2023年12月6日 08:00
水上恒司の考える愛「愛とは決して見返りを求めないこと」
むくむくと頭をもたげる「自我」をどう御しながら役に徹するか。手練れの俳優でも「自我」を消すことをテーマに掲げる者は多い。
「自分が自我を制御できているかは、まだちょっとわからないですね。ただ、制御しようとは心がけています。『こんなふうに表現したい』というような自我もそうですけど、お芝居って計算してつくり上げていく作業だからこそ、時にその計算という自我が邪魔になってくるときもある。すごく難しいテーマだなと思います」
芝居について話しはじめると、精悍な顔つきが一層ストイックになる。
「自我を抑制しようとはしているけど、ちゃんと消し去れているのかは、たぶん永遠にわからないんだと思います。なぜかと言うと、それも結局自分の主観でしかないから。
ただ、今僕の頭にある中のどれが自分の自我なのかを考え、じゃあこの自我はいらないなって取捨選択することは、お芝居をやる上ですごく大事なことですね」
俳優とは、どういう状態がもっとも美しいか。そう問いを投げかけると、まっすぐに伸びる白球のように、迷わず答えを返した。
「自分じゃないものをつくり上げた瞬間だと思います。演じるって役の自我をつくり上げる作業。