劇作家・倉持裕が書き下ろす新作『虹とマーブル』が8・9月、東京・世田谷パブリックシアターほかで上演される。1960~80年代の日本を舞台に、スケールの大きなドラマが展開するという。倉持と、主演の小出恵介、その相手役を務める黒島結菜に聞いた。M&Oplaysプロデュース『虹とマーブル』チケット情報「60~80年代に設定したのは、日本がギラギラしていたエネルギッシュな時代で、主役が主役らしく輝けるから」と倉持はその意図を語る。「約30年もの長いスパンで書くのは、僕にとって新しい挑戦ですね。俳優たちは20~40代までを演じることになる。欲望剥き出しに、泥臭く演じてほしいです」。小出が演じるのは、チンピラから成り上がっていく男、鯨井紋次。倉持が「小出くんはワイルドさと知的な雰囲気を両方もっている人。裏の世界で生きる男を、チャーミングに演じてくれるはず」と太鼓判を押せば、小出は「昭和の人間を演じたことは何度かありますが、生きる意味や社会での立ち位置をみんな考えていて、名を成すことに照れがなく素直に動いていたイメージがあります。自分もこの時代に生きていたら、時代の空気に乗ってめちゃくちゃやっていたかもしれないですね」と笑う。その紋次に若き日に見初められ、女優へと押し上げられていくのが、黒島演じる芹沢蘭だ。倉持はふたりの関係性について「紋次はスターを作ることで自分の力を誇示したかったけれど、蘭は最初、そこまでやる気を持っていなかった。ところが、実際にスターになってみると、蘭に自覚が芽生え、狡猾になっていくのに対して、紋次は、自分の掌の上で蘭を転がしていたはずなのにと、ふと我に返る。関係性が逆転するさまを描けたらと思っています」と説明。黒島が「今回が初舞台ですし、20代から40代までを演じるのも初めて。不安はありますが、楽しみのほうが大きいです。ただ、私がこの時代に生まれたら、女優もやっていないだろうし、すぐにつぶされていたと思います。今の仕事も初めから目指していたわけではなく、やり始めてからがんばろうと思ったくらいで、流れに身を任せるタイプなんです」と言うと、倉持は「蘭とのイメージと重なります。思い切り演じてほしい」とエールを送った。倉持によれば、『虹とマーブル』というタイトルには「どん底かてっぺんか、その立場による物の見え方の相違が表されていて、観劇後にその意味が分かる仕掛けになっている」という。どこかほろ苦さも漂いそうな気配だが、「哀しいだけではなく、希望をもって終わりたい。“時代遅れ”なファンタジーを、楽しんでほしいですね」(倉持)。東京公演は8月22日(土)から9月6日(日)まで。チケットの一般発売は6月20日(土)午前10時より。チケットぴあではインターネット先行抽選「プレリザーブ」を実施中、6月2日(火)午前11時まで受付。取材・文:高橋彩子
2015年05月29日ロイド=ウェバーのゴージャスな音楽と共に、大女優ノーマと売れない脚本家ジョーの奇妙な関係がサスペンスタッチで展開するミュージカル『サンセット大通り』。その3年ぶりの再演で、5月10日に宝塚歌劇団を退団したばかりのトップ娘役・夢咲ねねが、ジョーと恋に落ちる若き女性ベティ役を演じる。「『サンセット大通り』の日本初演の映像と台本を拝見したのですが、ベティは、真っ直ぐで純粋で、宝塚の作品にも出てきそうな女の子だと感じました。これまで宝塚で学んだことを生かしながら、新たな世界に挑戦したいです」と夢咲。ミュージカル『サンセット大通り』チケット情報今回の再演では、ノーマ役を安蘭けい&濱田めぐみ、ジョー役を平方元基&柿澤勇人がダブルキャストで演じるが、夢咲はシングルキャスト。相手役によって、演技が異なる場面もあるだろう。「安蘭さんは、私がまだ下級生だった星組時代のトップスターさん。当時、お芝居について、手取り足取り教えていただきました。素晴らしい方で尊敬しておりますし、再びご一緒させていただけるのはとても嬉しいです。濱田さんとは接点はないのですが、観客として『ボニー&クライド』をはじめ、いくつかの舞台を拝見し、いつも感動していました。同じ舞台に立たせていただけるのは光栄です。平方さん、柿澤さんは『ロミオ&ジュリエット』に出ていらっしゃるのを見ました。今はただただ共演が楽しみですし、頑張りたいです」ロイド=ウェバーの音楽で演じるのは、今回が初めて。「色々なミュージカルで聴いてきましたが、まさか歌わせていただけるとは。『サンセット大通り』の音楽も、すごく綺麗でロマンティックで、ミステリアスな雰囲気もあって素敵です。死にものぐるいで勉強したいと思います」とする一方、「宝塚時代からひとつの公演でたくさんの曲を歌ってきたので、歌は常に身近な存在です。自分の歌を練習するのはもちろん大事なのですが、集中し過ぎると視野が狭くなってしまうので、色々なジャンル・歌手の方の歌を聴いて幅広くインスピレーションを受けるようにしています」と、攻略法を語った。最初に観た舞台が宝塚のミュージカルだったという夢咲だけに、ミュージカルへの思いは強い。「初めて観た時、こんなに心が弾む夢の世界があるのかと、衝撃を受けたんです。我を忘れて物語や登場人物の世界観に浸かり、劇場を出る時には前向きな気持ちになれる。しかも、台詞だけでなく、歌やダンスで色々に表現されるのが、ミュージカルの魅力かと思います。私もそうした衝撃や感動を感じていただける演じ手になれたら、嬉しいですね」公演は7月4日(土)から20日(月・祝)まで東京・赤坂ACTシアター、7月25日(土)・26日(日)愛知芸術劇場 大ホール、7月31日(金)から8月2日(日)まで大阪・シアターBRAVA!にて。各公演のチケットは発売中。東京公演では、キャストによるスペシャルトーク&ライブイベントへのご招待付き特別チケットも発売中。取材・文:高橋彩子
2015年05月21日国立モスクワ音楽劇場バレエが5月20日(木)から24日(日)まで、『エスメラルダ』『白鳥の湖』を上演する。公演に先駆けて19日に行われたリハーサルの現場に潜入した。国立モスクワ音楽劇場バレエ チケット情報リハーサル開始前。イーゴリ・ゼレンスキー芸術監督が、バレエ団スーパーバイザーのアンドレイ・ウヴァーロフと、オケピットの前で立ち話をしている。舞台上には、本番の衣裳の下にレッスン着をつけたダンサーたち。踊りの確認に余念がない。ほどなくゼレンスキーがマイクでスタートを告げ、ウヴァーロフとともに客席に着くと、オケピットの指揮者がタクトを振り下ろし、リハーサルが始まった。セーヌ川を描いた幕と共に、これから始まる激動のドラマを示唆するように、力強い音楽が流れる。幕が上がると、小さな女の子を抱きかかえた母親がよろよろと登場し、聖母子像のふもとで眠り込む。するとジプシーたちが現れ、女の子を連れ去ってしまう。目を覚ました母は半狂乱で娘を探しまわるが見つからない。像に向かって振り上げかけた拳を自ら下ろし、悲嘆に暮れる母。この場面こそ全ての発端だ。女の子は成長して、タイトルロールのエスメラルダとなる。続いて舞台は10数年後、祭りで賑わうノートルダム寺院前の広場に。この場面の特徴は、大勢のダンサーたちが、ひとまとまりの群舞としてではなく、町の人々として一人一人独立した演技や踊りを展開すること。演技理論として演劇界・映画界に大きな影響を与えている “スタニスラフキー・システム”と縁の深いバレエ団ならではと言えるかもしれない。東京文化会館大ホールの舞台全体にパリの広場の活気を再現するべく、バレエマスターのミハイル・クラピーヴィンが客席と舞台を行き来し、ダンサーたちの動きや立ち位置を細かく指示。一方、バレエミストレスのマルガリータ・ドロズドーワは客席最前列から、主にソリストたちを指導する。さらに、指揮者がダンサーに曲のカウントを確かめるなど、最終調整に取り組むバレエ団の白熱した空気が伝わって来た。広場で踊る美しいヒロイン、エスメラルダに、聖職者ながら欲望をぎらつかせるフロロが目をつけ、せむし男カジモドに命じて誘拐させようとするが、フェビュス隊長がこれを阻止し、フェビュスとエスメラルダは恋に落ちる。エスメラルダとフェビュスをメインで踊っていたのは、20日昼のキャスト、オクサーナ・カルダシュとイワン・ミハリョフだったが、袖の近くで同日夜に踊るナターリヤ・ソーモワとゲオルギー・スミレフスキも振りを確認。同じ動きをする彼らを見比べることで、体型や踊りの質、タイミングの取り方などが全く違うことが、改めてよくわかる。どちらの活躍も楽しみだ。堅牢・重厚な美術に、ダンサーたちの躍動する身体が映える、モスクワ音楽劇場バレエの舞台。そのドラマティックな世界にどっぷりと浸かりたい。チケットは発売中。取材・文:高橋彩子
2015年05月20日藤森陽太、鯨井康介、崎山つばさ出演の舞台『孤島の鬼』が4月22日に開幕した。『黄金仮面』『少年探偵団』『蝶々殺人事件』に続く昭和文学演劇集第四弾で、江戸川乱歩の長編小説を、石井幸一脚本、西沢栄治演出で舞台化したものだ。公演初日を前に、ゲネプロが行われた。舞台『孤島の鬼』チケット情報30歳にもならずして髪がすべて白くなっている青年、蓑浦。彼は、自らの総白髪の原因となった、恐怖の体験を語り始める――。タイピストの女性・初代と恋に落ちた蓑浦だったが、ある日、初代は何者かに殺害されてしまう。悲嘆に暮れる蓑浦の前に現れたのは、かつて彼への思いを告白した医学生の諸戸だった。蓑浦、諸戸、事件を担当する北川刑事、探偵業を営む友人・深山木はそれぞれ、この事件の真相に迫ろうとするが、事態は思いがけない方向へと転がっていく。語り部として、事件を振り返る現在の蓑浦=「私」を演じたのは、崎山。終始、作品の中心に立ち、回想の中の登場人物達とも会話し触れ合う難役を、崎山は確かな存在感と明瞭な台詞回しでこなしてみせた。その回想に登場する若き蓑浦役には、藤森。大変な事件に巻き込まれているとも知らず、恋人を救うために奔走する若者を、瑞々しく演じた。諸戸役には鯨井。事件のキーパーソンとも言うべき人物を、陰影に富む知的な雰囲気で造形した。蓑浦が出会う運命の女性ふたり、初代と秀の2役を体当たりで演じた逢沢凛の熱演も特筆したい。総じて、若いキャストばかりとは思えない、見応えある舞台となっていた。得体の知れなさ・おどろおどろしさが蠢く乱歩独特の世界観を匂わせながら、ある種、清浄な幻想美があふれたのも、この舞台の特長だ。ホルマリン漬けの瓶が並ぶ棚からなる美術は妖しい光を放ち、白地に赤い花の柄があしらわれた衣裳は血や痣を連想させる。そんな中、細やかでアイデア豊かな西沢栄治演出は、グロテスク一辺倒でもなく、耽美に溺れきってしまうこともなく、時にユーモアを交えながら、絶妙なバランスで人間ドラマを構築した。衝撃的な物語に驚き、戦慄しつつ、気がつけば不思議な感動すらおぼえる『孤島の鬼』。人間とは、愛とは何かを考えさせてくれる、珠玉の舞台に、観る者は引き込まれずにはいられないだろう。公演は5月4日(月・祝)まで東京・赤坂RED/THEATERにて。取材・文:高橋彩子
2015年04月27日同名のオペレッタの音楽と物語を踏まえつつ、振付家ローラン・プティが独自のアレンジを施したバレエ『こうもり』。新国立劇場バレエ団では、2002年の初演以来、レパートリーとして定着している。3年ぶりの再演を控えた稽古場では、プティの生前から右腕として活躍し本作でウルリックも演じたルイジ・ボニーノの指導の下、リハーサルが進んでいた。新国立劇場バレエ団『こうもり』チケット情報夫ヨハンの夜遊びに悩む主婦ベラが、友人ウルリックの助言に従い、謎の美女に変身して夫の心を取り戻すまでを描く本作。この日の稽古は1幕、ヨハンとベラの家の場面から始まった。まず、ベラの初日キャスト小野絢子が、ヨハンの別日キャスト井澤駿を相手に、倦怠期を迎えた夫婦を演じ、彼らの間をウルリック役の福田圭吾が生き生きと往来。次に、ベラを初めて演じる米沢唯が、ヨハン役の菅野英男、ウルリック役の八幡顕光と共に踊った。もうふたりのベラ役、湯川麻美子、本島美和も稽古を見守る。プティ作品では、バレエのテクニックに加え、時に規範から外れるようなユニークな表情や動き、そして演劇的な雄弁さが求められる。食事シーンでは「わあ、ご飯だ、美味しそう!」、ウルリックがベラを口説きかけるシーンでは「私は良い妻なのよ!!」など、ジェスチャーを交えながら、実際に台詞を発して感情を伝えるボニーノ。その仕草ひとつ、言葉ひとつで、情景が鮮やかに浮かび上がる。しかし、本番で語らなければならないのはダンサーたちだ。「もっと大きく演じて」「まだ喋っていないよ。想像して、会話をして」と、熱い指導は続く。大仰に演じるだけでは成立しないのも、この作品の難しさ。熱演するダンサー達にボニーノは「早く喋り過ぎ。それではお客さんにわからないよ」「いきなり白から黒に変わるのではなく、グレーを作って。徐々に感情を積み上げるんだ」と繰り返す。リアルさと様式性のさじ加減は、このバレエの“命”だ。顔や肩の向き、動くタイミング、小道具の使い方など、指導は細部にまで及び、稽古が進むにつれ、ダンサー達の踊りに磨きがかかっていった。ヨハン初挑戦の井澤がまだこなせずにいる振りについて、ヨハン経験者の菅野がボニーノと共に助言したり、電話線を用いたこの作品特有の演技をメイド役の3キャストが集まって確認したりと、団員同士が協力し合う姿も印象的。独特の戯画化やコケットリーなど、ダンサー達の前のハードルは高い。それらを乗り越えて誕生する、洒脱でウィットに富んだプティ・ワールドを、ぜひ見届けたい。公演は4月21日(火)から26日(日)まで東京・新国立劇場 オペラパレスにて。チケット発売中。取材・文:高橋彩子
2015年04月17日諸星和己、DA PUMPのISSA、175RのSHOGO、山崎裕太によるエンターテインメントミュージカル『4BLOCKS』が間もなく開幕する。河原雅彦の演出の下、ラストスパートをかける白熱の稽古場に潜入した。ミュージカル『4BLOCKS』チケット情報ハンク(諸星)、ルード(ISSA)、ウッディ(山崎)、チャーリー(SHOGO)の4兄弟は少年時代、父親のプロデュースの下、グループ“4BLOCKS”として活躍していた。しかし、人気絶頂のある日、父に解散を宣告され、音楽業界から追放されてしまう。それから15年。どん底の日々を送る彼らに、父の訃報と遺言が届く。父の遺産を得るため、父から課されたグループ再結成のためのミッションをこなしていく彼らを待っているものとは……?この日の稽古は、クライマックス近く、再会した4兄弟が初めて一緒にコンテストに出場する場面で始まった。彼らの前に歌い踊るのは、若手グループThe Hills。今回、音楽も手がけている諸星がThe Hillsのメンバー達に、新たに増えた曲について「実際にはもっと分かり易くするから大丈夫」と説明するひとコマも。そしてコンテストはいよいよ4BLOCKSの出番に。詳しい内容は本番で確かめていただきたいが、兄弟達がひとり、またひとりと歌い出し、ハーモニーを奏でていく場面は必聴だ。この舞台の大きな魅力は歌と踊りだが、演出の河原は、よりリアルな表現を求める。「普通はそこ、もっと焦るよね?」「歌い出すのは前からにして」「リズムを取るのはここから取り始めて」。言葉や動きに細かいニュアンスを作る河原の指示を得て、出演者達の演技には血が通い、自然発生的に感情が沸き起こる芝居になっていった。反目し合い、あるいは、それを為すすべなく傍観していた兄弟それぞれが、わだかまりを解き、状況をしっかりと受け入れ、前を向く――。 失地回復し、その先に何を見出すかというテーマは、私達の誰もが人生において直面するものだ。この舞台で4BLOCKS達がどんなことを感じ、発見し、導き出すのか、注目したい。公演は4月3日(金)から12日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて。チケット発売中。取材・文:高橋彩子
2015年03月27日神奈川芸術劇場(KAAT)の“KAAT次世代への古典芸能プロジェクト”の新たな企画として、若手舞踊公演「SUGATA」が誕生する。今回フィーチャーする若手は、故・中村富十郎の長男・中村鷹之資と、中村松江の長男・中村玉太郎。藤間流宗家・藤間勘十郎の新作舞踊劇『葛城山蜘蛛絲譚』を、素踊りで上演する。公演に先立って記者懇親会が開かれた。KAAT若手舞踊公演 SUGATA『葛城山蜘蛛絲譚』チケット情報「最初は古典という話もあったのですが、KAAT大スタジオといういつもと違う空間で、今の鷹之資くんと玉太郎くんに合うものをということで、新作に致しました。土蜘蛛退治のお話を中心にしつつ、『山姥』『紅葉狩』『戻橋』など様々な趣向を詰め込みます」と、勘十郎が説明。山姥/童子実は土蜘蛛の精を勘十郎、四天王のひとり・坂田金時を鷹之資、山神を玉太郎が踊る。勘十郎が配役について「金時は四天王の中でも若くて力持ち。鷹之資くんのイメージと重なりますし、私が大変お世話になったお父様の天王寺屋さん(富十郎)もなさった役です。今回は母親役を私が勤め、“子別れ”の見せ場も作ろうと考えています。また、私の親戚でもある玉太郎さんには山神をやってもらいます。歌舞伎俳優にも私ども舞踊家にも憧れの役である『紅葉狩』の山神を踊れる役者になってもらいたい、という思いで作りました」と語ると、鷹之資は「勘十郎先生がくださったチャンスなので、精一杯頑張ります。金時は活発な役ですから、そう見えるよう元気よく踊りたい」と意気込み、玉太郎も「色々な方の期待に応えたいです。山神は、亡くなった(中村)勘三郎さんや(坂東)三津五郎さんもなさった凄い役。少しでも近づけたらと思います」とうなずいた。鷹之資15歳、玉太郎14歳と初々しいふたりだが、ともに舞踊への思いは熱い。「昔から踊りは好きでしたが、4年前に父が亡くなり、改めて、もっと努力しなければならないなと思いました。父の踊りも長い年月をかけて完成させたものなので、僕も今の時期に基礎を固め、ゆくゆくは父以上にうまくなれるよう、気を引き締めています。父からはとにかく手を綺麗に、そして目を輝かせて思いきり踊るようにと言われたのをおぼえています」(鷹之資)「小さい頃からずっとやっていますので、踊りは身近な大切な存在です。この公演でお客様に、上手になってきていることをお見せできたらと思っております。もちろん、細かい動きや綺麗さも大事なのですが、歌舞伎役者ですので、何よりもやはりその役らしく踊りたい。今回は山神の力強さや雄大さを出したいです」(玉太郎)一見シンプルながら、見どころの多い舞台となりそうだ。「よく素踊りを“削ぎ落とす”と言いますが、祖父(二世藤間勘祖)は“削ぎ落とすのも大事だが、役の格・性根で勝負するんだ”と言っていたそうです。衣裳は着なくてもやせ細らず、その役に見えるのが素踊り。今回はそこに照明の工夫もし、古典の面白いところを色々と取り入れながら、カッコいい作品にしたいと考えております」(勘十郎)公演は3月20日(金)から22日(日)まで。取材・文:高橋彩子
2015年03月13日男性9名で、ストリート・ダンスを基盤に様々な踊りを見せるダンス・カンパニー「DAZZLE」。彼らに、歌舞伎俳優・坂東玉三郎が初めて演出を行った舞台airweave presents『バラーレ』が3月7日に東京・赤坂ACTシアターで開幕した。【チケット情報はこちら】これまでDAZZLEは「すべてのカテゴリーに属し、属さない曖昧な眩さ」を標榜し、ナレーションや字幕、映像などを駆使して、物語性の強い世界を展開してきた。和の世界を取り入れた『花ト囮』はその代表例だ。しかし玉三郎は今回、振付を手がけるDAZZLE主宰・長谷川達也に、既存のクラシック音楽を使ってダンスだけで舞台を見せることを提案したという。作品は三部構成。第一部は、ストラヴィンスキー作曲「春の祭典」を用いて、「生贄」をテーマに踊る。不穏な空気を孕み、やがて激烈に荒ぶっていく音楽と共に、黄色い衣裳を身につけたDAZZLEのメンバーたちがハードなダンスを展開。そこに込められているのは「死からの再生」のイメージだ。第二部は、マーラー作曲「交響曲第4番」第3楽章で、「平安なる死」が描かれる。衣裳は白。通常は小刻みでスピーディーな動きが多いDAZZLEが、緩やかなテンポで静かに踊るのは新鮮だ。全員が彫像の如くゆったりと腕を伸ばし、風にそよぐように揺れるシーンは繊細な美しさに満ち、また、ふたりがユニゾンで踊るシーンでは、空気が大きく動くのが見えるようだった。アンサンブルも登場してのフィナーレは荘厳。そして第三部は、ミュージカル『タンゴ・アルゼンチーノ』より、ピアソラらタンゴの音楽に乗せて「情熱の死」を表現。冒頭、ずらりと並べた椅子で、DAZZLEとアンサンブルの総勢33名の男性が黒衣で踊るさまは、イスラエルのバットシェバ舞踊団のダンスを彷彿とさせる。手鏡を持って髪をなでつけたり、タンゴらしくペアで踊りそうで踊らなかったり…と、一風変わった演出も。この第三部では、玉三郎も振付の一部を手がけている。妖艶な中にも真っ直ぐなパワーを感じさせる玉三郎の振付と、必ずどこかに鋭角さや歪みを加える長谷川の振付が、全体の黒いトーンに多彩な陰影をもたらしていた。三部それぞれ、まったく趣きの異なる世界を、DAZZLEメンバーがフル出演して踊りきった『バラーレ』。進化・深化するその舞台に、千秋楽まで目が離せない。airweave presents『バラーレ』は3月15日(日)まで、東京・赤坂ACTシアターで上演。チケットは発売中。取材・文:高橋彩子
2015年03月11日ミュージカルや現代劇のみならず、赤坂大歌舞伎や坂東玉三郎特別公演、「志の輔らくご in ACT」など伝統芸能も上演してきた赤坂サカスのACTシアターで初めて、文楽公演が行われる。それも、能の最大流派・観世流を率いる二十六世宗家の観世清和が能『翁 日吉之式』を舞った後、『翁』から生まれた文楽『二人三番叟』、そして、夫婦愛を描いた文楽『壺坂観音霊験記』を上演するという、他に類例のない演目だてだ。この「赤坂サカス文楽」公演に先駆けて、その観世清和と、文楽太夫・豊竹英大夫、文楽三味線の鶴澤清介、文楽人形遣いの豊松清十郎が出席しての制作発表会が行われた。赤坂サカス チケット情報冒頭には、英大夫の語りと清介の三味線、清十郎・吉田玉佳・吉田玉路の人形で『三番叟』の一部が披露され、清十郎による人形解説も。三人で動かす人形の鮮やかな動きに、記者席からも感嘆の声が漏れた。この公演を支えるのは、能と文楽のお互いへの敬意と、観客の裾野を広げたいという思いだ。英大夫が「ユネスコの無形文化遺産に、日本で最初に認定されたのがお能、その次が文楽です。お能は能楽堂を、文楽は国立劇場を離れ、アウェイである赤坂サカスで共演するのは、日本文化史においても奇跡的なこと。世界に通じる伝統芸能を、現代が息づくこの赤坂サカスでぜひご覧ください」と言い、清和も「英大夫先生からお声をかけていただき、大変光栄です。私ども能の世界で一番大事にしております神聖な『翁』を勤めさせていただき、常ですと狂言方が受け持つ『三番叟』を文楽の先生方が演奏なさるのは画期的。近代的な劇場で、古い能と文楽を、気軽に楽しんでいただきたい」とうなずいた。さらに清介も「お能も文楽も、生まれてから何百年か経っていますが、今でも日本人のDNAには脈々と、能や文楽を理解し、共感をもって泣き、笑い、感動する精神があります。一度でもご覧になっていただければ、必ず琴線に触れるものがございます」、清十郎も「お能の演目をアレンジして文楽や歌舞伎にしている演目は多い。そのお能の観世流のお家元と一緒に舞台に立たせていただくのは光栄です。華やかな赤坂な地で、新しいお客様も来ていただけるのではないかと期待しております」と述べた。『翁』は「能にして能にあらず」と言われる神聖な演目。その後の『二人三番叟』では、客席に降りるという、通常はない演出もあるという。「『翁』を上演する前には精進潔斎をして臨みます。天下泰平と国土安穏への祈りを感じ取っていただき、文楽の『三番叟』に繋げていければと」(清和)、「能の『翁』は神の領域。それを、江戸時代は将軍家に庇護されていたお能の観世流のご宗家がなさり、庶民の芸能だった文楽へと移行し、人形が客席にも降りて行く。特別な空間ができると思っております」(英大夫)公演では、詩人の高橋睦郎氏による能と文楽の解説、文楽技芸員による太夫・三味線・人形の解説もあり、従来のファンは勿論、初めての観客も楽しめそうだ。公演は3月24日(火)より。取材・文:高橋彩子
2015年03月06日アートとエンターテインメントを融合させた舞台を発表し、日中友好舞踊歌劇『木蘭』では中国トップダンサーの相手役も務めた新上裕也が、アートディレクション・振付・出演を務める舞台「GQ(Gentleman Quality)」が4年ぶりの新作『Gabby』を発表する。「GQとは、生きていく上で出会う究極の選択を前に、全てを受け入れ、背負い、強く立ち続ける人達のこと。今回は“七つの大罪”を裏テーマに、壮大な世界を描きます」と新上は語る。GQ2015『GABBY』チケット情報錚々たる出演者のうち、前回公演に続いての出演となる佐々木大、吉本真悟、Joey Beniと、今回が初参戦の辻本知彦にも話を聞いた。国立ロシアバレエ団でプリンシパルとして活躍し、三大バレエコンクールのひとつ、ジャクソン国際バレエコンクールでは金賞受賞の経験を持つ佐々木大は「僕の中でGQは、素晴らしい表現者がジャンルの垣根を超えて集まる、お祭りであり、戦場。違う言葉で話し合い、ひとつのストーリーを語る中で、自分はバレエの人間なんだと、良い意味で確認できる場所でもあります。楽しさと恐ろしさの両方を味わって臨みます」。また、日本人で初めてパリオペラ座バレエ学校で学び、三大バレエコンクールのヴァルナ国際バレエコンクールでは金賞を受賞した吉本は「ストリート、コンテンポラリー、バレエのダンサーが同じステージに立ち、物語を伝えるのがこの公演の見どころ。色々なことが起きている今だからこそ、舞台を通して何か表現できたらと思います。めちゃくちゃ楽しいですね」。アメリカ育ちで、数々のコンテストやバトルで受賞し、俳優としても活動しているJoey Beniは、出演者の中で最年少の20歳。前回のGQを「ずっとストリートダンスをやってきたけれど、違うジャンルの方々と初めて共演しました。皆さんのダンスは異次元。とにかく吸収して勉強して。文化や言葉の違いもあって、これが日本なのか!とも感じました。物語がある世界で、動きを通して感情や意味を伝えたいです」。シルク・ド・ソレイユの一員として海外に行き、昨年帰国した辻本は、師匠と慕う新上に「今、トモが必要だから」と声をかけられた。「ここまでのクオリティと人数の男性ダンサーと共演したことはありません。オールスターですよね。僕にとって好都合です。僕はコンテンポラリーダンスからストリートダンスから、色々なジャンルに手を出しているので、ライバルがいっぱい。負けません!」。頼もしい出演者達の言葉に笑顔で耳を傾けながら、新上はこう締めくくった。「このメンバーだから託せるし、自分も大きくならなければなりません。ダンサーとしても、みんなとの出会いに刺激を受けます。良い意味でバトルもしつつ、最終的には同じところを向いて圧倒的な世界を作りたい。想像を超える世界を味わっていただきたいです」。公演は6月10日(水)から14日(日)まで東京・EX THEATER ROPPONGにて。チケットぴあではインターネット先行先着を実施中、3月8日(日)まで受付。取材・文:高橋彩子
2015年03月02日様々なジャンルが交差するショー『THE SHOW INFECTED "CONNECTION"』に、スペシャルゲストとして河村隆一の出演が決定。構成・演出・振付の大澄賢也とは、河村がミュージカルに初挑戦し、大澄が出演および振付助手を務めた08年の『CHICAGO』以来の仲だ。THE SHOW INFECTED "CONNECTION"チケット情報「隆一くんは、歌うことにとても柔軟。『CHICAGO』の時も、『そんなに無防備でいいの?』とこちらが心配してしまうほどフラットに役と向き合っていました。歌の力は勿論、人間性も素晴らしいので、出演してもらおうとひらめいたんです」と大澄は語る。河村も「『CHICAGO』では何から何まで賢也さんに教わって。賢也さんのダンスは、柔らかくて色っぽくて、自分が歌で追究する表現に通じます。その賢也さんに呼んでいただいたので、やりますと即答しました」と言う。ショーは二部構成。一部では、現代からタイムスリップしてきた男性(中川晃教)と未来の女性(蓮水ゆうや)の出会いが描かれる。「一部で隆一くんに演じてもらう役はすべてを俯瞰する“神”。歌にも存在感にも成熟と説得力をもつ隆一くんが参加することで、シンガーで言うならアッキー(中川)や蓮水さんと、良いトライアングルができると思います。二部は、様々な組み合わせで、シンガーやダンサーとコラボしてもらいます」と大澄。河村のキャリアの中で、このショーは分岐点になるかもしれない。「ショービジネスの世界はお客様が来てくれなければ成り立たないので、“まずはこのライブハウスを、次はより大きな会館を一杯にしよう”とやってきました。でも次第に、数だけでは満たされなくなり、もっと技術を求めたり、譜面に忠実に歌うことを重視したり、あるいは、メロディーが多少壊れても語ることを意識したら感情が伝えられるんじゃないか……など、色々と冒険をしてきました。歌手として第何期かに入った今、このショーは新しいものを生み出す絶好のチャンスだと考えているんです」クラシックを皮切りに様々な音楽が綴られるこの舞台は、河村自身の音楽体験とも重なる。「父は指揮者のカラヤンが好きなクラシック愛好家で、母はビートルズ好き。ジャズを聴くようになったのは大人になってからですが、ポップスにもロックにもジャズ・フレーバーの曲は結構あるんですよね。20年前にイタリアを旅行した時には、テノール歌手アンドレア・ボチェッリのアルバムを聴いて発声に興味を抱き、最近は年1回、『ノーマイク・ノースピーカーズコンサート』を行っています。このショーに来てくださる方がどんな感動を持って帰るのか――芝居、ダンス、歌、ある1フレーズかもしれないし、さらに照明も臭いも汗もある。そうしたところから、新たなジャンルが生まれれば、と願っています」公演は3月19日(木)から東京・天王洲 銀河劇場にて。2月28日(土)午前10時より全キャストの未公開ビジュアルを組み合わせたCONNECTIONフォト付チケットを発売予定。取材・文:高橋彩子
2015年02月27日待望の再演を迎えるアンドリュー・ロイド=ウェバーのミュージカル『サンセット大通り』。大女優ノーマ役と脚本家の青年ジョー役を、ともに初役で演じるのは、濱田めぐみと柿澤勇人だ。ミュージカル『サンセット大通り』チケット情報昨年、『オペラ座の怪人』の続編である『ラブ・ネバー・ダイ』において、ヒロインのクリスティーヌを演じた濱田。「クリスティーヌとは世代が近かったですが、ノーマは私よりも随分と年上。女優として頂点を極め、落ちぶれたノーマを演じるのは挑戦ですが、これまで培ってきたものを駆使して臨みたいですね。女性の人生の旅路を客観的に見ていただくこともできるし、彼女のプライドや、すがるものができた時の心の高鳴りに、共感していただくこともできるのではないかと思います」そのノーマの屋敷に、柿澤演じるジョーが迷い込むことから、ドラマは始まる。「ジョーは、1幕も2幕も冒頭から登場してストーリーテラー的な役割を果たす一方、生き方が二転三転する。自分が大女優であることを信じて貫き通すノーマや彼女に人生を捧げる執事のマックスとは対照的で、難しいですね。とはいえ僕自身、俳優としての願望や理想を持ちつつ、出会う作品や人によって考えが変わったりもする。ジョーと自分の共通点を手がかりに、役に入っていきたいです」ふたりの前には、ロイド=ウェバーの難曲も立ちはだかる。「私がよく演じるもう一人の作曲家、ワイルドホーンさんの曲が中・短距離走的なのに対し、ロイド=ウェバーさんの作品は長距離マラソン的。全ての曲を理解した上で『ここにこれを持って来て……』と逆算し、フレーズを繋げるとドラマティックになります」と濱田は分析。初舞台がロイド=ウェバーの『ジーザス・クライスト=スーパースター』だった柿澤も「どのミュージカルでも音程なりリズムなりをきちんとはめるだけでも大変ですし、それをお芝居として演じないといけません。さらにロイド=ウェバー作品は、登場人物の心情を歌で伝えることが多いので、歌に説得力が求められます」と表情を引き締める。稽古場での自身について、“スロースターター”と口を揃えたふたり。「役をつかむまで時間がかかるんです。モチベーションは高いのですが、やればやるほど『無理かもしれない』となる(笑)。いつも、そこを通過してから上っていきます。めぐさんの足を引っ張らないようにしないと!」(柿澤)。「『ラブ・ネバー・ダイ』でも初日にぎりぎり間に合ったようなところがあって。それでも一度スイッチが入れば、役に“憑依”していきます。柿澤くんのジョーと呼吸を合わせて、良い関係性を作りたいですね」(濱田)。じっくりと作り上げられるノーマとジョーが楽しみだ。公演は7月4日(土)から20日(月・祝)まで東京・赤坂ACTシアター、7月31日(金)から8月2日(日)まで大阪・シアターBRAVA!にて。取材・文:高橋彩子
2015年02月27日個性的な構成や豪華出演者で話題の多い『THE SHOW INFECTED "CONNECTION"』。必見なのが、一流ダンサー達によるパフォーマンスだ。THE SHOW INFECTED “CONNECTION” チケット情報コンテンポラリー・ダンスを中心に多彩な活動を展開し、シルク・ド・ソレイユでも活躍した辻本知彦、世界中のコンテストやバトルで優勝し、オリジナルハウススタイルを確立したDANCE TEAM“GLASS HOPPER”のリーダーTATSUO、ニュースタイルにタットを取り入れたDANCE&VOCALユニット"KAMUI"のリーダーとしてメジャーデビューし、NYのダンスグループ”Transformerz”で踊った経験も持つTAKAYUKI。同世代で旧知の間柄だという3人。それぞれの目に、ほかのふたりがどう映るのか、教えてもらった。TATSUOのことを「身体のキレとバランスが素晴らしい」と紹介するのは、TAKAYUKI。「重心の低さや、『その体勢からそこに入るんだ?』と驚くような筋力があり、ステップの流れも、抑揚をつける構成力も、すごいです」。そのTATSUOを「僕がダンスを始めた頃から大会で優勝していて。とにかく巧くてカッコ良かった」と語るのは、辻本。「共演するようになって感じるのは、彼が進化し続けていること。『また巧くなるんだ!そういう巧さがあるんだ!?』と驚嘆します。僕のレッスンも受けに来てくれるんです」TAKAYUKIを「初めて観たのは約15年前」と振り返るのは、TATSUO。「コンテストで『それ、ストリートダンス?』っていう、明らかに他の人と違うスタイルで優勝したりして。発想がユニークだし、それを自分の身体で表現できる技術もセンスも持っています」。そのTAKAYUKIは辻本にとって「10年近く前、ダンススタジオでのパフォーマンスを観て、僕から声をかけた」相手。「生で見ても映像と同じくらい迫力がある人はなかなかいないんですが、彼はCGかと思う瞬間があって。空間を凝縮できるダンサーです」そして、辻本は、TAKAYUKIいわく「人間的にもダンスとしてもつかみどころがない」存在。「常に予想を裏切った動きをする。トリッキーで、でもバレエをやっていたからか身体の線がすごくきれい。不思議な魅力をもったダンサーです」。一方、TATSUOは辻本を「ひねくれ方にもセンスがある」と評する。「トモの踊りは何回も観ているけれど、あの踊りのために何を考えているか、その思想に興味があって。だから、彼のレッスンを受けるんです。自分にない選択肢や考え方を発見でき、しかも『いいよね』と賛同できる。刺激を受けますね」彼ら百戦錬磨の強者ダンサー3人が揃って共演するのは、今回が初めて。ファンも待望の夢の“競演”に、ぜひ立ち会いたい。公演は3月19日(木)から東京・天王洲 銀河劇場にて。チケットは通常指定席のほか、非売品グッズとキャストの写真がもらえるプレミアムシートも販売中。取材・文:高橋彩子
2015年02月20日アンドリュー・ロイド=ウェバー作曲のミュージカル『サンセット大通り』が再演される。2012年に初めて日本で上演された本作。今回は、往年の大女優ノーマ役を、初演に続いての安蘭けいと初役の濱田めぐみがWキャストで務め、脚本家の青年ジョー役を、平方元基と柿澤勇人が、ともに初挑戦で演じる。ミュージカル『サンセット大通り』チケット情報初演時、迫真の歌唱と演技で観客を圧倒し、菊田一夫演劇賞も受賞した安蘭。「賞をいただけたのは、作品の力と、鈴木裕美さんの緻密な演出のおかげです。ノーマは頂点まで上り詰め、落ちぶれて、でも栄光を忘れられずにいる大女優。私よりかなり上の年齢設定で、経験値で演じることができませんでしたし、声も深いところから出したかったので、苦労しました。それでいて人間として可愛いところもあり、演じ甲斐がありましたね」と振り返る。そのノーマの屋敷に迷い込み、彼女とただならぬ関係に陥るのが、ジョーだ。平方は「30歳をひとつの目標にしてきました。20代最後の年にこの作品に巡り合えたことに、運命を感じます。やや極端な話にはなっているけれど、売れたい、もっと上に行きたいと願うジョーの気持ちはよくわかる。田舎から上京し、必死でミュージカルの舞台に立っている自分と重ねていきたいです」と語った。楽曲の難しさについては「メロディの流れといい、音の飛び方といい、ロイド=ウェバー節がすごい。大好きな音楽ですが、歌いこなすのはやはり大変です。でも、だからこそ、『不思議だな』『何かが違うな』と、聴いている方の耳に残るのでしょうね」(安蘭)、「楽譜に音が詰め込まれているし、変拍子の連続。そこに乗れば最低限の及第点になるくらいパワーがある楽曲なので、平方が追いついていない印象は与えたくない。歌う僕の必死さと、曲の必死さをつなげたいと思います」(平方)と、口を揃える。昨年の『アリス・イン・ワンダーランド』で初共演したふたり。「初演での安蘭さんのノーマはさすがの輝きでした。縮こまらず、胸を借りたい」と平方が言い、安蘭が「どんと来い!(笑)平方君には良い意味で癖がある。それが舞台に表れればいいと思う」と応える一こまも。「ノーマ役は、年齢を重ねれば重ねるほど腑に落ちてくるはず。相手によっても変わるし、さらに掘り下げ、ブラッシュアップしたい」と深化を誓う安蘭と、「僕にとっては大きな戦い。鈴木裕美さんに助けていただき、『何故?』と自分に問い続けながら演じます」と意欲を見せる平方の『サンセット大通り』は、どのような煌めきを放つのだろうか?公演は7月4日(土)から20日(月・祝)まで東京・赤坂ACTシアター、7月31日(金)から8月2日(日)まで大阪・シアターBRAVA!にて。チケットぴあでは2月7日(土)午前11時よりインターネット先行先着「プリセール」を受付。取材・文:高橋彩子
2015年02月06日昨年、13年間在籍した宝塚歌劇団を惜しまれつつ引退した蓮水ゆうやが、『THE SHOW INFECTED “CONNECTION”』で、退団後初めて、ショーの舞台に立つ。『THE SHOW INFECTED “CONNECTION”』 チケット情報今回の出演者で、蓮水は紅一点。構成・演出・振付の大澄賢也は「男性が束になってかかっても、女性にかないません(笑)」としつつ「ひとつの役を演じる劇やミュージカルとはまた違い、色々なことをやっていただきます。宝塚を退団されたばかりということで、蓮水さんがこれまで培ってこられたものに加え、今後の可能性が見えるものを目指します。ショービズ界の他の女性が嫉妬するものにしたいですね」と語り、蓮水も「宝塚時代から、ひとつのジャンルやイメージにとどまらない舞台人でありたいと思っていました。宝塚では男役だったので、台本を読んで“こういう感情かな?”と思った上で、さらに男性だったらどうかを考えて演じてきましたが、昨年末に小劇場の舞台に立った時、女性を演じるのがとても楽しくて。今回、女性としてどのようにショーができるか、楽しみです」と目を輝かせた。ショーの第一部の舞台は未来。大澄によれば「未来では誰も喋らず、文字や記号ですべてのコミュニケーションが行われています。でも、蓮水さん演じる女性は物足りなさや虚しさを感じている。そこにアッキー(中川晃教)扮する男性がタイムスリップして来て、熱い言葉を投げかけ、彼女に葛藤が生まれます。ふたりの出会いを通して、言葉を直接的に発して逃げずに向き合う大切さを表現したい」。生身の人間が直接、言葉や思いを届けるのは、舞台芸術そのものに通じること。その重要性を共有した上で、第二部は、アステアやフォッシー、マイケル・ジャクソンに、現代のアレンジを施したステージへ。様々な状況を、演技と歌、そして時に踊りで、表現する蓮水は「人間の負の部分や病んだ心を表現するのは、難しいからこそやり甲斐があります。二部では、宝塚の経験も生かせたらと。例えばジャズは音楽として大好きで、フォッシーにも在籍時代から憧れていましたから」。大澄が蓮水の印象を「ナチュラル」と評すると、蓮水は「嬉しいです。宝塚での集大成を迎えた時に感じたのも、自然体でいることの大切さ。意識し過ぎると逆に動きが小さくなってしまうんです。今回、すごい方達ばかりでビビっていますが(笑)、肩の力を抜き、まっさらな気持ちで皆さんから刺激を受けたいです」とし、大澄も「スポーツでも何でも、一流の人ほど、外側の力は抜けていてコアな部分だけが強い。舞台でも最初はどんどん服を着込んでしまうものですが、ある時から、脱いでシンプルになるほうが、周りが見え、お客さんに伝わることに気づくんですよね」とうなずいた。ナチュラルにしなやかに作られるショーの成果に、期待がかかる。公演は3月19日(木)から22日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて。チケットは通常指定席のほか、非売品グッズと、好きなキャストの毎公演変わるソロ写真がもらえるプレミアムシートも販売中。取材・文:高橋彩子
2015年02月05日大澄賢也が構成・演出・振付を担当する『THE SHOW INFECTED “CONNECTION”』。大澄は「歌もダンスも楽しめるショーで、お客さんとの新たな"CONNECTION"を作りたい」と言う。そのためにも、音楽には敢えて、チャイコフスキーの『白鳥の湖』やマイケル・ジャクソンといったメジャー曲を選び、再構成する。『THE SHOW INFECTED “CONNECTION”』チケット情報「若い世代のダンスも、必ず流れがあって今に至っています。たとえば、マイケルの“Smooth Criminal”にはアステアの『バンドワゴン』が入っているし、“BAD”は『ウエスト・サイド物語』の変形版。ブロードウェイで最近上演された『ニュージーズ』にもジーン・ケリーの映画のアイデアが取り入れられていました。『あのスタイルは古い』と片付けるのではなく、リスペクトし、継承していくことってとても大事だと思う。今回は、ばらばらに見えるポイントをつないで、スタイルの違う歌とダンスで表現します」ダンスを体現するのは、大澄のほか、彼が見せたいと思う優れたメンバー6名。そのひとり、辻本知彦は、コンテンポラリーダンスからスタートし、2011年から3年間、シルクドソレイユ『Michael Jackson The Immortal World Tour』で140都市27か国を巡り計485公演に出演。その中で、ストリートダンスの可能性に気づいたという。「1万人のアリーナでは、手足を大きく伸ばしても可動範囲の限界が見えてしまう。それよりも、専門的には“固定点”と言いますが、マイム的な動きで観客の目線をひきつけ、驚かせることが効果的なんです。僕にとって、そのツアーでやったマイケルは勿論、フォッシーも、映像を見ては真似をしてきた人。今回は大澄さん達と共に、素敵に舞いたいですね」と語る。一方、大野幸人は近年、ダンサーとしてミュージカルにも多数出演。昨年はNYでフォッシー振付『ピピン』を観劇し、フォッシーの直弟子であるダイアナ・ローレンソンのクラスも受けたという。「ダイアナのクラスでは、フォッシーの基本となるステップを学んだ上で、もっと感じたままに表現しろと言われたのが印象的でした。大澄さんは日本におけるフォッシースタイルの第一人者でいらっしゃるので、色々教わりたいですし、積極的に見て盗んでいきたいです」と述べる。シンガーは、大澄が「ソウルがあり、歌をリズムとして歌える人」と絶大な信頼を寄せる中川晃教と、「紅一点でショーにヴァリエーションをもたらしてくれる」と期待する蓮水ゆうや。中川は「音楽とダンスが一体となった新しいジャンルに到達できたら」と意気込んだ。さらにスペシャルシンガーとして、現在全国ツアー中のLUNA SEAのアーティスト河村隆一の出演も決定している。ダンスと音楽、そして舞台と観客の、"CONNECTION"の可能性を追求するショーとなりそうだ。3月19日(木)から東京・天王洲 銀河劇場にて。チケットは通常指定席のほか、非売品グッズとキャストの写真がもらえるプレミアムシートも販売中。取材・文:高橋彩子
2015年01月28日大澄賢也が構成・演出・振付を手がけ、一流のシンガーとダンサーを揃えて贈るショー『THE SHOW INFECTED “CONNECTION”』が3月、上演される。THE SHOW INFECTED “CONNECTION”チケット情報「ダンサーにとっての言葉である踊りと、シンガーの言葉である歌がひとつに重なって、どのようにショーとして完成するか。その作り方を含めて、挑戦です」と語るのは、シンガーとしてショーの中軸を担う中川晃教。企画の発端は、大澄と中川の会話だったという。「僕が出演した『ピトレスク』を賢也さんが観に来てくれた時、楽屋で『賢也さん、ショーを作ったほうがいいよ』と言ったら、賢也さんも『ちょうどやりたいと思っていたんだよ。アッキーの声があれば作りたいショーができる』と言ってくれたんです。僕自身、ミュージカルコンサートで経験を積ませてもらっていますが、出演者それぞれが大ナンバーを歌って盛り上がるスペシャル感は素晴らしい。その魅力を保ちつつ、少し違ったショーもできないかと考えていたところでした」。今回の舞台は二部構成。一部では『白鳥の湖』の楽曲を様々なアプローチで歌い踊りながら男女のドラマを描き、二部ではフレッド・アステアやボブ・フォッシー、彼らの影響を受けたマイケル・ジャクソンなどの楽曲を、現代風のアレンジも加えながら綴っていく。「賢也さんから構成を聞いて、なるほど!と。僕達が育って来た音楽を遡ると、先人達が残したものに行き着きますよね。僕もポップスとクラシックを掛け合わせた『POPSSIC』というアルバムを出していて、クラシックはインスピレーションの源のひとつ。普遍的な名曲が、様々なリズムや身体と出会った時、想像しなかったものが浮かび上がるはずです。クラシック、ポップス、ロック、ジャズ……と様々なジャンルを辿りながら、新しい“CONNECTION”を作り、オリジナリティあるエンテインメントを築きたいですね」。来年、デビュー15周年。今年は節目に向けての大切な1年でもある。シンガーソングライターとしてキャリアをスタートさせ、ミュージカルや演劇に出合って飛躍を続けてきた中川は今、どのような思いでステージに臨んでいるのか。「最初はミュージカルも中川晃教として演じていた気がするけれど、ある時期から役を生きること、役と自分とのバランスをどう取るかが面白くなってきました。ステージに立った時、目の前の客席を“宇宙”だと感じることがよくあります。孤独であると同時に、お客さんが待ってくれていて、スタッフや共演者と共に目指す世界が存在する。今後も色々な舞台を経験し、表現の幅を広げていきたいです」。公演は3月19日(木)から22日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて。チケットの一般発売は1月24日(土)午前10時より。なおチケットぴあではインターネット先着先行「プリセール」を実施中、1月20日(火)午後11時59分まで受付。取材・文:高橋彩子
2015年01月16日人間離れした超絶的な動きで映画「マトリックス」やロボットを再現したかと思えば、日本の伝統芸能やダンス史に名を刻む舞踊家ロイ・フラーの世界も取り込む……。様々な工夫を凝らし、観る者を新鮮な驚きで満たすダンス・パフォーマー、蛯名健一(EBIKEN)が、2年ぶりの日本公演「EBIKEN The ENTERTAINMENT」を行う。EBIKEN The ENTERTAINMENT チケット情報蛯名といえば2001年、NYのアポロシアター「アマチュアナイト」で日本人初の年間総合チャンピオンとなり、2007年にはアポロシアターTV版「ショータイム・アット・ザ・アポロ」で7回連続優勝するなど、アメリカを拠点に目覚ましい活躍を続けて来た。そして昨年、ポール・ポッツやスーザン・ボイルを輩出した人気オーディション番組のアメリカ版「アメリカズ・ゴット・タレント(AGT)」で優勝。賞金100万ドルを獲得する快挙を成し遂げた。実は、身体で表現するパフォーミングアーティストが、AGTで優勝したのは、蛯名が初めて。「それまでAGTに出場したパフォーミングアーティストは、最初良くても見慣れると負けてしまっていました。音楽の場合、聴けば聴くほど良くなるけれど、同じエンタテインメントでも、視覚と聴覚ではベクトルが逆。だから僕は初回に身体的な技術の全てを投入してインパクトを残し、2回目以降は、番組から初回と同じものを求められても気にせず、演出に力点を置いて、雰囲気を変えていったんです」。ダンスは高校卒業後、独学で習得。身体が人より硬く、筋肉もさほどついていないという。とあるテレビ番組で身体能力を測ったところ、至って平凡な結果に。測定不可能なEBIKENパワーの秘密は、一体どこにあるのか!?「トリックですね(笑)。同じ動きができる人は他にもいますが、微妙な身体の向きやタイミング、音楽、シチュエーションなどで、派手さ・不思議さが出る。もっと力のある人が演じれば、より凄く見えるはずです」。アメリカン・ドリームの体現者に見えるが、本人は「まだ、これから」と表情を引き締める。そんな彼が夢見るのは、日本にカジノシティとシアターディストリクトを作ること。アメリカのシビアなショービズ界に身を置くからこそ、母国の課題や可能性に対する思いは強い。来たる日本公演のテーマは、とにかく観客を楽しませること。多彩な短編集を準備し、スマホのアプリを用いた観客参加の企画も設けるとか。頭脳派パフォーマーの究極の“トリック”に注目だ。公演は12月27日(土)・28日(日)に東京・六本木ブルーシアターにて。チケット発売中。取材・文:高橋彩子
2014年11月19日有村架純が、舞台『ジャンヌ・ダルク』で初舞台&初主演を果たす。中島かずき脚本、三宅純音楽、白井晃演出で、2010年に堀北真希が演じた舞台の2014年版だ。舞台『ジャンヌ・ダルク』チケット情報イギリスとの百年戦争でフランス軍を勝利に導きながら、19歳で火刑にされたジャンヌ。「女の子が男性に混じって闘う強さ、勇敢さ、逞しさ、責任感、正義感……。どこからそんな力が湧いてくるんだろう?と思います。私にそこまでの強さはないですが、ひとつのものを信じる、信念をもって生きるというのは、分かる気がするんです。私も覚悟をもってこの世界にいるつもりなので」と、有村は言う。中学3年生で女優を志し、17歳でデビュー。だが「この仕事をずっとやると、本当の意味で決意できたのは19歳の時」と振り返る。撮影のために共同生活をした女性カメラマンのひと言をきっかけに、自分を見つめ直し、不要なプライドを捨てることができたという。「もう以前の自分には戻りたくなくて、ある意味、開き直って20歳を迎えました。生まれ変わった自分を表現したいと考えたからこそ、『あまちゃん』という作品にも出会えたんだと思うんです。今も、役者として違うものをみつけたい、次に進みたいという気持ちが強い。『ジャンヌ・ダルク』の稽古場でも挫折は経験するでしょうが、昔よりポジティブにとらえることができそうです」。演出の白井は、そんな彼女に新しいジャンヌ像を重ねたのかもしれない。「初めてお会いした時、『目に意志を感じる』と言ってくださり、その場で『ジャンヌを』と。『目に静かなる強さを秘めていてほしい』というお手紙もいただきました。前へ前へと出るのではなく静かに燃えるのって、すごく難しい。どう表現できるか、どんな自分が待っているのか、わくわくしますね」。今年、その白井が演出した『9daysQueen~九日間の女王~』を観に行き、ジャンヌの先輩である主演の堀北から「本当に大変だから、頑張って」と励まされた。誰が言うよりも説得力があるその言葉を受けて「覚悟の上で、頑張りたい」と意気込む。シャルル7世を演じる東山紀之について「とても優しい方。ご自分に厳しくていらっしゃる印象ですが、私にも厳しく接してくださればと期待しています」と語る言葉からも、気丈さがうかがえる。今年は初声優、そしてこの初舞台と、初挑戦が続く。「停滞したくないんです。“初めて”は誰にでもあるものなので、初舞台だからと甘えることなく、私なりに全力で取り組みたいです」。『ジャンヌ・ダルク』は10月7日(火)から24日(金)まで東京・赤坂ACTシアター、11月15日(土)から18日(火)まで大阪・オリックス劇場、11月23日(日・祝)・24日(月・休)神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場 ホールにて上演。東京・神奈川公演はチケット発売中。大阪公演は7月28日(月)午前11時まで先行抽選プレリザーブを受付中。取材・文:高橋彩子
2014年07月25日(画像は高橋愛オフィシャルブログ「I am Ai」より)高橋愛が始球式!夏に向けて暑くなってくると、熱くなってくるのがスポーツ観戦です。目前に控えたワールドカップも見逃せませんが、日本には世界が認めたプロ野球があります。プロ野球ファンの中には芸能人もたくさんいるようで、元モーニング娘。の高橋愛さんの夫でタレントのあべこうじさんもそのひとり。「Y155愛の親善大使」に任命された2人は、25日に行われた横浜スタジアムで始球式を務めたのですが、注目したいのは高橋愛さんのユニフォーム姿です!オシャレ!ユニフォームはこう着る!高橋愛オフィシャルブログ「I am Ai」の5月25日付けの記事では、始球式の臨んだ彼女のユニフォーム姿の写真がアップされました。帽子を斜めにちょこんとのせて、黒の丈の短いトップスでおへそをちらっとのぞかせた彼女。それでも黒のジーンズでセクシー度は抑え、スポーティに仕上げています。その上にベイスターズのユニフォームシャツをアウター感覚で羽織るバランスは、さすがオシャレ上級者です。これからプロ野球はますます苛烈な試合展開となり、ヒートアップすること間違いなし。観戦をしに行くのなら、高橋愛さんをお手本に、オシャレなユニフォーム姿で応援に行ってみてはいかがでしょうか。【参考】・
2014年05月27日安蘭けいが、ジャズ史に残る歌姫ビリー・ホリデイを描いたレニー・ロバートソン作のソロミュージカル『レディ・デイ』に出演する。1986年にオフ・ブロードウェイで初演された作品で、レディ・デイと呼ばれたビリーが死亡する4か月前に行ったライブを再現したもの。観客はライブのオーディエンスに見立てられ、安蘭演じるビリーが歌い、MCとして自らの体験も語る。ソロミュージカル『レディ・デイ』チケット情報情感豊かな歌声と共に、奔放な男性遍歴、麻薬やアルコール依存など壮絶な人生で知られるビリー・ホリデイ。その代表曲のひとつ『奇妙な果実』は、彼女も経験した黒人差別の歌で、安蘭は初めて聞いた時、「こんなダークなジャズもあるのだな」と驚いたという。「私が自分自身の歌として歌うとしたら、理由というか、乗り越えなくてはならないものが多い。でも今回はビリーとして歌えるのでやりやすいです」。実在の人物を演じるにあたっては「かつては真似から入ることが多かったのですが、私の体を通してお客様はビリーをご覧になるわけだから、私らしさがないと意味がない。どれだけ、ビリーに共感できるところをみつけてお客様と共有できるか。その辺りを突き詰めていきたいです」と語る。「以前私が演じたエディット・ピアフもそうですが、ビリーはどんな境遇にあっても這い上がる強さやエネルギーをもった女性。それでいて脆さもあり、全てが歌に表れている。すごく素直なんですよね」。こう語る安蘭もまた、舞台では嘘がつけないタイプだ。「なんとなく歌ってしまうと歌詞が出てこないし、気持ちが伴わないまま台詞を言うと絶対に間違えたり噛んだりするんです。プロなのにと思われるかもしれないけれど、そこは自分の好きなところ。この作品でも、私がビリーになるという嘘はあるけれど、自分に嘘はない状態で演じたいと考えています」。宝塚歌劇団退団後5年目。波乱に富んだ役柄を多く演じてきた。「癖のある役柄は演じ甲斐があります。巡り合わせもあるでしょうが、もしかしたら私が呼んでいるのかもしれません」とほほ笑む。今年は3月に森新太郎演出によるヘンリック・イプセン作『幽霊』、そしてこの栗山民也演出『レディ・デイ』と、初タッグの演出家の舞台が続く。「いつも新しいことに挑戦したいと考えています。イプセンも初めてだし、『レディ・デイ』は初のひとり舞台。今年は越える山が多いですね。登る前の今は怯んでいますが、結局、こういうチャレンジが私にはすごく楽しいんです」。ソロミュージカル『レディ・デイ』は6月12日(木)から29日(日)まで東京・DDD AOYAMA CROSS THEATER、7月5日(土)・6日(日)に兵庫・宝塚バウホールにて。東京公演のチケット一般発売は3月1日(土)午前10時より。取材・文:高橋彩子
2014年02月27日(画像は高橋愛オフィシャルブログ「I am Ai」より)喜びいっぱいの報告元モーニング娘。で、現在も歌や芝居で活躍中の高橋愛さん。元モーニング娘。のファンだけでなく、その整った容姿と抜群のファッションセンスで、男女の垣根なく人気のあるタレントさんです。その彼女が自身のブログ「I am Ai」の12月21日付記事で、来年2月14日に結婚すると報告をしました。既に様々なメディアで取り上げられていますが、お相手はお笑い芸人のあべこうじさん。「この人しかいない!と思える人に出会うことが出来て、本当に幸せです。」と喜びいっぱいの記事がアップされています。カジュアル系からマダム系へ?ポップでカジュアルな私服は小柄な彼女にピッタリで、ただ可愛いだけじゃなくきりっとした顔立ちを引き立てるようなコーディネイトはさすがとしか言いようがありません。そんな彼女のファッションに変化が見られるような写真がアップされました。同ブログ12月18日付の記事には、H&MのロングスカートにUNIQLOのコートの私服が公開されています。いずれもカジュアルブランドではありますが大人っぽくまとめていて、黒のシャネルのバックがさらに彼女を上品にみせています。今までの路線とは一線を画すような、シックなコーディネイトはマダム風とも呼べそうです。変化するファッションに注目しつつ、来年の結婚報告に期待が持たれます。【参考リンク】▼高橋愛オフィシャルブログ「I am Ai」
2013年12月24日ミュージカル『アダムス・ファミリー』が来春、上演される。原作はアメリカの人気漫画で、1991年に映画化されるや、大ヒットを記録。そして2010年、ブロードウェイ・ミュージカルとなって話題を呼んだ。今回は、白井晃演出による日本版のお目見えだ。ミュージカル『アダムス・ファミリー』チケット情報ゴージャスかつユーモラスなおばけ一家の中でも、妻として母として、ひと際強いインパクトを放つ黒髪の美女モーティシアを演じるのが、真琴つばさ。「私の声は低くて独特で、デュエットをした時に男声とも女声とも合いづらいんです。でも今回は、この声が生かせそうで嬉しいですね。自己主張が強い印象もあるモーティシアですが、実はとてもクールで、しかも家族を深く愛している。共感します」と微笑む。『アダムス・ファミリー』の魅力は、一見ホラーテイスト満載かと思いきや、普遍的な家族の姿を温かく愉快に描くところにある。「他の人には奇妙に見えることも、彼らにとっては普通のこと。国によって慣習が違うのと一緒ですよね。『色々な家族がいるんだな』『家族っていいな』と感じていただけるのではないでしょうか」夫ゴメス役には、ドラマティックな演技で現代劇からミュージカルまで幅広く活躍する橋本さとし。長女ウェンズデー役は、瑞々しい歌声と愛らしさが光る昆夏美。このウェンズデーと恋に落ちる人間の男の子ルーカスに、D-BOYSの選抜音楽ユニットD☆DATEの柳下大。さらに、ルーカスの母親として、お笑い界の美女・友近が登場するとあって、母同士のドラマも見逃せそうにない。長男パグズリーには、オーディションで選ばれた玉沢威穏と菊池銀河。「今回は初めて共演する方ばかり。皆さん個性的なので、新鮮ですね。橋本さんがどんな演技をなさるか楽しみですし、稽古場では私も出たとこ勝負でカードを切っていきたいです。ポスター撮影時、娘役の昆さんとは喋り易かったのですが、息子役のお二人は緊張している様子だったので、娘・息子との仲をどう構築していけるかも課題です」と、早くも妻・母の顔がちらり!?昨年はドラマ「七人の敵がいる」でドラマ初主演を果たし、今年は舞台『DREAM LADIES』を初プロデュースするなど、進境著しい真琴。再来年には、舞台生活30年という節目を迎える。「今、世界がどんどん広がってきていると感じます。映像のお仕事での経験は、映像のイメージが強い今回の舞台にもプラスになるかもしれませんよね。日本版『アダムス・ファミリー』もぜひ、映画と比較したり共感したり、自由に楽しんでいただきたいですね」公演は4月7日(月)から20日(日)まで東京・青山劇場、5月4日(日・祝)・5日(月・祝)にKAAT 神奈川芸術劇場 ホール、4月26日(土)・27(日)に愛知県芸術劇場 大ホールにて。チケットぴあでは東京公演と神奈川公演のインターネット先行・いち早プレリザーブ、インターネット先行・プレリザーブを12月23日(月・祝)午前11時まで受付中。取材・文:高橋彩子
2013年12月20日メンバー全員が、名門音大卒業という確かな歌唱力と、身長180cm以上のルックスを備えるヴォーカルグループ“Le Velvets”。メジャーデビュー1周年を記念し、この夏、オーチャードホールで2日間の「1st Anniversary Live」を行う。Le Velvets チケット情報テノールの佐賀龍彦、佐藤隆紀、日野真一郎、バリトンの黒川拓哉、宮原浩暢からなるLe Velvets。グループ名は黒川いわく「光の当たり方次第で色々な表情を出すベルベットに、僕ら5人とスタッフ、ファンの方々を含める意味で英語の複数形の“s”をつけ、みんながひとつという思いを込めてフランス語の単数の定冠詞“Le”をつけたもの」。クラシック、ロック、ポップス、 ジャズ、民謡など、様々な音楽を、彼ら流に歌いこなす。各メンバーのバックグラウンドも多彩だ。ミュージカル俳優になるべく歌と踊りを学び、仲代達矢主宰の無名塾でも研鑽を積んだ佐賀。声楽とどちらで音大を受験するか迷った程の腕前をもつピアノのほか、吹奏楽部ではサックスを吹くなど、音楽経験豊かな日野。かつて水泳選手を目指し、学生時代には日本ランキングの上位に入っていたというスポーツマンの宮原。中学時代、合唱部での練習を機に歌の魅力に開眼して声楽を志しただけあって「ソロもいいですが、メンバーの声が合わさると『あ、そこ、そこ!』と思います」と微笑む黒川。高校時代、剣道部から合唱部に引き抜かれ、先生に声を褒められた翌日には音大を目指し始めた、自称「声マニア」の佐藤。4年前にオーディションで選ばれて以来、ヴォーカルのほか、舞台姿を意識した筋トレやダンスレッスン、国際的な活動も視野に入れての英語レッスンなど、地道に修業を重ねて来た。「スタートは路上ライブだったのですが、その時の第一号のお客さんが今もいらっしゃるので、みんなで一緒に歩んでいる感覚。さらに期待に応えたい」と言う黒川に、「既にCDなどで聴いていただいている方にも、ぜひ今回、生の歌声の魅力を味わってほしい」と佐藤。「有名な曲の旋律には耳馴染みがある。僕達のフィルターを通すことで、『あの曲がこうなったんだ!』と新鮮に感じていただけたら」と宮原が意気込めば、「ダンスのステップやフォーメーションも、歌のアクセントとして楽しんでいただきたい」と日野がうなずき、「日本にあまりないような、ショー的な舞台をご堪能いただけます」と佐賀が請け合う。五者五様に、爽やかでひたむきな彼ら。節目のコンサートで、どんなステージを繰り広げてくれるだろうか。公演は8月31日(土)・9月1日(日)、東京・渋谷のオーチャードホールにて。チケット発売中。取材・文:高橋彩子
2013年06月21日当代随一の人気と実力を誇る落語家・立川志の輔。中でも、東京・PARCO劇場で毎年のように行われている『志の輔らくご in PARCO』は毎回チケットが完売する人気公演だ。その舞台の2006年から2012年までに行われた11演目を収録したDVD&ブルーレイBOXが2月15日(金)に発売されることとなった。新作に古典にと才能を発揮し、落語界を牽引している志の輔にインタビューした。立川志の輔公演情報志の輔が初めてPARCO劇場で落語を行ったのは1996年。それから今年で18年目となった。「こんなに続くなんて全然思ってませんでしたよ。今でこそ『PARCOプロデュース』なんて言ってもらってるけど、最初は劇場が空いている日を3日間借りただけでしたから。私が富山から東京へ出てきて、最初に演劇というものを見たのが西武劇場、今のPARCO劇場だったんです。その時上演していたのは、山口果林・仲代達矢主演の安部公房作『友達』。東京のど真ん中の渋谷で、右も左もわからない田舎者は“ああ、こんな良いものを毎晩上演しているのが東京なのか”と、えらく感激してね」と当時を振り返る。今や、常に超満員の『志の輔らくご in PARCO』だが、その人気の理由を尋ねると「例えば、演劇だと何十人もの役者で演じられるのに対し、落語だと出ているのはひとりだけ。お客さまは自分の頭の中で、あれこれ想像しなければいけないわけですね。そこが演劇とは鑑賞のしかたが違うところなんです。私ひとりで何人分かの役者の仕事をやって、あとはお客さまに“お願いします”って頼っている状態。観に来たお客さまは、自分でお金払って、自分で仕事して帰っていくわけで、申し訳ないくらい(笑)。だけど観終わったあと、落語特有の脳の疲れ方があるんですよ。私の仕事は、それが快感になるように材料を作ること。PARCO劇場にいらした皆さんは、私がどうこうではなく、落語というものを究極のエンターテインメントだと感じていただけているんじゃないかと思う。ひとりしかいないのに“なんだかものすごいものを観た気がする”くらいの快感を、お客さまの頭の中に残すことができたら至上の喜びです」と語る。長年続けてきた公演が映像として形になることについては「一ヶ月公演を8年というのは振り返ってもすごいことですからねえ。ひとつ、まとまったものができたのは嬉しいです」と志の輔。「多くの素晴らしい演劇を生んできたPARCO劇場が、1年のスタートを落語にあててくれているというのは、落語にとっても非常に良いことでしょうし、ここで普通の落語会じゃないものを続けてきたことへのご褒美なのかなとは思っています」。なお、志の輔のインタビュー全容はチケットぴあ『今週のこの人』のコーナーにて掲載。取材:高橋彩子
2013年02月06日リアルタイム・シンガーソングライター・高橋優が、自身最大規模となる14都市16公演のホール・ツアー「高橋優秋の全国ツアー~高橋は雨男?晴れ男?はっきりさせようじゃないか2012」のツアー中だ。ツアー初日は10月12日、神奈川県民ホール。楽曲制作のプロデューサーでもある浅田信一(G)の率いるバンドをバックに、高橋は曲ごとにギターを取り替えながら力強い歌声を聴かせる。コンディションはばっちり良好だ。高橋優 ライブ情報「一番恐れていたことが起きました。気象庁発表によると、本日の天気は“曇り”です(笑)」ツアータイトルに引っ掛けたユーモラスなMCで笑いを誘い、「でもステージ上は晴れですから。みなさんの心の中までも晴れ渡るように歌います」と呼びかける高橋。観客は時に座ってじっくりと、時に総立ちになって拳を振り上げ、徐々に一体感がホール全体を包み込んでゆく。セットリストは高橋優のベスト選曲とも言えるもので、出来たてほやほやの新曲も聴ける。MCも饒舌で、高橋は日常で感じる様々なエピソードを交えて、「同じ時代に生きていること」の喜びを観客に向けて何度も語りかけた。「僕にとっての幸せは、ここにいる人と同じ時代に生まれてよかったということです」この日のライブを体験した人は、必ずもう一度ライブを見たいと思っただろう。同時代を生きる人々と共に歩み、等身大の歌を作り続けるリアルタイム・シンガーソングライター。このツアーを通して高橋優は、さらに大きく成長するに違いない。本ツアーは、12月11日(火)・12日(水)中野サンプラザホールまで全16公演が行われる。また、本公演のライブレポートをチケットぴあwebサイトで公開中。取材・文:宮本英夫
2012年10月26日12月、「坂東玉三郎特別公演」として、泉鏡花作『日本橋』が上演される。日本橋の花柳界を舞台に、お孝と清葉のふたりの芸者、医学士・葛木、お孝の馴染みの男・伝吾それぞれの姿を描いた名作だ。今回、玉三郎は斎藤雅文と共同で演出を手がけ、また、1987年の新派公演以来25年ぶりにお孝を演じる。玉三郎に本作への思いを訊いた。坂東玉三郎特別公演「日本橋」 チケット情報「『日本橋』は、ずっと上演したいと思いながら、なかなかできずにいました。というのもこの作品は、お孝、清葉、葛木、伝吾を演じる俳優が4人、きちんと揃わないと出来ないと思うのです。今回は経験のある方々が集まってくださいました」と玉三郎。奔放で艶やかなお孝と対照的に奥ゆかしく誠実な清葉を演じるのは、高橋惠子。また、清葉に思いを寄せながらもかなわず、やがてお孝と恋仲になる葛木役に、松田悟志。身を持ち崩しながらお孝に執着し続け、最後はお孝に殺される伝吾役には、永島敏行が扮する。「鏡花にとって、理想的な女性である清葉と、全てを持ち合わせた女性であるお孝は、ふたりでひとりの女性なのだと思います。醜いドロドロとした感情が制御されているのが清葉、全ての感情を持ち合わせているのがお孝。同じように、葛木と伝吾も、ふたりでひとりの男性です。鏡花はそうやって、別々のキャラクターとして表現しながら、結局はひとつの魂の境地を書いています」。独自の美学に貫かれた『日本橋』の世界。「花柳物であるとか男女の物語であるといったことより何より、その魂の在り方を観ていただきたいのです」との言葉に、作品への深い思いがうかがえる。「鏡花は芸術家と医者を尊敬していました。清葉は笛の達人ですから芸術家、葛木は医学士です。彼らは純粋な魂を持っていますが、お孝は人間の煩悩に翻弄されます。葛木も一瞬、お孝によって煩悩の世界へ引き入れられるけれども、出家することで断ち切って行くわけです。そして葛木と清葉は生き残ります。一方、お孝は、伝吾を殺し、自分自身をも殺すことで、伝吾と自分の煩悩を退治して魂を浄化して行きます。そして、清葉の笛の音、つまり芸術の手引きによって、あの世へと旅立つのです」。こうした鏡花ならではの境地が今回、日生劇場という空間で新たに表現されるのも見どころだ。「一石橋での朧月や、雪の情景など、非常に陰影の深いものになると思います。美術には、淡彩を基調とする、ある意味で抽象的な美術も考えています。幻想的な世界を、ぜひ皆さんに楽しんでいただきたいですね」。公演は12月3日(月)から26日(水)まで東京・日生劇場にて上演される。チケットは9月20日(木)より一般発売開始。 なおチケットぴあでは観劇とディナーがセットになった「ぴあ12月年忘れスペシャルディナーセット」のチケットをWEB限定で発売する。取材・文:高橋彩子
2012年09月18日劇作家・井上ひさしの最後の作品『組曲虐殺』が今冬再演される。2009年に栗山民也演出で初演されたこの作品は、音楽を全編、小曽根真の書き下ろし楽曲でつづる“音楽評伝劇”だ。今回、初演と同じスタッフ・キャストで、井上作品を連続上演してきた“井上ひさし生誕77フェスティバル2012”の掉尾を飾る。主演の井上芳雄に本作への思いを訊いた。プロレタリア作家の小林多喜二が、29歳の若さで特高警察に虐殺されるまでの2年9か月を描いた本作。多喜二を演じる井上は、「自分にとって『組曲虐殺』は、井上ひさし先生の思い出と共に、忘れられない宝物。絶対に再演したいと願っていました。初演メンバーが揃ったのも、作品の力に拠るところが大きいのでは」と話す。壮絶な最期で知られる多喜二だけに「演じる前は漠然と、激しさや痛みのようなものをイメージしていた」という井上。「でも井上先生の台本には、朗らかで、芸術に造詣が深く、人々に愛される人物が描かれていて、新鮮でした」。劇中では、恋人の瀧子や姉チマ、 多喜二の活動を支援するふじ子はもちろん、多喜二をマークしている特高刑事ですら、気がつけば彼に温かい眼差しを向けてしまう。「実際、魅力的な人だったんでしょうね。周囲からたくさんの愛情を受けていたからこそ、自分もそれを、虐げられた人々に返すことができたんじゃないでしょうか。社会のシステムを憎んでも、人間そのものは決して憎まない人だった気がします」。『組曲虐殺』は、井上にとって、表現面でもひとつの転機となった作品だ。「栗山さんからは『生死の瀬戸際に身を置くプロレアタリア作家の覚悟に迫れ!』と叱咤激励され続けて。演じる上で感情をどこまでどう出すのか、新しい挑戦でした。小曽根さんには『これまでと違う歌い方を試してみようよ』と、即興的な歌唱を教えていただきましたね。その後、別の作品を演じても、『今の、多喜二だったよね』と言われてしまうほど(笑)。俳優として大きな体験でした」。今は、井上ひさしの遺した言葉を伝えることが、自身の使命だと感じているという。「先生が書いてくださった言葉は、自分のちょっとした工夫など歯が立たないほど、すごい力をもっている。再演でも、まっすぐに体ごと、ぶつかろうと思っています。『後に続く者を信じて走れ』という多喜二の歌詞があるのですが、僕も、若い世代を含め多くの人に、彼の思いや生き様を伝えるつもりで演じたいです」。公演は12月7日(金)から30日(日)まで東京・天王洲銀河劇場にて上演。チケットは9月29日(土)より一般発売開始。なお、チケットぴあでは9月13日(木)11時までインターネット先行抽選・プレリザーブを受付中。東京公演の後、来年1月に各地を巡演。取材・文:高橋彩子
2012年09月12日ミュージカル『ルドルフザ・ラスト・キス』が7月5日、東京・帝国劇場で開幕した。本作は、『ジキル&ハイド』や『スカーレット・ピンパーネル』で知られる作曲家フランク・ワイルドホーンが音楽を手がけたミュージカルだ。日本では2008年に宮本亜門演出・井上芳雄主演で初演。今回はタイトルロールを井上が続投し、英国人演出家デヴィッド・ルヴォーが、2009年にウィーンで自身が演出したバージョンをもとに新たな舞台を生み出した。『ルドルフザ・ラスト・キス』チケット情報物語の舞台は19世紀末のオーストリア。自由と平等を希求する皇太子ルドルフは、父である皇帝フランツ・ヨーゼフ(村井国夫)との思想的対立を深め、妻ステファニー(吉沢梨絵)との家庭生活も冷えきっている。一方、男爵令嬢マリー・ヴェッツェラ(和音美桜)は縁談に見向きもせず、新聞に体制批判の記事を書く謎の記者ユリウス・フェリックスを崇拝している。そんなルドルフとマリーは舞踏会で、ラリッシュ(一路真輝)の仲介により知り合う。やがて記者ユリウスの正体がルドルフだとわかり、ふたりは深く愛し合うようになるが、その仲は皇帝やステファニー、首相ターフェ(坂元健児)らの知るところとなる。7月4日に行われた通し稽古では、帝国の威信を守ろうとする皇帝、結婚制度を支えとするステファニー、女の武器を謳い上げるラリッシュ、保守派の政治を貫くターフェなど、立場の違う役柄が生き生きと魅力的に演じられ、それぞれに共感をおぼえた。しかし、ルドルフとマリーはこうした人々が信じる現実世界のルールと秩序に、敢然と闘いを挑む。ふたりはただの恋人同士ではなく、既成概念や価値観から自由になろうとする、同志のような間柄なのだ。闘いの果てに、ルドルフとマリーが死出の旅路へ向かう『世界を手にして』の場面は、文楽や歌舞伎の『曾根崎心中』を想起させる美しさで、その後の哀しくロマンティックなエンディングを際立たせた。初日直前の囲み会見では「ルヴォーさんの高い要求に応えて、みんなで高みを目指したい。究極の愛を確かめてほしい」と井上がひきしまった表情を見せれば、「スタッフさんと私たちの力にお客様の力が加わって、化学反応が起こせたら」と和音もうなずく。一路は「大人っぽい素敵なミュージカル。この場に身を置けることが嬉しいです」とにこやかに話し、村井は「タイトでスリリングな舞台。(みんなが)ひとつになった時、ものすごい力を発揮するはず」とかつてないほどハードな舞台への意欲を表した。実際、幾多の動き・転換を重ね、多層的な空間のうねりを作るルヴォー・マジックは、見事なスタッフ&キャストワークなくしては実現しない。ワイルドホーンのメロディーが甘く流麗だからこそ、キャストは生の声と肉体で、役をリアルに“生き”なければならない。この点、空間に突き刺さる井上の絶唱、獣が対峙するような和音と坂元の迫真のデュエットなど印象深い場面は多かった。赤が鮮烈に映える美術と共に、情熱、生と死、愛と官能のドラマが鼓動し躍動していた。公演は7月29日(日)まで。取材・文:高橋彩子
2012年07月06日安蘭けい主演のミュージカル『サンセット大通り』が6月16日、東京・赤坂ACTシアターで日本初演の幕を開けた。本作は『オペラ座の怪人』や『キャッツ』で有名な作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーが、1950年の同名映画をミュージカル化したもので、1995年のトニー賞で作品賞、作詞・作曲賞、主演女優賞など7部門を受賞した大作だ。ミュージカル『サンセット大通り』チケット情報無声映画時代の大女優ノーマ(安蘭けい)は、トーキーの到来とともに忘れ去られ、執事のマックス(鈴木綜馬)と、古びた豪邸で暮らしている。そんなある日、売れない脚本家ジョー(田代万里生)が敷地内に偶然迷い込むと、ノーマ自らが銀幕への復帰を期して書いた『サロメ』のシナリオの推敲を依頼される。やがて、抜き差しならない関係に陥るノーマとジョー。一方でジョーは、映画会社で働く若い女性ベティ(彩吹真央)に惹かれ始める。ノーマ、ジョー、ベティ、マックスそれぞれの思いと思惑が錯綜し、物語は思いもよらぬ方向へと転がっていく。この作品では、ふたつの世界が描かれている。ひとつは時が止まったような夢の世界。もうひとつは、めまぐるしい現実の世界。前者にいるのがノーマだ。安蘭は貫禄の演技の中に、弱さや悲哀、時にはコミカルさも滲ませ、役柄に新たな命を吹き込んだ。彼女に付き従うマックスを演じる鈴木の、情愛に満ちた歌声も忘れ難い。一方、後者の世界を担うのが、彩吹扮するベティら若者たち。貧しくとも希望に胸膨らませて生きる彼らの姿は、瑞々しい音楽や軽快なダンスで表現される。衣裳や照明も、前者を陰影に富む重厚な色合いで、後者を明るくビビッドな色彩で描き分け、対比を浮き彫りにした。舞台中央に盆で回転する階段を設えた装置は一見シンプルながら、角度や光によって表情を鮮やかに変化させ、夢と現実の世界をつないだ。そして、ふたつの世界を行き来するのが、ジョーだ。田代が、成功を求めてさまよう男の焦燥感と欲望を歌うナンバー『Sunset Boulevard』は、激烈な勢いで劇中を駆け巡った。ノーマが映画の撮影所で、若い俳優たちに取り囲まれ賞賛される場面では、乖離していた世界が束の間結びつく。ここでのナンバー『As If We Never Said Goodbye』は煌めくような美しさだ。しかしなんと言っても圧巻は、大女優の生き様が凝縮するラストだろう。安蘭の声には凄みが宿り、鬼気迫る表情は神々しくすらあった。ロイド=ウェバーの雄弁で色彩豊かな楽曲と実力派俳優たちの演技が描き出す、栄華と凋落、欲望と破滅のドラマ。カーテンコールは幾度も続き、久しく待ち望まれていた日本初演が華やかに祝われた。演出は鈴木裕美。公演は同所にて7月1日(日)まで上演。その後7月6日(金)から8日(日)まで大阪・イオン化粧品シアターBRAVA!にて開催する。チケットはいずれも発売中。取材・文:高橋彩子
2012年06月18日