自閉スペクトラム症と診断された、プレ幼稚園でのスバルスバルは3歳まで言葉がほとんど出なかったものの、一対一なら話が通じ、人が好きで興味があることには集中して座っていられるので、プレ幼稚園に入るまでは「言葉が遅い以外に困りごとはない」と思っていました。プレ幼稚園では、先生がクラス全体に呼びかけた「お片づけの時間だよ」などの指示が通らなかったり、私が膝の上でホールドしていないと絵本の時間に歩き回ってしまったりと集団生活の中でのスバルの様子を始めて知ることとなりました。クラスメイトたちが入園から3ヶ月ほどで母子分離通園になっていく中、スバルと私は居残りで母子同伴通園を続けていました。そんな中、プレ幼稚園から「発達検査を受けて診断書を提出してください」と言われたのです。そして、自閉スペクトラム症と診断され、診断書を提出すると同時に退園を言い渡されました。その後、新たに幼稚園探しをはじめた結果、信頼できる幼稚園に出合い、無事に年少からその幼稚園に入園することができました。幼稚園入園式でのスバル幼稚園の入園面接でスバルのありのままをさらけ出して入園が認められたとはいえ、できることなら入園式くらいは問題なく目立たず無事に終わって欲しいと思うのが親心。いや親心というよりは私が目立ちたくないだけです。それは仕方ない。人間だもの。入園した幼稚園ではプレクラスには通っていなかったものの、先生のご厚意で入園前からお遊戯室や園庭で行われるイベントに呼んでもらっていました。入園式は何度も来たことがあるお遊戯室で行われたので、スバルは比較的落ち着いて座っていることができました。椅子から立ち上がりそうになったことも何度かありましたが、私が穏やかな母の顔をしながらゴリラのパワーでスバルの腰を掴んでいたので、誰にもバレずにやり過ごしました。スバルは大声を出すタイプじゃなかったので静かな攻防戦はセーフにカウント。ホッとしたのもつかの間、各クラスに移動して担任の先生のお話を聞く時間にスバルが床に寝転がったので肝が冷えました。椅子じゃなくて床に座っていた子が1人、泣きながら保護者に抱っこされていた子が2人いたので私の中ではギリギリセーフで目立っていないにカウントしました。嘘です。完全に「スバルはこんな子!」という自己紹介をその場にいた全員にすることになりました。Upload By 星あかり脱走し車を眺める…幼稚園入園後のスバル入園直後のスバルの連絡帳には毎日「今日も廊下の窓から駐車場の車を見ていました」と書かれていました。休憩時間の話ではありません。クラスで過ごす時間中に脱走しているのです。駐車場が見える窓は教室を出てすぐの場所なので、担任の先生が見守ったり別の先生がつき添ったりしてくださいました。先生は「慣れてきたら落ち着くと思いますよ」と言っていたし、私もそう思いました。スバルは初めての場所ではさんざん探検したり隅々までチェックしてからやっと落ち着くのです。家で「教室から勝手に出てはいけないよ。椅子に座って話を聞くんだよ」と言って聞かせるときには「うん」と真剣な目でうなずくのですが、翌日そのやりとりが反映されていることはありませんでした。年長のお姉さんとの出会い入園からしばらく経った頃、幼稚園にスバルをお迎えに行くと年長の女の子2人組に話しかけられました。「あの、この子のママですか?」「この子毎日年長の教室に来るんですけど」どうやら自分のクラスを抜け出して年長の部屋まで足を運んでいるらしいのです。落ち着くどころか行動範囲を伸ばしとるやないかい!それから毎日、お迎えの時間になると年長の女の子2人組が話しかけてきました。「お遊戯室で勝手に手を繋いで年長の列に並んでいた」「工作の時間にやってきて隣で粘土をこねていた」など連絡帳にも書かれていない、やりたい放題を暴露されるスバル。なるほど……お迎えの時間に毎日話しかけて来るこの2人組のことを、スバルはかまってくれる仲良しのお姉さんだと思っているのね。残念!これ、クレームですから!!ある日いつものようにクレームを聞き「うちの子がご迷惑をおかけし……」と頭を下げているときにふと「まだまだ勉強中ですので、この子のことをよろしくお願いします」と一言加えました。ただの思いつきでしたが、女の子たちは「しかたないな」「私たちが面倒見てあげる」と表情を変え、友好ムードになりました。その日からお姉さんは強い味方になりました。イベントで並ぶべき時間にウロウロしていたら一緒に並んでくれ、教室から脱走していたら連れ帰り、ブランコの交代のタイミングを厳しく教え、幼稚園でのルールや社会でのマナーを叩き込んでくれたのです。すぐに変化が現れたわけではありませんでしたが、年少の6月のある日からピタッと歩き回らなくなり、座るべき時間に座り、話を聞くべき時間に話を聞くようになりました。話は聞いているだけで右から左へ抜けてしまっているみたいでしたが、それでもスバルの中で点と点が繋がるような何かがあったのだと思います。先生たちが毎日スバルと向き合ってくださったことはもちろん、年長のお姉さんたちの影響はかなりあると思います。それをきっかけにスバルは集団生活のコツをつかんだようで、少しずつクラスへ馴染んでいきました。スバル一人と向き合うとたくさんの困りごとがあるのですが、3歳になったばかりの子どもと4歳の子どもが一緒に活動する「年少クラス」という空間では個人個人の成長の差が激しく、スバルの困りごとは飛び抜けて目立つものではなくなりました。入園当初は完全に集団からはみ出た存在でしたが、年少の終わりには「ちょっと変わったクラスメイト」くらいの存在になりました。集団の中で楽しく活動に参加する様子は1年前の入園当初には考えられない光景でした。年中になり、周りの子どもたちの成長に置いていかれる形でスバルの困りごとが目立つようになりますが、それはまた別の機会に……。年長のお姉さんとの思い出放課後の園庭でスバルにブランコの漕ぎ方を叩き込んだのもお姉さん。年少の終わりころまでできなかった両足ジャンプをときにはスパルタで教えたのもお姉さん。滑舌が悪くて単語で話すスバルの言葉が聞き取れず「この子何言ってるか分からない」と私に耳打ちしつつも根気強く遊んでくれたお姉さん。Upload By 星あかりお姉さんたちの卒園とともにご縁は切れてしまいましたが、スバルの年少時の成長にかなりの影響を与えてくれたお姉さんたちには感謝しかありません。「スバルもこんな素敵な年長さんになれますように」と思ったのを覚えていますが、スバルはスバルらしく独自ルートの素敵な年長さんになったので、それはそれで。執筆/星あかり(監修:新美先生より)幼稚園でのお姉さんとの出会いのエピソードを聞かせてくださりありがとうございます。親から離れて園での生活が始まり、保護者としても気が気じゃない入園当初の日々、最初は「クレーム」!?から始まりながらも、お姉さん心をくすぐったのか面倒を見てくれて、さまざまな影響を与えてくれたってなんだか素敵ですね。きっとお姉さんにとっても楽しい日々だったと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月18日睡眠障害はちょっと頑張れば治る?わが家の娘いっちゃん(ASD・現在16歳)が、いよいよ小学校に行かなくなってきた5年生の頃のエピソードです。いっちゃんが小学生だった当時は、学校の先生たちも十分に発達障害について理解しているとは言い難く、睡眠の問題もあまり知られていなかったようでした。もちろん「睡眠障害があるんです」という話はしていましたが、「まあ、ちょっと指導すれば治るんじゃないか」って、思われていたのかなという感じでした。正直、私たち親にも「ほんの少し頑張ればなんとか……」みたいな気持ちはありました。しかし、詳細な睡眠日記をつけ、毎日の多くの時間を過ごすなかで、娘が自分のペースで生活するほうが体調面では明らかに良いと感じていたので、「治そう」という考えには温度差がありました。いっちゃんの体内時計は25時間Upload By 寺島ヒロ熱心な先生が娘の担任に担任の先生は大変生活指導に熱心な方で、学校のある日の朝に娘を迎えに行くと電話をくれることもありました。ですが、そういうとき、私は娘がまだ寝ている場合には即行で断っていました。娘の眠りを確保するため当然のことだと思っていましたが、この態度が次第に担任の先生に不信感を抱かせることになったようです。夏休みなら学校も楽しい!夏休みになり、宿題の進みが気になる子どもたちのために小学校で5日間の夏休み講習が開かれることになりました。この時はちょうど昼間起きている睡眠リズムの日であったため、いっちゃんは5日間とも参加できました。「学校に来ている人も5~6人だから、静かですっごく良い!図書室も誰もいないし、話しかけられるんじゃないかと心配しなくていいからゆっくり本が読める。ずっとこうならいいのに!」と、いっちゃん。聴覚に過敏があり、さらにやっていることを中断されることが苦手な娘には、夏休み中のガランとした学校が心地良かったようです。先生、それはNGワードです……!夏休み講習を皆勤したことで、先生も「いける!」と思ったのでしょう。「夏休み明けは不登校を解消できるチャンスなんです!」と言い、再登校のハードルを下げるため一緒に登校しようと家に迎えに来てくれました。しかし、新学期には睡眠リズムが昼にずれ込んでしまっていたいっちゃん。一旦は起きて準備したものの、出かける頃には不機嫌になってしまいました。玄関から出ようとしないいっちゃんに、先生は「みんな待ってるよ!」と声をかけます。しかしそれはNGワードだったんです……!!学校にたくさん子どもがいるということを思い出してしまったいっちゃん、「学校には行かないです!」と、先生を追い返してしまいました……。学校で面談をすることに……その後、いっちゃんと私と担任の先生との面談が行われました。担任の先生は「夏休みの間は通えたじゃないですか、何があったんですか!?」「どうして生活リズムを直そうとしないんですか!」と何度も言われましたが、いっちゃんはどうしても無理としか言いようがありませんでした。結局、私も娘も先生も困ったまま、その場は時間切れとなり……。1週間後、改めて担任の先生から電話があり、今後の対応を話し合うことになりました。担任の先生は「スクールカウンセラーの先生を呼びますよ?良いですね!?」と、かなり高圧的な感じでした。それで、「娘は寝ている時間だから」と、私1人で話し合いに行くことにしました。スクールカウンセラーさん登場!Upload By 寺島ヒロ胃が痛くなりながら参加した話し合いでしたが、スクールカウンセラーの先生は、完全に娘の言い分を理解してくれました。「発達障害のお子さんの場合、睡眠に問題があるというケースは珍しくありません。特に概日リズム睡眠障害は原因もはっきりしないし、生活習慣や育て方のせいとも言えません。育ち盛りですし、たっぷり睡眠をとるほうを優先しても良いのでは?」「聴覚過敏があるお子さんの場合、夏休み中と新学期の今では同じ学校と思えないぐらいうるさいと感じるのは当然かも」との、スクールカウンセラーさんの言葉で、担任の先生も考えを変えてくれました。担任「発達障害の子にそんな問題があるなんて...」担任の先生は「睡眠障害や聴覚障害なんて私が読んだ本には載ってなかった……」と、ショックを受けた様子でしたが、いっちゃんについては「今後は登校できるときだけ通う、昼からでもOK。変則的な時間に登校すると道中が心配なので親がつき添って登校させる」ことで、最後は和やかに合意が形成されました。良かった……正直、本当に助かりました……!「発達障害の特徴」と本に書かれていなくても発達障害と睡眠障害の関連については、まだ医学的にははっきりとした相関関係は分かってないようです。しかし、それは「関係ない」ってことではないですし、「朝起きられない」という悩みが嘘ということでもありません。障害なのか、躾が悪いのか、そんな二者択一ではないということを、スクールカウンセラーさんの態度から学びました。そして、一人ひとりの子どもの個性に寄り添って、そのときどきの状況に合わせてサポートしていくことが大切なんだなと、改めて思ったのでした。執筆/寺島ヒロ(監修:新美先生より)発達障害のある方に、睡眠の問題を合併することは非常に多いことが知られています。寺島さんのお子さんのように、体内時計のリズムを、地球の自転周期の24時間に同期させることが難しく、入眠時刻が遅くなっていくのは、「概日リズム睡眠障害」と呼ばれるものの一つのタイプで、自閉スペクトラム症のお子さんにも起きることがあります。この場合は、本人や周囲の努力で、寝ようと思ってもどうしても眠れなくて苦労しており、今回聞かせていただいたエピソードの先生のように「規則正しい生活リズムで治す」といった程度で改善されるような簡単なものではありません。発達障害に関するさまざまな生理的な困りごとは、人によってまちまちなので、先生方の経験や知識にたまたまなかったからといって理解してもらえないととても悲しいですね。親から話して分かってもらえないとき、寺島さんのエピソードにあるように、スクールカウンセラーや、担当医など、別の専門家から直接説明してもらうのも一つのやり方ですね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月17日高まる特別支援学校のニーズ編集部(以下、――)まずは特別支援学校の現状について教えてください。濱辺清先生(以下濱辺先生):東京都には現在、58校の都立の特別支援学校があります。来春に開校する南多摩地区特別支援学校(仮称)は、59校目の学校ということですね。都の推計では、中学校に設置されている特別支援学級の生徒は、年々増えています。とくに情緒障害などの特別支援学級の生徒は急増しています。本校開設の背景にも、中学卒業後の進路としてさらなる学びの場が必要とされている、ということが挙げられます。――南多摩地区特別支援学校(仮称)は、どんな学校ですか?濱辺先生:本校は知的障害のあるお子さんのための高等部で、普通科と職能開発科の2つの科を併設します。普通科は、町田市(一部)、八王子市(一部)、多摩市(一部)のエリア内にお住まいの知的障害のあるお子さんなら、希望すればすべての方が入学できます。もうひとつの職能開発科は、都内全域から募集し、調査書と適性検査、面接で選考を行います。――職能開発科では、どのようなことを学ぶのですか?濱辺先生:専門的な職業教育を受けられる東京都立の知的障害特別支援学校は、永福学園をはじめとして複数設置されており、本校は12校目です。他校の同様の科では、卒業生の就職率は約95%、卒業後3年の定着率も9割を超えます。本校でも卒業生全員の企業就労を目指したプログラムを準備しています。もちろん職業トレーニングだけでなく、国語や数学などの教科学習、部活動などの課外活動もしっかりありますよ!さまざまな活動を経験しながら、3年間で社会に出て働くスキルを身につけていきます。仕事を学ぶための専門的な機材、環境も完備Upload By 発達ナビ編集部――これまでの職業訓練と違う特徴はありますか?濱辺先生:職場に近い環境で実習ができるのは、大きな特徴です。あいさつや身だしなみ、報告・連絡・相談の習慣づくりなど、社会人としてのマナーやルールを学ぶだけでなく、OA機器の使い方、飲食業における衛生管理など、専門的なスキルの習得が期待できます。カフェさながらの実習室なども計画していて、在学中から実際の職場に近い雰囲気を感じながら学ぶことができますよ。また、教員が教えるだけでなく、実際にお仕事されている方を講師として招き、授業をしていただく計画もあります。プロの技に触れることで、将来の具体的なイメージを持ちながら、緊張感をもって真剣に学んでいただけたらと考えています。――卒業生の就職先としては、どのような仕事を想定されていますか?濱辺先生:東京都の特別支援学校卒業生の就職先として最も多いのは事務系の職種で、3割強を占めます。東京都には、本社機能、総務機能を置く企業が多いことが関係しています。本校でも、事務系の仕事に必須のパソコン入力、印刷機器の活用法、社内メールの仕分けや郵便物の封入、発送作業などは3年間を通して、継続的に学んでいきます。――就職先となる企業との連携は、どのように進められるのでしょうか?濱辺先生:まずは教員が窓口となって関係性をつくっていきます。ただ、私のこれまでの経験から強く感じるのは、最終的に学校と企業との絆を強く結んでくれるのは、生徒同士の力だということです。卒業生が就職した企業に、翌年、在学生がインターンシップで実習に行く。そこで先輩の働く姿を見て、実際に指導をしてもらう。卒業生が社会に出るにつれ、こうした輪がいくつもできます。学校を発展させていくのは、生徒の力、社会でひたむきに頑張る卒業生の力なのだと実感しています。リアルな職業体験を積んで社会へ――すばらしいですね!2024年入学の1期生もインターンシップの予定はありますか?濱辺先生:現在の計画では、1年生では半日程度の職場見学で、食品、物流、事務、清掃など、さまざまな現場をまわろうと考えています。2年生からは5日~10日ほどの実習を年に2回ほど予定しています。学校で行った模擬実習を、実際の職場で応用実践していく。大きく成長する機会になるだろうと考えています。――在学中から会社の雰囲気や働く人の様子を見ることができると、将来のイメージを持ちやすいですね。濱辺先生:そうですね。職業経験はもちろん、行き帰りの通勤体験も、子どもたちにとっては学びです。例えば電車が事故で遅延したときは、どう対応したらいいか?咄嗟の場面への対応力は、机上の勉強だけではなかなか身につきません。うまくいかないことがあっても、高校生の実習ですから当たり前、気にすることはありません。失敗したり迷ったりしながら経験を積むことが、将来の糧になります。一人ひとりに合った仕事、職場を見つけるために――卒業後の就職先は、どのように選定していくのでしょうか?濱辺先生:一番大切なのは、お子さん本人の希望です。ただ、「やりたい!」という気持ちだけでは、うまくいかないことがあるのも仕事ですね。普段の授業や実習、インターンシップでの様子などを総合的にアセスメントし、学校からも特性とマッチするような職種、職場を提案していきます。――職場に定着し、長く働き続けるためには適性も大事ですね。心強いです!濱辺先生:長く高等部の特別支援教育に関わってきて思うのは、当たり前のことですが、この年代のお子さんは「青年」で「高校生」なんです。障害の有無に関わらず、自分のアイデンティティがしっかり確立される時期です。障害があるからといって子ども扱いしたり、よかれと思うことでも周囲の人が上から押しつけるようなやり方では、反発して当然です。「この通りにやってください」というだけでは反発してやらない生徒も、「この方法でAをBの状態にすると、早くきれいにできます」と伝えると、理解が深まってスムーズにできるようになることも。一面だけで適性がない、特性に合わないと決めつけず、生徒たちのプライドと意思を尊重しながら育てていきたいですね。豊かな高校生生活が人生の宝物にUpload By 発達ナビ編集部――部活動なども楽しみですね。濱辺先生:初年度は人数の関係で、サッカー部、バレー部などの個別の部活を編成するのは難しいため、開校後3年くらいは運動部、文化部という大きなくくりを考えています。運動部なら、シーズンごとに陸上やサッカー、バスケットなど、さまざまなスポーツを楽しみます。文化部でも絵画、調理、音楽演奏など、多様な活動を構想中です。部活動は、学年を超えた縦の学びができる機会でもあります。大事にしていきたいですね。――職能開発科には、どんな生徒に入学してもらえたらと考えていますか?濱辺先生:職能開発科は専門的な職業教育を行う科ではありますが、中学生では、将来の仕事像はまだ漠然としているかもしれません。高校卒業後は就職したいという気持ちがあれば、十分です。――現在、開校準備の真っ只中ですが、新しい取り組みがありましたら教えてください。濱辺先生:校章デザインを、地域の高校生から公募しています。地域との連携や同世代の子どもたちとのつながりも、共生社会を創るうえでの大事なポイントです。校章デザインの公募はおそらく都立学校でも初めての試み、私たちも楽しみにしています。子どもの可能性を信じてUpload By 発達ナビ編集部――開校にあたっての思いをお聞かせください。濱辺先生:本校のモットーは、信頼(Confidence)、協働(Collaboration)、挑戦(Challenge)の3つのCです。この3つのCをもとに、一人ひとりを大切にした学校をつくっていきたいと考えています。生徒はもちろん、保護者、教員、子どもを中心とした学校を取り囲むすべての人の声に耳を傾け、「この学校があってよかった!」と思ってもらえる場所にしていきたいですね。――発達ナビは、障害や発達に特性があるお子さんの保護者の方が多く利用してくださっているサイトです。最後にそのような保護者のみなさまへのメッセージをお願いします!濱辺先生:子育ての中では、苦労すること、不安なこと、大変なこともたくさんあると思います。同時に、お子さんの未来に期待し、応援するあふれるばかりの熱い思いもお持ちでしょう。これまでの教員生活で、私は保護者のみなさまの熱い思いに何度も触れ、育てていただいてきました。お子さんの未来を支えるのは、その熱い思いと、ときに客観的な視点から冷静に見守る視点だと思います。親の立場からみると、お子さんの苦手や不得意ばかりが目について、不安になることもあるかもしれません。でも、学校という環境に入ると、「苦手」「興味がない」と思っていたことにも意外な積極性で取り組めたり、面白さを発見できることもあります。お子さんの可能性を信じて、学校に任せるところは任せてください。手を取り合い、お子さんの未来をいっしょに考えていけたらと思います。南多摩地区特別支援学校(仮称)開発準備担当校長濱辺 清先生大学卒業後、青鳥養護学校、永福学園等で教鞭をとり、長らく進路指導に携わる。教育庁都立学校教育部特別支援教育課指導主事、教育庁指導部特別支援教育指導課指導主事、中部学校経営支援センター統括学校経営支援主事、教育庁指導部特別支援教育指導課統括指導主事を経て、現職。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2023年08月17日息子が発達ゆっくりのため、娘ももしかしたら…?娘が産まれる少し前から息子の発達が気になっていた私……娘が産まれてすぐ、まだ産院に入院していた頃から、娘ももしかしたら発達ゆっくりさんではないかと心配していました。娘は息子と同じく産院ではすごくよく眠る赤ちゃんでしたが、息子と違った点は母乳の飲み方が上手かったこと。私自身も2人目の育児で慣れてきていたのもあるかもしれないのですが、息子のときには感じなかった力強さを感じました。しかし退院してから『抱っこしていないと眠らない、眠ってもすぐ起きる、そして物音に敏感な赤ちゃん』に豹変した息子のことがあったので、「もしかしたら、退院してから娘も豹変するんじゃ……」と不安を抱えていました。しかしいざ退院してみると、娘は入院中と全く変わらず母乳をよく飲み、よく寝る赤ちゃんでした。全く手がかからなかったので「え、2人目育児ってこんなに楽なもんなのか!?私、母としてのスキル爆上がりしてる!?」なんて勘違いするほどでした。(笑)Upload By 海乃けだま反応が返ってくる!!育児を心の底から楽しめていた時期生後2ヶ月頃になると、娘はあやすとよく笑うようになりました。息子のときには全くと言っていいほど反応がなかった"いないいないばぁ"にもニコニコ笑ってくれるではありませんか!!「こ……これがもしや……いわゆる定型発達児の反応なのか!?」あやすとすぐに反応を返してくれる娘に「めちゃくちゃ可愛いやんけーーーー!!」と親バカが炸裂し、"娘ももしかしたら……"という心配は吹き飛んでしまいました。(笑)息子のときにはしなかった寝返りも5ヶ月頃には自らしていて、それからもハイハイやつかまり立ち、離乳食の手づかみ食べやスプーン食べもすんなりと進み、10ヶ月頃には単語や指差しも出てきました。育児書に書いてある目安どおりの順調な発達に「娘は定型発達に間違いない!!」と思い込むようになりました。Upload By 海乃けだま順調に思えた発達。落ち着きのなさが気になり1歳半健診で相談するも…1歳1ヶ月頃になると、娘はひとり歩きができるようになりました。しかしこの頃、娘の成長を喜ぶ反面、少し気になることも出てきていました。腰がすわった頃から横抱きよりも縦抱きを好んでいた娘ですが、ハイハイができるようになった頃から、娘は抱っこされること自体を嫌がるようになっていたのです。ひとり歩きが安定してくるようになると、さらに落ち着きのなさが目立ち始めたので、1歳半健診で保健師さんに一応相談してみることにしました。健診をひと通り終え、落ち着きのなさ以外には特段困っていることもなく、発達の遅れも見られなかったので、保健師さんからは「様子を見ましょう」と言われました。保健師さんのその一言に「落ち着きはないけれど、診断されるほどじゃないのかもしれない」と少し安堵しました。Upload By 海乃けだま様子見と言われながらも、兄と比べて意思疎通ができていたため、発達の凸凹を受け入れたくなかった入園までの日々…1歳半健診後、定期的に保健センターの保健師さんから、娘の発達についての確認の電話がありました。その頃の娘はというと、2語文がなかなか出ずに少し心配していたものの、2歳を過ぎた頃から爆発的に言葉が出てきたこと、そしてASDの息子と比べて意思疎通も容易だったため、様子見のまま発達相談はせずにいました。正直なところ、息子にASDの診断が出たばかりだったので「息子だけじゃなく、兄妹2人とも発達障害だとしたら……娘にも診断が出るのは耐えられない」と受け入れ難い気持ちばかりが大きくなっていました。しかし、このまま幼稚園に入園して「きっと大丈夫だろう」と思う反面、「もしも集団生活についていけなかったら……」という気持ちは常に頭の隅にありました。娘が2歳半を過ぎた頃にまた保健師さんより連絡があり、発達教室のお誘いがありました。最初は断ろうと思いましたが、「一応通っておこう」と考えなおし、発達教室に参加することにしました。発達教室での娘は、落ち着きのない一面はありつつも、保健師さんの話を聞いてちゃんと動けているように感じました。「落ち着きはないけれど、このまま幼稚園にも行けそう……行けてほしい!」揺らぐ気持ちは変わらないまま、娘が定型発達であってほしい思いだけが強くなっていきました。Upload By 海乃けだま体験入園で園長先生から言われた言葉。娘への後悔…発達教室が終わり、保健師さんに発達検査(新版K式発達検査)をしてもらうことになりました。検査の結果は"年齢相応の発達指数"でしたが、保健師さんから「1対1で行う検査ではこの数値だけど、娘ちゃんには意識が逸れやすいところがあるから、集団生活だと娘ちゃんの持ってる力を発揮しづらいかもしれない」と言われました。それでもなお、私の中では、娘は定型発達であると信じたい気持ちが先行し、保健師さんの言葉を素直に受け入れることができませんでした。そんな矢先、娘の入園予定の幼稚園で、満2歳児向けの体験入園が始まりました。「何事もなく過ごしてほしい……」と祈るような気持ちで娘を体験入園させましたが、そんな私の思いとは裏腹に、娘は先生のお話中に教室を出て行ってしまったり、絵本の時間におままごとのおもちゃで遊び出したり……明らかに集団行動が苦手な様子でした。そんな娘の様子を見ていた園長先生から「海乃さん、息子さんのことでよく知ってると思うから言わせてもらうんだけどね(息子もその幼稚園に転入予定であったため、園長先生には事前に息子がASDであることを伝えていました)、娘ちゃんはどうかな?療育を受けたほうが今後の娘ちゃんのためにもなると思う」とすすめられました。園長先生からの言葉に、今までわが子2人に診断が出てしまうことが受け入れられなくて、娘の発達に期待を寄せ過ぎ、娘の発達凸凹な部分を見て見ぬふりをしてきてしまった自分を悔やみました。その体験入園の日の帰り道、泣きながら保健センターの保健師さんに電話し、児童精神科への紹介状を書いてもらいました。医師による診察の結果、娘は神経発達症(ADHDと軽度の自閉スペクトラム症)と診断されました。幼稚園入園前の3歳9ヶ月のことでした。現在、娘は幼稚園に通いながら、週1日療育園に並行通園しています。何にでも興味があり積極的に楽しむ娘は、幼稚園も療育園も、どちらも「行くー!!」と全力で楽しんでいます。Upload By 海乃けだま執筆/海乃けだま(監修:鈴木先生より)一般的に乳幼児健診などで保健師さんが「様子を見ましょう」という場合は、経過観察のみとなることが多いため、お子さんの発達に気になる点があれば、できるだけ早期にかかりつけ医に相談するのがお勧めです。病名告知は医師にしかできません。「わが子は定型発達で、障がいがあってほしくない」と思うのは、親御さんの自然な感情だと思います。それでも、お子さんの発達の特性がなくなるわけではありません。今回のケースのように悩んだ末、集団の中に入ってから他児との違いに気づき、専門医を訪れる親御さんもいます。今回、娘さんは3歳で神経発達症の診断がつきましたが、早いほうです。お子さんの発達のつまずきに悩み続けている親御さんが就学前に専門機関へ繋がれるようにするため、5歳児健診が少しずつ全国に広まりつつあります。できるだけ早期に診断して受容し、将来に向けて家族や保健師・教員・かかりつけ医等と一緒に考えて歩んでいくことが、お子さんのためには重要なのです。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年08月16日手足をバタバターー赤ちゃん時代〜歩き始め39週3400gで生まれた息子。ミルクをよく飲みうんちもご立派、よく寝るタイプではないのに声を出したりモゾモゾしたり、「元気いっぱいだなぁ」と思いました。元気いっぱいな子だとは思っていましたが、生後1ヶ月半でこんなに動くの?というほど手足を激しくバタつかせて遊んでいました。Upload By ネコ山ずりばいで息子の行動範囲が広がってきたのでテレビの周りを柵で囲うと、その柵でつかまり立ちを始めました。そして伝い歩きを始めると、柵に沿ってずっとサイドステップを踏んでいました。大好きな子ども向けの番組がついてるし「落ち着いて止まって見たら?」と声をかけたくなります。1歳ちょうどで歩き始めた息子は「自由に好きなところに行ける!」と気づいたのか、止ることなく目についた興味のあるところに向かって歩いて行きました。しかしのんびり歩いていたのは最初の1週間ぐらい。走れるようになると息子の移動は常に駆け足になりました。まだ歩き始めたばかりで転ぶことが多いので「手を繋いでほしいな」と思っていましたが、手を繋ぐと逆に歩きにくいのかまったく手を繋いでくれません。最も多動な時期ーー1歳半~3歳頃1歳半~3歳が息子が最も多動な時期で、外出時がすごく大変でした。歩行が安定していき、走ると本当に速くなりました。興味を引くものが目に入ると一目散に突進、振り返りもせずに走っていきます。走っていった先では親がいなくても不安にならないのか、私が背後に立ってもしばらく気づきません。そんな多動の息子なので、屋外に出かけたときは事故に遭ったり、変なところに入って行かないように神経をすり減らしていました。公園でさえもいっときも目が離せません。遊んでいても1つの遊びに集中することなく次々と場所を移動するため、私は一緒に行ったママ友と話していても、必ず途中で追いかけることになっていました。ちょっと目を離したら、なぜか魚を手にしていたこともあります(公園内に川や池がないので鳥が落としていったものと思われる)。Upload By ネコ山息子のあまりの多動っぷりや公園から帰るときに起こす癇癪に疲れ切った私は、近所の公園に行きづらくなっていました。バスや電車は大人しくしていられないのが予想されるため怖くて乗れません。チャイルドシートだったら息子を固定できるので、私の息抜きを兼ねてドライブがてら遠めの公園へよく遠征していました。お昼どきや早朝が狙い目で、人が集まらない時間帯に公園を貸し切るのです。「お友達と一緒に遊べたらいいな」と思っていましたが、息子のハチャメチャぶりにどうにも叶いそうもなかったので、このときは人目を気にせず自由に遊ばせることを優先しました。もしかして発達障害?家の中では手に届く範囲のもの全てを触りたがります。「やめてね」「触らないで見ててね」など声掛けしても伝わりません。1日中怒っていたくないので、リビングの出入り口をベビーゲートで完全に封鎖、戸棚などには全てチャイルドロックを設置、ゴミ箱もティッシュも息子が届かないところに移動しました。これでリビングが完全に息子仕様になりました。おしゃれな家にはほど遠く……。小さい子どもがいても素敵な小物や植物が置かれているお宅もあるのに……。きっとそんなお宅の子は「触らないでね」と言えば伝わる子なんだろうな……と羨ましくなったこともあります。公園でも家の中でも、ほかの子と比べて明らかに動き方が激しく制御不能、言葉で注意しても伝わらないため「もしかして発達障害……?」と頭によぎったのがこの頃でした。飛び出し・迷子、あわや交通事故!きょうだいができ大変さ倍増息子が3歳頃、妹である娘はちょうど1歳半でした。娘も活発に動く時期で意思表示も強いタイプなので、公園では2人ともが各々好きなところに行き手に負えませんでした。右目で息子を、左目で娘を見る日々。多動がある子にきょうだいが増えると、さらに大変さが倍増しました。そんなある日事件が……!気晴らしにパン屋さんのパン食べたいなと思っても、息子が売り物のパンを触りまくることが予想されるのでほとんどのパン屋さんは行けません。しかしコンテナ型のパン屋さんを発見。ここなら入店せずに店外からショーケースを見てパンを注文できるので、よく利用していました。外出先では常に息子の手を握ったり体の一部を掴んでいましたが、お会計のときはそうもいきません。苦肉の策で、足で息子の動きをガードしていましたが突破されてしまいました。初めは近くのポストなどをいじっていましたが、急に道路に向かって急発進!道路に飛び出す直前で私が捕まえてことなきを得ました。私が追いつくのがちょっとでも遅かったら……、または息子がもっと足が速かったら……と思うと背筋が凍る思いでした。気晴らしに行ったパン屋さんでも気が抜けず、むしろより疲れてしまったことがありました。その後も同じような状況の場所(例えば電気屋さん)で息子は走りたくなるらしく、事前に注意するようになりましたが……。Upload By ネコ山Upload By ネコ山息子が幼稚園入園前の春、もう完全に手に負えなくなり私も疲れ切っていたのだと思います。とうとう動物園で迷子になりました。小さい子どもがたくさん集まった小動物とのふれあいコーナーで、ついに息子を見失ってしまったのです。幸い5分くらい周囲を探すとトボトボと歩く息子を発見できましたが、たった5分でも息子1人にしてしまい「怖い目に遭わなくて本当によかった」と思いました。そして不謹慎かもしれませんが、息子が私から離れてしまったことにしょんぼりした様子だったので少し安心した気持ちがありました。今まで私がいなくても気にする様子がなかったので……。落ち着きだしたーー4歳~5歳頃3歳までは息子の多動に神経をすり減らしていましたが、4歳を過ぎた頃から急に落ち着いてきて無駄に立ち歩いたりしなくなりました。以前は目についたおもちゃで次々と遊び散らかしていましたが、興味のあるものに集中するようにも。その集中力はなかなかすごいもので、私が声をかけても気づかないほどです。バスや電車でも静かに座れるようになったので、お出かけの幅も広がりました。そしてクラシックのコンサート(未就学児入場可のもの)さえも静かに最後まで座って鑑賞できるように……!Upload By ネコ山一体何があったのでしょうか……以前SNS上で、うちの息子と同じように多動がある子どものママたちから「多動はそのうちおさまるから大丈夫!」と言われていたことは本当だったようです。もっと先だと思っていましたが、その時が来たのかもしれません。「落ち着いているね」と決して言われるような子ではないけど、体の多動がおさまり興味のあることに集中したり、いろんなところに出掛けられるようになり、息子の成長を感じられました。執筆/ネコ山(監修:室伏先生)乳幼児期の息子さんのご様子とそれに対するネコ山さんの工夫や苦労を具体的に共有していただき、ありがとうございました。息子さんの成長、嬉しいですね!とっても大変な時期を過ごされたことと思いますが、ネコ山さんが耐えた日々は、息子さんが好奇心のおもむくままにさまざまな経験を積み、大きく成長することの礎となったのですね。先が見えないので、親御さんは、この状態がいつまで続くのかとご不安になられることが多いかと思うのですが、注意欠陥多動症のお子さんも、多動の症状は幼児期が一番強く、落ち着いてくることが多いように思います。しかし、お子さんによっては衝動性や不注意などが目立ってくることがあります。成長段階によって困りごとも変化していくので、都度対応をしながら見守ってあげることが大切です。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年08月16日診断はなかったけれど…登園渋りが尋常ではなく息子は赤ちゃんの頃から敏感でした。抱っこしても反り返る、1歳半まで昼夜問わず3時間ごとの授乳、2歳で言葉の遅れ、癇癪…。これは何か特性があるではと思い、2歳の時支援センターで発達検査を受けたのですが、理解力は月齢相当だったため様子見となり、結局4歳になって自閉スペクトラム症(ASD・ADHD混合)の診断がおりました。未診断のまま幼稚園へ入園した息子は多動・衝動・不注意が目立ち、指示が聞けない、癇癪を起こす、問題行動だらけ…。わが家は登園が楽しい時間になるようあえて集団登園をしている園を選んだのですが、これが完全に裏目に出てしまいました。集合場所に行くことはできてもスムーズに登園などできません。ほかの子どもたちは並んでいるのに息子だけは並ばず、「イヤだ!」と言って石のように動いてくれませんでした。どうしても登園できない日は、私が車で送迎をしていました。Upload By ユーザー体験談「一人っ子でわがまま、しつけができていないと思って注意するしかない」と先生方に言われ、私もそれに頷くしかありませんでした。なんとか登園させなければと、嫌がる息子を無理やり連れていくこともありました。今振り返ると、過敏性からザワザワとした環境が苦手、多動、衝動があるのでじっとしていることも苦手だった息子。その頃の私はまだ息子の特性を理解していなかったので、かわいそうなことをしてしまいました。4歳で診断がおりた息子。先生方の対応が変化し、私は療育を知り、それまでの育児が一変そして息子は4歳に。再び発達検査を受けた息子は、自閉スペクトラム症(ASD・ADHD混合)と診断されました。やはりと思いながらも、実際に診断が出たことに私は少なからずショックを受けていました。幼稚園の先生方も診断されたことにびっくりしていました。ですが、すぐ息子のために動いてくださいました。先生方は支援センターの心理士さんや療育の言語聴覚士の先生を招いて、息子の園での様子を見てもらいつつ、本人の様子や特性の説明、それにあった指導方法を学び、すぐに先生方が適切に対応できるようにしてくださったのです。診断がでたら退園になるのでは?と心配していたので、その姿がとてもありがたかったです。Upload By ユーザー体験談そして私も療育とつながることができ、さまざまなことを学びました。それまでの子育てが180度変わる経験でした。そして、息子の登園渋りの原因を私なりに解釈できるようになりました。・切り替えの悪さ、不注意などが原因で、クラスメイトにいつも何かしら注意されているのが嫌だったのでは?・こだわりの特性から、一度嫌なことがあるともう行きたくないと考えが強固になってしまったのでは?・感覚過敏があるため、教室のザワザワした音の中から指示を聞かなければいけない状況が疲れてしまったのでは?言語聴覚士さんから、息子にチックが出ていることを指摘されました。言語聴覚士さんでないと気づかないようなチックでしたが、それだけ幼稚園の環境や活動がストレスだったのでしょう。知識不足だった私の対応が、息子に大きなストレスを抱えさせてしまっていたのです。このままではいけない、変えていかなければと思いました。Upload By ユーザー体験談年長になり成長している息子。息子にあった方法で見守っていきたいです年長になった長男はあいかわらず集団登園は拒否、毎日車で送ることでしぶしぶ登園している状態です。教室に入るまで「イヤだ!」と大泣きの息子を先生はぎゅっと抱きしめて「今日は教室に面白いものがあるよ~」と息子の興味を引く方法で、入室を促してくれています。そんな先生のことを息子は大好きになり、ずいぶん成長してきました。園長先生も年長になってすごく成長しましたよね、と言ってくれています。Upload By ユーザー体験談また言語聴覚士の先生は、「私が園に行ったときに、困っていることなどあると息子くんが助けてくれたりするんですよ。ちゃんと、他人の気持ちが分かる子だから大丈夫ですよ!」と、言ってくれました。息子はどんどん成長しています。まだ登園渋りはありますが、笑顔も確実に増えてきました。これからも息子の特性について勉強し、息子にあった対応を探し、息子の成長を楽しみたいです。イラスト/keikoエピソード提供/翠ママ(監修:森先生)発達に凹凸があっても、全体的な能力が高いケースなどはなかなかすぐには気づかれにくく、「できるのに怠けている、しつけがなっていない」と周囲から誤解されてしまうことがよくあります。「幼稚園になぜか行きたがらない」という場合も、本人なりの理由があるもの。「ざわざわした環境が苦手」「耳から入る指示よりも目で見てわかりやすい指示の方が理解しやすい」などなど……本来ならば、発達障害があってもなくてもそれぞれの子供に個性として備わっている特性があるのですから、一人ひとりに応じた配慮ができれば一番いいのですが、現実の教育現場では難しい部分もあります。先生方からすると、ほかの保護者の方から「あの子だけ特別扱いしている」と思われるリスクもあります。療育につながると先生方も対処を勉強しやすくなりますし、何よりも理由がはっきりしているため幼稚園として配慮がしやすくなります。診断がくだらなかったとしても、困りごとがある限りは支援センターなどへの相談を継続してみるのも手です。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年08月15日周囲の子どもとの差に悩んでいた2~3歳頃しのくんは、2歳を過ぎても意味のある発語がなかったことから「ことばの教室」に通うようになり、3歳になる頃には集団行動ができないということで療育センターに通うようになりました。言葉の遅れと集団行動の苦手さにくらべると、運動面での大きな困りごとはなかったのですが……当時の私は、ほかのお子さんと比較しては落ち込んだり悩んだり……ということが多く、しのくんが2歳の頃は、特に「ジャンプができない」ことに悩んでいました。知り合いの特別支援学級の先生に相談したところ、「ジャンプとスキップができることは、運動面の発達の状態を知る一つの目安になる」と聞いた私は、あわてて家庭用のトランポリンを買い、毎日しのくんとジャンプの練習をすることにしました。Upload By keiko練習の成果なのかは定かではありませんが、3歳を過ぎてジャンプができるようになったしのくん。しかし私は、今度は4歳を過ぎても「ブランコに乗れない」ということが気になりだしました。しのくんの隣で、夫がブランコのこぎ方を見せながら教えていたのですが、どうしてもうまくできず、最終的には夫や私の膝の上に乗ってブランコ遊びを楽しんでいました。Upload By keiko年長になってもブランコに乗れない…その理由は?しのくんはこの春から年長になりましたが、いまだにブランコには乗れません。いよいよ運動面での遅れが心配になってきたため、療育センターでの作業療法の時間を半年に1回から2ヶ月に1回に増やしてもらうことにしました。まず、療育センターの作業療法士の先生に、しのくんがブランコに乗っている様子を実際に見てもらうことになりました。しのくんははりきってブランコに乗りましたが、自分でこごうとしたとたん、バランスを崩してブランコから落ちてしまったのです!Upload By keikoその様子を見た作業療法士の先生は「しのくんは頭で考えてから、体が動くタイプ。また、同時に複数の動作を行うことが苦手な特性がある」と教えてくれました。・ブランコが上手くこげないのは、鎖を持つ手に意識が集中しているから。・ブランコから落ちてしまうのは、逆にこぐ動作に集中してしまい、鎖をつかむ意識がおろそかになってしまうから。ということがブランコに乗れない原因のようです(ちなみに、しのくんは、なわとびも上手く跳べないのですが、これも、ブランコに乗れないのと同じような理由なんだそうです)。さらに、作業療法士の先生は「宙に浮く感覚はすごく大事なので、椅子型ブランコに乗って練習するといいよ」とアドバイスしてくれました。スモールステップで取り組んでいくことに作業療法士の先生にいただいたアドバイスをきっかけに、無理に自分でブランコをこぐ練習をさせるのではなく、まずはしのくんを椅子型ブランコに乗せて、後ろから押して宙に浮く感覚に慣れてもらうことにしました。今後は、しのくんの特性をしっかり理解し、ほかのお子さんと比べず、しのくんに寄り添って行動したいと思います。Upload By keiko執筆/keiko(監修:鈴木先生より)療育センターでの作業療法は、感覚統合訓練かと思われます。重力不安や前庭機能の低下などをやわらげる訓練方法で、作業療法士(OT)の人がきちんと講習を受けて訓練する必要があります。訓練した結果を評価する必要があるからです。ASDのお子さんの場合、体の動きを制御する脳のはたらきの違いが、動きのぎこちなさに影響しているとも考えられています。また、バランス感覚の悪さもあるため、片足立ちが苦手なお子さんはスキップやケンケンも苦手です。このような不器用さを訓練するのがOTの行う感覚統合訓練なのです。さまざまな感覚を刺激する公園の遊具やアスレチックの遊びもよいとされています。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月15日『なわとび跳べないぶきっちょくんただの運動オンチだと思ったら発達性協調運動障害(DCD)でした!』本書は、「息子、極度の運動音痴だと思っていたらDCD(発達性協調運動障害)だと診断された話」をSNSで公開し、当事者を中心に大きな反響をよんだ漫画家のオチョのうつつさんが自身の経験を漫画化。息子であるウノくんの幼少期から診断を受けるまで、そして小学6年生になる現在までの、障害と向き合う日々と成長を母の視点から描かれた作品です。監修は、青山学院大学教育人間科学部教育学科教授の古荘純一先生。小児精神医学、小児神経学、てんかん学などを専門とし、発達障害、トラウマケア、虐待、自己肯定感などの研究を続けながら、教職・保育士などへの講演も行い、DCDの認識を広める活動にも力を注いでいます。本書ではオチョのうつつさんとの対談形式で、専門家として解説を記しています。息子のウノくんは年少の頃、キックバイクでこぐことなく倒れたり、折り紙もできず不器用さが目立ちはじめていました。「おかしいな?」と思いつつも様子を見ていたら、小学校に入ったら文字が壊滅的に下手、縄跳びもとべない……。病院で相談すると「体ではなく脳が関係している、DCD(発達性協調運動障害)かもしれません」と言われ、そこから障害と向き合う日々が始まりました。最終章には「DCDと診断されてからの方が学校が楽しくなった」というウノくんのセリフが描かれ、その一言からも早期発見・早期支援の重要性がうかがえるようです。保護者はもちろん、学校関係者、医療などの支援者、そして「ぶきっちょ」で悩んでいる当事者の子どもにも、ぜひ手にとってもらいたい一冊です。感覚の困りごとをストーリーで追体験ーー『カビンくんとドンマちゃん感覚過敏と感覚鈍麻の感じ方 』感覚過敏とは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などの感覚が過敏になり、日常生活に困難がある状態のことをいいます。著者は感覚過敏研究所所長の加藤路瑛さん。当事者として、感覚過敏の課題解決に向き合い、感覚過敏がある人たちが暮らしやすい社会をつくることを目指し活動を行う、高校3年生です。本書は、加藤さんが自身を投影した感覚過敏がある中学生の男の子を主人公にした物語です。また、感覚過敏とは対照的に、寒さや痛みを感じにくい「感覚鈍麻」の女の子の感情や日常も同時に描かれています。2人の学校生活を中心とした日常を読み進めながら、感覚過敏や感覚鈍麻がある人が、どのようなことに困り、悩みや葛藤を抱えて生きているかを追体験することができます。本書は、同様の感覚を体験しているが自覚することが難しい当事者の方や、保護者や支援者など、「どうして困っているのか」が分からないと感じている人たちの理解を助け、さらに、専門家へ相談する勇気を持つきっかけとなるのではないでしょうか。第169回芥川賞受賞の話題作!重度障害の当事者として描くーー『ハンチバック』歴史ある文学賞のひとつ、第128回文學界新人賞、第169回芥川賞を立て続けに受賞した話題作「ハンチバック」。重度の障害がある主人公の女性が、グループホームの一室からあらゆる言葉を送り出すさまを、ユーモアを交えながらも鋭い言葉で描く純文学作品です。作者の市川沙央さんは1979年生まれの43歳。筋力などが低下する筋疾患の「先天性ミオパチー」という難病を患い、中学2年生から人工呼吸器、電動車いすを利用して生活しています。同作の主人公は、市川さんと同じ疾患の40代重度障害者。亡き両親が終の住み処として遺したグループホームの10畳ほどの部屋から有名私立大学の通信課程に通いながら、Webライターとして在宅で記事を書き、日々を過ごしています。重度の障害がある人の生活や心情の一つひとつが丁寧にかつ克明に描写されているのも特徴。当事者だからこそつづることができる切実なリアリティを、フィクションのなかに感じ得ずにはいられません。また物語の中では、市川さん自身の経験から、障害がある人の読書のしづらさも描き、定型発達中心の暮らしへの鋭い指摘も。障害があってもなくても、欲求を持つこと、そしてそれを満たしたいと思うことは当たり前であるということを、熱量高く描かれた作品です。大人になり発達障害と分かったベストセラー作家のコミックエッセイーー『凸凹あるかな?わたし、発達障害と生きてきました』本書は、『ツレがウツになりまして』でベストセラー作家となった漫画家・イラストレーターの細川貂々さんが、48歳の時に発達障害の診断を受けたことをきっかけに、自身の子ども時代から振り返って描いたコミックエッセイです。1969年生まれで現在53歳の貂々さんは「発達障害」という概念がまだ社会に浸透していなかった頃に子ども時代を生きてきました。保護者や学校の先生から「フツウにしなさい」「なんでフツウにできないの?」と言われ続け「フツウ」になろうと頑張るもうまくいかず、大人になっても生きづらさを抱えたままでした。しかし、48歳になり発達障害の診断を受けたあと、生きるのが楽になった貂々さん。自身と同じように発達障害の特性がある人たちが堂々と生きられることを願い、本書を執筆しました。本人にも周りの人にも分かりづらい発達障害。当事者の目線で4コマ漫画でエピソードがつづられているので読みやすく、貂々さんの苦悩や困りごとがまっすぐに伝わってくるようです。さらに、明治大学子どものこころクリニックにて院長を務める精神科医の山登敬之先生による「発達障害の基礎知識」も収録されています。『特別支援教育とアクティブ・ラーニング 一人ひとりの違いを活かす通常学級での教え方・学び方』2022年文部科学省の調査によれば、小中学校の通常学級に在籍する発達障害の可能性があり、特別な支援を必要とする子どもは推定値8.8%、35人学級の場合、およそ1クラスに3人いる割合となります。ほかにも、心理的な問題を抱える子どもや日本語が母語ではない子どもなど、さまざまな教育ニーズを抱えた子どもたちが在籍しており、「全ての児童にとって、分かる、できる、楽しい授業であること」が求められています。文部科学省による定義では、アクティブ・ラーニングは「学習者の能動的な参加を取り入れた授業、学習法の総称」とされています。教員が教え、生徒がそれを聞く、という一方通行の講義形式ではなく、生徒自身が主体的に調査や発見をしながら課題の解決に取り組んでいきます。本書では、アクティブ・ラーニングとは「主体的・対話的で深い学び」と考え、通常学級における「アクティブ・ラーニング」を進めるポイントを、理論的背景や実践をもとに紹介されています。第1章では、多様性のある通常学級におけるアクティブ・ラーニングから始まり、アクティブ・ラーニングの基礎知識や学級経営に加え、実際に導入した学級の事例などが具体的に記されています。個別最適な学びと協働的な学びの充実を目指す学校現場の教師はもちろん、子どもたちと関わる福祉領域の支援者、そして保護者の方々へお薦めの一冊です。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年08月14日「障害」について深く考えたことがなかった私私は身近に障害のある人がいたことがなく、障害者と直接関わった経験もないまま大人になり、母親になりました。世の中にはさまざまな障害のある人がいるけれど、それは自分とは関係のない、どこか遠い世界の話のように思っていたのです。そんな私がまさか障害のある子どもを産み育てることになるなんて、想像もしていませんでした。妊娠すれば障害のある子どもが生まれる可能性を、誰しも一度は考えることがあるとは思いますが、私はそんなときでも「わが子に限って大丈夫だろう」と安易に考えていました。Upload By みん障害があるかもしれないわが子を心から可愛いとは思えない日々でも次男のPを出産後、わが子の成長に違和感を感じはじめ、発達障害の可能性を疑い、その不安がみるみる現実のものとなっていく日々は本当につらく苦しい時期でした。息子に発達障害があるかもしれないと分かった頃は、一体どの程度の障害なのか?どんな風に成長するのか?がまだまだ未知だったので、障害のあるお子さんをもつ人のブログやSNSを読み漁っては、不安に思っていました。見ず知らずの人の子どもとわが子を比べては、感情の浮き沈みが常にありましたし、「障害があってもわが子は可愛い」という障害のあるお子さんを育てている親御さんたちの言葉を耳にしても、私にもそんな風に思える日が来るの?と正直自信がありませんでした。なぜなら、毎日Pと関わることに必死で、初めての育児でもないのにこんなに育てづらいものなのか?と、1歳半を過ぎた頃からは可愛いと思う余裕もなく目まぐるしく日々が過ぎていくだけだったからです。Upload By みん将来を悲観していた私…障害の受容へと繋がったきっかけは?そんな悲観的だった私の心に変化が現れたのは、Pを療育園へ入園させた時期です。それまで、「こんなに大変な子どもはどこにもいない!周りのお母さんたちは育児がラクで羨ましい!」と卑屈になっていた私の気持ちが、入園とともに少しずつ溶けていきました。なぜなら、療育園にはPと同じように困りごとを抱えたお子さんと、私のように育児に悩み、疲れているお母さんたちがたくさんいて、そんな親子を助けてくれる療育の知識や経験をもった先生方がたくさんいたからです。同じ目線で私の話を聞いてもらえ、共感してもらえる療育園の環境はたった1人で戦っているわけじゃないと実感できましたし、何より孤独ではなくなりました。それに療育園では、困りごとを相談すれば関わり方のアドバイスをもらえ、先生たちの知識や経験の多さに救われながら、私自身にも知識や経験が増えていきました。同時に障害のある子どもへの福祉制度のことや、就学、就労についてなども見聞きする機会が増えていきました。Upload By みん「想像できない」ことで不安になるのなら、「知る」ことで少しでも不安を和らげよう!「Pの将来はどうなってしまうんだろう?」と悲観ばかりしていましたが、こんな制度やこんな場所があるんだ!と具体的に想像することができ、現実的に考えられるようになったことが、私にとっては障害の受容へと繋がるきっかけになったと思います。誰だって未来が想像できないと不安だし心配になると思います。私はこれまで障害者と関わりがなかったために、障害者の生活や人生に対する知識が全くなく、メディアなどで見聞きしていたマイナスなイメージばかりを持っていたので、わが子に障害があるとなると、どうしても悲観的になるし、戸惑うのも当たり前だったと思います。Upload By みんでも子どもの未来は障害のある無しに関わらず、親がいくら理想をもっていても、逆に絶望したとしても、結局は子どもと共に過ごす日々の中で一緒につくっていくものなんだと感じました。子どもの成長に対して、親が勝手に過信や期待をしすぎるのも、悲観的になったり諦めたりするのも、どちらも違うと思いますし、子どもの現在を見て今必要なことやできる限りのことをし、精一杯関わっていくことで、Pにとっても私たち家族にとっても、自然とより良い未来へと繋がっていくと信じています。執筆/みん(監修:森先生より)「子どもを可愛いと思えない」というお母さんは、子どもに愛情を持っていないわけではありません。むしろ反対で、子どもへの責任感が強すぎて、その重圧から育児を素直に楽しめなくなっているのです。真面目で思い詰めてしまうタイプに多いでしょう。最愛のわが子に障害があると伝えられたら、受け入れられない気持ちがわいてくるのは当然のことです。受け入れられないことすら受け入れられず、自分を責めるという悪循環に陥ってしまう方が少なくありません。同じ状況にいる人にしか分からない葛藤や悩みがあります。当事者やその家族同士が関わる機会があると、悩んでいるのは自分だけでないことに気がつきます。悩みを安心して話せて、理解し合える人がいると思うだけで、心理的な負担はグッと減ります。また、人は漠然とした未来に対して一番不安を募らせるものです。将来を具体的に想像できるような道筋を見聞きすることで、障害を受け入れて、地に足をつけて準備を進めることができますね。1人で不安を抱えていないで、まずは行政や療育センターに相談してみるといいですね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月14日障害あるお子さんとその家族を閉園後の動物園へご招待ーー「ドリームナイト・アット・ザ・ズー」9月2日(土)野毛山動物園にて開催Upload By 発達ナビニュース2023年9月2日(土)、横浜市の野毛山動物にて閉園後の時間に「ドリームナイト・アット・ザ・ズー」が開催されます。「ドリームナイト・アット・ザ・ズー」とは、障害のあるお子さまとそのご家族を閉園後の動物園に招待し、楽しいひとときを過ごしてもらう趣旨で開催されている国際的な取り組みです。1996年にオランダのロッテルダム動物園から始まり、現在では世界各国約300の動物園・水族館で実施されています。野毛山動物園は、みなとみらい21地区を眼下に見下ろす高台にある、野毛山公園の中にあり、横浜の中心に位置する“身近な動物園”として開園から70年以上、人々に親しまれています。 専用の駐車場はありませんが、電車やバスの公共交通機関からのアクセスもよく、野毛山公園周辺エリアを散歩しながら歩く楽しさも。まだまだ暑さが残る9月。暑い昼間を避け、気温が下がった夕暮れの動物園で、夜の動物たちを観察してはいかがでしょうか。家族の思い出となる特別なひとときを楽しんでください。日時:2023年9月2日(土)時間:17時00分~19時00分(※最終入園18時)料金:無料場所:野毛山動物園(横浜市西区老松町63-10)申込:不要定員:なしアクセス:JR/地下鉄「桜木町」駅下車徒歩15分または、市営バス「野毛山動物園前」下車すぐ対象:身体障害者手帳・療育手帳(愛の手帳)・精神障害者保健福祉手帳をお持ちのお子さまとそのご家族、または、特別支援学級へ通学されているお子さまとそのご家族※不明点は野毛山動物園へお問合せください問合せ:野毛山動物園電話 045-231-1307※クリックすると、発達ナビのサイトから「ドリームナイト・アット・ザ・ズー」のページに遷移します。子どもの頭を衝撃と火の粉から守る!コンパクトな「防災ヘッドガード」キャップ型防災頭巾7月12日(水)先行販売開始!Upload By 発達ナビニュース福祉用具の企画・販売を行うキヨタ株式会社は、頭部への衝撃を緩和する障害者(児)用頭部保護帽の企画販売に携わってきた知見を活かし、衝撃緩和と防炎機能を兼ね備えた折りたためる防災用キャップ「防災ヘッドガード」を開発しました。一般販売に先駆けて、応援購入サイト「Makuake」にて7月12日(水)から先行販売を開始しています。「防災ヘッドガード」は、園児がよくかぶる日よけのフラップつき帽子のデザインを採用。防災頭巾はその形状に馴染みがないため取り扱いに戸惑う子どもも多いとか。保育園や幼稚園で慣れ親しんでいるキャップ型デザインであればとっさのときに戸惑うことなく装着でき、さらに長時間の着用にも耐えることができます。また、日よけフラップはポケットにもなっており、軍手などの収納も可能です。子どもの頭を衝撃から守る『衝撃緩和』と火の粉から守る『防炎』2つの機能を合わせ持つ同商品。内蔵されている低反発エラストマー樹脂により防災頭巾の約4倍の衝撃緩和性能を実現し、帽子本体には公益財団法人日本防炎協会認定済み防炎生地を使用しています。さらに、コンパクトに折りたためるため保管に場所をとらず、非常持出袋やデスクに収納可能です。軽量コンパクトで子どもが慣れ親しんでいるキャップ型デザインは平時でも気軽に使用できます。いざというときに備えて、ご家庭で避難訓練を実施するなど、防災レベルの向上を図ってみてはいかがでしょうか。<製品概要>商品名:KM-1000X防災ヘッドガード種類:2色・2サイズ内容:応援購入サイト「Makuake」にて先行販売※~2023年8月16日 18:00(水)サイズ:こども用(52~54cm)・大人用(58~60cm)カラー:ブルー・ピンク素材:帽体/ポリエステル100%(防炎加工)衝撃吸収材/スチレン系エラストマー■先行販売プロジェクト名:お子様の“もしも”に備える防災ヘッドガード期間:2023年7月12日(水)10:00~8月16日(水)18:00URL: ■商品詳細防炎ヘッドガード①子ども用(52~54cm)、2色展開【ブルー、ピンク】一般販売予定価格\4,620/税込②大人用(58~60cm)、2色展開【ブルー、ピンク】一般販売予定価格\4,950/税込「Makuake」先行販売価格※~2023年8月16日(水) 18:00①子ども用(52~54cm)、2色展開【ブルー、ピンク】一般販売予定価格より最大20%オフ②大人用(58~60cm)、2色展開【ブルー、ピンク】一般販売予定価格より最大20%オフ販売場所:キヨタオンラインショップ ※~2023年8月下旬より販売開始予定※クリックすると、発達ナビのサイトから「キャップ型防災頭巾」のページに遷移します。不登校に対する偏見、社会イメージを変えたいーー「#不登校は不幸じゃない」8月20日(日)全国各地・オンラインにて一斉開催Upload By 発達ナビニュース実業家の小幡和輝さんが発起人となり、2018年より不登校のイメージを変えたいと、全国47都道府県すべてでイベントを開催しムーブメントを起こしてきた「#不登校は不幸じゃない」。2020年からはオンラインのみでの開催でしたが、今年度より全国開催を3年ぶりに再開。全国各地のおよそ100会場とオンラインにて、2023年8月20日(日)に一斉にイベントが開催されます。「不登校で苦しむ子どもたちを救いたい」という趣旨のもと、毎年夏休み終了前のこの時期に開催される本イベントは、過去の累計参加者は5,000人を超え、子どもたちに多様な生き方を伝える機会をつくってきました。また、SNSにおける「#不登校は不幸じゃない」の関連投稿はのべ5万件を超えています。「不登校は不幸じゃない」をコンセプトに全国各地の主催者がそれぞれ思いを持って場づくりをし、会場ごとにさまざまなイベントを企画。過去には、座談会や講演会、ゲーム大会、スライムづくりや料理教室などまで、バラエティ豊かなイベントが実施されています。お住まいの地域の会場ではどのようなイベントが行われるか、確認してみてはいかがでしょうか。オンラインでは小幡さんが各業界からゲストを招き、対談を配信。ゲストは不登校エッセー漫画で注目されている作家の今じんこさん、脳科学者の茂木健一郎さん、実業家の吉藤オリィさんが登壇します。本イベントはYouTubeでオンライン配信され、どなたでも参加可能です。<詳細>日時:2023年8月20日(日) 13:30~17:00会場:オンラインおよび、全国のサテライト会場参加費:無料※クリックすると発達ナビのサイトから小幡和輝さんのオフィシャルページに遷移します。の申し込みページはこちらからご確認ください持続可能な社会づくりを目指すーーバーチャルミュージアムで「パラアート」ギャラリーを展開し新たな就労促進へUpload By 発達ナビニュースバーチャルミュージアムとは、「誰もが、いつでも、どこからでも」展示を鑑賞できるWebコンテンツです。パソコンやスマートフォン、タブレットを通して、展示室を巡ることができます。このバーチャルミュージアムに、パラアート作品の展示を行うことで障害者の新たな就労促進へとつなげる活動がスタートしました。この取り組みは、バーチャルミュージアムという利便性の高い場所にパラアート作品を展示することで「アートを通して人や社会とつながりたい」と願う障害がある人と、作品を求める企業や個人との架け橋となり、新たな就労促進につなげることを目的としています。そして、誰もが自分の力で生きることができる持続可能な社会を応援します。今回の第1弾では、パラアート作品を自由に見るところまでのしくみを実現。これをきっかけに、今後は作品を形で利用したい企業や団体向けにビジネスとしても展開していく予定です。固定概念に縛られることなく、自由で純粋な発想が表現されているパラアート作品の数々。バーチャルミュージアムという現代の世界に流通させることで、新たな就労支援が実現されようとしています。この取り組みを担うのは、バーチャルミュージアムCGを使い展示会などを開催できる空間を貸し出す事業を行うMP-Strategy合同会社と、発達障害がある人たちに「伝わる喜び」「分かり合えるうれしさ」「つながり合って生きる幸せ」を感じてほしいという理念のもと、放課後等デイサービスや就労継続支援B型やショートステイなどを行う施設を運営するピュア。両社は、パラアートの活動を通して人々に勇気や希望を与える作品づくりを目指しています。※クリックすると発達ナビのサイトから「バーチャルミュージアム」のページに遷移します。バーチャルミュージアム「パラアート」展示はこちらLITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年08月13日中学校の勉強が苦手、不安が大きい…自閉スペクトラム症のある中学生発達障害の専門家が出会った発達が気になる子どもたちや、その保護者の抱えていたリアルな「困った!」をもとに、対応策などをドキュメントタッチで解説します。今回は、自閉スペクトラム症がある中学生のエピソードです。勉強の遅れや友達付き合いの苦手さがあり、だんだんと不登校に。英会話の個別レッスンだけは楽しそうに通っていて…。Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談解説:不登校のお子さんの見守り方ーー臨床心理士今回は、自閉スペクトラム症のある中学2年生のエピソードをもとにお届けしました。お子さんの不登校が続いている場合、保護者の方は学力の低下や受験の見通しが立たないことから、大きな不安を感じることと思います。お子さんへの関わりや周りとの連携のポイントは下記のとおりです。1.勉強以外の部分で価値を見出してあげる勉強が苦手・学校に行けないというのがセットになり、自己肯定感が下がってしまうことが多くあります。「きょうだいに優しく接している」「年下の子どもやお年寄りと関わることができる」「アクセサリーづくりが上手」「お菓子づくりがうまい」など、勉強以外で子どもが興味を持ったり取り組めそうなところに価値を見出してあげるのも大切です。自己肯定感が上がり、対人関係に自信が持てたり、家庭科やボランティアといった活動への参加につながるなど積極性が高まりやすくなります。そして結果的に学習にも取り組みやすくなるでしょう。2.相談をすることで支援体制をつくるカウンセリングルームで専門家には相談できるけれど、学校や習い事の先生には「ちゃんと説明できるだろうか」「分かってくれるだろうか」「何を言われるだろうか」…と相談を躊躇してしまうことがあるかもしれません。保護者の方が相談できないと、お子さんも相談できないことが考えられます。障害についてどこまで伝えるのか、困っているシーンをどのように説明するのか、どのような合理的配慮を求めるのかなど、事前にかかりつけの医師や専門家と話し合うことで、安心して相談することができます。3.家庭、学校以外の第3の居場所を見つける今回のお子さんのように、家庭や学校以外の居場所を見つけることは、人間関係を育むきっかけになったり、新しい一歩を踏み出せたりすることにつながります。また、好きなことに取り組むことで、学習や進路への興味が芽生えることもあるでしょう。「習い事に行けるなら、学校に行けるのでは」という思いが過ることもあるかもしれませんが、まずはお子さんの興味関心から広げていくことを大切にしてみてください。4.あくまでも決めるのはお子さんにする選択肢を提示することは大切ですが、最後はお子さんに決めさせるようにしましょう。また、保護者の方はそのあとに起こるかもしれないさまざまな可能性を想定し、選択肢を用意しておくことが大切になります。もしも、お子さんが選択してうまくいかなかった場合、「だから言ったでしょう」といった指摘を控えて、受容し、次につなげていきましょう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月12日お友達におごることは良いこと?わが家の長男は現在6年生、発達障害のグレーゾーンです。これは数年前にあったお友達とのお金のトラブルです。ある日、外で遊んでいた長男が帰ってくるなり「ぼく今日ね、Kくんと遊んでたときにね、ちっちゃいお菓子を買ってあげたんだよ」と言いました。長男の顔は「ぼく、優しいでしょう」と言わんばかりの満面の笑顔でした。なるほど、長男は良いことをしたと思っているようです。私はお友達にお菓子を買ってあげるとか、「おごる」というのはまだ早いこと、もし一緒に遊ぶときにお友達が財布を持ってこなかったら、駄菓子屋さんには行かない方がいいことを伝えました。長男は素直に「はーい」と返事し、これで一件落着したかのように見えました。Upload By 星河ばよ「2000円持ってきてね」と友達から言われて長男はその後も引き続き、学校から帰ってきてはKくんと仲良く遊んでいるようでした。そしてある日いきなり「ママお願いがあるんだけど。2,000円貸してくれない?」と言って、Kくんからのお手紙を渡してきました。「○月△日ぼうねん会午後1時からやります。2,000円持ってきてね。Kより」お手紙はかわいらしいお誘いの内容でした。この時期に忘年会?それはともかくとしても小学生にとって2,000円はかなりの大金では……と私は慌てました。しかもKくんは家庭の事情でお金を出せないから、長男にぼうねん会の会費2,000円を出してほしいと言うのでした(ちなみに用途はファミリーレストランで食事するため)。Kくんがお金を出せない理由は、ゲームに3万円ほど課金してしまい、しばらくの間お小遣いがストップしているとのことでした。ぼうねん会をやりたいと言う気持ちはくんであげたいものの、2,000円は小学生にとってやっぱり高い気がするし、うちだけが出すのも何か違う気がしたので、長男は不満そうでしたが断ることにしました。ちょうどうちにやってきたKくんにその旨を伝えると、Kくんは気まずそうに去って行きました。Upload By 星河ばよ突然の先生からの電話これで全て解決したかと思っていたのですが、ある日学校の先生から一本の電話が入りました。「実は保護者の方から電話があり、Kくんが長男くんにお金を借りているとか……」長男がKくんにお菓子を買ってあげたのは1回ではなく複数回で、400円ほどおごっていたとのこと。またKくんは長男だけではなく、ほかの友達にもお菓子をおごってもらっていたようです。その後、Kくんのお母さんがKくんと共にうちに謝りに来てくれて、お金を返してくれました。Kくんのお母さんは何度も何度も頭を下げていて、こちらが申し訳なくなるほどでした。ぼうねん会については、年末に夫婦で忘年会に行ったりしていたので、息子はそれを覚えていた、すぐ真似をしたがる子で…とのことでした。私は、お金のやり取りについてちゃんと話していなかったこちらにも責任があること、よかったらこれからも長男と一緒に遊んでほしいことを伝えて頭を下げました。Upload By 星河ばよおわりにこの一件で、子ども同士のお金のやり取りについて、あらためて考えるいい機会になりました。お友達へのお金の貸し借りやおごりおごられについては、少なくとも親からお小遣いをもらっている段階ではダメだよときっぱり伝えました。小学生になると子どもだけで外に遊びに行かせたりして目が届きにくくなるから、前もってのお約束は大事だなと身を持って感じた出来事でした。執筆/星河ばよ(監修:室伏先生より)星河ばよさん、息子さんの周りでのお金のトラブルについて、具体的に共有してくださり、ありがとうございました。なかなか難しい問題ですが、今回のことは息子さんがお金の使い方について学ばれた、とても貴重な機会になったのですね。ルールを決めたうえで、お金の管理を小学生のうちから学んでもらうことはとても重要なことですね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年08月12日父から溺愛されている私は、父の影響で趣味も同じ私は、自閉スペクトラム症グレーゾーン、軽度の脳性麻痺があります。脳性麻痺は軽度なので、日常生活は介助なしで送っています。一人っ子の私には、母曰く「娘への溺愛ぶりがすごい」という父がいます。父とは昔は仲が良く、私の趣味であるモーターショーを見ること、野球観戦、風景写真の撮影などはすべて父の影響です。これらの趣味の話では父と話が弾み、楽しく盛り上がっていました。モーターショーに行きたいと言えば一緒に付き合ってくれますし、新型の車種が出たら行きつけの販売店に行き、父の運転で試乗もしていました。また当然ドライブも一緒です。父の影響とは言え、本当に同じ趣味を持っていたので、この頃は仲良く過ごしていました。Upload By ユーザー体験談「聞き役」ができない父親。聞き流すこともできず、私の話を止めるようにそんな父に違和感を持ち始めたのは、中学生になってからでした。音楽も好きな私は、中学校に入学すると吹奏楽部に入りました。すると、それまで私の趣味の話をニコニコ聞いて語り合っていた父が、180度変わってしまったのです。父は音楽に全く興味がありません。それは仕方ないとは思います。ただ、私が音楽の話をしていると相槌すらせず無視し、さらには話の途中で急にさえぎって私の話を止めてしまうのです。興味がないなら聞き流せばいいのに、私が音楽の話をし続けるのを許せないのでしょうか…?ちなみに父はバイクも趣味でよく話題にしていますが、私はバイクには興味ありません。でも、父の話には「ふーん」、「へぇー」と相槌では応じています。父が熱心に話す様子を見ながら「バイクが好きなんだなぁ」という思う程度です。父から見た私の音楽好きも、これと同じ対応でいいと思うのですが、そもそも話を遮ろうとするのはなんなのでしょうか?そのとき思ったのは、「父は自分が『聞き役』になることができないのでは?」ということでした。興味のあることしか聞けない、人の話をさえぎる…もしかしたら父にも自閉スペクトラム症に近い特性があるのかもしれない……と。この頃から、父との会話は減っていきました。Upload By ユーザー体験談大学へ通う私への嫉妬?根掘り葉掘りの質問にもううんざり!私が大学に入って以降は、父からの嫉妬を感じるようになるとともに、干渉がひどくなりました。専門学校卒業の父にとっては、大学に通う私は羨ましいようです。例えば、講義の話をしていると内容を根掘り葉掘り聞いてきます。ただの興味で聞いてくれればいいのに、言葉の端々に嫉妬を感じるような聞き方をするので、こちらはなんだか嫌な気持ちになります。父にどう思っているのか聞いたこともあるのですが、黙り込んでなにも答えてくれませんでした。その他にも母と雑談をしていると首を突っ込んできたり、聞いているのかと思えば、ただ自らの経験を自慢げに話してくるなど、娘としては父のことが大人げなく映る機会も増えました。もちろん帰宅時間、どこに行くのかについてもしつこく聞いてきます。Upload By ユーザー体験談脳性麻痺がある私は介助なしで歩けるとはいえ、普段の歩き方は「爪先歩き」です。そんな私を気遣ってか、父は自宅から最寄り駅まで車で送り迎えをしてくれます。脳性麻痺以外にも聴覚過敏があり、自閉スペクトラム症グレーゾーンの私のことを心配に思っている気持ちは充分に伝わりますし、送り迎えには感謝をしていますが、だからといって過干渉には困ってしまいます。Upload By ユーザー体験談そんなこともあり、家では母と2人のときにだけ大学の話をして、父がいる前では話さないというのが、母との暗黙の了解となってしまいました。大学入学以降は過干渉に拍車がかかっているので、この解決策としては物理的に離れる時間を作ることしかないのかなと思っています。そうしないと、父には分かってもらえないでしょう。この父のいる家への帰宅渋りが解消される日は、私が家を出る日なのかもしれません。そうならないように、昔のように父との関係が良くなることを願っています。イラスト/星河ばよエピソード参考/Zero(コメント:鈴木先生より)ASDの人は自分の好きなことはとことん話しますが、興味のないことには耳を傾けようとはしない方が多いです。これは学校の授業でも同じです。興味のある教科では真剣に授業を聞いてノートを書きますが、興味のない教科には上の空になることが多いようです。子どもがASDのグレーゾーンで、親御さんはASDの特性がつよくあらわれることはよくみられます。ASDの特性が強く出ている場合、親子でもそれぞれのこだわりによってぶつかり合うことがしばしばあります。ご本人も気づいている通り、父親との関係を良好に保つためには、大義名分上、物理的に父親から離れる方法を模索するしかありません。しょっちゅう会っていると溜息が多くなりますが、時々会うようにすれば父親とのいい関係が続けられるのではないでしょうか。父親との良い関係を願うのならば、「細く長く」というイメージがいいと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月11日朝からタイマーは大活躍!起床アラームだけでなく、ゲーム時間を弟と分けるときにも使っていますうちではタイマーが大活躍!使っているタイマーは、現在小4のミミが小1の頃買ったもので、4年のお付き合いになります。毎日酷使しているだけでなく、何度も落としたり手荒く扱われたりもしていますが、頑張って働いてくれるありがたい存在です。Upload By taeko朝、ミミはタブレットのアラームで起きます。疲れているときは起きられないこともありますが、早いときは朝5時には起床する早起きさんなミミ。早起きをした日は、6時30分までタイマーを設定して、テレビやゲームをOKにしています。しかし、最近ミミにライバルが登場しました。弟のふー(年長クラス)です。ふーも早く起きるようになってきたので、朝、ゲームをやりたいとなると、2人で時間を分けないといけないのです。うちでは、ゲームやテレビの時間は基本的に本人たちが決めています。ですので、このようにやる時間がバッティングしてしまった場合は、本人たちで話し合う必要が出てきます。半分半分に分けるのか、別の時間にやってもらうよう交渉するのか…。分ける場合はもちろんタイマーが大活躍します。親としては、タイマーで時間の管理や人との関わりを学べる良い機会だと思っています。朝食後はすぐに遊び始めるので、「あと○分で歯磨きだよ」と告知しタイマーをセットしておくと、渋々歯磨きをしてくれます。私が言わなくてもタイマーが鳴れば時間だとわかってくれるので、本当に助かります!Upload By taeko放課後は学校での疲れを取るために即テレビタイム。すると、宿題がスムーズに!放課後は、真っ直ぐ帰宅するミミ。ミミには放課後一緒に遊ぶような友達はいないため、公園に行くことはありません。私としては、子ども同士で遊んだり、ケンカしたり裏切られたり、仲直りしたり…といろいろな経験をして欲しいと思ってしまいますが、ミミは学校で散々疲れ果てて帰ってくるので、人と関わりたくないのかもしれません。2年生くらいまでは、このように疲れている状態でも帰宅後はまず宿題、それが終わったらテレビをOKにしていました。しかし、宿題はなかなか進まず、親子ともにストレスに…。この時間にやっても不効率だと感じたので、帰宅後はテレビを40分程度OKにして、おやつ&テレビ休憩を先に取らせることにしました。タイマーが鳴るとテレビは終わり。その後はおもちゃで遊び始めたり、やる気があるときは宿題を始め、終わったらまたテレビをOKにしています。宿題を先延ばしにしているときはテレビはナシです。この形になって、宿題もスムーズに進むようになりました。Upload By taeko夜8時過ぎにはお風呂を済ませ、おもちゃの片づけができたら再びテレビタイムです。弟のふーはまだ片づけに時間がかかるので、ミミの機嫌がいいときは手伝ってくれることもあります。午後8時45分までの時間を2人で分け、タイマーを設定。それぞれ好きな番組を見終わったら、歯磨きをして午後9時に消灯です。Upload By taeko「時間を守る」と言葉で言ってもなかなか守るのは難しいですが、タイマーが鳴ると時間がきたことが分かりやすいですし、本人たちも納得してくれます。また、スマートフォンのアラームですと、画面のロックを解除→タイマーのアプリを立ち上げる…などステップ数が多いので、1回のステップで設定できるタイマーは手間が少なく、わが家では必須アイテム!本当にありがたい存在です。執筆/taeko(監修:室伏先生より)タイマーの活用法をご紹介くださり、ありがとうございました。taekoさんが決めたルールを無理矢理に守らせるのではなく、お子さんの状況や体調に合わせて、ほどよく休憩をとったり、軌道修正したりと、試行錯誤しながらタイマーを上手に使われていらっしゃるご様子が素晴らしいです。最初はうまくいかないこともあったでしょうし、taekoさんとミミさん、ふーさんの頑張りの賜物だと思います。ゲームの時間がバッティングしてしまったときにどうするのかをご兄弟で相談するというのも、今後社会で生きていく上で大事な経験ですね!(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月11日独特のペースと感覚に違和感ありUpload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイわが家の一番最初の赤ちゃんとして、長女ニャーイが生まれました。ニャーイは赤ちゃんの頃から独特な雰囲気を持っていました。普段から物音に対して敏感なところがあり、音楽をかけたり声をかけたりすると、例えそれが小さな音であってもよく反応していました。ところがいったん眠ってしまうと、大きな音がしても起きることがありませんでした。ある風の強い日のことです。私と叔母がベッドで寝ているニャーイを見ていたところ、風で勢いよくドアが閉まりました。驚くほどの大きな音だったのですが、ニャーイはピクリともせず、ぐっすり寝たままでした。これを見た叔母が「この子は耳が悪いんじゃないの?」と心配しました。いつもは音への反応がいいニャーイを知っている私は(そんなはずはない、逆に耳はかなりいいはずだけど)と考え込んでしまいました。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイニャーイが成長して保育園に通うようになると、持ち前の陽気なキャラクターで近所のおばちゃんたちのアイドルになりました。スイッチが入ると歌って踊って、テレビタレントのモノマネをして周囲を笑わせていました。ところがスイッチがおしゃべりモードから空想モードに切り換わると、とたんに電池が切れたオモチャみたいに動かなくなるのです。ある日のランチタイムのことです。ニャーイが通っている保育園で、子どもたちが水場で食事前の手洗いをする時間になりました。ニャーイが手洗いをしていると、いつの間にか担任の保育士がそばに立っていました。その保育士がニャーイの名前を呼んで言いました。「ニャーイちゃん、いつまで手を洗ってるの?」ニャーイが後ろを振り返ると、子どもたちの長い列ができていました。ニャーイは気づかなかったのですが、かなり長い時間、手を洗い続けていたようです。当時の保育士さんは、ニャーイのことをとても心配して、何かと気にかけてくれました。体は止まっていても頭の中は忙しいUpload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイどうしてそんなに長い間手を洗っていたのかと、大人になったニャーイに尋ねてみました。「手を洗っていたら、自分が水滴になって蛇口から水道管に入っていって、浄水場に行ったあと、山に向かってどんどん進んでいって、ダムにまで行くことを連想していた」とニャーイは答えました。ニャーイは頭の中で壮大な旅をしていたわけです。保育士さんから声をかけてもらうまで、イメージの世界で楽しく遊んでいたということです。私も頭の中は忙しいタイプですので、ニャーイの空想癖は気になりませんでした。変わった言葉づかいが愛情不足だと心配されてしまうUpload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイニャーイは感情表現や言葉づかいが独特かつオーバーで、そのうえ愛嬌たっぷりであいさつ上手だったため、近所のおばちゃんたちのアイドル的な存在でした。でも一方では、大げさ過ぎたり大人びて感じる言葉づかいに、愛情不足を指摘する方がたくさんいました。ある日のことです。私がニャーイの手を引いて歩いているときに親戚のおばさんに会いました。するとニャーイは「洋服、お似合いだね」「おばちゃん、若いね」と、まるでドラマの子役のように感情を込めて言うのです。その親戚は、私のそばに近寄ると声をひそめて「愛情不足じゃないの?」と深刻な表情で注意してきました。当時は実家で子育てしていたので、ニャーイは私の母やきょうだいからもかわいがられていました。育児放棄や厳しすぎるしつけはなかったので、決して愛情不足ではないということが分かっていました。でも、まだ子育て経験が少ない当時の私は、なんと説明するべきか分からず、黙り込んでしまいました。もしいま、同じ場面に出合ったら「ニャーイは発達の偏りがある個性的なタイプなので、年齢相応ではないオーバーすぎる表現があるけど、いずれ落ち着くから大丈夫」と言って、相手を安心させてあげることができたと思います。執筆/ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ(監修:井上先生より)感覚の過敏性や、おしゃべりな反面自分の空想の世界に没頭しやすいなどの特性は、それがそのまま社会的に問題になることはありませんが、周囲の人から見ると違和感を感じることがあるかもしれません。ワッシーナさんのように、お子さんの視点から理解していくことで、その特性の良い部分に着目したり、個性として見てあげることもできるようになると思います。また、もし人から何か誤解されるようなことを言われたときに備えて、親として短い言葉で返答する台詞を何バージョンか考えておくと楽になるかもしれません。将来お子さんに「ママは感覚過敏について聞かれたら、こう言っていたよ」と伝えてあげることもできるといいですね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年08月10日発達障害があるわが子、大学で受けられる支援とは?発達障害があるお子さんやその保護者のみなさんが進路選択を行う際、中学校や高校、さらにその先の進路についても考えることも多いのではないでしょうか。そうしたとき、・発達障害のある大学生はどのくらいいるのか・大学受験の際に配慮を求められるのか・授業やレポート、試験では、どのような配慮や支援を受けられるのか・国立大学のほうが合理的配慮を受けやすいのかなど、気になることが尽きないかもしれません。今回は、日本学生支援機構学生生活部障害学生支援課の取り組みや調査結果についてインタビューとともにお届けします。――日本学生支援機構の障害学生支援の概要と役割について教えてください。障害学生支援課:日本学生支援機構は、2004年に創設された独立行政法人で、国や大学等の機関と連携して、奨学金事業をはじめとするさまざまな事業を実施しています。その一つとして、大学等が障害のある学生を支援するための教職員向けの研修事業や、各大学等における障害のある学生の修学支援に関する実態を把握するための調査などを行っています。この調査は、2005年度から大学、短期大学、高等専門学校を対象に毎年実施され、調査結果は当機構のホームページで公表しています。また、9大学を拠点校とする「障害学生修学支援ネットワーク」を設け、各拠点校において、全国の大学等から障害のある学生の修学支援に関するさまざまな相談に応じるなどの取り組みを行っています。――教職員のみなさんに向けた支援、研修等も行われているのですよね。障害学生支援課:当機構では、各大学等の障害学生支援の実務担当者を対象とした研修会を例年行っています。2023年度は7月4日、5日の2日間にわたって、障害種別の学生の修学上のニーズや支援方法、障害学生のキャリア・就職支援に関する内容を取り上げ、オンライン形式で行いました。このほかにも、各大学等の教職員を対象に、障害のある学生に対する支援の在り方や、合理的配慮の提供などをテーマとしたオンラインセミナーを行う予定です。――ホームページで公表されている調査結果、特に具体的な支援事例は学校関係者の方はもちろん、保護者の方にとっても参考になりそうです。障害学生支援課:改正障害者差別解消法が2024年4月から施行されることとなり、私立も含めた全ての大学等において、不当な差別的取扱いや合理的配慮の不提供の禁止などが法的義務とされることになりました。当機構では、2016年度から2022年度まで、大学等における不当な差別的取扱いや合理的配慮に関する紛争の防止・解決等の事例を収集し、そのうち、大学等で合理的配慮を行う際などに参考となるものを選定して、ホームページで公表しています。――例えばどのような事例が見られますか。障害学生支援課:2022年度に公表した事例のうち、発達障害に関しては、それぞれの特性に応じた配慮がされた例を公表しています。例えば、手書きが困難である学生に出願書類のパソコンでの作成を認める例や、実験科目においてティーチング・アシスタントが実験の進行に係る補助やアドバイスを行う例などがあります。このほか、学生から申出があった配慮について、大学と学生とが話し合い、大学が提供できる内容で学生も納得して決定した例などを公表しています。――これから障害学生支援で注力されることを教えてください。障害学生支援課:大学等に在籍する障害学生の数は年々増加し、これに伴って障害学生を受け入れる大学等も広がっている傾向にあります。各大学等では、そうした学生が適切な支援を受けて充実した学生生活を享受することができるよう日々尽力しています。当機構としても、引き続き、セミナーの開催や情報発信を通じて、各大学等の取り組みを支援していきます。――ありがとうございました。データで見る!発達障害がある学生への支援日本学生支援機構では、診断書のある発達障害学生だけでなく、診断書はないものの発達障害があることが推察され教育上の配慮を行っている学生についても調査を行っています。2021年度は大学、短期大学、高等専門学校を合わせて1,176校から回答を回収、発達障害の診断の有無にかかわらず支援を受けている学生は、8,622人という調査結果でした。Upload By 発達ナビ編集部日本学生支援機構|令和 3 年度(2021 年度) 大学、短期大学及び高等専門学校における 障害のある学生の修学支援に関する実態調査結果報告書(P69)次に、主な入学後の支援内容について見てみます。実施している学校数にはばらつきがあるものの、授業支援だけでなく専門家によるカウセリングや自己管理指導、障害学生向け求人情報の提供など授業以外の支援も行われていることが分かります。Upload By 発達ナビ編集部日本学生支援機構|令和 3 年度(2021 年度) 大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査結果報告書(P72)それでは、インタビュー内でも取り上げた支援事例について、その一部をご紹介します。【受験・入学】ASD(自閉スペクトラム症)のある学生:「試験時の座席について、一番後ろかつ隣は空席を希望(私立短大)」Upload By 発達ナビ編集部日本学生支援機構|「障害者差別解消法」施行に伴う障害学生に関する紛争の防止・解決等事例集令和4年度収集事例(P54)【授業・研究】ADHD(注意欠如・多動症)のある学生:「障害があることをクラスメートに知られずに配慮を受けたい(国立大学)」Upload By 発達ナビ編集部日本学生支援機構|「障害者差別解消法」施行に伴う障害学生に関する紛争の防止・解決等事例集令和3年度収集事例(P32)【試験・単位】SLD(限局性学習症)のある学生:「本人はレポート代替を希望していたが、かかりつけ医の所見に従い別室受験とした(私立大学)」Upload By 発達ナビ編集部日本学生支援機構|「障害者差別解消法」施行に伴う障害学生に関する紛争の防止・解決等事例集令和2年度収集事例(P32)ほかにも、受験時、授業や課題についてなど、さまざまな支援事例が紹介されています。気になる方はぜひチェックしてみてください。日本学生支援機構|障害学生に関する紛争の防止・解決等事例集各校の支援内容を確認し、気になることがあれば早めに相談を今回ご紹介した日本学生支援機構の調査結果から、大学、短期大学、高等専門学校では、受験・入学から卒業までさまざまな障害学生支援を受けられる可能性があることが分かります。希望する支援内容によっては、医師の診断書など必要書類をそろえる必要があり、それをもとに学校関係者と丁寧に合意形成を図ることが重要になります。お子さんが進学先で希望する学びを深めて卒業を目指せるように、早めに各校の支援内容を調べてオープンキャンパスなどで相談しておくと安心です。独立行政法人 日本学生支援機構(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年08月09日離れ離れになりそうだった幼稚園Upload By カタバミまちゃには2歳年上のお姉ちゃんがいます。娘は、地域では人気のある人数の多い幼稚園に通っていました。娘は当然弟のまちゃも自分と同じ幼稚園に入ってくると思って張り切っていましたし、幼稚園にはきょうだい枠があるので年少になれば入園できると副園長から伝えられていました。ところが、まちゃが2歳になり「発達に不安がある」と副園長に打ち明けると未就園児クラスから通うように言われました。まちゃはそのときは別の預け合いのサークルに入っていましたが、そこをやめて娘の通う幼稚園の未就園児クラスに通わせることにしました。しかし、入園選考の時に園からは「別の幼稚園に入園してほしい」と言われ、大変驚きました。そのことを発達センターの臨床心理士に相談すると「きょうだいを別の幼稚園に通わせるのはお母さんの負担が大きいですし、家庭にも影響が出てくるかもしれません。それならまちゃくんのお姉さんに転園してもらって、一緒に別の幼稚園に入れてはどうですか」とアドバイスをいただきました。それをそのまま娘の通う幼稚園に伝えたら副園長が「こんなにこの幼稚園になじんでいる娘さんにそんなことはさせられません。まちゃくんもこの幼稚園に入園してください」と言いました。いろいろありましたが、2人は同じ幼稚園に通うことになりました。まちゃの入園後。良いこと、首をひねることUpload By カタバミ入園したまちゃは集団行動がほとんどできず、4月から個別の面談で対応を相談されました。私は大変でしたが、娘はまちゃが幼稚園に入ったことをとても喜んでいました。毎朝私がまちゃの朝の準備を教室で手伝っていると、まちゃの教室まで娘が良く顔を出しました。年長の娘はまちゃのクラスメイトとも仲良く遊び、お世話もしてあげていたようで年少さんたちに人気がありました。幼稚園の年長の行事でサッカー大会があった時、まちゃは自分の教室から抜け出して娘のいる観覧席まで行ってしまったこともありました。しかし、娘はまちゃに落ち着いて観覧するように促してまちゃもそれに従い、ホッとしたことがありました。まちゃはお姉ちゃんの言うことをよく聞いていると先生からも伝えられました。まちゃのお世話で私は幼稚園に行くことが増えましたが、娘はそれがうれしいようでしたし、私も娘の様子を知ることができたのは良かったです。ただ娘は頻繁に「今日もまちゃは先生と園庭で2人きりで遊んでいたよ」と言っていました。教室でずっと過ごせないまちゃが娘の目にどう映っているのか心配でした。娘の就学先は3案。注目する条件と詳しい方との相談Upload By カタバミわが家がある地域では、住所地の学区の学校(指定校)以外の学校に就学を希望する保護者やお子さんが、入学したい学校を選ぶことができる学校選択制度があります(※就学先の選択などは地域により異なります)。わが家から歩いて通える距離にA、B、Cと3つの小学校があり、娘がどこに通うのか考える時期が来ました。そのときは、まちゃに知的障害があるのかまだ分かりませんでしたが、娘が入学した2年後にまちゃも同じ小学校に通う可能性が高いので、それぞれの小学校の「特別支援学級」の状況が少し気になっていました。わが家の学区の小学校はA小学校でしたが、家から1番遠くて娘のお友達もあまり行かないようで、特別支援学級は情緒クラスしかありませんでした。B小学校も特別支援学級は情緒クラスしかありませんでしたが、娘の幼稚園からはたくさんのお友達が通うことになっていました。娘はB小学校に通いたいようでした。C小学校には評判の良い特別支援学級の知的クラスがありました。私は息子のまちゃが小学生になり特別支援学級に通うならここが良いかもしれないと思いました。まず娘と息子を同じ小学校に通わせたいのかという点で迷いました。そこで私は、幼稚園で副園長と経験豊富な先生に就学について聞いてみました。2人ともあれこれ小学校の評判を話してくれましたが最後には「面倒見のいいお姉ちゃんと集団生活が苦手なまちゃくんを同じ小学校に入れたらお姉ちゃんの負担になってしまうかもしれない」と言われました。決定してから数年が経ちUpload By カタバミ結局娘は幼稚園のお友達がたくさん通うB小学校に入学しました。ここには特別支援学級は情緒クラスしかないので、年中のときに知的障害があると診断されたまちゃは入ることができません。そしてまちゃは、評判の良い特別支援学級の知的クラスのあるC小学校に入学して、私が毎朝つき添いで登校しています。今、まちゃが入学して1年と少し経ちましたが、娘は弟が別の小学校に通っていることをときどき残念だと感じているようです。娘の小学校の面談の時に「私の担任の先生に、まちゃという弟がいることをちゃんとお話ししてね」と言いますし、たまに「同じ小学校だったら面倒を見たのに」と言います。私が考え過ぎて2人を別々の小学校にしてしまったかなとも思いますが、今まちゃは特別支援学級からたくさん脱走しているので、授業中に校庭を走るまちゃを娘が見たら、もしかしたら恥ずかしくて悲しかったのではないかとも思います。娘とまちゃは別々の小学校に通っていますが、私の周りできょうだいどちらかに障害のあるお子さんがいるご家族は、きょうだいを同じ小学校に通わせている方ばかりです。わが家のこの選択が良かったのかはいまだに分かっていません。でも良く考えて決めたことですし、娘はどんどん自分のことで忙しくなっているので、これで良かったのかなと思うことにしています。執筆/カタバミ(監修:鈴木先生より)適材適所で、その子に合った教育のできる幼稚園や学校に行くことが望ましいと思います。そのためにも、まずきちんと診断を受けることが重要です。きょうだいが同じ園や小学校に通園通学できることで、良い面もあるでしょう。しかし、幼稚園や保育園のなかには、障がいの理解が少ないにも関わらず受け入れているケースもありますし、逆に園の特色として発達の遅れに理解のある先生の多い園や療育園もあります。お姉さんが弟のために転園や転校をする必要はありません。きょうだい一人ひとり、それぞれに合った場所で過ごしていくことが大切です。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2023年08月09日小さい頃は手がかかったけど…乳幼児期におとなしく育てやすかった長女に比べて、次女は癇癪の強い子どもでした。外出先でも嫌なことがあると大きな声で泣くことも多く、親である私たちも途方に暮れてしまうことがありました。そんな次女も成長するにつれて落ち着きが出てきて、年長の学年になる頃には特に手のかかることのない女の子になりました。そして私はそのことに甘えて、してはいけないことをしてしまったのです。Upload By 吉田いらこ長女の発達関連で頭がいっぱいになり……長女が、クラスの担任の先生から発達検査を勧められたのが小学4年生。そして実際に検査を受けたのが小学5年生でした(検査は予約待ちですぐには受けられないのです……)。当時は夫が単身赴任だったので、長女に関わる全てのことを私1人で担当していました。長女の発達に関する検査を受け、学校と情報共有し、不安を感じやすい長女のためにカウンセリングの予約を入れて……と、保護者である私の毎日は格段に忙しくなりました。長女はこの社会にうまくなじんで生きていけるのか、将来経済的に自立はできるのか。そんな未来のことばかり考えてはネット検索魔になる日々を過ごしていました。関心がすべて長女に向いていて(正確に言うと、長女自身ではなく発達障害のほうに向いていて)、特に発達のことで気になることがない次女のことは完全に放置していました。Upload By 吉田いらこ次女から「私に興味ないの?」と言われた長女に障害の診断が出たことで私はショックを受けましたし、長女のことで学校や病院に足を運ぶことが増え忙しくなりました。それでも子どもたちに悟られたくないので、いつも通りふるまうようにしていました。私自身に自覚はありませんでしたが、きっと心の余裕がなくなっていたのだと思います。ある日、次女に言われたのです。「母ちゃんは私にあんまり興味ないの?」次女は深刻な感じではなくちょっとふざけた風に言ったのですが、もちろん本心では寂しかったのだろうなと思います。ふざけた風にしか伝えられなかったのかと申し訳ない気持ちになりました。しっかりしているように見えても、まだ小学生ですので甘えたい部分もあったのだろうなと感じます。きょうだいに等しく子ども全員に気を配ることの難しさを痛感しました。Upload By 吉田いらこ独り占め時間をつくる少しでも次女の不安を取り除けたら……と思い、それ以来「独り占め時間」をつくっています。学年の行事によって、下級生の次女だけが休校や早く下校することがあるので、そのときは次女と2人で遊びに行ったりしています。2人きりでお出かけするのがとても楽しいようで、たくさん甘えてくるので、いろいろ我慢させているのだなと反省しますし、子育ての難しさを感じます。これからも模索しながら姉妹どちらも楽しく過ごすことのできる家庭をつくっていけたらと思います。執筆/吉田いらこ(監修:井上先生より)きょうだいのうちどちらかが発達障害の診断があり、それに関連する不安や情報収取支援の必要性から、親がそれにかかりっきりになってしまうことは多くあります。小学生くらいのきょうだい児の場合、「(私も障害があるきょうだいと)同じくらい親にかまってほしい」など、自分ときょうだいの比較をしてしまいがちになります。また甘えたい気持ちも多くある年齢だと思います。いらこさんがされているようにきょうだい児さんが親を独り占めできる時間をつくってあげることはとても大切です。これをクオリティタイムと呼ぶこともあります。日常生活のなかで習い事の送り迎えなど、短くても無理せずとれるタイミングで行うとよいでしょう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月08日遠回り、マンホール観察…自閉症息子のこだわりは私の体力を削り続け…現在小学3年生の息子は、2歳の時に知的障害(精神発達遅滞)、自閉スペクトラム症(非定型自閉症)の診断を受けています。息子のこだわりに気づき始めたのは9ヶ月、離乳食後期の頃でした。それまで私がスプーンで食べさせていたのですが、これを急に拒否!自分の手で食べるようになり、それからはクリームシチューや餡かけなどのトロッとした物は一切受け付けなくなりました。トロッとしたものが本当に嫌だったんでしょうね…。息子のこだわりはここからはじまり、いまも絶好調!行きたい場所、やるべきことにこだわりまくり、私の体力を遠慮なく削っていきます。例えば……・駅までまっすぐ歩いたら徒歩5分のところを、わざわざ遠回りをして2~3倍の時間と距離をかけて移動。・電車で帰れば10分のところなのに、バスで1時間近くかけて帰る。しかも最後列右側の席限定!・髪の毛が地面についてもおかまいなし。マンホールがある度に中をのぞいたりにおいをかぐ。マンホールは数メートルごとにあるので、全然進まない……。・目の前の信号が青なのに拒否し、遠い場所にある決まった信号からしか渡らない!・エレベーターに乗ったら、僕は右側、ママは左側のボタンの横で立ってという指示。満員だから無理だよと伝えても、ママは左側へ行けと妥協なし……。大雨や大荷物でクタクタのときも、暑すぎる真夏でも、寒すぎる冬でも容赦なく発動されるこれらのこだわり。腰痛もちの私はもう限界に近いです……。Upload By ユーザー体験談息子のこだわりへの対応は、私の障害受容レベルによって変化してきましたそんな息子のこだわりへの私の対応は、だんだんと変化してきました。それは、私自身の障害受容のレベルとも深く関係していると思います。いまに至るまで、3段階を経てきました。1段階目、まだ障害受容ができていなかったころは、同じことの繰り返しに親のほうが飽きてしまってイライラすることが多く、止めさせようとしたこともありました。ですが、止めさせようとすると子どもが癇癪を起こすなどお互いにストレスをためてしまい、デメリットが多くあったと思います。そして2段階目、障害受容していたつもりでただ自分が我慢していただけの頃、全て好きなようにやらせて、私がそれに合わせて行動するという期間がありました。いま思い返すと、思考停止になることで楽になりたかった時期です。その後、海外で生活をした際に幼稚園の先生がとても広い気持ちで受容・対応してくれているのを目の当たりにし、自分自身がどこかでまだ障害を受容し切れていなかったことに気づきました。それからは周りの人に子どもの障害についてオープンにし、積極的に助けてもらうようになりました。これが3段階目です。Upload By ユーザー体験談海外に住んでいた頃、まだ学習できていないものなのか(未学習)、間違ったことを正しいと誤って学習してしまったものなのか(誤学習)を意識しつつ、子どもの個性を大事にしていくことの大切さを学びました。いまは、ただ好きにやらせるのではなく、子どもに対しては基本的には本人の意向に沿いつつ、こだわり、ルールを完全に定型化しないよう、たまに「揺らし」を入れて妥協を覚えさせるように練習しています。例えば、息子が、放課後等デイサービスの送迎で覚えた電車の見えるスポットに連れて行ってくれるとき。目的地も分からず「こっち」といってひたすら歩かされ、だいたい1万~1万2千歩くこともざらだったのですが、息子にどんなところに行こうとしているのか、そこで何がしたいのかを先に伝えてもらうように練習しました。それを聞いた上で、行けるときは行く、行けないときは理由を伝えて、次にこういう条件になったときに行こうという約束と、本日の代替プランBを提案して選択してもらっています。また、遠回りをする、決まった道を通ろうとするときは、「こっちは草がいっぱい生えてるから、ここから先は歩道に出ようか」、「今日はゴミが落ちてるからそっちは通らないよ」などと正当な理由を伝えて、別の道に勧めるようにしています。最初は「こっち!」と嫌がっていましたが、実際に歩いてみて「ほらね、草がいっぱいでしょ?」「あそこに犬の糞がある」などと経験することで納得してくれ、ちょっとずつ妥協を覚えてくれるようになりました。このように対応できるようになって、私も精神的に楽になりました。Upload By ユーザー体験談「こだわりはいつか必ず強みになる」息子の人生が楽しいものであるように心から願っています息子が2歳のときに通っていた体操教室の先生が「こだわりはいつか必ず強みになる」と言ってくださったのが強く記憶に残っています。Upload By ユーザー体験談息子には強い好奇心、記憶力、研ぎ澄まされた色彩感覚、卓越した運動能力、ソムリエ並みの味覚があります。これらを生かして「好き」から「得意」を見つけ自己肯定感を得て、もしその得意なことから将来仕事に繋がるものを見つけられたら最高だなと思っています。もし職業に繋がらなくても、これから生きていく中での毎日の楽しみや生き甲斐になれば充分です。ひとりっ子で、ママ命の甘えたがり。注意されると全否定されたと感じるようで、素直に聞き入れられずつい文句を言ってしまう……そんな息子に、これからも体力の限界までつき合っていきたいと思います!エピソード参考/おかんレベル8イラスト/カタバミ(監修:鈴木先生より)ASDには、こだわり保存の法則というのがあります。あるこだわりが減ると、ほかののこだわりが増えるということです。ある道に興味がなくなっても、ほかの道にまた興味がわくかもしれません。また、自分だけではなく、他人、特に親をこだわりを巻き込むことがあります。これを「巻き込みこだわり」と言います。自分が青い服を着たら親にも同じ色の服を着せるなど、自分以外の人にもこだわりを巻き込ませるのです。ASDの子どもは予定の変更が苦手です。こだわりがASDの子どもの「予定」の中に既に入っているので、それを変更することは困難になります。可能ならば、なるべく早めに予定の変更を提示してあげることも重要です。誰でも突然変更されると嫌なものです。これからもこういうASDの特性を理解してつき合っていきましょう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月08日高1の長男・ハルの幼少期Upload By 安田ふくこ今年高1になった長男ハルは、小4の時に自閉スペクトラム症(ASD)とADHDと診断を受けました。いろいろと紆余曲折ありながらも、中学校では厳しい部活も引退までやり遂げ、卒業しました。そして現在は、市内の高校に自転車で通っています。私も今でこそ「見守る」ことが少しはできている(多分……)かなと思いますが、小学校低学年頃までのハルは、全く目が離せない男の子でした。特に幼児期は、あらかじめ危険だということを伝えて手を繋いでいても、急に何かの衝動にかられて道路に飛び出してしまうことや、会計などの一瞬の隙をついていなくなり、私はお腹に次男を抱えてひとり青ざめ探し回る……なんてことが何度もありました。当時のハルは、見守っているだけでは絶対に大けがをしていたと思いますし、おそらく、取り返しのつかないことにもなっていただろうなと思います。生後6ヶ月ごろから気になってきた成長の差乳児期の頃はというと、早い段階から「表情豊か」な赤ちゃんでした。おっぱいの飲みも良く、どんどん体はしっかりしてきて、呼びかけにもすぐに反応し、満面の笑みを返してくれる可愛い男の子でした。2、3ヶ月頃からは「あうあう~、うくん!」とたくさんクーイングも出ていて……。ただ、なかなか寝ないこと、夕方になって泣き出すとなかなか止まらないことなどには、日々かなり疲弊していました。Upload By 安田ふくこ産後半年ほど経った頃から、だんだんと周囲の子どもとの「成長の差」が見られるようになりました。・乳幼児期、首がなかなか座らない・寝返り、ハイハイ、歩き出すのが遅い・1歳半になっても、言葉らしい言葉をなかなか喋らないなど……初めての子どもだったので余計に神経質になり、児童館で一緒になった人の子どもと、つい比べて不安にもなりました。しかし成長の差に悩みつつも 、ハルの表情の豊かさに私や夫の心は惹きつけられ、「成長は個人差!」と無理にでも思いながら、前向きになれるよう毎日を過ごしていました。言葉の遅れは母親のせい?1歳半健診で「毎日絵本を読んで」と言われ…乳幼児健診などで発達や成長に関しては特に問題視されず……。でも、1歳半健診の時点でまだ意味のある言葉がほとんど出ていなかったので、保健師さんに「毎日絵本を読む、話しかけるなどのコミュニケーションは積極的にとってあげてくださいね!」とは言われました。ハルの言葉の遅れについてはやはり気にしていたので、「積極的に毎日やっているのになぁ……」としょんぼりした気持ちになったのも覚えています。そしてこの頃は、まさかわが子の発達に特性があるなんて思いもしないで「母である私の行動に、まだ足りないところがあるんだ!」と自分を責めてしまうこともありました。私は比較的早くに結婚して地元を離れたので、メールなどで繋がっている気の置けない同級生たちも、当時はまだまだ結婚や出産はしておらず。ママ友と話すことはあっても、子どもの成長を比較してかえって苦しくなってしまうので、ハルに関する不安を話せる人が周囲に夫しかいませんでした。家族にも理解してもらえず……一番つらかった時期Upload By 安田ふくこ幼児期になり、ハルの衝動や多動で日常の買い物すら困難なことや、コミュニケーションのしづらさについて話をしても、「男なんてみんなこんなもんだよ!考え過ぎ!」とか「俺なんてもっと行動範囲広かったぜ?」とか、さらには「そんなにお前はハルのことを“おかしい”って思いたいのか?」などの言葉に、「私はひどい母親なのかな……。自分の子どもをこんなふうに思ってしまうなんて!」と、母親としての自信がどんどん失われていきました。実家への帰省時に、私の両親へ相談することも考えましたが、2人とも近くに住む私の兄の子どもを普段から親代わりのようになって溺愛していました。それを見て「お兄ちゃんたちは共働きだもんね。私は仕事してないんだし……お母さんたちに頼ったりしたらいけない」と、私は申し訳なさを感じてしまい、勝手に肩身が狭くなっていきました。甥っ子もとても優しくて良い子だし、父と母も、私やハルに対して冷たいってわけでは全然ありません。それなのに、疎外感や羨ましさのような気持ちを感じてしまって……私は孤独感をどんどん募らせていきました。Upload By 安田ふくこ全ては自分の「母親としての自信のなさ」の表れだったんだろうなと思います。ハルのことを「可愛い」と思うより、しだいに「なんでこんなに私ばかり大変なの」と思うことが増え、そんなふうに思ってしまう自分自身のことも嫌になっていきました。いま振り返ると、私にとってハルの乳児期〜幼児期が、母親として一番つらかった時期だったな……と思います。ですが私(や夫)にとって、あることをキッカケに変化が訪れたのです。長男ハルの少年期~現在については、また別の機会に書かせていただきます。執筆/安田ふくこ(監修:森しほ先生より)発達障害のお子さんが支援につながる前の段階で、ご家族の理解を得られないという問題はよくあります。単純にご家族が特性を受け入れられないケースもあれば、ご家族にも似たような特性が出ていて「こんなの普通じゃないの?気にしすぎじゃない?」なんて言われてしまうケースもあります。もちろん支援を受ける際にはご家族の理解を得るに越したことはありません。しかし、理解を得るために長い時間を要することもありえます。実際はご家族の理解を得られないまま支援を受ける方も少なくありません。実際に支援を受けてみて、お子さんが楽しそうにしている様子を見たり、お子さんのできることが増えている様子を見ると、頑なに支援を拒否していたご家族も安心するかもしれませんよ。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年08月07日ビジョントレーニングとは?ビジョントレーニングとは、目でものの性質や状態を捉える力を高め、見たものを正しく認識したり、自分の身体をイメージ通りに動かす機能を向上させるためのトレーニングです。主に、生活や学習上の困りごとを改善したり、スポーツのスキルアップを目指したりする目的で活用されています。もともと、ビジョントレーニングは50年以上前のアメリカが発祥で、近年日本でも広がりを見せています。ビジョントレーニングと聞くと、「視力をトレーニングするのだろうか?」と思われるかもしれませんが、ビジョントレーニングの「ビジョン」とは、視力だけではなく「ものを見る力(視覚機能)」全般を指します。「見る力」は大きく「視機能(入力)」「視知覚認知(情報処理)」「目と手の協応(出力)」の3つから成り立ちます。■視機能(入力)視機能は、外界からの情報を取り入れる入力系の働きを担い、視力、調節力、眼球運動などが含まれます。眼球運動とは、視線を素早く動かしたり、対象を目で追ったり、目を寄せたり離したりする働きのことです。眼球運動は、「見る力」のうちの最初のステップでもある「入力」の部分にあたり、情報を効率良く目から取り入れるためには欠かせない働きです。眼球運動には、「滑動性眼球運動(追従性眼球運動)」「衝動性眼球運動」「輻輳・開散運動」 という3つの働きがあります。・滑動性眼球運動(追従性眼球運動)…見ているものに合わせて視線をなめらかに動かす。・跳躍性眼球運動(衝動性眼球運動)…あるポイントから違うポイントに視線をジャンプさせる。・輻輳・開散運動…両目の視線を見ているものの距離に合わせて調整し、立体感や遠近感を理解する。これら3つの眼球運動が正しく機能することにより、情報を目から取り入れる「入力」が完了します。発達障害事典-日本LD学会/dp/4621300466参考:日本LD学会/編『発達障害事典』2016年丸善出版/刊■視知覚認知(情報処理)第1ステップの「入力」で目から取り入れた情報が脳へと伝わったあと、第2ステップの「情報処理」が行われます。この情報処理のことを「視知覚認知」と呼び、具体的な働きは下記のような働きをします。・色や形を見分ける・見たいものと背景を区別する・空間的な位置を認識する・物の色や大きさに惑わされることなく、同じ形を認識する・図形の形や並び方を覚える■目と手の協応(出力)視覚の働きと体の動きを連動させることを「目と手の協応」と呼びます。第1ステップの「入力」、第2ステップの「情報処理」の次のステップである「出力」にあたる部分です。「目と手の協応」とは、目で捉えた形や位置の情報と体の動きを連動させることです。例として、人とボールを投げ合うときの動きを見てみましょう。飛んでくるボールを目で追いかける(入力)ボールが手元にやってくるタイミングを理解する(情報処理)ボールを目で追いつつ、手を伸ばしてキャッチする(出力)人間は意識しなくても、視覚と体の動きを連動させて、さまざまな活動をおこなっています。「視機能(入力)」「視知覚認知(情報処理)」「目と手の協応(出力)」を連動させる能力は、心身の発達や活動を通して向上していきます。ビジョントレーニングと発達障害についてビジョントレーニングは、発達障害のある子どもの、生活や学習上の困りごとの克服や改善に役立つのではないかといわれています。例えば、発達障害のうちの1つ「学習障害(LD)」のある子どもが、ビジョントレーニングを活用するパターンも見られます。※「学習障害(LD)」は現在、「限局性学習症(SLD)」という診断名となっていますが、最新版DSM-5以前の診断名である「学習障害(LD)」と呼ばれることが多くあるため、ここでは「LD(学習障害/限局性学習症)」と表記します。LD(学習障害/限局性学習症)は、学習における技能に困難さがみられる発達障害の一つです。・読むことやその内容を理解することの困難さ・書くことの困難さ・数の理解や計算をすることの困難さなど大きく3つの分類があります。これらの困難が、知的障害(知的発達症)によるものでないこと、経済的・環境的な要因によるものでないこと、神経疾患や視覚・聴覚の障害によるものではないこと、学習における面のみでの困難であること、という場合に限り診断されます。学校教育が始まる就学期になって診断されることがほとんどですが、就学前の段階で言語の遅れや数えることの困難、書くことに必要である微細運動の困難などがあることでその兆候に気づかれることもあります。LD(学習障害/限局性学習症)は、その症状から「理解する機能」や「暗記する機能」に困難があると思われがちですが、学習に困難が生じる背景の一つに「見る力の困難さ」があるのではないかといわれています。こうした「見る力の困難さ」がある場合には、困りごとや特性を理解し、一人ひとりにあった学習方法を提供することが大事です。LD(学習障害/限局性学習症)がある子どもが感じる困りごとには以下のようなものがあります。・音読がたどたどしい・文章を読むとき文字や行を読み飛ばしてしまう・ひらがな、カタカナ、漢字がなかなか覚えられない・字を書くのに時間がかかる・文字が枠からはみ出す・計算の筆算を間違えることが多いこうした学習に関する困りごとは、「見る力」が弱いことから生じている場合があります。見る力の弱さが学習の困難に影響している場合には、ひたすら音読や書き取りの練習だけを積み重ねても効果が出にくいことがあります。ビジョントレーニングで見る力を高めることで、学習に取り組む際に必要な情報処理や眼球運動の調整などがうまくできるようになり、困りごとが解決しやすくなるのではないかと期待されています。ただし、ビジョントレーニングのみを取り入れるのではなく、子どもが学びやすい環境づくり(文字を大きくする・余白をつくる・字体を変更する・マス目の大きなノートを使用するなど)も合わせて行うことが大切です。ビジョントレーニングの効果は?ビジョントレーニングに期待できる効果は、「見る力」のうち、どの部分を重点的にトレーニングするのかによっても異なります。この項目では「眼球運動」「視知覚認知」「目と手の協応」の3パターンに分けて、ビジョントレーニングを行ったときに得られる可能性のある効果について解説していきます。眼球運動のトレーニングは、以下の3つの機能に対しておこなわれます。■見たいものの動きに合わせて視線をなめらかに動かす機能(滑動性眼球運動)ゆっくりと動く指標を見続けたり、指や鉛筆を使わず目で追いながら迷路をクリアしたりするなどのトレーニングをすることで「目標物を見失ってしまったり、目標物に合わせた手や体の動きが正確に行えなくなったりする」「文字を読み飛ばしてしまう」などの状態の改善に期待できます。■見ているものの位置から、ほかの場所へ視線を移動させる機能(跳躍性眼球運動)見ているものの位置から、ほかの場所へ視線を移動させる機能が弱いと、黒板から一時的に目を離してノートに文字を書いたあと、再び黒板に視線を戻したとしても、先程まで見ていたところをすぐに見つけ出せないことがあります。少し離した指標を指示やリズムに合わせて交互に見たり、間違い探しをしたりするなどのトレーニングをすることで、上記のような困りごとのほか「本を読んでいるときに、文字や行を読み飛ばしてしまう」といった困りごとの改善につながる可能性が考えられます。■両目のチームワークの機能(輻輳・開散運動)両目のチームワークとは、近くにあるものを見るときに両目を寄せたり、遠くにあるものを見るときに両目を離したりする機能のことです。遠くの風景と自分の顔の前に出した親指を指示やリズムに合わせて交互に見るなどのトレーニングをすることで、この機能を高めることにより、「物との距離感を掴みにくい」「ものが二重に見える」などの状況を改善することに期待できます。視知覚認知は、見たものの色や形、距離感を正確に認識するための機能です。点を数字の順番通りにつないで絵を描いたり、お手本の形と同じ形を書き写したりするトレーニングをすることで、視知覚認知を向上させることにより、以下のような効果があるといわれています。・色や形を把握しやすくなり、塗り絵や図形問題に取り組みやすくなる・対象物(見ようとしているもの)と背景を区別しやすくなる・文字の形を覚えやすくなる・距離感をつかめずに人や物にぶつかる状況を改善できる・球技に取り組みやすくなるなど目と手の協応とは、目で見た情報に合わせて、体を動かす機能のことです。この機能が苦手な場合、「黒板の文字を見てノートに書き写すことが難しい」「転がってきたボールをキャッチすることが難しい」などの状況が考えられます。はみ出さないように意識しながら塗り絵をしたり、お手玉遊びをしたりすることで徐々に協応運動がなされるようにします。このような「見る」と「動く」の能力のつながりは、経験の積み重ねやビジョントレーニングの効果により向上するといわれていることから、子どもが楽しみながらチャレンジできるように環境を整えたいですね。ビジョントレーニングはどこで受けられる?ビジョントレーニングのやり方を学べる施設としては、下記が挙げられます。・児童発達支援事業所や放課後等ディサービスなどの療育施設・民間のトレーニングセンター・学校の通級指導教室・スポーツジムなど上記の施設がすべてビジョントレーニングを実施しているわけではないため、気になる場合は問い合わせてみるのがよいでしょう。また、「学習上の困りごとを改善するためにビジョントレーニングを受けたい」「スポーツで役立つビジョントレーニングを受けたい」など、目的に合ったビジョントレーニングに対応しているかどうかも合わせてチェックしておきましょう。ビジョントレーニングのまとめビジョントレーニングは、「見る力」の向上をサポートするトレーニングの総称です。「学習上の困りごとを改善するため」「スポーツのトレーニングのため」など、さまざまな目的で活用されています。ビジョントレーニングにより、効率的に「見る力」の活用ができるようになることで、学習や運動に取り組む際の負担感が軽減し、物事をじっくりと考えたり、理解したりする力を確保することができるかもしれません。困りごとや特性を理解し、子どもに合わせたサポートを検討してみるといいでしょう。参考:佐藤七瀬、 新井里依、角田茉里恵、安藤瑞穂、熊谷恵子「アーレンシンドローム者の視機能に関する検討」参考:e-ヘルスネット「 学習障害(限局性学習症)」(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年08月06日サヴァン症候群とは?サヴァン症候群とは、知的障害や自閉スペクトラム症(ASD)など、全般的に知的発達に障害がある人のうち、ある特定の領域において並外れた能力を示す状態、もしくはそのような人を指して用いられる用語です。サヴァン症候群はもともと、1887年にJ・ラングドン・ダウン博士によって「イディオサヴァン症候群」と名づけられましたが、「イディオ」は差別的な意味があると考えられるようになったため、現在はサヴァン症候群と呼ばれるようになっています。なお、サヴァン症候群は医学的な診断名ではありません。また、日本において正式な定義もありません。サヴァン症候群のある人に見られる、具体的な能力の例をいくつかご紹介します。計算能力サヴァン症候群の人の中で、比較的多く見られるとされるのが「歴計算」です。「1872年5月13日は何曜日?」など、指定した日付の曜日を「月曜日」といったように即座に回答することができるといった能力です。音楽的才能絶対音感を持っている事例も見られます。また、複雑な楽曲も一度聞いただけで正確に最後まで再現できる人もいます。知覚・芸術写真と見間違えるほど正確な絵を描写することがあります。また、過去に見た情景や風景から創造した絵画を描き、世界的に有名な画家として活躍している事例も報告されています。さらに、サヴァン症候群の人には、一度見た街を、自身の記憶だけを頼りに、正確で広大なパノラマ図や地図などで書くことができる人もいます。時間・空間的認知に関する才能時計を見なくても、正確な時刻が分かる人もいます。また、広大な土地の地理を正確に覚え、まるでカーナビのように街を案内できるサヴァン症候群の人もいます。ギフテッドは、どちらかと言えば教育用語として用いられる概念とされています。ギフテッドとは、アメリカ合衆国において1972年に米国議会に提出された「マーランド報告」によって「知性、創造性、芸術性、リーダーシップまたは特定の学問分野で高い達成能力を持ち、その能力を発揮させるために通常の学校教育以上の活動や支援を必要としている子ども」と定義づけられ、その後州によって定義に変更が加えられています。日本でも、文部科学省が「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議 」としてギフテッドの学習支援についての検討を令和3年より開始しています。サヴァン症候群とギフテッドは共に現在の日本では正式な定義がなく似ているように見えますが、言葉が指している状態像は異なります。サヴァン症候群とギフテッドとの大きな違いは、サヴァン症候群は知的障害や自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害がある人が、ある特定の分野において特異的な能力を有している場合を指す点です。一方ギフテッドは発達特性の有無については前提としていません。また、サヴァン症候群における「特異的な能力」とは必ずしも世間一般から見た並外れた能力を指すわけではなく、本人の全体的なIQと比較したときにある能力のみ突出しているといった状態を指すこともあります。サヴァン症候群に診断基準はある?精神科分野における国際的な診断基準となっているアメリカの精神医学会が発行している『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)や、世界保健機関(WHO)が発行している『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)などにおいて、サヴァン症候群は明確な分類として示されておらず、診断基準はありません。しかし、サヴァン症候群の多くは自閉スペクトラム症(ASD)の方に見られることから、医学的には「自閉スペクトラム症」と診断されることが多いといいます。自閉スペクトラム症自体が女性に比べて男性の診断が多いことから、母数の関係でサヴァン症候群とされる人は男性が多くなる傾向があるようです。また、サヴァン症候群は、自閉スペクトラム症のほかにも知的障害、それ以外の発達障害の診断をされるケースもあります。参考:有路憲一ら「サヴァン症候群の実態調査とその実践的価値」サヴァン症候群のある子どもの困りごととは?ここではサヴァン症候群のある子どもの困りごとを紹介します。突出した能力を示す分野がある一方で、一桁の計算が困難であったり、ひもを自分で結べないなどの報告もされています。このことからも、サヴァン症候群のある子どもたちの中には、日常生活で必要とされる活動自体に難しさを感じている場合があります。これはサヴァン症候群であること以前に、自閉スペクトラム症を含む発達障害や知的障害があることから、それらの障害に起因した困りごとが生じていることが考えられます。また、サヴァン症候群は自閉スペクトラム症の人に多く見られることから、自閉スペクトラム症の障害特性である、人との関わりにおいて困難さが見られたり、感覚鈍麻(かんかくどんま)や反対に過敏さが見られたりすることがあります。参考:本多栞ら「精神疾患と音楽機能の関連性 : 精神医学分野における音楽神経科学の発展可能性」参考:有路憲一ら「サヴァン症候群の実態調査とその実践的価値」サヴァン症候群のある子どもは周囲から「サヴァン症候群なのだから人並外れた突出した天才的な才能があるのだろう」と過度な期待を寄せられたり、偏った印象を世間から持たれ、心理的に追い込まれてしまうことが考えられます。サヴァン症候群だけに限ったことではありませんが、子どもを一人ひとり理解していく上では、サヴァン症候群か否かといったことだけにとらわれることなく、周囲の大人が理解を示し、子ども自身の得意や才能に目を向けた関わりを意識して、子どもが社会に参加していく上で必要な支援を検討していくことが重要であると考えられます。また、「子どもがサヴァン症候群かもしれない」「どのように関わったらいいか分からない」などと悩んだり不安になったりした際には、必要に応じて専門家に相談することも視野に入れていただくといいかと思います。サヴァン症候群に関する相談先は?ここでは子どもの発達について相談できる機関などを紹介します。発達障害者支援センター発達障害のある子どもに限らず大人やその関係者などの支援にあたっている専門機関です。発達障害者支援法により定められた施設で、都道府県、地方自治体などにより運営されています。サヴァン症候群の方の中には、自閉スペクトラム症といった発達障害の診断をされる場合もあります。発達障害があるかもしれないと感じた際には相談に行くことも視野に入れてみてください。児童発達支援センター・事業所児童福祉法に定められた施設で、小学校就学前の6歳までの子どもを療育的な視点で支援を行う施設の一つです。身近な地域の事業所に通いながら機能訓練や日常生活における自立訓練を行っています。発達について全般的な不安がある際などには相談してみるとよいかもしれません。保健センター市町村、もしくは例外的に区ごとにも設置されている、地域のための健康の推進を目的とした施設です。健康診断や保健指導などを行っている施設ですので「サヴァン症候群かもしれない」と感じたときには相談に行くといいでしょう。児童相談所主に18歳未満の児童についての相談をすることができる、児童福祉法に基づき設置されている機関です。子どもが18歳未満の場合には、児童相談所に相談してみるのもいいかもしれません。子育て支援センター主に市区町村ごとの公共施設や児童館といった場所に設置され、乳幼児の子どもとその親を対象に情報提供を行っています。また、保護者同士の交流の場でもあるため、ほかの保護者とも情報交換がしたいと感じた時には利用してみるのも選択肢の一つです。サヴァン症候群についてのまとめサヴァン症候群のある方の中には、特定の分野において驚異的な能力を発揮する人もいます。しかし、それらのイメージはあくまでもサヴァン症候群とされている方の中でも一部の人たちです。サヴァン症候群の傾向があるからといって、過度な期待を押し付けることはサヴァン症候群の人を追い込んでしまうことにもなりかねません。「子どもがサヴァン症候群かもしれない」と思った場合にも、多様な一人の個人であることを前提に、得意や不得意を正しく理解して得意な分野について認め、伸ばしていく関わりが大切です。参考:e-ヘルスネット「サヴァン症候群」参考:文部科学省「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議 議事要旨・議事録・配付資料」参考:有路憲一ら「サヴァン症候群の実態調査とその実践的価値」参考:本多栞ら「精神疾患と音楽機能の関連性 : 精神医学分野における音楽神経科学の発展可能性」(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月06日カサンドラ症候群とは?カサンドラ症候群は自閉スペクトラム症(ASD)などのある家族や身近な人とのコミュニケーションがうまくいかず、その困難さが周囲に理解されないことがきっかけとなり、心身に不調が出ている状態のことです。カサンドラ症候群は精神面では「抑うつ」や「自己評価の低下」、身体面では「不眠」や「体重の増減」などの不調が現れることがあるといわれています。カサンドラ症候群はそのような状態を指す言葉で、医学的な診断名ではありません。カサンドラ症候群はほかにも「カサンドラ情動剥奪障害」や「カサンドラ状態」と呼ばれることもあります。もともとはパートナーとの関係によって生じると考えられてきましたが、時代が進むにつれて、自閉スペクトラム症(ASD)などのある子どもがいる保護者についても使われるようになってきました。ほかにも自閉スペクトラム症(ASD)などのある人と同僚や上司といった、職場の人間関係についても使われる場合があります。なお当初はアスペルガー症候群のある人とそのパートナーについての概念でしたが、「アスペルガー症候群」は、2013年に発行された『DSM-5』(アメリカ精神医学会『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)によって「自閉スペクトラム症(ASD)」という診断名に統一されました。カサンドラ症候群の原因について解説します。カサンドラ症候群は自閉スペクトラム症(ASD)などの特徴のある身近な人との関係性から不調が生じている状態で、その原因やきっかけは一つだけではありません。主なものとして、自閉スペクトラム症(ASD)などのある身近な人とのコミュニケーションがうまくいかないそのことを相手や周囲に伝えてもなかなか理解が得られないカサンドラ症候群の当事者が苦しさを感じたまま孤立しているという原因が考えられています。単に自閉スペクトラム症(ASD)などの特徴のある身近な人との関係性だけでなく、苦しい思いをしていることがなかなか理解されないことも関係してくるといわれています。■自閉スペクトラム症(ASD)とは?ここでは、自閉スペクトラム症(ASD)のある身近な人とコミュニケーションがうまくいかない原因として考えられることを紹介します。まず自閉スペクトラム症(ASD)とは、生まれつきの脳機能の偏りによりさまざまな特性がある発達障害のことです。自閉スペクトラム症(ASD)の特性には対人関係や社会的コミュニケーションの困難特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さがあります。それぞれを簡単に見ていきます。<対人関係や社会的コミュニケーションの困難>自閉スペクトラム症(ASD)のある人は、あいまいな表現や言葉の裏を読むことが苦手で会話がかみ合わなかったり、相手の立場に立つことが苦手で、悪意なく不適切な発言をするといった傾向があります。例えば、・「ちゃんと片付けておいて」と言われても「ちゃんと」がどういう状態かイメージすることができず、何をしていいか分からない、・「お鍋を見ていて」とお願いされたときに鍋が焦げついていても「火を止める」ことはせずじっと鍋を見つめ続けるなど家族や身近な人は、自閉スペクトラム症(ASD)のある人と接する中でそれまで自分は「当たり前」と思っていたやりとりが通じず悩んでしまうこともあります。<特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻>特定の物事や自分で決めたルールにこだわりが強く見られることがあります。日常で見られる例でいうと、外出した際に道路工事などにより普段と違う道順を通ろうとすると、落ち着かなくなったりパニックになってしまうなどがあります。ほかにも、自閉スペクトラム症(ASD)のある人の中で「夕飯は19時ぴったりに食べ始める」というルールがあった場合、時間がずれることに強い抵抗を示すといったことがあります。また、感覚の過敏さにより偏食が激しかったり、触られることを嫌がったり、反対に鈍麻さがある場合は火傷をしていても気づかないなど周りの気遣いやサポートが必要なことも多くあります。このようなパートナーや子どものルールなどに合わせようとすることで、ストレスや疲労を感じてしまう人もいます。■周囲に理解されづらいコミュニケーションに困難がある人と接することの難しさやつらさが周囲に理解されにくいということが、カサンドラ症候群の原因の一つとして考えられています。例えば、学校や会社など社会的な場では適応していて、プライベートな場所では自閉スペクトラム症(ASD)の特徴にあるようなこだわりが強く出ていたり、パートナーや親子の関係の中だけでコミュニケーションの難しさが生じている場合は、周囲には伝わりにくいものです。そのため当事者のつらさが共感されなかったり、当事者に原因があるように見られることが孤立感を深めていくことにつながります。カサンドラ症候群とはどんな症状?カサンドラ症候群は心身に不調が現れている状態です。カサンドラ症候群は医学的な診断名ではないため、明確に症状が定められているわけではありませんが次のような症状が出てくるといわれています。■精神面にあらわれるカサンドラ症候群の症状カサンドラ症候群で精神面に現れる症状として、「抑うつ」や「パニック」などがあります。そのほかにも以下のような症状が表れるといわれています。・抑うつ・PTSD (心的外傷後ストレス障害)・不安障害・パニック(突然の動悸やめまい・手足の震えといった発作)・自己評価の低下・情緒不安定・自己喪失感・罪悪感・無気力など■身体面にあらわれるカサンドラ症候群の症状カサンドラ症候群の症状は身体面では「不眠」や「頭痛」が不調として現れてきます。ほかにも身体面で現れる症状として以下があります。・不眠・頭痛・偏頭痛・体重の増減・自律神経失調症(体のだるさ、肩こりなど全身の不調)などこの章で紹介した症状は一例であり、カサンドラ症候群の症状は人それぞれ異なります。自閉スペクトラム症(ASD)などの特徴のある身近な人との関係に悩んでいて、何かしら心身に不調がある場合は、このあと紹介する場所に相談してみるといいでしょう。自閉スペクトラム症(ASD)の発現は男性に多いことから、カサンドラ症候群の発生はパートナーとなる女性側に多いといわれています。自閉スペクトラム症(ASD)の特徴のある身近な人とのコミュニケーションにズレがあったり、こだわりに戸惑うことがあっても、我慢して受け入れようとすることで、偏った関係性が固定して、こうした症状が進行することがあります。カサンドラ症候群の治療・対処法カサンドラ症候群の治療として、まずは心身に現れている症状についての治療を行っていきます。抑うつやパニックに対して薬物療法や心理療法などの治療法で、症状の改善を図っていきます。身体面の不調に関しても必要に応じて薬物療法などを行っていきます。ただ、これらは表に現れている症状に対しての治療であり、カサンドラ症候群で悩んでいる場合は自閉スペクトラム症(ASD)などの特徴のある身近な人との関係性を改善していくことが大事になります。自閉スペクトラム症(ASD)などの特徴のある身近な人との関係性を改善するための対処法を紹介します。■自閉スペクトラム症(ASD)の診断を強要しない自閉スペクトラム症(ASD)の特徴のある人の中には学校や会社などでは適応していて、本人は特に困っていないという場合もあります。関係性を改善したいからといって無理に受診を促すと、本人が抵抗し関係がこじれることもあります。■自閉スペクトラム症(ASD)の特徴や対処方法について知る自閉スペクトラム症(ASD)の特徴について知ることで、コミュニケーションでズレが生じる理由や、その対処法が分かることもあります。現在では本やインターネットで調べることができるほか、発達障害についての支援機関に相談するなどの方法で特徴や対処法を知ることができます。■生活していく上でのルールを決める自閉スペクトラム症(ASD)について知識を得たうえで、生活上のルールを決めていきます。自閉スペクトラム症(ASD)といっても、一人ひとり特徴の現れ方も性格も異なります。どういうルールや方法であればお互いがストレスなく続けていけるか、一緒に決めていくことが大事です。例えばあいまいな表現が苦手で「ちゃんと片づけて」と言われても行動できない子どもの場合は、片づけるものの名前を書いた箱を用意しておきます。そして「遊び終わったら、●●の箱の中に入れてね」と伝えるようにするなどの方法があります。■距離を置く時間や、相談できる第三者とのつながりをつくる親子の場合は長い間距離を置くのは難しいと思いますが、預けることができる施設などを活用し、数時間でもリフレッシュする時間を設けるといったことも大事になります。また、日常1対1の時間が長いことでストレスを感じる場合は、友人や支援機関の方など第3者も含めて過ごす時間を作っていく方法もあります。カサンドラ症候群のある人が利用できる相談先は?ここではカサンドラ症候群のある人が利用できる相談窓口を紹介します。自閉スペクトラム症(ASD)の特徴のある人の年齢によっても相談先が異なりますので、分けてお伝えします。自閉スペクトラム症(ASD)の特徴のある人について、年齢にかかわらず相談できる場所として「発達障害者支援センター」や「発達外来のある病院」があります。■発達障害者支援センター年齢にかかわらず発達障害のある人の日常生活や仕事など、幅広い相談を受け付けている支援機関です。本人だけでなく、家族からの相談も受け付けており、専門的なスタッフによるアドバイスや支援機関、病院の紹介なども行っています。■発達外来のある病院発達外来のある病院では、本人以外からの相談を受け付けている場合もあります。カサンドラ症候群の相談ができる病院もありますので、事前に確認しておくといいでしょう。自閉スペクトラム症(ASD)の特徴のある子どもについて相談する場合は、「子ども家庭支援センター」「児童相談所」「自治体の子育て相談窓口」「児童発達支援センター」などがあります。■子ども家庭支援センター子ども家庭支援センターは18歳未満の子どもについての相談ができるほか、ショートステイや一時預かりなどのサービスも提供しています。■児童相談所児童相談所は18歳未満の子どもについての相談ができる場所です。児童福祉司・児童心理司・医師・保健師などの専門スタッフがいて、相談へのアドバイスやほかの支援機関の紹介などを行っています。■自治体の子育て相談窓口ほかにも自治体のWebサイトでは、子育てや発達の気になる子どもについての相談ができる場所が一覧化されていることがあります。東京都三鷹市のWebサイトには、子どもの発達に関する相談先のほか、「お母さん・お父さんのこころの相談」としてパートナーや家族との関係についての相談先も載っています。お住まいの自治体のWebサイトなども参考にしてみてください。参考 :三鷹市「子育てに関する各種相談」■児童発達支援センター障害のある子どもに対して、日常生活や社会生活に必要なスキルなどを身に付けるためのプログラムの提供を行う施設です。利用するには自治体に申請する必要がありますが、相談だけならすぐにできる場合があります。カサンドラ症候群のまとめカサンドラ症候群は、自閉症スペクトラム障害(ASD)やその傾向のあるパートナーや子どもとの関係性によって、心身に不調が現れる状態を指す言葉です。抑うつなどがある場合は薬物療法などで治療すると共に、パートナーや子どもとの関係性を改善していくことも大事です。ご自身だけで抱え込まずに、発達障害について相談できる支援機関なども活用していくといいでしょう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月06日ギフテッドとは「ギフテッド」とは、英語のgiftedの単語に由来しています。これは、「天賦の才を持つ人々」という意味で、同世代の子どもよりも先天的に高い能力を持っている人のことを表しています。ギフテッドの人は、特定の学問や芸術性、創造性、言語能力などにおいて高い能力を持っています。ギフテッドの人が持つ能力を最大限発揮させるためには、通常の学校教育にあわせて、そのほかの個人の特性に配慮した支援、特別な教育が必要になると考えられます。ギフテッドの人の一部には、発達障害や学習障害がある人もいるほか、感受性の高さなどからくるストレスに大きな悩みを抱える人もいます。ギフテッドだからといってひとくくりにするのではなく個人にあった支援や教育を検討していく必要があります。なお、ギフテッドは医学的な診断名ではありません。また、日本において正式な定義もありません。ギフテッドと聞いたとき、漠然と「天才」と思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。ギフテッドの人に多く見られる特徴として、幼少期から並外れた集中力や記憶力の高さをもっていたり、反復練習をほとんどしなくても運動技能や知識などを習得できることなどがあげられます。社会性や情緒の発達の遅れギフテッドの子どもの中には、ある特定の分野において突出した才能を示す一方で、社会性や情緒の発達に遅れを示す場合があります。そのため、同年代の集団になじめなかったり、強いこだわりを持つことで周囲とのコミュニケーションが取りづらくなるといった困りごとが生じることがあります。特性ゆえの生きづらさギフテッドの子どもは、特定の分野の才能が秀でている半面、そのほかの分野の苦手さが目立ったり、それがつらいと感じてしまう場合もあります。周囲から理解を得られにくいことも、本人の辛さの一因となります。このように、高い能力に恵まれる一方で独特な特性ゆえの生きづらさを抱えやすい側面もあり、うつ状態にも陥りやすいことが指摘されています。参考:林睦「ギフテッドの概念と日本における教育の可能性」過度激動ギフテッドの特徴の一つに「過度激動」という概念があります。これは、ポーランドの精神科医で心理学者であったドンブロフスキ(1902-1980)が提唱した概念で、日常の刺激を非常に強く感じることを指します。ギフテッドの高い能力とも関わる”刺激への反応の高さ”に起因し、感覚的な刺激や精神的な刺激に過剰に反応することです。例えば、味覚や嗅覚、触覚や聴覚といった感覚が過敏で不快感が強かったり、喜怒哀楽などについても人一倍感じてしまったりすることがあります。参考:林睦「ギフテッドの概念と日本における教育の可能性」ギフテッドの診断基準はある?ギフテッドは医学的疾患名ではなく、医学的診断基準もありません。ギフテッド教育が発展しているアメリカにおいては1972年に米国議会に提出された「マーランド報告」により「知性、創造性、芸術性、リーダーシップまたは特定の学問分野で高い達成能力を持ち、その能力を発揮させるために通常の学校教育以上の活動や支援を必要としている子ども」と定義づけられていましたが、そのあとは州によって変更が加えられていったため、アメリカ国内においてもギフテッドの定義は州によって異なります。また、ギフテッドを知能指数(IQ)から判断する方法などもあるとされますが、現在ではIQのみでは測ることができない芸術性や創造性といった領域における高い能力についても含められており、ギフテッドを一概に判断することは難しいとされています。サヴァン症候群とは?ギフテッドとの違いについてギフテッドと似ている概念として「サヴァン症候群」があります。いずれも医学的な診断基準はなく、現在の日本では正式な定義はありません。サヴァン症候群は、知的障害や自閉スペクトラム症といった発達障害などがある人が、ある特定の分野において特異的な能力を有する場合を示す概念です。ギフテッドは特異的に高い能力を持つ人々を指す用語で、発達特性の有無については前提としない点が異なります。サヴァン症候群の例としては、「重度の知的障害があり、日常生活に常に支援を必要とする一方で、地図を暗記したり、見たものを写真のように覚えたりする」「読み書き障害があるが、一度聞いた音楽は完璧に演奏できる」などが挙げられます。またギフテッドは、どちらかと言えば教育用語として用いられる概念とされています。ギフテッドの教育について日本においては令和3年から文部科学省によって「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議 」とするギフテッドの学習支援についての検討が行われています。精神面や社会面に難しさを抱える子どもへの対応ギフテッドの子どもは、ある部分は非常に得意とする一方で、大きな苦手分野を併せ持つといった、領域によって発達の程度が異なるケースもあります。これは学習面においての凸凹だけでなく、日常生活においてもいえます。例えば、言葉や認知能力が非常に発達している一方で、精神面や社会面に難しさを抱える場合なども見られます。ギフテッドの子どもは、同年代の子どもたちへの溶け込みにくさなどがある場合も少なくなく、学校で理解を得られなかったり不登校になったりすることもあるとされています。日本においてもギフテッドの子どもにおける不登校の対応などについても検討がなされています。個別最適な学び・協働的な学び文部科学省は、学校におけるギフテッド教育の概要として、特異な才能のある児童生徒も含め、「個別最適な学び」を通してそれぞれの資質や能力を育てていき、「協働的な学び」という観点も大切にしながら子ども同士がお互いの違いを認め、学び合いながら相乗効果を生み出す教育が必要だとしています。ギフテッドの子どもは、同年代の子どもよりも物事の理解が数段早いために、すでに理解したことを繰り返すことを極端に嫌う傾向があるともされています。そのため、計算や漢字などのドリルの繰り返しを嫌がったり、すでに分かっている内容について丁寧に記述することをつらく感じたりすることがあります。周囲の大人は、ギフテッドの子どものさまざまな性質について知り、一人ひとり異なる困りごとについて目を向け、理解していくことが大切です。さらに、ギフテッド教育においては通常の学校教育以外にも、能力を伸ばしていくにあたって大学や民間団体などが担う役割が大きいともいわれています。ギフテッドについてまとめギフテッドの子どもは、高い理解力から本人の困りごとが周囲から見えづらいこともあり、学業成績に反映されない本人の訴えが、些細な問題として見過ごされてしまうことがあります。ギフテッドの子どもは驚異的に高い能力を示す側面から「何も困っていない、何でもできる」と誤解されることもあります。一方でこだわりの強さや完璧主義・理想主義からくる自分自身への失望感や抑うつなど、さまざまな困りごとを抱えている場合があります。そうした子どもの困りごとにも焦点を当て、学校教育にあわせて民間団体なども活用しながら、一人ひとりに合わせた対応をしていくことが大切だといえます。また、本人の持つ苦手な分野や領域をサポートしていく周囲の理解や協力が重要です。文部科学省 特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する指導林睦「ギフテッドの概念と日本における教育の可能性」日高茂暢「知的ギフテッドの子どもの持つ特別な教育的ニーズの理解」村山拓「米国におけるギフテッド教育に関する特性把握と対応をめぐる議論の特徴」(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月06日ワーキングメモリとはワーキングメモリとは「作業に必要な情報を、一時的に保存し処理する能力」のことで、作業記憶などとも呼ばれることがあります。ここでいう作業とは会話や計算などのことで、大人も子どもも日常生活のさまざまな場面でこのワーキングメモリを使って判断や行動をしています。例えば、「3+4+5」という計算があったときに、頭の中ではまず「3と4」を足して「7」という数字を出します。そのあと「3と4」は忘れ、「7と5」を足して「12」と答えを出します。このように単純な計算の過程でも、数字を足すという処理や、必要なくなった数字を忘れるという処理をしているのがワーキングメモリの働きです。ほかにも料理をしていて、「炊飯器のスイッチを入れてから、野菜を切り、ご飯が炊けたら野菜炒めをつくる」というように頭で考え実行していく行動にも、ワーキングメモリは使われています。情報を覚えておくというと「短期記憶」と似ていますが、短期記憶は単に情報を覚えておくことを指しているのに対し、ワーキングメモリはその情報を操作変換するといった処理まで行うことを指しています。ワーキングメモリの機能の働きの度合いは、個人個人によって異なっています。これは机の大きさや整理の仕方として例えられることがよくあります。ワーキングメモリの機能を「机の大きさ」、情報を「本」として考えると、机が大きいほど本をたくさん置くことができ、本の量と比例して一度に大量の情報をその机には記憶しておくことができます。それと共に机の上を整理するのもワーキングメモリの機能の一つで、関連する本を近くの場所に置き、必要な本は残して使わなくなった本は取り除くことで、作業を効率的に行うことができるようになります。机の大きさも、整理する能力も人それぞれ異なっているため、それぞれのワーキングメモリの機能によって生じる困難さも、それに対するサポートも別々のものになってきます。ワーキングメモリは私たちが何か作業するときの判断や行動に影響しているため、ワーキングメモリが弱いとさまざまな困りごとが生じることがあります。先ほどの「3+4+5」の計算でいうと、「3と4」を足した後の「7」という数字が覚えていることができず最後まで計算ができなかったり、「3と4」を足したのを忘れて、どこまで計算したのかが分からなくなり、もう一度足し算してしまうなどが起こりえます。料理でいうと、「炊飯器のスイッチ」を入れたあとに「野菜を切る」のを忘れ、「ご飯が炊けた」あとに野菜を切り始めて、料理が完成するまでに時間がかかってしまうということもあります。ほかにも一度に複数の行動を並行して行うことが難しい場合もあり、「人の話を聞きながらメモを取ることが苦手」「ノートを書きながら、質問事項を考えることが苦手」という困りごともあります。ではワーキングメモリが弱い子どもの場合は、どういった困りごとが起こりうるでしょうか。ここでは家庭や園・学校などで起こる困りごとを紹介します。■複数の指示を覚えられない■授業に集中できない■読み書きや計算が苦手■忘れ物・なくしものが多いなど複数の指示を覚えられないワーキングメモリが弱いと、一度に複数のことを伝えられても覚えていられないことがあります。家庭で子どもが帰ってきたときに、「手を洗ってきて、そのあとご飯の準備を手伝ってね」と伝えても、手を洗ってくることは覚えていても、「準備を手伝う」という項目を忘れてしまいテレビを見始めるなどほかのことをしてしまうといったことがあります。授業に集中できないワーキングメモリは情報を選択する機能もあるため、その機能が弱いと授業中に先生が話していることのどこに注目したらいいか分からず、説明が長い場合、その中から必要な行動をとることが難しく授業に集中できないということがあります。読み書きや計算が苦手ワーキングメモリが弱いと、文章を読んでいる途中で前半に書いてあったことを忘れてしまい、意味をつかむことが難しくなったり、計算も暗算したことを忘れてしまい、答えが合わないなど、読み書きや計算に困難が出ることがあります。忘れ物・なくしものが多いワーキングメモリが弱いと、手に持っていたものを机などに置いたあとにそのことを忘れてしまい、そのまま移動することなどから忘れ物やなくしものが多くなることがあります。このように、ワーキングメモリが弱いことによって子どもが日常生活で困難を抱えてしまうことが考えられます。そして子どもが失敗体験を繰り返していくうちに、自信を無くしてしまうこともあるので、困りごとに対してサポートしていくことが大事です。ワーキングメモリと発達障害の関係は?発達障害のあるお子さんの中に、ワーキングメモリの困難さをもつお子さんはいます。だからといって、ワーキングメモリが弱いすべてのお子さんが、発達障害であるということはありません。発達障害の中のADHD(注意欠如・多動症)では、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)といった特性が見られます。この中の不注意や衝動性はワーキングメモリの弱さとも一部関連します。発達障害の中のLD(学習障害)は、全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力に困難が生じることがあります。計算や推論の困難などのLDの特性は、ワーキングメモリの弱さとも関連することがありますが、こちらも、どういった特性が現れるかはその人によって異なります。このように、発達障害のある子どもにはワーキングメモリの弱さがある場合もありますが、ワーキングメモリが弱い子どもに、必ず発達障害があるわけではありません。まずは子どもが困りごとを解消するようなサポートをしていくことが大事になります。子どものワーキングメモリが弱い場合の対策・サポートのコツここでは子どものワーキングメモリが弱く、困りごとが生じているときにできるサポートを紹介していきます。ワーキングメモリの機能自体を向上させる方法として、現時点で実証されているものはありません。しかし、子どもが直面している困りごとに対して、適切な対策やサポートをしていくことで、子どもの困りごとを軽減していくことは可能です。ワーキングメモリが弱い子どもへのサポートとしては、情報の伝え方を工夫したり、いろいろなツールを使って接することで、ワーキングメモリの弱さをカバーしていきます。先ほど挙げた困りごとへのサポートを見ていきましょう。■複数の指示を覚えることが苦手■授業に集中することは苦手■読み書きや計算が苦手■忘れ物・なくしものが多いなど複数の指示を覚えることが苦手2つ以上など一度に複数の指示を出されたときに、忘れてしまうことが多い場合は、一度に一つのことのみ伝えるという方法があります。「手を洗ってから、料理を手伝ってもらいたい」というときは、まず「手を洗ってきて」と伝え、それができたら「冷蔵庫から野菜を出して」と伝えるようにすると、忘れることが減ってくるかもしれません。授業に集中することが苦手授業中何に注意していいのか分からない場合は、先生から「この時間は〇〇をします」と授業の目的を明確にしてもらうことや、それが難しい場合は入ってくる情報を減らすことも方法の一つです。情報が多くて取捨選択ができないときは、色を付けたり枠で囲って重要な情報を目立たせる、プリントを折るなどしてそのときに不要な情報は隠すといった方法で集中しやすい環境をつくることができます。読み書きや計算が苦手一度に多くの文章や計算をしようとすると、情報が多く覚えきれないことがあります。そういったときは文章や計算を細かく区切って行うように促していくといいでしょう。文章を一度に全部見せずに、紙などで隠しながら一行ずつ目に入るようにしたり、計算も暗算をさせるのではなく、途中の計算をメモできるように補助していくことで、一度に処理する情報が少なくなり読み書きや計算がしやすくなっていきます。忘れ物・なくしものが多い忘れ物やなくしものが多いときには、先生や保護者が一緒に確認する時間を設けることや、持ち物チェックリストをつくる、スマートタグ(忘れ物防止タグ)を活用するなどツールを使って記憶しなくてもカバーできる状態をつくっていくといいでしょう。ほかにも、必ず通る玄関前に持ち物を置いておくなど、子どもの動線上に物を配置するという方法もあります。情報の伝え方や、ツールを使用していくことは共通ではありますが、子どもによってワーキングメモリの傾向や、どういった情報だと覚えやすいといったことは異なってきます。一日の流れが先に分かっていたほうが楽だと感じる子どももいれば、「今やること」だけ分かっていたほうが集中できるという子どももいます。一律なサポートにならないよう、子どもがどんなことに困りごとを感じているか、どうしたら勉強などがやりやすそうかを見ながらサポート内容を考えていくといいでしょう。発達障害のある子どものための支援機関ワーキングメモリの弱さで感じる困難へのサポートは、保護者や学校だけでなくさまざまな支援機関とも相談して考えていくと、子どもにあったものを見つけやすくなってきます。ここではワーキングメモリの弱さも含め発達の気になる子どもへの支援機関を紹介します。発達障害者支援センター発達障害者支援センターは都道府県や指定都市が実施主体となり、発達障害のある子どもやその家族を支援する機関です。家族などからの相談に対して、家庭での療育方法についてのアドバイスや関係機関の紹介などを行います。国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害者支援センター・一覧」国立障害者リハビリテーションセンターの「発達障害者支援センター・一覧」ページから、自宅付近にあるセンターを見つけて、詳細をチェックしてみましょう。児童発達支援センター・事業所児童発達支援センターは、障害のある子どもに身近な地域で支援を行う支援機関です。発達の気になる子どもに関する相談を受け付けているほか、児童発達支援事業所・放課後等デイサービスといったサービスを提供しており、発達障害のある子どもなどへ日常生活や自立に必要な知識やスキルの取得、集団生活への適応のための訓練などを行っています。児童相談所児童相談所は、都道府県や政令指定都市などに設置されており、18歳未満の子どもに関するさまざまな困りごとについて、家庭や学校などからの相談を受け付けています。ソーシャルワーカー、児童心理司、医師などの専門的なスタッフが相談に応じるとともに、地域の支援機関とも連携して子どもに支援を行っています。厚生労働省「全国児童相談所一覧」ワーキングメモリのまとめワーキングメモリは、作業のために情報を一時的に記憶・処理するための能力で、家庭や学校などのさまざまな場面で必要となってきます。ワーキングメモリが弱いと、「授業に集中することが苦手」「読み書きや計算が苦手」など、子どもが生活する中で困難に直面することが多くなり、自信を失うきっかけになってしまうかもしれません。ワーキングメモリの弱さによる困りごとは一人ひとり異なります。子どもにあった情報の伝え方やツールの使用などのサポートで軽減することができます。ご家庭や学校でのサポートで難しいと感じた際は、支援機関や発達の気になる子どもの学習塾などを活用することも検討してみるといいでしょう。参考:厚生労働省「全国児童相談所一覧」参考:国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害者支援センター・一覧」(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年08月06日友達がほとんどいなかった子ども時代私は小さい頃からいじめられがちで、友達がほとんどいませんでした。小学校も高学年となって完全に「いじめられっ子」となってからは、周囲にいた少数の子も、自分がいじめに巻き込まれるのを恐れて離れていってしまいました。親はクラスの子たちの力関係を把握していました。ボスクラスの女の子を誕生会などでわざと家に呼んで歓待して機嫌をとるなど、私がクラスでうまくやっていけるように画策してくれましたが、それもあまり効果があったとは言えませんでした。実家自体が「ちょっと変わった家」として近所から浮いていたのもあり、近所に住んでいる子との交流もほとんどなし。親戚づきあいもほとんどなし。公立中高に行くといじめがひどくなるだろうからと、遠くの私立に通うようになってからは、なおさら地域との交流はなくなりました。中高に行ってからは皆、クラスメートも近所の子たち同士で遊ぶし、いじめられるまではなくともなんとなく浮いていたので、皆がこっそり私抜きで遊びに行っていたのをあとから知ったりすることもありました。ということで、私は友達が欲しかったけれど、友達ができる環境に恵まれませんでした。結果的に、人とのつきあい方を学ぶ機会も得られないままに20代になってしまいました。人間関係が不安定だった20代大学生になるとごく少数の友達ができましたが、距離が近くなりすぎて共依存のようになり、喧嘩別れになってしまったりと、人間関係は不安定でした。社会人になってからは、職場で職務上の指導を受けただけで自分を全否定されたと感じて感情的になったり、立て続けにトラブルを起こしたりして居づらくなり、短期間で辞めてしまうことが続きました。誰かと仲良くなるまで居続けられなかったため、当時の仕事を通じて知り合った知人や友人もほぼいません。中距離の人間関係を開拓、少しだけ人づきあいが分かった30代以降私は31歳で実家を出て地方に移住、夫と結婚しました。夫が私に気を遣って少しずつ周囲の人に紹介してくれたおかげで、夫の交友関係の中から少しずつ、年齢や属性の多様な知人が増えていきました。ホームパーティーだったり、何かのサークルの食事会だったり、あちこちに連れ出される中で、緊張し、疲れてしまって参ることもありましたが、私はこうした中で少しずつ「人と交流するとはどういうことか」を学んでいったように思います。その地域での暮らしも10余年経った頃、夫の仕事の関係で再び別の地方に移住することになりました。今度は自分でも頑張って地元の人と交友関係を広げようとあちこち動いてみました。しかし、地元の人と不用意につきあうと、予想外の無理解やすれ違いに出遭って傷ついてしまうこともあり、交友関係は広げればいいというものでもないなと思い直しました。会える距離に理解しあえる友達や知人がいれば、確かにそれは理想的だと思います。しかし、今はSNSという、地理的条件に縛られないうえ、交流しはじめる前に互いの人となりを知ることのできる便利なツールがあるので、無理せずSNS経由で少数の人とつながるのも良いと思いました。また、最近私は資格勉強をしているのですが、こういった、一人でなにか学ぶことに没頭する時間もとても大事だと感じます。「友達がたくさんいる」を目指さなくてもいい発達障害のあるお子さんのいる人は、「友達がたくさんできてほしい」とか、「友達と仲よく遊んでほしい」とか心配になることもあると思います。しかし、どんな友達とどうつきあうのが快適で幸せか、あるいは一人でもいいのかは、発達障害のあるなしに関係なく、その人によって違うと思います。小さい頃は交友関係が狭くても、人生経験を重ねるうち、自然とその人に合った人間関係や生き方が充実していくのではないでしょうか。少なくとも私はそうでした。私は、人との程よい距離感や、中距離の知人との交流のコツが、大人になるまで分かっていませんでした。私の場合、そこに気づくことで少しずつ交流する人を増やしてこられた実感があります。「他人とのちょうどいい距離感」みたいなものは、小さい子ども同士で学び合うことは難しいかもしれません。周囲の大人がロールプレイや「背中を見せる」ことでお手本を見せていけたら良いヒントになるかもしれませんね。文/宇樹義子(監修・鈴木先生より)ASDの子どもはいわゆる「不思議ちゃん」と呼ばれるように、いじめのターゲットになりがちです。時にはいじめる側につくこともあります。また、親友が少ない場合も見られます。政治にも何々党といくつか党があり、同じ党内でも派閥があります。分かり合える人と仲良くなれればそれでいいのです。SNSによるいじめや過剰な批判などが社会問題ともなっていますが、どんなことでも必ず批判する人がいます。しかしそれはごく一部なのです。ASDの子どもは、自分の近くの縄張りに他人が入ってくると攻撃する傾向が見られることがあります。こういう場合は集団よりも個別の教育が必要になりますが、これから社会に出ていくためには、他人との「ちょうどいい距離感」も学んでいく必要があります。逆に他人に近づきすぎることもあります。前へならえの距離や30cm定規をあててその距離以内には近づかないように指導していく必要もあります。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月05日保護者面談で療育をすすめられるUpload By プクティ幼稚園に入園してからしばらく経った冬、保護者面談がありました。入園後すぐの保育参観では、ひとり床に寝そべり、工作などの活動にも参加しようとしない息子の姿に衝撃を受けた私でしたが、まだ入園したばかりで集団生活に慣れていないせいだろうと思っていました。その後も特に先生から何か言われる訳でもないし、運動会などの行事にも参加している姿を見てきたし、なんらほかの園児と変わらぬ幼稚園生活を送っているものだと思っていたので、特に構えることなく、夫と共に保護者面談へと向かいました。しかし、その保護者面談が始まってまず先生の口から飛び出したのは「療育に通っていただきたいんです」という言葉でした。予想もしていなかった急すぎる展開にショックを受け、夫婦そろって言葉を失っている中、担任の先生からは淡々と「療育に通うためにはまず発達支援センターへ予約の電話をして、……」などの流れの説明をされました。発達相談の予約Upload By プクティ幼稚園生活は何も問題なく過ごしていると思っていたのですが、実は入園から半年以上たった今も、長男は席に座ることもできなければ上履きも履かない、ときには教室から脱走してしまうこともあったそうです。運動会も当日は参加していたが、練習には一度も参加していなかったことが発覚しました。その話を聞いて困惑しつつも、先生によると「発達相談は混んでいてなかなか予約が取れない」とのことだったので、保護者面談が終わってすぐに発達支援センターへ電話しました。やはり発達相談は混んでいるようで、予約が取れたのは保護者面談から約3ヶ月後の3月末でした。初めての発達相談Upload By プクティそして年が明けた3月末、とうとう相談日がやってきました。その日は夫も仕事の休みを取って、長男と3人で発達支援センターへ行きました。発達支援センターへ到着すると、支援センターの職員の方と、臨床心理士の方の2名が私たちの担当をしてくれることになりました。Upload By プクティ私たち夫婦が、支援センターの職員の方から今後の療育に通えるようになるまでの流れを説明してもらう間、臨床心理士の方が長男とブロックをしたり、お絵かきをしたりと遊びを交え発達の様子を見てくださいました。長男の発達に関して…Upload By プクティそして、約1時間ほどで相談が終わりました。臨床心理士の方によると、1時間長男の様子を見た感じではそこまで発達の遅れは感じなかったとのことでしたが、「失敗を恐れる完璧主義な部分やボディイメージが弱いように感じるので、心配な部分を伸ばすためにも療育に通うのはぜひお薦めしたい」と言われました。最後に次の相談日の予約を取り帰宅しようとしたのですが、臨床心理士の方と遊んだのがすごく楽しかったのか、帰るのをぐずる長男をなんとか引っ張って帰宅するのでした。臨床心理士の方に「そこまで発達の遅れは感じない」と言われたことでひと安心していた私たち夫婦ですが、その後、長男は知的発達症の診断を受けることになります。その話はまた別の機会に書かせていただければと思います。執筆/プクティ(監修:森先生より)発達障害の症状の現れ方はさまざまです。軽度ですと特に見逃されがちですが、成長するにともなって求められる能力が上がっていったり、役割が増えるにつれて本人も周囲もつらくなってくることがあります。早期からの医療の関わりやトレーニングによって、将来の生きやすさが変わってきます。プクティさんのように早いうちに発達支援センターに相談できると素晴らしいですね。「うちの子どもは本当に発達障害なのだろうか?」「どんな診断が出るのだろうか?」と、親としてはハラハラしてしまうかもしれません。ですが、診断にあまりこだわりすぎずに、頼る先を多く持っておくというつもりで相談してみるといいのではないでしょうか。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2023年08月05日発達障害と知的障害の違い発達障害も知的障害も、社会生活を送る上で生きづらさを伴うことは、大きな共通点です。では、発達障害と知的障害は、何が違うのかと疑問に思う方もいるかもしれません。発達障害というのは、よく「発達凸凹」とも呼ばれます。得意なものと苦手なものの差が大きいイメージです。いろいろな能力の中に、著しく高いものもあれば、低いものもある状態です。一方、知的障害は全体的に発達がゆっくり進んでいると考えてみてください。どこかの能力が低いというのではなく、全体的にゆっくり成長しているのです。例えば、IQ70の10歳児であれば、精神年齢は7歳くらいというイメージです。そう解釈すると、目の前の子どもにとって何が必要かが見えてきます。小学校4年生の中に小学校1年生の子どもが混じっている、だからレベルに合った学習内容の取得が必要だといった具合です。そしてそのゆっくりとした成長が、成人になっても12歳くらいの水準で止まってしまうのが軽度知的障害です。ただし、必ずしもみんなの精神年齢が12歳レベルで止まるかというとそうではなく、生活上の経験値がそれぞれ異なりますので、あくまでも目安です。子どもたちの知的なしんどさもしも発達障害と知的障害の両方がある場合、個人的には、まず知的なしんどさに対応することが先決と考えます。日常生活や社会的な生活を送る上での困りごとは、知的なしんどさから生じる部分が多いからです。発達障害に知的障害も伴う場合は、知能の程度(軽度・中等度・重度)がどうかという点が重要になります。発達障害でもIQが高ければ、今の社会を生き抜いていく方法は少なからずあるでしょう。こだわりが強い自閉スペクトラム症のある人が、興味や専門性が活かされるような技術職や研究職に就いて、高いパフォーマンスを発揮できることも見聞きします。また、大手企業を起業した経営者のなかにも、診断を公表している方がいます。ADHDの特性である行動力やアイデア力が、起業に生きるというのは想像しやすいでしょう。「軽度・中等度・重度」の程度の違い知的機能の水準は一般的にはIQで表され、知的障害の基準のひとつに「IQ70未満」があります。障害は、その程度によって次のように4段階に分けられます(WHOの「ICD-10」より)。IQ50~69(おおよそ9~12歳)……軽度IQ35~49(おおよそ6~9歳)……中等度IQ20~34(おおよそ3~6歳)……重度IQ20未満(おおよそ3歳以下)……最重度※()の年齢は、発達期を過ぎた成人に対する精神年齢です。4段階のそれぞれの特徴は、次の通りです。各段階で、学力の習得が可能な年齢(学年)というのも付記していますが、あくまでも目安となる年齢です。支援次第で、目安の年齢以上に、成長を促せる可能性はあります。・IQ50~69…軽度多くの場合、身のまわりのことは自分でできるようになります。自分で考える力も身につき、小学6年生くらいまでの学力を習得できます。簡単な読み書きや計算ができます。ただし、言葉の発達や抽象的なことの理解に遅れが生じる傾向があります。高度なスキルが必要な場合を除き、仕事に就くこともできるでしょう。一般的に知的障害といっても、本人や周囲の人にも「知的障害」という自覚がなく、支援を得ることなく生活しているケースもあります。そのため、実際の人数よりも認定数が少ないものと考えられます。また統計上は、知的障害者の約85%がこの段階に分類されます。ですので、知的障害といえば、概して「軽度」のことを指すといっても過言ではないでしょう。・IQ35~49…中等度身のまわりのことはだいたい自分でできるようになりますが、一定のサポートは必要なことが多いでしょう。簡単な読み書きや計算が部分的に可能です。乳幼児期に言葉の遅れはありますが、コミュニケーション能力はあります。適切な支援を受ければ、小学2年生くらいまでの学力を習得できます。配慮があれば、単純作業の仕事などに就くこともできるでしょう。・IQ20~34…重度乳幼児期はほとんど会話をしませんが、学童期になると、基本的な生活習慣(会話、食事、排せつなど)を身につけることができます。学力の習得目安は5歳くらいまでで、読み書きや計算は難しいでしょう。簡単なお手伝いやおつかいといった作業は可能です。・IQ20未満…最重度快・不快の表出は可能な場合が多いですが、言葉でのコミュニケーションを身につけることは難しい場合が多いでしょう。適切な支援によって能力の成長は見られますが(3歳程度まで)、身のまわりのことを自分で処理することは難しく、常に周囲からの支援や保護が必要となります。誤解されやすい「障害程度」なお、知的障害の男女比はおよそ1.6:1(軽度)~1.2:1(重度)で、全体での男女比は1.5:1程度とされます。ここまで、知的障害の程度区分の4段階について解説してきましたが、ここで誤解されやすいことがあります。それは、「障害程度が低い」=支援の必要性も低いのか?ということです。確かに身のまわりの世話などが必要な場面は、中等度や重度よりも軽度のほうが減るかもしれませんが、それでも支援をしなくていいわけではありません。むしろ軽度知的障害の場合、定型発達と見分けがつきづらく、支援されない可能性すらあります。そうなると、生きづらさは増していきます。失敗を極度に恐れ、失敗するくらいだったら最初から挑戦しない。そんなプライドの高い子どもがいます。小学校低学年のAくんもそんなひとりです。Aくんは、先生から「この問題、間違ってもいいからやってごらん」と言われても、(少しやってみて)「やっぱり無理」「もうやめた」(考えもせずに)「わかりません!」「できません」などと答えるパターンが多いのです。Aくんは、あきらめるのが早いのです。しかし、これらの言葉はできないことへの防衛でした。知能検査を受けたところ、Aくんには軽度知的障害があることがわかりました。 By 宮口幸治気づかれない「軽度知的障害」軽度知的障害のある子どもは、普通に話したり遊んだりしている分には、定型発達児とほとんど見分けがつきません。また自分が興味のあること・好きなことの記憶力はよかったりします。しかし、言われたことはだいたいできますが、いつもとやり方が違ったり何か問題が発生した際の対処法が分からなかったり、自分で新たな工夫をするのが苦手なことが多いのが特徴です。なお、軽度知的障害がある場合でも、保護者が熱心に教えたり、個別塾に通わせたりすることで、小学生までの勉強にはなんとかついていけることもあります。小学生では成績がそれほど悪くなかったからといって知的障害がないとも限らないのです。もし知的障害が疑われるなら、「まだ小学生だから様子を見ましょう」と経過観察するよりも、少しでも今できることを考えてあげたほうがいいでしょう。例えば、自治体の教育センターや発達に詳しい医療機関を受診し、どこの部分につまずきが見られるのかをしっかりアセスメント(子どもの状態や特性を把握し評価すること)してもらって、具体的にできる今後の対応策を、学校、保護者が一緒に検討することが望ましいと考えます。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2023年08月04日年に数回キャンプへ行くわが家ですUpload By 丸山さとこ現在中学2年生の息子のコウにはASDとADHDがあり、発達障害の特性からか小さな頃は少し感覚過敏がありました。音や光のほかに『肌に触れるもの』への過敏さがあり、1~3歳の頃は食事中に何度も手を拭きたがったりしました。保育園に入ってからは、砂場の砂がつく度に何度も手や服を払う姿が見られたこともありました。多くの過敏さは年齢と共に緩和されていきましたが、それで「平気になってよかったね!」とは言えないのがコウです。コウは、一度平気になったはずのものでも、しばらく触れることがないと再び受けつけなくなることがしばしばあります。そのため、平気な状態が持続するように『かつて過敏が見られたが一度平気になった刺激』を定期的に彼の暮らしに取り入れるようにしています。その一環として、わが家は年に数回キャンプに行くようにしています。読書やゲームやプログラミングなど、小学生になったコウの好きな遊びはインドアなものが多いです。そのため、学校がない日の彼は、一日中空調の効いた部屋で汗や砂埃とは無縁の暮らしをしています。夏休み中は、1週間家から一歩も出ないことも珍しくありません。Upload By 丸山さとこそんなコウを見て、「このままだと、光や汗や砂埃の刺激で無自覚に疲れやすくなっていくだろうな」と思ったことから始まったのがわが家のファミリーキャンプでした。キャンプに初めて行った4歳頃は虫のいるトイレや岩の段差などを怖がっていたコウでしたが、少しずつ慣れてきて楽しむようになってきました。キャンプに行き始めて10年の今では、自分のお年玉でテントやチェアを買うくらいキャンプが好きになったコウと共に、災害への備えの点検も兼ねてキャンプに行っています。無理強いしないように負担は少なく、少しずつ…家族でキャンプへ行くにあたって、まずは「親も子も無理がないように」を指針にしました。そのため、最初はデイキャンプ(日帰りのキャンプ)から始めるようにしました。子どもの頃は外遊びも好きだった私ですが、大人になってからはインドアな趣味が多く、長時間の野外での活動には自信がありませんでした。コウを見ながら遊びや食事の段取りをすれば、どこかでミスが出るだろうと思いました。Upload By 丸山さとこまた、キャンプ場は自宅から1時間半以内のところを選ぶようにしました。何かあっても自宅やかかりつけ医に行きやすく、移動の負担も少ないからです。コウが怖がることは無理強いしないようにも意識していました。悪い印象がついたら、あとあと凄く困ることが予想できたからです。不安定な足場や少し高い段差やお肉を食べることなど、キャンプ中にコウが嫌がることはいろいろありました。そんなときは、「1回試してみる?」とすすめるようにはしていました。それで彼が拒否しても、「そっかー。『やってもいいよ』って思うときがあったら教えてね」とすぐ退くようにしていました。キャンプは楽しいものですが、水難事故・虫さされ・野生生物との接触など危険もたくさんあります。タープはワンタッチで広がるものにし、食事は家でつくってくるか道中で買うなどしてできるだけ省力化し、コウから極力目を離さないようにしました。事前にキャンプのリスクを説明し、コウがルールを守って動けるかを見ながらキャンプの内容を少しずつ発展させていきました。迷子になったときのために、キッズケータイ(GPSの探知機能つき)をウエストポーチに入れたりもしました。Upload By 丸山さとこ『キャンプ中の危険』には、火を扱うことも含まれていると思います。焚火や炭火焼によるやけどや延焼の危険のほか、「火への恐怖心が薄れすぎて火遊びをしたりしないだろうか?」という可能性も気になりました。ですが、いずれ学校で火を扱うことになることを考えて、先に家庭で火の危険性を教えておくことにしました。焚火に薪や葉をくべながら火の危険性を説明していくと、コウは「火は『全然燃えないな』と思った後でも気がついたらあっという間に広がるし、消えたと思ってもまだ危ないことがあるのがよく分かる」と言いました。キャンプでの経験は、理科の実験で役に立つ?そうして薪のくべ方や火に近づきすぎないことなどを何度も練習した結果、コウは「火は楽しくて危ないものと分かった」と言うようになりました。今では親の許可のもとで自分用の小さな焚火台を使うこともあります。マシュマロなどを炙って食べる彼を見ていると、火の扱い方に危なげなところはなくなってきたなと思います。また、理科の実験でアルコールランプを使った際には、マッチを擦ったり火を消したりして周囲から頼られたと喜んでいました。Upload By 丸山さとこ燃焼の仕組みについても説明しながら焚火をしたため、「芯じゃなくて、気化したアルコールが燃えているんだってこともよく分かったよ」とニコニコ話すコウを見て、『こんな風に物事が上手く噛み合うこともたまにはあるんだなぁ…』としみじみしました。大抵はやることなすこと噛み合わずに空振りなので、たまに上手く噛み合うと驚きます。支援も経験も「何でそうなる?」と「あ~、そうきたか~!」の繰り返しの毎日ですが、たまに訪れる「上手いこと噛み合いましたね」を少しずつ積み重ねていけたらいいなと思います。Upload By 丸山さとこ執筆/丸山さとこ(監修:井上先生より)ファミリーキャンプ は、日常生活のなかで体験できない貴重な経験ができる機会です。ともすれば、親にとっても大きな負担にもなるファミリーキャンプをデイキャンプからステップアップされたのは、すばらしい発想ですね。さとこさんもコラムのなかで触れられていたように、キャンプ経験は災害時の避難場所での予行演習にもなるのではないかと思います。今後も年齢に応じたステップアップやバリエーションを考えてみると良いかもしれません。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年08月04日おじの死を、理解できない太郎太郎が小学1年生の夏、私の兄が突然亡くなった。この時期、私は太郎と2人暮らし。両親は実家である離島で暮らしていた。兄は両親や私とはまた別の地域に住んでおり、私の家からは200㎞程離れた場所に住んでいた。兄は自宅で亡くなっているのを発見され、私たち家族は身元確認のため警察署へ呼び出された。兄の死の連絡に衝撃と動揺で考える力が低下しているのが自分でも分かったが、それでも考えなければならないことが一つあった。「太郎を200㎞離れた兄の元へ連れていくに当たっての対策」だ。Upload By まゆん太郎は4歳の頃に自閉スペクトラム症の診断を受けている。小学1年生の太郎が長時間じっと座っていられるか、癇癪を起こし続けないか。癇癪が大きいと、私の疲労も大きくなる。そういうことを心配していた。道中の太郎のストレスをなるべく和らげる方法を考えた。移動手段は車一択。電車やバスではますます自由が効かなくなるからだ。休憩なしで行けば3時間の道のりだが、こまめに休憩をとる計算でいくと4時間はかかるだろうと予想していた。昼寝をしてくれたら一気に進むことができるが、太郎は3歳頃から昼寝をしない。昼間は車に乗せても目がランランと輝いているのである。ゲームをするのも好きだが車の中でのゲームはすぐに酔うのでゲームはNG。なので対策としてはお気に入りのDVDとこまめな休憩で気分転換、あとはちょっとおやつタイムだった。太郎に旅の目的と目的地の説明をした。「お母さんのお兄さんが亡くなった」「太郎のおじちゃんね」という説明には「うん」とは答えたが理解してないようなキョトンとした顔をしていた。「遠くまで車で行くよ」と一応地図も見せて説明したが、それに対しても「分かった」と言うものの、分かってないような表情だった。太郎に説明しながらも、私は嘘であってほしいと願っていた。Upload By まゆん目的地までは私の妹も一緒に行くことになり、3人の旅が始まった。200㎞先を目指して、3人の道中はその日は日差しが暑い日だった。青い空に白い雲が綺麗に浮かぶ、スッキリとした空をしていた。私や妹の心とは裏腹だった。太郎はDVDを観ながら笑っていた。何十回も観たことがあるストーリーなのに同じところで何回も笑う。飽きないのかなぁ、不思議だなぁと思う。DVD鑑賞中に私と妹が会話をすると太郎は癇癪を起こした。会話が雑音に聴こえるのだろう。それでも大人同士の会話は必要なので太郎が癇癪を起こしていてもスルーして続けることもあった。「大切な話をしているの」と説明しても理解はしてくれなかったが、一応説明はした。太郎の癇癪が多かったこの時期、私は歯がゆかったり苛立ったりすることが一番多かったと思う。癇癪を起こすとしばらくは不機嫌モードが続く。気分転換を試みて車を停めて外を歩いたり、お店でお菓子を買ったりすると徐々に気分も元通りになった。妹は太郎の特性も理解していたし、太郎との相性もいいこともあって私も気を遣わずに旅を続けることができた。太郎が癇癪を起こしても、「静かにしてください!」と怒っても妹はいつも穏やかにフラットに接していた。時には淡々と太郎に注意、忠告をしてくれることも。感情的に頭ごなしに言わない性格が太郎にはマッチしていた。妹がいてくれて本当に助かったと心底思う。Upload By まゆん癇癪を何回か繰り返し、気分転換を図りながらようやく目的地に到着した。この日はまだ兄とは対面できないということでホテルに宿泊することになった。ホテルでは絶対に多動が爆発するだろうと予感していたが案の定だった。太郎はベッドやソファがアトラクションに見えてるかのように興奮していた。私の心は穏やかではない、ほかのお客さんに迷惑だし、太郎が怪我しないか心配だし、でも楽しそうだし。いろいろ焦りも混じりながら考えていた(いつもこんな風にいろいろと考えるから疲労が強いのかも)。ある程度楽しませたあとに、そろそろ落ち着こうとキリの良いところで止めに入った。太郎も満足したのかそのあとはさほど暴れ回ることはなかった。Upload By まゆん遠出のときに困ることがもう一つ、食事だった。太郎の多動や偏食、匂いに過敏で嘔吐も時々あるので外食はなるべく避けていた。この日は妹もいるし私もたまには外食をしたいと思い、外で食べることにした。オーダーしたものが届くまでの太郎は落ち着きがなく床に寝そべったり動き回ったりするので、私の携帯を渡した。そうすると動画を見たり、ゲームを始めたりしてすぐに静かになる。むしろ過集中になるくらいだ。お店の中で寝そべられるのも周りからの目が気になるので、仕方なしにゲームをさせていた。しかし、ここで困ることが、食事がきてもゲームをしたくて食事に集中しないことだった。何かしたいことがあると太郎は食事をしようともしない。中学生になった今は私が声かけをすれば直ぐに切り替えることができるようになっているが、この頃は何かに集中すると食事も忘れるほどだった。とにかく栄養は最低限とってほしいという思いで米、スープ、ポテト、唐揚げを落ち着きがない太郎に声をかけながら食べさせた。太郎はゲームをしたくてうずうずとしていた。そして食べ終わると念願のゲームを手にした太郎は静かに再開。私は落ち着いて食事をとることができた。この時点で私はどっと疲れていたが、兄のことを思い出してはモヤモヤとしていた。妹とも「本当に死んだのかな」と会話をしていた。食事のあとは入浴タイム、ここで私は忘れてはいなかった。太郎は水が顔にかかることを酷く恐れ、パニックになる。なので入浴時にはシャンプーハットが欠かせない。私は出掛ける前にそこも忘れず持参していた。こういうとき自分で自分を褒める。さすが、私、と。就寝時間、太郎は昼寝をしないので絵本を読み聞かせしているとあっという間に寝てしまった。太郎が寝たあと、私と妹も明日の兄との面会に心を詰まらせながらセミダブルのベッドで3人、川の字になって寝た。おやすみなさい、どうか嘘でありますように。Upload By まゆん太郎が初めて使った言葉翌朝、私の父と母と合流し警察署へ着いた。太郎はじいじとばぁばに会えてうれしそうにしていた。じいじとばぁばもうれしそうではあったが、兄との面会に緊張した表情が隠せていなかった。私も足が震え心拍数が上がっていた。身元確認のため私たち家族は狭い小部屋に案内された。検察官の方が兄の遺品を一つずつ私たち家族の前に並べていった。今まで涙を見せなかった妹が初めに涙を流し出した。それに続いて、母も…。太郎は状況が把握できておらず、ソワソワと動き出した椅子から離れ私の周りをウロウロとし、部屋に響くような声で私に話しかけてきた。「お母さん、おじちゃんはお母さんの友達?」「しー、おじちゃんはお母さんのお兄さん、おじちゃんはじいじとばぁばの大切な子ども」太郎は私に寄りかかりながら私を見上げて話を聞いていた。「大切…」きっと家族関係の理解や「大切」の意味も理解はしていないだろう、しかし、いつもと違うみんなの悲しい表情をみて「大切」をなにか感じていたのでは、と思う言葉があった。「おじちゃん…かわいそう」太郎が初めて「かわいそう」と言った。Upload By まゆん兄の死は私にとって、家族にとってとても衝撃的なことでした。太郎と共に兄の元へ行くというミッションは逆に私の心を紛らわし、癒すものになっていたことに後々気づきました。旅の道中、太郎からの質問に答えながら、私たち家族の関係を再確認し胸が熱くなったことを今でも覚えています。夏の思い出をまとめさせていただきました。ありがとうございました。執筆/まゆん(監修:井上先生より)お兄さまの死と、お子さんとの初めての長旅。不安と悲しみのつらい旅、しかも太郎さんの行動を気にかけながらということで、とてもハードな数日だったのではないでしょうか。太郎さんがお兄さまの死をどのように認識したかというのは、その時点では理解できなかったかもしれませんが、少し大きくなってからそのときの周りの人の様子や雰囲気を思い出して、考えたりあらためて意識したりすることもあるのではと思います。時間がたってその時のことを太郎さんと話せるようになると、お互いに体験を整理することができるように思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月03日