谷尻さんの巧みな話術にどんどんと引き込まれていく、沢村さん。連載最後となる今回は、谷尻さんが家をつくるときに大事にしている“愛着”の考えや仕事にまつわる思考法、そして建築家に家を建ててもらうときに押さえておきたいちょっとしたコツまで、幅広いテーマで語ってもらいました。最後に、男性必見のお話も⁉答えを出さないで考えさせることが、大事沢村一樹さん(以下、沢村さん):話を聞いていると、建築家という仕事は引き出しがたくさんないとできませんね。谷尻誠さん(以下、谷尻さん):そうかもしれませんね。とにかく、お施主さんとコミュニケーションをとらないとできない仕事です。変な話、1億円で家を建てたい人は3億円の要望を言ってきますし、3,000万円で建てたい人は5,000万円の要望を言ってきます。要するに、自分の持っているお金より低いオーダーをするお施主さんはいないんですよ。必ず、自分の持っているお金とゴール地点が乖離(かいり)しているので、それをどう調整するかが必要なんです。沢村さん:その妥協点を探りつつ、新たなアイデアを提案していく姿勢はすごいですよね。でも、誰でもできるわけではないと思います。谷尻さんの会社の方々は、皆さん、それができるんですか?谷尻さん:それができるようになる会社にしたいんです(笑)。沢村さん:どうやったらできるようになります?谷尻さん:僕が答えを出さないようにすることですね。沢村さん:なるほど。谷尻さん:どの仕事でも同じだと思いますが、結局、誰か上の人に聞けば答えが用意されているわけです。その答えを取りに来る人は、考えない人ですね。逆にデキる人は「僕はこう思いますが、どうですか?」と聞きに来る。そうすれば、その人が考えたことを軸にアドバイスができますよね。「どうしたらいいですか?」という質問は考えていない人の質問なんですよ。沢村さん:そういった人がいる場合は、どうするんですか?谷尻さん:無視します(笑)。だって、僕が返答する時間がもったいないですよね。沢村さん:メールの場合は?谷尻さん:返事すらしないです。スルーします。返事する価値がないですよね。沢村さん:直接、来られたら?谷尻さん:「考えてから、来て」って言います。沢村さん:なるほど。谷尻さん:“考える会社”にしたいんですよ。やっぱり、人の答えを借りてばかりだと、自分の力にはならないですよね。沢村さん:少し話が変わりますが、最近、谷尻さんがやきもちを焼きたくなるような才能を持った建築家さんはいるんですか?谷尻さん:ときどき、スポットではいますよ。僕を負かすような人材が出てこないと、ダメだと思います。沢村さん:役者は結構いるんですよ、すごい才能の持ち主が。谷尻さん:そういう人材がいると、背筋が伸びますよね。僕も敬意を払った上で、建築の諸先輩方の足元をすくっていきたいです(笑)。(一同爆笑)沢村さんが監督を経験して変わったこと沢村さん:僕らの仕事は、作品に関わる者同士が“ライバル”というよりも、一つの作品をつくるチームメートなんですよ。谷尻さん:なるほど。「自分で0からつくりたい」っていう気持ちにはなりませんか?“演じる”一つ手前の……例えば、脚本をつくりたいとか。沢村さん:「ストーリーをつくるところから作品づくりに関わってみたい」という思いはあります。ただ、活字でストーリーをつくることに才能がないのがわかっているので、そのためのアイデア出しの方が好きですね。谷尻さん:文章力より、構成力があるのかもしれませんね。構成を翻訳してくれる人がいたらいいわけだし。沢村さん:演出などもやってみたいという気持ちもありますね。1回、監督業をやったことがあるんですが、楽しかったなぁ。全部、自分で決めるんですよ。衣装さんとか美術さんもプロなので、やりとりが本当楽しかったですね。こちらの言う要望を全部かなえてくれるので。谷尻さん:でも、それをやることで演じ方も変わりそうですね。頼む側の思いが読めるようになる役者になるわけだから。沢村さん:監督さんから言われたことに対して、ある種、反抗が入ったような「何でですか?」という聞き返しが3分の1くらいに減りましたね。要は、コミュニケーションが増えました。監督業をやる前と、後では。愛着があるものなら、不満や不便さも我慢できる沢村さん:谷尻さんが考える“ちょっと楽しい空間をつくる工夫”ってありますか?例えば、お施主さんが何を考えているかを把握した上で、「これをやれば、もっと良くなるかもしれませんよ」と提案するとか?谷尻さん:僕がお施主さんと話し合うときは、「この人は何に愛着があるのかな?」という部分を見いだすようにしています。結局、家は便利な方がいいに決まっているわけです。みんな、今よりも良くしたい願望があるわけじゃないですか?でも、人間って結局わがままな生き物なので、その便利さを手に入れると、また違う不便さを見つけるんです。携帯電話なんて、その最たる例で。最初「すごいな」というものが出てきたとしても、それより新しいものが出ると、それはもう“古いもの”になる。その過程をどんどん繰り返して、便利なものを追求し続けるんです。これは、あらゆるものに当てはまるんですよね。住まいも同じで、今より良い所に移っても、また不満を見つけるんです。でも、“愛着”って、その考えを超えるんですよね。沢村さん:へぇ~。谷尻さん:究極、使いにくいものでも、自分が気に入ったものであれば、長く使いますよね。沢村さん:「この手間が逆にいい!」とか言っちゃうかも。谷尻さん:古い車に乗っている車好きのおじさんなんて、「故障は自分の名誉だ」みたいに語るじゃないですか。そのダメ自慢をし始める理由って、やはり愛着だと思うんですよ。住まいも、その人の愛着がどこにあるのかを見いだせれば、仮に他の人が使いにくくても、その人からすれば“価値”になるんです。沢村さん:谷尻さんに依頼する人は、どんなところに愛着を持っているんですか?何か傾向とかあります?木目が好きとか。谷尻さん:雰囲気でいえば木や石だと思うんですけど、パーツでいったら、自分なりに使いこなせるものがあるとか自分のアイデアが入っているとか……ですかね。自分のアイデアが入れば、仮に使いにくくなったとしても、自分が出したアイデアだからそれを使いこなそうとしますよね。でも、僕が提案したプランで使いにくかったら、「何だよ、プロなのに」ってなるじゃないですか。プロの意見だけではなく、お施主さんと一緒に切磋琢磨してつくり出したものの方が、愛着は生まれます。僕一人だけの意見でものをつくりたくありません。そう考えると、やっぱり、もどかしい状況が一番いいんです。谷尻流、アイデアの出し方谷尻さん:アイデアについて言うと、アイデアって“閃き”ですよね。金八先生みたいなことを言いますけど、この漢字は“門”の中に“人”がいるんです。人が来て門を開くから、“閃く”。つまり、一人で考えるよりも誰かが来た方がアイデアは閃くわけです。沢村さん:おぉ!谷尻さん:思いがけないことを言ってくれるから、自分の中のアイデアが開くんです。自分一人で悩んでいても、閃きは生まれない。額に拳をあてて悩むポーズがありますけど、あれは“悩んでいるポーズ”が好きなだけです。沢村さん:そう言いますよね。あのポーズをして物事を考えている人は、あまりいない。谷尻さん:考え始めるまでのアイドリングが長いだけなんです。早くゴールするには、いろんな人と話して答えを見つける方が早い。自分以外の人に球を投げれば、思いがけない球が返ってくる。結果、化学反応が起きて、ゴールに早く近づける。沢村さん:だから、人と話したり遊んだりするんですね。谷尻さん:「いつ何時も、君のことを考えているよ」という言葉がありますけど、実際、そんなことないじゃないですか。ただ、「僕が君と違う行動をしていても、その行動の内容を君にいつも伝えたいと思ってる」というニュアンスは、その言葉に含まれていると思います。だから僕の場合、遊んでいても他のことをしていても、いつも建築に全ての矢印が向いているんです。例えば、ライブに行ってみんなが盛り上がっていたとすると、僕は「この曲はこんなテンポだから、みんな踊るんだな」っていう風に考えます。人が「楽しい」って思う瞬間には必ず論理があるから。遊びながら、ロジカルに考えてしまう。沢村さん:谷尻さん、図書館で勉強はしませんよね?谷尻さん:しないですね。沢村さん:図書館で勉強ばかりしてたら、そういった感覚は生まれなそうだもんなぁ。谷尻さん:だって、静かな空間に一人だと、違うことをしたくなっちゃいますよ。沢村さん:僕も台本を読もうとすると、2分くらいで寝ちゃう(笑)。谷尻さん:「読まなければいけない」はつらいじゃないですか。でも、「読みたい」ときに読むと、内容が入ってきますよね。「haveto~」か「wantto~」の違いはあるなぁと。建築家に理想の家をつくってもらうための、コツ沢村さん:もし、LIMIAユーザーの方々が建築家の方に仕事を依頼するとき、どうしたら上手に相談できるんでしょう?どう相談すれば理想の家に近づけるのか、教えていただきたいです。谷尻さん:ほとんどのお施主さんが、今住んでいる家をベースにアップデートしたがるんです。例えば、日当たりが悪かったら日当たりの良い家に住みたいとか。問題解決型の要望が多いんですが、そういう問題はいったん置いといて、「本当に自分が実現したい暮らし方は何なのか?」の答えを見つけることが大事だと思います。沢村さん:それだと、場合によっては、お施主さんも考えたことがないような発想を思いつかなきゃいけないかもしれませんね。谷尻さん:そうですね。僕らはそれを、“施主力”といっています。お施主さんのオーダーがいまいちでもそれなりの家になるんですが、お施主さんのオーダーに切れ味があったら、すごくいい家になるはずなので。沢村さん:さっきの話(前編)にもあった「わがままを全部言ってもらう」のがポイントですね。谷尻さん:僕らは、どちらかというと、カウンセリングみたいな感じなんです。その人の要望を引き出していくというか。ちなみに、わがままは言ってほしいんですが、度が過ぎると「それはわがままです」ってちゃんと言います(笑)。沢村さん:そうですよね~(笑)。谷尻さん:自分が好きなものは何なのか、またなぜそれが好きなのかがわかっていると、一番いいですね。だから、僕は必ずご自宅へ伺ってお話します。家に行けば、その人の愛着がわかるんですよ。好きな理由を何となく探しに行くことが大事ですね、僕の場合。沢村さん:つくっているものは家ですけど、結局、人なんですね。自分に置き換えてみると……人間観察してないなぁ(笑)。谷尻さん:仕事をするときも女性を誘うときも、クリエイティブじゃないと成功しませんよね。「どうやったら相手がうれしいか」の探求は、結果、自分の喜びにつながるじゃないですか。そのためには、想像力もいるし、クリエイティビティもいると思うんです。いろいろなことを考えて「これだ!」と決断ができる人と、特に考えず思い込みで突っ走る人では、絶対にゴールが違うと思うんですよ。沢村さん:やっぱり、コミュニケーションは一番大事ですね。いやぁ~、プレゼンがうまい!谷尻さん:余談ですけど、女性をご飯に誘うとき、「ご飯を食べに行こうよ」と言うと、「僕とご飯を食べる」ということが前面に出るので、相手が自分に興味を持っていないと成功しません。そうではなく、「なかなか取れないレストランの予約が取れて、行く相手がいないから、申し訳ないけど付き合ってくれないかな?」と言うと、オブジェクトが“僕”ではなく“レストランの料理”になるわけです。そうすると、「行ってあげてもいいかな」という気持ちになる可能性が高い。同じ目的でも、プレゼンテーションによって食べに行ける人と行けない人に分かれるんです。沢村さん:それを言うなら、そんなにモテない人でも誘い方のプレゼンテーションによっては……。谷尻さん:結局、お金持ちの人がモテるのはその人の魅力が理由なのではなく、「その人といれば、レストランに行ける機会が得られるから」なんです。別に容姿がいまいちでもモテている人がたくさんいるのは、そういった理由なんですよ(笑)。沢村さん:それに価値を感じる女性も、世の中にはたくさんいますもんね。谷尻さん:女性の誘い方もクリエイティビティなんですよ。沢村さん:深い(笑)!谷尻さん:何事も、どうしたら人が「wantto~」になるかを考えるのが重要なんです。沢村さん:何か、谷尻さんのお話はすごく説得力がありますね。(連載、おわり)【沢村一樹(さわむらいっき)】1967年7月10日生まれ、鹿児島県出身。今年4月からスタートした連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK総合)では、谷田部実役で出演中。10月スタートの連続ドラマ『ユニバーサル広告社~あなたの人生、売り込みます!~』(テレビ東京系)では、主演の杉山利史役が決定。また、2018年1月からは大河ドラマ『西郷どん』(NHK総合)に赤山靭負役での出演が決定している。【谷尻誠(たにじりまこと)】1974年、広島県生まれ。2000年、SUPPOSEDESIGNOFFICECo.,Ltdを設立。2014年より、吉田愛と共同主宰。JCDデザインアワード、グッドデザイン賞、INAXデザインコンテストなど多数の賞を受賞。現在、広島と東京を拠点とし、世界で活躍中。●Photographer:KenjiFujimaki●Stylist:MiyokoOnizuka(Ange)●HairandMake-up:INOMATA(&’smanagement)●Director:ShunsukeNakagawa(CROSSRING)●Casting:HiroSuzuki(Hybiscus)●Writer:YasuyukiUshijima(NOTECH)●Editor:AyaKanaizumi,TakashiOtsubo(LIMIA)【衣装「CalvinKleinPLATINUM」】トップス:¥29,000(CalvinKleinPLATINUM/税抜き)●Tel:03-5476-5811(株式会社オンワード樫山・お客様相談室)【特集・沢村一樹さん】私のインテリアとDIY——2匹の愛猫との暮らし【特集・沢村一樹さん】高級家具メーカーMinotti・金子直人さんに聞くインテリアの秘訣(前編)【特集・沢村一樹さん】高級家具メーカーMinotti・金子直人さんに聞くインテリアの秘訣(後編)【特集・沢村一樹さん】建築家・谷尻誠さんと語る、住まいと暮らしと仕事のこと(前編)
2017年09月08日今回は以前、ある番組で一緒に仕事をしたことがある、建築家・谷尻誠さんと沢村さんの対談をお届け。前編では、お二人の出会いのきっかけをはじめ、お互いの仕事観や住まいにまつわる素朴な疑問について、沢村さんが鋭く切り込みます!建築家・谷尻誠との出会いと、わが家のこだわり沢村一樹さん(以下、沢村さん):お久しぶりです。実は、「初めまして」ではないんですよね。ある番組で3人の建築家に僕の家を建ててもらう企画をやらせていただいたんですが、その建築家のお一人が谷尻さんでした。あのときは、何か少年のような人だなぁ~と思っていましたが、今日はちゃんとして見えます(笑)。谷尻誠さん(以下、谷尻さん):だいぶ、まともになりましたかね?年齢とともに(笑)。沢村さん:まともになったかどうかはわかりませんが(笑)。あのときは、いい加減な人だなぁ……と。谷尻さん:いい加減ではなく、“良い”加減ってことで(笑)。沢村さん:うまい!座布団一枚!(一同爆笑)沢村さん:その番組では、予算と土地の広さが決まっていて、家を設計してもらうという内容でした。谷尻さん:場所も決まっていたので、現地調査にも行きましたね。沢村さん:あの家、本当いい家だったなぁ……。谷尻さん:今は、どのように暮らしているのですか?沢村さん:今はマンションですね。谷尻さん:何だかんだ、マンションが楽ですよね。僕は広島と東京に家があって、広島は買っていて、東京は借りています。沢村さん:雑誌で(ご自宅を)拝見しましたが、東京の方は内装をかなりいじっていましたよね?谷尻さん:実は、東京の物件は内装を自由にしていい賃貸にしたんですよ。普通だと、古い建物は魅力がないからみんな借りたがらないので、ずっと空き部屋になっているんですが、逆にそういった物件を探して、内装をいじりました。これは、不動産屋さんに大家さんと交渉してもらいましたね。僕たちが改修すれば、僕たちのあとにも間違いなく借りたい人が来るので。沢村さん:ちなみに、東京の家は改修するにあたって、どれぐらいのコストがかかりましたか?谷尻さん:600万円くらいかな。沢村さん:それくらいお金をかけても、気に入った場所にいたいですよね。谷尻さん:やっぱりそうですね。変な所にいると、毎日がつまらなくなってしまいます。沢村さん:洗面所やお風呂といった水回りはきれいにしたいんですよ。谷尻さん:僕もそれは一緒ですね。他はラフでもいいですけど、水回りはきれいであってほしいですね。“建築家”という職業のイメージ。そして、その仕事について沢村さん:建築の仕事はゼロからしなくちゃいけないので、大変ですよね。僕ら役者は監督がいて台本があって、その通りに演じればできるわけで……。谷尻さん:そうですね。いわば、“台本を作る側”の仕事ですからね。沢村さん:実際、どういった仕事内容なんですか?そして、何でそんなに売れっ子なんですか(笑)?谷尻さんって、他の建築家とどこが違うんでしょう?谷尻さん:普通、建築家って“いざというとき”にお願いしますよね。一生に一度とか。そして、頼む側も慎重になりますけど、いざ頼むってなっても、誰に頼んだらいいかわからないし、ちょっと敷居も高そうじゃないですか。沢村さん:確かに。谷尻さん:何か、先生って感じもしますよね?先生にお願いする、という感じじゃないですか。他の建築家の方は、先生は先生でも“ドクター”という感じだけど、僕の場合は“町医者”に近い感じ。さっきも言いましたが、建築家は敷居が高くて、堅苦しいイメージが世の中に定着していますよね。だとしたら、もう少し社会性を持つべき職業であって、いざというときではなく、普段からちゃんと関わりが持てるような位置にいたいと思っているんです。だから、僕は町医者のような、普段から気軽に相談できるようなポジションが自分に合っていると思ってますね。沢村さん:家を建ててもらった人も、谷尻さんがどんどん有名になっていくのはうれしいと思います。こんなにメディアに登場して、有名になるなんて。谷尻さん:昔頼んだ人からすれば、“先物買い”みたいな感覚かもしれないですね。ちゃんと頼んだ人が活躍するのは、自分でいうのもなんですが、うれしいことだと思いますよ。沢村さん:ご自身が「他の人と違うな」というところはありますか?谷尻さん:仕切らないということですかね?このカフェ(※)は、オフィスとカフェに仕切りがないんです。僕は、現代は“同居の時代”だと盛んに言っています。例えば、ピアノを習う。英会話を習う。この2つを実現しようと思うと、2つの時間がいるわけですよね。でも、今は英語でピアノを教えてくれる時代だと思うんです。沢村さん:例え話が上手ですね~(笑)。※今回の撮影・対談場所でもある、谷尻さんが代表のSUPPOSEDESIGNOFFICECo.,Ltdの新東京事務所と飲食店が一緒のスペースになった「社食堂」。谷尻さん:昔は家の土間で商いをやっていて、子育てをしながらお店をやっているという風景が日常でしたけど、いつの間にか子育てと商いが独立してしまったんです。でも、一周回って働くことと生活することがすごく近くなっていますよね。沢村さん:ちなみに、谷尻さんに設計を依頼される方は、どういった人たちが多いんですか?谷尻さん:僕がつくったものを見て来られる方もいますし、雑誌のインタビューなどを読んで来られる方もいますね。沢村さん:谷尻さんの考え方に共感した方が来るわけですね。谷尻さん:そうですね。そういう方が多いですね。沢村さん:じゃあ、今までの暮らしと全然別の暮らしをイメージできる人じゃないとつらいですよね。谷尻さん:やっぱり住宅メーカーに頼む人は、今までの暮らしの延長上だと思うんですよ。例えば、3LDKがいいとか。そのセオリーを自分に合わせると、僕らに頼む場合はセオリー自体を一緒につくるやり方なので、ある意味、0(ゼロ)から1なのか、1から10なのかという違いでもあると思います。沢村さん:今までつくってきた家で、「失敗だったなぁ」という家はありますか?谷尻さん:大きな失敗はないんですけど、小さな失敗はたくさんありますね。でも、その失敗は正直にお施主さんに言いますよ。今は、今できる最大の仕事をするけれど、それは成長の過程でもあるので、あとからできものがいいに決まっていますよね。負荷がかかれば、人はそれを乗り越えるために成長する沢村さん:話が変わりますが、やっぱり照明は大事ですか?僕は、インテリアは照明が肝だと思っていますけど。谷尻さん:大事ですね。やっぱり照明は、その場所の雰囲気をつくります。明るいダイニングレストランって、何か雰囲気良くないですよね。人は暗いと声が小さくなりますし、その分、親密な会話ができるんです。明るい場所で親密な会話って、できないですよね。沢村さん:へぇ~、やっぱりそういったことも考えているんですね。よく人のことを観察しているんだなと思います。谷尻さん:すごく、“人”好きですね。沢村さん:そういった思いやりが作品に出ていると思いますね。谷尻さん:ありがとうございます。いくら他の人の家を設計するといっても、自分が住みたくなるような家じゃないとダメなんですよ。変な話、お施主さんのオーダーをかなえることが仕事ですけど、我慢して自分が住みたくない家を設計するのと、自分が住みたいと思う家を設計するのでは、後者の方が誠実な気がして。だから、自分のわがままさとお施主さんの要望が入り混じっていないと、自分の作品じゃない感じがするんです。沢村さん:そこが、谷尻さんの個性にもなっているんでしょうね。谷尻さん:ある種、そうかもしれませんね。言われたことだけをかなえるのであれば、僕に頼まなくてもいいわけじゃないですか。沢村さん:それは、役者も一緒ですね。監督に言われたことを聞いてセリフを言うだけなら、僕じゃなくてもいい。だから、「俺の言う通りに、この台本通りにやってくれ」という監督とは仕事はしない(笑)。谷尻さん:機械的なのは難しいですよね。もどかしい中、何とか出来上がることに意味があるわけで。沢村さん:確かに、“共作”にならないと意味がないですね。谷尻さん:お施主さんとの会話の何気ない一言がアイデアの種になって、「おかげでこれができました」ってなることも多々ありますよ。沢村さん:そういうときに完成したものって、何か楽しいですよね。谷尻さん:全部思い通りになると、つまらないですもんね。沢村さん:何か、妥協して受け入れている自分が好きなときもあるし。谷尻さん:結局、人は負荷がないと成長しないんですよね。お施主さんから「全部好きにやっていいよ」って言われたら、逆に困ります。負荷がないと、限界の力が出せない。わがままとか無理難題を言ってくれるから、負荷がかかって、それを超えるアイデアが生まれると思うんですよ。沢村さん:もし、お施主さんがわがままを言ってくれなかったら、どうするんですか?谷尻さん:負荷がないときは、絶対にないですね。みんな、500円を持ってチャーシュー麺を食べに来るんですよ。本人は500円で食べられると思っているけど、実際は800円なんです。でも、「500円で800円のチャーシュー麺を食べさせてくれ」という人と、「500円しかないけど、一緒に新しいチャーシュー麺を作りましょう」という人だと、前者は“ただのわがまま”なので、そういった人の仕事はなかなかできません。ただ、後者の場合は、もしかすると“チャーシュー”を“鶏”に変えれば、もっとおいしいものができるかもしれないですよね。そういった可能性を一緒に探っていくことが大事なんだと思います。(後編につづく)【沢村一樹(さわむらいっき)】1967年7月10日生まれ、鹿児島県出身。今年4月からスタートした連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK総合)では、谷田部実役で出演中。10月スタートの連続ドラマ『ユニバーサル広告社~あなたの人生、売り込みます!~』(テレビ東京系)では、主演の杉山利史役が決定。また、2018年1月からは大河ドラマ『西郷どん』(NHK総合)に赤山靭負役での出演が決定している。【谷尻誠(たにじりまこと)】1974年、広島県生まれ。2000年、SUPPOSEDESIGNOFFICECo.,Ltdを設立。2014年より、吉田愛と共同主宰。JCDデザインアワード、グッドデザイン賞、INAXデザインコンテストなど多数の賞を受賞。現在、広島と東京を拠点とし、世界で活躍中。●Photographer:KenjiFujimaki●Stylist:MiyokoOnizuka(Ange)●HairandMake-up:INOMATA(&’smanagement)●Director:ShunsukeNakagawa(CROSSRING)●Casting:HiroSuzuki(Hybiscus)●Writer:YasuyukiUshijima(NOTECH)●Editor:AyaKanaizumi,TakashiOtsubo(LIMIA)【衣装「CalvinKleinPLATINUM」】トップス:¥29,000(CalvinKleinPLATINUM/税抜き)●Tel:03-5476-5811(株式会社オンワード樫山・お客様相談室)【特集・沢村一樹さん】私のインテリアとDIY——2匹の愛猫との暮らし【特集・沢村一樹さん】高級家具メーカーMinotti・金子直人さんに聞くインテリアの秘訣(前編)【特集・沢村一樹さん】高級家具メーカーMinotti・金子直人さんに聞くインテリアの秘訣(後編)【特集・沢村一樹さん】建築家・谷尻誠さんと語る、住まいと暮らしと仕事のこと(後編)
2017年09月07日料理家さんたちのお仕事の裏側にある、ご自宅での暮らし方。料理家であると同時に、ひとりの妻であったり、ひとりの母であったり、ひとりの女性でもある彼女たち。この【私の家仕事】では、そんな料理家さんたちの毎日の暮らしの中にある「家仕事」について教えていただいています。今日は料理家・みないきぬこさんに教わる、みないさん家の「とりあえず」のおつまみレシピ。ご主人がお腹を空かせて帰ってきた時に、ひとまず晩酌を始めたい時に、ちゃちゃっと作ることができるこんなメニューが大活躍します。■むしゃむしゃ食べたい!チキンのアジアンサラダ身体が野菜を欲している時には、こんなおつまみをむしゃむしゃどうぞ!<材料>(2人分)・ささみ2本A(ナンプラー小さじ1こしょう少々)・香菜1束(30g)・細ねぎ20g・きゅうり1/2本・大葉2枚・かいわれ1/2パックB(ナンプラー大さじ1/2、ポン酢大さじ1/2サラダ油小さじ1、レモン汁小さじ1、砂糖小さじ1/2)【1】ささみは所々フォークで刺し、Aをもみ込んで5分ほど置きます。ラップをしたらレンジで1分加熱しましょう。粗熱が取れたら細くさきます。【2】香菜、細ねぎはざく切り、大葉は千切り、きゅうりは縦半分に切ってから斜め切りに。すべてを合わせて冷水に5分ほど放し、水気をきります。【3】ボウルに、1と2とBを加えて和えたら出来上がりです。みないさんのひとことポイント「パクチーが苦手な方は三つ葉や、レタスで代用を。夏にはトマトや、さっとゆでたゴーヤをプラスしてもおすすめです。旬の野菜をひとつ取り入れて、アレンジしてみるのもレパートリーが増えてお料理が楽しくなると思いますよ。」■お酒がすすむ豚バラザーサイ炒めしっかりした味付けのこちらはビールにぴったり。ぐいぐいお酒も進んじゃいそうなおつまみです。<材料>(2人分)・豚ばら肉120g・ザーサイ40g・キャベツ1/4個分(200g)・にんにくみじん切り小さじ1/2・ごま油小さじ1A(オイスターソース大さじ3/4、黒酢(または酢)小さじ1、こしょう少々)【1】豚肉は4cm幅に切る。キャベツは一口大に切る。【2】フライパンにごま油、にんにくを入れて中火にかけ、香りがたったら豚肉、ザーサイ、キャベツを順に加えて炒める。Aで調味する。【3】お好みで、粗びき黒こしょうをかけたら出来上がりです。みないさんのひとことポイント「ザーサイのしっかりとした味付けと豚肉のうまみが合わさって、お酒のおつまみにも、ご飯のお供にもよく合う一品です。にんにくを控えめにすれば、お弁当のおかずにもおすすめですよ。」みないさんに教えてもらった、「とりあえず」のおつまみレシピ。ちゃちゃっと作れるこんなメニューで、とりあえずの食卓にも大満足。今夜は大きな「ごちそうさま」の声が聞こえそうです。=写真・文:宮城=食のはなし 私の家仕事 レシピ <プロフィール>みないきぬこさん料理研究家の枝元なほみさんのアシスタントを務めた後に独立。雑誌やTVなどで活躍するほか、女子栄養大学で非常勤講師として調理実習の講義も行う。家ではひとりの女の子を育てるお母さん。著書に「はじめてのストウブ(池田書店)」「萌え断(河出書房新社)」「大豆で美味しい毎日レシピ(エイ出版社)」など。【料理家・みないきぬこさんの本はこちら】「はじめてのストウブ素材別シンプルおいしいレシピ 」 池田書店「萌え断」 河出書房新社
2017年03月17日料理家さんたちのお仕事の裏側にある、ご自宅での暮らし方。料理家であると同時に、ひとりの妻であったり、ひとりの母であったり、ひとりの女性でもある彼女たち。この【私の家仕事】では、そんな料理家さんたちの毎日の暮らしの中にある「家仕事」について教えていただいています。今日は、料理家・みないきぬこさんの家族のごはんを作る場所であり仕事場でもあるそのキッチンにお邪魔して、キッチン収納についてお話を伺いました。■ 職人さんに作ってもらったオーダーメイドの食器棚みないさんのキッチンにある大きな食器棚は、ふらり立ち寄ったイベントでたまたま出会った職人さんにオーダーメイドで作ってもらったもの。ブナの木で作られた食器棚は、年を重ねるごとに色が変わって味わいが増してきたといいます。大人数になることもある撮影では作った料理をその場でふるまうことも多く、同じうつわも6-8枚ほどは用意するとおっしゃるみないさん。そのたくさんのうつわやカトラリーのすべてを入れられる、収納力抜群な食器棚です。みないさん「もともとあったキッチンの作り付けの棚は高いところにあるから、たくさんのお皿を出したり仕舞ったりするのは大変だったんです。でもこれなら大丈夫。昔ながらのガラス張りの食器棚をイメージして作ってもらったから、中が見えてどこに何が入っているかもすぐ分かります。」<写真:左上から時計回りに>・左上:撮影に備えて、同じうつわを複数揃えるみないさん。その出し入れが楽になるよう設計されています。・右上:引き出しの中はカトラリーや豆皿を並べて。天板が一部ガラスになっているから、豆皿を見せて収納することが可能です。・右下/左下:たくさんのカトラリーたちもこの通り。この収納力はオーダーメイドならではのもの。■ ヴィンテージマンションの趣ある壁面収納は見せる収納使いにヴィンテージマンションの一室にご自宅兼スタジオを構えるみないさん。前の人の住まいをそのまま使用しているという部屋には、どこか趣が漂います。キッチンの壁1面にある壁面収納は「見せる収納」使いに。ストウブのお鍋をそのまま飾ったり、年度違いの手作り梅酒や梅ジュースなどを並べて目でも美味しく楽しみます。下から2段目にある、アルミのツボと竹製のかごは旅先のチェンマイで出会ったという蒸し器。かごにさらしを敷いて、もち米を炊くことも。ホールのスパイスをすって、オリジナルのスパイスを作るのが好きなみないさん。お気に入りのすり鉢は地元の輸入品店で出会ったもの。ガラス製のキャニスターやジャーもまとめて、見せる収納に。タイのチェンマイから持ち帰ってきたという蒸し器をふと覗けば、そこにはたくさんのレストランやお店などのショップカードが。6歳の年長さんになるというみないさんのお嬢さまの可愛らしいイタズラ収納になんだかほっこり。毎日の暮らしをより楽しく彩る家仕事。日常が詰まったキッチン収納からは、まるでそのご家庭の色とりどりの物語が溢れ出てくるかのようです。キッチンに詰められた物語に想いを馳せて、今夜はどんな料理を作りますか?=文・写真:宮城=暮らしのはなし 私の家仕事 <プロフィール>みないきぬこさん料理研究家の枝元なほみさんのアシスタントを務めた後に独立。雑誌やTVなどで活躍するほか、女子栄養大学で非常勤講師として調理実習の講義も行う。家ではひとりの女の子を育てるお母さん。著書に「はじめてのストウブ(池田書店)」「萌え断(河出書房新社)」「大豆で美味しい毎日レシピ(エイ出版社)」など。【料理家・みないきぬこさんの本はこちら】「はじめてのストウブ素材別シンプルおいしいレシピ 」 池田書店「萌え断」 河出書房新社
2017年02月28日彼が落ち込んでいる・・・。特にそれが仕事に関することだと、無闇に立ち入るわけにもいかないし、見ていてツライですよね。いち早く元気になってもらうためにも、「彼が仕事へのやる気を取り戻すひと言」をご紹介します。■1.「いつも味方でいるよ」と伝える仕事で成果があがらなかったり、やる気をなくしてなんとなく仕事をしている彼は、上司の評価がよくなかったり、同僚とうまくいってなかったりしているかもしれません。ただし、その原因を根掘り葉掘り聞くのはNG。聞いたところで仕事の内容はわかりませんから、アドバイスもできずに彼の傷をえぐってしまうだけです。ここはあえて何も聞かずに、「何があっても私はあなたの味方でいるよ」と伝えてみてください。彼はきっとあなたの言葉に勇気づけられて、仕事もはかどるはずですよ。■2.「食事に行こう!」と誘うなんだか最近彼に元気がないなと感じたら、「最近疲れてるみたいだね、仕事忙しそうだから美味しいものを食べに行こう!」などあなたから誘ってみるのもいいでしょう。美味しいものでお腹が満たされたら、彼が心も開いてくれる可能性があるかもしれません。また、手料理を振舞うのもよいですね。栄養バランスなどを気にしながら、彼にピッタリの元気が出る料理を食べてもらいましょう。食事は身体の貴重な栄養源。しっかりとって彼を奮い立たせてくださいね。■3.「頑張っているね」と認める周囲から見てあまり頑張っているように見えない彼でも、彼なりに一生懸命仕事に取り組んでいるのかもしれません。自分では頑張っていると思っているのにあまり認められないからこそ、なんだか気分も落ち込んでしまっているのかも。ですから、彼は誰かに自分が頑張っていることを認められることで、やる気スイッチがONになるのではないでしょうか?「いつも頑張っているね、お疲れ様」と笑顔で伝えてみましょう。あなたがそう感じていなくても、言葉にすることが大切なのです。■4.「信じているよ」と味方になる彼が仕事で大きな失敗をしてすごく落ち込んでいて、立ち直れない状態だったらあなたはどうしますか?「そんなにツライんだったら辞めちゃえば?」と彼をいち早く解放してあげたくもなるでしょう。でも、それより「大丈夫、あなたなら挽回ができる、信じているよ」と励ましてあげることが大切です。失敗をしない人はいません。そこからいかに立ち上がるかが仕事の肝なのです。あなたが味方になって一緒に立ち上がれば、彼に大きな安心を与えてあげることができます。包容力で彼を受け止めて、再スタートを切れるよう信じ続けましょう。■ポジティブな言葉を使おうあなたがポジティブな言葉を使うことで彼のやる気をアップ!いつまでも落ち込む彼を見ていたくはないですよね。いち早く彼を元気にして、ラブラブ生活を取り戻しましょう。(Mia/ライター)(ハウコレ編集部)
2016年12月26日今回のテーマは「兼業漫画家がはじめてコラムを書いた日」である。私は現在、このように漫画家の傍ら文章の仕事もさせてもらっているが、そもそもコラムを書き始めたきっかけはなんだったのか、という話だ。○コラムニスト・カレー沢薫の誕生簡単に言えば、私を漫画家デビューさせた週刊モーニング初代担当が、私のブログなどを見て「文章も面白いからコラムの連載をしてはどうか」と言い出したのが始まりである。それを真に受けて、連載用のコラムを書き貯め始めたのだが、それから1年ぐらい経っても連載は始まらなかった。その頃にはコラムを書くのは止めて、サバイバルナイフを研ぎ、色とりどりの重火器を集めることに終始していたのだが、それが担当に向かって火を噴く前に、その後任の担当の尽力により初コラム連載がスタートした。(今もモーニングはこの二人が担当である)そこから、他のところでも文章の仕事がもらえるようになった、というわけだ。つまり漫画家になれたのもライターになれたのも、全部モーニング担当らのおかげ、ということだ。ならば平素から「担当殺す」などとうそぶくのは恩知らずも良いところではないかと思われるかもしれないが、私は担当に対し感謝すべきことは非常に感謝しており、ポイントにすると5億点ほど感謝している。しかし殺意ポイントが2兆点あるので、トータルで「殺す」という結論になっているだけである。性格と顔が100点満点のイケメンでも、年収ゼロ・借金100万なら結婚相手としてはマイナス99万9千8百点になるのと同じである。何事もトータルが肝心なのだ。作家と担当の軋轢と言えば、担当に原稿を紛失された、無断使用された、原稿料を横領された、追及したら逆切れされたなど、全く笑えないものも散見される。それに比べれば私の担当がしたことなど全く大したことではなく、むしろ私の逆恨みであることも多いだろう。そして何より、私の担当はこちらが苦言を呈すれば言い訳せずに謝罪してくれるし、刺せば血が出ると思うので、それだけでも有能だ。また、今まで担当に横柄な態度を取られたこともない。不真面目な担当は一人もおらず、真面目すぎてふざけているより性質が悪い人ばかりだ。このように、私は漫画の才能には恵まれなかった分、担当には非常に恵まれている。担当全員を生贄に捧げるので、神は今すぐ私に漫画の才能を授けてほしい。○カレー沢氏のJK時代と「褒め仲間」コラムの仕事を始めたきっかけは、漫画の担当が私に文章の才能を見出したという幻覚症状のおかげだったわけだが、そもそも文章を書き始めたのはいつからかというと、古くは高校生の時に始めたホームページからだと思う。ホームページの内容に関してはもはや説明いらずの「乙女ゲーの二次創作サイト」だが、そこで日記も書いていたのだ。書いている内容は多分今と大差ないと思うが、そこはJKである。顔文字を使ったり、笑って欲しいところではフォントを赤字特大にしたり、語尾に(爆)をつけたりと、今読み返したらリアルに(爆)するものであることは間違いない。当時もその日記を「面白い」と言ってくれる人がいたため、漫画と並行して文章も書き続けてきたのだと思う。しかし、皆さんも「どう見てもカワイくない女同士がお互いを『カワイイカワイイ』と褒め合っている怪奇現象」を1度は見たことがあると思うが、アマチュア創作界隈にも同じ文化がある。自分の作品を読んでもらい、褒めてもらうために、まず相手の作品を読み褒めるのだ。何もしなくても褒めてもらえる上手い人ならともかく、そうでもない者にとってこの褒め仲間というのは大切なものであり、ギブアンドテイクとしては実に正しい。よって、日記を褒められたと言っても、「カレー沢殿!昨夜うpされた新作イラスト爆萌えでござったぞ(核爆)」「いやいやエリザベス閣下(仮名)の裏創作もドチャシコで拙者続きを全裸待機(><)」みたいな褒め合いの中で、「しかしカレー沢殿は日記も面白いでござるな、それがし噴飯ものの腹筋崩壊で候!」みたいなノリで言われた可能性が高く、端的に言えば「そんなに面白くないけどギブアンドテイクのために言った」か、むしろ肝心の二次創作に褒めるところがなかったので、苦し紛れにそこを褒めたと考える方が妥当である。しかし、現に私はそれを真に受けて、漫画だけでなく文章を書き続けていたわけである。そもそも絵を描き始めたのだって、小学二年生の時に絵画コンクールで特選を取り、すごく褒められたため、自分には絵の才能があると錯覚したためだ。教育に携わる方は、「褒めて伸びるタイプもいるが、褒めることによりドンドン道を踏み外す奴もいる」ということをご留意いただければ幸いである。ちなみに担当が面白いと言ってくれたブログだが、ニートだったため、アフィリエイトで稼ぐためにやっていたものである。原動力は常に金と承認欲求、これだけは一貫してブレていない。<作者プロフィール>カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。連載作品「やわらかい。課長起田総司」単行本は1~2巻まで発売中。10月15日にエッセイ「負ける技術」文庫版を発売した。「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2016年1月12日(火)掲載予定です。
2016年01月05日日曜の夜、翌日からの仕事を思って憂鬱な気分になる「サザエさん症候群」。てっきり私は、仕事が嫌いだからテンションが下がるのだと思っていましたが、どうやら仕事の好き嫌いに関係なく、有意義な休日を過ごせていないことがブルーマンデーの原因になるようです。もしかして休日に勉強してない?最近は、休日にキャリアやスキルアップのために勉強をしている人も少なくないそうです。資格取得など、はっきりした目標があるならともかく、だらだら勉強しているだけなら要注意!「飽きてきた」「勉強がおもしろくない」と感じながら勉強しているとブルーマンデーに陥る可能性があります。平日に精一杯働くために、休日はしっかり休むほうが得策かもしれません。心も身体もリフレッシュさせよう!休日とは、文字通り「休む日」です。平日に溜めた疲れやストレスをしっかりオフして、心も身体もリフレッシュさせることが理想でしょう。適度な運動や睡眠で身体の疲れをとり、好きなことをして心を満足させることが大切。休日に手持ち無沙汰になってしまう人でも、例えば「ずっと行きたかったカフェに行った!」「観たいと思っていたDVDが観れた!」など、ささやかな欲求をすこしずつ満たしていくとよいでしょう。ちょっとくらい寝坊してもOK!せっかくの休みを無駄にしたくなくて、休日は早起きしなきゃ!と焦る人もいるでしょう。平日の疲れを残したまま早朝から無理してアクティブに動き回ると、余計に疲労がたまります。休日はいつもよりちょっと遅く起きるほうが、充実した時間を過ごるかもしれませんよ。普段より一時間くらい遅く起きてみて、ゆっくり家事をしたり趣味に没頭したり時間を贅沢に使って心身ともにリラックスすると、有意義な休日になるのではないでしょうか。あえてルールを作らず、来週の週末は思いっきり自分だけの時間を楽しみましょう!※参考:『28歳からのリアル』人生戦略会議著(WAVE出版)
2015年07月13日日本最大級の小説投稿サイト「小説家になろう」とマイナビBOOKSがコラボした、小説コンテスト「お仕事小説コン」の応募が6月4日にスタートした。テーマは、就職や転職をサポートしているマイナビならではの「お仕事小説」。「お仕事小説」とは、ストーリーの中に何らかの「お仕事」ネタが出てくる、もしくは主人公が何らかの「職業」に就いている小説のことだ。主人公が仕事を通して成長する姿に元気づけられたり、あまり知られていない業界の知識を得ることができたりと人気が高く、近年では「お仕事小説」をもとにしたテレビドラマや映画も多数制作され、話題沸騰中のジャンルである。この「お仕事小説コン」では、書店員や銀行員などの一般的な職業はもちろん、勇者や魔王といった架空の職業も含み、ジャンルを問わず面白い作品を幅広く募集している。2015年8月27日まで応募を受け付け、グランプリ1作品、優秀賞5作品を選出。グランプリ作品には賞金10万円、優秀賞には賞金3万円を贈呈し、両賞ともにマイナビより電子書籍として発売されるので、ぜひチャレンジしてみてはどうだろうか。『小説家になろう×マイナビBOOKSお仕事小説コン』概要●主催株式会社マイナビ、株式会社ヒナプロジェクト●募集作品・ストーリーの中に何らかの「お仕事」が出てくる作品・主人公が何らかの「職業」についている作品※ジャンル、文字数は自由(書籍化を想定し、70,000文字以上推奨)●賞金・グランプリ(1作品) 賞金10万円+マイナビにて電子書籍化・優秀賞(5作品) 賞金3万円+マイナビにて電子書籍化●応募資格不問(プロ、アマ、年齢等一切不問)●応募方法「小説家になろう」に作品を投稿して、「お仕事小説コン」とキーワード設定●応募締切2015年8月27日●結果発表2015年11月予定●審査員株式会社マイナビ出版事業本部マイナビeBooks編集部
2015年06月08日私の“天職”って何!?「一生続けられる仕事」を見つける3つの方法「今の仕事にやりがいを感じられない」「もっと夢中になれる仕事がしたい」――。そう思っていても「じゃあ、本当にしたい仕事って何だろう」と改めて考えてみると、わからなかったりしますよね。そこで今回は、働く女子必見!「“自分にとっての天職”を見つける方法」をライフアップコーチのあべけいこ先生に聞いてみました。1.「人生の終わり」に立ったつもりで、「自分の本当の欲求」を探ってみるさまざまな開運術を駆使し、悩める人々にカウンセリングを行っているあべ先生。先生によると、「自分が何をやりたいのかわからない」と迷っている人は、実は多いのだそう。そんな人に有効なアドバイスとは?「自分のやりたいことがわからない人は、3つのポイントで考えてみるのが良いですね。まず、1つ目のポイントは『仕事』という狭い枠にとらわれず、自分がこの人生をどう生きたいのか、どう生きたら幸せと感じるかを知ることです。自分の心の奥底にある『本当の欲求』に耳を傾けてみましょう」(あべ先生・以下同)とはいえ、ただ考えるだけでわかるほど簡単なものではありません。「本当の欲求」を探るには、コツがあるそうです。「“今の自分”を基準に考えても、『本当の欲求』はなかなか見えてきません。いま抱えている責任(やるべきこと)や、周囲の環境・人などに影響を受けてしまうからです。では、どうすればいいのかというと、『自分は今80歳で、死に直面し、間もなく人生を終えようとしている』と想像してみること。死の間際に人生を振り返って、『もっとこう生きれば良かった』、あるいは『こういう人生だったから幸せ』と思うことが何かを考えてみましょう。すると、やりたい仕事が見えてくる人、パートナーや家族との時間が見えてくる人、趣味を満喫した喜びが見えてくる人…さまざまでしょう。どんな生き方であれ、それがあなたの魂が求める生き方です」確かに、「死」を意識すると、いつもとは違う世界が見えてきそうですね。でも、天職を探していたのに、仕事以外のものが大切だと気づいてしまったら、どうすればいいのでしょう?「仕事だけが人生ではありません。自分の魂が求めるものが仕事に重きを置かない生き方なら、専業主婦になったり、仕事はお金のためと割り切って趣味に精を出すのも人生の選択肢。仕事に追われた人生を送って、死の間際に後悔しても遅いでしょう?それを見極めるためにも、この“振り返り”は有効なんです」2.「お金をもらわなくてもやりたいこと」を考える自分にとって何が大切かが見えてきても、「仕事」や「家族」など、まだ漠然としているかもしれませんよね。そんなときは、2つ目のポイントを考えてみて。「2つ目のポイントは、『お金をもらわなくてもやりたいことは何か』を考えることです。いわゆる“仕事”でなくてもかまいません。『やりたいこと』が難しければ、『好きなこと』でもいいですよ。おしゃべりが好き、買い物が好き、本を読むのが好き、など、何でもOKです。お金をもらわなくても、誰かに止められてもやり続けたいこと、気づけばやっていること。それが“天職”につながるんです」それなら日々の生活を振り返ってみれば見えてきそうですね。でも、それでお金を稼ぐのは難しいのでは?「発想を転換すれば、たいていのことは仕事につながります。例えば、おしゃべりが好きなら、カウンセラーや相談員、コールセンターの仕事なども考えられますよね。買い物が好きなら、買い物代行サービスという仕事もあります。とにかく、無償でもやりたいこと、やらずにはいられないことは何かを考えてみて。そして、それを仕事にする方法を幅広く考えていくんです。私の場合は、人の世話を焼くのが好き、占いやスピリチュアルが好き、書くことやしゃべること、旅が大好き。一見、どれも仕事にはならなそうなことばかりですが、すべて今まさに私が仕事としてやっていることです」3.すべての制限を取り払ってイメージする自分が人生で大切にしたいことや、好きなことが見えてくると、ワクワクしますね。でも、どうしても「実現するのは難しそう」と感じてしまうときは、どうすればいいのでしょう。「3つ目のポイントとして、『あらゆる可能性を考える』ことが大切です。現実的な人ほど、お金のことや今の環境、家族のこと、あるいは年齢などを考えて、視野が狭くなってしまいがち。転職活動をするにしても、「私には独立なんて無理」と最初から決めつけて、「どの業種に行けばいいか」とか、「どの会社に行けばいいか」といった枠で考えてしまいます。でも、あなたの天職が一般企業の中にあるとは限らないし、日本でできることかもわかりません。いったんすべての制限を取り払い、何でも叶う世界にいると仮定して、幸せな自分の姿をイメージしてみましょう。すると、『NPO法人を立ち上げてボランティア活動をしている自分』や『アフリカにいる自分』『社長である夫を支えて、会社を切り盛りしている自分』など、今の自分からは想像もできない自分が見えてくるかもしれません。そこにヒントがあるはずです」仕事に悩んだとき、つい開いてしまう転職サイト。でも、そこにあるのは、ほとんどが「日本の」「知っている職種の」仕事なわけで…。その“枠”の中に自分の“天職”があるとは限りませんよね。時には立ち止まって、自分が本当は何をしたいのか、どんな人生を送りたいのかをじっくり考えてみることが大事なのかもしれません。でも、浮かんできたイメージがあまりにも今の自分とかけ離れていて、夢のように思えてしまったら…?「もちろん、いきなり今の仕事を辞めたりするのは現実的ではありません。“今すぐ”ではなく、“いずれ”でいいんです。まずは“本当の欲求”に意識を置くこと、その方向に一歩踏み出すことで、『気がつけば天職を手に入れている』という未来に近づけます。自分の生きる道を決めるのに、『こうすべき』はありません。『こうしたい』『こう生きたい』という欲求に素直になって、頭を柔らかくして考えてみてくださいね!」<取材・文:市川裕子、取材協力:ライフアップコーチ/恋愛カウンセラーあべけいこ>あべけいこプロフィール(有)スタープレス代表。女性誌や書籍、WEB等に幅広いジャンルで執筆を行う傍ら、運気を上げる方法を独自に研究し、さまざまな開運方法を習得。自身の経験とスピリチュアルメソッドを融合させた「ハッピーカウンセリング」を行うほか運気アップセミナー等を開催。著書に『悪運の払い方―あなたの「ついてない…」を必ず変える!!』(マーブルトロン)、『自分を好きになる48のメソッド』(鉄人社)がある。MSNドニッチ!コラム『あべけいこの人生開運相談室』が人気。セッション、セミナー等の情報はあべけいこ公式サイト()にて公開中。ブログ()も随時更新!
2014年06月30日年は明けたものの仕事は相変わらず続きます。このままでいいのかな、どうも仕事が上手くいかないのだけれど私が悪いのかな、漠然とした不安を抱えている人もいるかもしれません。そんな悩みが解消するかも。 ■心機一転! 2014年、あなたの背中を押してくれるお仕事漫画3選 働きたくない気分になることは誰にでもあるもの。でもそれがずっと続いて、だらだらと会社に行くのは自分にとってもツライですよね。そんなときは、働く意欲が刺激されるようなオススメの漫画を読んでみては? ■バリバリ仕事したい人必見、仕事運底上げ術【Dr. コパ 伝授】 バリバリ仕事を頑張りたい人はぜひ仕事運も味方につけて、もっと成果をあげましょう。実力に加えて仕事運があれば、もう怖いものなし。Dr.コパのアドバイスにぜひ耳を傾けて。 ■仕事とプライベートを両立させたい女性へ 【心屋仁之助 塾】 仕事はもちろん好きだけれど、そのためにプライベートをないがしろにするのはイヤ。どうすれば上手く両立できるのか悩んでいる人は多いかも。さてどんな風に行動すればいいのでしょうか。 ■緊張しないための魔法の言葉とは? 【心屋仁之助 塾】 プレゼンなど、人前で話す機会は仕事にはつきもの。緊張するために苦手意識を持っている人はいませんか。そんな人は緊張しないための魔法の言葉を心に留めておいて。自分の心がけひとつで何かが変わるかも。 ■心からやりたい仕事を見つけたい人に伝える、4つの考え方【心屋仁之助 塾】 仕事は嫌いではないけれど、もっと心からやりたい仕事に就きたいと思っている人もいるかも。そんな人はこのアドバイスをぜひ実践してみて。せっかくの人生、本当にやりたいことを見つけてそれに向かっていけたらいいですよね。 ■上司や会社がイヤでも、働く意欲がわいてくる3原則とは? 「秀真ことだま学」に学ぶ【4】 上司や会社がイヤで仕事にもう行きたくない。働いていればそんなこともありますね。そんなときはちょっと考え方を変えてみましょう。見方や行動の仕方を自分が変えれば、いろいろなことが違って見えてくるかも。仕事をするうえで悩みはつきないもの。それらを上手く解消したり、新しい道を探したりしながら、イキイキと働いていきたいですね。悩んでいるのはあなたひとりではないはず。頑張りましょう!
2014年03月02日なぜ女性は「仕事と私、どっちが大事なの?」と訊きたくなるのでしょうか? そしてなぜ、男性はそれをうとましく思うのでしょうか。男女が愛するものの違いを知ることで、理解できるかもしれません。 ■男性が愛するものは?男性は遠くのものに対して愛情を感じることが多いようです。大きな仕事を成功させたい、社会の役に立ちたい、社会を変えたい、など。そういった夢のために心血を注ぎ、家族や身近な人間を顧みないこともあるのが男性です。狩りに出てより大きな獲物をとるという、雄としての本能なのかもしれません。家族や身近な人間が大切ではない、というわけではないけれど、目は遠くを見つめているのです。「仕事と私、どっちが大事なの?」と訊かれて困ってしまう気持も分かるような気がしますね。■女性が愛するものは?反対に、女性は近くのものに対して愛情を感じることが多いようです。家族や友達、恋人やペットなど。自分に身近な人たちとコミュニケーションをとり、関係を大切にしていきたいと考えるのが多くの女性の特徴です。家を守り、子供の世話をし、夫の帰りを家で待つというのが、昔ながらの女性の生き方。その名残として、女性は男性よりも身近なものを大切にしたがるのかもしれません。遠くにある仕事よりも、身近にいる私を大切にしてほしい。そういった思いから「仕事と私、どっちが大事なの?」と訊いてしまうのですね。■お互いが理解し合うこと女性が自然に身近な人たちを大事に思うのと同じように、男性も自然に仕事や夢を大事にしています。女性としては彼の仕事や夢を理解して応援しつつ、邪魔をしないように、会えなくて寂しいときにもある程度は我慢しましょう。ただ、自分ばかりが我慢するのもよくありません。そんなときは「仕事と私、どっちが大事なの?」と相手を責めるではなく、「寂しい」「会いたい」と素直な気持ちを伝えるようにしましょうね。誠実な彼ならば少しでも時間を作ってくれるはずですよ。
2013年11月16日翻訳のお仕事というのは実際にはどんなものでしょうか。また、どうやって始めればいいものでしょうか。翻訳仕事のもろもろについて、翻訳家の金井哲夫さんにお話を伺いました。金井さんは漫画やイラストを描いても面白いという才人であります。――金井さんが翻訳の仕事を始めたのはいつからですか?金井さん僕が大学生だった時ですね。英文科の学生だったんだけど、当時コンピューター情報誌の『ログイン』という雑誌があって、そこから英語の記事を訳してくださいって頼まれたのがそもそもの始まり。英語の雑誌のコラム記事やニュース記事を訳していました。そのうち編集部に入らないかって話になって、編集者としてログイン編集部に入ったのね。編集部では英米の情報担当でした。――金井さんの記事は面白かったですねえ。金井さんありがとうございます(笑)。でも、このまま編集者の仕事をやってるのはとても続かないってことで編集部を辞めてね。体力的にきつかった、編集者の仕事は。それでフリーになったんですよ。海外からのゲームのマニュアルは随分翻訳しましたよ。――ゲームを主にやってらしたんですね。金井さん『ウルティマ』シリーズは2からはずっと僕がやったし、立ち上げのころの『ウルティマオンライン』、『ウォークラフト3』は僕が翻訳しましたよ。当時はゲームの黎明(れいめい)期でわかる人がほとんどいなかったからゲームの翻訳は本当にたくさんやりました。大分経ってからだけど、富士通さんがFMタウンズというパソコンを出した時には、海外から移植されたゲームが大挙してリリースされてね。例えばFMタウンズ版の『SimCity』のマニュアルは僕が翻訳しましたよ。先に出ていたPC-98版のSimCityのマニュアルがひどくてねえ。ひどい訳だった。――ほかにはどんなゲームの翻訳をされましたか?金井さん当時は海外からの移植ゲームが花盛りの時代だったんで、メーカーでいうと、EIDOSさん、ローカスさん、ビクター音楽産業さん、ポニーキャニオンさん、EAさん、カプコンさん、随分使っていただきましたね。『トゥームレイダー』は僕が翻訳しましたよ。EAのSimシリーズでもいろいろやらせていただきました。――今もゲームの仕事が多いんですか?金井さん今はさっぱり(笑)。昔は攻略本を書きながらマニュアルの翻訳したりなんてこともやったけどね。――金井さんは随分特殊な例かもしれませんが、翻訳の仕事をしたい人ってどうやって仕事をとればいいんでしょうか。金井さんそうですね、翻訳会社っていうのがあって、そこに所属して仕事をしてる人もたくさんいますよね。――翻訳会社というのはどんなものですか?金井さん僕も一回だけ仕事したことあるんだけど、まずテストがあってそれに合格すると、そこから仕事がもらえるようになるんですよ。英語ができる主婦の人とかが副業でやってたりとか、アルバイト感覚で仕事できるんですね。――翻訳会社っていうのはたくさんあるものですか?金井さん無数にありますね。でもギャラが安いんですよ。英語の翻訳の仕事って通常は1語いくらっていう取り決めでやります。普通は1語10円とかなんだけど、僕が経験した翻訳会社では1語8円とか、ひどいところになると1語3円なんてのもあります。しかも機械的に「これをいついつまでにやってね」みたいに仕事が来るので、あまりクリエイティブにやろうっていう感じにはなりにくいんだよね。――金井さんは、その翻訳会社の仕事は結構やったのですか?金井さん安いし、ノれないんでスグ辞めちゃった(笑)。――小説とかはおやりにならないんですか?金井さん昔、あるミステリーをたくさん出してる出版社さんに聞いたことあるんだけど、これもギャラがあんまり良くないのよね(笑)。通常翻訳印税ってことでギャラが支払われるんだけど、その場合は○%×部数っていうギャラでしょ。これがあまり良くないの。ハリー・ポッターみたいなのになればまた別だけど。――そういった小説などの翻訳の仕事をしたい人ってどうすればいいんでしょうか。金井さんやっぱり誰かのお弟子さんから始めるとか、編集部にコネ作るとか、そういう努力が必要でしょうね。ある意味特殊な業界なので。――金井さんが今メインに手掛けている仕事はどんなものなんでしょうか?金井さん僕は、海外ゲームとかの翻訳をずっとやってきたので、その流れでアプリケーションのマニュアルとか多いですね。例えば3Dソフトで『modo』っていうのがあるんだけど、これは僕も参加しています。*……『modo』は非常に高機能な3D CGソフト。多くのCGスタジオで採用されている。――マニュアルを作るのは結構面倒な作業だと思うんですが……。金井さんもちろん英語版のマニュアルを元に訳すんだけど、アメリカのプログラマーやデザイナーと「ここはこう説明した方がいいよね」なんて言いながら作業しているので、機械的に翻訳してるんじゃなくて楽しいんですよ。クリエイティブな翻訳なんで、とてもいい仕事をさせてもらっていると思います。――翻訳の作業で心掛けている点を教えてください。金井さんちゃんとした日本語にすることですね。英語力よりもむしろ日本語力が必要とされる仕事なんですよ。仕上がったものが自然な日本語になっていること、これはとても重要なことです。日本語で文章が書けない人が訳すとおかしなものになっちゃうので。――詩人の谷川俊太郎さんが訳した『ピーナッツ』(スヌーピーの漫画)なんかはとても面白いですもんね。金井さんそうそう。ああいう語彙(ごい)が豊富で、表現もうまくて、日本語に長じた人が翻訳するととてもいいものに上がるよね。英語がわかるだけだといい翻訳にはならないんじゃないかなあ。僕はそう思っていますね。(高橋モータース@dcp)金井哲夫さんのサイト『(有)スカイロケット』
2012年10月20日『締め切りに間に合わないわー!きゃー!!』……私の職業、ライターでもこういった修羅場はよくありますが、もっと有名なのは漫画家さんの修羅場。それは想像を絶するものだとか……?果たしてその現場とは!?■先生が消えた(アシスタント・Hさん)「アシスタントが仮眠から起きたら、先生の姿が消えていた。まさかの脱走!?と思っていたら、押し入れの中から、犬の鳴き声が。開けてみたら先生が犬を抱いて眠っていた」聞いてみたら、押し入れの中に入った記憶も寝た覚えもないとのこと。どうして押し入れで寝ているのか聞いたら「寝ているのが見つかったら怒られると思ったんだろうな」と先生。お気持ちお察しします……。■悪夢(漫画家・Sさん)「締め切り直前に寝ると『やってもやっても終わらない原稿をずっとやってる夢』を見ます。実際には原稿が終わってもまだその夢を見ますが。修羅場中は強迫観念が強くなるからでしょうね。終わっても終わった気がしません」原稿が終わって、「これで解放された!」と思って眠るのに、夢の中でエンドレスな原稿作成なんて、悪夢以外のなんでもありませんね……。休んだ気がしなさそう。■幻覚?(イラストレーター/漫画家・Hさん)「幻覚を見ます。実際の風景の影部分が漫画の原稿でよく使うトーンのドット模様で見えることがあります。トーンを見すぎて瞼にドットが焼きついて残ってるのかもしれないんですが」風景の影が全部ドットって、気が変になりそうですね。■恐怖で心がマヒ(アシスタント・Aさん)「とにかく厳しい先生で、仕事中ずっと怒られっぱなし。勉強にはなるんだけれど、迫りくる締め切りと、先生からの叱咤にずーっとビクビクしている。締め切り明けは感情が無の状態に。もうあの現場は行きたくない……とも思うんだけど、締め切りを乗り越えるたびに上達しているのが分かるからやめられない」その逃げようとしない心意気がいつか必ず大成功を呼びこんでくれる?■聞き間違いに気付かない(アシスタント・Sさん)「修羅場中って睡眠不足と締め切りという縛りで、体力的にも、精神的にもギリギリのところにいるので聞き間違いが増えます。そして間違いに気付きません」普段なら絶対にしないような聞き間違いも多いのだとか……。今回お話を伺った皆さんがつらいエピソードを紹介してくださいましたが、なぜかこの仕事を辞めたくはないご様子。聞くと、修羅場はつらく苦しいものだけれど、それを乗り越えると必ず成長しているのだとか。「これまでは1週間かかっていた原稿制作が3日で描けるようになった」、「風景画の腕が断然あがった」どんな分野であれ、成長のためには修羅場は越えてみるべきかも?(ふくだりょうこ/プレスラボ)【関連リンク】アナタが体験した“修羅場”を教えてください!!声優さんとキャラクターの声がマッチしてると思うアニメは?【悩み】忙しい職場だけど、どうしても早く帰りたい
2010年05月20日