現在、多くの映画監督は撮影現場でカメラの隣ではなく、撮影されたものと同じ映像が見られるモニターの前にいることが多いが、タランティーノ監督は現在もカメラの隣で俳優の演技を見守る。さらに撮影現場には、ウルトラ・パナビジョン70という巨大で、シネマスコープよりも横長(1対2.76)の映像を描き出せるカメラが導入された。「最初に『70ミリのためにセットを少し大きくしようか?』と提案したら、クエンティンから『役者のためにセットは少し小さくしてくれ』と言われたので、70ミリのために特別、大げさなことをしたということはないんです。クエンティンから言われたのは、“インテリアが役者を包み込んでいるようなセット”。映像から考えると、もう少し広くしたほうが70ミリには映えるかなってなるんですけど、完成した映画はカットごとにムードが出ている。それはコンピュータとかCGを通して出てくる感覚とは違うんですよね」
さらに横に長いフレームがスクリーンいっぱいに広がることで、“最後までひとつ空間に見えない”ほどの多様性のあるカットの積み重ねが可能になっているという。「この画面比率は、室内を撮るにはそんなに適していないんですよね。