「キレないようにしよう」では直らない、キレるコーチが感情を抑えられない理由
自分たちは叩かれて立派に育った、という自負があります。逆にほめて伸ばすだけでこの子達はちゃんと育つのか?と不安に思っているようです。なぜなら、ほめて伸ばされて立派に育った大人をまだ大量に見ていないからです。
■教え子は久保建英レベルじゃないから怒らないと伸びない?
(写真は少年サッカーのイメージです)
例えば、久保建英選手は怒られて育っていないというのはみなさん十分わかっている。でも、いま目の前にいる自分が教える選手は久保君のような才能はないから、怒ってやらせないと伸びないと思っていないでしょうか。
ぜひ今までとは違う指導の仕方を探してほしいと思います。が、そのためには哲学を持たなくてはいけません。
なぜ自分はサッカーコーチをしているのか。
そこを自問自答してほしいと思います。加えて、これから、どんなサッカー選手を育てるべきかを考えます。
そう考えると「自己決定できる選手」「自分磨きをできる選手」「主体的に取り組める選手」といった姿がイメージできます。
であれば、暴言を吐くコーチのもとで、そんな選手が育つでしょうか。コーチが怖くて、みんな委縮している。怖いから走る。それは外発的な動機付けなので、確かな成長にはつながりません。
子育ても同じですね。
「○○ママの子育て」といった書籍は多いですが、それも方法論です。だれかが成功したやり方を真似しようとしても対象になる子どもは違う人物です。
「自分はどう育てたいか」「どんな大人になってほしいか」といった大義が抜けていては、うまくいきません。
ぜひ「大義は何か」を突き詰めてください。考え終わったときは、怒ることに意味がないことに気づくでしょう。
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高橋正紀(たかはし・まさのり)
1963年、神奈川県出身。筑波大学体育専門学群ではサッカー部。同大学大学院でスポーツ哲学を専攻。
ドイツ国立ケルンスポーツ大学大学院留学中に考察を開始した「スポーツマンのこころ」の有効性をスポーツ精神医学領域の研究で実証し、医学博士号を取得。岐阜協立大学経営学部教授及び副学長を務めながら、講演等を継続。聴講者はのべ5万人に及ぶ。同大サッカー部総監督でもあり、Jリーガーを輩出している。
Jリーグマッチコミッショナー、岐阜県サッカー協会インストラクター、NPO法人バルシューレジャパン理事等を務める。主な資格は、日本サッカー協会公認A級コーチ、レクリエーションインストラクター、障害者スポーツ指導員中級など。