“昭和の喜劇王”こと名優、藤山寛美。三十三回忌追善にあたり娘である藤山直美と孫の藤山扇治郎らゆかりの出演者による特別公演が大阪松竹座にお目見えする。『愛の設計図』『大阪ぎらい物語』の名作上方喜劇2本立てに加え、在りし日の姿を映像で偲ぶ『〈映像〉藤山寛美 偲面影』も上演する。「藤山寛美三十三回忌追善 喜劇特別公演」チケット情報「追善公演は今回で区切りとさせていただきます」。記者会見の冒頭、そう切り出した直美。寛美を知る世代が減り、また寛美を超える役者が出ることが何よりの追善との思いからだ。「賑やかで楽しくて、観ていただくと家族の中で会話があって、そういう舞台を私が最後に勤めさせていただきます。昭和にこんな面白い喜劇役者がいたのかと思い出していただければ」と話す。続けて孫の扇治郎は「少しでも観に来て良かったなと思っていただけるよう努力したい」と挨拶した。『大阪ぎらい物語』は船場の老舗問屋を舞台に結婚を巡る母娘の騒動を描くもの。直美は寛美が演じた役を女役に変えた娘の千代子役で主演する。「子供のようにシャープな動きが必要な役なので、ここをひとつの区切りにちゃんと弾けさせたい」とし、今後は本来の男の役に戻して継承してほしいとの願いも語った。扇治郎が『愛の設計図』で演じるのは大卒で一級建築士の資格を持つ建設作業員、間文太郎。昔気質の現場監督に厳しく指導される勤勉な青年役だ。「今の時代パワハラとかいろいろ言われますが、甘やかすだけではなく厳しくすることも大事なことで。やはり祖父も仕事に対しては厳しい方だったと思います」。3歳の時に他界した祖父との思い出は記憶にないが「作品を通して学ぶべきことが多々あります。この家に生まれてきたご縁に感謝して努力していきたい」と改めて決意を語る。直美にとっての寛美は「父親としては厳しく、俳優としては次元が違う」存在だった。「あの哀しさというのはどこからくるのかな、哀愁があるなぁって。私も60歳で亡くなった父親の年齢を超えまして、そう感じるようになりました」としみじみ振り返る。当日は「お客さんに喜んでいただくことが一番大事」と耳に残る寛美の教えを胸に、舞台に立つ。直美は「面白かったと言っていただけるよう、役者も心ひとつに精一杯努力しますのでお越しいただくことをお待ちしております。コロナの感染対策も万全の体制でお迎えさせていただきます」。扇治郎は、今回は3都市を巡る長期公演でもあり「5月、7月、10月のどれかに来ていただけるよう一回一回大事に勤めさせていただきます」とアピールした。尚、京都公演では『えくぼ』『はなのお六』に演目を変えて上演する。公演は5月3日(火・祝)から26日(木)まで大阪・大阪松竹座、7月1日(金)から25日(月)まで東京・新橋演舞場、10月1日(土)から23日(日)まで京都・南座にて。取材・文:石橋法子
2022年04月26日ラグジュアリー車ブランドであるレクサスが主催となり、日本各地で新しいモノづくりに取り組む才能を発掘し、世界へ羽ばたくサポートを行う「LEXUS NEW TAKUMI PROJECT」。そのプレゼンテーションが1月18日に開催され、52人の匠たちの出展と、サポートメンバーによる「注目の匠」の発表が行われた。今回はスーパーバイザーに小山薫堂、サポートメンバーとして建築家の隈研吾、デザイナーのグエナエル・ニコラ、アーティストの清川あさみ、ファッション・ジャーナリストの生駒芳子、株式会社意と匠研究所代表取締役の下川一哉を迎え、それぞれがいち押しの匠について語った。下川一哉氏が選んだのは、山形県の金寛美氏による「縄文七輪」。縄文模様をあしらった陶器製の七輪で、「すでに途絶えた縄文文化を工芸の形で復活させた点がすばらしいです」とコメントを寄せた。下川氏はバーベキューをした際に使用し、使いやすかったとのこと。生駒芳子氏が選んだのは、福井県の山口祐弘氏による「Cha-Carry」。越前箪笥を茶箱のサイズにして、キャリーバッグとして使えるように改造したもので、「家で眠っていた桐箪笥の文化をよみがえらせ、動かないものを動かした発想力を評価しました」と語った。グエナエル・ニコラ氏が選んだのは、高知県の濱田洋直氏による「HAMADA PAPER+【RING】」。土佐和紙を用いたアクセサリーで、デザイン性と強度を兼ね備えたリングだ。「EvolutionとRevolutionが両立していてすばらしい!今までの技術をいかにキープし、さらに新しいアイデアをどう盛り込むかが考えられている作品です」とニコラ氏はコメントした。清川あさみ氏が選んだのは、香川県の村上モリロー氏による「ZAN-SHIN」。アートディレクターである村上氏が“履いている時も、脱いだ後も美しい下駄”をコンセプトにデザインした桐下駄で、松や扇をモチーフにしたユニークな作品だ。「すごく個性的で、自分が欲しいものということで選びました。履き心地もとてもよいです」と清川氏は語った。小山薫堂氏は、徳島県の永原レキ氏による「空海藍Sufboard」を選出。阿波伝統の藍染綿ファブリックをサーフボードに施した作品で、「藍染の奥深さを知りました。サーフィンを愛し、人生にとって必要だから、それを生業にしたという作家の生き方にも共感しました」とコメントした。隈研吾氏はビデオレターでのコメントとなったが、「若い職人のみなさんは、もっと自信を持ってほしいですね。世界を見据えて仕事をすることでマーケットは広がるので、日本の新しい戦略を考えるきっかけにもなるはずです」と、匠たちへエールを送った。 最後に、小山氏は「“作り上げたモノが誰に出会うか”がいちばん大切です。例えば、どんなにいいワインを作っても、そのおいしさをわかってくれる人に出会わなければ、価値を十分に伝えることはできません。このプロジェクトを通じて、匠たちがいろいろな人に出会い、意見を聞くうちに新しいアイデアが浮かんだことでしょう。これからも、その“気付き”を大切に、モノ作りへ取り組んでください」と語り、締めの言葉とした。
2017年01月24日