育児の「不要なもの」を捨てるとは
「ほかの子と比べたくなる」気持ちに悩まないの続きです。
「子育てをしていくうえでの選択に、『正解』はない」と話すのは、「
花まる学習会」代表の高濱正伸さん。マニュアル世代の私たちは、ついつい
「わかりやすい正解」がほしくなってしまう。けれど、それを求めること自体が、自分を苦しめていることになっているのかもしない。
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■しない1:子育てを、『がんばる』必要はない
「私の講演会にいらしてくださったママが、『言われたことを明日から、がんばってみます』とおっしゃる。私は、この『がんばります』という言葉は、こと子育てにおいては、少しあやうい言葉だと感じています」と、高濱さん。
これまでの人生で、勉強、仕事と成果を出してきた女性ほど、ママになったときに「ちゃんとやろう」と、完璧主義になる傾向があるという。
「子育てって、『がんばる』必要は、ないんですよ」(高濱さん)
がんばる必要がない!? それをうまくイメージできないママも多いのでは? なぜならこの記事を書いている私自身が、いまそんな心境だ。
「『がんばらない』というのは、だらしなくするということではなく、ママ自身が安心でき、ホッとできる場所を持つことがポイントです。
『ママの心の安定が一番大事』。これは憲法みたいに、社会のルールにしてほしいですね」(高濱さん)
■しない2:子育てに「正解」を求めない
「『私の子育て、間違えていませんか?』『私、あんなことを言わなければよかった』。これは、私がよく聞くフレーズです」(高濱さん)
間違えていた、失敗した、と思ってしまうということは、心のどこかで「あのとき、もっとこうしていればよかったかもしれない」という思いがあるから。
「子育てに正解はありません。まずは、ママが
『正解などない』ということを、しっかり心に刻むことが大切です」(高濱さん)
「親戚の子が、中学受験で成功して、有名私立大学に行った」という話を聞けば、「中学受験の成功=有名私立大学への合格」という方程式を思い浮かべてしまうのが親心。しかし、どんなに方程式にみえたとしても、それは成功事例のひとつでしかない。同じような選択をして、わが子が同じように成長していくという保証はどこにもないのだから。
「親として、自分が『正解』や『方程式』を求めている、と客観的にとらえることができたら、その裏に
自分自身のコンプレックスが隠れていないかも考えてみましょう。親自身が『こうすればよかった』と気に病んでいることこそ、子どもに投影されがちだからです」(高濱さん)。
■しない3:悩んだときは「自分は大丈夫」と思わない
「自分自身が『こうすればよかった』と気に病んでいることこそ、子どもに投影されがち」という言葉に、私はドキッとした。なぜなら私は中学校時代、荒れた学校に通い、ヤンキー(死語!?)の人たちに、目をつけられないよう、息を潜めるように過ごした経験がある。同じ思いを息子にさせたくなくて、おっとりとした校風の私立中学に進学させたいと考えているからだ。
「子育てのことを『ひとりで抱え込もう』と思っているママは、あまりいないと思います。しかし、
『私は大丈夫』と思っているママでも、じつはひとりでなにかしらを抱え込んでいる、というケースが本当に多いです」(高濱さん)
「第一志望校がダメだったら、公立中学でもまれるのもアリだろう」と言う夫を、「この子のこと、全然わかっていない」としか思えなくなっていた私。そこには「この子のためにベストを尽くせるのは私しかいない」という気持ちも確かにあったのだ。
けれど、そういう気持ちこそが危ないのかもしれない。いま一度、夫を始めとする周囲と対話をしてみようと思った。それでも心配で、きっと子どものことを囲いこみたくなってしまう。
次回は、『ママの安心感のために、先回り教育をしない』という話です。
■今回取材を受けてくださった高濱正伸さんの著書
『
「しない」子育て」(花まる学習会代表 高濱正伸/KKベストセラーズ)』
(本体1,250円+税)
●高濱正伸
花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。
1959年熊本県人吉市生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。算数オリンピック委員会理事。
保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30,000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。「情熱大陸」「カンブリア宮殿」など多数メディア出演もしている。
ロングセラー『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『小3までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『算数脳なぞぺー』など、著書多数。2016年7月からニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカーとして活躍中。
テスト勉強を自主的にやってほしい!という思いから、子どもたちにごほうびを提案しました!【4人の子ども育ててます 第150話】