「老後に2,000万円不足」問題が連日取りざたされ、金融庁には「最大3,000万円必要」という試算まであったと物議をかもしている。しかし、経済ジャーナリストの荻原博子さんは、「私は工夫次第で、年金だけでも暮らせると思います」と語る。荻原さんが解説してくれた――。■高齢夫婦と30代世帯の支出はよく似ている。家計はまだまだ工夫の余地あり2,000万円の根拠となった’17年の家計調査には、おもしろいデータがあります。世帯主年代別の家計収支を見ると、30代世帯(2人以上の勤労世帯)と、問題の65歳以上の夫と60歳以上の妻の高齢夫婦がよく似ているのです。まず、月々の生活費に当たる「消費支出」の中身を見ると、「食費」は30代世帯が約6.5万円で、高齢夫婦が約6.4万円。「光熱水費」は30代世帯が約1.8万円で、高齢夫婦は約1.9万円と、ほぼ同じです。次に、消費支出全体を見ても、30代世帯が約26万円で高齢夫婦が約23.5万円。約2.5万円違うものの、30代世帯には高齢夫婦にはない「教育費」が約1.3万円あります。これを除くと30代世帯が24.7万円で、高齢夫婦は23.5万円。その差は1.2万円ありますが、実は、世帯人数が大きく違います。30代世帯は平均3.71人家族で、高齢夫婦は2人。つまり30代世帯は2倍近い家族の生活を、ほぼ同じ支出でやりくりしているのです。とすると、高齢夫婦の家計はまだまだ工夫の余地があり、生活費は抑えられると思いませんか。あらゆる角度から家計を点検し消費支出を減らせば、年金+2,000万円も要らないでしょう。
2019年06月28日――老後までに2,000万円を貯める必要がある。波紋を呼んでいる金融庁の金融審議会の報告書だが、じつは老後には2,000万円以外にも多額のお金が必要だと書いてあることをご存じだろうか。まず2,000万円の根拠を説明しよう。金融庁の報告書によると、高齢の無職夫婦世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の1カ月の平均的な収支は以下の通り。実収入月 209,198円実支出月 263,718円――――――――――赤字額月 54,520円つまり、1カ月に約55,000円の赤字が発生することになるのだが、もちろんこれは貯蓄などの金融資産などから補填しなければならない。赤字の額は年間で66万円になるので、この生活が30年続けば1,980万円となる。ここから、「老後のためには2,000万円の金融資産が必要だ」と金融庁は試算する。だが、金融庁によると、じつは老後にかかるお金はこれだけではないという。この報告書と一緒に公開された資料には「ライフステージに応じて発生する費用等の例」も記載されている。これは生活費などとは別に、結婚や出産などライフステージに応じてかかるお金の平均額を、官民のさまざまな調査から引き出したものだ。これによると、老後にかかるのは以下の通り。リフォーム:約465万円健康 or 介護:0~1,000万円葬儀:約195.7万円「健康 or 介護:0~1,000万円」は、介護生活になった場合には、1,000万円のお金がかかるということを意味している。つまり、あなたが将来、要介護になった場合は、葬儀費用も含めると、約1,660万円のお金が生活費とは別にかかるということになる。生活費の赤字2,000万円を加えると3,660万円。じつは金融庁の報告書をよく読むと、2,000万円でもぜんぜん足りないのだ。
2019年06月11日年金と聞くと老後に貰えるお金程度と思っている人も少なくないと思いますが、障害状態になった場合や亡くなった場合にも年金支給されることはご存知でしょうか。出産前後に生命保険の加入を検討した人も多いと思いますが、生命保険だけでなく公的年金からも支給される額が少なくありません。 今回は、遺族年金と障害年金についてお伝えします。 遺族年金は年金加入者が亡くなったときに遺族に支給遺族年金は年金加入者が死亡したときに、亡くなった方と生計維持関係にある遺族に支給されます。加入しているが国民年金か厚生年金によって遺族の要件や支給額が異なります。亡くなった方が自営業・フリーランスの場合は遺族基礎年金が、会社員・公務員・団体職員等の場合は遺族基礎年金と遺族厚生年金が遺族に支給されます。 主な概要は次のとおりです。あくまでも簡単に説明するための概要ですので、詳細は厚生労働省のホームページや最寄りの年金事務所でご確認ください。なお、下記の年齢や金額等は2019年4月時点の制度を基準としております。 【遺族基礎年金】国民年金の加入者等が亡くなった時に、生計維持されていた子どものいる配偶者または子どもに遺族基礎年金が支給されます。遺族年金の支給される対象の子どもは、18歳になって最初の3月31日まで(一般的な高校卒業まで)となり、大学・専門学校の通学時期には支給されない点は覚えておきましょう。 遺族基礎年金の支給額は年間781,000円に対象となる子どもの人数の加算(第1子・第2子は各224,500円、第3子以降は各74,800円)がされます。例えば、お子さんが2人の場合の遺族基礎年金の支給年額は、781,000円+224,500円+224,500円=1,230,000円となります。 【遺族厚生年金】厚生年金保険の加入者等が亡くなった時に、生計維持されていた配偶者・子どもに遺族厚生年金が支給されます。配偶者・子どものいない場合は父母や孫、祖父母が受け取る場合もあります。会社員・公務員・団体職員等の場合は遺族基礎年金も合わせて支給されます。 遺族厚生年金の支給額は、老齢厚生年金の報酬比例部分(目安の金額はねんきん定期便にある厚生年金保険の加入実績に応じた年金額)の4分の3相当額となります。しかし、多くの場合は300月(25年)未満であるため、最低でも25年分としてプラスの修正がされます。 例えば、35歳(勤続年数12年)・報酬比例部分が30万円のご主人が亡くなった場合は、30万円×4分の3=22.5万円でなく、勤続25年と修正された62.5万円×4分の3=46.8万円が遺族厚生年金の支給額となります。 上記以外にも寡婦年金や、中高齢寡婦加算、経過的寡婦加算などの対象となる子どものいない場合や年齢が高齢になった場合の制度もあります。 障害年金は年金加入者が所定の障害状態になった時に支給障害年金は病気やケガを原因として障害となった際に支給される年金です。障害となった病気やケガの初診日に加入していた年金制度から支給され、自営業者等は障害基礎年金、会社員等は障害厚生年金となります。 障害の程度に応じて支給額は変わります。障害基礎年金の支給額は、1級で975,125円+子の加算、2級で780,100円+子の加算となります。子の加算は遺族基礎年金と同じく18歳の3月までが対象で、第1子・第2子は各224,500円、第3子以降は各74,800円です。 遺族厚生年金の支給額はは1級で(報酬比例部分×1.25)+配偶者加給年金額、2級で報酬比例部分+配偶者加給年金額、3級で報酬比例部分(最低保証額は585,100円)となります。報酬比例部分は、遺族基礎年金と同様に期間が短い場合も25年分としてプラスの修正がなされます。 ねんきん定期便は確認をしよう遺族年金にしても障害年金にしても、公的年金に加入している限り対象となった場合は利用できる制度ですが、保険料未納の場合には需給対象とならない可能性もあります。そのためにも現在加入している年金制度を確認して、万一の場合にどの程度の遺族年金や障害年金が支給されるか確認をすると良いでしょう。 特に生命保険の加入や見直しを考えている人は、まず公的年金から支給される額を確認したうえで、不足している金額を生命保険で補うと、無駄な保険料を払うことを防げます。生命保険の見直しを考えていない人もねんきん定期便が届いたときには確認することをおすすめします。 監修者・著者:ファイナンシャルプランナー 大野高志1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®(日本FP協会認定)。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。予備校チューター、地方公務員、金融機関勤務を経て2011年に独立。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等 多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。
2019年06月01日こんにちは、婚活FP山本です。最近では結婚しない、できない女性も増える一方で、やけに「老後に必要な貯金額」を語る記事も増えたように思えます。しかもその必要な貯金額は、ほとんどが「少々の努力ではどうにもならない金額」です。本当にそんな貯金額を皆が貯めているのか気になる反面、どうやって備えればいいかも気になるところかと。そこで今回は、独身女性の老後に必要な貯金額と、その備え方をお伝えします。あなたの人生にお役立て下さいませ。60代の独身者、貯金の中央値は500万円まずは年代別に独身世帯の実際の貯金額を、統計を通してお伝えします。知るぽるとの平成30年「家計の金融行動に関する世論調査(単身世帯)」によると、各年代の貯金額の中央値は以下の通りです。(中央値とは、対象を順に並べた時、中央にくる人の数値)20代:5万円30代:40万円40代:25万円50代:100万円60代:500万円見た通り、全ての年代で独身世帯は「ほぼ貯金できていない」のが普通といえます。かろうじて60代ともなると多少は備えていますが、人生100年時代、まだ40年も続く人生を考えると、極めて乏しい蓄えといえるでしょう。現在のあなたの貯金額はいくらですか?少なくとも皆、貯金できていない訳ですから、変に怖がる必要はありません。まず、この現実をしっかり理解して安心に繋げましょう。平均貯金額=安心できる額ではない!さすがに「先ほどの貯金額を超えているから大丈夫」と考えられる人は少ないでしょう。本当にその通りであり、皆が貯金できていないから貯金できなくても大丈夫……でもありません。無暗に怖がる必要はないものの、楽観的に捉えて過度に安心するのは危険です。簡単にいえば、皆が危険な水準にいるのが今の日本といえます。中には信じられない人もいるかもしれませんが、これが実情です。まずはこの現実をしっかり知っておきましょう。安心できる貯金額は「最低3000万円」次は、独身者に実際に必要な老後資金の目安についてです。これについては明確な基準がある訳ではないのですが、それでも「最低3000万円」というのが一つの目安になっています。定年後に年100万円取り崩すと考えると、これで30年分、90歳までギリギリですけどね。もう少し言えば、60歳時に3000万円必要なので、仮に今のあなたの貯金がゼロなら、年齢に合わせた「計画的な貯金」が必要になります。具体的に言えば、年齢が50歳なら年300万円、40歳なら年150万円、30歳なら年100万円ずつ……ですね。準備を始める時期が遅くなるほどに準備が困難になります。中にはすでに「そんな貯金できない」と感じる年齢の方もいるでしょうが、無理でも誰も助けてくれませんから、できるだけ頑張りましょう。いくら必要かを意識した準備を心がけよう中には「いくらの貯金が必要か」を考えず、やれるだけやればいいと考えて、実際には極めて少ない金額しか貯金していない統計のような人も沢山います。結婚していないのなら、それで困るのは本人だけなので良いとも言えますが……できれば意識の改善をお勧めしたいところですね。そして今、必要なだけ貯金できないのなら、年収そのものを上げる努力を含め、必要なだけ貯金する方法を考えて実行していきましょう。そんな自立心が、独身者には何より重要です。貯金以外の金融資産を持つことが大事今度は、独身女性が取るべき老後対策の方法をお伝えします。これには複数の方法があるのですが、まずできれば「資産運用」をお勧めしたいところです。まだまだ抵抗のある日本人も多いのですが、貯金だけで先ほどの3000万円を蓄えるのは、かなり困難ですからね。最近では「貯蓄から投資へ」の号令の元、国が率先して「(つみたて)NISA」や「iDeCo」など、節税も踏まえた様々な運用手法が登場しています。運用ですから、どうしてもリスクは避けられないのですが、「投資をしないのも一つのリスク」と考え、試してみませんか?どうしても資産運用を避けたいなら、貯金だけで3000万円貯められるなら問題ありません。しかしそれが無理なら、まずはこの機会に勉強から始めていくことをお勧めします。働くだけでは厳しい。勉強と経験を!詳しくは後述しますが、結局のところ現代は定年後も働かなければなりません。しかし定年後の労働は給料が安く、食べるだけで精いっぱいです。しかも十分な高齢ですから、いつ働けなくなってもおかしくありませんし、実質的に「死ぬまで働く」のも不可能といえます。しかし資産運用なら、アタマさえしっかりしていれば何歳になっても稼げ、何もしなくても収入を得ることも可能です。とはいえ簡単に稼げるものでもないため、ぜひ老後までの長い時間を勉強や経験に充て、老後対策の一つとしていきましょう。[adsense_middle]準備不足ならバイトか非正規労働という老後にさらに、もう一つの独身女性が取るべき老後対策の方法です。結論からお伝えすれば、「定年後の仕事」を備えておきましょう。これは独身女性に限りませんが、独身なら支えとなってくれる男性がいないので尚更です。ちなみに、あなたの仕事は定年後も続けられますか?残念ながら本人の思惑とは裏腹に、ほとんどの仕事は定年を迎えると戦力外と見なされ、実質的に働けなくなります。仮に働けてもアルバイト、または非正規労働となり、年収は半減するのが普通です。実際、65歳以降の女性の年収は約200万円というのが統計結果になります。年収200万円では食べるだけで貯金はできず、職か健康を失えば即、家計破たんするでしょう。先ほどの資産運用も含め、備えられるだけ老後までに備えておくことをお勧めします。「60代で普通に働く」のは想像以上に困難「定年後の仕事」に備えるのは想像以上に困難です。少々の経験や資格があっても、そもそも企業は人を安く雇いたい心理がありますし、起業しても簡単には顧客は得られませんからね。十分な経験や資格があっても、それが直接的な収入や仕事には結びつきませんから尚更です。明確な「こうすればいい」という方法が存在しないからこそ、一人一人の自主性や自立心が求められる問題といえます。誰も助けてくれないからこそ、健康とともに「生きる方法」も養っておきましょう。若い頃の10年と中年の10年は違う!最後に、老後対策を考える時の大切な注意点をお伝えします。そもそも一般論として、人は追いつめられないと動かない生き物です。多くの小学生が夏休みの宿題を終盤まで溜め込むように、多くの人は現役時代の終盤、50歳を超える頃にならないと備えを始めません。しかし、若い頃の10年と中年の10年は違います。定年が迫る10年なら尚更です。長年、勉強から遠ざかっていた人が資格を取るのは困難ですし、チャレンジから遠ざかっていた人が新しい事に挑戦するのも大変な事といえます。備えられる時間も短いので尚更でしょう。つまり、老後対策は老後が近づいてからでは遅い、という事です。結婚を真剣に諦めたのなら、代わりに老後対策を始めるのに十分な年齢といえます。今すぐ、備えを始めましょう。老後対策はがんばった分だけ確実に報われる!夏休み終盤、現役時代の終盤まで物事を溜め込む人というのは「まだ沢山の時間があるから大丈夫」と考えがちです。残念ながら、何年あっても何もしなければ時間だけが失われる事になります。気が付いたら宿題が終わっていた、十分な貯金ができていた……は中々ありません。ただ、がんばっても結果が出るか分からない婚活に比べ、老後対策はがんばった分だけ確実に報われます。望んで独身なら将来的に「結婚しなくて良かった」と思うために、改めて早期に自分の未来を考えて動いていきましょう。独身女性の老後貯金に関するまとめどう人生を生きるかは個々人の自由です。しかし、どんなに辛く苦しい状況に陥っても逃げられない、逃げ切れないのもまた人生といえます。しかも独身なら、親以外は誰も助けてくれません。だからこそ自分の力で、老後の仕事や貯金に備えられるよう、改めて励んでいきましょう。
2019年05月29日「知られていないだけで、老後の生活で、いざというときに役立つ公的制度はいくつもあります。とくに、介護費や医療費の自己負担額を軽減できる制度は知っておいたほうがいいでしょうね」こう語るのは生活総合情報サイト「All About」ガイドの介護アドバイザー・横井孝治さん。“人生100年時代”といわれるなか、自分の老後に不安を抱えている現役世代も多いだろう。特に、長い老後に備えるためにいったいいくら貯めればいいのか、頭を悩ませている人も多いのでは?しかし、そんな不安を和らげる公的制度は、じつは多数存在する。これらを賢く使いこなせば、老後の支出を減らし、おトクな生活ができると、横井さんは解説する。「老後の介護費、医療費の自己負担額を軽減するステップは3段階に分けられます。まず、介護保険と医療保険を利用すると、利用者の所得に応じて、自己負担は1~3割で済む。これを建物にたとえると1階部分にあたります。ところが、多くの医療、介護サービスを受けると、それでも負担額はかなり大きくなります」(横井さん・以下同)そこで利用できるのが、一定の金額以上の自己負担額が払い戻される制度。「医療保険には『高額療養費』、介護保険には『高額介護(予防)サービス費』という制度があります。どちらも所得に応じて自己負担の上限額を定める制度で、もし上限額を超えてしまった場合、自治体に申請をすれば、超過した分が後で払い戻されるのです。これが建物でいう2階部分なのです」さらに、これらの支給を受けても、まだ自己負担が苦しいという場合、最後は3階部分にあたる「高額介護合算療養費」という制度が存在する。「これは、同一世帯で医療保険と介護保険の自己負担額を合算して計算し、限度額を超えた場合は、超えた分が支給されるもの。かなり助かる制度です」たとえば、住民税課税世帯の75歳以上の平均的な年金収入のある夫婦なら、夫が高額介護サービス費(自己負担の限度額が年間44万6,400円)、妻が高額療養費(入院を含む自己負担の限度額が、年間57万2,400円)をフルで利用した場合、1年間で合計101万8,800円の自己負担額に。しかし、高額介護合算療養費制度を利用すると、限度額56万円を超えた、45万8,800円が支給されるので、ほぼ半額の負担で済む。ただし、夫婦の年齢が離れていて、妻が国民健康保険で、夫が後期高齢者医療保険といった場合、単純に合算できず、複雑な計算が必要になるので注意が必要だ。ほかにも、介護状態になったときに利用を検討したい制度がある。「割と見逃されがちなのが、『障害者控除対象者認定』です。これは確定申告する際に、この認定を受けているかいないかで、税金の控除額が大きく変わってきます」ここで言う障害者とは、障害者手帳がなくても、“障害者に準じており、障害者控除が必要な人”のこと。ただし、自治体によって判断基準が異なり、要介護1から認定されるところもあれば、要介護4からというところもある。「家族の誰かが障害者控除の認定を受けたら、生計を一にするなかで最も多く稼いでいる人が、確定申告の際に控除を受けて節税できます。とてもお得な制度です」要介護に該当するような人ではなくても、65歳以上で生活機能の低下を感じた場合、ぜひ利用すべきだと、横井さんがすすめるのが「総合事業サービス」だ。「『要介護1、2』の人、または要介護認定を受けていない人で、25問のチェックリストを受けてサービス事業対象者と判断された人が対象です。対象となった人は、生活支援や介護予防のためのさまざまなサービスが受けられます」訪問サービスでの部屋の掃除やゴミ出し、通所リハビリテーション(デイケア)など、生活支援、介護予防の両面からサポートしてくれる。ただし、内容や利用料は、自治体によって異なる。「このサービスを利用しようと思ったら、必ず地域包括支援センターに行くことになります。そこで自分の介護についての不安を相談できるうえ、認知症の前段階から利用すれば、介護予防にもつながります」
2019年03月25日「知られていないだけで、老後の生活で、いざというときに役立つ公的制度はいくつもあります。とくに、介護費や医療費の自己負担額を軽減できる制度は知っておいたほうがいいでしょうね」こう語るのは生活総合情報サイト「All About」ガイドの介護アドバイザー・横井孝治さん。“人生100年時代”といわれるなか、自分の老後に不安を抱えている現役世代も多いだろう。特に、長い老後に備えるためにいったいいくら貯めればいいのか、頭を悩ませている人も多いのでは?しかし、そんな不安を和らげる公的制度は、じつは多数存在する。これらを賢く使いこなせば、老後の支出を減らし、おトクな生活ができると、横井さんは解説する。「老後の介護費、医療費の自己負担額を軽減するステップは3段階に分けられます。まず、介護保険と医療保険を利用すると、利用者の所得に応じて、自己負担は1~3割で済む。これを建物にたとえると1階部分にあたります。ところが、多くの医療、介護サービスを受けると、それでも負担額はかなり大きくなります」(横井さん・以下同)そこで利用できるのが、一定の金額以上の自己負担額が払い戻される制度。「医療保険には『高額療養費』、介護保険には『高額介護(予防)サービス費』という制度があります。どちらも所得に応じて自己負担の上限額を定める制度で、もし上限額を超えてしまった場合、自治体に申請をすれば、超過した分が後で払い戻されるのです。これが建物でいう2階部分なのです」さらに、これらの支給を受けても、まだ自己負担が苦しいという場合、最後は3階部分にあたる「高額介護合算療養費」という制度が存在する。「これは、同一世帯で医療保険と介護保険の自己負担額を合算して計算し、限度額を超えた場合は、超えた分が支給されるもの。かなり助かる制度です」たとえば、住民税課税世帯の75歳以上の平均的な年金収入のある夫婦なら、夫が高額介護サービス費(自己負担の限度額が年間44万6,400円)、妻が高額療養費(入院を含む自己負担の限度額が、年間57万2,400円)をフルで利用した場合、1年間で合計101万8,800円の自己負担額に。しかし、高額介護合算療養費制度を利用すると、限度額56万円を超えた、45万8,800円が支給されるので、ほぼ半額の負担で済む。ただし、夫婦の年齢が離れていて、妻が国民健康保険で、夫が後期高齢者医療保険といった場合、単純に合算できず、複雑な計算が必要になるので注意が必要だ。老後を助ける公的制度はまだまだある。将来への不安を抱えている人は、老後資金を助ける制度を覚えておいても損はない。■老後資金を助ける制度【生活福祉資金貸付制度】低所得者や障害者、65歳以上の高齢者世帯を対象に、全国の社会福祉協議会が実施する貸付制度。たとえば、介護サービスを受けるために必要な経費や生計を維持するための資金の貸し付けなどを行っている。保証人、用途や金額などによっては無利子になる場合も。【不動産担保型生活資金】「生活福祉資金貸付制度」のひとつで自宅を担保にお金を借りられる。貸付限度額は土地の評価額の70%程度で、月30万円以内。貸付期間は借受人の死亡時、あるいは貸したお金と利息が限度額に達するまで。貸付利子は年利3%、または長期プライムレート(現在1%)のいずれか低い利率。【年金担保融資】年金受給者が対象。たとえば、年金収入が200万円であれば、160万円まで融資される(年金額の0.8倍以内)。急な入院などで、まとまったお金が必要になったときに借りられる。返済は2年6カ月以内で、年金支給額から差し引かれる。1回あたりの返済額は年金支給額の3分の1以下で1万円単位。【年金の繰上げ受給】老齢年金は原則として65歳からの受給だが、希望すれば60歳から繰り上げて年金を受けることができる。ただし、繰上げ支給の請求をした時点(月単位)に応じて年金が減額され、減額率は一生変わらない。1カ月繰り上げるごとに0.5%減。60歳まで繰り上げると30%減。また、高齢者になれば、公共交通機関の割引制度や、運転免許を返納した場合の特典なども受けることができる。これらを活用すれば、現役世代よりも生活費を減らすことができるのだ。■公共料金の割引など【シニア向け優待サービス】映画館や美術館のシニア割引が身近だが、公共交通機関にも、シルバー会員制度などがある。たとえばJR西日本の「ジパング倶楽部」は、女性は60歳から3,770円の年会費で加入ができて、年間20回まで全国JRのきっぷを最大30%引きで購入できる。【シルバーパス】各自治体が発行しているシルバーパス。バスを無料、あるいは少ない額で利用できる。取得できる年齢や負担金は自治体によって違う。【免許返納特典】運転免許証を自主返納すると、運転経歴証明書の交付を申請できる。これを所有している高齢者は、タクシー代の割引や、デパートの配送料が無料になったり、指定の商店などでの買い物が割引される。特典は、各自治体によって異なる。「元気なうちはいいですが、病気や介護が必要な状態になれば、想像以上にお金がかかります。有料老人ホームなどの施設に入る場合、入居一時金などを含めてトータルで1,000万円を超えることも多い。限られた老後資金を有効に活用するためには、公的制度を利用し、無駄な費用をどうやって抑えるかが大切になってきます」逆に、老後資金の計画を立てるときは、こういった制度の活用を前提にしよう。そうすれば、“人生100年時代”とはいえ、天文学的な金額にはならないはずだ。
2019年03月25日「『2人に1人はがんになる時代です』と言われると不安のあまり、医療保険やがん保険に入りたくなります。さらに、『預金ではお金が増えません』と言われ、老後資金を準備するため、終身保険などに入る人もいます。長生きリスク、認知症などあらゆる“不安”をかきたてられて、営業マンに勧められるまま、たくさんの保険に加入し、1カ月で何万円も費やしている人を見かけます。老後が長くなるこれからの時代、なるべく早いうちに『本当に必要な保険』を見極める必要があります」そうアドバイスするのは、『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』(青春新書プレイブックス)の著者で「保険相談室」代表の後田亨さん。すべての保険が「ムダ」というわけではない。たとえば、自転車の賠償責任保険や、火災に備える保険など、巨額のお金が必要になるケースには保険が役立つという。「子どもが大学を卒業するまでといった一定期間の死亡に備える『定期保険』、病気で長期間仕事ができなかったときに備える『就業不能保険』、または相続対策のために加入する『終身保険』などは、検討に値する保険といえますが、ほかの保険はどうしても必要とは思えません」(後田さん・以下同)必要性が疑われる保険に保険料を支払い続けるよりも、貯蓄も含めて、有効なお金の使い道を選んだほうがいいという。そこで、後田さんに「いらない保険」を教えてもらった。【外貨建て保険】保険料が米ドル、ユーロ、豪ドルなど外貨で運用され、保険料の払い込み、保険金の受け取りも外貨で行われる。手数料が高く、元本割れ期間がある。為替リスクもあるのに、積立利率や将来の返戻率の高さが強調される。資産形成には不向き。【貯蓄性保険】個人年金保険や学資保険など、老後や子どもの進学時期にあわせて給付金が受け取れる。中途解約時の元本割れリスクに比べお金の増え方は少ない。【長寿保険】死亡保障はなく、保険料払込み期間に解約した場合の返戻金の水準が低い。その代わり長生きした場合の給付額を大きくしているが、加入期間の長さ・中途解約リスクを考えると、給付額は物足りない。【終身保険】「一生涯死亡保障が続く」「解約時には相当額の解約返戻金が払い戻される」というのが特徴で、相続対策には役立つが、ほかの使い道は考えにくい。【医療保険】民間の保険では入院給付金が1日5,000円~、手術給付金は1回5万~10万円といった保障があるが、公的医療保険(健康保険、国民健康保険)の自己負担上限額は、一般に月9万円程度。高額な先進医療も実効性が証明されていない医療もあり必須ではない。【がん保険】がんになったときに診断一時金、入院給付金、手術給付金が受け取れるのが基本。日本では標準的な治療が健康保険で受けられるので、貯金などで対応するのが合理的。【介護・認知症保険】現在50歳の人が要介護認定を受けるとすれば、30年くらい先の話なので、お金の価値が怪しくなる。例えば一時金300万円や年金年額60万円が、30年後にも現在と同じ価値を持つとは考えにくい。【健康増進型保険】保険加入後の行動や健康状態で保険料が再計算されたり、還付金が支給されたりするが、そもそも割引前の保険料設定が妥当なのかは不明だ。■“低金利”につけこむセールストークに注意今、生命保険会社が銀行窓口などを通して販売する「外貨建て保険」の苦情が急増しているという。’17年度に生命保険協会や生保41社が受けた苦情は、2,076件で5年前の3.3倍。「元本割れリスクについて適切な説明を受けなかった」など、商品のわかりにくさが問題になり、昨年12月、金融庁も監督強化に乗り出した。退職金などまとまったお金を手にしたとき、メインバンクの担当者から「老後の資産形成に」といって勧められることが多いが、気をつけたい。「大手銀行の定期預金の金利は現在、年0.01%(税込み)しかないので、『積立利率3%を保証』『インフレによるリスクに対応できます』など、利回りの高さを強調してくるので、つい飛びついてしまい、後悔する人が多い商品です」一時払いのタイプでは、契約時に数百万円の保険料をまとめて支払い、米ドルや豪ドルなどで運用。中途解約時や満期時などに運用益を上乗せした金額が戻るという仕組みだが、満期時に円高ドル安になっていると、円に換算したときに元本割れする“為替リスク”がある。「初期費用が高いのが問題です。保険料500万円・販売手数料率5%だと、25万円の元本割れが生じたところから運用が始まるわけです。10年未満の解約では、相応の金が引かれる保険特有の不利な条件も付きます。お金を増やす目的での利用は考えられません」
2019年02月20日人生100年時代ともいわれ、老後がますます長くなる一方、少子高齢化などの影響により、老後の生活を支える公的年金の支給額は今後減少すると予想されています。退職金と年金で悠々自適に暮らせる時代はすでに終わりを迎えており、老後に生活費が足りず家計が破綻する「老後破綻」は、決して他人事ではなくなっています。老後破綻に陥ることなく、ゆとりある老後を送るにはどうすればよいのか。この記事では、老後にいくら生活費が必要なのか、老後に備えて今から何ができるのかについて解説していきます。老後の生活費は毎月どれくらい必要?「平成29年(2017年) 家計調査結果」(総務省統計局)持ち家率は94.2%世帯主が65歳以上・二人以上の世帯においては持ち家率が94.2%と高いため、統計上は住宅費が少なくなっていますが、賃貸に住み続けるという選択をする場合には、家賃分だけ生活費を多く見積っておくべきといえます。公的年金だけでは毎月5万円以上の赤字同調査による無職世帯の毎月の平均収入は209,198円(うち公的年金等の社会保障給付が191,880円)であり、直接税や社会保険料を差し引いた後に残る、自由に使えるお金(可処分所得)は180,958円となっています。月235,477円の生活費を差し引くと、毎月54,519円の赤字。つまり、毎月貯蓄を切り崩さなければ生活できない状況であり、十分な貯蓄がなければ家計はすぐに破綻してしまいます。現時点でこのような状況であり、将来年金が減ると予想される若い世代にとっては、自助努力による備えがより重要になってきます。ゆとりある老後に必要な生活費は月35万円上記の月24万円というのは、平均的な生活を送るために必要な最低限の生活費といえるものです。生命保険文化センターの調査(※1)によると、老後のゆとりある生活に必要と考える生活費は平均34.9万円。つまり最低限の生活費プラス10万円がゆとりある老後に必要な生活費の目安であり、年金以外に月15万円必要となる計算です。ゆとりある老後には65歳時点で総額3600万円の貯蓄が必要65歳で退職し85歳までの20年間、年金と貯蓄を切り崩しながら生活する想定では、最低でも約1300万円(=月5.4万円×12カ月×20年)、ゆとりある老後には約3600万円(=月15万円×12カ月×20年)の貯蓄が必要となります。ただし、これは現時点の物価水準、年金水準で、65歳以降運用を行わないと仮定した場合の数字。将来年金支給額が減れば、より多くの貯蓄が必要となります。一方、老後に貯蓄を運用しながら切り崩していけば必要な貯蓄額は少なくて済みます。なにをもってゆとりと考えるかは価値観の問題であり、あなた自身が老後をどのように過ごしたいのかによって、必要な生活費も変わってきます。必要な貯蓄額は、実際に受け取れる年金額や、持ち家・賃貸の別、希望する老後のライフスタイルなどを踏まえ、個別に考えるべきです。この3600万円という数字も平均値に基づいて計算した結果であり、あくまで参考として捉えてください。老後に備え、20代から各年代でどれくらい貯めていけばいい?『The Automatic Millionaire』(David Bach)この基準は、60代以降お金の心配なく暮らすために必要な貯蓄を行う目安であり、希望するライフスタイルよっても変わります。実際にはこの基準を目安としながら、目標額とそのほかの資金(教育資金、住宅資金)とのバランス、家計の状況などを踏まえて、無理のない範囲で積立額を決める必要があります。運用によって効率よく貯める効率的に老後の生活費を貯めるには、運用しながら積み立てていくことも重要なポイントです。老後資金の運用では、運用期間が長くとれるため、利益が利益を生む「複利効果」が大きくなり、運用リスクの軽減効果も期待できます。複利効果とは?複利効果:元本に利益を加えた合計を新たな元本として継続的に運用されることで、雪だるま式に利益が増えていく効果たとえば月5万円(年間60万円)ずつ30年間積み立てる場合の積立総額は1800万円。同じ月5万円の積立でも、年3%の複利運用ができれば、30年後には2855万円、年5%では2倍以上の3986万円まで増やすことができます。Guide to the Markets・1Q 2019(J.P. Morgan Asset Management)老後資金を貯める方法は7種類自助努力によって老後資金を貯める方法としては、以下のようものがあります。預貯金普通預金、定期預金などの形で銀行にお金を預け、利息を受け取りながらお金を貯めていく方法。安全性の高さ(1金融機関あたり元本1000万円とその利息まで(当座預金など決済用預金は全額)の元本保証)と、すぐに現金化できる流動性の高さが特徴。現在は低金利状態が続いており、運用効果はほとんど期待できません。財形貯蓄(会社員・公務員)毎月の給与やボーナスからの天引きで貯蓄を行う方法。財形貯蓄制度を導入している企業に勤める55歳未満の会社員が利用できる制度で、財形一般貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄の3種類があります。このうち老後資金準備を目的としているのが「財形年金貯蓄」です。財形年金貯蓄は、5年以上の期間、定期的(年1回以上)に給与天引きで積み立てを行い、積立金を60歳以降年金形式で受け取るもので、財形住宅貯蓄と合算して元利合計550万円(保険型は払込保険料385万円)までの利子が非課税となるメリットがあります。小規模企業共済(自営業)退職金や企業年金などがない自営業者などが、自助努力で退職金を準備する方法。掛金は月1,000〜70,000円まで500円単位で設定でき、全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となるため、節税効果の高い制度です。個人向け国債個人を対象に国が発行する債券(個人向け国債)を購入していく方法。個人向け国債は1万円単位で購入でき、国が元本と利息の支払いを保証するもっとも安全性の高い金融商品。年0.05%(税引前)の金利が最低保証されており、預貯金よりも安全性・収益性が優れています。半年ごとに適用利率が変わる「変動10年」、発行時に設定された利率が満期まで変わらない「固定5年」「固定3年」の3タイプがあります。貯蓄性保険「終身保険」や「養老保険」「個人年金保険」など貯蓄性のある保険を利用する方法。終身保険や養老保険は、保険の対象者(被保険者)が死亡したり、高度障害状態となったりした場合に備える保障がメインの商品。支払った保険料は一定額まで生命保険料控除の対象となり、税金面でのメリットもあります。ただし、保障部分にかかるコストや、他の金融商品に比べて割高な手数料に加え、低金利による運用効率の低下もあり、運用商品としての魅力は薄れています。「保障+運用」が目的であれば、「掛け捨て型の保険」と「投資信託などの投資商品」を別々に購入したほうがよいといえます。個人型確定拠出年金(iDeCo)個人型確定拠出年金(iDeCo)は、どの商品にどのくらい割合で投資するかを自分で決め、毎月の掛金を積立投資して老後資金を準備する方法。積立時、運用中、受取時において税金面で優遇されるメリットがあります。日本国内に住む20歳以上60歳未満の方であれば、月5,000円から1,000円単位で加入可能(掛金の上限は月額1.2〜6.8万円。職業(加入する公的年金の種類)や企業年金の有無などにより決まる)。老後の資産形成を目的とした制度であるため、掛金や運用益は原則60歳まで引き出せないことに注意が必要です。NISA(少額投資非課税制度)NISAは一定額まで購入した株式や投資信託の運用益が非課税となる制度。3タイプあるNISAのうち、老後資金準備には「(一般)NISA」「つみたてNISA」が利用できます。途中で払い出しできないといった制約もなく税制優遇が受けられる制度であり、株式や投資信託を利用して老後資金を準備するのであれば、ぜひ利用したい制度です。どうやって貯めるのがよい?老後まで時間のある20代〜40代の間は、ほとんど利益を生まない貯蓄商品(預貯金や財形貯蓄など)の利用は最低限にとどめ、ふやすことを意識して、つみたてNISAなどを活用しながら、株式や投資信託への長期積立投資を行うとよいでしょう。投資先としては、S&P500や全世界の株式に連動した運用成果が期待できるインデックスファンド(投資信託・ETF)などがおすすめです。50代以降は、それまで積み上げた資産を守ることを意識し、貯蓄商品や個人向け国債などの割合を徐々に増やしていくとよいでしょう。老後の生活費まとめ夫婦2人の老後には平均で月24万円、ゆとりある老後を送るには月35万円の生活費が必要になります。現在年金を受け取っている世代でさえ、年金だけでは生活費できない状況であり、今後年金が減ると予想される世代は、老後の生活費は自分たちで貯めるという意識をより強く持たなければなりません。長期運用ができる老後資金のメリットを活かし、なるべく早い時期から積立投資をはじめ、効率的に老後の生活費を貯めていくことが大切です。
2019年02月04日安全で儲かる投資と思っていたのに、老後のためにコツコツ貯めたお金が消えてしまった――そんな悲劇を避けるにはどうすれば?専門家に聞いた。負債1,053億円、債権者数約3万4,000人――。3日に破産を申し立てた「ケフィア事業振興会」は、干し柿やヨーグルトなどの加工食品のオーナーになれば、約半年で8~10%の利息を支払うとして会員を募集。今回の破綻で、少なくとも340億円あまりの投資金が戻ってこない事態になっている。被害対策弁護団のひとりで、リンク総合法律事務所の中森麻由子弁護士が解説する。「仕組みは複雑ですが、典型的な会員制オーナー商法です。投資した人の8割は60歳以上の高齢者で、そのほとんどが“投資に慣れていない女性”という印象をもちました。5年以上にわたって金利が支払われてきたこともあり、銀行に預けているという感覚で信用していたようです。老後のために貯めておいたお金を投資した方が多く、被害額が1億円を超えた例も。みなさん長年にわたって出資してきたので、被害額の平均は100万円を超えていると思われます」’11年にはじまったケフィア事業振興会のオーナー制度。昨年11月から、会員への配当や元本の支払いが遅れ、訴訟問題に発展した。同社の鏑木秀彌社長は、いまだ公の場に姿を現していない。今回の事件は、これまでの高齢者を狙った詐欺事件と少し異なっているという。被害者の相談に乗っている名城法律事務所の正木健司弁護士が語る。「パンフレットを郵送するだけで直接対面しての勧誘があるわけでもなく、マルチ商法のように、人を紹介したら紹介料が入るというものではありません。金塊や健康器具、和牛などの高額商品ではなく、干し柿やジュースなどの加工食品の通販を入口にして、1口5万円からと、ハードルが低いことが特徴です。それに加え、約半年後に最大10%もの異常な高利を、長年支払い続けたことで出資者を安心させました。しかし、このビジネスの実態は、新規で集めた資金を、前に契約した人への金利に回している自転車操業のようなものです。とくに破たんが確実になった昨年11月以降も、商品数を増やしてさかんにダイレクトメールを送ったり、世界的なサーカスの貸切り公演や音楽祭の計画などで経営状況をよく見せたりして、会員からさらにお金を“搾り取ろう”としていた。支払いができないと認識しながら、出資を募っていた場合、詐欺罪に当たる可能性があります」超低金利のなか、退職金を資産運用しようとするシニアを狙った投資詐欺も急増している。上級ファイナンシャルプランナーの北川邦弘氏が警鐘を鳴らす。「60代のご夫婦には、退職金という、これまで手にしたことがない大金が入ることで、冷静な判断力を失う方がいることは確かです。まず提案をされた金融商品の金利に注意すべき。銀行の普通預金が0.05%という低金利の時代に、100倍となる年利5%の商品が存在するわけがありません。元本保証で高利回りなど、低リスク高リターンをうたうものほど、詐欺の可能性があります。また、なぜ金利が高いのか、なぜ儲かるのか、仕組みがわからないものには手を出さないほうがいいでしょう。勧誘のときに専門用語や難解な言葉が出てきますが、自分で理解できない話には乗ってはいけません。さらに、金融商品を扱う会社は、行政の監視下に置かれ、金融庁に登録する義務があります。契約を交わそうとしている会社の登録状況を確認することも大切です」最後に中森弁護士が語る。「『ケフィア事業振興会』は、詐欺目的で創立された会社ではないと見ています。しかし、オーナー制度による資金集めがうまくいったことから、事業を広げ、けっきょく、今回の悪質な投資トラブルを引き起こしました。そんなトラブルに巻き込まれないためには、“こんなにおいしい話があるわけない”と疑ってかかる心が大事。疑問があったら、家族や近くの消費生活センターなどに相談したほうがいいでしょう」虎の子を狙う投資詐欺。専門家の話をもとに、だまされないための10カ条を作成した。【1】「元本保証、金利5%超」などはすべて疑う【2】「少額でもできる」「1口◯万円~」に要注意【3】なぜ儲かるか理解できないものには手を出さない【4】コンサートへの招待や有名人を使った宣伝にだまされない【5】立派な社屋や施設を持っていても安心ではない【6】社会貢献や健康などのうたい文句に注意【7】5年以上金利が払われていても、突然破たんすることはある【8】急に勧誘が激しくなったり、商品数が増えたら危ない【9】業者が金融庁に登録しているか確認する【10】不安に思ったら、第三者にすぐに相談するこれを心に刻み、老後の資金計画を立てよう。
2018年09月13日子どもを作らず、2人で一生を過ごす選択をする夫婦も増えている現代。子どものいない夫婦の老後は、いったいどうなるのでしょうか。老後について考えなければいけないことと必要な貯金額についてまとめました。子なし夫婦の老後について子どもがいると、子どもや孫を通じて交友関係も広がりますが、いない場合はやはり夫婦ふたりでの生活がメインになると思います。老後で考えないといけないことは、たくさんあります。例えばどちらかが「介護」となった場合、老々介護となってしまうため外部へ委託する必要があります。また片方が大病を患ったときに、病院へのお見舞いやケアなどもひとりで手配しなければいけません。そういった不安な気持ちを共有する人が少ないために、一人で抱え込んでしまう可能性も。どちらかが亡くなったときやお墓の管理、遺産相続なども話し合っておく必要があります。いざというときにひとりで困らないためにも、さまざまな外部サービスや頼る先の確保が必要です。子なし夫婦の場合は子どもにかけるお金がない分、老後の資金も多く用意できている可能性が高いと思います。定年後は夫婦で旅行に行ったり趣味をしたりと、楽しみもたくさん用意されています。ただし、生活費が足りなくなっても仕送りをしてくれる人がいないので、計画的に使うようにしましょう。とにかく老後を楽しく暮らすためには「貯金」が大切です。 老後に必要な貯金額厚生労働省の「平成28年簡易生命表」によると、平均寿命は男性では80.98年、女性では 87.14 年です。定年が60歳だとすると、20年は年金や貯金を使っての生活になるでしょう。生命保険文化センターの「平成28年度 生活保障に関する調査(速報版)」によれば、「ゆとりある老後生活費」は月額34.9万円。これは、公的年金や個人年金で賄うのは難しい金額といえますね。そして、総務省統計局の「平成29年度家計調査報告世帯属性別の家計収支(二人以上の世帯)」のデータを見てみると、高齢夫婦の無職世帯は年金を受給していても収支のバランスとして毎月マイナスが出ているようです。マイナスの平均額は約50,000円ほど。年間では年間600,000円となりますから、20年で12,000,000円は不足すると予想できます。ただし、この金額はギリギリの数字。日々物価も上昇していて、もらえる年金額はこれから下がっていくと言われています。さらに子どもがいないため、困ったときや介護などは外部サービス、老人ホーム頼みになるので、生活資金以外のお金も必要になってきます。目安として3,000万円以上の貯金は必要なのではないでしょうか。老後に必要な金額について詳しくはこちらもご覧ください。> 貯金はいくら必要?子なし夫婦に必要な老後の資金 まとめ結婚したからといって、必ずしも子どもをつくらなければならないということはありません。子なしで夫婦2人の時間を時間を楽しむ選択もあります。ただし、楽しい老後を過ごすためにも、貯金は必ず用意しておくようにしてくださいね。 参考:厚生労働省離婚に対する統計厚生労働省「平成28年簡易生命表」国立社会保障・人口問題研究所:第15回出生動向基本調査
2018年08月25日老後の出費がどれくらいになるか、不透明な昨今。ある程度、保障内容をスリムにしてもいい家族構成になったら、保険で家計見直しをするチャンスかもしれない。 「家賃、通信費、食費、光熱費に並ぶ固定費として、家計を直撃するのが保険料。子どもの教育費がかかる時期は、働き手になにかあったときのために保障はある程度必要です。しかし、親が50歳くらいになって子どもの自立が見えてきたなら、死亡保障も減らして身軽になっていいでしょう。その際、選択肢に入ってくるのが共済です。50歳前後となれば、いざ見直しをしようと思っても保険料は高額。共済は年齢や性別の区別なく一律で、2,000〜5,000円程度の安価な掛金で、しかも幅広い保障が受けられるんです」 そう語るのは、All Aboutマネーガイドの平野敦之さん。年金減や消費税増税など負担増に備え、出費を減らしたい方には、家計の見直しの“切り札”にもなりうるのが共済だという。 「共済では、生保・損保会社の『保険料』を『掛金』、『保険金』を『共済金』というように表現の違いはありますが、相互扶助という仕組みの面では、どちらも違いはありません」 営利団体である生保や損保は全国から契約者を募ることができる。ただし、非営利団体である共済は、加入に際して居住地域や一部の企業の社員、組合員に限るなどといった制限がある。 「しかし都道府県民の共済は、その都道府県に居住していたり職場があれば加入できるし、佐賀県、高知県、福井県など一部存在しない所もありますが、多くの都道府県にあるので、対象者は多いはず。全労済やコープ共済は全国展開しており、それぞれ数百円の出資金を出して組合員となれば、加入することができます」 今回は加入者が多い都道府県民共済と、全労済(こくみん共済)、コープ共済について、平野さんとファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんに、解説してもらった。 「都民共済は、ブライダルの割引、こどもの日の兜やランドセルの割引など、付帯サービスがあります。全労済は自動車保険や火災保険、地震保険などに相当する共済があるなど、カバー範囲が広い。コープ共済は女性向けの商品や、100万円、200万円の一時金が出るがん特約があるのが特徴です」(風呂内さん) 風呂内さんは、これら各共済に共通するメリットがあるという。 ■高齢で加入しても、掛金は上がらない 「各共済によって多少の違いはありますが、一部商品を除き1カ月の掛金は2,000〜5,000円ほどです」(平野さん) 生命保険の場合は、医療保険でも死亡保険でも、5歳ごとに年齢を区切るなどして、加入時の年齢が上がるごとに保険料が高くなる構造になっているが……。 「共済は年齢群団方式といって、加入時の年齢や性別の区別なく、一律の掛金であることが大きな特徴です。20歳前後の若い人からすると“なんで50歳と同じ掛金なんだ”と不公平感を抱くかもしれません。ある程度の年齢、たとえば50歳くらいで新たに保障を受けたいというのなら、掛金は安く済みます」(平野さん) 高齢で加入するほどおトク感が増すということだ。 「都民共済の『総合保障型』の掛金2,000円の内容は、生保なら特約もありますので、50歳女性で1万円くらいになりますね」(風呂内さん) ■加入条件が緩和されている 自分では健康なつもりでいても50代ともなれば、だいぶ体にガタが来ている。血液検査の数値を見れば、自覚はなくとも、基準値をオーバーしている項目もあるはずだ。 「この年代で保険に入ろうとすると、血圧が高く、医師の診査を求められることもあります。保険は健康状態が重要で、契約に条件がついていて加入できないと、保険料が高い“緩和型”を選ばざるをえないケースもあります。いっぽう、共済は告知義務はありますが、医師の診査は不要で加入が簡素化されているケースが多いです」(平野さん) 全労済のホームページには「今まで高血圧の治療中を理由にご加入を諦めていた方も加入しやすくなりました!」とある。 「’16年10月に制度改定してから、一定の条件をもとにお引き受けできるようにしています」(全労済広報室) コープ共済の広報部もこう語る。 「高血圧の場合、高血圧が原因で過去5年間に入院していない、一定の数値でコントロールできているなどの加入条件を満たせば加入できる制度があります。商品やコースを問わず、加入できる間口を広げています」 都民共済担当者はーー。 「個々のお話をうかがって、相談しながら、条件をつけさせていただくこともあります」 いずれも加入となった場合、病気ではない人と同一の掛金となる。 さまざまなメリットのある共済。もちろん、共済にも注意点がある。 「掛金と同様に保障内容もずっと変わらないと考えている人が多いようです。しかし、注意が必要です」 と生活マネー相談室の八ツ井慶子さんは言う。確かに都民共済の「総合保障4型」を見ると、同じ掛金なのに、18〜65歳までの病気による病気入院保障額は1日あたり9,000円なのに対し、熟年4型に移行すると、65〜80歳で5,000円、80〜85歳では0円になる。 「高齢期になると保障内容が薄くなります。高齢になっても手厚い医療保障を求めるのなら、共済ではなく生命保険会社の終身の医療保険のほうが適しているでしょう」(八ツ井さん) 平野さんはこう語る。 「共済は掛金が安く、割戻金がある分、貯蓄に回すお金もできます。1カ月内で一定額を超えた医療費が返金される高額療養費制度という公的制度もあります。ある程度まとまった医療費を貯蓄できれば、80歳で保障が薄くなった共済を、継続する必要はなくなるかもしれません」(平野さん) 保障内容が薄くなる分は、安い“掛金”で浮いたお金でまかなう。貯蓄しておけば、老後のあらゆる出費にも回せるという。共済のメリット・デメリットを考慮して、今加入している保険の見直しを考えてみては。
2018年05月31日老後の生活と聞くと、まずイメージするのが「定年」、そして「年金」。現在の定年は65歳とされていますが、65歳を超えても現役で働いていらっしゃる方は珍しくありません。一方で引退後の暮らしを支える「年金制度」は、予測できない将来のリスクを社会全体で整え、生活を保障していくものであるとされています。しかし、その仕組みの複雑さから自分がいつから、いくら貰えるのか、分からない人も多いというのが現実。皆さんはこの引退年齢と年金についてどう捉えているのでしょうか?働く主婦にそれらの意識について聞いてみました。freeangle / PIXTA(ピクスタ)■ 理想の引退年齢は30%が65歳以上!まさに生涯現役社会の到来!?働く主婦層を対象にした「引退年齢と年金」のアンケートによると、自身の理想の引退年齢は、65歳以上が30.1%とトップ。cba / PIXTA(ピクスタ)次いで、70歳以上が27.7%。全回答者の平均は68.4歳という結果となりました。驚くことに80歳以上を理想の引退年齢と回答された方は10%に上り、高齢になっても働きたいとするポジティブな考え方が印象的です。■ 70歳以降の「年金受給開始年齢の選択可能案」に40%が反対!自身の理想の引退年齢について、全体的に“長く働きたい”という傾向がみられました。しかし、政府が検討している「年金受給開始年齢を70歳以降でも選択可能」という案について賛成か、反対かについての回答を見てみると……。反対派が40%にのぼり、賛成、分からないと回答した人はは3割という結果に。Rina / PIXTA(ピクスタ)反対派の理由としては定年年齢と支給受給年齢が同時でないと意味がない何歳まで生きられるか分からないなどが挙げられます。nonpii / PIXTA(ピクスタ)逆に賛成派・分からないと回答人たちは、昔の70歳より今の人は若いそうしないと年金制度が維持できない受給開始年齢が選択性であれば問題ない元気でいれば賛成、病気になれば反対生活の状況によって決めるべきという回答が挙がりました。自身の引退年齢の理想はポジティブな姿勢が感じられる反面、受給開始年齢については回答の内容から年金ついての不安が感じられる。ここに、大きなギャップが生じていることが分かります。■ 老後の蓄えを知るには、年金の見込額を確かめることが大事!ahirun / PIXTA(ピクスタ)なるべく長く働きたいが、高齢者が働く環境は整っているかが分からない。将来自分がどれくらい長生きできるのか分からないため、受給開始の年齢はいつがベストなのか今現在は不明。しかし、少子化が進む現在、年金制度を支える人口はこれからも減少していくのは事実です。ahirun / PIXTA(ピクスタ)老後の備えについての考え方は人それぞれですが、まずは生活基盤となる年金をいくら受け取ることができるか、見込額を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。例えば、『日本年金機構』の「ねんきんネット」であれば現在の仕事状況や、今後の働き方なとの試算条件に回答すると、見込み額の把握が可能となります。ねんきんネット以外にも見込み額のシミュレーションなどはインターネットで可能です。見込額を把握することは、将来の幸せを考えるきっかけの1つになると言えるのではないでしょうか。いかがでしたか?筆者も高齢になっても、働き口があるのであれば少しでも働いていたい派です。高齢になっても働きたいと考える人が多い現代、この状況をプラスに捉え、近い将来高齢者が働くことができる場所や環境が整うことを期待したいですね。【しゅふJOB総研調べ】【参考】※<年金もらうなら65歳?68歳?70歳?>働く主婦に『引退年齢と年金』に関するアンケート/理想の引退年齢:平均値68.4歳※公的年金制度の概要-厚生労働省※年金見込額試算-日本年金機構
2018年05月16日子どものいない夫婦は、養育費や教育費といった子どもに関する費用が掛からないため、子あり夫婦に比べると生活に余裕が生まれそうなイメージ。ただ、気になるのが「老後のこと」ですよね。年々珍しくなくなっている子なし夫婦ですが、老後の生活費や貯金はどのくらいあれば良いのでしょうか。今回は子なし夫婦の老後にフォーカスを当ててみます。 老後の生活費はどのくらい?厚生労働省の「平成28年簡易生命表」によると、平均寿命は男性では80.98年、女性では 87.14 年となっています。定年が60歳だとすると、少なくとも20年はセカンドライフの期間があるということ。子どもがいないため夫婦でゆっくり暮らせる老後ですが、生活費などお金の面ではどうなってしまうのでしょうか。まず、基本的に定年となるのは60歳ですが、年金は65歳からの支給になります。その間のつなぎとして、65歳まで「再雇用」といった形で働くことができる企業が多数あります。収入は現役時代よりも少なくなりますが、子どもがいない夫婦は自分たちだけの収入で生活していく必要があるので、65歳まで働いたほうが安心です。それから年金生活となるのですが、総務省統計局の「平成29年度家計調査報告世帯属性別の家計収支(二人以上の世帯)」のデータを見てみると、高齢夫婦の無職世帯は毎月平均263,717円の支出があり、54,519円の赤字になっているそうです。生命保険文化センターの「平成28年度 生活保障に関する調査(速報版)」によると、「ゆとりある老後生活費」は月額34.9万円だそうです。公的年金や退職金だけでは、何年間も賄えそうにありませんね。 理想の貯金額それでは65歳になるまでに、老後資金はいくら必要なのでしょうか。先ほど平均寿命が男女共に80歳以上だとお話ししましたが、現在100歳の人も珍しくありません。95歳まで生きると仮定して、老年資金が30年間必要だとします。赤字が54,519円だったので、年間約65万円が30年だとすると、必要額は最低でも1950万円以上。ゆとりある老後生活を送りたいなら、赤字は139,802円になるので、年間約168万円が30年で5,000万円以上必要ということになります。また、夫が先に亡くなってしまったときのこともも考えておきましょう。妻は、夫が受給していた老齢厚生年金の一部を「遺族厚生年金」として、自分の老齢基礎年金に上乗せすることができますが、それでも何かあったときに不安ですよね。日々物価も上昇していて、もらえる年金額はこれから下がっていくと言われています。さらに子どもがいないため、困ったときや介護などは外部サービスや老人ホーム頼みになるので、生活資金以外のお金も必要になってきます。最低でも3,000万円以上貯金しましょう。ちなみに子ども1人育てるのに必要な額は3,000万円以上だと言われています。子どもがいないからといってその分お金を使っていると、老後になって慌てることになってしまうかも。今から老後資金を貯めておきましょう。 亡くなったときのことを考える考えたくはありませんが、考えなければならないのが亡くなったときのこと。その中でも気になる「相続」と「お墓」のことについてご紹介します。まず相続について。配偶者は常に相続人となり、次に子どもが優先されます。ただ、子どもがいない場合は複雑です。例えば子なし夫婦の夫が亡くなった場合、夫の直系尊属(父母や祖父母など)が相続人、直系尊属がいない場合は、夫の兄弟姉妹が相続人となります。取り分は以下のとおり。配偶者と直系尊属が相続人の場合配偶者2 / 3、直系尊属(2人以上のときは全員で)1 /3配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合配偶者3 /4、兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1 /4夫の親族とお金の問題で関わることになるので大変です。夫が遺言で「全財産は妻に」という趣旨のことを記しておけば、相続で悩むことも少ないかもしれません。ただ、その後妻が亡くなった場合、夫婦の全財産が妻側の直系尊属か兄弟姉妹へいくことになるため、夫の親族からすれば不満につながることも。死後の揉めごとを避けるために、夫婦で遺言を残しておく必要がありそうです。そして死んだ後に入るお墓について。子どもがいないため、供養されないのではと不安になりますよね。将来的な管理も気になるところ。「永代供養墓」というものがあるのをご存知ですか。お寺や霊園が家族の代わりに供養や管理をしてくれるお墓です。一式の費用を支払うだけで良いので安心です。また、「樹木葬」というものもあります。許可を得た専用の敷地に遺骨を埋葬し、墓石の代わりに樹木を植えます。こちらも一式の費用を支払うだけ。ペットの骨と一緒に埋葬できるところもあるので、さまざまな家族の形に対応しています。 子どもがいないということで、老後はさまざまな不安があるかもしれません。とりあえずすべきことは、お金を貯めておくことと、夫婦で老後の過ごしかたを話し合い、相続やお墓についても決めておくこと。子どもがいる・いないに関わらず、いつなにが起こるかわからないので、準備はしっかりしておくといざというときに安心です。素敵な老後が過ごせるとよいですね。 参考:人生100年時代突入?老後の不安を軽くする3つの考え方平成28年簡易生命表の概況老後の生活費は年金プラス月5万円で安心家計調査報告(家計収支編)―平成29年(2017年)平均速報結果の概要―「平成28年度 生活保障に関する調査(速報版)」まとまる子ども1人にかかる費用は3000万円もかかるって本当?老後の生活費27万円、貯蓄額2080万円相続人の範囲と法定相続分永代供養墓とは樹木葬とは
2018年05月15日「老後」。この言葉を聞いて、明るい気持ちになる人は、まずいないだろう。ほぼすべての人がが、「なんとなく、ブルーな気分」になるのでは?連載の冒頭から結論をいってしまうと、「お金に困らない老後生活を送りたい」と思うのなら、30代~40代の過ごし方(心がけ)が大事になってくる。それでは30代の人はどうすればいいのか? その不安から抜け出す対策について考えてみたい。■なぜ、30代から「老後」を考える必要があるの?ファイナンシャル・プランナーで、「 確定拠出年金相談ねっと 」代表の山中伸枝さんは言う。「老後はだれにでも必ず訪れる『事実』です」と。マネー分野では、よく「人生の3大資金」という言葉が使われる。人生の3大資金とは、「住宅ローン」「教育費」「老後資金」。このうち「住宅ローン」と「教育費」は、必要ない人もいる。けれども、「老後資金」だけは、だれもが「当事者になるお金」だ。この大金を準備するために、「自分がお金を稼げる時期」が終わるまでにやっておかなければならないことがいくつかある。「『なんとかなる』と思って、やるべきことをやらなければ、『老後貧乏』という形でツケを払うことになるかもしれません」(山中さん)■幸せの老後には、収入が多い・少ないは関係ない「老後の準備」というと、「できるだけお金をためておくこと」と思う人も多いだろう。けれども、山中さんは言う。「『老後のためのお金』を考えるとき、(現役時代の)収入が多い・少ないよりも、計画を立てて準備していないことの方が命取りになります。」幸せな老後は、計画を立てて準備を始めることから。だからこそ、30代から、「老後」についてのイメージトレーニングを始めることに意味があるのだ。 ■現在、年金をもらっている人の平均額は?老後のイメージトレーニングとして、「いま、実際に老後を迎えている人」がもらっている平均的な年金額を知ることから始めてみよう。 年金額280万円=夫(年額200万円)+妻(年額80万円)「会社員だった夫と専業主婦だった妻の年金額の平均は、280万円といわれています」(山中さん)年収280万円といえば、月収22万円くらい。ここから税金や社会保険料が差し引かれ、手取りは18万円程度となる。もっとも、この数字は、「いま、実際に老後を迎えている人」がもらっている金額であり、いわゆる「もらえる年金額的には『裕福』な人」といわれている層がもらえる年金となる。■30代の人が「老後」になったときもらえる年金額では、年金制度が先細りになるといわれている、私たち30代~40代の年金額面はどれくらいになるのだろう? 年金額240万円=夫(年額160万円)+妻(年額80万円)「会社員だった夫の年金は160万円(年額)くらいに下がるといわれています。専業主婦だった妻の年金を現状のままもらえると考えて、240万円くらいが良いところでしょう」(山中さん)夫の年金額が下がるのだから、妻の年金額も下がることが予想される。つまり、年額240万円よりも年金額は低くなると考えておいた方が良さそうだ。次回は、「いま、30代の人が「老後」に足りなくなる具体的な金額」です。※この記事は2016年11月の取材に基づいて書いています。■今回取材にご協力いただいた山中伸枝さんの著書 ど素人が始めるiDeCoの本 (山中伸枝/翔泳社 本体1,500円+税)
2016年12月16日こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ベストセラーになった『下流老人一億総老後崩壊の衝撃』の著者で、社会福祉士・社会運動家の藤田孝典さんは、「老後破産にいちばん陥りやすいのは、 年収700万円前後の現役時代に比較的収入に恵まれていた世帯である」という主旨のことを述べて広く国民に警鐘を鳴らしました。その反響は大きく、今では現役時代の収入にかかわらず、不測の事態によって誰でも老後破産に陥る恐れがあるということが常識として定着しつつあります。藤田さんは社会運動家の立場から、西欧の先進諸国に比べて著しく遅れたわが国の社会保障行政の問題点を鋭く指摘しますが、一方で老後貧困に陥りうつ状態を呈して訪れる患者さんたちの診察にあたっている精神科の医師の中には、「足るを知るという心の持ち方ができていないと、結局お金がいくらあっても精神的に充実したシニア・エイジを過ごすことはできない」と、異口同音に指摘する人たちが存在します。これからシニア・エイジを迎える者の一人として、皆さんと一緒に、今回はこの“知足”の思想 を重要視している複数の精神科医たちのアドバイスに着目してみたいと思います。●「退職後に数千万円が必要という言葉に惑わされてはいけない」と言う保坂隆先生『精神科医が教える50歳からのお金がなくても平気な老後術』などの著書がある精神科医の保坂隆先生は、『マスコミやネット上に溢れる「退職後に数千万円が必要」といった言葉に惑わされてはいけない』と言っています。お金はその人の人生観やライフスタイル、家族状況、生活環境、健康状態などによっていくら必要になるかが全く違ってくるため、老後に数千万円は必要だといったような、金融資本ビジネスの立場から庶民の不安を煽るような言説を鵜呑みにしてはいけない ということです。また保坂先生は、**********『慎ましい暮らしでも明るく過ごしている人もいれば沢山お金を持ちながら不安でたまらないという人もいる。生き方を分けるのは、ものの捉え方である。人と比べず、不要な物は持たず、身軽に、自分流で、低く暮らし高く思う。このような心の持ち方ができていればシニア・エイジの毎日を心から楽しんで暮らすことは誰にでも可能である』**********と言っています。●「世間体を過剰に意識したらいくらお金があっても足りない」と言う吉本博昭先生次にご紹介するのは、“内観療法”という心理療法の第一人者でもある、医師で精神科アイ・クリニック(富山市)を開院する吉本博昭先生の見解です。現役時代に収入が比較的多かった人たちを、一転して“老後破産”へと追い込んでいく原因として最も大きなものが「病気」と「介護」であることは藤田孝典さんも指摘していますが、吉本医師は内観療法研究の機関誌『やすら樹』に寄稿した『医療と内観~知足(ちそく)~』という文章の中で、以下のような主旨のことを述べておられます。『知足(ちそく)という思想は中国の哲学者・老子が書いた「老子道徳経」に出てくるもので、「足るを知る者は富む」すなわち「今あるものの中に積極的に喜びを見出す生き方ができている者は幸いだ」という考え方である。老子の思想と数多くの共通点を持つ中国仏教の禅宗にも同様の概念があり、京都の龍安寺にある蹲踞(つくばい)に記された「吾唯足知(われ、ただ、たることをしる)」という言葉も老子の理念と同じ意味である。自分は精神科の医師として、「この患者さんは知足という考え方を持ってさえいれば病気にならなかったのではないか」と思うことがとても多い』そして吉川先生は、『境界性パーソナリティー障害とまでいえなくても、他人の生活水準より低いことを必要以上に恐れたり世間体を過剰に気にしていたらお金などいくらあっても足りないし、心身の健康という意味でもきわめて不安定な状態と言わざるをえない』といった主旨の結論づけをされているのです。●老後破産に陥ってしまった元プチ富裕層の人たちによく見られる傾向とはそれでは、保坂隆医師や吉本博昭医師らが異口同音に述べる“知足の心”という概念を念頭に置きながら、藤田孝典さんら社会福祉の専門家の人たちが共通して指摘する、“老後破産に陥ってしまった元プチ富裕層の人たちによく見られる傾向”についてまとめてみましょう。筆者がみる限り、ざっと次のような点を挙げることができます。●(1)持ち家にこだわるがゆえに身動きがとれなくなってしまった現役時代の収入に比較的恵まれている大企業のサラリーマンの場合、住宅ローンが難なく組めるがゆえに、ややもすると分不相応な持ち家や分譲マンションにこだわる傾向があります。同僚に対する見栄もあったでしょう。ところがこれが意外とくせもので、自分や家族が思いがけず大病を患ったり介護を要するようになったりしたときに、ローンがあるがために身動きがとれず 、賃貸住宅で暮らす人のように安い家賃の住居に柔軟に移ることができずに破たんしてしまう。こういうケースはしばしばみられます。●(2)学費が払えたがために無理をして子どもを私立学校に通わせてしまった私立の中高一貫校の学費を何とか払っていけるだけの収入があったがために、無理して子どもを私立に通わせ、生活が苦しくなってしまったというケースもよくみられます。無理をしてでも将来少しでも収入の高い仕事に就けるようにとの親心はわかるのですが、藤田孝典さんは言います。**********『最近では無理して私立中高・有名大学を卒業しても就職した会社が世間一般では一流企業と呼ばれているにもかかわらず内実はブラック企業で、うつ病になるとか、会社を辞めて再就職できないケースも多い。そうなると30歳前後の子どもを定年退職してから養わなければならず、親の年金頼みの子どもによって老後に経済破たんしてしまう例が珍しくありません』(『週刊現代』2015年11月6日号より)**********●(3)プライドのせいで定年後に就ける職がないため年金以外の収入が皆無定年退職後に20年〜30年もの人生が待っている今の超高齢化社会では、リタイアした後でも年金以外の収入があった方が安心です。ところが、現役時代に比較的高い収入を得ていたような人たちは中途半端なプライドが邪魔をして 、「警備員なんかできない」「駐車場の交通整理など無理」のように“○○したくない”が先に立ってしまう傾向があります。これに対し、比較的低収入だったシニアの人たちはつまらないプライドが無いため、倉庫管理員でも清掃作業員でも抵抗なくこなし、結果的に60代以降の継続的な収入では元プチ富裕層の方が少なくなってしまうきらいがあるのです。----------いかがでしょうか。上記の他にも、「一度手にした生活水準をどうしても落とすことができなかった」とか、「どうしても見栄があって第三者にSOSを発信することができなかった」といった傾向が指摘できるかもしれません。こういった傾向は、保坂隆医師や吉本博昭医師らが言う“足るを知る”という心の持ち方ができていないということと関連するように思いませんか?現役時代にそこそこ高収入であった人の方が老後破産に陥りやすい という傾向を“自業自得”のように評するのではなく、知足の心を持って生きないことには結局は誰しも穏やかで充実したシニア・エイジを過ごすことはできないのだということの教訓にすべきなのではないでしょうか。【参考文献】・『精神科医が教える50歳からのお金がなくても平気な老後術』保坂隆・著・『一生お金に困らない老後の生活術』保坂隆・著・『下流老人一億総老後崩壊の衝撃』藤田孝典・著●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)●モデル/TOYO
2016年11月22日こんにちは、ファイナンシャルプランナーでライターのyossyです。皆さんは、「老後破産 」という言葉を聞いたことがありますか?テレビ放送で“老後破産”している高齢者の現状が紹介されて以降、波紋を呼んでいます。今回は、老後破産とはどんな状況なのか、どんな人が陥りがちなのか、見ていきましょう。●年金だけでは生活していけない“老後破産”2014年9月に放送された、NHKスペシャル『老人漂流社会 “老後破産”の現実』。そのなかでは、多くの独居高齢者世帯が生活保護世帯よりも低い収入しかなく、困窮している現状が紹介されました。基本的には、収入が低いにも関わらず生活保護を受けておらず、破産状態にあることを“老後破産”と表現します。●老後破産に陥りやすい人の特徴5つでは、どんな人が老後破産しやすいのでしょうか。5つのポイントに分けて見ていきましょう。●(1)定年後は悠々自適の生活を送るつもりで、働く気がない「ずっと頑張ってきたんだから、定年後はゆったりとしたい」と考え、定年後に働かないでいると困ったことになるかもしれません。年金の受給開始年齢が定年よりも後だったら、その間は貯蓄で生活をつないでいくしかなくなってしまいます。貯蓄がみるみる減り、後々の生活がどんどん苦しくなっていってしまいますね。健康状態によっては働けない可能性もありますが、できる限り健康に気を配り、長く働けるようにしたいものです。●(2)生活レベルを下げられない意外と高収入だった人がなりがちとも言われる老後破産。現役時代よりも収入が減っているにも関わらず、無駄にプライドが高く、生活レベルを下げられない人 は多いものです。早い段階から長期的なマネープランを立てて、収入と支出のバランスを見て、冷静になっておく必要があるでしょう。●(3)貯蓄をせず、定年後に高額の支出が残っている住宅ローンの返済や子どもの教育費などの大きな出費は、現役時代にしっかり完済する、貯蓄しておくなどの対処をする必要があります。先延ばししておいた大きな出費は、老後の生活を苦しいものにさせてしまうのです。また、もちろん老後のための貯蓄も必要ですね。そういった貯蓄をせずに毎月の収入やボーナスを使い切ってしまっているなら、一度生活レベルを見直しましょう。早めが肝心です。●(4)プライドが邪魔をして人に頼れない「国の世話になるわけにはいかないから、生活保護は申請できない」「親族にはこの状況を知られたくない」など、プライドが邪魔をして誰にも相談できずに苦しんでいる 高齢者が多いと言います。早い段階から相談すれば、早く解決できるケースもあるでしょう。●(5)自分の老後やリスクを想像できていない人間、年をとれば病気しがちになり、医療費もかさみます。配偶者に先立たれる可能性や、介護をする可能性だって十分にあるでしょう。近年は若者の雇用が不安定なため、子どもが自立できなかったり、リストラされたりして同居するケースも増えているようです。そのときになってから、「老後の支出がこんなに多いなんて……」と後悔する前に、あらかじめ備えられるリスクには備えておきたいものです。----------生きていれば、誰もが年をとり老後を迎えます。「今は若いから関係ない」と楽観視していると、高齢者になってから苦しい生活を送ることになるかもしれないのです。住宅を購入するとき、子どもの教育プランを考えるとき、保険を検討するとき、毎日のちょっとした贅沢、その一つひとつが老後に影響を与える可能性もあります。ぜひ、早いうちから長期的なマネープランを立てておきましょう。【参考リンク】・老人漂流社会”老後破産”の現実 | NHKスペシャル()●ライター/yossy(フリーライター)
2016年10月03日こんにちは、ライターの渦マキです。今、増税や年金制度が重くのしかかり、老後を心配する中高年が増えています。「老後の資金として○千万円が必要」などさまざまな意見があり、焦りや不安を抱えて暮らしている人も少なくないでしょう。筆者は、現在自動車での移動が必須であるような田舎に暮らしていますが、ご近所の方たちはほとんどがこの近隣出身ではなく、お仕事を引退し、新築したり中古住宅を購入したりして“田舎暮らし”を選んだ年配の方たちです。ところで、持ち家と賃貸とでは、どちらが老後の生活に余裕が持てるのでしょうか?目次持ち家と賃貸、どっちが得?“都会に住み続けるか、引退後田舎暮らしを始めるか”という選択もさいごに●持ち家と賃貸、どっちが得?●持ち家の場合持ち家は、ローンを支払っていれば月々の負担は大きいもの。子どもの成長とともに家計の出費も増えていきます。働き盛りで夫婦共働きであれば負担は軽減されますが、支払いをしているあいだは大変です。しかしながら、終わってしまえば一気に楽 になります。●賃貸の場合一方賃貸は、家賃の支払いが一生ついてまわります。年収に対して家賃に占める割合が大きくなれば、それだけ生活に余裕がなくなっていきます。老後、年金で暮らしていくには当然負担が大きくなってしまいます。安い家賃の物件に引っ越すなどして、生活費の圧迫をくいとめるなど考えなくてはなりませんね。その代わり、住む場所を変える自由 はあります。筆者の近隣の方たちのように、引退後に田舎で暮らし始めるのもひとつの選択肢でしょう。都会にマンションを購入後、田舎暮らしを勧められてマンションを売却し、移動してこられた方もいるようです。高齢になってくると賃貸物件が借りにくくなるという話もあるそうなので、そこは気になるところです。おそらく、孤独死や認知症などの高齢者独特の問題を考慮してのことでしょう。若いころに比べて、すぐ引っ越して次を見つけるということがしづらくなってきますね。●“都会に住み続けるか、引退後田舎暮らしを始めるか”という選択もずっと都市部に住み続けるのであれば、若いうちにローンを組むなどして住居を持つことが理想です。年金暮らしの家計には、ローンの支払いは大きな負担となってのしかかってきます。年金をもらう年齢になる前に完済できるペースでの支払い計画を立てましょう。せっかく頑張って購入した家を手放してしまうことになれば、そのころは建物の価値は驚くほど下がっています。“家を購入する=財産が残る”という過度の期待は禁物 です。引退後に田舎暮らしを選択するのであれば、土地代や物価が驚くほど安いという利点があります。しかし、田舎では公共機関や医療機関も少なく、交通手段はほとんど車に頼ることになるという一面もあり、一長一短といえますね。●さいごに賃貸か持ち家か?どちらが得か?金銭面を考えれば、どちらも大差はないといえるでしょう。利便性が大事なのか、少し不便でもゆったりと暮らしたいのか。結論は、住む人の考え方にあるのではないでしょうか。忘れてはならないことは、“賃貸に住む”という選択をした場合、老後も家賃の支払いがあるということ。余裕をもって暮らすためには、働ける時期に蓄えをしっかりしておくことが大切になってきますね。【参考文献】・『荻原博子の金持ち老後 貧乏老後』荻原博子・著●ライター/渦マキ(フリーライター)
2016年09月28日【ママからのご相談】45歳の専業主婦、高校生の子どもが1人おります。最近さまざまな雑誌やWebのコラムなどで、老後に必要となってくる資金が3,000万円などという記事を目にして愕然としています。私は、どちらかといえばお金をためることが苦手で、 主人にも「考えなしに余分なお金を使いすぎる」と注意されています。貯金ももちろん考えていますが、現状のムダな支出を減らすことから始めたいです。手近なところから何を変えていくべきでしょうか。●A. まずは日常のムダを減らす心がけを。ご相談ありがとうございます、ライターの渦マキです。老後に必要な資金が3,000万円!?詳細については筆者も後ほど調べてみたいと考えていますが、都会と田舎とでは多少誤差がある と思われます。いずれにしても、今から貯金をしておくに越したことはないですね。そうは言っても、相談者さまの子どもさんはまだ就学中。何かと出費がかさみますので貯金もままならないでしょう。今は“増やすこと”よりも“減らすこと”を考える時期ではないでしょうか……。減らすこととは、ご主人さまも指摘されている“余分な出費”のことです。身近なところから“ムダな支出”の見直しを図るべきかもしれません。●日常生活のムダ遣い習慣4つ長年、無意識に続けているため、ついつい気づかなくなっているムダな習慣。この行動をやめてみるとかなり節約につながってきます 。●(1)つけっぱなし・出しっぱなし照明やキッチンの水を当然のごとく“ぱなし”状態にしていませんか?こまめに消す習慣をつけましょう。●(2)電気ポットで一日中お湯を保温必要に応じてやかんや電気ケトルでお湯を沸かしましょう。●(3)給湯パネルのつけっぱなし考えている以上に待機電力がかかっています 。●(4)コンビニ・100均での不必要な買い物なんとなしにコンビニにブラッと立ち寄ることが癖になっていませんか?“新発売”という文字に誘われて、惰性で1,000円以上の金額をレジで支払うことがままあるものですね。100均では、「安いから」という理由で、いま必要がないものも買い込んでしまいます。----------以上4つの習慣をなくすことで、約1万円の節約 になります。ちなみに筆者宅は、(1)〜(3)までは実施できていました。主人と結婚してから、厳しく注意されながら変えていき今に至ったという感じでしょうか。結婚前までは筆者はこういった節約術には無頓着で、長年一人暮らしに慣れていた主人の方がしっかり身に付いていたといえるでしょう。相談者さまも、苦手な部分はご主人さまと協力しあいながら生活をより良い方向に変えていってはいかがでしょうか。「より良い老後は、夫婦で築いていくもの」ということを念頭に、モチベーションを上げていきましょう。【参考文献】・『PHPくらしラク〜る♪(2016年4月号)』PHP研究所●ライター/渦マキ(フリーライター)
2016年03月30日まだまだ先のように思える老後のこと。しかし高齢者の貧困問題が話題になっているいま、老後に対して経済的な不安を感じる人は少なくありません。そこで考えたいのが、老後の生活の支えとなる年金のこと。会社員として働きながら、将来もらえる年金額をアップさせるにはどうすればいいのでしょうか。今回は、節約アドバイザーのヨースケ城山さんに、年金を自分で増やす方法について伺ってきました。早い段階から、老後に向けた準備をしていきましょう。■1:攻めの「個人型確定拠出年金」で年金を増やす会社が企業年金を実施していない場合は、個人型の確定拠出年金に加入することで節税メリットと60歳以降の年金の増額を狙えます。会社員のおよそ2,000~2,200万人が対象となり、自営業の方も利用可能です。個人型確定拠出年金は、原則60歳まで解約不可。60歳以降であれば年金もしくは一時金として受けることができます。年金受け取りの場合は、5~20年で分割受け取り。受け取りの方法は、自分で自由に選択できます。ただし10年以上の加入期間が必要となるので、40代のうちに加入しなければ60歳から支給されません。城山さんは「現実的には40代前半から少しだけの掛け金で加入しておいて、子どもが独立したら掛け金を多くするという形が望ましい」といいます。個人型確定拠出年金の最大のメリットは、掛け金すべてが所得控除対象となること。そして個人年金をやるよりも節税メリットのおかげで、元本割れのリスクがほとんどないことです。また個人型確定拠出年金が“攻めの年金”と呼ばれているのは自分で運用先を選ぶことができるから。運用次第では高額のリターンも望めるのです。城山さんも「ぜひ、検討してほしい年金です」と勧めています。■2:守りの「財形年金」 で年金を増やす会社が財形制度を実施していて、55歳未満であれば財形年金を利用できます。元本550万円までの範囲で、利息が非課税となります。積立方法は、毎月の給料や夏・冬のボーナスからの天引き。積立期間は5年以上が必須です。たとえば54歳で加入し、5年間積み立てをして増やすこともできます。「最近でこそ低金利であるため魅力が低下していますが、給与から直接天引きされ確実に積み立てられます」と城山さん。なかなか老後のための貯金ができない人にもよさそうです。財形年金の受取期間は、満60歳以降に5年以上20年以内。保険商品の場合は、終身受け取りも可能です。積み立て終了から年金受け取り開始まで、5年以内の据置期間(積立てを行わない期間)も設定できます。財形貯蓄は、確定拠出年金にくらべると”守り”の年金増額になるとのこと。そんなに増えることはありませんが、しっかりと確実に積み立てができるのです。■3:70歳まで「厚生年金」に加入しながら年金を増やす70歳まで厚生年金に加入すると、70歳時に年金受取額が再計算されます。65歳以降ずっと厚生年金に加入していれば、65歳から70歳までの厚生年金の期間を含めて年金受取額が計算されるため、年金額も増えることになります。また65歳以降、途中から厚生年金に加入した場合には、その時から70歳までの厚生年金の加入期間を含めて年金受取額が計算されます。65歳以降70歳まで厚生年金に加入していなければ、70歳時の再計算はありません。ただし65歳未満で働くのと65歳以上で働くのではいくらかの違いがあるそうです。城山さんは「一定の収入がある場合、年金が一部減額または全額減額になるので、どれだけ働くかは注意が必要です」とおっしゃいます。基本的に、年金は裁定請求(受け取る手続き)してもらえるもの。みなさんは「厚生年金」と「厚生年金基金」とでは、請求先が違うことをご存知ですか?厚生年金は、国が運営する公的年金制度。厚生年金基金は、企業によって実施される年金制度のひとつです。城山さんは「これを知らない人が意外と多く、年金をもらい忘れている人が多い」と指摘します。厚生年金は日本年金機構に請求となり、厚生年金基金は加入期間が10年以上の場合はその基金に、10年未満の場合は企業年金連合会に請求を行います。10年未満の場合は自動的に基金から連合会に移換されるのです。しかも厚生年金基金は、1ヶ月以上の加入期間があれば受給することができます。60歳からの受給が可能なため、自分の「ねんきん定期便」などの加入記録の中で厚生年金基金の名称がある場合は、注意が必要だといいます。平成24年度のデータによれば、厚生年金基金の請求漏れの未請求者は13.7万人。企業年金連合会の請求漏れの未請求者は133万人と、受給権者数に対する未請求者の割合は合計20.4%となり、およそ5人に1人が請求していないのが現状だそうです。城山さんは、「結婚などで氏名が変わった、引っ越しをしたという方は60歳にもなっても基金、連合会から連絡がないので自分から請求をしないと忘れられた年金となってしまうので注意して下さい」と話します。おぼえておきたいですね。*会社員だからこそ利用できる制度を使うことで、受け取れる年金額を増やすことができます。余裕のある老後生活を実現するためにも、いまから老後資金について真剣に考えていきましょう。(文/椎名恵麻) 【取材協力】※ヨースケ城山・・・節約アドバイザー、ファイナンシャルプランナー、AFP、住宅ローンアドバイザー、年金アドバイザー。著書は『給料そのままで「月5万円」節約作戦!』(ごま書房新社)。本の内容は、『らくらく貯蓄術。住宅ローン地獄に落ちない為の家計防衛のススメ。』にもまとめられている。ブログ『節約アドバイザーヨースケ城山ブログ』では、節約だけではなく転職活動、著書、社労士、FPのことを配信中。 【参考】※厚生年金基金等の未請求者の状況について-厚生労働省
2016年03月27日いま、「下流老人」や「老後破産」に関するニュースが頻繁に報道されています。定年退職していきなり生活苦になってしまうなんて、絶対に避けたいことですよね。そのためには情報収集をして、老後に備えてお金を貯めておくことが重要です。そこで、節約アドバイザーのヨースケ城山さんに、老後破産を回避するために最低限知っておくべき5つのマネー常識を教えていただきました。年金受給なんてまだまだ先の話だなんて思わず、これらの情報をしっかり頭に叩き込んでおきましょう。■1:厚生年金保険料は平成29年度まで引き上げが続く2004年の政府の年金改革により、厚生年金の保険料は同年から毎年0.354%ずつ引き上げられ、2017年(平成29年)以降は18.3%とすることが決まっているのをご存知でしょうか。今年度は、平成28年9月分~平成29年8月分が18.182%に引き上げられます。当初2004年の改正前は13.58%だったので、ほぼ5%の値上げです。標準報酬月額28万円(平均的な給与)で計算しても2004年は保険料、38,024円でしたが2017年になると5,1240円となります。その差はなんと13,216円です。労働者負担は労使折半となるので、6,608円。毎月6,608円も2004年と比べて多く取られているのがいまの厚生年金保険料の姿なのです。■2:国民年金保険料も平成29年度まで値上げが続くまた国民年金の保険料も、厚生年金と同じように2005年4月から毎年280円ずつ引き上げられ、2017年(平成29年)以降は月額16,900円とすることが決まっています。改正前は13,300円だったので毎月3,600円の値上げです。自営業などで夫婦2人加入だと7200円もの負担増となっています。厚生年金、国民健康保料で問題なのは値上げの分、貰える額は多くなるかというとそうではないのです。まったく給付額は変わりありません。厚生年金は標準報酬月額、国民年金保険料は払込み月数で計算されるからです。これは重要なことなので、覚えておきましょう。■3:介護保険料はものすごい勢いで値上げしているつぎに、介護保険料。これは40歳から納めるようになっており、公的年金のように「ここで支払終了」という年齢がありません。介護保険料は人が亡くなるまで納め続ける、いってみれば「終身」のようなものです。そして介護保険料は、3年ごとに見なおしが行われます。2015年4月に改定された65歳以上の介護保険料は、全国平均で月5,514円と3年前に比べ542円(10.9%)値上がりしました。もっとも高いのは、奈良県天川村の月8,686円。もっとも低額だった鹿児島県三島村(月2,800円)の約3倍です。このように、介護保険は地方自治体によって基準が違います。全国平均保険料は、2020年度で月6,771円、2,025年度で月8,165円になる見込みといわれています。介護保険制度導入時の2000年には、第1号被保険者の支払う介護保険料の平均は2,900円程度。65歳以上の年金受給者は今後この介護保険の値上げとも戦っていかなくてはなりません。また、介護保険料は年金天引きなので払わないという選択肢もありません。つまり年金から終身でこの介護保険料は取られていくので、使える年金の額が減少するのは確実です。■4:公務員の特権「職域加算」はすでに廃止されている会社員のかたは、公務員を羨ましく思うときがあるのではないでしょうか。しかし、公務員はもう憧れの存在とはいえません。公務員には会社員の企業年金に代わるものとして、「職域加算」という制度がありました。しかし、平成27年10月に共済年金が厚生年金保険に統合されると同時に、この職域加算は廃止さたのです。そのためこれから新たに受給できるのは、統合前の期間(公務員になってから平成27年9月まで)をもとに算出された職域加算のみ。今後の年金に関しては老齢年金が名前を変えており、年金払い退職給付という名称になっています。職域加算はすべてが終身年金ですが、年金払い退職給付は半分が終身年金で、もう半分は支給期間が10年または20年(一時金に変更することも可能)の、有期年金になるのです。この変更によって、公務員といえども老後は安泰とはいえなくなってきました。■5:民間の退職金減少と同時に公務員の退職金も激減している公務員にとって残念なニュースは他にもあります。「国家公務員の退職給付の給付水準の見直し等のための国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律」が、平成24年11月16日に成立したのです。これにより国家公務員の退職手当は、次のような3段階を経て、平均で約400万円も引き下げられることになったのです。【平成25年1月1日~】平成24年12月31日時点の退職手当より、平均で約140万円引き下げられます。【平成25年10月1日~】 平成24年12月31日時点の退職手当より、平均で約280万円引き下げられます。【平成26年7月1日~】平成24年12月31日時点の退職手当より、平均で約400万円引き下げられます。これは、民間の退職手当がここ10年間で400万円以上下がったための緊急措置なのです。いまは、公務員であっても退職金も減らされる時代となっているということ。この傾向は、今後も続くものと思われます。*最後のふたつは会社員のかたには無縁の話かもしれません。しかし、最初の3つを知っていたかたはそれほど多くないはず。城山さんは「これらの値上がりや給付額の減少が老後破産へとつながっていく」とおっしゃいます。常日頃からこのような情報を集めて、老後への備えをしっかりしておきましょう。(文/水野渚紗) 【取材協力】※ヨースケ城山・・・節約アドバイザー、ファイナンシャルプランナー、AFP、住宅ローンアドバイザー、年金アドバイザー。著書は『給料そのままで「月5万円」節約作戦!』(ごま書房新社)。本の内容は、『らくらく貯蓄術。住宅ローン地獄に落ちない為の家計防衛のススメ。』にもまとめられている。ブログ『節約アドバイザーヨースケ城山ブログ』では、節約だけではなく転職活動、著書、社労士、FPのことを配信中。
2016年03月10日連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――昔に比べると、今はお金と接する機会が減っています。お給料は口座振り込みで、受け取るのは明細書だけ。それすら、ペーパーは発行されずネットで確認するという会社もあるでしょう。その方が効率的だし、現金を落としたり盗まれたりする心配もないというメリットはありますが、"お金"を受け取ったという実感はありません。といっても、もう既にみんな慣れてしまっていると思いますが。支出に関しても、口座引き落としやクレジットカード払いが増えて、現金をおサイフから出すことが減りました。光熱費や通信費などはもちろん、スーパーで食料品や日用雑貨を買うのにクレジットカードを使う人も増えています。さらに、ネットショッピングではクレジットカードが必須。今や、クレジットカードのない生活は考えられません。○つい使いすぎてしまうクレジットカードただ、クレジットカードは現金がなくても買い物ができることから、つい使い過ぎてしまうという人もいるのではないでしょうか。そのせいでお金が貯まらないということもあるかもしれません。使い過ぎてしまうという人はクレジットカードを使わないようにするのが一番ですが、なかなかそうもいかないので、使い方を工夫しましょう。クレジットカードはお金を払った実感がなく、いくら使ったかわかりにくいのが難点。なので、カードを使ったらその日のうちに、何にいくら使ったかをメモするのを習慣にするのがコツです。つまり、「カードを使った」=「お金を使った」ということがわかるように記録するのです。それは、手帳でもいいし、スマホのメモアプリでも構いません。記録することによって「使った」ことが実感できるし、翌月以降に支払わなければいけない金額もわかり、カード代金の引き落とし日に口座の残高が足りないということも防げます。いちいちメモするなんて最初は面倒くさいかもしれませんが、我慢して続ければ習慣として身についてくるはずです。○使いすぎの原因は「タイムラグ」にある老後破産を回避するためには、先取り貯蓄で計画的にお金を貯めていくことが大切。収入からまず貯蓄をして、残ったお金を支出に回すというやり方ですね。クレジットカードの場合、問題になるのは、買い物した日と代金を支払う日のあいだにタイムラグがある点です。「今月はもうお金がない」という状態でも、クレジットカードなら買い物できてしまいます。でも、確実に翌月以降に支払いがあるのですから、その月は使える金額が少なくなり、お金が足りずにまたクレジットカードで買い物をする……。これを繰り返していたのでは支出をコントロールできません。そこで、クレジットカードで買い物をしたら、メモしておくと同時にその時点でお金を使ったことにしてしまいましょう。使った金額をおサイフから出して、取り分けておくのがベストです。それも面倒だということであれば、クレジットカードではなくデビットカードを使うことを考えてみてはどうでしょう。デビットカードはクレジットカードと異なり、使った時点で銀行口座から代金が引き落とされます。口座残高以上は使えないので、買い物しすぎる心配がありません。最近はデビットカードが使えるところが増えていて、ネットショッピングでも利用可能。カードによっては利用金額に応じたキャッシュバックもあります。「ついクレジットカードを使い過ぎてしまう」、「クレジットカードはお金の管理がしづらい」という人には、デビットカードがおすすめです。
2016年03月04日実は、老後という言葉は戦後に生まれたものです。その証拠に、以下の数字を見てください。1947年の平均寿命:(男性)50.06歳(女性)53.96歳1980年の平均寿命:(男性)73.35歳(女性)78.76歳2014年の平均寿命:(男性)80.50歳(女性)86.83歳終戦直後の昭和22年日本人の平均寿命は、男性約50歳・女性約54歳しかありません。つまり、60年前まで日本に「老後」という価値観は存在しなかったことになります。いい方を変えれば、いまの60代は「老後」という言葉が誕生してから「老後」を迎えている初めての世代となるわけです。ですから、「老後にいったいどのくらいのお金が必要なのか?」ということも、日本人はいま初めて体験しているところなのです。では、いったい老後にはいくらのお金が必要なのでしょうか?■老後までに3000万円ぐらい必要!総務省が出した統計調査によれば、毎月の生活費に62,326円の不足が発生します。老後が仮に20年続くとすれば、約1,500万円の不足です。しかし、これはあくまでも生活費の不足を補うための金額。他に住宅リフォーム費用や医療費・介護費用、葬儀等の準備資金などを考慮すると、ざっと2,500万円から3,000万円の金額を老後までに準備する必要があります。たとえば現在35歳の夫婦が、65歳までに3,000万円を準備しようとなると毎年100万円ずつ老後資金を貯めていかなければなりません。こう考えると、誰でも焦ってしまうものではないでしょうか。■老後の資金を貯めるタイミングが大事しかし、焦って個人年金保険や投資信託に手を出すのは禁物です。そこには、老後資金の準備を焦られて金融商品を売ろうとする営業マンがたくさんいるから。大切なのは、冷静になること。30代のいちばんのテーマは「マイホームをどうするのか?」と、この先に増える「教育費の準備」です。まず、この大きな山を乗り越える必要があります。慌てて、老後資金の準備を金融商品ではじめてしまった結果、教育費のピークに預貯金がなくなり、その金融商品を解約する。そんなケースをよく見かけます。金融商品は、長期運用することでメリットが生まれるもの。多くの場合、中途解約では損失が出てしまいます。その結果、家計のお金を減らしてしまったのでは本末転倒です。つまり、老後の資金の上手な貯め方のコツは、「どのタイミングからはじめるのか?」ということなのです。現実的には、教育費のピークが終了したタイミングからでないと、とりかかるのが難しいケースが多いでしょう。子どもが大学を卒業するときに自分が55歳だったとすれば、「その先10年間でどれだけ老後資金を貯めることができるのか?」ということになります。それ以降は子ども教育費がかからないのですから、ちゃんと取り組めば年間数百万円単位でお金を貯めることが可能です。しかし、多くの家庭では子ども教育費が終わると気が抜けてしまい。家計の支出が大雑把になってしまうのです。そこを引き締めていけば、意外と老後の資金は貯まります。ただ、家庭によっては子ども教育費が終わるタイミングと老後に入るタイミングとが重なるケースや、住宅ローンが多すぎて繰り上げ返済をすると老後のお金がなくなってしまうこともあるでしょう。そうならないように、まずはライフプランをちゃんと作成することが必要なのです。(文/ファイナンシャルプランナー・岡崎充輝) 【参考】※岡崎充輝(2015)『20代・30代で知っておきたい これからかかるお金で困らない本』日本実業出版社
2016年03月01日誰でも少なからず、老後の生活には不安を感じているもの。「年金生活でやっていけるの?」「老後資金はいくら貯めたらいいの?」など、お金の心配は避けられません。特におひとりさまの場合は、老後資金を自分で準備する必要があります。とはいえ将来のイメージも漠然としているだけに、なかなか貯金ができないという人も少なくないでしょう。そんな人にぴったりなのが、将来の出費を把握できるライフプランシートの作成。いきなり「シートの作成」なんて聞くとハードルが高く感じるかもしれませんが、難しく考える必要はなさそうです。「漠然とした老後不安をかかえている人は必読」と話題を呼んでいる『おひとりさまの老後のお金と暮らしの本』(マイナビ出版)編著者の百田なつきさんに、ライフプランシートで上手に貯金する方法を伺ってきました。■ライフプランシートで目標を立てやすくなる!ライフプランシートとは、今後のイベントと予測される費用を書き込んでいくもの。そうすることで必要な出費がわかり、老後のお金のことがイメージしやすくなるといいます。それだけでも不安解消になり、貯蓄の目標を立てやすくなるはず。たしかに明確な目標があった方が、お金を貯めやすいですよね。肝心のライフプランシートには、「西暦」「自分の年齢」「仕事の予定」「夢やイベント」「必要な出費」の項目をつくって記入しましょう。大げさに考えることはありません。百田さんは、「先のことはできる、できない、お金のことは考えず、やりたいことを書いていきましょう」とアドバイスしています。金額がわからないときは「?」でもOK。これなら気軽にできそうですね。毎日の生活のなかで私たちは、目先のことばかり考えがちです。しかしライフプランシートを書くことで、老後の生活と資金の目標がわかりやすくなり、今後の生き方の見通しが立ってくるというわけです。では、具体的にどのように書いていけばいいのかをご紹介しましょう。■ライフプランシートの項目ごとに書くべきことまず「仕事の予定」の項目には、「昇進試験」や「勤続20年」など、昇進や昇給の目安や予定、目標を記入します。ただし、人によって退職したり、転職をする予定があったりするもの。そのキャリアプランも書いておくことで、収入や貯蓄の目安がわかりやすくなるといいます。ハッキリと決まっていなくても「このぐらいで転職したいな」という目安を記入してみましょう。「夢やイベント」と「必要な出費」の項目には、マンション購入(頭金200万円)、法事(3万円)、海外旅行(30万円)、ライブ(1万円)など、普段の生活費とは別にかかっているものを書いていきます。これらの費用を記入しておくと、「かくれ出費」も把握することが可能。かくれ出費とは、毎月決まって必要な生活費以外に、年に1度または数年に1度必要になる出費のこと。いまはボーナスや貯金から出せても、年金暮らしになればボーナスはなくなり貯蓄も増えないため、老後資金が必要になってくるわけです。浪費する予定がなくても、スマホやパソコン、電化製品などは買い替える時期があります。そこで、その予定と出費を書いておきましょう。金額の大きさは人それぞれなので、何万円以上をシートに記入するという決まりはありません。ただし、ボーナス払いにしているものや分割で買ったものなどは記入しておくとよいそうです。■10年分のライフプランシート作成するヒント実現したい夢がなく、10年後もいまと変わらない平凡な毎日を送ることを目標にしている人もいるでしょう。そのような人は、「月2万円の貯蓄を次の年には2万1,000円にするなど、地道に貯める目標を立てるといいと思います」と百田さん。それなら無理なく、老後資金を増やしていけそうです。また、10年後も変わらないとはいっても、マンションの更新や引っ越し、家具や電化製品の買い替えもあるため、そういった項目や費用の目安もシートに記入しましょう。そしてライフプランシートには、20年、30年後の予定も入れておくとよりよいとか。年金の目安や退職金、定年後も働くのかなどの予定を書いてみましょう。ただ、どうしても30年先のことを考えられないなら、まずは10年分の作成からはじめてみてもよいそうです。*おひとりさまが少しでも安心して老後を過ごすためには、早くから備えをはじめることが大切。ライフプランシートで、目標に向けて貯金をしていきませんか?今回アドバイスをくださった百田さんの著書『おひとりさまの老後のお金と暮らしの本』には、誰にも聞けない老後のリアルな話が、マンガと詳しい解説でわかりやすく紹介されています。本書のなかに書き込みシートもあり、簡単に自分のライフプランシートを作成可能。人生の後半戦に向けたマネープランとライフプランがわかる一冊、ぜひ手にとってみてください。(文/椎名恵麻) 【参考】※百田なつき・にしだきょうこ(2015)『おひとりさまの老後のお金と暮らしの本』マイナビ出版
2016年02月23日みなさんは、自分自身の老後の生活費について考えたことはありますか?総務省「家計調査」(平成26年9月末現在)によると、60歳以降世帯の平均支出額は60~69歳の世帯で月24万9,214円、70歳以降の世帯で月20万487円です。一方、年金の平均受給額は、国民年金で5万4,414円、厚生年金で14万4,886円。年金だけでは、生活費が月あたり10万円以上も不足してしまいます。現役時の1/2から2/3程度の生活費で暮らしていかなくてはならない年金生活。お金の使い方を改めないと、家計が成り立たなくなっていきます。そこで、節約アドバイザーのヨースケ城山さんに、年金生活でも無視できない7項目について、具体的な金額の目安と見なおしポイントをお聞きしました。■1:住宅費住宅費が0円になれば、年金生活には圧倒的に有利です。家・マンションを購入した場合、住宅ローンは年金生活に入る前に完済しておくこと。最悪でも退職金で完済できるようにしましょう。さらに、修繕費・管理費を現役時代から積み立てていければ備えは万全。月額3万円として、老後10年間で360万円、20年間でも720万円を現役時代に用意できれば、余裕のある年金生活を送ることができます。■2:保険関連費老後は、現役時代とは保険の目的が異なってきます。退職する年齢となれば、子どもが独立している人も多いはず。死亡保険金は、配偶者の生活費と自分の葬式代がまかなえれば充分。保険料も削減できます。一方、医療費のための備えが重要になってきます。といっても、公的保険に加入していれば高額医療費制度も利用できるため、民間保険では最低限の医療保障と死亡保障がカバーできればよいと考えます。目安は夫婦2人で4,000円程度。ネット生保などで、終身定額で男女ともに50歳時加入でも月額2,000円を切る医療保険が出ています。■3:通信費年金生活家計の通信費は、インターネット、固定電話料金、スマホ・携帯電話料金を合わせて夫婦2人で月額1万円が目安、と城山さん。格安スマホなら、1台あたり月額2,500円前後。家族割が適用されるプランにすれば夫婦それぞれで持っても5,000円以下に抑えられますし、固定電話とインターネット通信費は、セットで申し込めば5,000円を切るプランがいくつもあります。■4:車両費まずは、車が必要かどうかを見なおしましょう。車を持つ場合も、年金生活に入る前に車両を一括購入する、軽自動車に買い替える、など老後生活費を圧迫しない工夫が必要です。個人リースという方法も。城山さんのお勧めは「コスモ石油スマートビークル」。支払いにはリース料、車検、税金、保険、定期メンテナンス料や消耗品費が含まれ、月額の費用はダイハツミライース(排気量660ccでA/T、駆動2WD、5ドア)で月額22,680円。フルメンテナンスも魅力です。■5:食費総務省統計局によれば、高齢無職夫婦世帯(夫65歳、妻60歳以上)の食費は平均額で6万円以上。家計でもっとも大きなウエイトを占めますが、1日あたりだと2人で2,000円。外食費も含まれますから、妥当な金額でしょう。城山さんも「これはこのままでいいのではないでしょうか?健康のためにも食事はとても大事です。たまには外食も年金生活者にとってはハレの舞台です。6万円という金額をキープすることができれば問題はないように思います」とのこと。なるべく自炊する習慣をつければ、5万円、4万円に削減することも可能。充分おいしいものを食べて生活できます。■6:教養娯楽費教養娯楽費とは、本や雑誌など趣味関連の支出のこと。城山さんは、「年金生活者になったらお金を使わない趣味を持ちましょう。月1万円程度が目安です」と話します。お金を使わない趣味といっても多種多様。ブログを書く、SNSでいろいろな人と交流する、ウオーキングやジョギング、マラソンといったスポーツ。読書も、図書館を利用すればお金はかかりませんし、自分史もkindleなどで手軽に出版ができます。限られた予算の中で、楽しめるものを工夫していきたいものです。■7:交際費「切り詰めがちなのは交際費ですが、これは削ってはいけない項目だと思います」と城山さん。なかでも同窓会は積極的に参加してほしいそうです。年金生活者になってからは、疎遠になっていた人たちと会える機会が増えます。残された時間は若者にくらべれば少ないですから、旧交を温めることは楽しい思い出になるはずです。「とはいえ過度な交際費のかけすぎは生活を圧迫します。無理のない程度、月2万円程度が理想ではないでしょうか」(城山さん)*いまから老後どのような暮らしをしたいかイメージし、余裕資金を積み立てていくことで、豊かな老後生活が実現できます。お金をかけるところにはかけて、楽しい老後を過ごしたいものです。(文/よりみちこ)【取材協力】※ヨースケ城山・・・節約アドバイザー、ファイナンシャルプランナー、AFP、住宅ローンアドバイザー、年金アドバイザー。著書は『給料そのままで「月5万円」節約作戦!』(ごま書房新社)。本の内容は、『らくらく貯蓄術。住宅ローン地獄に落ちない為の家計防衛のススメ。』にもまとめられている。ブログ『節約アドバイザーヨースケ城山ブログ』では、節約だけではなく転職活動、著書、社労士、FPのことを配信中。【参考】※家計調査―総務省統計局※家計調査報告(家計収支編)平成23, 24, 25,26年平均速報結果―総務省統計局※コスモスマートビークル―コスモ石油マーケティング
2016年01月29日40歳代後半から50歳代にかけては、そろそろ第二の人生が気になる時期。老後の資金プランについても考え始める人も多いと思います。資金プランというといくらのお金をどのように用意するかということばかりに目が行きがちですが、老後の保障のことも一緒に考えてみてください。○定年と同時に保険料払い込みが終わる保険はそのまま継続すべき?若い頃に加入したままずっと見直しをしていない保険は、どのような契約になっているのか一度確認してみましょう。メインの保険は保険料の払い込みが60歳前後で終わるという商品に加入している人も多いはず。死亡保障の保険の場合、払い込み期間が終了すると同時に死亡保障額がぐんと低くなる契約が多いので、これまでの保障のままのつもりでいると、老後に「アテにしていた保険金がもらえなかった」ということになりかねないので注意が必要です。現在の保障額が何千万円もあったとしても、実はそのほとんどが掛け捨ての保障である可能性が大きいため、保険料の払い込みが終わった後は数百万円しか保障が残らなかったということも。掛け捨てが良くないとか死亡保障が数百万円だから老後の保障として少なすぎるということではなく、これまでかけてきた保険に対しての期待と現実が大きくかけ離れているケースが多く見られるので、早めに現実的なところを冷静にチェックしておき、保障内容を見直すべきところは早めに手を打っておくことが肝心です。保障が減るとわかって慌てて損をしてしまわないためにも事前の確認は必須です。○老後の死亡保障はいくらあれば安心なの?実際、老後の死亡保障額は300万円~500万円程度、低い人だと150万円ぐらいになってしまう保険に加入している人がほとんどです。この老後も残る保障額は終身保険といって一生涯保障される部分。それ以外の数千万円は掛け捨てで安心を買っているのだと割りきりが必要です。さて、残った終身保険の保障額で老後の死亡保障が足りるのかどうかということが問題です。60歳前後から終身保障の保険に加入するには、保険金額とほぼ同じだけの保険料を払わなければならないケースも。保障を充実させるために老後資金を使ってしまうという事にもなりかねないので慎重に検討することが求められます。死亡保障は残された家族が困らないためのお金なので、子供たちが独立した後は夫婦お互いが万一のときに残されたほうが生活に困らないだけの保障を確保しておくというのが基本的な考え方です。その場合、年金がいくらもらえるのか、老後資金として用意しているお金がいくらあるのか、持ち家かどうかなどによって必要額は違ってきます。一人残されたときには遺族年金と貯蓄でなんとか生活できるのであれば、極端な話、葬式費用程度あれば死亡保障は十分と割り切ることもできます。若いころは貯蓄も少なくそれに対して必要な支出が多いため、万一のときの大きな保障が必要でしたが、そのころの感覚で保険を準備する必要はありません。老後のための資金準備がきちんとできていて、相続など特別な資金準備の必要性もなければ死亡保障はなくてもいいケースもあります。ですから、死亡保障がガクンと減ってしまうことを極度に心配し、必要もない保険に加入することがないよう、しっかり保険で準備しなければならないお金があるのか検討してください。○医療保障が心配だけどこれから加入できる?医療保障に関しては、メインの保険に特約で入っているだけという人は、終身タイプの保険を追加することも検討できます。死亡保障の保険に吹かされている保険は、80歳などで保障が満了してしまうものが多いからです。ただし、医療保障も老後の資金プランをどのように設計しているかによって追加で加入が必要かどうかを冷静に判断してください。病気などのための備えも含めて老後資金を作っているなら、あえて保険に入る必要はありません。がんなど深刻な病気になったときに特別な治療を望む場合には、通常の医療保険ではなく、治療費を補償するタイプの保険で備えるという選択もあります。老後は、何でも保険でリスクに備えるのではなく、蓄えも考慮し必要な保障だけ選んで確保する方向で見直しを考えてみましょう。<著者プロフィール>ファイナンシャルプランナー 堀内玲子証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て1993年に独立。1996年ファイナンシャルプランナー資格を取得。FPとして金融・マネー記事などの執筆活動を中心に、セミナー講師、家計相談などを行う。著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別ライフスタイル別生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)など。
2016年01月19日平均寿命80歳を超える現代、みなさんは自分の老後がどうなると想像しているでしょうか。フィデリティ投信が2014年に行った女性1万4,000人アンケートで、アラサー女子の未来観を聞いています。■独身か既婚かで変わってくる「将来のイメージ」2014年3月末から4月にかけて全国の勤労者3万人(うち1万4,109人が女性)に行ったインターネット調査で「退職後の生活のイメージ」を聞きました。女性の退職後の生活のイメージ(単位:%)20代女性は既婚・未婚を問わず「のんびり・マイぺース」型がもっとも多くなっているのが特徴です。一方、30代、40代では、既婚と未婚で大きなちがいが出ています。既婚者は「明るく・楽しい」が一番多く、未婚者は「つらく・不安」が一番多いのです。いまの高齢者と比べると?「いまの高齢者と比べて自分の老後はどうなるのか」という質問では、驚きの結果がでています。女性が考える退職後の生活の程度―現在の高齢者と比較して(単位:%)20代女性は既婚・未婚ともに「いまの高齢者よりよい生活が送れると思う」と答えた人は、全体の1割にもおよびませんでした。さらに、「いまの高齢者より悪くなっていると思う」人が5割近いのです。皆さんかなり悲観的に考えているようですね。老後に必要な生活費のイメージは?老後の生活費は、働いていたときと比べてどのくらい減るのでしょうか。交際費などは少し減るような気がするものの、「よくわからない」というのが本音かもしれません。退職における生活費の変化(単位:%)アンケート結果でも、20代女性の5割近くが「わからない」と答えています。それ以外の回答で多かったのが「働いていたときの3割未満/5割未満」です。みなさんかなり減少すると考えているようです。実際にはどうでしょう。過去の家計調査の結果などから分析すると、現役時代の「7割程度」という目安がみえてきます。老後にかかる生活費のイメージがつかないために、安く見積もりすぎてしまったようですね。このアンケートの結果をみると、とくに20代女性は、「退職した後の生活を理解しないまま」(=5割近くが「わからない」と答えています)、「その生活を心配している」(=5割近くが自分の老後の生活は、いまの高齢者より悪くなると考えています)といえそうです。見通しを立てるところからはじめてみましょう退職後の生活なんて、いまから想像できないですよね。でも、目安をもつことは意外と簡単にできるのです。アンケートに回答した50代未婚女性の平均年収は約345万円です。「退職後は退職直前年収の7割が必要になる」とすると、年間で約240万円。60歳で退職して仮に85歳までと設定すると、6,000万円(345万円×7割×25年)が必要となります。このうち、公的年金でカバーできる部分もあります。女性の受給額(厚生年金受給者の場合)は、年間平均で110.0万円。※1受給は65歳からとなりますので、単純計算で、20年間で2,200万円(110.0万円×20年)もらえます。この場合、差額の3,800万円が自分で用意する必要のあるお金といえます。ただし、今後一層の高齢化が進展する日本で、いまの年金水準を将来も期待することはむずかしいといわざるを得ません。支給額が減り、自助努力で用意しないといけない金額は、より大きくなると思っておいたほうがよさそうです。「わからないから不安」から「実際の必要額を知り、早い時期から準備」という次のステップへ、一歩踏みだしてみませんか。※1出典: 「平成24年老齢年金受給者実態調査」(厚生労働省)
2015年12月27日老後資金は3,000万円必要といわれますが、「そんなに貯める自信がなくて不安」だという人も多いのではないでしょうか。しかし『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』(扶桑社)の著者・佐藤治彦さんによると、この金額はナンセンス。老後資金は1,500万円でも3,000万円でもないのだそうです。なぜならお金がいくらあっても、不安はなくならないからです。それに、人によって必要なお金も異なります。もっとも大切なのは、しっかり家族と話すこと。ケチケチ節約しても、家庭不和を招いたのでは意味がありません。また、自分にはいくら必要なのか、しっかり計算することも大切です。忘れるべきでないのは、健康、家族との話し合い、そして知識。そして、老後に備えるためにやってはいけないことがあるのだといいます。いくつかご紹介しましょう。■1:節約と我慢ばかりする最近の老後資金本は、節約と我慢ばかりを強いているような気がします。ですが、節約ばかりしていても、あまり意味はありません。それよりは、時給800円のパートを週に1回した方がお得なこともあります。我慢ばかりしていませんか?それは本当に老後のためになっていますか?節約ばかりではなく、無駄な買いものをしていないか注意しましょう。不安にかられて1円2円を節約しても、「ちりも積もれば」せいぜい「小山」です。■2:バーゲンで洋服を買うバーゲンで服を買うのはやめましょう。安いからとバーゲンで買っても、それほど着ないはず。どうせなら流行の品をいち早く買って、着倒して、オークションに出しませんか?正価でもこだわって買いものした方が、長く着られるので結果としてお得。買いものにはこだわりを持つことをおすすめします。■3:チョコチョコ買いをするまた、チョコチョコ買いもいけません。たとえばスタジアムや映画館で、「ついでにポップコーンとコーラ、フランクフルトも買おう」といろいろ買ってしまったり。それだけでなく「物足りないから」と晩ごはんも食べたり。そして太って洋服が着られなくなったからダイエット……。こんな生活していませんか?自分が本当に欲しいものしか買わない、そう意識を変えてみてください。■4:キャッシングをするお金が足りないとき、キャッシングを利用していませんか?キャッシングして生活費を補填しても、来月には支払+利息を払わねばなりません。それだけ無駄が積み重なるのです。今月借金をするということは、来月の生活費が減るということ。「今月は予定外の出費があったから」。では、来月はないといい切れるのでしょうか?また、毎月の赤字をボーナスで補填するのもやめましょう。ボーナスは、ボーナスが出た月から、その次のボーナスが出る間までの臨時支出として使ってください。家計を健全に見なおせば、支出の無駄がわかります。そして知らず知らずのうちに貯金体質になっているのです。ギャンブルなど、もってのほか!■5:保険制度の確認をしない保険制度の確認も重要です。保険には民間保険と公的保険の2種類があります。公的年金制度だけでも、遺族年金や障害年金などの制度があります。遺族年金なら、夫が亡くなっても子どもが18歳まで年間100万円がもらえます。厚生年金ならさらに積み増しがあります。これなら、子どもが生まれた時点で1,800万円の生命保険に入っているのと同じことになります。公的年金は払った方がお得なのです。また、「ねんきん定期便」をしっかりと確認しましょう。*なにより大切なのは、「完璧な老後の準備はできない」と覚悟することだと著者はいいます。幸せな老後を迎えるために、家族で、特に夫婦で話し合いましょう。そのためには、知識が必要です。本書を読んで知識をつけ、老後の不安を減らしてくださいね。(文/渡邉ハム太郎)【参考】※佐藤治彦(2015)『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』扶桑社
2015年12月10日年を重ねるごとに、不安になってくるのが老後のこと。一生独身の場合は、ひとりで自分の生活費を確保しなくてはいけません。2014年の日本人の平均寿命は、女性86.83歳、男性80.50歳となっています。ということは、60歳で定年を迎えたとしても、独身女性はそれから25年以上ひとりで生活をしていくことになります。もちろん貯金や退職金、年金などがあって無理なく生活できる人もいるでしょう。ですが、最近では老後破産も問題化しているだけに、いまから自分の老後について知っておいて損はありません。そこで節約アドバイザーのヨースケ城山さんから、おひとりさまがどのように老後を過ごすべきかを伺ってみました。■おひとりさまの老後の家計のイメージまずは、将来の家計イメージを知っておきましょう。総務省「家計調査(2013年)」によれば、60歳以上の「高齢無職単身世帯」の生活費と税・社会保険料は、約15.6万円。対して実収入は約12.3万円となり、約3.4万円の不足分があることに。月3.4万円の不足分を仮に30年分で試算すると、3.4万円×12か月×30年=1,224万円。老後の生活を考えると、生活費だけでもこれだけの額を貯蓄しておく必要があるようです。しかし、もし貯金できなかった場合は、どうすればよいのでしょうか。■老後資金の不足分は働いて稼ぐべき総務省統計局労働力調査(平成25年)の平均データを見てみると、就業率は60歳~64歳で58.9%、65歳~69歳は38.7% 、70歳~74歳は23.3%となっています。注目すべきは、60~64歳の6割近くが定年後も働いていること。10年前と比較すると、60~64歳の就業率は、50.7%(平成15年)から58.9%(25年)に増加しています。定年後は、悠々自適な暮らしを想像する人が多いかもしれません。しかし現実的には多くの人が、60歳以降も働くことで生活費をカバーしていくことになるのです。城山さんは「おひとりさまで貯金がない場合は、最低でも75歳まで働き続ける覚悟が必要です」とアドバイスします。60歳以降も働く場合は、60歳になる前に働き口を確保しておくことが大事だといいます。正社員で60歳まで働いている人は、継続雇用でまずは65歳まで働き続けることを目指しましょう。城山さんいわく、雇用形態は問わず、継続できることが1番大切。60歳でその会社を退職する場合には、退職前に次の働き口を見つけておきましょう。■高齢者でも働ける職種は意外とある定年後のアルバイト探しは、職種を選べば難しいものではないかもしれません。実際に、高年齢向けのアルバイトも多くあります。たとえば、交通誘導員や警備員、清掃員、工場や営業所などでの荷物や商品の仕分け作業のお手伝いなどです。女性の場合はお惣菜の調理や清掃、保育所やベビーシッターといった職種で高齢者が活躍しています。面接のときには、何歳まで働けるかを確認することを忘れずに!■知恵で生活を上手に切り詰めていく60歳以降も働いているからといって、生活に余裕があるとは限りません。場合によっては、引っ越しを検討することになるかもしれません。「公営住宅なら家賃も安くすみます。家賃は入居者の所得で決まるため、収入が少ないほど安い家賃で借りることができます」と城山さん。ただし公営住宅に単身入居するには条件もあるため、まずは市や区の役所に確認するべきだといいます。他にも経済的負担を減らすため、食費や光熱費、交通費等も節約することになるでしょう。働くことと同時に、生活を上手に切り詰めて暮らしていくことが大切なのです。*ゆとりある老後は、誰もが願うこと。まだまだ先のことに思えても、少しずつ意識して貯蓄したり、老後について考えたりしておくことが必要なのかもしれませんね。(文/椎名恵麻)【取材協力】※ ヨースケ城山・・・節約アドバイザー、ファイナンシャルプランナー、AFP、住宅ローンアドバイザー、年金アドバイザー。著書は『給料そのままで「月5万円」節約作戦!』(ごま書房新社)。本の内容は、『らくらく貯蓄術。住宅ローン地獄に落ちない為の家計防衛のススメ。』にもまとめられている。ブログ『節約アドバイザーヨースケ城山ブログ』では、節約だけではなく転職活動、著書、社労士、FPのことを配信中。【参考】※ ヨースケ城山(2012)『給料そのままで「月5万円」節約作戦!』 ごま書房新社
2015年11月22日老後のライフプランを実現するための老後資金の準備方法というと、個人年金保険を思い浮かべる方も多いと思いますが、その他の方法もありますので、いくつかみていきましょう。預貯金普通預金や定期預金を利用して、準備していく方法があります。一定額になるまで普通預金等で積み立て、その後一定期間、定期預金に預けるという方法です。定期預金は、普通預金と違って、預けたお金の出し入れは簡単にできません。その分、金利が普通預金よりも高めに設定されています。個人年金保険と比べると中途解約をしても元本割れはしませんので、流動性は確保されているといえます。ただ流動性が良いことを逆視点でとらえると、確実に老後の生活費を準備していくという点では、安易に使ってしまうことができることから、弱点になる可能性があります。投資信託運用によるリスクは高いですが、逆にリターンも大きくなる可能性があり、少額から積み立てることができる投資信託を、老後の生活費の準備資金に利用することも可能です。投資信託とは、多くの人が出資したお金を集めてひとまとめにし、運用のプロが運用を行い、そこで出た利益を出資した額に応じて配分します。ただ、プロが運用するからといって、必ずしも利益を生むわけではなく、元本割れの可能性もあります。必要な老後の生活費を投資信託だけで準備していくことは、元本を保証していないため、リスクがあるということを知っておきましょう。確定拠出年金確定拠出年金とは、私的年金のひとつで、拠出された掛金が個人ごとに明確に区分され、掛金とその運用収益との合計額をもとに年金給付額が決定される年金制度です。掛金金額を確定し、運用商品のなかから、加入者等自身が運用指図を行います。そのため、年金金額は運用により変動します。確定拠出年金は、「企業型」と「個人型」があります。企業型確定拠出年金を実施している企業に勤めている方は、「企業型」を利用することになりますし、自営業者や、企業年金を実施していない企業に勤めている方は、「個人型」を利用することができます。確定拠出年金は、支払った掛金額が全額所得控除になります。年金保険料として支払った金額が控除されるため、税制面では有利といえます。運用商品は、預貯金、公社債、投資信託、株式、信託、保険商品等から選ぶので、選択によっては、元本割れの可能性もあることには注意が必要です。さまざまな準備の方法を組み合わせるこのほかにも、老後の生活費を準備していくために利用できる商品はあります。特徴を理解し、自分に適した商品をいくつか組み合わせて、各方法で資金のリスク分散をはかり、老後の準備をしていくことを考えてみてはいかがでしょう。※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
2015年11月12日今回いただいたテーマは「老後」である。はっきり言って、漫画家という職業に関係なく暗黒のビジョンしか思い浮かばないので、できるだけ考えないようにしている話である。私がそう思っているだけでなく、今や多くのメディアが、貴様らの老後はデスロードだ、お先は真っ暗であると報道しているのだ。○老後は地獄のデスロード…?最近「老後破産」というテーマで組まれたテレビ番組を良く目にする。タイトル通り、バラエティ豊かな破産した老人が出てくるという、「とにかくブルーになりたい」という人以外は見ない方が良い内容だ。他人の不幸を米以上の主食にしている、いわば「不幸ソムリエ」たる私だが、子どもや老人の不幸は酢に匹敵するほどすっぱくなった古いワインのようなもので、テイスティングの対象外となる。あくまで、健康で働き盛りの癖にギャンブルとかして困っている人が好きなのだ。しかもこういう番組に出てくる老人は、若い頃散財しまくって今困っているというわけでは決してない。確かに見通しは若干甘かったのかもしれないが、普通に暮らしていたらこうなった、もしくは突発的不幸で老後の計画が狂ったという人がほとんどなのである。つまり我々の老後は、贅沢していたら死ぬ、普通にしていても死ぬ、何か起こったら死ぬ、というDead or DEAD or Die、モヒカン頭の悪漢がジープで走り回ってなくても、かなり世紀末な世界観となる。そういう番組ではそうならないためにどうするかを示してくれる場合も多いが、ほとんどの場合、結論は「働けるうちに老後の資金をためておけ」である。具体的にいくらぐらい貯めれば良いかという金額はメディアによってまちまちだが、夫婦二人で大体3000万円から5000万円ぐらいというのが相場だ。もうこの時点で、テレビを爆破してpixivを見に行ってしまいたくなる額面である。○「明るい老後」を無理矢理イマジンするこのように暗い老後にまつわる事ならいくらでもイマジンできるのだが、逆に「明るい老後」というのは一体なんなのだろう。ステレオタイプ的に考えると、息子夫婦あたりと同居し、孫の面倒を見ながら畑をいじったり、ゲートボールをしたりする感じであろうか。しかし、私はそういう例を見るたびに「嫌だぜ、そんな生活」と思うのである。現在夫と二人暮らしだが、私はほとんど部屋から出てこないので、お互い多くの時間を一人で過ごしている。それがベストなのだ。それなのに、突然嫁や孫に囲まれたら、かえって病むに決まっている。それに、現時点でネット漬けの人間が老後になって突然畑に目覚めるとも思えないし、還暦をすぎてゲートボールチームに入れるようなコミュニケーション能力が開花する、ということもないだろう。開花するなら今してほしい。しかし、何せ老いているのだ。一人ではできないことも増えるだろう。どれだけ一人が好きで孤独に強かろうと、いつかは他人の世話が必要となるのだ。それに、子世代だって自分の生活で手一杯で親の面倒が見られるかはわからないし、むしろ面倒を見てもらうつもりだった子どもが、親の年金を食いつぶす穀潰しに成長してしまうこともある。そのせいか、年をとっても身内の世話にはなりたくない、介護施設に入ると思っている人も多いようだ。しかし、その介護施設も数が足りないそうだし、さらにそこで起こる虐待など、とにかく人をブルーにさせるニュースに事欠かない。介護施設もピンキリなようだが、やはり良いところに入ろうとすると数千万の準備がいるようだ。ここまで来ると、再度pixivを見に行ってしまうのもやむなしといったところだろう。前に桂米朝師匠が「芸事をやる人間は末路哀れは覚悟のうち」と言っていたという話をしたが、今では芸をやっていなくても「末路哀れ」を覚悟しておかなければいけないのである。とはいえ、ここで「どうせ末路哀れなら今を謳歌するぜ」という方向に行くと末路の哀れ度が増す。やはり、そんなに哀れでない末路をたどるためには、若い頃我慢して金を貯めろと言う話になってしまう。このように考えれば考えるほど暗い想像しか出来ないのだが、逆に「明るい老後」の方が「円満離婚」ぐらい無理がある言葉のような気がする。少なくとも肉体的には衰えていくのだから、明るくはないだろうと思うのだ。老後破産だ何だとむやみに国民の不安を煽るのは良くないが、明るい老後、悠々自適だのと言って油断させるのもまた良くない。将来に危機感を持ち、備えることがやはり大切なのだ。つまりは、哀れじゃない末路を目指して今から5000万円貯めておけば良いということである。しかし、問題が解決できない原因の大半は「解決策がわからない」のではなく、「方法はわかっているが実行できない」という点にあるのだ。「5000万の貯金」に代わる実行可能な解決策を、なんとか老後を迎える前に考えたいと思う。とりあえず今日はピクシブで推しキャラの18禁創作を読むことにしよう。老後も大切だが、今を楽しむことも大切なのである。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。連載作品「やわらかい。課長起田総司」単行本は1~2巻まで発売中、9月18日よりWeb連載漫画「ヤリへん」を公開開始。「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は10月27日(火)昼掲載予定です。
2015年10月20日