には「私写真」と呼ばれ、後の写真家たちの主要な表現のひとつとして広まってゆく。「私写真」のパイオニア深瀬昌久の日本初、大回顧展。1934年、北海道の写真館の長男として生まれた深瀬。3代目になることを期待され、6歳の頃から暗室でプリントの水洗仕事を手伝わされるなど、幼少期から写真と縁深い生活を送る。日本大学藝術学部写真学科を卒業後は、日本デザインセンターや河出書房新社などの勤務と並行し、カメラ雑誌を中心に写真作品を多数発表。’68年に独立すると、妻や家族、飼い猫など、身近な存在にカメラを向け、自分の内面へと意識を向けてゆく。彼の作品は、被写体に対する愛ある眼差しと、ユーモラスな軽やかさが混在しているのが特徴。明るさの中にも、どこか不気味な雰囲気をたたえた作品は、不思議といつまでも見る人の記憶に残る。本展は、深瀬昌久の全貌を紹介する日本初の大回顧展。初期作品「遊戯」から、家族を撮影した「家族」、晩年に手がけた「私景」や「ブクブク」など、主要な作品を一堂に集め、活動の足跡を時系列に辿ってゆく。なかでも注目は妻・洋子を被写体に、約10年の歳月をかけて撮影されたシリーズ「洋子」だ。深瀬は、’60年代には二人が暮らした埼玉の草加松原団地を舞台に、’70年代には旅先の北海道や金沢、伊豆などで洋子を撮影。本展では《無題(窓から)》など15点を本邦初公開。そこには被写体への愛ばかりでなく、どこか過剰な演出も入り交じっている。深瀬がプライベートを晒しながら表現したかったものは何だったのか。彼は猫と過ごす日々を振り返り、「私はみめうるわしい可愛い猫でなく、猫の瞳に私を映しながら、その愛しさを撮りたかった。だからこの写真は、サスケとモモエに姿を借りた私の『自写像』といえるのかもしれない」と書き残している。’92年6月、深瀬は行きつけのバーの階段から転落。重度の後遺症を抱え、以降は特別養護老人ホームで介護を受けながら過ごし、二度とカメラのシャッターを切ることなくこの世を去った。本展は、彼の活動の全貌とともに、「不遇の作家」とも呼ばれた彼の生き様から、写真の原点についても考える機会になりそうだ。《無題(窓から)》〈洋子〉より1973年勤め先の画廊に出勤する洋子の姿を毎朝4階の自室から望遠レンズを使って撮り続け、「洋子」と題して1973年に誌上で発表。夫婦は’76年に離婚した。©深瀬昌久アーカイブス《無題》〈サスケ〉より1997‐1998年個人蔵’77年に友人の紹介で譲り受けた深瀬の猫・サスケ。©深瀬昌久アーカイブス《屠、芝浦》〈遊戯〉より1963年東京都写真美術館蔵解体される家畜と当時は恋人だった洋子。©深瀬昌久アーカイブス《91.11.10 November 10th 1991》〈ブクブク〉より1991年東京都写真美術館蔵’91年、深瀬は自宅の湯船に潜った自分の姿を約1か月間写し続けた。©深瀬昌久アーカイブス《昌久と父・助造》〈家族〉より1972年東京都写真美術館蔵’71年、帰省した際に撮影した父との写真。©深瀬昌久アーカイブス深瀬昌久 1961‐1991 レトロスペクティブ東京都写真美術館東京都目黒区三田1‐13‐3恵比寿ガーデンプレイス内開催中~6月4日(日)10時~18時(木・金曜は~20時。入館は閉館の30分前まで)月曜(5/1は開館)休一般700円ほかTEL:03・3280・0099※『anan』2023年3月15日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2023年03月13日1934年に北海道で生まれ、1960年代以降の日本の写真界に独自の地位を築いた写真家・深瀬昌久(1934-2012)の全貌に迫る回顧展が、恵比寿の東京都写真美術館で、 3月3日(金)から6月4日(日)まで開催される。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、1960 年代初期からカメラ雑誌を中心に発表していた深瀬昌久は、1968年に写真家として独立。妻や家族といった身近な存在にカメラを向け、自身の私生活を深く見つめる視点で撮影した作品群は、1970年代に「私写真」と呼ばれ、写真家たちの主要な表現のひとつの潮流として展開することになった。1974年には、ニューヨーク近代美術館で開催された企画展「New Japanese Photography」に出品し、以後、世界各国の展覧会にも多数参加している。同展は、「私写真」の先駆者として、1960年代から70年代の日本写真界を切り拓いた深瀬の初期作〈遊戯〉から後期作〈ブクブク〉まで、その足跡を時系列に沿って紹介する国内初の大回顧展だ。とりわけ、写真家としての深瀬を探究するうえで欠かせない、妻・洋子を被写体としたシリーズ〈洋子〉の15点は、今回が初出品。様々な衣装に身を包んだ洋子の表情豊かな写真は、ユーモラスな軽やかさと被写体への愛を感じさせると同時に、どこか過剰な演出が一抹の不穏さも想起させる印象深い作品だ。また、深瀬作品には、現在の私たちがスマートフォンを使って撮影する「セルフィ」に通ずる身体感覚が見いだせるという点も興味深い。生涯を通してカメラを自己探求の手がかりとした深瀬は、その独特のカメラアイで、何気ない日常を題材にしながら、ときに狂気とユーモアが表裏一体をなすような作品を生み出した。写真表現の奥深い可能性を示す、こうした深瀬の視座にも注目したい。なお、同館には、写真専門図書室が併設されており、こちらでは、深瀬の写真集をはじめ関連図書が紹介されている。展示室でオリジナルプリントを堪能した後には、出版当時の写真家の想いが込められた写真集を閲覧してみてはいかがだろうか。<開催情報>『深瀬昌久 1961-1991 レトロスペクティブ』会場:東京都写真美術館会期: 2023年3月3日(金)~6月4日(日)時間:10:00~18:00、木金は 20:00 まで(入館は閉館 30 分前まで)休館日:月曜(5月1日は開館)料金:一般 700円、大学 560円、高中・65歳以上 350円※日時指定予約推奨美術館公式サイト:
2023年02月24日世界屈指の文化都市・京都を舞台に開催された「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2018」で好評を博した展示の一部が、「TOKYOGRAPHIE」として10月26日から12月25日まで、都内各所にて巡回展を開催。深瀬昌久「カラー・アプローチ」1962年 © Masahisa Fukase Archives2018年は「UP」をテーマに、国内外の気鋭のアーティストの新作や貴重なコレクションを発表。オープニングプログラムとして、深瀬昌久や林道子、関健作による展示がFUJIFILM SQUAREにて行われる。2012年に他界した深瀬昌久の展覧会「総天然色的遊戯」では、「KYOTOGRAPHIE 2018」のメインプログラムの一つとして開催された深瀬の国内初回顧展「遊戯」を、カラー写真というコンセプトの下に再構築。林道子は、狼にまつわる民話や伝承の視覚化を試み、静謐かつ臨場感溢れる作品「Hodophylax 〜道を護るもの〜」を展示予定。関健作は、「GOKAB 〜HIPHOPに魅了されたブータンの若者たち〜」を展示。若者の目に見えない葛藤や心の揺れなど、被写体の内面が浮かび上がるような力強い写真作品に、被写体自身のグラフィティが施される。また、「KYOTOGRAPHIE 2018」会期中に好評を博した「こども写真コンクール 2018」の入賞作品展「UPはどこ? Which way is Up?」も、FUJIFILM SQUAREに巡回する。リウ・ボーリン「Hiding in the vineyards with the Ruinart Cellar Master (ルイナール最高醸造責任者とぶどう畑にて), Liu Bolin for Ruinart」2017年 © Liu Bolinフランスのパリとアルルを拠点に活動する小野規は、2011-12年に被災地を撮影したシリーズの続編を2017年夏に新たに撮影し展示。ギデオン・メンデルは、国境や文化の壁を越えて発生する洪水災害に直面した人々の局面を捉えた作品群「Drowning World」で、温暖化が世界にもたらす危うさや、世界は変わらずあるという盲信への疑問を投げかける。自身にボディ・ペインティングを施し、都会の風景に紛れた写真作品を発表、「見えない男」として知られる中国の現代美術家リウ・ボーリンは、最新作として世界最古のシャンパーニュ・メゾン、ルイナールとのコラボレーション「Liu Bolin × Ruinart」を展示。Fire, CHANEL Fine Jewelry 2001. In collaboration with Pierrick Sorrin. © Jean-Paul Goude「KYOTOGRAPHIE 2018」のサテライトイベント「KG+」主催のコンペティション「KG+Award」でグランプリを受賞した顧剣亨(こ・けんりょう)は、現代におけるユートピアを題材とした受賞作品展「Utopia」を展開。写真家・グラフィックデザイナー・アートディレクター・映像監督など多岐にわたり活躍し、イメージメーカーとして名を博しているジャン=ポール・グードは、シャネルとのコラボレーションのハイライト、そしてグードによるもっともパーソナルなアート作品の二つのパートで構成された「“In Goude we trust!”」を展開。海外での人気も高まる1994年生まれの新星・宮崎いず美は、新作や彼女独自の世界観が濃縮された作品群「UP to ME」を発表。会場には、宮崎の作品がプリントされたBMW i3ラッピングカーも展示される。その他、例年来場者から好評の様々なパブリックプログラムも開催。本展では、出展写真家によるトークセッションやアーティストトークを中心に、来場者向けの体験型のイベントを開催する。詳しくは、公式サイト()にて確認できる。【イベント情報】TOKYOGRAPHIE - KYOTOGRAPHIE Special Edition -会期:10月26日〜12月25日会場:FUJIFILM SQUARE、アンスティチュ・フランセ東京、シャネル・ネクサス・ホール 他
2018年10月01日各ブックストアがFASHION HEADLINE読者に向けて「今読むべき1冊」をコンシェルジュ。毎週土曜日は、洋書を専門に扱う原宿のブックショップ「シェルフ(Shelf)」(東京都渋谷区神宮前3-7-4)が選ぶ書籍をご紹介します。■『Masahisa Fukase』深瀬昌久深瀬昌久、待望の集大成。私性と遊戯を追い求めた40年。1960年代から日本写真の第一線で活躍した写真家・深瀬昌久。だが、1992年の不慮の事故により、その活動は閉ざされた。「鴉」が不朽の名作として語り継がれる一方、そのほか大半の作品が紹介される機会は失われた。本書は、そんな謎多き写真家・深瀬の40年間に及ぶキャリアを俯瞰し、その写真表現の全貌を初めて浮き彫りにする決定版。全26章。深瀬は、北海道の写真館の家系に生まれ、「私性」と「遊戯」の視座に根差した写真表現を多岐にわたる手法で探求した。その人生の中心には常に写真が腰を据え、内なるリビドーは周囲を巻き込み、己の人生をも破滅へ向かわせた。本書は、作品一つひとつを時系列で整理し、深瀬が雑誌に残した撮影後記や手記等から、その制作意図や背景を丹念に探る。これまで断片的にしか見えてこなかった深瀬の作品が、軌跡となって立ち現れ、生涯をかけてカメラの先で何を見つめようとしていたのかを本質的に探ろうとする。写真表現の豊かさと凄みを湛え、未来に手渡す大冊。【書籍情報】『Masahisa Fukase』写真:深瀬昌久出版社:赤々舎監修・本文:トモ・コスガ(深瀬昌久アーカイブス ディレクター)序文:サイモン・ベーカー(ヨーロッパ写真美術館館長)言語:日本語ハードカバー/416ページ/260×200mm発刊:2018年価格:8,000円■Shelfオフィシャルサイトで『Masahisa Fukase』を購入する<目次>北海道/東京/ 1952–1954 /豚を殺せ/カラー・アプローチ/松原団地と新宿 /遊戯–A PLAY–/家族・I/組立暗箱を担いで/烏1976/サスケ/鴉1979/烏・夢遊飛行/烏・東京篇/歩く眼・I/歩く眼・II/遊戯–A GAME–/総天然色的街景/烏景/家族・II/父の記憶/私景/ヒビ/ベロベロ/ブクブク/烏1992/オートマティズム
2018年09月15日世界屈指の文化都市・京都を舞台に開催される、日本でも数少ない国際的な写真祭「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」が、2018年4月14日から5月13日まで開催される。Jean-Paul Goude, Grace revised and updated, painted photo, New York, 1978 © Jean-Paul Goude第6回目となる今回は、国内外の気鋭のアーティストが「UP」をテーマに寺社や京都市内の趣きあふれる歴史的建造物や、モダンな近現代建築の空間で新作や貴重なコレクションを発表する。写真家、デザイナーなど多岐にわたり活躍しイメージメーカーとして名を博すジャン=ポール・グード(Jean-Paul Goude)は、現在も人々を魅了する稀代のアーティストの写真作品やインスタレーションを展示。近年国際的に再注目されている写真家の深瀬昌久は、ポートレート作品などに加え、ひび割れの写真に深瀬自身がペイントを施した『HIBI』や『BEROBERO』シリーズなど、抽象的な作品群も展示予定。フランク・ホーヴァット(Frank Horvat)は、後世に多大な影響を及ぼしてきた代表作や、ジャーナリスティックな初期作、私的なプロジェクトによる作品などを出展予定。なお、本展はシャネル・ネクサス・ホールからの巡回展となる。中川幸夫は、流派という垣根を飛び越え、「いけ花」という概念を凌駕するような独創的かつ前衛的な作品を発表し、2012年に他界するまで精力的に創作を続けた。本展では、両足院(建仁寺内)にて、中川自身が撮影した写真作品や書を展示すると共に、中川作のガラスのオブジェにキュレーターである片桐功敦が花をいけるインスタレーションを発表予定。宮崎いず美『riceball mountain』2016年 © 2016 IzumiMiyazakiセルフポートレートがタンブラー(Tumblr)を通じて世界中で注目を集めた1994年生まれの新星・宮崎いず美や、アフリカを代表する現代美術家の一人であり、国際的に第一線で活躍するロミュアルド・アゾゥメ(Romuald Hazoumè)、地理上の境界線や文化の壁を越えて発生する洪水災害に直面した人々の局面を捉えた作品群『Drowning World』を発表したギデオン・メンデル(Gideon Mendel)、政治組織・ブラックパンサーの全てを収め、ドキュメンタリーという枠を超えた本作『Power to the People』を生み出したステファン・シェイムス(Stephen Shames)などの作品も展示される。その他、来場者向けイベントとして、アーティストトークや展覧会を廻る週末ガイドツアー、コンサートなどスペシャルイベントや、キッズワークショップなど様々なプログラムを開催。キュレーターなど各国の写真界の第一人者に、希望者がポートフォリオを見てもらう若手育成プログラムや、参加作家による学生・アマチュア・プロ向けの授業なども行われる。【展覧会情報】KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2018会期:2018年4月14日~5月13日公式サイト:
2017年12月27日フランスの写真家ウジェーヌ・アジェ(Eugène Atget)の影響力と現代に受け継がれるスピリットを紐解く展覧会「TOP Collection アジェのインスピレーション ひきつがれる精神」が12月2日から、東京都写真美術館にて開催される。「近代写真の父」とも称されるウジェーヌ・アジェは、19世紀末から20世紀初頭にかけて、パリとその周辺を捉えた写真家。41歳の時から30年間にわたって、歴史的建造物や古い街並み、店先や看板、庭園、路上で働く人々など、8,000枚以上の写真を撮影し、近代化が進み消えゆく運命にあった「古きパリ」を体系的に記録。その作品は当初、アジェが生計を立てるために画家や建築家、公共機関への「資料」として販売していたが、アメリカ人写真家のマン・レイ(Man Ray)と助手のベレニス・アボット(Berenice Abbott)らによって見出され、晩年から没後に高い評価を得るようになった。本展では、ウジェーヌ・アジェが後世の写真表現にどのような影響を与えたかについて、同館所蔵の作品と写真集などの資料から多角的に考察。アジェ自身の作品と同時代の写真表現、さらに20世紀から現代にかけて活躍する写真家たちの際立った作品を中心に比較することで、その輪郭を浮び上がらせていく。アジェに憧憬を抱き、手本としてきた写真家たちは後を絶たないが、彼らがアジェの写真に見出したものは一体何だったのか。現実を写す「パリの記録者」でありながら、現実を超える世界を表現したとして、世界中の芸術家たちに多大な影響を与え続ける、その謎多き写真家の正体に迫る。会場には、同館の多彩なコレクションから厳選されたアジェのスピリットを受け継ぐさまざまな作家の作品を展示。 マン・レイ、ベレニス・アボットを始め、美しい風景写真で知られるシャルル・マルヴィル(Charles Marville)や、アルフレッド・スティーグリッツ(Alfred Stieglitz)、荒木経惟、森山大道、深瀬昌久ら12作家の作品、約155点が一堂に会する他、写真評論家の横江文憲や写真史家の金子隆一を招いたトークイベントも開催される予定。【展覧会情報】「TOP Collection アジェのインスピレーション ひきつがれる精神」会期:12月2日〜2018年1月28日会場:東京都写真美術館 3階展示室住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内時間:10:00〜18:00(木・金曜は20:00まで)※2018年1月2日~3日は11:00〜18:00(入館は閉館30分前まで)休館日:毎週月曜日※月曜日が祝日の場合は開館、翌平日が休館、12月29日~2018年1月1日観覧料:一般 600円、学生 500円、中高生・65歳以上 400円※第3水曜日は65歳以上無料、1月2日は無料
2017年11月23日東京・原宿のVACANTにて、出版社やゲスト自らが写真集について語るプレゼンテーション形式のイベント「フォトブック・シンポジウム」の第3弾が開催される。今回のイベントは「フォトブック・シンポジウム vol.3:金子隆一」と題し、写真評論家、写真史家、写真集コレクターとして活動する金子隆一をメインゲストに迎え、3日間にわたって、3人のゲストとともに、3つの写真集についてトーク&ディスカッションを展開する。9月9日に行われる「MAGNUM ANALOG RECOVERY - これまでのマグナムとこれからのマグナム」では、世界最高の写真家集団と言われるマグナム・フォト(Magnum Photos)が創立70周年を記念してパリで開催したアーカイブ展覧会「Magnum Analog Recovery」の図録を取り上げる。ゲストにはマグナム・フォト東京支社ディレクターの小川潤子を招き、同正会員フォトグラファーであるモイセス・サマン(Moises Saman)のコメントを交えながら、金子とディスカッションを行う。9月10日は、今春約30年振りにイギリスの出版社「MACK」より復刻版が刊行された深瀬昌久の代表作「RAVENS / カラス」にスポットを当て、「RAVENS / カラス ‐ カラスの秘密、アーカイブスの謎」をテーマに「深瀬昌久アーカイブス」のディレクターを務めるトモ・コスガがプレゼンテーションを展開。さらに、金子と深瀬作品の魅力や謎について意見を交わしていく。会場では、日本未公開となるプリントのミニ展示や、来場者全員に未収録イメージのポストカードの配布も行われる。最終回は9月24日に開催。ゲストには、50年以上にわたり鋭敏な眼差しで写真表現の本質を探究し、金子とともに写真同人誌「CAMARA WORKS」の制作に携わった写真家の築地仁を迎え、築地が1989年にアメリカの写真家ルイス・ボルツ(Lewis Baltz)と取り組んだプロジェクト「TOSHIBA / 東芝」の見解を徹底的に語り尽くす。一般的な写真集市場では出回ることがなく、“幻”となっているこの貴重な一冊の現物を展示し、その全ページのスライドショーを公開する。【イベント情報】第1回「MAGNUM ANALOG RECOVERY - これまでのマグナムとこれからのマグナム」ゲスト:金子隆一(写真評論家、写真史家、写真集コレクター)、小川潤子(マグナム・フォト東京支社ディレクター)会期:9月9日会場:VACANT住所:東京都渋谷区神宮前3-20-13 2F時間:17:00~19:00(開場16:30)料金:1,500円(1ドリンク付)定員:120名※写真集「MAGNUM ANALOG RECOVERY」(1万2,000円)購入の先着50名に特製トートバッグをプレゼント第2回「RAVENS / カラス ‐ カラスの秘密、アーカイブスの謎」ゲスト:金子隆一(写真評論家、写真史家、写真集コレクター)、トモ・コスガ(深瀬昌久アーカイブス ディレクター)会期:9月10日会場:VACANT住所:東京都渋谷区神宮前3-20-13 2F料金:1,500円(「RAVENS / カラス」未収録イメージによるポストカード付 / 1ドリンク付)定員:120名第3回「TOSHIBA / 東芝 - 築地仁とLEWIS BALTZ」ゲスト:金子隆一(写真評論家、写真史家、写真集コレクター)、築地仁(写真家)会期:9月24日会場:VACANT住所:東京都渋谷区神宮前3-20-13 2F時間:19:00~20:30(開場18:30)料金:1,500円(1ドリンク付)定員:80名前売りチケット予約先()
2017年09月06日木曜日連載、アート・ブックショップ「NADiff(ナディッフ)」各店による今読むべき1冊。今週は、深瀬昌久の『Afterword』。東京・恵比寿の本店、ナディッフ アパート(東京都渋谷区恵比寿1-18-4NADiff A/P/A/R/T1階)によるご紹介です。■『Afterword』深瀬昌久写真を通して自己を見つめ続けた写真家・深瀬昌久。本書は、1978年に青年書館より出版された『サスケ!!いとしき猫よ』の巻末にあるあとがき「サスケ日誌」に使用されている写真によって構成されている。2012年に没した深瀬昌久にとって2015年にroshin booksより刊行された「Wonderful Days」に続いて2作目となる猫の写真集である。「サスケ」は、友人のカメラマン、高梨豊によって紹介されて飼うことになったちいさな猫。自宅でぴょんぴょん飛び跳ねる姿から連想された忍者、猿飛佐助にちなんで「サスケ」と名付けられた。しかしこの初代サスケは10日ほどで失踪。その後、家の周辺に貼った捜索願のポスターを見た女性が、似た猫を連れてくるも、それはやはり別の猫でがっかりしてしまう。ところが、猫に弱い深瀬はその猫を引き取ることに決める。こうして、「二代目サスケ」が誕生した。どこへ行くにも連れてまわり、溺愛していたサスケの愛らしい姿が写る写真を通して、深瀬のサスケに対する愛情の深さがしみるようにこちらへ伝わってくる。猫のフカフカした毛並みを感じさせるカバーにサスケ型のエンボスが効いている上品な装丁は、サスケを抱くように抱きしめたくなるあたたかな一冊。写真集のマスターピースとして自分のためにはもちろん、大切な人への贈り物にも最適。【書籍情報】『Afterword』写真:深瀬昌久デザイン:加藤勝也出版社:roshin books仕様:上製本/104ページ/モノクロ図版80点サイズ:210×231×18mm部数:初版900部言語:日本語、英語発売日:2016年11月15日価格:4,500円
2016年11月24日写真家の深瀬昌久による愛猫“サスケ”を題材とした新作写真集『Afterword』が、roshin booksより11月15日に出版される。愛猫家として知られ、生前に『ビバ!サスケ』『サスケ!!いとしき猫よ』『猫の麦わら帽子』といった3冊の猫を題材とする写真集を出版していた深瀬。今回は、そのうちの『サスケ!!いとしき猫よ』の巻末に収録されていた“サスケ日誌”に添えられていた作品で製作された写真集を発売する。深瀬が妻との離婚後に溺愛し、3冊もの写真集を出版することになったサスケは、アラーキーのチロちゃんと並ぶほど写真界では有名な題材。しかし、実はこのサスケは2代目で、最初に写真家の高梨豊から譲りうけた初代サスケは、当時住んでいた家の大家さんの意地悪のせいか深瀬の留守中にこつ然と消えてしまったという。そこで深瀬が捜索願いの張り紙を四方八方に張り巡らしたところ「これはサスケではないか」という連絡があり、深瀬はお礼のウイスキーを用意してサスケを待ち受けていた。しかし、深瀬の前に表れたのは初代より少し不細工な違う子猫だった。しかし、深瀬はそれをサスケと呼び、どこへ行くにも連れ回すようになったそうだ。今回は、そんなサスケを題材にした“サスケ日誌”のための写真原稿であるL伴サイズの小さな写真とそこに添えられていた深瀬の手書きのテキストをもとにした写真集を製作した。デザイナーには加藤勝也、プリンティングディレクターには熊倉桂三を起用。装丁は猫の毛並みを意識した手触りで、小口にはまるで猫の爪研ぎのごとくざくっとした裁断が施された。プレオーダー開始2週間時点で900部のうち700部は、既に世界中の書店と、個人への直売で売約済み。日本での取り扱いは、roshin booksオフィシャルサイト()をはじめ、shashasha、代官山蔦屋書店、青山ブックセンター、ブラインドブッ クス、ホホホ座など。
2016年10月30日各ブックストアがFASHION HEADLINE読者に向けて「今読むべき1冊」をコンシェルジュ。本日は洋書を専門に扱う原宿のブックショップ「シェルフ(Shelf)」(東京都渋谷区神宮前3-7-4)が選ぶ書籍をご紹介します。■『Hibi』深瀬昌久 「ヒビ」は深瀬昌久の最終作のひとつである。1990年から1992年にかけて日々の道すがら地面の亀裂を撮影したものをプリントに焼き、自ら一枚一枚を着色した。そして1992年2月、ニコンサロンにて開催された個展「私景’92」にて、このほかの作品シリーズ「私景」「ブクブク」「ベロベロ」と共に公開。その4ヶ月後、新宿ゴールデン街の階段から転落、脳に障害を受けたことから作家人生を閉じた。そして2012年に他界したが、遺したものは今もなお褪せることのない魅力を放つ。【書籍情報】『Hibi』著者:深瀬昌久出版社:MACK言語:英語ハードカバー/240ページ/160x260mm発刊:2016年価格:8,300円
2016年04月02日イギリスの出版社MACKの設立5周年を記念したアニバーサリーイベント「MACK CONCEPT TOKYO」が、4月5日から23日まで東京・六本木のイマ コンセプト ストア(IMA CONCEPT STORE)にて開催される。MACKは、ドイツの老舗出版社Steidlのアート・フォトブック部門のマネージングディレクターを約15年の間務め上げ、300タイトル以上の作品を出版したマイケル・マック(Michael Mack)が11年にイギリスで設立した出版社。トーマス・デマンドやアレック・ソスなどの著名作家からそれまで写真集を出版したことがなかった無名の作家に至るまでの様々なアーティストによる作品を発売し、現代の出版業界を牽引する出版社として世界中から多くの支持者を得ている。5周年を記念して開催される同イベントでは、スイスの高級家具メーカー・USM Modular Furnitureとのコラボレーションによるポップアップブックショップ「MACK × USM Modular Furniture」をオープン。MACKがこれまでに刊行してきた約80タイトルやスペシャルエディションの本を販売する。また、日本人3作家の写真集を世界に先駆けて同時リリース。作品のラインアップは、自己陶酔的なイメージをはらんだ都市の姿を映し出したホンマタカシによる『THE NARCISSISTIC CITY』(9,000円)、ヌードと結晶の写真作品を計22点収録した細倉真弓による『TRANSPARENCY IS THE NEW MYSTERY』(5,800円)、日々の道すがら地面の亀裂を撮影したものをプリントに焼き、自ら1枚1枚を着色した深瀬昌久による『HIBI』(8,300円)の3点。会場では3作家による展覧会「MACK EXHIBITION」も開催される予定だ。その他、MACKのディレクターを務めるマイケル・マックも登壇するアニバーサリーパーティーや、マイケル・マックと各作家らによるプレゼンテーション、ブックサイニングなどのイベントも開催。恵比寿のPOSTでは、これまでMACKから数多くの写真集を発行しているオランダ人写真家のベルティアン・ファン・マネン(Bertien van Manen)による展覧会「Beyond Maps and Atlases」も行われる予定だ。【イベント情報】「MACK CONCEPT TOKYO」会場:イマ コンセプト ストア住所:東京都港区六本木5-17-1 AXISビル3階会期:4月5日~23日時間:11:00~19:00 休館日:日・月曜日、祝祭日
2016年04月02日東京都・渋谷区のディーゼルアートギャラリーは、2012年に逝去した写真家・深瀬昌久の写真展「救いようのないエゴイスト」を開催する。会期は8月14日まで。入場料は無料。本展は、日本の写真界に影響を及ぼした写真家・深瀬昌久の7年ぶりとなる写真展で、代表作はもちろん、数十年の沈黙を続けてきた貴重な未発表作品までも公開する。1974年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催された写真展「New Japanese Photography」では、土門拳や東松照明、奈良原一高、森山大道らと並んで世界に紹介された深瀬昌久。彼の写真は、妻や家族、あるいはカラス、猫など、常に身近なモチーフにレンズを向けながらも、「自分とは何者か?」という問いを追い求めるものだったといい、元妻・洋子も1973年発刊のカメラ誌に寄稿した原稿の中で「彼の写した私は、まごうことない彼自身でしかなかった」と語ったという。本展タイトルは、この原稿の題名『救いようのないエゴイスト』から付けられたとのこと。会期中は、展示作品に加え、今回が半世紀ぶりの公開となるという1963年の作品『屠』をまとめた写真集(3,780円)などを部数限定で販売するほか、展示作品からピックアップしたポストカードも4種用意される(各216円)。なお、本展キュレーターは、深瀬が遺した写真作品の普及管理活動にも携わるアートプロデューサー、トモ・コスガが務める。
2015年06月02日日本の写真界に大きな影響を与えた写真家・深瀬昌久の個展「救いようのないエゴイスト」が、5月29日~8月14日まで東京都・渋谷の「ディーゼルアートギャラリー(DIESEL ART GALLERY)」で開催される。深瀬昌久は妻や家族、あるいはカラス、猫など、身近なモチーフを被写体とする写真作品を発表していた写真家。身近なものにレンズを向けながらも、常に“自分とは何か?”という問いを追い求めていた。74年にニューヨーク近代美術館で開催された日本の写真家を世界に初めて紹介した写真展「New Japanese Photography」で、近代日本写真の第一人者らが一堂に会するなか、妻の洋子の写真を展示したことで話題を呼んだ。85年にはオックスフォード近代美術館において、写真家の東松照明、細江英公、森山大道らとともに四人展「Black Sun: The Eyes of Four」を開催。その他、ヴィクトリア&アルバート美術館やカルティエ現代美術館などの世界の名だたる美術館での展覧会に参加してきた。92年に行きつけのバーの階段から転落。脳に重度の障害を負い、作家人生を閉ざすと、12年に他界した。今回の個展のタイトルとなった「救いようのないエゴイスト」は、元妻である洋子が、73年に発刊されたカメラ雑誌『カメラ毎日』の別冊に寄稿した原稿の題名。同誌の中で洋子が深瀬昌久について語った、「彼の写した私は、まごうことない彼自身でしかなかった」という言葉を拠り所に、数十年の沈黙を続けた深瀬昌久の代表作を始め、貴重な未発表作品などを展示する。【イベント情報】写真集「救いようのないエゴイスト」会場:ディーゼルアートギャラリー住所:東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti 地下1階会期:5月29日~8月14日まで時間:11:30~21:00まで休館日:不定休入場無料
2015年05月24日