2022年9月7日 12:30
スペインの大地と風を感じて愛と因縁に彩られた人間ドラマ
男たちは争い始め……。
この日の通し稽古で、舞台上にあるのは仮のセット。俳優たちもカンパニーTシャツの稽古着姿だ。それでも登場人物の激しい感情がぶつかり合って場を圧倒し、観る者を惹き込む。特に、荒々しく周囲の人間も自分自身をも傷つけずにはいられない、しかしどこか艶めいた磁力を放つ木村の佇まいが目を引いた。一方、花婿役の須賀が見せる、前半の人のよい好青年ぶりと後半の怒りをむき出しにした姿との振り幅の大きさも見事。そして、早見は自身の内なる思いへのもどかしさと、レオナルドへの愛を自覚した後の感情の爆発を見せる。また、安蘭も因縁に彩られた愛と憎しみ、さらに兼役で演じる“とある役”の無慈悲なまでの美しさを体現。
彼らが体当たりの演技で表現する、痛々しく、しかしだからこそ愛おしい人間の姿に、観客は心を揺さぶられるだろう。千秋楽までにどれほど深化し完成度が高まっていくのか、灼熱のようなステージが期待できそうだ。
取材・文:金井まゆみ
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