2023年5月20日 14:00
【レビュー】韓国映画の母と娘の幻想を打ち破るリアリズム『同じ下着を着るふたりの女』
最近の作品で母娘関係を描いたものとして、母が校内暴力を受けた娘を突き放し、絶望に突き落とした側の1人となった「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」が一瞬思い浮かんだが、本作の娘はそこまで母を憎みきれずにおり、“私を見てほしい”という一抹の寂しさをずっと抱えてもいる。そして母も、娘を一切愛してないわけではない。
本作ではそんな娘がある日、一度、母から逃げてみたことで物語が大きく動き始めていく。
真の解放と自立は、
“自分の下着”を身につけることから始まる
家を飛び出した娘イジョンに理解を示し、受け入れてくれた(かに見えた)のは、おそらく同じ境遇を生き抜いてきた、いま自立しようとしている職場の後輩ソヒ(チョン・ボラム)だった。ソヒは、最初は単なる同僚の親切心として、もしくはパワハラをヴェールに包む上司への反発としての連帯か、イジョンの母娘関係に共鳴した仲間としての本能のようなものが働いたのかもしれないが、やがて依存グセが抜けないイジョンから離れてしまう。
一方、若くしてイジョンを産み、ひとりで育ててきた母スギョンは交際中の男性と再婚の兆しが見えて浮かれるが、彼が自分より娘ソラの機嫌を伺う様子が気に食わない。