僕がデビューしたのは‘60年代だったんだけど、もともとはね、広告会社でカメラマンをやってたの。
――あの、なんで写真をやろうと思われたんでしょう…?
篠山:そこから?!あのね、僕は新宿のお寺の次男でね。僕が高校生の時は経済成長の真っ盛りで、いい大学に入って銀行とかに入るのが、良い人生とされてたの。僕もそういうふうに生きるんだろうなって思って、中学高校を過ごしてて。まあ、主体性のない少年だったんだろうね。でも大学受験に失敗しちゃって。その時に、予備校の広告でも見ようと新聞を開いたら、まだ募集してる大学の広告が出ててね。そこに、“写真学科”って文字を見つけて、“あ、ここ行こう”って、直感で思ったんだよ。
写真を仕事にしようって。写真部に入っていたわけでも、カメラを持ってたわけでもないのに。それで大学に入って、3年の時になぜか広告会社の入社試験受けたら、受かっちゃったもんで、写真家になったというわけ。――まったくもって、偶然だったわけですね?
篠山:そうそうそう。そこで広告写真をいろいろ撮りながら、自分が撮りたいと思う作品も作って…ってやってるうちに、いろいろな雑誌からお声がかかるようになって、雑誌でも写真を撮るようになった。