2021年8月20日 15:50
宮本亞門明かす「かつて憎かった父」への怒りが消えた瞬間
亞門さんは父を送りながら、自身が21歳のときに亡くなった母・須美子さんのことを思い返していた。
「父の晩年、僕は『趣味は親孝行』なんて言ってましたが、母が亡くなるまでは親父のことが憎かった。酒を飲んで暴力はふるうし、浮気もする。世の中でいちばん先に死んでほしいと思うほどでした」
亮祐さんは松竹歌劇団のダンサーだった12歳年上の須美子さんと駆け落ちし結婚。銀座で喫茶店を営んでいた。
’80年、亞門さんが出演する舞台の初日の前日のこと。須美子さんが脳溢血で倒れ、突然この世を去ってしまう。
■母が倒れても酔っぱらっている父
「『お母さんが倒れた』と電話しても、親父は酔っぱらっていて。
怒鳴りつけるとようやく状況を理解して駆け付けてきました」
2人の願いはかなわず、病室で心電図の波が一本の直線になった。
「親父は泣かずに、おふくろの髪を指でそっと一本一本手ぐしでとかしていって。僕も医師もいるのに、おふくろの後頭部を抱いてキスをしたんです。まるで母が生きているかのように。親父がいかにおふくろのことを愛していたかが伝わってきました。その瞬間から、親父には僕はもう何も言えないと思ったんです。