戦争という時代にも笑いを生み出そうとした人間の喜劇「円生と志ん生」
では、井上ひさしさんならではの磨きあげた言葉が光ります。
耳に心地よく流れていくテンポのいいセリフの中に、戦争の愚かさ虚しさが覗き、胸を突く。
かと思えば状況を逆手にとって笑わせ、笑いの中に良くも悪くも、働く言葉の力が語られる。
観客を一時も飽きさせません。
「めくりが返り出囃子ひびき客の拍手で座布団にすわりことばのわかる人たちの前で思い切り落語を語りたい!」
随所にはさまれる軽快な歌も聴きどころ。
意外かもしれませんが、井上ひさしさんのお芝居は、ちょいと小粋な和製ミュージカルの趣があるのです。
歌に芝居にと舞台を彩るのは、円生と志ん生を取り巻く女性たち。
あるときは旅館の女将、あるときは娼妓、あるときは教師、あるときは名もない母親、あるときは修道女と、場面ごとに4人の女優が20役を演じ分け、当時の大連の様子を描き出すという趣向が凝らされています。
左から池谷のぶえ、太田緑ロランス、ラサール石井、大森博史、大空ゆうひ、前田亜季(撮影:谷古宇正彦)
左からラサール石井、池谷のぶえ、大森博史(撮影:谷古宇正彦)
左から太田緑ロランス、前田亜季、ラサール石井、池谷のぶえ、大森博史、大空ゆうひ(撮影:谷古宇正彦)