LITALICO初の書籍が発売!Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)発達ナビの運営会社である株式会社LITALICOの代表、長谷川敦弥の新著が発売されました。SB新書から、『発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。』というタイトルでの発売です。LITALICOがこれまで学習支援や就労支援のサービスの中で出会ってきた方々のエピソードを中心に、それぞれ違った個性を持った方たちが、どのように自分にあった学び方、働き方を見つけていったのかをご紹介するとともに、多様な個性が活かされる「障害のない社会」とはどのような社会なのか、私たちのビジョンや想いを記した書籍です。発達ナビ編集長である私も、この書籍の構成・編集に携わりました。これまで、発達が気になる子どもたちの学習支援教室や就労支援センターの現場スタッフとして、また自分自身の特性に悩んだ日々も思い出しながら、同じようにご自身やお子さんの将来について悩める方々に届けられるようにと編集させていただきました。『発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。』新著の構成と見所は?以下では、書籍の構成とともに、各章の見所をご紹介します。『発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。 』第1章:ADHDはぼくの強み第2章:子どもが一番の先生だ!第3章:子どもの心に火をつける第4章:「多様性」を力に変えていく働き方第5章:障害のない社会をつくる-------------第1章は、LITALICO代表である長谷川敦弥自身の人生のエピソードです。ADHDの特性を強く持つゆえに、周囲との関わりに悩んだ幼少期の学校生活。人生の転機となる焼肉屋の店長夫妻との出会い。上京後、自身のADHD的特性を活かして働き、LITALICOを運営するに至るまでの歩みをお伝えします。第2章は、発達支援の教室「LITALICOジュニア」で出会った子どもたちのエピソードです。「困った子だ」「問題児だ」と言われているその子自身が、実は一番困っている。お子さんの特性を理解し、その子が過ごしやすい環境づくりをしたり、その子ならではの学習方法を探して成功体験を積み重ねることの重要性などについてお話します。第3章は、IT×ものづくり教室「LITALICOワンダー」で出会った子どもたちのエピソードです。学校で決められた「枠」からはみ出る子どもたちが、自分の「好き」や「得意」を伸ばしていくことで、苦手を克服したり、新たな進路を切り開いていったエピソードをご紹介します。第4章は、働くことに障害のある方を支援する「LITALICOワークス」の利用者さんのエピソードです。困難と直面しながらも自分らしい働き方を諦めずに探し続け、一人一人違う自分だけの「天職」を掴み取るまでの過程をご紹介します。ご自分の特性や働き方に悩まれている大人の発達障害当事者の方だけでなく、お子さんの将来について悩まれている保護者の方の姿を思いながら、執筆・編集いたしました。第5章は、こうした取り組みを続ける中でLITALICOが大切にしている思い、発達ナビなどのメディア発信や、研究・政策提言活動を通して、「障害のない社会」をどのように実現していきたいかを記しました。発達ナビ読者のみなさまにも、ぜひお読みいただきたい内容となっております。書店やネットショップで手に取っていただけると幸いです。『発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。』立ち読みページ『発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。』
2016年12月12日ゆとり教育を受けたとされる世代は、現在29〜12歳の人たちと言われています。その世代の子どもを持つ親たちは、学校で教えなくなった勉強を家庭や塾で補ったりした人も多いようです。また、いくらゆとり教育といっても逃れられないのが大学受験。多くの壁にぶつかることになったのは、子どもたちのほうかもしれません。Q.ゆとり教育、結果的に良かったと思う?1.良かったと思う 4.3%2.どちらかと言えば良かったと思う 6.6%3.どちらかと言えば良くなかったと思う 33.6%4.良くなかったと思う 41.2%5.わからない・どちらとも言えない 14.3%「良くなかった」と「どちらかと言えば良くなかったと思う」を合計すると74.8%にもなり、多くの人がゆとり教育に否定的な意見のようです。みなさんがどのような理由で、ゆとり教育に反対しているのか聞いてみましょう。■ゆとり教育のしわ寄せは子どもたちへ大人たちが決めた「ゆとり教育」ですが、その教育を受けるのは子どもたち。そして、苦労するのももちろん子どもたちということになります。教育の格差が生まれたり、その格差によって将来、就職ができないなどにつながることもあるかもしれません。「ゆとり世代の人と一緒に働くとイライラする。そんな人いませんか?」(神奈川県 40代女性)「そこそこのレベル以上の高校や大学に進学したい場合、通用しませんから、どこかでゆとりにされた部分を自分で補っていかなくてはなりません。特に大学受験での大きな苦労はまぬがれません。国の政策には疑問ばかりです」(神奈川県 40代女性)「疑問だらけのゆとり教育。いちばん苦労するのはそのゆとり教育を受けた子どもたち」(北海道 40代女性)「塾や習い事など学校以外の活動に力をそそげる家庭と、生活だけで精一杯な家庭により子どもの格差が広がったと思う。ゆとり教育の場合、貧困層の家庭では十分な学習ができない。家庭環境による子どもの格差を生んだ元凶だ思う」(神奈川県 40代女性)■ゆとりも詰め込みもどちらにもデメリットはあるゆとり教育が良くなかったとして、ではそれ以前の詰め込み教育が良かったのかというとそれもまた疑問。両方経験した今、何が子どもたちにとっていいことなのかを改めて考えるときなのかもしれません。「いいこともあればそうでないことも。考え方で変わると思うのでどちらでもありません」(三重県 30代女性)「ゆとりはいいと思うけど、なぜゆとりにするのかをもっと周知するべきじゃないのかと思った。ただの突き放しとしか感じられない」(島根県 30代女性)「『詰め込み』と『ゆとり』、どちらも良い点と悪い点があるとわかったのだから、それを生かせるような選択をしたい。偏らずに選択していくことで、個性を生かして他を認めることを学んでいってほしい」(神奈川県 50代女性)■どんな時代も生き抜けるたくましさを身につけるもちろん学校教育だけが子どもの成長に影響を与えるものではありません。時代の流れが早い現代だからこそ、どんな時代でも、柔軟にたくましく対応できる大人になってほしいというのが、今どきの親の共通した思いなのかもしれません。「長男はゆとり始まり世代。次女はゆとり終わり世代。授業内容は激変したように感じますが、学力低下やコミュニケーション能力低下は学校教育だけの責任ではないと感じています。時代の変化に対応できるたくましい子どもに育ってほしいです」(鹿児島県 40代女性)Q.ゆとり教育、結果的に良かったと思う?アンケート回答数:5148件 ウーマンエキサイト×まちcomi調べ
2016年12月09日知能指数とは出典 : 知能指数とは、人の知能の基準を数値化したものであり、IQ(intelligence quotientの略)と言うこともあります。知能指数は、知能検査と呼ばれる検査によって計ることができます。小学校入学後のお子さんが受検する場合が多いですが、知能検査の種類によっては2歳から受検することができます。また検査結果は、一人ひとりに合った支援や学習指導の方向性を検討するヒントとして使われます。知能指数の値として、現在は偏差IQというものが使われています。偏差IQは「同年齢の集団においてどの程度の発達レベルなのか」を把握するために、年齢別の平均値を基準として知能指数を算出したものです。以前は精神年齢(知的発達を示す年齢)/ 生活年齢(実年齢)×100という数式が使われていました。しかし年齢が高くなるにつれて値が低く算出されるという問題が発見されたため、単純な計算式で知能指数を算出することはなくなりました。参考:櫻井茂男/著『たのしく学べる発達心理学』2010年 有斐閣/刊知能指数を調べる目的は?出典 : 知能指数を調べる目的は、以下の3点です。1. 適切な学習指導や支援を受ける際のヒントを知る2. 疾患や障害の有無を鑑別をするヒントを得る3. 知能の遅れがあるかどうかを知る知能指数の結果は、療育手帳を取得する際や、特別支援学校での教育を受ける際の判断材料の一つとして使われています。※また自閉症スペクトラム障害やADHDを見分ける際や知的障害の指標にも、知能指数を用います。※しかし、知能指数だけ疾患や障害の有無を判断することはありません。医師の診断を受ける際には、知能検査の結果だけでなく、直接の問診や行動観察、その他の検査結果などが参考にされます。そうして見えてきた個人の特性や困難状況を総合的に判断して、疾患・障害の診断が下されたり、支援、治療の判断がなされるのです。参考:願興寺礼子・吉住隆弘/著『心理検査の実施の初歩』 2011 年ナカニシヤ出版/刊知能指数の値は、どのように評価されるの?出典 : 知能指数(IQ)は、知能を計るものさしの一つとして広く使用され、一般的な言葉としても受け入れられています。一方で、一口に「知能指数」と言っても、その数値に対する評価基準はさまざまです。ここでは『発達障害事典』が定める知能指数の分類、WHOが定める知的障害の基準、厚生労働省が定める障害の程度・判定基準をご紹介します。『発達障害事典』(2011年・明石書店刊)によると、IQの値による知能評価の分類は以下のような基準になっています。・130以上きわめて優秀・120~129優秀・110~119平均の上・90~109平均・80~89平均の下・70~79境界線級/ ボーダーライン・70未満知的障害世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では、知的障害の程度基準を、以下のように定義しています。・50~69軽度知的障害・35~49中度知的障害・20~34重度知的障害・20未満最重度知的障害厚生労働省は、知的障害の程度や判定基準について、以下のように定義しています。ただし、厚生労働省の基準では、知能指数だけでなく日常生活能力の水準も加味して、知的障害の程度を判断するとしています。◇知的障害の程度の判定に、基準となる知能指数の範囲・51~70軽度知的障害・36~50中度知的障害・21~35重度知的障害・20以下最重度知的障害◇障害の程度及び判定基準: 重度(A)とそれ以外(B)に区分重度(A)の基準① 知能指数が概ね35以下であって、次のいずれかに該当する者・食事、着脱衣、排便及び洗面等日常生活の介助を必要とする。・異食、興奮などの問題行動を有する。② 知能指数が概ね50以下であって、盲、ろうあ、肢体不自由等を有する者それ以外(B)の基準重度(A)のもの以外◇療育手帳取得の際に、基準となる知能指数の値標準化された知的検査によって測定された知能指数(IQ)が75以下であること。(70以下に規定している自治体もある)知能指数が高い=頭が良い?―心理学からみる「知能」の広がり出典 : 一般的に、「IQが高い・低い」というような言葉はよく使われますが、それでは知能指数(IQ)が高い=知能が高い・頭が良いということになるのでしょうか。心理学の視点から「知能」というものを見てみると、一概にそうとは言いきれない広がりを持っています。ここでは、知能の様々な定義のうち、いくつか例をご紹介します。・「目的別に行動し、合理的に思考し、効率的に環境を処理する個人の総体的能力」(アメリカの心理学者・デイヴィッド・ウェクスラーによる定義)・「言語、数、空間、記憶、推論、語の流暢さ、知覚」(アメリカの心理学者・サーストンによる定義)・「言語的知能、論理的数学的知能、空間的知能、音楽的知能、身体運動的知能、対人低知能、博物的知能、内省的知能」(アメリカの心理学者・ガードナーによる定義)既存の知能検査で測定できるのは、主に言語的機能や論理数学的機能と定義される能力です。しかし、上記で示した心理学的アプローチから「知能」を捉えると、知能検査で計ることができる能力は知能の一部でしかないとも考えられます。つまり知能指数が高いと「頭が良い」とは単純に言い切ることはできず、「言語的・論理数学的機能において優れている」ということなのです。逆に知能指数の値が低いからといって、知能指数で測定できる能力以外の領域で、高い能力を発揮する子どももいます。知能指数の値だけに振り回されることなく、知能指数を参考に、一人ひとり得意分野・不得意分野を上手に把握していくことが大切です。参考:櫻井茂男/著『たのしく学べる発達心理学』2010年 有斐閣/刊知能指数における「境界領域」とは出典 : 「境界領域」とは知能指数が70~79の領域のことを言います。前述した判定基準の通り、知能指数が70以上である場合は知的障害とは判定されにくいため、「境界領域」の方は療育手帳が取りづらいといった現状があります。また、知能指数では「境界領域」にあたり知的障害とは判定されない子どもでも、発達障害の特性がある場合もあります。例えば学習障害や注意欠陥・多動性障害、広汎性発達障害が挙げられます。発達障害があるかどうかは、知能検査や心理検査の結果、普段の様子を長期的に見て判断する必要があります。藤永保・森永良子/著『子育ての発達心理学』において、以下のような例が挙げられています。ADHDの子どもの中にはWISC-III検査で低学年からの高い評価をされる者も少なくないが、就学前は境界領域の知能レベルを示すものは多い。これらのADHDの多くはADHDがコントロールされるにしたがって境界領域知能から平均範囲、あるいは高機能に入っていく例もある。したがってADHDを伴う知的境界領域児は経過観察が必要である。ADHDは刺激に過反応する傾向があり、適切な刺激をインプットすることが困難である。このタイプのADHDではADHDへのコントロールの発達が認知の発達、社会的適応に影響を与える。(藤永保・森永良子/著『子育ての発達心理学』2005年大修館書店/刊p.178より引用)しかし、知能指数が「境界領域」と測定されたり、発達障害の傾向がある子どもであっても、家族や社会の支援により社会的自立に向けた力をつけていくことが可能です。成長が遅れがちな部分だけに焦点を当てるのではなく、持っている能力を評価し、伸ばしていく支援が大切です。知能指数を調べることは、障害の有無を見極める上でどのように扱われるのか出典 : 知能指数だけでは疾患・障害の確定診断をすることはできません。ですが知能検査の結果は、疾患・障害の識別や、治療の効果測定、障害のリスクの予想などの指標の一つとして活用されます。◇自閉症スペクトラム障害自閉症スペクトラム障害とは対人コミュニケーションに困難さがあり、限定された行動、興味、反復行動がある障害です。知的障害を伴わない自閉症スペクトラム障害では、知能検査の言語性IQが正常範囲であるにもかかわらず、日常生活では適切なコミュニケーション行動が難しいといった場合が多いです。このような子どもはITPA(言語学習能力診断検査)において、「ことばの類推」「ことばの表現」「文の構成」といった項目の点数が低くなる傾向があります。◇注意欠陥・多動性障害(ADHD)ADHDは不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことであり、自閉症スペクトラム障害と併存する場合もあります。WISC-Ⅳ(ウェクスラー式知能検査。詳細は後述)では、ADHDのある人は、注意集中の維持の困難さから、「数唱」「迷路」といった検査項目において点数が低くなる傾向があります。子どもに早期から療育を行う場合、その効果を見極める指標として、知能検査の結果の変化が参考とされる場合があります。早期療育とは、発達の遅れが見られる子供を対象に専門的な教育プログラムやトレーニングを実施することです。◇ダウン症たとえば、ダウン症のある子どものほとんどは、生後1ヶ月以内に診断されるため、早期療育の対象となることが多いです。早期療育によって、ダウン症の子どもの能力がどの程度発達したかは、例えばウェクスラー式知能検査の幼児版であるWPPSIの言語性IQによって測定されます。◇学習障害(LD)学習障害は、全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のうちいずれかまたは複数のものの習得・使用に著しい困難を示す発達障害のことで、知的障害とは区別されます。児童期において、WISCの全検査IQが正常範囲であるものの、言語性IQと動作性IQの得点の差が15点以上ある場合に学習障害のリスクが高いとされています。学習障害は知能の部分的な偏りが学習の遅れに結びついています。測定したIQに対して、実際の学習到達度にギャップが大きい場合、学習障害の可能性が疑われます。学校での子どもの学習の様子と対応させて、困難が大きい部分に対して適切な支援をしていくことが大切です。参考:日本児童研究所/著『児童心理学の進歩』2014年 金子書房/刊知能指数の値に応じて受けられる支援は?出典 : 知能指数の値は、療育手帳の取得判定の際に参考とされます。児童相談所または知的障害者更生相談所において知的障害であると判定された場合や、知能指数が75以下(自治体によっては70以下)の場合、療育手帳をもらうことができます。また、特別支援学校に入学する際、療育手帳が必要な場合があります。療育手帳とは知的障害のある方に発行される障害者手帳です。知的障害のある方が一貫した療育・援護を受けられるよう、さまざまな制度やサービスの利用をしやすくすることを目的にしています。◇取得対象者・IQ値が75以下の方。(70以下に規定している自治体もある)・おおむね18歳以前に知的機能障害が認められ、それが持続している。・日常生活に支障が生じているため、医療・福祉・教育など援助を必要とする。◇区分重度~軽度で分けられます。自治体や年齢によって2区分や4区分に分類されます。◇メリット・保育園入園時など保育・教育面での援助・就労に向けての支援・公共交通機関などの割引・レジャー、スポーツ施設などの割引・給付、税の減免や控除特別支援学校とは心身に障害のある児童・生徒が通う学校で、幼稚部・小学部・中学部・高等部があります。特別支援学校への入学を希望する場合、出願の際に障害の程度を証明するものとして、療育手帳の写しの提出が必要になる場合があります。知能指数を知りたい時は?出典 : 知能指数は知能検査によって計ることができますが、どこで受検できるのでしょうか。最近ではインターネット上で知能指数の診断サイトをよく目にします。しかしむやみにインターネットで測定をした結果を信じ込んではいけません。なぜなら知能指数は医療機関で測定した値であっても、知能指数単体で使うことがないほど慎重に扱われるものだからです。知能指数を知りたいと思った時は、まず保健センター、子育て支援センター、児童相談所、発達障害者支援センターといった相談窓口に相談すると良いでしょう。自宅のまわりにない場合は、電話で相談することもできます。相談機関では知能検査を受けられる公的病院や民間病院を紹介してくれる場合があります。精神科や臨床心理士による検査が受けられる病院での受検をおすすめします。また児童発達支援センターなどで受けることもできます。知能検査の種類によっても受け方が異なるため、あらかじめ病院に問い合わせると良いでしょう。注意点として、医療機関など信頼できる検査を利用する場合でも知能検査について正しい理解をし、その結果を適切に利用するようにしましょう。知能検査の内容出典 : 知能検査では、知識、語彙、概念形成に関するさまざまな課題や、非言語的な課題が提示されます。検査の課題は、子どもが興味を持って受けられるような工夫がなされており、例えばなぞなぞのような言葉で回答する問題やパズルなどが挙げられます。また現在、日本でよく使われる知能検査としては、ビネー式知能検査、ウェクスラー式知能検査、K-ABC知能検査などが挙げられます。他にも検査方法がありますが、ここでは代表的なこれら3つの知能検査について紹介していきます。対象年齢:2歳~成人ビネー式知能検査はよく用いられる代表的な個別式知能検査です。ビネー式知能検査では、精神年齢と生活年齢の比によって知能指数が算出されます。ビネー式知能検査の一つである田中ビネー知能検査は、日本人の文化やパーソナリティ特性、生活様式に添った問題内容になっています。対象年齢:WISC-Ⅳ5歳~16歳11ヶ月、WAIS-Ⅲ16歳 ~89歳、WPPSI 3歳10ヶ月~7歳1ヶ月ウェクスラー式知能検査は言語性IQと動作性IQという測定概念を用いて、個人内差(個人の得意不得意)の測定をします。年齢に応じて児童版のWISC、成人用のWAIS、幼児用のWPPSIの3種類があります。個人の能力の特徴をより分析的に捉えることができ、知的障害や発達障害のある人の場合、検査結果に一定の傾向が見られやすくなっています。そのため、知的障害や発達障害の確定診断の際に、参考情報の一つとして用いられることがあります。対象年齢:2歳6ヶ月~12歳11ヶ月子どもの認知処理に注目した検査です。子どもの知的活動を認知処理過程と知識・技能の習得度から総合的に評価します。教育・指導に直結し、一人ひとりに合った学習スタイルを見つけることができます。同時処理(情報を全体的に捉える認知特性)と継次処理(情報を順番に理解する認知特性)の個人内の差を明らかにできることから、特異な認知パターンを持つ学習障害のような場合に適用されます。児童一人ひとりを大切にする教育的支援に関する研究|山口市立宮野小学校 教諭 中野 正映さん心理・教育アセスメントバッテリー K-ABCⅡ|丸善出版HP知能検査について受けられる場所や検査内容を紹介しました。知能検査についてさらに詳しく知りたい方は、知能検査の受け方や費用、検査形態などについてまとめている以下の関連記事をぜひ参考にしてみてください。まとめ出典 : 知能指数は知能のレベルを計る手段の一つではありますが、知能指数だけでは人間の知能の全てを測ることはできません。知能検査は、単に知能指数を測ることではなく、検査結果を基にして、受検者が適切な教育・支援を受けられるようにすることを目的としています。知能指数の値だけで受検した子どもの能力を即断するのではなく、日常生活におけるお子さんの行動・様子を把握し、その子本人に合った教育・支援の方法を探していきましょう。
2016年12月08日クリスマスは誰もが待ち望んでいるお楽しみの日。子どもたちもその日を心待ちにわくわくドキドキ…。胸はずませながらも「プレゼント、ちゃんともらえるかな?」なんて心配もあったりするようです。そこで今回は 絵本ナビ 協力のもと、子どもたちを笑顔にする「クスッと笑える」クリスマス絵本を集めてみました。ピヨピヨ メリークリスマス作・絵:工藤 ノリコ/出版社:佼成出版社 「ピヨピヨ メリークリスマス」(絵本ナビ紹介ページ) クリスマスをとっても楽しみにしているピヨピヨひよこ5兄弟たち。絵本を読んだり、ツリーの飾りつけをしたりして期待はふくらむものの、サンタさんがちゃんと来てくれるかどうか、ちょっぴり心配。「いいこにしています。どうか こんばん きてください。」とお願いするひよこたちがかわいくて、愛らしい! 家族みんなで過ごすクリスマスは、最後にとびきりの笑顔が待っているようです。めがねうさぎのクリスマスったらクリスマス作・絵:せな けいこ/出版社:ポプラ社 「めがねうさぎのクリスマスったらクリスマス」(絵本ナビ紹介ページ) 「めがねうさぎ」シリーズ、今回の舞台はクリスマスです。冬が大好きなうさこはもちろんクリスマスも好き。ツリーにするために見つけたモミの木と一緒に、昼寝中のおばけを連れて帰ってしまいます。ごちそうを食べてうさこがベッドに入ったころ、サンタさんはくまさんの家でグーグージュースを飲んで眠っていました。これはたいへん! 横で話を聞いていたおばけは「ぼくもいくよー。」さてさて、最後はどうなることやら…? 貼り絵の美しさにも注目ですね。おおきいツリー ちいさいツリー作・絵:ロバート・バリー/訳:光吉 夏弥/出版社:大日本図書 「おおきいツリー ちいさいツリー」(絵本ナビ紹介ページ) ウィロビーさんのお屋敷に届いたクリスマスツリーは大きすぎて先が天井につっかえちゃう! そこで先をちょん切り、残りは小間使いへ。机の上に置いてみると先がちょっぴり邪魔なのでまたも先をちょん切って、庭師へ。先を切られるたび、ツリーは誰かの部屋やおうちを特別な空間に、みんなを幸せにしてくれます。場面ごとに異なる飾り付けを見るのも楽しい一冊。サンタのおまじない作・絵:菊地 清/出版社:冨山房 「サンタのおまじない絵本」(絵本ナビ紹介ページ) 子どもたちの嫌いなものといえば「野菜」ではないでしょうか。そんな野菜がクリスマスプレゼントに届いたら、子どもたちからはきっとブーイングがおこってしまうかも。でもこの絵本の野菜は一味違います。おまじないを唱えると、野菜は次々と別のものに大変身! 切り絵の楽しさがつまった絵本なので、画用紙を引っ張り出して同じように変身させてみるのもいいですね。さむがりやのサンタ作・絵:レイモンド・ブリッグズ/訳:すがはら ひろくに/出版社:福音館書店 「さむがりやのサンタ」(絵本ナビ紹介ページ) ボリュームのある白ひげと真っ赤な丸い鼻のサンタクロースが表紙の絵本。小さなコマ割りのマンガを見ているような感覚で読み進めていきます。「ふゆはいやだよ まったく!」なんてグチをこぼしているのも、ペットたちにエサをあげるのも、しっかりドアに鍵をかけて出かけるのも、親近感がわいて笑えてきます。12月24日のサンタさんもみんなと同じような朝を迎えているんだなぁ… とほっこりできる一冊です。ちょっとユーモアのあるクリスマス絵本、いかがでしたか? 年末の恒例行事となっているクリスマスにも、たくさんのストーリーがあるものです。家族でクスッと笑える絵本時間をぜひつくってみてくださいね。データ協力: 絵本ナビ
2016年12月08日こんにちは。メンタルケア心理士の桜井涼です。私は以前、学習塾で講師をしていました。そのときに感じたことは、子どもの語彙力が低下しているということでした。音読をしても読むことはできます。しかし、言葉の意味を知らない子どもが多かったのです。自分で調べることをする子がとても少なかった、ということも同時に感じていました。算数・理科・社会など、国語以外の教科は、「計算できれば解ける」「実験の経験や知識があればできる」と考えてしまいがちです。しかし、問題文は日本語で書かれています。ですから、語彙力・国語力がないと、学年が上がるにつれて勉強が難しくなってくるということを考えていただきたいと思っています。そのための対策として家庭でもできるものが、書写 です。●書写とは?“書写”とは、文字の通り書き写すことです。小学1年生になると授業で習います。習字の授業の一環のように感じる人もいるでしょう。しかし、義務教育である小中学校では、国語に位置づけられています。多くの場合、鉛筆を使って書いてあることをそのままノートなどに書き写すのですが、どうしても句読点やかぎかっこなどを見逃してしまうことが往々にしてあります。これは、文字をしっかりと読んで理解していないために起こることが多いです。私が当時教えていた子どもたちも、かなりの見逃しをしてしまうことがありました。●語彙力・国語力をつけたいのなら、音読+書写!国語力は、ただ読むだけ、ただ書くだけでは身につきません。大事なポイントは、“書いてある内容を読んで理解する”ことです。そのためには、書写をする前にしっかりと音読 することが大切になります(音読とは、声に出して読むことです。声を出さないで読む黙読では意味がありません)。書いてある内容がわかれば、書写することは難しくありませんし、しっかりと頭に入ります。当時小学3年生だった男子が生徒として学習塾に入ってきたとき、教科書をスラスラ読むことが難しく、「勉強つまんない、やりたくない!」が口癖でした。書写をさせたときも、間違いが多く字も乱雑でした。明らかに国語力が低いことがわかりましたので、教室に来るたびに音読と書写をするように時間を取っていきました。1か月後、3年生の教科書はスラスラ読むことができるようになり、内容も理解し、わからない言葉が出てきたときは自分で調べるまでになったのです。書写のノートは直しがなくなり、花まるが続くようになりました。気になっていた口癖も言わなくなったのです。読んで理解することができれば、ここまで変わるのだということを実感した最初の生徒でした。始めは短めな文からスタートさせましょう。徐々に文字数を増やしていきます。正しく読み、文章の内容がわかること、文字が丁寧に書けて、しっかり写せるようになることができたら、終了する目安です。●書写に向いているノートはマス目の小さいノート書写をさせるには、小さなマス目のノート が向いています。しかし、学校では低学年に大きなマス目のノートを使わせます。大きいマス目の方が文字を書きやすいからです。自宅で書写をさせるときは、10ミリ方眼などのノートをおすすめします。マスの中に合わせて字を書き込むことができるようになりますし、ノートを見返すときに、見渡しやすいからでもあります。見渡しやすいことで、間違った点をいち早く発見することができます。脳科学の面から見ると、小さな文字を書くことで言語能力が上がる ことがわかっています。そして、小さい文字を書くことで集中力がアップし、視野が広がることで捉える文字数が増えることもわかっているのです。ですから、早い段階で小さなマス目のノートを使うことをおすすめします。●おわりに国語力は小さいうちからつけておくことがとても重要です。読んでみてわからないと、授業についていくことが難しいと感じ、勉強が嫌になってしまうことにつながります。そうなっては困りますよね。そうなる前に、“音読+書写 ”を毎日少しでもいいのでスラスラできるまでやってみましょう。学校から宿題として出ている場合もありますが、出ていない日も宿題の前に行ってみてほしいと思います。その方が集中力が継続できるからです。ぜひ、試してみてほしいと思います。【参考文献】・『伸びる子には秘密がある 小学生の勉強法』石井郁男、小学生の勉強法を考える会(編集)●ライター/桜井涼(メンタルケア心理士)●モデル/前田彩(桃花ちゃん)
2016年12月07日子どもが通級や特別支援級に通うこと、周囲のみんなはどう思っているんだろう?出典 : 我が家の長男は現在小学5年生。自閉症スペクトラム、ADHD、学習障害の診断を受け、小1から通級指導教室に通っています。先日、私が入っている通級学級の親の会で、1人のお母さんからこんな話題が出ました。「子どもが通級に通うために学校を休むと、友達から『どうして昨日学校来なかったの?』『通級で何やってるの?』って聞かれるみたい。友達からの関心が辛いのか、本当は通級が大好きなのに、最近は行きたくないって言い出して…」実はこのような話は通級学級の親の会でよく聞きます。通級学級で自信をつけ成長していたお子さんが、「友達にからかわれるからもう行きたくない」とやめてしまうケースも少なくないようです。親自身も偏見を恐れて隠したりごまかしたり…。私自身も、そのような葛藤を抱えながら、この5年間を過ごしてきました。私たち家族がどんなふうに子どもの障害と向き合い、周囲に伝えてきたのか?上手くいった例とその背景にあった葛藤も含め、ご紹介したいと思います。通級とは、通級指導教室とも呼ばれ、通常の学級に在籍しながら比較的障害の程度が軽い子どもが、その子に合った個別の指導を受けられる学級です。主に各教科の学習や給食は通常級で受け、通級の時間だけ移動して指導を受けます。小1の秋、通級に通うことが決まった長男。友達からいじめられたりしない…?出典 : 長男が通級に通うことが決まったのは小1年生の秋頃からでした。通級に通わせることが不安だった私は、通い始める前に学校の先生へ相談しました。「これから毎週通級に通うことで、在籍級の友だちからいじめられたりからかわれたりしないでしょうか?本人にはどのように伝えたらいいのでしょうか?」先生はこの相談に対し、「お子さんに『通級に通うのは勉強ができないからだ』などと、マイナスのイメージを持たせるのはやめましょう。本人が、通級に通うことに前向きでいることが、1番大事なんですよ。周りの友だちにも、『僕はこんなところに通っているんだよ』と堂々と言えれば、意外と周りの子どもたちも『あーそうなんだ』で受け入れてしまうものなんです。実は、偏見や疎外感って周りの大人が生み出していることも多いんです。『そんなこと聞いたらかわいそうでしょ!』と変に隠したり曖昧にしたりすると、子どもたちは敏感に感じ取ります。ですから、この通級学級に入級してくる子どもたちには『あなたは選ばれてこのクラスに入りました。ここならきっとがんばっていろんなことができるようになります』とお話しているんですよ。おうちでも、ぜひそんなふうにお子さんに伝えてくださいね。」と仰いました。出典 : この先生の言葉は、今でも私を支えています。この話に心から感動した私は、「これから私がすべきことは、長男が今の自分に自信を持てるように環境を整えることだ」と、気持ちを改めました。その後、まずしたことは「あなたはとても頑張り屋なので、○○学級に行けることになりました」と書いた賞状を作って長男に渡したことです。小1でまだまだ素直だったからでしょうか、びっくりするぐらい大喜びして、「早く行きたい!」と楽しみにしていました。そして、在籍級の担任の先生とお会いして口裏合わせをお願いしました。長男が通級に通っていることを変に隠さないでほしいこと、そして長男は通級で頑張って勉強していることを、周りの子たちに伝えてほしい、と頼んだのです。幸い、他にも同じ通級に通っている子が学年に何名かいたので、子どもたちもすんなりと受け止められたのでしょう。友達に「明日遊べる?」と聞かれても「あ~○○学級に行く日なんだ~」「そっか~じゃあまた今度ね~」という会話が日常となるほど、本人も周囲も違和感なく受け入れてくれたのでした。通級に通うことをどう伝えるか?一番悩んだのがママ友だった出典 : そして次にしたことは、「近所のママたちに伝えること」です。正直、これが私にとっては1番気の重くなることでした。でも、毎朝一緒に登校している長男が、週に1度学校に行かないのは、すぐにわかってしまうことです。近所の親の憶測が子どもの耳に入り、長男がからかわれたり、変に気をつかわれたりするよりは、私の口からちゃんと説明をしよう…!そう決意しました。そのとき心がけたのは、「発達障害だから」という伝え方ではなく「どんなことに困っているのか」をわかりやすく伝えることでした。このため、発達障害や学習障害という言葉を使わずに「うちの子、斜視で手術してるから字を読んだり黒板を写して書いたりするのがすごく時間がかかって辛いみたい。だから少人数で子どものペースに合わせてくれる、通級学級の方が勉強しやすいかと思ってね。」と、具体的に説明をしてみました。おかげで、近所のお母さんたちも「そうなの、頑張ってね~」とすんなり理解してくれ、自分の子どもたちにもそのようにお話してくれたようです。4年生になった長男は授業中、ノートがとれず…彼の姿をみた友達の一言出典 : ですがその後、長男が4年生になる頃には、少しずつ授業に出遅れるようになりました。授業中ボーっとしていたり全然ノートをとっていなかったりする長男に、「ずるいぞ、ちゃんとやれよ!」などと周りの友達からキツイ言葉をかけられることが増えていきました。長男はさぼっている訳でなく、学習障害の特性の1つで読み書きが苦手だったのですが、周囲の友達にはサボっているように見えていたようです。友達からの誤解でだいぶ傷付いた長男を見て、周りの子どもたちにも、長男のことを理解してもらったらどうだろう…?と考えました。担任の先生と相談をし、長男が通級でいない日をねらった私は、読み聞かせボランティアに行き、クラスのみんなに話をさせてもらいました。・長男は目でものを見るとき、人よりも疲れやすいこと・みんなと同じように見えていないこと・だから授業を受けているだけでとても疲れ、みんなのように上手に書き写すことができないこと・それでも、頑張って授業を受けようとしているから、応援してほしいこと一つ一つ、具体的に説明していきました。具体的な説明をすることで、子どもたちに理解してもらえた出典 : みんながどんな風に話を受け止めるのか不安でしたが、どの子も真剣に話を聞いてくれていました。後日、クラスのお母さん数人から話を聞いたところ、「あいつがそんな風に大変なの、知らなかったよ。」と家で話していたそうです。子どもたちの誤解が解け、本当に嬉しかったです。ご家庭によって、長男のことを本当のところはどう思っているのか?私にはわかりません。でも、私たち親ができることは障害やできないことがあっても、胸を張って子どもたちを見守っていくことだと思います。偏見や批判はあっても、子どもには正直に伝えていきたいですね。
2016年12月05日小2から不登校の娘は現在中学2年生。漠然とした将来への不安に、つい出た言葉は…出典 : アスペルガー症候群の診断を受けている娘は小2から不登校になり、全く勉強しないまま中学2年生になりました。勉強することを頑なに拒否し、パソコンとゲームにのめり込む日々。それでも、何も考えていない訳ではなかったようで、小5の頃でしょうか…ある日、こんなことを呟いたのです。娘「私はブラック企業しか行くところがない…」それを聞いた私は答えました。私「高卒資格がないと就職は厳しいのが現実だよ」娘「働いてお金を稼げるようになりたいよ」私「ママの経験から、コンビニでバイトするのにも小学校卒業くらいの学力は必要だと思う。学校には行かなくても、高卒資格を取るにはいろいろな道があるから大丈夫よ」娘なりに、漠然とした将来への不安を感じていたようでした。その後中2になった娘は、「そろそろ勉強しようと思う」と言い出し、日記を書いたり九九を覚えたり、電子書籍として学習できる「デイジー教科書」を読んだりと、本当に勉強をし始めたのでした。そして、「高校へ行きたい。私は通信制高校で、あまり通わなくていいところに行きたい」と、現実的な希望を描き始めたのです。娘の変化に応えるように、紹介してもらった通信制高校。見学に行くと…出典 : そんな娘の様子を、中学の支援コーディネーターの先生に話したところ、「小学校からずっと不登校だった生徒が通っている学校があるんです。見学に行ってみませんか?」と誘われました。そして地元にある小さな塾のような学校に、担任の先生と見に行くことになったのです。そこはもともと本当に塾だったところで、今は通信制高校の技能連携校になっています。技能連携校というのは、通信制高校の分校のようなところで、通信制高校と技能連携校の両方に入学することで、技能連携校の方で卒業に必要な出席日数、レポート提出、試験をすべて済ませることができるそうです。私が見学したところはとてもアットホームな雰囲気で、小さな教室がいくつかあり、授業は昼から行われていました。制服もなく、生徒さんが好きなときに来て、自分のペースで学習している様子でした。出典 : 不登校だった生徒にも手厚く、1対1で小学校の勉強から教えてくれ、心配な必要出席日数も1年に6日なので安心したのを覚えています。学園長に詳しくお話を伺うと、自身のお子さんも不登校だったそうです。当時、手をあげて学校に無理に行かせようとしたらお子さんが家出し、探し回ったこと。父親である自分自身がいいお医者さんと出会い、それまでの考え方が180度変わったことなど、たくさんのエピソードを話して下さいました。学園長の話を聞いて、「ああ、ここだったら娘も安心して学べるな…」と手応えを感じ、自宅へ戻りました。通信制高校という新たな選択肢を前に、本音を話してくれた娘出典 : 家に帰って、娘が「どうだった?」と聞いてきたので、学校の様子と学園長の話を伝えました。すると娘はこう言ったのです。「そういうところだったら不登校の子も、毎日来ない子がいるのも最初からみんなわかってるやろ?だから『不登校』とか『あの子学校来ない』とかいろいろ言われなくて済むから良い。」「小学校はみんな行かなきゃいけないから来てる。だから行かないといろいろ言われる。だけど、その学校なら目的がはっきりした人が来るから、自分のペースで自分のやりたいようにできるからいいと思った」その言葉で、娘がどれだけ今まで傷ついてきたのかを思い知らされました。そして、学校という場所の本質を突いた言葉に、感心させられたのでした。親の会で知った、不登校児のさまざまな進路のかたち出典 : 娘の本音を聞いて、ふと親の会で聞いた話を思い出しました。不登校の親の会では、すでに義務教育が終わった子の親御さんが多いのですが、そこで高校進学後の話を聞くと、様々な道があることを知りました。以下は一例です。・親の希望で通信制高校に進学したけれど、スクーリングに通えずに休学中・5年遅れて高校に入学し、現在は大学に通っている・高校はやめたけれど、支援機関を通じて少しずつ働いている・自分でさっさと高校を決め、海外の大学を卒業した…通信制高校は、面接のみで入学できるところも多いので入学するのは簡単ですが、卒業するにはスクーリングができるかどうかがポイントだと感じました。学校やスクーリング会場に登校して、先生から直接指導を受けることをスクーリングといいます。通信制高校は「自学自習」が基本ですが、勉強する中でわからない部分が出てくることや、レポートをまとめようとしても、 どうしてもうまく書けないということもあるでしょう。そこで、そういった課題をスクーリングで先生と一緒に解決していくのです。子どもの進路、親はつい口出ししたくなるけれど…出典 : 本当はまだ家で休んでいたいけれど、どこにも所属しないのは不安だし、親の期待にも応えたい…という風に、自分の意思ではなく家族や世間の負い目を感じて進学した場合、つまづいてしまうことが多いようです。でも、自分の意志で立ち上がった子どもは、何年遅れても最後までやり遂げる傾向にあるようです。娘には、何年かかってもいいから、本当に自分がやりたいと思ったことを自分の意志で選んでほしいと思っています。中学を卒業したらすぐに高校に行かなくてはいけないわけではありません。これまで、自分のペースで歩いてきたのだから、これからも自分に納得できるよう、生きていってほしいな…と願っています。
2016年12月02日「いち、に、さん、し…」教えてあげたわけではないのに、いつのまにか数を数えられるようになっていく子どもたち。数字が好きで「何でもかんでも数えたい!」という子もいれば、反対に「数えるのは苦手」という子もいますよね。そこで今回は 絵本ナビ 協力のもと、楽しく「かず」や「さんすう」とふれあえ、学びとなる絵本を選んでみました。1、2、3どうぶつえんへ作・絵:エリック・カール/出版社:偕成社 「1、2、3どうぶつえんへ」(絵本ナビ紹介ページ) 走る汽車の1両目にはゾウが1ぴき、隣の車両にはカバが2ひき…。後ろにいくほど動物の数が増えていく、字のない絵本です。たくさんの動物たちをのせた汽車が行きつく先は…? 数そのものへの興味が出てきたころにもぴったり。また、描かれた数字と動物の数が合っているか、自分で確かめられるようになった年齢のお子さんにもおすすめです。かぞえておぼえる かずのえほん作・絵:島田 ゆか/出版社:鈴木出版 「かぞえておぼえる かずのえほん」(絵本ナビ紹介ページ) 家の中のいつもの風景。そこから数えられるものを探すのが楽しい絵本。その数字はなんと1から100まで! 最後まで数えられなくても「〇〇はどこにある?」なんてクイズ形式で問題を出して、描きこまれたイラストをじっくり楽しむこともできます。少し大きな数が数えられるようになったら数が合っているかどうかを確かめるべく、挑戦させてみるのもいいですね。ものによって数え方が違うことも、この絵本なら自然に覚えることができます。1つぶのおこめ 作・絵:デミ/訳:さくま ゆみこ/出版社:光村教育図書 「1つぶのおこめ」(絵本ナビ紹介ページ) 小学校低学年からの読み聞かせにおすすめの、ちょっと変わった「さんすうの昔話」です。もとになっているのはインドで昔から伝わってきたお話。自分のことしか考えないケチな王様に、ある提案をする女の子。それは、王様もびっくりの「さんすう」の知恵でした。数って不思議! と考えさせられる奥が深い絵本。異国の物語らしさを感じさせる、エキゾチックな挿絵も魅力のひとつです。算数の呪い 作:ジョン・シェスカ/絵:レイン・スミス/訳:青山 南/出版社:小峰書店 「算数の呪い」(絵本ナビ紹介ページ) 「たいていのことは、算数の問題として考えられますよ」といったフィボナッチ先生のせいで、女の子の頭の中は朝から問題だらけ。まるで呪いをかけられたみたいに感じる不思議なお話のラストは、どうなるのでしょう。一部が大きく太字になったり、枠の中に入っていたり、文章の配置やデザインもおもしろい個性的な内容ですが、答えはちゃんと絵本のどこかにあるので安心してくださいね。はじめてであうすうがくの絵本1 作・絵:安野 光雅/出版社:福音館書店 「はじめてであうすうがくの絵本1」(絵本ナビ紹介ページ) 「さんすう」といわず「すうがく」と表現してあるので「大きい子向けの本かな?」と思うママもいるかもしれませんが、仲間外れを探したり、背比べをしたりと小さなお子さんと一緒に楽しめる絵本。難しい計算式を見ながら覚えるのではなく、頭をやわらかくして考えることで「すうがく」の感覚をつかみやすくなる子も。「数を数えるのは苦手」なお子さんもクイズを楽しむうちに苦手意識を克服できるかもしれませんね。小さなお子さんから小学校中学年程度のお子さんまで、幅広く「かず」や「さんすう」とふれあえる絵本を紹介しました。中には「少し難しいかな?」と思えるものもあるかもしれません。対象年齢に合った一冊をすすめてみるのも良し。動物が好き、謎々が好き、そもそも数字が大好き! など、子どもの好きなものにぴったりな一冊を選ぶも良し。「かず・さんすう」への興味を深める、キッカケづくりになるといいですね。データ協力: 絵本ナビ
2016年12月01日【ママからのご相談】小学6年生の子どもがいます。中学受験に向けて塾に通わせていますが、家では私が勉強を見ています。勉強を始めた時期がほかの家に比べて遅かったので、勉強時間は長く取るようにしています。しかし、勉強時間が相当長いのに、なかなか成果が出てきません。子どもは一生懸命に取り組んでいますが、このままだと受験に間に合わないし、折れてしまわないか心配です。●A. やみくもに学習するのをやめて、優先順位付けをご質問ありがとうございます。学習アドバイザーの佐々木恵と申します。一生懸命勉強しているのに成果が出ないと、お子さんはやる気を失ってしまう可能性が高くなりますし、質問者さん自身も不安やイライラが募ってしまい、ぶつかり合ってしまう危険性もありますね。ここで多くの方が、「もっと勉強時間を増やせば伸びるはず」と、さらに勉強時間を増やして、さらに疲弊してしまうという落とし穴にはまります。穴から抜け出すには、勉強時間を伸ばす以外の解決策 が必要になりますが、一体どうしたらいいのでしょうか?●やみくもに学んでも効果がない理由『パレートの法則 』をご存じでしょうか。『社会現象は平均的に分散しているのではなく、偏りがあり、主要な20%が全体の80%に影響を及ぼしている』というものです。勉強時間は長いのに成果がなかなか出てこない人は、やみくもに学び「すべての範囲を完璧にしなければ!」と考え、全てを均等に頭に入れようとします。すべての範囲をまんべんなく学ぶこともとても重要ですが、短時間で高得点を得ようと思うなら、重要な2割を重視して勉強する 必要があります。それで8割の得点を得られるのなら、理想的ですよね。特に、合否を判定する試験では、満点を目指す必要は全くありません。完璧を目指すというよりも、できるところを確実に解き、ほかの人ができるところを間違えずに着実にとり、プラスアルファで点数を積み上げていくことが求められるでしょう。このことからも、優先順位付けがいかに重要か、ご理解いただけると思います。●優先順位付けのコツは“過去問”にありまんべんなく学習するのではなく、重要なところだけを優先して学ぶ方が効率的ですが、問題はその方法ではないでしょうか。受験のプロではない親御さんには、どこが重要かそうでないかの判断は難しいでしょうし、そこまでのことは必要ないでしょう。そこで、活用したいのが、受験校の過去問 なのです。過去問には、重要事項が詰まっています。早い時期に過去問に触れておけば、受験校の傾向と対策を知ることができるので、受験校が何を重視しているかがわかるのです。過去問は直前まで取っておいて、実力試しにする方が多いですが、それではもったいないのです。過去問を有効活用することで、優先すべきポイントがわかるようになるのです。----------勉強時間が長いのに、うまく成果が出てこない人は、一度“まんべんなく”主義を捨てて 、過去問から傾向と対策を分析してみてはいかがでしょうか。本当に必要なところをしっかり学び、モノにすることで自信もつくはずです。ぜひ実践してみてください。【参考文献】・『勉強の技術 すべての努力を成果に変える科学的学習の極意』児玉光雄・著●ライター/佐々木恵(教育コンサルタント)
2016年11月27日親の会で偶然出会った大学の先生。その研究内容に興味津々!出典 : 読み書きが苦手なお子さんの場合、どんな学習方法やツールを選べばいいのか?悩む親御さんも多いと思います。今回は、お子さんの苦手に合わせてカスタマイズが可能な、パソコンやタブレット端末で利用できる図書の1つ「デイジー教科書」というものをご紹介したいと思います。以前、発達障害の親の会で「マルチメディアデイジー教科書」の研究をしている、大学の先生とお会いする機会がありました。私はこの研究に興味を持ち、勉強会に参加させていただくことに。これは、パソコンやタブレット端末で使う電子書籍の1つで、音声と文字と画像を同時に再生することができます。先生はこのシステムを利用し、教科書を読むことが苦手な子どもの、読んで理解する力を伸ばす研究を行っています。会場ではiPadに入れたものを体験したのですが、操作も簡単で直感的に使えるので、スマホなどに親しんでいる今の子どもたちには、とても使いやすいだろうな…と感じました。娘にも触らせると、説明書も読まずにどんどん使いこなしていましたよ。「すごい簡単」と言っていました。デイジー教科書でどんなことができるのでしょうか?その多機能ぶりがスゴいUpload By ヨーコマルチメディアデイジー教科書でどんなことができるのか、簡単にご紹介します。これは、パソコンやタブレットで教科書や一般図書を再生することのできるシステムです。その使いやすさの秘密は、①文字・音声・画像を同時に再生する②音声で読み上げる部分の文字がハイライトされる③読むスピードを変えることができる④文字の大きさ・文字色・背景色も細かく変えることができる⑤章・節へのジャンプも簡単などなど、1人ひとりの理解力に合わせ、再生方法がカスタマイズできる点にあります。娘は中1の英語と国語の教科書、1冊の絵本の英語版と日本語版を使っています。娘にディスレクシアはありませんが、小2から不登校なので、英語は読めません。しかしデイジー教科書なら、今どこを読んでいるのかハイライトで表示しながら、音声で流ちょうな発音の英語が流れてきます。また、普段聞きなれない難しい古文なども読みあげてくれるので、苦手意識を持つことなく、興味深そうに音声を聞いていました。読むことが苦手な子が使った場合、どんな効果が期待できるの?出典 : まず、読むことが苦手なお子さんには、以下のような困りごとがあるようです。・読むときの大半は、一字一字拾い読みになる・字を飛ばしたり、間違った読み方をする・読めても、内容が理解できない・授業がわからないから、学校に行きたくなくなる・紙の教科書が読めないだけで、自分は勉強ができないと思いこんでしまうデイジー教科書を使うことで、以下のような効果が期待できるそうです。・音読の困難さが軽減される・子どもが自分で、勝手読みに気をつけやすくなる・教科書に振り仮名を振るなどと言った、保護者の負担が軽減される・予習で使っていた場合、授業中につきっきりにならず、担任の負担が減る学校で使うことを認められなかった場合、自宅で活用しても出典 : 娘が籍を置いている中学校で、電子教科書の話をしたところ、先生方はその存在を知りませんでした。他の方の話を聞いていても「お宅のお子さんだけ特別扱いはできない」「教員に知識がないので」といった理由でタブレットの持ち込みを断られるケースもまだまだ多いようです。学校で使うことができれば1番いいのですが、無理なら家庭で使うだけでも大きな効果が期待できるようです。特にオススメしたいのは、授業の前に家で予習に使うことです。あらかじめ音声読み上げで内容を把握しておくことで、授業中の理解度が全く違ってくるのだそう。娘は不登校ですので、家庭学習のみに使っています。これまで、教科書を見るのも嫌がっていた娘ですが、「iPadに教科書がまとめて入っているから便利。だから勉強しやすい。」といっています。九九を覚えたり、日記を書いたりという取り組みと合わせ、週に3、4回勉強しています。利用は無料。実際に使ってみましょう出典 : マルチメディアデイジー教科書 申請方法1. 上部URLを開くと、「デイジー教科書申請フォーム」という赤いボタンがあるのでそれをクリックします。2. 申請フォームを開き、名前、メールアドレス、自分で決めたパスワードを打ち込んで登録すると、申請できる状態になります。(丁寧な説明がのっています)3. 申請理由は、「読み書きが困難なため」でOKです。保護者でも、使う本人でも申請できます。1度承認されたら、教科書の追加は簡単です。4. 申請が承認されると、約1週間以内にメールが届きます。それで手続きは終了です。ちなみに申請できる教科書は、現在の自分の学年とそれから下の学年の分です。たいていの教科書会社に対応しているので安心ですね。パソコンでデイジー教科書を使うためのソフトは、「デイジーポッド3」というものを使います。このソフトで教科書データのダウンロードから再生までできるようになっています。以下のURLからソフトをインストールしてみてください。 PC で使用する場合実際にダウンロードして操作してみました。デイジーポッド3をダウンロードして立ち上げると、申請の承認メールに書いてあるログイン名と自分で決めたパスワードを入力する画面になります。入力すると、こんな画面が出てきます。Upload By ヨーコまず、ダウンロードタブをクリックして、教科書を選んだところです。ページの左隣にチェックを入れ、ダウンロードボタンを押します。ダウンロードが終わったら、再生タブを押します。するとダウンロードした教科書の見出しが出るので、好きなところを選んで再生ボタンを押します。もちろんiPadでも同じような手順で使うことができます。iPadで利用したい方は、以下のURLをご参照ください。 / iPhone / iPod touchで使用する場合勉強嫌いでも、ツールを変えれば好きになるかも!?出典 : DAISYのホームページでは、わかりやすい動画も載っていますので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。我が家では、マルチメディアデイジー教科書を取り入れたことによって、ちょっとした隙間時間に教科書を読むことが増えました。それがきっかけで、ノートとペンを使った学習にも抵抗がなくなってきたように思います。
2016年11月25日発達検査とは?出典 : 発達検査とは、子どもの心身の発達の度合いを調べる検査のことです。検査結果から子どもの発達の特徴が分かったり、普段の接し方のヒントを得ることができたりと、子どもの育ちに関する参考情報を得ることができます。発達の遅れや凸凹からくる困難に応じて子どもをサポートする療育支援なども、発達検査の結果をもとに計画を立てられることが多いです。一般的には、幼稚園や保育園などの教育機関で発達の遅れがあることを指摘されたり、乳幼児健診や医療機関にかかった際に、検査をすすめられることが多いです。もちろん、家庭での様子から、子育て支援センターなどの相談機関に問い合わせて検査を受ける方もいらっしゃいます。発達検査は発達障害の確定診断を行う検査ではありません。発達障害の確定診断に際しては、生育歴や行動観察などの臨床診断と、発達検査・知能検査などの専門診断の結果を経て、総合的に診断されます。よって、発達検査の結果のみで発達障害だと診断されることはありません。確定診断の判断要素として発達検査の結果を参考にしています。発達検査にはさまざまな種類が存在していることから、検査ごとに検査結果の表現方法や評価の仕方が異なります。さらに医師や医療機関ごとに取り扱っている検査も異なるため、受けたい検査がある場合は、お近くの受診機関が対応しているかどうかを事前に問い合わせるとよいでしょう。ここでは発達検査に最も使用されている「新版K式発達検査」と「乳幼児精神発達診断法」について、主に紹介していきます。発達検査って具体的にどんな検査をするの?出典 : 発達検査にはさまざまな種類があります。・新版K式発達検査・乳幼児精神発達診断法・日本版Bayley-III乳幼児発達検査・ASQ-3・KID乳幼児発達スケール・ブラゼルトン新生児行動評価法・日本版デンバー式発達スクリーニング検査など、多種多様な検査があります。この中でも現在、日本で使用されることが多い検査は「新版K式発達検査」と「乳幼児精神発達診断法」です。年齢において一般的と考えられる行動や反応と、対象児者の行動や反応が合致するかどうかを評価する検査です。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。なお、3歳以上では「認知・適応」面、「言語・社会」面の検査に重点が置かれます。検査結果としては、この3領域の「発達指数」と「発達年齢」が分かります。また乳幼児向けの検査用具には、振ると音が鳴るガラガラや積木、ミニカーといった乳幼児にとってなじみのある材料が使われています。このような検査用具を使うことによって、子どもの自然な行動が観察しやすい検査となっています。検査者は検査結果だけでなく、言語反応、感情、動作、情緒などの反応も記録し、総合的に判断します。■適用年齢:生後100日後から成人■時間:約15~60分程度■形式:1対1(検査者と被検査者)の個別式検査■料金:公的病院でおおよそ840円(保険診療・3割負担の場合)乳幼児精神発達診断法は、上記と同様に年齢と発達の度合いの比較を行い、実際の年齢とどのくらい差があるかを評価する検査です。新版K式発達検査と異なる点は、面接者が保護者に対して子どもの様子を個別に面接し、各項目について尋ねることで行われる点です。乳幼児精神発達診断法では検査した項目と月年齢を軸にした図である「発達プロフィール」を作成します。子どもに直接検査を実施する方法に比べて、子どもの状態や障害に左右されることがなく、普段の生活の状況に基づいて判断されることになります。なお「津守・稲毛式乳幼児精神発達診断法」と「遠城寺式乳幼児精神発達検査」のふたつがありますので、追って説明していきます。■津守・稲毛式乳幼児精神発達診断法「運動」「探索」「社会」「生活習慣」「言語」の5領域の438の質問項目から構成されています。適用年齢別に「1~12か月まで」「1~3歳まで」「3~7歳まで」の3種類の質問紙を用いて検査・面接を行います。なお5領域ごとに「発達年齢」が算出されます。・適用年齢:生後1ヶ月から7歳まで・時間:約20分程度・形式:母親など子どもの養育者に個別面接■遠城寺式乳幼児精神発達診断法「運動」「社会性」「理解・言語」の3領域6の質問項目から構成されています。0歳0ヶ月から検査を受けることができます。・適用年齢:0歳0ヶ月~4歳8ヶ月まで・時間:約15分程度・形式:母親など子どもの養育者に個別面接国立特別支援教育総合研究所発達検査の結果から分かること出典 : 発達検査の検査結果から子どもの発達の度合いが示された「発達プロフィール」と「発達年齢」「発達指数」などの数値結果を知ることができます。発達検査の中でも乳幼児精神発達診断法では検査項目と月年齢を軸にした「発達プロフィール」が作成されます。発達プロフィールは下記の例のように折れ線グラフのように記され、このプロフィールの発達の全般的な遅れや、発達障害の特徴を把握することが可能です。発達障害がある子どもの場合は、一定のプロフィールパターンがあることから診断の参考に使用されています。発達検査の中でも、乳幼児精神発達診断法では検査項目と月年齢を軸にした「発達プロフィール」が作成されます。発達プロフィールは折れ線グラフのように記され、発達の全般的な遅れや、発達障害の特徴を把握することが可能です。発達障害がある子どもの場合は、一定のプロフィールパターンが見られる傾向があることから、診断の参考に使用されています。また津守・稲毛式乳幼児精神発達診断法では「発達年齢」が分かります。新版K式発達検査では「発達指数」と「発達年齢」の2つの数値結果が分かります。「発達指数(Developmental Quotient:DQ)」は認知面・社会性・運動面などのいくつかの観点から発達の度合いを示していて、「発達年齢(Developmental Age:DA)」は、検査を受けた方の精神年齢を示すものです。のちにADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断された3歳2カ月の女の子の検査結果の例です。次女の検査結果は次の通りでした。(1)「姿勢・運動領域」発達指数:96(発達年齢:3歳1ヶ月)(2)「認知・適応領域」発達指数:101(発達年齢:3歳3ヶ月)(3)「言語・社会領域」発達指数:75(発達年齢:2歳5ヶ月)(4)「全領域」発達指数:88(発達年齢:2歳10ヶ月)結果は、検査時点での発達状況を換算した『発達年齢』と、生活年齢と『発達年齢』との比率である『発達指数』で表されます。『発達指数』は、その年齢の平均を100で表されますが、実際にはある程度幅があるそうです。各項目ごとに発達指数と発達年齢が分かります。しかし、これらの数値が分かっても具体的に家庭や学校などで、どのような配慮や療育、学習を行えばいいのか分かりませんよね。そのような具体的な接し方などを示してくれるのが「検査報告書」です。発達検査には検査後にやるべきことを示してくれる「検査報告書」というものを受け取ることができます。「検査報告書」を依頼すると1. 検査結果の数値2. 検査結果からいえること3. 日常生活上配慮していただきたいことなどが記載された報告書を作成してもらえます。子どもに対して、日常的にどのような配慮をしたり、療育支援を行っていくのが良いかの参考となるでしょう。無料で「検査報告書」を発行してくれる機関もありますが、有料で発行している機関もあります。検査形態や「検査報告書」の費用は機関によって異なりますので、詳しくは受診する病院への問い合わせが必要です。「数値結果」欄は「発達年齢」や「発達指数」の数値が記載されています。「検査結果から言えること」欄では、発達の遅れの度合いや理由が下記のように詳しく記載されています。検査者が言った数字を同じ順番で繰り返す課題では、1つの数字を繰り返すことが限界である様子が見られています。このように、相手からことばのみで働きかけられる状況では、検査者のことばに注目を向けること自体が難しい、または「何が求められているのか」がわからないと考えられます。「日常生活上配慮していただきたいこと」欄も、下記のように記載されています。大人が見ている物に(次女)さんの注目を向けて貰うのではなく、(次女)さん自身が”今・現在””その時に”目にしているものや耳にしているもの、手に取っているものなどに対して、「◯◯があったね」「◯◯と聞こえるね」というように要点をまとめた簡潔なことばをつけていく。このように、大人に関心を合わせてもらうのではなく、(次女)さん自身が関心を向けている物に大人が寄り添い、ことばをかけていくことで(次女)さんにとって、把握しやすく、覚えやすい状況となるよう意識していく。発達検査と一緒に知能検査を受けるように言われたけど、なぜ?出典 : 場合によっては、発達検査と知能検査の両方を受けることを勧められる場合もあります。発達の遅れと知能の遅れの両方が疑われている場合など、子どもの発達を多角的に捉えるために使用されます。また医師による発達障害の確定診断を行う際の参考情報として、またその人に合った支援や学習指導の方向性のヒントを得ることを目的として、発達検査と知能検査などの結果は使用されます。現在日本でよく使用されているのは新版K式発達検査、ウェクスラー知能検査、田中ビネー知能検査、K-ABC知能検査などです。では、発達検査と知能検査の具体的な違いはなんでしょうか。知能検査は、知能を精神年齢、IQ(知能指数)、知能偏差値によって測定するための検査です。これに対して発達検査は、被検査者の精神年齢を示す発達年齢(DA)と、認知面・社会性・運動面などのいくつかの観点から発達の度合いである発達指数(DQ)を調べます。要するに知能検査は子どもの知能がどのくらいあるのかを計測し、発達検査は年齢と発達年齢の差がどのくらいあるのかを計測する検査なのです。子どもに発達障害がある場合は、乳幼児期からその兆候となるような特徴が表出することが多いです。しかし、発達初期の乳幼児の発達状態を、通常の知能検査によってとらえることは困難だと考えられています。なぜならば乳幼児は心理的、身体・運動的、社会的側面の発達が十分でないため、知能のみを検査によって測定することは難しいからです。発達検査の適用年齢は早いもので0歳0カ月から設定されており、乳幼児期から検査を行うことができます。これに対して知能検査の適用年齢はおよそ2歳から設定されています。両者とも、発達障害の確定診断や、その子の療養支援に役立てるために利用されますが、受検可能な年齢に違いがあることに注意しましょう。なお、どんな場合にどんな検査が適切であるかどうかの判断基準は、専門家の判断によります。発達検査と知能検査のどちらを受けるべきか、まずは専門機関に相談して判断しましょう。発達検査を受ける前にまずは専門機関で相談を!出典 : お子さんやご自身の発達検査の受診を検討する際は、まずはお住まいの地域にある身近な相談窓口に行くといいでしょう。事前に予約が必要な機関もありますので、相談機関に問い合わせてみてください。また、子どもか大人かによって、行くべき相談機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童相談所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など自宅の近くに相談機関がない場合には、電話で相談できる場合もあります。発達検査や知能検査は、公的病院や民間病院で受けることができます。精神科や臨床心理士による検査が受けられる病院を受診するといいでしょう。「児童発達支援センター」などで受けることもできます。発達検査の受け方、費用は、検査内容や病院によって異なります。また診断書もしくは報告書を書いてもらう場合には、別途料金がかかります。こちらの料金は病院ごとに異なりますので、直接病院に問い合わせてみてください。一方、個人のクリニックや診療所で検査を受ける場合には、すべて自費での診療となります。検査は基本的に誰でも受けることができますが、特に発達に関して気になる点がないと医師が判断した場合は自費となります。こちらの料金設定も各病院ごとに設定されていますので、受診する病院に問い合わせてみてください。発達検査の結果を受けて、専門機関で確定診断を受けたい場合は発達検査を受けた機関に問い合わせるか、もしくは改めて相談機関(保健センター、子育て支援センターなど)に問い合わせてみてください。発達障害の診断はなくても療育は受られるの?出典 : 発達障害の確定診断がなくても、子どもに対して何らかの療育支援の必要性が認められた場合には、児童福祉法に基づく児童発達支援を受けることができます。児童発達支援は障害児通所支援の一つで、小学校就学前の6歳までの障害のある子どもが主に通い、支援を受けるための施設です。日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供したりといった、障害のある児童への支援を目的にしています。療育手帳や身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳を持っていなくても、障害児通所給付費支給申請を専門家の意見書などと一緒に提出し、児童発達支援利用の必要が認められれば、受給者証が市町村から発行されます。この受給者証を取得することで通所の申し込みができ、1割負担でサービスを受けることができます。発達検査によって子どもの発達の遅れや凸凹が比較的大きいと分かったけれども、発達障害の確定診断は出なかった、という場合もあります。また、発達検査は受けさせてみたけれど、確定診断を受けに病院で受診させる気持ちにはなれないといった方もおられるでしょう。実際に確定診断を受けるかどうかは、ご家庭ごとの自由な選択です。しかし、診断を受けなくても、子どもの日常生活上の困難さを緩和させるために、早期から療育支援を受けるということ、選択肢として検討してみることをお勧めします。まとめ出典 : 発達検査は、それ自体が発達障害の診断を行うものではなく、確定診断を行う上での判断要素にすることや、発達が気になる方の特性を理解して療育支援などに役立てることが目的の検査です。発達検査を受けたのちに、専門機関で確定診断を受けるか否かは、自由に選択することができます。また、確定診断を受けなくても、発達の遅れや凸凹による困難を解消するために、療育支援を受けることは可能です。また、発達検査後に発行してもらうことができる「検査報告書」も、子育てや療育のヒントとして活用することができます。発達が気になる点があれば、まずはお近くの専門機関に相談して、発達検査や知能検査を受けてみることをお勧めします。
2016年11月24日就職して3ヶ月後、自分が「発達障害かもしれない」と初めて知る出典 : 私は小学生のときに学習障害の診断を受けていました。しかし母は障害のことを私に伝えていませんでした。勉強するうえでの困難や友達関係は次第に改善されていったので、母をはじめとする周りの大人たちは、私の障害は「完治した」と思っていたようです。しかし私は会社で働き始めてから「自分が発達障害かもしれない」と気付くことになりました。学生時代、様々な困難はあったものの無事大学へ進学した私は、システム開発業の技術者を目指して勉強し、卒業後は望み通りシステムエンジニアとして就職しました。しかし、働き始めて2~3ヶ月後、早くも壁にぶつかりました。それまでの研修では特に問題無かったのですが、実際にシステムの開発作業を行い始めると、ほかの社員と関わることが多くなったためか、トラブルが多発しました。トラブルの内容は、・作業指示を他の人よりも詳細に話さないと理解できない・私の話の要点が分かりづらい・話の行間や雰囲気を察せず、上司の意図を誤解してしまうといった、コミュニケーションに関することでした。自分でもどうしたらいいのか分からず困っていると、上司から「発達障害ではないか?」と指摘されました。「発達障害」という障害の存在を知ったのは、この時が初めてでした。さらに母からも、私が過去に学習障害の診断を受けた経緯を聞き、自分のことについてもっと知る必要があると考えた私は、精神科医の元で発達障害の検査を受けることにしました。受け入れられなかった診断結果。「健常者」として生きることを選ぶ出典 : 発達障害の検査を受けることを、私はあまり深刻に考えていませんでした。なぜなら、母から「障害は完治している」と聞かされていたため、ちょっとした対処法で解決できると思っていたからです。しかし検査の結果を見て主治医が行った提案は、「今の仕事を辞めて障害者雇用で再就職する」というもの。私は大いに困惑しました。私は、「確かに仕事は上手く行ってないけれど、辞めるほどのことではないだろう」「上手く行っていないことを障害のせいにするのは、自分の苦手なことから逃げることだ」と考え、主治医の提案を受け入れられませんでした。また、家族に相談すると、「私に障害があるわけがない」と全員の見解が一致しました。こうした周囲の声もあり、私は主治医の診断を受け入れず「健常者」として生きることを選びました。そして、働いているうちに「自分が発達障害である」ことはすっかり忘れたのでした。解雇、そして再就職活動出典 : 自分が発達障害であることを忘れて仕事に励んだ日々の中では、成果を出せたときもありました。しかし、それよりも多くの失敗が続きました。会社は努力している私を見て、様子をみてくれていましたが、4年近く経っても問題である「仕事上のコミュニケーション」はうまくできないままでした。そしてついに、私の解雇が決定しました。解雇を宣告された時は、とても悲しかったのを覚えています。しかし、私はこれ以上頑張って挽回出来る見込みを自分でも感じられませんでした。また、解雇に無理やり抵抗して、会社にしがみ付いているだけの人生も嫌だと思い、解雇を受け入れました。再就職に向けた活動は難航しました。ハローワークで求人票などをチェックしましたが、「コミュニケーションに関する能力不足」が理由で解雇された私を雇ってくれる所なんてあるのかと途方に暮れ、全くと言っていいほど再就職活動は進みませんでした。私は次第に家にこもるようになりました。「このままだと精神を病む事になるだろうな」とぼんやり考えていました。人生に、絶望していました。迫りくる自分の無気力に対する不安。一か八か、わずかな希望に賭けるUpload By 穹峰蒼志引きこもり気味の日々を過ごしていたあるとき、私は1つの新聞記事を目にしました。それは、不登校で引きこもりだった少女が地球一周の船旅に出て前向きになるという内容でした。この記事を読んだ私は、家族の声が届かず、インターネットもつながらないような海の上で自分の人生を考えたいという思いと、私も長い旅を経て何かが変わるかもしれないという希望を持ちました。その船旅に出ることは私にとってやはり大博打でした。一応地球一周の船旅を企画しているツアーの中では格安ですが、それでも130万円以上の費用がかかります。貯金で払うことは可能でしたが、当時無職で再就職のあても全く無い私は、この旅で何かを得られなければただ散財するだけになってしまいます。しかし、「このままだと確実に気力を失って、死が待っている」と感じた私は一か八か賭けてみることにしたのです。世界中の人々との出会い、広がりゆく視野Upload By 穹峰蒼志Upload By 穹峰蒼志私はわずかな希望に賭けて、地球一周の船旅に出かけました。さて、地球一周の船旅と聞くと、リッチで高級、ゴージャスといったイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか?残念ながら私が参加した船旅は、それとはかなり程遠いものです。しかし、この船旅は私も含めてほとんどの方が退屈していませんでした。というのも、乗船者自身が船内でイベントを企画する「手作り感満載」な船旅だったからです。ゴージャスでこそないものの、娯楽を自分達で作り出す過程はとても楽しいものでした。私はこの旅で、幅広い世代と交流し、世界各国を巡り様々な人々と出逢いました。「失業中」という事実に、家族や友人達との間では私は気まずさや負い目を感じていましたが、船には似たような境遇の人もいます。社会とうまく関われない人間は私だけではないのだと知り、どこか安心できました。旅を通して、国や人種や宗教の違いを目の当たりにして、私は”人間には多様な生き方がある”ということを肌で感じました。私の視野は、確かに広がり始めていたのです。同性愛者の友達のカミングアウトを聞いて、人生が変わった出典 : 船旅の中で、ついに私の人生を180度変える出来事が起こりました。ある日、同性愛者や性同一性障害の方々が自分達の事をカミングアウトする船内イベントがありました。カミングアウトをした人たちの中には、私がよくお世話になっている方もいて、私は衝撃を受けたのです。「どうして同性愛者である事を告白したのですか?隠しておけば良さそうなのに、告白するのは怖くはなかったのですか?」と私はその人に聞いてみました。それに対する答えは、「同性愛者である自分を知って離れていく人がいても仕方がない」というものでした。その人は、同性愛も含めてありのままの自分を受け入れていたのです。この出来事がきっかけで、「私は私の全てを受け入れていただろうか?」と考え始めました。そして、過去に受けた発達障害の診断についてもう一度考え直しました。今までの私は、都合の良い自分しか見ようとせず、不都合な自分のことを無視していたと気付いたのです。発達障害の診断を受けた当初、診断を認めれば出来ない事や失敗した事を障害と紐付けて、逃げることになると思っていました。しかし、本当は自分の障害と向き合わないことこそが逃げることだったのです。こうしてようやく私は、自分の発達障害に目を逸らさずに向き合う決意をしたのです。障害があることを理由に、将来の可能性を狭めないで出典 : 以前、発達障害のお子様を持つ保護者の方から、以下の相談を受けたことがあります。「子どもが将来やりたいことを、親としては応援してあげたいと思いますが、やはり難しいのでしょうか?」私は障害の有無が問題では無いと思います。障害の無い人でも、やりたいことを実現できていない人もいます。重要なのはやりたいという気持ちと、何ができるかの把握だと思います。私は以前システムエンジニアになりたくて、休日も惜しんで勉強をしました。でも仕事で十分な成果を出すことはできませんでした。もし得意・不得意分野を把握し、それらが障害の特性からくるものだと分かっていれば、不得意なことへ必要以上に時間を割かず、成長しやすい得意分野を伸ばすなど、何かしらの対応ができたかもしれません。どうか障害がある事だけを理由に、将来の可能性を狭めないで下さい。できない理由や失敗した原因を安易に障害のせいにしていると、いずれ何もできなくなってしまうと思います。でも、自分の障害上の特性を理解すれば、活路を見出せるかもしれません。障害者雇用で働くことを決意した私ですが、その道のりにも様々な困難が伴いました。しかし、発達障害を受け入れた私にとってその困難は乗り越えられないものではなく、無事に再就職してから3年半が経ちました。次回は、発達障害を受け入れながら働くとはどういうことなのかを振り返ってみたいと思います。
2016年11月24日ママやパパの話す声、いろんな場所で目にする文字。子どもたちは物の名前と文字につながりがあることを知り、新たな発見に驚きながらもどんどん「ことば」を覚えていきます。そこで今回は 絵本ナビ 協力のもと、赤ちゃんから未就学児程度まで楽しめる「あいうえお」絵本を選んでみました。あっちゃんあがつく たべものあいうえお原案:みね よう/作:さいとう しのぶ/出版社:リーブル 「あっちゃんあがつく たべものあいうえお」(絵本ナビ紹介ページ) 「あっちゃん あがつく あいすくりーむ」で始まるこちらの絵本には、おいしそうな食べ物がたくさん出てきます。ページごとにストーリーを感じるので「もしかしたらこの後はこうなるのかな?」なんて想像しながら新たなページをめくるのが楽しい! いちごじゃむを塗られているトーストや、すっぱい梅干を食べたくまの子の表情がなんともいえず愛らしいです。あいうえおべんとう作・絵:山岡 ひかる/出版社:くもん出版 「あいうえおべんとう」(絵本ナビ紹介ページ) あいうえお、の言葉でできあがるお弁当って? なるほど「あ」は、あすぱらがす。「い」はいちご、「う」はうずらたまご、「え」はえびふらい、「お」はおにぎり。この調子で、ら行まで登場する色とりどりのおいしそうなお弁当たち。物語の最後はみんなで「いただきます」! 明日のお弁当づくりのヒントになるのも、ママにはうれしいですね。リングカード・あいうえお 作・絵:とだ こうしろう/出版社:戸田デザイン研究室 「リングカード・あいうえお」(絵本ナビ紹介ページ) 約8×16cmの美しい曲線を描くリングカードは全部で46枚。車に動物、食べ物などシンプルで分かりやすいイラストが大きく描かれているので、小さなお子さんとも絵を使った親子のコミュニケーションが可能です。感性を刺激するカラフルなカードは、赤ちゃんの目にもくっきりと映ります。イラストの裏には物の名前が書いてあります。子どもの頭の中で「絵とことば」が頭の中でつながる瞬間を、間近で目にできるかもしれませんね。 ぐりとぐらのあいうえお 作:中川 李枝子/絵:山脇 百合子/出版社:福音館書店 「ぐりとぐらのあいうえお」(絵本ナビ紹介ページ) 「あさ いもほり うでまくり えんやらやっと おおきなおいも」「なんとまあ にんじん ぬいたら ねっこのひげが のびほうだい」など、リズミカルにことば遊びが楽しめる絵本。ぐりとぐらシリーズは初めてというお子さんも、くまやきつね、いのししやろばなどたくさんの動物が登場するので見応えたっぷり。12×12cmのコンパクトサイズなので持ち歩き用にもおすすめです。くろくまくん あいうえお 作・絵:たかい よしかず/出版社:くもん出版 「くろくまくん あいうえお」(絵本ナビ紹介ページ) あいうえお、を口にするときってどんな顔になるのかな? 大きくお口をあけたら「あ」、真っ白な歯を見せて「い」。しろくまくんの後に続いて、ぶたくんやねこさん、うさぎさんらほかの動物たちもマネする様子が可愛らしい! 顔マネだけじゃなく、立ち姿などのポーズも真似れば全身運動になるかも? 50音を覚える前の予行練習にもおすすめの一冊です。何気ないようで計算しつくされた「ことば」の数々。子どもたちが楽しく、そして覚えやすいように考えられたひらがな絵本を紹介しました。歌うように読んであげたり、ママも一緒になってマネっこしたり、親子で楽しくことば遊びしてみましょう!データ協力: 絵本ナビ
2016年11月24日それまでなんとか小学校に通っていた長男。3年生になったとたん、授業が変わり…出典 : 小学校入学直後から「学校いかれへん!」となった長男も、支援級の先生のサポートを受け、2年生からはずいぶん授業に参加できるようになってきました。しかし、小3の1学期からまた「学校に行きたくない」と主張するようになりました。付き添ってよく観察してみると、・授業の内容・授業のスタイル・支援の体制こうした進級に伴う3つの変化が絡み合った結果、ストレスが起きている様子でした。自分の意見を自覚できるようになったのはいいけれど、しんどさは変わらず出典 : 授業内容の変化で1番大きかったのが、じっくり考える問題が増えたことです。例えば算数では「筆算」がその1つ。パッと答えが出るものは得意なのですが、こつこつ積み上げ、答えを出していくことが苦手だという特性があるのです。授業のスタイルもそれに伴い班で話し合うグループワークの比重が大きくなりました。社会の「みんなで学校周辺の地図を作ろう」という単元では、それぞれが調べてきたものを持ち寄り、1枚の大きな紙に書きこんでいきます。「ここはもうちょっと北じゃない?」「違うよ」と、意見が合わないとイライラし「じゃあ、もう知らない!」やめてしまう長男。2年生の時は、あまり周りを見ずに主張していた面もあったのですが、3年生になると「自分がいたら地図作りが進まない」と廊下に出るようになりました。出典 : 自分の意見がはっきり自覚できるようになってきた影響は国語にも現れました。例えば「朝食を摂ると元気になれる」という説明文では、「朝食を摂っても学校に来たらしんどくなるよ!」ということが気になって、落ち着いて取り組めません。また、ホームルームのテーマが「運動会に向けて」の時では、みんなが「どうやったら心を1つにしたダンスができるか」と話し合っているときに、そもそも「どうして運動会をするの?ぜんぜん楽しみじゃない」という思いが抑えきれないのです。みんなの前で本音は言えないということがわかっているので、やっぱり廊下に出ることになります。ホームルームではまとめプリントに意見を書いて提出するという形での参加となりました。支援体制の変化も原因の1つだった。自立を促したい気持ちはあったけれど…出典 : 年生の時はずっと支援級の先生が付いてくださったので、私は登校後、「よろしくお願いします」と帰ることができました。授業でふと疑問に思ったことも、支援の先生にすぐ聞く事ができていたので、集中ができず授業が嫌になりかけても、面白く盛り上げつつ気持ちが途切れないようにしてくださっていたのでしょう。しかし、3年生になると支援級の先生がもう1人別の学年のお子さんと掛け持ちになり、教室にいてくださる時間が半分になりました。その結果、「できない」「わからない」があっても自分で判断して行動する必要が増えますが、1人で考えていると「やらない」方向にいってしまったようです。教室に入れない長男をそのままにして立ち去りにくいことが増え、そうこうしているうちにズルズルと付き添う日も増えてきました。知的なデコボコは大きくても、「遅れ」として見えにくい場合「中学年になったら自立の方向へ」というのは慣例であり、また予算の都合も仕方ないと思いますが、「うーん、やはり1人で過ごすことは時期尚早だったか…」と痛感したのです。それでも学びたい気持ちはあるようで…長男の「やりたい!」を引き出してくれたのは幼虫観察だった出典 : とうとうある日、好きなはずの理科も嫌と言いだしました。「どうして蝶の幼虫の観察をしないの?班で1匹、しかも学校にいる時間だけの観察なんてつまらない」というのがこのときの原因でした。とはいえ、幼虫の生態は気になっていた長男。ある日のこと、自宅の庭にやってきた幼虫を見つけ、「飼ってみようかな」と言いだしたのです。私はその一言を聞き、すかさずOKを出しました。その後、旅行にも持っていくほど熱心に観察していた長男。写真を撮り、羽化するまで自宅で飼いました。観察してわかった生態はレポートにしてまとめ、先生に見せました。「すごく面白かった。さなぎになる前に1回だけ液体を出すの、1番びっくりした!」と報告していました。好きなことは思い切りやりたいタイプの長男。風の実験では「本音では、器具が壊れるほどやり倒したい」。植物を育てるのも「種まきから種取りまでやりたい」。こうした好奇心は、教科書に載っていようが載っていまいが関係なしです。この子には、みんなとは違うやり方で学ぶのが合っているのだな…ということが、よりハッキリ見えてきました。好きなことから学ぶスタイル。それは「学校を使った」家庭学習!出典 : 学校は、こうして発見した長男の学習意欲を発揮する場となりました。たとえば、学習した内容をプリントにして持っていき、学校の先生に報告して「家族以外の人から知識を得る」「コミュニケーション力を伸ばす」機会にしてみるのです。これについて先生方はありがたいことに、「面白いことやってるね」と言って下さることが多いです。「学校に来てもしんどいねん!」とハッキリ口に出す長男に対し、交流級の先生はがっちり受け止めるタイプなので「そうか。まあでも、1日に1回は顔を出して、今やってることを教えてよ」と言います。「どうやったら学校で過ごせるか、一緒に考えていきましょう」とふんわり、でもあきらめずにいてくれるのが支援級の先生。掃除や給食など、集団行動での振る舞いは学校でなければ学びにくいことだと、私自身も感じています。そんなわけで、なんだかんだ言いながらぼちぼち通学も続けています。出典 : 学校に行っても授業に入りにくいときは、廊下においてある机で、できそうなことをやります。みんなが今どんなことをやっているかを知るというのも、学習を進めるエンジンとして活用しています。このスタイルは、学校を「使いながら」の家庭学習と言えるかもしれません。弱みと強みは表裏一体。最近の口ぐせは「学校いらん」から「どうしてみんなは『普通に』授業を受けられるんだろう?」に変わってきました。周りが見えるようになってきたのは成長だと思います。学年が進むにつれ、授業も長男も更に変わっていくはずです。支援の体制をどう希望、提案していくかも含め、多くの人を巻き込みながら、できるだけ楽しくやるようにしていきたいと思います。
2016年11月23日聞いて理解することが苦手な息子は言い間違いも多い。しかし見て理解する力は高く…出典 : 自閉症スペクトラムとADHDの診断を受けている息子は、耳から入ってくる言葉(聴覚言語)の認知が弱いため、何度口頭で説明しても正確な言葉や意味、その内容を理解するのに時間がかかります。マクドナルドをポテトナルドと言ったり、ファミリーマートをチキンマートと言ったり、聞いていてクスッと笑えるような言い間違いは息子のチャームポイントでもありますが、幼児期を脱すると困ることがたくさん出てくると思います。例えば…・話を聞いていても、内容がよく理解できない・内容が理解できないから、話をするのが面倒になる・言い間違いを指摘されるのが嫌で、話さなくなる・思っていることを相手にきちんと伝えられないなどなど、実際起こるかどうかは別として、たくさんの弊害が考えられます。一方で、視覚優位(目で見る情報の認知が強い)な息子は幼いころから目で見る言葉に興味があり、早くから文字を読むことができました。6歳になった今では、小学校3年生レベルの漢字を簡単に読むことができます。せっかく言葉が好きなのに、聴覚言語の認知が弱いせいで、それを使いこなせなくなるのはもったいないな…。どうすれば、耳から入った言葉をきちんと認識することができるのでしょうか。聞いて理解する力を伸ばしたい!解決策は突然訪れた出典 : そう悩んでいた矢先、ひょんなことから息子にぴったり合った方法が見つかりました。それは、子ども向けの映画をみんなで観ていた時のことです。息子「ママ、あの字が下に出てくるやつ、出せないの?」私「えっと、英語で映画を観るときに日本語が出てくるやつ?」息子「そうそう!あれを出してほしいの!」私「あれは字幕っていうんだけど、日本語で見てるのに出すの?」息子「うん!あれ(字幕)があると何て言ってるか僕にもわかりやすいんだよ!」なるほど!目から鱗というか、どうしてそこに考えが及ばなかったのか!と目の覚める思いでした。字幕ってスゴい!息子は自分で理解しやすい方法を知っていたようです出典 : 息子は耳から入ってくる言葉を理解するのは難しいですが、目から入ってくる文字を理解するのは得意なのです。それならば、英語で観るときに限らず常に字幕を出しておけば、息子は正確な情報を手にすることができます。そうして、今まで何回も観た映画や録画していたテレビ番組を、字幕付きで見直す日々が続きました。すると…「○○って言ってると思ってたけど、●●って言ってたんだ!」「△△って、こんな字を書くんだね!知らなかった!」「ああ、ここは悲しんでいたんだ。わかってなかったよ!」そんな感想を言いながら、息子は今までぼんやりと入っていた情報を、きちんと頭の中で整理しているように見えました。今では、全ての番組を字幕付きで表示しています。字幕を付けてから、テレビを見ている際の「今なんて言ったの?」「誰が喋ったの?」という息子の質問攻撃はぴたりと治まりました。Upload By GreenDays中には字幕のつかない番組もありますが、子ども向けにはきちんとルビを打った字幕がついていることが多いです。この機能は、ひらがな・カタカナがスムーズに読めるようになった、聞いて理解するのが苦手なお子さんには、とてもよいサポートアイテムになるのではないかと思います。テレビのメーカーによって字幕の表示方法は異なると思いますが、チャレンジしてみたい方は、一度ご自宅のテレビのリモコンや取扱説明書を確認してみてくださいね。字幕をつけてから言葉への興味がいっそう深まった出典 : 字幕をつけるようになってからおよそ2週間。息子に少しずつ変化が表れました。今まであまりなかったことですが、言葉についての質問がどんどん増えてきたのです。息子「ママ、『空想』ってどういう意味?」私「どんな字を書くか知ってる?」息子「うん、お空に想うって書いてあった。」私「そう。こんな字だったよね!」と、実際に紙に字を書きながら説明します。私「これはね、本当は起こっていないことを、頭の中の広い場所で考えることだよ。お姉ちゃんとごっこ遊びしてる時に、よく『これは嘘だけど、僕はお父さんで、会社から今帰ってきたところね~!』とか言ってるでしょ?あれも空想だよ。頭の中で考えた空想の世界を、お姉ちゃんと一緒にわけあって遊んでるってことなんだよ。」息子「へえ!そうだったんだ!じゃあママ、『もたれる』ってどういうこと?」私「それはね、自分じゃない何かに寄りかかることだよ。」息子「寄りかかる?」私「そう。例えばこんな風に、今ママは壁に背中をつけてるでしょ?これは自分で立ってるんじゃなくて、壁に『もたれて』立ってるの。どこにも体がついていなければ『もたれてない』、体のどこかが壁にくっついていれば『もたれている』っていう事なんだよ。」出典 : 息子「へぇ~!初めて知った。」私「これはどう?」(壁に体をつける)息子「もたれてる!」私「じゃあ、これは?」(壁から体を離す)息子「わかった!もたれてない!」こんな風に、1つひとつの言葉を丁寧に知りたがるようになりました。今まではその瞬間に「どういう意味だろう?」と思っていても、はっきりとした言葉として息子の頭に残っていなかったので、質問することもなく通り過ぎていたのでしょう。目で文字を見ることによって、自分の知らない言葉が何であるのかがはっきりとし、頭の中に文字が残ることにより、後からでも質問ができるようになったのです。言葉を理解する方法はいろいろ。迷ったら子どもの得意な方法で!出典 : これから先、学校の授業など耳からの情報だけで何かを処理しなければならない場面が、たくさん訪れることでしょう。それでも、耳から入ってくる言葉をあらかじめ知っているか知らないかによって、理解度は大幅に変わってくると思います。なるべく正確な言葉と意味を、息子の得意な方法で蓄積していくこと。これが、私と息子の新たな目標となりました。ADHDの息子は集中力が短く、絵本を渡すと絵に興味を奪われて高速でページをめくってしまうので、正確な言葉を覚えるには適していません。いろいろ試した結果、息子に向いているのは展開が早く、文字情報が記載されているドラえもんなどの学習漫画と、映像に字幕がついているものが合っているようです。興味のあるテレビ番組や漫画で、しっかりと言葉を覚えてることができれば、やらされている感もなく、長く続けられそうな気がします。正確な言葉を知ることは、きっと子どもの自信にも繋がると思います。耳から入る情報に弱いお子さんにもぜひ1度、テレビの字幕や簡単なマンガなどを試してみてくださいね。
2016年11月22日聴覚障害とは?出典 : 聴覚障害とは、音の情報を脳に送るための部位のいずれかに障害があるために、音が全く聞こえない、あるいは聞こえにくい状態のことです。全く音が聞こえない状態を全聾(ぜんろう)、音が聞こえにくい状態を難聴といいます。また、聴覚障害には、後天性のものと生まれつきの先天性のものがあります。先天的に難聴のある子どもは、毎年1000人に1人の割合で生まれています。聞こえの障害は、生まれつきの障害の中で、もっともよく見られるもののひとつです。そのために新生児の段階で聴覚に問題がないかどうか調べるためのスクリーニング検査を受けることがすすめられています。子どもの難聴が中軽度の場合には、重度の場合に比べてその発見が遅れる傾向にあります。というのも、中軽度の場合には、自分が難聴であると自覚することが難しく、日常生活の中で不自由が生じても、保護者に伝えることが稀であるためです。耳から情報を適切に取り入れることができない聴覚障害の子どもは、コミュニケーションや言語発達の面に遅れが生じる傾向にあります。そのために、聴覚に問題が見つかったときには、できるだけ早く治療を行うことが大切です。聴覚障害のある子どもに対しては、聞こえを改善する訓練や治療、視覚的な手段を使ったコミュニケーションの方法を取り入れることにより言葉の獲得を目指します。耳鼻科疾患分野 先天性難聴|難病情報センター聴覚障害の原因出典 : 父親と母親の遺伝子の組み合わせや、遺伝子の突然変異などにより引き起こされる難聴です。遺伝的な要因の場合には、外耳やその他の器官の奇形など難聴以外の障害が同時に出現することがあります。遺伝以外の要因には、妊娠中にかかった以下の疾患があげられます。●風疹●サイトメガロウイルス感染●トキソプラズマ●ヘルペス感染●梅毒そのほか、●早産(妊娠37週未満での出産)●出生後の頭部外傷や、幼小児期の感染症(髄膜炎、麻疹、水痘)●ある種類の薬(ストレプトマイシンという抗生物質など)が難聴の原因となることもあります。また、耳の感染(中耳炎)によっても一時的に難聴となることがあります。耳の感染を繰り返していて、きちんと治療されていないような場合、難聴となってしまう可能性があるので注意して下さい。ここで紹介したものは、聴覚障害全体の原因の約6割であり、その他の原因についてはまだ調査が行われている途中です。幼少児難聴とは?|独立行政法人国立病院機構 東京医療センター聴覚障害のタイプ出典 : 聴覚障害は、聞こえを阻害する部位によってタイプが異なり、伝音性難聴、感音性難聴、混合性難聴という3つの種類があります。タイプごとに治りやすさや治療、改善の方法も変わってきます。外耳から中耳の間で、異物などが音の通り道をさえぎることで起こるのが伝音性難聴です。具体的な原因は、以下のような場合です。・腫瘍や耳垢などにより外耳道が塞がっている・鼓膜に傷がついている・中耳に水が溜まっている・中耳が菌などに感染し、膿(うみ)が溜まっているこれらが原因の難聴は一時的なものであり、ほとんどの場合は薬を飲んだり、溜まった水や膿(うみ)を抜く治療を行うと、聞こえは改善されます。感音性難聴とは、耳の奥の内耳と呼ばれる部位に障害がある状態を指します。遺伝的な要因や、妊娠中の感染が原因のときには、このタイプの難聴が起こることが多いです。音を感知する部分、その音を信号に変換する部分に障害が起こっているために、治療や手術によって聞こえを改善することができないことがあります。そのような場合には、補聴器や人工内耳の装着により、聞こえを補うことが必要です。上記のふたつの難聴が同時に引き起こされる場合が混合性難聴です。聴覚障害はどうやってわかるの?診断は?出典 : 聴覚の障害が重い場合には、生後間もなく聞こえの問題が発見されますが、中軽度の場合にはその発見が遅れる傾向にあります。子どもの聴覚障害の場合には、コミュニケーションや言葉の発達の面に遅れが生じることがあり、それらの遅れが聴覚障害を見つけるきっかけとなることが多いようです。聴覚障害のサインとしては以下のようなものがあります。・乳児のとき、一時期は出ていた「あー」「あうあう」などの声が出なくなった・大きな音がしたときに反応を示さない・生後6ヶ月を過ぎても、相手の声の真似をしようとしない・3歳までに単語をしゃべらない・言葉の代わりにジェスチャーを使うより年長のお子さんでは、難聴のサインとして以下のようなサインがあります。・周りの子どもより言葉の数が少ない・理解しにくい言葉でしゃべったり、非常に大きい(またはか細い)声を出したりする・何度も聞き返す・授業中ぼんやりしていたり、読み書きや計算が苦手だったりするこれらの項目に当てはまる場合にも、一概に聴覚障害であると判断することはできませんが、子どもの様子を見て、心当たりのある場合には一度聴覚検査を受けてみるとよいでしょう。聴覚検査は、病院の耳鼻咽頭科で受けることができます。聴覚検査で調べることができるのは主に2つです。聞こえの程度と、どこの部位に異常があるかどうかについてです。聴覚を調べる際には、月齢、年齢に応じた検査が行われます。6ヶ月未満の子どもによく行われているのは、脳波を測定する検査です。この検査では、小さなイヤフォンで音を聞かせます。子どもの頭の上に、コンピューターに接続されている電極をつけることにより、音に反応して脳波に動きがあるかどうか確かめます。年齢が上がってきたときには、スピーカーから音を流して何らかの反応があるか調べる検査や、音が聞こえたらおはじきを取ったり、ボタンを押したりする検査を行います。耳の聞こえのチェックは、1歳半、3歳の乳幼児健診のときに行われますが、聴覚障害のある場合には、治療を施す時期が早いほど、聴力が回復しやすく、言葉の学習をスムーズに行うことができます。ですので、定期検診が来るのを待つのではなく、なるべく早い段階で検査を受けるようにしましょう。聴覚障害の等級出典 : 聴覚障害の等級分類は、聴力のレベルと、言葉がどれくらいはっきりと聞こえるかを示す語音明瞭度により決まります。聴力のレベルは音の大きさを示すデシベル(db)という単位により表されます。デシベルの数値の示す音の大きさの目安は以下をご覧ください。どの程度大きい音からなら聴き取ることができるかという測り方をするため、聴力の場合は、デシベルの値が大きくなればなるほど、耳が聞こえにくいということになります。正常聴力の場合は、0デシベル近辺であり、難聴の程度が強くなるほどこの値が大きくなります。Upload By 発達障害のキホン厚生労働省により定められている聴覚障害の等級の基準は以下の通りです。◇2級:両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上、全聾(ぜんろう)の場合◇3級:両耳の聴力レベルが90デシベル以上の場合◇4級:両耳の聴力レベルが80デシベル以上の場合、または両耳による通常の話し声の語音明瞭度が50パーセント以下の場合◇6級:両耳の聴力レベルが70デシベル以上の場合、または片方の聴力レベルが90デシベル以上、もう片方の聴力レベルが50デシベル以上の場合上記のいずれかに該当する場合には、身体障害者手帳の交付を受けることができます。身体障害者障害程度等級表|厚生労働省身体障害者手帳とは、難聴を含め、障害のある人が取得することができる手帳です。平成23年の時点で聴覚に障害があり、身体障害者手帳を所持している人数は14万2000人です。障害者手帳を取得することで、障害の種類や程度に応じて様々な福祉サービスを受けることができます。交付を受けるためには、指定された医師による診断書と意見書が必要となります。用紙は市区町村の窓口にある用紙に記入をして申請を行います。申請から約1ヶ月程度で身体障害者手帳が発行されます。手帳の申請については、以下のページに詳しく手順が載っているので参考にしてください。身体障害者手帳の所持者数|内閣府聴覚障害の治療・改善方法先天性の聴覚障害には、治療により治すことができるものと、治療によっては治すことができないものがあります。治すことができない聴覚障害の場合には、聴力を補うために何らかの改善方法がとられます。子どもが聴覚障害の場合には、早い段階で治療を開始するのが理想的といわれています。聴覚障害の改善には、難聴の種類や聞こえの程度により、その内容が変わってきます。ここでは、聞こえの改善のための方法についてお知らせします。出典 : 補聴器は、普通の大きさでの会話が聞こえにくくなったときに、はっきりと聞くための医療機器です。補聴器が有効となるのは、音を伝える部分の障害である伝音性難聴に対してのみとなります。音を脳に伝える機能の障害である伝音性の難聴には別の改善方法がとられます。補聴器にはたくさんの種類があり、また価格によってついている機能もさまざまです。最適な補聴器を選ぶために、補聴器の相談医から販売店の紹介を受けるようにしましょう。補聴器の購入の際には、保険は適応されません。しかし、身体障害者手帳をお持ちの場合には、補装具交付申請書を市区町村の福祉関係の窓口に提出することで1割負担で購入することが可能となります。人工内耳は、機能しなくなった内耳の部分に電極を挿しこみ、音を電気信号に変えて神経に送る方法です。人工内耳をつける場合には、以下の条件を満たした上で、手術が必要となります。・内耳が原因の感音声難聴である・年齢が1歳以上である・体重が8kg以上である・6ヶ月以上の補聴器装用によっても十分に聞くことができない人工内耳の手術には、健康保険が適用されるほか、自立支援医療(更生医療)、高額医療費支給などの各種医療費の助成を受けることにより、負担額の軽減ができます。詳しくは、お住まいの市区町村のHPをご確認ください。補装具費支給制度の概要|厚生労働省自立支援医療(更生医療)の概要|厚生労働省高額療養費制度|全国健康保険協会小児人工内耳適応基準|一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会難聴の原因部位によっては、手術が行われることがあります。手術が必要なものの例としては、音の聞こえを阻害している異物の除去や、新たな鼓膜の形成、中耳の骨を人工のものに置き換える必要がある場合などがあります。耳の手術は、耳の後ろを開いて行うものと、耳の穴から原因となっている部位に治療を施す方法があります。耳の手術について | 耳鼻咽喉科専門 医療法人財団 神尾記念病院内耳の循環や血行を良くするために、血管拡張薬、向神経ビタミン製剤(ビタミンB12)の服薬が処方されることがあります。薬物による治療法の効果や必要な量・期間には個人差があるため、服薬の際には、専門家の指導を受けながら用量・用法を守りながら行いましょう。難聴、耳鳴り|慶應義塾大学病院 KOMPAS聴覚障害のある子どもの学び場出典 : 聴覚障害があるときには、どのような場所で学ぶことができるのでしょうか。子どもの状況に応じて、必要な環境を柔軟に選択していくことが大切です。この章では、それぞれの学び場の概要や特徴をご説明します。聞こえやコミュニケーションの程度と照らし合わせ比較しながら、お子さんに合う学びの場はどこか検討してみましょう。Upload By 発達障害のキホン強度の難聴のある子どもや、まったく耳の聞こえない聾(ろう)の子どもが入学することができます。入学の際には、学校教育基本法の就学基準を満たしていることが条件です。就学できるかどうかは、保護者の意向を尊重しながら、市町村の教育委員会が総合的な視点から判断して、本人の聴力レベルと、コミュニケーション能力、学力から総合的に判断されます。学校教育法施行令第22条の3による、特別支援学校の就学基準は以下の通りです。・両耳の聴力レベルがおおむね60デシベル以上のもの・補聴器等 の使用によっても通常の話声を解することが不可能、または著しく困難な程度のもの特別支援学校の授業には、国語や算数などの一般的な学習のほか、自立活動が時間割に取り入れられます。例えば、補聴器の取り扱いや音の聞き取り、語句・文・文章の意味理解やコミュニケーションの改善についてが自立活動の内容になります。1クラス当たりの人数は平均で3人であり、少人数での教育が行われています。特別支援学校への就学(入学・転校等)をご検討されているお子さん、保護者に対して、見学や教育相談に対応している学校もあります。◇聾(ろう)学校また、特別支援学校という区分の中に「聾(ろう)学校」という学校があります。ですが、厳密には、学校教育法が2007年に改正された影響を受けて、聾(ろう)学校という個別の区分はなくなりました。現在、校名の変更や休校・統廃合が進められたりすることにより、全国的に聾(ろう)学校の数は年々少なくなってきています。聾(ろう)学校という名前がついていても、その受け入れは聴覚障害のある子どものみではない学校もあります。学校名は「聾(ろう)学校」 のままですが、他の障害種別の学校と統合されたり、知的障害教育部門が設置されたりするなど、様々な形態が見られるようになっています。詳しくは直接学校へお問い合わせください。Upload By 発達障害のキホン聴覚障害が比較的軽度の場合には、難聴の特別支援学級に通うことができます。就学ができる条件は、主として聞くこと・話すことにかかわる特別な指導をすれば、通常の教育課程や指導方法によって学習が進められるような場合です。難聴特別支援学級では、原則として小学校や中学校と同様の学習指導が行われます。それに加えて、必要に応じて、音の聞き取りや補聴器の扱いなどに関する自立活動が行われます。聴覚の活用のためにオージオメータや集団補聴器、発音・発語指導のための音声直視装置などの機器が用意されていることがあります。聴覚障害の程度が軽度な場合や、その学校・学級で適切な配慮・支援を実施できる場合には、通常の学級で指導することが適当なことがあります。難聴のある子どもが通常学級で学習する場合には、教室内の音の環境や、座席の配置などに配慮をしてもらう必要があります。Upload By 発達障害のキホン「通級による指導」は、学校の通常学級に在籍している軽度の障害のある子どもに対して、決められた時間のみ、在籍する学級の授業の代わりに受けられる特別な指導のことです。通称「きこえの教室」といわれています。平均的には、週1~2回ほどで、1回あたり90分ほどの個別指導を行います。必要に応じて、グループでの指導も取り入れられます。通級指導の先生は、子どもがよりよく通常学級に適応できるよう、連絡帳や連絡会を用いて、学級担任の先生方と密に連絡を取りあいます。聴覚に障害がある人のコミュニケーション手段出典 : 聴覚に障害のある人のコミュニケーション方法には、手話、指文字、読話、補聴器、筆談などの方法があります。コミュニケーション手段をいろいろな場面や相手に応じて使い分けたり、併用したりすることによってコミュニケーションを行っています。手や指の形、動きによって、お互いの意思を伝え合う方法です。手話は、話し言葉とは異なる文法や語彙をもつ、ひとつの言語として捉えられています。手話にもさまざまなバリエーションがあり、障害の生じた時期や手話を覚えた時期によって、使用される手話も異なります。50音をすべて指の動きで表現する方法です。指文字だけを用いる場合もありますが、手話と一緒に補助的に使われることがほとんどです。母音を口の形で表しながら、子音を手の形で表すコミュニケーションの方法です。キュードスピーチは、母音を口の形で表すために、発音の勉強にも使われます。発音を1文字ずつ丁寧に表すときに使用します。習得すると、会話と同じかそれ以上のスピードでコミュニケーションをとることができるようになります。紙やボードへの読み書きによって、意思を伝え合う方法です。特別な技術を習得することなく取り入れられるコミュニケーションの手段です。ただ、文字による情報だけでは細かいニュアンスや感情が伝わらない場合があります。口話は、話し手の口の動きや表情などを見て相手が発する言葉を捉え、話し言葉を用いて意思を伝える方法のことをいいます。口話は、耳の聞こえる人とのコミュニケーションにおいては便利なものではありますが、伝わりにくい場合もあります。例えば、「たばこ」「たまご」「なまこ」など口の動きが似ていることばや、「協力」と「強力」など同じ発音の言葉などです。また、暗い場所や、相手との距離が離れている場合には、相手の口の動きがわかりくいために、ジェスチャーや筆談と併用されて使われます。聴覚障害のある子どもが周りにいる方へ出典 : 聴覚障害のある子どもは、耳から情報を取り入れることができない、もしくは取り入れにくいために、生活の中でさまざまな困りごとに出くわします。聴覚障害のある子どもに対して、どのような配慮をすればより過ごしやすくなるのかご紹介します。補聴器や人工内耳をつけていても、騒音に囲まれた場所では、相手の声が聞こえないこともあります。ですので、補聴器や人工内耳をつけていたとしても、聞こえの困難を抱えていることを理解して対応する必要があります。例えば、静かな部屋では言葉のやりとりができるのに、にぎやかな場所に行くと、相手の声が聞き取れず、急に無口になるということが生じます。音声での会話に加えて、視覚的に情報を示すことで、周囲と円滑にコミュニケーションをとることができます。そのほかには以下のような配慮が考えられます。・向かい合った状態でアイコンタクトをとり、相手が自分の顔を見ているか確認してから話し始める・文節で区切りながら、ひとつひとつの単語をはっきりと話す・複数の人数で話すときには、手をあげるなどして話し手が誰かわかりやすくする・明るい場所で話す耳の聞こえない子どものコミュニケーションの方法は、手話に限らず、さまざまです。どの手段が確実にコミュニケーションできるのか把握しておくことが重要で す。確実にコミュニケーションできているかどうかを確認するには、大人が話したことをもう一度言わせたり、質問に答えさせたりします。そのときには、指文字を使ったり、文字で書かせたりします。そのほか、子どもの実態に合わせて、具体物や絵カードなどの視覚的な情報を使い確認をしてみましょう。子どもがどのような方法を用いてコミュニケーションをとるのか知っておくことで、円滑なやりとりを行うことができます。聴覚に障害があると、音の情報がはっきりと聞こえないために、周りの状況がつかめず、場にそぐわないことをしたりすることがあります。周りが騒がしかったり、話し手の声が小さい場合には、その場の状況をもう一度伝えてあげるなどして、大人が援助してあげるとよいでしょう。その他には、クラクションや、近づいてくる車の音が聞こえないことがあります。一緒に外出する際には、あらかじめ危険な場所などを伝えておくとともに、大人が道路側を歩くなどの配慮をしてあげましょう。まとめ出典 : ここでは、子供の聴覚障害の原因、種類や障害の等級の判定、改善方法や、周りの人が気をつけておきたいことについてご紹介しました。聴覚に障害が見つかった場合には、できるだけ早くに治療、改善を行うことが大切です。生まれてくる子どものうち、1000人に1人は聞こえに障害があるというデータが示すように、子どもの聴覚障害は決して珍しいことではありません。現在は、子どもが新生児期のときにスクリーニング検査の受診が進められており、早期発見が進んできてはいます。ですが、子どもの聞こえに何か不安があるときには一度検査に行くことをおすすめします。聞こえの障害の程度が中軽度の場合には、周囲から気づかれにくいことが多く、耳の聞こえがよくない状態で長い間過ごしてきています。必要な情報を聞き取ることができないために、言葉やコミュニケーションの面に遅れが生じる傾向にあります。聴覚障害のある子どもは、耳の聞こえる子どもに比べると、言葉を覚えるのに長い時間がかかります。言葉を覚えさせようと急かすのではなく、子どもの成長の可能性を信じて待つことが、子どもの育ちを支えます。子どもに対して積極的に関わっていこうとする大人の姿勢が、子どものコミュニケーションをより豊かなものにしていくでしょう。
2016年11月21日学校の授業についていけなかった長男。一体何に困っているのだろう…?出典 : 現在小5の長男は、「読む」「書く」「計算する」などが特に苦手な、「学習障害」と診断されています。6歳のときにADHDを疑われた経緯でWISKⅢなどの知能検査を受けましたが、そこでは「項目ごとの凸凹が激しい」という指摘を受けたものの、IQは平均以上と言われました。なので「通常級で大丈夫でしょう」ということで、通常級に入学したのですが、本格的な学校の授業が始まると、・音読がつっかえつっかえで、読み飛ばしがある・ひらがな、カタカナ、漢字がなかなか覚えられない・字を書くのにとても時間がかかり、マスをはみだしたり形を間違えていたりする…などといった困りごとが徐々に現れ始めました。読み書きは練習すればできると思っていた出典 : 授業で失敗を繰り返しながらも、なんとか頑張ろうとするので、学校から帰ると疲れてぐったりすることが増え、そのうち「ぼくはダメだ、最低だ」とパニックのように大泣きする日々が続きました。IQは問題ない。興味のあることなら1度見たり読んだりしただけで覚えてしまうほど記憶力の高い長男。…なのに、どうして「読む」「書く」がこんなにできないんだろう?私たち親は、長男が学習で困る理由がわかりませんでした。できるようになるのに時間がかかるだけ?それなら少しずつでも練習させるしかないのだろうか?そう思い、泣いて嫌がる長男に「量を減らしてもらってるんだから、がんばりなさい!練習しないとできるようにならないよ!」と、きつく叱りつけて勉強をやらせることもありました。そして、先生からの突然の指摘。疑いもしなかった視力の問題に私は…出典 : そんなある日のことです。通級学級の先生にこう言われました。「この子は、目の動きがよくないように見えます。本を読むときも目で文章を追えないので、読み飛ばしをしているように思います。1度、視覚認知の検査をしてもらってはどうでしょうか。」え!?視覚に問題があるの?先生の指摘を受けた私はドキッとしました。実は長男は上下斜視で、就学前に2回外科手術をしているのです。そういった経緯で半年に1度は眼科で検診を受けているのですが、「視力は順調に育ってます」と言われ、何の心配もしてこなかったので、まさか…という気持ちでした。先生からのこうした指摘には、正直半信半疑ではありました。でも、長男を少しでも楽にしてあげたい一心だった私は、病院を調べ受診することを決めたのです。長男を助けたい一心で、視覚発達支援センターを受診出典 : ネットの口コミや、かかりつけの療育病院の先生の情報をもとに受診したのが、千葉県浦安にある「かわばた眼科」の「視覚発達支援センター」でした。そこで詳細な検査をしていただいた結果、次のようなことがわかりました。・ひとつのものを両眼でとらえることが難しく、立体視(ものの浮き上がりや奥行きを感じる機能)ができていない・動いているものを目で追ったり(追従性眼球運動)、一点から一点に視線をジャンプさせて交互に見たり(衝動性眼球運動)などの、基本的な眼球運動に迷いが多く正確さに欠ける・手と眼の協応(眼からの情報と連動して手を動かす能力)や空間認知(空間におけるものの位置や方向を認知する能力)に苦手がある特に学習に関して、眼球運動に迷いが見られることは「読む際の文字の重ね読み、行の飛ばし」につながり、眼と手の協応の苦手は「枠内にバランスのよい文字を書く」「手先をコントロールして工作などの課題を行う」ことの困難につながるのだそうです。また、空間認知の苦手さは「漢字の偏とつくりの位置を覚える」「算数の筆算で数字の桁を間違えずに計算する」などの困難につながります。その他にも、読み書きに必要な視機能や視覚認知機能の多くに落ち込みが見られ、「読む」「書く」ことの苦手につながっているとのことでした。出典 : 正直、これらの診断結果には思いもつかなかったことばかりで驚きました。目の機能というのは「視力」としか考えていなかった私ですが、こんなに細かく様々な機能があって、それらのうち少しでもうまく働かないと、こんなに学習が困難になるんだ…。でも同時に、ホッとしました。もちろん、長男の問題は視覚認知だけではなく、ワーキングメモリの未熟など、他にもあります。それでも原因がわかったことで、長男の辛さを少しでも楽にしてあげられる対策が立てられるのではないか?と思ったからです。かわばた眼科視覚発達支援センター支援センターで紹介された「ビジョントレーニング」。一体何をトレーニングするの?出典 : そして、支援センターから提案されたのが「ビジョントレーニング」でした。からだの情報源である眼は、脳の活動全般に多大な影響を与えます。よって、眼は脳の一部が外に出ている器官であるといえます。ビジョントレーニングではこの眼の諸機能を鍛えることによって脳を活性化させるとともに、集中力・判断力・情報処理能力など、様々な能力を高めていきます。ビジョントレーニングは欧米で約80年の歴史があり、学習障害(LD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)の子供たちの改善・克服からプロスポーツ選手のパフォーマンス向上に至るまで、多くの人々の能力向上に用いられています。鍛えたい機能によっていろんなトレーニング方法がありますが、ここでは長男が支援センターから勧められ、行ってきたトレーニングをご紹介いたします。長男が使っていたワークテキストはこちらです【視覚発達支援ドリルシリーズ】これらのトレーニングは小4から始めました。もともと書くことに苦手意識のある長男。ワークをすること自体が苦痛な様子だったので、先生に相談をし、宿題の代わりに家庭学習としてワークを認めていただきました。少しずつ現れ始めた、ビジョントレーニングの効果Upload By みくたくママUpload By みくたくママUpload By みくたくママUpload By みくたくママ始めてから1年ほどで、普段の書字にも成長がみられるようになりました。Upload By みくたくママUpload By みくたくママ現在、「書く」という負担を減らすため、タブレットによるビジョントレーニングアプリを使っています。出典 : 努力だけでは補いきれない困難さもある。「なぜ苦手なのか」を調べ、子どもに寄り添って出典 : ただ「読むのが苦手」「書くのが苦手」と思っていた頃には、練習をしなくては上達しない、と思っていました。ですが、なぜ苦手なのかを知らずに、ただただ苦手なことを練習させても、子どもにとっては苦痛でしかありません。通級の先生から聞いたお話があります。「通級に来る保護者に話を聞くと、みな『漢字を書けるようにしてください』『計算できるようにしてください』と結果ばかりを求めてくるのね。でも大事なのは、『なぜ苦手なのか』を知ること、そこから始めなくてはいけないの。だから、私たち通級の教員はまず観察や分析を通してそれをつかみ、それをもとに対策をたてる。時間がかかるものなのよ。1番大事なのは、子どもに寄り添うこと。子どもだってがんばってるもの、どうしてできないかを理解し、どうしたらできるようになるかを教えてあげるのが、私たちの仕事なのよ。」子ども1人ひとり、きっと原因はちがいます。なぜ苦手なのか、観察したり場合によっては病院や療育機関の検査を利用して調べてみることをお勧めします。調べることで、どうしたらよいか?道が見つかると思います。
2016年11月21日子どものお小遣いは、親の頭を悩ませるもののひとつ。お金の大切さを学んでほしいけれど、早くからお金を持たせるのも心配。お小遣いの額や、渡し方など、ほかのママたちはどのようにしているのでしょうか。■お小遣いの頻度は、月1? ときどき?「子どものくらしとお金に関する調査(第3回)2015年度」(金融広報中央委員会 調査時期2015年12月~2016年3月)によれば、7割以上の小学生がお小遣いをもらっていました。もらう頻度については、「ときどき」と答えた児童は低学年が57.3%、中学年は47.8%、高学年が38.3%となりました。「月に1回」と答えた児童は、低学年では13.4%、中学年では32.1%、そして高学年で45.0%となり、学年が上がるにつれて「ときどき」だったお小遣いが「月に1回」と変化していることがわかります。■平均的なお小遣いの金額と使いみち小学生の子どもに月に1回お小遣いを渡している家庭で、最も多かった額が「500円」でした。しかし、ときどきお小遣いを渡す家庭では、低学年と中学年が「100円」、高学年は「1000円」と金額に大きな差が見られました。お小遣いの使いみちでは、どの学年でも「おかしやジュース」が最も多いという結果に。2位以下の回答では、低学年は「おもちゃ」や「ゲームをする」が多く、高学年になると「まんが」が上位に上がってくるなど、趣味や娯楽の傾向が強くみられました。■子ども同士のコミュニケーションにもお小遣いは必要あまり多くのお金を1度に渡すと、“お金を貯めて欲しいものを買う”というステップを学ぶことができません。しかし、友達と一緒にゲームをしたりお菓子を買ったりするなど、子ども同士の遊びの場にもお金は必要。わが子だけお小遣いが極端に少ないと、子ども同士のコミュニケーションに支障をきたしてしまうことも考えられます。■お小遣いとセットで実施したい「お小遣い帳」お小遣いを渡したら、すぐにお小遣い帳に記入し、お金を使った日の夜には、必ずお小遣い帳に記入する癖をつけさせましょう。ただお小遣い帳を渡して「つけておきなさい」というのでは効果がありません。必ず親が一緒になってお小遣い帳をつけるよう見届けること。どれだけのお金を使い、どれだけお金が残っているか、子どもと毎回確認する。それにより、子どもにも自分がお金を管理しているという実感が生まれるのです。子どもが主体となってお金の大切さを学ぶことができるのがお小遣いです。しかし金銭感覚を身につけていくには、子どもに任せっぱなしにするのではなく、親も一緒になってお金の大切さや使い方を教えていくことが大切です。(参照)「子どものくらしとお金に関する調査(第3回)2015年度」/金融広報中央委員会
2016年11月15日【ママからのご相談】小学生の娘がリビングで勉強したがります。私が学生のころは自室で勉強していましたし、そのほうが集中できましたので、自室で集中して勉強したほうがいいと思うのですが、リビングでの方がはかどるようです。理由があれば教えてください。●A. 自室よりもリビングがはかどるのには理由がありますご質問ありがとうございます。学習コンサルタントの佐々木恵です。東大生の大半がリビングで学習していたという調査結果もあるように、賢い子ほどリビング学習をしているようです。とはいえ、親御さんがしてきた方法と違う方法で勉強しているのは、少々心配にもなりますよね。そこで本記事では、リビング学習がはかどる理由を心理学の観点から 解説します。●(1)音適度な音は集中力を高めます。意外かもしれませんが、人間は全く無音の場所ではかえって集中することができません。生活をしていれば多少の音が出るのは自然なことであり、音が全くないのは不自然な状態 で、かえって精神的に不安になり、落ち着かないのです。よく、音楽を流さないと勉強できない人がいますが、彼らはおそらく音楽中毒か、無音状態に耐えられないのでしょう。お母さんが料理をする音が癒しの音になっているのかもしれません。●(2)匂い匂いも脳を活性化する要因です。匂いがあったほうが記憶力が高まる という心理学の研究結果もあるほど、脳と嗅覚は密接につながっています。勉強中に食事のいい匂いがするのはリラックス効果もありますし、「夕飯までに宿題を終わらせてしまおう」と、食事に向けてモチベーションをあげる効果もありそうですね。●(3)観客効果一般的に、人に見られていると緊張してパフォーマンスが下がると言われていますが、人に見られていることで集中できるという効果も期待できます。これを『観客効果 』といいます。適度な緊張感が集中力を高めます。皆さんにもご経験がありませんか?本当は疲れてサボりたいけれど、あの人が見ているから頑張ろうと思ったことが。それが自分の上司だったらしっかりしなければと思うでしょうし、好きな人だったらいいところを見せようと思うのが人間の性なのではないでしょうか。お子さんにとっては、親が見ている前で勉強すると「勉強している」アピールになるので、「勉強しなさい!」と言われずに済むというメリットがあります。かくいう私は、小・中学生のころはリビング学習と自室学習を使い分けていました。夕食前はダイニングテーブルで教科書を広げて音読しながら勉強しているアピールを(笑)、夕食後は面白いテレビ番組の誘惑から逃れるために自室で勉強していました。きっと、お子さんは感覚的にリビング勉強のメリットを知っているのでしょう。加えて、お母さんがそばにいる環境だからこそ、安心して勉強ができる のだと思います。【参考文献】・『記憶力の脳科学』柿木隆介・著●ライター/佐々木恵(教育コンサルタント)
2016年11月13日トラブル発生、親としてわが子にどう向き合うか 「間違ったらやり直せばいい」と、親が言えるか? 「怒られずに済んだ」という成功体験をつくらない 大人は正解を言ってはいけない 自主的に学ぶ子は、こうやってできる の続きです。「親が自分の子どもを見ようとしていないだけ」と、木村先生。そう言われると、「もやっ」とするのは、なぜだろう? それは心当たりがあるからだ…。■その子が思っていることを、その子がわかるように通訳する―― 親は、ついつい、子どもを自分の思う通りに動かしたくなります。「これは、こういうことでしょ」と整理したくなります。それが「教育」だとすら思っています。木村先生(以下、木村):整理というよりも、その子が思っていることを、その子がわかるように通訳することね。整理っていうのは、大人がやってしまうことが多い。でも、大人がやってしまったら、子どもは大人の整理に乗らないといけなくなります。―― 子どもが一番できていないことは、「自分との会話」ということですか?木村:大人が整理して、そこに子どもをのせようとしてしまう。その子だけを見たらいいんですよ。でも親は、周りを見たり、学校を見たりするじゃないですか。―― あと、親自身の価値観というのもありますよね。「この枠内でないとダメ」という思い込みというか…木村:そんな迷惑なことはありません。親の価値観を押し付けられるほどに、子どもは親を信頼しなくなる。信頼しなくなるだけじゃなくて、親のために仮面をかぶって生きようとする。それは 子どもの権利条約 違反。条約違反ですよ?親は自分の価値観を子どもに当てはめたい。でも、親の価値観は、自分がこれまで生きてきた中で培った価値観でしょ?子どもに必要なのは、この先、10年、20年、30年、40年、50年、60年後を生きるための価値観。親の価値観なんて過去の化石や。そんなもん、どれだけ子どもに与えても、子どもは時代を逆戻りするだけです。■親が子に望むべき価値観とは?―― 親が自分の価値観を子どもに押し付けないようにするには、どうしたらいいんですか?木村:勉強してほしい、いい大学に行ってほしい。安定した職業に就いてほしい。親が子どもにこうしたことを願うこと自体は、何も悪くない。でもこれは、親が子どもに望んでいい価値観の2番目です。そんな価値観を持ってはいけないことはない。なんぼでも持っていたらいいんです。でもそれは、あくまでも2番目。―― では、1番目は?木村:その子が「僕は(私は)、これで幸せだ」と思ってくれることでしょう。いい大学に行って、いい会社に行ったとしてもね、何かにぶつかって閉じこもったとしたら?「そこまでは親の価値観を見事に果たしてくれたけど、この先、どうすんねん!」みたいな子が、山ほどいる。―― もしもそうなってしまったら、どうしたらいいんですかね?木村:何かにぶつかったとしても、その子が自ら、「自分がやっていることは、自分にとってためになることなんだ。幸せなことなんだ」と思えば、なんとかなると思います。どんないい大学に行っても、「自分の意志に反している」「やらされている」と思ったら幸せではないはず。大事なのは、子どもが自ら選択するということです。―― 考えとしてはわかるのですが、「そこまでユルくはなれない」という抵抗感があるのですが…木村:親も、ただ子どもを放っておくだけではだめです。子どもが自分でした選択を後悔しないように、いろんなアドバイスをシャワーのように入れてあげる。「大学卒業するのとしないのとでは、変わってくることもあると思うで」「大学で得た経験が、社会に出て役立つこともあるで」と、親は情報のシャワーを浴びせたらいいんです。そして、最後に一言「ま、大学、行きたくなったら、いつでも行けばいいやん」という可能性を言ってあげれば、子どもは迷わず自分の道を選べるでしょう?周りに動かされたわけではなく、すべては自分が決めたこと。それを自分の力でやる。失敗しても落ち込まなくていい。やり直せばいい。この生き方を身につけさせる。それが、学歴がどうのとか会社がどうのとか言う前に、一番大事な力なんです。今回は、ここまで! この記事は木村先生の取材の、ほんの一部分だ。また機会があれば、ぜひこの続きも書いてみたい。■次の世代に必要な教育ところで、この記事を書いている私は今、3人の男児を育てている母親で、長男は高校1年生、次男と三男は小学校6年生の双子だ。彼らを育てながら漠然と「学歴なんて、もはや、ほとんど意味がないのではないか?」とか「これからは生きる力が必要だ。その力って、どうすればつけてあげられるんだろう」そんなことは考えてはいるが、いかんせん「次の世代に必要な教育」の具体的な姿が見えなかった。見えなかったからこそ、「今の教育」にしがみついてしまっていたのかもしれない。けれども今回、木村先生の話を伺って、その姿がようやく見えてきた気がする。木村先生の実践されてきた教育こそ、これからの日本にとって必要な教育だと感じている。たとえるなら、「あっちに、行けばいいんだ!」という未来の灯のようなものだ。今後、この灯りの姿を私自身がもっともっと知りたいし、ほかの親御さんたちともシェアしていきたいと思っている。■今回取材にご協力いただいた木村泰子先生の著書 『大人がいつも子どもに寄り添い、子どもに学ぶ!「みんなの学校」流 自ら学ぶ子の育て方』 (木村泰子・著/小学館 本体1,500円+税)
2016年11月12日トラブル発生、親としてわが子にどう向き合うか 「間違ったらやり直せばいい」と、親が言えるか? 「怒られずに済んだ」という成功体験をつくらない 大人は正解を言ってはいけない の続きです。「相手に謝ることを目的とする生活指導で問題解決をしようとするから、『いじめた子』『いじめられた子』、その両者が安心できる学びの場が奪われていくわけよ」と、木村先生。でも、わが子がお友達をいじめてしまった場合、とても、とても、そんな気持ちにはなれない。それはつまり、親がわが子に向き会えていないということなのだろうか。■スーツケースに入れるのではなく風呂敷に包む―― 親が「わが子に向き会えてないな」と思ったら、どうしたらよいでしょう?木村先生(以下、木村):「どうして正直に言えないの! そんな育て方をしてないよ!」ではなくて、「この子が正直に何かを言うには、自分はどんな親になるべきなんやろう?」と考えるのがいいです。子どもが怯えずに何でも言える、何を聞いても怒らない、子どもをゆったりと包む、風呂敷のような親になるべきです。でもスーツケースやねん。今の親たちは。―― スーツケース?木村:スーツケースっていうのは、スーツケースの中にしか自分の大人としての正解がない状態です。その中に子どもが入られへんかったら、自分が安心できない。でも、風呂敷だったら、端っこに子どもがコロっとくれば包んであげられるでしょ? その子が風呂敷の中に入ろうとするのは可能でしょ?―― 親は風呂敷になれと。木村:スーツケースと風呂敷って理屈じゃなく、イメージで伝わるはず。それだけのことです。「どうする?」と言って、「どうしたらいいかな? わからん」って子どもが言ったときに初めて、「じゃあさ、自分はどうしたい?」と聞く。たとえば、「自分はどうしたい?」と聞いたら、「怒られたくない」という子がいた場合、ベテランの教員でも「怒られたくない」という子に対して「だって、自分で悪いことしてしまったんだから、怒られたって仕方ないやん」と諭すでしょう。■自主的に学ぶ子は、こうやってできる―― たしかに言ってしまいますね。木村:でも、子どもは「怒られたくない」って言うてる訳でしょ? それは怒られることを拒否しているんやわ。そしたら文字どおり、怒られない子になったらいいのよ。―― え? どういう意味ですか?木村:「本当に悪いことしました」って本気で反省している子どもに、怒る大人はアホや。「怒られたくない」って子どもが言うたら、「オッケー、そしたら怒られないようにする作戦、考えようぜ」と。そんなん、簡単なんです。子どもと私が乗った電車が一緒なんだから。「怒られたくない駅」に到着する電車に一緒に乗るだけです。―― えーっと、思考がついていきません…。木村:難しいことじゃない、簡単なことよ?「怒られたくないなら、どうする?」って言うたら、「俺、あの子に謝るわ」って、ほとんどの子が言います。だって謝らなかったら怒られるって、ほとんどの子は知っている。謝ったら怒られない。だから「怒られない作戦」を立てるとなると、子どもは自ら「自分が怒られない」という目的に向かう訳でしょ? 子どもが嘘をついている原因は、怒られたくないから。怒られないように嘘をつく。でも、怒られたくないなら、そのための手段は嘘をつく以外にいっぱいあります。それを考えて、子どもは自分で動きます。これが、自主的に学ぶ子ということです。―― 道筋を説明してもらえれば、わかりますね。…と思いつつ、何かモヤモヤしますが。木村:納得の話でしょ? 親が自分の子どもを見ようとしていないだけだと思いますよ。■今回取材にご協力いただいた木村泰子先生の著書 『大人がいつも子どもに寄り添い、子どもに学ぶ!「みんなの学校」流 自ら学ぶ子の育て方』 (木村泰子・著/小学館 本体1,500円+税)
2016年11月11日トラブル発生、親としてわが子にどう向き合うか 「間違ったらやり直せばいい」と、親が言えるか? 「怒られずに済んだ」という成功体験をつくらない の続きです。「どんなに大きな悪さをしようと、いつも一番困っているのは子ども。親でも先生でもない。そこを忘れたら、絶対にあかんと思います」と、木村先生。■子どもに「どうしよう?」と相談を受けたら―― 子どもがトラブルを起こしてしまったとき、困っている子どもの気持ちに寄り添えたとして、次は何をすればいいのでしょう?木村先生(以下、木村):優しい声で、さりげなく「どうしたの?」と、子どもに問いかけたらいい。子どもにしゃべらせたらいいんです。―― 「どうしたの?(怒声)」でなく? そもそも信頼関係がないと子どもは話してくれないと思うのですが…木村:それは当然ですね。信頼関係がなければ、子どもが話してくれるまで時間はかかるでしょう。でも、やり直しはいくらだってできる。信頼関係が繋がっていれば、子どもは「どうしよう?」と言ってきます。校長室に入ってきて、「校長先生、どうしよ。人の物をとっちゃった。言うたら怒られるから、嘘ついちゃった」と言うわけですよ。私が「嘘ついたん? どうしてついたん?」と尋ねると「だってね、『怒らん』て言うけど、先生、絶対怒るから。ママに言うもん。どうしよう?」と話してくれます。―― 「どうしよう?」って言われて、どうするんですか?木村:「どうする?」と、聞き直します。「どうしよう?」って言われても、私が答えを出す話じゃないもの。■大人は「正解」を言いたがる―― ―え! そうなんですか?木村:「どうしよう?」って子どもに聞かれたら、答えないとあかんと思っているでしょ?―― 思います!木村:それは自分が子どもより上の存在と思っているから。大人やから、そう思うんです。対等な関係だと思ってみたら? その子がどう思ってそれをやってしまったか、わかりますか?―― わからないです木村:そしたら、自分がその子に聞かなければならないでしょ。でも、大人は、ついわかったつもりになって、正解を言いたがんねん。―― そう、そう、そうです!木村:すべての根本は、そこです。大人だからって、子どもの何がわかるん? 「自分のことだって、わからんのに」って私は思っているよ。だから、「どうしよう?」って聞かれたら、「どうする?」って問いかけるだけでいいんです。そしたら、子どもはそこで、「う~ん…」って、やっと考え始めます。今は、子どもが自ら考える機会を与えられていない。だって、「言え、言え」って言われてね。「正直に言え」って。言えば反省が待っているのに。相手に謝らないとあかんのに。そんな状況で正直になって言いたくないよね。それに、そもそもトラブルを解決するときの目的は、相手に謝ることではないですし。 ■目的は、「子どもに謝らせること」ではない―― え!? 謝ることが目的ではないんですか?木村:やってしまった子が、「自分がしてしまったことは、やってはいけないことだ」と思うことが、やられた子にとって一番安心することでしょ。やった子が謝ってきたとしても、やられた子が「先生がいてへんところで、『お前、先生にチクったやろう』と言われたら、どうしよう」と思っていたら、それは謝っても何の意味もない。みんなこれが怖くて、トラブルが解決しても、そいつがおったら怖くて学校に行けないわけよ。相手に謝ることを目的とする生活指導で問題解決をしようとするから、「いじめた子」「いじめられた子」、その両者が安心できる学びの場が奪われていくわけよ。■今回取材にご協力いただいた木村泰子先生の著書 『大人がいつも子どもに寄り添い、子どもに学ぶ!「みんなの学校」流 自ら学ぶ子の育て方』 (木村泰子・著/小学館 本体1,500円+税)
2016年11月10日トラブル発生、親としてわが子にどう向き合うか 「間違ったらやり直せばいい」と、親が言えるか? の続きです。子どもがトラブルを起こしたとき、「『うちの子が何をどう思って、その行為をしたのか?』ということを親がきちんと理解していない限り、子どもは『やり直し』ができない」と木村先生は言う。では、そんなとき、親はどうしたら良いのだろうか?■大なり小なり、悪いことをするのが子ども―― 先生は、トラブルを起こした子どもに対処する際、「トラブル行為そのものを叱っても意味がない」とおっしゃっていますが、それはどうしてですか?木村先生(以下、木村):だって「自分が一番悪い」っていうのは、本人が知っているから。三歳児でも「人の物は、とったらあかん」ってわかるよ。とったらあかんってわかっているけれども、とる。「やったら、あかん」とわかっているのに、やってしまう。そうすると、大人は「やったらあかん!」って叱るでしょ。そうなると子どもは「大人の怒りからどうやって逃れるか?」しか考えないじゃないですか。―― たしかにそうですね。木村:そこに強者(親)と弱者(子ども)の関係が生まれる。でも、このときに親と子どもが対等な関係でおれたら、子どもは素直に、「なぜ自分は、それをしてしまったか?」を考えようとする。ここで必要なのは、「悪いことをわからせる」ということを「教える大人 VS 叱られる子ども」という図式にしないこと。これでは対等じゃないでしょ? 親が一方的に教えるだけだから。―― でも、親としては悪いことをした子どもを前に「なぜそれをしたのか考えてごらん」なんて言えるような心持ちには、とてもとても、なれません。木村:子どもは本来、叩いたり、蹴ったり、わめいたり、物を壊したりするものなんですよ。それが、本来の子どもの姿。そういう部分は、どの子にも大なり小なりあるんです。問題になる子とならない子の違いは、それがバレるかバレへんか、ただそれだけのことです。子どもは、いろいろな問題を経験しながら、だんだん大人になる。だから、そういうことを経験しないで大人になった子は、つまづくことが多いと思います。■「悪いこと」を封じ込めても、子どもは育たない―― 「悪いこと」を封じ込めるだけだと、大人になって爆発した時が怖い?木村:もちろん、もちろん。そういうこともあるし、むしろ「悪いことを隠せた」ということが、その子にとっては成功体験となってしまう。―― どういう意味ですか?木村:悪いことを隠すことができれば、「悪いことをしても、うまく隠せれば怒られないで済む」という成功体験になるじゃないですか。子どもは、というか人間は、成功体験を得たら、次に必ずまたそれを使います。そうなったら、「自分がやった悪いことを、いかにバレないで、この場を切り抜けるか?」ということばかりを考えるようになる。そうすると、「本来の自分を高めることができない」というところに、確実につながります。―― それは本当に怖いですね。木村:それを防ぐためには、親自身が「子どもがトラブルを起こすのは、当然あることだ」というスタートラインに立てていないと。今、そのスタートラインに立てている親は少ないですよね。なぜなら、子どもがトラブルを起こすと、親が困るから。 ■親は、「自分が困らないように」を中心に対処をする―― 親(自分)が困る。たしかに、本当にそれしか考えていないかもしれません(汗)。木村:それは親だけでなく、教員も一緒です。子どもにトラブルがあったら、教員が困る。困らないようにするにはどうしたらいいか。そこしか考えていないんです。親も教員も同じ。本当は「いちばん困っているのは子ども」やのに…。教員や親は「自分が困らないように」ということで、トラブルの対処をするでしょう? ―― それだけしか考えていませんね。木村:「とにかく謝りなさい!」と言って、「だって俺な…」なんて子どもが言い出そうものなら、「言い訳しない! まだ反省していないの!」と言う。―― 映画『みんなの学校』の中で、子どもたちがトラブルを起こしたとき、木村先生のところに相談に行く場面が出てきますが…木村:ベテラン教員に、こんなふうに聞かれたことがあります。「(ベテラン教員の)私には子どもは絶対に心を開かないのに、校長には1秒で心を開く。私と校長の違いは何や?」と。―― それ、私も聞きたいです!木村:子どもに対して自分、つまり大人が「対等な人間として存在しているか」ということです。その違いだけ。大人は、どうしても子どもより上の立場から物事を考えて「反省させないとあかん」と思ってしまうでしょ。そうなると、子どもは「悪いことをした。今から大人に怒られる」と心が委縮して、心を開くどころの話ではないんです。■一番困っているのは、その子自身―― 本当にそうですね。木村:でも私も、その考えにたどり着くまで、教員時代、失敗を山ほどしてきています。何度も何度も、何度も失敗して「子どもが困った状況」を、それはもうたくさん作ってきました。そこから私は学んだんです。言うてみれば、「やり直し」の人生ですよ。あのときに困らせてしまった子どもに対して、私は「ごめんね」しか言えない。けれども、少なくとも、その子が困ったことで、私がやり直しをさせてもらった。だから、自分が今、目の前にいる子どもには、そこから学んだことを持って関わろうと思う。ただ、それだけのこと。どんなに大きな悪さをしようと、いつも一番困っているのは、子ども。親でも先生でもない。そこを忘れたら、絶対にあかんと思います。■今回取材にご協力いただいた木村泰子先生の著書 『大人がいつも子どもに寄り添い、子どもに学ぶ!「みんなの学校」流 自ら学ぶ子の育て方』 (木村泰子・著/小学館 本体1,500円+税)
2016年11月09日トラブル発生、親としてわが子にどう向き合うか の続きです。わが子がトラブルを起こしてしまった!トラブル=間違え。「人が生きていれば、必ず間違いは起こる。その時に素直に謝って、やり直せばいいやん」と、木村先生。けれども、「そんなこと、親として、とても言えない」という人が多いのではないだろうか。■「間違ったらやり直せばいい」と親が言えるか?「子どもには、たくさん失敗をさせてあげてください。今の子たちに欠けているのは、“失敗をする体験”です」。教育ライターとして取材を続ける中で、教育関係者の方からは、この手の話を耳にタコができるくらい聞いてきた。たしかに「失敗する体験」が子どもに必要なのは、よくわかる。何度となく記事にもしてきた。けれども、1人の母親としての自分自身に立ち戻ってみると「間違ったら、やり直せばいい」なんて、わが子に対してちっとも思えなかった。結果、「失敗しないように」と、ついつい子どもを管理してしまう。「頭ではわかっているけれど行動が伴っていない典型」のような子育てを、私はしていた。■常に新しいことが起こり続けている世の中そんな、いち母親としての私の心に、本気で響いた木村先生の言葉がある。今の社会はグローバル化によって急速に変化し続けています。常に新しいことが起こり続けているわけです。そうすれば、間違わないなんてことはありません。その時に間違ってはいけないなどと言うと非常に辛くなります。そうではなく、間違ったら素直にその間違いを認め、やり直す姿勢をつけることこそが大事なのです。そう考えたら、「先生、ここ間違っとったわ。ごめんな」と言って、やり直すことはとても大事なことだと思えませんか? それができれば、必ず教師を手本にして「ごめんなさい」と言い、その間違いから学べる子どもになっていきます。出典:『「みんなの学校」流 自ら学ぶ子の育て方』(木村泰子・著/小学館)■木村先生が、大空小学校の「やり直し」第1号「みんなの学校」の映画の中で、木村先生は開校当時に問題を起こしていたある子どもに対して、「あの子さえいなければ」と感じたという告白をする。そんなこと、教育者たる人だったら普通は言えないだろう(実際、教育者でなくても、おおっぴらには言えない)。けれども、木村先生はこう言う。「あの告白なしにして、今の大空はありえない。やり直しの第1号は私かな」と。木村先生は、教育者である以前に、「本気で生きている人」である。そして、そんな木村先生の「本気」に触れると、「私も、もうちょっと本気を出して生きたいな」と、痛切に思うのだ。次回は、「うちの子が何をどう思って、その行為をしたのか?」ということを親がきちんと理解していない限り、子どもは「やり直し」ができない、というところに話を戻すことにしよう。■今回取材にご協力いただいた木村泰子先生の著書 『大人がいつも子どもに寄り添い、子どもに学ぶ!「みんなの学校」流 自ら学ぶ子の育て方』 (木村泰子・著/小学館 本体1,500円+税)
2016年11月08日学校でのストレスが思わぬ方向で現れた息子。どうしよう…出典 : 小学校入学直後から「学校いかれへん!」となったショックで、まるで赤ちゃん返りしたかのように母親から離れられなくなった息子は、気に入らないことがあると、暴れるようになりました。「学校に行ってみようよ」「あかんで!」「お風呂に入ろう」「いらん!」「もう寝る時間だよ」「起きてる!」…何を言っても反抗、途方に暮れる日々が夏休みまで続きました。学校には付き添い通学で少しずつ慣れることにしましたが、ゼロ歳の妹の世話や家事もあり、日々を過ごすだけで精一杯です。少し気力があれば学習のフォロー、また2年生からの特別支援学級入級への手続きをしなければ…と、くたくたで笑顔も出ない状態でした。そんなとき、9月に家族と訪れた病院の待合室でふと目についたのが、花風社の『自閉っ子、こういう風にできてます!』という本でした。この本を見て、「もしかして、息子もこんなふうに世界を見てるのかも?」と思ったのを覚えています。児童精神科の医師に聞いてもはっきりと答えてもらえなかった、「自閉症スペクトラム」の世界観に触れ、その謎が初めて少し解けたように感じたのでした。私はそれから少しずつ、自閉症について気になることを、本で調べるようになりました。1冊の本が、息子とのコミュニケーションを変えてくれた出典 : 夢中になって読んだ本の1つが、『伸ばそう!コミュニケーション力―不器用でも、体力なくても、友だちいなくても、今日からできるワクワクトレーニング』(花風社)です。このを読んだとき、息子を観察してうっすら感じていた「言葉のやりとりも学習も、全て『身体が動くかどうか』がキモかもしれない」という思いを強くしました。中でも「ボールの投げ合いっこ」という遊びにピンときました。私はさっそく息子と試すことに。「投げるでー、取ってや!」と声をかけて、投げてみました。すると、反抗的だった息子がこちらを向いて取ってくれたのです。今度は「お母さんに向かって投げ返して。」と言うと投げ返してくれました。息子と向き合えている、考えるより先に体が動いてる、いいかも!と直感で思いました。だんだん慣れてきたら「今から100回、投げ合いっこしよう」と伝え、始まりと終わりをくっきりさせました。狙いはコミュニケーション力で、ボール投げの上達ではありません。「お母さんがつかみやすいように投げ返してね。」こちらも子どもの真正面に、とりやすい球を投げるようにしました。このように、「やりとりする経験」がただただ楽しくて、夢中で積み重ねられる。遊び×スポーツにこんな力があったのかと、目からうろこでした。まずは「楽しさ」を大事に!ってことであんなモノもこんなモノも投げてみる出典 : ボール投げで使うのは、ボールだけではありません。投げるものはその時々で決めます。百円ショップのボール、ビーチボール、タオル、赤ちゃん用のやわらかい布のボール、ムササビのぬいぐるみ、紙飛行機というときもあります。いろいろ面白がって投げてるうちに、「次はこれ」と、息子自身が自分でボールを決められるようになってきました。テレビを見るのをやめてほしいな、宿題をやってほしいなというときも、とりあえず投げてみる。まずは楽しく、注意をこちらに向ける。それから話をすると、少しこちらの話を聞いてくれるようです。小3の現在、ペットボトルをバットに見立てて打ち返すことを思いつき、やってみるようになりました。うまくできなくてもパニックにならずに「次投げて!」と言えるようになった息子。クラスメートとのチームプレーにはまだまだほど遠いですが、コミュニケーション力は伸びてきていると感じています。コミュニケーション力がついてきたら、いろいろな力が伸びてきて…出典 : 九九の暗唱の宿題も、キャッチボールを組み合わせ、交互に言いながら投げ合いっこをする、というスタイルにアレンジ。これは大人も脳トレになります。他のアプローチもいろいろ試したので、これだけのおかげとは言えませんが、だんだん本も読めるようになりました。おそらく眼球コントロールに慣れたのだと思います。以前は読み飛ばしが多く、意味が理解できずイライラしていたのですが、正直ここまで成長するとは、想像できませんでした。また、1度だけ怒りながら投げ合いっこしたこともあります。その日はどうしても私の気持ちが収まらないことがありました。一緒に遊んで切り替えようと思ったものの、やはり言いたいことを言わずにはいられなかったのです。私:「どんなに嫌なことがあっても、暴れれば『やらなくて済む』って思ったら、間違いだからね!」と思いっきり強いボールをなげます。息子:「アタマではわかってるけど無理やねん」ボールが返ってきました。私:「それでも自分で自分を止められるようにならなきゃ」とまたバシッ。半泣きになりながら全力で投げ返す息子。ずいぶん強い球を受けられるようになったな、叱ってるのに褒めたくなった、不思議な時間でした。身体を使ったコミュニケーションは、親子だけのものじゃない出典 : キャッチボールを通じて、息子と少しずつコミュニケーションが図れるようになってきた私は、進級時に新しく担任になった先生にもこのことを伝えました。「時間のあるときに、息子とボール遊びしてもらえませんか?言葉じゃなく身体で感じるほうが、ぐっと関係を結びやすいタイプです」と。その後、ゴム縄くぐり、片足立ち、押し相撲など他の遊びも、思い立ったらすぐ、いろいろやるようになりました。遊ぶときは親も本気で競います。お互い運動音痴なので、笑えます。できないこと、困ることはまだまだたくさんありますが、1つひとつ積み上げていけばなんとかなるかも。難しいボールが取れた時の息子の「どや顔」を見ていたら、そんな気がしてきます。
2016年11月08日突然だが、ドキュメンタリー映画 『みんなの学校』 をご存じだろうか?映画館での上映は1年以上前に終わっているのに、全国のママたちが今でも自主上映会を開催しているという異色の映画だ。それはつまり、ママたちが「私も、この映画のために何かしたい!」という気持ちになる、ママたちを「突き動かしている映画」ともいえる。右:『大人がいつも子どもに寄り添い、子どもに学ぶ!「みんなの学校」流 自ら学ぶ子の育て方』』(小学館)今、映画を中心とした輪は子を持つ親や教育関係者だけでなく、さまざまな分野の人にまで広がっている。たとえば、IT企業の社長。一見、子どもの教育とは何の関係もなさそうだが、経営者という立場からすると「人が育つ、人を育てるとは、どういうことなのか?」という点が気になり、無関心ではいられないそうだ。■広がる「みんなの学校」の輪『みんなの学校』の舞台は、大阪市立大空小学校。そう、公立の小学校だ。その地域に住む子どもなら誰でも通える。一般的な学校と少し違うところがあるとすれば、特別な支援が必要な子が全校児童220人中30人を超える(映画撮影時)こと。それでも、特別支援教室はつくらず、みんなが同じ教室で学んでいる。ただし、それだけなら、ほかにも同様の学校はあるだろう。大空小学校のすごいところ、それはこれだけ「賑やかな学校」なのに「不登校児が0人」なことだ。それぞれの子に、それぞれの居場所があるということに感動する。 そんな「みんなの学校」の劇中で輪の中心にいるのが、大阪市立大空小学校 初代校長の木村泰子さん。大阪市立大空小学校の校長を9年間勤め、「大空小学校の空気」を作り上げた。そして2015年春、45年間の教職歴をもって退職。現在は全国各地で講演活動に多忙な日々を送っている。そんな多忙な木村先生に、今回運良くお話を伺うことができた。■その子がその子らしく育つ以外に学校の目的はない「木村先生の話を、どこから始めよう?」今回、記事を書くにあたり悩んだポイントがそこだった。なぜなら、私自身が受けてきた「教育」(ごく一般的な日本の教育だ)と、木村先生の世界観は、かなりかけ離れているからだ。「今まで、自分が教育だと思っていたこと」を一旦、手放すくらいの気持ちがないと、木村先生の世界観は、すんなり入ってこない。「私が教育だと思っていたこと」と「木村先生の世界観」は、何が違うのか? それは、スタート地点だ。ひと言で言えば、木村先生は「子どもありき」の人。「その子が、その子らしく育つ以外に学校の目的ってないじゃないですか。視点は、そこにしかありません」(木村先生)親に言い換えれば、「我が子が、我が子らしく育つ以外に家庭の目的はない」ということになる。そんなこと、なかなか言えないし、思えない……。 結論として、今回の原稿は「取材テープを文章にし、それを微調整したもの」に留めた。取材前、記事の構成を練って作った企画書も、木村先生の言葉の前には何の意味もなかった。さて、まずは「わが子がトラブルを起こしたとき」のことから、話を始めてみよう。 ■わが子がトラブルを起こしてしまった! そのとき、親は?―― 先生は「人が生きる場所では必ずトラブルが起こる」とおっしゃっていますね。木村先生(以下、木村):あたりまえやん。「トラブルがない学校」なんて聞くと、私はひっくり返ります。トラブルはあって当たり前。トラブルは、すべて生きた学びになります。 ―― わが子がトラブルを起こしてしまったとき、親はまずどのような心持ちでいるのがよいのでしょう。木村:トラブルがあって、「お母さん、ちょっと来てください」という連絡があった場合、ほとんどの親は、学校から「来てください」と言われた時点で「うちの子は何かやってしまった、迷惑をかけた」というフィルターがかかりますね。けれど、そうしてフィルターをかけること自体、間違っているんです。―― どういう意味ですか?木村:「わが子がトラブルを起こした」というとき、親は迷惑をかけた相手や学校、つまりは「周りのこと」がまず気になるでしょ。でも、一番に見つめるべきは、「どうして、うちの子がそれをしたのか?」ということ。「うちの子が何をどう思って、その行為をしたのか?」ということを親がきちんと理解していない限り、子どもは「やり直し」ができません。「やり直し」とは、木村先生の教育観の大きな柱のひとつ。「人が生きていれば、必ず間違いは起こる。その時に素直に謝って、やり直せばいいやん」と、木村先生。次回に、木村先生の「やり直し」について説明しよう。■今回取材にご協力いただいた木村泰子先生の著書 『大人がいつも子どもに寄り添い、子どもに学ぶ!「みんなの学校」流 自ら学ぶ子の育て方』 (木村泰子・著/小学館 本体1,500円+税)
2016年11月07日小学生になると出される宿題。一体何のためにやるもの?出典 : みなさんは「宿題」と聞くとどんなイメージを抱きますか?嬉しいもの?イヤなもの?イヤだけどやらなくちゃいけない?我が家は長男の宿題に本当に悩まされました。嫌がる子どもに、無理に取り組ませる宿題。そのたびに子どもも親もヘトヘトになると、「一体何のためにここまでしなくてはいけないのだろう…」と思うことも。今回は1冊の本をご紹介しながら、子どもに合った家庭学習のありかたについて、考えてみたいと思います。現在小5の長男は、読み・書き・計算に困難さを持った「学習障害」と診断を受けています。それでも就学相談の時点では、IQが平均以上ということ、言語性が高くおしゃべりが達者だったことなどから、普通級への就学を勧められ入学しました。学校では、音読や漢字の書き取り練習、計算の宿題が毎日出されます。読み書きと計算が苦手な長男は宿題を前にするたび大泣きし、自分の頭を自分で叩きながら取り組んでいました。このように、私たち親子が学校生活の中で1番苦しんだのが、宿題だったのです。親の思い込みが、子どもを追い詰めていた出典 : このままではいけない…と思った私はその後、就学相談や担任の先生と相談をしたり、通級学級に入級したり、宿題の量を減らしてもらったりなどの対策を取りましたが、状況は一向に変わりませんでした。当時の私は、「宿題はみんなしなくてはいけないものなのだ。」と考えていました。担任の先生からも「量は減らしていいので、みんなと同じものをやってください。」と言われたこともあり、「みんなはもっとやってるんだよ、減らしてもらったのだからわがまま言わずにがんばりなさい!」と、大泣きする長男叱り、やらせていたのです。しかし、心の中ではずっと思っていました。音読や漢字の書き取り・計算は本当に彼にとって、毎日しなくてはならないものなのだろうか?もっと、彼に合ったやり方、彼に合った課題や目標でもいいんじゃないだろうか…?と。そんなとき出会った運命の本。私たち親子を救ったその内容とは…出典 : そんなとき、出会ったのが『宿題なんかこわくない』という本でした。『この世から宿題がなくなったら、親も子もどんなに楽しい時間を過ごせるだろう。宿題が引き起こす親子バトルの相談を受けるたびに思います。勉強が子どものストレスでなく、楽しいものにするために、我が子に合った方法をこの本から手に入れてください。』(NPO法人福祉広場理事長池添素さん)図書館で手に取った1冊の本。その裏表紙にあったこの一文に、理解者をやっと見つけたような救われた気持ちになりました。本に教わったのは「子どものための」学習のありかた出典 : 私はすがる思いでこの本を読み込みました。内容を一部ご紹介します。『宿題ができないからといって、その子が怠けているとは限りません。宿題ができないのには、理由があります。そして宿題ができなくても、勉強がまったくできないわけではありません。宿題のことを、そんなに重大に考えないでください。』『苦労して宿題をさせても、それに見合うほどの学習効果があるわけではないし、苦しいイメージばかりが増えて、子どもをますます勉強から遠ざけてしまうことさえあります。』では、なぜ先生は宿題を出すのでしょうか。『お母様方は先生に当然の要求のように「学力をつけてください」とお願いします。(中略)先生もまた「学校としての成績を上げよ」と教育委員会や校長から命令されて、さらに宿題を課していきます。その結果、親も先生も「宿題をやらなければならない」と子どもを追い込んでしまうのです。』本来なら、子どものために、子どもに合わせて用意されるべき家庭学習が、大人の都合で「宿題」として出されているのかもしれませんね。出典 : もしそうなら、子どもに合わせた形で用意してあげてもいいのではないでしょうか?この本では、学校でよく出されている漢字/計算/音読の宿題について、子どもたちが苦手意識を持つのはなぜか?を、丁寧に解説しています。そして、学習のやり方次第で、子どもたちが「できた!」という満足感を持ち、学習効果をあげることができる、ということも教えています。さらに、「学習障害的な傾向の子どもたち」「ADHD的な傾向の子どもたち」「自閉症スペクトラム障害の子どもたち」それぞれの特性に合わせた課題の設定の仕方、支援の方法も説明されています。『勉強をその子ができる形にしてやることで、子どもは自然に力を伸ばすことができます。また、時期がくれば自然と力を伸ばすこともあります。だから、子どもを勉強に合わせるのではなく、勉強を子どもに合わせてやればよいのです。小学校に入学し、気を張って1日を過ごして帰ってきた子どもに追い打ちをかけるのではなく、家に帰ったらほっこりさせてやりたい。だから、まずは「宿題なんかできなくても大丈夫」と考えてあげてほしいのです。』宿題への考え方を変え、長男に合った方法を試すことに。すると大きな変化が出典 : この本に勇気付けられた私は、宿題に対する考え方を変えました。そして、教育相談や検査機関の医師と相談を重ねた結果、長男に合う学習方法や環境を見つけることができたのです。その様子については、以下の記事をご参照下さい。その後、特別支援学級へ転学した長男は、彼のペースに合わせた学習を用意してもらい、自信をもって毎日取り組んでいるようです。宿題についても、担任の先生と相談をして「タブレット学習」「漢字の読みカード」「ビジョントレーニング」をさせてもらっています。始めるときも以前のように大泣きせず、「おやつの前にさっさとやっちゃうね~!」と、自分から取りかかるようになりました。当時は長男に無理をさせてしまいましたが、努力ではカバーしきれないことを無理にさせるのは、足が不自由な人に「みんなは100メートル走なのに、あなたは50メートルにしてもらったのだから、がんばってみんなと同じように走りなさい!」と言っているのと同じことなのだと、今は反省しています。「子どもを勉強に合わせるのではなく、勉強を子どもに合わせてやればよい」それがこれほどの効果をあげるとは、正直驚くほどです。もちろんそのためには「学校に全部おまかせ」ではなく、「先生とよく相談をする」「家庭で用意できることは用意する」といった、家庭での努力も必要です。学校では、大勢のそれぞれ個性の違った子どもたちをまとめながら、先生方は日々努力して下さっています。そのことに感謝をしながら、自分の子どもに合った学習方法や支援について相談・お願いをしていく姿勢が大切だと思います。親として大切にしたいのは、子どもの頑張りを理解すること出典 : 先日、私のブログでこの本の紹介をしたところ、あるお母さんからこんな嬉しいコメントを頂きました。「宿題なんかこわくない。今読んでます!息子の事をわかりたいと思っていても、やはりどこかで自分基準でしかわかってあげられてないなぁ~と、つくづく感じます。今日もなんやかんやありましたが、なんだかとても息子が愛おしい!息子はこんな風に生活してるんだ!と抱きしめてあげたい気持ちになりました。素敵な本を、紹介していただき、ありがとうございます!」子どもなりに頑張っていることに気が付くことで、愛おしさが募ってくることってありますよね。たくさんの親子が、毎日をストレスなく楽しく過ごせるように。この本が、その助けとなることを祈ります。
2016年11月07日グローバル化が進む昨今、教育にも「国際化」をのぞむ家庭が増えています。語学はもちろん、相手を尊重し、柔軟な考え方ができるコミュニケーション能力の高い子に育てたい。そんな風に考えるママを中心に注目されているのが3歳から19歳までの生徒を対象にした「国際バカロレア」という教育プログラムです。文部科学省も「国際バカロレア」の普及・拡大を推進しています。2018年までに、国内における国際バカロレア認定校を200校までに増加させる取りくみが進められているのだとか。国際バカロレアって、一体どんな教育なのでしょうか?■「国際バカロレア」が提唱する人物像国際バカロレア(IB : International Baccalaureate)は、本部をジュネーブに置く、国際バカロレア機構が提供する教育プログラムです。国際バカロレア教育のいちばんの目的は「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探求心、知識、思いやりに富んだ若者を育成する」こと。そして、人が持つ違いを「違い」として理解し、自分と異なる考えの人々にも、それぞれの正しさがあり得ると認めることのできる人を育成することだそうです。具体的には、「IBの学習者像」として、以下の10の人物像が挙げられています。・探求する人・知識のある人・考える人・コミュニケーションができる人・信念をもつ人・心を開く人・思いやりのある人・挑戦する人・バランスのとれた人・振り返りができる人出典:文部科学省/国際バカロレアについて また、年齢に応じたプログラムが組まれています。・プライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP)3歳~12歳を対象。初等教育。・ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)11歳~16歳を対象。中等教育。・ディプロマ・プログラム(DP)16歳~19歳を対象。大学入試を目的としたもの。・キャリア関連プログラム(CP)16歳~19歳を対象。専門学校への進学や就職を目的としたもの。IB認定校で「ディプロマ・プログラム」を取得すると、世界の大学の受験資格を得られるというメリットもあるのだそうです。日本でも、IBの成績を入試に取り入れる大学が増えているのだとか。■自主的な学習を最重要視する「国際バカロレア」ディプロマ・プログラムには、「コア」といわれる「課題論文(EE)」、「知の理論(TOK)」「創造性・活動・奉仕(CAS)」の3つの必修要件があり、普通の科目と並行して履修します。TOKは批判的思考などを養うための授業のため、毎回ディスカッションが行われるそうです。先生が一方的に知識をたたきこむのではなく、自分たちで考え、取りくみ、自主的に行動することを重要視しているのです。また、それぞれのカリキュラムは、地域のニーズや文化的状況にも合わせて編成するようになっているようです。認定校の初等部のカリキュラムを見てみると、国語、算数、理科、社会…と、一般の小学校とほぼ同じ教科が並んでいます。しかし、授業は外国人教員と日本人教員がどちらもいる状況で行われ、すべての教科において英語習得の機会となるため、初等部6年間のあいだに英語で自分の考えをディベートできるようになります。インターネットの普及やその技術向上により、海外留学する人は年々減っているそうです。その一方で、世界がぐっと近くなり、国際的な視野が求められているのはいうまでもない事実。国際バカロレア認定校は、玉川学園、東京学芸大学付属国際中等教育学校、東京都立国際高等など、全国に39校あります(2016年11月現在)。正直、入学金や授業料が高額の学校もあります。しかし、留学と比べれば…ですし、安全な日本で国際的な教育が受けられることを考えると、検討してみる価値はありそうです。(参考)・ 文部科学省/国際バカロレアについて
2016年11月04日初めまして、この記事に目を留めて下さりありがとうございます。これを読まれている皆様は発達障害との縁が多少なりともある方だと思います。お子様への接し方が分からない。学校などの集団生活になじめない。他人と考え方・感じ方が異なるため誤解されやすい。抱えていらっしゃる悩みごとは様々だと思います。そこで発達障害当事者である私が、自分の障害とどのようにして付き合い、受け入れ、いまの仕事をしているかについて書かせていただきました。今回は、私の幼少期の学校生活についてです。「障害」を周りの大人たちが認識したのは小学生のとき出典 : 小学生のころ、私は自分自身に障害があることを認識しておりませんでした。私の異常を最初に気づいたのは周囲の大人達で、小学1年生のときでした。この時期になっても未だに私だけ読み書きができなかったためです。私は文字の形を認識することができず、平仮名が書けませんでした。ようやく書けるようになっても、文章を書くことはとても難しかったです。作文の宿題が出ると、机に向かって書こうとするのですが、2~3時間頑張ってやっと2~3行書けたぐらいでした。読解については、文字を1文字ずつしか読めず、意味も理解できませんでした。例えば「がっこう へ あるいて いく」なら「が、つ、こ、う、へ、あ、る、い、て、い、く」か「が、つこう、へある、いていく」としか読めず、単語の認識ができなかったようです。さらに算数も、数字の意味や計算の仕組みを理解する事ができませんでした。1+1すらできなかったそうです。自分の努力と適切な支援のおかげで、勉強ができるようになった出典 : 私の様子を担任の先生から指摘され、手を尽くして原因を調べた母は、「発達障害」の存在を知りました。当時はまだあまり知られていない障害でしたが、運よく発達障害を研究している機関を見つける事ができました。そこで私に下された診断は学習障害(LD)。でもこのとき私はまだ、自分に障害があるということをきちんと認識できていませんでした。研究機関に通って母と医師が何やら話しているものの、私は内容が自分に関することだとは思いもせず、退屈だったので同じ部屋内で遊んでいました。しかしこの診断があったことで、母は「根気よく繰り返し、できなくてもイライラせずに、できた事があれば必ず褒める」という教育方針のもとで私を勉強させてくれました。最初なかなか進歩は見られませんでしたが、学校の授業で漢字が出てきてから変化が見られました。例えば「つき」という平仮名だけだとその意味がわからなかったのですが、漢字の「月」は三日月の絵が崩れて漢字になったという成り立ちを見ながら教えてもらうことで、漢字の形と意味を理解できました。漢字を覚えたことがきっかけで、「文字を組み合わせて単語をつくる」ということもだんだんと理解できるようになり、これをきっかけに文章も徐々に読めるようになりました。作文はやはりかなり苦手で、宿題はいつも母が隣で手助けをする必要がありました。しかし、私が強く「書きたい」と思ったことについては、周囲が驚くほど筆が進んだそうです。算数については、数を数字以外のもので視覚化する事で分かるようになりました。例えば先ほどの1+1は、りんごを用意して実際に数える事で理解できました。ただし、文章問題は問題を読み解く必要があるため、できるようになるまでかなり時間がかかりました。このように私は、苦手なことを他の子どもたちとは違う方法で勉強することで、学習の遅れを補うことができました。いじめもあった。でも得意なことをがんばることで、周りに認めてもらえた出典 : 同級生達を始めとした人間関係ですが、小・中・高のどこでも入学してから数ヶ月の間よくいじめられていました。幸い私の周りには助けてくれる大人たちがたくさんおり、大事には至りませんでした。ただ、担任の先生は私の扱いに困っていたようで、よく怒られていたのを覚えています。でも私自身は何が問題で怒られているのかさっぱりわかりませんでした。何が原因だったのか、はっきりとした事は不明ですが、私は授業中に逃げ出して行方不明事件になる一歩手前まで大騒ぎになった事がありました。このように、後先考えず衝動的に行動するところが、恐らく周りから見て異質に見えたのではと思います。このように書くと「発達障害のある子どもは学校になじめないんだ」と思われるかもしれませんが、そんな事はありません。そして、私自身の得意分野が周りに認められたことも、同級生たちとの関係が良くなった一因でした。小学校3~4年生のころ、クラスメイトの誕生日カードを作る宿題がありました。私はこの宿題に夢中になり、夜中の12時頃まで絵を描き続けて、本来は作る必要のない表紙の絵まで描いたそうです。そのとき母は「学校の成績ではあまり重要ではないことに時間を割いて…」と思ったそうですが、夢中になって完成させたカードはクラスメイトの間で好評になり、同級生たちと仲良くなるきっかけになりました(ちなみに誕生カードを贈ったクラスメイトとは、特に親しい間柄ではありませんでした)。何かを作りだすと夢中になり、図工や美術の科目で良い評価を受けることは、その後もたくさんありました。こういった経緯で、周りから見た私は「変わり者だが、すごいやつ」という認識になっていき、次第に同級生たちから認められるようになっていきました。周囲には「障害は完治した」と思われた。でも自分の心の中には違和感があった出典 : 多くの支援と私自身の努力により、学校の成績や友達関係などの問題は解決していきました。これにより、先生も母も「学習障害は完治した」と思ったそうです。特に母は、障害に対する忌避感も重なって、私に「障害がある」とハッキリと伝えることはしませんでした。これでめでたしめでたし…のように見えて、実はそうではありませんでした。確かに目に見えて明らかな問題は解決しましたが、私は他人と打ち解けることが苦手で、周りとは何とも言えない壁を感じ続けていました。例えるなら私と他人の間には常にガラスの壁があり、わかり合えず、私の声は向こう側に届いていないようでした。この壁に、長い間私は1人で悩まされていました。「障害は完治した」という周囲の認識は、成人してからの私の生活にも大きな影響を与えることになります。障害を受け入れた今、保護者や学校に思うこと出典 : 障害があっても、今後も社会で生きていく以上、学校など何かしらの社会的な集団に所属しておく必要はあると思います。でも自我が確立していない幼少期に、所属している集団で自分の存在を認めてくれる人がいないと、本人が自分を認められず、社会で生きていくことは困難になってしまうかもしれません。ありのまま生きる姿を、「障害」としてではなく「個性」として接してくれる人がいれば、その子にしかない才能を発揮して力強く生きてくれるでしょう。私はいじめも経験しましたが、個性の一部として周囲の人に受け入れられていたため、自分を異常だなどと追い込んだり、できないことや失敗したことを障害のせいにすることはありませんでした。そこで、発達障害のお子さんを持つ親御さんへ、発達障害の当事者としてお願いがあります。どうか皆さんには、お子さんの最大の理解者になって欲しいと思います。良くいわれている事だとは思いますが、発達障害=悪いことではありません。だから、悔やむことも、恥じ入ることも、責められることも何一つありません。悪い方向に傾くのか良い方向に傾くのか、それはこれからの行動次第です。いじめや学習障害を乗り越えた私ですが、自分自身に障害があるとは認識しておらず、障害と向き合うことをしていませんでした。このことが将来に影響を及ぼすこととなります。次回は私が大人になってから仕事をするにあたり、ぶつかった困難についてお話します。
2016年11月02日こんにちは、海外在住プロママライターのさとうあきこです。いま日本では英語教育の必要性が叫ばれています。幼稚園や保育園で英会話レッスンを取り入れることが増え、幼児期の習い事として英会話スクールに参加する例も少なくないようです。小学校や中学校ではネイティブによる英会話クラスも設置されています。それでも、日本における英会話力は決して十分な伸びを見せていません。なぜなのでしょうか?英語は言葉です。日本で生まれ育てば、平均して3歳くらいまでに日本語を話せるようになり、それが英語圏であれば英語を話せるようになります。そこに、特別な学習は必要ありません。この当たり前な前提をもとに、乳幼児への英語教育の効果と、家庭で親たちにできることについてまとめてみました。●乳幼児期は異文化への抵抗がない大人になってから外国語を学ぶことが非常に難しいとは誰もが知っていることです。でも、乳幼児にとっては日本語も外国語も土俵は同じ です。生活の中で自然に聞こえてくる言葉、それが日本語であれば日本語を、英語であれば英語を自然に学び取っていきます。大人にとっては異文化な英語も、乳幼児にとってはなんの抵抗も感じない一つの言葉に過ぎず、自然に受け入れることが可能なのです。●三つ子の魂百までこれは、幼いころに培われた性質が一生変わらないことを意味することわざですが、実は言語にも当てはめることができます。乳幼児期に培われた言語は、その後何らかの事情で使わなくなり忘れてしまったとしても、ゼロになることはなく、記憶の中に残っていく と考えられています。ある人は、日本でごく一般的な教育を受けて成人しましたが、海外旅行先で英語を耳にしているうちに、相手の英語がよく分かるようになり「発音がいいね」と言われたといいます。帰国後それを両親に話したところ、幼稚園で1年間ネイティブ教師の英会話授業を受けていたことが分かって納得したそうです。●ポイントは英語に触れる量英語を習得するために、乳幼児に“ガリ勉”をさせても大きな効果は期待できません。彼らに暗記や応用を求めるのは酷です。では、何が大切かというと、それは英語に触れる量 。英語圏で育つ、片親が英語を話すなどの環境でバイリンガルが育ちやすいのは当たり前の事実です。これは、英語に触れる量の多さが大きく影響を与えています。乳幼児の英語教育を成功させるポイントは一つ。英語に触れる量の多さにあると言っても過言ではないのです。●耳から入り、目で確認して口から出す英語圏の乳幼児が英語を学ぶ場所は主に家庭と幼稚園などの教育施設です。そこでは、英語で話しかけられ、英語の歌を唄い、英語のテレビや絵本を見て読んで過ごします。これを、日本での生活にどれだけ持ち込めるかがカギとなります。親がネイティブ英語スピーカーでなければ、英語で話しかけることは難しいでしょう。そこで、英語のアニメや簡単なゲームなど、聴覚と視覚に訴える材料 を使うのがおすすめ。絵本はCD付きを選び、絵を見ながら何度も繰り返して聞きましょう。親も一緒に学び取るつもりでつきあいます。これらに、1日1時間を費やすか、3時間を費やすか、その量の違いが効果の違いとなって現れてきます。●日本語がダメにならない?乳幼児期の英語教育は日本語力の低下につながるとして警鐘を鳴らす人もいます。海外生活で英語の幼稚園に通わせたから、国際結婚家庭で家族の共通語が英語だったから、そのために日本語が話せなくなってしまうことがあるともいいます。確かにそういった例もあります。ただその多くは英語の量が日本語の量と逆転した結果 起こっているのです。それだけ量が言語習得に影響を与える、その証拠ともいえそうです。日本で暮らし、通常日本語に囲まれていれば、日本語が話せなくなることはまずありません。24時間のうち3時間程度を英語に譲っても、それは変わりありません。●まとめとして子どもに英語を習得させたいと考える親は少なくありません。ただ、中学校以降の授業で学ぶ“英語”と“英会話”は別物です。乳幼児期の英語教育はあくまで英会話。英語の学力に直接結びつくとは限らないことも知っておきましょう。ただ、時代や世界が求めているのは“英会話”のほう 。それを学び取るには、どの年代よりも乳幼児期がもっともスムーズなのです。そして、家庭で英語に触れる時間の量を増やすことが、その効果をより大きくしてくれるのは、間違いなさそうです。【参考リンク】・子どもの英語教育を科学する第一回 | 小学校英語教育応援サイト(成美堂)()●ライター/さとうあきこ(海外在住プロママライター)●モデル/神山みき(れんくん)
2016年10月29日メンズかーちゃん~うちのやんちゃで愛おしいおさるさんの物語~
4人の子ども育ててます
子育て楽じゃありません