日本に住んでいた頃、上の子供の英語教育は、頭痛の種でした。お父さんがイギリス人だから、苦労しなくても英語が話せるようになっていいねとよく言われましたが、子供だって必ずしも苦労せずに言語を覚えるのではないのだなあと、そばで見ていてしみじみ思ったものです。現に一才からイギリスで育っている下の子も、会話で “I buyed” などと言ってしまうのを、何度も “I bought” と言い直したものです。今ではさすがに減りましたが、それでも時々、不規則動詞の過去形はミスが出ます。話し言葉でもそうですから、読み書きはさらに工夫が必要です。日本の子供達が長い時間をかけて漢字を覚えていくように、イギリスの子供は例外が多い英語のスペルを、時間をかけて覚えていきます。私たち家族にとって難しかったのは、ちょうど日本語の読み書きに興味を持ち始めた上の子の、日本語に対する好奇心を潰すことなく、どうすれば英語の読み書きを導入できるか、でした。英語圏の小学校で使われるフォニックス教材最初に購入したのは、フォニックス教材のJolly Phonicsでした。英語圏の小学校などで使われる教材で、アルファベットと音をうまく組み合わせて教えていくのには非常に向いています。動画の14秒あたりから見るとわかるように、子供達にアルファベットと音、それに体の動作を教えていきます。CDやビデオも併用して使う、基本的には学校用の教材です。小さな子供の興味を引くように作ってあり、とても助かったのですが、我が家には一つだけ問題がありました。これは、親がつきっきりで見ないとならないプログラムだったのです。フルタイムで働いていた当時の私には、子供が保育園から帰ってくる7時過ぎから、夕飯、お風呂、翌日のしたくと、やるべきことが山積みでした。その中でこの教材を使うのは、とても難しいことでした。優れた教材ですから、もっと時間があったら活用できたのに、と残念に思っています。オンライン識字教育プログラム “Reading Eggs”そんな時、同じように日本で子育てをしているニュージーランド人のお母さんから勧められたのが、オンラインの識字教育プログラム、Reading Eggsです。対象は2歳から13歳まで。英語圏の小学校で公式に使われることもあるプログラムですが、ゲームのような感覚で英語が読めるようになっていきます。あまり小さいうちからコンピューターに触らせるのはどうかな、とも思ったのですが、これはとても使いやすいプログラムでした。7時過ぎに保育園にお迎えに行き、帰ってきてご飯のしたくをしている間、数十分、遊び感覚でやってもらうのに最適だったのです。ちなみにReading Eggsを開発した会社(3P Learning)は、子供向け算数のオンラインプログラム、Mathseedsも出しています。簡単な計算をゲーム感覚で楽しみながらマスターすることができるので、こちらも一時期、併せて利用していました。まさに英語「を」学ぶだけでなく、英語「で」学ぶことができる、貴重な教材だったのです。オンラインプログラムは、イギリスの小学校の宿題でも大活躍イギリスに引っ越してきてから気づいたのですが、イギリスの小学校の宿題は、こういったオンラインプログラムを使うことが多いのです。算数の計算のような単純な問題は、オンラインプログラムに任せてしまえば先生は採点をしなくても良いですし、それでいて、それぞれの子供の弱点がわかりますよね。学校から出される宿題だからといって、クラスの子供たち全員が一斉に同じ問題を解くのではなく、それぞれ違う問題に取り組むこともあります。オンラインプログラムを活用することで、前回お話ししたオックスフォード・リーディングツリーを使った識字教育と同様に、子供のレベルに合わせた教育をすることができるのです。家庭にコンピューターがない子供のために、休み時間に学校のコンピューターを使って宿題をやってしまう「ホームワーククラブ」もあります。どこの国でも先生は大忙しですが、機械に任せられるような単純作業を機械に任せられる、良いシステムだと思います。英語圏にはきちんとした教育目的のオンライン教材がたくさん!オンライン識字教育プログラムReading Eggsや算数プログラムMathseedsは、会費がかかりますが、家庭で手が出せない金額ではありませんし、非常に良いプログラムだと思います。※識字・算数プログラム合わせて、年間購読で一ヶ月あたり7.92ドル(約880円)、識字プログラムのみだと一ヶ月あたり6.70ドル(約750円)。子供が自分である程度読めるようになると、多読教材がオンラインで読めるのも魅力的です。図書館で英語の本を借りることも日本国内ではそう簡単ではありませんから、絵本を一冊買う程度の金額で、ある程度の読書量を確保することができるのはいいですよね。実は英語圏にはかなりの数、しっかりとした教育用のオンラインサービスがあります。そして多くが、比較的利用しやすい価格帯で提供されているようです。例えば、全世界の子供たちと、算数の競争ができるサイトMathleticsは、先ほどご紹介した3P Learning 社の開発したもので、会費は年間約60ポンド、日本円で8,700円前後でしょうか。こうした教材が開発される背景には、小学校での宿題に使われるだけでなく、一定人数ホームスクール(ホームスクーリング)をしている子供がいることも挙げられるでしょう。学校に通うのではなく家庭で教育を受けるホームスクーリングは、アメリカやオーストラリアのように国土が広い国では、場合によっては必然的なチョイスです。病気であったり、家庭の方針でホームスクーリングを選ぶケースもあります。これは海外に限ったことではありません。インターナショナルスクールに通わせると年間300万円を超える学費がかかることもあり、東京に住んでいる外国人の親御さんの中には、経済的な事情からホームスクーリングを選ばざるをえない方もいます。日本に住んでいた頃は、日本の保育園に通う上の子のために、「ホームスクーリング」と「小学校」をキーワードに、オンラインサイトをかなり探しました。まだまだある!低年齢向けオンライン教材識字だけでなく、様々な科目を教えてくれるサイトもあります。現在下の子供が小学校で使っているサイトはPurple mashといい、英語だけでなく科学や算数、ITやアートなど、イギリスのカリキュラムに沿った様々なトピックを扱っています。残念ながら、学校向けの事業展開ですが、似たようなサイトで家庭教育に使われているものもあります。たとえば上の子の小学校が使っていたのはEducation Cityと呼ばれるサイト。イギリスやスコットランドのカリキュラムをカバーしており、ホームスクーリングをしている家庭向けのサービスは年間89ポンド、日本円で約13,000円で利用することができます。英語だけでなく算数や科学、IT、フランス語やスペイン語も。そして英語を外国語として学んでいる子供向けの教材もあります。アメリカのカリキュラムを念頭においたものですが、英語や算数、理科や社会、ITに加え、ヘルスやアート&ミュージックなどの様々な科目を扱っているBrain Popは、家庭ごとに利用することができます。現在はアメリカの小学校の約4分の1が利用しているとされているサービスです。同様にStarFallもアメリカのカリキュラムに沿った識字教育のサイトです。フォニックスを学べるアニメーションや、音声付のウェブ絵本、ダウンロードしてワークシートとして活用できる紙ベースの教材をはじめとして、多岐にわたった学習コンテンツを楽しむことができます。一部有料コンテンツもありますが、無料で楽しめる教材も豊富に用意されています。幼稚園生向け、小学生向けに分かれ、会員登録の手間なく、子供の学習レベルに合った内容にアクセスできます。子供の負担にならない程度、ゲーム感覚でイギリスやアメリカの小学生たちの使っている教材に触れることは、実は日本にいても、昔よりずっと簡単になっているのです。(参考)Wikipedia|BrainPopJolly Phonics UK Catalogue
2019年03月21日児発管・サビ管フォーラム開催!これからの教育や福祉について考えませんか?4月2日からの1週間は「発達障害啓発週間」です。今回、この啓発期間に合わせて開催するイベントを紹介します!2019年4月7日(日)、児童発達支援管理責任者・サービス管理責任者をつとめる方や、教育・福祉分野での実務経験のある方が集うイベントが行われます。こうした仕事につく皆さんが全国から集まり、課題や悩みを共有したり、果たすべき役割や今後のキャリアについてヒントを探る場です。イベントでは福祉に関する業界の第一線で活躍するゲストの方々をお招きした講演やワークショップなど、全11のプログラムを用意しています。プログラム終了後には交流会も開催予定ですので、支援者同士のネットワークを作ることも可能です。具体的には、次のような内容の講演やワークショップなどをラインナップしています。・これからの子どもの支援・青年期以降の支援・「発達が気になる子」の支援の重要性・これからの支援機関に求められること・他事業所の支援事例・計画・就労支援・定着支援の望ましい在り方や、企業との連携の仕方・スタッフ育成・チームづくりこれからの業界や支援という大きなテーマの知識から、実務に役立つ具体的なアイデアまで、現在の課題や興味関心から参加するプログラムを選ぶことができます。「これからの教育・福祉のあり方について学びたい」「児発管・サビ管としての学びを深めたい」「これまでの実務経験を活かして、キャリアアップを目指したい」「教育・福祉・介護領域の支援者同士交流したい」こんな思いを抱いている人にとって、出会いや、同じ志の仲間とともに学び、考える機会が得られるはず。ぜひ参加してみてくださいね。全11の講演・パネルディスカッション・ワークショップをご用意!児童発達支援管理責任者の方に向けて、各回60分~70分程度のプログラムをご用意しています。講演・パネルディスカッション・ワークショップなど、プログラムは全部で11ありますが、その中から一部を紹介します。◆これからの児童福祉に求められること~報酬改定と支援現場への期待~ (14:20~15:30)登壇:鈴木 久也氏(厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課 障害児発達障害者支援室 障害児支援専門官 )◆子どもの発達支援の青年期への影響(15:45~16:50)登壇:金子 訓隆氏(特定非営利活動法人輝HIKARI代表理事)障害児通所施設「輝HIKARI」を4施設運営。自身も発達障害のある子どもの父親であり、父親視点からの支援活動として、42都道府県、130団体の施設見学と、2500名の保護者・支援者と交流した「おやじりんく活動」を行っている。◆隣の支援事例のぞき見〜私たちはこう子どもに向き合ってます〜(17:05~18:10)登壇:深町 優氏(放課後等デイサービス アトリエほんちょう 管理者/児童発達支援管理責任者)子どもたちが"なりたい自分"を見つけられることを目標に、学校・地域関係者を集めた「支援会議」や、独自のメソッド「SLP(Social Life Practice)」等を実践している。◆管理者としてのステップアップ・キャリアとは?言語化ワークショップ(15:45~16:50)登壇:眞嶋すみれ(LITALICOキャリア)◆明日から実践!スタッフ育成を目指した関わり方のコツ ワークショップ(17:05~18:10)登壇:恒吉 麻実子(LITALICOワークス HRグループ)社会福祉士。児童相談所で1年勤務後、2007年より障害者の就労支援を専門に、現場での支援を8年、その後は、大学院で臨床心理学を学びながら、スタッフの向け・サービス管理責任者向けの研修の設計や実施、ケースのスーパーバイズの業務に従事して4年目に入る。◆「たまたま残念な支援者にあたりました」を無くすために〜チーム支援のすすめ〜(18:25~19:30)登壇:野口 晃菜(LITALICO研究所所長/筑波大学大学院人間総合科学研究科博士(障害科学))公教育におけるインクルーシブ教育システムの構築を専門に、すべての子どもにとっての学ぶ権利が保障される社会の構築を目指す。小学校講師を経て、株式会社LITALICO入社。LITALICOジュニアにて指導員を経験し、スーパーバイザーとして研修制度の構築等に関わる。現在はLITALICO研究所所長。◆交流会(19:30~21:00)参加者の皆さまと一部登壇者を交え、プログラム終了後に交流会を開催いたします。(※詳細は後日ご予約いただいた皆さま宛のメールおよび本ページにてご案内いたします)※講演内容や時間、登壇者は変更になる場合がございます。児発管・サビ管フォーラム開催詳細■会場大田区産業プラザPio東京都大田区南蒲田1丁目20-20アクセス:京浜急行「京急蒲田」駅より徒歩約3分JR京浜東北線、東急池上・多摩川線「蒲田」駅より徒歩約13分■参加資格・サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者として働いている方・サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者を目指している方・介護福祉士/保育士/社会福祉士/PSW/教員免許等の資格をお持ちで、教育・福祉・介護分野にて5年以上実務経験のある方・その他本イベントに興味をお持ちいただいた方■参加費【一般】3,500円【2名以上でご参加の方】3,000円/1名★LITALICOキャリアのSNSをフォローしている方は500円割引させていただきます。(例)ご友人とご参加かつLITALICOキャリアのSNSをフォローをしている方は、参加費2,500円となります。※当日会場でのお支払いとなります。※ご友人とご参加の方は、お待ち合わせの上一緒に受付をお願いします。※LITALICOキャリアのSNSをフォローしていただいている方は当日画面をお見せください。※途中参加・退出もOKです。■主催・お問い合わせフォーラム実行委員会:info_event@litalico-c.jp※取材をご希望の方につきましても、上記問い合わせ先までご連絡下さい。*4月2日~4月8日は「発達障害啓発週間」と位置付けられています。本イベントを通し、発達障害のある方々の困難さや生きづらさの解消により近づくことができましたら幸いです。
2019年03月20日昨今では共働き家庭が増えていることから、子育てや家事を母親・父親がそれぞれ分担しながらこなしていくことが求められています。その結果、ひと昔前に比べて、父親が育児に参加することが一般的になってきました。こうして父親が積極的に育児に取り組むことは、母親の負担が減ることはもちろん、子どもに対してもさまざまな影響があります。今回は、「お父さん効果」とも呼ばれる、父親の教育への参加が子どもに与える影響を紹介しましょう。いつの時代もお父さんは子どもの憧れである!子育ての中心は母親になることが多い傾向にあります。そのため、子どもは母親の趣味嗜好や考え方、行動などの影響を強く受けやすいとされています。しかし、父親も積極的に子育てに参加すれば、当然父親から受ける影響も多くなります。その結果、子どもがさまざまな価値観に触れることになり、学ぶ機会も増えるのです。教育ジャーナリストの清水克彦氏は、著書『頭のいい子が育つパパの習慣』の中で、父親の影響について以下のように話しています。世の中の出来事に敏感で、(私はこういった仕事に就きたい)というビジョンを持っている学生は、小・中学生の頃から父親の影響を色濃く受けてきた学生が多いこともわかりました。このように、家庭の力、とりわけ父親の力は、子どもの成長を左右する大きな要素になり、父親の積極的な教育参加は子どもを伸ばすうえで重要なカギとなります。(引用元:清水克彦著(2014),『頭のいい子が育つパパの習慣』,PHP研究所.)子どもにとって父親とは「社会人としての在り方」を示す存在です。父親が仕事を生き生きとこなす姿を見せながら、仕事の楽しさやすばらしさを子どもに伝えることは、子どもが「働く」ということに興味を持つきっかけになったり、将来自分が就きたい職業を考えるときにも影響したりします。また清水氏は、「父親と子どもとの対話時間がほどよく確保」されていることも重要であると言っていました。「仕事が忙しいのに、お父さんは私のために時間をさいてくれている」ということは、子ども心に嬉しいものです。なかなか難しいかもしれませんが、毎日少しでも子どもと向き合う時間があるといいですね。教育に積極的な父親を持つ子どもの特徴5つシカゴのアン・アンド・ロバート・H・ルーリー小児病院の主治医でもあるガーフィールド博士と、ハーバード大学医学部の臨床小児科学准教授のマイケル・ヨグマン博士の研究によると、父親が育児に携わった子どもには以下のような特徴があるといわれています。■言語能力が優れている■自尊心が高い■学校の成績が良い■うつや不安症になりにくい■学校をずる休みしたり、10代で親になったりする割合が低い言語能力や学校の成績といった学力的な部分はもちろん、自尊心の高さやうつや不安症のなりにくさといった精神的な部分は、子どもがすこやかに成長していくためには欠かせないものです。子どもの可能性を十分に伸ばすためには、父親が育児に積極的にかかわることが重要だといえるでしょう。父親の読み聞かせは母親の3倍の効果がある!?父親が育児や教育に積極的にかかわることが大切だといっても、実際には仕事などの都合でなかなかかかわることができない、どうかかわればいいのかわからないという方もいるでしょう。そんな忙しい方でも取り入れやすい習慣を紹介します。1.絵本の読み聞かせをする母親による絵本の読み聞かせに慣れている子どもにとって、父親による絵本の読み聞かせはとても新鮮なものです。母親とは違う父親の声や語り口調は、子どもの好奇心を刺激し、集中力や想像力をかき立てることにもつながります。一説によると、父親の読み聞かせは母親の読み聞かせの3倍の効果があるといわれています。週末や休みの前日に絵本の読み聞かせをする習慣を作りましょう。2.家族そろって食卓を囲む日を作る家族そろって食卓を囲み、子どもと父親がゆっくりと対話することは、子どもの学力を伸ばすことにもつながるといわれています。毎日一緒に夕食をとることは難しくても、週に何度かは早めに帰宅し、親子で会話を楽しみながら夕食をとるようにしましょう。また朝食を一緒にとるというのもひとつの手です。父親が朝からしっかり食べることで、子どもも朝からたくさん食べる習慣がつきますよ。3.父親だからこそできる遊びを楽しむアスレチックやスポーツなど、父親だからこそできるパワフルな遊びを楽しみましょう。母親にはできない遊びを通して子どもとかかわることで、子どもは父親への信頼感がより強くなり、さらには精神的な安定をもたらします。自然体験は子どもの自己肯定感を育てますし、キャンプには子どもの脳機能を向上させるという効果もあるそうです。ぜひどんどん子どもを外に連れだしてあげてください。4.子どもの好きなものを知る子どもと過ごす時間が母親に比べて少ない父親は、子どもの趣味嗜好をしっかり把握できないことも多いです。子どもの好きなものを知ることは、子どもとのコミュニケーションのきっかけになったり、子どもの気持ちを汲み取ったりすることにもつながります。好きな食べ物、好きなキャラクター、好きな遊びなどは母親に聞くなどして把握しておき、子どもとの会話や遊びに生かしましょう。父親が自分の好きなものを知ってくれていると、子どもは「自分を受け入れてくれている、理解してくれている」と感じ、自己肯定感が高まります。5.母親を褒め、感謝する父親と母親がお互いに尊敬・信頼し合うことは、子どもの心の安定につながります。子どもの前で母親を褒めて、感謝する気持ちを示せば、子どもも母親を大切にするようになります。母親にも、子どもの前で父親を同じように褒めてもらうようにしましょう。父親と母親の関係は、将来的な子どもの恋愛観や結婚観に影響することもあるため、夫婦間での信頼感を築くことも重要です。***育児に積極的に参加する父親の中には、「育児をするためには仕事を早く片付ける必要があるので、以前に比べて効率的に仕事ができるようになった」という方もいます。子どものために、妻のために、そして自分自身のために、より子育てに携わってみませんか。文/田口るい(参考)東洋経済オンライン|「父親」が育児に携わった子が優れている理由プレジデントオンライン|「子供を潰す・伸ばす」父の習慣と口癖5プレジデントオンライン|子どもの生きる力を育てる父親の役割ベネッセ教育情報サイト|子どもがパパになつかない時にできることとは?ベネッセ教育情報サイト|どうすればいいのかわからない…パパ育児のススメPHPファミリー|父親の読み聞かせは、母親の3倍の効果があるThe Sydney Morning Herald|Why story time is better when dad’s reading the bookPHPファミリー|父親との会話が子どもの学力を伸ばす清水克彦著(2014),『頭のいい子が育つパパの習慣』,PHP研究所.Study Hackerこどもまなび☆ラボ|子どもに「自然体験」をさせよう!正義感と自己肯定感を強くする方法
2019年03月20日「先行きが見えない」といわれる時代だからこそ、「子どものために」と考えて塾に通わせることはもちろん、子どもにあれやこれやと習い事をさせている親御さんは多いはず。でも、もしかしたら……自覚しないままに、「教育虐待」をしてしまっている可能性も否定できません。そう語るのは、育児や教育に関する執筆活動の他、各種メディアで活躍する教育ジャーナリストのおおたとしまささん。教育虐待の実態から、現在の家庭教育がはらむ問題点を解説してくれました。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)いまとむかしの「教育虐待」のちがい教育虐待という言葉は新しいものではありますが、きっとむかしから似たようなことはおこなわれていたはずです。子どもに過剰に勉強をさせようとする、いわゆる教育ママは何十年も前から存在しましたよね。ただ、かつての教育虐待と現在のそれはニュアンスが若干ちがってきているようにも思います。かつての厳しい家庭教育には、わかりやすい「ゴール」がありました。目指すのは東大をはじめとした難関大学に入学すること。そのゴールに達すれば、その後の子どもの一生が保障されると親は考えていたのです。だからこそ、勉強させることについてはどこまでも厳しく徹底していた。テストの点が良くなければ、手を上げることもあったかもしれません。でも、逆にいえば、テストの結果が良ければ文句はいわない。そういうシンプルな構造のものでした。一方で、いまは「学歴が役に立たない」ともいわれる時代です。それはつまり、かつてのゴールがゴールではなくなったわけです。もちろん、「学歴が役に立たない」といっても、決して「学歴が必要ない」時代になったわけではありません。学歴はいまも一定の武器になることはたしかです。でも、なかには高学歴を得たうえで、英語ができないといけない、プログラミングができないといけない、コミュニケーション能力が高くないといけない、プレゼンがうまくないといけない……といったさまざまな情報を鵜呑みにしてしまった親もいます。そういう親が子どもをスケジュール漬けにしていることが、現在の教育虐待です。でも、子どもをそんなスーパーマンみたいな人間に育てようとすることは、果たして現実的でしょうか?習い事の本来の意義を知る重要性そういう親は、そもそも習い事を子どもにさせることの意義を取り違えています。習い事とは、子ども自身が求めるものをすることによって、夢中になり、達成し、挫折を味わい、そして壁を乗り越えることで、「やり抜く力」を育ててくれるものであり、なんらかのスキルを得るのは副次的な成果です(インタビュー第3回参照)。子どもにプログラミングを習わせたとして、子どもが大人になったときに現在のプログラム技術が通用するでしょうか?断言できますが、「絶対に通用しない」といっていいでしょう。でも、子ども自身が「プログラミングを学びたい」というのなら話は変わります。徐々に難しいレベルのプログラミングを学びはじめるうち、子どもは「どうしてもわからない」という壁にぶつかります。そこで、考えて考えて「こうすればいいんだ!」という「突き抜け体験」をする。その体験こそが子どもの力になるのであって、スキルそのものに意味があるものではないのです。子どもにさまざまなスキルを身につけさせようとすることは、必要かどうかもわからないアプリをスマホにいくつも入れようとしているようなものです。本当に子どものためを思うのなら、スマホそのものの性能を上げる、つまり子ども自身の力を伸ばしてあげることを考えなければなりません。壁に穴が空いたら赤飯を炊け現在の教育虐待のやっかいなこととして、「親も子どもも無自覚」という点も挙げられます。なかには、コーチングまで学んで子どもを完全にコントロールして勉強や習い事をさせている親もいます。コーチングの本来の使い方ではなく、広い意味ではこれも教育虐待につながる可能性がありますが、当然、親は「子どものため」だと思っています。一方で、うまく操作されているがために、子どもにも「虐待されている」という自覚はありません。だから、思春期を迎えても反抗期が訪れない。「いい子に育った」と思ったら大間違いです。そういう子どもは成人しても誰かに指示を与えられないと落ち着かず、つねに自信を持てない、なにをやっても楽しくないという人間になる。なぜなら、「自分の人生を生きたことがない」からです。むしろ、むかしからいわれる「壁に穴が開いたら赤飯を炊け」じゃありませんが、子どもが中高生になって反抗期が訪れたら、よろこばしいことだととらえるべきです。現在の教育虐待には、「親自身の不安を解消しようとしている」という構造があります。親が持つ「この子はちゃんと生きていけるのだろうか……」という不安を解消するため、親が思う解決策を与えようとしているわけです。でも、子どもはこれから親の価値観を超えた世界で生きていかなければなりません。親が与える解決策はあまり意味がないといっていいでしょう。まずは「親は無力である」と親が自覚することが大切です。子どもは親が思っているよりもたくましいものです。子どもの生きる力を信じてあげましょう。いまの子どもには「ぼーっとする時間」が足りないそして、あれやこれやと習い事をさせる代わりに、「ぼーっとする時間」を与えてあげてください。少しでも時間があればなにか習い事を詰め込もうとする親がいるために、いまの子どもたちにはその時間が圧倒的に足りていません。この「ぼーっとする時間」は人間の成長にとても重要なものです。そういう時間があって、「暇だな」「なにをして過ごそうかな」と子どもははじめて自発性を発揮します。そして、「じゃ、本を読もう」「映画を観よう」などと考える。そこで、「なにをしているときに自分は幸せなのか」と知る。それが「人生の羅針盤」になるのです。その羅針盤を持たないまま成長すると、人生のあらゆる場面で進むべき方向を自分で決められない人間になってしまいます。たとえどんなに優れた能力を秘めた人間であっても、その能力を使うこともできないでしょう。塾や習い事にこれだけ多くのレパートリーが出てきている時代、わたしは皮肉を込めて「そのうち、『ぼーっとする時間』を売る塾というものができる」といっています。「子どもメディテーション教室とかね(笑)。仮にそんなものができても利用することなく、子どもが本当に「ぼーっとできる時間」を大切にしてあげてください。『中学受験「必笑法」』おおたとしまさ 著/中央公論新社(2018)■ 教育ジャーナリスト・おおたとしまささん インタビュー一覧第1回:過当競争極まれり。難関中学への“逆転入学”が子どもに弊害をもたらしている第2回:「間に合わせの学力」では人生厳しい。「本質的な学力」を伸ばす“1日10分”の学び第3回:学力は人並程度あればいい。「新たな時代」を生き抜くためには“3つの力”が必要だ第4回:「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには“決定的に足りない”時間がある【プロフィール】おおたとしまさ1973年10月14日生まれ、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学校・高等学校卒業、東京外国外大学英米語学科中退、上智大学外国語学部英語学科卒業。株式会社リクルートを経て独立し、数々の育児誌、教育誌の編集に関わる。心理カウンセラーの資格、中学高校の教員免許を持っており、私立小学校での教員経験もある。現在は、育児、教育、夫婦のパートナーシップ等に関する書籍やコラム執筆、講演活動などで幅広く活躍する。著書は『受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実』(新潮社)、『名門校とは何か? 人生を変える学舎の条件』(朝日新聞出版)、『ルポ塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体』(幻冬舎)など50冊を超える。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月14日「学力」とは、「教育を通じて獲得した力」です。一般的には、「どれだけ勉強ができるかを示す力」といっていいでしょう。文科省がおこなっている学力調査などは、まさにその意味で使われているものです。しかし、育児や教育に関する執筆活動の他、各種メディアで活躍する教育ジャーナリストのおおたとしまささんは、「『本質的な学力』とは『どう生きていくか』を考える力」だと語ります。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)勉強をし過ぎる子どもと全然しない子どもいま、小学生を見ていて問題に感じるのは、勉強をする子どもとそうではない子どもの差が開き過ぎているということです。これは中学受験に付随する問題でもあります。いまの中学受験は競争が過酷ですから、受験をするとなるとすごく勉強をしなければなりません。一方、中学受験をしないと決めた子どもは、逆に勉強を全然しなくなる傾向にあるように感じます。人間形成のためか、あるいはいわゆる後伸びする力を養うためか、「子どもの頃にはできるだけ遊んだほうがいい」という意見もあります。でも、その遊びがただゲームをするだけだったり、スマホをいじるばかりだったりというものであれば問題でしょう。もちろんずば抜けて勉強ができる必要はありませんし、教科書を丸暗記するような必要もない。でも、教科書に書かれていることを筋道立てて理解し、小学校で得るべき基礎学力を身につけておかなければ、その子どもの後々の人生は厳しいものになるはずです。それこそ、中学受験はしなくても、高校受験や大学受験の場面で壁にぶつかることになるでしょう。基礎学力や学びの姿勢がなければ、そういうときに手にしようとするのは「付け焼き刃の学力」でしかないのです。つまり、高校入試や大学入試という目的をクリアするためだけの「間に合わせの学力」です。もちろん、それで目的を達成できれば問題はないかもしれません。ただ、付け焼き刃の学力だけしかない場合と、それとは異なる「本質的な学力」を身につけている場合では、その後の人生は大きく変わってくるはずです。「教養」が世界での自分の生かし方を示すでは、「本質的な学力」とはどんなものでしょうか。それは、ふたつの要素にわけられるとわたしは考えています。ひとつは「教養」。もうひとつは、「学び続ける力」です。教養とは、「さまざまな学問の観点から世のなかを見る目を養うこと」です。ここではひとつの卵を例にしましょう。家庭科の観点からなら、卵を使ってどんな料理がつくれるのかという見方になる。栄養学の観点なら、黄身にはビタミンが多くて白身にはタンパク質が多いといった見方になるでしょう。理科なら、この卵がニワトリのものなのか別の生き物のものなのかを見分けるための方法を考える。社会科なら卵の値段が決まった理由を考えるかもしれないし、数学なら卵の容積を求めたり、殻が描く放物線を数式で表す方法を考えたりするかもしれません。ひとつの卵というものも、いろいろな学問の観点、角度から光を当てることによってその本質が立体的に見えてきます。「教養を得る」ということは、そういうふうにさまざまな視点に立つことで、ものごとをより正確に捉えられるようになることなのです。そうして教養を得ると、自分が置かれている世界を正確に把握し、そのなかで自分をどういうふうに生かしていくのかと考えられるようになっていきます。つまり、自分が「どう生きていくのか」を判断できるようになるのです。これは「学ぶ意味」でもあり、もはや付け焼き刃の学力とはまったく別のものですよね。そして、教養が身についていれば、日常のなかで、「あ、こういうことも学ばないといけないな」と新たな課題を次々に見つけることもできるはずです。そういう意味では、「学び続ける力」も教養に含まれると考えることもできるかもしれません。抽象的思考を高めるのは幼いときの「具体的体験」子どもに本質的な学力、つまり教養を身につけさせたいのであれば、幼い頃から「具体的な体験」をできるだけたくさんさせることが重要です。11歳くらいまでは、人間は抽象的な思考を苦手としています。だから、小学生のうちは「りんごがいくつでみかんがいくつ、合わせていくつでしょう?」というふうに、目に見えるもの、手で触れられるものを使って学びます。でも、中学生以降になると、抽象的思考ができるようになる。「x」や「y」という概念上の数字を使って表す方程式を理解するようになります。抽象的思考では、りんごやみかんのような具体物を使いません。でも、頭のなかでは抽象的なものを具体物と同じように操作しています。そして、小さい頃に具体物に触れた体験が豊かであればあるほど、抽象的思考がより得意になるのです。そのために、小さい子どもにはできるだけさまざまな体験をさせてあげてほしいと思います。また、高校受験や大学受験を見越した実利的な面からわたしの意見を述べると、やはり小学校の低学年のうちに学習習慣を身につけさせておくべきです。先にお伝えした、「学び続ける力」にも通じるものですが、受験で成果を出すにも、結局は「自ら学ぶ」姿勢が必要だからです。そのためには、学校で出される宿題以外に、ほんの少しでもいいから別の勉強をすることを子どもの習慣に組み込んでみてください。内容は本当になんでもOKです。市販のドリルをやってもいいし、新聞を読んで気になった記事に対する感想を書くということでも、虫が好きな子どもなら自分で虫図鑑をつくるというプロジェクト型のものでもいいでしょう。そして、それらをやる時間は本当に短くてもいい。1日に10分の「自ら学ぶ」習慣がついていれば、その10分を30分や1時間に伸ばすことができます。でも、ゼロを1にすることはものすごく大変です。自ら学ぶ習慣がないまま大人になると、その後の人生が充実したものでなくなる可能性が高いことは、簡単に想像できますよね。『中学受験「必笑法」』おおたとしまさ 著/中央公論新社(2018)■ 教育ジャーナリスト・おおたとしまささん インタビュー一覧第1回:過当競争極まれり。難関中学への“逆転入学”が子どもに弊害をもたらしている第2回:「間に合わせの学力」では人生厳しい。「本質的な学力」を伸ばす“1日10分”の学び第3回:学力は人並程度あればいい。「新たな時代」を生き抜くためには“3つの力”が必要だ(※近日公開)第4回:「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには“決定的に足りない”時間がある(※近日公開)【プロフィール】おおたとしまさ1973年10月14日生まれ、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学校・高等学校卒業、東京外国外大学英米語学科中退、上智大学外国語学部英語学科卒業。株式会社リクルートを経て独立し、数々の育児誌、教育誌の編集に関わる。心理カウンセラーの資格、中学高校の教員免許を持っており、私立小学校での教員経験もある。現在は、育児、教育、夫婦のパートナーシップ等に関する書籍やコラム執筆、講演活動などで幅広く活躍する。著書は『受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実』(新潮社)、『名門校とは何か? 人生を変える学舎の条件』(朝日新聞出版)、『ルポ塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体』(幻冬舎)など50冊を超える。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月12日2008年の金融危機リーマンショック以降、世界で金融改革が行なわれ、マネー教育の重要性も高まっています。著名な投資家ウォーレン・バフェット氏は、「子どもたちは、金融知識や実践能力を、読み書き同様早い段階で身につけるべきだ」と言っています。また、イギリスでは「7歳の時の金銭感覚が一生続く」と言われているそうです。日本では、“お金の話” は触れにくいトピックで、家族間でも敬遠されがちな傾向がありますよね。海外でも、人にむやみにお金の話を持ち出すのはもちろんNGですが、家庭内では健全なマネー教育が早くから行なわれているようです。しっかりとした金銭感覚を持った賢い大人になるために、今後は早めのマネー教育が必要だと、日本でも認知され始めてきています。今回はマネー教育のポイントをご紹介しましょう。家の貯金は1万円!?日本のマネー教育の現状■家庭でのマネー教育日本の家庭でのマネー教育は、お小遣い制を中心に行なわれているようです。小学校入学時に始める家庭が多く、知るぽると・金融広報中央委員会(2015年度調査)によると、7割強の小学生がお小遣いをもらっています。低学年の約6割の家庭が「時々」親が必要と判断したときにあげ、中学年以降は月1回など定期的お小遣い制に移行、そのほかにもお手伝い制やお年玉も子どもがお金を手にする機会となっています。親はお小遣いの使い方で金銭感覚を身につけてほしいと願っていますが、お小遣い帳をつけている子どもは少なく、3割にも届きません。せっかくのマネー教育の機会なのに、お金の使い方や価値を十分に伝えきれていない印象です。また、あるテレビ番組での「家の貯金はいくらあると思いますか?」という子どもたちへのインタビューの答えは――「1万円?」「1億円!!」など。戸惑いながら答える子も多く、金銭感覚がなかなか育まれていない現状が垣間見えました。■学校でのマネー教育学校での現状はどうでしょうか。「中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査報告書」(日本証券業協会・金融経済教育を推進する研究会調査2014年調べ)によると、中学1~2年で金融教育の時間が全く取れていないと回答した学校が6~7割に達しています。教員は金融教育の必要性を認識していながら、時間不足と教員自身の知識不足を問題点としてあげています。日本証券業協会が中学生以上向け教材として「株式学習ゲーム」を提供するなど、意識は徐々に高まっていますが、学校での教育もまだまだこれからといったところのようです。また2008年の金融広報中央委員会調査では、「金融・経済の仕組みに十分知識があると思う」人はわずか6.7%しかいませんでした。日本のマネー教育不足は明確な問題として浮かび上がっているのです。マネー教育大国では小学校低学年から「お金」を学ぶ海外はどうなのでしょうか?マネー教育大国と言われているイギリスとアメリカの例を見てみましょう。【イギリスのマネー教育】イギリスでは、1990年前後の年金改革や個人年金がらみの問題で国の財政を圧迫した経験があり、それ以降金融教育に力を入れてきました。2014年から「数学」と「市民教育」の科目として金融商品、マネー管理、税金などを含む「金融教育」がカリキュラム化され、小学校低学年から学び始めます。知識のベースができる14~16歳には金融システムを学ぶ経済が必修科目となっています。また、子どもの将来のための資産形成を目的とする「ジュニアISA」では、16歳から子ども自らの運用が認められているのです。学んできたことが実践できる仕組みはとても有効ですね。【アメリカのマネー教育】アメリカの青少年への金融教育の始まりと言えるのは、1997年ジャンプスタート連盟(NPO団体)が公表した「K-12対象のパーソナルファイナンス教育の全国基準」と、全国経済教育協議会発表の「経済教育における任意の全国基準」でした。さらに、2001年の教育改革により、金融経済教育が特別推奨分野のひとつに指定されたことで、取り組みが広がります。全米共通のカリキュラムはないながらも、その重要性を訴える提言が何度か政府になされており、学校、NPO単位で積極的なパーソナルファイナンス教育が行なわれています。家庭でも、投資について教えることが珍しくなく、早くから実践として株の運用を始める子どもも少なくありません。バフェット氏が関わる子ども向け金融教育アニメや金融アメフトゲームなどのツールも充実していて、楽しく学べる土壌が育っています。このように、国の経済状況などによってベースに違いはあるものの、両国ともマネー教育に積極的ですね。日本も学ぶべき点は多いのではないでしょうか。家庭でのマネー教育には「5つのポイント」がある雇用や年金問題などを抱えるなか、日本でもマネー教育の必然性は確実に高まっています。早い段階で子どもの金銭感覚を養うために家庭でもできることを、プロのアドバイスからご紹介しましょう。(1)始めるタイミング小学生低学年~中学年のお小遣い制に切り替えるタイミングが多いようです。もしくは、子どもがお金に興味を持って質問をしてきたときもチャンス。例えばファイナンシャルプランナーの竹谷希美子氏の場合、消費者ローンのテレビCMを見て「お金を借りる」ことについて興味を持ったお子さんに、ローンの仕組みを説明、住宅ローンについても話し、家にたくさんのお金がかかることを知ってびっくりしていたそうです。子どもの興味を逃さないこともポイントですね。(2)マネー教育のステップ竹谷氏のお子さんは中学生の時から投資を始めたそうですが、そうなるまでには学ぶ順番が大事とおっしゃっています。つまり、お小遣いの管理(=義務教育)から始め、投資(=高等教育)に進むこと。限られたお小遣いをやりくりすることで、忍耐力とマネージメント力が培われ、お金の管理に自信がつきます。投資はそれからです。(3)お小遣いシステムの決め方子どもの性格によって、あげ方を変えることも考えましょう。竹谷氏の場合、コツコツタイプのお子さんは月額制に、行き当たりばったりタイプのお子さんには年棒制にして必要なときに現金を渡し、残高が減っていくシステムにして計画性と忍耐力を育む工夫をしたそうです。画一的な方法ではなく、親が見極めて最適な方法を見出してあげることはとても重要ですね。(4)お小遣い制のルールを決めるポイントは3つ。「あげっぱなしにしない」「お小遣いで買うものの範囲を決める」「使い方は子どもに任せる」。お小遣い帳をつける習慣をつけ、定期的にお金に関する相談に乗るようにしましょう。また、「お菓子はお小遣いから買う」、「勉強に必要な筆記用具は親が買う」など、用途の線引きをはっきりさせておきましょう。範囲内の使い方に口出しはNG。もし計画通りにいかず困るようなら問題点を話し合うことは大切です。(5)お金の使い方を学ぶお金の管理に慣れてきたら、使い方にフォーカスしてみましょう。アメリカの投資教育では貯金箱に4つの口があるそうです。「SAVE(貯める)」「EXPEND(欲しいものに使う)」「INVEST(投資)」「DONATE(寄付)」。使い方の違いでお金の活かし方が変わり、それにより社会貢献もできることに気づかせる目的があります。これはさすがに難しいとしても、お金を使う際にそれが「必要」なのか、ただ「欲しい」だけなのかを、意識させることが重要なのだそう。購入後しばらくたって、お小遣い帳に記された “モノ” を改めてみて、親が「あれ、使ってる?」と聞くなどして、それは本当に必要だったのか、それとも単に欲しかっただけだったのかの確認を繰り返すことで、needとwantの違いがわかるようになります。そうなると、お金の使い方にも変化が現れるでしょう。子どもに手ほどきすることで、大人もとても勉強になりそうですね。***経済評論家の川口一晃氏は、「子どもたちに知ってほしいのは、“貯め方や殖やし方” よりも “使い方”」とおっしゃいます。「夢を実現するためにはお金が必要。どうやって貯めようか?」この流れがとても大切。お金は “よく生きるための手段” なのだという意識が、お金に縛られない生き方へと誘います。こう考えると、“お金のことを話すのはタブー” という意識も自然となくなるのかもしれません。お金に対して偏見を持ってしまう前に、早めのマネー教育が肝心のようですね。(参考)EL BORDE(野村證券)|あなたは子どもに「お金教育ができる?」知っておきたいマネー教育5つのポイントPRESIDENT Online|「一生、お金で苦労しない子が育つ」家庭のマネー教育Woman Excite|「お小遣い」でお金の教育子どもの年齢別・金融教育法Woman Excite|英国では3歳から!子どものお金の教育のために、ママにできることベネッセ教育情報サイト|子供に金銭感覚を身につけさせる教育方法とは?日本証券業協会|株式学習ゲーム日本証券業協会|「海外における金融経済教育の調査・研究」報告書Forbes|ビジネス|日本の子供に金融教育が必要な理由REUTERS|金融知識は「子供時代に身に着けよ」=バフェット氏国立社会保障・人口問題研究所|【特集:各国における所得保障の動向】イギリス年金制度の歴史的展開と近年の改革の流れ斉藤美彦氏知るぽると|「子どものくらしとお金に関する調査」(第3回)2015年度調査知るぽると|「金融に関する消費者アンケート調査」(第3回)の結果東洋英和女学院大学学術レポジトリ|パーソナルファイナンスと パーソナルファイナンス教育について
2019年03月10日ビフとチップ、それにキッパーという3人の子供が出てくる物語があります。日本では決して有名な作品ではありません。けれどイギリスの子供だったら、誰でも知っているでしょう。実はこの3人、イギリスの子供達が学校で文字を読む練習をするために使う、オックスフォード大学出版社の「リーディングツリー」シリーズの登場人物です。英語圏を一歩出たら、知っている人はあまりいないでしょう。けれどイギリスでの知名度は、『ハリー・ポッター』にも劣らないかもしれません。検定教科書のないイギリスの小学校での「国語」教育前にもお話ししましたが、イギリスの小学校には検定教科書がありません。クラス内でディスカッションをするために、英語の授業ではクラス全員が同じ本を読みますが、日々の宿題や音読課題には、それぞれの子供のレベルに合った本が渡されるのです。字の読み方に慣れていない子供が、少しずつ新しい単語に出会い、読むのに慣れていくようにデザインされた、オックスフォードの「リーディングツリー」シリーズ。英語を母語とする子供にとって、いわゆる「国語」の副読本として、イギリスの約80%以上の小学校で採用されています。「オックスフォードリーディングツリー」の中でさらにシリーズ分けがされており、冒頭でご紹介した3人の子供が登場するお話に加え、ドキュメンタリーや、過去の名作の書き直し版、詩や科学、歴史など、取り扱われるトピックも多彩です。ビフとチップ、そしてキッパーが出てくる物語は、だいたい4歳から6歳ぐらいまでの年齢の子供が、よく学校で手渡されて家に持って帰ってきます。我が家の下の子供は、7歳になってからビフやチップと別れて、SFのシリーズやスポーツ選手の伝記を持って帰ってくるようになりました。下の子の読書のペースは最近までゆっくりだったので、私も下の子供の宿題に付き合っているうちに、この3人の様々な冒険を何度も耳にすることになりました。日本でも購入が可能です。8つのレベル別のストーリーがまとめて紹介されているガイドブックもあります。教科書がないことの大きなメリット科目によっては教科書がないことを不便だと感じることも多いのですが、こと英語に関しては、このシステムはとてもうまく機能しているように思います。様々な家庭から、全くバラバラな能力を持って子供達が集まってくるとき、画一的に授業をするのではなく、その子供のレベルに合った本を読み進められるというのは、大きなメリットです。読むのが苦手な子には低いレベルの本が、読むのが得意な子には高いレベルの本が手渡されます。家で数回読んで満足したら先生にチェックしてもらって次に進むので、本を読むのが好きな子はどんどん先へ進んでいきます。最初は低いレベルで始まったはずなのに、次々に読み進めていき、気づいたらクラスで一番高いレベルの本を読んでいた、というような子供もいます。逆にそうでない子は、ゆっくりと自分のペースで読書を進めることになります。英語の授業内で週に2度ほど、先生やティーチングアシスタントさんが、一人一人音読と理解度をテストしてくれます。日によっては上級生が下級生のクラスに来て、リーディング・バディ(Reading buddy・読み仲間)としてペアを組み、ちゃんと読めているか確認してくれることもあります。小学校の音読の宿題、こんなに違う!日本 VS. イギリス実は上の子は、日本の小学校で出される、国語の音読の宿題がとても苦手な子供でした。読むのは上手だったのですが、毎日同じ内容を何度も声を出して読むのがとても苦痛だったようです。その後、小学3年生でイギリスに来て、様々な本が週に何冊も手渡され、どんどん音読の課題図書が変わっていった時には、あまり嫌がることもなく読み進めていくことができました。数日ごとに異なるお話に出会うことで、好奇心が刺激されたのでしょう。そういえば私も、小学1年生の国語の教科書を、手渡されたその日に読み終えてしまうような子供でした。渡されてすぐに読み終えてしまい、「半年間これで勉強するの?」と呆然としたことを覚えています。教科書による制限がある日本の学校の音読では、比較的少ない量の文章が与えられ、それを完璧に仕上げていきますね。一方、イギリスの識字教育では、一度一度は完璧でなくてもいいから、飽きない程度に、近いレベルの本がたくさん手渡され、少しずつ難易度を上げていきます。そのうちに、どんどん読めるようになっていくのです。日本では、教科書で足りない読書量を図書室が補っていました。もちろん、イギリスの小学校でも、学校の図書室や街の図書館を使って、学校の読み物に限らない読書教育も施されています。それを考えると、小学3年生の下の子供は、クラスで渡される多読教材と図書館で借りた本を合わせて、少なくとも週に3冊から4冊の本を学校から持ち帰っていることになるでしょうか。この量は、教科書が「貸し出し」されるものであるからこそ、財源的に可能なのでしょう。本は「まるまる一冊」、そして「大量に」読むもの「リーディングツリー」を使った識字教育には様々な利点があるのですが、私が最も評価しているのは、実は個別のレベルに合わせた教育ができるという点ではありません。むしろ、子供達が早い段階で本を「まるまる読むもの」「たくさん並べて読むもの」と認識できるという点を、一番高く評価しています。小学校低学年の子供でも、最初から最後まで、本をまるごと一冊通して読むのが当たり前になっているのです。また、週に何冊も読むので、大量の文章を読むことに対する抵抗感がぐんと減ります。さらに、同じトピックについて書かれた様々な本に出会う機会も多いので、「同じ物事を扱っていても本によってちょっとした違いがある」ことに気づくのも早いようです。実は以前、日本の大学で英文学を教えていた頃は、学生さんの英語力を上げるために多読教材(学習者のレベルに合わせて、単語や文法の難しさが調整されている薄い書籍)を使っていました。学校の教科書や、問題集の「切れ切れになった英語の文章」を読むことの方が圧倒的に多い日本の学生さんに、どれだけ薄っぺらくても、「最初から最後まで」「大量に」読む経験を積んで欲しかったからです。実際に多読教材を多く読んでいくにつれ、英語を読む能力は上がっていきます。並行して、授業で扱う原著も読んでいたのですから、負担でなかったはずはないのですが、それでも原書だけでなく大量の英文を読む訓練は遠回りではなかったはずです。私が日本の大学で使っていたものは英語学習者のためのグレーデッド・リーダー(Graded Reader)であり、下の子供が通うイギリスの小学校で使われている読み物はネイティブの子供達のためのものですから、内容も難しさのポイントも違いますが、基本的な考え方は同じです。少ないものを完璧にするのではなく、好奇心やワクワクするような感情が死なない程度の難しさで、数多くの文章に触れること。子供達が成長していくうちに、現実の世界で触れる英文は多岐にわたるものですから、広く雑多な文章の世界への入り口として、イギリスの小学校に「リーディングツリー」のような教材があることは、素直に羨ましいことだなあと、私は思うのです。Roderick Hunt, Oxford Reading Tree Read with Biff, Chip and Kipper: Level 11 First Chapter Books: The Strange Box (Read with Biff, Chip and Kipper. First Chapter Books. Level), (Oxford University Press, 2014)Oxford University Press|オックスフォード・リーディング・ツリー古川 昭夫, 宮下 いづみ(2007),『イギリスの小学校教科書で楽しく英語を学ぶ』, 小学館Roderick Hunt, STAGE 1+ FIRST SENTENCES PACK (Oxford Reading Tree), (Oxford University Press, 2011)
2019年03月07日2018年4月から、小学校では道徳が「特別な教科」になりました。子どもたちの“心の教育”や“倫理観”は、これからますます重視され、学校だけではなく家庭や社会全体でも考えなければならない重要な問題になっていくでしょう。今回は、なぜ道徳を学ばなければいけないのか、そして家庭でも取り入れたい道徳教育についてお話します。なぜ今『道徳』に注目が集まるのか?まず、道徳が教科化された背景や目的について振り返ります。従来、小中学校では「道徳の時間」が週1回、教科外活動として設けられていました。親御さんの多くも記憶に残っているのではないでしょうか。その後、2015年には学習指導要領が一部改訂され、道徳は「特別の教科」(道徳科)になります。そして小学校は2018年から、中学校では2019年から全面実施されることが決定されたのです。■道徳教育が重要視されるようになった理由社会のグローバル化によって、今後ますます多種多様な文化や価値観を持った人と接する機会が増えます。お互いの違いを認めて受け入れることが求められる時代に、道徳教育は避けては通れない課題となりました。また、急速に発展したインターネット社会において、コミュニケーションの方法や倫理観にも大きな変化や新しい価値観が発生しました。そのため、対人関係の構築の仕方も家庭内の「しつけ」だけにとどまらず、社会全体で考えなければいけない教育の問題へと変化したのです。また、教科としての道徳教育を早急に推進していくにあたり、大きな影響を与えているのは「いじめ問題」です。従来の道徳教育では、「いじめは許されない」と発表させたり書かせたりするだけで、やや表面的な教育に終始していました。しかしこれからは、客観的な意見を出し合うよりも、「自分だったらどうするか」と真正面から問題に向き合うことが重要であり、現実のいじめ問題に対応できる資質や能力の育成が求められるようになったのです。■授業内容と評価基準教科外活動から「特別の教科」になった道徳。その授業内容はどのように変化していったのでしょうか。学習指導要領には、「自分の考えを基に話し合ったり書いたりするなどの言語活動を充実すること」と記載されています。つまり、従来の読んだり聞いたりするインプット重視の教育から、自分の考えをアウトプットすることを重視する方向へとシフトしているのです。道徳の授業を通して、「考える力」「議論する力」が求められるようになっていることも特徴だといえるでしょう。また道徳は「特別な教科」ということで、数値での評価はありません。道徳科における評価は他教科とは異なります。「他人の考えをしっかり受け止めている」など子どもが成長した様子を担任が見定め、「励まし、伸ばす」文章を書いてもらうことが評価となるのです。その際、ほかの子どもと比較することはせず、「規則の尊重」や「家族愛」など、内容項目ひとつひとつを評価しない、という決まりになっています。心の教育を軽視するとどうなる?道徳教育を考えるとき、東京都独自のある取り組みが参考になります。それは平成12年に策定された『こころの東京革命』です。■『こころの東京革命』とは?親と大人が責任を持ち、次代を担う子供の正義感や倫理観、思いやりの心を育み、自らが手本となりながら、人が生きて行く上で当然の心得を伝えていこうという取り組み。その中で、大人が子どもに伝えるべき大切なことをまとめているので、要約してご紹介します。また、その大切なことが身についていないとどうなってしまうのか、あわせてお伝えします。○社会の「きまり」や人との約束を守るみんなで決めた「きまり」や約束を守ることは、人との信頼関係を築き、維持するための基本であり、社会のなかで自分らしく生きていく上で欠くことができません。・きまりを守れないと秩序を乱して周囲から孤立してしまいます。その結果、自分には価値がないと思い込み、自己肯定感の低下につながります。○思いやりをもつ多様な人々と共に生きるためには、自分だけでなく他人にも心を配らなくてはいけません。思いやりとは、自分の欲しないことを他人にもしないという基本的姿勢から生まれてくるものであり、他人を愛する心をもつことが大切です。・他者への思いやりがないと自分を大切にすることもできません。すると、何事にも無気力で投げやりになってしまいまいます。○自らを律する時と場合に応じて我慢をし、かつ目標を見失わずに粘り強く物事をやり遂げることで、自らを律することの大切さと達成の喜びを感じられます。・我慢ができないと自分の要求を力づくで通そうとします。すぐに結果を求めるようになり、諦めが早くなります。○責任感、正義感をもつ自分に与えられた役割を果たし、自分の行為に責任をとるとき、人は大切な存在として尊ばれます。公平公正に対応しようとする態度、善悪の判断がしっかりでき、人として許されないことにはノーと言える強い意志をもつことが大切です。・責任感と正義感の欠如は、すぐに投げ出したり逃げたりすることにつながります。自分の判断基準が曖昧だと人に流され、決断力も身につきません。○人々や社会のために役立つことに喜びを見いだす人々や社会のために役立つことを自ら積極的に行い、また、さまざまな人々との関わりを通して何かをやり遂げることは、社会を豊かにするとともに、自分自身の充実感を高めることにもつながっていくものです。・人のために行動ができないと、自己中心的で他者の気持ちが理解できない人間になります。家庭でできる道徳教育道徳教育は、学校で学ぶだけで身につくものではありません。子どもたちが育つ環境、つまり家庭における役割がとても重要であることは言うまでもなく、親としてどのようにして子どもに道徳心を教えるのかは重要な課題です。そこで、家庭でも取り入れやすい道徳教育をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。■ピグマリオン効果を利用して絵本から道徳心を学ぶ時代を超えて語り継がれてきた物語には、「悪いことをすれば自分にかかえってくる」「正直な人にはよいことがある」といった道徳的な概念を学ぶのに適した内容が多いのが特徴的です。絵本スタイリスト®︎景山聖子さんも、「Study Hacker こどもまなび☆ラボ」の人気連載「絵本読み聞かせコーチング」で、子どもの道徳心を育む方法を紹介しています。たとえば「お友だちと仲良くしてほしい」「困っている人に手を差し伸べるような子になってほしい」と望むのなら、そんな“理想の行動”をしている人物が出てくるお話を読み聞かせるのです。(中略)そして絵本を読み聞かせてから、お母さんは子どもにこうなってほしいという思いを込めて「○○ちゃんみたいだね」と言い、後は子どもを信じ続けてください。このプロセスを何度も繰り返すだけで、期待が現実化し、子どもの行動が変わっていきます。(引用元:Study Hacker こどもまなび☆ラボ|100回叱るより1冊の絵本。「ピグマリオン効果」を引き出す読み聞かせで、幸せを現実のものに)これは「ピグマリオン効果」を利用した方法です。ピグマリオン効果とは、相手に期待することで、相手もこちらからの期待に応えようとするため、最終的に「期待通りの結果」を得られる現象のこと。絵本に限らず、普段から「○○くんはお友だちの気持ちがわかる優しい子だね」と語りかけてあげるだけで、その効果は実感できるはずです。■役割を与えて責任感や自信を植えつける子育てや教育、社会問題などの記事を多数執筆するシアトル在住のアイネズ・モーベーン・ジョーンズ氏は、日本ならではの優れた教育に着目しています。それは、掃除や給食、動物の世話係に至るまで、さまざまな「役割」を子どもたちに課していること。そして、それらの活動を通して子どもたちの道徳心や倫理観は育まれる、と述べています。仲間と協力し合うこと、責任感を持つこと、あとの人のことを考えて行動すること、ズルをしたら必ず誰かに迷惑がかかること。日々の学校生活の中で、子どもたちは自然とそれらを学び、無意識のうちに身につけているのです。もちろん家庭でも取り入れることができます。「これは○○ちゃんに任せようかな」「これからは玄関のお掃除係になってね」と、子どもでもできる簡単なことから任せてみましょう。すると、自分に与えられた役割をきちんとこなそうと努力し、褒められた喜びが自信につながり、さらに家族を喜ばせようとポジティブな行動力が芽生えます。■親子で一緒に「答えのない問題」について考える家庭での道徳教育にぜひ活用してほしいのが、こちらの本です。『答えのない道徳の問題どう解く?』(ポプラ社)この本は、これからの時代を生き抜く力を育むために、対話から子どもの本音を引き出すことを目的としています。・ついていい嘘と、ついちゃいけない嘘ってどう違うの?・どうして正義のヒーローは、悪者を殴ってもいいんだろう?・ネット上の友だちと学校の友だち、どっちが本当の友だち?これらの疑問に対して、教育評論家の尾木直樹さんや詩人の谷川俊太郎さん、卓球の水谷準選手などの著名人が真剣に向き合い、独自の回答を提示してくれます。正解のない問いを親子で一緒に考える良いきっかけにもなりますね。***答えがない道徳教育だからこそ、ぜひ親子で一緒に考えてみませんか?深く話し合ってみると、大人が思っている以上に子どももいろいろなことを考えているとわかり、お子さんの意外な一面を発見できますよ。(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|道徳教育の必要性とは?「特別の教科」になった本当の理由Study Hacker こどもまなび☆ラボ|“心の教育”忘れてない?確かな学力・健やかな体の基盤になる『道徳力』を育てるヒント東京都|「こころの東京革命」行動プラン ~大人が変われば、子供も変わる~Study Hacker こどもまなび☆ラボ|100回叱るより1冊の絵本。「ピグマリオン効果」を引き出す読み聞かせで、幸せを現実のものに東洋経済ONLINE|外国人が感じた日本の「道徳教育」のすごみ文 やまざきひろし/絵 きむらよう・にさわだいらはるひと(2018年),『答えのない道徳の問題どう解く?』,ポプラ社.
2019年03月06日まるで学校や塾の先生のように、子どもに勉強を教えている教育熱心な親御さんもいるかもしれません。でも、それは家庭教育で本当に重要なことではないと指摘するのは、ウェブサイト「中学受験情報局『かしこい塾の使い方』」主任相談員の小川大介さん。では、その「家庭環境で本当に重要なこと」とはどんなものでしょうか。小川さんは「子どもの『成長したい』という意欲をつくること」、そして「子どもが心地良く勉強できる環境づくり」だと語ります。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)学校、地域、家庭——3つの教育が人間を育てる家庭環境の大切さをお伝えする前に、大前提として教育には3つの種類があり、それぞれに役割があることを知っておいてほしいと思います。その3つとは、「学校教育」「地域教育」「家庭教育」です。まずは「学校教育」の意義についてです。学校教育がなかった古い時代の教育というのは、地域と家庭だけでおこなわれていました。でも、それでは当然のことながら得られる知識が限られてしまいます。学校とは、まとまった体系的な知識を学び、課題に取り組める場です。しかも、親や地域の大人とはちがう専門性を持つ教師が、子どもの成長の度合いに合わせて適切な課題を与えてくれる。そういう意味で、いうまでもなく学校教育は重要なものです。「地域教育」は、多様性を知るために重要なものです。地域の祭りや習い事の教室で、年代も価値観も異なる多くの人たちと会う。そうして子どもは自分の世界を広げていきます。学校にも多くの人間が集まりますが、学校は一定の体系のもとに成り立っていて、その教育は基本的に一方通行。本当の意味での多様性は学校教育ではなく、地域教育で知るものなのです。そして、親御さんが大きな役割を果たすのが「家庭教育」。家庭教育のもっとも重要な要素は、「子どもに安心感と自信を与える」こと。家族とのふれあいのなかで子どもは自分の存在を認められ、「自分は生きていていいんだ」と安心し、自信を持つ。それが「成長したい」という意欲、成長の土台をつくるのです。家庭教育のもうひとつの重要な要素として、「誰よりも親が子どもの近くにいる存在」であることが挙げられます。子どもは自ら学び行動する力を持っていますが、その力を発揮するにはあることが必要です。それは、親による「フィードバック」です。学校で先生に褒められた話をしたら、お父さんがよろこんでくれた。一生懸命にスポーツの練習をしていたら、見学に来ていたお母さんが微笑みながら見ていてくれた。自分の言葉や行動に、いちばん近くで見てくれている親がなにかを返してくれるから、子どもはさらに動こうとする。もちろん、「もっと頑張ろう!」と思う。それが子どもの原動力になるのです。家庭「教育」というと、どうしても学校教育のような勉強を家でもさせることのように思ってしまう親御さんもいますよね。でも、家庭教育とはそういうものではない。子どものなかに「勉強が楽しい」「できるようになったらうれしい」というマインドを育ててあげることがなによりも重要なのです。勉強部屋にこだわらずに集中できる空間を選ぶそういうマインドを育てることは大切ですが、一方で、「家庭」という場が勉強に適した環境であることも確かです。「リビング学習」という言葉を知っている人なら、「東大生の多くがリビングで勉強していた」という話も耳にしたことがあるでしょう。ただ、「東大生にはリビング学習経験者が多かったから、リビング学習をすればかしこくなる」と勘違いしている人も多いようです。しかし、残念ながらリビングで勉強をするだけで東大に行けるほど学力が上がるわけではありません。東大に受かるような勉強ができる子どもは、「自分がいつどんなやり方で勉強をすれば効率的か、楽なのか」を感覚としてつかんでいます。たとえば、「数学をやるときには時計の音すら聞こえない静かなところでやりたい」とか、「生物の勉強は眠くなるから喫茶店のほうがいい」といった具合に自己分析ができている場合が多いようです。ノートなど筆記用具の使い方から勉強のメニューのつくり方、タイムテーブル、そして場所の選び方まで、自分なりのスタイルをきっちりつかんでいるのです。上記のように自己分析できる子たちですから、勉強をするからといって勉強部屋だけにこもるような方法を彼らは選びません。たとえば、「リラックスして柔軟にものを考えたいときは、家族の会話や生活音がちょっと聞こえるシチュエーションでやりたい」というふうに考えることもあるのです。勉強部屋だけにこだわらず、さまざまな勉強をするにあたってそれぞれベストの空間をチョイスした結果、気がついたらリビングの滞在時間が長くなっていた――それだけのことなのです。ただ、頭がいい子どもはリビング学習の比率が比較的高くなることは、じつは理にかなっています。なぜなら、どういうときに人間が集中しやすいかというと、「リラックスできる空間にいて、かつ適度な緊張感と安心感がある」ときだからです。それは、まさにリビングです。一方、自分ひとりの空間である勉強部屋は、あくまでも自分だけの世界ですから緊張感はなく、集中力も下がりやすい場所だと考えることができる。もちろん、これは大学受験を控えた受験生に限ったことではありません。むしろ自分で環境をつくったり選んだりすることが難しい小さな子どもがいる親御さんこそ、きちんと知っておくべきことではないでしょうか。勉強だからと勉強部屋に缶詰めにしても、勉強の内容によっては逆に子どもがまったく集中できないこともあるのです。「子どもがいまやろうとしている内容を、もっとも心地良く集中してやれる場所はどこか」と子どもと一緒に考え、ベストな環境を選んであげてください。親は、世界中の誰よりも子どものそばにいて、好き嫌いをいちばんわかってあげられる存在なのですから。『親も子もハッピーになる最強の子育て』小川大介 著/ウェッジ(2018)■ 中学受験のプロ・小川大介さん インタビュー一覧第1回:“国語嫌い”になりやすい子どものタイプと、親がやりがちな間違った教育法第2回:“リビング学習でかしこくなる”は勘違い。東大生がリビングで勉強する本当の理由第3回:子どもは勝手にかしこく育つ。“自ら学ぶ力”を伸ばす辞書・地図・図鑑の活用法(※近日公開)第4回:“後伸び”する子としない子の違い。成長後に学力が急伸する幼少期の過ごし方(※近日公開)【プロフィール】小川大介(おがわ・だいすけ)1973年生まれ、大阪府出身。ウェブサイト「中学受験情報局『かしこい塾の使い方』」主任相談員。プロ家庭教師集団「名門指導会」副代表。京都大学法学部卒業。関西最大手の進学塾の看板講師として活躍後、個別指導教室「SS-1」を創設。教科指導スキルに、声かけメソッド、逆算思考、習慣化指導を組み合わせ、短期間での成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。家庭をひとつのチームと見立てておこなう独自のカウンセリングは実施数5000回を超え、高い精度でクライアントを成功へ導いている。受験学習はもとより、幼年期からの子どもの能力の伸ばし方、親子関係の築き方といった子ども教育分野でも定評がある。著書に『1日3分! 頭がよくなる子どもとの遊びかた』(大和書房)、『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』(すばる舎)、『親子で学べる! カピバラさんドリル 小学社会47都道府県』(かんき出版)など多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月05日「男女平等」という考え方が社会に広く浸透しているいま、学校教育現場も例外ではありません。男女で明白なちがいがある体を使うスポーツなどはともかく、勉強の場合であれば男女平等であることはごく自然なことでしょう。でも、V-net教育相談所を主宰し、さまざまな独自教育メソッドを開発している松永暢史さんは、「子どもの学習意欲をかき立てて学力を伸ばすための手法は、男の子と女の子それぞれでちがう」と語ります。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)女の子が潜在的に持つ「忍耐力」に期待する男の子を男の子らしく育てるには「好奇心」、女の子を女の子らしく育てるには「感受性」を伸ばしてあげることが大切だとわたしはとらえています。(インタビュー第3回参照)。でも、できれば子どもには勉強もできるようになってほしいですよね。男女それぞれに特質があるのと同じように、学力を伸ばしてあげるためのコツにも男女のちがいがあります。女の子にはまず「駄目なことは駄目」だと教える必要があります。なぜなら、「わがまま」に育てないためです。女の子の場合、どうしても「かわいい、かわいい」と育ててしまいがちです。しかも、そのかわいさゆえ、本人が要求しないうちからものを与えてしまうこともあります。そうやって甘やかしていれば、あたりまえですがわがままに育ってしまう。ただ、わたしが長く教育に携わるあいだに見てきた限り、残念ながら「わがままでかしこい女の子」はめったにいません。というのも、勉強というものは我慢してやらなければならない側面が強いものだからです。親がわがままに育てた結果、忍耐力が育たず勉強嫌いになってしまう女の子が多いのです。でも、本来なら女の子は男の子以上に忍耐力を備えているものなのです。大人になれば、男には到底耐えられないであろう出産を経験することが多いわけですし、親として負担の大きい子育ての中心を担うのですからね。甘やかしたくなるところを親が我慢し、女の子が潜在的に持っている忍耐力を発揮させて辛抱強く勉強をさせる。そういう工夫が女の子に対しては必要だと考えています。男の子は「面白い!」と思えば一気に学習意欲が増す一方で男の子の場合は、基本的にはあまり勉強に向きません。理由は簡単で、女の子と比較すると忍耐力が足りませんから(笑)。しかし一方で、「面白い!」と思った場合には、女の子よりもよっぽど熱心に勉強をするようになります。これは、好奇心に従って行動したがるという男の子の特質によるものです。学者に男性が多いのも、そういう側面が影響しているのかもしれません。面白いと思う対象があれば、寝る間を惜しんで研究にいそしむのが男性というものです。であれば、男の子には「面白い!」と思うように勉強させる工夫が必要になります。そもそも、子どもが「勉強したい」と思うときにはどんな気持ちが働いているのでしょうか。それはシンプルに、「頭が良くなりたい」という気持ちです。「頭が良くなっている」という実感があれば、「面白い!」と思い、一種のたかぶりを感じるわけです。これはたとえば、跳び箱に挑戦し徐々に高い段を跳べるようになるときと同じ原理です。「5段を飛べた」というわかりやすい実感によってたかぶりを感じ、「今度は6段に挑戦しよう」というチャレンジ精神が生まれるのです。男の子に勉強させたければ、跳び箱のようにできるだけステップアップをわかりやすくさせる工夫が必要です。これについては男女のちがいはありませんが、「面白い!」と感じることで一気に学習意欲が高まる男の子の場合、より強く意識しておくべきことでしょう。「だまされない」ために言語能力を高めるまた、子どもの性別に関係なく高めるべき「だまされない」力についても、わたしなりの考え方をお伝えしておきます。私たちが最大限に楽しい人生を歩むためには「武装」が必要です。この場合の武装とは、攻撃手段ではありません。自分を守る、より具体的にいえば「だまされないようにする」ための手段を意味します。「だまされる」とは、相手のいっていることを正確に理解せず、あるいは相手の言葉に対する判断をせず、相手の思い通りにされてしまうことです。この世のなかは、人をだまして儲けようとする人間がいくらでもいる社会であることは明らかです。わたしたちが接する情報の多くも、誰かが利益を上げるために流しているものが少なくありません。そして、そうしたものとのやり取りは最終的に言語でなされます。契約書の内容をきちんと把握できない人間は、だまされてしまうこともあるでしょう。ですから、「だまされない」ためには言語能力を高める必要があるのです。インタビュー第2回でもお伝えしたとおり、子どもの言語能力を高めるには読み聞かせと音読が有効。とりわけ『徒然草』などの古典作品は、言語能力を高めるのに最適です。ただ、古典だととっつきにくいと思われる方には、わたしの著書『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』(すばる舎)で紹介している「読むだけで頭が良くなる厳選本145冊」をおすすめしています。戦後の文学作品や絵本の中にも、正しい日本語の系譜を受け継いでいる作品は数多くあるのです。言語能力はまぎれもなく、あらゆる勉強に必要な力。言語能力を高めることは、より良い人生を歩むためだけでなく学力を高めるためにも、必要なことなのです。子どもにとって体験が伴わない知識は意味がない最後に、特に男の子を育てるうえで大切な「体験」の重要性についても触れておきます。大人になったときのことを思えば、男性は「なにか」ができないといけません。そのためには、子どもの頃から「なにか」を得るための経験をたくさんしておく必要がある。男の子の好奇心が反応して行動をしようとしたときには、できるだけその気持ちをかなえてあげるべきです。その役割を担うのはやはり同じ男性である父親でしょう。母親は少しでも「危ない」と思ったら子どもの行動を止めてしまいますからね。そして、母親とは別に子どもの行動を妨げるものが「スイッチとクリック」の存在です。いまの子どものまわりにはゲーム機やパソコンなどさまざまな機械があふれています。スイッチがある機械で遊んでしまうと、本来必要である好奇心に従った行動は起きませんし、現実世界での「体験」が減ってしまいます。成長途中にある子どもにどれだけ知識を与えても、それ単体ではほとんど役に立ちません。体験を伴って得た知識でなければ、後で引き出して使うことができないのです。男の子を「なにか」ができる男性に育てるため、なるべく多くの体験をさせてあげてください。その体験は、現実世界で起こり得ることならどんなことでもいいのです。ただ、都会の高層マンションのなかに閉じこもっていては、好奇心はそうそう芽生えませんし、体験をなかなか得られないということになるでしょう。そういう環境なら、たとえば動物を飼ったり、鉢植えで植物を育てたりするということでもいい。「家のなかでもできること」をなるべく増やして、男の子の好奇心が働くような環境をつくってあげるよう、親御さんには心がけてほしいですね。『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』松永暢史 著/すばる舎(2015)■ 教育環境設定コンサルタント・松永暢史さん インタビュー一覧第1回:“AIに勝つ力”は学校教育では育たない。親にしか伸ばせない子どもの「7つの力」第2回:国語力は“〇〇の音読”で爆発的に伸びる。読むだけで子どもの頭がよくなる名作本の選び方第3回:思考と行動、男女の違いを徹底解説。“男の子らしさ”“女の子らしさ”が伸びる教育方針第4回:学力を伸ばすコツは男女で違う!子どもの性別で見る学習傾向と、勉強法のひと工夫【プロフィール】松永暢史(まつなが・のぶふみ)1957年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学文学部哲学科卒業。V-net教育相談事務所主宰。教育環境設定コンサルタント、学習アドバイザー、能力開発椅子トラクター。「サイコロ学習法」「ダイアローグ法」「抽象構成作文法」など多数の教育メソッドを開発。子どもの個性に合わせてどのような教育をすることが正しいかを導き出し、学習計画、教育機関利用法、進学計画等を提案する。個人授業では国語を担当。『頭のいい小学生が解いている 算数脳がグンと伸びるパズル』(中経出版)、『落ち着かない 話を聞けない マイペースな 小学生男子の育て方』(すばる舎)、『「ズバ抜けた問題児」の伸ばし方』(主婦の友社)、『新 男の子を伸ばす母親は、ここが違う!』(扶桑社)など、教育関連の著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月03日お子さんは毎日、テレビを見ていますか?テレビ視聴は、年齢を問わず、家族みんなが楽しめるものです。しかし親としては、「うちの子どもはテレビを見すぎなのではないか?」「テレビ番組の内容によっては悪影響があったりするのではないか」などと心配してしまうこともあるでしょう。でも、テレビ視聴は子どもにとってプラスの要素もたくさんあるようです。そこで今回は、テレビ視聴と学びの関係を解説しながら、ためになる番組をいくつか紹介します。テレビ視聴で興味を持つきっかけにする!昔から学校現場でも教育番組を活用してきたように、テレビというメディアは、実は教育的な側面を持っています。また近年では電子黒板が導入されたり、パソコンを活用して教材として映像を使用することも多くなっていますね。映像を使うメリットは、言葉や画像では伝えづらいことでも、現代の子どもたちの頭にスッと入り、より学習効果も高いことが挙げられます。学校でも活用されているような教育番組であれば、安心して視聴させているご家庭も多いことでしょう。しかし、エンターテイメント性の高い番組はどうでしょうか?もしかしたら、お子さんが率先して見たがるのは、むしろこのような番組かもしれませんね。であれば、番組視聴を知識の入り口やきっかけにしてみるのはどうでしょうか?エンターテインメント性の高い番組の中にも、学習につなげられるものがあります。テレビ番組は、視聴者に興味や関心を持たせることがとても得意です。例えば、旅行番組を見て「行ってみたい」と思ったことは誰にでもあるでしょうし、ちょっとした雑学の紹介などでも楽しんで知識を得られる工夫が凝らされています。(引用元:ベネッセ 教育情報サイト|テレビ番組は学習の素材の宝庫だった!学習への意欲を高める活用方法とは)番組を見て終わりではなく、そこから学習に広げられるように、親がちょっとした働きかけをするのがいいようです。たとえば、クイズ番組であれば、親子でどちらが先に正解するか競い合ってみたり、旅行番組に出てきた外国の場所を地球儀で調べてみたり、子どもが興味を示した場所に実際に出かけてみたり、テレビに登場した生き物を水族館や動物園などに行って見てみたり……。時には、テレビ番組で出てきた話題について親子でディスカッションをしてみるのもいいでしょう。直接知識が身につく内容でなくても、興味を持ったり、知りたい、行ってみたいと思うきっかけになることが重要なのです。親子で一緒に楽しみを共有することも大事!実際に子どもがいる家庭では、どのような番組が多くみられているのでしょう。小学生以下を対象とした2017年の調査「Kids/ex」によると、子どもが親と一緒に見る番組の1位は『世界の果てまでイッテQ!』、2位『ザ!鉄腕!DASH!!』、3位『サザエさん』、4位『ドラえもん』、5『ちびまる子ちゃん』と、バラエティーやアニメが上位にのぼっています。とくに1位と2位のバラエティー番組は、タレントが海外や日本国内のさまざまな情報を紹介したり、いろいろな課題にチャレンジする番組内容で、親子で楽しむのにぴったりです。このような国内外の情報や課題に取り組む内容のバラエティーが選ばれているのは、親が子どもと一緒にテレビを見るとき、ただ会話が弾むだけでなく、知的好奇心や情操を養うことを期待している表れでもあるでしょう。(引用元:電通報|親子で見ているのはどんな番組?ファミリー視聴が大切なわけ)※太字は編集部で施したまた、先ほどの調査結果では、保護者の6割近くが「子どもの好きな番組を一緒に楽しみたい」「子どもが親の好きな番組を気に入る」と回答していることからも、親側も子どもとテレビを視聴することを望んでいて、それがコミュニケーションのひとつにもなっているようです。一緒に楽しむなかで、子どもが今どんなことに興味があるのかを知ることにもつながるでしょう。子ども向けの教育番組は、どうしても子どもだけでの視聴になりがちです。しかし、親子で楽しめる番組であれば、番組を視聴する時間を共有した後に、そこから何か学習につながる行動にも移しやすいのもメリットのひとつですね。子どもの意欲や興味につながる番組3選具体的には、どんなテレビ番組が子どもの学ぶ意欲や興味につながりやすいのでしょうか。今回は、おすすめのテレビ番組を3つピックアップしてみました。<おすすめ1>〇5歳児にもわかりやすく説明できるかな!?【チコちゃんに叱られる】NHK総合 毎週金曜午後7時57分|再放送毎週土曜午前8時15分「歩いていると靴に小石が入るのはなぜ?」や「コタツでウトウトするのはなぜ?」など、身近なのに考えたことがない疑問を楽しい検証実験で解決!生意気だけど憎めない、チコちゃんのキャラクターも人気。<おすすめ2>〇各界のスペシャリストがわかりやすく解説!【世界一受けたい授業】日本テレビ 毎週土曜午後7時56分国語、数学、科学、保健体育などの教科ごとに名物講師が登場し、目からウロコな授業を展開。米村でんじろう先生の迫力満点の実験授業や、滝川洋二先生の名探偵コナンと謎解きができる授業など、親子で楽しめる内容が満載。<おすすめ3>〇生きものたちの迫力映像や感動物語が見もの!【ダーウィンが来た! 生きもの新伝説】NHK総合 毎週日曜午後7時30分|再放送毎週火曜午前4時2分日本に生息する身近な生き物から、世界各地の秘境で暮らす珍獣まで、放送ごとにある生き物を深掘りし、人間が知られざるドラマを発掘。最新機材を駆使して撮影された映像には、普段見ることがない生き物の様子が映し出されている。このような番組を見ることは、興味を持つきっかけ作り以外にも学びの効果があります。例えばクイズ番組や謎解き系の番組であれば、考える力を高めたり、実験や検証系の番組であれば、普段の生活の中でも疑問に思ったことを追求したり、確かめてみることが大切ということを自然と学べますね。***子どものテレビ視聴には、時間やテレビ番組の内容など、親がある程度制限をすることは必要です。しかし、1日の終わりに親子でテレビを見ながら思いきり笑ったり、視聴内容についての話をするひとときは、親にとっても子どもにとってもかけがえのない時間でもあります。その中で興味を持ったこと、疑問に思ったこと、初めて知ったことを、親子で次のアクションにつなげてみてください。その興味や意欲こそが、テレビ視聴で得られる“学び”なのかもしれません。文/内田あり(参考)ベネッセ教育情報サイト|テレビ番組は学習の素材の宝庫だった!学習への意欲を高める活用方法とは電通報|親子で見ているのはどんな番組?ファミリー視聴が大切なわけベネッセ教育情報サイト|子どもにテレビを見せることのメリットとは?子育てに取り入れるポイントもご紹介!NHK総合|チコちゃんに叱られる日本テレビ|世界一受けたい授業NHK総合|ダーウィンが来た! 生きもの新伝説
2019年03月02日「男の子には男の子らしく、女の子には女の子らしく育ってほしい」と願う親御さんも少なくないでしょう。でも、ひとむかし前とちがい、現在の学校教育現場には「男女平等」の考え方が広く浸透しています。そう考えると、「男の子を男の子らしく、女の子を女の子らしく」育てるには家庭教育が鍵となりそうです。V-net教育相談所を主宰し、さまざまな独自教育メソッドを開発している松永暢史さんによると、女の子は「感受性」、男の子は「好奇心」を伸ばすことが大切なのだそう。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)危険で面白いことを求める男、安全で楽しいことを求める女男女というものをわたしなりに観察して思うのは、「男と女では頭のなかで使う言語がちがう、脳のつくりそのものがちがうのではないか」ということ。一輪の花を見ると、女性は「まあ綺麗!」なんて反応を示しますよね。わたしは男ですから男性の立ち場からの見方になりますが、男からすれば、そういう女性の反応は過剰に映ることもある。だけど、彼女たちはただうわべの言葉を発しているのではなく、本当にそう感じています。つまりこれは、「女性のほうが男性よりもだいたいにおいて感受性が強い」ということを示していることの裏付けです。巫女やシャーマンもほとんどが女性ということも、女性の感受性の強さを表しているように思います。つまり、女性は基本的に受け身の姿勢、「なにかが起こるのを待っている」ところがあるのかもしれません。でも、男はそれじゃつまらない。「なにか面白いことはないか」とすぐに動いてしまうのが男性です。ちょっとくらいの「危険」が伴ったとしても「面白い」ことを求めるのです。遊園地の長い行列で待たされれば、男性は退屈します。でも、女性は、待っている間も友だちと楽しく話せれば満足する傾向が強いようです。女性にとっては「危険」があって「面白い」ことより、「安全」で「楽しい」ことが重要なのです。男性が女性に惹かれるのは、当然、本能的という部分もあるでしょう。でも、女性が持っている強い感受性がとらえる情報などが、自分たちがとらえるそれよりも有意義だと男性が感じることがあるのも、その大きな一因であるように思います。なにかに接した際の女性の反応は、男性には過剰に映る一方で、ときに心を強く揺さぶられることもあるのです。感受性の強さが女性の特質であり人間的魅力であるのなら、やっぱり女の子の場合はその感受性を壊すことなく大切に育てていくような教育が必要でしょう。そのために必要なことは、できるだけ自然の「生」を体験させるということ。たとえば、人間が調理などの手を加えていない果物を味わう。その際には、味覚だけではなく嗅覚でも自然の「生」を味わっていることになります。ただ、視覚と聴覚の場合はそう簡単ではありません。わたしたちのまわりの目や耳に入るものは、映像や音楽、騒音といった、人につくられたものが多いからです。それでも、意識的に探せば見つかるものです。風や雨の音、鳥の声、そういうものに敏感に反応する。公園などにある草木を気に留めていれば、その変化を味わうこともできるでしょう。もちろん、たまには景色のいい大自然に連れて行ってあげてください。これら、自然の「生」を味わいながら芸術に親しめば、感受したことを自分で表現できるようにもなります。そうすると、さらに感受性を高めることができるようになるのです。女の子は感受性、男の子は好奇心を伸ばす一方、「なにか面白いことはないか」とすぐに動き回りたくなる男の子の場合は、その好奇心と行動力を伸ばしてあげなければなりません。ここで、男女に対するわたしの考えにおけるそもそもの前提についてお伝えしておきましょう。わたしたちが置かれている状況、これを「境遇」と呼びます。そして、境遇以外の一切のことは「環境」です。環境から境遇になんらかの出来事、たとえば夏の森で涼しい風を感じる、美しい景色を見るといったことが起こったとします。それを受け取ることが、女性が得意な「感受」です。では、感受したらどうすればいいでしょうか。ただ受け取るだけではもったいない。「気持ちいい!」「すごい!」「綺麗!」というふうに言葉を発してもいいし、文章や音楽、絵にする、カメラで撮影するということでもいいでしょう。感受性を伸ばす手法として先に少しお伝えしましたが、さまざまなかたちで、「心情表現」をするのです。もうひとつのパターンがあります。環境から境遇になんらかの刺激が届くと、「好奇心」が起きますよね。そうすると、どうすればいいか。それは、「追体験」です。「こんなものは見たことがないぞ」などといった好奇心に従って、行動を起こすのです。極端にいえば、人間がやっていることはこのふたつのパターンしかありません。そして、「感受して心情表現する」パターンは女性を、「好奇心を持ち追体験する」パターンは男性を成長させるのです。男の子の教育についての話に戻しましょう。女の子にはその特徴である感受性を伸ばしてあげる教育をするという考え方と同様に、男の子の場合にも好奇心に従って行動する力を伸ばしてあげるといいと思います。近年、教育現場における問題のひとつに挙げられるのがADHDです。すぐに気が散ってうろちょろしてしまうという、「注意欠陥・多動性障害」のことですね。ただ、わたしからすれば過剰にとらえ過ぎているようにも思えるのです。そうした傾向を無理に押さえつけようとするばかりでは、好奇心旺盛で行動的という男の子の特徴を消すことにもなりかねません。そういう前提で考えれば、その好奇心と行動力を存分に発揮できる環境を親が用意してあげるべきでしょう。学校の授業中にはちょっと問題になる行動でも、豊かな自然環境のなかでならなんら問題はありません。もちろん、子どもをひとりで山や海に行かせるわけにはいきませんから、週末に一緒に遊びに行く時間を確保する努力も親御さんには求められることなのかもしれませんね。『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』松永暢史 著/すばる舎(2015)■ 教育環境設定コンサルタント・松永暢史さん インタビュー一覧第1回:“AIに勝つ力”は学校教育では育たない。親にしか伸ばせない子どもの「7つの力」第2回:国語力は“〇〇の音読”で爆発的に伸びる。読むだけで子どもの頭がよくなる名作本の選び方第3回:思考と行動、男女の違いを徹底解説。“男の子らしさ”“女の子らしさ”が伸びる教育方針第4回:学力を伸ばすコツは男女で違う!子どもの性別で見る学習傾向と、勉強法のひと工夫(※近日公開)【プロフィール】松永暢史(まつなが・のぶふみ)1957年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学文学部哲学科卒業。V-net教育相談事務所主宰。教育環境設定コンサルタント、学習アドバイザー、能力開発椅子トラクター。「サイコロ学習法」「ダイアローグ法」「抽象構成作文法」など多数の教育メソッドを開発。子どもの個性に合わせてどのような教育をすることが正しいかを導き出し、学習計画、教育機関利用法、進学計画等を提案する。個人授業では国語を担当。『頭のいい小学生が解いている 算数脳がグンと伸びるパズル』(中経出版)、『落ち着かない 話を聞けない マイペースな 小学生男子の育て方』(すばる舎)、『「ズバ抜けた問題児」の伸ばし方』(主婦の友社)、『新 男の子を伸ばす母親は、ここが違う!』(扶桑社)など、教育関連の著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月02日特別支援教育のくふうを取り入れると、どんな子どもにもわかりやすくなる『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。「特別支援教育は、発達に課題や凸凹がある子だけが受ける特別な指導」であると、一般的には思われているかもしれません。でも、私はそうではないと考えています。私は30年間、幼児や小学生を指導する現場で仕事をしていました。そこでさまざまな子どもたちと接してきました。また、自閉症のある息子は小学校入学時から特別支援教育を受けてきました。そしてその中で、できることが増えていったことを実感しています。その経験から、どんな子どもにも有効なくふうが、特別支援教育の中にはあるのではないかと感じています。そこで、「子どもが大人の話に集中できる環境づくり」「子どもを飽きさせないための“演技力”」「子どもに指示を出す時のくふう」の3つの観点から、特別支援教育のさまざまな場面での有効性を具体的にご紹介します。子どもが大人の話に集中できる環境づくり例えば、狭い喫茶店にいる時、隣の席に座る見知らぬ人の会話が丸聞こえ…ということがあります。でも、目の前の友人と話を始めたとたん、隣の席での会話は不思議と気にならなくなりますよね。私たちには、自分に向けられている声の主の言葉を「選択的に拾おう」とする脳のシステムがあるようです。ところが、これが難しく、自分に関係のない音がドンドン入ってきてしまうという特性がある子どももいます。例えば、教室で窓際の席に座っていると、校庭で行われている体育の授業での号令が聞こえてきてしまい、気になって仕方がありません。でもこれは、気になる程度は違っても、障害がない子どもにだって同じことが言えるのではないでしょうか。私は保育園の中でひらがなを指導する仕事をしていました。授業中、隣のクラスから音楽や歌い声が聞こえてくると、字の練習をしながら歌を歌う子がちらほらいました。こんな時は指導者側が「隣のクラスが静かな学習をしている時は、歌ではなく絵画制作をする」などのくふうをする必要があると感じました。このことは、家庭生活にも応用することができます。例えば子どもに何かを伝えたい時、兄弟姉妹が遊んでいる声やテレビの音が耳に入ってくると、子どもは集中して話を聞くことができません。こういう時は、テレビを消して物音がしないところに行き、子どもが話だけに集中できる環境を用意するとよいでしょう。聴覚だけでなく、視覚にも同じことが言えます。視界に関係のない情報が入ってくると、子どもは「今はどれを見なくてはならないのか?」と迷ってしまいます。例えば、これは小学校1年生に算数を教える時に使ったホワイトボードの画像です。どちらが集中できますか?Upload By 立石美津子Upload By 立石美津子後者ですよね。「ホワイトボードを見ましょう」と言われても、そこに関係ないたくさんの情報があると、子どもたちは意識して「今、見るべきもの」を探さなくてはなりません。ADHD(注意欠陥・多動性障害)の傾向がある子どもは、さまざまな刺激に影響されやすいという特性があります。関係ない情報がたくさんある中から、必要な情報を選び取ることが難しいので、「ここを見ましょう」と言われても、全く違う場所を見てしまうこともあります。でも、障害の有無に関わらず、子どもは低年齢であるほど、興味があること以外には集中が続かないものです。教室の壁面や黒板いっぱいに飾りつけをしている学校・幼稚園がありますが、その中で何かを指示しても、子どもは選択的に見るべきものを探せないかもしれないので、くふうが必要です。必要のないものはかくし、必要なものだけにして見せる。シンプルであることが大切です。この考え方も、家庭生活に応用することができます。机の上に物が散乱していたり、部屋に子どもの好きな玩具が散らかっていたりする中で、何かを伝えようとしても、子どもは話に集中することが難しいかもしれません。そういう時は、普段は使っていない(ものが少ない)部屋に連れて行くなどして、気が散らない環境をつくったうえで子どもに話をするほうが話に集中してもらえるでしょう。子どもを飽きさせないための“演技力”幼稚園・保育園時代は、保育者がピアノを弾いて歌を歌ってくれたり、手遊びをしてくれたりします。けれども、小学校ではそういう訳にはいきません。1クラス35名程度の大勢の子どもたちを集中させるには、内容そのものよりも、教師の声の出し方や身体の動き、小道具の使い方などがポイント。ここで「飽きさせないくふう」が必要になります。どんなに良い内容の授業をしていても、モゴモゴ話していたり、話し方にリズムテンポがなかったりすると、集中の続かない幼い子どもにはうまく伝わりません。それでも子どもたちは「授業中45分間はじっとしていなくてはならない」とがんばるのですが、だんだん集中が切れて、よそ見をしたりモゾモゾ動き出したりします。こういう時は、子どもたちに「真面目に授業を受けなさい」と言うよりも、まずは教師側に「退屈させないくふう」が必要だと思います。「発達障害がある子どもは扱いにくい」と言われることもありますが、私はむしろ「こういう子どもたちを集中させることができる教師は、指導力や技量もきっと高いのだろう」と感じます。これも、家庭で取り入れることが可能です。言葉の内容だけで言うことを聞かせようとするのではなく、声のトーン、スピード、テンポにも気を配る。服装も、エプロンを外したり、きちんとした格好をするなど、「いつもと違う」という雰囲気を出すと、子どもは「ああ、聞かねばならない」と察するのです。Upload By 立石美津子Upload By 立石美津子子どもに指示を出す時のくふう「早くしなさい」「きちんとしなさい」日常生活の中でこうした言葉を発する場面は少なくありませんが、この曖昧な言い方も、もっとわかりやすく変えることができます。例えば大人だって、病院が混雑している時に「もう少しお待ちください」と言われても、10分なのか30分なのかもわからず、すごく待たされている気持ちになってしまいます。でも「診察まで待ち時間あと20分」と言われたら、見通しが立ってわかりやすいので、待つことができます。まだ人生経験が浅い子どもには、漠然とした言い方では伝わりません。「早くしなさい」と言うよりも、具体的にいつどんな行動をするのか写真で示すと伝わりやすくなります。自然と時計も読めるようになり、親に「早く、早く」と急かされなくても自主的に行動するようになるのです。Upload By 立石美津子Upload By 立石美津子部屋が散らかる原因のひとつは、物の指定席が決まっていないことにあります。片づけをしていない子に「ちゃんと片づけなさい」と言うのではなく、入れてほしいおもちゃの指定席の写真を貼って「同じように入れてね」と伝える方が、どの子にとっても断然わかりやすいと思います。これは、ある保育園でされていた道具箱のくふう。中身が整理整頓された状態の写真を、箱の裏に貼ってあります。保育士がいちいち指示をしなくても、子どもたちが自分で写真を見て整理整頓できるようくふうされています。このように見える化すると、やるべきことがわかりやすくなり、子どもは自分で考えて行動することができるようになります。Upload By 立石美津子Upload By 立石美津子どんな子どもにもわかりやすく、伝わりやすいくふうを「住みやすい社会を作るためには、社会的立場の弱い人に話をきくのが一番確実」だとよく言われますが、私も子どもや障害がある人が安心して暮らせる社会は、どんな人にとっても快適で、安心して暮らすことができると思います。特別支援教育の中で使われる方法には、さまざまなくふうが織り込まれています。それは、障害がある子どもだけでなく、どんな子どもにとってもわかりやすいものです。幼児教育に携わり、また障害がある子どもを育てる中で、その実感は確かなものになっていきました。ぜひどんな子どもに対しても、活用してみてください。
2019年03月02日「先行きが見えない」と異口同音に語られる時代。これから長い人生を歩まなければならない子どもたちは、どんな力を身につけておくべきなのでしょうか。V-net教育相談所を主宰し、さまざまな独自教育メソッドを開発している松永暢史さんは、子どもたちに必要なものとして、7つの力を掲げています。そして、そのなかでも根幹となり得るのが「感受性」だといいます。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「判断力」と「創造力」の礎となる「感受性」子どもに必要な力として、わたしはまず「判断力」と「創造力」を挙げます。判断力がなければ、知識を持っていたとしてもそれを正しく使うことができません。それから、「他の誰もやっていないことをやりたい」「つくりたい」「描きたい」といった願望はいつもわたしたちのなかにある。いわば、創造力は、人間らしくあるための力といえるでしょう。ただ、それらふたつの力に先行して必要なものが「感受性」です。ものを感じ取る力がなければ、正しい判断もできないし、新しいものを生み出すこともできません。判断力、創造力、それに先立つ感受性――この3つが、子どもにとってもっとも大切な力です。それらに加えるなら、「観察力」「探究心」「着想力」「思考力」も大切な力になります。観察は目だけでなく頭でもおこなうもの。言葉がなければ、鋭く深い観察はできません。動物は、人間が仕掛けた罠を観察して見破るということはそうできませんよね?でも、人間なら「あれは罠じゃないか?」と言葉で考えて罠の存在を見破ることができる。動物よりはるかに優れた観察力を持つのが、人間という生き物なのです。そして探究心。ものごととは、目に見えている部分ではなくその下に重要なものが埋まっているものです。だとすれば、なにかに興味を持ったら立ち止まってとどまりそれを突き詰める必要があります。着想力は創造力のベースになる力です。なにかをつくりあげる力があったとしても、そもそもその「なにか」を思いつく力がなければつくる課程に進めません。そして、いうまでもなく、考える動物である人間には思考力が求められます。「7つの力」を伸ばすには家庭環境が重要でも、残念ながら、いまの学校教育はこれらの力を伸ばそうとしているようには思えません。何十人かでまとめてクラス分けされ、先生の話をちゃんと聞くことが求められ、たくさんの宿題を課される。わたしには、近い将来AIに取って代わられる仕事の訓練をされているように見えるのです。では、先に述べた「判断力」「創造力」「感受性」「観察力」「探究心」「着想力」「思考力」はどんなものかというと、これらは「AIが持てない力」です。「AIにできないことはなにか」と考えたわけではありません。「これからの人間にとって大切なものはなにか」と考えると、結果的にAIにできないことに行き着くのです。そして、これらの力を学校教育で伸ばしてくれないのであれば、家庭環境の在り方こそが重要になります。たとえば、感受性というものは、誰かに壊されることなくゆっくり育まれて徐々に良くなるものであって、ある教育によって突然良くなるものではない。「これから感受性を伸ばす教育をします」といった具合に伸ばすことはできません。ということは、子どもの感受性を向上させることは親にしかできないことなのです。感受性を伸ばすには「甘いお菓子」はNG!?子どもの感受性を伸ばしてあげたいのなら、まず「甘いだけのお菓子」をあげることをやめましょう。甘みというものは強烈な味覚ですから、甘いものを口にし続けると他の味を感じる力が鈍くなってしまいます。同じ甘みを持つものでも、果物だったらどうでしょうか?甘いけど酸っぱさも含むなど、味わいが多重です。そういった複雑さを感じ取れる力こそ感受性でしょう。子どもの感受性を伸ばすには、甘いお菓子ではなくて果物を与えるべきです。もちろん、これは一例です。他のさまざまなことについても、刺激が強いものを受け取って反応するのではなく、できるだけ余計な刺激物がない、いい自然環境に触れることが大切です。たとえば、同じことが聴覚についてもいえます。人間の耳は20キロヘルツまでの音しか聞き取ることができません。でも、自然界には20キロヘルツ以上の高周波の音がたくさん存在します。じつは、人間というものはこれらの高周波音を肌で感じ取っているのです。そして、その経験が豊かであるほど感受性も豊かになります。そう考えると、土があって草が生えていて海や川から心地いい風が吹くような環境に子どもを置いてあげる必要がある。ただ、特に都会の子どもだとそういう場所にひとりで行くことはできるものではありません。つまり、自然に囲まれた場所に子どもを連れて行ってあげるのが親の重要な役割なのです。『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』松永暢史 著/すばる舎(2015)■ 教育環境設定コンサルタント・松永暢史さん インタビュー一覧第1回:“AIに勝つ力”は学校教育では育たない。親にしか伸ばせない子どもの「7つの力」第2回:国語力は“〇〇の音読”で爆発的に伸びる。読むだけで子どもの頭がよくなる名作本の選び方(※近日公開)第3回:思考と行動、男女の違いを徹底解説。“男の子らしさ”“女の子らしさ”が伸びる教育方針(※近日公開)第4回:学力を伸ばすコツは男女で違う!子どもの性別で見る学習傾向と、勉強法のひと工夫(※近日公開)【プロフィール】松永暢史(まつなが・のぶふみ)1957年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学文学部哲学科卒業。V-net教育相談事務所主宰。教育環境設定コンサルタント、学習アドバイザー、能力開発椅子トラクター。「サイコロ学習法」「ダイアローグ法」「抽象構成作文法」など多数の教育メソッドを開発。子どもの個性に合わせてどのような教育をすることが正しいかを導き出し、学習計画、教育機関利用法、進学計画等を提案する。個人授業では国語を担当。『頭のいい小学生が解いている 算数脳がグンと伸びるパズル』(中経出版)、『落ち着かない 話を聞けない マイペースな 小学生男子の育て方』(すばる舎)、『「ズバ抜けた問題児」の伸ばし方』(主婦の友社)、『新 男の子を伸ばす母親は、ここが違う!』(扶桑社)など、教育関連の著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年02月28日子どもの心の教育のひとつとして大切なのが、「倫理観を育てる」ことです。倫理観を育てるためには、敏感期と呼ばれる時期の過ごし方が大きく関わっています。今回は、倫理観と敏感期の関係や、倫理観を育てるための具体的な方法についてご紹介しましょう。「自分さえよければいい」という行動倫理観とは、「人として守るべき社会的な秩序や規律に対する考え方」を指します。倫理観が欠如してしまうと、自己中心的な考え方になってしまったり、「自分さえよければいい」と、相手の気持ちや周囲の人々との関係性を全く考えない行動を起こしたりするようになってしまいます。また、善悪の判断がつかなくなってしまうこともあり、最悪の場合は犯罪に走ってしまうことも。昨今、問題視されているSNSに非常識な行動をアップするという行為や、「SNS映え」のために所かまわず写真を撮るといった行為も、倫理観の欠如が関わっているといわれています。そうならないためには、敏感期に倫理観を育てる必要があるのです。子どもの吸収力が非常に高い時期は?敏感期とはモンテッソーリ教育に基づいた考え方で、子どもが母親のお腹の中にいる7ヶ月の胎児期~6歳前後までの間にさまざまな物事に興味を持ち、ある一定のこだわりが強くなる時期を指します。この敏感期は、子どもの吸収力が非常に高い時期なので、親は子どもが興味を持った物事を肯定的に見ることが大切です。・胎児7ヶ月~3歳前後【話し言葉の敏感期】子どもはこの間に聞いた言葉や音をもとにして話し始める・生後6ヶ月〜3歳前後【秩序の敏感期】物の位置や順序などにこだわりを持つ・0~3歳前後【運動機能の発達の敏感期】歩く・座る・持つ・運ぶといった動きの獲得※3~6歳になると今度はそれらの動きよりもさらに高度な運動を獲得するための敏感期が訪れる・4~6歳前後【数の敏感期】数字に対して興味を持つ【文化の敏感期】生き物、地理や歴史に興味を持つイヤイヤ期と考えないで!子どもの倫理観を育てるためには、上記の中でも「秩序の敏感期」が重要となってきます。場所に対して強いこだわりを見せる時期なので、自宅のダイニングテーブルで自分の定位置以外の席に座ることを嫌がる子が多いようです。また自分が座る位置はもちろん、家族がいつもと違う席に座ることにも抵抗を感じます。ほかには、おもちゃの置いてある場所がいつもと変わったというだけで大泣きすることも。このとき、親は単なるワガママやイヤイヤ期だと考えてしまいがちですが、子どもとしては場所が変わったことに対する抵抗の背景に「秩序を守りたい」という意識があるのです。子どもはまだまだ、この世の中がどんなふうに回っているのか、どんな仕組みになっているのかわかりません。そのため、毎日自分が慣れている場所や物事(秩序)を確認します。そして、その通りになっていないと、途端に不安になってしまうのです。逆に、場所や物事が一定だと、安心して生活を送ることができたり、新しいことに挑戦できたりするようになります。ゆえに、場所へのこだわりを認めてあげることは、物事に正しい道すじがあることへの理解や自分の中での基準を作ることにつながり、倫理観を育てるのに非常に有効なのです。子どもの倫理観を育てるには?子どもが場所へのこだわりを見せるようになったら、以下のポイントに注意しながら生活してみてください。「秩序を守りたい」という子どもの気持ちを優先することで、「イヤイヤ!」や「ダメー!」といった行動が改善されるかもしれません。そして、秩序を守ることが、子どもの倫理観を育てることになるでしょう。■何事も一定を保つ自宅のダイニングテーブルの席などはもちろん、洋服や靴を置く場所、おむつを替える場所など、できる範囲で位置・場所を決めておきましょう。子どもにとっての「ここは○○をする場所だ」という秩序を守ってあげることで、倫理観を育てることはもちろん、日々の行動がスムーズになりますよ。「○○はここに片付けようね」と導いてあげれば、子どもが率先して片付けをするように。■変更時には理由を説明する自宅の場合はある程度、子どもの秩序を守った場所を決められるものの、外出先などではそれが難しいこともあるでしょう。そうした場合は「なぜ今日はいつもと違うのか」についてしっかり説明し、子どもの不安を取り除いてあげることが大切です。大人にとっては些細な変化でも、子どもにとってはパニックになってしまうほどの大きな変化だということを理解してくださいね。***場所の敏感期の子どもは、イヤイヤ期と混合されるような行動も多いため、親としてはストレスが溜まったり、イライラしてしまったりすることもあるかもしれません。しかし、場所の敏感期の過ごし方は、子どもの倫理観に大きく影響します。敏感期の仕組みを理解して、倫理観を育てるチャンスを逃さないようにしましょう。文/田口るい(参考)東洋経済オンライン|家でもできる「モンテッソーリ教育」のコツ東洋経済オンライン|超厄介な2~3歳児にイライラしない人の心得日経 xTECH|第12回・価値観力を高めるためにStudy Hackerこどもまなびラボ|モンテッソーリ教育に学べ!子どもの才能が伸びる「敏感期」に親がするべきこと。社会福祉法人 聡香会 きたしば保育園|言語敏感期はいつごろから
2019年02月10日いま注目度を増している「旅育」とは、「旅を通じておこなう子ども教育」のことです。でも、ただ子どもと旅に出ればいいのでしょうか?旅育初心者のため、その第一人者である旅行ジャーナリスト・村田和子さんが具体的なアドバイスをしてくれました。旅育をするにあたってまず重要となるのは「子どもを子ども扱いしない」ことだそう。そして、「体感をもって学ぶ」ことの重要性に子ども自身に気づかせることだとも。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「子どもを子ども扱いしない」という姿勢旅育とは「旅を通じておこなう子ども教育」。つまり、旅によって「子どもが大人に向かって成長する」ことが目的です。であれば、まず重要となるのは「子どもを子ども扱いしない」ことではないでしょうか。大人の友人同士で旅行するというときに、行き先を告げないとか相手の希望を聞かないということはあり得ませんよね。でも、家族旅行となると、親はどうしてもそうしてしまいがちです。そこで、子どもを子ども扱いしないために、「旅の計画から子どもと一緒にする」のです。ただ、小学校に上がる前くらいの幼い子どもだと、現実的な旅行プランを出すことは難しいでしょう。それに、せっかく子どもが「あれをしたい」「これをしたい」と言ったのに、現実的に難しいからと却下してしまうと、教育という点から見れば逆効果。自己肯定力を下げることになってしまいます。そこで、夏休みに海に行くのか山に行くのかといった複数の案から選択させるのです。ただ選択するだけですが、それでも子どもにとっては自分が決めた旅になるので、旅に臨むモチベーションがまったくちがってきます。意欲的に旅に出るわけですから、旅がもたらしてくれるさまざまな効果(インタビュー第1回・第2回参照)も格段にアップするというわけです。旅の計画を立てることは頭を使うことだらけもう少し子どもが大きくなったら、計画を立てるときに家族会議をしてください。家族それぞれが行きたい場所を挙げてプレゼンをするのです。どうしてその場所に行きたいのかといった理由を各自が訴え、他の家族はそれをしっかり聞く。すると、子どもは、「パパの案もいいな」と思ったりもします。そして、自分の案とどう折り合いをつければいいのかと考えて答えを導こうとする。こうして、社会に出たときにも重要となるコミュニケーション力や他者理解の力が自然と養われるのです。小学校中学年になれば、旅の計画の一部を思い切って子どもにまかせてみてください。目的地への行き方もひとつではありません。車がいいのか、電車がいいのか、電車でも新幹線を使うほうがいいのかと考えさせてみるのです。旅の計画というのは、本当に頭を使うことが多いものです。宿はどうするのか、観光はどうするのか、さらに予算も絡んでくる。考える要素がたくさんあるうえに、正解もない。それこそ、「正解がない」といわれる時代に必要な「考える力」を育むことになるのです。これにはインターネットの普及が好影響を与えてくれています。インターネットがない時代に、時刻表とにらめっこして予定を組むのは子どもには難しかったことでしょう。しかも、目的地周辺の観光や宿の情報を得る手段も限られていました。でもいまなら検索をすれば複数の経路に宿や観光の情報がすぐに示されます。いまの時代だからこそできるようになった教育だともいえます。身をもって「百聞は一見にしかず」を知るただ、インターネットにはデメリットもある。幼いときからあたりまえのようにインターネットに触れてきたいまの若い世代は、頻繁に旅行をする人とまったくしない人というふうに二極化しています。以前ならなかなか得られなかった情報に触れたからこそ「実際に体験してみたい」と思う人と、「家にいて得られるものになぜ時間やお金をかけるのかわからない」と思う人にわかれているのです。後者には「情報=リアル」という価値観が根底にあるのだと思います。でも、実際に旅先で本物を見ると、思っていたものとちがうということはよくあることですよね。それは、「思っていたよりも良かった」でも「思っていたほど良くなかった」でもいいのです。重要なのは、「情報とリアルはちがう」と体感すること。つまり、身をもって「百聞は一見にしかず」を知ることなのです。わたしの息子が小さいときにはじめて海に行ったときのことです。息子もテレビなどを通じて海も波も知っていて、海が見えてきたときには「わー!海だ!」とはしゃいでいました。ところが、実際にビーチに立ったら、「波が怖い」と言って海に近寄ろうともしなかった。息子はまさに五感で海を体感し、息子なりに海というものを知ったわけです。幼いときから体感をもって学ぶことの大切さを知る。そういう経験があれば、どんな情報化社会になろうとも、本物の重要性を見失うことはないと思うのです。『家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ 旅育BOOK』村田和子 著/日本実業出版社(2018)■ 旅行ジャーナリスト・村田和子さん インタビュー一覧第1回:子どもの人生は“旅”で幸せになる。いまの時代こそ親子で旅に出るべき理由第2回:旅先での行動は“親子別々”に。“親の不在”が深める子どもの「自信」第3回:旅の計画には“正解がない”。子どもの「考える力」を育む旅行プランの立て方第4回:忘れてはいけない“旅の記録”。旅先での成功体験を思い出すたび「自己肯定力」が高まる(※近日公開)【プロフィール】村田和子(むらた・かずこ)1969年8月29日生まれ、神奈川県出身。旅行ジャーナリスト。2001年、生活情報サイト「All About」運営スタート時に旅行情報のガイドに就任したことを機に執筆活動を開始。モットーは「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」。現在は家族旅行を応援する旅行情報サイト「家族deたびいく」を運営しながら、消費者視点での旅の魅力や楽しみ方を年間100以上の媒体で紹介する他、旅行に関する講演、旅行サイトや宿泊施設のコンサルティングもおこなう。得意なテーマは旅育、家族旅行、ひとり旅、記念日旅行、ヘルスツーリズムなど。特に旅によって子どもの生きる力を育む旅育を村田式教育メソッドとして著書等を通じて啓蒙を進めている。一児の母。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年02月10日家族旅行の計画を立てる場合、普通であれば「家族みんなで楽しめるもの」にしようとします。ところが、「旅を通じておこなう子ども教育」――「旅育」の第一人者である旅行ジャーナリスト・村田和子さんは、意外な提案をしてくれました。「いつも家族一緒に行動するという考え方を捨てる」というのです。果たして、その真意はどんなものなのでしょうか。まずは、旅育が子どもだけではなく親にもメリットをもたらしてくれるという話からはじめてもらいました。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)旅先ではいくらでも「褒めポイント」が見つかる「旅を通じておこなう子ども教育」というと、「子どものためのもの」と考えるのが普通です。でも、親子で旅をすることは、じつは親にもいろいろなメリットをもたらしてくれるのです。まずは「褒め上手になれる」こと。子どもの自己肯定力を育むために、「子どもは褒めて育てることが大事だ」といわれますよね。でも、日常生活のなかで子どもを褒めるのはそう簡単なことではありません。子どもが毎日できていることを褒めるには、親にもスキルが必要とされます。日常生活では、きちんとできなかったことのほうが目につくので、どうしても叱ることのほうが多くなってしまいます。でも、旅先では「褒めポイント」がいくらでも見つかります。旅では時間と場所がスケジュールによって区切られていくので、それぞれに小さな目標を立てやすいからです。たとえば電車で1時間の移動をするとしましょう。子どもに「1時間、なにをして過ごそうか」「まわりには寝ている人もいるから静かにできることがいいよね」「じゃ、静かに絵本を読んでみる?」と話しながら一緒に目標を立てるのです。宿に着く前には、「これから宿の人たちがみんなで『いらっしゃいませ』って言ってくれるから、大きな声で『こんにちは』とあいさつをしようか」という具合です。もちろん、目標をきちんと達成できたら、たくさん褒めてあげましょう。子どもの自己肯定力は、親に「あなたはすごい」といくら言われたところで伸びるものではありません。お父さん、お母さんと一緒に立てた目標を達成し、「できた」「うれしい!」と自ら感じる――そういう実体験がなければ、本当の自己肯定力は身につかないのです。旅行中は日常生活とは異なる刺激も多く、親も気持ちに余裕があるので、自己肯定力を育む絶好の機会となります。子どもにとって大事なものは「親が元気であること」それから、「リフレッシュできる」ことも親にとっての大きなメリットだととらえています。そもそも子どもにとっていちばん大切なものはなにかというと、お父さんとお母さんがいつも元気でいてくれることなのです。そういう意味では、旅行では、親御さんもしっかりリフレッシュして、英気を養うことも重要です。忙しい毎日のなか、子どもに対して「本当ならああしてあげたい(でもできない)」という罪悪感から、「家族旅行ぐらいはずっと一緒にいてあげよう」と考える親御さんも多いものです。でも、わたしは親がリフレッシュすることも重要だと考えているので、「いつも家族一緒に行動する」という考え方を捨てることを提案しています。わたしの家族の場合、夫は温泉が好きでわたしは美術館が好き。もちろん子どもに体験させてあげたいこともたくさんある。家族みんなでつねに行動すると、誰かが我慢することになります。そうしないために、数時間であっても家族それぞれが好きなことをやる時間を設けるのです。そうすれば、家族みんなが満足できる旅になる。小さい子どもがいても心配無用です。いまは、短時間の託児サービスや、自然体験やサバイバル体験など子どもが楽しめるキッズプログラムを提供している宿泊施設が増えていますから。それらを利用して、親御さんもなにかひとつくらいは自分が好きなことをやるというわけです。しかも、これは子どもの成長という点でもメリットがあります。子どもが他人に褒められたら謙遜はご法度わたしがそういうプログラムをはじめて利用したのは、息子が4歳のとき。わたしと夫はスキーをして、息子は森を探索するプログラムに参加しました。プログラム終了後、ちょっと心配しながら息子を迎えに行ったのですが、息子は目をきらきらさせて「ママ、動物の足跡を見つけたよ!」と報告してくれたのです。これは、家族みんなで体験したら起こり得ないことでした。なぜなら、子どもが自分の体験をわざわざ説明する必要がありませんからね。親子別々に過ごしたことで、その間に味わった感動を子どもが一生懸命に親に伝えようとする。それこそ、子どものコミュニケーション力を大きく伸ばしてくれます。ひとつ注意しておくとすれば、「親は謙遜してはいけない」ということでしょうか。こういう子ども向けのプログラムを利用したときなど、旅先では他人に子どもが褒められる機会が多いものです。ところが、そういうときに親はつい謙遜してしまいます。大人の社会ではあたりまえの謙遜ですが、子どもが褒められたときに限っては絶対にNGです。これにはわたしの反省も込められています。息子ひとりでそば打ち体験プログラムに参加したときのことでした。終了後、指導してくれた人に「お子さん、本当に頑張っていましたよ」と褒められたのに、わたしは「ご迷惑をおかけしなかったですか」とつい言ってしまった。すると、息子は「僕はひとりで頑張ったのに、ママは全然わかってない!」と激怒したのです。それこそ子どものプライドを傷つけることになり、自己肯定力を高めるどころではなく、深く反省しました。旅先で子どもが褒められたのなら、「ありがとうございます」と素直にただお礼を言って、子どもには「褒めてもらえたね、良かったね」と言ってあげる。そうして子どもの自信とよろこびを深めてあげるようにしましょう。親がいない世界で子どもは素顔を見せるまた、子ども対象のプログラムを利用する際に、親がついて行ったりすることは、わたしはおすすめしません。子どもがよろこぶ顔を見たいとか、写真を撮りたいと同行する親も多いようですが、それなら親子一緒に参加するプログラムを選べばよいのです。子どもだけが対象のプログラムに親が同行することは、先にお伝えしたメリットを失うばかりか、デメリットをもたらします。子どもは、親の前では無意識のうちにどこか自分の役割を感じながら行動していることも多いと感じます。たとえば兄弟なら、上の子どもは無意識に「お兄ちゃんらしく」振る舞おうとして、本来したいことを我慢してしまう。子どもなりにストレスを感じることもあるでしょう。ところが、親がいない、まわりが自分の日常を知らないなかでは、役割から開放されお兄ちゃんも意外にやんちゃな一面を見せたりすることもあります。まさにそれは、その子の素顔ですよね。他にも、参加している子どもたちが、素直な姿で本当に好きなものを見つけられるように、子どもだけの世界に浸って集中できる環境にしてあげることも大切だと思うのです。『家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ 旅育BOOK』村田和子 著/日本実業出版社(2018)■ 旅行ジャーナリスト・村田和子さん インタビュー一覧第1回:子どもの人生は“旅”で幸せになる。いまの時代こそ親子で旅に出るべき理由第2回:旅先での行動は“親子別々”に。“親の不在”が深める子どもの「自信」第3回:旅の計画には“正解がない”。子どもの「考える力」を育む旅行プランの立て方(※近日公開)第4回:忘れてはいけない“旅の記録”。旅先での成功体験を思い出すたび「自己肯定力」が高まる(※近日公開)【プロフィール】村田和子(むらた・かずこ)1969年8月29日生まれ、神奈川県出身。旅行ジャーナリスト。2001年、生活情報サイト「All About」運営スタート時に旅行情報のガイドに就任したことを機に執筆活動を開始。モットーは「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」。現在は家族旅行を応援する旅行情報サイト「家族deたびいく」を運営しながら、消費者視点での旅の魅力や楽しみ方を年間100以上の媒体で紹介する他、旅行に関する講演、旅行サイトや宿泊施設のコンサルティングもおこなう。得意なテーマは旅育、家族旅行、ひとり旅、記念日旅行、ヘルスツーリズムなど。特に旅によって子どもの生きる力を育む旅育を村田式教育メソッドとして著書等を通じて啓蒙を進めている。一児の母。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年02月09日小さなお子さんをお持ちだと、「モンテッソーリ」という横文字を目や耳にすることが多いかもしれません。ご存知の方も多いでしょうが、これは「モンテッソーリ教育(モンテッソーリメソッド)」の通称。日本において、小学校入学前から子どもの能力を伸ばそうとする「幼児教育」の分野で人気です。皆さんの中にも、「子どもにモンテッソーリ教育を受けさせたいな」「モンテッソーリってどんな教育なんだろう」と考えている方は少なくないでしょう。そこで今回は、モンテッソーリ教育の特徴についてご説明します。モンテッソーリとはいわゆる「モンテッソーリ」とは、イタリア出身の医師マリア・モンテッソーリ(1870~1952)によって生み出された教育法です。モンテッソーリは、女性として初めてローマ大学の医学博士号を取得した才女。大学卒業後は知的障害を持つ子どもの教育に取り組み、知能を向上させることに成功しました。知的障害を抱えた子どものための教育を、障害を持たない子どもの教育にも活かせると考えたモンテッソーリは、1907年に貧困層向けのアパート内で開設された保育施設「子どもの家」の監督・指導に従事します。そこから生まれた教育法が、モンテッソーリ教育なのです。モンテッソーリ教育は21世紀の現代でも多くの人に支持されています。日本の有名人だと、中学生でプロデビューした高校生棋士・藤井聡太氏の通っていた幼稚園がモンテッソーリ教育を導入していたということで、近年はモンテッソーリ熱が高まっているようですね。モンテッソーリの思想とキーワードモンテッソーリを語るにあたって、避けて通れないキーワードがいくつかあります。マリア・モンテッソーリの思想とともにご紹介しましょう。自主性(independence)モンテッソーリにおいては「自主性(independence)」が非常に重視されています。とはいえ、「勉強しろと言わなくてもすすんで勉強できる子どもに育てる」といった程度ではなく、子どもが身の回りのことを自分でできるようにさせるのが大事なのです。モンテッソーリは著書において、自主性について以下のように述べています。子どもというのは、無力さという生来の特性のため、また社会における個人という特質のため、行動を制限する枷(かせ)に縛られています。自由(liberty)を基礎とする教育法というものは、子どもがこれら多様な障害を乗り越えるのを助けるべく、関与しなければならないのです。言い換えると、子どものトレーニングは、合理的な方法において、子どもの行動を制限する社会的な束縛を軽減するようなものでなければいけません。いかなる教育的活動も、幼児のトレーニングにおいて有効であろうとするならば、この自主性という道程において子どもが前に進むのを助けるものでなければいけません。私たちは、彼らが支えなしに歩き、走り、階段を上り下りし、落ちているものを拾い、自分で服を脱ぎ着し、自分で風呂に入り、はっきりとしゃべり、自分が必要としていることを明確に表現できるようになるよう、子どもたちを手伝わなければならないのです。子どもたちがそれぞれの個人的な目的と欲求を満たすことができるような助けを与えなければなりません。これら全てが、自主性のための教育を構成するのです。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:Maria Montessori (1912), The Montessori Method, translated by Anne E. George, New York, Frederick A. Stokes Company.)モンテッソーリ教育を導入している「愛珠幼稚園」(世田谷区)の園長・天野珠子氏も、子どもの自主性を以下のように強調しています。「教具」についてはのちほど説明しましょう。子どもの自主性を尊重し、それを大人が気づき、手伝うことで子どもの自立につなげていく、ということをモンテッソーリ教育では大切にしています。そのためのひとつの手段として、さまざまな専用の教具を使うことが特徴の一つです。子どもたちは時期に合わせた教具を自由に選び、遊ぶことで、発達と自立をしていきます。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの自主性を尊重し、集中力と柔軟な対応力を育む「モンテッソーリ教育」【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】)敏感期(sensitive period)子どもは大人の手を借りず、ひとりで物事をこなしてみたくなる時期があるもの。モンテッソーリ教育において、何をやってみたくなるのかは子どもの発達段階によって異なると考えられ、そのような時期は「敏感期(sensitive period)」と呼ばれています。環境心理学などを研究し、『幼児教育のための空間デザイン―モンテッソーリ教育における建築・設備・家具・道具―』(風間書房、2018年)を著した高橋節子氏によると、子どもは生まれつき「発達の法則」を持っているとモンテッソーリは考えていたそう。そしてその法則に基づいて、さまざまな敏感期が訪れるのだそうです。敏感期には以下のような例があります。言語の敏感期では、子どもは単語だけではなく、細かい文法も一緒に習得する。そして、発達の計画が目指した通りに言語を獲得すると、言語の敏感期は終わり、新たな別の能力を獲得するための敏感期が始まる(太字による強調は編集部が施した)(引用元:J-STAGE|子どものための物理的環境とは何か――モンテッソーリ教育の場合――)例えば1歳半の子どもが階段を何回も何回も上ろうとすることがあり、危ないからと下ろしてもまた上る。これは「足腰の敏感期」で、自分の足の筋肉を発達させて動き回るために必要な行為なのです。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもたちが自ら育つ力を応援する「モンテッソーリ教育」のメソッド【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】)整えられた環境(prepared environment)上述したとおり、モンテッソーリ教育では子どもの自主性が重視されています。そして、教育者の役割は子どもに知識を詰め込んだり命令に従わせたりすることではなく、「整えられた環境(prepared environment)」を用意して、子どもが自主性を養えるようにしてあげることだと考えられているのです。教師は「積極的(active)」であるよりも「消極的(passive)」でなければならない、とモンテッソーリは述べました。子どもたちを積極的にリードすることではなく、子どもが自主性を発揮できる環境(教室)を整えてあげることが教師の仕事なのです。北米モンテッソーリセンターによると、「整えられた環境」には6つの原則があるそう。「知的な環境」を作り出すには、自由で美しい空間が必要なようですね。1.自由:子どもが好奇心をもって自由に移動でき、そこでどんな活動をするか選べる。2.構造と秩序:宇宙における「構造と秩序」が反映されるようにする。3.美しさ:見た目に美しく、リラックスできる場所にする。4.自然さと迫真性:プラスチックよりも、木やガラスの素材を用いる。5.社会的環境:子ども同士が交流できるようにする。6.知的環境:上記5つの条件を満たさなければ、せっかくの知的環境が目的を果たせない。モンテッソーリ教育の活動上記のような特徴を持つモンテッソーリ教育ですが、具体的にどんなことを行っているのでしょう?高橋氏によると、モンテッソーリ教育における活動は「教具の練習」「日常生活の練習」「社会性の獲得」に大別できるそうです。順に見ていきましょう。教具の練習モンテッソーリといえば教具、というほど有名です。教具(material)とは、モンテッソーリ教育において使われる、何度も使うことによって子どもの感性の発達を目指す専用の道具。多くは木製で、一見おもちゃのように見えます。ひとつひとつの教具には目的が設定されています。ジャンルは「日常生活の練習」(後述)のほか、「感覚教育」「言語教育」「算数教育」「文化教育」の5種類です。特に有名な教具が、大きさの異なるピンク色の木製ブロックが10個セットになった「ピンクタワー」。「感覚教育」の教具に分類され、五感のなかでも特に「視覚」を刺激するものです。三次元の立体物を見たり持ったりすることで、「大きい」「小さい」という概念を理解させるという目的があります。モンテッソーリは著書のなかで、「ピンクタワー」について以下のように述べています。1つ目のブロックは一辺が10cmで、ほかのブロックは1cmずつ小さくなり、いちばん小さいのは一辺が1cmです。活動においては、これらピンク色のブロックを緑のカーペットの上に出し、いちばん大きいキューブを最下部に、ほかのブロックを大きさ順に積み、てっぺんに1cmのキューブを載せて、小さなタワーを作ります。子どもは毎回、緑のカーペットの上にばらまかれたブロックのなかから「最も大きい」ブロックを選ばなければいけません。このゲームをいちばん楽しむのは2歳半の子で、小さいタワーを作り上げるとすぐ手で軽く払って壊し、ピンクのキューブが緑のカーペットの上に散らばっているのをうっとり眺めます。そして再びタワーの建設を始め、作っては壊しを一定回数繰り返すのです。(引用元:Maria Montessori (1912), The Montessori Method, New York, Frederick A. Stokes Company.)子どもたちが教具で遊ぶ様子が目に浮かんできそうですね。このように、モンテッソーリ教育においては、教具で遊ぶことにより教育が行われるのです。日常生活の練習モンテッソーリ教育は、子どもを天才・秀才に育てることを目的としたものではありません。そもそも貧しい地域で始まったモンテッソーリの「子どもの家」に集まってきた子たちは、貧しい家の出身でした。彼らは親からじゅうぶんな教育や世話を受けられず、不衛生な状態だったようです。モンテッソーリ教育において、「しつけ」とは、大人の言うことを聞かせることではなく、子どもが自分のことを自分でできるように導くことを指します。「しつけられた」人間というのは「自分の主人(master of himself)である」人なのです。これは、上に挙げた「自主性」というキーワードとも大きく関わっています。モンテッソーリ教育の目的とは、自主性を持つ子どもを育てること。そして自主性のある子どもとは、身の回りのことを自分でできる子どもなのです。モンテッソーリによると、「子どもの家」に来園した子どもたちが毎朝することは「日常生活の練習」でした。まず先生は、子どもたちの爪や歯がきれいかどうかチェックします。そして服のボタンが取れていたり靴が汚れていたりすれば、子どもの注意をそちらに向けさせます。このようにして、自分の姿を観察することに慣れさせ、人からどう見えるのか興味を持たせるのだそうです。そして手や耳の正しい洗い方を教え、子どもが体を清潔に保てるようにするのです。そのあと、子どもたちはエプロンをつけて教室の掃除を行います。まず、教具が正しく置かれて綺麗な状態かどうか確認。雑巾やホウキの使い方を教わって、みんなで掃除します。身なりをきちんと整えたり、掃除を自分ですることは、日本の小学校でも教えられていますが、モンテッソーリ教育においてはそれを小さい頃から教えているのですね。社会性の獲得モンテッソーリにおいて、子どもに社会生活(social life)への準備をさせてあげることは非常に重要だとされています。社会とは、年齢や立場の違うさまざまな人が暮らしている空間。そして「社会性」を獲得するため、モンテッソーリ教育では異なる年齢の子どもたちが同じクラスで学びます。年齢によってクラスを分けることは不自然であり、社会性の発達に悪影響だと考えられたからです。年齢の異なる子どもたちが同じクラスで学ぶと、年上は年下の面倒を見て、年下は年上を見習うという教育効果があります。前述の高橋氏は、モンテッソーリ教育における「社会性の獲得」について以下のようにまとめました。すなわち、子どもたちは社会生活と同様に異年齢の仲間の中で、個別の活動をしながらも、互いを尊重し、調和し、助け合いながら活動し、問題が起きたときには子ども同士で解決することで、真の意味での社会性を身につけるとされたのである(太字による強調は編集部が施した)(引用元:J-STAGE|子どものための物理的環境とは何か――モンテッソーリ教育の場合――)モンテッソーリを家庭で取り入れるにはここまで読んだら、ご自身のお子さんをモンテッソーリの保育園や幼稚園に通わせたくなったかもしれませんね。けれど、もう別の施設に通っていたり、近くに施設がなかったりする場合も。そんなときは、モンテッソーリ教育のエッセンスを家庭に取り入れてみてはいかがでしょうか?手軽な方法をお教えします。まずは、ハーバード大学教育学部長で、モンテッソーリの著書に「前書き」を書いたヘンリー・H・ホームズの言葉をご覧ください。モンテッソーリの教具を自宅で保有することは、おそらく教具そのものに対する害を別にすれば、何の害もないだろう。しかし教具を教育的効果のあるものにするならば、適切な指導のもとに用いなければならない。加えて、教具はモンテッソーリ教育における最も重要な要素では絶対にないのだということを忘れてはいけない。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:Maria Montessori (1912), The Montessori Method, New York, Frederick A. Stokes Company.)モンテッソーリの教具は、あくまで手段にすぎないというのです。では、モンテッソーリ教育における最も重要なこととは何なのでしょう?前述の天野園長は以下のように話します。子どもの自主性を尊重し、それを大人が気づき、手伝うことで子どもの自立につなげていく、ということをモンテッソーリ教育では大切にしています。たまに誤解を受けることがありますが、教具で学ぶことだけがモンテッソーリ教育でありません。例えば愛珠幼稚園では、ほかの普通の幼稚園と同じように体育や音楽の時間もあります。ですが、指導方法は決して命令口調ではなく、子どもたちが自発的にやりたくなるような雰囲気をつくることを重視します。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの自主性を尊重し、集中力と柔軟な対応力を育む「モンテッソーリ教育」【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】)子どもの自主性を尊重し、それが育つような環境を用意することなら、家庭でもできそうですね。たとえば以下のような方法があります。1.身じたくを自分でさせる。親がやってあげようとしたら拒否するようなことは、どんどん子どもにやらせてあげればいいですね。子どもが一人でレインコートを着るとします。やっと着られたと思ったら、ボタンがずれている。その時、せっかく一人で着られたものを親が勝手に外してはいけません。モンテッソーリ教育では、まず鏡を見せることにしています。子どもが自分の姿を見て自己訂正させる機会をつくってあげるのです。それで、子どもが外してほしいと言えば外してあげればいいし、自分でやるといえばやらせればいい。それでうまくできなかったとしても、自分でやったほうが、次から自分で注意をするようになります。人がやってくれたら、どこが間違っていたのか自分で気づくことなく終わってしまうでしょう。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|自分でできるという自信が学習意欲につながる。「モンテッソーリ教育」成長のためのヒント【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】)2.家事を手伝ってもらう。ごはんの時間は子どもに配膳を手伝ってもらいましょう。子どもは食事の時間が楽しみ。「野菜を洗う」「配膳を手伝う」などかんたんなことから始めさせるのがおすすめ。配膳を手伝ってもらう場合には、食器は子どもの手が届く位置に収納し、お皿やお箸などを自分で選んでもっていける配置にしておきましょう。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|特別な環境がなくても大丈夫!家庭で実践できるモンテッソーリ教育)3.家庭の一角に子ども用の「コーナー」を設ける。たとえば、身支度を自分でできるよう、子ども用の「身支度コーナー」を作るなどがおすすめ。身支度コーナーには、小さな鏡、くし、髪留めなどを並べて置いておき、自分で身支度を楽しくできる環境を作ってあげるのです。そのスペースは子ども専用。物をしまう場所や、レイアウトも自分で決めさせてください。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:同上)4.自宅の内装を美しく魅力的に整える。物理的環境は魅力的で豊かでなければならないとされた。その例として、花や絵画などの装飾や、テーブルクロスの使用について述べている。また、家具も魅力的なものであるべきだとし、例えば子どもが日常的に使用する木製のイスは魅力的、あるいは洗練されたものであるべきだとし、籐のイス、肘掛けイス、ソファを置くのも良いとするなど、家具にも多様性をもたせる必要があるともしている(太字による強調は編集部が施した)(引用元:J-STAGE|子どものための物理的環境とは何か――モンテッソーリ教育の場合――)モンテッソーリの「教具」を買いたい!モンテッソーリ独自の教材として知られる「教具」。教具を使うこと自体が最も重要ではないのだといっても、やはり教具のデザインやそれに込められた思想は魅力的です。知育玩具として購入し、家庭で使いたいと思うのも無理はありません。日本でも、複数の通販サイトで個人的に教具を購入することができます。すでに述べたように、教具にはそれぞれ意図が設定されており、「日常生活の練習」「感覚教育」「言語教育」「算数教育」「文化教育」の5種類。さらに、0歳児~3歳児向けの簡単な教具もあります。せっかく教具を買うのなら、気にしてほしいのが「棚」についてです。「子どもの家」において、教具は専用の教具棚に収納されます。子どもが自分で出し入れしやすいよう、高さは低く、横に長いのが特徴です。大抵のご家庭において、棚をはじめとする家具は大人が使いやすいように選ばれたもののはず。長く使うことを考えれば仕方ないのですが、そうした家具は大きくて重いため、子どもには使いづらいという欠点があります。一方でモンテッソーリ教育において、家具や教具は子どもが使いやすいように設計された「子どもサイズ」です。そのような道具を使うことによって、子どもは無理なく「日常生活の練習」を行うことができます。日々のお片付けもやりやすくなるはずです。なので、教具を買うにしても買わないにしても、モンテッソーリ教育の考えをとりいれてみて、子ども用の「棚」を検討してみてはいかがでしょうか?子どもが使いやすいサイズの棚を用意して、おもちゃの数はそれに収まるように留めるのです。「新しいおもちゃが欲しいなら、ほかのものを手放す」ルールを作れば、取捨選択することも学べます。国際モンテッソーリ教師の資格を持つ田中昌子氏によると、「全体がよく見え、いつも決まった場所に決まったものがある」ことが大事だそう。つまり、棚は子どもでも見渡せるくらいに低く、しかも棚に物を置きすぎてはいけないのです。このような基準でおもちゃの収納棚や本棚を選んでみてください。「無印良品」や「ニトリ」のカラーボックスを使って、子ども用の収納棚を手作りしている人もいるようですよ。日本にモンテッソーリの学校はある?家庭でいろいろ工夫してみるのも大事ですが、やはり子どもにモンテッソーリ教育を受けさせるなら、教具が豊富にそろっている施設に通わせるのがいちばん。保育園・幼稚園・小学校・中学校から1つずつご紹介します。●モンテッソーリ学芸大学子どもの家(目黒区)2004年に開園した、東京都の認証保育園です。まるでイタリアの邸宅のような、黄色い壁と美しい庭が特徴。保護者も過ごしたくなってしまう魅力的な環境です。教具がそろっているのはもちろん、リトミックや外国人講師による英語のレッスンも行われます。●愛珠幼稚園(世田谷区)1934年に設立されたという私立幼稚園です。モンテッソーリ教育を導入したのは1974年。教具を用いる活動や外遊びだけでなく、地域との交流やボランティア活動も大切にしているそう。本記事にも登場した天野珠子園長のもとで、毎日ワクワクする生活を送れそうです。●マリア・モンテッソーリ・エレメンタリースクール(横浜市)6~12歳の子どもは知的好奇心にあふれているという前提のもと、教具を使いながら幾何学や生物学を学んだり、農業や工業など学校外の専門家から話を聞いたりといった学習活動を行っているそう。ネイティブの先生による英語教育にも力が入っています。●The Montessori School of Tokyo(港区)2歳~15歳の子どもが学ぶインターナショナルスクール。33カ国・150人以上の子どもたちが集まっているとのこと。中等部のカリキュラムは、さまざまな文章を書いたり口頭発表を行ったりといった言語活動がメインになり、やや一般的な学校に近づくようです。モンテッソーリを知る本モンテッソーリについて大まかに紹介してきました。もっと詳しく知りたいと思ったら、関連書籍を読んでみるのがいちばんです。インターネットで購入したり、図書館で探したりしてみてください。●佐々木信一郎『子供の潜在能力を101%引き出すモンテッソーリ教育』(講談社、2006年)入門書として人気の、気軽に読める新書です。モンテッソーリの理念が具体的に分かりやすく説明されているとして好評を得ています。●マリア・モンテッソーリ著、 AMI友の会NIPPON訳・監修『子どもから始まる新しい教育 』(風鳴舎、2017年)モンテッソーリ自身による講演や文章をまとめて再構成したもの。国際モンテッソーリ協会公認のブックレットです。提唱者によって語られる生き生きとした言葉とじかに向き合えば、モンテッソーリの本質に近づけるはず。***日本でもますます注目されている幼児教育。モンテッソーリ教育の恩恵を多くの人が受けられるようになるといいですね。(参考)Maria Montessori (1912), The Montessori Method, New York, Frederick A. Stokes Company.J-STAGE|子どものための物理的環境とは何か――モンテッソーリ教育の場合――StudyHackerこどもまなび☆ラボ|モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の違いは?理念と方法論を徹底比較StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの自主性を尊重し、集中力と柔軟な対応力を育む「モンテッソーリ教育」【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもたちが自ら育つ力を応援する「モンテッソーリ教育」のメソッド【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】StudyHackerこどもまなび☆ラボ|自分でできるという自信が学習意欲につながる。「モンテッソーリ教育」成長のためのヒント【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】StudyHackerこどもまなび☆ラボ|特別な環境がなくても大丈夫!家庭で実践できるモンテッソーリ教育NAMC Montessori Teacher Training Blog|The Six Principles of the Montessori Prepared Environment Explained学研モール|モンテッソーリ教具学研モール|ピンクタワーHarvard Graduate School of Education|Henry Wyman Holmes, 1880-1960講談社絵本通信|子育て相談 モンテッソーリで考えよう!モンテッソーリ学芸大学子どもの家愛珠幼稚園マリア・モンテッソーリ・エレメンタリースクールThe Montessori School of Tokyo
2019年02月02日道徳の授業が教科化されるなど、学校や社会で子どもたちの「心の教育」に力を入れるなか、思考力と対話する力を育てるもっとも効果的な方法として、『こども哲学』が注目されていることをご存知ですか?これからの時代、求められる能力は思考力とコミュニケーション能力ーー。よく耳にする言葉ですね。しかし問題は、「どうやってその能力を育てるの?」ということです。『こども哲学』はみんなが自由に自分の考えを話し、人の意見に耳を傾け、積極的に議論して「自分で考える力」と「自己表現」が身につく対話活動です。そのメソッドは、親子の会話にも取り入れることができるので、ぜひ参考にしてみてくださいね。道徳の教科化で「哲学対話」=「こども哲学」にも注目集まるまず、“哲学”と聞いて何を思い浮かべますか?「難解」「変わり者の学問」「実社会では役に立たない」「成績に結びつかない」……、このように、わたしたちの日常とはあまり縁がないように感じている方も多いのではないでしょうか。たしかに、大学で専門的に学ぶいわゆる“学問としての哲学”には、そのようなイメージがありますね。しかし、ここでご紹介する『こども哲学』は、哲学対話と呼ばれる対話活動を意味します。それは決して難しいことではなく、いくつかのシンプルなルールを守っていれば、「どんな発言もOK」といった自由なものです。最近では、有名小学校や私立中学校・高等学校で教科として導入されたり、国際バカロレアのプログラムにある「哲学」との関連性で語られたりと、教育プログラムとしての側面にもスポットがあたっています。また、2018年度から教科化された道徳の教科書にも哲学対話が紹介されるなど、「心の教育」を重視し始めたここ日本でも注目が集まっているのです。『こども哲学』の歴史は意外にも古く、1920年代にドイツで萌芽し、アメリカの哲学者であるマシュー・リップマンによって1970年代に大きく躍進しました。その後世界各地に広まり、さまざまな教育機関で実践されるようになりましたが、ここまで広く知れ渡るようになったのは、ある映画がきっかけであると言われています。それは、フランスのドキュメント映画『ちいさな哲学者たち』(2011年公開)です。舞台はフランスのある幼稚園。3歳~5歳の子どもたちと哲学対話を行った2年間の記録を集約したこの映画は、「こども哲学」の真髄とも言える要素がふんだんに詰まっています。「愛とは何か」「賢いとはどういうことか」「どういう状態を自由と呼ぶか」、さらに貧富の差や人種問題に関係する問いを子どもたちが話し合うのですが、びっくりするほど世界を鋭く観察し、物事について深く考えている子どもたちの対話の様子は、観客を大変驚かせたといいます。「こども哲学」は大人も変える!哲学・哲学教育を専門とする立教大学の河野哲也教授は、「『こども哲学』では、哲学的なテーマについて子ども同士で対話をすることで、他人と合理的に議論する力、自分自身で自律的に考える力を養うことができます」と述べています。議論といっても、哲学対話はただの意見交換とは違います。子どもたちが同じテーマについて異なった意見を関連づけて対話を広げて深めていくことが目的です。普段の授業では、子どもたちは唯一の正解を求められますが、この『こども哲学』では自分の考えを素直に述べることが求められるのです。ここで、実際にどのようなことがテーマになるか、例を挙げていきましょう。河野教授が監修を務めたNHK Eテレの子ども向け哲学番組『Q〜こどものための哲学』では、次のような「子どものギモン」をテーマにしていました。・ふつうってどういうこと?・なんで勉強しなきゃいけないの?・なんでお母さんはいつも怒るの?・カッコイイってどういうこと?普段お子さんから「ねえねえ、これってどういうこと?」と聞かれるような内容ばかりですね。ここで「お母さん忙しいから、あとでお父さんに聞いて」と子どものギモンに向き合うことを避けてしまっては、思考力と対話力は身につきません。それはお子さんだけではなく、親御さんも同じです。逗子で「こども哲学教室」を主宰し、親子で哲学対話することをテーマにした『自信をもてる子が育つこども哲学ー“考える力”を自然に引き出す』(ワニブックス)の著者である川辺洋平氏は、「『こども哲学』は親子の相互理解を深めます」と述べています。なぜなら、哲学対話を通して、子どもは物事を深く考える思考力が身につき、親は子どもの発言や考えていることを理解できるようになるからです。子どもの思考力と対話力を引き出すだけではなく、親にとっても子どもとの関係性を見つめ直すよいきっかけになる「哲学対話」。ご家庭でも取り入れてみたいと思いませんか?子どもたちと哲学対話をするときの注意点川辺氏が代表を務めるこども哲学教室・アーダコーダでは、子どもたちと哲学対話をするにあたって、次のようなルールを決めています。・ひとが話しているときはきく・自分が考えているときは待つ・自分の思ったことを言う・ひとの嫌がることはしない・何も言わなくてもいいこうしたルールを守ることで、「ちゃんと聞いてもらえる」「ゆっくり考えても待ってもらえる」「何を言っても怒られない」「ひどいことをされない」「何も言わなくても怒られない」という安心感を得ることができ、考えることの楽しさを感じられるようになります。河野教授も、哲学対話でもっとも気をつけなければならないことは「セイフティ=安心」であると述べます。セイフティとは、自分の意見を言うことに躊躇を覚えずにすむ状態のこと。子ども同士が哲学対話をするときにも、その場にいる進行役としての大人は、子どもたちが自由に発言し、気楽に質問や反論ができる雰囲気を作り出すことを心がけなくてはなりません。グループで対話をする場合、基本的には丸い円になって座ります。それは、お互いの顔が見え、誰が何を言っているかがわかる「相互理解」や「安心感」を与えるという理由からです。全員がリラックスした状態であることが好ましいので、必ずしも円であることにこだわる必要はないでしょう。自分の意見を堂々と言える子もいれば、緊張したり恥ずかしかったりしてなかなか発言できない子もいるかもしれません。そんなときは「コミュニティボール」(毛糸を巻きつけてボールにしたもの)を使い、ボールを手にした人が発言し、次に発言する人にそのボールを渡す、という方法を取り入れましょう。「ボールを持っているから話してもいいんだ」「あの子がボールを持っているから黙ってちゃんと聞こう」という意識をもつことが大切なのです。哲学対話では、ディベートのように相手を言い負かすのではなく、いろいろな考えを認めることを重視します。そして、対話を深めるためにも「みんな考えが違って面白いね」で終わらず、相手の意見でわからないところがあれば「どうして?どんなときにそう思うの?」など、どんどん質問しましょう。最終的にひとつの結論が出る必要はありません。30分なら30分と時間を決めて、終わりの時間になったら終了とします。親子でやってみよう!家庭でできる哲学対話ここまでは、グループで行う哲学対話の方法や概念についてお伝えしてきました。ここからは、家庭でも簡単にできる哲学対話についてご説明します。まず、『こども哲学』の入り口は“受け止めること”です。子どもが言っていること、やっていることの奥にある、本当に伝えようとしていることは何かな?どうしてその表現になったのかな?ということに、保護者が思いを巡らせましょう。■テーマを決めようテーマはなんでも構いません。できれば子ども自身に決めさせるといいでしょう。最初は「友だち」「学校」「勉強」など、子どもにとって身近なテーマがいいかもしれませんね。(例)・友だちは必要?・優しさってどういうこと?・なぜ学校へ行かなきゃいけないの?■対話してみよう大人は「正しい答え」や「立派な答え」を考えてしまいますが、答えを出すことが目的ではありません。思考力と対話力を伸ばすためには、子どもの発言をさらに広げることを心がけましょう。(例)親:「誰にでも優しくしなきゃいけないと思う?」子:「もちろん!」親:「でも世の中には悪い人もいるよね。悪い人にも同じように優しくするべきかな?」子:「うーん、悪い人には優しくしなくてもいいかな」親:「じゃあその悪い人が本当に困っていたらどうする?」子:「その人が本当に反省していたら助けてあげる」このように、子どもからどのような発言が飛び出すかはわかりません。しかし、どんな答えが返ってきても決して否定しないでください。まずは受け止めて、どんどん対話を深めていきましょう。***哲学対話は、今すぐにでも始められるとても簡単なコミュニケーションです。子どもは意外と物事をしっかりと考えているものです。対話を進めていくうちに、「本当はこんな風に考えていたの!?」と驚かされることになるでしょう。ぜひ親子で挑戦してみてくださいね。(参考)川辺洋平(2018年),『自信をもてる子が育つこども哲学』,ワニブックス.河野哲也(2018年),『じぶんで考え 自分で話せる こどもを育てる哲学レッスン』,河出書房新社.NHK for School|Q ~こどものための哲学特定非営利活動法人 こども哲学 おとな哲学 アーダコーダSHINGA FARM|子どもの学びのコト|「こども哲学」川辺洋平氏×伸芽会 飯田先生のスペシャル対談!「『こども哲学』ってなに? 幼児のうちから身につけたい“力”とは」
2019年02月01日【ニュース】2019年10月から、就学前の障害児の発達支援を無償化へ!出典 : 年10月から就学前の障害児の発達支援が無償化されます。就学前の障害児の発達支援を含む、幼児教育の無償化については、2017年から検討を進められてきました。2018年12月には関係閣僚会合で制度の具体化に向けて「幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針」がまとめられました。対象は、満3歳になった後の最初の4月から小学校入学までの3年間。具体的には、・児童発達支援事業所・医療型児童発達支援事業所・居宅訪問型児童発達支援事業所・保育所等訪問支援事業所・福祉型障害児入所施設・医療型障害児入所施設の利用料が無償化されます。また、幼稚園や保育所、認定こども園をこれらの発達支援と一緒に利用する場合は、ともに無償化の対象となります。認可外保育施設等の場合は上限額があります。就学前の障害児の発達支援には、現行の障害児福祉サービスの制度と同じく、一般財源があてられます。自治体によっては、すでに独自の制度として一部で無償化しているところもありますが、全国的な動きとして、地域間の差がなくなっていくことで、どこで暮らしていても子育てしやすい環境が整えられていくといいですね。幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針 | 文部科学省【ニュース】厚労省が「ゲーム依存」の実態調査を実施中!結果から予防や対策を検討出典 : 年1月17日から「ネット・ゲーム使用と生活習慣」についてのアンケートが実施されています!この調査は、2018年6月に世界保健機構(WHO)が、ゲームのやり過ぎで日常生活に支障をきたす依存症を「ゲーム症・障害」という疾患として認め、2019年5月の総会で正式承認する見通しとなったことを受けて計画されました。WHOは、■ゲームをする衝動を止められず、コントロールできない■ゲームを最優先する■日常生活に支障が出てもゲームを続けるといった症状が、12か月以上に渡って続くことを「ゲーム症・障害」という疾患とみなすとしています。2019年度にはネット使用、ネット依存、ゲーム依存等に関するさらに大規模な調査が行われる予定で、今回はその予備的調査の位置づけとされています。今回の実態調査は、厚生労働省依存症対策全国センター調査研究事業の一環で、久里浜医療センターが実施。無作為に選ばれた全国の6,000人が対象です。事前に依頼ハガキが送付され、調査員が直接訪問して行われます。対象となった人は、調査票に記入後、調査員に手渡すか、郵送、またはオンラインで回答することもできます。調査結果は、厚生労働省の政策企画・立案の基礎資料として活用され、予防や治療対策に役立てられます。【期間】2019年1月17日(木)〜2月中旬ごろ【対象】全国の10〜29歳の6,000人「ネット・ゲーム使用と生活習慣についてのアンケート調査」を実施いたします | 久里浜医療センター【ニュース】専門家に相談できる!オンラインの「育児発達相談窓口」を 経済産業省が福利厚生制度として導入Upload By 発達ナビニュース2019年1月から、株式会社WOODYが提供するオンライン育児サービス「育児発達相談窓口」を経済産業省が従業員向けの福利厚生制度として導入しました。「育児と仕事の両立の難しさ」を抱える従業員をサポートし、退職減に取り組むもので、WOODYでは、福利厚生制度として、年内に30社での導入を目指していくとしています。このサービスでは、従業員が周囲に相談しづらい育児の悩みをオンラインで気軽に相談できる機会を提供。臨床発達心理士、作業療法士、言語聴覚士、療育士、子ども向けワークショッププロデューサーといった専門家のカウンセリングを受けられます。WOODYは、発達障害のある子どもが興味を持っている分野の学生や専門家などをマッチングさせ、対面やオンラインでカウンセリングなどを行い、一人ひとりの可能性を伸ばすWEBサービス「Branch」を運営。これまでの経験をいかして、育児や子どもの発達に悩む従業員を対象に、この「育児発達相談窓口」を開設しました。株式会社WOODYの中里祐次代表取締役のコメント「育児に関してすべて相談できる場所というのは中々なく、一人で悩んでいる方が多いです。このサービスを始めたきっかけは、私個人宛に様々な方から育児や発達に関する相談をもらっていたからです。家庭の中の内容なため勤めている場所には相談しづらく、何も伝えないまま転職してしまったり辞めてしまったりということがこれまで多かったです。そういった一人ひとりの悩みをお聞きして、従業員の方を大切にしたい法人様の課題解決の一助となれば幸いです。」【お問い合わせ】Email: contact@thewoody.jp サービスサイト【イベント】自閉スペクトラム症の知覚をVRで体験できるワークショップが開催出典 : 年3月2日(土)と3月3日(日)に、自閉スペクトラム症(ASD)知覚体験ワークショップが開催されます。ワークショップでは、自閉スペクトラム症(ASD)当事者の知覚を、VR装置を用いて疑似体験できます。また、ASD当事者における知覚過敏・鈍麻のメカニズムについての講義や当事者の体験等に関する映像紹介、座談会を通じて、当事者への理解を深めていくプログラムが組まれています。【日時】3月2日(土)13:00~17:30(12時40分受付開始)3月3日(日)12:00~16:30(11時40分受付開始)※いずれの日程も同一内容です。※いずれか1日のみご参加いただけます。※過去に同一内容のワークショップにご参加いただいた方は、お申込みいただけません。ご了承ください。【場所】大阪府立男女共同参画・青少年センター(ドーンセンター)5F大会議室2京阪「天満橋」駅、Osaka Metro(旧大阪市営地下鉄)谷町線「天満橋」駅 ①番出入口から東へ約350mJR東西線「大阪城北詰」駅下車。②号出口より土佐堀通り沿いに西へ約550m大阪シティバス「京阪東口」からすぐ()【内容】1.講義「自閉スペクトラム症の視覚世界を体験~なぜ対人コミュニケーションが難しいのかを考える~」(情報通信研究機構長井志江 主任研究員)2.ASD視覚シミュレータの体験3.ASD当事者の体験および海外の支援設計事例についての映像紹介4.座談会:学びや気付きの共有、議論【対象】ASD当事者のご家族や支援者、障害者雇用を担当されている方など【参加費】無料【定員】両日ともに60名(抽選)【応募締切】2019年2月11日(月)※当選者の方にのみ、応募期間終了後1週間以内(2月18日(月)まで)にご連絡いたします。【主催】JST CREST「認知ミラーリング」情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター東京大学先端科学技術研究センター当事者研究分野株式会社LITALICO【応募方法】下記のフォームよりお申し込みください。参考:CREST特設ページ【イベント】「世界ダウン症の日」「ダウン症啓発月間」直前!キックオフイベントへ参加しよう!(東京都)Upload By 発達ナビニュース3月21日は国連の定めた「世界ダウン症の日」、また3月は日本ダウン症協会(JDS)が定めた「ダウン症啓発月間」です!日本中でさまざまな啓発イベントが開かれるのに先立って、キックオフイベントが開かれます!ステージパフォーマンスやトークセッション、チャリティTシャツのお披露目ファッションショー、さらに関係団体による体験ブースなどなどさまざまなプログラムが予定されています。総合司会は、朝のテレビ番組でおなじみの笠井信輔アナウンサーと、ダウン症のイケメンタレントあべけん太さんが務めます。生き生きと活動するダウン症の人たちに触れながら3月の本番に向けて理解を広げるために、会場へ足を運んでみませんか?【日時】2019年2月11日(月)13:00〜16:00【場所】東京都新宿区立四谷区民ホール(東京都新宿区内藤町87)【対象】どなたでも参加可能【参加費】 1,500円 ※未就学児で大人の膝の上に乗せられるお子さんは無料【内容】・ステージ「TEAM RAMI DREAM TEAM( ゴールデンホークス)」によるチアダンスパフォーマンス玉井邦夫JDS代表理事がダウン症のある人とトークセッションパリコレモデル髙木真理子先生(スマイルウォーキング倶楽部代表)ディレクションのチャリティTシャツお披露目ファッションショー世界ダウン症の日、ダウン症啓発ポスター発表JDSからのアピール文採択・ブースNPO法人アクセプションズハンドスタンプアートプロジェクトによるハンドスタンプ体験東京都自閉症協会による自閉症啓発ブース新宿区手をつなぐ親の会知的障害疑似体験キャラバン「Winds」JDSによる書籍販売、子育て手帳「+Happyしあわせのたね」配布世界ダウン症の日 | 公益財団法人日本ダウン症協会【イベント】障害のある人たちが生み出す作品の"記録"と"伝えること"をゲストと語る座談会「かすかなしるしに耳をすます 」(東京都)Upload By 発達ナビニュースみずのき美術館(京都)、鞆の津ミュージアム(広島)、はじまりの美術館(福島)の合同プロジェクトによる障害のある人の創作物を記録し伝えることについて考える座談会です!各美術館は、障害者支援施設が運営母体となっています。このプロジェクトでは昨年度から、施設利用者の方をはじめ、各地域で生活されている障害のある方や人知れず表現活動を続ける方によって生み出された作品・創作物の調査を三館合同で行ってきました。そして作品をデジタル・アーカイブとして記録・保存・公開しています。これまで三者三様の「アーカイブ」を探りながら合同でプロジェクトを進めてきましたが、よりオープンな議論ができる場として、今回の座談会を開催。ゲストは医学書院で「ケアをひらく」シリーズを編集する白石正明さん。あらゆる領域で「ケア」に向き合ってきた人たちの技法や知を書籍として編み上げ注目されている編集者です。また、プロジェクト設計者である須之内元洋さんがモデレーターを務め、「生きること」の多様さや複雑さを記録し伝えていくための方法や可能性について語ります。【日時】2019年2月16日(土) 14:00〜16:30【場所】日本財団ビル8階(東京都港区赤坂1-2-2)【内容】ゲストスピーカー: 白石正明(医学書院『ケアをひらく』シリーズ 編集者)スピーカー: 奥山理子(みずのき美術館)、津口在五(鞆の津ミュージアム)、 大政愛(はじまりの美術館)モデレーター: 須之内元洋(プロジェクト設計者)【参加費】無料【定員】100 名※要申し込み。定員になり次第締め切り※文字支援のアクセシビリティサービスあり各美術館のアーカイブスは次の通りです。※みずのき美術館は美術館内で「みずのきアーカイブ」として公開福六アーカイブズ | 鞆の津ミュージアムはじまりアーカイブスunico file | はじまりの美術館*みずのき美術館のページに遷移します【ニュース】専門家の講演内容も見られる「サイエンスアゴラ2018公開シンポジウム」開催報告ページを開設!Upload By 発達ナビニュース2018年11月に東京都で開かれた、サイエンスアゴラ2018 公開シンポジウム「地域での発達障害支援を考えよう〜うちの子、少し違うかも...Final」。当日の様子を報告するウェブページが開設されました!当日、会場に行けなかった人も、いつでも専門家の講演やパネルディスカッションの内容を見ることができます!開催報告ページでは、発達障害支援について医療・療育・教育などの様々な視点で、研究者や現場支援者から、エビデンスに基づいた地域支援の実践例が紹介されました。当日の内容を見ながら、さまざまな分野の専門的支援と地域住民の生活支援が、『地域』の中で提供されるための方法について一緒に考えてみませんか。【内容】・講演資料(PDF及び動画)・パネルディスカッション映像及び主な議論・イラストを利用したまとめ(グラフィックレコーディング)・関連情報など*社会技術研究開発センターのページに遷移します【イベント】不登校ライブフェスが開催出典 : 年2月15日(金)、4月の新学期に向けて、「不登校」をキーワードにしたフェスが開催されます。新しい環境で新しい自分に出会うきっかけを、音楽を通して感じてほしいと企画されたイベント。「不登校だったことが、よかった」と思える居場所を見つけた、国立音楽院の生徒たちによる渾身のステージも。生きづらい系シンガーソングライター・風見 穏香さんや、子どものSOSシンガーソングライター・悠々ホルンさんのステージも予定されています。【日時】2019年2月15日(金)15:00開場、 15:30開始【会場】KMAパラダイスホール(〒154-0001東京都世田谷区池尻3-28-8 国立音楽院B1F)【参加費】500円【内容】15:00 開場15:30 弾き語りライブ生きづらい系シンガーソングライター・風見 穏香さん16:05 トーク + ライブ国立音楽院 中等部在校生の本人&お母様16:45 トーク + バンドライブ 不登校経験者としての悠々ホルンさん17:40 参加者全員にプレゼント抽選会 + テーマ曲を合唱【主催】国立音楽院
2019年02月01日近年、コミュニケーション教育の観点から注目を集めている演劇。演劇を作るだけでなく、鑑賞することによっても十分な教育効果が得られることは『観劇に出かける親子は驚異的に少ない。メリットだらけの演劇鑑賞、しないなんてもったいない!』で以前、紹介しました。しかし、演劇はまだまだ文化として一般的ではありません。「子どもと観劇したいけれど何を見にいって良いかわからない……」と感じている方も少なくないのではないでしょうか。そんな方のために、子どもとの初めての観劇におすすめの団体とその作品を紹介します。観劇で育まれる子どもの「感受性」団体の紹介の前に、観劇で得られる教育的効果を確認しておきましょう。前出の記事『観劇に出かける親子は驚異的に少ない。メリットだらけの演劇鑑賞、しないなんてもったいない!』では、演劇鑑賞のメリットを以下のようにまとめています。1. 様々な感情を体験し、感情表現が豊かになる2. 共感する力、社会性が育まれる3. 家族間のコミュニケーションが促進されるまた、現代演劇の振興を手がける日本芸能実演家団体協議会も、演劇鑑賞の効果について次のように解説しています。演劇を鑑賞すると、鑑賞者はその物語を通じて、感情が揺さぶられる。これは、日常で体験するコミュニケーション内でより、ダイナミックな感情の動きである。一方であくまでも疑似体験であるため、ある意味安全に様々な感情が抽象的に体験される。(引用元:公益社団法人日本劇団協議会|「芸術団体における社会包摂活動の調査研究」報告書)テレビや映画と違い、観劇には「直接性」と「過剰さ」があります。子どもたちは、スクリーンやモニターを挟むことなく「直接」、「過剰」に表現されたダイナミックな感情の動きを体験することができるのです。この体験が、子どもの「感受性」を育てます。そして、演劇で物語を疑似体験することで、日常においてもでも、他人の置かれた状況を想像する力を養うことができるでしょう。幼少期にこのような「感受性」を身につけた子どもは、成長するにしたがいコミュニケーション能力をも身につけることができると言われています。ほかにも、表現を楽しむ力などを養うことにもなるはず。こんなに教育効果の高い「観劇」、まさに「しないなんてもったいない!」ですね。子どもと一緒に本気で楽しめる作品5選!それでは、定期的に子ども向けの公演を行っている団体とその作品をご紹介します。観劇は子どもだけでなく大人も一緒に楽しむことが大切です。なぜならば、親の興味や趣味嗜好が子どもの好みに大きく影響を与えるから。親がなんだか楽しそうにしているもの、そこに子どもは憧れを感じ、興味を示すのです。ですから是非、「これは自分が見てもおもしろそうだぞ!」と思う作品を選んでみてくださいね。【劇団四季】■『裸の王様』日程:2019年5月4日(土)〜12月演劇といえば劇団四季を想像される方も多いのではないでしょうか。劇団四季は全国に専用の劇場を持つ、日本最大のミュージカル劇団です。ミュージカルは歌や踊りが含まれ、演劇の中でも特にダイナミックな体験を得ることができます。そのため、子供が飽きにくく、初めての観劇に向いているでしょう。劇団四季は子ども向けのファミリーミュージカルを毎年4本作成しています。2019年の作品の中でのおすすめは、劇団四季が作成した初めての子供向け作品であり、今も愛され続けている『裸の王様』です。台本は詩人・演出家として知られる寺山修司氏が執筆。世界で一番たくさんの服を持っているおしゃれな王様の元にやってきた、デザイナーのスリップとスリッパが引き起こす騒動を描きます。誰もが知っているアンデルセンの名作を、寺山氏が幻想的に再構成した『裸の王様』は大人も子どもも楽しむことができます。【日生劇場】■谷桃子バレエ団 バレエ『眠れる森の美女』日程:2019年8月23日(金)〜8月25日(日)1993年の日生劇場開館30周年を記念して始まったファミリーフェスティヴァルは、劇場主催ということで演劇だけでなく、クラッシクコンサートやバレエなど舞台芸術全般を楽しめます。毎年7月後半から8月にかけて4演目が行われますが、2019年作品のおすすめは、古典バレエの名作『眠れる森の美女』です。少し硬いイメージのするバレエですが、豪華な舞台セット、オーケストラの生演奏、訓練されぴったりと揃ったダンスに、お子さまはきっと圧倒されることでしょう。また、言葉がメインにならない分、想像力を養うこともできます。バレエを習い始めたお子さまに「本物」を見せてあげることで、お子さまの練習スイッチが入るかもしれませんよ。【演劇集団円】■円・こどもステージNo.38『青い鳥』日程:2019年12月21日(土)〜12月27日(金)演劇集団円は俳優の橋爪功が代表を務める劇団です。普段は難解な大人向けの内容ですが、毎年12月21日〜27日は「円・こどもステージ」を上演しています。この「円・こどもステージ」、良質な台本と音楽から数々の賞を受賞していて、かなり高い評価を受けています。かつては、詩人の谷川俊太郎が台本を担当したこともあるのです。2019年に38回を迎える「円・子どもステージ」ではモーリス・メーテルリンクの『青い鳥』を上演します。名作童話として知られていますが、元は童話劇として作られました。実際に上演されている作品を見たことのある方は少ないのではないでしょうか?チルチルとミチルの物語を通して、子どもに生と死、喜びと悲しみなど普遍的な問題を豊かなイメージとともに投げかけます。熟練した俳優の演技も魅力です。【人形劇団プーク】■人形劇団プーク×さくらプラザ こどもの日スペシャル!『三びきのやぎのがらがらどん』&『いつもちこくのおとこのこ』日程:2019年5月5日(日)人形劇団プークは1929年にできた老舗の人形劇団です。人形劇はアニメや絵本と同じくデフォルメされたキャラクターを用いるため、人間では限界のある豊かな世界を表現することができます。『かいじゅうがまちにやってきた』や『エルマーのぼうけん』など、有名な絵本を原作とした人形劇を上演しているため、子どもにとって観劇のハードルが低いでしょう。劇団が運営している、絵本から飛び出てきたような可愛らしいプーク人形劇場は全席が子ども仕様になっているので、その点でもおすすめです。人形劇団プークは毎年いくつかの演目をレパートリーとして用意しており、全国の劇場や学校など様々なところで公演を行なっています。その中で、2019年のこどもの日に戸塚区民センターさくらプラザで上演される『三びきのやぎのがらがらどん』&『いつもちこくのおとこのこ』を紹介します。『三びきのやぎのがらがらどん』は子どもの頃に読んだことのある方も少なくないのではないでしょうか。 『いつもちこくのおとこのこ』はブルガリアの美術家の手がける不思議な世界が魅力です。【鳥の劇場】■『鳥の演劇祭(タイトル未定)』 ※リンクは『鳥の演劇祭11』日程:2019年10月26日(土)~11月17日(日)「鳥の劇場」は鳥取県鳥取市で同名の劇場を運営する劇団です。地域とのつながりを大切にした取り組みが評価され全国的にも注目を集める鳥の劇場ですが、子ども向けのプログラムに特に力を入れています。託児サービスや子ども向け演劇だけでなく、「小鳥の学校」という子ども向け演劇学校や、高校生と海外のアーティストのワークショップなど数々の試みを実施しているのです。その中で最も大きな試みが毎年秋に行われる『鳥の演劇祭』です。鳥の劇場のある城下町、鹿野町全体を会場とし、世界中のカンパニーの作品を上演するだけでなく、様々なお店を誘致し、町歩きも楽しめる演劇祭です。サーカスや写真家が家族写真を撮影してくれる企画も実施しています。演劇教育で実施されていることがほぼ全て体験できるのが魅力です。2019年は日中韓共同開催の国際演劇祭「BeSeTo(ベセト)演劇祭」との合同開催だそう。これはかなり楽しめる内容だと思います。旅行も兼ねて、緑に囲まれた環境で、演劇漬けの一日を送ってみませんか?子どもが騒ぐかもしれないと不安な方へ子どもとの観劇を考えたとき、どうしても頭に浮かんでしまうのが「子どもが騒いでしまうかも……」という不安。でも安心してください。子ども向けの演劇は、劇団も他の観客も子どもが騒ぐことは織り込み済みなため、多少うるさくしても大丈夫。とはいえ、事前にしっかりと子どもに観劇マナーを教えておくことでもある程度対策できるでしょう。しかし、実際行ってみるまで何が起こるかわからないもの。そこで、そんな不安を解消するための対策を2つ紹介します。1.通路側の席に座る通路側に座ることで、他の人に迷惑をかけることなくロビーに戻ることができます。また、四季劇場は客席後方に前面がガラス張りの親子観劇席を用意していたり、日生劇場ではロビーにモニターを設置していたりなど、大きめの劇場では子どもが落ち着くまでの間も観劇できるサービスを用意しています。子どもが騒いでしまう危険性が高い時は、そのようなサービスのある大きめ劇場に訪れると良いでしょう。2.アウトリーチを活用する「子どもが騒いでしまうことが不安」なのは、知らない他の親子の観劇の邪魔をしてしまうかもと考えてしまうからですよね。だったら、子ども会などで劇団を呼んでみてはどうでしょうか。舞台芸術作品を劇場以外の場所で上演する(アウトリーチ)を行なっている子ども向け劇団は少なくありません。例えば、子ども向け作品を多数上演しているTheatre Ort(シアター・オルト)は「よみきかせ」の気軽さと「おしばい」の迫力を組み合わせた「よみしばい」を実施しています。園や子ども会などに提案してみてはいかがでしょう。***演出家の平田オリザさんを学長に迎えた、演劇を専門的に学べる国内初の国公立大学の開校が発表されるなど、ますます注目を集める演劇教育。東京大学の推薦入試実施など、教育におけるコミュニケーション能力の比重は徐々に大きくなっています。コミュニケーション教育に非常に効果的な演劇を、まずは気軽な観劇から始めてみてくださいね。(参考)Study Hackerこどもまなびラボ|観劇に出かける親子は驚異的に少ない。メリットだらけの演劇鑑賞、しないなんてもったいない!劇団四季日生劇場ファミリーフェスティヴァル演劇集団円人形劇団プーク 鳥の演劇祭11 |”BIRD” Theatre Festival TOTTORI 11劇団四季|心を育む 劇団四季ファミリーミュージカル 2017Theatre Ort|プロフィール of Theatre Ort神戸新聞NEXT|演劇学ぶ初の国公立大平田オリザさん学長に
2019年01月31日藤井聡太七段(*)が幼いころ受けていたことで注目を集めている『モンテッソーリ教育』。その歴史は古く、とくに海外では優秀な人材を育てる教育法として確固たる地位を築いています。一方で、「興味はあるけど、近所にモンテッソーリ教育の幼稚園や保育施設がない……」と諦めている方もいるのではないでしょうか?たしかにモンテッソーリ教育は、専門の知識を身につけた教員のもと、専用の教具を使わなければ学ぶことが難しいと思われがちです。しかし、自宅でもその要素を取り入れて遊ぶことは可能なのです。今回は、モンテッソーリ教育を取り入れた遊びの紹介と、それによって子どものどんな能力が伸びるのか、詳しくご説明します。*…2019年1月現在自立心と自己肯定感が育まれる独自の教育メソッドまずは、モンテッソーリ教育について簡単におさらいしましょう。■モンテッソーリ教育とは?女性医師であり教育家でもあったマリア・モンテッソーリによって、20世紀初頭にイタリアで考案された、子どもの自発性を重視する教育法。「子どもには自分を育てる力(自己教育力)が備わっている」という考え方が根本にあり、「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ことがモンテッソーリ教育の目的。40年以上にわたりモンテッソーリ教育を実践している『愛珠幼稚園』の園長・天野珠子先生は、「子どもの自主性を尊重し、それを大人が気づき、手伝うことで子どもの自立につなげていくことを大切にしています」と話します。つまり、親がすべきことは、「手取り足取りフォローしてあげるのではなく、挑戦する心を育てて応援すること」なのです。天野先生は「一人でできることが増えるほど、子どもの自己肯定感は育ちます」と述べています。モンテッソーリ教育とは、子どもを自立へと導き、自分で考えて物事に対応できるようになる、いわば“生きる力”を育む教育法でもあるのです。■モンテッソーリ教育の特色子どもは、その時期の発達に沿って「一人でやりたいこと」が出てくる。それは、“ある時期”に“ある行為”のみに現れることがわかっており、その時期を『敏感期』と呼ぶ。敏感期には、その時期に合わせた専用の教具を使って遊ぶ。それらの教具を使ったあらゆる学習活動を『お仕事』と呼び、子ども自身が自由に選んで遊ぶことで発育と自立をうながす。天野先生によると、「敏感期に合わせて、夢中になることを満足するまでやらせてあげるという経験が子どもの成長には必要」とのこと。敏感期に適切な環境に出合うと、子どもは集中現象を起こします。そして、集中現象が次々に満たされていくと心が満足し、お腹が空いたのも忘れるほど夢中になるらしいのです。私たち大人は、子どもが夢中になって何かに取り組んでいる様子を見守りたい反面、時間の都合や周囲への遠慮などから「さ、もう充分遊んだでしょ?」と切り上げてしまうことがよくあります。しかし、子どもの“夢中”は、大きな成長につながる重要な鍵です。時間や状況が許す限り、満足するまでとことんやらせてあげましょう。続いて、『敏感期』と『お仕事』について詳しくご説明します。敏感期に寄り添う優れた教育プログラムまず、本格的な『敏感期』に入る前に幼稚園で最初に行うのは【日常生活の練習】です。これはモンテッソーリ教育の基礎にもなるので、しっかりと身につけなければなりません。その後、【感覚教育】【言語教育】【算数教育】【文化教育】と続きます。■日常生活の練習大人のまねをしたがる「模倣期」と、身体が発達する「運動の敏感期」を利用して、自分の体を意志通りにコントロールする能力を身につけることが目的です。・ボタンをかける・室内を掃く・洗濯をする・ものを磨く・縫うなど、日常生活で行うさまざまな動作を大人がお手本を見せながら練習します。「自分のことを自分でできるようになる」という自立心や独立心のベースを築くことができます。■感覚教育言語・算数・文化教育という知的教育分野の基礎となります。感覚器官を使ってさまざまなことを練習し、感覚を洗練させることで、外界からより繊細な情報を収集できるようになり、知性や情緒が発達します。・対にする・段階づける・仲間分けするという3つの操作法が組み込まれた教具を使うことで、「ものを観察する能力」と「ものを考える方法」が身につきます。■言語教育絵カードや文字カードを使い、ことばの発達段階に合わせてきめ細やかなステップを踏んで、語彙を豊富にしたり文法を覚えたりします。「日常生活の練習」や「感覚教育」と合わせて行うことで、自然と文字の読み書きができるようになります。■算数教育算数教具を手で扱いながら、数の概念の基礎、十進法から簡単な計算までを学びます。ビーズを使い、数の具大量や十進法で桁が上がることを体感したり、数種類の切手を交換して掛け算を覚えたりします。■文化教育「ことば」と「数」以外の幅広い分野を学びます。世界地図パズルや時計などの教具に触れながら、子どもの知りたいという要求に応えるのです。分野を統合した「総合学習」のようなものです。幼稚園や教育施設で使用される教具は360種類にものぼり、すべて体系的につながっています。赤、青、黄の三原色をベースにした色鮮やかなものが多く、優れた教育的効果を発揮するだけではなく、子どもが思わず触りたくなるような魅力あふれるものばかりです。モンテッソーリで学ぶ子どもの「お仕事」モンテッソーリは著書の中で、「大人の仕事が生産的労働であるならば、子どもの仕事は人間を形成すること」と述べています。「つまみたい」「並べたい」といった衝動も、子どもの内面からあふれる自立への強い欲求であると言えるでしょう。つまり、家庭の中での自立や人間形成につながる事柄はみんな、子どもが自分自身を創るための「お仕事」でもあるのです。「モンテッソーリのメソッドを家庭で取り入れるためには、何よりも大人の子どもに対する接し方を重視する必要があります」と語るのは、モンテッソーリ教育施設「吉祥寺こどもの家」園長の百枝義雄先生。まずは、子どもをよく「観察」することから始めましょう。親にとっては不可解に見える子どもの行動にも、子どもが大きく成長するヒントが隠されているのです。子どもの “こだわり” と “伸びる能力” の関係性は以下です。同じことを同じ順序で繰り返したい「順序へのこだわり」→段取り力へ発展同じことを同じようにしたい「習慣へのこだわり」→集中力を育てる同じ場所に同じ人がいないと気持ちがわるい「場所へのこだわり」→倫理観へ発展高いところに乗って歩きたい「運動へのこだわり」→バランス感覚をつける3本指を使いたい「指先運動へのこだわり」→器用な手先をつくる(引用元:東洋経済ONLINE|家でもできる「モンテッソーリ教育」のコツ)このように、「こだわりを満足させることで伸びる能力」について理解できていれば、家庭でもモンテッソーリのメソッドを取り入れやすくなるはずです。家庭で子どもの能力を引き出すポイント次に、モンテッソーリ教育を取り入れた簡単な遊びをご紹介します。おすすめは「親指・人差し指・中指」の三指を使うお仕事です。【あけ移し】トングなどを使って豆や石を一方の容器からもう一方の容器に移します。100円ショップでも手に入るシュガートングが、子どもの手にはちょうどいいですよ。慣れてきたらピンセットを使って、大きめのビーズのあけ移しにも挑戦してみましょう。仕切りのあるケースを使えば、色別に分けて入れることもできます。色を認識し、判断して選り分けるという工程が生まれるので、難易度もアップしますよ。【お料理のお仕事】玉ねぎの皮むきや茹でたじゃがいもの皮むき、またはゆで卵の殻をむく、など「むく」という作業は料理を始める最初のステップとして非常に有効です。指先を使うだけの作業なので危険度が低く、すぐに達成感が得られるのもいいですね。また、前出の百枝先生による『「自分でできる子」が育つ モンテッソーリの紙あそび』(PHP研究所)では、モンテッソーリ園と同じ「お仕事」を自宅で再現する方法が紹介されています。この本を参考に、ハサミやのり、とじ針と毛糸などの道具を用意すれば、付属の型紙を使って気軽に「お仕事」に挑戦できます。たとえば、型紙を写して線に沿って「切る」、線に沿って一定間隔で描かれた点を目印にして「穴をあける」または「縫う」など、モンテッソーリのメソッドに基づいた手法で遊ぶことができるのです。そして、あの藤井七段が子どものころ100個作ったことで話題になった「ハートバッグ」の型紙と編み方も載っています。最後に、子どもが興味を抱き「やってみたい!」となったとき、親は次の点に注意しましょう。・親のお手本を子どもが見ているときには話さない・説明するときは動きを止める・手出しや口出しはしない・子ども自身が試行錯誤するチャンスを奪わない・出来ばえを評価しない穴をあける道具(「かるこ」など)や、抜い差し用の針は、初めて使わせるとき「危なくないかな?」と心配になるかもしれません。使うときは危なくないように見守ったり、子どもの手でも扱いやすい小さめの道具を用意したりと、「どうしたら子どもがうまく使えるか」ということを考えて取り組ませるといいでしょう。『「自分でできる子」が育つ モンテッソーリの紙あそび』(PHP研究所)***モンテッソーリ教育を家庭でも取り入れるには、道具を揃えるより先に「親の心がけ」が必要です。子どもが夢中で取り組んでいる様子を黙って見守り続けるーー簡単なようで難しいですよね。しかし、子どもには大人が思っている以上の能力が備わっています。子どもの自己教育力を信じて、見守ってあげましょう。(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|藤井聡太六段、Amazon共同創立者ジェフ・ベゾスが幼児期に受けていた「モンテッソーリ教育」とは?日本モンテッソーリ教育綜合研究所|モンテッソーリ教育についてStudy Hacker こどもまなび☆ラボ|子どもの自主性を尊重し、集中力と柔軟な対応力を育む「モンテッソーリ教育」【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】Study Hacker こどもまなび☆ラボ|子どもたちが自ら育つ力を応援する「モンテッソーリ教育」のメソッド【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】産経WEST|天才・藤井四段も学んだ「モンテッソーリ教育」とはー集中力と自分らしさ、周囲に流されず「好きなことをとことん追求する子供」に『できる子になる!0歳からのお手伝い』クーヨンBOOKS12,2015年6月,クレヨンハウス.東洋経済ONLINE|家でもできる「モンテッソーリ教育」のコツ百枝義雄・百枝知亜紀 著(2018年),『「自分でできる子」が育つ モンテッソーリの紙あそび』,PHP研究所.
2019年01月29日「プログラム学習」というものを知っていますか?2020年度から小学校で始まる「プログラミング教育」とは別物です。この「プログラム学習」とは、現在は大学などで幅広く利用されている「eラーニング」や子ども向けタブレット教材などの基盤になったもの。心理学の理論を応用した、専用の機械を使う学習方法です。難しそう……と思われるかもしれませんが、プログラム学習の概要を知っておくと、家庭における子どもの教育に応用できたり、タブレット教材ならではの学習効果を理解しやすくなったりします。そこで今回は、プログラム学習についてわかりやすくご紹介しましょう。スキナーのプログラム学習とはプログラム学習(programmed instruction)を提唱したバラス・フレデリック・スキナー(1904~1990)は、米国の心理学者。人間や動物の感情よりも行動に着目して実験・観察を行う「行動分析学」の祖として知られています。スキナーの成果として特に有名なのが「オペラント条件づけ(operant conditioning)」です。これは簡単にいうと、人間・動物が特定の行動をとるように条件を与えること。たとえば、箱に入れたネズミに、箱のなかのレバーを押してほしいとします。その場合、まずネズミが偶然レバーを押したとき、ネズミにとって「報酬(reward)」となるエサを与えます。これを、行動を「強化(reinforcing)」するといいます。そして、ネズミがまたレバーを押した際にはエサを与えます。繰り返すと、ネズミは積極的にレバーを押すようになるのです。このようなプロセスはオペラント条件づけと呼ばれます。ご存知のように、犬や馬の調教に使われている手法ですね。そして、オペラント条件づけを人間の教育に応用したのがプログラム学習です。プログラム学習には、「ティーチングマシン(teaching machine)」という専用のデバイスが使われます。ティーチングマシンは学習者に対し、説明および説明を理解したか確認する設問を次々に提示します。学習者が解答すると、正解・不正解がすぐに知らされ、次の問題に移行します。これを繰り返すうち、最終的に当初の学習目標を達成できるようになるのです。ゲーム機やPCの普及した現代、多くの人がこのような形式のクイズゲームや教材に触れたことがあるのではないでしょうか?プログラム学習における5つの原理スキナーのプログラム学習には、5つの「原理(principle)」があると考えられています。スキナー自身の言葉とともにご紹介しましょう。学習者が積極的である学校における一斉授業の多くは、教師がしゃべり、生徒が聞くという形式です。皆さんも経験があると思いますが、このやり方では、先生の話をぼーっと聞き流すことも可能。生徒が何も学習しないまま授業が終わる、ということもありえます。しかし、プログラム学習で用いられるティーチングマシンは、常に学習者自身が動かす必要があります。問題が出題され、学習者が「解答」という行為をしてはじめて次に進むのです。そのためプログラム学習においては、常に学習者の積極性が必要とされています。プログラムと生徒のあいだでは常にやり取りが発生する。講義や教科書、一般的な視聴覚教材と違い、ティーチングマシンは持続的な行動を引き起こす。生徒は絶えず集中し、やることを抱えている。(引用元:Burrhus Frederic Skinner (1968), The Technology of Teaching, New York, Appleton-Century-Crofts.)学習者に即時のフィードバックを与える学校の宿題やテストは、子どもが問題を解いてから正解・不正解がわかるまで、およそ数日のブランクがありますよね。答え合わせ・採点が終わり結果がわかったときにはもう、問題を解くときに自分が何を考えていたかなど忘れていることが多いのではないでしょうか。しかし、プログラム学習においては、学習者が問題に答えた直後に正誤が判明します。時間をおいてからまとめて結果を通知されるよりも、1問答えるごとにフィードバックをもらえるほうが、より強い印象を受けるはず。ティーチングマシンは家庭教師のごとく、正しい返答をするたびに生徒を強化する。このような即座のフィードバックを利用し、生徒の行動を最大限効果的に形成するだけでなく、一般人が「生徒の興味関心を保つ」と表現するような方法で、行動を維持するのだ。(引用元:同上)ゆるやかに難易度が上がるプログラム学習において、教材の作り方は非常に重要です。皆さんも想像できるように、簡単な問題ばかりやっても難しい問題ばかりやっても、効果的な学習にはなりません。また、それまでは順調に問題をクリアしていたのに、ある時点から急激に難しくなって先に進めなくなったら、学習者は意欲を失ってしまうでしょう。そうならないよう、プログラム学習の教材の難易度は、ほんの少しずつ上げる必要があります。それぞれのステップを難なくこなしていくうちに、いつのまにか目標を達成しているというわけです。生徒は複雑な行動を修得するにあたって、慎重に設計された、多くの場合は相当に長い一連のステップを経なければならない。それぞれのステップは、生徒が必ず理解できるくらい小さく、かつ行動の充分な修得にいくらか近づくものでなければならない。ティーチングマシンは、これらのステップが慎重に規定された順番で提供されるようにしなければならない。(引用元:同上)学習者に合ったペースで学べるスキナーはプログラム学習を提唱するにあたって、教室に生徒を集めて講義する従来型の教え方を批判しました。現在の学校制度も同じですが、大勢を一度に教えようとすると、指導側はどうしても平均的な理解度の人に合わせがち。そうなると、理解のスピードが遅めの人には難しすぎてついていけず、理解が速い人には簡単で退屈です。しかし、プログラム学習においては学習者がそれぞれのペースで学びを進めるので、あらゆるタイプの人に対応できるのです。優れた家庭教師のように、ティーチングマシンは生徒が次の段階に進む前に、教えた要点をひとつひとつ完璧に理解することを要求してくる。一方、講義や教科書、それに類する機械は、生徒が理解したかどうかを確認せずに進行してしまい、生徒をたやすく置き去りにしてしまう。(引用元:同上)ティーチングマシンの成功を説明するにあたっては、それぞれの生徒が自分のペースで自由に進められるという事実も重要だ。教育的な目的から、生徒たちを一つのクラスにまとめて収容することは、おそらく教育における非能率性の最大要因である。複数の生徒を一度に指導しようとすれば、速い学習者も遅い学習者も害することになる。優秀な生徒の窮状はこれまで認識されてきたが、遅い学習者はさらに悲惨な結果をこうむっているのだ。当人の自然なスピードを超えて進行することへのプレッシャーの効果は累積する。最初のレッスンを完全にマスターしていない生徒は、次のレッスンもマスターしにくいものだ。(引用元:Burrhus Frederic Skinner (1999), Cumulative Record: Definitive Edition, Xanedu Pub.)学習者によって検証されるプログラム学習の教材が優れているかどうか決めるのは、作成者ではなく学習者です。そして、学習者がプログラム学習をどのように行ったかのデータを通じて、教材は改良されていきます。たとえば、複数の学習者たちが教材の同じ部分でつまづくのであれば、そのレッスンにおける解説が不充分だということです。教材の解説を手厚くしたりといった対応をとることで、プログラム学習の教材はより効果的なものへとアップデートされるのです。優れたプログラムは芸術でありつづけるべきか、それとも科学技術となるべきか。最終的に決定するのは生徒であると知ることは安心材料となる。ティーチングマシンによる学習が持つ予期せぬアドバンテージは、プログラム作成者へのフィードバックであることがわかった。(引用元:Burrhus Frederic Skinner (1968), The Technology of Teaching, New York, Appleton-Century-Crofts.)プログラム学習の例では実際、プログラム学習の教材はどのように「プログラム」されているのでしょうか?以下はスキナーが提示した、小学生に「manufacture(製造する)」という動詞のつづりを覚えさせるための設問です。1.manufactureとは、作る(make)ことや建てる(build)ことを意味します。Chair factories manufacture chairs.(椅子工場は椅子を製造する。)単語をここに写してください。□□□□□□□□□□□2.この単語の一部は、factoryという単語の一部と似ています。どちらの部分も、makeやbuildを意味する古い言葉に由来します。manu□□□□ure3.この単語の一部は、manual(手動の)という単語の一部と似ています。どちらの部分も、hand(手)を意味する古い言葉に由来します。かつて、多くのものは手で作られていました。□□□□facture4.どちらの空欄にも同じ文字が入ります。m□nuf□cture5.どちらの空欄にも同じ文字が入ります。man□fact□re6.Chair factories □□□□□□□□□□□ chairs.(引用元:同上)このように丁寧な解説と設問があれば、manufactureという単語を初めて知った人でも、つづりを覚えられそうですね。ひとつひとつのステップは非常に簡単ですが、こなしているうち、最後には目的を達成できるのです。プログラム学習の優れた点さて、スキナーのプログラム学習を知ったところで、私たちはそれをどう現在に応用できるのでしょう?注目してほしいのが、上で挙げた5つの特徴。これらはプログラム学習だけでなく、一般的な勉強においても知っておいてほしいことばかりです。あらためて振り返ってみましょう。インプットとアウトプットを交互に行うプログラム学習においては、学習者の積極性が必要とされます。教材をぼーっと見たり聞いたりしているだけでは学習は進まないのです。上で挙げた例のように、プログラム学習ではインプットとアウトプットを交互に行います。これは非常に学習効果のある方法。ただ教科書を読んだり授業を聞いたりしているだけでは、インプットに偏りすぎ。インプットしたことを記憶として定着させるには、アウトプットが不可欠なのです。勉強というものは、単純化するとインプットとアウトプットの繰り返しです。新しい知識を頭に入れて、それを問題を解くという形式でアウトプットする。この流れがスムーズに行えれば、たいていの問題は解くことができるはずなのです。(引用元:StudyHacker|効率的勉強法 —— これだけは知っておきたい5つの基本。)脳には出力依存性というものがあるので、「インプットしよう、記憶しよう」とするだけでは情報はなかなか入っていきません。逆に、「情報を使おう」「表現しよう」とすれば入っていきやすくなる。記憶するために「情報を使う」ことは、「アウトプットする」ことですよね。これが重要になるのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|記憶力の要は「記憶の仕方」にあり。親が知っておくべき「記憶の脳科学」)即時のフィードバックが受けられるプログラム学習においては、学習者が問題に答えた直後、正解・不正解がわかります。この「即時フィードバック」は、学習者の能力を引き出すのに非常に重要です。「フロー理論」を提唱したことで有名な心理学者、ミハイ・チクセントミハイ教授(クレアモント大学院大学)によれば、人間は特定の条件が整うと「フロー」もしくは「ゾーン」という極度に集中した状態に入ることができます。そうなると、その状況を心から楽しいと思い、集中しても疲労を感じず、優れたパフォーマンスを発揮することができるのです。その「フロー」になるために必要な条件のひとつが「明確なフィードバックが即座に得られる」状態です。自分の行動に対する反応がすぐに返ってこないようでは、「フロー」は生まれません。たとえば、学校の宿題を自宅でやり、翌日の授業で答え合わせをする。学校でテストを受け、数日後もしくは1週間後に答案が返却される。このような状態では、行動とフィードバックのあいだにタイムラグがありすぎるため、「フロー」は生じません。しかし、プログラム学習ならば「フロー」発生の条件を整えることができるのです。子どもが自宅で勉強する際も、できるだけ速いペースでフィードバックが受けられるようにしましょう。たとえば、1ページ分の問題を解いたらすぐに答え合わせをさせる、もしくはしてあげる。タブレットなどのデジタル教材で勉強するのも、即時フィードバックという意味では効果があります。勉強でわかりやすいフィードバックと言えば点数でしょう。テストや練習問題の正誤で自分の取り組みの成果を確認することができます。しかし、テストのための勉強はするけれど、参考書の章の終わりなどにある練習問題をおろそかにしていませんか?この練習問題は、理解の確認はもちろん、勉強の成果を自分で実感し次の集中につなげるために必要なものです。(中略)テストや練習問題は狭い範囲ごとに細かく行うことが大事です。章の途中などで、区切りが難しいときは、その日やった問題をもう一度やり直すだけでも効果を実感できるはずです。(引用元:StudyHacker|「勉強に集中」のコツは、身近な “ゲーム” に隠れていた!?『集中力アップ』3つのきほん)スモールステップ学習法プログラム学習において、出題される課題はほんのわずかずつ難易度が上がっていきます。「急に難しくなって分からなくなった」という断絶が起こらないよう、注意して設計されているのです。このような学習法は「スモールステップ」と呼ばれています。最初から高い目標を掲げるのではなく、目標を細分化することで、“小さな成功” が得やすくなります。この成功体験を少しずつ積み重ねることで、最終目標に近づいていけるのです。(引用元:StudyHacker|「何をやっても続かない人」が陥っている “3つの大いなる誤解”)そして「スモールステップ」は、上述した「フロー」状態をもたらす必要条件にも関係しています。なぜなら、「フロー」になるには、向き合っている課題の難易度が適切でなければいけないから。余裕でこなせるくらい簡単でもいけないし、達成不可能なほど難しくてもいけないのです。少しずつ難易度が上がっていくプログラム学習ならば、「フロー」になりやすい条件が整っているといえるでしょう。最もフロー状態に入るためには、取り組む課題が簡単すぎても、難し過ぎてもいけません。適切な難易度は、自分の能力を少し超える、「背伸びすれば何とか達成できる」程度の難易度だと言われています。ですので、取り組む課題の難易度を、ちょうどいいレベルになるようきちんと設定することが大切です。(引用元:StudyHacker|フロー状態で勉強が効果的?コツは “ちょっと高め” の目標設定)自分のペースで学ぶ自分のペースで学ぶということは、プログラム学習だけでなく、学ぶという行為全般において大切なことです。物事に関する説明を読んだり聞いたりして理解できる速度は人によって違うものですし、学ぶジャンルによっても異なるでしょう。個人個人のペースに配慮しない一斉授業では、「全然わからなかった……もう嫌だ」「簡単すぎて退屈。授業に出る意味がない」というストレスを生みかねません。自分のペースで学べるプログラム学習は、そのような問題を解決してくれます。海外のオルタナティブ教育として知られる「イエナプラン」や「ドルトンプラン」では、生徒が自分で計画を立てて科目の自習を進めることが重視されています。日本でも、学校の一斉授業についていけない子どもを1対1の個別指導塾に通わせる親は珍しくありません。一斉授業の弊害を危惧している人は多いのですね。子どもに合った教材を選ぶ何かを自習するとき、目的に応じた教材が必須です。そして教材を選ぶときに考慮するべきなのは、「ベストセラーだから」「著名人が書いたから」ということではなく、それが学ぶ人に合っているかどうか。当たり前といえば当たり前ですが、意外と忘れてしまうこともあるのではないでしょうか。たとえば教材に書かれていることが難しすぎてわからないと感じても、「理解できないのは自分が勉強不足だから。もっとよく読まなければ」と思うのではないでしょうか?それで解決する場合もあるかもしれませんが、実はその教材自体がそもそも説明不足だったり、学習者に合っていなかったりするかもしれません。「すごくわかりやすい!これならスムーズに学習できる」と確信できる別の教材を選び直したほうが、学習の目的を達成しやすいのではないでしょうか。お子さんの勉強を応援するのであれば、お子さんの理解度やペースに適した教材を吟味して選んであげましょう。最初はどの本や参考書を選べばいいか分からず、とりあえずネットで評判がいいものを探してみるかもしれません。しかし、どんなに評判がよくても、名著といわれていても、必ずしも自分にとっていい本とは限らないといいます。何を選べばいいか分からないとき、柳川氏(※)の場合はまず信頼できる人に紹介してもらうそう。しかし、それでも自分に合う本と出会うためには試行錯誤が必要とのこと。自分が理解しやすいパターンと、その本の説明や論旨の展開がかみ合っていないと、内容が頭に入ってこないからです。自分の学びスタイルの確定にもつながるので、数ページ読んでやめてしまう本があっても気にせず、合う本が見つかるまで試行錯誤を繰り返しましょう。そのほうが、結果的には効率がよくなるはずです。(※東京大学大学院経済学研究科教授・柳川範之氏)(引用元:StudyHacker|東大教授とハーバード合格者が教える「最高の独学法」)***ともすれば、古典的な知識だと思われてしまうプログラム学習。しかしその理論には、効果的な学びに欠かせない要素が詰まっていたのです。明日から使えそうなものはありましたか?(参考)Burrhus Frederic Skinner (1968), The Technology of Teaching, New York, Appleton-Century-Crofts.Burrhus Frederic Skinner (1999), Cumulative Record: Definitive Edition, Xanedu Pub.eLearning Industry|Instructional Design Models and Theories: Programmed Instruction Educational ModeleLearning Industry|Cognitive Flow And Online Learning: 4 Steps For Putting Your Learners In The Zone脳科学辞典|オペラント条件づけコトバンク|プログラム学習The B. F. Skinner Foundation|DifinitionSimply Psychology|Skinner – Operant ConditioningStudyHacker|効率的勉強法 —— これだけは知っておきたい5つの基本。StudyHacker|「勉強に集中」のコツは、身近な “ゲーム” に隠れていた!?『集中力アップ』3つのきほんStudyHacker|「何をやっても続かない人」が陥っている “3つの大いなる誤解”StudyHacker|フロー状態で勉強が効果的?コツは “ちょっと高め” の目標設定StudyHacker|東大教授とハーバード合格者が教える「最高の独学法」StudyHackerこどもまなび☆ラボ|記憶力の要は「記憶の仕方」にあり。親が知っておくべき「記憶の脳科学」StudyHackerこどもまなび☆ラボ|尾木ママ絶賛!“日本教育の3周先を行く“オランダの「イエナプラン教育」StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ドルトンプランの学校が日本にもできるってホント?知っておくべき3つの基本
2019年01月21日赤ちゃんからの性教育?「赤ちゃんからの性教育」と聞いてどんな印象を受けますか?「性教育」?まだまだ早い!そう思うママも多いのでは?わが家の子どもたちは、小6・小4・小2。このくらいの年齢になってくると、親としてそろそろきちんと考えないとね、私自身そんな気持ちでした。でも、今回助産師あいこさん(京都府助産師会性教育事業代表/子育て支援団体京mom~キレイ代表・渡邉安衣子さん)の乳幼児ママ向けの「子どもと性の話をするためのヒント」を聞いてみて、「もっと早くからきちんと知っておくべきだった」と思うことがいっぱいありました。これはみなさんにぜひお伝えせねばと、私が講座を受けて感じたことを中心にご報告します。「赤ちゃんからでも早くはありません」の意味実際に赤ちゃんに性について何かを教えるわけではもちろんありません。人間は、赤ちゃんのうちから3つの粘膜(口、肛門、性器)で得られる性的な粘膜快感を感じていると言われています。「おっぱいを飲むことが気持ちいい、おむつをきれいにしてもらったら心地よく感じる」というようなことです。このような赤ちゃんが感じる快感を愛情を注ぐことでしっかりと感じさせてあげながら、親の方では来たるべき性の質問が多くなる幼児期を迎える準備をしていくことが大切です。子どもたちに絵本を使って赤ちゃんが生まれてくる様子を説明するあいこさん性教育は体への自尊感情を育むことが大切「おちんちんをいつも触っています。どうしたらいいですか?」男の子のお母さんからよく聞かれる質問だそうですが、確かに男の子、よく触ってたりしますよね。親としてはやはり人前ではやめてほしい!そんなとき、どうしますか?「はずかしいからやめなさい!」もしくは「きたないからさわらないで!」でしょうか?あいこさんいわく、怒られると隠れてするようになったり、性教育の土台となる体への自尊感情が育たなくなってしまうのだそうです。親の見えないところでするようになると、性被害に巻き込まれる可能性も高くなります。まずは、「大事な場所だから、触りたいときはきれいな手で触ること」「ひとりだけの時にすること」など、触ることを否定せずに、大事な約束事を伝えましょう。これは、男の子だけでなく、女の子も同じです。自分だけの大切な場所なんだよ、ということをしっかりと伝えていきたいと思います。絵本や年齢に応じてわかりやすく説明された本を使ってなら、話しにくいことも伝えやすいかもしれません子どもの質問にはごまかさずに答える「赤ちゃんってどうやったらできるの?どこから生まれてくるの?」これは4~5歳児くらいの子にとても多く聞かれる質問だそうです。そういえば、うちの子にも聞かれたわ、というママパパも多いのではないでしょうか。ついはずかしくって、「そんなこと聞かないの」「大人になったらわかるわよ」などと、はぐらかしてしまいそうになりませんか?でも、ごまかしたり叱ったりせずに聞かれた時にきちんと答えることが、何を聞いても大丈夫という安心できる親子関係を築くことになるんだそうです。「そんなこと聞かないの」と言われたら、聞いてはいけないんだ、親は教えてくれないんだと思って、そのうち情報を得るために自分でネットにアクセスして不必要な不適切な情報までも得ることになりがちです。子どもにとっては、「うさぎの耳はなんで長いの?」と同じレベルの疑問。うそをつかず、ごまかさずに答えられるようにしたいですね。年齢によっては、絵本を使って説明をしたり、一緒におふろに入った時に「性器は大事なところだから自分できれいにしようね」などと声をかけたり、わかりやすい言葉で納得できるように伝えていきましょう。大切なことは、小さいころから親子で話せる関係をしっかり築いておくこと!私がこの講座を受けて感じたのは、親子で話せる関係をしっかり作っておくことが一番大事なのだということ。「8歳くらいまでに体や性に対する健やかな感性やイメージが育っていれば、あとからそれをゆがめるような情報が入ってきても、自分でバランスよく判断できる」とあいこさんは言います。今はネット社会。子どもたちが興味本位でいろんな情報を得ることができます。親が見てほしくないと思うようなゆがんだ情報も世の中にあふれています。そんな情報から守ってあげられるのは、小さいころからの親子の対話なんだなぁ、と感じました。すでに思春期に入りつつあるわが子たち。今からでもママに聞いても「否定されない」「怒られない」と思えるような、そして何か困ったことがあったときには一番信頼できるママに聞いてみようと思える、そんな関係を作っていきたいです。京momキレイ
2019年01月19日あと1年後の2020年、いよいよ教育改革がスタートします。変化の激しい社会で活躍できる人材育成を目指して、戦後最大規模の教育改革が行われるのです。今後、子どもたちが学校生活や社会生活を送るうえで重要視されてくるのが「自主性」。そんな未来に向かって、子どもたちだけではなく、親の私たちも少し “意識改革” をしてみませんか。なぜ「自主性」が必要?2020年の教育改革。その大きな柱のひとつは、“アクティブラーニング” と呼ばれる「主体的・対話的で深い学び」です。これは、「生徒自身が主体的・能動的に参加する授業・学習」を意味しています。これまでは、先生による一方通行の授業がメインに行われ、「学んだことをきちんと理解しているか」の評価が大きなウエイトを占めていました。しかし、今後はそうではなくなります。知能や技能を習得するだけではなく、それを元に「自分で考え、表現し、判断し、実際の社会で役立てる」ことが求められてくるのです。今後、子どもたちにとって「自主性」「主体的行動」がとても重要な課題になってきます。「自主性」とは、そもそも「自分がやりたいことを見つけ、判断し、行動を起こすこと」。確かに、それを実践している子どもを想像すると、それだけでいきいきと輝いて見えますよね。余計な手出し、口出しをせず、じっと見守るでは、一体どうしたら「自主性」のある子に育つのでしょうか。明治大学文学部教授で、これまで100冊もの教育・心理関係の本を執筆した諸富祥彦さん、哲学者・心理学者で、大ベストセラー『嫌われる勇気』の共著者である岸見一郎さんが薦める方法をご紹介していきましょう。例えば、子どもがお店で何かを選んでいるとします。子どもがなかなか決められないでいるとき、つい「これにしたらいいんじゃない?」などと、親の都合で選ばせたりすることはありませんか?ほかにも、遊ぶおもちゃや着る洋服など、子どもの意見を聞く前に自分の考えで決めてしまうことはないでしょうか。子どものために、と余計な先回りをしてあれこれ手を差し伸べること(=過干渉育児)は、子どもの自主性ややる気を奪ってしまうのだそう。「じっと子どもがやっていることを見守って、子どもが失敗しようが何をしようが自由に遊ばせるのが大事」と諸富さんは言います。ただ、ひとつ注意点が。“見守る” ときに、「スマホをいじりながら」はNGだそう。「“見守る”とは裏を返せば、“いつでも出て行けるように用意をしておく”ことでもあります。スマホばかり見ていたら、子どもが危ない場面に遭遇したときに、ぱっと俊敏に動くことはできないはずです」(岸見さん)。「“過干渉”と“無関心”は違います。子どもは1人で遊んでいるように見えても、時々親が自分のことを見てくれているか確認しています。親が自分のことを見守ってくれていると感じると、安心してまた自分の世界に戻っていけるのです」(諸富さん)見放すのではなく、見守る育児。簡単なようで、意外と難しいことかもしれません。つい手出し口出ししたくなるときも、時間がかかってじれったい場面も、ぐっとこらえて “見守り” に徹してみましょう。そうすれば、きっとお子さんの自主性は自然と育まれていくはずです。子どもの自主性を重んじながら注意する方法「自主性を重んじて、じっと見守る」といっても、ゲームばかりして勉強しない子どもを見守るわけにもいきませんよね。ほかにも、「部屋を片付けない」「朝なかなか起きない」などの問題があるでしょう。「~~しなさい!」と頭ごなしに叱るのは簡単ですが、子どもはその通りには動いてはくれないもの。親の意見を一方的に押し付けることなく、自主性を重んじながら注意する方法、声かけをご紹介しましょう。■意見を伝える前に「前置き」をする「最近のあなたの様子を見ていると勉強をしていないようだけれども、勉強について一度話し合いをしてみない?」などと「前置き」を入れながら、まずひと声かけるのが有効。この声かけをすることで「子どもの課題」が「親と子どもの共同の課題」となるのです。もし親がこのあとになにかしらの意見を伝えたとしても、子どもの課題や問題に「土足」で踏み込むことにはならないでしょう。■子どもに相談をする「お母さん、仕事に遅刻するわけにはいかないから、あなたが毎朝寝坊しないようにしてくれたら嬉しいんだけど、一体どうすればいいかしらね。何かいい考えはある?」など、子どもに積極的に相談するのも◎。子どもは親から対等な存在と認められたと感じ、解決策を一生懸命考えて提案してくれるのだそう。自分で考えた解決策ならば、子ども自身が納得しているため、実行に移しやすいということですね。■「偉いね」ではなく、「ありがとう」を問題が解決した場合に必ず伝えたいのが「ありがとう」という言葉。つい、「偉いね」と言ってしまいそうになりますが、子どもを対等な存在として、協力してくれたことに感謝し、ありがとうと伝えるのが適切だそう。子どものほうも、『親の役に立てた』という自信につながります。■丁寧な言葉使い、「NO」と言える余地を残す子どもに対して、なるべく丁寧な言葉使いをすることも大切です。お願いする場合も、「~~してくれませんか」「~~してくれたら嬉しいんだけど」というように子どもが「NO」と言える余地を残しましょう。こうやって見ると、私たち親の心がけや根気が必要な内容ばかりですね。でも、ここは可愛い我が子の明るい将来のためにぐっと耐えて頑張りましょう!自分で“選ぶ”大切さ「自主性」を育むうえで切っても切り離せないのが「自己選択力」。昨今注目を浴びる、モンテッソーリ教育でも重要視されている能力で、諸富さんも「自己選択こそが人生なのです」と言っています。ズバリ、自己選択力を高めるポイントは、極力自分で選択させること。例えば、シャツ、ズボン、スカートなど洋服を決める際は、「今日はどっちにする?」と2択にしてあげると良いそう。ただ、5歳以下の子どもの場合、3つ以上の選択肢から選ぶのは難しいので気をつけます。また、大人が選択肢をまったく挙げず、「どうするの?」と問うのも小学生以下の子どもには難しいので避けましょう。タイガー・ウッズやイチローといった超一流アスリートたちも、ゴルフや野球を親からやるように指示されたことはなかったそう。「ゴルフが好き」「野球が好き」という根っこがあり、さらに「自分で選択した」という始まりがあるからこそ、さらなる高い境地を目指してこられたのかもしれませんね。文/鈴木里映(参考)日経DUAL|過干渉育児の恐ろしい弊害子育ては根気が一番ベネッセ 教育情報サイト|2020年大学入試改革で教育が変わる!学研キッズネット|子どもの自主性についてアドラー流で考える藤崎達宏(2017),『モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す!』,三笠書房
2019年01月19日「ドルトンプラン」という言葉を聞いたことがありますか?1910年代に米国で始まった、自主学習を重視する教育方法です。モンテッソーリ教育やシュタイナー教育と比べて日本での知名度は低いかもしれませんが、いま日本でじわじわと注目を集めている様子。ドルトンプランとはどのような教育なのか、そして東京都で2019年に開校する、ドルトンプランに基づいた学校をご紹介します。ドルトンプランの発祥ドルトンプラン(Dalton Plan)を考案したのは、米国の教育者ヘレン・パーカースト(1887~1973)です。教育方法史を専門とする宮本健市郎教授(関西学院大学)によると、パーカーストはワシントン州の小学校で1年生の担任を務めた際、読書の時間にフォークダンスを行ったり、地理の時間に子どもを外に連れていったりなど、斬新な授業で注目を集めました。1910年に地元で大規模な競技場が完成した記念の祭典では、生徒のダンスを指揮して大成功に導き、教育委員会から表彰されたそうです。このことから、パーカーストが子どもの身体表現を重視していたことがうかがえます。同年、パーカーストは「実験室案(laboratory system of education)」という実験的な教育を実施しました。これは、教科ごとの「実験室」を設け、それぞれの部屋に担当教師を配置するというもので、のちのドルトンプランにつながっています。イタリア発祥のモンテッソーリ教育について学び、米国での普及活動を熱心に行ったあと、1919年、パーカーストはニューヨーク市に4年生~8年生を対象とした学校を設立しました。これが、2019年現在は幼児から高校生までが通う「ドルトン学校」の前身なのです。そして1920年に、マサチューセッツ州のドルトンという町で、上述の「実験室案」を実施しました。このときの教育法は、1922年に出版された『ドルトンプランの教育(Education on the Dalton Plan)』にまとめられました。ドルトン学校によると、この本は14の言語に翻訳され、世界的に受け入れられたそう。そして今でも、その独自性は高く評価されているのです。ドルトンプランの原則『ドルトンプランの教育』によると、ドルトンプランには「自由(freedom)」と「協働(co-operation)」という2つの原則があります。自由ドルトンプランにおいて、子どもには、邪魔されることなく自分の勉強に没頭できる自由が与えられなければいけません。子どもが物事に深い興味を抱いているときは意欲に満ちているのであり、勉強の過程で出現する困難さも乗り越えやすいからです。そのため、ドルトンプランにおいては、ベルによって授業時間を強制的に区切ることはされません。協働パーカーストの考えによれば、旧来の教育において、子どもは同じ教育課程の仲間と過ごすあいだ以外は集団で生活しないため、学校を卒業したら非社交的になりがち。しかし、社会生活とは「協働」および「相互作用(interaction)」なので、学校の成績がよいだけで生きていけるわけではないのです。そのため、ドルトンプランでは、子どもが意識せずとも社会の一員として動き、それを楽しめるような環境が整えられています。ドルトンプランの方法論実際、ドルトンプランは具体的にどのような教育を行っているのでしょう?パーカーストによると、ドルトンプランは固定のカリキュラムやメソッドではなく、時代を経て変化するもの。なので『ドルトンプランの教育』に書かれていることとは異なる点もありますが、現在のドルトン学校におけるキーワードと特徴を紹介しましょう。1.ハウス(House)ドルトン学校において、ホームルームのクラスは「ハウス」と呼ばれています。これは、ドルトンプランの原則である「協働」の精神を養う大事な基盤です。担任は「ハウスアドバイザー」といい、子どもひとりひとりの学習状況をサポートします。ドルトン学校のハイスクール部門(9~12年生)では、ハウスは学年混合で編成されます。実際の社会では、年齢が異なる人と共に活動するのが当たり前なので、より本物の社会に近い状態だといえるでしょう。2.アサインメント(Assignment)「アサインメント」とは、先生と子どものあいだで交わされる「契約」の意味。大学におけるシラバスをさらに詳細にしたような、授業で扱われる主な内容・宿題・レポートの規定・評価基準などが記されている冊子です。子どもはアサインメントを参照し、自分に何が求められているか把握しつつ学習を進めます。たとえば、ドルトン学校が公開している、8年生の歴史のアサインメントは、以下のような内容です。日本の学校や大学で、ここまで詳しい学習のガイドラインを提示してくれることはほとんどないのではないでしょうか?主要な問い:このユニットを読み進める際、以下の問いについて考えてください。これらはアメリカ独立もしくは現代にどう当てはまりますか?教室でのディスカッションや自分のノート、課題レポートなどで、これらの問いについて自由に言及してください。・「権力」や「力」を与えるのは誰ですか?いつ、どのようにして、権力は正当に(不正に)行使されますか?・権力を疑うことは、どのようなときに正当化されますか? 権力が尊重されるべきなのは、どのようなときですか?・すべての人間に共通しているのは、どのような「自然権」ですか?・暴力の行使は常に正当化されますか?暴力を避けるのであれば、変化を生み出すのにほかにどのような方法が可能ですか?(後略)課題読書についての説明:・それぞれの課題読書は、規定の締切日までに終わらせる(正確な締切日については、ムードル[※学習管理システム]またはホワイトボードの掲示を参照)。・自由に読み、先に進んでよい。・課題読書のメモをとる際、リーディング・クエスチョン(※)を使う。自分にとって最もよいやり方でメモをとる。・社会科の宿題に使うのは、30~45分のみ。(後略)(※「英仏間の戦争が『世界大戦』だとみなされうるのはなぜですか?」など、テキストの内容についてより深く考えるきっかけとなる質問)(引用元:The Dalton School|Assignment: Revolutionary Argument)3.ラボ(Lab)「ラボ(ラボラトリー)」とは、子どもと先生が1対1もしくは小グループで行う話し合い。課題について相談したり、授業内容について発展的な質問をしたりできる、貴重な時間です。9~12年生の場合、ラボは各教科専用の部屋で行われます。これは、生徒がいつでも使えるよう、専門的な本を並べた場所。パーカーストはこれらの部屋を「Laboratory」と呼び、生徒が勉強に没頭できる場所として重視していました。そもそも、ドルトンプランの元の名称は「ドルトン・ラボラトリー・プラン」。理科の実験を重視していると誤解を受けないよう、「ラボラトリー」が外されたという経緯があります。ドルトンプランのなかでも特に核となるのが、ラボだといえるでしょう。日本にドルトンプランの学校はある?モンテッソーリ教育やイエナプランのように、異なる年齢の子どもたちを一つのクラスに編成するオルタナティブ教育は珍しくありませんが、ドルトンプランの「アサインメント」「ラボラトリー」はかなり独特ですね。このような教育課程を経た子どもは、自主性や学習に対する意欲を育みそうです。ニューヨークに留学することなく、このような教育を受けさせたいと思ったら、どうすればよいのでしょう?実は2019年4月、東京都調布市に「ドルトン東京学園中等部・高等部」が開校するのです。ドルトンプランを全面に押し出し、「主体的に学び、探究・挑戦し続ける」「多様性を理解し、他者と協働する」などの生徒像を掲げています。ドルトン東京学園では、ドルトンプランの重要な3要素であるハウス、アサインメント、ラボラトリーが実施されます。まず、クラスとは別に、中等部1年~高等部3年のそれぞれの学年から編成されるハウスが組まれ、「異なる学年の生徒集団が、主体的に活動内容を考え、協働して実践していく」コミュニティとなるそう。また、学習内容ごとに作成されるアサインメントには、学習の流れや評価方法などが書かれており、生徒が計画的に学ぶ姿勢を身につける手助けとなるのだとか。そして、ラボラトリーは生徒が自由に使える時間。中等部1年では週に2時間程度ですが、高等部では増えます。生徒はこの時間に教員からアドバイスを受けたり、グループ学習をしたり、一人で学んだりと、自分で設計した学習計画に沿って勉強するそうです。ドルトン東京学園では、生徒がさまざまな経験をし、主体的に発信を行える機会を持てるよう、多くの個性的な行事が予定されています。仲間と協力し、努力した成果を大勢の人の前で見せることを通じ、コミュニケーション能力や主体性が養われることは間違いありません。-スポーツフェス:ハウスの一体化を目的に、ハウス対抗の団体種目を行う。-STEAMフェス:個人およびハウスで科学技術を研究し、発表する。-アートフェス:本格的な舞台装置のある講堂で、演劇や演奏を発表する。また、ドルトン東京学園は「グローバル市民」の育成を目指しており、英語教育にも力を入れています。中等部・高等部の6年間で生徒全員が2回の海外研修を経験するほか、英語を日常生活だけでなくビジネス、アカデミックの分野でも使えるように授業が行われるのだとか。一般的な日本の学校で行われている画一的な詰め込み教育とは、何もかもが違うといえますね。***自主性と、他者との協働。ドルトンプランは、まさに21世紀のグローバル社会で必要とされているこれらの能力を伸ばしてくれる教育だといえるでしょう。意欲を持って自ら勉強に取り組み、さまざまな立場の人たちとの交流を楽しみ、自分の活動を積極的に発信できる人間になってほしい――。そんな願いを持つ親御さんは、ぜひチェックしてみてください。(参考)Helen Parkhurst (1922), Education on the Dalton Plan, New York City, E. P. Dutton.The Dalton SchoolDalton 100|22. Education on the Dalton PlanJ-STAGE|ドルトン・プランの成立過程とヘレン・パーカーストの思想形成ドルトン東京学園中等部・高等部
2019年01月13日「子どもには英語を話せるようになって欲しい…。英語教室に通わせた方がよいのかしら…」これからの英語教育に不安をもつママは多いと思います。2020年度からセンター試験に代わる「大学入学共通テスト」が導入され、英語の試験では「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能が問われます。それにともない、小学校では高学年から英語が教科として正式にスタート、中学校では英語の授業を英語のみで行い、高校では生徒自身が英語で発表・討論・交渉などの活動を行う予定です。幼児期からの英語教育が当たり前になりつつある社会ですが、何から手をつけるべきか悩みますよね。そんなお悩みママに手軽にできる自宅での英語遊びを紹介します。英語遊びは何歳から?自宅での英語遊びには年齢制限がありません。0歳からでも、幼稚園に入ってからでも大丈夫。思い立ったが吉日で、親子で楽しむことが何よりも大切です。なぜなら、将来的な目標は「バイリンガルな子どもを育てる」なんて大それたものではなく、「英語を嫌いにならない子どもを育てる」ですから。ゆったり構えましょう。具体的に何をするの?幼児期はこれから問われる英語の4技能のうちの「聞く」と「話す」がとても得意な時期です。まずはわが子が好きな絵本を用意しましょう。日本語、英語、どちらでも構いませんが、ひらがなが読めると日本語の絵本だと読み始めてしまうので、英語の絵本がおすすめ。「私には英語での読み聞かせはムリ!」というママ、ご安心ください。読み聞かせではなく、絵本を使って質問遊びをしましょう。"What’s this?"から始めよう!"What’s this?"(これなーんだ?)"It’s an elephant!"(ぞうさん!)絵本に出てくる動物やモノを指さして、お子さんに問いかけてみてください。最初は「ママ、何言ってるの?」と思っているお子さんも回を重ねるうちに「エレファント!」と元気よく答えてくれると思います。ここでママがやらなくてはいけないことは、"What’s this?"の正確な発音を覚えること、そして、絵本に載っているモノをすべて英語で覚えること。子どもは数回聞けば、あっという間に覚えてしまいます。お子さんに負けないように頑張りましょう!慣れてきたらほかの質問もしてみよう!"What color is this?" (この色は何色?)"It’s red!"(赤!)お子さんが好きなモノを英語で言えるようになったら、色も一緒に覚えてもらいましょう。これは絵本がなくてもできるので、おやつの時間、お風呂の時間などを利用して遊ぶこともできます。色を覚えたら、次は形(shape)という感じで、日本語と同じように英語でもどんどん質問遊びをしましょう。子どもは大好きなママと英語でコミュニケーションをとることで、「英語って楽しい」と思ってくれます。英語遊びのポイントは「続けること」!子どもが大好きな遊びを英語でやる、ただそれだけです。でも、ここで重要なポイントは「続けること」。幼児期は覚えるのも早いですが、忘れるのも早い時期。自宅で英語遊びを続けることで、「英語=遊び=楽しいもの」と脳に記憶され、小学校からの英語教育にも抵抗なく取り組めると思います。そして、「英語を嫌いにならない」子どもは将来的に英語力を身につけることができます。これは私の実体験からの感想ですが、長くなるのでまた今度。お手軽な英語遊び、ぜひ一度親子で楽しんでみてくださいね。<文・写真:フリーランス記者稲井華子>
2019年01月10日小学校からの英語授業が始まったりと、グローバル教育が叫ばれる中、英語教育に関心をもつママやパパも多いですよね。また、自分自身が英語を学びたい!と思っている人も多いのでは。今回は、子どもの英語教育と自分の英語の勉強、両方を叶えることができる「親子留学」を紹介します。フィリピン・セブ島での親子留学って何が魅力?2018年9月、私と3歳の娘の2人でフィリピン・セブ島へ3週間の親子留学に行ってきました。最近人気のセブ島での語学留学。その理由は…・安い。物価がまだまだ安く、学費も滞在費も安い・近い。直行便なら4時間半で到着・英語の先生の質が高い。フィリピンの公用語は英語。発音も綺麗でネイティブレベルの授業が可能。マンツーマンレッスンが充実・フィリピンの中でもセブ島は年中温暖で、ショッピングやスパ・プールなど遊び場も充実また、「親子留学」が現実的な理由は、・家政婦さん(滞在中の家事とベビーシッターどちらもやってくれる)がいる・なんといっても日本からの近さ。子連れで海外に行くとなると、飛行機に乗ってる時間は極力短い方がいいフィリピン・セブ島での親子留学手配の方法と内容は?今回は私自身も初めての留学ということもあり、資料請求をした留学エージェントを通じて手配してもらいました。・親子で留学する学校(親子留学専門の校舎を持つ日本人経営の学校)私も娘も午前中のみレッスンで、親4コマ・子ども3コマでお願いしました(1コマ50分)。親は4コマすべてマンツーマンレッスン、子どもはグループレッスンです。・滞在するコンドミニアム親子留学では学校から徒歩3分ぐらいの高級コンドミニアムが滞在先でした。セキュリティも厳しく、駐車場も入口もガードマンが常に警備しています。・家政婦さん基本の勤務時間は8時〜17時、月~金が出勤日で土日はお休み。掃除や洗濯、ご飯作りなどの家事全般に加え、ベビーシッターもお願いできます。料金は、選ぶ学校やコマ数、コンドミニアムのレベルや広さによって変動しますが、私たち親子の場合あ、3週間で約35万円でした。それとは別に、航空チケット代や空港税、あとは学生証の発行手数料など現地で学校に払う費用、毎日の食費や生活用品などの雑費が必要になります。学校に通っている間の1日のスケジュール6:00起床7:00朝食・着替え8:00家政婦さん出勤→学校へ出かける準備9:00家政婦さんと一緒に登校11:00娘のレッスン(3コマ)終了。家政婦さんと一緒に帰宅※私と娘のレッスン中は、家政婦さんはコンドミニアムに帰って家事12:00私のレッスン(4コマ)終了※午後はフリータイムなので、娘を家政婦さんに任せて1人で買い物に行ったり、娘とお出かけしたり。家政婦さんは食事の準備17:00家政婦さん帰宅→作ってもらったご飯で夕食18:00シャワー・就寝準備・親子の遊び時間20:00 娘就寝親子留学してよかったこと同時期に同じ学校に通っていた親子8組は職業も年齢もさまざまでしたが、母親ひとりで子どもと海外生活している共通点もあり、すぐに仲良くなれるのも親子留学の特徴かもしれません。2〜6か月の長期滞在者もいれば、仕事の休みを取って1〜2週間来ている人や育休期間を使って来ている親子もいましたが、普段知り合うことのない人たちと知り合えるのも、留学の醍醐味ですね。肝心の英語のレッスンの方ですが、親子ともに3週間でも変化が得られたと思います。私の場合は、何といっても発音でした。実際に発音がしっかりできるようになるには3週間は短すぎましたが、初めて「正しい発音」を学び、自分のどの発音が「間違っている」かを知れたことは、大きな収穫でした。そして、英語をまったく知らない状態で英語レッスンに放り込まれた娘は、レッスンの中で毎日歌う「お片づけの歌」や「天気の歌」「曜日の歌」を口ずさむように。英語にも興味をもったようで、日本に帰ってからもアルファベットの歌を歌ったり、書こうとしたりしています。親にとっても子どもにとっても、世界が広がる親子留学でした。すっかり魅力にはまってしまい、また時間を見つけたら、同じ学校へも、そしてほかの国にも行ってみたい、と毎日のように思っています。<文・写真:フリーランス記者自由気ままにサラリーマン>
2018年12月25日年長のお子さまをもつママは、年が明ければ卒園式までカウントダウン。そして、その先には小学校入学が控えています。園から小学校に上がると生活に大きな変化がありますが、それに加えて2020年に施行される新学習指導要領で、大きくシフトチェンジがあるのが気になるところです。「一体何がどう変わるの?」「普通に勉強をしているだけではだめなの!?」などと不安を抱くママも多いのではないでしょうか。そこで、教育市場動向や入試傾向にも詳しい、Z会 幼小事業部『みらい思考力ワーク』開発責任者の田中多恵子さんに、2020年に向けてどのように備えればいいのか、お話を伺いました。◆Z会 幼小事業部 みらい思考力ワーク開発責任者田中多恵子(たなか・たえこ)さん1986年入社。長きにわたり、Z会小学生コース 国語の教材開発を担当。<Z会小学生向けコース>コースやレベル、教科の選択など柔軟なシステムで、お子さまの未来を拓く教材を提供。1・2年生向けには、親子での学びをとおして知性と感性を育む「小学生コース」がある。新一年生のママたちへ、2020年に向けて専門家からアドバイス!Q.2020年度には何が変わるのでしょうか?田中さん: 2020年度から小学校では「新学習指導要領」が施行されます。この年度には大学入試制度も大きく変わり「大学入試センター試験」が廃止されますので、日本の教育界全体で大きな変化があると言えます。大学入試では、単なる知識力だけではなく、その知識を使いこなす力、自分で問題を発見して答えや新しい価値を生み出す力が問われるようになります。その流れで小学校でも広い視野をもち、知識を活用できる力を身につけることが求められます。Q. 具体的には、各教科の学習内容も変わりますか?田中さん:小学校の学習でもっとも変化があるのが、英語(外国語活動)です。3年生から対話中心の英語(外国語活動)の授業が必修化され、5年生からは成績がつき、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能の育成がこれまで以上に重視されます。この対話を重視した活動は英語に限らず、すべての教科で重視されるようになります。さらに、知識を身につけることが中心だった従来の学習から、知識を活用していく力が求められるようになります。Z会ではその変化に対応し、小学生コース1・2年の国語では、通信教育ではめずらしい「はなす」というカリキュラムを設けています。対話によって、コミュニケーション能力を高め、表現力を豊かにするための取り組みです。また、理科・社会へつながるZ会オリジナル教科「経験学習」では、経験するための材料を揃えるところからはじまり、工夫したり考えたりしながら体験。実際に五感を使って感じるなかで、身近な事象に対する興味・関心を広げ、意欲的に学ぶ姿勢を身につけます。一生使える「考える力」を養うための “6つの力” とはQ. 「考える力」は、どのように勉強したら身につきますか?田中さん:これからの社会で求められているのは、何かを教わるだけではなく、自分で考え、他者を動かし、一緒に行動することができる力です。単に問題を早く多く解くというのではなく、わかるまで考える、どうしてこの答えになるのか納得する、ということが大切になります。Z会では2019年4月に『みらい思考力ワーク』が開講します。この講座では子どもたちの「考える力」を伸ばすために、まずは6つの力を身につけます。1)論理的判断力2)情報整理力3)試行錯誤力4)連想力5)注意力6)推理力教科の枠を超え、教科の知識や日常生活で習得した知識を組み合わせて解く問題で「知識の活用の仕方」を学べます。あれこれ試行錯誤したり、ひらめいたり。将来の受験でも社会生活でも役立つ、粘り強く考えぬく力を養います。 考える力を育む『みらい思考力ワーク』の問題例をみる 「年長の冬」から、徐々に勉強へ移行しようQ. 小学校のスタートで “つまずかない” ための準備とは?田中さん:小学校入学の時期は、通う場所も友だちも変わるため、お子さまにとっては大人が考える以上に大きな変化を経験します。入学前は、まずは「1年生になることが楽しみ」と思えるように準備をしてあげてください。ひらがなや数字などは入学後も取り組む時間はとれるので、あせらずおおらかな気持ちで接してあげてください。逆に、勉強が進んでいるお子さまの場合、すでに知っていることだと学校の授業がつまらなくなってしまう場合もあります。そして、気がついたら授業が先に進んでいた…ということがないように注意が必要です。Z会の幼児コースでは、小学校入学にそなえて徐々に国語や算数の教科的な取り組みを行っていきます。これまでとは違う「勉強する」という雰囲気に慣れておけます。正解しなければいけないものではないので、親子で楽しみながら取り組んでいただくことで、入学後の学習がスムーズになります。 Q. 子どもの勉強はどうやってサポートしたらよい?田中さん:保護者も仕事や家事で忙しい時代。勉強中ずっとそばに付きそう必要はありません。Z会を受講されているご家庭では、朝の時間帯を活用したり、家事をしながらお子さまを見守っていたりするご家庭も多いです。忙しいときは、お子さまが取り組んだものを後で○をつけてあげるだけでもよいでしょう。大切なのは認めてあげること。出来不出来に関わらず、がんばりをほめてあげましょう。Z会の幼児コース、小学1・2年コースでは、親子で学ぶことを大切にしていますが、教えることが負担にならないよう、「サポートブック(保護者用指導書)」を用意しています。大人にとって教えるのが難しい問題でも、ほめながら正答へ導く方法を掲載しているので、お子さまのやる気をそがずに楽しく教えられます。お子さまのがんばりを目に見える形で表すシールやスタンプも用意していますので、継続の原動力になります。 小学生コース1年生の「おためし教材」(無料)はこちらから 年長さん親子がZ会の「おためし教材」を体験!そんなZ会の『みらい思考力ワーク』のおためし教材を、来春、新1年生になる「まちちゃん」親子に体験してもらいました。早生まれのまちちゃん。お母さんは「何でもゆっくりで心配」と話しますが、教材を開くと、楽しそうにさっそく「まちがいさがし」の問題から取り組み始めます。遊びの延長で取り組めそうな問題ですが、実は思考力の中の6つの力のひとつ、「注意力」を育てる問題です。日常生活での知識をもとにおかしいところを探します。「ここがヘン!」まちちゃんの楽しそうな声が響きます。右ページの「影」の問題は、光と影の理科的な知識がなくても解けるのでしょうか? 「むずかしいから、おうちのひとといっしょにさがそう」と書いてあるので、まちちゃんもお母さんと一緒に取り組みます。「注意力」は全体や部分を比べて発見する力なので、影の法則を知らなくても、注意深く見比べることで、違いを発見できそうです。字を覚えたてのまちちゃんが次に挑戦したのが「文字の入れ替え」問題。ひらがなを入れ替えて、違う生き物の名前を作る問題です。4文字の「くろしま」は「しろくまだ!」とすんなり思いついたまちちゃんですが、5文字、6文字となるとちょっと苦戦。お母さんも「ただ答えを教えるのではなく、どうやったら考える力を伸ばせるかな」と少し迷います。そこで付属の「サポートリーフレット(保護者用指導書)」を参考にしていただきました。ママもサポート!「教え方アドバイス」も充実Z会の「サポートリーフレット(保護者用指導書)」には、正解だけでなく、その時期の子どもがつまずきやすいのはどこか、どのようにアドバイスをしてあげるとよいのか、「間違えたときの接し方」が載っています。「理由を確認して、お子さまの考えを認めてあげてください」というアドバイスに、“間違えたときこそ学びの大きなチャンスがある” ことに気づかされます。「ほめ方や子どものひらめきを応援する声かけ例が載っているのはとても心強いですね」とまちちゃんママ。まちちゃんが体験した「文字の入れ替え」問題で問われているのは「試行錯誤力」で、解決にはいくつかのアプローチがあるそう。まちちゃんママも「『て』のつく言葉を考えてみる?」と、「て」がつく5文字の生き物の名前を考えてみることを提案します。まちちゃんのご家庭では、すでに兄妹とも塾通いや通信教育を経験しているそうですが、「どんどん解いてあっという間に終わってしまうような教材よりも、ちょっと難しいけれどきちんと考えるようにできていて、やりごたえがある」と、考える力を伸ばすZ会のおためし教材にも納得の様子。早生まれのまちちゃんも、お母さんの心配をよそに粘り強く問題に取り組み、「楽しかった」と笑顔を見せてくれました。小1・小2コースが大幅リニューアル!「プログラミング学習」もスタートそれぞれの「おためし教材」を見たまちちゃんのお母さんは、「思考力が鍛えられて力がつきそう。以前から子どもには『書く力』をつけてもらいたいと考えていました。添削問題もあるし、教材も書くものが多く、これなら『書く力』も養えそうですね」とも話します。2020年度の新学習指導要領の施行に対応し、Z会では教材を大幅にリニューアル。子どもたちの主体的な取り組みを促す国語・算数・経験学習の教材に加えて、家庭にある機器で手軽に取り組めるプログラミング学習も追加料金なしで学ぶことができます。「プログラミング学習 Z-pro」は年4回配信。2019年度の小学生コース1・2年生を受講した方には、標準サービスとしてついています。プログラミング学習では「論理的思考力」「問題解決力」「創造力」の3つの力が鍛えられ、「プログラミング的思考」を伸ばす土台が作られていきます。「プログラミングってどんなことを学べばいいのかわからなかったからよかった」と、まちちゃんママも安心した様子でした。変化の速い現代社会。子どもにどんな力をつけさせたらいいのか、と不安なママが多いのではないでしょうか。親としては、学校の成績や受験だけでなく、一生役立つ「考える力」を伸ばしてあげたいですね。ずっと使える「考える力」を身につけよう!【新1年生の学習スタートに、Z会がピッタリの6つの理由】 1) 将来の可能性を広げる“考える力”が身につく『みらい思考力ワーク』※『みらい思考力ワーク』なしのご受講も可能です※『みらい思考力ワーク』に提出課題はありません2) 「保護者用指導書」で、保護者も効果的な学習支援ができる3) 1日10~15分で、無理なく学習習慣が身につく4) 毎回同じ担任の先生から、一人ひとりに合ったアドバイスがもらえる5) プログラミング学習も追加料金なし6) 努力賞プレゼントで、モチベーションもアップ Z会小学生コースについて 詳しくはこちら PR: Z会 取材・執筆・撮影:まちとこ出版社
2018年12月20日ICTとは、Information and Communication Technology(情報通信技術)のこと。広く知られているIT(Information Technology)に代わって使われつつある言葉です。「ICT教育」や「教育のICT化」といった表現を耳にしたことはありませんか?高度に発達したテクノロジーを利用し、より効果的に教育を行おうとすることは一般的になっています。そこで今回は、教育現場でどのようにICTが使われているのか、保護者の皆さんにご紹介しますね。教育におけるICTとは小学校学習指導要領が改正され、2020年度から施行されるのはご存知のとおり。「小学校でプログラミング教育が行われる」として、大きな話題になっていますね。新たな学習指導要領には、以下のような記述があります。第3学年におけるローマ字の指導に当たっては、(中略)コンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得し、児童が情報や情報手段を主体的に選択し活用できるよう配慮することとの関連が図られるようにすること。(国語)児童がコンピュータや情報通信ネットワークを積極的に活用する機会を設けるなどして、指導の効果を高めるよう工夫すること。(国語)コンピュータや情報通信ネットワークなどを適切かつ効果的に活用して、情報を収集・整理・発信するなどの学習活動が行われるよう工夫すること。その際、コンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得し、情報や情報手段を主体的に選択し活用できるよう配慮すること。(総合的な学習の時間)(太字による強調は編集部で施した)(引用元:文部科学省|小学校学習指導要領)このように、コンピュータを積極的に用いた学習が公立小学校でも行われるようになるのです。文部科学省の資料「幼稚園教育要領、小・中学校学習指導要領等の改訂のポイント」では、「コンピュータ等を活用した学習活動の充実」「コンピュータでの文字入力等の習得」「プログラミング的思考の育成」が重要事項として挙げられています。文部科学省は教育におけるICTの活用を推進しています。2016年に策定された「教育の情報化加速化プラン」では、ICT教育の必要性が以下のように述べられました。現代社会において、身の回りのものにICTが活用されていたり、日々の情報収集やコミュニケーション、生活上の必要な手続きなど、日常生活における営みを、ICTを通じて行ったりすることが当たり前となっている中では、子供たちには、ICTを受け身で捉えるのではなく、手段として積極的に活用していくことが求められている。(太字による強調は編集部で施した)(引用元:文部科学省|教育の情報化加速化プラン~ICTを活用した「次世代の学校・地域」の創生~)現代はスマートフォンを持つのが当たり前の世界。スマートフォンは多くの便利な機能や楽しい娯楽の詰まった利器ですが、SNSを媒介とした犯罪、ソーシャルゲーム依存など、スマートフォンによって起こる問題は皆さん知っての通り。ICTとのつき合い方は、ぜひ学校で教えてほしいですよね。2016年度~2020年度を対象とした「教育の情報化加速化プラン」においては、具体的に以下をはじめとした施策が取り組まれるそう。-教員自身が自在にICTを活用して授業を設計できるようにする。-児童生徒に一人一台ずつ教育用コンピュータが行き渡るようにする。-デジタル教材等の開発を官民連携で進める。-情報モラル教育に関する教材や研修を充実させる。-文書の電子化など、ICTを利用した校務効率化を促進させる。このように、「教育でICTを活用する」とは、ただ授業でタブレットを使う・プログラミングを学ぶといったことではないのです。子どもはICTそのものを学び、またICTを利用して従来の教科を効果的に学習します。一方、先生はICTの導入によって学習効果のより高い授業を行え、事務仕事の負担を軽減することもできるのです。幼児教育におけるICT内閣府が2017年、0~9歳の子どもの保護者を対象に実施した調査によると、1歳でタブレットを使う子は2.5%でしたが、2歳になると13.5%に急上昇。その後も年齢が上がるにつれ増加傾向にあり、9歳では28.6%にもなりました。タブレットやスマートフォンなどの機器でインターネットを使う目的として最も多いのは「動画視聴」(85.4%)。平均利用時間は60.9分で、2歳の子ですら65.1分だったそう。また、24.2%の保護者が「注意しても子どもがインターネットをやめない」という経験を持っていたとのこと。読者の皆さんにも、就学前の子どもがインターネットを使うことに抵抗を覚える人が多いのではないでしょうか。しかし、ICTが幼児教育の分野でうまく活用されている事例があります。有名なのが、鹿児島県の「つるみね保育園」。「9割のアナログ保育と1割のデジタル保育」をモットーに、豊かで広大な自然のなか子どもを育てる「アナログ保育」と、タブレットとプロジェクターを使う「デジタル保育」を組み合わせ、個性的な保育が行われています。つるみね保育園の「デジタル保育」では、園児がタブレットとプロジェクターを使って写真を大きく投影し、プレゼンテーションを行うそう。県外や海外の人たちとリアルタイムでおしゃべりしたり、Google EarthやYouTubeを利用して楽しく学んだりしているそうです。園長の杉本正和氏によると、「デジタル保育」は週に1回・15分でも充分な効果が上がっているそう。また、発表会の背景として使う大きな絵を、従来は職員が描いていたところ、プロジェクターで写真を壁に映すようになったとのこと。これによって、職員の負担が大幅に減ったそうです。杉本氏は、タブレットとプロジェクターを用いた保育の魅力を以下のように述べています。プロジェクターを使ってお遊戯で使うコンテンツを大きく映すと、子どもたちからは大きな歓声が上がります。これまでは、A3サイズの紙でコンテンツを表現して見せていましたが、なかなか大きな反応は得られませんでした。やはり、子どもたちにとってプロジェクターから映る大画面のコンテンツは、与える印象が違うのです。(太字による強調は編集部で施した)(引用元:リコー|お客様事例(社会福祉法人上名福祉会 つるみね保育園 様))「大きい」ということは子どもにとって、大人が思う以上に魅力的なのですね。直感的に操作できるタブレットを用い、大画面で画像や動画を共有する。シンプルですが、これもICT。このような使い方であれば、従来のアナログな教育とも組み合わせやすいですね。佐賀県の「高岸幼稚園」も、教育にICTを取り入れています。「創造力・表現力を育む」こと、「グループ活動の中で協力と貢献を意識付け、お互いを認めあう関係を築く」ことを目標とし、「ICTタイム」を実践しているそう。活動内容としては、パズル、プレゼンテーション、別の園とのリアルタイム通信など。「絵本創り」の活動の際は、グループで1台のタブレットを用い、絵本を制作したそう。完成したものは印刷・製本し、ほかのグループと交換して読み合ったそうです。このような活動の結果、子どもたちの集中力が高まり、協調的な活動ができるようになったのだとか。タブレットは直感的に使えるため、子どもの創作活動を後押ししてくれるツールといえるでしょう。アナログの画材ではできない表現を楽しみ、お友だちとコミュニケーションすることは、「カラフルな絵を描きたい」「みんなで楽しみたい」という子どもらしい欲求に合致しているといえます。英語教育におけるICT2020年度から施行される新学習指導要領によって、小学校での英語学習も大きく変わることは、「あなたのお子さんの年は移行期?全面実施期?3分でわかる『小学校英語教育』」でもお伝えしたとおり。新たな学習指導要領には、「外国語科」の目標が以下のように書かれています。外国語の音声や文字、語彙、表現、文構造、言語の働きなどについて、日本語と外国語との違いに気付き、これらの知識を理解するとともに、読むこと、書くことに慣れ親しみ、聞くこと、読むこと、話すこと、書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる基礎的な技能を身に付けるようにする。(太字による強調は編集部で施した)(引用元:文部科学省|小学校学習指導要領)つまり、いわゆる「英語4技能」の基礎を小学生のうちから身につけることが目指されているのです。文部科学省による2019年度概算要求において、「英語4技能育成のためのICT活用普及推進事業」として新たに2億5,000万円が計上されました。「新学習指導要領の全面実施に向けて、自治体が民間機関と連携し、各地域の実態に応じた効果的なICTの活用法について事例を創出し、全国各地に普及する」とのことです。では実際、小学校での英語教育においてICTはどのように活用されているのでしょう?英語教育で有名なのが、京都府の立命館小学校。朝の15分間を「モジュールタイム」とし、その一部を英語の発声練習(音声ドリル)にあてています。PowerPointで作成した、英単語の書かれた140~230枚程度のスライドを電子黒板に次々と写しつつ、児童に発声させるのだそうです。同校の英語科アドヴァイザー・田縁眞弓氏によると、ICTをうまく使ったこの活動は「児童の集中を切らすことなく、緊張感を与えながらスピーディに多量のインプットが与えられる」のだとか。たくさんの資料をテンポよく次々と見せるのは、アナログ環境ではできないことですね。また、立命館小学校の英語の授業では、英語の絵本をスキャナーでデータ化し、電子黒板に大きく映しながら読み聞かせているそう。物語の魅力だけでなく、「紙媒体の絵本と比べてデジタルでみる絵本の大きさやカラフルさ、その迫力」が児童を引きつけ、やがて児童全員が絵本のテキストを自然と目で追うようになったそうです。英語の音とスペルが一致して頭に入ってきそうですね。つるみね保育園の例でもそうでしたが、プロジェクターや電子黒板を使って教材を大きく映すということは、想像以上に子どもを集中させやすいようです。また、小学校英語教育などを研究する高橋美由紀教授(愛知教育大学)らは某小学校の6年生を対象に、Skypeを使った英語活動を実践しました。1グループ3~4人で1つのタブレットを使い、「Can you ~?」など特定のフレーズを使ってSkype越しにネイティブ講師とやりとりをしたのです。この活動には以下をはじめとする効果があったそう。①子ども達一人一人の発話機会が多くなったこと、②ネイティブ講師達は目の前の子ども達に合わせて彼らの理解できる表現を使用して授業を行えたこと、③子ども達の英会話を行うことへのモチベーションが高まったこと(太字による強調は編集部で施した)(引用元:愛知教育大学学術情報リポジトリ|ICTを活用した小学校英語教育 ― スカイプを使用した事例研究を基に ―)ICTを利用することにより、少人数で効果的な会話練習ができた、というわけですね。児童の数に応じたネイティブ講師をそのつど学校に呼ぶ、というのは費用などの面から現実的ではありませんが、Skypeならば可能になるというわけです。特別支援教育におけるICTICTの利用は、障害を抱える子どもの教育において非常に有用だと考えられています。目が見えなかったり、耳が聞こえなかったりといった不便さを、デバイスやソフトが補ってくれるからです。独立行政法人・国立特別支援教育総合研究所が、障害のある児童生徒の教育におけるICT活用事例を収集したところ、弱視(視力が正常に発達せず、眼鏡をかけてもよく見えない状態)の小学生がタブレットと漢字練習用アプリケーションを用いて書き取り練習を行う例があったそう。同研究所の共同研究によると、弱視の子はそうでない子に比べ、漢字を正確に書くのが困難なのだとか。文字を間違って覚えていたり、「点画が外れている、二重書きの線がある、不要な突出部分ができてしまうといった傾向」があったりするそうです。そこで、学習アプリケーション「常用漢字筆順辞典」で学ばせたところ、画面を拡大することで、線と線がつながっているか・離れているかなど、漢字の細部を確認しながら漢字を書く練習ができたそう。直感的な操作で画面を拡大でき、画面に直接書いて勉強できることは、タブレット学習の大きな利点ですね。発達障害がある子の学習支援にも、ICTの導入は効果的です。文部科学省の調査によると、アスペルガー症候群・学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)などを含む発達障害を抱え、通常学級において教育支援を必要としている子は各学級に少なくとも2~3人いると推定されるそう。ICTを利用すれば、彼らの困難さを取り除きやすくなるのです。たとえば、授業中に集中しづらい子がいる場合、大型ディスプレイを用いるとよいそう。子どもたちの視線が自然と前のほうに向かうほか、それぞれの表情が教員からよく見えるようになるので、集中していない子どもに教員が気づきやすくなるそうです。また、集中が困難だったり聴覚過敏だったりして、教員の指示を聞きもらしがちな子もいます。そのような場合には、タブレットやICレコーダーで教員の話を録音することにより、重要な連絡事項をあとから確認できます。また、ノイズキャンセリングヘッドフォンを装着すれば、人間の声以外の雑音を軽減することが可能なので、空調設備や自動車の音などに煩わされにくくなるのです。さらに、病気や障害などの理由により学校に通えない子が、ICTを利用して自宅や病院から遠隔授業を受けることもできます。公益財団法人・日本財団で行われている「難病の子どもと家族を支えるプログラム」は、2017年から鳥取県で遠隔教育事業を行っています。カメラ・マイク・スピーカーを搭載した、高さ21.5cmのロボット「OriHime」を利用することで、実際に教室にいるように授業を受けられるのだそう。タブレットなどに専用アプリケーションをインストールすると、カメラを通して現場の風景を見たり、「OriHime」を自分の分身のように動かしたりすることができます。2018年4月時点で、鳥取県の養護学校および院内学級で3台の「OriHime」が稼働しているそう。重度の心臓病を持つ小学生のAさんは、感染予防や体調を考慮して先生が自宅に訪問して授業をする訪問学習を受けています。(中略)OriHimeが来たことで、これまで先生のお話でしか聞けなかった学校行事や大人数での授業など、OriHimeのおかげで、「見る」「参加する」「経験する」ことができるようになりました。(中略)また、治療により入院前と違う自分の姿を見られることに抵抗を持つ子どもも多い中、OriHimeが分身になってくれるおかげで、自分の姿を相手に見られることなく友だちと勉強ができることは、子どもにとって大きな安心につながるという効果もあることがわかりました。(太字による強調は編集部で施した)(引用元:日本財団|分身ロボットで、学校へ通えない子ども達に学習の機会を!鳥取県での実践)このような遠隔授業が一般的になれば、事情により学校に通えない子どもたちの大きな助けになりますね。文部科学省は2018年11月、今後の政策の柱のひとつとして「遠隔教育の推進による先進的な教育の実現」を掲げました。病気療養しているなど「特別な配慮」を必要としている子どもや、人口の特に少ない地域に住む子どもたちにも質の高い教育を届けるためです。教育分野において本格的にICTが活用されれば、都会の子も地方の子も、高度な学習をしたい子も学習の苦手を補いたい子も、それぞれが恩恵を受けられそうです。教育のICT化を支援する企業これまで述べたような「教育のICT化」は、先生の個人的な努力や政府の意向だけで成し遂げられるものではありません。教育の現場で使えるデバイスやソフトウェアを開発したり、システムを提供したりする民間企業あってのもの。企業が教育現場向けに打ち出しているICT関連の製品やサービスは「文教ソリューション」と総称されています。たとえば富士通株式会社は、児童生徒向けのタブレットを開発しています。そのひとつ「ARROWS Tab Q506/ME」には、以下をはじめとした特徴があります。-机から落ちにくい設計。-落としても衝撃が伝わりにくい。-家庭科室や屋外でも使いやすい防水・防塵。-鉛筆のように書けるペン入力。-薄暗い体育館でも撮影時にブレにくいカメラ。教育のICT化に意欲的な岐阜県岐阜市では2016年度、このタブレットが全ての市立小中学校に配備されました。児童生徒3.4人に1台の割合だそうです。タブレットを授業で使いはじめたところ、以下のような効果があったのだとか。-言葉での説明では難しいことを、デジタル資料で視覚的に示せる。-大量のプリントをコピーするなど教員側の負担が減った。富士通は文教ソリューションとして、子どもの個別学習をサポートする「手書き電子ドリル」も提供。国語・算数・英語など各教科の問題をタブレットに書き込んで解答すると、自動で採点されます。漢字のテストでは書き順をチェックしたり、計算問題ではかかった時間を計測して前回と比較したりできるのが、紙のドリルにはない大きな特徴。前回間違えた問題のみを表示したり、全問正解すると「合格」マークが表示されたりなどの要素は、子どもの積極的な反復学習につながります。また、教員はテンプレートに沿って自分で問題を作ることが可能。教員の手間を大幅に削減しつつ、子どもが楽しく効果的な学習を行える電子ドリルのメリットは大きいといえます。教育ITソリューションEXPOとは上記のような文教ソリューションを提供する企業が一堂に会する「教育ITソリューションEXPO」という展示会があります。東京・大阪で毎年開催されており、2018年5月に東京ビッグサイト(江東区)で開催された第9回には、ベネッセや東芝など450社以上が出展し、学校関係者など約3万2,000人が来場しました。市場調査を手がける株式会社富士キメラ総研が、教育機関向けICT関連の国内市場規模を2017年に発表したところによると、2021年度は1,920億円の見込みで、2015年度と比べて41.8%増えるそう。市場は大きく「ハードウェア」「教材/コンテンツ」「校内設備/インフラ」「業務支援システム」の4つに分かれ、特に無線LANシステム(2015年度比4.1倍)とタブレット端末(同3.4倍)の市場の伸びが著しいようです。2018年6月に閣議決定された「第3期教育振興基本計画」は、2018年度~2022年度を対象としており、教育政策の目標のひとつとして、「ICT利活用のための基盤の整備」が挙げられています。測定指標として示されているのは「学習者用コンピューターを3クラスに1クラス分程度整備」「普通教室における無線LANの100%整備」など。このように、政府によって教育のICT化が促進されるのであれば、関連市場はますます拡大していくでしょう。「教育ITソリューションEXPO」もさらに活気を呈しそうです。2019年度の開催は、東京で6月19日~21日、大阪で9月25日~27日。あくまで商談の場なので、子どもと見学に行く、というわけにはいかないのですが、教育をもっと進化させてくれる最新ICTが一堂に会しているかと思うと、わくわくしますね。教育におけるICTの課題教育にICTを導入することは、子どもにとっても教員にとっても大きなメリットがあり、政府も推進していることがわかりましたね。とはいえ、教育のICT化のために解決するべき課題は山積しています。上で紹介した事例のように教育現場でICTを活用するには、教室で無線LANが使えることと、できるだけ多くの子どもにコンピュータが行き渡っていることが必要です。文部科学省の「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」によると、2017年度における「教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数」は5.6人(前年度5.9人)、「普通教室の無線LAN整備率」は34.5%(前年度29.6%)でした。これを見ると、ICT利用環境は順調に整備されつつあるように思えますが、実は大きな地域差があるのです。「教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数」が最も少ないのは、佐賀県の1.8人。一方、最も多いのは埼玉県の7.9人でした。東京都は平均に近い5.4%です。1台当たりの児童生徒数が多いと、ひとりひとりが充分にコンピュータを利用することができず、狙い通りの教育効果を上げられないかもしれません。また、「普通教室の無線LAN整備率」が最も高かったのは静岡県の68.6%。最低は福岡県の9.4%でした。ちなみに、東京都は47.3%です。普通教室で無線LANが利用できないと、コンピュータは従来どおり、コンピュータ室のデスクトップPCを使うことになるでしょう。そうなると、いつもの教室にタブレットを持ち込んでインターネットに接続することができず、遠隔授業も実現できません。教育のICT化を促進するために、やるべき施策は多くありますが、「教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数」および「普通教室の無線LAN整備率」の地域間格差を是正することが目下の課題だといえるでしょう。***あまり知られていない、教育現場におけるICT事情についてお伝えしました。「タブレット教育」「プログラミング教育」ばかりが注目されがちな昨今ですが、最新テクノロジーを教育に導入することには、もっと多様なメリットがあるのです。お子さんの通う幼稚園や学校ではどうなのか、調べてみてはいかがでしょうか?(参考)コトバンク|ICT文部科学省|小学校学習指導要領文部科学省|幼稚園教育要領、小・中学校学習指導要領等の改訂のポイント文部科学省|教育の情報化加速化プラン~ICTを活用した「次世代の学校・地域」の創生~文部科学省|2019年度概算要求のポイント文部科学省|発達障害のある子供たちのためのICT活用ハンドブック文部科学省|発達障害とは文部科学省|遠隔教育の推進に向けた施策方針文部科学省|「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて ~柴山・学びの革新プラン~」について文部科学省|教育振興基本計画文部科学省|学校のICT環境整備について文部科学省|平成29年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)内閣府|低年齢層の子供のインターネット利用環境実態調査リコー|お客様事例(社会福祉法人上名福祉会 つるみね保育園 様)つるみね保育園学校法人高岸幼稚園|園紹介ムービーJ-STAGE|幼稚園におけるICT を活用した保育の検討-高岸幼稚園の事例より-J-STAGE|小学校英語と ICT ―私立小学校での実践から愛知教育大学学術情報リポジトリ|ICTを活用した小学校英語教育 ― スカイプを使用した事例研究を基に ―独立行政法人国立特別支援教育総合研究所|ICTを活用しよう独立行政法人国立特別支援教育総合研究所|弱視児童生徒の特性を踏まえた 書字評価システムの開発的研究日本弱視斜視学会|弱視日本財団|分身ロボットで、学校へ通えない子ども達に学習の機会を!鳥取県での実践分身ロボット「OriHime」富士通|ARROWS Tab Q506/ME 製品詳細富士通|岐阜県岐阜市教育委員会様/岐阜市立岩野田北小学校様富士通|手書き電子ドリル教育ITソリューションEXPO富士キメラ総研|『エデュケーションマーケット 2017』まとまる(2017/5/16発表 第17041号)
2018年12月19日夏休みになると、自由研究の課題などで何を作るか悩むママとお子さんもいると思います。手先を動かしクリエイティビティを伸ばしてくれる工作。工作は雨の日の暇つぶしにも、お子さんとの絆作りにも役立ちます! そこで、子どもとできる工作アイディアをま…
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