現代に藤原定家の歌を伝える「冷泉家」女将が語る邸宅売却危機
《秘蔵800年、冷泉家の蔵開く》
さらに、別の面には《開かれた“文書の正倉院”》という見出しの関連記事や、学者の「国宝級……こんなに」という驚きの声も紹介されている。
「初めは「名家が潰れかかっている」という単純明快な記事にするつもりだった」
こう話すのは、その時、取材にあたった記者で、元朝日新聞編集委員の天野幸弘さん(73)。
「事前に多くの学者から冷泉家のことを教えられていましたが、定家が直筆で書いた日記『明月記』など予想をはるかに上回る国宝級の文化遺産が数多く確認され、専門家も圧倒されていました。傷みが激しい屋敷にあって、蔵の中だけはとても奇麗だったのが印象的でしたね」
この記事を境に、冷泉家を取り巻く状況は一変する。
「もう、家の上をヘリコプターが飛ぶわ、突撃リポーターはやってくるわ、それは大変な騒ぎでした」
すぐに国も動いた。文化庁の保護課長が自ら出向いてきて、冷泉家の財団法人化を提案してきた。
「財団法人にすれば税金はなくなるというのは、前から聞いてはいました。だけど、4億円の基金を集めてください、と言われ、そんなん無理や、と思うてた。
そうしたら、ある大企業のオーナーの方から『5,000万円寄付します』という電話が。