2022年9月13日 13:00
播磨屋の芸を偲び、面影をそこかしこに見つけながら。 歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」第二部観劇レポート
その拵えのまま口上となり、白鸚、中村歌六、中村梅玉の順に、吉右衛門の思い出、播磨屋の芸への思い、秀山祭のゆかりについて述べた。白鸚の、「兄として弟を誇りに思っている」との言葉に満場の拍手が送られた。
『松浦の太鼓』追善口上より、左から)中村米吉、松本錦吾、中村梅玉、市川染五郎、中村歌六、大谷廣太郎、松本白鸚、市川高麗蔵、大谷友右衛門
二幕目は『揚羽蝶繍姿』。播磨屋の得意とした役の数々、狂言の数々を、「吹き寄せ」形式でスピーディに綴る一幕だ。
チョンパで一気に目のくらむほど華やかな吉原仲の町が現れる。『籠釣瓶花街酔醒』の佐野次郎左衛門は、花魁道中に初めて出くわし、兵庫屋八ツ橋の美しさに魂を持っていかれる。この場に別の狂言『沼津』の呉服屋十兵衛が、恋人の吾妻を尋ねてきたと通りかかるなんて、歌舞伎ファンにはうれしい場面だ。
『揚羽蝶刺繡』より、左から)下男治六=中村吉之丞、佐野次郎左衛門=松本幸四郎、兵庫屋八ツ橋=中村福助、番頭新造八重咲=中村梅花
場面換わって所は品川、『鈴ヶ森』。雲助たちをなぎ倒す妖しい美少年白井権八に、駕籠で通りかかった幡随院長兵衛。「お若えのお待ちなさいやし」と声をかけ、五代目松本幸四郎から始まる長兵衛ゆかりの役者たちを偲ぶ台詞となる。