川瀬直美監督、黒沢清監督、是枝裕和監督と並びカンヌ常連監督の一人である三池崇史監督が原点回帰を果たしたと語る最新作『極道大戦争』。現在開催中の第68回カンヌ国際映画祭「監督週間」から正式招待を受けた本作が日本時間22日午前3時半より公式上映された。映画祭に参加できなかった三池監督の“女芸者”姿がスクリーンに映し出された。噛まれた人間が次々とヤクザにして、ヴァンパイア…“ヤクザヴァンパイア”と化していく街で、尊敬する親分のカタキを討つべく立ち上がるヤクザヴァンパイアの青年の戦いを激しいアクションと共に描き出す。1969年に創設されたカンヌ国際映画祭の併設部門「監督週間」。新しい才能や新人を発掘する一方で、巨匠監督の独創的な作品を上映し、監督の違う側面に焦点をあてるのもこの部門の特徴だ。最近の邦画では園子温監督の『恋の罪』、昨年のカンヌでは高畑勲監督の『かぐや姫の物語』が監督週間でアニメーションとして唯一の選出となり話題を集めた。今回、三池監督が映画祭と世界の映画ファンへ向けて用意した強烈なサプライズメッセージ。黒の留袖に女鬘とメイクという完璧な女装姿で、番傘と“たかし”の名入りのちょうちんを携えた監督は、「お集りの皆さん、こんばんは。監督の三池崇史です。今日は極道大戦争にお集りいただき、本当にうれしく思います。本来ならば、そちらにいってご挨拶しなければいけないのですが、私、今年のはじめから、富士山の麓で芸者をはじめまして、いろいろ忙しくそちらへ伺うことができません。いよいよ来週はシリコンをいれる予定です」 と映画祭への参加が叶わなかったことについて、シャレを効かせた三池流の演出で詫びた。この三池監督の完璧な女装メイクを担当したのは数多のトップモデルや広告を担当するヘア&メイクアップアーティストの冨沢ノボル。映画『ヘルタースケルター』で注目され、三池監督作品にも多数携わっており、異例の豪華アーティストが参加するかたちとなった。公式上映の舞台挨拶は、冒頭の三池監督によるサプライズコメントから始まり、本作で謎の刺客・マッドドックとして登場し、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』への出演も決まっているインドネシア俳優のヤヤン・ルヒアンのほか、謎の刺客として着ぐるみとは思えない壮絶アクションを繰り広げるKAERUくんが登壇し、会場を沸かせた。『極道大戦争』は6月20日(土)よりTOHOシネマズ新宿ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年05月22日2014年に大ヒットを記録した米林宏昌監督最新作『思い出のマーニー』。ブルーレイ&DVD発売の際に、フィギュアスケーター・高橋大輔とコラボレーションを果たしたCMも大きな話題を呼んだが、このたび、5月22日(現地時間)よりニューヨーク、ロサンゼルスを皮切りに、英題『When Marnie Was There』として全米公開が決定した。本作では、イギリスの作家ジョーン・ロビンソンによる同名児童文学を原作に、海辺に暮らす親せきに預けられることになった少女・杏奈と、海辺に佇む“湿っ地屋敷”に暮らす金髪の少女・マーニーがひと夏を過ごし、ある秘密を分かち合う姿を描く。全米配給するのは、今年のアカデミー賞にノミネートされ世界的にも注目を浴びた高畑勲監督作『かぐや姫の物語』の配給や、『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』『もののけ姫』といったジブリの旧作品のレトロスペクティブ上映を北米各地で行っている「GKIDS」。日本版で高月彩良が担当した主人公・杏奈を『トゥルー・グリッド』でアカデミー賞にノミネートされたヘイリー・スタンフェルド、有村架純が演じたマーニーをドラマ「マッドメン」で人気のキーナン・シプカが演じる。さらに、杏奈を暖かく見守る大人たち役で『テルマ&ルイーズ』のジーナ・デイビス、『シュガー・ラッシュ』のジョン・C・ライリー、「デスパレートな妻たち」のヴァネッサ・ウィリアムズら演技派俳優陣が脇を固めることも明かされた。アメリカのマスコミからも「息をのむほど美しい」(ハリウッド・リポーター)、「素晴らしい!今までのスタジオジブリ作品と同じようにゴージャスな作品だ!」(タイムアウト・ニューヨーク)と高評価を得ており、3年連続のアカデミー賞ノミネーションも期待される。<『思い出のマーニー』ブルーレイ&DVD/リリース情報>■発売日:3月18日(水)■価格:ブルーレイ 6,800円+税DVD(2枚組み)4,700円+税■発売元:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン(C) 2014 GNDHDDTK(text:cinemacafe.net)■関連作品:思い出のマーニー 2014年7月19日より全国東宝系にて公開(C) 2014 GNDHDDTK
2015年05月20日岩井俊二監督の初のアニメーション映画となる『花とアリス殺人事件』が、世界最大のアニメーション映画祭であるアヌシー国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門へ選出されたことがこのほど明らかになった。いまでも多くのファンに愛され続けている、岩井監督が2004年に原作・脚本・監督を務め、女優の蒼井優と鈴木杏を主演に迎えた映画『花とアリス』。この前日譚となる二人の出逢いのエピソードを、岩井監督自らが完全オリジナルストーリー&長編アニメーション作品として完成させたのが『花とアリス殺人事件』である。今回『花とアリス殺人事件』が選ばれたのは、世界最大のアニメーション映画祭であるアヌシー国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門。今年は95か国より2,605作品の応募があった本映画祭にて、グランプリにあたるクリスタル賞のノミネート作品の一本とし選出された。過去に同映画祭の長編コンペティション部門では、1993年に宮崎駿監督の『紅の豚』、1995年に高畑勲監督『平成狸合戦ぽんぽこ』がグランプリを受賞しており、細田守監督の『時をかける少女』(2007年受賞)や原恵一監督の『カラフル』(2011年受賞)が特別賞を受賞している。アヌシー国際アニメーション映画祭は6月15日(現地時間)から20日まで開催され、岩井監督の現地入りも決定している。日本アニメ映画史における名作の数々に、岩井監督の初アニメーション映画が受賞作として名を連ねることになるのか、大いに期待がかかる。(text:cinemacafe.net)■関連作品:花とアリス殺人事件 2015年2月20日より全国にて公開(C) 花とアリス殺人事件製作委員会
2015年04月29日『河童のクゥと夏休み』『クレヨンしんちゃん』シリーズの原恵一監督最新アニメーション『百日紅~Miss HOKUSAI~』ジャパンプレミアが4月28日(火)に開催され、声優を務めた杏、松重豊、濱田岳、清水詩音、原監督が和装で舞台挨拶に臨んだ。若くしてこの世を去るも、遺した作品はいまなお高い支持を集める杉浦日向子の人気漫画「百日紅」の映画化。天才浮世絵画家・葛飾北斎の娘で、自身も女ながらに絵師として活躍したお栄を中心に、江戸時代に生きる町人の暮らしを瑞々しく描き出す。杏さんは「大好きな杉浦日向子さんの作品に参加することができて本当に嬉しいです」と万感の思い。自身が演じたお栄に対しては「江戸時代に女性が浮世絵師というクリエイティブな仕事で生計を立てていたというのは稀有なことで、唯一無二と言えるかもしれません。共感というよりは憧れや尊敬の念を感じています」と語る。お栄の父・北斎を演じた松重さんは、声優初挑戦となったが「北斎というビッグネームを声で演じるということで大変なプレッシャーもありました。この歳まで声優というものに憧れを持っていて、52歳でやっとデビューできました」としみじみと喜びをかみしめる。濱田さんも本作で声優デビューとなったが「収録の少し前に松重さんと同じ現場があって『どうする?』『どうする?』と言ってました。松重さんが先に収録だったので、偵察に送って(笑)、『声の現場はどういう感じでした?』とLINEで送ってアドバイスをもらって乗り切りました」と語り笑いを誘う。原監督は2011年の企画の始動からここまで長い道のりだったが「やっとここまで来られたというのが正直な感想」と感慨深げ。「杉浦さんの作品が昔から大好きだったので、初の映像化作品の監督になれたことはものすごい誇りです」と喜びを口にする。気になる仕上がりに関しては、これから映画を見る初めての観客を前に「今回はかなり自信があります。(ハードルを)上げてもらっても大丈夫です!」と胸を張った。杏さんはアニメーションとなった本作について「江戸時代は、いまは失ってしまった“闇”――夜の深い闇が存在していた時代で、だからこそようかいや怪奇現象が本当にあったと思えたのだと思います。リアルにアニメのタッチも変わっていきながら表現されていきますが、めまぐるしく変わっていく景色、風景、現象を動く映像で見られて感激しました!」とアニメーションならではの本作の魅力を強調する。松重さんも、北斎の代表作である「富嶽三十六景」のひとつで、大波の向こうに富士を描いた「神奈川沖浪裏」がアニメーションで表現されることに触れ「僕は神奈川県民ですが、こういう波は見たことがない(笑)。北斎はどこを切り取ってどういう富士が描きたかったのか?天才の目線がすごいものを見ていると再確認しました」と語り、これから映画を見る観客の期待を煽った。なお、本作は第39回アヌシー国際アニメーション映画祭(フランス)の長編コンペ部門に出品されることが決定!2600を超える作品の中から、栄えあるコンペ部門への招待となった。過去には『紅の豚』(93年度/宮崎駿監督)『平成狸合戦ポンポコ』(95年度/高畑勲監督)が日本映画として同部門最優秀作品賞のクリスタル賞を受賞しているが、日本の文化を描いた本作に海外の観客、批評家がどのような評価・感想を抱くのか、期待が高まる。『百日紅~Miss HOKUSAI~』は5月9日(土)より公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:百日紅~Miss HOKUSAI~ 2015年5月9日より全国にて公開(C) 2014-2015 杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会
2015年04月28日日本アカデミー賞最優秀監督賞などを受賞した『GO』をはじめ、『世界の中心で、愛をさけぶ』『北の零年』など数々の話題作を手がけた行定勲監督と、女優・モデルとして幅広い活躍を見せる杏が初めてタッグを組んだWEB限定ムービー『「澪」と過ごす母の日』が、「澪」公式サイトにて公開となった。田舎から上京してきた母親(銀粉蝶)を、一人暮らしの部屋へ迎える杏さんのとある一日を描いた本作。母への感謝の手紙を読む杏さんのナレーションをバックに、“最愛の人=母親”と久しぶりの時間を過ごすため、「澪」と心のこもった手料理を振る舞う杏さん、そして彼女の温かいおもてなしを受ける母親が交じわす親子の機微と微笑ましいやり取りを、行定監督が圧倒的な映像美と情緒あふれる世界観と共に描き出す。撮影当日は、杏さんが脚本から抱いたイメージをベースに、行定監督から現場で伝えられた言葉や演技指導によるアレンジを加え、思わず画面に引き込まれるような独特の空気感が生み出された。杏さんと母親役の銀粉蝶さんは、今回が初共演。杏さんもひとり暮らしの働く女性を演じた前半とは一転、母親と過ごす後半はすっかり娘らしい穏やかな顔つきにかわり、本当の親子のような触れ合いをみせている。「さっぱりしていて、気遣いがすごいし、頭の良い人だってことがよく分かりました。撮影中、もう少しこうしてほしいといくつか連続で言って、それをほとんど網羅していましたからね」と杏さんの演技力に高さに驚いた様子の行定監督。「笑ってる顔とそうでない時の顔では、ずいぶん雰囲気が変わる。何より手足が長いでしょ。だから、ちょっとした動きがコミカルに見えたり、シリアスに見えたりする」とその魅力を語った。さらに「等身大の女性を演じる杏さんが母親と対峙するプロローグになっていて、見る人も杏さんのように、身近な人、愛する人への郷愁を覚えるんじゃないかなと思います」と本作の見どころについてもアピールした。一方の杏さんも「現場でも画の美しさとか画作りのこだわりに圧倒されて、どんどんどんどんテイクを重ねるごとに派生して、たくさんアイデアを出してくださいました」と初タッグとなる行定監督との撮影を楽しんだ様子。「母の日というイベントの中で、どのように『澪』とストーリーが絡んでいくのかということに注目して見ていただければと思います。そして皆様が素敵な母の日をお過ごしになられることを祈っております」とコメントを寄せた。第一作目となる本作を皮切りに、季節ごとの行事をテーマにした全5話を放送予定だという同プロジェクト。今後、杏さんと行定監督がどのような作品を送り出してくれるのか、期待して待ちたい。(text:cinemacafe.net)
2015年04月23日三池崇史監督の最新作『極道大戦争』が5月に開催される第68回カンヌ国際映画祭の「監督週間」に出品されることが決定!三池監督にとって同部門での次作の上映は2003年の『極道恐怖大劇場 牛頭』以来、実に12年ぶりとなる。三池監督、主演の市原隼人のコメントが到着した。三池作品としては久々の原作なしのオリジナル脚本(山口義高)で、監督自身「原点回帰」と位置付ける本作。噛まれた人間が次々とヤクザにして、ヴァンパイア…“ヤクザヴァンパイア”と化していく街で、尊敬する親分のカタキを討つべく立ち上がるヤクザヴァンパイアの青年の戦いを激しいアクションと共に描き出す。カンヌ国際映画祭の監督週間は、映画祭とは独立した「フランス映画監督協会」主催による部門で、1968年のフランスの「五月革命」勃発による映画祭開催の危機を引き金に、翌1969年より開始。若き監督の新たな才能の発掘、ベテランや巨匠監督の独創的な作品の上映による、コンペティション部門とはひと味違ったラインナップが特徴となっており、近年では園子温監督『恋の罪』、高畑勲監督『かぐや姫の物語』などが招待され、話題を集めた。国際的評価の高い三池監督だが、中でもカンヌは“常連”と言えるほど、毎年のように何らかの部門に出品しており、2011年には『一命』、2013年には『藁の盾』がそれぞれコンペティション部門にて、2012年には『愛と誠』がミッドナイトスクリーニング部門で正式上映されたが、「監督週間」への正式招待は、Vシネマとして異例の上映が行われた2003年の『極道恐怖大劇場 牛頭』以来、12年ぶりとなる。昨日4月19日(月)に都内で本作の上映会が開催され、そこで、今回の招待の“内定”を伝えられた三池監督は、報道陣の取材に「さっき聞いたんですが、さすがカンヌ。だいじょうぶか?カンヌ(笑)。(映画が)何千本もある中で、あえてこれを招待する…良い度胸してるな(笑)、と敬意をこめて」と照れ隠しの自虐を交えつつ喜びを漏らした。意欲作、風変わりな作品も上映する「監督週間」を三池監督は「居心地がいい」と感じているという。ヤクザとヴァンパイアを組み合わせた奇想天外な本作だが、主演の市原さんの演技に何より監督は手応えと自信を感じているようで「彼ら(フランス映画監督協会の選考者たち)がイメージする、日本人らしい日本人がいたんだ、と思ってもらえると思う。映画に勢いのあった昭和の時代に存在した役者であり、(現代社会が)なくしてしまった日本の男の匂いを感じてもらえると思う」と力強く語った。海外の観客が本作をどのように受け止めるのか気になるところだが、監督が「原点回帰」と銘打つだけあって、いまの日本映画にはない、かなり“変わった”作品であることは監督も自認しているようで「選んだのは彼らなので、観客がどう思っても、俺の責任じゃないから(笑)」と招待決定早々に逃げのコメントで笑いを誘っていた。主演の市原さんは今回の選出に際し「三池監督の現場は、毎日が輝き新鮮で職人という言葉が似合う風が吹いていました。撮影中現場に行く事が毎日本当に楽しみでした。今回フランスのカンヌで上映されるということで、多くの皆様にこの作品を可愛がって頂ける事を願っております」とのコメントを発表した。なお、三池監督と市原さんが、現地入りする方向で現在、スケジュールを調整中だという。『極道大戦争』は6月20日(土)より公開。(text:cinemacafe.net)
2015年04月21日ディズニー最新作『シンデレラ』の日本語吹替えキャストを務める高畑充希と城田優が3月24日に、都内で行われた日本版エンドソングの初お披露目イベントに出席し、主題歌『夢はひそかに(Duet Version)』をデュエット。美しいハーモニーを響かせたが、「尋常じゃないほど緊張した」(高畑)、「手汗がすごい」(城田)と緊張を隠しきれない様子だった。その他の画像誰もが知るディズニー・クラシックを、英国演劇/映画界の巨匠ケネス・ブラナーが初めて実写化した本作。誰もが知る物語をベースに、どんな苦境に立とうとも、「勇気と優しさを忘れないで」という亡き母の言葉を胸に、自ら運命を切り開こうとする等身大のシンデレラ像を描く。劇中では高畑がシンデレラ、城田が王子の声を担当している。久石譲の娘でミュージシャンの麻衣が訳詞を手がけた『夢はひそかに』は、日本版のみデュエットヴァージョンが製作され、城田は「オリジナルはシンデレラひとりが歌っているので、王子としてお邪魔しますという感覚。この曲のデュエットは世界で唯一なので、ぜひハーモニーを聞いていただきたい」と誇らしげ。高畑も「日本だけデュエットという例外を認めていただき、嬉しい限り」と喜びを語った。ともにミュージカル経験があり、「ハモりながら、ふたりがまっすぐに見つめ合う姿がイメージできた」(高畑)、「いざ歌ってみると、『意外に合うよね』って。王子のポジティブな心にも共感できる」(城田)と手応えを示した。本編では新鋭リリー・ジェームズが美しくて愛らしいシンデレラを演じるほか、ケイト・ブランシェットが恐ろしいまま母を、ヘレナ・ボナム=カーターがカボチャを一瞬にして馬車に変えるフェアリー・ゴッドマザーを演じる。また、王子役には大ヒットドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のロブ・スターク役でブレイクしたリチャード・マッデンが起用されている。『シンデレラ』4月25日(土) ロードショー取材・文・写真:内田 涼
2015年03月24日●こういう映画の企画はジブリじゃないと通らない昨年7月に公開されたスタジオジブリ作品『思い出のマーニー』のBlu-ray&DVDが3月18日に発売となる。原作はイギリスの作家、ジョーン・G・ロビンソンによる児童文学作品で、映画化にあたり舞台をイギリスから北海道に変更。無表情で誰にも心を開かない思春期の少女・杏奈が、金髪の少女・マーニーとの交流を通して心の成長を遂げる物語が描かれている。本作は『借りぐらしのアリエッティ』で知られる米林宏昌監督にとって4年ぶりとなる監督作品であり、宮﨑駿氏や高畑勲氏が関わっていない作品としても大きな注目を集めた宮崎監督の引退宣言もあり、否応なしにスタジオジブリの次代を担うことを期待されてきた米林監督は、どんな思いで『思い出のマーニー』を制作したのか。作品の制作秘話と心境を伺った。――まずは作品の制作話から伺えればと思います。本作の映画化を鈴木プロデューサーから提案された時「映画にするのは難しそうだ」と思われたそうですが、実際に制作されていかがでしたか。難しかったですよ。今、思い返してもそう思います。杏奈とマーニーを描くのはやはり大変でした。原作は杏奈のひとり語りで綴られていくのですが、映画だと全部を言葉で喋らせるわけにはいきません。僕はアニメーターなので、やはり表情やリアクションなどの"動き"で見せたいなと思ったんですね。ですから、杏奈が水とからんだり、マーニーとからんだりするシーンは、原作よりも多めにしています。ただ、やはり会話がメインになりますから、制作は苦労が多かったですね。それでも、難しいけれどやってみる価値はあると思いました。――「難しくても映画化したい」と思うだけの魅力があったと。杏奈とマーニーが交流する場面や、ボートで笑い合ったり、会話をするシーンなどをジブリスタッフが描く美しい風景の中で描けたら、いい映画になるんじゃないかなと思いました。とはいえ、派手な事件が起きて巻き込まれていくような映画ではないし、そもそもはっきり"事件"と言えるようなことは起きないんですよね。だからこそ、杏奈の心にフォーカスできたわけですが、こういう映画の企画はジブリじゃないと通らないでしょうね(笑)。そういう作品が作れてラッキーだったと思います。――DVDとBlu-rayで発売されると、さらに多くの人が作品に触れることになります。映画館で見たという人も、映像なら何度でも見ることができますよね。何度も見られるからこその楽しみ方や注目ポイントはありますか?この作品は、そもそも何度も思い返したり見返したりして欲しい作品です。例えばラストの展開を知ってから見返すと、それぞれのシーンにどんな意味があったのかがわかるはずです。本だとすぐにページを戻して振り返られるのですが、映画では一方向なので難しいですよね。なので、DVDとBlu-rayではご家庭で何度も見てもらえるとうれしいですね。すべてのシーンに意味を込めています。杏奈の服装や髪型、水に入るときのリアクション、どこで靴下を脱ぐのかまで、あらゆるところにです。ぜひそんなことを考えながら見てほしいですね。●ジブリ作品ではピーカンが多いのですが、『思い出のマーニー』は曇り空――監督が各シーンに込めた意図や思いを感じ取ってほしいと。考えてみる前に「意味不明」と言われてしまったりするのは残念ですね。作っている方は色々な意味を考えて描いているので、そういったものを感じてもらえるとうれしいです。まあ、一度でわかるように作っておけと言われてしまうとそれまでですけど(笑)。――宮崎さんが引退を表明し、米林監督を後継者として期待する声も多いです。そうしたファンの期待についてどう感じていますか?ジブリを背負うという意識はせずに作りました。ジブリについては宮崎さんと鈴木さんの考え方次第ですから。僕が考えるべきはお客さんのこと。『借りぐらしのアリエッティ』の時は、宮崎さんの目を意識した部分が大きかったんです。宮崎さんならどうするだろうとか考えたりもしました。でもマーニーでは純粋にお客さんが面白いと思ってくれることをやろうと考えましたし、最初から宮崎さんのことは意識しないようにしていました。逆に"意識しない"という意識をしていたのかもしれませんが(笑)。――そこは『借りぐらしのアリエッティ』との大きな違いですね。だから、宮崎さんは、きっとこの作品は好きじゃないだろうなって思いますよ(笑)。もちろん、スタジオジブリのファンの皆さんが期待されることもわかるんです。それに応えたいという気持ちもあります。ただ、ファンの声というのもいろいろだと思うんですよ。「ジブリっぽいものが見たい」という声もありますし、逆に『ジブリっぽいものばかり作るな』という声もあります(笑)。その意味で、今回の「思い出のマーニー」は、ジブリから少し外れた要素を入れていきたいと思ったんです。空一つとってもそうです。ジブリ作品ではピーカン(快晴の青空)が多いのですが、『思い出のマーニー』では曇り空なんですよね。――言われてみれば、たしかに。ジブリにしても、ずっと同じことをやってきたわけじゃないんですよ。毎回、実験的なことを色々とやってきました。今までと同じものを繰り返すだけでは、表現する者としてはダメなんじゃないかなと思います。つねに新しいものを模索していかないといけない。だからといって、ひとりよがりでやっていてもお客さんは引いていってしまいます。そういう意味で「ジブリファンの期待に応えるか」という問いに対しては、「両方やっていく」というのが答えになるでしょうか。スタジオジブリのファンの期待に応えつつ、新しいものを作っていきたいですね。それに、僕は今までスタジオジブリの作品以外の経験がありません。そういう意味では、マーニーには自然にジブリらしさが出ているんじゃないかと思います。スタジオジブリや宮崎監督よりも、その先にある観客を意識して『マーニー』を作り上げたという米林監督。彼が次代のアニメーション界を担う監督の一人であることは確かだ。ファンの期待に応えながらも、それをさらに超えていく――次の米林監督作品は、どんな映画になるのだろうか。■プロフィール米林宏昌1973年7月10日生まれ。石川県出身。1996年にスタジオジブリに入社し、2010年『借りぐらしのアリエッティ』で初監督。2014年『思い出のマーニー』は監督2作目となり、同年にスタジオジブリを退社。
2015年03月19日今春に公開になるディズニーの最新作『シンデレラ』の日本語版で、シンデレラを演じる高畑充希と王子を演じる城田優が、日本版エンドソング『夢はひそかに(Duet version)』を歌うことが発表になった。シンデレラ役と王子役のキャストがデュエットして歌うのは、世界で日本だけとなる。特別映像本作は、有名な“シンデレラ”の物語を、英国演劇/映画界の巨匠ケネス・ブラナーが実写映画で描き出す超大作。新鋭リリー・ジェームズが美しくて愛らしいシンデレラを演じ、ケイト・ブランシェットが恐ろしいまま母を、ヘレナ・ボナム=カーターがカボチャを一瞬にして馬車に変えるフェアリー・ゴッドマザーを演じる。高畑と城田は「ファンタジックで美しいメロディーを、男性の声と女性の声でときめくハーモニーにしたいです。世界で唯一のデュエットなので、日本のバージョンいいね! と世界に言ってもらえるようなふたりのハーモニーを届けたいです!ぜひみなさんも歌って下さい!」とコメント。このほど公開された特別映像では、ふたりが歌う『夢はひそかに』にのせて、映画の名シーンが次々に紹介される。『シンデレラ』4月25日(土) ロードショー
2015年03月10日ディズニーの実写版『シンデレラ』の日本語吹き替え版で、シンデレラの声を務める高畑充希と王子役の城田優が、エンドソング「夢はひそかに」を世界で日本のみデュエットで歌うことが決定。絢爛な本編のシーンとともに、2人の美声に酔いしれる特別映像が到着した。『アナと雪の女王』の「Let It Go」を始め、一度聴いたら耳から離れないまるで魔法のような名曲は、ディズニー作品にとって何より欠かせないもの。中でも、世代を超えて愛されてきたラブソングは、これまでも数々のキャラクターの心情を歌詞とメロディーにのせ、観客を自然と魅力的な世界へと引き込む重要な役割を果たしてきた。そんなディズニー音楽の中でも、老若男女問わず、長年に渡り愛され続けてきた楽曲が『シンデレラ』の「夢はひそかに」。このたび、その名曲が日本版エンドソング「夢はひそかに(Duet version)」として新しく誕生。シンデレラと王子のキャストがデュエットで歌うのは、世界でも日本だけの試みとなる。今回のデュエットについて、高畑さんと城田さんは「ファンタジックで美しいメロディーを、男性の声と女性の声でときめくハーモニーにしたいです。世界で唯一のデュエットなので、『日本のバージョンいいね!』と世界に言ってもらえるようなふたりのハーモニーを届けたいです!ぜひみなさんも歌って下さい!」と世界を意識しながら揃ってアピール。ワルツの夢心地なメロディーに合わせた、誰もが口ずさみやすい歌詞の中には、“たとえ辛いことがあっても、勇気をもって信じていれば愛する人に出会える”という、シンデレラの前向きで純粋な心情と、愛する人を一途に想う王子の優しさが込められている。「愛を信じてる」というフレーズは、運命の人を待ち焦がれる2人の心情を綴ったデュエットバージョンならでは。ミュージカルなどでも、その歌唱力で高い評価を得ている高畑さんと城田さんだけに、勇気を持って運命を切り開く新しいヒロイン=シンデレラの世界観を表現する美しい掛け合いは、またもや多くの人々の心を魅了してくれそうだ。『シンデレラ』は4月25日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年03月10日第87回アカデミー賞授賞式が23日、アメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』が作品賞を含む最多タイ4冠に輝いた。今年も豪華スターが勢ぞろいした第87回アカデミー賞授賞式。途中、司会のニール・パトリック・ハリスが下着姿で登場し、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のワンシーンを再現する爆笑パフォーマンスを見せたり、レディー・ガガが『サウンドオブミュージック』の名曲を熱唱したり、熱いステージが繰り広げられた。そして、各賞の受賞作品・受賞者が発表され、かつてスーパーヒーロー映画でスターになった男が再起を目指すという、マイケル・キートン主演の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』が作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞の4冠を獲得。ウェス・アンダーソン監督最新作『グランド・ブダペスト・ホテル』も、美術賞、衣装デザイン賞、メイク・ヘアスタイリング賞、作曲賞の4冠に輝いた。主演男優賞には『博士と彼女のセオリー』のエディ・レッドメイン、主演女優賞には『アリスのままで』のジュリアン・ムーア。助演男優賞は『セッション』のJ・K・シモンズ、助演女優賞は『6才のボクが、大人になるまで。』のパトリシア・アークエットが受賞した。なお、クリント・イーストウッド監督作品史上最大のヒットを記録し、6部門にノミネートされていた話題作『アメリカン・スナイパー』は音響編集賞のみにとどまった。そのほか、長編アニメ映画賞には『ベイマックス』が選ばれ、昨年の『アナと雪の女王』に続き、ディズニー作品が2年連続で受賞。高畑勲監督の『かぐや姫の物語』は受賞を逃した。WOWOWでは23日21:00から同授賞式の様子を再放送。第87回アカデミー賞 受賞結果一覧作品賞:『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』主演男優賞:エディ・レッドメイン『博士と彼女のセオリー』主演女優賞:ジュリアン・ムーア『アリスのままで』助演男優賞:J・K・シモンズ『セッション』助演女優賞:パトリシア・アークエット『6才のボクが、大人になるまで。』監督賞:『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』脚色賞:『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』脚本賞:『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』撮影賞:『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』美術賞:『グランド・ブダペスト・ホテル』音響編集賞:『アメリカン・スナイパー』録音賞:『セッション』編集賞:『セッション』作曲賞:『グランド・ブダペスト・ホテル』歌曲賞:『セルマ』衣装デザイン賞:『グランド・ブダペスト・ホテル』メイク・ヘアスタイリング賞:『グランド・ブダペスト・ホテル』視覚効果賞:『インターステラー』外国語映画賞:『イーダ』長編アニメ映画賞:『ベイマックス』短編アニメ映画賞:『愛犬とごちそう』短編実写映画賞:『一本の電話』短編ドキュメンタリー賞:『クライシス・ホットライン』長編ドキュメンタリー:『シチズンフォー』(C)2014 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.
2015年02月23日第87回米アカデミー賞授賞式が日本時間23日、アメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、長編アニメーション映画賞はディズニーの『ベイマックス』が受賞し、受賞が期待されていたスタジオジブリ・高畑勲監督の『かぐや姫の物語』は、惜しくも受賞を逃した。『かぐや姫の物語』は、『火垂るの墓』(1988年)や『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994年)などで知られる高畑監督が、日本最古の物語文学『竹取物語』をベースに、製作期間8年、総製作費50億円を投じて作られたスタジオジブリのアニメーション映画。"姫の犯した罪と罰"とコピーに、筆と水彩で描いたようなタッチで濃密に描きこむことで生まれた独特の世界と空気感が見どころで、これまでのアニメにはなかった作画としても大きな話題となった。今年の長編アニメーション賞は、宮崎駿監督の『風立ちぬ』が受賞を逃した昨年に続き、2年連続でスタジオジブリ作品がノミネート。宮崎監督作以外の日本アニメのノミネートは初であり、『千と千尋の神隠し』以来となる12年ぶりの日本アニメの受賞、そしてディズニー作品への雪辱に大きな期待が寄せられていたが、結果は『アナと雪の女王』に続く2年連続でディズニー作品が受賞した。なお、短編アニメーション賞は、『ベイマックス』同時上映の短編映画『愛犬とごちそう』が受賞。同賞にノミネートされていた、堤大介氏と日系米国人のロバート・コンドウ氏が共同監督を務めた『ダム・キーパー』も受賞を逃している。(C)2013 畑事務所・GNDHDDTK
2015年02月23日第87回アカデミー賞授賞式が23日、アメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、ディズニーアニメ『ベイマックス』が長編アニメ映画賞に輝いた。『ベイマックス』は、天才科学者の少年ヒロが、事故で亡くした兄タダシの遺したベイマックスと感動の冒険を繰り広げる物語。高畑勲監督の『かぐや姫の物語』の受賞も期待されていたが、昨年の『アナと雪の女王』に続き、今年もディズニーアニメが同賞を獲得した。授賞式の檀上でドン・ホール監督は「アカデミーに感謝します。ほかの候補の方たちにもお祝い申し上げます。本当にすばらしいアニメの一年になりました」とあいさつ。そして、「ウォルト・ディズニー・スタジオのみなさま、特にジョン・ラセター…世界最高のボスです。上司です。ありがとうございます」と感謝の気持ちを伝え、「キャスト、スタッフのみなさま、才能を提供してくれて情熱を傾けくれてありがとうございました。永遠に感謝します」と続けた。なお、『ベイマックス』のほか、『ザ・ボックストロールズ(原題)』、『ヒックとドラゴン2(原題)』、『ソング・オブ・ザ・シー(原題) / Song of the Sea』、そして、スタジオジブリ作品『かぐや姫の物語』がノミネートされていた。『生中継! 第87回アカデミー賞授賞式』は現在、WOWOWプライムにて放送中。字幕版は同日21時より放送。(C)2014 Disney. All Rights Reserved.
2015年02月23日2月23日(日本時間)、ハリウッドのドルビー・シアターにて世界最大の映画の祭典「第87回アカデミー賞」の授賞式が行われた。「長編アニメーション賞」は、日本からスタジオジブリの高畑勲・監督作『かぐや姫の物語』がノミネートされていたが、受賞はならず。昨年に続き、ディズニー作品(『ベイマックス』)に軍配があがった。2013年に公開され、その匠の技で「国宝級」とまで称された本作。日本最古の物語文学「竹取物語」に隠された、ひとりの少女・かぐや姫の“罪と罰”を高畑監督が独特のタッチで描いたもの。製作に8年を費やし、総製作費は50億円が投じられた。今年のアカデミー賞の中でも、日本からのノミネート作品とあって国内では特に注目を集めていた「長編アニメーション賞」。宮崎駿の監督作『風立ちぬ』が受賞を逃した昨年に続いてのジブリ作品のノミネートとあって、今年はその“雪辱戦”とも言われていた。そして、昨年『アナと雪の女王』で受賞したディズニーが今年も受賞する結果に。アカデミー会員には“ジブリ信奉者”が多いとも言われているが、昨年のアカデミー賞受賞以来、ノリにノッているディズニーの勢いを抑えることはできなかったようだ。先日、ジブリの鈴木敏夫プロデューサーが、宮崎監督の引退以来「ジブリは今、開店休業っていうのかね、何を作っていいのか悩んじゃってる」と発言したことで先行きの不安定さをうかがわせたが、今後、再びジブリ作品が海外の賞レースを賑わせる日は来るのだろうか?<長編アニメーション賞/ノミネート&受賞結果>■『ベイマックス』※受賞■『かぐや姫の物語』■『ヒックとドラゴン2』■『THE BOXTROLLS』(原題)■『Song of the Sea 』(原題)(text:cinemacafe.net)■関連作品:ベイマックス 2014年12月20日より全国にて公開(C) 2014 Disney. All Rights Reserved.
2015年02月23日映画業界最大の祭典であるアカデミー賞授賞式が2月22日(現地時間)に迫った。第87回を迎える今年は、各賞とも「本命」「対抗」「ダークホース」が拮抗しており、例年以上に予想が難しい混戦模様となっている。「長編アニメ映画賞」もその例外ではない。今回は現在、日本でも大ヒット中の『ベイマックス』をはじめ、『ヒックとドラゴン2』(仮題)、『The Boxtrolls』(原題)、『Song of the sea』(原題)、そして日本から高畑勲監督の『かぐや姫の物語』がノミネーションに名を連ねた。スタジオジブリの作品が候補に挙がるのは、宮崎駿監督の『風立ちぬ』に続き2年連続。通算ではオスカーを獲得した『千と千尋の神隠し』を含めて、4度目となる。現時点では、前哨戦にあたるゴールデングローブ賞の「アニメ映画賞」、そして“アニメ界のアカデミー賞”と呼ばれるアニー賞でも「作品賞」の栄冠を勝ち取った『ヒックとドラゴン2』が一歩リードしている。製作するドリームワークス・アニメーションは『シュレック』『マダガスカル』などで知られるが、近年は不調続きで最近、大規模なリストラを発表したばかり。ぜひとも受賞し、重い雰囲気に風穴を開けたいだろう。昨秋、『ヒックとドラゴン2』を鑑賞する機会を得たが、前作同様に主人公とドラゴンの冒険と成長を描く「絆のドラマ」を軸に、意外性に富んだシナリオとおとぎ話に対する批評精神は健在(それらは、いまやディズニーの十八番となった)。これに比べると、『ベイマックス』はあらゆる面で洗練されており、優等生過ぎる印象もある。アナ雪旋風の反動もあり、受賞には若干パンチ不足かもしれない。そもそも「長編アニメ映画賞」の混戦は、『ファインティング・ニモ』『トイ・ストーリー3』など過去7回も同賞を受賞しているピクサーの新作が2014年は“不在”だったから。さらに当初、本命視されていた『LEGO(R)ムービー』の“脱落”が混戦に拍車をかけている。最後に日本人が想像する以上に、アカデミー会員にはジブリ信仰者が多く、『かぐや姫の物語』にも大いにチャンスがあることを付け加えたい。(text:Ryo Uchida)■関連作品:かぐや姫の物語 2013年11月23日より全国にて公開(C) 2013 畑事務所・GNDHDDTK
2015年02月13日ディズニーの実写版『シンデレラ』でシンデレラの日本語吹替えを担当する高畑充希と同じく日本語吹替えで王子の声を演じる城田優が2月10日に開催されたイベントに劇中の衣裳を再現したドレス&王子の装いで来場し、とっておきの“魔法”を披露した。その他の写真バレンタインイベントとして開催されたこの日の催し。城田は一般人には簡単には着こなせないであろう王子ルックを見事に着こなして登場し「(オリジナル版との)再現率を上げるべく夜中までかけて仕上げてくださったそうですが、着心地も最高です。なかなか、白タイツを履くことはないので結構、恥ずかしいですが…」と言いつつ微笑む。そして、その城田が「ビビデバビデブー!」と魔法の呪文を唱えると、何の仕掛けも見られなかった馬車のパネルの裏から、青いシンデレラのドレスに身を包んだ高畑が登場した。高畑は「この衣裳は緊張します!女の子の夢ですから。幸せです」と語り、城田の「こちらも本物のドレスと瓜二つでとってもキレイです」という言葉に笑顔を見せた。シンデレラ役の日本語吹替えのオファーについて高畑は「最初はピンと来なかったです。ディズニーの(アニメの)『シンデレラ』の存在が大きすぎて…声を入れる時になって鳥肌が立ちました。いろんな人に自慢してます(笑)」と明かす。「ディズニーの声をいつかやりたいと願っていた」という城田は「最初は『え?本当?』と何度も確認しました(笑)」と明かし「“シンデレラガール”という言葉が定着しているくらいで、ディズニーの中でも代名詞と言える存在で、その王子は世界共通の王子像とも言える存在。光栄です」と喜びを口にした。高畑はシンデレラが体現する女性像について「“耐える女”ってイメージでしたが、実際に映画になって声を入れると、芯が強くていまの女の人が憧れられる女性像だと思いました。勇気があるけど我が強いのではなく周りが良くなるように考えて動ける人。そうなれたらなと思います」と語る。さらに高畑は“魔法”でガラスの靴をチョコレートの靴に変えて城田にプレゼント。城田は思わぬサプライズに「どうやったの?」と驚愕したが、高畑は「内緒!」とニッコリ。城田は映画本編の魔法にも言及し「変身の魔法は男性、女性関係なくみんな、クギ付けになりますよ!」と映画をアピールしていた。『シンデレラ』4月25日(土) ロードショー
2015年02月10日この時期には毎年、アカデミー賞にノミネートされた監督・俳優らが集うランチ会が行われる。「The Telegraph」によると、今年のランチ会には『かぐや姫の物語』が「長編アニメーション部門」にノミネートされた高畑勲監督も出席したようだ。2月2日(現地時間)、アカデミー賞ノミニーたちがLAのビバリー・ヒルトン・ホテルに集った。150人以上が出席した大規模な会だったようだ。集合写真では真ん中に置かれた金のオスカー像を囲むようにして業界人たちがずらっと並んでいる。高畑監督はこの中で前から三列目の右端あたりにいるのが分かる。2014年のランチ会の集合写真は、レオナルド・ディカプリオが疲れきった顔で、ジャレッド・レトがド派手な金のスーツを着て、ファレル・ウィリアムズが巨大な帽子をかぶっている、などいろいろと話題が多かったようだが、今年はそれに比べいささか落ち着いた雰囲気の集合写真となっている。その年のノミニーたちの個性によってカラーも変わってくるのだろう。アカデミー賞は熾烈な競争なため、お互いをライバル視せずにはいられないのではないかと考えてしまうが、ノミニーたちはランチ中どのような会話を交わしたのだろうか。今年のアカデミー賞は“多様性に欠ける”と批判を受けることもあった。白人ばかりがノミネートされているというのがその理由だ。集合写真を見ても分かる通り、高畑監督は数少ないアジア人の出席者だったようだ。(text:cinemacafe.net)■関連作品:かぐや姫の物語 2013年11月23日より全国にて公開(C) 2013 畑事務所・GNDHDDTK
2015年02月04日世界最高峰の映画の祭典とされる「第87回アカデミー賞授賞式」が、2月23日(日本時間)に行われる。この度、昨年、主題歌の「Let it go」と共に世界的に大ヒットを飾った『アナと雪の女王』の楽曲を手がけたクリスティン・アンダーソンとロバート・ロペスが、今回のアカデミー賞のためにミュージカルナンバーを担当。その曲で司会のニール・パトリック・ハリスがパフォーマンスすることが明らかになった。先日、スタジオジブリの高畑勲・監督作『かぐや姫の物語』が「長編アニメーション部門」でのノミネートされるなど日本でも注目を集めているアカデミー賞。受賞式を彩る豪華なパフォーマンスの数々もアカデミー賞のみどころのひとつだ。昨年は『怪盗グルーのミニオン危機一発』からファレル・ウィリアムズが「ハッピー」を披露、『アナと雪の女王』からはイディナ・メンゼルが「Let It Go」を緊張しながらも披露するなど会場を盛り上げるパフォーマンスが繰り広げられた。今回披露されるのはミュージカルナンバー「Moving Pictures」。詳細は明らかになっていないが、『アナと雪の女王』のコンビともあってつい口ずさみたくなる楽曲になることは間違いなさそう。アカデミー賞プロデューサーのクレイグ・ゼイダンとニール・メロンはこの発表に関して、「昨年、オスカーも受賞し、世界的にも大成功をおさめた『アナと雪の女王』のクリスティンとロバートに曲を提供してもらえるなんて、これ以上幸せな事はない」と喜びのコメント。司会のニール・パトリック・ハリスは過去にもオープニングアクトでミュージカルを披露しており、どういった楽曲に仕上がるのか注目が集まりそうだ。「生中継!第87回アカデミー賞授賞式」は2月23日(月)9:00より同時通訳、21:00より字幕版をWOWOWにて放送。(text:cinemacafe.net)
2015年01月30日2013年11月に日本で公開された、スタジオジブリの高畑勲監督によるアニメーション映画『かぐや姫の物語』が15日、第87回米アカデミー賞の「長編アニメーション部門」(Animated Feature Film)にノミネートされたことが明らかになった。『かぐや姫の物語』は、『火垂るの墓』(1988年)や『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994年)などで知られる高畑監督が、日本最古の物語文学『竹取物語』をベースに、製作期間8年、総製作費50億円を投じて作られたスタジオジブリ最新作。"姫の犯した罪と罰"とコピーに、筆と水彩で描いたようなタッチで濃密に描きこむことで生まれた独特の世界と空気感が見どころで、これまでのアニメにはなかった作画としても大きな話題となった。本作は、全国345館456スクリーンで公開されて206万人を動員、24億円の興行収入を記録している(2015年1月15日現在)。北米では、『THE TALE OF THE PRINCESS KAGUYA』というタイトルで2014年10月に公開され、ロサンゼルス映画批評家協会賞(アニメーション映画部門)、ボストン映画批評家協会賞(アニメーション映画部門)、トロント映画批評家協会賞(アニメーション映画部門)を受賞している。今回のアカデミー賞ノミネートを受けて高畑監督は「光栄に思います」と喜び、「ノミネートしてくださったアカデミー会員の方々、この作品を高く評価してくださった方々、そして北米での公開に協力してくださった方々に心から感謝します」と、作品に関わったすべてのスタッフに感謝の意を表明。昨年の米アカデミー賞「長編アニメーション部門」は、『アナと雪の女王』が輝き、日本中の期待を背負っていた宮崎駿監督の『風立ちぬ』の受賞はならなかったが、スタジオジブリのノミネートは2年連続で、宮崎監督作以外の日本アニメのノミネートは初。今年は『ベイマックス』が対抗馬となるが、宮崎監督の雪辱を高畑監督が果たすのか期待が高まる。「長編アニメーション部門」のノミネート作品は、『ベイマックス』、『かぐや姫の物語』、『ヒックとドラゴン2』、『THE BOXTROLLS』(原題)、『Song of the Sea 』(原題)の5作品となる。(C)2013 畑事務所・GNDHDDTK
2015年01月16日2013年に公開され話題を呼んだ、スタジオジブリの高畑勲・監督作『かぐや姫の物語』。公開当時、その匠の技で「国宝級」とまで称された本作が、1月15日(日本時間)、第87回米アカデミー賞のノミネート作品発表が米ロサンゼルスで行われ、「長編アニメーション賞」でのノミネートが決定した。本作は、日本最古の物語文学「竹取物語」に隠された、ひとりの少女・かぐや姫の“罪と罰”を高畑監督が独特なタッチで描いたもの。製作に8年を費やし、総製作費は50億円が投じられている。昨年、『アナと雪の女王』に軍配が上がった「長編アニメーション賞」。昨年度のノミネート段階では宮崎駿・監督作『風立ちぬ』も入っており、日本中の大きな期待を背負っていただけに「残念…」の声があとを立たなかったが、今回でスタジオジブリとしては2年連続のノミネーション。しかし、日本でも大ヒット中のディズニー作品『ベイマックス』もノミネートされており、そういった意味でも今回の受賞結果には大きな注目が集まるだろう。もし仮に、2月にロサンゼルスで行われる授賞式で『かぐや姫の物語(英題:The Tale of Princess Kaguya)』の名が呼ばれることになれば、宮崎監督の雪辱を、高畑監督が果たすという面白い形になる。また同部門には、今年の第72回ゴールデン・グローブ賞「アニメ作品賞」を受賞した『ヒックとドラゴン2』もノミネートされた。第87回アカデミー賞の受賞結果は2月23日(日本時間)、授賞式にて発表。<第87回米アカデミー賞「長編アニメーション賞」ノミネート作品一覧>■『ベイマックス』■『かぐや姫の物語』■『ヒックとドラゴン2』■『THE BOXTROLLS』(原題)■『Song of the Sea 』(原題)(text:cinemacafe.net)■関連作品:かぐや姫の物語 2013年11月23日より全国にて公開(C) 2013 畑事務所・GNDHDDTK
2015年01月15日誰もが知るファンタジーをディズニーが新たに描く実写映画『シンデレラ』の日本語版で高畑充希がシンデレラの声を、城田優がプリンスの声を演じることが決定した。その他の写真本作は、有名な“シンデレラ”の物語を、英国演劇/映画界の巨匠ケネス・ブラナーが実写映画で描き出す超大作。新鋭リリー・ジェームズがシンデレラを演じるほか、ケイト・ブランシェット、ヘレナ・ボナム=カーターらが出演する。高畑は映像だけでなく舞台でも活動し、歌手としても高い評価を集めている実力派だ。本作では誰もが知るヒロインを演じるが高畑は「シンデレラは“女性の永遠の憧れ”なので、期待の大きい役を任せていただき、なんて幸せなんだと思いました。今回、私自身が抱いていたシンデレラとはまた少し違った新たなヒロイン像として登場するので、格好よく演じたいです」とコメント。城田も舞台やミュージカルで実力を発揮しており「プリンスの繊細な心の動きまできちんと描きたい。何よりも観ている方に“素敵だな”と思ってもらえるような王子様の声を演じたいです。ぜひ楽しみにしてください!」と意気込みを語っている。ディズニーは日本語版キャストを決定する際に徹底的にリサーチと選考を重ねることで知られており、『アナと雪の女王』や『ベイマックス』など近年の公開作の吹き替えも高い評価を集めている。本作のキャストについてディズニーは「映画やドラマ、舞台と幅広く活躍する注目の役者で、非常に高い演技力がある高畑さんは、シンデレラの持つ純粋さや透明感、勇気や芯の強さがぴったり合っている。城田さんは、プリンスの雰囲気と外見はもちろん、優しさと誠実さを持つ今回のプリンスのイメージに重なり、オファーさせていただいた」と語っており、本作の日本語版も高クオリティなものになりそうだ。『シンデレラ』4月25日(土) ロードショー
2015年01月13日2013年に公開され話題を呼んだ、スタジオジブリの高畑勲監督の最新作『かぐや姫の物語』。公開当、その匠の技に「国宝級」とまで言われ、来年2月に行われるアカデミー賞にも期待がかかる本作だが、本日(12月17日)より、DVD&ブルーレイの発売を記念して国立新美術館にて“特別展示『かぐや姫の物語』の物語”が7日間限定で開催中だ。本作は、日本最古の物語文学「竹取物語」に隠された、ひとりの少女・かぐや姫の“罪と罰”を独特なタッチで描く長編アニメーション。昨年の宮崎駿の『風立ちぬ』のノミネートで日本中が大いに沸いた米アカデミー賞だが、本作もすでに来年行われる同賞の「長編アニメーション部門」へのノミネート資格を持つ20作品のうちの1本として発表されている。今回の特別展示は、以前より「アニメーション」という芸術表現に注目していたという国立新美術館が、“アニメーション表現の限界”に挑戦したとも言える本作の作品性に共感して実現に至ったよう。この特別展示では、スタジオジブリのスタッフによって描かれた原画や、自然を描いた背景美術などの実物展示を始め、DVDのパッケージデザインの元にもなった桜の木の下で姫が舞うシーンを高さ2,4メートル、幅3,5メートルのもの大きさに拡大して展示。また、高さ1メートル、幅1,8メートルのビッグバナー8枚を吊り下げ、かぐや姫の誕生シーンをダイナミックに展示するなど、様々な角度から『かぐや姫の物語』の映像が作られた秘密に迫るものとなっている。『かぐや姫の物語』ブルーレイ&DVDは発売中。<特別展示『かぐや姫の物語』の物語/開催詳細>■会期:12月17日(水)~23日(火・祝)まで。■開催時間:10時~18時 ※金曜日は20時まで/入館は閉館の30分前まで。■実施場所:国立新美術館1階ロビー(東京都港区六本木7-22-2)■備考:入場無料(text:cinemacafe.net)■関連作品:かぐや姫の物語 2013年11月23日より全国にて公開(C) 2013 畑事務所・GNDHDDTK
2014年12月17日芦田愛菜が初の映画単独主演を務めた『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』のブルーレイ&DVDが本日リリースされ、芦田と行定勲監督のコメントが到着した。その他の写真本作は、西加奈子原作の同名小説を芦田主演で行定監督が映画化したもの。“普通”が大嫌いな小学3年生の渦原琴子、通称こっこが、たくさんの「何が変なの?」「どうしていけないの?」を繰り返しながら、おじいちゃんがそっと教えてくれた“イマジン”という言葉をヒントに、ひと夏のさまざな経験を通して成長していく姿が描かれる。行定監督に「芦田愛菜がいなければ映画化できなかった」と言わせる名演を披露した芦田は、「私も学校でお友達とケンカしたりしますが、主人公のこっこちゃんを演じて、友達の気持ちを“イマジン”してからお話したり、行動するようになりました。もちろん、演じる上でも“イマジン”はスゴく大事だと思います。役に入る時には、この子はどう行動するだろう…、どう考えるだろう…といつも想像しています」とコメント。行定監督は「『イマジン』と言えばジョン・レノンの名曲ですが、あの歌を歌詞を吟味して、自分なりの解釈をした西加奈子の小説を読んだとき、これは今の世の中に一番大切なことだと思った」と話し、「正直、僕はあの忌野清志郎がジョン・レノンの歌を認め日本語の歌詞にして、やっと本当の意味で興味を持ちました。僕はミュージシャンじゃないからジョン・レノンや忌野清志郎のように『イマジン』を歌うことはできないが、映画で『イマジン』って叫べるんじゃないか、彼らの“イマジン”を受け継ごうと思ったんです。だからこれは相手の気持ちを想像することで世界を繋げようとする少女の“イマジン”する映画になりました」と語っている。『円卓こっこ、ひと夏のイマジン』発売中ブルーレイ(1枚組):4700円(税別)DVD(1枚組):3800円(税別)発売・販売元:ポニーキャニオン※DVDレンタルのみ発売元:ポニーキャニオン販売元:東宝
2014年12月17日2月のアカデミー賞発表に向けて各映画賞レースが始まったが、7日(現地時間)にロサンゼルス映画批評家協会(LAFCA)賞が発表になり、高畑勲監督の『かぐや姫の物語』が長編アニメーション賞に輝いた。作品賞はリチャード・リンクレイター監督の『6才のボクが、大人になるまで。』。1人の少年の成長を12年間かけて撮影した作品で、監督賞、主演女優賞(パトリシア・アークエット)、編集賞も合わせて受賞した。主演男優賞は、全編車の中でたった1人というシチュエーションを演じきった『Locke』(原題)のトム・ハーディという意外な結果。次点は、本命視されていた『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のマイケル・キートン。主演女優賞の次点は『Still Alice』(原題)のジュリアン・ムーア。助演男優賞は『ウィプラッシュ』(原題)のJ・K・シモンズ(次点は『バードマンあるいは(無知のもたらす予期せぬ奇跡)』のエドワード・ノートン)、助演女優賞はポーランド映画『イーダ』のアガタ・クレシャ(次点は『Nightcrawler(原題)』のレネ・ルッソ)。『イーダ』は外国語映画賞も受賞した。作品賞、監督賞で次点だった『グランド・ブダペスト・ホテル』のウェス・アンダーソンは脚本賞を受賞した。同作は美術賞も受賞。脚本賞の次点は『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ、ニコラス・ヒアコボーネ、アレクサンダー・ディネラリス・Jr.、アルマンド・ボー。同作はエマニュエル・ルベツキが撮影賞を受賞した。『かぐや姫の物語』が受賞した長編アニメーション賞の次点は『LEGO(R)ムービー』。ロサンゼルス批評家協会賞はアカデミー賞の前哨戦の1つとして知られ、2002年に長編アニメーション賞を受賞した宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』はその後アカデミー賞長編アニメーション賞も受賞。『かぐや姫の物語』も今回の受賞で、今後の映画賞レースでの健闘が期待される。(text:Yuki Tominaga)■関連作品:かぐや姫の物語 2013年11月23日より全国にて公開(C) 2013 畑事務所・GNDHDDTKグランド・ブダペスト・ホテル 2014年6月6日よりTOHOシネマズ シャンテ、シネマカリテほか全国にて公開(C) 2013 Twentieth Century Fox
2014年12月09日『かぐや姫の物語』DVD&ブルーレイの“特命コピーライター”に任命された爆笑問題の太田光が12月1日(月)、トークショーを実施。すでに太田さん考案の「あゝ無情」という宣言コピーが発表されているが、「これ、鈴木(敏夫)さんが決めちゃってさあ」と明かした。本作はスタジオジブリの高畑勲監督にとって、実に14年ぶりとなる監督作。日本最古の物語といわれる「竹取物語」を題材に、かぐや姫が地球に姿を現した理由と、やがて月へ去らねばならなかった波乱の運命を「かぐや姫の罪と罰」という視点から描く。今回、高畑作品のファンであることからコピーライターに任命された太田さんは、10月にスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーと公開会議を実施し、鈴木氏とともに同作のテーマと魅力を掘り下げ、「女ってわからない」「諸行無常」などのキーワードをひねり出した。その結果、「あゝ無情」という宣伝コピーが採用されたが、「話しの流れで、鈴木さんがどんどん書いちゃって。映画を観て、時間の流れは留めておけない切なさを感じたから、“無常”というキーワードを出したんだけど、鈴木さんが“無情”のほうがいいなって(笑)」と暴露。それでも「まあ、鈴木さんがいいなら、文句ないですけど」と大人な対応を見せていた。太田さんにとって『かぐや姫の物語』の魅力は、「観終わった後に複雑な気持ちになるところ」だと言い、「単純に良かった、感動したって言えない。逆にひと言で説明できちゃうなら、作品をつくる意味ないですし」と力説。さらに「ストーリーや理屈は抜きにして、風の音や、木々の揺れをボーっと見ているだけで時間が過ぎていく」と高畑作品における自然の描写の“すごさ”を語った。来年のアカデミー賞長編アニメーション部門のノミネート資格がある20作品の1本として発表され、注目が集まっているが、「それを一番のセールスポイントにするのは、高畑さんに対して失礼」と太田さん。とかく海外での評価が重んじられる昨今の風潮に対して、「外国人が富士山を見て、美しいと思う心に理由はないし、それを分析するのはナンセンス」「結果的に受賞するのはいいけど、漠然と『世界で評価される』って、それが何なの?と思う」と持論を展開した。都内で行われたトークショーには、スタジオジブリのプロデューサー見習い・川上量生氏が同席。今回宣伝コピーとなった「あゝ無情」に加えて、決定までに飛び出した35種類の候補が、70枚のポスターとして12月1日(月)~7日(日)の期間限定で、大江戸線六本木駅に掲出されている。『かぐや姫の物語』DVD&ブルーレイは12月3日(水)より発売。(text:cinemacafe.net)■関連作品:かぐや姫の物語 2013年11月23日より全国にて公開(C) 2013 畑事務所・GNDHDDTK
2014年12月01日爆笑問題の太田光が10月17日(金)に行なわれた『かぐや姫の物語』のブルーレイ&DVD発売に際しての宣伝コピーを決める“公開会議”にスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーと共に出席。太田さんは自身が初監督を務める映画作品の企画が水面下で進行中であることを明かした。高畑勲監督の『かぐや姫の物語』のブルーレイ&DVDのための宣伝コピーを考える“特命コピーライター”に任命された太田さん。本業のお笑いの世界にとどまらず、これまでに小説「マボロシの鳥」を発表するなど多彩な分野で活躍するが、以前から映画に対する意欲はたびたび口にしてきた。高畑監督のファンを公言する太田さんだが、改めてその魅力や自身が受けた影響について、まず「想像力」をポイントに挙げる。「僕らのお笑いは時事ネタを扱っていて、実際の事件をちょっとズラして(漫才にして)やっていたりしていて、ゼロから作っているわけじゃない。ジブリの作品は空想することに手間暇をかけるのがいかに大事なのかを教えてくれる」と語る。気になる“太田光初監督作”については「始まっていると言うと語弊がある」という段階だそうだが、「自分の中で脚本は出来ている」と語るなど、作品の方向性などは固まり、着々といることをうかがわせる。高畑作品のファンである一方で、太田さんはジブリのもう一人の巨匠・宮崎駿監督に対しては否定的。この日も宮崎監督に対して過激な厳しい意見を口にしていたが、監督として宮崎監督を超える自信があるか?と問われると「興行収入という点では超えられないと思います(苦笑)。ただ、中身に関しては自分のものが一番面白いと思わなきゃ作れない。その意味で自信はあります」と頼もしい言葉を口にした。ジブリの数々のヒット作品を手掛けてきた鈴木プロデューサーは、太田さんに対し「この業界にはそれぞれにプロがいるけど、プロの意見を無視すること。そうでないと新しいものは生まれない」と常に常識破りの作品作りや宣伝でアニメ界、映画界に革新をもたらしてきたプロデューサーならではのアドバイスを送っていた。『かぐや姫の物語』ブルーレイ&DVDは12月3日(水)より発売。(text:cinemacafe.net)■関連作品:かぐや姫の物語 2013年11月23日より全国にて公開(C) 2013 畑事務所・GNDHDDTK
2014年10月17日爆笑問題の太田光が『かぐや姫の物語』ブルーレイ&DVD発売に際し“特命コピーライター”に就任。10月17日(金)、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーと共に宣伝コピーを考えるための会議を報道陣に公開する形で行った。誰もが知る日本の古典的物語を、高畑勲が独自の解釈を加えてアニメ化した本作。劇場公開時には鈴木さんが考えた「姫の犯した罪と罰。」というコピーは添えられたが、高畑監督はこれを承認はしたものの、実際に描こうとしたテーマからは外れていると感じ、気に入ってなかったそうで、今回、以前から高畑作品のファンで、本作に関しての公開時から絶賛している太田さんが特命コピーライターに任命されることになった。太田さんは、高畑作品のファンである一方で、同じジブリの巨匠・宮崎駿のことはハッキリと「嫌い」と公言しており、この日も「ジブリでは(宮崎監督に)スポットが当たることが多いけど、僕は高畑さんの作品の方が真っ当で斬新だと思う。普通じゃ考えられない手間暇をかけていて、動きから何から、世界に誇る技術だと思う」と語り、さらに「あまりに宮崎さんがもてはやされている、実力以上に(笑)!」「もう引退したからいいでしょ?戻ってこないでしょ?」「(宣伝コピーは)『宮崎以上!』ってどうですか?」などと随所に“毒”を交えつつ、アンチ宮崎&高畑びいきの発言を口にする。肝心のコピーに関しては、当初「高畑万歳!」など冗談交じりのアイディアを披露していたが、徐々に核心に迫っていく。この日の登場時、太田さんは鈴木さんと並んで立つとすかさず「爆笑問題です」と挨拶し、鈴木さんを見やり「田中(裕二)が急に年とっちゃって(笑)」と語り、会場を笑いに包んでいたが、鈴木さんが求めているのはまさに「こうやってひと言でかぐや姫を紹介すること」だという。そこから、本作ならではの特徴やかぐや姫とはどういう人物なのか?という点について議論を深めていくが、太田さんは「(かぐや姫は)見方によっては男を振り回すイヤな女!」と語る。鈴木さんはこれを受け、本作が、少女が初潮を迎え、女性へと成長していく姿を描いていることを指摘し「高畑さんが女性をどう描くかということが垣間見えるし、宮さん(=宮崎監督)とはちょっと違う。『風立ちぬ』がある意味で男にとって都合のいい女を描いたとすると、『かぐや姫の物語』はあまり都合がよくない(笑)」と語る。ここから、太田さんは男性の視点で「女の中の女」「女ってわからない」などのコピーを提示する。さらに太田さんは、本作および高畑作品の不思議な魅力が時間の移ろいと、そこから生まれる変化にあると持論を展開。2時間を超える長編だが「元々の誰もが知っている『かぐや姫』の物語をそのまま、一切膨らませたり、余計なエピソードを付け加えたりせずに描いている」「良いものが時間の流れの中で変化していく。幸せと思っていたけど、それがそこに留まらない」と語り、コピーにも「留めておけない、掴まえられない感じが出せれば…」と思案する。このアイディアを元に鈴木さんは「この世は無常」「あゝ無常」といった具体的なコピーへと変換。最終的な結論は持ち越しとなり、DVD&ブルーレイ発売時に六本木駅などで展開されるポスターなどで正式にお披露目されることになった。太田さんはここまでの議論を踏まえつつ、宮崎作品と比べやや格式高いと思われがちな高畑作品ではあるが「そう思っている人にも観てほしいし、もうちょっと柔らかく表現できれば」とさらに磨き上げたコピーを捻出することに意欲を見せていた。『かぐや姫の物語』ブルーレイ&DVDは12月3日(水)より発売。(text:cinemacafe.net)■関連作品:かぐや姫の物語 2013年11月23日より全国にて公開(C) 2013 畑事務所・GNDHDDTK
2014年10月17日11月15日放送のWOWOW連続ドラマW『平成猿蟹合戦図』(毎週土曜 22:00~ 全6話)に出演する俳優の高良健吾と行定勲監督がこのほど、熊本・菊池で開催された「菊池国際交流映画祭」で舞台あいさつを行った。同ドラマは、東京・歌舞伎町で起こったひき逃げ事件をきっかけに、バーテンダー・浜本純平(高良)と、世界的チェロ奏者がおこしたひき逃げ事件を目撃したことをきっかけに彼の敏腕マネージャーの園夕子(鈴木京香)と知り合い、意図しなかったその出会いによって国政選挙に挑んでいく"復讐エンタテインメント"。純平と夕子の出会いはさまざまな人々を巻き込みながら、やがて日本を揺るがす大騒動へと発展していく。映画祭では同ドラマの第1話が上映され、終了後に熊本市出身である高良と行定監督が登壇。高良は「演じた純平という青年は、自分よりも人のことを信じられる素敵なヤツで、すごく気持ちいいドラマです。行定さんとは2度目のお仕事になりますが……厳しいし、試されている気がするし、緊張もするけれど、こちらがぶつけたものをすべて受け止めてくれる」と話し、「行定組でしか味わえないもの、瞬間がありました。ドラマのクランクアップの日に、監督から『お前って、面倒くさいやつだよな』って言われてすごくうれしかった」と笑顔を見せた。行定監督は「純平はバーテンダーから政治家を目指すわけですが、純平というのは高校生の気持ちのまま漂っている人間でもあって、それが確固たる人間になっていく様は俳優・高良健吾の良さが一番光るだろうと思ったんです。何者でもない人間を演じさせると光る俳優なんですね」と高良を絶賛した。また、ステージには、挿入歌を担当するロックバンド「忘れらんねえよ」のボーカル&ギターの柴田隆浩もステージに立ち、高良と一緒に劇中歌である「ぼくらの居場所」を熱唱。劇中でも主人公の純平が同曲を歌っており、「純平が歌うシーンはドラマとしても重要なシーン、みどころです」と行定監督はアピールした。さらに、主題歌担当の歌手の塩ノ谷早耶香もゲストとして登壇し、主題歌「それでも世界は美しい」を披露し、会場は大いに盛り上がっていた。
2014年10月15日11月、新国立劇場・中劇場にて『ブエノスアイレス午前零時』が上演される。演出を担当する行定勲と、原作者の藤沢周に話を訊いた。『ブエノスアイレス午前零時』チケット情報1998年に芥川賞を受賞した小説『ブエノスアイレス午前零時』を、行定は刊行当初から映画にしたいと熱望していた。「藤沢さんの描くハードボイルドな、ちょっと距離を置いて社会を見つめる視線というのは、僕の思う非常に〈映画的なるもの〉なんです。静かだけれど、つねに凶暴」と藤沢作品の魅力を語る行定。ノートを新しくするたび、今後実現させたい企画の筆頭に『ブエノスアイレス午前零時』の名はあり続けたのだという。これが舞台化に向けて大きく舵を切ったきっかけは、主演である森田剛からのラブコールだった。「行定さんの演出で舞台をやりたい」という森田の想いを行定はふたつ返事で受け入れた。そして彼に似合う作品を考えるうち、15年もの間温め続けていたタイトルが浮かんだ。「森田くんに、現実に縛られた男を演じてほしかった。そういう男が奥底にあるものを出す瞬間を演じたら、彼はすごく輝くんじゃないかと思ったんです。そのときに『ようやくあの作品ができる』と感じた」長年行定から映画化の構想を聞き続けていた藤沢は、そのキャスティングに最初は驚いたのだとか。それもそのはず、原作に描かれているカザマという男は、森田の風貌と決して似ているとはいいがたいのだ。しかし制作発表の場で森田と会い、彼がカザマを演じることに深く納得したという藤沢。「森田さんは静かなのに、心の中に刃を抱えている感じがする。彼に演じてもらうカザマは、静謐な男だけれど実は奥底でパッションが燃えている。ぴったりですよ」。原作者である藤沢は、行定の手による舞台化に全幅の信頼を置いている。「行定さんの映画って、たとえラブストーリーでもそのなかに冷酷なものや毒を孕んでいる。それが僕に共鳴する部分があるんです。『ブエノスアイレス午前零時』もいろんな読み方ができる小説ですが、書き手の核を確実に掴み取ってくださっている」。行定も「どう演出するか、いまの時点ではまったくわからない」と言いつつ、自信をのぞかせる。「藤沢さんの小説は、10年以上経ってもまったく色あせない。それは僕が映画をつくるときに目指しているところです。いくつか演劇に携わってきたけれど、こうして企画の段階から携わるのは初めての経験。プレッシャーはあります。でも、原作を初めて読んだ時の初期衝動のまま、この世界を描き出せれば」。果たして、行定によってこの作品がどのような形で立ち現れるのか、期待が募る。舞台は11月28日(金)から12月21日(日)まで東京・新国立劇場 中劇場、12月25日(木)から29日(月)まで大阪・シアターBRAVA!で上演。チケットの一般発売は10月4日(土)午前10時より。取材・文/釣木文恵
2014年09月30日●『風の谷のナウシカ』後にアニメーターに戻ることを望んでいた宮崎駿監督スタジオジブリのプロデューサー鈴木敏夫氏とAKB48の総合プロデューサー秋元康氏が23日、都内で「将来のエンターテインメント」をテーマにした公開対談イベントを行った。同イベントはアニメーション映画『風立ちぬ』と『かぐや姫の物語』Blu-ray&DVD発売を記念したもの。1時間半にわたる対談の中で、秋元氏は「マーケティングは何も生まない」「才能も磨かないといけないが、大事なのは人間力」、鈴木氏は「次の才能はアジアから出てくる」とそれぞれ持論を展開した。この対談のために『風立ちぬ』と『かぐや姫の物語』の2本を観てきたという秋元氏は、両作品について、「思いが伝わってきて面白かったです。僕はTVでやってきたので、子どもからお年寄りまで楽しませられる最大公約数なものを考えます。この表現は伝わるだろうかとか、こういう言葉だとどれくらいわかるだろうかとか。例えば『フライングゲット』という言葉をタイトルにしても、フラゲって言葉をどれくらいの人がご存知なのかとかを考えます。もちろん『風立ちぬ』と『かぐや姫の物語』もオーディエンスを考えたものかもしれないけど、まず監督からのメッセージがシンプルにあって素晴らしいと思いました」と絶賛。これを受けて鈴木氏は「もうずいぶん昔のような気がするけど、去年だからまだ1年なんだね。色々あったからね」と答えた。鈴木氏が言う「色々」とは両監督の年齢的なものと、今後のスタジオジブリについての話だ。「宮崎駿は73、高畑勲は79になります。おそらくこれが最後かなという予感があり、最後は本来やりたいものをやってもらおうと思いました。ジブリという会社を運営してきて、僕としては好きなだけお金も時間も使ってもらうのが退職金のつもりでした」両監督がやりたいものをやりたいように作ったという『風立ちぬ』と『かぐや姫の物語』だが、特に高畑監督に関しては苦労が多かったと鈴木氏は語る。「『かぐや姫の物語』に関しては予算ありきではなかったんです。完成したときに世の中に出す。何が起きても驚かない。興行の問題はあるけど、僕としてはこの作品はそういうことを考えずにやるという覚悟があった。『かぐや姫の物語』は8年かかりましたが、それも想定内でした」(鈴木氏)こうした鈴木氏の仕事ぶりに秋元氏は、冗談混じりに「どう考えてもマゾですよね(笑)」と笑いを誘い、鈴木氏も「たしかにそうですよね(笑)」と応じた。ここから話は、『風の谷のナウシカ』製作時のエピソードへと移った。当時、雑誌の編集者としていた鈴木氏にとって、『風の谷のナウシカ』の製作に携わることは非日常であり、「一種のイベントだった」という。公開された本作は大ヒットし、「その後、色々な人から第二作を求められる」ようになった。しかし、宮崎監督はこの時点で、「二度と映画は作らない」と言っていたという。というのも、映画を作るにあたり「仲間にも言いたいことを言わなきゃいけなくなり、作品はできても友だちを失った」からだ。アニメーターに戻ることを望んでいた宮崎監督だが、そこで思わぬ出来事が起こる。「『風の谷のナウシカ』のヒットで宮崎駿のもとに6,000万という大金が転がり込んできたんですよ。それで僕が宮崎駿から相談をうけた。『家も欲しいし、車も欲しい。でもそんなことをしたら後ろ指を刺される。どうしよう』と。それで、たまたまそのとき高畑監督が作っていたドキュメンタリー映画があったので、そこに出資したらどうかと提案したんです。ドキュメンタリーなら3,000万円もあればできますからね」(鈴木氏)この提案に乗った宮崎監督は、高畑監督の映画に出資。ところが、高畑監督が「とにかく凝り性」だったため、映画の半分もいかないうちに6,000万円を使いきってしまう。困り果てた宮崎監督に鈴木氏が告げた言葉が、「もう一本やりますか」だった。「この提案に宮崎駿は『わかった』と答えて、『天空の城ラピュタ』の企画を5分で説明してくれたんです。あまりにも手際が良いから聞いてみたら、小学生のときに考えた企画だというんです」(鈴木氏)こうして『天空の城ラピュタ』が誕生し、スタジオジブリの歴史がスタートすることになった。「大きなビジョンがあってやってきたわけではなく、行き当たりばったりでした。もし高畑さんが予算と期間通りに映画を作っていたら、『ラピュタ』の誕生はなかったんです」(鈴木氏)こうした鈴木氏の発言に、秋元氏も同調する。「AKBも何も考えていないんです。流れだと思いますよ。もともと劇団みたいなのが、少しずつ人が増えてくるってことをやりたくて、秋葉原に劇場を作りました。何も考えていなかったから、22人の女の子が歌ったり踊ったりして、土日は3公演もやっていました。そのうち皆が疲れた顔になって、さすがに365日を回すのは無理だということになり、チームができてきたんです。先に計画があってやっていったわけじゃなく、行き当たりばったりでした。そういう作り方はどこか後ろめたかったんですが、今鈴木さんの話を聞いたら、それでいいんだなと(笑)」(秋元氏)●鈴木氏「アニメ業界の宮崎&高畑時代は終わる、次の才能は日本からは出にくい」これまでは常にヒットを期待され、それに応えてきた秋元氏。AKB以前の仕事について秋元氏は、「バットを短く持つ」と野球に例えて話す。「僕らはヒットを出さないといけないから、当てていかなきゃいけないんです。そうすると長打が出なくなる。でもAKBのときはTVや映画のようなプレッシャーがなかったので、バットの一番先を持ってぶんぶん振り回せたんです」(秋元氏)そんな秋元氏は、高畑監督の『かぐや姫の物語』を次のように評価する。「始めは綺麗すぎて入り込めなかったんですよ。それがだんだん引きこまれていく。昔、ある京都の和食屋さんで最初に出された料理が、極限まで出汁を抑えてあって、薄味すぎて味がわからないんです。だけど、だんだん舌がそれに慣れて敏感になると、後の料理でどんどん敏感になっておいしくなっていく。『かぐや姫の物語』も同じで、最後には敏感になっていて感動しましたね」(秋元氏)これに対し、高畑監督と長年向き合ってきた鈴木氏は、過去の高畑監督作品を振り返って次のように語った。「高畑監督とは何回もぶつかったことがあるけど、何でも受け入れることにしています。刺激がないとダメになっちゃったんですよね。宮さんから聞いた話なんですが、高畑さんが作った『アルプスの少女ハイジ』というTVアニメがあるんです。この製作を1年前からやっていたのに、公開直前になってストックが7、8本しかなかったんですね。それで高畑さんがプロデューサーと議論していたそうなんですが、宮さんが何を話しているか聞いてみると『なんで一週間に一本やらなきゃいけないんだ!』と(笑)」「そういうことがあるので、高畑さんとやる時はあらゆるケースを覚悟しておくようにしているんです。あまりにも高畑さんの御無体が過ぎたので、唯一ヒットさせまいと思った作品があって、それが『となりの山田くん』でしたね。耐え切れなくて、この作品だけはどんなことがあってもヒットさせないぞと。やり方はヒットの法則を逆にするだけで、日本人が嫌いな宣伝をやってみるということ。で、うまくいきましたね(笑)」「ただ、人間というのは複雑なもので、ニューヨークでジブリ作品を全上映したときに、部屋に呼ばれて『一本すごいのがある。永久陳列させてほしい』と言われて、それが『となりの山田くん』だったんです。……うれしかったんですよね(笑)。日本では絶対にヒットさせるかとまで思ったのに、一方でそうやって選ばれるとやっぱりうれしかったですね」(鈴木氏)ここで逆に、鈴木氏から秋元氏に「秋元さんの仕事は見えにくいよね」という質問が飛んだ。AKB48グループの総合プロデューサーでありながら、作詞家としても数々のヒット曲を生み出し、一方では映画を製作したりもする秋元氏。さらに自分自身が出て行くことも多く、それを鈴木氏は高く評価しているという。「僕は自分が作るというよりも、いろんな方に協力していただいて作る方が好き。だけど人間力というか、周りを巻き込む力が欠如しているんです。鈴木さんから本をいただいたりしたときに手紙が入っているんですが、その中身が面白くて、人を惹きつけますよね。だから宮崎さんや高畑さんも離れようとしない。この信頼関係を作るのは難しいんです。人間には二通りあって、こんがらがった糸をほぐすタイプと切るタイプ。鈴木さんはほぐすタイプですよね。鈴木さんはトラブルを待っているんですよ」(秋元氏)それぞれ違う立場からエンターテインメント業界の最前線で活躍してきた鈴木氏と秋元氏。二人は今後のエンターテインメント業界をどう見ているのか。「アニメ業界に関しては新しい時代を迎えるでしょう。宮崎と高畑の時代は終わったし、終わらせたい。次の才能は諸般の事情により、日本からは出にくいんじゃないでしょうか。(出るなら)たぶん、アジアかな。たとえばピクサーというアニメスタジオがあるのですが、そこに入るには年月がかかるんです。指定された高校に入らないといけない。そうなると、日本からはピクサーには入らないんです」(鈴木氏)「どうやったらピクサーに入れるのかって聞いてくるのは、大学を卒業した人ばかりですからね。しかし、アジアからは高校からその学校に入る人がどんどん増えていて、色々なものを身につけてそれぞれの国へ帰って、タイやマレーシアにスタジオを作って後進の指導にあたっている。だから、世界のすごい短編アニメーションは、今やほとんどがタイやマレーシアなんです」(鈴木氏)「もちろん、才能は磨かなきゃいけないんだけど、一番大事なのは人間力かなと思います。へんてこな人がいなくなっていて、物足りないというか。どうしても技術は平均化してしまうし、突出した人というのは皆と違うところを見ていて、そこが面白いですよね。皆がこう言っているからとか、皆がやっているからと言っているうちはダメ。スタジオジブリがなぜここまで来られたかというと、やっぱり皆が変人だからですよ。(秋元氏)「将来のエンターテインメントについては、マーケティングしている限りはダメだろうと思います。マーケティングは何も生みません。宮崎さんや高畑さんになりたい人も多いし、それを探している人も多いでしょう。でも、そこには鈴木さんのように化学反応を起こす出会いが必要です。計算するだけでなく、魔法の粉のようなセレンディピティがないと、面白いことは生まれないのです」(秋元氏)業界を作り上げてきた二人のプロデューサーが語った、次なるエンターテインメントの世界。果たして日本から今後、どんな才能が出てくるのだろうか。
2014年09月23日