2023年12月6日 08:00
水上恒司の考える愛「愛とは決して見返りを求めないこと」
どれだけ悪くても、監督がOKならOKなんだと思うしかない。そうやって自分の中で区切りをつけないと進めないから、あえて見ないのかもしれません」
弱さを見せない彰をつくりたかった
瞼を閉じて思い出すと、スクリーンの中に佇む彰はいつも少し微笑んでいたような気がする。百合に向けるいとしさも、死が迫る恐怖も、運命を受け入れる覚悟も、水上恒司は穏やかな微笑みで表現していた。
「特攻に向かう人たちの気持ちもさまざまで。自己憐憫に浸る人もいれば、周囲から神様のような扱いを受けて自分の立場を勘違いしちゃった人ももしかしたらいたんじゃないかと思うんです。その中で、彰は自分の使命や立場を履き違えることなく正しく理解していた。最近読んだ本の中に『諦観』という言葉が出てきて。きっと彰にもそういうところがあったんだろうなって。
大人びて見える彰の態度には、諦観の想いがあった気がします」
そう説明されて、納得した。彰の微笑みがいつもほんの少しだけ悲しそうだったのは、それが諦観の笑みだったからだ。
「最後まで彰は泣かないんです。きっと百合は泣いてほしかったと思うんですね。もっと弱音を言ってほしかった。自分の気持ちを打ち明けてくれない彰に対し、寂しさや、もしかしたら疑いもちょっとあったかもしれない。