2022年7月20日 20:00
山内マリコの“運命のツレ”「彼女に出会う以前と以後で、世界の見え方が変わった」
“バディ”はいつの時代も憧れの関係性ではあるけれど、なぜいま改めてバディなのか――。女性同士のゆるやかな連帯を描く作家の山内マリコさんがツレを求める気分を解き明かします。
「ツレ!」文・山内マリコ(作家)
わたしにとって運命のツレは、大学時代の親友Aちゃん。彼女に出会う以前と以後で、大袈裟に言うなら世界の見え方が変わった……そんな存在です。それまで誰とも共有できなかった自意識にまつわるうじうじした醜い気持ちも、好きなものを心ゆくまで熱く語り合えるよろこびも、Aちゃんとだから分かち合うことができました。たった一人でいいのです。たった一人、この世に自分を全肯定してくれるような存在がいるだけで、十九歳のわたしは顔を上げて外を歩けるようになり、自分のことが好きになっていきました。
そういう効能は、一般には恋愛や恋人によってもたらされるものと思われていたけれど、わたしの場合、そうではなかった。
友情がスパークする瞬間をはじめて味わったことが、自分の中のエポックメイキングな出来事となりました。
このことを描きたい!
シスターフッド(女同士の連帯)という言葉を知ったのはそれからずっとあとのことですが、作家になったわたしはあちこちで、女同士の友情は恋愛にも勝るほど素晴らしいのだと、Aちゃんが「美化しすぎだよお」