2023年8月14日 06:16
「既婚者だから何なんです?」酔いつぶれた後輩にタクシーで迫られて俺は……
部長がデスクにやってきた。
「一ノ瀬!飲み会、お前もどうだ?」
「え?俺もですか?今日ってB課の打ち上げじゃありませんでしたっけ」
「課の垣根をまたいだ交流も大事だからな。一ノ瀬のところは子どもがまだ小さいし、もちろん無理強いはしないが……」
蓮と美咲の顔が思い浮かんだ。
でも美咲は……笑顔じゃない。昨夜のキレた美咲の顔が忘れられない。
これ以上刺激しないために、物理的に距離をとるって方法もアリだよな。
「行きます」
「おっ、いいね!まあそう遅くはならないから。そのあたりも美人な奧さんにちゃんと言っとけよ?」
「はいはい」
「一ノ瀬さんの奧さんって美人なんですか?」
「化粧品メーカーに勤めてるんだよな。
結婚式で見たんだが、綺麗な人だったよ」
「そうなんですね……」
中野亜美の意味深な視線に、俺は気づかなかった。
すぐに美咲に電話をした。LINEでも良かったが、なんとなく声を聞いて美咲の機嫌を知りたかった。
「ごめん。営業のメンバーで飲み会で遅くなる。あ、斎藤さんもいるよ」
「いいよ。楽しんできてね」
斎藤さんの話題をスルーするあたり、なんとなく、冷たさを感じる……。
「悪い」
「コミュニケーションもお仕事だもん。