こんにちは。アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美です。先日、出家を理由に女優・清水富美加さんが引退を表明されたことで日本中が驚きましたね。一般論としては、憲法で信教の自由が保障されていますから、ある宗教を信じていたり出家をしたりすることは基本的に自由とはいえ、 誰かに迷惑をかけたり、ルールを破ることになっても許されるというわけではありません。●「出家するので今日辞めます」は普通の会社員に許される?まず、辞める理由は出家でも問題ありません 。「今日辞めます」も、会社がOKしてくれて、当日退職するとの合意ができれば問題はないですが、なかなかそうはいかないのが実情でしょう。実は、退職、つまり雇用契約の解約については、民法で定めがあります。期間の定めがなく、遅刻・欠勤控除のある月給制の正社員の場合には、退職の申入れ(退職届)から2週間経過すると雇用契約は終了する とされています。期間の定めなく雇用されている、完全月給制(遅刻・欠勤控除なし)の正社員の場合、いつでも辞めると申し入れることができますが、退職の申入れは直前の給与締日の前半までにしなければいけません(後半の場合は、退職が翌々月)。なお、会社の就業規則で、依願退職は30日前までに退職願を提出する等の規定されていることもありますが、民法と就業規則のどちらが優先するかハッキリした裁判例はありません。まずは会社の規則を確認してみましょう。いずれにせよ、少なくとも退職希望日の2週間以上前に申し入れることが必要となるわけです。また、会社から突然の退職で迷惑だということで、いなくなったあとに会社が受けた迷惑分やこれまでかけた研修費などを返せ!と言われてしまう方もいます。会社の了承もないのに「今日で辞めます」と言って次の日から出勤しないと、無断欠勤扱いになってしまいますので、それによって会社が損害を被ったとすれば、理論的には損害賠償請求は可能です。しかし、そもそも損害がいくらか証明することも難しい上、会社は従業員が突然これなくなる状況などを折り込み済みで経営しているはずですし、何も対策をとっていないとすれば会社にも問題があると言えます ので、裁判では、会社の請求は損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる部分に限るとされています。そのため、通常は賠償を認めない・もしくは賠償が認められるとしても損害の一部に制限されますし、現実的には請求されるケースは多くはありません。ただし、トラブルにならないよう定められた手続を踏むことは大切です。●辞めたいのに会社が認めてくれない先ほども言いましたが、期間の定めがない雇用契約では退職は自由です。でも、会社が退職を認めてくれなかったり、退職願を受理しないために辞められなかったりというケースもままあります。しかし、会社が受理するかどうかに法的な意味はありません。一方的な退職の申し入れ(退職届)は、文書がマストではなく、「辞めます」と伝えて必要期間が経過すれば自動的に辞めることができます 。ただし後で、「退職するなんて聞いていない、無断欠勤だから退職金を減らします、給料を減らします」なんてトラブルを招かないよう、退職願は内容証明郵便で会社に送っておくのがベストです。●会社の悪口をインターネット上に書き込んだら?もし、不特定多数が知りうるネット上に、辞めた会社の社会的評価が低下するような悪口や誹謗中傷(事実かどうかを問わない)を書き込んだ場合には、具体的な事実を摘示した書き込みをすると、「○○会社は××だから最低!」は名誉毀損に、評価だけ(「○○会社最低!」等)なら侮辱にあたり、損害賠償義務を負ったり、罪になったりすることもあります。真実でもそうでなくても、該当します。退職した会社側に問題があることもたくさんありますが、自分が責任を問われるのは嫌ですよね。ネットへの書き込みではなく、労働条件のことなら労基署など関係各所へ相談する などの方法をとることをオススメします。●まとめ従業員としても、会社側としても、お互い辞めるのであれば後を引かない形で円満に手続きを踏んで辞められる環境が整備されていると、お互いストレスなく関係を終わらせられるし望ましいのですが、必ずしもそうはなっていないというのは残念だと思います。労働者として、会社の勝手な言い分に流されず、権利を守るために法律の仕組みを知ることは大切ですが、トラブルを抱えると気が重くなるもの。あなたが有能な方であればあるほど、会社も残念に思うでしょうし、引き継ぎして滞りなく業務ができるようにしてほしいと望むのも本音だと思います。今後のためにも、双方にとって円満退社が望ましいですから、退職を思い立ったら、まずは会社や信頼できる上司に話してみましょう。もしトラブルになりそうなときは、役所や弁護士等の専門家 にご相談くださいね。●ライター/正木裕美(アディーレ法律事務所:愛知県弁護士会所属)●モデル/REIKO(SORAくん、UTAくん)
2017年04月03日フリーアナウンサーの川田裕美(33)が23日、オフィシャルブログを更新し、俳優・綾野剛(35)の神対応エピソードを明かした。「少し前に綾野剛さんが『ピーチCAFE』のインタビューを受けてくださって、お誕生日が近かったことからプレゼントを渡しました」と始まる今回の投稿。川田がレギュラーを務める番組に綾野が出演した際、綾野の誕生日(1982年1月26日生まれ)が近かったため、出演者からプレゼントを渡すことになった。誰が選んだプレゼントかは明かさず、綾野本人に欲しいものを選んでもらった。高級マスク、似顔絵入りの酒などがあり、綾野が選んだのは川田セレクトの「お笑い番組のDVD」。綾野は「何かお返ししなきゃ」と言い、「川田さん、ややあんこバカですもんね!」と川田の大好物が「あんこ」であることを知っていたという。そして後日、同番組の収録現場に届いたのが箱詰めされた大量のあんぱん。川田が載せた写真には10箱以上が写り、「届きました!!」「本当に送ってくださるとは」「こんなに大量に!!」と感激をあらわにする。「しかも、冷やして食べるクリーム入りの生あんぱん」「ありがとうございます!!」と感謝の思いをつづった。ブログには「綾野さんの心遣いに、全員感激!」「ホントありがとうございました」と共に、共演者とあんぱんを頬張る写真も。川田だけでなく他の出演者に対するお返しと配慮に、コメント欄には「アヤノサンドロスさん、優しい」「さすが」「お人柄が出てますね」と絶賛の声が書き込まれている。
2017年02月23日フリーアナウンサーの川田裕美が、来年1月に放送される日本テレビ系のドラマに相次いで出演する。まずは、超能力を持ったメンバーたちが探偵業を行う田中直樹主演の『増山超能力師事務所』(1月5日スタート、毎週木曜23:59~)の第1話に登場。日本超能力師協会の専務理事にインタビューするアナウンサーの役だが、川田は「なんとセリフが17行もあったんです! こんなに多いのは初めてでした」と驚く。その専務理事役は大物俳優の鹿賀丈史で、「緊張と不安で当日まで生きた心地がしませんでした」といい、「ここはミヤネ屋。私は宮根誠司」と言い聞かせて演じきったそうだ。同作は古巣の読売テレビ制作で「現場にも先輩方が大勢いて少し恥ずかしかったですが、安心して撮影を終えることができました」とホッとした表情を見せた。そして、この翌日の1月6日(21:00~)は、国民的漫画の実写化第2弾『天才バカボン2』に出演。とある競技の参加者として、袴・たすきにハチマキ姿で登場するが、「華やかな袴姿での撮影はウキウキしました。リハーサルを重ねるうちにどんどん本気になってきて、手を畳に何度も打ちつけながら撮影しました」と、すっかり楽しんだようだ。川田は、フリーになる際の会見で、今後やってみたい仕事のひとつに「女優」を挙げていたけに、「フリーになって1年半ですが、こんな機会がくるとは思ってもいませんでした」と喜び。「演技はとても難しかったですが、どちらも本気で取り組んでいます。違和感なくドラマに溶け込めていることが理想ですが、少しだけ気にしながら見ていただけるとうれしいです」と謙虚にアピールした。
2016年12月19日【ママからのご相談】数か月前から夫がスマホを肌身離さず持ち歩くようになり、帰宅時間も遅くなり始め、怪しいと感じていたところ、友人から「偶然見つけてしまった」と夫と若い女性がビジネスホテルから二人で出てくる場面の写真が送られてきました。そこで夫を問い詰めましたが、夫は「浮気なんかしていない。ホテルへは打ち合わせのために入っただけだ」と言い張るのです。スマホを確認したところ、「今日楽しかった♡ありがとう♡♡」「また2人でご飯に行こうね♡」などと仲が良さげな内容は残っていたのですが、決定的な内容はありませんでした。私は不倫だと思うので夫とは離婚して慰謝料をもらいたいと思っていますが、証拠がこれだけでは難しいのでしょうか?●A. 裁判で証拠として使えますが、それだけでは弱いかもしれませんご相談ありがとうございます。アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美です。夫に女性の影が見え隠れしても、決定的な証拠がないと言い逃れされてしまうので、難しいですよね。今回は、離婚して慰謝料をもらいたいとのことで心が固まっておられるようですが、同じような悩みで対応を迷っている方も、今後のためにどうしておくべきか知っておくのはプラスかもしれませんね。まず、そもそも法律での不倫は『不貞行為 』といい、簡単にいうと、配偶者以外の異性と自分の意思で性的関係を持つことを意味しています。ですので、裁判で不貞行為と認めてもらうには、食事やデート、キスだけでは足りず、性的関係があったとズバリ分かる証拠か、その可能性が極めて高いと思われる証拠が必要です。今回は、不貞行為を証明する証拠についてご説明します。なお、不貞行為は離婚原因の1つとはされているのですが、裁判では不貞行為があった=必ず離婚が認められる、というわけではありません。それぞれの夫婦や家族の状況に照らし、夫婦関係修復の可能性があれば離婚が認められなかったり、逆に、ハッキリ不貞が原因とはいえなくとも、いろいろな婚姻を継続しがたい重大な事由があり、夫婦関係が冷め切って修復できない と判断されたりすると離婚が認められることもありますので、詳しくは個別のご相談をオススメします。●裁判で証拠として使えるものってどんなもの?さて、裁判ではこれを出せば不貞行為を認めます、と法律で定めているわけではありません。今回送られてきた写真や女性とのやりとりのメール、手紙、レシート等の物証のほか、人の証言も証拠になり、あらゆるものに証拠になる可能性があります。ズバリ性的関係を写した写真があったり、現場を押さえることができたりするのはあまり多くはありませんから、通常は、一般的に「関係を持っているよね 」と考えることができるいくつもの証拠を提出して、不貞行為を証明することになります。●ホテルから出てくる写真は有力な証拠になる!?たとえば、ラブホテルは関係を持つために行くことが多い場所で、仕事をしに行く場所ではないのが通常です。ラブホテルへの出入りの写真やレシートなどに日時が記録されていると、滞在時間が関係を持つに十分な時間だったとすれば、通常は不貞行為があったと認められる可能性が高い証拠の一つといえます。今回のようにビジネスホテルから出てくる写真があったからといって、滞在時間が不明ですし、客室には入らずに喫茶店や打合せスペースで打合せをすることは考えられますから、ラブホテルより性的関係を持ったとは言いにくく、それだけで有力な証拠とは言いにくいでしょう。ですので、夫はその日休みで仕事がなかった、会社が近くわざわざホテルに行く必要性がなかったのに何度もホテルに行っている、女性が仕事関係者ではない、2人で宿泊や旅行をしたレシート等がある、同じ女性と他の場所で通常の仕事以外の時間に何度も会っている写真やメールがある、などさまざまな証拠が必要になるでしょう。●怪しいメールのやり取りは?女性とのデートをうかがわせるメールのやりとりは、これだけでは友人かもしれない女性と食事をしたことしかわかりません。夫婦間で”他の異性と二人きりで食事も浮気”と決まりがあったとしても、法律上は異性の友人と食事をしていても不貞行為ではない 以上、これだけでは証拠としては有力とはいえません。他の疑わしいと思われるメールのやりとりや写真、手紙等があり、何度も仕事ではない時間にこの女性とホテルに行っている、何度も自宅に出入りしている等と証明できるのであれば、不貞行為と認められる可能性は高くなりますので、他の証拠も集めることが大切ですね。●まとめ着信履歴やメール、SNS等のやりとりがあると不倫の証拠になると思われがちなのですが、必ずしもそうだとは限りません。しかし、一つひとつの証拠としては強くない証拠だとしても、いくつもの証拠を合わせる ことで、関係を持っていたと証明できる可能性は十分にあります。不貞行為に限らず、大切だと思っていた証拠が裁判では大きな意味を持たず、一方意外な証拠が重要だったということもあります。その時点では証拠が足りなくても、どういう証拠を集めるかという観点でのお話もできると思いますので、証拠になるかならないかの自己判断はせず、関係するものをまとめて持って、まずは弁護士に相談されるといいと思います。●ライター/正木裕美(アディーレ法律事務所:愛知県弁護士会所属)●モデル/藤沢リキヤ、福永桃子
2016年11月27日【ママからのご相談】息子が幼稚園に入ったころからだんだんと夫の帰りが遅くなり、最初のころは「子どものために頑張ってくれているんだな」と思っていたのですが、共通の友人からの目撃証言で不倫が発覚しました。夫は離婚の意思が固く、私も不倫するような夫とやっていく気は全くないので離婚はスムーズに決まりました。養育費や慰謝料は支払うと言われてはいるので、やはりきちんと書面にした方がいいと思っています。しかし、家計は裕福とは言えず、もし弁護士に頼むとなると借金をしなければならないような状況です。今後の生活もありますし、しっかり取り決めをしたい反面、どうすればいいのかわからなくて困っています。なんとかする方法はありませんか?●A. 法テラスの無料法律相談や弁護士費用の立替制度を利用することができます。ご相談ありがとうございます。アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美です。離婚は当事者には大きな負担があり、いろいろ不安を抱えていると思います。弁護士ってドラマでもよく見るものの、実際にどんなときに頼めばいいの?自分の抱えているこのトラブルって弁護士に聞くものなの?費用はどのくらいかかるの?など、わからないこともたくさんあると思います。●争いになっていないのに、弁護士に頼むことってできるの?弁護士というとモメてトラブルになってしまったときに介入するというイメージがあるかもしれませんが、実は現状モメていないけれど、将来トラブルになるかもしれない可能性がある場合 に、法的な予防策を講じることも重要な業務の1つです。離婚では感情論も先走りがちですが、法的に離婚後に夫と妻がそれぞれ負う権利や義務を理解した上で取り決めをすることが大切ですし、特に離婚の場合、離婚後に養育費支払いが滞ったケースも大変多いですので、予防策を講じた方がよい分野だと思います。今回は、不倫が原因での離婚に伴う慰謝料、養育費の額や支払方法、財産分与、子どもを養育しない側の親と子どもとの面会交渉の頻度や方法等の取り決めが必要そうですが、いくらぐらいが妥当なのかも検討した上で、取り決めをすべきでしょう。一般に養育費は通常毎月いくら払うという取り決めがされることが多いですが、支払いが滞って話し合いなどで解決できなかった場合、裁判をし強制執行して回収しなければならず、将来困ることになる可能性があります。リスク回避のため、少し費用がかかりますが、強制執行認諾文言付き公正証書を作成する という手があります。公正証書を作成すれば、万が一支払いが滞ったときに裁判をせずに強制執行ができるので便利ですよ。今回も、弁護士に依頼するかは別にして、まずは個別の事情に応じて将来トラブルになりにくい取り決めや書面作成をするための相談をしてみましょう。●お金がなくても弁護士に頼める方法はある?とはいえ、弁護士=高額というイメージのせいで、「相談や依頼をしたときにかかる費用が不安」という方は多いと思います。そんなときに使える制度をいくつかご紹介しましょう。収入や資産状況の条件を満たした場合には、法テラスの無料法律相談 や弁護士費用の立替制度 を利用することができます。立替制度では、弁護士を依頼したときにかかる書面作成費用、着手金、実費、報酬等の費用について、法テラスが法テラスの基準に基づいて金額を決定した弁護士費用を立て替えてくれます(法テラスと契約している弁護士なら申込みできますので、相談された弁護士に聞いてみましょう)。利用者は毎月分割返済をすればいいので、生活に余裕がない場合でも安心です。また、各地域で弁護士会や地方自治体が行う無料法律相談、相談だけなら無料の法律事務所もありますので、ご事情にあった制度をぜひ利用してくださいね。●まとめ現在、弁護士費用は自由化され各弁護士が金額を決めています ので、画一的な基準はありません。備え付けの報酬基準の確認や見積作成依頼をして費用を確認しましょう。タイムチャージ制や完全成功報酬制などさまざまなので、遠慮せず聞いてくださいね。たとえば、私の所属するアディーレ法律事務所では、“離婚や浮気の慰謝料”に関するご相談は何度でも無料ですし、着手金をはじめとする弁護士費用は、分割でお支払いただくことも可能です。民事法律扶助制度は、離婚に限らずさまざまな民事トラブルで使えますので、お困りや不安のある方は、トラブルの内容も費用も弁護士への相談をオススメします。●ライター/正木裕美(アディーレ法律事務所:愛知県弁護士会所属)
2016年09月11日【ママからのご相談】半年前、ママ友にどうしてもと頼まれて5万円を貸してしまいました。必死に頼む姿に心を動かされ、私のお小遣いを貯めたものの中から貸してあげ、半年以内に5万円返すと一筆書いてもらい、それも保管しています。しかし期限が来ても少しも返済されず、こちらも厚意で貸したのに納得いきません。今すぐ返せないのであれば、利息だけでもほしいと思っているのですが、最初に利息の取り決めをしていなければ請求することはできませんか?できるとすれば、どのようにすればいいのでしょうか?●A. 事前の取り決めがないと無利息になりますが、遅延損害金は請求することができます。ご相談ありがとうございます。アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美です。お金のトラブルで友情にヒビが入ってしまうこともよくあること。親しい間柄でもお金のことは言い出しにくいですし、自発的に約束通りにちゃんとしてほしいのが本音ですが……今回は、このままになってしまいそうですのでご友人とお話をした方がよさそうですね。●個人間の借金で利息ってとれるものなの?さて、利息だけでもほしいというお気持ちも理解はできます。個人間でのお金の貸し借りでも利息をとることはできます が、ご友人と利息の約束はしていますか?個人間での借金では、貸主と借主の間で利息のとりきめがないと、無利息 になります。利息をとることを約束していても、利率がきまっていないときは、民法の法定利率の年5%とみなされます。また、自分たちで利率を決めることもできますが、『利息制限法 』という法律があり、利率の上限は元本が10万円未満なら年20%、10万円~100万円未満の場合は年18%、100万円以上の場合は年15%です。今回は、5万円を貸して返済日が半年後とすれば、年利20%なので、5000円の利息をとることができます。なお、この利息制限法の上限を超えた利息をとると返さないといけないですし、また、『出資法 』で109.5%以上の利息をとると刑罰を受けるとされているので、ご注意くださいね。●借用書に特別な記載がなくてもあとから利息はとることができる?利息の約束をすることが必要です。借用書に利息の記載がなく、契約のときには利息の約束をしなかったのですよね?とすると、残念ながら無利息になってしまいます。あとから当初にさかのぼった利息の合意をすることも考えられなくはないですが、現実には相手は応じてくれないでしょうね。仮に口約束で利息の合意をしていたとすれば利息は請求できますが、借用書に記載がないとすると、相手から「そんな約束した覚えはない」と言われてしまう可能性大です。そうすると利息の合意があったことを貸した側であるあなたが証明しなければいけなくなるので、予め借用書にちゃんと盛り込んでおくことが大切ですね。仮に無利息だったとしても、返済期限を過ぎたときは事前の合意がなくても、返済日の翌日から実際に返済が終わるまでの間は『遅延損害金 (遅延利息と呼ばれることもあります)』を年5%の割合で請求できますので、遅延損害金の請求が現実的のように思われます。相手が返せない状況なのか、うっかり忘れているのかもしれませんし、まずは5万円を返してほしいと話してみてはいかがでしょうか。●個人間のお金の貸し借りで気を付けたいことあとでトラブルにならないよう、お金を貸す時点で契約書や借用書、覚え書き などを作成し、約束の内容を書面に残しておくことが大切です。もめてそもそもお金を借りてないとか、条件が違うなどと言われてしまうと、裁判では貸主がお金の返還の約束とお金を実際に渡したことを証明しなければいけないんです。そのため、借用書を作成し、貸付日(お金を渡した日)、返済日、返済方法(分割か一括か振込かなど)、利息をとるときは利息をとることと利率など、約束した内容はすべて記載し、契約日とお互いに氏名・住所を自筆し、押印をするのがベストでしょう。どうしても難しいときは、簡単にでもお金を貸した旨一筆を書いてもらったり、メールやLINEなどの相手とのやりとりの記録は残しておくようにし、契約内容がわかるよう文字に残しておきましょう。また、相手の口座にお金を振り込んで、通帳に日付、金額、相手の名前を残しておくのも一つの手です。なお、借用書は私的な文書なので、返済してもらえないときは、裁判で判決等をもらって強制執行をして回収しなければいけません。これに対して、公証役場で公証人に契約内容について『公正証書 』という公文書を作ってもらうこともでき、執行認諾文言を記載しておけば、万一返済がされないときでも判決等なしに直ちに強制執行ができます。費用がかかりますが、大きいお金を貸すときなどは利用するのもよいでしょう。●まとめせっかくの厚意でも、友人や家族、パートナーなどとお金でもめて関係が崩れるのは誰しも嫌ですよね。「疑ってるんじゃなくて、後で曖昧になっても困るので、念のため一筆書いてね」とか、「本当に返してくれるって言うんなら、あとで揉めたくないし、きっちりしたいから、紙に書いてもらえないかな」なんて上手に話して、トラブルの自己防衛策をとっておきましょう。●ライター/正木裕美(アディーレ法律事務所:愛知県弁護士会所属)
2016年08月08日【ママからのご相談】夫は美容師なのですが、子どもが幼稚園に入ったのをきっかけに独立し、小さな美容院を二人で始めました。 以前勤めていたお店で、それなりに顧客がついていたので、一人ずつ丁寧にお話をし、大半のお客様は新しいお店に来てくれるようになりました。すると先日、そのお店から「顧客情報を持ち出すのは違法なので、訴える」と連絡が来たのです。夫は、顧客リストを持ち出したりしたわけではなく、口頭で事情を説明し、連絡先を教えてもらって新しいお店の案内をしたのですが、勤めていたお店で出会ったお客様である以上、顧客情報を不正に取得したということになってしまうのでしょうか?●A. 「営業秘密」にあたるかどうかがポイントです。ご相談ありがとうございます。アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美です。今回は、美容師業に関する法律問題についてご説明します。●機密情報の不正持ち出しになる?不正競争防止法では、事業者間での公平な競争を保護するため、「不正競争」 すなわち、他社の商品をまねたり、他社の情報を不正利用する等の行為 が禁止されています。顧客情報は、会社の宝で、持ち出されると会社は大きなダメージを受けますから、「営業秘密を盗まれた!」と言われるかもしれません。しかし、不正競争防止法でいう営業秘密とは、『秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの』とされています。顧客情報は有用ですし、一般人に公然とは知られたものではないとはいえます。しかし、従業員の中でも一定の限定された者しかアクセスできず、パスワード等で管理されている、秘密保持契約が結ばれるなどの厳重な管理がされていない場合は、秘密として管理されているとはいえない、つまり営業秘密にあたらず不正競争防止法違反とはならない、とされることもありえます。今回はデータの勝手な持ち出しというわけではないですし、会社の了承を得て連絡先を教えてもらって案内をした結果、顧客がついてきたということですから、問題にはならないでしょう。●「誓約書」にサインさせられていたら?労働者は、使用者に対して誠実に労務提供する義務を負っています。その義務の一つとして、使用者と競合する企業等に就労しないといった競業避止義務 があり、在職中の競業行為は認められません。誓約書、就業規則等により、退職後も、会社の利益を守るために一定の正当性があって同業他社に就職しない等の競業避止義務を負わせる定めをすることがあります。このような定めをすることは、退職者の職業選択の自由や営業の自由を制限するものなので、全てが有効とは考えられていません。しかし、その従業員の地位、競業避止義務を負う期間や地域、禁止行為の範囲や代償措置の有無など、具体的な事情に照らし、法律上有効とされることはあります。もし違反してしまうと、会社に対して損害賠償義務を負うことがあります ので、約束をしてしまう前に、約束の内容を吟味することも大切です。●美容院で起こりやすいトラブルって?美容室でのカット等は、美容師は客の注文したカット等をして客の希望する髪型にする義務を負い、これに対して客は料金を支払う美容契約 が成立します。もちろん、年齢やコンディションなど個人差がありますから、客の希望と完全に一致させることはどうしても現実的に不可能です。しかし、できるだけ客の希望に近づくよう、デザインに見合ったカット手法を採用すること、デザイン、カラー等に疑問が生まれたら客に確認する 義務を負うと考えられますので、これらを怠り、明らかに切り過ぎてしまったときは、店は客に対して、債務不履行に基づく損害賠償責任を負うといえます。また、美容師は、美容契約に基づいて施術をする際に、危険な刃物や染髪料等を使いますから、契約の性質上、客に対して生命や身体を害さない安全配慮義務も負っているといえます。義務を尽くさず、不注意でたとえば薬剤のかぶれやはさみで皮膚を傷つけるなど、客の身体を傷つけたときも債務不履行となり、損害賠償責任を負うと考えられます。いずれにせよ、実際に損害賠償請求をできるかどうかは、オーダーややりとりの内容等も踏まえ、ケースバイケースの判断になります。ですから、客も美容師に任せっきりにはせず、おかしいと思ったらすぐに伝え、トラブルになる前に確認する ことが大切ですね。●まとめ上記のとおり、美容師業を巡っては、開業前にも開業後にも難しい法律問題が付きまといます。「顧問弁護士を雇うような規模ではない」「顧問弁護料が高額で払えない」といった声も聞かれますが、最近では、特に個人のお店や中小企業向けに顧問弁護士の低額プランなどを打ち出している弁護士事務所も多くあります。転ばぬ先のつえとして、ご検討されてみてはいかがでしょうか?●ライター/正木裕美(アディーレ法律事務所:愛知県弁護士会所属)
2016年06月25日フリーアナウンサーの川田裕美、長野美郷、寺川奈津美、神田愛花が、27日(19:00~20:54)に放送される『ネプリーグSP』(レギュラーは毎週月曜19:00~19:57)に、同チームとして出演。他チームの押切もえから「チームワークがひどい」と言われていまう。フリーアナウンサーチームは、1stステージから緊張感が漂い、川田は早速、初出場の寺川に「平常心でやらんかい!」と喝。長野は「初対面ですが、川田さんだけには怒られないようにがんばろう」と恐れながらクイズに挑む。それを聞いた川田は「神田さんに比べたらマシですよ」と、同チーム内でライバル心をむき出しにし、他チームの押切から「チームワークがひどい。あのチームじゃなくて本当によかった」と言われる始末だ。ステージが進むにつれ、フリーアナチームは「結束が強くなってきた」と自信を持ち始めるが、そんな最中に『笑点』の問題で大苦戦。最終ステージでは、輝かしい経歴に傷がついてしまう出来事が発生してしまう。他のチームでは、作家チームが押切に加え、はあちゅう、深澤真紀、やすみりえが参戦。東大チームは、大宮エリー、八田亜矢子、三輪記子、林修が出演する。
2016年06月24日フリーアナウンサーの川田裕美、小島慶子、神田愛花、上田まりえが、23日に放送されるフジテレビ系バラエティ番組『ネプリーグ』(毎週月曜19:00~19:57)に出演し、高学歴らしからぬイージーミスを連発する。それぞれ元読売テレビ、TBS、NHK、日本テレビ出身の4人は、その名も「フリーアナウンサーチーム」として登場。英語で出題される人や物の名前を解答するクイズではまさかのミスを連発し、川田は「ちゃんと勉強してこんかい!」と関西弁でツッコミを入れる。しかし、そんな川田も、さまざまなモノの割合を答えるゲームで予期せぬ事態に陥り、先輩の小島から「この世間知らず!」と一喝。神田は「付き合っていない男性と手をつないだことがある女性は何%?」という問題で驚きの解答を披露し、恋愛遍歴が浮き彫りになる。フリーアナウンサーチームと対決するのは、デヴィ夫人、デーモン閣下、山村紅葉という"合計11万84歳"のベテランを擁する大御所チーム。白熱のバトルが繰り広げられる。
2016年05月20日【女性からのご相談】最近、ミニマリストというものに旦那がハマっています。自分の持ち物の整理をしてくれるのは大変ありがたいのですが、だんだんに家庭の生活用品まで捨て始め、とうとう私の持ち物まで捨てるように言い始めました。拒否していたのですが、ある日帰ってみると私の持ち物がごっそり無くなっていました。その中には祖父母の形見や仕事で使うものなど、大切なものが含まれています。もう、人の物を勝手に捨てる旦那とは一緒に居られません。こういった理由で離婚と慰謝料を請求できるのでしょうか?●A. 現時点では離婚が認められにくいため、まずは歩み寄りを考えてはいかがでしょうか。ご相談ありがとうございます。アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美です。夫婦といえど、自分の持ち物を勝手に処分されるのは我慢なりませんね。大切なものも含まれていたとのことで、大変ショックを受けられたことでしょう。●離婚が認められるための5つ理由離婚は、パートナーと話し合ってお互い納得して離婚届を出すのであれば離婚できます(協議離婚)。しかし、パートナーが「離婚したくない」と拒否するときは、裁判で離婚を認めてもらう必要があります 。裁判では、民法770条1項に定める離婚原因がなければ離婚は認められないんです。離婚原因は、簡単にいうと(1)不倫・浮気(不貞行為)(2)同居・協力・扶助義務を果たさない(悪意の遺棄)(3)3年以上の生死不明(4)回復の見込みがない重度の精神病、(5)その他婚姻を継続しがたい重大な事由の5つで、今回は(5)に該当すれば離婚が認められます。この(5)は、(1)から(4)に当てはまらないさまざまな理由のときに使われますが、当事者の主観的にも客観的にも、今後夫婦としての共同生活を営んでいくことが不可能で、夫婦関係が破綻しているといえるかで判断がされます。●配偶者がミニマリストであることを理由に離婚はできるのか!?判断には、結婚中の夫婦双方の行動や態度、婚姻継続の意思の有無、子の有無、年齢、性格、婚姻期間や別居期間などさまざまな事情が考慮されます。1度ご相談いただいたようなことがあったくらいでは、まずは夫婦間で話しあって改善する余地があると判断され、離婚が認められるのは難しいと思われます。しかし、裁判例では、結婚18年、別居1年の夫婦で、夫が80歳となり生活力が減少したころから妻が先妻の親戚に位牌を送りつけたり、思い出の品を焼却するなどし、修復の話し合いもできなかったケースで離婚が認められたものもあります 。(平成21年5月26日 大阪高等裁判所判決)夫が話し合いに応じようとせず、あなたのつらい気持ちを考えることなく勝手な行動を続け、別居したなど、夫婦関係の改善が困難なとなってくると離婚が認められる可能性はあります。もし、夫の勝手な行動が理由で離婚が認められるとすれば、離婚の責任は夫にあるといえます。また、あなたの所有する大切な宝物を了承なく勝手に捨てたことは、不法行為にもなりますので、慰謝料等の損害賠償の請求はできると考えられます。ただ、損害として認められる額が時価相当額となったり、認められる慰謝料額が買戻し額より少ない可能性もあります。事態が大きくなってしまう前に、夫と十分な話し合い をしたり、夫が聞き入れてくれないのなら、お金には代えられないものですから、夫が処分できない場所に保管する のが先決かもしれません。●お互いの歩み寄りが大事結婚しても相手は自分の所有物ではなく、勝手な言動は許されません。裁判でも、相手の気持ちをお互いに尊重し、歩み寄る ことが夫婦として最も大切なことの一つとされています。許しがたい気持ちもとてもよくわかりますが、あなたの大切なものであること、離婚を考えるくらい許しがたいことだとしっかり伝えて、まずは夫と話し合ってみましょう。離婚が認められるかはケースバイケースですので、お悩みのときは弁護士にご相談くださいね。●ライター/正木裕美(アディーレ法律事務所:愛知県弁護士会所属)
2016年05月15日不倫をした場合、相手の奥さんからどのくらいの慰謝料を請求されるの?タレントのベッキーさんや桂文枝師匠、元衆議院議員の宮崎謙介氏に乙武洋匠氏など、著名人の不倫報道が絶えない昨今。そこで今回はシティWeb読者のアンケート結果とともに、不倫による金銭事情をアディーレ法律事務所の正木裕美弁護士(愛知県弁護士会所属)に詳しく聞いてみました。●意外と多くの女性が経験アリ…不倫は「絶対にダメなもの」ではなくなりつつある!?シティリビングWebにて“不倫・浮気”事情に関するアンケートを行ったところ、「不倫・浮気をしたことがある」と回答した既婚女性は34%、そして独身女性はなんと52%!独身女性は不倫をしたことがある人の方が多いという衝撃的な結果でした。さらに「不倫・浮気って正直、どう思う?」という質問に対して、「好きになったらしょうがないと思う」と答えた独身女性は37%、既婚女性は30%。女性全体の約3人に1人は、不倫容認派だということがわかりました。一方で「絶対に許せない」と答えた既婚女性は39%と高めだったのに対して、独身女性は18%とかなりの少数派。許されない恋だとしても、本人同士が納得しているなら不倫に身を投じても仕方ないと捉えている独身女性は多いようです。アンケートの結果、不倫に対する抵抗感は、独身と既婚で差があるものの、多くの若い女性にとって、不倫という世界が、以前よりもハードルが低くなっていることが伺えます。しかし、不倫で忘れてはいけないのは、自分や相手の家族、周囲の人間を悲しませることはもちろん、さまざまなリスクがつきまとうこと。それでは、不倫がバレた場合、法的、金銭的な問題として、何が発生するのでしょうか。●不倫をした人への法的罰則はあるのか?法的な不倫の境界線は?――まず自分の不倫がバレた場合、法的にはどのような罰を受けるのでしょうか?「肉体関係を持つ、手をつなぐ、2人だけで食事に行くなど、不倫の境界線は人それぞれですが、法律上問題になる不倫は「不貞行為」と呼ばれ、原則として既婚者が自由意思で配偶者以外の異性と肉体関係を持つこととされています。既婚者と知って、もしくは知り得たのに関係を持ったのなら、お互い割り切った遊びでも、本気の恋でも、不貞行為は不貞行為になります。不貞行為は犯罪ではないので、刑罰を受けることはないですが、法律上、相手の妻が有する婚姻生活の平穏を維持する権利を侵害する不法行為になり、彼とともに奥さんに慰謝料を払う義務を負うという、経済的な代償があります。不貞行為が原因で離婚になってしまうと、離婚しない場合と比べて慰謝料も高額になる傾向があります。ただし、彼が既婚者であっても、別居後相当期間経っていて実質的に夫婦としての実態がない等、不貞行為前から夫婦関係が破綻している場合には、妻の保護すべき権利はないため、不法行為にならず、慰謝料を支払う義務は負いません。もっとも、女性に対して「妻とはうまくいっていない、離婚する予定だ」と言っていたけれど、実は嘘だった…というケースも多いのが実情です。女性が注意していても、相手が既婚であることや夫婦関係が破綻していないことに気づきようがなかったとすれば、女性に過失がないとされ慰謝料の支払義務を負いません。しかし、彼の言葉を信じていても、土日に会えない、家に行くことは断固拒否など、不自然に思う出来事があれば、話は別です。彼の言動を客観的に見極めるのが大切でしょう。」(正木裕美弁護士、以下同)●メールよりも領収書や写真がポイントに!小さな証拠を積み重ねて不倫を立証されることも――不倫の立証に必要とされる証拠となるのは?「不貞行為があったことは、慰謝料を請求する妻側が立証責任を負います。そのための証拠はズバリ「肉体関係を持ったこと」を証明できるものです。例えば稀ですが、妻が性交渉を目撃したり性交渉中に撮影した写真や動画というような強い直接的な証です。他には、何度もラブホテルに出入りしている画像や調査報告書、肉体関係があったことを示すメールやSNS・手紙等のやりとり、相手の家に長時間滞在したことを示す写真や動画、二人で旅行に行き同じ部屋に宿泊した領収書やクレジットカードの明細、不貞行為を認めた書面や録音・メールなどの、肉体関係があったことを推認させる証拠も使うことができます。特定の相手と何度も連絡を取っている通話履歴・メール履歴は立派な証拠と思われがちですが、証拠としては弱いところがあります。でも、疑わしい小さな証拠ひとつひとつを積み重ねて立証する手も。持ち出しにくい夫の携帯は、画面写真を撮って記録することも有効なので、忙しくてなかなか家族と顔を合わせていない人だから奥さんにはきっとバレないだろう、という甘い考えで既婚男性と不倫をすると痛い目を見るでしょう。」●相手の奥さんに支払う慰謝料は50万円~300万円程度のケースが多い――それではその証拠をもとに、相手の奥さんから慰謝料を請求された場合、金額の相場はどのくらいでしょうか。「答えは…ありません。というのも、慰謝料の額は、交際期間や不貞行為の回数、離婚したか、結婚期間や子どもの有無、不貞行為前の夫婦関係、妻側の落ち度の有無、不倫の主導者は誰か、不倫相手の収入等々たくさんの事情を総合考慮して変わるため、ケースバイケースと言わざるを得ないんです。 一般論では、過去の裁判例を見ると、以下のように50万円~300万円程度のケースが多いでしょうか。・別居や離婚もしない 50万円~100万円・不貞行為が原因で別居した 100万円~200万円・不貞行為が原因で離婚した 200万円~300万円ただし、個別の事情によってとてもバラつきがあり、500万円などもっと高額になることもありますから、あくまで参考程度にとどめてくださいね。ちなみに不倫の主導者についてですが、例えば、女性の上司である年上の既婚男性が積極的に不倫に誘ったとすると、女性は断りにくかったということで、男性よりも責任は軽いとされて慰謝料の額が低くなる可能性があります。誘ったなどの不貞行為開始や継続に関する事情のほか、二人の年齢差や立場・関係等に照らして不貞行為の主導的立場にあると判断された方は、責任が重くなって慰謝料の負担額がUPすることもあります。」とのこと。「好きになっちゃったんだから…」という考えで、気安く不倫に手を出した結果、相手の奥さんから高額な慰謝料を請求されてしまうことは珍しくありません。不倫による一時の快楽と後々受けるさまざまな深い傷、その点をよく考えることが大事でしょう。(石狩ジュンコ)
2016年04月18日【ママからのご相談】ある日、夫の実家から電話があり「借金が返せないから自己破産することにした」とあっけらかんと言われてしまいました。確かに、夫の実家には夫の父が作った大きな借金があります。私たち夫婦も幼い子ども2人を抱えていて余裕がなく、 義実家に仕送りなどは一切していませんでした。今回も義母は「あなたたちに迷惑はかけないから」と言っていますが、自己破産すると義実家や私たち家族にどういった影響があるのでしょうか?●A. 自己破産する人の親族というだけで、法律上悪影響を受けることはありません。ご相談ありがとうございます。アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美です。夫の父が自己破産と聞いて大変驚かれたことでしょう。“自己破産”に対しては、一般的に受け入れにくい人が少なくない印象があります。しかし、皆さんが思っているよりも意外とデメリットは少なく、人生を立て直すための有効な手段の一つ なんですよ。●自己破産とはどういうことですか?自己破産とは、借金の返済ができない状態であることを裁判所に認めてもらい、法律上借金の支払義務を免れる制度です。自己破産をすると、免責といいますが、原則として借金の返済義務がなくなります (法律上、税金や養育費など一部免責されないものもあります)。ただ、99万円を超える現金や時価20万円を超える高価な財産(東京地方裁判所の場合)は処分されてしまうので、たとえば持ち家は手放さなければいけません。また、お舅さんが大きな借金を作った経緯はわかりませせんが、浪費等の免責不許可事由というものがあり、事情によっては免責が認められないこと もありますので、個別にご相談いただくとよいと思います。●戸籍に載る、選挙権がなくなるなどの噂は本当ですか?自己破産にはたくさんの噂がまことしやかにささやかれていますよね。でも、そもそも戸籍に載ったり、選挙権がなくなることはないんです。家具・家財道具や電化製品もすべて差し押さえられてしまうと思っている方もいますが、必要最低限の家財道具は差押禁止とされ、高額でない限り原則としてそのまま使うことができます 。破産手続中には海外旅行が制限されることがありますが、手続終了後は制限されることもないですし、破産する本人へのデメリットはみなさんが思っているより小さいのではないでしょうか。高額な財産が処分されてしまうこと以外のデメリットとしては、次のようなものがあります。まず、自己破産すると、信用情報機関に登録されるので(いわゆるブラックリスト)、当分のあいだ新しくクレジットカードを作ったり、ローンやキャッシングをしたりすることはできなくなります。また、破産手続中も働くこと自体は制限されませんが、破産手続が終わるまで一定の職種に就くことが制限される資格制限があります。いわゆる士業(弁護士・税理士等)、警備員、生命保険募集人、保険代理店、パチンコ店等の店長(風俗営業法の営業所管理者)、宅地建物取引主任者などが対象となっていて、場合によっては退職を余儀なくされるケース がありますので注意しましょう。さらに、自己破産をすると、官報という国が発行している機関紙に名前と住所が載ります。みなさんも官報を逐一チェックはしていないですよね。私も弁護士になるまでちゃんと見たことはありませんでした。通常、金融機関等を除いて一般の人が官報をチェックをすることはまれなので、周りに自己破産をしたことを知られる可能性はあまり高くはないと考えられます。●家族に影響はないのでしょうか?では、ご家族に影響があるかというと、自己破産する人の家族、親族というだけで法律上悪影響を受けることはありません。ただ、破産する人の債務の保証人になっていると、貸主から借金を払うよう請求されてしまうので、同時に自己破産する必要 があったり、逆に自分の借金のために保証人になってもらっていた人が破産をすると、別の保証人を立てるよう言われてしまったりする可能性 はありますね。また、今回はお舅さんとは同居されていませんが、自己破産では高額な財産は処分されてしまいますので、破産する家族名義の持家に住んでいる場合、そのままでは住み続けることができず、引っ越ししなければいけないという事実上の影響はあります。もし、今後もその家に住み続けたいときは買い取る必要がありますので、事前に家族で話し合っておくことが大切でしょう。日々の生活を律し、安易に借金をすべきでないのはもちろんです。でも、自己破産は人生の終わりではありません。金銭的にも心理的にも負担を軽くし、人生をリスタートする一つの方法です。借金の整理には、自己破産以外にも任意整理や民事再生といった方法もあり、それぞれに最も適した手段を選ぶことが大切です。借金でお困りのとき、まずは弁護士にご相談くださいね。●ライター/正木裕美(アディーレ法律事務所:愛知県弁護士会所属)
2016年04月17日【ママからのご相談】私は結婚して3年目で、1人の子どもがいる共働きの主婦です。自分が仕事に出ていて家庭に使える時間が限られているため、仕事に行っている時間以外は極力家族に時間を使おうと心がけています。しかし、 最近旦那がスマホのゲームに熱中しており、家に帰ってから寝るまでずっと携帯をいじっています。楽しみは奪ってはいけないと注意せずにいたら、前はしていた育児の協力もしなくなり、挙句の果てには夕ご飯を食べるときでさえ携帯を見ながら食べるようになりました。しかも、かなりの金額をゲームの課金に使っているようです。先日テレビで“スマホ離婚”という言葉を耳にしました。注意をしても夫の態度が改善しなかった場合、離婚することはできるのでしょうか。●A. 過剰な課金や、SNSの交流から不倫に発展した場合はできる可能性が高い。ご相談ありがとうございます。アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美です。私も携帯ゲームは好きですが、家庭崩壊になるほど趣味にハマってしまうのは大問題ですね。共働きで子育てと家事を一挙に背負うのはとても負担だったと思います。相手の楽しみを奪わない気遣いはステキですが、もともと育児にも協力的だったようですし、もっと早く話し合いをしていたらここまでエスカレートはしなかった かもしれませんね。●スマホ離婚ってどんなもの?さて、もちろん法律用語ではありませんが、ゲームやSNS、チャットなどスマホへの依存をきっかけに夫婦間のコミュニケーションが減り、結果として離婚になってしまうことを、スマホ離婚 と呼ぶそうです。スマホのゲームなどにハマることで、リアルの夫婦間でコミュニケーション不足やすれ違いが生じたり、収入に見合わない過剰課金で家計を圧迫してしまったり、いろいろなケースがあるようです。離婚まで至らなくても、夫がスマホばかり触っていて家事を手伝ってくれないなんてグチはよく耳にしますし、スマホに関わる不満を募らせているご夫婦は少なくない のではないでしょうか。●夫や妻が何に熱中しているのか気になって、相手の携帯をこっそり見るのは罪になるのか?スマホを離さないといっても、理由が仕事か遊びかで受け止め方も違いますから、何をしているのか確かめたくなる気持ちもわかりますし、浮気かも?と不安になるかもしれません。一度こっそりスマホを見てしまうとやめられない方も多いようですが、相手のスマホをこっそりチェックするのは、方法によっては罪になる可能性があります 。刑法では“信書開封罪”という罪がありますが、これは相手宛ての封をした手紙を勝手に開封して見た場合を想定した罪なので、スマホチェックは対象外です。スマホだとIDやパスワードを設定している本体やアプリも数多くありますよね。スマホ本体に入っている写真やメール、アプリデータを見ることは罪にはなりませんが、IDやパスワードを無断で利用して、ネットワーク経由で、たとえばクラウドメールを見るなどすると不正アクセス禁止法違反になり、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。●スマホ離婚は認められるのか?裁判所で離婚を認められるには、法定の離婚事由がなければいけません。民法では、次の5つが定められています。(1)不貞行為(2)悪意の遺棄(3)3年以上の生死不明(4)回復の見込みのない強度の精神病(5)婚姻を継続しがたい重大な事由このような理由があり、夫婦関係が破綻して修復不可能となったときに離婚は認められます。つまり、スマホ離婚とひと言にいっても、直ちに離婚が認められるわけではなく、スマホ依存によってどのような問題が生じたのかによる といえます。たとえば、ゲームを遊んでいるだけで、お小遣いの範囲での課金なら離婚は難しいかもしれません。しかし、ゲームにはまって過剰な課金をして生活費を渡さない、借金を重ねていて何度話し合いをしても直そうとしないとなってくると、程度問題にはなりますが、(5)の婚姻を継続しがたい重大な事由に該当する可能性があります。また、SNSで異性と交流しているだけでは、法的には浮気=不貞行為ではないですが、肉体関係を持っていることがわかったとなると、(1)の不貞行為として離婚原因になりますね。また、さまざまな理由で夫婦間のすれ違いや不満がたまっていくのがスマホ離婚。まとめると、価値観・性格の不一致といえそうですが、さまざまな理由から夫婦関係がうまくいかなくなり、別居に至って、復縁は難しいとなれば(5)の婚姻を継続しがたい重大な事由があるとして、離婚が認められる余地もあります。----------スマホは非常に便利なツールですし、一人の息抜きの時間も必要でしょうが、やはり夫婦は目を見て話をする時間も大切です。たくさんの違いを持った他人が一緒になるのが結婚 ですから、長い人生の中で問題が起きることも、思い通りにならないこともみんなが経験します。まずは夫婦間でお互いを尊重し、冷静な話し合いで歩み寄って溝を埋めていくこと。個人的には夫の行動は目に余ると思いますが、問題を放置することも、正論の頭ごなしの注意も、なかなか事態の改善につながらず難しいですよね。夫はあなたに甘えていそうですから、離婚の大きな理由が他にないのなら、事の重大さに気づいてもらうためにもまずは上手に気持ちを伝え、話し合いを重ねてみてはいかがでしょうか。●ライター/正木裕美(アディーレ法律事務所:愛知県弁護士会所属)
2016年03月27日既婚者の中にも、自分だけの趣味や時間を大切にしている方は多いのではないでしょうか。とはいえ、夫のこの趣味だけはどうしても許せない、けんかの勢いで夫の趣味のコレクション(アニメグッズやCDなど)を勝手に捨ててしまった、なんて方も少なくないようです。○窃盗罪や器物損壊罪が成立する可能性もしかし夫婦間といえど、夫の物に何をしてもよいわけではありません。パートナーの同意なく勝手に壊したり処分したりしてしまうと、窃盗罪や器物損壊罪が成立する可能性があります。窃盗罪であれば、親族間の犯罪に関する特例(親族相盗例)があり、刑が免除されます。それに対し、器物損壊罪は親族相盗例の対象外のため、理論的には刑事責任を問うことは可能です。ただ、もっとも、器物損壊罪は親告罪といって、物を壊す等をされた相手からの告訴がないと起訴ができない犯罪なので、通常は大きなけんかになったとしても告訴までは至らなかったり、警察に通報しても夫婦間でよくよく話し合うよう諭されたりしますから、妻が現実に刑事処分を受けないことも少なくはありません。もし妻が捨ててしまったものが、結婚後に家計費から購入した夫婦の共有財産だったとしても、妻だけの財産ではなく、夫のものでもある以上、器物損壊罪は成立しえます。また、民事的にも、妻の行動は、妻が故意で夫の物を持っているという権利を侵害して損害を発生させていますので、夫がそこまでやるかどうかは別としても、夫に対し損害賠償責任を負う可能性が高いと考えられます。○離婚が認められるとは限らないけれども、一番の問題は、このような妻の行動は夫の妻に対する愛情や信頼を崩すきっかけとなる行為で、現実に夫婦仲が悪くなったり、中には離婚を考えたりする人もいるということ。大切なものかどうかはそれぞれの価値観によりけりで、ある人にとっては宝物でも、他の人はガラクタと思うかもしれません。でも自分の気持ちをわかってくれない、尊重してくれない……そんな夫を心から許せますか? 怒るのは、もし妻が被害者になった場合でも変わらないのではないでしょうか。ですが、怒った夫が「許せない! 離婚だ!」と思ったとしても、離婚が認められるとは限りませんから、一度冷静になりましょう。妻が離婚に納得して応じるのなら、それが例え「一度アニメグッズを勝手に捨てられたから」という理由であっても特に問題はありませんが、妻が離婚に断固応じないのなら、最終的には裁判で離婚請求をしなければいけません。そして、裁判で離婚を認めてもらうには、民法で定める5つの離婚事由に該当すると認められることが必要です。それは、(1)不貞行為(配偶者以外の異性と自分の意思で肉体関係を持つこと)、(2)悪意の遺棄(夫婦の同居・協力・扶助義務を正当な理由もなく果たさないこと)、(3)3年以上の生死不明、(4)回復の見込みのない強度の精神病、(5)その他婚姻を継続しがたい重大な事由の5つです。今回は、婚姻を継続しがたい重大な事由にあたると言えるかが問題です。これは、簡単にいえば夫婦仲が破綻して関係修復の見込みがない状況をいうのですが、お互いの努力によって改善する見込みがあるケースでは離婚は認められません。捨てられた物、経緯や事情によるでしょうが、一度や数度趣味のものを捨てられてしまったとしても容易に離婚は認められないでしょう。まずは、夫婦間でよくよく話し合い、解決策を探るのが先決です。しかし、このような妻が勝手な行動を繰り返し、何度話し合っても改善の見込みもなく、別居となり、夫婦仲も冷めてしまったというのであれば、裁判でも離婚が認められることはありえるでしょう。夫婦といえど、全く別の人間。価値観も育った環境も性格も違う二人が人生をともにするのですから、衝突することも、お互いに失敗することも、後々後悔することもいくらでもあるのが当然です。二人の間に起きえるたくさんの問題や溝に直面したときには、お互いに尊敬、尊重しあって、よくよく話し合って解決策を探り、信頼関係を深めていくことが夫婦として必要で、裁判でもそのように考えられています。夫側も許しがたい気持ちはわかりますが、そのようなプロセスもないままに離婚を請求しても、裁判所は簡単に離婚を認めません。妻側も、罪に問われなくても、また離婚が直ちに裁判では認められないとしても反省すべき点はあるでしょう。捨ててしまった物が違法物や通常の夫婦にとって許しがたいようなものならともかく、アニメグッズやCDなどであれば、(仮に妻の趣味や価値観に全くあわなかったとしても)買うことも集めることもそれ自体は法律的には何の問題もないと言わざるを得ません。このようなことが続けば夫婦仲は確実に冷めていくでしょうし、いつか犯罪に問われる可能性もゼロとはいえません。どんな理由であれ、勝手な行動に出る前にその気持ちを夫に素直に話してみるべきです。話し合った末にどうしてもお互いに譲れない、受け入れられないとなってから離婚を視野に入れても決して遅くはありません。まずは冷静に夫婦間で話し合いをしてみましょう。※写真は本文と関係ありません<著者プロフィール>正木裕美(まさきひろみ)愛知県出身。愛知県弁護士会所属。男女トラブルをはじめ、ストーカー被害や薬物問題、ネット犯罪などの刑事事件、労働トラブルなどを得意分野として多く扱う。身内の医療過誤から弁護士の道へと進む。2012年には衆議院選挙に愛知7区より日本未来の党の公認候補として出馬し、「衆院選候補者ナンバーワン美女」とインターネットや夕刊紙で大きな話題を呼んだ。●ブログ「弁護士正木裕美のまっさき通信」●アディーレ法律事務所
2015年12月22日不倫や浮気といっても許せる範囲は人それぞれ。合コンに行く、異性と話す、異性と電話やメールをする、2人で会う、ご飯やデート、心が動く、手をつなぐ、キス、関係を持つ……あなたの浮気のボーダーラインはどこですか?不倫や浮気という言葉はよく使われますが、実は法律用語ではありません。一般には、不倫は既婚者のパートナー以外との恋愛や肉体関係を指すことが多く、浮気は既婚者に限らず交際関係の場合も含むように思います。法律的に問題になる不倫や浮気は「不貞行為」と呼ばれており、慰謝料請求ができるとご存じの方もいるでしょう。これは、既婚者が自分の意思で配偶者以外の異性と性的関係(性行為や性交類似行為)を持つこととかなり限定されており、ポイントは大きく3つあります。1. 結婚しているか、いわゆる事実婚といわれる内縁関係にあること結婚や結婚に極めて近い内縁関係によって法律上決められているお互いに他の異性と性的関係を持たないという「貞操義務」に違反する行為が不貞行為です。でも、結婚していない単なる交際関係では、法律は自由恋愛を前提として特別な義務もありませんので、不貞行為になりません。婚約中は結婚や内縁とは違うので不貞行為とはならないですが、浮気による婚約破棄で慰謝料を請求するという方法もあります。2. 異性と性的関係を持ったこと手をつなぐ、キス、同性と関係を持つことは、気持ち的には許せなくても不貞行為にはなりません。ただ、プラトニックな不倫なら絶対に慰謝料の問題にはならないかというとそうとは限りません。プラトニック不倫と呼ばれた裁判例では、肉体関係があったとは認められず不貞行為ではないものの、既婚者がデートを繰り返し親密な交際を続けたことが普通に考えて通常の男女の関係を超えていたとして慰謝料請求が認められたものがあります。同性愛も同様に慰謝料請求が認められる可能性はあるでしょう。なお、今年、ホステスが客と7年以上枕営業をしていたケースで、枕営業は店の売り上げ確保のための商行為だから不貞行為でないとの下級審判決が出ました。が、最高裁はこれまで、不貞行為が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず慰謝料が発生するとしていて、遊びでも本気でも風俗でも不貞行為と考えられてきました。専門家の中でも判決の評価は分かれており、例外的と捉える方がいいと思います。3. 自分の意思で関係を持ったこと例えば性犯罪の被害者になってしまい、自分の意思に反して関係を持たされた場合は含みませんが、被害者の意思にかかわらず、加害者として自分の意思で被害者と肉体関係を持つことは不貞行為です。また、不貞行為に該当しても、それを理由に慰謝料請求するには他にも条件があります。それは、不倫相手が結婚や内縁関係を知っていたか知らなかったかが関係します。慰謝料請求するには不倫相手が結婚や内縁関係を知っていたことと、関係を持ったときに夫婦関係が破綻してなかったことが必要です。そもそも法律では、故意または不注意(過失)によって他人の権利や利益を侵害した者は損害賠償を支払う義務を負うとされています。不貞行為で慰謝料の請求が認められるのは、結婚や内縁にあることを知っていた(故意)または、ちゃんと注意していれば知りえた(過失)相手がパートナーと関係を持ったことで、結婚生活の平和を乱したり、不倫したことにより法律的に守られていた事を侵害したりするため、とされています。ですから、既婚者と気付かなくても仕方ないよねと客観的に評価できる場合や、結婚生活の平和が不貞行為で壊されたと言えない夫婦関係がすでに破綻している場合などでは、慰謝料は発生しないことになります。さらに、裁判では、慰謝料を請求する人が不貞行為があったことを証明しなくてはなりません。関係を持ってないと言い逃れることも珍しくないので、証拠集めが重要になってきます。例えば、性行為をしている写真やビデオ、ホテルに出入りする写真、ホテルの領収書、信用調査会社の報告書、携帯電話のメールや通話履歴、手紙、第三者の証言なども証拠になります。メールや履歴だけでは性的関係の有無がハッキリしないときは、いろいろな証拠の合わせ技で不貞行為を証明していくこともできます。相手の名前や連絡先やメールや履歴は消去されてしまわないよう、写真撮影などで証拠に残しておき、証拠の作り方も専門家に相談してみましょう。証拠がそろったら、パートナーや不倫相手に慰謝料請求をします。気になる慰謝料の額は、不貞行為の回数や期間、主導権がどちらか、結婚期間、結婚生活への影響などさまざまな要素をもとに判断されるのでケースバイケースですが、離婚したときは100万円~300万円程度、離婚しなければ数十万程度が多いです。法律を知り、ボーダーラインを超えないことは大切です。でもそれを越えなくても不誠実なことが続けば、二人の信頼関係は崩れ、大切なものを失ってしまいます。請求したい方も請求されてしまったという方も、不倫や浮気でお悩みのときは一度弁護士にご相談くださいね。※写真は本文と関係ありません<著者プロフィール>正木裕美(まさきひろみ)愛知県出身。愛知県弁護士会所属。男女トラブルをはじめ、ストーカー被害や薬物問題、ネット犯罪などの刑事事件、労働トラブルなどを得意分野として多く扱う。身内の医療過誤から弁護士の道へと進む。2012年には衆議院選挙に愛知7区より日本未来の党の公認候補として出馬し、「衆院選候補者ナンバーワン美女」とインターネットや夕刊紙で大きな話題を呼んだ。ブログ「弁護士正木裕美のまっさき通信」
2015年10月29日ニュースでもたびたび聞く婚前契約。女優の遠野なぎこさんや弁護士の大渕愛子さんが結んだと話題になったことで、興味を持たれた方も多いかもしれません。婚前契約というのは、入籍前に結婚後の生活に関する約束や離婚の条件などを定めるものです。日本ではなじみが薄いですが、海外では、「プリナップ」(prenup=prenuptial agreement)と呼ばれる、結婚時や離婚後の権利義務の内容、離婚後の慰謝料、財産分与、親権などが定められることが多い比較的メジャーな契約で、ハリウッドセレブの離婚時には、婚前契約で定めていた巨額の慰謝料の支払いや財産分与などをしたと報じられることも多いですよね。日本でも婚前契約書を作成しているカップルは増加傾向にあるそうですが、法律上は、夫婦の財産に関する取り決めとして「夫婦財産契約」の定めがあるだけなので、内容や形式に決まりはなく、原則として自由に決めることができます。○財産、家事分担、離婚時の約束などが一般的一般的なのは、財産や生活費をどうするか、結婚中の家事、育児、介護などの分担方法、離婚時の慰謝料や財産分与をどうするかなどの約束です。その意味では大渕さんの婚前契約はメジャーな内容といえます。婚姻の意思を持って共同生活をすること、夫婦としての権利義務を享受することに加え、「双方の収入は共有財産とみなさず、各々に帰属するものとします。」という内容が含まれていました。これは、法律上で結婚後に築いた財産は夫婦二人の共有財産と推定されるので、離婚しても財産分与の対象にはならず、お互いの名義のものはそれぞれのものだと明らかにする意味もあると思われます。お互いが経済的にも自立しているときは、このような約束が有益ですね。また、婚前契約は「他の女性と二人で会わないでほしいな」「結婚しても手をつないで歩こうね」「結婚記念日は一緒に過ごす」なんて甘い約束もできます。ユニークだったのは、テレビで公開された遠野さんの「事前の承諾を得ずに異性と二人きりで会わないものとする」「一日のうち起床から就寝までの間、どのような事情があれトイレに行く度にメールまたは電話をする」「"愛の言葉"はメールの場合、コピー・アンド・ペーストをしてはならない」などの婚前契約でしょう。ここまでの内容を求めないとしても、円満な夫婦生活を送るには愛情表現やコミュニケーションはとても重要で、これが足りないと夫婦関係の悪化につながることが少なくないので、恥ずかしがらず率直に話しておくことも大切です。○婚前契約のポイント1「結婚"前"に契約する」婚前契約書を作りたいと思ったときは、特に注意が必要なことが2つあります。1つ目は、結婚"前"に契約しなければいけないこと。というのも、法律上、結婚後の夫婦間の約束は、夫婦関係が破綻していない限りいつでも取り消すことができるとされているからです。また、今は共働き夫婦も多く、夫婦や家族の形はさまざまですし、加えて離婚原因で一番多いのは性格の不一致です。結婚は価値観も、歩んできた人生も全然違う二人の共同生活なので、結婚後に衝突することは当然たくさんあります。夫婦はお互いに譲歩しあい、尊重しあって価値観をすりあわせていくものですが、残念ながらうまく調整できず離婚になってしまうこともあります。でも、婚前契約をするときは、結婚前から具体的にどのような結婚生活を送りたいのか深く話し合うので、結婚後のトラブルや離婚防止にもつながります。また、離婚時には信頼関係がなくなっていることが多く、財産分与など激しくモメることが多いですが、円満な関係のときだからこそ冷静に何がベストか話し合うこともできます。話し合いには時間がかかることもありますから、結婚を決めたら早い段階で準備を始めるのがベターでしょう。もし考えが違い過ぎてどうしても溝が埋められないのなら、結婚を考えなおした方がよいかもしれませんね。○婚前契約のポイント2「社会的妥当性の有無」2つ目は、契約内容が原則自由とは言っても、普通の契約と同じように、社会的妥当性に欠ける内容は無効になることです。「離婚のときは、どんな理由であっても夫が妻に慰謝料1億円払います」とあまりに法外で不公平な内容や、「暴力や暴言があっても何も文句は言いません」など一般的な常識に反する内容は無効とされる可能性が大きいですね。また、口約束は後日あったかなかったかの話になることも多いので、書面に残しておきましょう。形式は自由なので、二人でサイン・押印をした覚書を作ってもよいですし、公正証書といった公的な書面で残すこともできます。なお、婚前契約は、国際結婚、内縁・事実婚、再婚、高齢者婚、同性婚など、法律で保護されなかったり、夫婦を取り巻く利害関係人が多かったりしたときは特にメリットも大きいですが、不明確な書き方をしてしまうと後日争いになることがあります。リスクマネジメントのため、一度弁護士にご相談することをお勧めします。長い夫婦生活ではうまくいかないときもありますが、時には二人で契約書を見直し、当初の気持ちを思い出してまた頑張ってみる、そんな使い方もできる婚前契約書を作ってみるのもよいのではないでしょうか。※写真は本文と関係ありません<著者プロフィール<正木裕美(まさきひろみ)愛知県出身。愛知県弁護士会所属。男女トラブルをはじめ、ストーカー被害や薬物問題、ネット犯罪などの刑事事件、労働トラブルなどを得意分野として多く扱う。身内の医療過誤から弁護士の道へと進む。2012年には衆議院選挙に愛知7区より日本未来の党の公認候補として出馬し、「衆院選候補者ナンバーワン美女」とインターネットや夕刊紙で大きな話題を呼んだ。ブログ「弁護士正木裕美のまっさき通信」
2015年07月17日今や離婚は珍しくなくなりましたね。厚労省の統計では昨年の離婚件数は22万件と推計され、実に2分22秒に1組もの夫婦が離婚している計算になります。離婚経験者や今離婚を考えて悩んでいる方もたくさんおられると思います。離婚の理由はさまざまですが、お互いに離婚に納得して離婚届を出す協議離婚なら、どんな理由であれ特に問題になりません。でも、相手が離婚に応じないと話は別です。というのも、相手が応じなくても裁判で離婚を請求できる離婚原因は、民法770条で5つに限られています。それは、(1)不貞行為、つまり配偶者以外の異性と自由な意思で肉体関係を持ったとき、(2)悪意の遺棄、つまり正当な理由がなく夫婦の同居・協力・扶助義務を果たさないとき、(3)配偶者の生死が3年以上明らかでないとき、(4)配偶者が強度の精神病で回復の見込みがないとき、(5)婚姻を継続し難い重大な事由があるとき、です。(1)から(4)にズバリあてはまらない理由は、(5)婚姻を継続し難い重大な事由、つまり婚姻関係が破綻して婚姻の本質に応じた共同生活の回復見込みがない状態とされると離婚原因になります。実際の離婚事件でもいろいろな離婚したい理由が主張されるので、問題になるのが多いのも(5)ですが、どのような理由なら離婚原因となるのでしょうか。○「セックスレス」は離婚原因になる?まず、男性女性問わずお悩みの多いセックスレス。夫婦関係の悪化や浮気・不倫につながることも多いですが、性生活は法律の世界でも結婚の重要な要素と考えられています。もちろん数回応じなかったことくらいでは離婚はできません。でも、セックスレスの原因、態様、期間にもよりますが、正当な理由がない長期間のセックスレスは離婚原因になることがあります。実際、裁判例で性交渉できないことを告げずに結婚し結婚当初から性交渉がない、夫がAVにハマって自慰行為にふけったり、ポルノ雑誌にハマったり、同性愛者で妻との性交渉を拒否したなどのケースで離婚が認められました。逆に、昼夜を問わず性交渉が強要されるなど、通常と比べて著しく強い性欲がある異常性欲の場合も、離婚原因となりえます。また、性的趣味・嗜好の面では、電気をつけて靴下を履いた状態での性交渉を求めて離婚が認められたケースもあり、相手が応じがたいことを求め続けると離婚原因になることもあります。性の問題はなかなか口にしにくいですが、埋めがたい溝ができる前に、相手の意向を尊重しながら夫婦間でしっかり話し合うことが大切です。○「夫が育児・家事をしない」は離婚原因になる?他には、妻の不満に多い夫が育児・家事をしないこと、これは夫が夫婦間の協力義務を怠っているので、度が過ぎると(2)悪意の遺棄や他の理由とあわせて(5)婚姻を継続し難い重大な事由になることがあります。裁判例では、妻が子供の入院や育児、家事で多忙だったのに、夫が仕事を理由に家事育児を拒否し、結婚生活に失望した妻が別居を望んだことにつき、夫婦を結び付ける精神的絆は失われていたとして離婚を認めたものがあります。一方、離婚が難しいのは、「夫のリストラ」「夫の給料が上がらない」「妻の料理がまずい」「妻が実はアイドルオタクだった」などといった理由です。経済的・精神的に完全に満足でなくても一般水準の生活が営めるレベルや、合理的な時間や出費の範囲で自由に趣味を楽しむレベルなら離婚はできません。しかし、これらが原因となってけんかが絶えず別居になったり、リストラ夫が再就職せずに怠けた生活を続けたり真面目に働かない、無断で収入に見合わない多額のお金を趣味に費やして生活が苦しい、家庭を顧みず改善しないなどの場合は離婚原因になる可能性があります。○「性格の不一致」は離婚原因になる?また、よく言われる性格の不一致も、そもそもお互いが譲歩しあって調和を目指すものなので、それだけでは離婚原因とは認められにくいです。ただ、お互いの我が強すぎて離婚を認めたまれな裁判例もあります。人一倍几帳面で清潔好きの外科医の夫が、家事などがルーズで融通の利かない言動をする小児科医の妻に我慢できなかったというケースでは、同居3年、別居5年の間、けんかが絶えなかったこともあり、二人の性格や言動を変えるのは難しく、お互いの妥協しがたい性格の違いから継続的な結婚生活は極めて困難で、夫婦関係は破綻しているとして離婚を認めました。他にも、DV、重い病気や障害、過度の宗教活動、多額の借金・浪費、アルコール中毒、犯罪行為・服役、親族との不和など、いろいろなことが離婚原因になりえます。ただ、離婚が認められるかは、離婚原因や経緯のほか、別居・結婚期間、結婚中の双方の言動、子供の有無や年齢、離婚意思の有無や強さ、健康状況、資産状況、年齢、性格など個別の事情にもよりケース・バイ・ケースなので、個別のご相談をお勧めします。なお、離婚したくてもあえて自分で離婚原因を作るのはNGです。離婚原因を作った配偶者からの離婚請求は、別居期間や子供の状況、経済状況などの事情にもよりますが、原則として認められません。どんな夫婦も、長い人生の中でぶつかり合うことはたくさんあります。離婚になる前に、まずは時間をかけて冷静に話し合い、お互いに譲歩、尊重しあっていくことも円満な結婚生活のためには大切です。それでもうまくいかないときは、個別の事情次第で離婚が認められるかの結論は変わってきますので、離婚を考えている方も離婚を求められている方も一人で悩まず、包み隠さずに弁護士にご相談くださいね。※写真は本文と関係ありません<著者プロフィール<正木裕美(まさきひろみ)愛知県出身。愛知県弁護士会所属。男女トラブルをはじめ、ストーカー被害や薬物問題、ネット犯罪などの刑事事件、労働トラブルなどを得意分野として多く扱う。身内の医療過誤から弁護士の道へと進む。2012年には衆議院選挙に愛知7区より日本未来の党の公認候補として出馬し、「衆院選候補者ナンバーワン美女」とインターネットや夕刊紙で大きな話題を呼んだ。ブログ「弁護士正木裕美のまっさき通信」
2015年06月23日結婚するときは、一生、この人と添い遂げようと思っていても、残念ながら、いつしか2人の関係が変わってしまうことも…。「自分は大丈夫!」とタカをくくらず、いざというときのことも考えておきましょう。離婚時のトラブルを防ぐために、「結婚前にしておくべきこと」をアディーレ法律事務所の弁護士正木裕美先生に聞ききました。「借金編」に続き、「財産編」をお届けします。●婚前契約は“2人の約束事”――少し前に、女優の遠野なぎこさんが婚前契約を作ったことが話題になりましたが、具体的にはどういう内容なのでしょう。また、作っておいたほうがいいのでしょうか。なんだかはじめから離婚を考えているようで抵抗があるのですが…。「法律では、夫婦の財産に関する取り決めである『夫婦財産契約』の定めがある以外、内容や形式に決まりはありません。通常の契約と同様に、社会的な妥当性に欠けるような内容でないかぎり、どのような内容でもかまいません。一般的には、財産や生活費の取り扱い、結婚中の家事や育児の分担、介護などに関する取り決め、離婚の条件など、夫婦間の約束事を定めることが多いですね。『結婚記念日は一緒に過ごす』といった内容を入れることもできます」――「契約」というとカタイ印象ですが、“2人の約束事”ととらえればいいのかもしれませんね。「そうですね。海外では『プレナップ』とも呼ばれる一般的な制度ですが、日本ではまだまだ浸透していません。ただ、日本では、結婚後の夫婦間の約束は、夫婦関係が破綻していないかぎりいつでも取り消すことができるとされているので、結婚前に契約しておくのは重要なポイントになります。現代では家族の姿は多様化し、夫婦それぞれが自分のライフスタイルや生き方を重視するようになりましたが、離婚の原因で最も多いのは、性格の不一致。婚前契約書を作るなかで、結婚後のビジョン、価値観などをお互い冷静に見つめることができるので、むしろ結婚後に円満な夫婦生活を送りやすくなるメリットもあるんです。また、円満な関係のときであれば公平な取り決めができ、離婚時のトラブルを防止できます。また、離婚したときのデメリットもよく理解したうえで結婚生活を送れるので、結婚後に軽率な行動にも出にくいとも思われます。いまは内縁・事実婚関係、同性婚、再婚、高齢者婚など、夫婦の形も多様化しています。法律上の保護が十分でない場合は、婚前契約をすることで、お互いの希望をかなえやすくなる面もあります。婚前契約書は、2人だけで『覚え書き』として作ってもよいですが、後日、効力に争いが生じたり、不明確な点が出てきたりすることもあるので、専門家に依頼して、『公正証書』という公式な書類で契約書を作成することもできます。証明力の高さが違いますので、検討してみてもよいかもしれませんね。●「共有財産」と「特有財産」をハッキリさせておく――でも、相手が乗り気じゃない場合はどうすればいいでしょう。「離婚するときに、とくに熾烈な争いになるのが財産分与です。法律上、結婚後に取得した財産は、『共有財産』と推定されますので、離婚のときには、改めて夫婦で持っている財産をすべて整理し、共有財産の範囲を明らかにする必要があります。一方、結婚前に貯めていた預貯金など、結婚前から持っている財産や、相続・贈与で取得した財産など、結婚後に夫婦の協力に関係なく取得した財産は、『特有財産』と呼ばれています。特有財産は、原則として財産分与の対象外とされていますので、それぞれの名義人のものになります。特有財産かどうかは、それを主張する側が証明しなければいけないので、立証できないときは、共有財産と扱われてしまう危険性があります。結婚する前に、お互いに結婚前から持っている財産は何があるのか明確にしておき、自分が結婚前からその財産を持っていたことを証明できる書類は大切に保管しておきましょう。ただし、結婚前から持っていたものであっても、結婚後に夫婦の協力により価値が維持・増加したものは、財産分与の対象となります。また、形式的にどちらかの名義になっていても、生活費を貯めた預貯金、マイホーム、マイカー、家財道具、生命保険解約返戻金、有価証券、退職金など、実質的に結婚後に夫婦の協力で築き上げたと評価できる財産は共有財産となり、財産分与の対象になります。幸せな結婚生活を夢見ていても、小さい不満や価値観の相違が積み重なれば、お互いに信頼や愛情をなくすきっかけになることもあります。相手に言いにくいこともありますが、万一、離婚することになってしまったときのトラブル防止としてだけでなく、円満な結婚生活を送るためにも、結婚前に夫婦間での約束をしっかり話し合っておくことが何より大切ですね」●「借金編」はコチラプロフィール/正木 裕美(まさき ひろみ)愛知県出身。愛知県弁護士会所属。男女トラブルをはじめ、ストーカー被害や薬物問題、ネット犯罪などの刑事事件、労働トラブルなどを得意分野として多く扱う。身内の医療過誤から弁護士の道へと進む。2012年には衆議院選挙に愛知7区より日本未来の党の公認候補として出馬し、「衆院選候補者ナンバーワン美女」とインターネットや夕刊紙で大きな話題を呼んだ。・公式ブログ「弁護士正木裕美のまっさき通信」:・アディーレ法律事務所の新刊『マンガでわかる「愛と慰謝料の掟(ルール)~請求されたら…編~』:<取材・文/斉藤サブロー取材協力/アディーレ法律事務所>
2015年04月10日結婚をゴールのように感じる女性は多いですが、いまや3組に1組は離婚する時代。トラブルを防ぐために、結婚前にしておくべきことをアディーレ法律事務所の弁護士正木裕美先生に聞いてみました。●カレが借金をしていないかチェック!――離婚の原因として、いちばん多い法的トラブルはなんですか?「やはり借金トラブルですね。借金していたことが結婚後に発覚し、夫婦関係に暗雲が立ちこめるケースが多いんです。結婚後に破産となれば、財産を手放さなければいけない場合もありますし、結婚生活に大きな影響を与えるトラブルが生じる可能性があります」――でも、結婚相手に「借金してない?」とは聞きにくいですよね…。「結婚前には、子どもを持ちたい時期や、マイカー、マイホームの購入など、今後の将来設計について話すことがありますよね。そのときに、具体的にどれくらい貯金や借金があるかを聞いてみてはどうでしょう。もし結婚相手が借金を滞納していた場合、結婚後にローンが組めなかったり、子どもが小さい間は専業主婦かパートタイムで働こうと考えていたのに、フルタイムで働かなくてはいけなくなったり、それまで話していた人生設計が白紙になってしまうこともあります。そもそも、金銭感覚やお金の使い方は夫婦間での信頼にも大きくかかわる問題で、離婚の原因になることもあります。できるだけ、結婚前に相手の信用情報を確認しておくことをおすすめします。個人信用情報の管理は、主に3社で行われており、クレジットカード・信販会社などを管理するCIC、銀行系を管理する全国銀行個人信用情報センター、貸金業・クレジット会社などを管理する日本信用情報機構があります。自分の情報開示をしてもらうことができるので、お互いに個人信用情報をとって見せ合ってみてはいかがでしょう。借金があるのか、どのようなお金の使い方をしてきた人なのか、ちゃんと確認することが大切です。忘れがちですが、奨学金や携帯電話などの分割払いも、滞納すると信用情報に傷がつきます」●もしカレが借金をしていたら?――もし、借金があることがわかったら、どうすればいいですか?「結婚前に、弁護士に依頼して債務整理を行っておきましょう。債務整理には、大きく分けて、3つの方法があります。1つは、債務を減額したり無理のない返済プランに変える『任意整理』、もう1つは、支払不能のときにする『自己破産』、裁判所の関与のもとで住宅ローン以外の債務を減額し、原則として3年以内に返済することでマイホームを手放さずに生活の再生をはかる『民事再生』。それぞれの状況にあった手続きをご提案することができます。債務整理では、弁護士が介入すると個人への取り立ては禁止されますし、家族や交際相手からお金を借りたり保証人になってもらったりしていなければ、気づかれないように手続きを進めることもできます。また、自己破産の場合、官報に住所・氏名とともに自己破産したことが掲載されますが、一般的に官報を見ている人は少ないので、周囲の人は、手続きを進めていることはなかなかわかりません。破産というと、ダークなイメージを持たれている方が多いのですが、20万円以上の財産(現金は99万円以下)の処分、職種制限、再度の自己破産の制限、いわゆるブラックリストに載って金融機関から借入ができないなどの影響もありますが、意外とデメリットは少なく、戸籍や住民票に記載されることもありません。結婚・同居をしていると郵便物からわかってしまったり、家族の家計状況を報告しなければいけなかったりすることもありますので、同居前に手続きを進めるのがベターです。もし、いま自分が借金を抱えているという人は、結婚前に弁護士に相談して解決し、心おきなく新たな人生のスタートを切れるようにしておきましょう」プロフィール/正木 裕美(まさき ひろみ)愛知県出身。愛知県弁護士会所属。男女トラブルをはじめ、ストーカー被害や薬物問題、ネット犯罪などの刑事事件、労働トラブルなどを得意分野として多く扱う。身内の医療過誤から弁護士の道へと進む。2012年には衆議院選挙に愛知7区より日本未来の党の公認候補として出馬し、「衆院選候補者ナンバーワン美女」とインターネットや夕刊紙で大きな話題を呼んだ。・公式ブログ「弁護士正木裕美のまっさき通信」:・アディーレ法律事務所の新刊『マンガでわかる「愛と慰謝料の掟(ルール)~請求されたら…編~』:<取材・文/斉藤サブロー取材協力/アディーレ法律事務所>
2015年04月08日