沼津港深海水族館 ~シーラカンスミュージアム~は3月19日、「アカドンコ(ブロブフィッシュ)」の公開展示を開始した。○非常に貴重な、生きた"世界一醜い生物"を展示「アカドンコ」は、「世界一醜い生物第1位」に選ばれたブロブフィッシュの仲間で、同個体は3月16日、深海底引き網漁にて水深350mより引きあげられた。うろこを持たず、ぶよぶよの体をした深海魚の特徴を持ち、網で引き上げられると他の魚やエビによって体が擦れてしまい、すぐに死んでしまう。今回は網の端にたまたまいたことで擦れが少なく、いい状態であがってきたという。チャーター船にて捕獲し、同館の石垣館長がその場のケアを厚くし、今回の展示公開までこぎつけている。死亡したブロブフィッシュは、水分が抜け筋肉がダラリと落ちて、例の"おやじ顔"になってしまうが、生きている時はとても愛らしい顔をしている。今回の展示は、生きたブロブフィッシュを観ることができる貴重な機会となる。同館の所在地は、静岡県沼津市千本港町83番地。
2015年03月24日明治は17日、「生物図鑑グミ 深海生物編」を発売する。○深海生物をリアルにかたどったグミは全18種類同商品は、独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)協力のもと発売する、深海生物などの魅力を伝えるコレクションカード付きグミ。近年大きなブームとなっている深海生物の形を、柔らかい食感が特徴のグミでリアルに再現した。種類は全部で18種類。また、深海生物の"驚異の生態"を紹介した全19種類のコレクションカードも1枚封入している。深海の世界観を表現したパッケージや、知的好奇心や探究心を刺激するコレクションカードは本格的な仕上がりとなっており、カードをコレクションすれば自分だけの「生物図鑑」を作ることができるという。グミは、コーラ味、ソーダ味、みかん味の3種類となる。内容量22gで、参考小売価格は100円(税別)。
2015年03月14日動画サービス「ニコニコ生放送」にて、深海生物漁の模様を完全中継する番組「深海生物ハンターと行く、深海漁見学ツアー」の放送が決定した。放送日は2月20日~21日。番組には、神奈川県・横浜にある水族館「ヨコハマおもしろ水族館」の名誉館長で深海魚専門漁師の長谷川久志氏と、深海プロジェクトディレクターの長谷川一孝氏が登場。両氏とともに、静岡県焼津市駿河湾で行われる深海漁見学ツアーの模様を、船上からノーカットで放送する。今回の漁のターゲットとなるのは、深海魚・ヌタウナギ(1日目)とオオグソクムシ(2日目)で、オオグソクムシは収穫後、"えんとつ焼き"にして試食する予定。なお、1日目のヌタウナギ編は収録放送、2日目のオオグソクムシ編は生放送となる。番組名:「深海生物ハンターと行く、深海生物調査漁 ヌタウナギ編(収録放送)」放送日:2月20日(金)放送時間:18:00~24:00(予定)出演予定:焼津の深海魚ハンター・長谷川久志さん&一孝さん親子、ヌタウナギ番組ページはこちら番組名:「深海生物ハンターと行く、深海生物調査漁 オオグソクムシ編(生放送)」放送日:2月21日(土)放送時間:9:30~14:00(予定)出演予定:焼津の深海魚ハンター・長谷川久志さん・一孝さん親子、オオグソクムシ、その他の深海生物番組ページはこちら
2015年02月19日葛西臨海水族園は1月30日~2月1日、「深海」をテーマにした特別ボトルウォッチング「深海ラボ」を開催する。○貴重な深海生物の生きた個体や標本を紹介同イベントのテーマは、「深海」という環境とそこに暮らす生物。同園が採集した貴重な深海生物の生きた個体や標本を紹介する。水槽で生きた個体や、ボトルに入った標本をじっくり観察でき、スタッフがわかりやすく解説する。紹介する標本は、ラブカ、ミツクリザメ、メンダコ、アカグツなど。一部の標本には、実際に触ることもできる。なお標本は変更になる場合もある。また、特殊な水槽を使った加圧実験、深さ1,000メートルの水温の擬似体験、深海生物採集や輸送のための特殊装置も公開。普段なかなか見ることのできない深海生物を間近に観察できるチャンスとなるという。開催日時は、1月30日~2月1日 10時30分~12時。場所は、葛西臨海水族園 本館2階レクチャールーム(東京都江戸川区臨海町6-2-3)。その他、詳細は同園Webページを参照のこと。
2015年01月19日Age Global Networksのオンラインショップ「CLION MARKET」では、12月17日から「焼津 長兼丸 深海魚おせち」の販売予約を開始した。「焼津 長兼丸 深海魚おせち」は、「深海魚」をコンセプトにしたこれまでにないおせちとなっている。一の重のメインは、見た目のインパクトが大きい「オオグソクムシ」の丸焼き2匹。蒲鉾や伊達巻の材料には「深海鮫」を使用し、周りを彩るおかずにもバイ貝や金目鯛など、魚をふんだんに使っている。二の重、三の重には、「栗きんとん」、「昆布しめ」といったおせち料理の定番品や、海の幸を贅沢に使った特製ちらしも詰められ、目新しさだけではない豪華な三段重に仕上がっている。価格は21,600円(税込)。受付は12月25日の17時まで。詳細は「CLION MARKET」にて。
2014年12月22日Age Global Networksは25日まで、オンラインショップ「CLION MARKET(クリオンマーケット)」にて、「焼津 長兼丸 深海魚おせち」、「陸上自衛隊おせち」の予約を受け付けている。○食材は深海魚専門の漁師が水揚げ「焼津 長兼丸 深海魚おせち」は、今年注目を集めた「深海魚」が味わえる。「一の重」のメインは、日本最大の等脚類、「オオグソクムシ」2匹の姿焼き。蒲鉾、伊達巻には「深海鮫」を使用した。これらの2つの食材を水揚げしたのは、深海魚専門の漁師、長兼丸の長谷川久志・一孝親子。そのほか深海魚の真丈、底黒タラ、バイ貝、金目鯛などがそろう。「ニの重」には、黒豆や栗きんとん、数の子、昆布しめなど、縁起のよいおせち料理の"いわれ"を大切にした品々を詰めた。「三の重」は、イクラやズワイガニなどの具材を使い、紅白はす甘酢が鮮やかな特製ちらし寿司となる。価格は2万1,600円(税込)。○「ミリメシ」にならってレトルトパウチで「陸上自衛隊OSECHI」は、陸上自衛隊をイメージ。「ミリメシ(戦闘糧食)」を三段重の中で表現したおせちとなる。迷彩柄のお重の「一の重」には、海老や栗きんとん、黒豆といった定番に加えて、ボリューム感がある鴨のローストなどを詰めた。「二の重」は、海老、いくら、煮豚などによる特製ちらし寿司が入る。「三の重」には、「ミリメシ」として、ハヤシビーフ、ポークカレー、"美味しい白米"を、「ミリメシ」の雰囲気そのままにレトルトパウチで詰め込んだ。さらに、10式戦車のペーパークラフトが付く。価格は1万6,200円(税込)。○肉料理満載の「新日本プロレスおせち」も上記2品と併せ、新日本プロレス監修の「新日本プロレスおせち」も予約を受け付けている。同商品は、屈強なレスラーをイメージした肉料理が中心の三段重となる。価格は1万6,200円(税込)。いずれも、数量限定。予約は25日の17時までの受け付けとなる。
2014年12月20日沼津港深海水族館では、シーラカンスの展示を行っている。○世界でも希少な冷凍個体をはじめ、5体のシーラカンスを展示同館は、世界で唯一「シーラカンス」の冷凍標本が見られる、"シーラカンスミュージアム"。生きた化石「シーラカンス」は1938年、3億5,000万年前と変わらぬ姿のまま南アフリカで発見された。とうの昔にすべて絶滅したと考えられていたため、学会および世界は騒然となったという。現在ではこれまでにアフリカ(南アフリカ、コモロ諸島、タンザニア)とインドネシアで見つかっている。日本ではまだ発見されていないが、深海の海洋環境は世界中で近しい環境にあるため、「日本にはいない」と断定するほうが難しい、とも言われている。同館に展示されているのは、1980年代、日本シーラカンス学術調査隊が現地と協力して捕獲したもの。5体あり、そのうち2体は冷凍個体で、世界でも類を見ない希少な「シーラカンス」となっている。また「シーラカンス」は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」の第I類に指定されている。通常、「シーラカンス」を商業ベースで展示することは許されていないが、同館が保有する個体は、規制対象になる前に日本に持ち込まれた、国内唯一の正式に展示が許された希少な個体となっている。「シーラカンス」は0.6mm幅でCTスキャンを行い、立体映像も再現。最新のデータを見ながら、生体の謎に迫る。さらにコモロでの現地調査から、「シーラカンス」が海中で泳ぐ姿をとらえた世界初の遊泳映像も放映している。同館の所在地は、静岡県沼津市千本港町83。
2014年12月02日地球の表面のおよそ71%は海だ。平均水深は3,800mと深く、地球のほとんどは深海が占めている。もしも深海で暮らしたらどうなるのか?土地不足も解消されのびのびと生活できると思ったが、2℃足らずの水温と細胞も破壊する水圧におびえながら、漆黒の世界でじっとし死ぬのを待つしかなさそうだ。■静寂と高圧水深200mまでは浅海(せんかい)、それよりも深いと深海と呼ばれる。海岸や大陸棚(だな)の浅い部分にあたる浅海は海底面積のわずか8%しかなく、残りはすべて深海だ。71%の92%だから地球の65.3%が深海となる計算だ。さらに海水の95%が深海にあるというから、この面積と空間が活用できれば地球は巨大な惑星になるのだが、生物を拒絶するかのように、過酷な条件がそろっている。水深150~200mに届く光は海面のわずか1%にすぎないため、深海では光合成をおこなう植物やプランクトンは生息できない。水深1,000mを超えると完全な暗闇となり、目が退化する、自ら発光する、望遠鏡のような筒型の目を持つなど、生物は独特な進化を遂げる。地上では植物が基盤となるが、深海では落ちてくるプランクトンや魚の死骸(しがい)から始まり、それを食べる生物、その生物を捕食する生物と、独自の食物連鎖がおこなわれているのだ。光の影響を受けないので温度も安定し、日本近傍の太平洋では水深1,000~3,000mで5℃以下、3,000m以下は南極から流れ込んだ1.5℃程度の冷たい海水に満たされている。また、塩分濃度によってわずかながら上下に動くものの、親潮や黒潮のような海流はこの深度に及ばず、表層の海水とはほとんど循環しない。生気も動きもない、孤立した世界が形成されている。最大の脅威は水圧だ。海水の重さが圧力となり、すべてを押しつぶす。深く潜るほどに水圧は増し、およそ10m深まるほどに1気圧高くなる。水深100mまで潜れば10気圧、厳密には海上の1気圧とあわせて11気圧かかり生物の細胞をも圧縮する。人間は300気圧が加わると細胞の破壊、神経障害、さらには身体を構成するたんぱく質さえ変性するというから、生身で泳げば水圧だけでも危険にさらされるので、潜水服か潜水船に頼るしかない。潜水調査船・しんかい6500は、その名の通り水深6,500mまで潜航できる。いかにも潜水艦らしい外観だが、居住エリアは内径2mの球にすぎない。水深6,500mでは681気圧がかかり、1平方cmに681kg、およそ軽トラック1台が乗るのと同じ力が加わるからだ。そのため搭乗員は厚さ73.5mmのチタン合金の球に守られながら潜航し、140mm厚のメタクリル樹脂の窓から外をながめることしかできない。もしも外壁や窓に亀裂が生じたら、浸水してまたたく間に圧死する。強度が足りなければ、搭乗員ごと圧潰(あっかい)する。もっとも簡単な対策は、潜水船の内部を水圧と同じに高める方法だ。内外の圧力が同じなら厚い外壁は不要で、小型の潜水服だって作成可能だ。だが、人間の呼吸の限界は10気圧ほどだから、100mが限界となる。さらに深く潜ると、内部の気圧も高めなければならないので、10気圧を超えて呼吸困難に陥る。スキューバ・ダイビングの世界記録が318.2mだから、それよりも深く潜れない潜水船では、存在理由すらなくなってしまう。頼むぞチタン。人間はぜい弱だ。■エサは有毒ガス植物のない深海でも、大地の恵みで生きるたくましい連中がいる。海底火山から吹き出す硫化(りゅうか)水素をエネルギーとするバクテリアだ。硫化水素は火山ガスに含まれる有毒物質で、温泉のにおいと言えばイメージしやすいだろう。高濃度になると鼻をつく悪臭、さらに高まると腐った卵のにおい、もっと濃くなると皮膚に刺激を感じ、多量に吸い込めば即死する。昨今の調査では、体内に硫黄酸化細菌と呼ばれるバクテリアを取り込み、海底火山の有毒ガスをエサにして生きる生物が多数見つかった。人間には有毒な硫化水素を利用して、鉄と硫黄でできたウロコを足にまとい、100℃近い噴火口で生息する巻き貝・スケーリーフッドなども発見されている。硫化水素の恩恵を得られない生物は、乏しいエサを逃さない工夫が必要なため、全長18mにも巨大化したダイオウイカ、あごと牙が発達したキバハダカ、死肉を食らうヌタウナギ、自分よりも大きな相手も飲み込むアンコウなど独自の進化を遂げている。もしも潜水服が完成しても、一人で外出するのは無謀だ。エネルギーを浪費しないように身をひそめながら、エサであるあなたが近づくのを、深海生物たちが待ち構えているのだから。■まとめ木星の第2衛星・エウロパは、地球外生命体がもっとも期待できる場所と言われている。厚さ3kmの氷に覆われながらも、火山と水があり地球の深海と似ているからだ。もしエウロパに生物がいるなら、人類も深海から生まれたのだろうか?自分の起源を知るのは楽しみだが、有毒な火山ガスを糧に育った祖先に、親近感を持つのは難しそうだ。(関口寿/ガリレオワークス)
2012年12月31日深海はなぜ人をひきつけるのでしょうか。それは今なお人間の探査の行き届かない「未知の世界」であり、また「未知な生物」がいるからではないでしょうか。深海とそこに住む深海魚について大気海洋研究所 海洋生物資源部門 資源生態分野の猿渡敏郎助教(農学博士)にお話を伺いました。――深海と一口に言いますが、どのくらいの深さから深海になるのでしょうか?猿渡博士大陸棚が大体200メートルくらいの深さで終わります。広い意味ではここから下の海は「深海」です。狭い意味では4,000メートルより下のより深い海を「深海」と呼ぶこともありますが。――では広義の意味では、200メートルより下の海にすんでいる魚は深海魚と呼んでもいいのでしょうか。猿渡博士そうですね。みなさんが一般的に思っている深海魚のイメージとは異なるかもしれませんが。猿渡博士海の平均的な深さを知っていますか?――いいえ。猿渡博士大体3,800メートルぐらいだと言われています。つまり富士山の標高3,776メートルでまだ足りないぐらい深いわけです。地球の表面積のうち7割が海、そして海の平均水深が3,800メートル、広義の意味では200メートルよりは深海だとすると……。――そうなると、海はほとんど深海と言ってもいいぐらいですね。猿渡博士そういうことですね。■「チョウチンアンコウ」の面白い話――猿渡先生のご専門で大きな発見があったということですが?猿渡博士「ミツクリエナガチョウチンアンコウ」が網にかかりましてね。それが素晴らく状態のいいもので、そこで大きな発見がありました。――どんなことでしょうか。猿渡博士チョウチンアンコウの仲間は、メスの個体が大きくて、オスの個体が極端に小さいというのをご存じですか?――はい。聞いたことがあります。交尾のためにメスの体に寄生して、そのうちメスに吸収されるという話を聞いたことがあります。猿渡博士ところがですね、私が発見したこのミツクリエナガチョウチンアンコウですが、メスで体長が316.5ミリメートルもある大きなものなんですが、体表に小さなオスが8匹も寄生していたんです。――えっ。そんなに数が付くものなんですか?猿渡博士しかもですね、メスに吸収されるといった状態ではなかったんです。「腹鰭」(はらびれ)など、オスの鰭(ひれ)もきちんと確認できましたし。メスの体内に同化されるような様子も見られませんでした。また、調べてみると、明らかにメスから栄養をもらっていることもわかりました。――では、私が聞いたような話は誤りなんでしょうか?猿渡博士もっと詳しく調べる必要があると思います。しかも、このミツクリエナガチョウチンアンコウは面白いことに二系統の発光器官を持っているんです。――チョウチンアンコウの、あのちょうちんの部分ですよね。猿渡博士そうです。あのサオの先の部分が光るのは(共生関係にある)発光バクテリアのおかげなんです。そのほかに、背鰭(せびれ)の前にプラプラした肉の塊みたいな部分があって、そこに発光液をためているんですよ。この発光液は、エビなど食べたエサから吸収するんです。普通は、このどちらか一方の種類の発光器しか持っていないんですが、ミツクリエナガチョウチンアンコウは2種類持っているんです。――サオの方は、エサになる生き物をひきつけるのに使うのでわかります。ためた発光液は何に使うんですか?猿渡博士おそらく危険に遭った時に、ぱっとまいて目くらましに使うんでしょう。網にかかった時も青白い液体が出ていたので、最初はオスの精液かなと思ったんですが違っていました。網にかかった際に発光液を分泌したのだと思います。――このようなキレイな個体を手にすることは難しいのでしょうね。猿渡博士そうなんですよ。だから最初見た時からずっとテンションが上がりっぱなしでしたね(笑)。■なぜ発光器があるのか!?――発光器官があるのが不思議な気がするのですが。猿渡博士深海の生き物には発光器を持つものが確かに多いです。――なぜなんでしょうか? 光っているとかえって目立って食べられちゃうような気がするんですが。猿渡博士いろいろと考えられます。チョウチンアンコウのサオの発光はエサを集めるためですし、体の下に発光器を持つものは防衛のためだと考えられています。自分の輪郭をぼかすためだと言われています。――輪郭をぼかすために光るんですか?猿渡博士太陽の光はほとんど届かないですが、それでも光は上から来ます。捕食者に下から見られると、光に自分のシルエットが浮かび上がってしまいます。なので、発光器から下の方に光を放てば、それを防ぐことができるわけです。――なるほど。■漁業による採集は水深500メートルぐらいまで!――サンプルを入手することを考えると、深海探査、深海魚の研究というのは難しいんですね。猿渡博士ええ。例えばトロール漁船に網を出してもらって、何かかからなければおしまいですし。トロール漁船の網というのは大体500メートルぐらいの深海までをさらうんですが、それより深いところにすむ生き物のことは調べるのが困難です。――その場合はどうするんでしょうか?猿渡博士やはり調査船や潜水艇の力を借りないといけません。日本には『淡青丸』、『白鳳丸』といった学術研究船のほかに、『しんかい6500』という非常に優秀な潜水艇があります。――日本の深海探査技術というのは、世界的に見ても優秀なのですか?猿渡博士優秀だと思います。技術開発も熱心ですし、また魚類だけではなく、無脊椎(せきつい)動物の研究、鉱物資源など、深海にあるさまざまなもの、現象を研究する科学者がたくさんいますので。――研究用の深海探査機材などはみんなで使用しているのですか?猿渡博士そうですね。こういう研究をしたいのでこの期間研究船を使用したいといった「プロポーザル」を出します。審査でダメだなあと思われたら、そこではねられちゃうんで(笑)、そうなるとガッカリですね。■生きたまま地上に持って来れるか!?――深海生物の研究で困難なことは何でしょうか?猿渡博士深海の生き物を生かしたまま陸上まで持ってくることですね。深くなるにつれて水温は下がります。水温が急激に下がる層があって、それを超えるとさらに冷えていきます。また、深度10メートルで1気圧、平均水深3,800メートルなら381気圧というとてつもない水圧のかかった世界で生きている生き物たちです。これを上にそのままあげたりすると、大抵の生き物は死んでしまいます。――ダイバーなどもやられますね。猿渡博士目が飛び出たり、浮袋が口から出たりとか、そういうわかりやすい症状もあれば、ヒトの潜水病のように毛細血管の先の方で窒素ガスが気化して肝臓など重要な臓器を破壊したりします。減圧症を防いで、深海生物を陸上にまで持ってこられたら大きな成果が得られるでしょう。――可能なんでしょうか?猿渡博士なんとか実現しようとしています。スラープガン(吸引式深海生物採集器)という水鉄砲とは逆に水と一緒に生物を吸い込む装置があるんですが、それで生物を水ごと捕獲して、それを加圧装置つきの設備に入れたりするわけです。先ほどの「しんかい6500」にそのような装置を付けた試みも行われています。――それは楽しみですね。猿渡博士ただ、まだ入れることのできるのが小さな生物だけのようなので、そこが残念ですが。でも少しずつ前進していますよ。いつか水族館でチョウチンアンコウの姿が見られるようになるかもしれない。私も見てみたいと思います。ぜひとも実現させたい夢ですね。■人はなぜ深海生物が好き!?――深海生物が人を魅了するのはなぜだと思われますか?猿渡博士やはり形がヘンだからでしょうね(笑)。グロテスクなものも含めて、人はヘンなものにひかれますから。世界中で研究者が深海を探っていますが、いまだに新種発見! など、驚きのニュースが絶えません。深海はこれからも私たちを魅了し続けるのではないでしょうか。(高橋モータース@dcp)
2012年12月01日