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子どもを危険から守ってあげたい。子どもには夢を叶えて欲しい。そのためには子どもの人生の選択肢を増やしてあげたい。そんな深い親の愛がじつは子どもをつぶしてしまっていることもあると話すのは、花まる学習会の高濱正伸さん。高濱さんに、今の日本の子育ての現場で起こっている問題点についてお話を伺いました。
物価高、エネルギー高騰。でもお給料はあがらず、老後不安はますばかり。そんな閉塞感を抱えてるママたちに、家計のプロが今すぐできる対策を教えます。
時代が大きく変わっている今、「見えない学力」を身に着ければ「見える学力」も上がると話すのは、映画『みんなの学校』で「不登校ゼロ」の公立小学校として話題となった大空小学校初代校長・木村泰子先生。「母親としてここだけは外さないポイント」を聞きました。
「コロナ禍で『母親』をやっていれば、イライラするのは当たり前」と話すのは花まる学習会の高濱先生。家事や育児の負担がのしかかるママたちに今だからできることを教えていただきます。
コロナ禍で収入が減って、これからの家計が心配という声が聞かれます。教育費、老後のお金を我慢や無理をせずに貯めたい、毎日の家計を黒字にしたい…そんな方法をFPの横山光昭さんに教えていただきます。
いまの学校教育が抱えた問題によって、学校に通えなくなってしまう子どもがいるという現実。そんな現実に、ごく普通の公立小学校が 「不登校0」 を実現して、世間に衝撃を与えました。その模様はドキュメンタリー映画 『みんなの学校』 で描かれ、現在でも自主上映会が全国で開催されています。 その学校の初代校長を務めた 木村泰子先生 。マニュアルを見ながら、子どもに関わろうとする大人を、子どもは信用しないといいきります。そんな中、子育て中のママの「あるある」ネタにも、木村先生は「ママが マニュアルで考えている 」と、厳しい言葉がかけられました。 ※本連載は、木村先生との「学びの会」を抜粋したものです。記事内に登場する参加者は、「学びの会」に出席した方々となります。 ■どうしてもマニュアルを探してしまう大人 木村 :「子どもに関わるとき、 『過保護や過干渉 』なのか? それとも『教育』なのか?」がわからなくなってしまったとき。それは、「自分が大人として目の前にいる子どもに、どう関われば良いのか?」を迷っているときです。そういうとき、大人は、何かしらの マニュアル を見ながら判断しようとします。 大人がマニュアルを探しながら、「どっちかな?」といった態度で関わると、子どもは信用してくれません。マニュアルを見ないで、「 目の前の子ども だけを見て関わろう」とする大人の態度は、子どもにもちゃんと伝わります。 もちろん、結果として「やっぱり、あなたに対して過保護、過干渉だった」と反省することもあるでしょう。でも、その反省は、すべて 未来につながります 。「あなたに対して過保護、過干渉だった。ごめんなさい」と、きちんと謝ることができる大人が、子どもは大好きです ■子どもの気持ちまでマニュアルで見ている 木村 :ここで大切なのは、子どもと関わるときに、「マニュアルを見ないで、目の前の子どもだけ見て関わろう」と自分で決めることです。 参加者 :子どもは「イヤだ!」としか表現できないとしても、そこにある気持ち、モヤモヤしている気持ち、そういうものを、 大人が感じてあげる ということですか? 木村 :それは、大人の嗜みですね。子どもに関わるときに、大切なのは「教えること」ではないんです。その子の心の中をわかろうと努力する。それが、大人の嗜みです。 参加者 :たとえば、お友だちと一緒のとき、うちの子がわがままを言ったとします。「わが子の心の中をわかろうとする」という行為は、そのとき、その場で、お友だちがいる前でした方が良いのでしょうか? それとも家に帰ってきてから、ゆっくりした方が良いのでしょうか? 木村 :そう考えてしまうこと自体、マニュアルを見ようとしているのかもしれませんね。 キツい言い方かもしれませんが、「みんなの中でやった方が良いのだろうか? それとも家に帰ってきてからの方が良いのだろうか?」と考えるのは、その子だけを見ていない行為です。 その場 、その場、 その子 、その子によって、状況はすべて違います。 ■大人は、成功を狙って子どもに関わろうとする 木村 :「友だちの前で注意したことを後悔した」と思うことも、絶対あるでしょう。そんなことは、誰にでも絶対にある。でも、失敗したら、 やり直せば いいんです(※)。 子どもに、「ごめんね、みんなの前で言わない方が良かったね」と言えば、子どもは「いーよ、別に」と言ってくれるかもしれない。けれども、「あなたが間違ったことをするのを、 注意してあげた んだから!」という気持ちでいたら、子どもは、心を開くことはないでしょう。「絶対、もう俺の気持ちなんて言わない」と思います。 子どもが間違ったことをしたときに、大人は、「もう二度と失敗が起こらないためにどうしたらよいか?」を、自分( 大人側の論理 )で考えて「これが上手くいく方法よ」というものを提示しようとします。 でも、本当のところを言えば、親は、「(提示した方法が)成功する可能性なんて、 100%ない 」と思っておいた方が良いくらいの話なのです。 ※ やり直し :木村先生の教育観の大きな柱のひとつ。「人が生きていれば、必ず間違いは起こる。そのときに素直に謝って、やり直せばいい」と、木村先生。 ■「大人サイドの価値観」で物事を考えないようにするには 参加者 :「100%ない」というのは、1%すらないってことですか? 木村 :そうですね(笑)。「うまくいったら、めっけもん」くらいの気持ちで、子どもと関わるということです。そう思って、関わらないと、うまくいかなかったときの落ち込みも激しくなってしまう。大人に勝手に関わられて、勝手に落ち込まれていたら、子どもは、やっていられませんよね。 親も教員も、よっぽど気をつけていないと、常に 「大人サイドの価値観」 で考えてしまうものなのです。私も相当なダメ教員でしたが、子どもたちにズタズタに鍛えてもらったことで、随分と変えてもらいました。 子どもとの関わりを、大人サイドで考えない。これを実行できるようになるには、ある一定の訓練と、失敗経験が必要だと思います。 【『みんなの学校』流「生き抜く力」まとめ】 ●大人が目の前の子どもを マニュアルで判断 しようとすると、子どもにも伝わる ● 大人も絶対間違う 。でも間違ったときに謝る大人を子どもは大好きだ ●叱って二度とトラブルが起きないという 「成功」 を狙って子どもに関わっても、100%成功しない ●大人サイドの価値観で物事を考えないためには 訓練が必要 次回は、「自分を表現すると嫌われる学校の現実。守りに入る教員をどう変える?」です。 ■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書 『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』 木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別)
2017年07月27日大ヒットしたドキュメンタリー映画 『みんなの学校』 。「人を大切にする力」、「自分の考えを持つ力」、「自分を表現する力」、「チャレンジする力」の4つの力を育てることに尽力をしたのが、初代校長を務めた 木村泰子先生 です。 木村先生は、この「4つの力があれば、子どもたちは 未来を生きていける 」と言います。しかし、いまの学校現場では、見過ごせない問題が起きているとも…。 不登校 になってしまった娘を抱えるママからの話をもとに、どうして学校に通うことに苦しむ子どもが出てしまうのかを考えます。 ※本連載は、木村先生との「学びの会」を抜粋したものです。記事内に登場する参加者は、「学びの会」に出席した方々となります。 ■子どもが育つ学校現場で見過ごせないことが起こっている 木村 :大空小が地域の新しい学校として開校したのは、2006年4月1日です。 いまから約10年前に、「 10年後 って、どんな世の中になっているのかな? いまより、もっと日本には入り混じった人たちがたくさんいる。そんな世の中で生きていくために、子どもたちが身につけなければいけない力って、何だろうね?」と、考えました。 あれから10年たったいま、映画『みんなの学校』に注目してもらえるのは、10年先取りでやってきてことが、いまになって、ニーズを感じていただいているのかな? と、思っています。 いまの学校現場では、 「子どもが育つ環境」 という視点でみると、 「見過ごしてはいけない」 ということがたくさん起こっているのが現実です。でも、そんな地元の学校に行かざるを得ない子がたくさんいる。そして、学校にどうしても行けなくなってしまう。そんな苦しんでいる子、保護者は、たくさんいます。 ■「不登校」が増えている理由は? 木村 :ここ2、3年で、学校現場は「いかに子どもに 規則 を守らせるか」という方向に、急速に傾いています。その結果、どんなことが起こっているか? たとえば、ある都道府県では、ここ2,3年で 「学校に行けなくなった子」 の数が 2倍強 に増えたという報告がありました。それは、その地域に限った話ではなくて、全国的にその傾向が強まっています。 参加者 :4年生の娘が不登校です。どうして学校に行けなくなったかというと、担任の先生が「○○しなさい」「○○、しなくてはいけない」という先生なんです。過保護な母親のように、手とり足とり教えてくれることが、うちの子にとっては窮屈だったみたいで。 娘のクラスでは、娘が不登校になっただけではなく暴力的になってしまう子など、いろいろな 「症状」 が出始めています。 木村 :一教員が、急激に意識を変えるというのは、現実的には難しいかもしれませんね。もし、それで変われる資質がある先生なら、もともと、そうはなりませんからね。ある意味、その担任の先生の姿は、典型的な いまの学校の姿 です。 参加者 : 正直言って、「過保護や過干渉」と、「教育をきちんとする」の 線引き がわかりません。どうやって見極めたらよいのでしょうか? ■「過保護や過干渉」なのか? それとも「教育」なのか? 木村 :子どものある行為に対して、「これについて干渉することは『過保護や過干渉』となるのか? それとも『教育』なのか? 大人として、目の前にいる子どもに、どう関われば良いのか?」。大空小でもやまほど悩みました。 たとえば、子どもが「イヤ!」と言って、いうことを聞かない。「このイヤは、この子のわがままなのか? イヤということを認めたらいいのか? イヤというのを、やめさせないといけないのか?」。大人は、そこで選択したくなるものです。 でも、それを 決めるのは子ども です。大人は「言うことをきかせるべきか」とか、「甘えさせるべきか」と考えてしまう。けれども、その視点でモノを考えている大人は、子どもに関わる場合に、 自分の法則 で考えようとしているんです。言ってみれば、子どもを、「どうにかしなければいけない」というリーダー性を大人が持たないといけないと思っている。 ■何で、この子は「イヤ!」と言っているのか 参加者 : 「どうにかしなければいけないというリーダー性」 とは、どういうことですか? 木村 :たとえば、「これを、やりましょう!」と言って、「イヤ!」と言う子は、いくらでもいます。「イヤ!」という子に対して、大人がまず考えるのは、「どうやって、『イヤ!(NO)』を『YES』に変えようか?」ということではないでしょうか? ここで、先にお話した4つの力のうち、ひとつの大事な力が抜けています。この子が、「イヤ!」と言ったら、大人は4つの力の中の、 「人を大切にする力」 を使ってほしいのです。 大人が「この子の、『イヤ!』をやめさせよう」と思うのは、 上から目線の関わり (どうにかしなければいけないと考えるリーダー性)なんですよね。「やめさせることが、この子にとって幸せにつながる」と、思っているんでしょうけれど、それは、子どもにとっては、 おおきなお節介 です。 「これについて干渉することは『過保護や過干渉』となるのか? それとも『教育』なのか?」。 この問が自分の中に生まれたら、まず、「この話に、唯一無二の正解などない。ケースバイケースで、答えはそれぞれにまったく異なる」ということを思い出して欲しいのです。子どもの「イヤ」に対して、「過干渉なのか過保護なのか、それとも教育なのか」と考える前に、まずは目の前の子どもを 「感じてみる」 ということが大切なのだと思います。 「学校に行きたくない」という子がいたとしたら、「なんで、『学校に行きたくない』って言っているか?」を、まずは考えてみるんです。「なんで、この子はイヤと思うのだろうか?」ということを、 大人がきちんと考えてみる ということです。 【『みんなの学校』流「生き抜く力」まとめ】 ●いまの学校現場では、不登校の増加など、 見過ごせない問題 がたくさん起きている ●子どもが「イヤ」と言ったときに、「いうことをきかせる」のは大人が 上から目線 になっている ●子どもの「イヤ!」の理由は、 子どもなりの 「自分の意見」 。大人はその気持ちを大切にする力を持つ必要がある 次回は、「マニュアル子育ては見抜かれる! 大人の論理「あなたのため」は通じない」です。 ■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書 『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』 木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別)
2017年07月26日大阪市にある、ごく普通の公立小学校である大空小学校は、 不登校児が0人 。それは、それぞれの子に、それぞれの居場所があるから。 ドキュメンタリー映画 『みんなの学校』 は、大空小学校の日常を丹念に描いて大ヒットし、商業映画館での上映は終わったものの、2016年度の自主上映会は全国で800回以上におよび今年も昨年以上の勢いで広がっています。 映画で輪の中心にいるのは、初代校長を務めた 木村泰子先生 。自分が受けてきた教育をベースにした「学校観」に引きずられ、子どもを「良い子」「悪い子」の枠にはめがちなママたちと、これからの子育てに必要な「生き抜く力」についての勉強会が開催されました。 ※本連載は、木村先生との「学びの会」を抜粋したものです。記事内に登場する参加者は、「学びの会」に出席した方々となります。 木村 泰子先生プロフィール 大阪市出身。大阪市立大空小学校初代校長として、「みんながつくるみんなの学校」を合い言葉に、すべての子どもを多方面から見つめながら、全教職員のチーム力で「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことに情熱を注ぐ。その取り組みを描いたドキュメンタリー映画 『みんなの学校』 が話題に。2015年に退職後、現在は、全国各地で講演活動を行っている。 木村先生については、 「『みんなの学校』流 親子関係のつくり方」 「ママのプロになる!」 もぜひご覧ください。 ■多様な国際社会で、「なりたい自分」になるには? 木村先生(以下、木村) : 最初に、「大空式」の自己紹介からお話しましょう。大空小学校(以下、大空小)では、「自己紹介をする」という人との関わりの中で、4つの力を高めることを意識しています。 <大空小で大切にしてきた4つの力> ・「人を大切にする力」 ・「自分の考えを持つ力」 ・「自分を表現する力」 ・「チャレンジする力」 この4つの力があれば、子どもたちは、これからの多様な国際社会で「 なりたい自分 になっていけるよ」と、大空小の子どもの周りにいる大人は考えました。 ■人と違うから「自分の考え」になる 木村 :1つ目の 「人を大切にする力」 が、簡単なようで難しいのは、なんとなくおわかりかと思います。 2つ目の 「自分の考えを持つ力」 。みなさんは、自分の考えを持っていますか? 「夫が、言うから」「ママ友が、言うから」「会社の上司が、言うから」と、 流されてしまう自分 が、いらっしゃるのではないでしょうか? 隣や上を見ないで、「まず自分で考えてみよう」という習慣を、大空小の子どもたちはいつも心がけています。この「自分の考え」というのは、 人と違ってあたり前 。だからこそ、「自分の考え」なんです。ひとりの子が自分の考えを持ったら、その自分の考えは、「間違いなんてないよ」というまわりの空気が必要です。 ■自分を表現できなければ置いていかれる 木村 :3つ目は、 「自分を表現する力」 。 いくら人を大切にして、自分の考えを持っていても、これからの時代は、自分を表現しなかったら、置いていかれてしまうことでしょう。「これはイヤだよ」「こうしたいよ」「こう考えているよ」ということを、自然に言えること、これも大切にしたい力です。 もちろん、表現の仕方は、いろいろあります。たとえば、緘黙(かんもく)症(※)で、自分から言葉を発したことがない子。そういう子は自分なりの表現方法、文に書いたり、顔で表現をしたりができますから、まわりはその子を見ていれば、表現を受け取ることができます。 ※緘黙(かんもく)症:発声器官の器質的障害がなく、言語の習得に問題がないのに、特定の場面でずっと声が出ない状態のこと。たとえば家では普通に話ができるのに、学校や幼稚園に行くと一日中声が出ない状態が何ヶ月、何年間も続く症状 4つ目は、 「チャレンジをする力」 。「こういうことを、やってみたい」「こういうことを、やろう」とチャレンジする気持ちは、「未来を作っていく」と思うんです。 ■「教員の仕事」は、「人間でないとできないこと」をやること 木村 : この4つの力を、小学校にきて「おはよう」を言ってから、「さようなら」を言うまで、どれだけ子どもたちが獲得できたのか? それを考えることが、私たち、子どものまわりにいる大人のやるべきことだと思って、仕事をしてきました。めちゃくちゃシンプルです。 「分数の計算の仕方を教える」。これはあと数年したら、教員がやらなくても機械がやってくれるでしょう。「では 教員の仕事 は何?」と言ったら、「 『人間』 でないとできないことをやろうね」と、大空小の教職員で話し合いをして決めました。 【『みんなの学校』流「生き抜く力」まとめ】 ●「人を大切にする力」、「自分の考えを持つ力」、「自分を表現する力」、「チャレンジする力」があれば、 未来を生きていく ことができる ●「自分の考え」は、人と違ってあたり前 ●教員の仕事は、人間でなければできないことをやること 次回は、「不登校で苦しむ子。「過保護」と「教育」の線引はどこにあるのか?」です。 ■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書 『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』 木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別)
2017年07月25日<目次> ■発達障害という名前を変えたら、世の中が変わる ■ママに「子どもを見る力」がないのなら ■「良い子」「悪い子」の枠はママが楽している? ■21世紀を生きる力を考える 【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】 ママになると、とたんに子どもについては「プロ」であることを求められてしまいます。だったら「 ママのプロ になってしまえばいいのではないか?」そんな風に考えて、この連載企画がスタートしました。 「みんながつくる みんなの学校」を合言葉に社会から排除されがちな枠からハミ出てしまう子にも居場所を作り続けたプロ教師歴45年の 木村 泰子先生 に話をうかがいます。 お話を聞くのは、自身が親から「みんなができることがどうしてできないの?」と言われ続け、そしていま「枠からハミ出てしまう子(発達障害)」を育てるライターの楢戸ひかるです。 ■発達障害という名前を変えたら、世の中が変わる? 楢戸 :発達障害の日本の第一人者である、「NPO法人えじそんくらぶ」代表の高山恵子先生が、いわゆる「グレーゾーン」のことを、 「パステルゾーン」 と呼んでいらっしゃいます。 ※「パステルゾーン」を命名したのは、沖縄の名護療育園の泉川ドクターによるもの。 ※子どもの個性的な部分は、明るくカラフルだから、グレーゾーンではなく、パステルゾーンと呼びませんか? と提案されています。 木村 :発達障害って名前を変えたら、 世の中、きっと変わる と思いますよ。その言葉、見つけましょう。みんなで学びを深めていきませんか? ■ママに「子どもを見る力」がないのなら 楢戸 :「子どもを見る」というのは、センシティブな作業です。ママは、日々、忙しすぎて、「自分の子どもを枠にはめてしまっているかどうか」なんてことを、いちいち考えている暇がないかもしれませんね。 木村 :ママ自身に「見る力」がないなら、まずは、「 余計なこと を言わないでおきましょう」っていうことですね。 楢戸 :もしかしたら、私たち母親が子どもに言っている大半のことが無駄なんでしょうか。先生の言葉を借りれば、「余計なこと」という気もしてきました…。 ■「良い子」「悪い子」の枠はママが楽している? 木村 :ここは、すごく大切なところ。学校でも、何度も、何度も、本当に何度も話してきたの。「子どもを 枠にいれて評価 したらあかんで」と。 たとえば、「良い子のAちゃん」「悪い子のBちゃん」みたいに括ってないですか?って。それは、枠にいれていることになるの。 「悪い子のBちゃん」も良いことをするときある。「悪い子のBちゃん」だと思って見てしまうと、「いま、褒めてよ」というときを見逃してしまう。それは、子ども自身の人物評価、つまりは「くくり」で見てしまっているから。 楢戸 :ママとしては、寄りどころがほしいんです。「この子は良い子」「この子は悪い子」みたいに決めつけてしまった方が楽なんですよ。でも、ママが楽しちゃいけないってことですね 木村 :自分が楽をすることを選んだママの未来は、苦悩に満ちていると思いますよ。一瞬の楽は、 未来の苦悩 を呼ぶんですよ。一瞬の苦しみは、未来の幸せにつながる。自分が納得して選べばいいことだから。ママたちは、どちらを選びますか? ■21世紀を生きる力を考える 6本に渡ってお送りした「ママのプロになる~映画『みんなの学校』の木村先生がママたちに伝えたい20のこと~」も、そろそろ終わり。木村先生からたくさんのダメ出しをされて、正直落ち込みもしました。でも、これは必要な落ち込みだと思います。 「私が受けてきた教育では、これからの時代を 生き抜く力 はつかないのではないか?」と、漠然と感じていました。でもそれは、「次世代に必要な教育」を見つけられないから、自分が受けてきた教育の価値基準にあわせて、子どもを育ててきたように思います。 今後も木村先生と話をしながら、「次世代に必要な教育」の姿を、記事という「カタチ」にしながら、「ママのプロ」になるために自分はどうすればいいのかを考えていきたいと思います。 ■【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】 18 . ママ自身に 「見る力」 がないなら、まずは、ママが子どもに余計なことを言わないこと 19 . 「良い子」「悪い子」で括ってしまうと、「いま、褒めてよ」っていうときを見逃してしまう。 子どもを枠 にいれて評価してはダメ 20 . 子どもを枠に入れて、楽をしたママの未来は、苦悩に満ちている。でも一瞬の苦しみを乗り越えた ママの未来は幸せ につながります。 ≫「木村先生がママたちに伝えたい20のこと」については こちら ■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書 『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』 木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別) 木村 泰子先生プロフィール 大阪市出身。大阪市立大空小学校初代校長として、「みんながつくるみんなの学校」を合い言葉に、すべての子どもを多方面から見つめながら、全教職員のチーム力で「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことに情熱を注ぐ。その取り組みを描いたドキュメンタリー映画『みんなの学校』が話題に。2015年に退職後、現在は、全国各地で講演活動を行っている。
2017年05月29日<目次> ■「枠からハミでる子」は、普通のママには異質なのか!? ■「まともな子ども」を評価する社会 ■「発達障害のない子になって欲しい」という気持ちはないか? ■活躍している人は個性的な人が多い 【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】 毎日子育てに悩み、自分の子どもが「普通」になれないことに心を砕いているママがたくさんいます。「素人なのにプロ」を求められてしまうママ業。 そこで「どうしたら、ママのプロになれるのか?」を 木村 泰子先生 にうかがいます。 <木村 泰子先生とは> 全国で多くの反響をよんだ不登校ゼロをめざした小学校のドキュメンタリー映画 『みんなの学校』 で初代校長を務める。 普通の子と発達障害の子どもを「普通に育てる」ことに悩み続けた3人の子持ちであるライター楢戸ひかるが、木村先生と子育てについて話をします。 木村先生が教えてくれる「ママたちに伝えたい20のこと」とは? ■「枠からハミでる子」は、普通のママには異質なのか!? 「枠からハミ出てしまう子(発達障害)」と「普通の子」を 一緒の教室 で学ぶことは、はたして本当に良いことなのでしょうか。大人が出す「あの子がいると迷惑」という空気を吸ってしまっている子は、めちゃくちゃ不幸だと木村先生は話します。 木村 :「枠からハミでた子」と「普通の子」が一緒に育つ良さについて理解するために、『みんなの学校』という映画が存在していると思うの。 静かな環境で勉強してつく力と、いつも誰かが動きまわる環境の中、勉強してつく力。どちらの方が、より高い力がつくかを、ママさんたちに問いかけてみたらどう答えると思いますか? 楢戸 :おそらくいつも誰かが動き回っている うるさい環境 で勉強したほうがより高い力がつくと答えると思います。 木村 :誰が考えても、そういうふうにわかるわけですよね。それだけではダメなの? 楢戸 :そういったことを、多くのママたちにどうやって伝えていけばよいのだろうか? と考えています。わが家の場合で言うと、長男は品行方正な普通の子で、次男が発達障害なんです。 ■「まともな子ども」を評価する社会 木村 :そうやって、 比較されてしまう子ども が不幸なんよ! あなたの次男は、二次障害(被害)、三次障害(被害)を受けているんじゃないかと心配になります。 楢戸 :でも、普通の子(定型発達の子)と、枠からハミ出た子(発達障害の子)は、「生き物として違うんじゃないか」と思いたくなるときがあるんです。これは実際に育ててみての実感です。 木村 :本人たちにしか、「自分が まとも 」なんてわからないの。いまの世の中は、長男が評価される社会であるっていうだけの話。 楢戸 :長男は、「俺は、次男みたいなものをもっていないから、次男とずっと暮らしたい」と言っています。長男は、次男のことを、すごく評価しています。 ■「発達障害のない子になって欲しい」という気持ちはないか? 木村 :それは、長男がじゅうぶん育っている証拠じゃない。だから、ちゃんと次男を尊敬できる。そうしたら次男は、家庭の中では、絶対に安心して育つ。 楢戸 :正直に言えば、「長男も次男も安心して家庭で暮らしていられる」というのは、私のコンディション次第、という条件がついちゃうんです。 木村 :その心の根底にあるのは、発達障害があると診断されている次男に、母として「この子は、発達障害のない子になって欲しい」という気持ちがあるからじゃないの? ■活躍している人は個性的な人が多い 楢戸 :じつは、意外と、それはないんです。私がマスコミ業界で仕事をしていて、普通の職場でないというのもおおきく影響しているとは思うのですが。 私が取材で出会う相手は、みな 個性的な人 が多いです。だから「あなたの話を聞かせてほしい」と思えるような人は、もしかしたらある意味、発達障害傾向があるんじゃないかと思っています。 木村 :私も、発達障害あると思いますよ。多動だし。めっちゃ、学習障害だし。みなさん、どう思っているかわからないけれどね。 楢戸 :ピンで活躍されている人は、普通とはどこかが異なっていると、取材を重ねた実感として言えます。だから、私自身は「発達障害」に対して、あまり悪いイメージはないんです。 木村 :発達障害という名前を、「 素晴らしい能力 を持った方々」にするっていうのは、どうでしょうね? 次回は、「「この子は良い子」「この子は悪い子」と枠に入れたママの未来は?」 です 【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】 15 . 子ども本人たちにしか、「自分がまともかどうか」なんてわからない。いまの世の中が 普通の子が評価される というだけ。 16 . 静かな環境で勉強してつく力と、いつも誰かが動きまわって勉強してつく力。どちらの方が、より高い力がつくう? 17 . 発達障害という名前を、「素晴らしい能力を持った方々」にしませんか? ≫「木村先生がママたちに伝えたい20のこと」については こちら ■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書 『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』 木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別) 木村 泰子先生プロフィール 大阪市出身。大阪市立大空小学校初代校長として、「みんながつくるみんなの学校」を合い言葉に、すべての子どもを多方面から見つめながら、全教職員のチーム力で「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことに情熱を注ぐ。その取り組みを描いたドキュメンタリー映画『みんなの学校』が話題に。2015年に退職後、現在は、全国各地で講演活動を行っている。
2017年05月26日<目次> ■みんなができることが、何でアンタはできないの! ■子ども時代に受け止めてもらえなかったママの子どもは? ■型にはまった教育を受けてきた苦しみ ■発達障害の子は、ママには異質!? 【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】 子どもを生んではじめて、ママとなる。でもママになった瞬間、自分自身もそして周りからも「プロ」であることを求められているような呪縛にとらわれることありませんか? どうしたら本当の 「ママのプロ」 になれるのか? 木村 泰子先生からプロの極意である「ママたちに伝えたい20のこと」を教えていただきます。 <木村 泰子先生とは> ドキュメンタリー映画 『みんなの学校』 に出演して、不登校ゼロの公立小学校として話題を集めた大空小学校の初代校長。 話を聞くのは、「先生の言うとおりにできない自分がダメ」と小学校時代に思いこんで育ちながら、「枠からハミ出てしまう」わが子に対して、「世の中で生きていくためには、フォーマットの中にいれないと」という気持ちにもなってくるライター楢戸ひかる。 ■みんなができることが、何でアナタはできないの! 木村 : 親の視点 で物事を考えているから、自分の価値観にはめよう、はめようとしてしまう。自分が子どもにかけた言葉を、いま振り返ってみてください。 楢戸 :「ちゃんとして」「何で、そうなの?」「いい加減にして」などです 木村 :こんな風に言わなかった? 「○○ちゃんをよく見てみなさい。アナタみたいなこと、していないでしょ」「みんなができることが、何で アナタはできないの 」 楢戸 :「みんなができること、何でアナタはできないの」。それ、私も言われていました。 木村 :みんなができることを、させようとする。ハミ出ている子を、普通にちょっとでも近づけようとする。これって、本人からしたらハタ迷惑な話ではなかった? 楢戸 :私自身、「みんなができることができない」と言われ続けてきました。私は、「みんなができること」、いわゆる「普通」を目指したのですが、結局、「普通」にはなれなかった。 「『普通路線』は無理だ」と思ったので、自分が生き残る道として、得意な書くことを生かしたライターの仕事をすることにしました。 ■子ども時代に受け止めてもらえなかったママの子どもは? 木村 :もし30年前に「あなたは、 あなたで、いいよ 」と、先生や親に言ってもらっていたとしたらどうですか? 「みんなができることができない」で、楢戸さんは誰かに迷惑をかけたと思う? 楢戸 :「迷惑をかけている」ということになってしまうんです。先生からは「みんなと同じことができない、あなたが悪い」と言われる。親からも、「学校の先生に怒られたから、あなたは悪い」と言われてしまうんです。 木村 :それは「親が自分の子どもを 丸ごと受け入れて 信じろよ!」っていう話でしょ。 楢戸 :「自分が受け入れてもらってきていないから、子どもを受け入れてやれない」ということに、最近、気がつきました。「息子が普通であって欲しい」と思う根にある問題は、私自身の問題だというところに行きつきます。 木村 :楢戸さんの話は、「母が変われなかったから、子どもが 二次障害(被害) を受けてしまいますよ」ということだと思うの。 同じように、このことを集団の場に置き換えて考えてみて。「教員が変わったら、子どもが苦しまない」。もっと言えば、「まわりの子が変わったら、その子は苦しまない」。まったく一緒の仕組みなんですよ。 ■型にはまった教育を受けてきた苦しみ 楢戸 :「 型にはまった教育 を受けてきた苦しみ」というものに、みんながそろそろ気がつき始めていると思います。私たちの世代が、心の傷を癒やすことができたのなら、うちの息子のような子も受け入れられていくのではないか? と思うようになってきました。 二次障害(被害)を防ぐためには、まずは母である私自身を癒やさないといけないということですね。 木村 :もし、「自分の子どもとママが世界中で二人だけだったら、苦しまなかった」でしょ? 社会の価値観は、化石時代のままなの。だから、ママがこの社会で生きる中、 「何が欠けているか?」 という理屈に気がついてほしい。そうしたら、「いまのこの瞬間から、人に求めずに、自分が変わろう」ということを考えられるようになると思います。 楢戸 :「息子と自分が世界中で二人だけだったら、苦しまなかった…」本当にそうかもしれません。 ■発達障害の子は、ママには異質!? 木村 :いまだに過去を引きずっている。いまの 日本は大間違い 。小学校によっては、子どもは分けられて、発達障害の子は別室に連れていかれてしまう。このことは、教室に残される子にとっても、ハタ迷惑な話なの。 楢戸 :でも、「枠からハミ出てしまっている子」は、大多数のママたちにとって、迷惑な話ではないんでしょうか? 木村 :冷静に考えてみて。大人が出している「あの子がいると、迷惑よ」という 空気 を吸っている子どもは、めちゃくちゃ不幸でしょ。そんなことは、ママさんたちもわかっているんじゃないのかしら。 楢戸 :でも、木村先生。ママさんたちはわかっていないんじゃないかと思います。大多数のママたちにとって、「枠からハミ出てしまう子(発達障害の子)」と、「普通の子であるわが子」が 一緒に育つ良さ について、よく理解していないということを前提に、話をしていただけませんか? 次回は、「普通の子が評価される時代。個性的な子どもは「まとも」じゃないの?」 です。 ■【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】 12 . 親が自分の子どもを 丸ごと受け入れて 信じてあげて! 13 . ママがこの社会で「何が欠けているか?」という理屈に気がついたら、いまのこの瞬間から、人に求めずに、 自分が変わろう 14 . 大人が出している「あの子がいると、迷惑よ」という空気を吸っている子どもは、めちゃくちゃ 不幸 なの ≫「木村先生がママたちに伝えたい20のこと」については こちら ■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書 『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』 木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別) 木村 泰子先生プロフィール 大阪市出身。大阪市立大空小学校初代校長として、「みんながつくるみんなの学校」を合い言葉に、すべての子どもを多方面から見つめながら、全教職員のチーム力で「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことに情熱を注ぐ。その取り組みを描いたドキュメンタリー映画『みんなの学校』が話題に。2015年に退職後、現在は、全国各地で講演活動を行っている。
2017年05月25日<目次> ■ベテラン教員でも「保護者」になると迷う ■子どもの味方だけが学校にいる時代ではない ■「良い大学を出ることが幸せじゃない」時代のママの役目は? ■「一般的な子どもになって欲しい」と願う親がすべきこと ■「子どもを、枠にはめること」が教育なのか? 【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】 子どもが生まれて、はじめて「ママ業」を始めるママたち。でも自分自身でも、そしてまわりからも 「素人なのにプロ」 を求められているように感じていませんか? ママたちの心の中にある「どうしたら、ママのプロになれる?」という気持ちに、少しでもこたえたいと思い、プロ教師歴40年の 木村 泰子先生 から 「ママたちに伝えたい20のこと」 をききます。 <木村 泰子先生とは> 木村先生は、すべての子に居場所のある「大空小学校」の初代校長先生を務め、その様子が映画 『みんなの学校』 として公開されました。 そして今回お話をさせていただくのは、「育てにくい子」とされる息子を持ち、「まわりに迷惑をかけているのではないか」と考えながら子育てを行ってきたライターの楢戸ひかるです。 ■ベテラン教員でも「保護者」になると迷う 前回、木村先生の元同僚であるベテラン教員から、発達障害のある孫の就学前教育相談で、どこまで話すべきか相談を受けたというお話がありました。 ●木村先生の同僚の教員(Aさん)から受けた相談内容 Aさんは、発達障害の子とたくさん接してきたベテラン教員。そんなAさんの孫は、幼稚園で先生の言うことをまったく聞かない子で、Aさんも幼稚園での参観日やお迎えで孫の様子は理解しています。 この孫が 小学校就学前相談 を受けることになります。そこでAさんの娘さんから「就学相談で、息子の現状をきちんと伝えるべきか? 伝えないべきか?」と相談を受けたそうです。 どんなに「ベテラン教員」であっても、「保護者(祖母)」となると、どうすればいいのか判断することができなかった。そこで、Aさんは木村先生に相談することに…。 木村先生は、どのような回答をAさんに送ったのでしょうか。 ■子どもの味方だけが学校にいる時代ではない 木村 :環境が整えば、子どもは育つ。でも、「 整っていない環境 に子どもを送りこまなければならないとき、保護者は、どうフォローすればいいのか?」というのは大きな課題ですよね。 楢戸 :「親は手も足も出ない」と、私だったら思ってしまいます。木村先生は、ベテラン教員であるAさんにどのような言葉を返したのでしょうか? 木村 :周囲は、「その子は、 発達障害 なんでしょ」と、決めたがる。Aさんの娘であるママも、「発達障害の診断を受けた方が良いのかな?」と迷う。校長室に行って、「うちの子は、もしかしたら発達障害なんです」と言うほうが良いのか、言わないほうが良いのか、迷う。すごく、迷うと思います。 楢戸 :わかります。 木村 :私は、即答でした。「何も言わんとき。 一切相談せんとき 」って。 「相談する相手が 信用できる相手 か、わかってる? わからんやろ?」って。 子どもの味方 だけが、学校にいる時代ではありません。「学校の先生は、すべての子どもたちを守ってくれるっていう時代じゃないやろ」って返しました。 ■「良い大学を出ることが幸せじゃない」時代のママの役目は? 楢戸 :とても現実に即したお話ですね。 木村 : 「学校は立派」 「先生の言うことは聞け」「たたいてでも、先生の言うことを聞かせる」それは化石時代の話。いままでは、ひとつの価値観を信じたら、みんなが幸せになれると信じられた、イケイケ・ドンドンの時代だったでしょ? その当時の学校や学校を取り巻く社会と、いまは、全然違う。そういう世の中から、いま、向かっている世の中は、「良い大学を出ることが幸せじゃないよ」ということに、みんな気がつきはじめた時代だと思うの。 「幸せは、 自分がなりたい自分 になることだよ。幸せは、人が決めない。自分が決めるものやで」。だからそのフォローは、まわりがしなさいよってこと。それが、これからの教育だと思うの。昔と今では、 教育の目指す方向 が全然違う。違うのに、過去の価値観だけを引きずっている。 楢戸 :つまりは、ママの役目は、子どもが決めた幸せをフォローすることですか? もっと言えば、何が幸せかを自分で決められるような子どもを育てることなんでしょうか。何というか、子育てについてコペルニクス的な発想の転換が求められている気がします。 ■「一般的な子どもになって欲しい」と願う親がすべきこと 楢戸 :では、「普通から ハミ出てしまう子 」の母親として、まず、私は何をすべきなのでしょうか? 木村 :まず、自分の子どもを「発達障害」という 言葉で括らない ということ。親が自分の子どもを信じないとね。 楢戸 :「普通からハミ出てしまう子」を育てることは、毎日が戦いなんです。そんな日々の中で子育てをしていると、疲れてきちゃって。「子どもを信じる」ということが、正直、厳しいです。 木村 :それって、「わが子が、一般的な子どもに近づいて欲しい」って思うからじゃないの? 楢戸 :そういうことなのかもしれないですね。 木村 :でもいまは、反省しているんですよね? 楢戸 :反省していますね。(はじめて取材で)木村先生にお会いした2016年の7月以降、さほど、子どもを怒らなくなりました。 ■「子どもを、枠にはめること」が教育なのか? 木村 :すばらしい! いま、 「親の立場」 で、「苦しかった」と楢戸さんは言うけれど、子どもの立場になって、そのときのことを振り返ってみたことがある? 子どもは、どんな暴れている子でも、芋虫みたいにゴロゴロしている子でも、反抗したくてやっているのとは、違うの! これは、私が子どもから学んだことだから、確信を持って言える。 親の価値観は、「何で、私の言うことを聞かないの!」ってことだと思うけど、そうやって、ゴロゴロしている中で、その子は、その子なりの 学びの時間 をもっている。だからその場所を、安心して「学びの場」にしてあげたら、その子自身、傷つかないでしょ。 「みんなはできているのに、どうして、アナタはできないの?」と、「こういう子であって欲しい」という枠に、無理やり子どもをはめないで、子どもを信じることが、とても大切です。 楢戸 :「子どもを、 枠にはめること 」。それが教育だと、先生と出会うまで思っていました。 次回は、「「みんなができることが、アナタはできないの!」と言ってしまうママへ」 です。 ■【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】 8 . 学校の先生は、すべての子どもたちを 守ってくれる時代じゃない 9 . 幸せは、自分がなりたい自分になることだよ。 幸せは、人が決めない 。自分が決めるもの 10 . 昔と今では、 教育の目指す方向 が全然違う。過去の価値観にママは引きずられないで 11 . 「どうしてアナタはできないの?」という枠に子どもをはめないで。 子どもを信じて あげて ≫「木村先生がママたちに伝えたい20のこと」については こちら ■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書 『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』 木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別) 木村 泰子先生プロフィール 大阪市出身。大阪市立大空小学校初代校長として、「みんながつくるみんなの学校」を合い言葉に、すべての子どもを多方面から見つめながら、全教職員のチーム力で「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことに情熱を注ぐ。その取り組みを描いたドキュメンタリー映画『みんなの学校』が話題に。2015年に退職後、現在は、全国各地で講演活動を行っている。
2017年05月24日<目次> ■「うちの子が迷惑をかけている」と思ってしまう ■「迷惑をかけている」というのはママの思い込み ■失敗体験が続いているから傷つかないようにしている ■ベテラン教員でも「いち保護者」になると迷う 【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】 ママ業は、「素人なのにプロ」を求められる仕事。どうしたら、ママのプロになれるのか? 「ママのプロ」になるために必要な極意「ママに伝えたい20のこと」を教えてくれるのは、プロ教師歴45年の木村 泰子先生。 <木村 泰子先生とは> 木村先生は、 映画『みんなの学校』 の舞台となった大空小学校の初代校長。大空小学校は、特別な支援が必要な子が全校児童220人中30人を超えていたが(映画撮影時)、特別支援教室はつくらず、みんなが同じ教室で学び、 「不登校児0人」 を実現。 お話をきくのは、自身が小学校時代に「ダメな子」だと思いながら学校に通った経験があり、いま現在「まわりに理解されにくい子」を育てるライターの楢戸ひかる。 「うちの子が周りに迷惑をかけている」と思っているママに送るメッセージです。 ■「うちの子が迷惑をかけている」と思ってしまうママ 前回、木村先生からは、ママである私の 価値観 が変わっていたら、息子が通常の学級で学んでいたかもしれないというお話までお伝えしました。 楢戸 :実際には、小学校6年生現在(取材時)、息子は通常学級で学べています。だから、私自身の「ダメ」という気持ちはだいぶ緩和されてきています。 でも「うちの子が まわりに迷惑 をかけているんじゃないか」といった悩みは、普遍的だと思うので、木村先生のお話を聞かせてください。 木村 :「自分がやってしまった失敗を、他人に少しでもさせない。 自分の失敗 を学びに変えて一緒に考えていきましょう」というのが、今回の連載の趣旨だと思っています。 楢戸さんの息子さんのような、「まわりには理解されにくい子」がいるとします。そういった子が同じ教室の中にいるのと、いないのだったら、どちらがまわりにいる子は、成長すると思いますか? 楢戸 :「『理解されにくい子』いる方が成長する」と言える世の中だったとしたら、うちの息子のような子が生きやすくなると思います。 でも、実際には普通のママさんたちは、「いると邪魔だ」と思っていると、私自身が思ってしまうんです。本当は、そんなことまわりのママさんたちは思っていないのかもしれないのですが…。 ■「迷惑をかけている」というのはママの思い込み 木村 :それよ! それは、楢戸さんの偏見じゃないの? 「ほかのママさんたちがそう思っている」っていうのは、事実ではないわけです。そんなふうに思わないと、自分が生きていけないっていう、ママ自身が立ち向かってきた 壁 。その壁に対して持っている偏見なだけなんですよ。それは結局、ママ自身、楢戸さん自身が持っている偏見なんですよ。 楢戸 :私自身がこれまで持ってきた 自分の傷 を見ているだけということですか? 木村 :自分のことを「まわりに迷惑をかけている存在だ」と思っていると、相手側の方が悪いように感じてきませんか? 楢戸 :相手のママさんたちを悪いとまでは思わないけれど、「気をつけなければいけない集団」だと思って緊張します。もしかすると、ちょっと恐れているのかもしれないですね。 木村 :楢戸さんがそんなふうに感じているから、まわりからも「気を使わなければいけない存在」となるわけ。そこがね、そうではないの。 「みんなに悪く思われている」と思ってしまっているママに、「まず自分が変わりなさいよ」というメッセージを出してあげないといけないと思います。 ■失敗体験が続いているから傷つかないようにしている 楢戸 :枠からはみ出てしまっている子のママからすると、「自分の子どもは、上手に育っていない」という 劣等感 があると思います。 木村 :ママが 失敗体験 を続けてきてしまった。だから自分が傷つかない方法を選んでいるっていうことですよね? 楢戸 :ママ自身が、「向こう」をシャットアウトしちゃっているっていうことです。 木村 :そこに至る過程を、少し考えてみて欲しいのです。小学校6年間も大事だけれど、「 幼児期 にママと子どもの関わりがどうであったのか?」がとても大切で、ママ自身が問わないといけないと思うの。 幼児期は、はじめて集団の中に入る時期。そんなときに、ママ自身が子どもに対して、「どんな立場でいてあげるか」を考えることが大切なことです。 この「ママの立場はどうあるべきか」を考えるために、ひとつの事例を紹介しますね。じつは、今日、ここに来る前に、親しくしている教員の同僚から「相談したいことがある」とメールがきたんです。 ■ベテラン教員でも「保護者」になると迷う ●木村先生の同僚の教員(Aさん)から受けた相談内容 Aさんは、発達障害の子とたくさん接してきたベテラン教員。そんなAさんの孫は、幼稚園で先生の言うことをまったく聞かない子で、Aさんも幼稚園での参観日やお迎えで孫の様子は理解しています。 この孫が 小学校就学前相談 を受けることになります。そこでAさんの娘さんから「就学相談で、息子の現状をきちんと伝えるべきか? 伝えないべきか?」と相談を受けたそうです。 どんなに「ベテラン教員」であっても、「保護者(祖母)」となると、どうすればいいのか判断することができなかった。そこで、Aさんは木村先生に相談することに…。 楢戸 :何だか安心しました。「ベテラン教員」でも、「ひとりの祖母」となるとブレるんですね。だったら、何の知識も経験もない私がブレてしまうのは、仕方がないと思えます。それで、木村先生は、Aさんにどんな回答をされたんですか? 木村 :聞きたい? 楢戸 :もちろん!!!! 木村先生が、ベテラン教員にどんなふうに答えたかについては、次回お送りします。 次回は、「学校が子どもを守ってくれない時代。「ママの仕事」はなんですか?」 です。 ■【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】 4 . 自分がやってしまった失敗 を、他人(子ども)に少しでもさせない 5 . ママ自身が立ち向かってきた壁に対して持っているのは、結局 自分の偏見 6 . 「みんなに悪く思われている」と思ってしまっているママは、 「まず自分が変わりなさい」 7 . はじめて集団の中に入る時期に、ママが子どもに対して、 「どんな立場でいてあげるか」 を考えることが大切 ≫「木村先生がママたちに伝えたい20のこと」については こちら ■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書 『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』 木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別)
2017年05月23日<目次> ■ママのプロになるために! 極意を教えてくれるのはこんな人 ■「先生の言うことを聞きなさい」とママである私は言うけれど ■わが子が先生の言うことを聞けない子だったら ■「子どもを枠の中に押し込める大人」は、子どもの敵だった? ■自分の中の「排除される要因」を隠せない子が生きにくい世の中 【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】 ■ママのプロになるために! 極意を教えてくれるのはこんな人 子どもを産んだら、ママになる。あたり前のことなのだが、「ママ業」は、デビューしたての素人も、「プロであること」を求められる仕事なんだと思います。 知識も、経験値もないのに、自分が無意識にイメージしている「ママ」は、じつは 「プロレベル」 のスーパーママなのではないか? と、気がついたのは、わりと最近のこと。周囲からも、「ちゃんとしたママであること」を求められているような気がして、「そんなの、できるわけないじゃん!」と、叫びたいけど、叫べない。 そんな、ひとりのママである私が、プロ教師歴45年の 木村 泰子先生 と、子育ての話で対談をさせていただきました。 木村 泰子先生プロフィール 大阪市出身。大阪市立大空小学校初代校長として、「みんながつくるみんなの学校」を合い言葉に、すべての子どもを多方面から見つめながら、全教職員のチーム力で「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことに情熱を注ぐ。その取り組みを描いたドキュメンタリー映画 『みんなの学校』 が話題に。2015年に退職後、現在は、全国各地で講演活動を行っている。 木村先生については、「 『みんなの学校』流 親子関係のつくり方 」もぜひご覧ください。 今回、この対談を担当させていただくのは、ライターの楢戸ひかる。3人の子持ちの母であり、うちひとりの息子には、 発達障害 があります。 プロ教師の木村先生と、素人ママの私が対談することで、木村先生が教育実践の中で得てきた 「プロの極意(知恵)」 を、普通のママたちが日常の子育てで使える「ママたちに伝えたい20のこと」としてお届けします。目指せ! ママのプロ! ■「先生の言うことを聞きなさい」とママである私は言うけれど 楢戸 :木村先生は、「学校の授業で 正解のあること なんて、6時間の授業があるうち1時間も教えていない」と、おっしゃいました。 「学校で教えてもらうことには正解があり、正解を教えてもらうのが学校だ」と思っていたので、とても驚いたのですが…。 木村 :もし学校が正解だけを教えているとしたら、先生は給料を1千万円くらいもらわないと割にあいません。そんな人間離れしたこと、できるわけないと思いません? それって、じつはママたちが 「学校をどう見ているか」 という話だと思うんです。 ママたちの 「学校観」 は、ママたちが受けてきた学校教育がベースになっていると思います。「学校で先生の言うことを聞いている子が『良い子』」と、思っている。だから、「先生の言うことを聞きなさい」と、子どもに言い聞かせて、小学校にいれているわけでしょ? ■わが子が先生の言うことを聞けない子だったら 楢戸 :わが子は、「先生の言うこと」をきちんと聞くことができない、つまりは「普通」から ハミ出てしまう子 です。だから学校生活では、「うちの子が悪い。申し訳ありません」という気持ちでいっぱいになります。 木村 :では、楢戸さんは小学校時代、本当にすばらしい学びを得たなぁと思っている? 楢戸 :じつは、1ミクロンも思っていなくて。「小学校」と聞くだけでイヤな気持ちになります。 木村 :それなのに、何で、自分の子が小学校に行ったら、「うちの子、迷惑かけてすみません」って言うの? そういうものだと思ってしまう根拠はどこにあるの? ■子どもを「枠の中」に押し込める大人は、子どもの敵だった? 楢戸 :諦めているわけです。「学校なんて、しょせん、そういうところなのだから」と。 木村 :小学校のときにそう思いながら、乗り越えられたの? 楢戸 :ただ、ただ、「自分は ダメな人間 だ」と思いながら、小学校に6年間通いました。 木村 :「学校なんて、そんなもん」と思ってしまうのは、卒業したあとの価値観でしょ? 小学校生活を送っている6年間は、「何で、こうなんだろう」「学校って、おもしろくない」の繰り返しだったわけでしょ? 楢戸 :いえ、実際にはもっとダメで。私は「先生の言うとおりにできない自分がダメ」と思いこんでいました。 木村 :自分が経験したことを、もう1回、自分の子どもにさせたいの? 楢戸 :そこが大きなジレンマで。「させたくない」。それが本音です。 けれども、親としては「世の中で生きていくためには、 フォーマット の中にいれないと」という気持ちにもなってくるんです。 木村 :こういう考え方をする大人が、一番、子どもの敵なの。「普通にやってきた自分」が、 異質なもの を排除する。その差別する感情を自分自身が持っていないか、省みなければ。 ■自分の中の「排除される要因」を隠せない子が生きにくい世の中 楢戸 :「自分は、排除されないようにしよう」。これが、いまの世の中にはびこる空気だと思っています。どんな人の中にも「排除されるようなもの」は、必ずある。でも、自分の中の「排除されるようなもの」を隠さなければいけない。そんな圧力があるのかな、と。 木村 :それを隠せる子は、いいの。隠せない子が、 「育てにくい子」 とか発達障害と呼ばれる子になるわけでしょ? 隠せない子が生きにくい世の中でしょ? でも「隠せる子」は、「隠すことで」生きている。そんな世の中、みんなにとって間違っていますよね。 楢戸 :そうだとは思います。でも、一方で「今日、うちの息子が、学校で迷惑をかけている」という現実もあります。そういう 現実と理想 の間で、ひとりの母親として戦っていると感じているんです。 木村 :卵が先か、鶏が先かの話。息子さんが幼稚園の段階で、楢戸さんの価値観が変わっていたら、息子さんはいま、通常の学級で学んでいたかもしれないですよ。 次回は、「自分の子どもがうまく育っていないと劣等感を感じているママへ」 です。 【木村先生がママたちに伝えたい20のこと】 1 . 学校の授業で正解のあること なんて、1時間も教えていない 2 . 「普通にやってきた自分(ママ)」が、 異質な子どもを排除 しようとしている 3 . 自分の中にある「排除される要因」を 隠せない子 が、生きにくい世の中になっている。でもそんなの間違っている ≫「木村先生がママたちに伝えたい20のこと」については こちら ■今回取材にご協力いただいた木村 泰子先生の著書 『 不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力 』 木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別)
2017年05月22日・一発でガツンと大きくトクする! 家計を元気にする税金のイロハ ・贈与税の裏事情でトクをする!? 親もママも税金対策できる “住宅購入” のコツ ・住宅ローン控除を利用できる人、利用できない人 ・聞きづらい財産の話はどう話す? 30代で知らないと損をする「親の相続」問題点 ・教育資金はおトクに贈与してもらう! パパ・ママが「親のお金」をうまく生かす方法 の続きです 税金の制度が大きく変化している中、ぜひガツンと大きな節約をしてもらいたいと考えた、本連載も最終回を迎える。最後は、税金の制度の中で、ママにとってはもっとも身近な税金、「ふるさと納税」と「医療費控除」の 新制度 について説明したい。 これらは 「家計を元気にする」 おトクな節税の第一歩。この税金のおトクを知ることについて、税理士の 湊 義和 (みなと よしかず)さんは、「 税金に親しむキッカケ にしてみては?」と話す。 ■使わなかったら損! 「ふるさと納税」 「ふるさと納税」とは、応援したい地方自治体へ寄付することによって、所得税が 還付 (戻ってくること)されたり、また住民税が 軽減 されたりする制度のこと。2015年度から、控除(本来支払う税金から差し引いて計算すること)の限度額が 2倍 になり、2015年4月1日以後の寄付から、 確定申告が必要ない 使い勝手の良い制度になった。 Q. 年収500万円の夫が、K市に3万円のふるさと納税をしました。夫の税金はどうなりますか? A. 税金が2万8千円安くなります。(所得税率は20.42%、住民税は10%で試算) 多くの人にとって興味があるのは「税金がいくら安くなるか?」であって、「税金が安くなるメカニズム」ではないだろう。ゆえに、 税金が安くなるメカニズム は、本記事の最後を参照してほしい。 ■「ふるさと納税ワンストップ制度」が使える人 ふるさと納税で覚えておきたいのは、 「ふるさと納税ワンストップ特例制度」 だ。これは、2015年4月1日以後の「ふるさと納税」について、次の条件を満たした場合、確定申告不要になるという制度だ。 ふるさと納税ワンストップ制度を利用した場合、自分が住んでいる市区町村の 住民税が減額 される。この場合は、所得税は、年末調整で計算が終わっているので、本来、確定申告をして所得税からも控除される分も含めて、住民税から減額となる。 ●ふるさと納税ワンストップ制度が使える人 1)確定申告が不要である給与所得者であること(年末調整だけで済む人のこと)ちなみに、「医療費控除」で確定申告を行う場合には、「ワンストップ制度」は利用できない。すでに申請していても無効となるので、忘れずに確定申告で「寄付金控除」の対応を! 2)「ふるさと納税」をした県や市などへ確定申告不要制度を活用したい旨の申請を行うこと。 3)その年の12月31日までに「ふるさと納税」をおこなった自治体の数が5か所以内であること。 出典:『 家計を元気にする 税金活用術 「節税」から「活用」へ 』(湊 義和著/中央経済社刊) ■「医療費控除」の新しい制度がスタート! さて。本連載も、いよいよ最後の項目。今回は、税金のおトクとしてもっとも有名な医療費控除の 新ニュース をお伝えしよう。2017年1月1日から、市販薬の購入についての 新しい制度 がスタートした。その名は、 「セルフメディケーション税制」 。 セルフメディケーション税制とは、適切な健康への取り組みをしている人が、「対象の市販薬」を 年間1万2000円以上購入 した場合に、税金が安くなる制度だ。この制度を利用するには、 定期健康診断 を受けるなど、適切な自分管理が必要となる。また、対象とされる薬は、「バファリン®」など、誰もが購入する機会があるごく一般的な市販薬だ。 「セルフメディケーション税制は、『 自分の健康は、自分で守る という意識』の起爆剤になるかもしれませんよね」(湊さん) いままでは、医療費控除は、「最低額は10万円もしくは所得の5%を超えた場合」が対象。それが、たとえば、年間の医療費が10万円未満で医療費控除がダメでも、「対象の市販薬を年間1万2000円超で買った場合」には、セルフメディケーション税制が使える。 この制度は、従来の医療費控除と 選択制 で、次の 2つ を満たしている時に利用できる。 ●セルフメディケーション税制を使うポイント 1)特定健康診断、予防接種、定期健康診断、健康審査、がん検診を行っていること 参考サイト:厚生労働省「 セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について 」 2)厚生労働省が定める市販薬を購入する 参考サイト:厚生労働省「 セルフメディケーション税制対象医薬品 品目一覧(全体版) 」(PDF) ■税金優遇の「要件」は、主婦が知っておくべき必須情報 全6本に渡りお送りした「知っている人だけトクする税金術 2017」もこれで終わりだ。この連載を書きながら、「 法律は、生き物 のようだなぁ」と思った。たとえば、植物が自然と光の方向を向くように、法律も、日本が行くべき方向に向かって、どんどん変化していく。 文中に何度も書いたけれども、税金の優遇を受けるためには、国が示す 「要件」 を満たしていないとならない。つまり、税金で家計を元気にするためには、主婦が、この「要件」を 知っておく必要がある ということだ。税金の知識は、家計を元気にするのに、「一発でガツンと効く」のだから、難しいと敬遠して知らないのはもったいない! 「税法を毎年チェックしていくことで、私たち達が歩む道が見えてくるのではないか?」 そんな気持ちから本連載には、「2017」と付け加えることにした。今後も、定期的に「家計を元気にする」税法をチェックしていきたい。 この記事は2017年1月の取材に基づいて書いています。 ■今回取材にご協力いただいた湊 義和さんの著書 『 家計を元気にする 税金活用術 「節税」から「活用」へ 』 湊 義和 / 中央経済社 ¥1,600(税別) 湊 義和さんプロフィール 中小企業を応援する政府系金融機関のサラリーマンから一念発起して税理士になった経歴の持主。とかく難解な税金の世界の水先案内人として、一般の方の税金相談から独立開業、二代目の事業承継などさまざまな相談に乗るのが生きがい。趣味は最近少し人気が回復してきたスキー。 【プチ知識】ふるさと納税で税金が安くなるメカニズム 年収500万円(※)の人が、30,000円のふるさと納税をした場合、28,000円の税金が安くなる。(※所得税率は20.42%、住民税は10%で試算) 税金が安くなるメカニズムは、図にすると下記の如くになる。それぞれをみていこう。 1)所得税 所得税では、K市へのふるさと納税は、K市への寄付金として取り扱う。この場合、K市へ寄付した金額のうち2000円(A)を超える金額が所得から控除されるため、所得税としては、次の金額が軽減される。 (30,000円 − 2,000円) × 20.42% = 5,718円(B) 2)住民税 住民税では、以下の2段階で、税金が軽減される。 ▼第1段階 K市への寄付金のうち2,000円を超えた金額の10%が控除される。 (30,000円 − 2,000円) × 10% = 2,800円(C) ▼第2段階 K市への寄付金のうち2,000円を超えた金額に以下の割合を掛けた金額が控除される。 (30,000円 − 2,000円) × (1 − 所得税率 − 住民税率) ただし、夫の住民税所得割額の2割が上限だ。 (30,000円 − 2,000円) × (1 − 20,42% − 10%) = 19,482円(D)
2017年04月15日・一発でガツンと大きくトクする! 家計を元気にする税金のイロハ ・贈与税の裏事情でトクをする!? 親もママも税金対策できる “住宅購入” のコツ ・住宅ローン控除を利用できる人、利用できない人 ・聞きづらい財産の話はどう話す? 30代で知らないと損をする「親の相続」問題点 の続きです 税金制度が、じつは すごい勢いで変化 しているということをご存じだろうか? 2015年4月に課税ラインが下がったことで、一部の裕福な人の悩みだった 相続税 が、 多くの人に影響してくる 時代となった。 こんな時代にパパ、ママの親のお金をうまく生かす方法はないものだろうか。税理士の 湊 義和 (みなと よしかず)さんに、相続税対策について、そしてパパ、ママの親にとっての「孫への 教育資金贈与 」についてもお話を伺った。 ■相続税対策は、大きくわけて2つ 2015年4月、相続税の基礎控除額(税金が免除になる境界ライン)が、ほぼ6割に切り下げられた。本格的な相続税対策のすべては説明できないが、方向性として相続税対策は、大きくわけて2つある。 対策1:相続税がかかる 財産の評価を落とす 対策2: 生前贈与対策 を検討する 前回の記事( 聞きづらい財産の話はどう話す? 30代で知らないと損をする「親の相続」問題点 )では、対策1 についてお話をした。今回は、対策2の 「生前贈与対策」 について説明しよう。 ■「生前贈与対策」のポイント まずは制度を知ろう 親や祖父母などの個人から贈与を受けると「贈与税」がかかる。 贈与税には、次の 2つの制度 がある。 将来、相続税がかかる人 ⇒ 暦年課税制度 将来、間違いなく相続税がかからない人 ⇒ 相続時精算課税制度 相続税の課税ライン引き下げにより、 「将来、相続税がかかる人」 は増加すると予想される。他人事だと思っていると、もしかしたら損をするかもしれない。 なぜ、「将来、間違いなく相続税がかからない人」だけが、「相続時精算課税制度」を使うべきなのだろうか? そもそも「相続時精算課税制度」とは? 次ページから、そのポイントを説明する。 ■そもそも「一度に多額の贈与」は、いったい何が問題なのか? 通常、一度に多くの贈与を行うと多額の贈与税がかかってしまうが、 「相続時精算課税制度」 を利用すると、一度に 2,500万円 まで贈与しても贈与税がかからない。 しかし、この制度は、せっかく生前に贈与しても、相続税の計算のときには贈与した財産の金額が、また 相続財産 として扱われるので、相続税がかかる人にはメリットがあまりない制度だ。つまり、「相続時精算課税制度」は一度に大きなお金を贈与できるかわりに、実際の相続発生時には、その金額は相続財産として計算される。 一方で、 「暦年課税制度」 は、 年間110万円まで の贈与なら税金がかからない。子どもに贈与した財産は、相続発生時に 「子どもの財産」 として計算され、相続財産とはみなされない。 ●「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」のメリット・デメリット (Woman excite編集部作成) 前述の通り、相続税の課税ラインが引き下がったので、「将来、相続税がかかる人」は増加すると予想される。それを考えると、「相続時精算課税制度」を使う人は少なくなっていくだろう。 ■孫への教育資金の贈与は「コツコツ行う」のがおトク ところで孫への贈与というと、 「教育資金贈与」 が話題となっているが、この制度は、「1,500万円までなら贈与時に贈与税がかからない」というものだ。教育に限ってしか利用できなく、また贈与した孫が30歳になるまでに使い切らなかった場合には、贈与税が課税されてしまう。 「将来、相続税がかかる人は、親に 『暦年課税制度』 を使って、コツコツと 時間をかけて相続財産の移行 を行うのが得策だと伝えてほしいです」(湊さん) 時間をかけて相続財産を移行 させることで、パパやママの世代が教育資金など必要なときに役立ってくるのではないだろうか。 次回は、 「身近な「医療費控除」も新制度がスタート! 家計を元気にする節税のきほん」 です。 この記事は2017年1月の取材に基づいて書いています。 ■今回取材にご協力いただいた湊 義和さんの著書 『 家計を元気にする 税金活用術 「節税」から「活用」へ 』 湊 義和 / 中央経済社 ¥1,600(税別) 湊 義和さんプロフィール 中小企業を応援する政府系金融機関のサラリーマンから一念発起して税理士になった経歴の持主。とかく難解な税金の世界の水先案内人として、一般の方の税金相談から独立開業、二代目の事業承継などさまざまな相談に乗るのが生きがい。趣味は最近少し人気が回復してきたスキー。
2017年04月14日・一発でガツンと大きくトクする! 家計を元気にする税金のイロハ ・贈与税の裏事情でトクをする!? 親もママも税金対策できる “住宅購入” のコツ ・住宅ローン控除を利用できる人、利用できない人 の続きです これまで関係ないと思っていた人に、突然ふりかかってくるのが税金の制度である。それの最たるものが 「相続税」 だ。 2015年4月に 課税ラインが下がった相続税 について、税理士の 湊 義和 (みなと よしかず)さんにお話を伺った。30代から親と話しあうことで、大きな「税金のおトク」を逃さないようにしよう。 ■首都圏の人は要注意! 相続税は誰もが払う時代に!? 2015年4月、相続税の 基礎控除額 (税金が免除になる境界ライン)が、これまでからほぼ 6割 に切り下げられた。これにより国税庁の報道発表によると、相続税を支払う人の数(課税対象者数)は、例年の 2倍 となった(※)。 家計が元気でいるためには、安全で確実な相続税対策を事前に検討しておく必要がある。これからは、本当は相続税がかかるのに、当事者が知らないということが、わりと起こりがちとなる。とりわけ 首都圏 に 土地付きの実家 がある人は、要注意を! ※国税庁「 平成27年分の相続税の申告状況について 」より ■親には聞きづらい「財産」の話、どう切り出す? 「相続税の対策をしておきましょう!」。そう言われても、親子といえども、財産についての話は、なかなか聞きづらいもの。 どうやって、 親と財産について話し合い を始めたら良いのだろうか? そんな、率直な疑問を湊さんに聞いてみた。 「親御さんには、 『いままで、どんな人生を送ってきたの?』 という形で話を切りだしてみてはいかがでしょうか?」(湊さん) たとえば親の結婚記念日や、誕生日など、親兄弟と集まったときにでも、そんな話を切りだしてみてはどうかと、湊さんはアドバイスする。財産についての話しあいが進み始めたら、税理士という 「税金の専門家」 に中に入ってもらうことも、とても有効だ。 「私たちはお客様に、『時間を、お金で買ってください』と、お伝えしています」(湊さん)。 現実問題として、相続税対策について普通の人が一から勉強するのは時間がかかる。さらに、調べたことが「間違っていない」という保証もない。そこに多くの時間を割くのであれば、「税理士さんにサクッとポイント整理してもらうこと」にお金を払うのもアリなのではないか? ■相続税対策は、大きくわけて2つ 本格的な相続税対策は、この記事の中だけで十分説明するのは難しい。けれども、方向性だけでも、ここに示しておこう。 相続税対策は、大きくわけて2つある。 対策1:相続税がかかる 財産の評価を落とす 対策2: 生前贈与対策 を検討する 「相続税対策というのは、何なのか?」を考え始めたときには、上記の2本柱を頭にいれておく必要がある。このうち、対策1で使える 「小規模宅地の評価減の特例」 は、名前だけで敬遠したくなるが、ものすごく威力がある特例だ。 ■財産の評価を落とす 「小規模宅地の評価減の特例」とは 「小規模宅地の評価減の特例」とは、自宅を相続する場合には、330m²(約100坪)まで自宅の土地は、評価額を 80%少なく するというもの。 この特例がかなり使える。これまでは文字通りの「自宅(親が住んでいた家)」のみが対象だったが、最近の改正で、 二世帯住宅 も同居をしているという意味で 自宅扱い になった。 小規模宅地の評価減の特例を受ける(税金の優遇を受ける)ためには、国が提示する 「要件」 を満たしていなければならない。この要件は、法律の文章だけではわかりづらい。 Q. 実家を二世帯住宅に建て替えをして住んでいます。土地の相続税評価額は5、000万円。父が亡くなって、小規模宅地の評価減の特例を使うと税金がいくら安くなりますか? A. 1,200万円安くなります(相続税率は30%とする) 具体的な事例については、こちらの記事を参照してほしい。 ■税金の計算はこうなる 「二世帯住宅。父が亡くなり、相続が発生した場合」 母と本人(パパママ)はいずれも同居しているとみなされるので、どちらが自宅を相続しても小規模宅地の評価額の減額の特例を適用でき、 80% の 評価減 ができる。 A. 自宅の評価が下がる金額: 5、000万円 × 80% = 4,000万円 B. 相続税の減少額: 4,000万円(A)× 30%(相続税率) = 1,200万円 ■相続税の本当の大きな問題は、“1回目” ではない ここで特筆したいのは、父のあとに 母の相続 が起きたとき( 母が亡くなったとき )のことだ。これを、 「二次相続」 という。 基本、「相続税は 『代』が変わるとき にかける」という考え方がある。父が亡くなったときは、母が生きていれば 「配偶者控除」 が使える。「配偶者控除」は、ものすごく大きな税制優遇なのだ。 しかし二次相続のとき(母が亡くなり、パパママの「代」になるとき)こそが、本当は大きな問題となるのだ。 上記の例をとると、母が亡くなって、子ども(パパママ)が同居していなかった場合には、「小規模宅地の評価減の特例」が使えず、 100%の相続税 がかかってしまう場合があるからだ(実際には、子どもが家を購入していなければ特例が使える場合もある)。 つまり、片方の親が亡くなったときは、 もう片方の相続 も視野にいれての相続税対策が必要だということ。もっといえば、 親の生前 から 二次相続 の対策を考え始めておくに越したことはない。 次回は、 「教育資金はおトクに贈与してもらう! パパ・ママが「親のお金」をうまく生かす方法」 です。 この記事は2017年1月の取材に基づいて書いています。 ■今回取材にご協力いただいた湊 義和さんの著書 『 家計を元気にする 税金活用術 「節税」から「活用」へ 』 湊 義和 / 中央経済社 ¥1,600(税別) 湊 義和さんプロフィール 中小企業を応援する政府系金融機関のサラリーマンから一念発起して税理士になった経歴の持主。とかく難解な税金の世界の水先案内人として、一般の方の税金相談から独立開業、二代目の事業承継などさまざまな相談に乗るのが生きがい。趣味は最近少し人気が回復してきたスキー。
2017年04月13日・一発でガツンと大きくトクする! 家計を元気にする税金のイロハ ・贈与税の裏事情でトクをする!? 親もママも税金対策できる “住宅購入” のコツ の続きです。 税金の制度が、すごい勢いで変化している、いま。30代にとってもそれを知っているのと、知らないのでは大きな差が出てくる。 今回は、30代にとって一番身近で大きな 「税金のおトク」 分野である 「住宅ローン控除」 (住宅借入金等特別控除)について、税理士の 湊 義和 (みなと よしかず)さんにお話を伺った。 ■「住宅ローン控除制度」を使えなかった 30代は、マイホーム購入の適齢期といわれている。住宅ローンを組むときに知っておいて欲しいのが、住宅ローン控除の知識である。 じつは、筆者である私自身は、「住宅ローン控除」を使えていない。だから、自戒の念も込めて、「住宅ローン控除の知識は必須だよ!」ということをお伝えしたい(まったく説得力に欠けると思うが…笑)。 ■なぜ「住宅ローン控除」を使えなかったか? 私は、恋に落ちたように家を購入した。一目ぼれをし、内覧させてもらった15分で購入を決定した。私ひとりで決めたので、夫が物件を見たのは、売買契約と住宅ローンの実行が終わってからだ。賛同してくれた夫の太っ腹ぶりにいまでも感謝している。 住宅ローン控除を受けるには、国が提示する 「要件」 を満たしていなければならない。私が恋に落ちた家は、「購入する物件の要件」を満たしていなかった。つまりマイホームを購入しようと思ったら、住宅ローン控除の概要と、控除を受けるための要件は知っておくべきなのだ。 ■住宅ローン控除制度の概要 住宅ローン控除とは、購入した年から 10年間 、毎年末の住宅ローン残高の1%が、所得税や住民税から 控除 される制度である。住宅の種類に応じて借入限度額が異なっている。 税金控除額 = 住宅ローンの年末残高 × 1%(控除率) ●住宅ローン控除一覧表 出典:『 家計を元気にする 税金活用術 』(湊 義和 著/中央経済社刊) ※認定住宅とは、認定長期有料住宅及び認定低炭素住宅をいう Q. 「住宅ローン控除」は、どれくらい家計を元気にしますか? A. たとえば年収600万円の人が3,000万円の住宅ローンを組んだ場合。所得税と住民税を合わせて、 28万円を軽減 できます。同様の効果を 10年間 受けることができます。 所得税と住民税を合わせて、年間28万円(月額換算すれば、2万円強)もの税金が軽減できる。どれほど大きなおトクか、イメージが沸いただろうか? ■「住宅ローン控除」を利用するための要件とは? 前述したとおり、このおトクを使うためには国が提示した 「要件」 を満たしていなければいけない。押さえておきたい「要件」は、次の2つだ。 【その1】住宅ローン控除を利用できる人 次のとおりとなる。 1. その年の合計所得金額が 3,000万円以下 の人 2. 居住年及び居住年の前後2年以内に、ほかの居住用財産に関する課税の特例を受けていない人(これは自宅を買い換える場合に注意すべき要件となる) 【その2】購入する物件 次のとおりとなる。 1. 床面積が50m²以上 (登記簿面積)であり、床面積の2分の1以上の部分をもっぱら自宅として使用していること 2. 中古住宅の場合には、 取得の日前20年 (マンションなどの耐火建築物の場合には25年)以内に建築されたもの 3. 及び 2. 以外で、 地震に対する安全性 に係る基準に 適合 するものであること(平成17年4月1日以後に取得をした場合に限る) 4. 取得の時に生計を一にしており、その取得後も引き続き生計を一にする親族や特別な関係のあるものなどからの取得でないこと <参考サイト> 国税庁「 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除) 」 ちなみにわが家は、購入時点で築20年超だったので、要件2.(中古住宅の場合には、取得の日前20年)を満たしていなかった。家を購入したあとに「住宅ローン控除が使えない物件である」と判明したときは、やっぱり悔しかった(もちろんそれがわかったところで購入したことには変わりないのだが…)。 次回は、 「聞きづらい財産の話はどう話す? 30代で知らないと損をする「親の相続」問題点」 です。 この記事は2017年1月の取材に基づいて書いています。 ■今回取材にご協力いただいた湊 義和さんの著書 『 家計を元気にする 税金活用術 「節税」から「活用」へ 』 湊 義和 / 中央経済社 ¥1,600(税別) 湊 義和さんプロフィール 中小企業を応援する政府系金融機関のサラリーマンから一念発起して税理士になった経歴の持主。とかく難解な税金の世界の水先案内人として、一般の方の税金相談から独立開業、二代目の事業承継などさまざまな相談に乗るのが生きがい。趣味は最近少し人気が回復してきたスキー。
2017年04月12日・一発でガツンと大きくトクする! 家計を元気にする税金のイロハ の続きです。 税金の制度が、すごい勢いで変化している中、いちばん大きな変化が起こっているのは、 「贈与税」 だという。 このいちばんホットな 「税金のおトク」 分野である贈与税について、税理士の 湊 義和 (みなと よしかず)さんにお話を伺った。親が元気な30代にとって、贈与税はじつは もっとも活用できる税金 といえるかもしれない。 ■贈与税がかからない「仕組み」が増えている 「最近は、 『教育』『住宅取得』 など、はっきりとした目的のある場合は、 贈与税をかけない仕組み が増えています」(湊さん) 贈与税を緩和することで、世の中に流れていくお金を増やし、社会全体のお金の流れを良くしようというのが狙いだという。今回の取材で、私が「一番面白い!」と感じたのは、この 「贈与税が緩和された意図」 だ。 少しマニアックな話になるかもしれないが、「税金を身近に感じるキッカケになるのではないか?」と思ので、贈与税が緩和された 「裏事情」 をお話しておこう。 ■平均寿命が延びたことが、贈与税緩和につながる いままで 「贈与税」 は、「相続税」に比べると 割高な税金だった 。なぜなら、国はお金の世代間の移動に課せる税金は、「相続税」で行おうとしていたからだ。 簡単に言えば、親が亡くなり相続が起きるときには税金は優遇するが、親が生きているときにお金が世代をまたぐことは(贈与すること)は、あまり良しとしていなかった。 けれども平均寿命が延びた昨今。パパママ世代がもっとも大金を必要とする時期(「住宅の頭金準備」や「教育費のピーク」)に、おおかたの親は元気で、 相続が起こらない 。 そうすると、どうなるか? 本来、社会に流れるはずのお金が、高齢者の元に留まってしまうのだ。このあたりのお金の流れをスムーズにするために、贈与税の仕組みが 緩和 の方向へと向かっているそうだ。 それでは贈与税が、どれくらい家計を元気にするのか? 「住宅購入資金の特例」 を例にとり、具体的な数字を出して紹介しよう。 ■住宅購入資金で、親もパパママも税金対策できる 父母、祖父母など直系尊属の人が、子どもや孫に住宅取得のための資金として贈与した場合には、購入する住宅の種類や購入契約時期に応じて、最高で3,000万円(消費税が10%に引き上げられるまでは最高1,200万円)までの 贈与が非課税 となる。 Q. 「住宅購入資金の特例」は、どれくらい家計を元気にしますか? A. たとえば1,000万円を住宅資金として贈与された場合、177万円です。 「住宅購入資金の特例を使わない場合」と「住宅購入資金の特例を使った場合」を 比較 してみよう。 ■特例を使わない場合 →住宅資金贈与で「贈与税」がかかってしまう 父が息子(パパ)に1000万円の住宅取得資金を贈与した場合、次の計算式により、通常の贈与税が計算される。 (1,000万円 − 110万円(基礎控除額)) × 30%(通常税率)− 90万円(直系卑属への贈与に関する速算表計算した数字)= 177万円(贈与税) 税金で差し引かれてしまう金額は、案外大きいことがおわかりいただけただろうか。せっかく父が1,000万円を息子にあげようとしても、177万円もの税金を支払う必要が出てしまうのだ。結果、息子が実際に手にするお金は823万円になってしまう。 父の側からみると、財産が1,000万円減少するので、少なくとも相続税対策にはなっている。だから、贈与をすること自体は、「支払う税金を少なくする」という意味では、悪いことではない。しかし父が贈与してから万が一3年以内に亡くなってしまうと、その贈与がなかったことになってしまうというデメリットがあるので注意が必要だ(※1)。 ※1 これを「3年以内贈与規制」という。 参考サイト:国税庁「 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税) 」 ■特例を使った場合 →住宅資金贈与で、親もパパママも税金対策できる 「住宅取得資金の贈与の特例」 (※2)を使うと、1,000万円全額が非課税となるので、贈与税を支払う必要がない。つまり、その分の金額177万円で家計が元気になる。 もちろんこの場合も、父の財産は1,000万円減少するので、相続税対策になる。さらに、住宅購入資金の特例を使った場合は「3年以内贈与規制」にも引っかからない。つまり、「パパママ側」「親側」両方で、 いつでも税金対策を行える 心強い仕組みなのだ。 ※2 正式名称「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」 参考サイト:国税庁「 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税 」 次回は、 「住宅ローン控除を利用できる人、利用できない人」 です。 この記事は2017年1月の取材に基づいて書いています。 ■今回取材にご協力いただいた湊 義和さんの著書 『 家計を元気にする 税金活用術 「節税」から「活用」へ 』 湊 義和 / 中央経済社 ¥1,600(税別) 湊 義和さんプロフィール 中小企業を応援する政府系金融機関のサラリーマンから一念発起して税理士になった経歴の持主。とかく難解な税金の世界の水先案内人として、一般の方の税金相談から独立開業、二代目の事業承継などさまざまな相談に乗るのが生きがい。趣味は最近少し人気が回復してきたスキー。
2017年04月11日いま、 税金の制度 が、すごい勢いで変化しているのは、ご存じだろうか? これを知っているのと、知らないのでは大違い! なぜなら、お金のことは 「知っている人だけがトクする」 という仕組みになっていることが多いからだ。 今回は、 「家計を元気にする」 という面にフォーカスして、税理士の 湊 義和 (みなと よしかず)さんに、「家計を元気にする税金のイロハ」についてお話を伺った。 ■「節税テク」から「活用テク」に 「私が、主婦のみなさんにいちばんお伝えしたいことは、『税金の 制度を活用 して、 家計を元気に してください!』ということです」(湊さん) 税金を活用して、家計を元気にする!? 正直なところ、すぐにはピンと来ない人の方が多いだろう。けれども、たとえば、「 マイホーム購入 」「親世代から、パパママ世代への 財産のバトンタッチ 」…。こういった人生の大イベントには、税金の知識があった方が、お金を賢く守れることが多いのだ。 お金を賢く守るために最初に覚えておきたいポイントは、大きくわけて2つある。 ■ポイント1:「税金の知識」で得られるおトクは、大きな金額 もっとも重要なことは、「 税金の知識 があることで、トクする金額は、 大きな金額である 」ということ。 とかく税金に関する用語は、とっつきづらいものが多く、「面倒くさそう」という気分に陥りがち。けれども、ここを、「ほんの少しだけ」、がんばってみて欲しい。 多くのママは、「ポイントカード」や「割引クーポン」などを使って、「コツコツと小さなオトク」を積み重ねることが得意だ。けれども、税金の知識を持つと、 「一発でガツンと大きなオトク」 が手に入る。だから税金の知識をぜひ心に留めて欲しい。 ■ポイント2:「税金のオトク」に必須なものは、家族の協力 たとえば、「税金のオトク」の有名どころとしては、 「医療費控除」 がある。 「医療費控除」は世帯ごとの申請となるので、共働きで保険証が別であったとしても、ひとつにまとめて申請できる。そのためには、年度始めから1年間の「医療費扱いとなる領収書やレシートを集めておくこと」が必要となる。これは家族全員の協力体制がないと難しい。 このほかにも、 「贈与税」「相続税」 といった税金の支払いをオトクにするためには、「家族内で、 全員が納得 していること」が大切だ。それゆえ、家族全員で税金についての意識を高めておきたい。 次回は、 「贈与税の裏事情でトクをする!? 親もママも税金対策できる “住宅購入” のコツ」 です この記事は2017年1月の取材に基づいて書いています。 ■今回取材にご協力いただいた湊 義和さんの著書 『 家計を元気にする 税金活用術 「節税」から「活用」へ 』 湊 義和 / 中央経済社 ¥1,600(税別) 湊 義和さんプロフィール 中小企業を応援する政府系金融機関のサラリーマンから一念発起して税理士になった経歴の持主。とかく難解な税金の世界の水先案内人として、一般の方の税金相談から独立開業、二代目の事業承継などさまざまな相談に乗るのが生きがい。趣味は最近少し人気が回復してきたスキー。
2017年04月10日尾木ママが語る「子どもを学校に行かせたらいけないとき」 尾木ママが語る「親が受けてきた教育とはガラリと変わる!」 尾木ママが語る「親は『アクティブ・ラーニング』を勘違いしている」 の続きです いま、教育現場で最も注目されている言葉 「アクティブ・ラーニング」 とは、先生の授業を聞くだけの受け身の学びではなく、子どもが能動的に考える学習のあり方のことだと、テレビでおなじみの “尾木ママ” こと、 尾木直樹さん は言います。 尾木ママの新著 『取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと』 の本の中で紹介されている「アクティブ・ラーニング」。 では、アクティブ・ラーニングができる子を育てるために、 いま、ママができること とは何でしょうか? ■杉山愛さんのお母さんの口癖 ―― 前回、授業の方法が「アクティブ・ラーニング」を重視したものに変化していくというお話を伺いました。それに対応できる子どもを育てるために、ママが気をつけるべきことは何ですか? ポイントはいくつかありますけれども、やはり1番大切なのは 自己決定ができる子 を育てることです。 そのためには、まず、日常生活のいろんな場面で 子ども自身に決定させる ことが重要です。 ご飯を食べるにしても、保育園に行くにしても、子ども自身が考え、決められるよう働きかけていく。どの靴を履いていくかとか、今日曇っているけど傘を持って行くか、といったことを自分で決めさせるの。「テレビの天気予報では、雨の確率は80%と言っていたよ」とか、考えるヒントになる情報は親が与えてあげて。 ―― 「こうしなさい」ではなく? 一方的に親の意見を押し付けるんじゃなくて、 「あなたは、どうしたいの?」 といった問いかけで、自己決定を促す。じつはこれ、元プロテニスプレーヤーの杉山愛さんのお母さまの口癖なんだそうです。 お母さまは、「あなたはどうしたいの?」と、必ず杉山愛さんに聞いていらっしゃったとか。愛さんは、「それは、それでしんどかった。」とおっしゃっていたけれど(笑)。すごく大事なことですね。 ■羽生結弦選手のすごいところ ―― 「自己決定」は、「能動的」な姿勢そのものですよね。 2つめのポイントは、 自分の意見が言える こと。そのために、主語をきちんと言えるようになること。「僕は、これがほしい」「私は、これがしたい」。こんなふうに、 主語と述語 がきちっと言えるということもすごく大事です。 ―― 日本語は主語を使わなくても通じやすい言語なので、これは意識する必要がありますね。 3つめのポイントは、 他人と比較しない ということです。これは、フィギュアスケートの 羽生結弦 選手が良い例。彼のすごいところは、他人との比較ではなく自分の目標に挑んでいるところ、そしてメダルを目的としないところです。 羽生選手は、よく 「敵は自分自身」 ということを口にしています。その例として、2014年、ソチオリンピックで金メダルを獲ったときのコメントが印象的でした。 当時、取材に「結果としてすごいうれしいなと思う半面、自分の中では悔しいと思うところがあるので、金メダルを獲って言うのもなんですけれど、やっぱり悔しいです」と答えています。 これはつまり、自分の演技を「相対評価」するのではなく、 「絶対評価」 しているんですね。 ■内村航平選手のお母さんの視点 ―― そういった子は、どうしたら育つのでしょうか? これは体操の 内村航平 選手のお母さまと対談して、ご本人の口からはっきり聞いた話なんですが…。 内村選手のお母さまに、「大量のメダルや賞状は、どこに保管しているのですか?」と質問したとき、「そんなの見たことないし、どこかポケットにでも入っているんじゃないですか?」と、おっしゃるんです。 「え? じゃあ、1枚も飾ってないんですか?」と聞いたら、「そういえば1枚だけリビングに飾っています」と。それは小学校のときに出場した大会の 参加賞 だというんですよ。 ―― 参加賞、ですか? そう、参加賞です。思わず、「そこで優勝したんですか?」と聞いたら、「成績はビリでした。でも体操が本当に好きで、泣かないで 最後までやりきった ことが、すごい立派だった」と。 これは、 「親が、子どもの何を見ているか?」 という話です。普通だったら、メダルの数といった成績で評価しがちですよね。でも、そうではなくて、子どもが自分と向き合ったことについて親がしっかり認めてあげている。 子どもが 「最後まで、きちんとやりきった」 ことをお母さんが本気で評価している。そして、それが子どもに伝わっているんです。これが世界の内村選手の原点にある話だと思うんです。 ■親の教育に対する考え方が問われる時代 4回に渡ってお送りした「わが子のために親が知っておくべきこと 2017」連載も、これで終わり。 トップアスリート本人や、トップアスリートを育てたママたちの言動に共通していたことは、 アクティブ・ラーニングができる子を育てるポイント そのものだったと思います。 尾木ママは言います。「わが子の教育について真剣に考えていて、確固たる教育観を持った家庭で育つ子どもは、アイデンティティもしっかり確立され、自分の意見を述べたり、主張したりできます。やはり、 『家庭の教育力』 が子どもに与える影響は大きいのです」。 「教育」という分野にも、「時代」の波は押し寄せてきています。未来を生きるわが子に本当に必要なことは何なのか? ママとしてのアンテナを磨いて、時代の波をきちんとキャッチしていきたいですね。 この記事は2017年2月の取材に基づいて書いています。 ■今回取材にご協力頂いた“尾木ママ”こと尾木直樹さんの著書 『取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと』 尾木直樹 著/講談社 ¥840(税別) 尾木直樹さん プロフィール “尾木ママ”の愛称で親しまれる教育評論家、前法政大学教授。「子育てと教育は“愛とロマン”」をモットーに、ユニークで創造的な教育実践を展開。講演会活動、メディア出演、執筆活動など幅広く活躍中。 尾木ママ オフィシャルブログ:
2017年03月28日尾木ママが語る「子どもを学校に行かせたらいけないとき」 尾木ママが語る「親が受けてきた教育とはガラリと変わる!」 の続きです テレビでおなじみの “尾木ママ” こと、 尾木直樹さん が、いまぜひママたちに伝えたいメッセージ! 尾木ママは、新著 『取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと』 の本の中で、「入試で問われることが、変わってきているんですよ!」と、話しています。 ■授業参観でチェックしたいポイント ―― 前回、国際的な学力調査が、2018年からガラッと変わることを受けて、日本でも入試問題に変化が出てきたというお話を伺いました。この変化に対して、いま、ママたちができることは? まず、学校現場に関心を持ってほしいですね。昨年の4月から、お子さんたちの学校も、変化してきていると思います。その変化は、 授業参観に行ったりしないとわからない 。もしご自身のお子さんの学校が変わっていないならば、「うちの子どもの学校は、遅れている」と、ママ自身が気づくことができます。 ―― 「変化している」というのは? 知識を詰め込む「だけ」の教育は、もう終わり。前回お話した世界標準の「キー・コンピテンシー」(※)を身につける教育への転換が急がれています。これからは、 子どもの主体性 に働きかけることで、発想力や想像力、多角的な分析力、協働性などといった能力を伸ばしていくことが求められています。 ※キー・コンピテンシーとは:「状況を分析し、他人に論理的に説明し、情報を批判的に捉える能力、さまざまな分野の知識をつなぎ合わせて、問題解決に導いていく能力」。答えがひとつではないことにどう対応していけるか、どう状況を切り開いていくか、どう問題解決していけるか、そういった能力のこと。詳しくは、 第二回の記事 を参照 ■10年ぶりに学習指導要領がかわる ―― おっしゃることは、頭ではわかります。ですが、「宿題しなさい!」「歯を磨いたの?」という日々の現実から遠い話すぎて…。何から、その現実を考えれば良いですか? 「学習指導要領」って何か、ご存じですか? 学習指導要領とは、いわば「日本の学校教育課程の基準書」のようなもの。戦後70年、ほぼ10年ごとに改訂されてきて、次の改訂は2018年です。この変化する学習指導要領の中で、「今回の改訂で、何が盛り込まれたのか?」を知ることは大切です。それは、「何から考えれば良いのか」の「とっかかり」になりますね。 ―― 何が、盛り込まれる予定なのでしょうか? いろいろありますが、私が特徴的だと思うのは、学校教育を通じて身につけさせたい力の大きな柱のひとつに 「人間性」 という言葉が入った点です。 ちなみに次期学習指導要領の3本柱の案は、次のとおりです。 ①知識および技能 ②思考力、判断力、表現力等 ③学びに向かう力、人間性等 出典:文部科学省「幼稚園教育要領、小・中学校学習指導要領等の改訂のポイント」(2017年2月取材時時点) ■いま、注目の「アクティブ・ラーニング」 ―― 学習指導要領の3本柱でうたわれている力を身につけさせるには、どうしたら良いのでしょうか? 昨年の4月から、教育現場には 「アクティブ・ラーニング」 という言葉があふれています。アクティブ・ラーニングとは、日本語訳すると「能動的学修」のことです。すでに多くの小中学校で、独自に研究を重ね、さまざまなアクティブ・ラーニングの手法を取り入れた授業が行われています。 ―― 「アクティブ・ラーニング」という言葉は聞いたことがあります。 先日、「アクティブ・ラーニング」について保護者から不安や悩みなどのご相談を受ける機会がありました。「うちの子は内気なんですが、アクティブ・ラーニングについていけるでしょうか?」といった感じのご質問があり、勘違いされている方が多いと思いましたね。 ■勘違いされている「アクティブ・ラーニング」 ―― どう勘違いされているのでしょうか? アクティブ・ラーニングというのは、授業の学習・指導の方法です。授業風景が変わっただけで、教えている内容は何も変わらないんです。そこらへんが、正確に皆さんに伝わっていないと感じました。 ―― 「アクティブ・ラーニングという授業」が始まるんだと思っていましたが…。 アクティブ・ラーニングとは、あくまでも 授業の方法論のひとつ です。いままでは、先生が一方的に黒板に書いたものを、必死にノートに書き写して、覚えて、テストをやって、「はい、何点!」ということをやっていましたよね? そういうやり方ではなくなるんです。 ―― 「そういう方向」に、教育が動いているということですね。 そうです。ただ、「アクティブ・ラーニング」という言葉がひとり歩きしてしまった結果、現場が混乱してしまったこともあり、文科省もこれはいけないと、結局次期学習指導要領では 「主体的・対話的で深い学び」 という言い方で説明されるようです。 そのポイントは、 「対話」 。対話を通じて、学びを深め、課題を解決していきます。対話というのは、友達との対話でもあるし、自分との対話でもある。先生との対話、文献との対話など、いろんな形がありますよね。他人と活発に議論すること=アクティブ・ラーニングというわけではないので、そこは誤解しないでくださいね。 アクティブ・ラーニングができる子を育てるために、いま、ママができることは? そのヒントは世界で活躍するトップアスリートのママたちの言動にあると尾木ママは話します。 次回は、尾木ママが語る 「トップアスリートの母に共通する"子どもが伸びる"育て方」 です。 この記事は2017年2月の取材に基づいて書いています。 ■今回取材にご協力頂いた“尾木ママ”こと尾木直樹さんの著書 『取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと』 尾木直樹 著/講談社 ¥840(税別) 尾木直樹さん プロフィール “尾木ママ”の愛称で親しまれる教育評論家、前法政大学教授。「子育てと教育は“愛とロマン”」をモットーに、ユニークで創造的な教育実践を展開。講演会活動、メディア出演、執筆活動など幅広く活躍中。 尾木ママ オフィシャルブログ:
2017年03月27日尾木ママが語る「子どもを学校に行かせたらいけないとき」 の続きです “尾木ママ” の愛称で知られる、 尾木直樹さん が、 『取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと』 という本を出版しました。 尾木ママは、この本の中で、「親御さんご自身が、『いま、 世界の教育 はどうなっているのだろうか?』という視点を持ってほしい」と力説します。 ■高校入試をしているのは、日本だけ ―― 「世界の教育状況の把握」と言われても、日々の生活に追われて、ピンときませんが…。 毎日の生活をまわしていかなければいけないママたちの、そういう感覚も、もちろんわかります。 でも、だからこそ、今回出版させていただいた本を読んで、「そういうことを考えてみる時間」を、少しでも持ってほしいと思います。 先進国の中で、一斉指導(※1)をメインに実施しているのは、日本くらいです。いま、世界の多くの国が、一人ひとりの子どもに合った、 「個別教育」 をする時代に入っています。 「日本の教育体制の遅れ」 が如実に出ているのが、「アジア大学ランキング 2016」(※2)。 東京大学は首位陥落 という事態に陥っています。 東京大学は、アジアでは調査開始以来3年連続首位をキープしていたけど、2016年度には7位。これは、ものすごい衝撃的な話。世界的にみて「日本の教育への評価」は、急降下しているんです。 ※1 日本の小学校、中学校では最もポピュラーな授業の形態。 教師が一人で、大勢の児童・生徒に対して授業をするというもの。 ※2 アジア大学ランキング(英タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)発表) ―― 御著書では、「親が意識を変えていかなければ!」と、強くおっしゃっています。 高校入試をやっているのは、世界的にみてもじつはめずらしいのです。大学入試すらない国も多くあります 。 高校入試の何が問題かというと、高校入試をすると、 高校をランキングしてしまう ことになります。ランキングが30段階あれば、1位の学校がある一方で、30位の学校もできてしまう。学校が序列化されることで格差が生まれてくるんです。 本にも書きましたが、オランダでは、高校卒業資格を取得していれば、どの大学にも入れる仕組みになっています。たとえば医学部の入学試験も抽選だそう。それでも医療の質は高いといわれています。 ■日本の小中学校に「留年」がない理由 ―― どうしてほかの国では入試がなくても問題ないのでしょうか? 他国では、「高校の卒業証書がある」ということは、 「高校卒業程度の学力をしっかり保証しますよ」 という意味なんです。 義務教育で留年をさせたら、国家としてお金がかかります。けれどもほかの国では、「留年させてでも、これだけの力はつけさせますよ」と、 国が責任を持って教育を保障 しようというのが常識なんです。 ―― 日本では“わが子が落ちこぼれないように”と親が必死になりますが、ほかの国では異なるんですね。 日本の小中学校は学年制で事実上留年がなく、学力や生活能力が基準に満たなかったとしても、とりあえず進級や卒業を許可してしまいます。 でも、理解できない子にはわかるまで教えるのが本来の教育であり、国の役割です。 さらに、今の日本の状況では、「留年すること」=「落ちこぼれ」のレッテルを貼ることにもつながりかねず、このことがいじめや不登校の原因になってしまうおそれもあります。 こういう、教育の責任は家庭や子どもにあるという考え方自体、本当は間違っているんです。親御さんには、このことをきちんと認識していただき、もっと 国が教育に力を入れていくべき ということにも声を上げてほしいと思います。 ■「教育」の定義がガラリと変わる! ―― そんな状況の中、子育て最前線にいる日本のママたちはどうしたら良いんでしょうか? まずは、いま、世界的にみると 「教育」に対しての定義が変わってきている という状況を知ることですね。その国の教育水準を測る目安になる国際的な学力調査(※3)があるのですが、2018年から新たな内容が加わります。知識・情報を 活用する力 や、広い視野で物事を 分析する力 、多様性を認めて 他人と協力し合う力 、 柔軟な対応能力 などが重視されていく予定です。 日本の場合、「学力が高い」というと、「どれだけ知識をインプットして、それをどれだけ正しくアウトプットできるか?」というイメージが強い。もちろん、それも大事な力です。でも、国際的な視点で考えてみると、今後子どもたちが社会を生き抜く中で求められるのはまったく違う力になってきているんです。ママたちは、そういう状況を知ることから始めましょう。 日本の教育も変わろうとしています。わかりやすい例でいえば、2020年の大学入試の 「センター試験廃止」 。県立の高校入試問題でも、すでに問題の傾向が昨年から変わってきています。 ※3 経済協力開発機構(OECD)が実施した学習到達度調査(PISA=ピザ) ―― 今後は、入試問題でどういったことを問われるようになっているのですか? たとえば、ある課題を出されます。そして、「この課題を、友だち3人で解決するためにどうすればいいのでしょうか?」という問題が出るわけです。 ■「キー・コンピテンシー」というキーワード ―― 「私自身が受けてきた教育」とは違いすぎて、理解が難しいです…。 たしかに、 ママ世代が受けてきた教育とはまったく別物 なので、伝わりづらい感覚だと思います。人は、どうしても「自分が経験したこと」をベースに物事を考えてしまいますからね。 ですから、今日は、これからの教育を理解するためのキーワードを、ひとつお伝えしましょう。それは、 「キー・コンピテンシー」 です。 ―― 「キー・コンピテンシー」って、何ですか? 言葉にして説明するなら、「状況を分析し、他人に論理的に説明し、情報を批判的に捉える能力、さまざまな分野の知識をつなぎ合わせて、問題解決に導いていく能力」です。 いままでの、「テストで簡単に測れる能力」は、どんどん必要なくなっていくんです。もっと詳しい説明は、ぜひ、僕の本を読んでくださいね(笑)! つまり、わが子を 「指示待ち人間でない大人」 にするために、何が必要か? という話です。答えがひとつではないことにどう対応していけるか、どう状況を切り開いていくか、どう問題解決していけるか? そこが問われていくことになるんです。 わが子を「指示待ち人間でない大人」にするために、何が必要なのか? そのためには、これからの入試で問われることを知ることから始める必要があるようです。 次回は、尾木ママが語る 「親は『アクティブ・ラーニング』を勘違いしている」 です。 この記事は2017年2月の取材に基づいて書いています。 ■今回取材にご協力頂いた“尾木ママ”こと尾木直樹さんの著書 『取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと』 尾木直樹 著/講談社 ¥840(税別) 尾木直樹さん プロフィール “尾木ママ”の愛称で親しまれる教育評論家、前法政大学教授。「子育てと教育は“愛とロマン”」をモットーに、ユニークで創造的な教育実践を展開。講演会活動、メディア出演、執筆活動など幅広く活躍中。 尾木ママ オフィシャルブログ:
2017年03月24日テレビでおなじみの “尾木ママ” こと 尾木直樹さん が、新著を出版。タイトルは、 『取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと』 。 この本は、尾木ママ44年間の教員生活の「集大成」だといいます。尾木ママが、ママたちに本気で伝えたいメッセージをうかがいました。 ■もし学校が「危険地帯」になってしまったら ―― 「取り残される日本の教育」というタイトルが、とてもセンセーショナルでした。いま、学校教育の現場は、どうなっているのでしょうか? いじめ、自殺問題 がとても深刻になってきています。2015年度だけでも、いじめの「重大事態」のうち50件で第三者委員会が立ち上げられました。第三者委員会が設置されていないケースもたくさんあるということを考えると、どれだけひどい現状であるかがわかります。 ―― 調査が必要な重大事案だけで50件! かなり深刻ですね。 2月には、愛知県一宮市在住の中学3年生の男子が自殺するという事件が起こりました。この事件は、現在、第三者委員会が調査している最中です(2017年2月取材時現在)。 事件が起こる前に、親御さんは「担任を変えてください」とお願いしていたそうですが、校長先生は受け入れなかったようです。そして事件後の保護者会では、「担任によるいじめと認識している」と、校長がはっきりとそういう言葉を使ったにも関わらず、翌日には一転「いじめにあたるかはわからない」と説明を覆しました。 ―― いまの学校現場は、「学校は聖域。先生は人格者」というわけでもないのでしょうか? もし一宮の事件が、本当に「担任によるいじめ」だったとしたら、そんな状態の学校にわが子を行かせてはいけませんね。 また、いじめではなかったとしても、生徒が学校でケガしたときにすぐに対応しなかったり、プリントを毎回配布させられたりというのは、すでに尋常な教師の対応とは言い難いわけです。 亡くなった男の子は、大変苦しんでいたようですね。まだ詳細な経緯はわかりませんが、親御さんが一生懸命訴えていたのに対応を怠っていたのだとしたら 学校の責任 は大変重いでしょう。 ―― 不登校が増えていると聞きます。子どもが「学校に行きたくない」と言うのであれば、まず、きちんと理由を聞くことが必要ということでしょうか? 正直に言えば、いじめが起こるような学校には、不登校の理由を聞くとか、そういう次元の話ではなくて、登校させちゃいけないと思います。 そんな危険からはためらわずに逃げてほしい。そういう意識を親が持たなければ、いま、 子どもの命 は守れないんです。 ■親がもつべき意識は、「子どもの命を守る」 ―― あまりに衝撃的な話で、びっくりしています。 昨年の12月に、「教育機会確保法」が、参院本会議で可決し成立しました。教育機会確保法とは、「学校に行くことが100%正解なわけじゃなく、休んでもいいし、学校以外の場で学ぶことを応援しますよ」というものです。 こういったことが国会で議論されて、立法化した。時代は、そこまできているんです。でも、そのことを親がわかっていないと、いざという時に子どもを守れない。それが危険なんです。 ―― 時代の変化に、“親の意識”が追いついていないかもしれません。 “危ない学校” には、行かせてはダメ。だって、そんな学校には行けば行くほど、子どもは、教師に傷つけられたり、友だちからいじめられてしまう。そんなときは、緊急避難をしなくちゃ! 崖に向かって、わざわざ歩いていかないでしょ? それと同じことです。 ■ほかの国でいじめが起こったとき、親がすること ―― 「学校に行く」ということが、「崖に向かって歩く」というレベルの話なんですか? いじめ に「これをしたらいじめ」という "形式"はない んです。「ちょっと悪口を言われたり、無視されたりしているぐらいなら大丈夫」とか、「ケガさせられていないから、大丈夫」とか、そういう話ではない。 自分があいさつをしているのに、みんなが返してくれなかったときのつらさって、すごいのよ。 心が深く傷つくというのは、ときには殴られるよりもずっと痛いしつらいんです。こういった状況が、子どもにとっては、「本当に、本当に大変な事態である」ということを、親がきちんと理解してあげないと。 ―― 親としては、「それぐらい、気にしないでがんばれ!」と言ってしまいそうです。 もしそういった事態がほかの国で起こったら、 親は学校に要求を突きつける ところです。 たとえばクラスメイトからいじめを受けて、子どもが学校を休みたいと言っているのであれば、まずは学校を休ませます。さらに、その間の学習の補償は学校がしてくださいという要求を当然の権利として親が出します。 日本の親御さんには、もう少し、世界の状況を把握してほしいと思っています。親御さんご自身が、「いま、 世界の教育 はどうなっているのだろうか? それに比べて日本の教育はどうなのか?」という視点を持ってほしいですね。 「いま、世界の教育はどうなっているのか?」を知らなければ、親はこれからの教育の変化についていけないのかも!? 次回は、尾木ママが語る 「親が受けてきた教育とはガラリと変わる!」 です。 この記事は2017年2月の取材に基づいて書いています。 ■今回取材にご協力頂いた“尾木ママ”こと尾木直樹さんの著書 『取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと』 尾木直樹 著/講談社 ¥840(税別) 尾木直樹さん プロフィール “尾木ママ”の愛称で親しまれる教育評論家、前法政大学教授。「子育てと教育は“愛とロマン”」をモットーに、ユニークで創造的な教育実践を展開。講演会活動、メディア出演、執筆活動など幅広く活躍中。 尾木ママ オフィシャルブログ:
2017年03月23日お金が貯まる夫婦、貯まらない夫婦 貯蓄モードになる正しいステップと間違った貯蓄モード 貯蓄できる鉄板ルール! 最大の"貯め期"を逃すな わが家の家計の問題点を簡単に暴く 使いすぎなもの、削りすぎなもの の続きです。 本連載も今回が最終回。最後は、貯蓄の「守り方」について考えてみよう。 日々、地道に努力して、貯めた貯蓄。けれども、それを取り崩す瞬間というのは、意外と「アッ」という間にやってくる。そして一度、「決壊」するとナシ崩し的に貯金を使ってしまうこともある。 そうならないための工夫を、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子に聞いてみよう。 ■貯蓄を切り崩す理由 結論から先に言えば、貯蓄を切り崩す「原因」となるのは、多くの場合、特別出費だ。 「特別出費とは、毎月支払うわけではないけれど、 1年のどこかで発生するお金 のことです」(畠中さん) 代表的なのは、家を持っている場合にかかる固定資産税。家の修繕費、車を持っている人は毎年自動車税もかかるし、2年(初回は3年)ごとに車検代もかかる。自動車保険や学資保険などを年払いにしている人は、それらの保険料も特別出費にあたる。 このほか、夏や冬の帰省費用。スーツやコートなど、少し値のはる洋服代、パソコンや携帯電話などの購入費用。友達の結婚式のお祝い。1万円を超えるようなプレゼント代も、特別出費のカテゴリに入る。こういった特別出費をボーナスで支払っている人も多いだろう。 これらのお金について考えてみると、「確かに、わが家もそれで貯蓄を切り崩した!」と、思い当たる人も多いのではないだろうか? ■日々の出費よりも大事な家計管理 畠中さんは言う。「日々の出費の管理よりも、 特別出費の管理のほうが、家計管理の面では重要 と言っても過言ではありません」(畠中さん) なぜなら、日々の出費は大きく変動がない家庭が多いのに対し、特別出費の変動は、どの家庭でも、ものすごく波が大きい。 この記事を書いている私自身、畠中さんに教えていただいて、「日々の出費」と「特別出費」を別に記録するようにしてみた。しばらく記録をとると良くわかるが、「日々の出費」は、意外と変動がないものだ(水光熱費は季節変動があるが、年平均にすると大差ない)。ところが、特別出費については、畠中さんの言う通り、アップダウンの波の高さが年度によって異なる。 ■未来の費用が予測できる! 「家計管理の肝は、できるだけ早い段階で 特別出費を管理する習慣を身につけておくこと です」と畠中さんが言うのも、深くうなずける結果となった。 そこでまずは、 Microsoft® Excel®などで「特別出費の一覧表」を作ることくらいから始めてみてはどうだろう? 一覧表にして眺めてみるだけで、特別出費の「わが家の傾向」が見えてくる。 たとえば帰省にどれくらいの費用がかかるかは、昨年のものを参考にすれば、今年度分の費用が予測可能だ。ご祝儀など冠婚葬祭も過去の記録があると参考にしやすい。パソコンやスーツ、コートなども、「自分が気にいるラインは、このくらいの費用だ」ということが、あらかたつかめることだろう。 特別出費の記録をつけると、「未来を予測して、お金の準備をする」ということができるようになってくる。この未来の予測をすることで、将来の収入の変化、妻が仕事を辞めたとき、子どもの教育費といった家計の予算修正に着手しやすくなる。 このメンタリティは、「『お金が足りない』と、慌てて貯蓄を切り崩す」という自転車操業的な気分とは、天と地ほどの差! こんな心持ちで暮らしていれば、「貯蓄に手をつけちゃったし、もう、いいや」という貯蓄の防波堤「決壊」も防げる。 ■特別出費はわが家の歴史 また、特別出費の記録は、わが家の歴史となりうる。大きなお金が動いたということは、大きなイベントがあったということ。それは、そのまま家族の歴史の記録でもあるのだ。こうして歴史を重ねていくことは、地道だけれど、けっして悪い気分ではない。 私自身、結婚して10年間、家計管理の方法がわからず、右往左往していた。その頃は、羅針盤がないまま航海をしているような気分だった。けれども、ひとたび家計管理の方法が身についてくると、航海は安定してくる。足元が固まってくると、気分も落ち着いてくるから不思議だ。 今回の連載が、家庭の「安定航海」のキッカケになるとうれしい。 ■今回取材を受けてくださった畠中雅子さんの著書 『 結婚したら知っておきたいお金のこと (畠中雅子/海竜社)』 (本体1,200円+税) ●畠中雅子 3人の子ども(成人した長女、大学生の長男、高校生の次男)を育ててきたベテラン主婦であり、ファイナンシャルプランナー。数多くの著作を持ち、新聞、雑誌、ウェブに多数の連載を持つ。
2017年02月14日お金が貯まる夫婦、貯まらない夫婦 貯蓄モードになる正しいステップと間違った貯蓄モード 貯蓄できる鉄板ルール! 最大の"貯め期"を逃すな わが家の家計の問題点を簡単に暴く の続きです。 貯蓄ができない家計のどこに問題があるかをチェックするための目安である、「家計バランス表」。この家計バランス表を使うには、いくつか注意するポイントがある。引き続きファイナンシャルプランナーの畠中さんにお話を伺った。 ■こづかいは夫婦あわせて10%まで 「家計バランス表の適正割合には、できるだけ守って欲しいポイントがあります。最初にあげられるのは、夫婦のおこづかいです」(畠中さん) 畠中さんが、「家計バランス表」を考案したのは25年前。家計バランス表の数字は、時代の変化によって若干変化してきている。しかし畠中さんは、「夫婦のこづかい」に関しては、 『手取り月収の10%』 が適正割合だと、一貫してアドバイスしている。 たとえば手取り月収が30万円の家庭なら、夫婦ふたりのおこづかいは合計で3万円。いかがだろうか? 「少なすぎる!?」と、驚いた人も多いのではないだろうか? 「ふたり分のおこづかいが、手取り月収の10%なんて…。そんな金額じゃ、欲しいものが何も買えません!」と、クレームをつけられることもあるそう。けれども、畠中さんは譲らない。 こづかいは毎月出て行ってしまう固定費。だからこの固定費をいかに削減できるかが重要になってくる。畠中さんは、「おこづかいは、できるだけ適正割合に収めて欲しい」と話す。 ■通信費用は、7%以内 ポイントのふたつめは、通信費。今回、掲載した家計バランス表では、通信費を7%に設定しているが、畠中さんが家計バランス表を使ったアドバイスを始めた頃は、3%だったそう。 時代は流れて、通信費には、固定電話代や携帯電話代などのほかに、プロバイダ料も含むようになり、7%で収まりきらないという家庭も少なくないかもしれない。 「通信費もおこづかいと同じ固定費。固定費の支出が多いと、貯蓄がしづらい原因となります。もし7%に収めることが無理な場合には、 ほかの費目にしわ寄せが行く のだと認識しましょう」(畠中さん) この記事を書いている私自身は、通信費を抑えるために、先日、格安スマホへの乗り換えを実施したばかりだ。格安スマホのすみ分けといった概要をネットなどで理解したら、電気量販店で相談してみると良いだろう。機種によっても違いがあるので、店員さんに自分に適したプランを教えてもらうのが近道だ。 ■食費の削りすぎに注意! 使いすぎに注意したい費目がある一方で、 「支出割合が少なすぎる家庭が目立つ」 と畠中さんが心配するのが、食費だ。 たとえば、「家計バランス表」(「 わが家の家計の問題点を簡単に暴く【貯金できる夫婦の家計管理術 Vol.4】 」)をもとに考えてみると、小学生以下の子どもがふたりいる家庭で、手取り月収が30万円ならば、食費はその15%だから、ひと月4万5千円くらいはOKということになる。 しかし畠中さんが家計診断でお会いする家庭では、大人ふたり、子どもふたりの4人家族の食費がひと月3万円前後としている家庭が一般的で、適正割合に比べて、実際に支出割合が低いのが現状だという。 ●食費は健康に直結している支出 「食費の節約に精を出されている家庭に対して『もっと使ってもいいよ』というのも気がひけますが、節約しすぎると、鮮度や産地にこだわれなかったり、安い食材ばかりが食卓に並ぶ可能性があります」(畠中さん) 食費は健康に直結する支出だ。畠中さんは、「高齢期まで健康な体を作るためには栄養バランスも大切ですから、食費の削りすぎは避けた方が良いと思います」とアドバイスする。 ちなみに。この記事を書いている私は育ち盛りの男の子(高校生の長男、小学校6年生の次男、三男の双子)を育てているせいか、食費は月額10万円前後かかっている。 次回は、貯蓄を取り崩しがちな「原因」と、その対策です。 ■今回取材を受けてくださった畠中雅子さんの著書 『 結婚したら知っておきたいお金のこと (畠中雅子/海竜社)』 (本体1,200円+税) ●畠中雅子 3人の子ども(成人した長女、大学生の長男、高校生の次男)を育ててきたベテラン主婦であり、ファイナンシャルプランナー。数多くの著作を持ち、新聞、雑誌、ウェブに多数の連載を持つ。
2017年02月13日お金が貯まる夫婦、貯まらない夫婦 貯蓄モードになる正しいステップと間違った貯蓄モード 貯蓄できる鉄板ルール! 最大の"貯め期"を逃すな の続きです。 「貯蓄の鉄板である先取り貯蓄をしてみて生活ができないのであれば、それは支出内容に問題がある」とファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんは話す。ではその問題点を見つけるにはどうしたらいいのだろうか? ■支出内容の問題点を見つける方法 「生活費が足りないのであれば、支出内容を見直す」。それはあたり前のことのように思える。しかし「食費は一日いくらにしよう」とか「エアコンを使わずにがまんしよう」といった、むやみな節約をしてもお金はいっこうにたまらず、消耗感だけが募る。 また1円、2円といった少額のことで、夫婦間がギスギスしてしまって、『やっぱり、わが家は貯蓄なんて無理』と、早々に諦めてしまう、なんていうことが起こりがちだ。 そこで貯蓄ができない家庭のどこに問題があるかをチェックするために、畠中さんが考案したのが「家計バランス表」だ。これがあることで、 バランスの悪い部分だけにポイントを絞って お金の流れを見直すことができるので、消耗感が少ない。 ■子どもがいる家庭の「家計バランス表」 それでは、いよいよ、「家計バランス表」に登場いただこう。 「 夫婦のお金の透明度を高くするキホンのキ 」で整理をした、「わが家の収入」を100%として、それぞれの費目の割合を割り出してみる。今回は、小学生以下の子どもがふたりいる家庭の場合を参考にしたい。 ●小学生以下の子どもふたりがいる家庭の「家計バランス表」 畠中雅子さん考案「家計バランス表」を参考にWoman excite編集部が作成 ■貯蓄ができていれば問題なし 先取り貯蓄をした残りの金額で、赤字が出ていない家庭の場合は、家計バランス表のように支出割合を変える必要はない。あくまで、家計バランス表は、 貯蓄ができない家計がどこに問題があるか をチェックするための目安であって、家計バランス表にしばられすぎてしまうのは、本末転倒かもしれない。 今回は、小学生以下の子どもがふたりいる家庭を紹介したが、ニンテンドーDSソフトとしても販売されている「ESSEしっかり家計簿DS」では、現在360パターンが提案されている。 次回は、「家計バランス表」で問題点をチェックする方法を紹介する。 ■今回取材を受けてくださった畠中雅子さんの著作 『 結婚したら知っておきたいお金のこと (畠中雅子/海竜社)』(本体1,200円+税) ■ESSEしっかり家計簿DS ●畠中雅子 3人の子ども(成人した長女、大学生の長男、高校生の次男)を育ててきたベテラン主婦であり、ファイナンシャルプランナー。数多くの著作を持ち、新聞、雑誌、ウェブに多数の連載を持つ。
2017年02月12日お金が貯まる夫婦、貯まらない夫婦 貯蓄モードになる正しいステップと間違った貯蓄モード の続きです。 「必ず貯蓄できる鉄板のルールがある」 と話すのは、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さん。 家庭のお財布をひとつにできたら、次にすべきことは? 具体的なステップを、教えてもらおう。 ■ステップ1 「お金の流れ」を把握する 「お金の流れを把握する」。言葉にすると、簡単にできそうな気もするが、実際にやってみると、かなり面倒な作業だと気がつくはず。けれども、面倒な作業だからこそ! 家庭が「若い」うちにこそ、コツをつかんでおくことをおすすめする。 ところで、お金の流れを把握する「コツ」をひとことで言うと? 「お金の流れを把握するコツは、 『月収の支出』と、『ボーナスの支出』 をきちんとわけて記載することです」(畠中さん) 月収から支払う支出は、日々の生活費。ボーナスから支払う支出は、日常を回してくとは別枠のお金、特別出費となる人が多いはずだ。もしボーナスがない人は、日常の支払いと、特別出費を別に記録してみよう。 ●「月収の支出」と「ボーナス支出」の分け方 出典:※結婚したら知っておきたいお金のこと(畠中雅子/海竜社)より抜粋 いちばん避けなければいけないことは、「日々の生活費の 赤字分をボーナスで補填すること 」だと畠中さんは話す。 ■ステップ2 貯蓄の基本は「先取り貯蓄」! 「家計のやりくりの基本は、何といっても 『先取り貯蓄』 です」(畠中さん) 先取り貯蓄とは、給料から天引きで貯めたり、給与振込口座から自動振替で定期預金に預けたりして、生活費に充当する前に、貯蓄に振り分けてしまうシステムのことをいう。家計費としてやりくりした結果、残ったお金を貯めることは、貯蓄の基本ではない。 「先取り貯蓄は、貯蓄の鉄板ルールです。これを守れば、必ず貯蓄できますよ」(畠中さん) それでは、先取貯蓄を決意したとして、目標額は、どれくらいに設定したら良いのだろうか? <毎月の収入からの先取り貯蓄(月収の場合)> ・共働き家庭 15%程度 ・専業主婦家庭 10%程度 <ボーナスからの先取り貯蓄> ・住宅ローン返済がある家庭 20%程度 ・住宅ローン返済がない家庭 40%程度 ボーナスがふたり分支給されている家庭では、夫婦それぞれが20%、もしくは夫婦トータルで40%の貯蓄を目指そう。 ●貯蓄のワンポイントアドバイス 子どもが小さいうちが、 貯蓄をする最大のチャンス だ。 「小学生までの子どもを持つご家庭というのは、家計に占める子ども費の割合が比較的少なく、家計のやりくりに裁量がきく時期といえます」(畠中さん) 子どもが幼稚園に通っている家庭からは、「月謝が高くて、貯蓄なんて難しい」といった声が聞こえてきそうだ。しかし高校生や大学生の子どもがいる家庭からすれば、まだまだ家計のやりくりに裁量がきく時代といえる。 この記事を書いている私自身、教育負担が重い時期(長男が私立高校1年生、双子の弟は私立中学受験を目指す小学校6年生)に差し掛かっている。そこで強く実感することは、「子どもが小学生に入るまでの『大変』は、かわいいものだった」ということだ。 ■ステップ3 支出の見直しを行う 先取り貯蓄をした残りの金額で生活をしてみて、生活費が足りていれば、今のやりくりでOK。 「先取り貯蓄の残りの金額では生活できないのであれば、支出内容に問題があります。そこを見直していきましょう」(畠中さん) 支出内容の問題点を見つけるために、畠中さんが考えたのが「家計バランス表」だ。「家計バランス表」については、次回詳しく説明しよう。 ■今回取材を受けてくださった畠中雅子さんの著書 『 結婚したら知っておきたいお金のこと (畠中雅子/海竜社)』 (本体1,200円+税) ●畠中雅子 3人の子ども(成人した長女、大学生の長男、高校生の次男)を育ててきたベテラン主婦であり、ファイナンシャルプランナー。数多くの著作を持ち、新聞、雑誌、ウェブに多数の連載を持つ。
2017年02月11日お金が貯まる夫婦、貯まらない夫婦 の続きです。 「 貯蓄 ができる家庭とは、お金について透明度が高い家庭です」と話す、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さん。では透明度の高い家庭を作るため、その具体的な 「キホンのキ」 を、教えてもらう。 ■キホンステップ 1:夫婦の手取り収入の把握する 家計管理で最初に行うことは、 「家計にとっての『収入』とは何か?」 を、きちんと整理してみることだ。しかしここが意外と、落とし穴! なぜなら、給料明細からは税金や社会保険料、天引き貯蓄の財形や保険料など引かれているものが多く、何が収入かわかりづらくなっている。 「家計にとっての『収入』とは、税金や社会保険料、組合費など、強制的に引かれているもの(自分ではどうしようもない支出)を除いたお金です」(畠中さん) ●収入として「考えないもの」「考えるもの」 出典:※結婚したら知っておきたいお金のこと(畠中雅子/海竜社)より抜粋 ■キホンステップ 2:夫婦のお金はひとつにまとめる! 最近は共働き家庭が増えているので、共働きの家庭の場合で考えてみよう。共働きの場合は、「キホンステップ1」で整理した手取り年収を合算する。合算した金額が、その家庭の「月の収入」となる。 「残業代や特別手当などによって、月の収入に変動がある場合は、 少なめの金額をベースに収入を考え 、収入が多い月の分は、とりあえず予備費としてプールするのが理想です」(畠中さん) <夫婦の手取り収入を正確に把握する> 出典:※結婚したら知っておきたいお金のこと(畠中雅子/海竜社)より抜粋 家庭の「月の収入」がわかったら、「家計のお財布はひとつ」にしてみよう。家計のお財布をひとつにすると、家計全体のお金の流れが見えやすくなるからだ。「お金の流れ」については、次回詳しく説明しよう。 ■キホンステップ 3:夫婦の価値観の違いを確認する 「収入を1本化するのとあわせて、お金の使い方についても、 お互いの価値観を確認しておく ことをおすすめします」(畠中さん) ひとたび「貯蓄しよう!」モードに切り替わると、「夫婦でお互いの趣味や行動にダメ出し」をしたくなってくる。この行動は貯蓄に結びつくのだろうか。 「大好きなことを我慢するのは逆効果です。価値観が違うカップルは、価値観をすりあわせる必要はなく、価値観の違いを確認しあっておくことをおすすめします」(畠中さん) たとえば、「私は洋服が大好きなので、被服費は削れないけれど、外食の節約ならがんばれる」「僕は、サッカー観戦には定期的に行きたい。その代わり、飲み会は月1回にする」といった感じ。 「譲れないものは何か? そのかわりに譲れるものは何か?」を、夫婦でキッチリ向き会って話しあうことが大切なのだ。 次回は、家庭の財布をひとつにできたら、次にすべき具体的なステップを教えてもらおう。必ず貯蓄できる! 「貯蓄の鉄板ルール」もご紹介! ■今回取材を受けてくださった畠中雅子さんの著書 『 結婚したら知っておきたいお金のこと (畠中雅子/海竜社)』 ●畠中雅子 3人の子ども(成人した長女、大学生の長男、高校生の次男)を育ててきたベテラン主婦であり、ファイナンシャルプランナー。数多くの著作を持ち、新聞、雑誌、ウェブに多数の連載を持つ。
2017年02月10日突然ですが、あなたの家は、今、貯蓄をしていますか? 「備えあれば憂いなし」ではないが、幸せな家庭を築くためには、やはり貯蓄は大切。 「『結婚してよかったなぁ』と末永く感じるためには、 お金でもめない家庭 を作るのがポイントです」と語るのは、ファイナンシャルプランナーの 畠中雅子 さん。 畠中さんは、3人の子ども(成人した長女、大学生の長男、高校生の次男)を育ててきたベテラン主婦でもある。そんな畠中さんに、「アットホームな家庭を作るために確実な方法は、お金でもめないルール作り」と言われると、とても説得力がある。 「家庭の足固めは、家計から」 。これが今回の連載のキーワードとなる。 ■お金について話しあえるカップル 「たくさんのカップルの家計診断をしてきて感じるのは、 お金について話しあえる カップルは、貯蓄をしやすい特徴があること」(畠中さん)。 そして、ふだんからお金の話をしているカップルは、夫婦仲もいいケースが目立つという。 「夫婦ゲンカの多くは、お金の問題です(本当ですよ!)。お金のことを夫婦で共有することは、穏やかな家庭づくりに不可欠なことです」(畠中さん)。 畠中さんが家計診断した数千組の中で、生活費を 一本化 している家庭は貯蓄額が増えているのに対し、それぞれに生活費を 出し合う タイプの家庭は、 貯蓄の増え方に波がある ケースが目立っていたそう。 お金でもめない夫婦、ようするに貯蓄ができる家庭の共通の特徴は、 『お金について透明度が高いこと』 と、畠中さんは話す。 「これは、数多くの家計診断をしてきた中で、強く感じる現実です」(畠中さん) ■「教育費」負担が重くなる前にすること たとえどのようなお金の管理方法であったとしても、 子どもが小さい頃 は、貯蓄ができる家庭は多いものだ。しかし子どもの教育費の負担が重い時期にさしかかる頃(第一子が小学校高学年頃)から、貯蓄ができにくくなってくる。 教育費は、減らしにくい支出。だからこそ、夫婦の力を合わせてほかの支出を抑える必要性がある。 「教育費負担が重くなってから家計管理の方法を変えようとしても、長年の習慣を変えるのは大変です。ですから、子どもが小さいうちに、 夫婦のお金のルール を決めてしまうのがおすすめです」(畠中さん)。 早いうちにルールを決めて、習慣にしてしまえば、あとは家計の状況が変わるごとに夫婦で相談して家計のバランスを整えていけばいいからだ。 「協力体制のない家計は、対策も考えにくくなります。早めに家計を透明化すると同時に、夫婦でお金のことを相談できる体制を作って欲しいと切に願っています」(畠中さん) 次回は、お金について透明度が高い家庭を作るための具体的な「キホンのキ」を教えてもらう。 ■今回取材を受けてくださった畠中雅子さんの著書 『 結婚したら知っておきたいお金のこと (畠中雅子/海竜社)』 (本体1,200円+税) ●畠中雅子 3人の子ども(成人した長女、大学生の長男、高校生の次男)を育ててきたベテラン主婦であり、ファイナンシャルプランナー。数多くの著作を持ち、新聞、雑誌、ウェブに多数の連載を持つ。
2017年02月09日『ママが「しない」子育て』の特集も最終回。最後は、「子育て環境をおろそかにしない」ということから、「人を育てる」ことについて考えたい。 育児の「不要なもの」を捨てるとは 「ほかの子と比べたくなる」気持ちに悩まない ママの『こうすればよかった』を投影しない ママの安心感のために、先回り教育をしない 「○○しなくちゃ!」にとらわれない の続きです。 しない11:あいまいな言葉は使わない 「あと伸びしている子の特徴は何ですか? と問われれば、『とにかく 家庭の言葉がしっかりしている ことです』と、答えます。これに尽きるからです」と、話すのは「 花まる学習会 」代表の高濱正伸さん。 勉強は、その子の持っている言葉の力によって差が出る。子どもたちの将来を考えたときに、入試の突破はもちろんだが、すべて言葉の勝負だ。 筆者が言葉を扱う仕事(ライター業)をしていて思うのは、言葉には、「厳密で正確に使う」と、「豊かに魅力的に使う」という2つの方向性があるということ。きっちりと使う言葉と、魅力的な言葉。 「『なぜだかこの人が言うことって引き込まれるよね』と思わせることが、生きていくうえで大事なのです。その ことばの力はすべて家庭の文化の中ではぐくまれていきます。 」(高濱さん) しない12:便利な道具を与えすぎない 子育てでは、便利な道具を与えて、「快適」にしすぎないことも大切なことだという。 「 『理不尽』や『不自由』 は重要かつ絶対に必要な要素です」(高濱さん) これは、現代の「快適」な環境の中で過ごしてしまっている親としては難しい状況だ。たとえば、調べ物にしても、スマートフォンで検索すれば、なんでもわかる時代なのだから。 「紙の辞書で調べものを楽しむ姿勢を親が見せてあげることは、とても大切です。よく『電子辞書、紙の辞書、どちらがいいですか?』と聞かれますが、それぞれの良さがあるので、うまく使い分けることが一番でしょう」(高濱さん) しない13:夫との話し合いを放棄しない 「『うちの子、私の話を最後まで聞かないんです』。そう悩むママに限って、夫の話を最後まで聞かずに怒ったり、あきらめたり、嘆いたりしているケースがあるんですよ」(高濱さん)。 「夫との話し合いを放棄しない」これはママにとっては耳が痛い言葉かもしれない。ママにしてみれば、ただ話を聞いてほしかっただけ。でも夫は、論点を洗い出し、結論を出そうとする。そうなるとママは話をする気持ちがうせてしまうのだ。 けれども、夫婦間のやりとりこそ、子どもにとって、一番身近な 「人と人とのコミュニケーションを見て考える場」 なのではないだろうか? 「皮膚感覚として、いま、目の前に生きている人との触れ合いがとても大切ということは伝えつづけたい部分です。そして、一番身近な 両親が生身の人間同士でコミュニケ―ションをとる姿 は、子どものこれからの成長において非常に大きな影響力を持つのです」(高濱さん) 地域社会が崩壊して、核家族が増えている。また急速に発展するインターネット。そのような時代でコミュニケーション能力を磨き、生き抜いていかなければならない子どもたち。 「人とのコミュニケーション能力をどうやって獲得するか? という課題は、これからの教育で、もっとも問われていく問題のひとつだと思います」(高濱さん) 6本に渡ってお送りした『ママが「しない」子育て』特集も、今回が最終回。高濱さんにお話を伺うと、「思い当たるフシ」がありすぎて胃が痛くなる。 「しない」という選択を「する」 。その選択をするために、まずは「思い当たるフシ」と、きちん向きあうところから始めてみようか。 ■今回取材を受けてくださった高濱正伸さんの著書 『 「しない」子育て」 (花まる学習会代表 高濱正伸/KKベストセラーズ)』 (本体1,250円+税) ●高濱正伸 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。 1959年熊本県人吉市生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。算数オリンピック委員会理事。 保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30,000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。「情熱大陸」「カンブリア宮殿」など多数メディア出演もしている。ロングセラー『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『小3までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『算数脳なぞぺー』など、著書多数。2016年7月からニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカーとして活躍中。
2017年01月07日育児の「不要なもの」を捨てるとは 「ほかの子と比べたくなる」気持ちに悩まない ママの『こうすればよかった』を投影しない ママの安心感のために、先回り教育をしない の続きです。 子育てをしていると、「大人」vs.「子ども」となりがち。そんな構図ではなく、親子関係から見直してみませんか? しない7:「上手にほめられない」ことを悩まない 「子どもは、ほめて育てる」という言葉もよく育児書で使われるフレーズだ。しかし「ほめてばかりいると、わがままを言いたい放題にならないか心配」「ほめることと甘やかすことの違いはわからない」と、ママは上手にほめられないことで、また矛盾だらけな気分になる。 「花まる学習会の授業では、どの学年に対しても、 ほめるタイミング を逃さず声をかけるということを大切にしています。」と話すのは、「 花まる学習会 」代表の高濱正伸さん。 でも、ほめるタイミングはとても難しい。そしてそもそも何をほめたらいいのだろうか。 「ほめるというと難しく考えてしまいがちですが、その子の行動を認めて言語化してあげるだけでいいんですよ(高濱さん)」 「テストで百点とれるなんて、さすが!」「一位になってすごいね!」などの大きな成果に対してでなくても構いません。「計算がスムーズにできるようになったね」「前よりも字が丁寧に書けるようになったね」など、その子の 成長点を認めてあげる だけで、子どもは「見てもらえている」と感じることができるのです。 高濱さんの言葉で、「ほめる」ということは、もっとシンプルに考えればよいことなのだと気がつかされる。 しない8:無理してほめる言葉を探さない 『ほめることは大切』と書くと、まじめでがんばり屋のママは、「ともかくほめなくては!」と思ってしまうことも多いそう。 「ママというのは『ほめなくちゃ』というように、すぐに 『○○しなくちゃ』、にとらわれてしまいます。 でも無理してほめようとすると子どもは必ず、この無理をしている匂いに感づきます」(高濱さん) つまり、ママが無理に探してほめる言葉は逆効果ということ。それを知っておくことも、すごく大切なことかもしれない。 しない9:ネチネチ叱らない ほめ方と同じでママが悩むのが叱り方。 子どもは、叱られても1時間後にはケロっと忘れているから、母としては、「もう忘れたの?」という気持ちに。だが子どもにしてみると、「なぜかわからないけれどいつも怒っているママ」というイメージばかりが固まってしまう。 「叱り方の3原則は、 『厳しく・短く・あとを引かず』 です。また、子どもは『忘れっぽい』生きものと知り、その場で短く、やってしまったことに対してだけ叱る」(高濱先生) しない10:ほかの子のどもの悪口を言わない 「ほめる」の反対評価である「けなす」。人の悪口についても考えてみよう。 子どもしかいないからと思って、ほかの子どもの悪口を言ってしまう場合もあるからだ。悪口とまではいかなくても、「あの子は○○よねー」などうわさ話のように子どもに伝えていることもある。 「 ママが言ったことは子どもにとっては絶対 です。だから子どもが自分で判断する前に、『あの子は○○な子』と決めつけて接するようになってしまいます。これでは、子どもが生身のコミュニケ―ションから学ぶ機会を奪ってしまうことになります。」(高濱さん) 人とのつきあい方にマニュアルは存在しない。子ども時代からいろいろな経験を積んできた子、人間関係でもまれてきた子は、「やはり強い」と高濱さんは話す。 まわりの情報に流されずに最終的に自分で判断する力は、ママがほかの子のうわさ話をしないことから。そんな簡単なことがスタートラインなのだ。 次回は、最終回『夫との話し合いをあきらめない』の話です。 ■今回取材を受けてくださった高濱正伸さんの著書 『 「しない」子育て」 (花まる学習会代表 高濱正伸/KKベストセラーズ)』 (本体1,250円+税) ●高濱正伸 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。 1959年熊本県人吉市生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。算数オリンピック委員会理事。 保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30,000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。「情熱大陸」「カンブリア宮殿」など多数メディア出演もしている。ロングセラー『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『小3までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『算数脳なぞぺー』など、著書多数。2016年7月からニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカーとして活躍中。
2017年01月06日育児の「不要なもの」を捨てるとは 「ほかの子と比べたくなる」気持ちに悩まない ママの『こうすればよかった』を投影しない の続きです。 心配で、子どものことを囲いこみたくなるママ。そんなママの奥底にある気持ちについて、「 花まる学習会 」代表の高濱正伸さんに伺った。 しない4:「心配する生きものである」自分を否定しない 「 ママとは心配する生きもの です。子どものことが心配で、心配でたまらないというのは、ママになって初めてわかる感情なのかもしれませんね」と、高濱さん。 「心配する」生きものであるなら、「心配しない」というのは無理。だからこそ、自分を客観視した上で、「ママとは、心配事が次々に出てくるものだ」と心に留めておくだけでも、気持ちが少し楽になるかもしれない。 「『自分が心配し過ぎているな』と思ったら、信頼できる誰かに、その心配事を話してみてください。『それは、心配しすぎだよー』という周りからのひとことで、すっと心が軽くなれば、また新しい一日を迎えられます」(高濱さん) しない5:「いやなこと」を完全ブロックしない 「子どもが心配で大事に育てるあまりに、 安全な場所に囲いすぎ て、反対に子どもを弱らせてしまうこともあるんですよ」という高濱さんの言葉に、この記事を書いている私は、ドキっとする。 次男に発達障害がある せいか、どうしても、息子を安全な場に囲い込みたくなるからだ。 親から見るととてもつらいことで、できるならば避けて通らせてあげたい経験はたくさんある。なぜなら、子どもが大変な思いをしているのを見るのが悲しくならないママはいないから。 「でも、その経験がその子の将来のためになります。子ども時代にいやな経験をひととおりしているからこそ、大人になったときに人の痛みを理解することができるようになるし、 逆境でも『やるしかない』 と思え、耐性がつくのです。少しのことではめげない心の強さを身につけることができます」(高濱さん) しない6:親の安心感のためだけに、先回りの教育をしない 子どもを「いやなこと」から回避させたいという私の気持ちは、相当強いものだ。痛い思いはさせたくないし、失敗だってしてほしくない。 「その思いが強いと、次々と先回りをして、ママがすべての準備を整えてしまいがち。そうすると、どんどん、 その子の考える力は奪われてしまいます 」(高濱さん) 高濱さんは、続ける。 「たとえば、人間関係。乱暴者もいるし、意地悪な人もいる。立派なことを言いすぎてしまう人もいる。 教科書どおりが通用しない環境 で、生身の人間のコミュニケーションを、子ども時代にたくさん経験しておかなくてはいけない。ところが親が理想だけで『そういうことをすると嫌われるよ』と常に先回りしていると、子どもの試行錯誤の経験を奪ってしまいます」(高濱さん)。 「先回りするのは、親が安心したいから」。この部分について、もうひとつ、高濱さんが警告を鳴らすのが 先回りしすぎる教育 について。 「わが子がほかの子よりも先にいると、 『親の自分が安心できる』 というのが落とし穴です」(高濱さん) 小学校6年生になったら並ぶ力であるにも関わらず、少しでも早く身につけた方が親は安心するというだけで、幼児期に詰め込みすぎてしまう場合がよくあるという。 「結果、子どもは、いろいろなことに対して伸びるはずの適切な時期を失ってしまうのです」(高濱さん) 子ども自身も、最初のうちは「ほかの子よりできる」ことが自慢で勉強が得意と思っているかもしれない。しかしそれは表面的にできるようになっただけ。しだいに 「あと伸び」 してきた子どもたちに抜かされてしまい、そこで自信を失ってしまう場合もあるそうだ。 「先回りの教育を与えていると、親はまったく悪気なく、一番大切なことを見落としてしまうこともあるのです」(高濱さん) 次回は、『「○○しなくちゃ!」にとらわれない』の話です。 ■今回取材を受けてくださった高濱正伸さんの著書 『 「しない」子育て」 (花まる学習会代表 高濱正伸/KKベストセラーズ)』 (本体1,250円+税) ●高濱正伸 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。 1959年熊本県人吉市生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。算数オリンピック委員会理事。 保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30,000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。「情熱大陸」「カンブリア宮殿」など多数メディア出演もしている。ロングセラー『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『小3までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『算数脳なぞぺー』など、著書多数。2016年7月からニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカーとして活躍中。
2017年01月05日育児の「不要なもの」を捨てるとは 「ほかの子と比べたくなる」気持ちに悩まない の続きです。 「子育てをしていくうえでの選択に、『正解』はない」と話すのは、「 花まる学習会 」代表の高濱正伸さん。マニュアル世代の私たちは、ついつい 「わかりやすい正解」 がほしくなってしまう。けれど、それを求めること自体が、自分を苦しめていることになっているのかもしない。 ■しない1:子育てを、『がんばる』必要はない 「私の講演会にいらしてくださったママが、『言われたことを明日から、がんばってみます』とおっしゃる。私は、この『がんばります』という言葉は、こと子育てにおいては、少しあやうい言葉だと感じています」と、高濱さん。 これまでの人生で、勉強、仕事と成果を出してきた女性ほど、ママになったときに「ちゃんとやろう」と、完璧主義になる傾向があるという。 「子育てって、『がんばる』必要は、ないんですよ」(高濱さん) がんばる必要がない!? それをうまくイメージできないママも多いのでは? なぜならこの記事を書いている私自身が、いまそんな心境だ。 「『がんばらない』というのは、だらしなくするということではなく、ママ自身が安心でき、ホッとできる場所を持つことがポイントです。 『ママの心の安定が一番大事』 。これは憲法みたいに、社会のルールにしてほしいですね」(高濱さん) ■しない2:子育てに「正解」を求めない 「『私の子育て、間違えていませんか?』『私、あんなことを言わなければよかった』。これは、私がよく聞くフレーズです」(高濱さん) 間違えていた、失敗した、と思ってしまうということは、心のどこかで「あのとき、もっとこうしていればよかったかもしれない」という思いがあるから。 「子育てに正解はありません。まずは、ママが 『正解などない』 ということを、しっかり心に刻むことが大切です」(高濱さん) 「親戚の子が、中学受験で成功して、有名私立大学に行った」という話を聞けば、「中学受験の成功=有名私立大学への合格」という方程式を思い浮かべてしまうのが親心。しかし、どんなに方程式にみえたとしても、それは成功事例のひとつでしかない。同じような選択をして、わが子が同じように成長していくという保証はどこにもないのだから。 「親として、自分が『正解』や『方程式』を求めている、と客観的にとらえることができたら、その裏に 自分自身のコンプレックス が隠れていないかも考えてみましょう。親自身が『こうすればよかった』と気に病んでいることこそ、子どもに投影されがちだからです」(高濱さん)。 ■しない3:悩んだときは「自分は大丈夫」と思わない 「自分自身が『こうすればよかった』と気に病んでいることこそ、子どもに投影されがち」という言葉に、私はドキッとした。なぜなら私は中学校時代、荒れた学校に通い、ヤンキー(死語!?)の人たちに、目をつけられないよう、息を潜めるように過ごした経験がある。同じ思いを息子にさせたくなくて、おっとりとした校風の私立中学に進学させたいと考えているからだ。 「子育てのことを『ひとりで抱え込もう』と思っているママは、あまりいないと思います。しかし、 『私は大丈夫』 と思っているママでも、じつはひとりでなにかしらを抱え込んでいる、というケースが本当に多いです」(高濱さん) 「第一志望校がダメだったら、公立中学でもまれるのもアリだろう」と言う夫を、「この子のこと、全然わかっていない」としか思えなくなっていた私。そこには「この子のためにベストを尽くせるのは私しかいない」という気持ちも確かにあったのだ。 けれど、そういう気持ちこそが危ないのかもしれない。いま一度、夫を始めとする周囲と対話をしてみようと思った。それでも心配で、きっと子どものことを囲いこみたくなってしまう。 次回は、『ママの安心感のために、先回り教育をしない』という話です。 ■今回取材を受けてくださった高濱正伸さんの著書 『 「しない」子育て」 (花まる学習会代表 高濱正伸/KKベストセラーズ)』 (本体1,250円+税) ●高濱正伸 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。 1959年熊本県人吉市生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。算数オリンピック委員会理事。 保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30,000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。「情熱大陸」「カンブリア宮殿」など多数メディア出演もしている。ロングセラー『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『小3までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『算数脳なぞぺー』など、著書多数。2016年7月からニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカーとして活躍中。
2017年01月04日育児の「不要なもの」を捨てるとは の続きです。 子育てをしていると、毎日がいっぱいいっぱい! それは、いちにちの中に「○○しなければならない」が、たくさんあるから。「育児で断捨離を!」と話す「 花まる学習会 」代表の高濱正伸さんに、「しない」子育てを選ぶ前に、ママに知っておいてほしいことを伺った。 ■比べたくなる気持ち 育児書を読むと、「『子どもをほかの子と比較してはいけない』という項目が必ず出てきますよね。それは裏を返せば、人とは必ず比べてしまう生きものだということです」(高濱さん) ママは、子どものことを一番に考えているからこそ、どうしても周りと比べてしまう。だからといって、「ほかの子どもと比較してはいけない」という言葉を真に受けて、「比べてはいけない、比べてはいけない」と唱えながら子育てするのは、とても大変! 「 『比べてみたくなる気持ちは、不安と一緒で自然にこみあげてきてしまうもの』 。こう覚えておくことだけで心が軽くなるでしょう」(高濱さん) つまり、「比べない、ということは非常に難しい技術だ」と知っておくこと。大切なことは、「比べていい」というわけではないと理解し、もしも比べてしまった場合でも、言葉や視線に表さないようにすることだ。 ■本当に伸びるタイミングはいつ? 「子育てを一生懸命がんばるママがよく陥りがちなのが、 『子どもにすぐに結果を求めてしまう』 ことです」(高濱さん) たとえば、同じ年長クラスで、字をしっかり書いている子がいると、「うちの子は、まだ字がじょうずに書けない。練習して書けるようにさせなくちゃ!」と、ママが焦って使命感にかられてしまう。 「でも、その結果、これから先の未来に伸びていく可能性があった『文字を書くって楽しいな』という気持ちが摘み取られて、字を書くことが大嫌いになってしまう子もいます」(高濱さん) その子が本当に伸びるタイミングを見極めることが大切なのだ。 「心配になって、口出してしまいそうになったら、『大人になったとき、 わが子にどうなってほしいか 』をイメージして見守りましょう。そうすると、いつもより少しだけ長いスパンの視野を持つことができて、気持ちが楽になりますよ」(高濱さん)。 ■「みんなやっていますよ」に流されない しかし「ほかのみんなは、どうしているのだろう?」と周りが気になってしまう。 「周りと比べて、そちらが気になってしまうのは、 『わが家の方針』 がない場合が多いです」(高濱さん) たとえば、「わが家は、小学校のうちは友達と遊ぶことを大切にする」という方針が固まっていれば、習い事や塾選びも、わりとシンプルに決めることができるのではないだろうか? 「子育てに、『正解』はないのです。それよりも、 何を大切にして育てるか? 夫婦の方針や、生き方に対する哲学のようなもののほうが、ずっと重要になってきます。それを何度も、夫婦や親子間で確認しあっておくと、いざというときに流されずにすみますし、その積み重ねが家族の絆になります」(高濱さん) 「する」「しなければ!」にフォーカスするのではなく、 「しない」にフォーカス することで、生き方の対しての哲学が見えてくるのかもしれない。 次回からは、具体的に、どんなことを「しない」のかを考えていきたい。 ■今回取材を受けてくださった高濱正伸さんの著書 『 「しない」子育て」 (花まる学習会代表 高濱正伸/KKベストセラーズ)』 (本体1,250円+税) ●高濱正伸 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。 1959年熊本県人吉市生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。算数オリンピック委員会理事。 保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30,000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。「情熱大陸」「カンブリア宮殿」など多数メディア出演もしている。ロングセラー『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『小3までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『算数脳なぞぺー』など、著書多数。2016年7月からニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカーとして活躍中。
2017年01月03日