新国立劇場2022/2023シーズン演劇『夜明けの寄り鯨』が12月1日から18日に東京・新国立劇場 小劇場で上演される。『夜明けの寄り鯨』は、2022/2023シーズン中に日本の劇作家の新作をお届けするシリーズ企画「未来につなぐもの」の第2弾で、劇作家・横山拓也による新作演劇。和歌山県の港町を舞台に、25年前に自分が傷つけたかもしれない男性の面影を追う、ひとりの女性のこころの物語となっている。出演者は、小島聖、池岡亮介、小久保寿人、森川由樹、岡崎さつき、阿岐之将一、楠見薫、荒谷清水の8名。演出は、新国立劇場では「こつこつプロジェクト」第一期として『スペインの戯曲』を手がけた若手演出家・大澤遊が務める。チケットは、10月29日10時より一般発売がスタートする。■作・横山拓也 コメント年に何回か、鯨が岸に打ち上げられるニュースを見て、小さく興奮する自分がいます。大型哺乳類の命の消失に触れてショックを受けると同時に、あの大きな躯体がいつのまにか砂浜に辿り着いたという事象に、ミステリとロマンを感じてしまうのです。鯨の座礁は、海洋汚染などの環境問題や船舶の騒音による影響が原因とも言われますが、最近では「ソナー(音波探知)の錯乱」による例がもっとも多いと報告されています。鯨やイルカは、音波を出してその跳ね返りで自分の位置を把握するという話を耳にしたことがあると思います。その能力が地磁気の等高線と遠浅の直行線とが交差するところで錯乱が起きて座礁する例が多いそうです。説明を聞いてもよくわかりません。この座礁した鯨のことを「寄り鯨」と呼ぶことを知りました。日本ではその昔「鯨一頭で七浦が潤う」といって、浅瀬に上がった寄り鯨を捕らえて、その恩恵をみんなで分け合う地域もあったそうです。今回はじめてご一緒する大澤さんと「どんな作品にしましょうか」とやりとりする中で、座礁鯨のモチーフを提案したところ面白がってくれたので、「迷う」「探す」「地図」などの要素をもって書くことにしました。楽しみしかなくて気持ちが逸りますが、筆が座礁しないように、慎重に執筆に取り組みたいと思います。■演出:大澤遊 コメント既成の台本をもとに創作することの多かった僕が、新作の演出のチャンスをいただけた、まず素直に嬉しいです。さらに様々な劇場でお名前をよく目にする横山拓也さんの新作。楽しみで仕方ありません。横山さんとざっくばらんにお話ししている中から、いくつかのイメージが生まれて来ました。それがこの創作の始まりです。いま横山さんがセリフを紡いでくれているところです。以前、恩師である宮田慶子さんに作家が机に向かっている姿を後ろから見たときに、声を掛けられなかったと伺ったことがあります。作家がセリフを紡ぐ作業、物語と向き合う作業は、大袈裟にいうと命を削る作業なのかもしれません。いま僕にできることは作家さんと並走すること。ただ見守ることしかできないかもしれませんが。横山作品の魅力のひとつは、どの登場人物もしっかりと生きている、もしくは生きていたこと。書き上がった物語を、一緒に向き合う仲間たちと丁寧に立ち上げていきたいと思います。地図を頼りに「生きている」ということを大事にして。余談ですが、保育園で僕のものだとわかるように貼られていたシールが鯨だったことをふと思い出しました。小さい頃から鯨と縁があるようです。<公演情報>新国立劇場2022/2023シーズン演劇『夜明けの寄り鯨』12月1日(木)~18日(日) 東京・新国立劇場 小劇場作:横山拓也演出:大澤遊【キャスト】小島聖池岡亮介小久保寿人森川由樹岡崎さつき阿岐之将一楠見薫荒谷清水チケット料金:A席7,700円B席3,300円一般発売日:10月29日(土) 10:00~購入リンク:【チケットに関するお問い合わせ】新国立劇場ボックスオフィス:03-5352-9999(10:00~18:00)詳細はこちら:
2022年09月23日2022/2023シーズンの演劇は、フランス・パリの国立オデオン劇場からの招聘公演、テネシー・ウィリアムズ『ガラスの動物園』で開幕!本来は2020/2021シーズン開幕作品として上演を予定していたが、コロナ禍で本国フランスにおいても2020年3月のワールドプレミア公演が5日目にして無念の閉幕。2021/2022シーズンで再び新国立劇場での公演を予定するもののカンパニーの入国が叶わず。二度の公演中止を経て、いよいよこの秋、来日公演が実現する。今世界で最も注目を集める演出家のひとりイヴォ・ヴァン・ホーヴェが、フランスを代表する女優イザベル・ユペールをはじめとする俳優4人と、どのような舞台をつくりあげるのだろう。待ちに待った上演を前に、母アマンダを演じるイザベル・ユペールに話をうかがった。得難い体験となったイヴォ・ヴァン・ホーヴェとの創作――〝追憶の劇〞と言われる『ガラスの動物園』ですが、この戯曲にどのような魅力を感じて出演を引き受けられたのですか?ユペール(以下H)いくつかの要素が重なった結果です。作品はご存じの通りテネシー・ウィリアムズの名作です。この偉大な作家の作品では、私は過去に『欲望という名の電車』を演じたことがあり、この時の演出はクシシュトフ・ワリコフスキ氏でした。今回の演出はイヴォ・ヴァン・ホーヴェ氏であること、これが大きな魅力であることに違いありません。つまり作品と演出家という二つの要素に心惹かれ、さらにアマンダという素晴らしい役なので出演を決めました。この完璧な組み合わせ以上の好条件はないでしょう。――今回の創作に際し、アマンダという女性像についてどのように分析・理解されたのでしょう。演じるために手掛かりにされたことがあれば教えてください。H正直に言うと、私の中のアマンダ像は、1950年代の映画に出てくるような、今の視点だとやや「流行遅れ」な人物でした。でも改めて台本を読んで思ったのです。イヴォ・ヴァン・ホーヴェ氏が演出するならば、このような類の台本と役からどのように「同時代性」が見えてくるのだろうと。着目すべき点はそこだと感じたのです。つまり、ある年代が特定されてしまうような、型通りの古めかしい見せ方にこだわらなくてもよいのではないかと。ですので、全く自由な気持ちで演じました。アマンダは、子どもたちを愛し、彼らの幸せを強く願うあまり度を越した態度に陥ってしまう、ひとりの母親です。その人物像にブレない視点を持ち、ひたすら掘り下げていくと、舞台をご覧になっている観客の方々と彼女の姿が限りなく近づいていく……そんなことが可能になるのです。――『ガラスの動物園』は数多くの舞台や映像作品がつくられている戯曲です。その中でユペールさんが心動かされた作品はありますか。Hサム・ゴールド氏が演出した舞台が素晴らしかったです。この演出は、あくまで私の印象ですが、イヴォ・ヴァン・ホーヴェ氏の演出に近いものがありました。ニューヨークのブロードウェイで見たのですが非常に良いプロダクションで、アマンダ役を演じたサリー・フィールドの演技と解釈も見事で心に残っています。――演出家イヴォ・ヴァン・ホーヴェとのクリエーションはいかがでしたか?H私にとって得難い体験となりました。彼は作品に明確な枠組みを与えてくれますが、俳優たちに対してはごく控えめにしか指示しません。私のことも完全に自由な状態にさせてくれました。俳優を信頼している証だと感じ、非常に嬉しかったです。彼との稽古はとてもスピーディーに進みました。一日のスケジュールの中で、稽古にやたらと時間を費やすことはしません。しっかりとしたビジョンを持っている人なので、そのようにできるのです。仲間たちにもそれは伝わり、彼のビジョンに対し信頼が生まれました。ヤン・ヴェーゼイヴェルトの舞台装置(美術・照明)も然り。巣穴のような舞台なのですが、私は彼のこの装置が大好きです。全体が毛皮で仕立ててあって、そこに上がるととても気持ちが良いのです。それと、とても面白いのはその色彩。装置がすべて赤褐色のトーンで彩られています。私と、ローラ役のジュスティーヌ・バシュレは、やはり同じ赤茶系の衣裳で、トム役のアントワーヌ・レナールも同様、赤みがかった茶色を纏うのです。装置も同じ色で、一瞬、巣穴のような背景の前に動物が何匹かいるみたいに見えます。外部から隠れてしまって、そのために何やら不安を煽るような眺めになってくるのです。作品の意図そのものですね。狭い空間に閉じ込められ、そこから出られない人々。外界から遮断されてしまい、そのためにさらに不安に苛まれ、神経が張りつめていく。ひとつひとつの行動が心のうねりを引き起こし、すべての密度が倍加していく。そう、この舞台美術が私たちに多大なインスピレーションを与えてくれています。素晴らしい俳優たちとの共演見事な調和の四重奏――共演のジュスティーヌ・バシュレ、シリル・ゲイユ、アントワーヌ・レナールと演技を交わして感じた、それぞれの魅力を教えてください。H本当に見事に調和のとれた四重奏となりました。なんと素晴らしい三人の俳優たちでしょう。ローラ役のジュスティーヌ・バシュレ、トム役のアントワーヌ・レナール、そしてジム役のシリル・ゲイユ。ジュスティーヌは優美そのもの、そして儚げで、見る者の心を強烈に揺さぶります。アントワーヌは、演じる人物の暴力性とフラストレーションの表現に長けています。シリルは、解放的で朗らかな人だと完璧に印象づけたかと思うと、一瞬ののちに場をかき乱す存在となり、物語冒頭でアマンダとローラが彼に期待していたものとはまったく逆のものをついには見せつけることとなります。――以前「私にとって唯一のスポーツは舞台に立つこと」と発言されていましたが、現在のユペールさんにとって演劇は、ご自身の仕事の中でどのような位置にありますか。Hああ、そんなことを言いましたっけ。そうなのです、演じる役柄によっては動作を非常に抑制されることもあるとはいえ、確かなのは、俳優というものは、肉体全体を使って勝負しているということ。そして劇場とは、それが起こる唯一の場なのです(反対に、映画の場合、撮影が完了した段階では、演技者の身体表現は多くのカットに分断されています)。体を使いこなすことはエキサイティングで、私は舞台上では自分に制限をかけたりしません。動作や姿がどんなものでも、表現を縛りつけたりしないよう、むしろ逆に、感情や表情、空想、あるいは狂気、それらの表現を解放してくれるように使うのです。観客にそれらすべてを伝えてくれるもの、それが肉体なのです。――今作で来日されるにあたり、楽しみにしていることはありますか。H日本に行くのだと思うと、いつも大きな幸せを感じます。日本が嫌いと言う人を、本当に一人も知りませんよ。日本という国が表しているのは、幻のような詩情、西欧世界とはしばしば異なる世界で、それを発見するのは大きな喜びなのです。今回の訪日は私にとって二度目で、ひと夏の間、長い滞在となります。まず京都と直島でフランス映画の撮影を行い、そして九月には東京です。新国立劇場で演出家イヴォ・ヴァン・ホーヴェと『ガラスの動物園』の舞台をつくることを、心から楽しみにしています。構成:尾上そら(演劇ライター)写真提供:国立オデオン劇場(C)Jan Versweyveld(新国立劇場・情報誌 ジ・アトレ 8月号掲載)<公演情報>演劇『ガラスの動物園』9月28日(水) ~10月2日(日) 新国立劇場 中劇場※フランス語上演 / 日本語及び英語バリアフリー字幕付作:テネシー・ウィリアムズ演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ芸術監督:小川絵梨子【出演】イザベル・ユペールジュスティーヌ・バシュレシリル・ゲイユアントワーヌ・レナール【チケット情報】S席11,000円(税込)A席7,700円(税込)B席4,400円(税込)チケット購入リンク:【チケットに関するお問い合わせ】新国立劇場ボックスオフィスTEL:03-5352-9999(10:00~18:00)公演詳細はこちら:プロフィールIsabelle Huppertパリ出身。ベルトラン・ブリエ監督の『バルスーズ』で映画界デビュー。クロード・シャブリ監督作品『Violette Noziere』でカンヌ国際映画祭の演技賞、『主婦マリーがしたことで』でヴェネツィア国際映画祭賞、『沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇』でヴェネツィア国際映画祭の演技賞、およびセザール賞最優秀女優賞を受賞。ヴェネツィア国際映画祭では、パトリス・シェロー監督作品『ガブリエル』における演技とそのキャリア全体に対して審査員特別賞(獅子賞)を授与された。ポール・バーホーベン監督作品『エル』での演技に対してはゴッサム賞、ゴールデングローブ賞を受賞、またアカデミー賞最優秀女優賞にノミネートされた。フランスでは、その演技に対してセザール賞最優秀女優賞を獲得している。カンヌ国際映画祭では審査員と司会、第62回目では審査員長を歴任している。映画と並行してフランス国内外で数々の演劇作品へ出演しており、2017年にはそのキャリアに対してモリエール名誉賞を受賞した。その他、レジオンドヌール勲章、国家功労勲章、芸術文化勲章を受賞している。
2022年09月08日新国立劇場で11月2日(水) より上演する2022 / 2023シーズン演劇『私の一ヶ月』より、作・須貝 英と演出・稲葉賀恵のコメントが到着した。本作は、日本の劇作家の新作をお届けするシリーズ企画【未来につなぐもの】の第一弾。新国立劇場では、「劇作家の劇場」と呼ばれる英国ロンドンのロイヤルコート劇場が世界各国にアソシエイトディレクター、文芸マネージャー、 劇作家を派遣し開催しているワークショップを2019年5月より日本で初めて実施。全4フェーズ、あしかけ2年にわたり14名の若い劇作家たちが参加した。それぞれのフェーズごとにワークショップ、ディスカッション、推敲を重ね、最終フェーズでは演出家、俳優も参加。リーディングを通して成長を重ねてきた作品群より、須貝 英による『私の一ヶ月』を上演する。演出には、同年代注目の若手演出家で、新国立劇場では2018年に『誤解』を演出した文学座の稲葉賀恵を迎える。■作・須貝 英 コメント今までいただいた機会や幸運が繋がりに繋がって、ここへ連れて来てもらったような気がします。心からありがたく思います。この脚本は僕一人で書いたものではありません。「ロイヤルコート劇場×新国立劇場 劇作家ワークショップ」という素晴らしい企画の中で育まれた作品です。日英両国の劇場チームと日本の若手劇作家たち、彼らと共に時間を掛けて議論を交わし、改稿を重ね、コロナ禍で延期しながらも、二年近い時間を掛けて全員で最後までやりきった思い入れの深い企画です。この経験だけでも財産ですが、さらにこの作品を選んでいただけて、しかも兼ねてよりご一緒したかった稲葉さんが演出をしてくださる。この上ない幸せです。この作品では、あらゆることが加速度的に進んでいく現代で、そこから弾き飛ばされた人々を描こうと思いました。貧しく寒い地方都市の、ある家庭とコンビニエンスストア。都内の大学図書館の閉架書庫。その三つの場所を主軸に物語は進みます。お客様と一緒に作品を通して、見過ごされてしまいそうになるささやかなものに目を向けること、未来に何を残していくべきかを考えることができたら、この物語が生まれ落ちた意味もあるのではないかと考えています。どうぞご期待ください!■演出・稲葉賀恵 コメントこの度はこのような素晴らしい企画に呼んで頂き、本当に感謝いたします。新国立劇場がロイヤルコート劇場と組んで劇作のワークショップを行うとお聞きした時、期待と興奮に包まれたことを覚えています。ロイヤルコート劇場が数々の劇作家を輩出し、イギリス演劇界での新人作家の登竜門的劇場であることは勿論知っていました。そして何より劇作家が時間をかけて自分の作品を創作出来る場を、国立の劇場が企画したということに感銘を受け、ここで生み出された作品を一読者として早く読んでみたいと思っていました。まさか、その作品を自分自身が演出させて頂く機会が来るとは、人生は何が起こるか分からないものです。しかもそれが数年前に豊橋の劇場で知り合い、同年代として刺激を受けた須貝さんの作品だとお聞きした時は喜びとともに感慨深いものがありました。これまでの色々なご縁が繋がって今創作の場に立たせて頂いていることを改めて実感したのです。この作品は一つの家族、とりわけ一人の母と娘を中心に物語が繰り広げられます。彼らの過去の傷を鋭く抉りながらも抱きしめる言葉の数々、そこに市井の人々を愛おしみ、彼らが未来に一歩進めるよう背中を押す須貝さんの厳しくも優しい眼差しがあります。私はこの眼差しを良い意味で疑ったり信じたりしながら、私たちの世代がこの世界をどう捉え、どう未来に受け渡していけるのか、この作品を通して考え抜きたいと思います。今回はなにより作家が隣にいて伴走してくださる、こんなに力強く幸せなことはありません。初日まで試行と挑戦を繰り返し、高みを目指していきたいです。どうぞご期待ください。<公演情報>演劇『私の一ヶ月』2022年11月2日(水)~20日(日) 新国立劇場 小劇場作:須貝 英演出:稲葉賀恵芸術監督:小川絵梨子【キャスト】村岡希美 / 藤野涼子 / 久保酎吉 / つかもと景子 / 大石将弘 / 岡田義徳【あらすじ】3つの空間。2005年11月、とある地方の家の和室で日記を書いている泉。2005年9月、両親の経営する地方のコンビニで毎日買い物をする拓馬。そして2021年9月、都内の大学図書館の閉架書庫でアルバイトを始めた明結(あゆ)は、職員の佐東と出会う。やがて、3つの時空に存在する人たちの関係が明らかになっていく。皆それぞれが拓馬の選んだつらい選択に贖いを抱えていた......。『私の一ヶ月』あらすじ紹介【チケット料金】A席:7,700円B席:3,300円一般発売日:2022年9月17日(土) 10:00~新国立劇場ボックスオフィス:03-5352-9999(10:00~18:00)新国立劇場Webボックスオフィス:公演詳細:
2022年09月05日「もの派」を代表する作家として活躍し、国内外で注目を集める作家、李禹煥(リ・ウファン)。彼の東京では初めて、国内でも17年ぶりとなる大規模回顧展『国立新美術館開館15周年記念 李禹煥』が、11月7日(月)まで国立新美術館で開催されている。李禹煥は、韓国の慶尚南道生まれ。ソウル大学校美術大学に入学後、1956年に来日、日本大学文学部で哲学を学んだ後、60年代後半より本格的に制作活動を開始する。2010年代以降はニューヨークのグッゲンハイム美術館や、フランスのヴェルサイユ宮殿、ポンピドゥー・センタなどで個展も開催し、国際的にその動きが注目されている作家だ。同展は、李禹煥本人が自ら展示構成を考案。彼の仕事やその歩みが網羅的に紹介されている。壁面左:《第四の構成B》1968/2022年 作家蔵、中央手前:《関係項》1968/2019年 森美術館蔵 壁面右:《第四の構成A》1968年作家蔵展覧会は、彫刻作品と絵画作品の2セクションにおおまかに分かれ、それぞれが時系列的に展示される。1968年頃から制作されている「関係項」は、石や鉄、ガラスを組み合わせた立体作品のシリーズ。これらの作品にはほとんど手が加えられておらず、ものと空間の関係、ものともの同士の関係、ものとイメージの関係に着目したものだ。5枚の鉄板で構成された《関係項(於いてある場所)Ⅰ 改題 関係項》は、それぞれの置かれた状況により、その形状が異なっている。床にそのまま置かれたもの、立てかけられ、たわみが生じたもの、それぞれの状況から鉄がもつ硬質さ、剛性などを感じ取れる。《現象と知覚B 改題 関係項》は、ひびの入ったガラスの上に岩があることで、それぞれの素材の強さやもろさ、不透明なもの、透明なものなど素材の特性を対比的に提示している。奥:《関係項(於いてある場所)Ⅰ 改題 関係項》1970/2022年 作家蔵手前:《関係項(於いてある場所II)改題 関係項》(部分) 1970/2022年作家蔵手前:《現象と知覚B 改題 関係項》1968/2022年作家蔵年代が進むにつれ、李の作品は、サイトスペシフィック(建物や地理的状況など、作品が置かれる場所の特性や環境を考慮に入れること)的な傾向を強めている。《関係項―棲処(B)》は、2017年にル・コルビュジェの設計したフランスの修道院、ラ・トゥーレット修道院で発表されたもの。《関係項―鏡の道》は、もともとは同じくフランスのアルル、アリスカン墓地で発表された屋外作品だ。鑑賞者は中央の鏡張りの道を歩き、足元の変わりゆく風景を眺めながら移動する。《関係項―棲処(B)》2017/2022年 作家蔵《関係項―鏡の道》2021/2022年 作家蔵野外展示場に展示された新作《関係項―アーチ》は2014年にヴェルサイユ宮殿で公開された作品を原型としたもの。アーチをくぐりぬけると、それまで見えていた日常の空間が新鮮な非日常への空間へと変わるという、鑑賞者の見えるものの変化を狙った作品だ。《関係項—アーチ》2014/2022年 作家蔵70年代からの取り組んだ絵画作品の変遷絵画作品の展示も、李の意識の変化と時間の流れをつぶさに感じ取れる構成となっている。ヨーロッパ、アメリカへの旅行を経て1970年代から絵画作品に取り組み始めた李は、たっぷりと絵の具をのせた筆を規則的にキャンバスに載せていく「点より」、「線より」のシリーズで、作品のなかに時間を表現することを試みた。左:《点より》1973年 いわき市立美術館蔵 中央:《点より》1977年 東京国立近代美術館蔵右:《点より》1975年 国立国際美術館蔵左:《線より》1977年東京国立近代美術館蔵右:《線より》1973年 東京都現代美術館蔵そして、李の絵画作品は彫刻作品と同様に、時代を経て大きく幅を広げていく。80年代からスタートした「風より」シリーズなどでは李の筆致は荒々しくなり、対して2000年代からの「照応」のシリーズなどでは、ストロークはわずかにとどまり大きな余白を見せる作品となる。左 :《風より》1985年 豊田市美術館蔵右:《風より》1983年 神奈川県立近代美術館蔵左:《照応》1992年 神奈川県立近代美術館蔵右:《照応》1992年 神奈川県立近代美術館蔵展覧会の最後に展示されているのは、展示室の壁に直接描かれた「対話」シリーズの新作《対話─ウォールペインティング》だ。繊細なグラデーションや、近づいて見ないとわからない筆のタッチなどを、実際に見て楽しんでみよう。《対話─ウォールペインティング》2022年作家蔵ちなみに、国立新美術館のエントランス近くにも李禹煥の作品が展示されている。《関係項─エスカルゴ》は作品の中心部分まで足を踏み入れることができる作品。中がどのようになっているか、こちらも実際に訪れて実感してみよう。《関係項─エスカルゴ》2022年作家蔵1960年代より、50年以上にわたり「もの派」を牽引し、ものともの、ものと人との関係を問い続けてきた李禹煥。その代表的な作品を網羅した貴重な展覧会をぜひとも体験してほしい。取材・文:浦島茂世【開催情報】『国立新美術館開館15周年記念 李禹煥』2022年8月10日(水)~11月7日(月)、国立新美術館にて開催
2022年08月18日英国の劇作家トム・ストッパードの最新作『レオポルトシュタット』が、10月14日から31日にかけて東京・新国立劇場 中劇場で上演されることが決定した。本作は『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』『コースト・オブ・ユートピア』『アルカディア』など、日本でもこれまで多くの作品が上演されているストッパードが「最後の作品になるかもしれない」としたことから上演前より大きな話題を呼び、2020年1月にロンドンで世界初演を迎えると瞬く間に絶賛された。ブロードウェイをはじめ英国国外での上演もすでに決定している本作で描かれているのは、あるユダヤ人一族の物語。戦争、革命、貧困、ナチスの支配、そしてホロコーストに直面した20世紀前半の激動のオーストリアに生きた一族の一大叙事詩は、50代で初めて自らのユダヤ人としてのルーツを知ったというストッパードの自伝的要素も含まれているといわれている。日本初演となる今回は、浜中文一、音月桂、村川絵梨、土屋佑壱、岡本玲、浅野令子、木村了、那須佐代子らおよそ30名のキャストが出演する。翻訳は『コースト・オブ・ユートピア』を手がけた広田敦郎、演出は『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』『かもめ』『ほんとうのハウンド警部』など、これまで数々のストッパード作品に演出者・翻訳者として携わってきた演劇芸術監督の小川絵梨子が担当する。■広田敦郎 コメントトム・ストッパードといえば、難解で深遠なテーマを好んで扱うインテレクチュアルな文学者と考える向きもあります。しかし、それ以上に彼は、圧倒的な物語の力で強烈な感情を呼び起こすことに長けた、職人的劇作家です。事実、『レオポルトシュタット』の背景となるオーストリアやユダヤ民族の歴史、文化について、わたし自身、さほどなじみがないにもかかわらず、翻訳、改稿しながら、何度も大笑いし、そして何度も心を打ちのめされています。1899年から1955年のウィーンを舞台に、社会の抑圧や人類史上まれに見る惨劇を懸命に生き延びようとした四世代の家族の物語は、百年後の日本に生きるわたしたちにとっても、切実に感じられるはずです。『レオポルトシュタット』は、作者が自らのルーツについて、はじめて正面から取り上げた戯曲です。旧チェコスロバキアでユダヤ系の一家に生まれたストッパードは、幼少期にナチスの迫害を逃れ、家族とともにシンガポールへ移住、日本軍の侵攻により父を失った後、さらなる避難先のインドで母が英軍将校と再婚して以来、イギリス人として育ちました。そして後年、四人の実祖父母を含む多くの家族がホロコーストで亡くなったことを知らされます。彼は自身の人生をa charmed life(魔法に守られた人生)と表現します。運や偶然のいたずらは、彼の戯曲におなじみのテーマです。ストッパードのウィットと情熱あふれるテキストをもとに、この理不尽な世界において生の奇跡を祝福する劇、虐げられた命の尊厳を回復する劇をつくるべく、アーティストと観客が一体となって集合的な知性とユーモアのセンスを発揮できるよう、助力できれば幸いです。■小川絵梨子 コメントトム・ストッパードの新作である本作は、2020年1月25日にロンドンのウィンダムズ劇場で幕を開けました。しかし感染症拡大により公演は一時中断となり、約一年半後、21年8月から上演が再開されることとなりました。現時点ではストッパードの最新作であり、多くの部分でストッパードの自伝的な要素が見られる物語となっています。『レオポルトシュタット』は、20世紀前半のウィーンのユダヤ人社会を舞台に、あまりに惨い歴史の中にあっても世代を紡ぎ続けてきた或るユダヤ人の一族について描かれています。実際にストッパードの祖父母たちはナチスの強制収容所で亡くなられました。迫害が繰り返され、生きる権利も住む場所も奪われ続けてきた一族ですが、しかしその生活の中には決して苦しみだけではなく、日々の喜びや笑いや家族の強い繋がりがありました。歴史的英雄や重要人物ではなくとも時代の中に確かに存在し、厳しい状況下でそれぞれの人生の物語をしっかりと生き続けた人々の姿を、できる限り鮮明に真摯に立ち上げていきたいと考えています。<公演情報>『レオポルトシュタット』10月14日(金)~31日(月) 新国立劇場中劇場作:トム・ストッパード翻訳:広田敦郎演出:小川絵梨子【キャスト】浜中文一、音月 桂、村川絵梨、土屋佑壱、岡本 玲、浅野令子、木村 了、那須佐代子泉関奈津子、内田健介、太田緑ロランス、椎名一浩、椙山さと美、鈴木勝大、鈴木将一朗、瀬戸カトリーヌ、田中 亨、野口卓磨、松本 亮、万里紗、八頭司悠友【チケット料金】S席8,800円A席6,600円B席3,300円一般発売日:9月4日(日) 10:00~【チケットに関するお問い合わせ】新国立劇場ボックスオフィス:03-5352-9999(10:00~18:00)詳細はこちら:
2022年08月03日千葉市美術館は、企画展「とある美術館の夏休み」を2022年7月16日(土)から9月4日(日)まで開催する。“日常と非日常のあわい”という視点から美術館を捉え直す誰にとってもいつもと少し違う時間に出会い、ささやかで特別な経験ができる「夏休み」。企画展「とある美術館の夏休み」は、まるで夏休みのような“日常と非日常のあわい”という視点から美術館そのものを捉え直していく展覧会だ。現代美術家の作品と所蔵作品を一緒に展示会場では、“美術館をときほぐす”“作品と出会い直す”“日常で表現する”という3つのテーマのもと、現代美術家やクリエイターなどの作品と、彼らが選んだ千葉市美術館の所蔵作品を展示。伊藤若冲、田中一村、河原温、杉本博司などの所蔵作品を、現代美術家、編集者、デザイナー、雑貨店などさまざまな表現者たちの目を通して紹介していく。中﨑透、ミヤケマイ、清水裕貴、津田道子も参加たとえば、中﨑透、ミヤケマイ、清水裕貴、津田道子の4名の現代美術家は、展示ケースや学芸員、監視員といった普段展覧会であまり意識されることのない存在を新作インスタレーションに組み込みつつ、千葉市美術館の所蔵作品と一緒に展示。作品そのものだけでなく、美術館をとりまく要素に着目し、美術館という場所を捉え直す。小川信治や目[mé]の新作インスタレーションまた、2017年と2019年に千葉市美術館で個展を開いた小川信治と現代アートチーム目[mé]は、その際に美術館に所蔵された自身の作品と再び対面。自身の作品と向き合いながら、新たなインスタレーションを制作する。日常生活の中で生まれる表現にも注目さらに、企画展「とある美術館の夏休み」では、日常生活の中でも多様な表現が生まれていることに注目して作品を紹介。日々の生活や感覚を日記で表現するきぐう編集室や、毎日決まった時間にコピー機に自分の顔や手を押し付けてプリントする井口直人、場所・時間・記憶を匂いという切り口で捉えて表現する井上尚子、長谷川義太郎が手掛ける雑貨店・文化屋雑貨店が参加し、日常の表現を見つめ直すことに繋がるような展示を実施する。展覧会概要企画展「とある美術館の夏休み」会期:2022年7月16日(土)~9月4日(日)休館日:8月1日(月)※休室日は7月25日(月)、8月15日(月)開館時間:10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで)※入場受付は閉館の30分前まで会場:千葉市美術館住所:千葉県千葉市中央区中央3-10-8観覧料:一般 1,200円(960円)、大学生 700円(560円)、小・中学生、高校生無料※障害者手帳所持者とその介護者1名は無料※( )内は前売り、市内在住65歳以上の料金※ナイトミュージアム割引:金・土曜日の18:00以降は観覧料半額※本展チケットで5階常設展示室「千葉市美術館コレクション選」も鑑賞できる【問い合わせ先】千葉市美術館TEL:043-221-2311 (代表)
2022年08月01日東京都美術館で7月23日(金)より『ボストン美術館展芸術×力』が開幕、10月2日(日)まで開催されている。芸術を自らの力を示すため利用してきた、古今東西の権力者たち。「力」とともにあった芸術の歴史を約60点で振り返る。新型コロナウイルス感染拡大の影響により2020年に中止となっていた展覧会だが、このたびようやく開催の運びとなった。第1章展示風景より左:アンソニー・ヴァン・ダイク《メアリー王女、チャールズ1世の娘》1637年頃右:ロベール・ルフェーヴェルと工房による《戴冠式の正装をしたナポレオン1世の肖像》1812年第1章展示風景より、左:長船長光《太刀 銘長光》13-14世紀右:来国俊《短刀 銘来国俊》13世紀後半第5章展示風景より狩野山雪《老子・西王母図屏風》17世紀前半ボストン美術館は50万点以上もの作品を有する世界有数の美術館。同展では、約10万点と膨大なコレクション数をほこる日本美術のほか、エジプトやヨーロッパ、インド、中国など世界各地の作品から「芸術と力」をテーマに約60点をセレクトし展示。その半数以上が日本初公開の作品となる。ロベール・ルフェーヴェルと工房 《戴冠式の正装をしたナポレオン1世の肖像》1812年ボストン美術館蔵展覧会は5章構成。第1章「姿を見せる、力を示す」では、権力者の力を誇示するために制作された作品が展示される。《戴冠式の正装をしたナポレオン1世の肖像》は、マントを羽織い、月桂樹の冠をかぶるナポレオンを描いた肖像画。その身にまとった服やポーズ、周囲に描かれた調度品など、すべてが権威を示す物だ。《ホルス神のレリーフ》 紀元前1971-紀元前1926年ボストン美術館蔵権威を示す手法は地域や時代によって大きく異る。ホルス神はエジプトの最も重要な神のひとりで、ハヤブサやハヤブサの頭部を持った男性の姿で表される。そして、現世に生きるエジプト王はホルスの化身とされていた。《ホルス神のレリーフ》はカイロから50キロほどはなれた場所にあるピラミッド複合体で見つかったものだ。《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》部分 13世紀後半ボストン美術館蔵《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》部分 13世紀後半ボストン美術館蔵同展のハイライトともいえる二大絵巻のひとつが《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》。平安時代末期、上皇と天皇の対立から巻き起こった「平治の乱」を描いた本作は、日本に残されていれば国宝に指定されていただろうと考えられている。注目点は、この動乱で重要な役割を担う後白河院が画面には一切登場せず、牛車でその存在を暗示するにとどまっていることだ。権力者の姿を威風堂々と描くヨーロッパとは異なり、天皇を描かない日本ならではの慣習によるものといえる。地上の統治者たちは、しばしば「神の代理人」としての役割を果たした。また、宗教的な儀式を行うことや、その地の宗教の支援を行う事もあった。第2章の「聖なる世界」では、権力者たちと宗教美術とのかかわりを扱う。ブオナッコルソの《玉座の聖母子と聖司教、洗礼者聖ヨハネ、四天使》は、金箔をふんだんに使い、照度を落とした展示室でも光り輝く祭壇画だ。ニッコロ・ディ・ブオナッコルソ《玉座の聖母子と聖司教、洗礼者聖ヨハネ、四天使》1380年頃ボストン美術館蔵エル・グレコの《祈る聖ドミニクス》はドミニコ会を創設した修道士聖ドミニクスを描いた作品。聖ドミニクスの敬虔さがドラマティックな構図で描かれている。エル・グレコ《祈る聖ドミニクス》1605年頃ボストン美術館蔵《大日如来坐像》は平安時代に制作されたもの。当時、権力者たちに広く受け入れられていた仏師、定朝の様式を踏襲して作られている。様式は、権威を表す機能も果たしていたのだ。《大日如来坐像》1105年ボストン美術館蔵続く第3章「宮廷の暮らし」では、統治者たちの暮らしぶりが垣間見える絵画や宝飾品などを紹介する。《灰色の枢機卿》は、現在もパレ=ロワイヤルとして現存するパリの宮殿の大階段が舞台の作品。カラフルな服を身にまとい、うやうやしくお辞儀をする貴族たちを、修道士は気にもとめず読書をしている様子が描かれている。修道士は、当時フランスの大権力者であったリシュリュー枢機卿のブレーンの一人。フランス王国の力関係がドラマティックな構図で描かれている。ジャン=レオン・ジェローム《灰色の枢機卿》1873年 ボストン美術館蔵《モンスーンを楽しむマハーラージャ、サングラーム・シング》は、統治者であるサングラーム・シングが郊外の宮殿を訪れたときの様子が描かれている。サングラーム・シングは画面上部と下部に描かれており、上部の屋上から妻とともに広大な領土を眺める様子や、下部の侍女を従えながら宮殿に入っていく描写から、その絶大な権威を見てとることができる。《モンスーンを楽しむマハーラージャ、サングラーム・シング》1720-1725年頃ボストン美術館蔵第4章「「貢ぐ、与える」、第5章「たしなむ、はぐくむ」へ統治者は、ときに他の統治者や家臣に贈り物をすることもある。第4章「貢ぐ、与える」では、権力者たちによる贈答品、あるいは権力者への貢物などを紹介していく。狩野永徳によるものと伝わる《韃靼人朝貢図屏風》は、韃靼人(モンゴル系騎馬民族)の一行が、位の高い人物に謁見するために、貢物を持って向かう様子が描かれている。この画題は中国の皇帝に謁見するために様々な民族が貢物を持って向かう「王会図」という画題に傚ったものだ。伝狩野永徳《韃靼人朝貢図屏風》16世紀後半 ボストン美術館蔵《銀の水差しと水盤》はイングランドの女王、エリザベス1世への贈り物、あるいは女王からの贈り物であったと考えられている。水差しと水盤の両方に歴代国王の略系図が彫り込まれ、水差しにはさら旧約聖書の物語も表されている。《銀の水差しと水盤》1567−68年ボストン美術館蔵そして、クライマックスとなる第5章「たしなむ、はぐくむ」では、芸術家のパトロンとしての権力者に焦点を当てる。同展で里帰りを果たした二大絵巻のひとつ、《吉備大臣入唐絵巻》は、全期を通して4巻揃って展示。奈良時代を代表する学者で官僚、遣唐使だった吉備真備と、唐で亡くなり、鬼となって現れた阿倍仲麻呂との物語が描かれる。現代の感覚ではかわいらしくユーモラスにも感じる内容だ。《吉備大臣入唐絵巻》展示風景《吉備大臣入唐絵巻》(部分)12世紀末ボストン美術館蔵《吉備大臣入唐絵巻》(部分)12世紀末ボストン美術館蔵展覧会の最後を飾るのは、同展のために修復が施され初の里帰りを果たした増山雪斎の《孔雀図》。雪斎は江戸時代に伊勢長島藩を治めた大名でありながら、画技にも秀でた文人大名だった。修復を経て色鮮やかに蘇った精緻な表現をじっくりと鑑賞して欲しい。増山雪斎《孔雀図》1801年ボストン美術館蔵はるか昔から密接に関わり合ってきた「芸術」と「力」。時代や国によって異なるさまざまな「力」の表現に注目しながら、権力とは何か、ということについて改めて考える機会ともなりそうだ。構成・文:浦島茂世【開催情報】『ボストン美術館展芸術×力』7月23日(土)~10月2日(日)、東京都美術館にて開催※日時指定予約制
2022年07月26日新国立劇場 2022/2023シーズン 演劇『ガラスの動物園』が、9月28日から10月2日にかけて新国立劇場 中劇場で上演されることが決定した。『ガラスの動物園』は、フランス・パリにある国立オデオン劇場の協力のもと、2020年3月にオデオン劇場制作によりワールドプレミアを迎えたテネシー・ウィリアムズの代表作。新国立劇場 2020/2021シーズンの開幕作品として上演を予定していたが、コロナ禍のため本国フランスでは公演5日目にして閉幕。また昨年秋に予定していた延期公演も、新型コロナウイルス感染症の影響による日本への入国制限などにより再び中止となっていたが、このたび2022/2023シーズンの開幕作品として、日本で初めて上演されることとなった。主演のアマンダ役は、フランスを代表する女優であり、映画、舞台と幅広く活躍するイザベル・ユペールが担当。演出は話題作を次々と発表する演出家、イヴォ・ヴァン・ホーヴェが務める。チケットは7月26日まで先行受付を実施中。<公演情報>新国立劇場 2022/2023シーズン 演劇『ガラスの動物園』9月28日(水)~10月2日(火) 東京・新国立劇場 中劇場※フランス語上演 / 日本語及び英語バリアフリー字幕付作:テネシー・ウィリアムズ演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ【出演】イザベル・ユペールジュスティーヌ・バシュレシリル・ゲイユアントワーヌ・レナール【チケット料金】※すべて税込S席11,000円 / A席7,700円 / B席4,400円一般発売:8月6日(土) 10:00~チケット情報はこちら:チケットに関するお問い合わせ:新国立劇場ボックスオフィスTEL:03-5352-9999(10:00~18:00)『ガラスの動物園』公式サイト:
2022年07月25日上野の国立西洋美術館で、リニューアルオープン記念となる展覧会『自然と人のダイアローグフリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで』が開催中です。本展では、自然と向き合った芸術家たちのさまざまな作品を展示。プレス内覧会で取材したおもな見どころや展示風景をご紹介します!どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 251『自然と人のダイアローグ』では、ドイツ・ルール地方の都市エッセンにあるフォルクヴァング美術館と国立西洋美術館のコレクションから、印象派とポスト印象派を軸にした作品100点超を展示。ドイツロマン主義の画家フリードリヒをはじめ、モネ、セザンヌ、ゴッホや20世紀絵画、そして現代ドイツを代表する画家リヒターの作品まで見ることができます。二人のコレクターが受けた苦難…フォルクヴァング美術館と国立西洋美術館は、いくつか共通点があります。まずは、設立者の熱い思い。両美術館とも、同時代を生きたコレクターのカール・エルンスト・オストハウス(1874-1921)と松方幸次郎(1866-1950)の個人コレクションをもとに設立されました。オストハウスは、地元の人々に美を提供するため美術館を建設したいと願い、松方も日本の画学生たちに本物の西洋画を見せてあげたいという熱い思いから作品を収集していました。また、第二次世界大戦により苦難を受けた点も似ています。フォルクヴァング美術館は、ナチス政権時代、「退廃芸術キャンペーン」により1,400点以上の近代美術作品が押収されました。いっぽう、松方のコレクションも戦争末期、フランス政府に多くの作品を接収され、1951年にそれらはフランスの国有財産となってしまいました。しかしその後、フランス政府は多くの作品を日本に返還することを決定。寄贈返還された松方コレクションを基礎に誕生したのが、国立西洋美術館です。1959年に完成した国立西洋美術館・本館の建物はル・コルビュジエの設計によるもので、2016年には国立西洋美術館を含む「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献 ―」が世界文化遺産に登録されました。リヒターとモネ、夢のコラボでは、本展の見どころ作品をいくつかご紹介します。まずは、現代ドイツを代表するアーティスト、ゲルハルト・リヒターの《雲》と、印象派の巨匠クロード・モネ《舟遊び》のコラボ。リヒターの作品は写真をもとに描いたもので、一見するとリアルなのですが、じっと見つめていると写真とは違う独特の空気が漂っているように感じられます。一緒に展示されているモネの絵にも空が描かれていますが、こちらは水面に反射した空と雲です。同じ空でも、画家によって表現の仕方はさまざま。この二人の作品を隣り合わせで見られる機会はほとんどないと思いますので、かなり貴重な鑑賞体験ができます。ゴッホ初来日の代表作も!本展では、ゴッホが最晩年に取り組んだ風景画の代表作、《刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑)》が初来日。こちらは、展覧会のメインビジュアルにもなっている注目作品です。ゴッホは、麦を刈る人物に「死」を、刈り取られる麦のなかに「人間」のイメージを見たといわれています。本作品が描かれたのは、1889年。当時サン=レミの精神療養院に入院していたゴッホは、その翌年の1890年に麦畑で自分の腹をピストルで撃ち、亡くなりました。リニューアルした美術館にも注目!本展で美術館を訪れたら、ぜひリニューアルした国立西洋美術館もご覧ください。同館は1年半の休館中に、創建した当時の姿に近づける工事を行っていました。前庭にある目地や西門の位置、囲障など、デザイン上も大きな意味をもつ部分が変化しています。世界遺産の美術館に足を運んで、ぜひ巨匠たちの名画を楽しんでみてください。Information会期:~9月11日(日)※休館日は毎週月曜日 (ただし、8月15日(月)は開館)会場:国立西洋美術館開館時間:9:30〜17:30毎週金・土曜日:9:30〜20:00※入館は閉館の30分前まで※日時指定制※最新情報などの詳細は展覧会特設サイトをご覧ください。お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
2022年07月24日新国立劇場演劇研修所が、7月から11月までの毎月1回オンラインにてオープンスクールを開催することを発表した。新国立劇場演劇研修所では次代の演劇を担う舞台俳優の育成を目的とした講座を実施。基礎訓練やシーンスタディ、朗読劇、試演会など3年間の実践的なカリキュラムが組まれており、修了生は新国立劇場主催公演をはじめ、他劇場での数多くの作品に出演するなど幅広く活躍している。カリキュラムの様子オープンスクールでは入所を検討している、あるいは演劇を学んでみたいという人のために、本研修所の講師陣を揃えた授業の一部を公開。オンラインで自宅など好きな場所で体験することができ、1日で終了するプログラムとなっている。また、各回最後には現役研修生たちが質問に直接答える座談会も組まれる。新国立劇場演劇研修所のご紹介<オープンスクール情報>【開催日】2022年7月23日(土)、8月27日(土)、9月25日(日)、10月29日(土)、11月26日(土) ※各回13:25~17:20※レッスン内容は各回によって異なります。複数回の受講も可能。※定員20名【参加費】各日1,000円(税込)※銀行振込【スケジュール】13:25~13:30 事前説明13:30~14:20 クラス114:30~15:20 クラス215:30~15:50 宮田慶子演劇研修所長による説明映像15:50~16:10 研修所概要 / 選考試験の説明16:20~17:20 現役研修生との質疑応答【クラス内容&講師】7月23日(土)クラス1:「声とことば」講師 飯原道代クラス2:「マイズナー・テクニック」講師 ボビー中西8月27日(土)クラス1:「戯曲を読んでみる」講師 田中麻衣子クラス2:「トレーニング」 講師 柴田彰彦9月25日(日)クラス1:「声」 講師 竹田まどかクラス2:「特別ワークショップ」 講師 小林七緒10月29日(土)クラス1:「歌唱」 講師 伊藤和美クラス2:「マイズナーテクニック」講師 ボビー中西11月26日(土)クラス1:「声」 講師 窪田壮史クラス2:「トレーニング」 講師 柴田彰彦【参加条件】・演劇研修所への入所をお考えの、17歳以上・30歳以下の方。俳優の経験は問いません。・全時間帯参加できる方・Wi-fi等の回線が整いオンラインでの参加ができる方・声を出したり、軽く動いたりできる環境がある方【受付期間】7月23日(土) の回:7月4日(月) ~13日(水)8月27日(土) の回:8月8日(月) ~17日(水)9月25日(日) の回:9月5日(月) ~14日(水)10月29日(土) の回:10月11日(火) ~19日(水)11月26日(土) の回:11月7日(月) ~16日(水)【注意事項】1日で終了するオープンスクールです。日程によって一部内容が異なりますので、お申し込みの際は十分ご注意ください。応募多数の場合は抽選となります。結果はメールにてお知らせいたします。参加費の支払い方法につきましては、当選後、別途ご連絡いたします。詳細・お申込みはこちら:
2022年07月08日兵庫県立美術館では、「2022年コレクション展II」を、2022年7月30日(土)から12月18日(日)まで開催する。2021年度の新収蔵作品や吉原治良を特集兵庫県立美術館のコレクション展では、特定のテーマのもとで同館の収蔵品を展示する「特集」と、展示室の一角を使用した「小企画」を開催している。今期は、2021年度に新たに収蔵された作品を紹介する特集1「リ・フレッシャーズ─新収蔵品紹介展」、具体美術協会を率いた吉原治良の作品と資料群を展示する特集2「没後50年吉原治良の小宇宙(ミクロコスモス)」、そして前期には、手で触れて作品を鑑賞できる小企画「美術の中のかたち─手で見る造形彫刻の中のからだ」を開催する。3つのテーマのもとで新収蔵作品を紹介特集1「リ・フレッシャーズ─新収蔵品紹介展」では、「リフレイン」「リフレクト」「リフレッシュ」の3つのキーワードのもと、2021年度の新収蔵作品を紹介。今回の新収蔵作品には、反復やくり返しを特徴とするものが多く含まれる。「リフレイン」では、そうしたくり返しのリズムが感じられる中村一美《仙丈II》などの作品を集めて展示する。また、「リフレクト」では、作品に映しだされた作者の姿や経験などに焦点を合わせ、郭徳俊《カーターと郭》や青木千絵《BODY 10-1》などを読み解く一方、「リフレッシュ」では、柳瀬安里や棚田康司をはじめ、これまで兵庫県立美術館が所蔵していなかった兵庫ゆかりの作家や若手作家などの作品を紹介する。「具体」創設者・吉原治良の創作に迫る2020年度に兵庫県立美術館は、前衛美術グループ「具体美術協会」の創設者・吉原治良の素描を中心に、多数の作品と資料の寄贈を受けた。特集2「没後50年吉原治良の小宇宙(ミクロコスモス)」では、これらの新収蔵作品に加えて、《牧歌》や《作品(二の字)》など従来のコレクション作品も展示し、吉原の創作活動を探ってゆく。手で触れて鑑賞する展示──ブールデルの彫刻を中心に兵庫県立美術館では、前身である兵庫県立近代美術館時代から、作品を手で触れて鑑賞できる展覧会「美術の中のかたち─手で見る造形」を継続的に開催してきた。今回は、同館の彫刻収集第1号であるエミール゠アントワーヌ・ブールデル《風の中のベートーヴェン》が返却されることにあわせて、ブールデルによる彫刻作品を特集。ブールデルがどのように身体を把握していたのかに光をあてるとともに、ほかのフランス近代彫刻作品との比較も行う。展覧会概要2022年コレクション展II会期:2022年7月30日(土)〜12月18日(日)[前期 7月30日(土)〜9月25日(日) / 後期 10月8日(土)〜12月18日(日)]会場:兵庫県立美術館住所:兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1開館時間:10:00〜18:00(入場は閉館30分前まで)休館日:月曜日(9月19日(月・祝)、10月10日(月・祝)は開館)、9月20日(火)、10月11日(火)※展示替え期間中(9月26日(月)〜10月7日(金))は常設展示室を閉室観覧料:・当日券=一般 500円、大学生 400円、高校生以下 無料、70歳以上 250円、障がい者(一般) 100円、障がい者(大学生) 100円・団体料金(20名以上)=一般 400円、大学生 300円、高校生以下 無料、70歳以上 200円、障がい者(一般) 100円、障がい者(大学生) 50円・特別展とのセット料金=一般 300円、大学生 200円、高校生以下 無料、70歳以上 150円、障がい者(一般) 50円、障がい者(大学生) 50円※障がい者1名につき介護者1名無料、ただし「美術の中のかたち」展開期中(前期)は障がい者も無料※一般以外の料金には証明できるものの提示が必要※毎月第2日曜日は公益財団法人伊藤文化財団の協賛により無料※団体(20名以上)での鑑賞の際には事前に連絡のこと■展示構成・特集1「リ・フレッシャーズ─新収蔵品紹介展」(常設展示室1・2・3(前後期)+4(後期))・特集2「没後50年吉原治良の小宇宙(ミクロコスモス)」(常設展示室6)・小企画「美術の中のかたち─手で見る造形彫刻の中のからだ」(常設展示室4(前期のみ))・近現代の彫刻(常設展示室5)・小磯良平記念室・金山平三記念室【問い合わせ先】兵庫県立美術館TEL:078-262-1011
2022年07月04日~これにより一人ひとりの夢に伴走できる体制が更に充実~『国立選抜クラス』ができた背景学校法人郁文館夢学園が運営する郁文館中学校、郁文館高等学校、郁文館グローバル高等学校、(東京都文京区、理事長・校長:渡邉美樹)は、郁文館高等学校に今までの4クラス(東大・e特進・特進・進学)に加え、新クラス『国立選抜クラス』設置を発表しました。新クラスができた背景には、東大、京大などの難関国立大学を目指す、従来の『東大クラス』に加え、早稲田大学、慶応大学、上智大学などの難関私立大学も同時に目指したい生徒のニーズに応えたいとの思いがあり、5教科7科目(国語・数学・英語に社会2科目(日本史・世界史・地理などから2科目選択)、理科2科目(物理・化学・生物などから2科目選択)で、共通テストが受験できるカリキュラムが組み込まれている「国立選抜クラス」を設置することで、将来の夢の選択の幅を狭めずに、より多くの生徒達の夢を叶える環境が実現します。新クラスのカリキュラムの特徴私立大学の早稲田大学や慶應大学では、文系でも数学が入試で求められ、上智大学も共通テストを利用した入試がスタートしています。このような最上位の難関の私立大学の合格にも、5教科型のカリキュラムは有効となります。今後データサイエンスを始めとする期待される新たな分野においても、文系理系に偏らない素養が求められるため、文理両方を学ぶ事ができる国公立大学の勉強過程そのものにも将来的な意味があります。他コースとは異なるカリキュラムで国公立大学受験に軸足を置きつつも難関私大も視野に入れる高い志を持つ生徒たちをしっかり支援するクラスが、この国立選抜クラスです。今後の展開効果的に模試を実施し、エビデンスに基づく面談で、一人ひとりに寄り添い、充実した補習や講習で、塾・予備校に頼らず、大学合格を勝ち取る指導体制も併せて、充実させていきます。ご期待ください!郁文館高校の多彩なクラス編成の詳細はこちらをクリックして下さい!※正式な入試概要は10月に掲載予定です。コース・クラス | 郁文館高等学校 | 郁文館夢学園 : 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年07月04日アクティビティサービス提供を行っているsoobox~想箱~(所在地:秋田県鹿角市、代表:川又 伸文)は、「十和田国立公園、八幡平国立公園での体験型観光拠点づくり事業」をクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」にて2022年6月11日(土)より開始しています。「CAMPFIRE」クラウドファンディングサイト 十和田湖でSUP(サップ)■開発背景私が起業をしたきっかけの一つが、地元での新しい仕事のカタチづくりと地方観光地の課題解決です。バブル期に避暑地として人気があり賑わっていた十和田国立公園と八幡平国立公園でしたが、現在では以前の賑わいには程遠いのが現状です。そんな賑わいがなくなった十和田八幡平国立公園を地元の個人事業ではありますが、アクティビティ事業を中心としたコンテンツや予約システム体制を整え「体験する観光」の拠点を創り、新しい観光のかたちとして、地元の新しい働き方として地域のために事業を通じて、貢献したいと日々奮闘しています。■特徴*大型観光バスなどの観光客ではなくマイカーやレンタカー、トレッキング、サイクリング個人観光客をターゲットとしたお手軽にアクティビティ体験を提供*国立公園の十和田湖、八幡平の四季折々の景色と大自然を体感できる体験プログラム*地元生まれ地元育ちのスタッフが、個人事業での地元初アクティビティ事業チャレンジ*昨年のプレオープンから徐々にお客様やお問い合わせが増え、7月~9月まで北東北三県大型観光キャンペーンに事業提供■リターンについて・10,000円:soobox ECサイトで掲載予定のコーヒー豆セット!sooboxのアクティビティ事業の拠点になっている十和田ふるさとセンター内にあるcafe「kotoriusagi(コトリウサギ)」で販売しているエチオピア産豆のセットになります。・25,000円:カヤック体験(1名分)十和田ふるさとセンター桟橋をスタートにして十和田湖の大自然を感じながらのカヤック体験になります。サポートスタッフ付きで体験時間は90分。・1,000,000円:アクティビティ(カヤック、サップ、トレッキング)5年間ペア体験提供。十和田湖西湖岸の大自然をアクティビティを通して体感してください。(サポート、ガイドスタッフ付)■プロジェクト概要プロジェクト名: 「十和田国立公園、八幡平国立公園での体験型観光拠点づくり事業」期間 : 2022年6月11日(土)~8月25日(木)23:59URL : ■会社概要商号 : soobox~想箱~(ソウボックス)代表者 : 代表 川又 伸文所在地 : 〒018-5334 秋田県鹿角市十和田毛馬内字中陣場117-3設立 : 2022年5月事業内容: アクティビティ提供事業サービス、ふるさと納税自治体サポートサービス、ECセレクトショップ(準備中)資本金 : 10万円【本件に関するお客様からのお問い合わせ先】soobox~想箱~(ソウボックス) お客様相談窓口TEL:090-6627-7231 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年06月25日リニューアルのため休館していた国立西洋美術館が1年半振りに企画展を開催している。6月4日(土)より9月11日(日)までの会期で行われる『国立西洋美術館リニューアルオープン記念自然と人のダイアローグフリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで』は、自然と人をテーマに近代の絵画の変遷をたどる展覧会だ。開館当初の佇まいに近づける工事のため、2022年4月まで約1年半のあいだ休館していた国立西洋美術館。リニューアル後、初となる企画展は、ドイツはエッセンにあるフォルクヴァング美術館の協力を得て開催される。フォルクヴァング美術館は、実業家のカール・エルンスト・オストハウスの個人コレクションを核とした美術館。オストハウスと同時代を生きた実業家、松方幸次郎のコレクションを元に誕生した国立西洋美術館との共通点も多い。同展では2つの美術館のコレクションから、「自然との対話」を画家たちがどのように行い、作品として作り上げていったのかについて4章構成で取り上げる。印象派やポスト印象派を軸に、20世紀絵画まで100点以上の作品が展示されている。左:ウジェーヌ・ブーダン《トルーヴィルの浜》1867年国立西洋美術館蔵右:エドゥアール・マネ《嵐の海》1873年国立西洋美術館蔵第1章は「空を流れる時間」。技術革新が進み、携行できる絵の具が普及した19世紀、画家たちは盛んに戸外に出て、変化する光の姿を捉えようとした。モネの師匠でもあり、海辺の風景を描き続けたブーダンの作品をスタートに自然をさまざまな形で捉えようとする画家たちを取り上げる。左:マックス・リーバーマン《ラーレンの通学路》1898年 フォルクヴァング美術館蔵 右:エドゥアール・マネ《ブラン氏の肖像》1879年頃 国立西洋美術館蔵ドイツの画家マックス・リーバーマンやマネは、木漏れ日と人々をモチーフに、光のきらめきを描いた。それぞれ画家ごとに個性が出ているのが興味深い。この章で一番の盛り上がりを見せるのは印象派の巨匠として知られるクロード・モネと現在、世界でもっとも人気のある画家のひとり、ゲルハルト・リヒターの共演だ。小舟にのって川で遊ぶ少女たちと、きらめく水面のコントラストが美しいモネの作品とソフトフォーカスで撮影された写真にも見える、青空と雲を描いたリヒターの作品が隣り合う。二つの作品の間には110年の年月が流れているが、光のあり方を追求しようとする画家たちの姿勢は変わらない。左:クロード・モネ《舟遊び》1887年国立西洋美術館蔵右:ゲルハルト・リヒター《雲》1970年 《雲》フォルクヴァング美術館蔵第2章は「〈彼方〉への旅」と題し、自分の心象や観念を自然の風景と結びつけた画家たちの作品を紹介する。ロマン派を代表するドイツの画家、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒは夕日を見つめる後ろ姿の女性像を描くことで、ヨハン・クリスティアン・クラウゼン・ダールは窓とその向こうの神秘的な風景を描くことで、人間の理想を追求することを試みた。左:カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ《夕日の前に立つ女性》1818年 フォルクヴァング美術館蔵 右:ヨハン・クリスティアン・クラウゼン・ダール《ビルニッツ城の眺め》1823年 フォルクヴァング美術館蔵ゴーガンはブルターニュ地方にあるポン=タヴェンやタヒチなど、あえて都会から離れて制作することで、自らの芸術を追求していた。左:ポール・ゴーガン《扇を持つ娘》1902年 フォルクヴァング美術館蔵 右:ポール・ゴーガン《海辺に立つブルターニュの少女たち》1889年 国立西洋美術館蔵第3章「光の建築」は、自然のなかに普遍的な秩序や法則、本質的な構造を見出し、表現のなかに織り込もうと試みた画家たちの作品を紹介する。スーラの点描技法に強く影響を受けたベルギーの画家、レイセルベルへは水面と月の光を丹念に点描で描き、フィンランドの国民的画家、ガッレン=カッレラは、静かな湖面にさざなみが立つ場面を装飾的に描いている。点描技法をスーラとともに実践し、後の画家たちに大きな影響を与えたシニャックは、パリや南仏などさまざまな場所の風景を描いた。左:テオ・ファン・レイセルベルへ《ブローニュ=シュル=メールの月光》1900年 フォルクヴァング美術館蔵 右:アクセリ・ガッレン=カッレラ《ケイテレ湖》1906年 国立西洋美術館蔵左:ポール・シニャック《ポン・デ・ザール橋》1912/1913年右:ポール・シニャック《サン=トロペの港》1901〜1902年 国立西洋美術館蔵最終章となる「天と地のあいだ、循環する時間」では、めぐる季節や生と死など自然のなかにおける「循環」を描いた作品を展示する。ゴッホの《刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑)》は、ドイツから初来日。ゴッホの死の12年後にオストハウスが購入し、フォルクヴァング美術館の開館を飾った記念碑的な作品だ。左:カミーユ・ピサロ《収穫》1882年 国立西洋美術館蔵 右:フィンセント・ファン・ゴッホ《刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑)》1889年フォルクヴァング美術館蔵ドニとモネの作品は、どちらも縦に伸びる木々が画面を分断する印象的な作品。ドニの作品が制作されたのは、モネの作品が描かれてからわずか15年後。その当時の芸術のあり方、価値観が大きく変化していたことも伺える。左:モーリス・ドニ《踊る女たち》1905年 国立西洋美術館蔵 右:クロード・モネ《陽を浴びるポプラ並木》1891年 国立西洋美術館蔵そして、展覧会は国立西洋美術館の所蔵するモネの2点、《睡蓮、柳の反映》《睡蓮》を中心にノルデやゴッホの絵画作品、ドイツの写真家、エンネ・ビアマン写真など、花の作品で締めくくられる。クロード・モネ左:《睡蓮、柳の反映》右:《睡蓮》 いずれも1916年国立西洋美術館蔵国立西洋美術館、フォルクヴァング美術館の珠玉の作品を通して、芸術家と自然との関わり方とを知ることができる展覧会。リニューアルしてまもない国立西洋美術館でぜひ鑑賞してみよう。取材・文:浦島茂世【開催情報】国立西洋美術館リニューアルオープン記念『自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで』6月4日(土)~9月11日(日)、国立西洋美術館にて開催()
2022年06月08日東京都美術館で『スコットランド国立美術館THE GREATS美の巨匠たち』が開催中です。本展では、世界最高峰の美術館のひとつ、スコットランド国立美術館から上質な西洋絵画が集結。展示の様子や学芸員さんの解説、おすすめ作品をご紹介します!巨匠たちの作品に会える!【女子的アートナビ】vol. 244『スコットランド国立美術館THE GREATS美の巨匠たち』では、スコットランドが誇る美術品のなかから、ラファエロやレンブラント、ルノワールなど、巨匠たちの作品や、ターナーやミレイなどイングランド出身の画家たちの作品なども含め、約90点が集結。西洋美術の流れを名画とともに楽しめます。スコットランド国立美術館が開館したのは、1859年。ヨーロッパの他国のように、王室コレクションからスタートした美術館ではなく、購入や地元の名士たちによる寄贈や寄託などによってコレクションを増やしていき、世界有数の美術館となりました。本展では、コレクションのエピソードを楽しめる作品も見ることができます。あだ名が有名!では、おすすめ作品を数点ピックアップしていきます。まずは、第1章「ルネサンス」から、巨匠エル・グレコの《祝福するキリスト(「世界の救い主)」》にフォーカス。イタリアやスペインで活躍したエル・グレコは、ギリシャ出身の画家。本名は、ドメニコス・テオトコプーロスですが、あだ名のエル・グレコ(ギリシャ人)として知られています。故郷のクレタ島で美術の修業をし、その後ヴェネツィアに移住、さらにローマでも働き、最後はスペインに永住しました。本作は、表現力豊かな筆遣いと、赤と青のコントラストが目を引く美しい作品です。学芸員さんのおすすめは…?続いて、第2章「バロック」では、スペインの画家、ディエゴ・ベラスケスの描いた《卵を料理する老婆》をご紹介。ベラスケスは、国王フェリペ4世付きの画家に任命され、「画家の中の画家」と呼ばれた巨匠。国王に信頼され、王室の肖像画を数多く描いたほか、王宮配室長も任されるほど出世した人です。本展担当の東京都美術館学芸員・髙城靖之さんによると、この作品は、ベラスケスがまだ若いころに、自分の力量を知らしめるために描いた野心作。本作の注目ポイントについて、次のように語っています。髙城さん作品の手前には静物を描いている部分があり、金属などの質感をたくみに描き分けています。なかでも一番の注目ポイントは、調理中の卵。素揚げにしているところですが、白身が固まっている最中のものと、すでに固まっている状態のものとがきちんと描き分けられています。卵が固まっていく様子を絵画で見事に表現しているので、ぜひご覧になってみてください。7度も夫を殺された…!?もう一点、バロック絵画で筆者のおすすめ作品をご紹介。オランダ絵画の黄金期に活躍した巨匠、レンブラント・ファン・レインの《ベッドの中の女性》です。一見すると、ふつうに美しい絵画ですが、解説を読んで作品の背景を知ると、あまりに残酷なストーリーに驚愕します。本作品の女性は、聖書の登場人物であるサラと考えられています。彼女は、過去7度も結婚初夜に夫を悪魔に殺されており、この絵は、8人目の夫が悪魔を追い払うところをサラが見守っている場面。この絵を見て、聖書の物語を読み解ける教養や見識が鑑賞者に求められているそうです。絵の背景にあるストーリーを知ると、作品の見え方ががらりと変わります。絵は表面的な美しさだけを見ても十分満足できますが、解説を読むとさらに別の楽しみ方もできます。スコットランド人の故郷愛が伝わる…!最後は、スコットランド国立美術館のステキなエピソードがある絵画をご紹介。本作品は、アメリカの風景画家フレデリック・エドウィン・チャーチの作品です。なぜ、アメリカ絵画が最後に展示されているのでしょう?髙城さんによると、この絵は、スコットランドの貧しい家庭に生まれた人がアメリカに移住し、実業家として成功したあと故郷に寄贈した作品。スコットランド国立美術館は、市民らの寄付などによりコレクションを増やしていった美術館なので、その象徴として最後にこの作品を展示したそうです。巨匠たちの競演を楽しんで!巨匠たちの名画、いかがでしたか?本展は7月3日まで開催。幅広い西洋美術の名品を、まとめて見られる貴重なチャンスです。ぜひ美術館で楽しんでみてくださいね!Information会期:~7月3日(日)※休室日は月曜日会場:東京都美術館企画展示室開室時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)※金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)※夜間開室については、展覧会公式サイトでご確認ください。観覧料:※本展は日時指定予約制一般¥1,900、大学生・専門学校生¥1,300、65歳以上¥1,400高校生以下無料(日時指定予約必要)※最新情報は展覧会公式サイトでご確認ください問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
2022年05月14日『スコットランド国立美術館THE GREATS美の巨匠たち』が東京都美術館(台東区)で開催中だ。1859年に開館したスコットランド国立美術館は、世界でも指折りの西洋絵画コレクションを有する。本展は、そのコレクションの中から、ラファエロ、エル・グレコ、ベラスケス、レンブラント、ブーシェ、スーラ、ルノワールなど、ルネサンス期から19世紀後半までの西洋絵画史を彩る巨匠たちの作品を展示。そのほか、ゲインズバラ、レノルズ、ブレイク、コンスタブル、ターナー、ミレイといったイングランド出身の画家に加え、日本ではなかなか見ることのできないレイバーン、ラムジー、ウィルキー、ダイスなどスコットランド出身の代表的な画家たちの名品も。油彩画・水彩画・素描約90点を通じ、西洋美術の流れとともに、ヨーロッパ大陸と英国との文化交流から、英国美術がはぐくまれた様子を紹介している。展示構成は、スコットランド国立美術館の建物や館内の様子を描いた作品を紹介する「プロローグ」から始まり、アンドレア・デル・ヴェロッキオ(帰属)《幼児キリストを礼拝する聖母(「ラスキンの聖母」)》やエル・グレコ《祝福するキリスト(「世界の救い主」)》などが並ぶ「ルネサンス」、ディエゴ・ベラスケス《卵を料理する老婆》、レンブラント・ファン・レイン《ベッドの中の女性》といった「バロック」と続く。英国のコレクターたちが美術品の購入や文化的教養を深めるために大規模なヨーロッパ旅行をした「グランド・ツアーの時代」では、フランソワ・ブーシェの晩年の作である《田園の情景》やジョシュア・レノルズ《ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち》などが見られる。「19世紀の開拓者たち」では、フランシス・グラント《アン・エミリー・ソフィア・グラント(“デイジー”・グラント)、ウィリアム・マーカム夫人(1836-1880)》、クロード・モネ《エプト川沿いのポプラ並木》などを紹介。「エピローグ」では、フレデリック・エドウィン・チャーチ《アメリカ側から見たナイアガラの滝》という圧巻の作品で締め括られる。本展は7月3日(日)まで(休室日は月曜日)。開室時間は午前9時30分〜午後5時30分※金曜日は午前9時30分~午後8時(入室は閉室の30分前まで)。展示室の混雑を避けるため、日時指定予約制。一般1900円、大学生・専門学校生1300円、65歳以上1400円。天海祐希がナビゲーターを務める音声ガイドとのセット券は2400円(5月8日入場分までの期間限定)。なお、7月16日(土)〜9月25日(日)は神戸市立博物館、10月4日(火)〜11月20日(日)は北九州市立美術館 本館でも開催される予定だ。取材・文・撮影:五月女菜穂
2022年05月06日上質で、幅広い西洋絵画コレクションを持つことで知られるスコットランド国立美術館から、巨匠と呼ばれる画家たちの作品が数多くやってくる展覧会『スコットランド国立美術館THE GREATS美の巨匠たち』が4月22日(金)に東京都美術館で開幕した。7月3日(日)まで開催の後、神戸市立博物館、北九州市立美術館へも巡回予定だ。スコットランド国立美術館は、スコットランドの首都、エディンバラに1859年に設立された美術館。ヨーロッパで最も壮大な景観を持ち、世界遺産にも登録されているエディンバラは、毎年夏に芸術祭「エディンバラ・フェスティバル」が開催されることで知られる芸術の都市だ。そんな芸術色豊かな都市エディンバラにある美術館ではあるが、設立当初は作品の購入予算がなく、地元の名士たちの寄贈や寄託により上質なコレクションを築き上げてきたという。同展は、そんなスコットランド国立美術館が持つ、ラファエロやエル・グレコからスーラ、ルノワール、ゴーガンまで、「巨匠」と呼ばれる画家たちの作品を中心に紹介するものだ。また、スコットランドやイングランドの作家たちによる作品も合わせて紹介される。展覧会は時代順に4章で構成されている。第1章「ルネサンス」ではラファエロの素描や、エル・グレコのキリスト像など、誰もが知る巨匠の作品を展示する。展示風景よりエル・グレコ《祝福するキリスト》1600年頃 スコットランド国立美術館蔵ヴェロッキオ(帰属)の《小児キリストを礼拝する聖母(「ラスキンの聖母」)》は、19世紀の批評家で画家のジョン・ラスキンが所有していたことで知られた作品。ラスキンはラファエル前派らに多大な影響を与え、ホイッスラーと裁判で争うなどイギリス美術史のなかで大きな存在感を持つ人物だ。アンドレア・デル・ヴェロッキオ《幼児キリストを礼拝する聖母「ラスキンの聖母」》1470年 スコットランド国立美術館蔵第2章の「バロック」では、17世紀に活躍したレンブラントやベラスケスなどの油彩画や素描を展示する。ベラスケスの《卵を料理する老婆》は台所や酒場の情景を描いた、ボデゴン(厨房画)と呼ばれる作品。老婆は熱した油のなかに生卵をそっと流しいれて揚げ焼きにするスペイン式目玉焼きを作っている。陶器、金属の器、ガラスのフラスコなど様々な物質の質感が見事に描き分けられている。ディエゴ・ベラスケス《卵を料理する老婆》1618年スコットランド国立美術館蔵ルーベンスに学んだ画家ヴァン・ダイクは、イングランドの宮廷画家として招聘され、当地で多くの肖像画を残した。彼は、後のレノルズらに大きな影響を与え、英国で一大ジャンルとなった肖像画の世界に絶大な影響を与えている。アンソニー・ヴァン・ダイク《アンブロージョ・スピノーラ侯爵(1569-1630)の肖像》1627年スコットランド国立美術館蔵レンブラント・ファン・レイン《ベッドの中の女性》1647年スコットランド国立美術館蔵続く第3章は「グランド・ツアーの時代」。17世紀から19世紀にかけて、イギリスの裕福な貴族の子弟やコレクターらは、文化的教養を深めるため、長期間かけてヨーロッパを旅するグランド・ツアーを行っていた。このグランド・ツアーが流行していた時代、フランスではブーシェらによる華やかな絵画を、イタリアではグアルディらが美しい風景画をそれぞれ描き、イギリスからの旅行者たちは熱心に収集していた。フランソワ・ブーシェ《田園の情景》 1762年スコットランド国立美術館そして、それまで画家を排出してこなかったイギリスから、レノルズやゲインズバラ、ラムジーらが肖像画家として台頭、活躍を開始する。この時期からようやくイギリスならではの絵画が芽吹き始めたのだ。ジョシュア・レノルズ《ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち》1780-81年スコットランド国立美術館トマス・ゲインズバラ《ノーマン・コートのセリーナ・シスルスウェイトの肖像》1778年スコットランド国立美術館蔵そして、第4章「19世紀の開拓者たち」では、ターナーやコンスタブル、ミレイやブレイクなどイングランド、スコットランドで活躍する画家たちが占める割合が増えていく。左:フランシス・グラント《アン・エミリー・ソフィア・グラント(“デイジー”・グラント)、ウィリアム・マーカム夫人(1836-1880)》1857年右:ヘンリー・レイバーン《ウィリアム・クルーンズ少佐(1830年没)》1809-11年頃いずれもスコットランド国立美術館蔵左:ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《トンブリッジ・ソマー・ヒル》1811年 右:ジョン・コンスタブル《デダムの谷》1828年 いずれもスコットランド国立美術館蔵ジョン・エヴァレット・ミレイ《古来比類なき甘美な瞳》1881年スコットランド国立美術館蔵そして、モネやゴーガンなどの印象派やポスト印象派の画家なども合わせて展示。時代が進めば進むほど題材や画風、価値観に多様性が現れてくるのも興味深い。左:ポール・ゴーガン《三人のタヒチ人》1899年右:クロード・モネ《エプト川沿いのポプラ並木》1871年いずれもスコットランド国立美術館蔵そして、展覧会の最後はフレデリック・エドウィン・チャーチの記念碑的な作品《アメリカ側から見たナイアガラの滝》で締めくくられる。この作品は、スコットランド出身の実業家によって美術館に寄贈されたもの。寄付や寄贈の作品を核に成長を続けた同館を象徴する一枚となっている。フレデリック・エドウィン・チャーチ《アメリカ側から見たナイアガラの滝》1867年スコットランド国立美術館蔵各時代の著名な巨匠の作品を楽しみつつ、そしてイギリス美術史の流れも辿ることができる展覧会、さまざまな楽しみ方ができるはずだ。【開催情報】『スコットランド国立美術館THE GREATS美の巨匠たち』4月22日(金)~7月3日(日)、東京都美術館にて開催※日時指定予約制
2022年04月30日ポーラ美術館では、9月6日(火)まで会期中無休で『ポーラ美術館開館20周年記念展モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に』が開催されている。クロード・モネやルノワールなどの印象派から、ゲルハルト・リヒターやアニッシュ・カプーア、杉本博司などの現代美術作品まで、ポーラ美術館の幅広いコレクションを諦観できる展覧会だ。ポーラ美術館は2002年9月、神奈川県箱根町に開館。開館当初はポーラ創業家二代目・鈴木常司が収集した印象派絵画や19世紀後半から20世紀前半の絵画、化粧道具のコレクションなどを核として精力的に展覧会を行ってきた。近年は美術館の敷地内に野外彫刻や森の遊歩道、現代美術ギャラリーの設置や、20世紀以降の美術作品の収集を強化するなど、その活動を拡充させている。展覧会場入口同展はこれまでのコレクションや、新収蔵した作品を「光」をテーマに紹介する展覧会。印象派の画家たちから、現在進行系で活躍する作家まで、さまざまな形での「光」の表現を目にすることができる。二部構成となる同展の第一部は、これまでのコレクションと、それを補強する形で加わった新収蔵作品を紹介。開館以来人気のルノワールやモネ、マティスなどの19世紀末から20世紀初頭のフランス絵画のほか、関根正二や松本竣介、岸田劉生などの日本人作家の作品も展示されている。展覧会はルノワールの《レースの帽子の少女》の展示からスタートする。同作品はポーラ美術館の開館時から人気の作品だ。ピエール・オーギュスト・ルノワール《レースの帽子の少女》1891年ポーラ美術館蔵マティスの《オリーブの木のある散歩道》は、マティスがシニャックの誘いでサン・トロペに滞在し、色彩と造形のヒントを得たあとに制作した新収蔵作品。この作品を描いた後、マティスはサロン・ドートンヌで作品を発表し、それがフォーヴィズムの発端となった。アンリ・マティス《オリーブの木のある散歩道》1905年 ポーラ美術館蔵展示風景より Photo (C)Ken KATO展示風景より Photo (C)Ken KATO今年生誕110年を迎える松本竣介の作品など、日本の近代洋画も新しくコレクションに加わっている第二部は、通常はコレクション展示を行う4つの展示室を使い、近代と現代を結ぶ新収蔵作品を展示する。白髪一雄をはじめとした戦後日本の前衛美術や、アニッシュ・カプーア、ドナルド・ジャッドら現代の作家まで網羅した構成となっている。展示風景よりPhoto (C)Ken KATO左:白髪一雄《泥錫》1987年、右:《波濤》1987年いずれもポーラ美術館蔵そして、この展覧会の見どころ、モネとリヒターを組みわせた展示室へ。ゲルハルト・リヒター《抽象絵画(649-2)》は、リヒターの代表的なシリーズ「抽象絵画」の代表作の一つ。巨大なキャンバスに、スキージ(へら)で塗り、そして削られた絵の具が複雑な層となっている。ポーラ美術館の代表作のひとつ、モネの《睡蓮の池》と並べると調和しあっているように見えるから不思議だ。左:ゲルハルト・リヒター《抽象絵画(649-2)》1987年右:クロード・モネ《睡蓮の池》1899年 いずれもポーラ美術館蔵ゲルハルト・リヒター《抽象絵画(649-2)》1987年(部分)ポーラ美術館蔵展示風景よりまた、リヒターの作品は、ハマスホイとも調和する。「ハマスホイとリヒター」と名付けられたセクションでは、デンマークの画家、ヴィルヘルム・ハマスホイの《陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地》と、ゲルハルト・リヒターのフォト・ペインティングシリーズの一点《グレイ・ハウス》の2作品のみが展示されている。室内を描いたハマスホイと室外を描いたリヒター、国も時代も異なる画家の作品だが、どちらも静謐で、呼応しあっているように見える。左:ヴィルヘルム・ハマスホイ《陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地》1899年右:ゲルハルト・リヒター《グレイ・ハウス》1966年いずれもポーラ美術館蔵 Photo (C)Ken KATOヴィルヘルム・ハマスホイ《陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地》1899年 ポーラ美術館蔵ゲルハルト・リヒター《グレイ・ハウス》1966年 ポーラ美術館蔵また、杉本博司の最新シリーズ「Opticks」シリーズもポーラ美術館のコレクションに加わっている。本シリーズはプリズムを通した光をポラロイドフィルムで撮影し、デジタル技術で大判プリントに仕上げた連作だ。杉本博司「Opticks」シリーズ 2018年 ポーラ美術館蔵(C)Ken KATOポーラ美術館は、2032年の開館30周年に向けて、さらなるコレクションの拡充を目指しているそう。この展覧会はこれまでの美術館活動の集大成であり、そしてこれからに向けての経過報告の展覧会でもある。ぜひ一度、ポーラ美術館の「いま」を確認しに、箱根に足を伸ばしてみよう。取材・文:浦島茂世【開催情報】『ポーラ美術館開館20周年記念展モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に』4月9日(土)~9月6日(火)、ポーラ美術館にて開催
2022年04月29日ポーラ美術館では、2022年4月9日から2022年9月6日まで、開館20周年記念展「モネからリヒターへ―新収蔵作品を中心に」を開催中です。本展を企画するにあたり、主要なテーマを「光」としました。「光」をテーマとした現代の美術作品を収集・公開していくことは、印象派の絵画をコレクションの重要な起点のひとつに据えるポーラ美術館にとって大切なミッションです。クロード・モネをはじめとする印象派の画家たちは光の表現を追究していますが、ゲルハルト・リヒターやケリス・ウィン・エヴァンスなどの現代の作家たちの作品にも、光への強い関心をうかがうことができます。彼らの作品に表れる「光」とは、単に造形的な意味だけでなく、現在を照らし出す「光」、あるいは私たちが持続可能な未来へと進むための道標となる「光」という意味も内包していると言えるでしょう。コロナ禍や緊迫する国際情勢により暗雲が立ち込める現代の状況の中で、作品からほとばしるエネルギーと勢い、そして明るい「光」は、多くの人に前進する勇気を与えるきっかけになるのではないでしょうか。本展覧会では、ポーラ美術館のコレクションの「現在(いま)」をご紹介するとともに、美術館の未来とコレクションの可能性を探ります。■展示風景<第1部>第1章 光のなかの女たち第2章 水の風景、きらめく光第5章 放たれた光彩第8章 松本峻介<第2部>第10章 戦後日本の抽象第11章 物質性の探究第12章 色彩と抽象第14章 ハマスホイとリヒター第16章 杉本博司第17章 三島喜美代すべて©Ken KATO■展覧会概要ポーラ美術館開館20周年記念展「モネからリヒターへ―新収蔵作品を中心に」会期:2022年4月9日(土)~9月6日(火)会 場:ポーラ美術館 展示室1~5、アトリウム ギャラリー、アトリウムロビー、森の遊歩道主 催:公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館出品点数:絵画、版画、彫刻他 約120点おもな出品作家:<第1部 コレクション+新収蔵作品>ベルト・モリゾ、クロード・モネ、ピエール・オーギュスト・ルノワール、 ロベール・ドローネー、ニコラ・ド・スタール、フェルナン・レジェ、ベン・ニコルソン、 アンリ・マティス、レオナール・フジタ(藤田嗣治)、関根正二、松本竣介、里見勝蔵<第2部 新収蔵作品>ヴィルヘルム・ハマスホイ、ジャン・デュビュッフェ、モーリス・ルイス、ドナルド・ジャッド、 ヘレン・フランケンサーラー、パット・ステア、ゲルハルト・リヒター、アニッシュ・カプーア、ケリス・ウィン・エヴァンス、ロニ・ホーン、スーザン・フィリップス、山口長男、山田正亮、 難波田龍起、猪熊弦一郎、斎藤義重、白髪一雄、李禹煥、田中敦子、中西夏之、中林忠良、 杉本博司、三島喜美代展覧会特設サイト:■ポーラ美術館 森の遊歩道2013年7月、ブナやヒメシャラが群生する富士箱根伊豆国立公園内に開設された遊歩道では、四季折々のさまざまな動植物や彫刻作品に出会いながら、森林浴をお楽しみいただけます。遊歩道の全長は約1km、散策の所要時間は 約40 分です。開放時間:9:00~16:30 ※天候により、閉鎖する場合がございます。■ポーラ美術館について2002 年に「箱根の自然と美術の共生」をコンセプトに神奈川県箱根町に開館。印象派から20世紀にかけての西洋絵画を中心としたコレクションを核とする展覧会を開催する一方で、現代美術の第一線で活躍する作家たちの作品も展示し、同時代の表現へと展望を拡げている。富士箱根伊豆国立公園という立地を生かした森の遊歩道では四季折々の豊かな自然を楽しめる。開館時間︓午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)休館日︓会期中無休 ※悪天候による臨時休館あり所在地︓神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山 1285TEL︓0460-84-2111入館料:大人1,800円/シニア割引(65歳以上)1,600円/大学・高校生1,300円中学生以下無料/障害者手帳をお持ちのご本人及び付添者(1名まで)1,000円※すべて税込 団体割引、各種前売り券による割引あり公式サイト:企業プレスリリース詳細へ本記事に掲載しているプレスリリースは、株式会社PR TIMESから提供を受けた企業等のプレスリリースを原文のまま掲載しています。FASHION HEADLINEが、掲載している製品やサービスを推奨したり、プレスリリースの内容を保証したりするものではございません。掲載内容に関するお問い合わせは、株式会社PR TIMES()まで直接ご連絡ください。
2022年04月20日展覧会「ワニがまわるタムラサトル」が、東京・六本木の国立新美術館にて、2022年6月15日(水)から7月18日(月・祝)まで開催される。現代美術家・タムラサトルの個展タムラサトルは、1972年生まれの現代美術家だ。「ワニがまわるタムラサトル」では、代表作である「まわるワニ」のカラフルな彫刻を、約12mの巨大なワニを中心に、大型インスタレーション作品として展開する。タムラサトルが「まわるワニ」の作品を手がけるようになったのは、大学3年の秋のこと。「電気を使った芸術装置」という課題に対して、電気に関する知識のなかったタムラは、プランを発表する前夜、朝起きて最初に思いついたものを作ると決めて就寝、そして翌朝、「ワニがまわる」というイメージが浮かび、それを作るようにしたのだった。その際に制作されたのは、4.5mのワニが毎分30回転をするという作品であり、タムラ自身そのわけのわからなさに強烈な興奮を覚えたという。その後、「ワニがまわる」意味を考えながら作品制作を続けるが、「ワニがまわる」ことに意味があるのではなく、「よくわからないが、なぜかワニがまわっている」という状況こそが作品の面白さの本質をなしているのだと気づくに至った。本展では、そのようにユーモアに満ちたタムラの作品を通して、新しい視点から「アートとは何か」という問いについて考えることができそうだ。展覧会概要展覧会「ワニがまわるタムラサトル」会期:2022年6月15日(水)〜7月18日(月・祝)会場:国立新美術館 企画展示室1E住所:東京都港区六本木7-22-2開館時間:10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)※入場は閉館の30分前まで休館日:火曜日観覧料:無料【問い合わせ先】TEL:050-5541-8600 (ハローダイヤル)
2022年04月16日『東京混声合唱団×新国立劇場合唱団Dream Concert』が2022年7月31日(日)に東京オペラシティ コンサートホール タケミツメモリアル(東京都新宿区)にて開催されます。チケットはカンフェティ(運営:ロングランプランニング株式会社、東京都新宿区、代表取締役:榑松 ⼤剛)にて発売予定です。カンフェティにてチケット発売! 公式ホームページ 日本を代表するプロ合唱団である東京混声合唱団と、新国立劇場のオペラ公演をはじめ数々の舞台でその歌声を響かせる新国立劇場合唱団との合同コンサート。各合唱団の持ち味を存分に生かした単独ステージと、この2団体だからこその豪華な合同ステージをお楽しみください。【演奏曲目】R.ワーグナー:楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』より信長貴富:『呼び交わす言葉たち』~無伴奏混声合唱のための2つのエチュード~ より信長貴富:混声合唱とピアノのための『くちびるに歌を』(2台ピアノ版初演)三善晃:『唱歌の四季』他東京混声合唱団1956年に創設された日本を代表するプロ合唱団。コンサートの開催を演奏活動の中心に置き、広範な分野の合唱作品の開拓と普及に取り組んでいる。東京、大阪での定期演奏会を核とし、海外公演を含む年間の活動は150回を数える。レパートリーは、創立以来行っている作曲委嘱活動で生まれた250曲を超える作品群をはじめ、内外の古典から現代作品までと全合唱分野を網羅している。サントリー音楽賞、中島健蔵音楽賞、文化庁芸術祭大賞などを受賞。新国立劇場合唱団新国立劇場は、オペラ、バレエ、ダンス、演劇という現代舞台芸術のためのわが国唯一の国立劇場として、1997年10月に開場した。新国立劇場合唱団も年間を通じて行われる数多くのオペラ公演の核を担う合唱団として活動を開始。メンバーは100名を超え、新国立劇場で上演されるシーズン公演の出演に加え、2007年からは劇場外からの出演依頼の声に応えて外部公演への出演を開始した。個々のメンバーは高水準の歌唱力と演技力を有しており、合唱団としての優れたアンサンブル能力と豊かな声量は、公演ごとに共演する出演者、指揮者、演出家・スタッフはもとより、国内外のメディアからも高い評価を得ている。公演概要『東京混声合唱団×新国立劇場合唱団 Dream Concert』公演日:2022年7月31日(日)14:00開場/15:00開演会場:東京オペラシティ コンサートホール タケミツメモリアル(東京都新宿区西新宿3-20-2)■出演者東京混声合唱団 / 新国立劇場合唱団指揮: キハラ良尚、三澤洋史ピアノ: 鈴木慎崇、津田裕也■スタッフ主催: 一般財団法人合唱音楽振興会 / 共催: 公益財団法人東京オペラシティ文化財団 / 協力: 公益財団法人新国立劇場運営財団 / 協賛: マイカホールディングス株式会社、STUDIO MOTIF、株式会社SEソリューションズ■チケット料金S席:4,500円A席:3,500円B席:2,000円(全席指定・税込) 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年04月15日2020年10月より休館していた国立西洋美術館が、4月2日(土)より約1年半ぶりに再開館した。開館当時の姿に近づけ、設計者であるル・コルビュジエの思い描いた美術館像がイメージしやすくなっている。1959年に完成した国立西洋美術館は、20世紀建築や都市計画に多大な影響を与えたル・コルビュジエの設計。彼が提唱した「近代建築の5つの要点」を表現した建築は、ほかの16の建築とあわせて「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献 ―」として2016年に世界遺産に登録された。ちなみに、近代建築5つの要点とは、ピロティ、屋上庭園、自由な間取り、水平に連続する窓、自由な立面(ファザード)のこと。現在ではどの要点もとりたてて新鮮さはないが、コルビュジエが子供のころの建物には存在しない、斬新なものであった。アントワーヌ・ブールデル《弓をひくヘラクレス》1909年今回のリニューアルにおいて一番の注目ポイントは前庭。本館と外の道路の境界線上に配置されていた植栽を最小限にとどめ、柵を透過性のあるものに変更、道路と広場に繋がりが感じられるようになり、大きな開放感が生まれた。オーギュスト・ロダンの《考える人》や《カレーの市民》などの野外彫刻は、当初置かれていた配置に近づけた。その結果、建物の正面が見えるようになり、また、あみだくじのような床面の目地がしっかりと目に飛び込んでくるようになった。この目地の寸法はル・コルビュジエが人間の身長を基準にして編み出した尺度「モデュロール」に基づいた寸法で作られている。ちなみに、この床の目地は、ル・コルビュジエの弟子であり、国立西洋美術館新館の設計を担当した前川國男が手掛けた、国立西洋美術館のすぐ前にある東京文化会館の窓のサッシの割付と幅や位置が呼応しているという。また、床面には来館者を誘導するためのグレーのラインがリニューアルに合わせて復活している。オーギュスト・ロダン《考える人(拡大作)》1881〜82年(原型)、1902年〜03年(拡大)、1926年(鋳造)国立西洋美術館 外観 床面の長方形は「モデュロール」に基づいた寸法で作られている床面には、鑑賞者を誘導するためのラインも引かれているリニューアルオープンにあたり、これまで有料だった本館中央の吹き抜け空間「19世紀ホール」は、当面の間無料で開放される。建物を支える柱と梁、ゆるやかなスロープなど、ル・コルビュジエの作品のエッセンスが詰まった場所だ。三角形の天窓からは、優しい光が降り注いでいる。19世紀ホール19世紀ホール天井常設展 展示風景19世紀ホールのスロープを登ると常設展となる。国立西洋美術館は、第二次世界大戦中にフランスに接収されていた実業家・松方幸次郎のコレクションの日本返還にともなって誕生した。常設展では、この松方コレクションのほか、新収蔵作品やピックアップ作品を交えた展示となっている。右:ピエール=オーギュスト・ルノワール《横たわる浴女》1906年左:モネ《睡蓮、柳の反映》 1916年モネの《睡蓮、柳の反映》は、画面の上半分が大きく損傷を受けている作品。第二次世界大戦中の疎開時に強いダメージを受け、あまりの破損の大きさにフランス政府の返還リストに含まれず、長い間忘れられていた存在だった。2016年にフランス政府から松方家に返還され、2017年に国立西洋美術館に寄贈されている。痛ましい佇まいであるものの、松方コレクションの存在や、この美術館の設立理由などさまざまなことを気づかせてくれる。リニューアル後の企画展の第一弾は、6月4日(土)からはじまる『自然と人のダイアローグフリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで』であるが、それまでの間、常設展スペースで小企画展『調和に向かって:ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジー大成建設コレクションより』が、版画素描展示室では『新収蔵版画コレクション展』が開催されている。そのなかでも、『調和に向かって:ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジー大成建設コレクションより』は、世界有数のコルビュジエのコレクションを所蔵する大成建設の寄託作品を中心に展示されており、画家としてのル・コルビュジエの側面を見ることができる貴重な機会だ。ル・コルビュジエ《奇妙な鳥と牡牛》1957年左:ル・コルビュジエ《静物》1953年 右:《牡牛XVⅢ》1959年ル・コルビュジエのイメージにより近づいた国立西洋美術館、その姿をゆっくりと眺めておこう。取材・文:浦島茂世
2022年04月14日世界的に名高い西洋絵画コレクションを誇るスコットランド国立美術館の名品が多数来日する『スコットランド国立美術館THE GREATS美の巨匠たち』が、4月22日(金)より東京都美術館にて開催される。ヨーロッパで最も壮大な景観をもつ首都のひとつともいわれ、世界遺産に登録されたエディンバラに位置するスコットランド国立美術館は、上質で幅広い、世界でも指折りの西洋絵画コレクションを有し、美の殿堂といわれている。同展では、そんなスコットランド国立美術館が所蔵するラファエロ、エル・グレコ、ルーベンス、ベラスケス、レンブラント、ヴァトー、ブーシェ、コロー、スーラ、ルノワールなど、ルネサンス期から19世紀後半までの西洋絵画史を彩る巨匠たちの作品を展示する。さらに、ゲインズバラ、レノルズ、ブレイク、コンスタブル、ターナー、ミレイといったイングランド出身の画家、レイバーン、ラムジー、ウィルキー、ダイスなど日本ではなかなか見ることのできないスコットランド出身の代表的な画家たちの名品も紹介。約90点の油彩画・水彩画・素描作品で西洋美術史をたどる。日本初公開となるベラスケス初期の傑作《卵を料理する老婆》など、スコットランドが誇る至宝の数々を日本で鑑賞することができる貴重な機会となりそうだ。アーサー・エルウェル・モファット《スコットランド国立美術館の内部》 1885年 (C) Trustees of the National Galleries of Scotlandエル・グレコ《祝福するキリスト(「世界の救い主」)》 1600年頃 (C) Trustees of the National Galleries of Scotlandクロード・モネ《エプト川沿いのポプラ並木》 1891年(C) Trustees of the National Galleries of Scotland ※東京会場のみ展示ポール・ゴーガン《三人のタヒチ人》 1899年(C) Trustees of the National Galleries of Scotland ※東京会場のみ展示フレデリック・エドウィン・チャーチ《アメリカ側から見たナイアガラの滝》 1867年 (C) Trustees of the National Galleries of Scotlandスコットランド国立美術館内観 Photograph by Keith Hunter【開催概要】『スコットランド国立美術館THE GREATS美の巨匠たち』会期:2022年4月22日(金)~7月3日(日)会場:東京都美術館 企画展示室休室日:月曜(5月2日は開室)時間:9:30~17:30(入室は17:00まで)※入場には日時指定予約が必要料金:一般 1,900円、大学1,300円、65歳以上1,400円展覧会公式サイト:
2022年04月12日三鷹の森ジブリ美術館の新企画展示「未来少年コナン」展が、2022年5月28日(土)より開催される。三鷹の森ジブリ美術館の新企画展示「未来少年コナン」展宮崎駿監督の初監督作品として知られる、連続テレビアニメーションシリーズ『未来少年コナン』(1978年)。最終戦争で荒廃した後の地球を舞台に、主人公・コナンが偶然出会う少女・ラナを助けるための大冒険を描く名作アニメーションだ。宮崎駿初監督作で紐解く“漫画映画的表現”作品を見る者が物語の主人公になりきり、思う存分に動き回った気分になれる"漫画映画"。後に宮崎と同じ道を目指すことになる若きクリエイターたちを含め、多くの視聴者を魅了した『未来少年コナン』で描かれた物語はまさに"漫画映画"そのものであり、宮崎駿監督作品の原点として以降の作品にも一貫している。今回の企画展示では、全26話の中に描かれた“漫画映画”の魅力にフィーチャー。ストーリーや作品に登場する機械類、創作過程で描かれた設定資料、イメージボードなどを用いながら紐解いてゆく。開催概要三鷹の森ジブリ美術館 新企画展示「未来少年コナン」展開催期間:2022年5月28日(土)〜2023年5月(予定)場所:三鷹の森ジブリ美術館主催:公益財団法人徳間記念アニメーション文化財団協賛:日清製粉グループ、ローソンエンタテインメント、日本テレビ協力:日本アニメーション特別協力:スタジオジブリ© NIPPON ANIMATION CO., LTD. © Studio Ghibli © Museo d’Arte Ghibli
2022年04月08日4月23日(土)より目黒区美術館にて、板橋区立美術館、渋谷区立松濤美術館、練馬区立美術館など都内区立美術館10館が所蔵する、猫をモチーフとした作品を紹介する『東京・区立美術館ネットワーク連携事業東京の猫たち』が開催される。2018年から都内の区立美術館11館が協働し、「東京・区立美術館ネットワーク」として連携活動を続けている。その活動の一環として開催される同展には、木下晋《シロ 1》、柴田是真《猫鼠を覗う図》や朝倉文夫《たま(好日)》といった各館自慢の猫たちが集結。猫は、単に可愛らしいだけでなく、画家にとっては繊細な毛を、彫刻家にとってはしなやかな身体のラインを表現できるモテーフ。また、多くの芸術家にとって、猫は社会にとらわれない自由な存在としての憧れや共感の対象でもある。各館のコレクションの特徴を反映した、身近で親しみやすい猫を取り上げることで、展示をとおして、多彩な東京の区立美術館の活動についても紹介する。朝倉文夫《たま(好日)》1930年台東区立朝倉彫塑館川端龍子《眠猫》1933年大田区立龍子記念館柴田是真《猫鼠を覗う図》1884年板橋区立美術館木下晋《シロ 1》1988年 目黒区美術館【開催概要】『東京・区立美術館ネットワーク連携事業東京の猫たち』会期:2022年4月23日(土)~2022年6月12日(日)会場:目黒区美術館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)休館日:月曜料金:一般800円、大高・65歳以上600円美術館公式サイト:
2022年04月07日2020年10月より、館内施設整備のため休館していた国立西洋美術館が、4月9日(土)にリニューアルオープン。ル・コルビュジエの設計をもとに、デザイン上も大きな意味を持つ目地や、西門の位置、柵などを、1959年に創建した当時の姿に近づけた前庭もいよいよ完成する。4月9日(土)からは小企画展として、国立西洋美術館本館を設計したモダニズム建築の巨匠ル・コルビュジエの芸術を紹介する『調和にむかって:ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジ ―― 大成建設コレクションより』が開催される。同展は、世界有数のル・コルビュジエのコレクションを所蔵する大成建設株式会社からの寄託作品を中心に、《牡牛XVIII》のような大作と、制作の過程を示す約10点の素描による合計約20点(展示替含め約30点)から構成。ル・コルビュジエの円熟期の絵画制作の展開を辿ることができる、貴重な機会となる。リニューアルオープン後初の企画展は、6月4日(土)から。ドイツ・フォルクヴァング美術館と国立西洋美術館のコレクションから、印象派とポスト印象派を軸にドイツ・ロマン主義から20世紀絵画までを紹介する『国立西洋美術館リニューアルオープン記念自然と人のダイアローグフリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで』が開催される。【開催概要】小企画展『調和にむかって:ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジ ―― 大成建設コレクションより』会期:2022年4月9日(土)~9月19日(月・祝)※会期中展示替えあり会場: 国立西洋美術館新館1階第1展示室時間:9:30~17:30、金土は20:00まで(入館は閉館の30分前まで)休館日:月曜(5月2日、7月18日、8月15日、9月19日は開館)、5月30日(月)~6月3日(金)、7月19日(火)料金:一般500円、大学250円※5月18日(水)は国際博物館の日のため観覧無料
2022年03月28日国立文化財機構 文化財活用センター〈ぶんかつ〉が作品輸送費等を支出し、東京国立博物館・京都国立博物館・奈良国立博物館・九州国立博物館の4つの国立博物館が収蔵品を貸し出す「国立博物館収蔵品貸与促進事業」において、2022年度事業の実施対象館が決定いたしました。これにより国立博物館が所蔵する地域ゆかりの文化財113件が、愛知、島根、栃木、鹿児島、滋賀、沖縄の6つの施設で順次公開される予定です。■2022年度 国立博物館収蔵品貸与促進事業 実施対象館(会期順)美術館・博物館名:刈谷市歴史博物館(愛知県)展覧会名 :伊勢物語とかきつばた会期(予定) :2022年4月23日(土)~2022年6月5日(日)貸与予定件数 :3件美術館・博物館名:島根県立古代出雲歴史博物館(島根県)展覧会名 :ハニワの世界へようこそ会期(予定) :2022年7月1日(金)~2022年8月28日(日)貸与予定件数 :9件美術館・博物館名:足利市立美術館(栃木県)展覧会名 :あしかがの歴史と文化再発見!会期(予定) :2022年7月30日(土)~2022年10月10日(月・祝)貸与予定件数 :16件美術館・博物館名:鹿児島県歴史・美術センター黎明館(鹿児島県)展覧会名 :茶の湯と薩摩会期(予定) :2022年9月22日(木)~2022年11月6日(日)貸与予定件数 :30件美術館・博物館名:滋賀県立安土城考古博物館(滋賀県)展覧会名 :大岩山銅鐸里帰り展(仮称)会期(予定) :2022年10月8日(土)~2022年11月20日(日)貸与予定件数 :6件美術館・博物館名:沖縄県立博物館・美術館(沖縄県)展覧会名 :琉球 ―美とその背景―会期(予定) :2022年10月14日(金)~2022年12月4日(日)貸与予定件数 :49件注目は、本土復帰50年の節目を迎える沖縄県で開催予定の「琉球 ―美とその背景―」展(会場:沖縄県立博物館・美術館)。東京国立博物館からは、「黒漆葡萄栗鼠螺鈿箙」や「三線」など28件、九州国立博物館からは、「浅葱地窓絵枝垂桜文紅型衣裳」や「鳳凰螺鈿七弦琴」など21件、合計49件の文化財を貸し出します。左:黒漆葡萄栗鼠螺鈿箙 沖縄本島 第二尚氏時代・18世紀末~19世紀 東京国立博物館蔵、右:浅葱地窓絵枝垂桜文紅型衣裳 第二尚氏時代・19世紀 九州国立博物館蔵(沖縄県立博物館・美術館で展示予定)また、開館30周年を記念する滋賀県立安土城考古博物館では「大岩山銅鐸里帰り展(仮称)」が開催されます。滋賀県野洲市の大岩山遺跡から出土した、現存する日本最大の銅鐸(重要文化財、総高 約135cm)をはじめ、竜王町高塚山出土の銅鐸など、東京国立博物館から6件の考古資料を貸し出します。さらに2021年に市制100年を迎えた足利市では、100周年記念に続く取り組みのひとつとして、足利市立美術館において「あしかがの歴史と文化再発見!」展が開催されます。東京国立博物館から、 熊野山古墳や十二天塚古墳(いずれも足利市)などから出土した考古資料16件を貸し出します。■2022年度 国立博物館収蔵品貸与促進事業 展覧会概要(会期順)◆刈谷市歴史博物館「伊勢物語とかきつばた」 貸与予定件数:3件「伊勢物語」に登場する三河の「かきつばた」が広く受容された歴史を紹介する展覧会会期 : 2022年4月23日(土)~2022年6月5日(日)URL : 公式Twitter: みどころ : 愛知県刈谷市をはじめとする西三河地域は、かきつばたの名所として知られます。これは、平安時代の歌物語「伊勢物語」第九段の「東下り」で、在原業平といわれる主人公が八橋(現・愛知県知立市)で「かきつばた」を歌に詠んだことに由来します。公家の教養であった「伊勢物語」は、江戸時代には尾形光琳(1658~1716)や乾山(1663~1743)といった琳派によって八橋のかきつばたが描かれ、出版文化の隆盛とともに庶民にも活字で読まれるようになりました。本展では、「伊勢物語絵巻(模本)」などを東京国立博物館から、「伊勢物語絵巻 上巻」を京都国立博物館から貸し出し、江戸時代に焦点をあて、伊勢物語やかきつばたが広く受容された歴史を紹介します。伊勢物語絵巻(模本) 巻第一(部分) 古藤養成(他)模 江戸時代・天保9年(1838) 東京国立博物館蔵◆島根県立古代出雲歴史博物館「ハニワの世界へようこそ」 貸与予定件数:9件山陰地域出土品を中心に、形象埴輪の魅力に迫る展覧会会期 : 2022年7月1日(金)~2022年8月28日(日)URL : みどころ: 古墳上に埴輪を立て並べる習慣は、前方後円墳が全国的に築造されはじめるのにあわせて各地に広まりました。古墳時代後期には、古墳の一角を区切り、人物や動物、武具等の様々な器物を表現した埴輪を並べ、被葬者の生前の活躍や首長継承のまつりを再現するようになります。こうして埴輪は、より表情豊かで多彩なものへと変化していきました。本展では、東京国立博物館から「馬形埴輪」(重要文化財)をはじめとする考古資料を貸し出し、そのほか山陰地域出土の形象埴輪を中心に、人物や動物をかたどった様々な埴輪を展示します。制作時期や地域ごとの特徴や違いといった考古学的な比較だけでなく、個々のハニワが持つデフォルメの妙や豊かな表情など、形象埴輪の魅力を紹介します。重要文化財 馬形埴輪 古墳時代・6世紀 埼玉県熊谷市上中条出土 東京国立博物館蔵◆足利市立美術館「あしかがの歴史と文化再発見!」 貸与予定件数:16件足利ゆかりの文化財から市の歴史と文化を辿る展覧会会期 : 2022年4年7月30日(土)~2022年4年10月10日(月・祝)URL : 公式Twitter: みどころ : 2021年に市制100周年を迎えた足利市では、100周年記念に続く取り組みとして、郷土を見つめ直す企画展を開催します。本展では、東京国立博物館が所蔵する、熊野山古墳や十二天塚古墳(いずれも足利市)などから出土した考古資料を貸し出します。そのほか、足利ゆかりの文化財等を一堂に集め、これらを受け継いでゆく子どもたちにもわかりやすく、足利市の歴史と文化の源流を紹介します。埴輪 童女 古墳時代・6世紀 栃木県足利市 熊野山古墳群出土 山田宗治氏他寄贈 東京国立博物館蔵◆鹿児島県歴史・美術センター黎明館「茶の湯と薩摩」 貸与予定件数:30件薩摩の茶の湯文化の歴史について紹介する展覧会会期 : 2022年9月22日(木)~2022年11月6日(日)URL : 公式Twitter: みどころ : 日本の伝統文化のひとつである茶の湯は、中国から伝来した喫茶法をもとに育まれました。室町時代には将軍家を中心に権威の象徴となり「唐物」が愛好されましたが、安土桃山時代に千利休(1522~1591)が侘茶を大成すると、新たに価値づけされた「和物」が登場し、政権者から大名、町衆へと広がりました。本展では、東京国立博物館から、薩摩焼を代表する文琳形茶入として名高い「黒釉文琳茶入 銘 望月」をはじめとする23件、九州国立博物館からは「油滴天目」(重要文化財)を含む7件を貸し出し、侘茶との出会いや大名茶への展開など、歴史の動向や様々な文化交流によって拡がる薩摩の茶の湯文化の歴史について人的交流を軸に紹介します。左:黒釉文琳茶入 銘 望月 薩摩 江戸時代・17世紀 松永安左エ門氏寄贈 東京国立博物館蔵、右:重要文化財 油滴天目 中国・建窯 南宋時代 九州国立博物館蔵◆滋賀県立安土城考古博物館「大岩山銅鐸里帰り展(仮称)」 貸与予定件数:6件開館30周年を記念し、日本最大の銅鐸が里帰りする展覧会会期 : 2022年10月8日(土)~2022年11月20日(日)URL : みどころ: 開館30周年を記念し、日本最大の銅鐸が里帰りをします。弥生時代後期の大岩山銅鐸は、滋賀県野洲市の大岩山遺跡から明治14年(1881)、昭和37年(1962)の調査によって計24個が出土しました。本展では、東京国立博物館所蔵の、大岩山遺跡から出土した現存する日本最大の銅鐸(重要文化財)をはじめ、「扁平鈕式銅鐸」や「三角縁二神二獣鏡」など、地域ゆかりの考古資料6件を貸し出します。重要文化財 突線鈕5式銅鐸 弥生時代(後期)・1~3世紀 滋賀県野洲市小篠原字大岩山出土 東京国立博物館蔵◆沖縄県立博物館・美術館「琉球 ―美とその背景― 」 貸与予定件数:49件王都・首里や村々で花開いた琉球文化の美を紹介する展覧会会期 : 2022年10月14日(金)~2022年12月4日(日)URL : 公式Twitter: みどころ : 2022年に本土復帰50年を迎える沖縄県は、古くから海を通じて様々な国と交流し、独自の文化を発展させてきました。王都・首里を中心として発展したもの、島々で花開いたもの、各地域によって多様な文化を見ることができます。本展では、東京国立博物館から「黒漆葡萄栗鼠螺鈿箙」や「三線」など28件を、九州国立博物館からは「浅葱地窓絵枝垂桜文紅型衣裳」や「鳳凰螺鈿七弦琴」など21件を貸し出します。島々・村々で享受された「美」を地理的・歴史的な視点のみならず、民俗的な視点も含めて紹介します。キンカブ 奄美大島 第二尚氏時代・18世紀 東京国立博物館蔵※上記6つの展覧会の概要・貸与予定作品は2022年3月22日現在のものです。今後、変更になる場合があります。最新情報は各美術館・博物館の公式ウェブサイトなどでご確認ください。■2023年度「国立博物館収蔵品貸与促進事業」募集予定2022年4月1日(金)から、2023年度国立博物館収蔵品貸与促進事業実施対象館の申請受付が開始されます。申請受付期間:2022年4月1日(金)~6月30日(木) [17時必着]貸与促進事業の申請、展覧会情報に関する詳細は、以下の〈ぶんかつ〉公式ウェブサイトでご確認いただけます。URL: 全国の美術館・博物館からのご応募をお待ちしています。2023年度国立博物館収蔵品貸与促進事業 募集チラシ■国立博物館収蔵品貸与促進事業とは国内各地の美術館・博物館に対し、〈ぶんかつ〉が作品輸送費等を支出し、東京国立博物館・京都国立博物館・奈良国立博物館・九州国立博物館の4つの国立博物館が収蔵品を貸し出すこの事業は、各地ゆかりの文化財を展示に活用し、日本とアジアの歴史・伝統文化の発信ならびに地方創生・観光振興、次世代への文化財の継承に寄与することを目的としています。■文化財活用センターとは文化財活用センターは、国内外のさまざまな人が日本の文化財に親しむ機会を拡大するため、2018年7月、国立文化財機構のもとに設置された組織です。愛称は〈ぶんかつ〉。貸与促進事業のほか、文化財を通じて豊かな体験と学びを得ることができるよう、文化財を活用した新たなコンテンツやプログラムの開発、文化財のデジタル情報の公開、また文化財の保存環境に関する相談窓口を開設、文化財の保存と活用を目的とした寄付金の募集を行っています。▼ぶんかつSNSYouTubeチャンネル : Instagram @cpcp_nich: Twitter @cpcp_nich : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年03月22日ポーラ美術館開館以来、 ポーラ創業家二代目・鈴木常司(1930-2000)が戦後約40年をかけて収集したコレクションと、 近年収蔵した作品を紹介する『ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ―新収蔵作品を中心に』が、4月9日(土)より開催される。同展は、美術館の重要なテーマである「光」にまつわる作品を2部構成で展観。第1部では、19-20世紀の近代絵画を中心とした鈴木常司コレクションと新収蔵作品を組み合わせ、 第2部では、従来のコレクションには含まれていない、近代と現代を結ぶ作家の名品を多数公開する。また、従来のコレクションと新収蔵のコレクションをなるべく多く紹介するため、館内の5つの展示室のほか、 2017年に新設された現代美術を展示するアトリウム ギャラリー、 ロビー空間、 森の遊歩道にいたるまで作品を展示。 ポーラ美術館開館以来、最大規模の超大型企画となる。移ろう光を絵画に描き留めようとしたモネ、ルノワールら19世紀の印象派の画家たちの作品から、 シャイン(光=仮象)を表現し続けるゲルハルト・リヒター、 光の色そのものを写し撮る作品を展開する杉本博司、 ネオン管を用いたケリス・ウィン・エヴァンスの作品まで、 印象派から現代までの「光」にまつわる作品を数多く紹介。ポーラ美術館のコレクションの「現在(いま)」を紹介するとともに、 美術館の未来とコレクションの可能性を探る。<第1部 コレクション+新収蔵作品>ベルト・モリゾ/クロード・モネ/ピエール・オーギュスト・ルノワール/ロベール・ドローネー/ニコラ・ド・スタール/フェルナン・レジェ/ベン・ニコルソン/アンリ・マティス/レオナール・フジタ(藤田嗣治) /関根正二/松本竣介/里見勝蔵 など<第2部 新収蔵作品>ヴィルヘルム・ハマスホイ/ジャン・デュビュッフェ/モーリス・ルイス/ナルド・ジャッド/ヘレン・フランケンサーラー/パット・ステア/ゲルハルト・リヒター/アニッシュ・カプーア/ケリス・ウィン・エヴァンス/ロニ・ホーン/スーザン・フィリップス/山口長男/山田正亮/難波田龍起/猪熊弦一郎/斎藤義重/白髪一雄/李禹煥/田中敦子/中西夏之/中林忠良/杉本博司/三島喜美代 などベルト・モリゾ《ベランダにて》1884年ゲルハルト・リヒター《抽象絵画(649-2)》1987年 (c)Gerhard Richter 2021 (20102021)モーリス・ルイス《ベス・ザイン》1959年松本竣介《街》1940年(昭和15年)【開催概要】『ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ―新収蔵作品を中心に』会期:2022年4月9日(土)〜9月6日(火) 会期中無休会場:ポーラ美術館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)料金:一般1,800円、65歳以上1,600円、大高1,300円展覧会特設サイト:
2022年03月18日展覧会「国立国際美術館コレクション 現代アートの100年」が、2022年4月2日(土)から5月29日(日)まで、広島県立美術館にて開催される。20世紀から現在まで“現代アートの100年”を辿る名品「国立国際美術館コレクション 現代アートの100年」は、20世紀の絵画に多大な影響を与えたポール・セザンヌや、西洋美術の価値観を大きく変化させたマルセル・デュシャンから、アンディ・ウォーホルや草間彌生、森村泰昌、奈良美智に至るまで、国内外の現代美術作家達の名品約70点を、国立国際美術館収蔵のコレクションから紹介する展覧会。従来の美術の見方や価値観を揺るがし、常識を覆すアートが次々と登場した20世紀は、美術界が大きく変容した時代。近代から現代をめぐる100年のアートの動向を、作品の数々を通して辿っていく。“近代絵画の父”セザンヌなど20世紀美術のはじまり会場には、近代絵画から2000年代、現在にかけてのアート作品まで、多彩なアートが集結。「すべての自然は球、円筒、円錐に基づいて肉付けされている」という考えた“近代絵画の父”ポール・セザンヌの、後のキュビスムに通じる表現が見て取れる《宴の準備》や、抽象絵画を生み出したヴァシリー・カンディンスキーの《絵の中の絵》などは、“20世紀美術のはじまり”を感じさせる作品だ。ポップアートやミニマリズムなど戦後美術また、第二次世界大戦以後の“戦後美術”にもフォーカス。アートの中心地がパリからニューヨークへと移動し、1950年代後半には「ネオ・ダダ」、1960年代以降は、アンディ・ウォーホルを筆頭としたポップ・アートが一世を風靡する。一方で、ドナルド・ジャドらによる「ミニマリズム」の気運も高まり、コンセプチュアル・アートの誕生へと繋がっていく。さらに、写真や映像といったメディアの登場以降における「絵画」「写真」といったジャンルを横断した表現や、その反対に絵画や彫刻の独自性を追求する動き、1980年代以降の、歴史や伝統を踏まえつつ不特定の人物や物語、個人的な体験や感情に訴えかける傾向などについても、その流れを辿る。奈良美智や森村泰昌など日本の現代作家もさらに、現代にかけて活躍する日本の現代美術作家による作品にも注目だ。時代の空気をまとったポップな感覚で、ユニークな佇まいの少女を描く奈良美智や、ゴッホの自画像に扮するセルフポートレイト《肖像(ゴッホ)》をはじめ、“自画像的作品”を追求する森村泰昌などによる、バリエーション豊かな表現を間近に目にすることができる。【詳細】国立国際美術館コレクション 現代アートの100年会期:2022年4月2日(土)~5月29日(日)会場:広島県立美術館住所:広島県広島市中区上幟町2-22休館日:月曜日(5月2日は開館)開館時間 : 9:00~17:00(金曜日は20:00まで)※4月2日(土)は10:00開館 ※入場は閉館30分前まで料金:一般 1,400円、高・大学生 1,000円、小・中学生 700円※前売り・20名以上の団体は当日料金より200円引き。※学生券を購入・入場の際は学生証の提示が必要。※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳及び戦傷病者手帳の所持者と介助者(1名まで)の当日料金は半額。手帳の提示が必要。前売券販売所:広島県立美術館、セブンチケット(セブンコード:093-024)、ローソンチケット(Lコード:61416)、チケットひあ(Pコード:685-953)、広島市・呉市内の主なプレイガイド、画廊・画材店、ゆめタウン広島、中国新聞社読者広報部など※開館情報に変更が生じる場合あり。最新情報は広島県立美術館ホームページなどにて告知。※来館者が多い場合は、入場制限を行う場合あり。※本展入館券の提示により、100円で縮景園に入園可能。【問い合わせ先】広島県立美術館TEL:082-221-6246
2022年03月14日アメリカ・ニューヨークにあるメトロポリタン美術館所蔵の絵画を紹介する『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』が国立新美術館(東京都港区)で開催中だ。1870年に創立されたメトロポリタン美術館は、先史時代から現代まで5000年以上にわたる世界各地の文化遺産を包括的に所蔵している。今回は、同館を構成する17部門のうち、ヨーロッパ絵画部門に属する2500点あまりの所蔵品から、珠玉の絵画65点を展示。うち46点は日本初公開作品となる。展示は3章構成。まず「信仰とルネサンス」では、イタリアと北方のルネサンスを代表する画家たちの名画17点を紹介。初期ルネサンスのイタリアを代表する画家フラ・アンジェリコ(本名 グイド・ディ・ピエトロ)の《キリストの磔刑》(1420-23年頃)、ルネサンスの巨匠であるラファエロが20〜21歳の時に描いた《ゲッセマネの祈り》(1504年頃)、ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《ヴィーナスとアドニス》(1550年代)などが日本初公開となる。続いては「絶対主義と啓蒙主義の時代」と題し、君主が主権を掌握する絶対主義体制がヨーロッパ各国で強化された17世紀から、啓蒙思想が隆盛した18世紀にかけての美術を、各国の巨匠たちの名画30点により紹介。20世紀に再評価された画家であるジョルジュ・ド・ラ・トゥール《女占い師》(おそらく1630年代)、17世紀オランダの画家フェルメールによる異例の寓意画《信仰の寓意》(1670-1672年頃)、生命や現世の富・名声のはかなさの寓意を伝える「ヴァニタス(虚栄)」静物画の典型である、ピーテル・クラース《髑髏と羽根ペンのある静物》(1628年)などが見どころとなっている。最後は「革命と人々のための芸術」。市民社会の発展を背景に、絵画に数々の革新をもたらした19世紀の画家たちの名画18点が並ぶ。オーギュスト・ルノワール《ヒナギクを持つ少女》(1889年)、エドガー・ドガ《踊り子たち、ピンクと緑》(1890年頃)、フィンセント・ファン・ゴッホ《花咲く果樹園》(1888年)、ポール・セザンヌ《リンゴと洋ナシのある静物》(1891-92年頃)、クロード・モネ《睡蓮》(1916-19年)といった名画を見ることができる。会期は5月30日(月)まで。開館時間は10:00-18:00(毎週金・土曜日は20:00まで、入場は閉館の30分前まで)。休館日は火曜日。ただし、5月3日(火・祝)は開館。取材・文・撮影:五月女菜穂
2022年03月11日