2020年4月23日 06:00
大林宣彦さん「転移よありがとう」本誌に語っていた前向き闘病
だから、とても死んじゃいられねえやって(笑)」
大林さんにとって、がんとは“共存共栄するもの”。その捉え方は、驚くほどポジティブだった。
「がんが骨に転移していたのも、振り返ればありがたいことだった。最初に見つかったのは骨の異常でしたから。転移していなかったらがんが発見できなかった。つまりは今ごろ死んでいるわけです。もう『転移よ、ありがとう』と」
まさに命懸けで撮った映画『花筐/HANAGATAMI』は完成。だがその直後には、遺作となった『海辺の映画館−キネマの玉手箱』の企画が動きだしていた。
’18年7〜8月の猛暑のなか、同作のメインロケが、大林さんの故郷である広島県尾道市で行われた。
「がんになってからも、撮影現場にいるときは“死んでる暇がない”と思うぐらい元気が出る。僕は映画という免疫によって、生かされていると思っているんだよ」
’18年12月に取材に伺ったときは、まさに製作の真っ最中だった大林さん。当時、すでに年齢は80歳だった。
「体力がなくなりましたね〜。胸から上は元気なんだけど、映画は足で作るものだと、つくづく実感しました……」
珍しく弱音も口にしたが、ほほ笑みながら、すぐにこんなエピソードを話してくれた。