2016年3月30日 12:00
4月に開設する東京メトロの総合研修訓練センターに潜入[前編]
鉄道に限らず、運輸業では異常事態や非常事態に備えた訓練が欠かせない。訓練で実際にさまざまな想定事態を経験しておくことが、「本番」に直面した時に役立つことは、東日本大震災や阪神淡路大震災におけるあまたの事例を見てみれば、容易に理解できる。また、異常事態や非常事態でなくても、車両・設備・各種システムについて正しい理解と取り扱いができるようにすることも、もちろん重要である。
東京地下鉄(以下、東京メトロ)は東京都江東区の新木場に、「総合研修訓練センター」という施設を開設、2016年4月から稼働を開始する。以前から、中野富士見町などに研修・訓練のための施設があったが、それらを集約するとともに設備を大幅に充実させたもので、投じられた費用は約200億円という。今回、取材の機会を得たので、この施設の詳細を紹介したい。
○地下鉄に特有の難しさ
言うまでもないことだが、東京メトロが運行している路線は「地下鉄」であり、その大半は地下のトンネルを通っている。地下鉄のトンネルは都市部の地下を通っているものだから、単に距離が長いというだけでなく、特有の注意点がある。
例えば、地震や停電、車両の不具合といった事態が起きれば、乗客を降ろしてトンネルを通り、最寄りの駅まで誘導しなければならない。