2015年11月17日 20:00
青山七恵の新作、人生をもがく30代女性が見た絶望と希望
あおやま・ななえ作家。1983年、埼玉県生まれ。2005年に「窓の灯」で文藝賞を受賞してデビュー。’07年に「ひとり日和」で芥川賞、’09年「かけら」で川端康成文学賞を受賞。
「連載のお話をいただいた頃、私も30歳くらいだったんです。学生時代からの友達も結婚していたりいなかったり、子供がいたりいなかったりで、でもそれぞれに悩みや苦しさがあるんだなと感じていた時期でした。
それで、自分と同世代の女性が読んで元気になる小説を書いてみたい、と思ったんです」と、青山七恵さん。
そんな新作『繭』は女性たちがもがいた末に見えてくる景色を丁寧に描く物語。美容室を経営する舞は、専業主夫の夫に暴力を振るってしまう。旅行代理店に勤める希子は独身で、たまにやって来る恋人を待つ身だ。同じマンションに住む2人は、少しずつ関わっていく。
「2人の生き方はまったく違いますが、どちらも現実に適応しているようでいて理想にとらわれているところが同じ。
舞は男女が対等である夫婦像に、希子は生身の恋人ではなく、頭の中で作り上げた幻想の恋にとらわれている。それが自分たちを苦しめていると気づいていないんです」
舞の夫ミスミの存在も際立つ。