2021年7月18日 18:52
奇妙な能力を持つ三つ子の大冒険譚 万城目学『ヒトコブラクダ層ぜっと』執筆秘話
それと、以前、湾岸戦争時のイラクが舞台の映画の予告編を見て、日本人がこの設定で映画を作るならPKOだなと思ったことがあって」
自衛隊やイラクについてはもちろん、梵天が化石の発掘に夢中という設定のため、恐竜についても、事前の下調べと取材に時間をかけた。
「イラクには行けないので隣のヨルダンに行きましたし、国内でも化石発掘体験に参加したり、専門家に話を聞いたりもしました。いつものように土地の歴史を絡めることは自然に考えていたので、あの地域の古代文明、フセインが支配した時期、現代についての情報も集めました。使いどころが分からないまま情報を頭に入れておくと、書いているうちに意外なところでそれが活かされてくるんです」
とはいえこの話、三つ子の能力にしても、課されるミッションにしても大ボラである。なのに史実や事実をしっかり押さえておくのはなぜか。
「ドラマ『古畑任三郎』の桃井かおりさんゲストの回で、古畑が嘘が上手い人について語る場面がありまして。嘘の下手な人は話の全部を嘘で固めるけれど、上手い人はほとんど本当のことを話す中に少しだけ嘘を交ぜる、と言っていました。僕がやっているのはそれだと思いますね」