團菊祭五月大歌舞伎第一部で上演中の『金閣寺』(祗園祭礼信仰記)は、義太夫狂言の時代物の面白さと、どこか荒事のような、そしてファンタジックな楽しさが味わえる一幕だった。戦国武将の中でもとびきりのやんちゃなカブキ者といえば松永久秀。この松永をモデルにした松永大膳が登場する。時の足利将軍を暗殺し、自らの大望を妨げようとする小田春永(織田信長)を討つため、金閣寺に立てこもって時節を待っているところから始まる。将軍の母の慶寿院尼と将軍に仕えた絵師の狩野之介直信を捉え、さらにその妻である雪姫をも自分のものにしようと、金閣寺に閉じ込めている。このお芝居のタイトルロールともいえる金閣寺を中央に、左右には桜の大木、下手奥には轟々と音を立てていそうな滝。座敷の帳が上がると、のどかに碁を打つ大膳と弟の鬼藤太。大膳は王子という名の長髪の鬘におみごろもの衣裳で得体のしれない巨悪感がたっぷりだ。片や鬼藤太は赤っ面で敵役の典型。尾上松緑とその長男の尾上左近の親子対局だなんて!と、まず幕開きの段階でワクワクさせてくれる。上手の屋台の障子が開くと銀の花差しをつけたトキ色の着物の雪姫が現れる。雪姫は絵師雪舟の孫。御家の秘技ともいえる墨絵の龍を大膳から描けと命じられており、それが嫌なら大膳の言うままになるよう二択を迫られて苦しんでいる。そこへ大膳の家臣十河軍平が此下東吉を伴ってやってくる。東吉は実は真柴久吉(豊臣秀吉)だが、まだここでは正体は明かされない。大膳の軍師になりたいとやってきた。生締の鬘に白塗りで颯爽とした二枚目立役の役どころだ。大膳は今度は東吉を相手に碁を打つ。一方雪姫は柱にもたれ、御家の大事と夫への思いに引き裂かれていたが、平家物語の常盤御前を思い起こして自ら大膳の意に添うと決心する。さてここからはこのお芝居前半の大きな見どころのひとつ「碁立て」、東吉大活躍の場面だ。大膳と東吉の対局は佳境を迎えている。ふたりは碁石を置きながら「あるともあるとも有馬山」「国をとろとろとろろ汁」などとユーモラスな台詞を掛け合う。真剣な面持ちなのに出てくる言葉がほのぼのかわいらしいという、ギャップが大き過ぎて大好きな場面だ。大膳と東吉を勤める俳優は、芝居ではなく本気で碁を打つという。雪姫の決死の申し出が耳に入らないくらい、ふたりの対局に真剣な空気が流れているのもうなづける。勝負がつき、大膳は東吉のさらなる知恵を試そうと、碁盤をひっくり返し碁笥を外の井戸へ投げ込んでしまう。手を濡らさずにとってみろと東吉に無理難題をいうが、東吉は屋外の金樋をはずし、ストローのように滝の水を井戸へ注ぐ。次第に水かさが増して碁笥があれよあれよと浮いてくるではないか。碁盤を裏返しそこに碁笥を乗せて春永の首に見立て「さあどうだ!」とばかりに見得をする東吉。荒唐無稽な展開が荒事めいて楽しい場面だ。大膳は喜び、見事東吉は軍師として仕官することになる。さすがは人たらしの東吉(秀吉)だ。一方の雪姫は大膳の刀を倶利伽羅丸と見破り、大膳が親の敵と覚るが、取り押さえられて桜の幹に縄でしばられてしまう。ここから雪姫が活躍する「爪先鼠」の場へと移る。大膳は雪姫をすぐに殺さず、雨に濡れる海棠や桃や李の花々のように、縛られたままの姫の様子を楽しみたいというから、歌舞伎随一のサディスト大膳の面目躍如。『金閣寺』の鮮やかな演出の数々を堪能したあとは、涼やかな『あやめ浴衣』夫の狩野之介は六つの鐘がなると処刑されるという。身動きの取れない雪姫、でも狩野之介を助けたい。桜の花びらはとめどなく散りゆく。舞台一面が薄桃色に染まっていくにつれ、客席からはため息にも似た声があちこちから聞こえる。ふと祖父雪舟の故事を思い出し、桜の花びらを集め、涙を墨に、一心不乱に鼠を描くと、どこからともなく白い鼠が現れ縄を喰いちぎってゆく。花びらが鼠の化身となっていたのだ。喜ぶ雪姫の頭の上でパッと鼠の胴が割れて桜の花びらが吹き出すしかけだ。これが見事で愛らしくてワッと拍手が起こった。東吉、実は真柴久吉、そして軍平、実は久吉の家臣佐藤正清(加藤清正)が鬼藤太らを打ち払い、雪姫は狩野之介の下へと急ぐ。久吉が桜の木を登り慶寿院尼を救出。久吉が木登りするのは「サル」つながりを思わせて楽しい。久吉の用意周到な計略にはまった大膳だが、久吉は慶寿院尼を救い出せたので、大膳の命もこの場では奪わず、改めて戦場で相まみえることを約束するのだった。大膳が舞台中央の緋毛氈の三段に上がって見得となり、チョンと柝が入って幕。歌舞伎の時代物らしさ溢れる鮮やかな幕切れだ。尾上松緑勤める大膳のスケールの大きな悪が痛快だ。「国崩し」のオーラが手強いほど、お芝居全体も盛り上がるというもの。と同時にそこはかとなく品格があり、雪姫に対してもどこかジェントルマンシップを感じる。何度観ても大膳に気持ちを持っていかれてしまう。中村雀右衛門勤める雪姫が、大膳の無理難題に引き裂かれる辛さをたっぷりと見せてくれる。歌舞伎の「三姫」と呼ばれる役どころ。降りしきる桜の中の雪姫はもはやこの世の物ではないかのよう。縄から解き放たれて花道を引っ込むときに、ちらっと刀を鞘から出し顔を映し、髪に手をやるところでフッと雪姫の色気がこぼれる。客席のあちこちから「うんうん」「わかるわかる」という反応が。大膳に対するヒーローとなるのが片岡愛之助勤める此下東吉。颯爽としてかつ知恵に富み、ただ者ではない感がにじみ出ている。後半再び現れるときの陣羽織に鎧鉢巻姿も凛々しくて眼福眼福。そして中村福助の慶寿院尼は、気高く品があり、舞台復帰した直後よりもさらに声が透き通るように伸びやかで、お元気そうなのが嬉しくてたまらない。第一部のもう一幕は長唄舞踊の『あやめ浴衣』。祭囃子が聞こえ、真っ暗な舞台にチョンと柝が入ったとたんにパッと明るくなると舞台一面菖蒲の花咲く川のほとり。客席からも「ほ~っ」と声が上がる。川遊びに興じる芸者や若い男女、水売りや船頭たち。五月人形は鎧武者もいいけれど、こんな涼やかで粋な顔ぶれのお飾りもいいなあなんて思ってしまった。粋ですっきりとした芸者は中村魁春。柳に燕の柄が目にも涼しい。以前魁春が勤めた義太夫狂言の『卅三間堂棟由来』の風情のある柳の精・お柳を思い出した。最後は揃って総踊り。客席を爽やかな風が吹きわたっていくような一幕だった。取材・文:五十川晶子『團菊祭五月大歌舞伎』チケット情報雪姫を演じる中村雀右衛門さん直撃取材した、連載「ゆけ!ゆけ!歌舞伎“深ボリ”隊!!」記事は こちら()
2022年05月10日金閣寺すぐそば! どこか懐かしい雰囲気の洋食店大勢の観光客で連日賑わう、古都・京都。金閣寺のすぐそばにあるのが、絶品洋食が楽しめる「Café Dish らふ」です。緑色のテントと「らふ」の文字が目印。外壁の一部は大きなガラスになっていて、店内には外光がたっぷり降り注ぎます。ダークブラウンの木目が落ち着いた雰囲気をかもし出す店内は、どこか懐かしく居心地の良い空間です。みんなで「気楽」に「楽しく」食事ができるお店を目指してお店がオープンしたのは、2013年10月のこと。金閣寺や大学が近いということもあり、連日多くの観光客や学生で賑わっています。お店の名前にある「らふ」とは、気楽に(rough)楽しく(laugh)という2つの意味が込められた言葉。ソファ席でくつろぐグループも、カウンター席で食事するおひとり様にも、それぞれに楽しい時間を過ごしてほしいという店主の想いが込められています。お店の名物は、とろりととろける絶品ハンバーグ!京都ならではの食材や、旬の食材を取り入れた洋食が人気のお店。名物の人気メニューが「フォンデュ・ハンバーグ」です。材料の配合にこだわり、ふんわり柔らかく焼きあがるよう独自のレシピで作られるハンバーグ。その上に、塩気のきいたハムと、自家製ベシャメルソース、さらにチーズまで乗せてオーブンで焼き上げる贅沢な逸品です。フォトジェニックな絶品スイーツもこだわりのメニュー洋食メニューもさることながら、カフェメニューも人気のお店です。「ハニーマンゴーパンケーキ」は、フォトジェニックで食べ応えも満点な逸品。オリジナル配合のパンケーキミックスは、オーダーが入ってから混ぜ合わせます。フライパンでじっくりとふっくら焼き上げたら、バニラアイスやホイップクリームをトッピング。贅沢に使用されるフルーツは、季節に応じて変化します。京都の街で、癒しのひとときを過ごそう開店以来、多くの人で連日賑わっていますが、平日のランチタイム以降、夕方頃までは比較的利用しやすい時間帯とのこと。多彩なメニューで、訪れる人をもてなすお店。料理のボリュームアップや、メニューに書いていないリクエストもできる範囲で応えたいと店主は語ります。モダンでありながら、どこか懐かしい店内で、時間を忘れてゆっくりできる優しさが感じられるお店です。嵐電北野線「北野白梅町駅」が最寄り駅。駅を出て、金閣寺方面に向かって徒歩15分ほどの場所にお店はあります。金閣寺観光の帰りに、ひと息つくのにもぴったりの洋食とカフェメニューが魅力のお店です。スポット情報スポット名:Café Dish らふ住所:京都府京都市北区衣笠総門町30-4電話番号:075-366-6177
2017年12月01日「金閣寺|銀閣寺茶箱展」が、2016年10月12日(水)から11月1日(火)まで、東京・銀座三越で開催される。昨年の千利休の茶室「待庵」茶箱展に引き続き実施される本展では、金閣寺と銀閣寺の古材を使って、多数のアーティストや作り手が現代の新しい茶箱を提案。注目は、日本のファッションブランドまとふ(matohu)が手掛ける作品だ。デザイナー堀畑と関口は、この展示のために「夕映えの茶箱」を制作。江戸時代初期の茶人、金森宗和作の茶室「夕佳亭(せっかてい)」から見える夕暮れ時の金閣寺をイメージして、古清水焼の鳳凰文様の茶碗を中心に、古作と現代の作家たちに特注した道具を組み合わせた。また、すべての道具は、まとふオリジナルテキスタイルの仕覆で包まれていて、すべての茶箱は購入することが可能だ。さらに、デザイナー堀畑と関口は、詩人で翻訳家のピーター・ジェイ・マクミランと茶箱をめぐるトークイベントを10月22日(土)に行う。なお会場には、ピーター・ジェイ・マクミランの作品、さらには塗師の赤木明登、金工の長谷川竹次郎、画家の小松美羽などが手掛けるピースも展示される予定だ。【イベント詳細】金閣寺|銀閣寺茶箱展期間:2016年10月12日(水)~11月1日(火)会場:銀座三越 7階 グローバルメッセージ住所:東京都中央区銀座4丁目6−16■トークイベント matohu 堀畑裕之 関口真希子 ×ピーター・ジェイ・マクミラン開催日時:2015年10月22日(土) 15:00 会場:銀座三越 会場内
2016年10月14日私は中学校の修学旅行で金閣寺と銀閣寺の両方を訪れて以来、長いこと銀閣寺の方が好きだった。だから大学時代の4年間は銀閣寺の近くに住んだ。金閣寺の"バブリー"(という言葉がありました)な感じがキライだった。何もキンキラキンにしなくても……。○世の中がキンキラキンになってもいいところが、先だって次男と共に15年ぶりくらいに金閣寺を訪れた。すると私が歳をとったせいか、金閣寺もそれなりに良いなと思った。学生時代から一周回って味わいを感じるようになったのだ。足利義満があえて金箔を張ったのも、往年の秀吉がキンキラ金を愛したのも、「儚い夢」といいますか……ワビサビというよりはセツナとでも呼ぶのだろうか。ところが40年ほど歳の離れたうちの次男は、金閣寺にはあまり興味を示さなかった。むしろ子供ウケしなさそうな詩仙堂のコケに興味を示したので驚いた。コケですよコケ……。私は子ども時代には恐らくコケには全く興味を示さなかったと思う。普通にキンキラキンの金閣寺を面白がって興味を示しただろう。何が言いたいかというと……。私は1970年生まれだ。正直なところ私よりも上の世代の、バブル世代的な「元気いっぱい夢いっぱいみんな仲良く頑張ろう!」(かなりデフォルメ)のノリは好きではなかった。ところが、最近、自分より下の世代の方々の相対的人数が増えてくるにつれ、そうしたキンキラキンなノリに対して、ある種の刹那的な魅力を感じてきたのだ。私よりも若い世代があまりにワビサビやコケ好きだったりすると、もう少し世の中がキンキラでも良いのかなと。一周回ってそんな風に思うように。そんな単純な話でもないが……こういうのは単純に話した方が面白い。金閣寺と銀閣寺とでは、どちらが好きですか?<著者プロフィール<片岡英彦1970年9月6日東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーを経て、2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャーに。後に、MTVジャパン広報部長、日本マクドナルドマーケティングPR部長、株式会社ミクシィのエグゼクティブプロデューサー等を経て、2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。2015年4月より東北芸術工科大学にて教鞭をとる。
2015年06月18日柳楽優弥主演の舞台『金閣寺』が4月5日(土)、東京・赤坂ACTシアターで開幕する。本番を翌日に控えた4日、柳楽はじめ水橋研二、水田航生、市川由衣らメインキャストと演出の宮本亜門が同劇場で会見を行った。「金閣寺-TheTempleofTheGoldenPavilion-」チケット情報同作は宮本が三島由紀夫の名作を舞台化したもので、2011年にKAAT神奈川芸術劇場で初演。同年にNY公演も行い好評を博している。今回はメインキャストを一新しての上演。生来の吃音から疎外感に苛まれる主人公・溝口役を柳楽優弥、彼をめぐるふたりの友人を水橋研二と水田航生、溝口の初恋の女性と女師匠のふた役を市川由衣が演じる。「当初は吃音症を強く意識した。稽古に入ってからは、溝口の内面や感情を大事にしなければと考え、亜門さんの指導を受けながら役に近づけていきました」と柳楽。宮本を優しい演出家と聞いていたが「(実際は)とても厳しい人でした」と笑った。宮本は「誰に聞いたんだよ」と苦笑いしながらも「柳楽さんの溝口は内面を露骨に出す」と話す。「柳楽さんが生で出す役者さんということもあって、キャスト全員が舞台に生で存在してほしいと考えた。それがエネルギーとして凝縮され大きな竜巻になるように、細かいところを変えたりしてシーンを作っていった。生の役者の汗とにおいが、それぞれの役から香り立つように怒涛の稽古をしてきました」と自信をのぞかせた。一方ふた役の市川は役作りに悩んだという。「特に女師匠はキリッとした女性。演じたことのない役で難しかったが、まさか亜門さんが実際にやってくれるとは思わなかった。それがすごく格好よくて、参考にさせていただきました」と笑顔。宮本も「僕は(稽古場で)全役やってますよね」と笑う。最後に柳楽が「周りのキャストに支えられながら、この舞台を代表作にするという強い気持ちで本番に挑みたい」と気合を入れると「代表作になりますよ」と宮本が太鼓判を押した。公演は4月5日(土)から19日(土)まで東京・赤坂ACTシアターにて。チケットは発売中。
2014年04月04日日本文学の金字塔・三島由紀夫の不朽の名作を、宮本亜門の演出で贈る舞台「金閣寺-The Temple of the Golden Pavilion-」。2月25日(火)、新キャストとなる主演の柳楽優弥、水橋研二、水田航生らキャストらが稽古場にて顔合わせ、稽古始めの台本の読み合わせの模様が公開された。生来の吃音から疎外感に悩みながら育った男・溝口、下肢に障害を抱えながらも不敵に溝口を挑発する柏木、そして溝口とは寺の同朋で、明るさの裏で自死を選ぶ鶴川。「生とは何か?」「美とは何か?」と自問する溝口と2人の友人を軸に、現代にも通じる若者の苦悩や閉塞感を描き出す本作。舞台は俳優の身体だけでなく、映像や声の演出で三島文学を表現し、正式招待された「リンカーンセンター・フェスティバル2011」でのニューヨーク公演では“Fusion Theater(融合劇)”と評され大きな注目を集めた傑作だ。今回の公演で新キャストに抜擢されたのは、主人公・溝口役には独特のオーラを放つ柳楽優弥、柏木役には実力派の水橋研二、鶴川役には昨年の映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』での大抜擢でも注目を浴びた水田航生、さらに溝口の初恋の相手・有為子役とその有為子に存在を重ねるお花の師匠に市川由衣。今回の主演抜擢を受けて、柳楽さんは「今日は稽古初日ということで、めちゃめちゃ緊張していますので、頑張って乗り切ろうという思いです(笑)。初舞台は『海辺のカフカ』で蜷川幸雄さんの演出だったので、演出家の方はみんな、“恐い”という印象だったのですが、取材時にライターさんたちから『亜門さんは優しい』と聞いて、優しい演出家の方もいるんだと思いました(笑)。亜門さんを信じて稽古に励んでゆきます」と挨拶。三島文学のキャラクターとあって、かなりの難役になることが予想されるが「僕は、『僕の内界と外界との間の扉に鍵があり、うまく開いたためしがない。それどころか、その鍵は、錆び付いてしまっているのだ』という(小説の)一節に現れる、溝口の心の変化を精一杯演じていきたいと思います」と力強く語る。さらに役作りについて聞いてみると、「寺の坊主の役なので、役づくりのために、京都の宝泉寺に修行に行きました。座禅をしたり、太極拳をしたり、すごく緊張しました。今は一番“声”のことを意識しています。映画で声が小さいと言われるので(苦笑)。髪型は、今以上にスッキリします!坊主にします!」と明かした。本作は2011年に宮本さんが芸術監督を務めるKAAT神奈川芸術劇場の柿落し公演として創作されたもので、今回再演となるが宮本さんは「今回は、単なる再演ではなく、新しい役者さんもたくさん加わっていますし、自分にしかできない『金閣寺』を一緒に創り上げていきたいと思います」と話す。柳楽さんの起用理由については「非常に面白い役者さんです。溝口を演じるには、溝口に共鳴できるかどうかが重要なんですが、柳楽さんは溝口が好きなんだと聞きました。『海辺のカフカ』も観て思いましたが、柳楽さんにはそこに“存在”できる力がある。舞台では、その“存在”できる力が大切なんだと思います」とも。最後に、「初演時に比べると、それぞれ役の実年齢に近い方が揃っています。『金閣寺」は、テーマがとても深く、時期や自分の置かれている立場によって、見方が変わりますので、自分自身を見つめ直す機会となりうる作品だと思います。3年前とは情勢が変わっています。自分という人間は何ぞや、日本とは何ぞやということを、いま一度、感じ取って頂ければ」と語りキャスト・スタッフともに気合い十分といった様子だった。舞台「金閣寺-The Temple of the Golden Pavilion-」は、赤坂ACTシアターにて4月5日(土)~4月19日(土)公演。(text:cinemacafe.net)
2014年02月26日KAAT神奈川芸術劇場のこけら落としとして昨年1月に初演された、三島由紀夫原作、宮本亜門(同劇場の芸術監督)演出の『金閣寺』。現在、“凱旋公演”として大阪・梅田芸術劇場で上演中だ。世界各国から厳選されたパフォーマンスが集まる“リンカーンセンター・フェスティバル2011”に招待され、昨年7月に同キャストでニューヨーク公演を行った本作。ホーメイ(のどを詰めた発声から生じる独特の歌唱法)歌手の山川冬樹や舞踏の大駱駝艦のメンバーが参加し、身体、声、映像で多層的に表現した舞台は、“Fusion Theater(融合劇)”として高く評価された。「言葉を超えたところで感じてもらえるこの作品の強みが改めてわかって自信になりました。日本とは全然違うところでリアクションが来たりするのも楽しかった」と、出演者のひとり、大東俊介は振り返る。その『金閣寺』が約1年ぶりに日本の観客の前に姿を現す凱旋公演に向け大詰めの稽古場で、通し稽古を見学した。『金閣寺』チケット情報1年前の初演以来、数多く顔を合わせているはずのカンパニーだが、馴れ合いすぎた空気はなく、ほど良い緊張感に包まれている。大東も、「緊張感が一番大事ですね。表面的でない、気持ちのひとつ奥を描いた作品だけに、どこか慣れてしまって新鮮さが欠けることは致命的になる」と語る。その中で、親友(=鶴川)を演じる共演者の大東をして「圧倒的な存在で魅入らされる。(演じていて)引っ張られます」と言わしめるのが、主役の溝口を演じる森田剛だ。吃音というハンディを背負った青年の孤独や心のもがき……上手く言葉にできないそれらが、些細な表情や動き、あまりに無垢な瞳の輝きから痛いほど伝わってくる。内翻足というハンディをもしたたかに武器にする柏木(高岡蒼甫)、明るい好青年ながら心に闇を抱える鶴川(大東)、そして溝口(森田)。この若者たちの関係性が作品の軸となるが、「3人の依存関係みたいなものが、ニューヨーク公演ではよりしっくり体になじんでる感じがあった」(大東)と言うだけに、今回も一層の深化が見られるだろう。余計な会話は一切交わさなくとも、互いへの確固な信頼感は、現場でもひしと感じ取れた。演出席の宮本はというと、目の前で展開する俳優たちの演技を“耳で聞き”ながら、台本を熱心に見つめていたのが印象的。三島由紀夫の言葉ひとつひとつに今一度真摯に耳を傾け、新鮮な作品を生み出そうとする誠実な姿だった。大阪公演は1月22日(日)まで同劇場にて、東京公演は1月27日(金)から2月12日(日)まで赤坂ACTシアターで上演。取材・文:武田吏都
2012年01月20日