記念日なんか男は忘れる【彼氏の顔が覚えられません 第35話】
女性は、なぜか記念日というものを大切にしたがる。クリスマスや正月だって、家族より恋人と一緒に過ごすのが最高だと考えているような節がある。
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男は、わりとどうでもいい。そんなに特別な日を増やすことの意味がわからない。だってお前といれるだけで、常に特別だろ?
…だなんて。そう言ってキャーキャー黄色い声が上がるのはイケメンだけだよな。俺みたいなチャラい男が言ってもキモがられるだけかもしれない。
そんな、ただでさえキモいチャラ男の俺が、見た目以上にサイテーなことをやらかしたのが2月14日。
バレンタインだ。愛しい恋人に、桐谷美玲を100倍可愛くしたような(※個人の感想です、念のため)カノジョに「渡したいものがあるから」と呼び出されたのに、俺はまたシノザキなんかと一緒にいる。
念のため断っておくが、浮気なんかではない。いくら高校時代に比べ、痩せて可愛くなったと言っても、イズミをしのぐほどじゃない。やつがどうしてもギターを教えてほしいと言って、渋谷のスタジオまで勝手に予約してたものだから、どうにも行かないわけにはいかなくなったのだ。
「嘘ばっかり。言い訳つくって、また逃げてるんでしょ」
と、気づいたら俺の顔の隣にシノザキの顔があって、ギョッとする。近い、近いよ! しかも、なんだよ…マスカラ、カラコン、ぷるぷるのリップ。
ギター弾くからさすがにネイルまではしてないが、メイクをバッチリキメてきている。完全に「デート」の格好じゃないか。