2019年10月17日 18:20
スラム街出身だけど…インド階級差別社会に立ち向かう青年の生きざま
その話を聞いて、とてもうれしいです。
--この映画は主人公ムラドが自身のラップの才能に目覚め、父の反対を押し切って、ラッパーとして飛び立つ成長物語だと感じました。監督がこの作品で特に描きたかったものは何ですか?
ゾーヤー いわゆる“クラス・システム”、階級社会について描きたいという思いがありました。インドにはこの階級制度があるがゆえに、私が当然と思って享受しているものにアクセスできない人たちがたくさんいます。インドはある意味、国内で植民地化が行われている、それも特にメンタル面での植民地化がなされていると思うのです。
そういう人たちには、夢を見る権利すらもない。日々を生きるだけで精一杯、そういう状況に追いやられている人たちがたくさんいます。同じ国の人間なのに、そういう扱いを受けている人たちがいる、そういう階級の人がいる、ということを描きたいと思いました。
ゾーヤー・アクタル監督
--ムラドの父が、息子の夢を応援するのではなく、「目を覚ませ」と諭すのもそういうことですよね。
ゾーヤー まさにそうですよね。ムラドの父は弱い人間なんです。彼もかつて心を挫かれたことがあったのでしょうし、また人生に怖れを持っています。